従来から、マルチユーザMIMO技術が提案されている(特許文献1,特許文献2、特許文献3)。マルチユーザMIMOは、基地局(またはアクセスポイント)側に多数のアンテナ素子をもたせるとともに、端末側は比較的少数のアンテナ素子をもたせ、基地局と複数の端末とで同時に仮想的なMIMOチャネルを形成するものである。
つまり、マルチユーザMIMO送信技術とは、送信局側において複数の送信アンテナから同一周波数同一タイミングで異なる独立な信号を複数の通信相手装置に送信し、複数の通信相手装置の受信アンテナ全体を巨大な受信アレーとみなして下りスループットの向上を図る技術である。
一方で、2.4GHz帯又は5GHz帯を用いた高速無線アクセスシステムとして、IEEE802.11g規格、IEEE802.11a規格などの技術が普及している。これらの無線通信システムでは、マルチパスフェージング環境での特性を安定化させるための技術である直交周波数分割多重(OFDM;Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式を用いられている。
このような高速無線アクセス技術においても、大容量化の技術として、マルチユーザMIMO送信技術が注目されている。
さらに、マルチユーザMIMO技術は、携帯電話の規格、たとえば、LTE(Long Term Evolution)や、LTE−A(Long Term Evolution Advanced;LTEの拡張)でも採用されている。
図14は、このようなマルチユーザMIMO通信システムの構成を示す概念図である。
図14に示されるように、基地局BSは、アンテナ1〜Mから、それぞれ送信信号x1〜xMを送信する。端末UE1〜UEkは、たとえば、それぞれ2本のアンテナを備えているものとする。端末UE1は、基地局からの送信信号x1〜xMを、その2本のアンテナにより受けて、それぞれ信号y1およびy2を受信する。同様にして、他の端末UE2〜UEkも、それぞれ2本のアンテナにより、基地局からの送信信号x1〜xMを受けて、信号y3およびy4,…,yM-1およびyMを受信する。
すなわち、図14の例では、(基地局の送信アンテナの本数)=(1つの端末側の受信アンテナの本数)×(端末数)が成り立っている場合を例示している。
このとき、受信側の端末UE1〜UEkでの各アンテナでの受信信号y1〜yMをまとめた受信信号ベクトルyは、以下の式により表される。
ここで、行列Hの各要素は、送信側の各アンテナから受信側の各アンテナへの伝送路のインパルス応答に相当し、行列Hは「チャネル応答行列」(または「伝送路行列」)と呼ばれる。ベクトルxは、送信機側での各アンテナへの送信信号を並べたベクトルである。また、ベクトルnは、受信側の各アンテナで受信される信号に含まれるノイズ成分を並べたものである。
従来のマルチユーザMIMOダウンリンクにおける送信ビーム形成(BF:Beam Forming)法としては、自端末以外の全ての端末の全受信アンテナに対してヌルを形成するZF(Zero Forcing:ゼロフォーシング)法や、MMSE(Minimum Mean Square Error:最小平均二乗法)法に基づいた種々のビーム形成法が考案されている。MMSE法に基づくビーム形成法では、自端末以外の全ての端末の全受信アンテナに対してヌルを形成するのではなく、一定量の漏洩を許容する。
以下では、送信アンテナの本数Mとしては、M=Nt=Nr×Kであるものとする。Nrは受信側(移動端末)のアンテナ本数であり、Kは移動端末の個数である。
(MMSE法によるビーム形成の構成)
ここで、シングルキャリアの場合について、MMSE法により、各アンテナに与える送信信号を合成するための「重み付け係数」(ビームフォーミングウェイト行列)を推定する方法については、特許文献2(特開2007−110664号公報)に開示されている。
以下、簡単にMMSE法によるビーム形成について、数式を用いて説明する。
図15は、MMSE法によるビーム形成の手続きを示す概念図である。
ここでは、送信機BSにおいて、送信に使用されるアンテナ数はNt本であり、受信側では、Nt(=Nr×K)本のアンテナで信号を受信する構成について説明している。
送信される原信号を以下のようにベクトルxで表すものとする。
このとき、たとえば、チャネル応答マトリックスHは、受信側(受信機UEs)からの情報により推定されるものとする。
このような状況では、送信ビームウェイト乗算後の信号ベクトルsは、以下の式であらわされる。
ここで、上付きのHは、行列共役転置操作後のエルミート行列であることを示し、αは正規化係数を表し、σ2は、ダウンリンクの受信アンテナの信号対雑音比(SNR)値であり、INtは、(Nt×Nt)の単位行列を表す。
送信アンテナから送出される信号uは、以下の式で表される。
ここで、γは総送信電力を規格化するための係数である。ただし、||は、ユークリッドノルムを表す。
チャネルを送信信号が伝達した後(すなわち、信号uにチャネル応答マトリックスが乗算されたことに等価)、受信側では、加算性白色ガウス雑音(AWGN)が付加された信号に対して、√γがそれぞれ乗算されて、受信信号riが分離される。
以上のようにして、MMSE法を用いたビーム形成方法により、MIMO通信が実現される。
しかしながら、マルチユーザMIMOは、屋外で使用されるだけでなく、たとえば、オフィスや家庭内などのような屋内で使用される場合が増加している。
たとえば、ピコセルかフェムトセル・システムのような近距離通信システムについては、システムのスペクトラム効率(SE)は、送信機または基地局BS側で正確なチャネル状態情報(CSI)を備えたマルチユーザMIMO(MU−MIMO)アルゴリズムの技術を使用して改善されることが知られている。
ただし、このような場合、各受信機が空間的に近接しており、結果として、MIMOチャネル間の相関が高くなる。
このような場合において、上述したMMSE法では、互いに相関の高いチャネルに対しては、規格化係数γの値が、大きくなりすぎ、規格化後の信号電力が必要以上に抑制されるチャネルが生じて、ストリームデータの一部が失われる恐れがあるという問題がある。
(非線形プリコーディング法−VP法)
このような問題に対しては、たとえば、非線形プリコーディング法のVP(Vector Perturbation)法が知られている。このような「非線形プリコーディング法」については、たとえば、特許文献4にも開示がある。
VP法のような非線形プリコーディング法においては、受信装置間干渉を受ける受信装置宛の送信信号に対し、プリコーディング処理が行われ、事前に干渉成分が間引かれる。
VP法を用いたマルチユーザMIMO(VP MU−MIMO)システムでは、端末装置が受信信号にModulo演算(モジュロ演算)という演算を施す。モジュロ演算とは、信号点平面において、モジュロ幅という所定の間隔の整数倍だけ平行移動した点を同じ信号点と見なす処理である。
端末装置が複数の信号点を同一と見なすことは、基地局装置にとってみると、送信信号を選択するときの自由度が高くなることを意味する。基地局装置では、この自由度を利用して、より低電力で送信できる点を選択して送信する。
基地局BSは、VP MU−MIMO方式の通信を行う場合、以下の二つの手順によって送信信号を生成する。
1. 適切に選択したModulo幅(以下、「モジュロ幅」)の整数倍の信号(摂動ベクトル)を所望信号に加算する。
2.線形プレコーディングと同じ処理により移動端末同士の干渉を除去する。
このとき、加算する信号を摂動ベクトル(Perturbation Vector)という。この摂動ベクトルを全移動端末宛の信号と伝搬路状態を考慮して適切に選ぶと、送信電力を抑圧することができる。VP MU−MIMO方式は線形プリコーディングと同じ線形フィルタを用いるものの、摂動ベクトルの加算という非線形処理を施しているため、非線形処理に分類される。
つまり、プリコーディング処理前の信号に対しては、摂動ベクトルを付加する処理が実行される。「摂動ベクトルを付加する処理」とは、入力された信号の実数部および虚数部に対し、実数部および虚数部に規定の値の整数倍の値を持つ摂動信号ベクトルを付加することと等価である。摂動ベクトルを付加する処理により送信電力が規定値内に抑えられた信号はビームフォーミングにより伝送される。
一方、受信処理では、所望の信号(データを含む情報信号)に上述した摂動信号が加わっている受信信号に対し、モジュロ演算処理が行われ、上記摂動信号成分が除去されて、情報信号が取り出される。
図16は、非線形プリコーディング法であるVP法の処理を説明するための概念図である。
図16を参照して、まず、送信機BSにおいては、送信される原信号ベクトルxに対して、ダーティペイパーコーディング(DPC)に基づく、摂動ベクトルの付加演算(以下、「DPC MOD処理」と略記する)が行われ、ベクトルx(ハット)(xの上に”^”の付加されたものを、以下、本文中では、このように表現する)が以下のように算出される。なお、このようなVP法については、非特許文献1に開示がある。
このようなベクトルx(ハット)に対して、MMSE法によりビーム形成演算を行うこととすると、上述した単純なMMSE法と同様にして、送信信号uは、以下のように算出される。
受信側のUEsでは、加算性白色ガウス雑音(AWGN)が付加された信号に対して、√γがそれぞれ乗算されて、さらに、DPCおよびモジュロ演算(「DPC DeMOD処理」と略記する)が実行されて、受信信号riが分離される。
このような非線形プリコーディング法、たとえば、MMSE規範によるVP法(MMSE−VP法)を用いれば、上述したような相関の高いチャネルの存在により、係数γが大きくなることで、ストリームデータの一部が失われるという問題を回避することは可能である。また、正規化係数αが適切に選択されている場合、MMSE−VP法は、一般にZF−VP法よりパフォーマンスが上であることが知られている。
そして、このようなVP法においては、最適な正規化係数αを見つけるための一般的な目的関数は、各ストリームの信号対干渉・雑音比(SINR)を最大限にすることである。
しかしながら、正規化係数αの最適値を解析的に決定することは、未解決な問題で、単に、数値的な方法で探索がされてきている状況である(たとえば、非特許文献2を参照)。
正規化係数αを最適化するための別の目的関数は、送信データと受信データの平均二乗誤差MSEを最小化することである。
そのようなプロセスを実現するために、多くの方法が、たとえば、連続値の摂動ベクトルを用いたVP法のプロセスとして研究されてきた(たとえば、非特許文献3を参照)。
あるいは、各ストリームのSINR値を最大限にするために最適な正規化係数αを見つけることが送信データと受信データの平均二乗誤差(MSE)を最小化する最適の摂動ベクトルを見つけることと等価なことを示した研究もある(たとえば、非特許文献4を参照)。しかし、この方法は最適な摂動ベクトルの探索のために変形されたプリコーディング・マトリックスを要求する。
以下、本発明の実施の形態の無線通信システムについて、図に従って説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素および処理工程は、同一または相当するものであり、必要でない場合は、その説明は繰り返さない。
図1は、実施の形態のマルチユーザMIMOでの通信の状態を説明するための概念図である。
図1(a)は、比較的広い領域で、基地局BSと複数の端末装置UEiとが通信している状態を示す。
広い領域に端末装置UEiが分散している場合は、それぞれの通信チャネルを分離したビームを形成することが可能である。
一方、図1(b)は、屋内などの比較的狭い領域で、基地局BSと複数の端末装置UEiとが通信している状態を示す。
狭い領域に端末装置UEiが存在している場合は、それぞれの通信チャネルを分離したビームを形成することが難しくなる。これは、チャネル間の相関が高くなることに相当する。
また、このような状況では、チャネル応答マトリックスにおいて、ある端末が他の端末よりもわずかに基地局からの距離が遠いというような場合が起こり、他の行の要素のノルム(大きさ)に比べて、極端に、ノルムの小さな行(受信機側のアンテナに相当)が生じる場合がある。
図2は、実施の形態の無線通信システムにおける無線送信装置1000の構成を示すブロック図である。
なお、図2では、MIMO伝送される信号がOFDM変調されているものとしている。
そして、NS個のストリーム(NS/2ユーザ)に対して、OFDM信号伝送用のサブキャリアがNc個であり、送信アンテナはNT本であるものとする。なお、後に説明するように、各受信機側のアンテナは、一般には、Nr本であるが、ここでは、例示として、2本であるものとする。
図2を参照して、無線送信装置1000は、入力ノード10から与えられるデジタル信号に対して、前方誤り訂正(FEC: Forward Error Correction)などの誤り訂正符号化を実行する符号化部20と、符号化部20からの信号をシリアルパラレル変換して、それぞれNc個ごとの並列な信号のグループにするためのシリアルパラレル変換部22と、パラレル変換された各信号に対して、Nc個のグループごとに所定のコンスタレーション上での変調方式で変調するための変調部30−1〜30−NSとを含む。
このような誤り訂正は、送信されるOFDMフレーム内での所定ビット数までの誤りを訂正できるように構成される。なお、このような誤り訂正には、インターリーブ処理等を併せて実行される。
ここで、送信シンボルは、同相成分と直行成分とを含みうるが、図2では、両者は、1つの信号線で表現されている。
また、変調部30−1〜30−NSは、プリコーディング処理として上述した非線形プリコーディングを実施するために、変調部30−1〜30−NSからの出力に対して、制御部50からの制御の下で、摂動ベクトルを付加する演算処理(「摂動ベクトルの付加処理」と呼ぶ)を実行する。
また、このような摂動ベクトルの付加処理においては、図16の場合と同様に、干渉キャンセルのための符号化技術としてDPC(Dirty Paper Coding)に基づく摂動ベクトルの付加演算(「DPC MOD処理」)を用いることも可能である。
無線送信装置1000は、端末側からフィードバックされたサブキャリアごとのチャネル状態情報に基づいて、プリコーディング行列を算出するための制御部50と、制御部50からのプリコーディング行列中の係数を、変調部30−1〜30−NSからの信号に乗算するための重み付け処理部40−1〜40−Ncとを含む。すなわち、OFDM変調では、サブキャリアがNc個あることに対応して、重み付け処理部40−1〜40−Ncは、それぞれ、対応する1つのサブキャリアの信号成分について、重み付け処理を実行する。
制御部50は、受信側から送られ、フィードバック情報受信部80で受信されたチャネル状態情報(CSI)に基づいて、OFDMのサブキャリアごとに重み付け係数を算出して、重みづけ処理のための係数を算出する。ここで、端末側からフィードバックされるチャネル状態情報(CSI)は、サブキャリアごとの情報が完全にフィードバックされる構成であってもよい。ただし、サブキャリアごとの情報が完全にフィードバックされる必要は必ずしもなく、たとえば、所定のサブキャリア間隔ごと(サブバンドごと)のチャネル状態情報がフィードバックされ、送信側で補間処理を行う構成としてもよい。
なお、サブキャリアごと(またはサブバンドごと)にフィードバックされるチャネル状態情報は、周波数領域の情報であっても、時間領域の情報であってもよい。以下の説明では、例として、周波数領域の情報であるものとして説明する。
また、記憶部52は、後に説明するような「摂動ベクトル探索のための正規化係数」の値および送信信号に対する「重み付け係数の算出のための正規化係数」の値を、さまざまな送信条件のパラメータについて、事前に算出したものを記憶しているものとし、制御部50は、記憶部52に記憶されたデータを使用して、「摂動ベクトル探索のための正規化係数」の値および送信信号に対する「重み付け係数の算出のための正規化係数」の値を設定する。ここで、「送信条件のパラメータ」は、たとえば、送信信号に対するコンスタレ−ション上の変調方式を含む。「コンスタレ−ション上の変調方式」とは、たとえば、QPSK(quadrature phase shift keying)、16QAM(quadrature amplitude modulation)、64QAMのような変調方式のことをいう。また、「送信条件のパラメータ」は、基地局のアンテナ本数やチャネルモデルなどを含んでもよい。
重み付け処理部40−1は、変調部30−1からの信号に対して、プリコーディング行列中の係数を乗算して、アンテナ100−1〜100−NTからそれぞれ送信するための信号を生成する乗算器42−11−42−NT1を含む。重み付け処理部40−1は、変調部30−1に対応するのと同様の構成を、変調部30−2〜30−NSに対応しても含んでいる。たとえば、重み付け処理部40−1は、変調部30−NSからの信号に対しては、プリコーディング行列中の係数を乗算して、アンテナ100−1〜100−NTからそれぞれ送信するための信号を生成する乗算器42−1NS−42−NTNSを含む。さらに、重み付け処理部40−1は、アンテナ100−1に対応する乗算器42−11〜42−1NSからの信号を統合して、アンテナ100−1向けの信号を生成する加算器44−1を含む。他のアンテナ100−2〜100−NTに対応しても、同様な加算器44−2(図示せず)〜44−NTを含んでいる。ここで、変調部30−1〜30−NSからの信号について重み付け処理を実行する他の重み付け処理部40−2〜40−Ncについても、重み付け処理部40−1と同様な構成を有する。
無線送信装置1000は、さらに、重み付け処理部40−1〜40−Ncの出力をそれぞれ受けて、無線送信する信号に変換するアップコンバータ60−1〜60−NTを含む。
アップコンバータ60−1は、重み付け処理部40−1〜40−Ncの出力を受けて、逆フーリエ変換するための逆フーリエ変換部62と、デジタルアナログ変換するためのDA変換部64と、DA変換部64の信号を局部発信部70からの信号に基づいて周波数変換するための周波数変換部66と、周波数変換部66の出力を増幅して、アンテナ100−1に供給するための電力増幅部68とを含む。他のアップコンバータ60−2〜60−NTも同様の構成を有する。
図3は、実施の形態の無線通信システムにおける端末装置1100の構成を示すブロック図である。
図3を参照して、端末装置1100は、アンテナ200−1と200−2とを含む。そして、無線通信システムとしては、図2の無線送信装置1000の例示的構成に対応して、4つの端末を含んで、(送信アンテナの総本数)=(端末1台当たりのアンテナ数)×(端末数)の関係が成り立っているものとして、以下、説明をする。ただし、受信側の端末装置のアンテナ数は、このような構成に限定されるものではなく、たとえば、1本でもよい。
端末装置1100は、アンテナ200−1および200−2からの受信信号をダウンコンバートするためのダウンコンバータ220−1および220−2を含む。ダウンコンバータ220−1は、アンテナ200−1からの受信信号を増幅するための低雑音増幅部232と、低雑音増幅部222の出力に対して、局部発信部230からの局部発信信号により周波数変換を行うための周波数変換部224と、周波数変換部224の出力に対して、アナログデジタル変換を実行するためのAD変換部226と、OFDM復調するためのフーリエ変換部228とを含む。ダウンコンバータ220−2についても、同様の構成を有する。
端末装置1100は、さらに、ダウンコンバータ220−1と220−2とからの信号を受けて、制御部250からの制御の下に、重み付け処理を実行するための重み付け処理部240を含む。重み付け処理部240は、制御部250からの重み付け係数をそれぞれ乗算するための乗算器242−1および242−2と、乗算器242−1および242−2からの信号を加算して合成し、端末装置1100に対応するチャネルからの受信信号を選択的に分離するための加算器244とを含む。
なお、端末装置1100側では、送信側でプリコーディング処理として上述したような非線形プリコーディングを実施する場合には、ダウンコンバータ220−1および220−2の出力に対して、モジュロ演算処理が実行される。このようなモジュロ演算処理についても、制御部250の制御の下に実行されることになる。また、このようなモジュロ演算とともに、干渉キャンセルのための符号化技術としてDPC(Dirty Paper Coding)が用いられている場合は、これに対する復号処理も実行される。
重み付け処理部240の出力は、復調部270により、復調処理が実行された後に、パラレルシリアル変換部272において、パラレルシリアル変換されて、復号器280において、誤り訂正がされ、ノード300から受信信号として出力される。
制御部250における重み付け係数の演算処理には、チャネル応答推定部260における端末装置1100についてのチャネル応答行列(伝送路行列)の推定結果が使用される。なお、このようなチャネル応答行列の推定処理は、上述した先行技術において開示されているのと同様の処理を使用することが可能である。
また、チャネル応答推定部260において推定された端末装置1100についてのチャネル応答行列は、チャネル状態情報送信処理部262により、アンテナ200−1、200−2から、無線送信装置1000に対して、たとえば、サブキャリアごと(またはサブバンドごと)に、フィードバック情報として送信される。
なお、サブキャリアについてのチャネル推定のためには、たとえば、送信側と受信側とで既知のサブキャリアで、既知のパイロット信号(参照信号)が送信される。受信機側では、このパイロット信号の送信されるサブキャリアについて、チャネル推定を行う。このようにして推定されたチャネルの情報が、CSI情報として送信機側にフィードバックされる。
なお、以下の説明では、特に限定されないが、LTEにおけるOFDM変調方式のMU−MIMOを例にとって考察することにする。
図4は、このようなLTEにおけるOFDMシンボルの逆フーリエ変換の手順を示す概念図である。
図4に示すように、各フレーム内のOFDMシンボルは、信号伝送用サブキャリアの個数だけのサンプルを含む。図4の各サンプルは、たとえば、BPSK変調、QPSK変調、QAM変調等をされた信号である。
図4の例においては、複数のストリームにそれぞれ対応する複数フレームについてのサンプル[X1 1,X2 1,X3 1,X4 1]が、1番目のサブキャリアに対応する。他のサブキャリアについても同様である。
上述したサブキャリアごとのチャネル応答マトリックスHk(1≦k≦Nc)とは、1つのサブキャリアごとに送信側のアンテナから受信側のアンテナへの伝送路を想定した場合のチャネル応答マトリックスに相当する。Ncは、信号伝送用サブキャリアの個数である。
一方で、LTEにおいては、OFDMの全サブキャリアの個数NFFT(FFTサイズ:(ガードバンド+信号伝送用+DC)のすべてのサブキャリアを含む)は、1024個または2048個である。
[摂動ベクトル探索のための正規化係数および送信信号に対する重み付け係数の算出のための正規化係数]
上述した非特許文献4では、各ストリームのSINR値を最大限にするために最適な正規化係数αを見つけることが送信データと受信データの平均二乗誤差(MSE)を最小化する最適の摂動ベクトルを見つけることと等価なことを示している。しかし、この方法は最適な摂動ベクトルの探索のために変形されたプリコーディング・マトリックスを要求する。
このことは、SINRに基づいて最適化された正規化係数αを有するプリコーディング・マトリックスをそのまま用いると、送信された摂動ベクトルの付加された信号と受信された摂動ベクトルの付加された信号との間の平均二乗誤差MSEが、最小化されない可能性があることを意味している。
そのような場合、受信側のモジュロ演算は、各ストリームのSINR値が最大にされるにも関わらず、ビットエラーレート(BER)のパフォーマンスを劣化させることになってしまう。
本実施の形態の基地局1000では、摂動ベクトル探索のためのプリコーディング・マトリックスにおける正規化係数と、送信信号に対する重み付け係数の算出のためのプリコーディング・マトリックスにおける正規化係数とに対して異なる値を使用して、MMSE−VPの性能を改善する。
すなわち、本実施の形態の基地局1000では、まず、摂動ベクトル探索のためのMMSE規範のプリコーディング・マトリックスに対して、SINRを最大化することを目的関数として、数値シミュレーションによって、異なる変調方式に対して、各ストリームのSINR値を最大にするために最適な正規化係数α1を見つける。
次に、送信信号に対する重み付け係数の算出のためのMMSE規範のプリコーディング・マトリックスに対して、送信された摂動ベクトルの付加された信号と受信された摂動ベクトルの付加された信号との間の平均二乗誤差(MSE)を最小化するために、さらに、最適な正規化係数α2を見つける。
以下で使用する表記において、(・)*,(・)T,(・)Hは、それぞれ、共役複素行列、転置行列、共役複素転置行列をそれぞれ示す。E{・}およびTr{・}は、それぞれ、期待値およびトレース演算を示す。また、マトリックスを表示するために、必要に応じて、それらのサイズを強調するサブスクリプトと共に、記号を使用する。
(MMSEベクトルパータベーション法およびQRDMエンコーディング法)
以下では、一部従来技術で説明した内容とも重複するが、本実施の形態の基地局1000での処理について説明する前提として、まず、MMSEベクトルパータベーション(MMSE−VP)法およびQRDMエンコーディング法の一般論について説明する。
MU−MIMOシステムの一般的なモデルは、Nt本の送信アンテナを備えた基地局(BS)および各々Nr本の受信アンテナを有するK個の端末(ユーザー)を含んでいる。
ここでも、Nt=K×Nrを仮定する。
対応するベクトル方程式は以下のようになる:
Nt×Ntの行列Hは、MIMOチャネルのチャネル応答行列であって、複素要素から構成される。uは送信ベクトルであり、nは雑音ベクトルである。INtは、Nt×Ntの単位行列である。E{|u|2}=1は送信側の電力の制限である。
「MMSEプリコーディング・マトリックス」とは、MMSE規範に基づくMMSE空間フィルターである。
基地局1000が、完全なチャネル状態情報CSIによりマトリックスHの情報を有していると仮定すると、MMSEプリコーディング・マトリックスは以下のようになる:
ここでσ2は、ダウンリンクの受信アンテナの信号対雑音比(SNR)値であって、たとえば、適切なタイミングで、端末側から基地局側に通知される。
正規化係数αは送信されたシンボルと受信シンボルの間の平均二乗誤差(MSE)を最小化するために使用される。
基地局1000では、以下のように送信シンボルsを設定する:
送信シンボルsを以下のように正規化した後、シンボルuはすべてのユーザーにMU−MIMOチャネルHで送信される。
しかしながら、行列Hが高い相関が存在するチャネル応答行列ならば、正規化パラメーターγは大きく増加することになり、その結果、データxが失われることになる。
そのような状況を緩和するために、送信シンボルxに、摂動ベクトルを付加し、正規化パラメーターγを縮小する。
そのために、以下のように摂動後の送信シンボルを設定する:
ここで、τは正の実数であり、コンステレーションの格子サイズにより決定される。また、lは、Nt次元の複素数の摂動ベクトル(a+ib)であり、aおよびbは整数を要素とする。
送信電力γは、以下のように算出される:
VP法の設計の核心は、送信電力γを最小化する最適の摂動ベクトルlを選択することである。すなわち、以下のような問題に相当する:
基地局1000が、摂動ベクトルの探索の際の正規化係数αを用いた同一のプリコーディング・マトリックスWを、ストリーム間の干渉を打ち消すための送信の重み係数を表すプリコーディングにも使用する場合、式(5)による摂動ベクトルの探索の後に、送信される信号は、以下のようになる:
この場合、MMSE−VP法の目的は、本質的には、最小の正規化された送信電力とすることで、受信側でのSNRの値を改善させることである。
シンボルuはすべてのユーザーにMU−MIMOチャネルHで送信される。
受信信号は以下のように表される:
i番目のストリームに対する、τに乗算された整数の影響を除くために、受信側は以下のようなモジュロ関数を使用する:
なお、下の式で表される演算は、負方向の整数に丸め込む処理を表す。
受信側では、このモジュロ演算により、自身への信号を復調することができる。
式(5)で表される摂動ベクトルの探索は、以下の文献1に記載されるいわゆる「スフィアデコーダ」を使用して解くことができるNt次元の整数格子の最小自乗問題である。
文献1:B. Hassibi and H. Vikalo, ”On sphere decoding algorithm. I. expected complexity,” IEEE Trans. on Signal Processing, vol. 53, no. 8, pp. 2806-2818, Aug. 2005.
しかしながら、一般に、スフィアデコーダの計算負荷は大きいために、効率的なスフィアデコーダ・アルゴリズムは、計算負荷および摂動ベクトルの多様性の程度のトレードオフを図ることのできるQR分解M−アルゴリズムエンコーダ(QRDM−E)を使用することで実現される。
このような「QR分解M−アルゴリズムエンコーダ(QRDM−E)」については、以下の文献2に開示がある。
文献2:Manar Mohaisen, Bing Hui, KyungHi Chang, Seunghwan Ji, and Jinsoup Joung, ”Fixed-complexity vector perturbation with block diagonalization for MU−MIMO systems,”Proc. 2009 IEEE MICC, pp.238-243,15-17, Dec.2009
QRDM−Eの概略を説明すると、摂動ベクトルlの整数値aおよびbを、対称な整数の組Aに制限する。ここで、A={−T,−T+1,…,−1,0,1,…,T−1,T}である。このような組Aを採用することで、より小さな値Tに範囲が制限され、探索の複雑さが縮小される。
他方では、QRDM−Eは、式(5)中のマトリックスWをユニタリー行列Qおよび上三角行列Rの積に分解するので、式(5)中の探索問題は、以下の式(9)のように単純化される。
式(9)を実行する各反復過程に対して、最も累積的でないメトリクスがある最良のM個のブランチが、各エンコードレベルにおいて、次のレベルに対して選択される。
(2重の正規化係数を備えたMMSE−VP法のアルゴリズム)
以下では、本実施の形態の2重の正規化係数を備えた提案MMSE−VP法のアルゴリズムについて説明する。
(1)各ストリームのSINRの最適化用の正規化係数α
上述したように、基地局1000が、摂動ベクトルの探索する際と、ストリーム間の干渉をプリキャンセルする際に、正規化係数αを有する同一のプリコーディング・マトリックスWを使用する場合、VP法のアルゴリズムの目的は、各ストリームの信号対雑音比(SNR)の値を改善する最小の正規化された送信電力を得るための最適化ということになる。
一方で、MMSE規範のプリコーディング・マトリックスの正規化係数αは、ストリームの信号対干渉雑音比(SINR)の値を最大化するために、ストリームの干渉およびノイズパワーのバランスを得るために最適化することができる。
信号対干渉雑音比(SINR)を最大化するのに最適なαを得るために、式(7)によれば、受信信号は以下のように書くことができる:
k番目のストリームの受信信号は、以下のようになる:
ここで、<C>kとの表記は、マトリックスCのk番目の行を表わす。
<F(x+τl)>kがxkとlkとに潜在的に関連していることは明らかである。
この相関は、以下のようにモデル化することができる:
ここでvkは、同一チャネル間干渉(CCI:co-channel interference)、すなわち、他のストリームの同一チャネルでの干渉であってxkとlkとは、相関していない。
また、βkとδkは、<F(x+τl)>kにおけるxkとlkとの相関係数を表わす。
より詳しく説明すると、行列Fを以下のように要素で表現すると、F(x+τl)およびvkは、以下の式のように表される。
上述した非特許文献2(C. Yuen, B. M. Hochwald, ”How to gain 1.5 dB in vector precoding,”in Proc. 2009 IEEE Globecom ’06, Nov. 2006.)の中で示されるように、k番目のストリームのSINRの値であるSINRkは、以下のように表される:
正規化係数αは、γの値、相関係数βkおよびvkの分散をコントロールする。
正規化係数αを増加させることは、一般に、潜在的にγを減少させ、それにより、潜在的にSINRkを増加させるものの、正規化係数αの増加は、vkの分散を増加させて、SINRkを減少させる。
したがって、MMSE−VP法のパフォーマンスへの全体的な影響は、解析的に決定するのが難しい。
したがって、正規化係数αの最適値は、非特許文献2の中で指摘されるような数値計算によって、一般に決定される。
(2)送信された摂動ベクトルが付加された信号と受信された摂動ベクトルの付加された信号との間の平均二乗誤差MSEの最適化を行うための正規化係数α
摂動ベクトル探索の後、送信データxは、以下のように摂動ベクトルが付加される:
なお、τlは、式(5)の中で示されるように、最も小さな送信電力γを得ることができるように設定される。
ここで、摂動ベクトルの探索のためのプリコーディング・マトリックスとは異なるプリコーディング・マトリックスPを、送信シンボルへの重み係数を与える行列として仮定すると、受信シンボルxr(ハット)は、以下のように表される:
送信シンボルのベクトルx(ハット)と受信シンボルのベクトルxr(ハット)との間の平均二乗誤差を最小化するためにプリコーディング・マトリックスPを設計すると、以下のように、目的関数を表すことができる:
式(15)の解は、以下のように表される;
式(16)に示される解は、数値計算によって得られたSINR値を最大にするための前節で述べた最適な正規化係数αが、正規化係数ξσ2と同一の場合は、すなわち、α=Ntの場合は、送信シンボルx(ハット)と受信シンボルxr(ハット)との間の平均二乗誤差を最小化するということを示している。
しかしながら、以下にも説明するように、SINR値を最大限にするための最適なαは、Ntより一般に小さく、両方の最適化の目標を同時には、達成できない。
(3)2重の正規化係数を用いる非線形プリコーディング方法
本実施の形態においては、摂動ベクトルの探索と送信シンボルに対する重み係数の算出とは、以下のような処理により実現される。
i)まず、MMSE規範型のプリコーディング・マトリックスにおいて、よりよいビットエラーレート(BER)の性能を達成するのに有効な正規化係数αを見つける数値計算を予め実行しておく。この正規化係数αを、第1の正規化係数α1と呼び、異なる送信条件のパラメータごとに算出する。
つまり、このとき、送信信号uは、以下の式で表されることを前提として、第1の正規化係数α1の最適値を、異なる送信条件のパラメータごとに算出する。
これは、送信条件のパラメータごとに、各ストリームについて、数値計算により、信号対干渉・雑音比(SINR)を最大とする第1の正規化係数α1の値を求めることに相当する。
ここで、上記のようにして、送信シンボルx(ハット)に乗算することで信号sを生成するためのプリコーディング・マトリックスの形式を、正規化係数をパラメータとみなしたときに、「MMSE規範型のプリコーディング・マトリックス」と呼ぶことにする。たとえば、第1の正規化係数α1が0のときは、このMMSE規範型のプリコーディング・マトリックスは、ゼロ・フォーシング法のプリコーディングマトリックスに一致する。
また、「送信条件のパラメータ」は、上述したように、たとえば、送信信号に対するコンスタレ−ション上の変調方式を含む。また、「送信条件のパラメータ」は、基地局のアンテナ本数やチャネルモデルなどを含んでもよい。
図5は、このように送信条件のパラメータごとに算出した正規化係数の一覧のテーブルを示す図である。
ii)摂動ベクトル探索については、現実に送信を実行する送信条件のパラメータに応じた第1の正規化係数α1を有するMMSE規範型のプリコーディング・マトリックスを使用し、以下のようにして、送信電力γを最小化する最適の摂動ベクトルを探索する。
このとき、摂動ベクトルの探索には、上述したQRDM−Eアルゴリズムを使用することができる。
iii)送信信号に対する重み係数のプリコーディング・マトリックスWは、平均二乗誤差を最適化するために以下のように設定される:
すなわち、送信信号に対する重み係数のプリコーディング・マトリックスWは、上述したMMSE規範型のプリコーディング・マトリックスにおいて、正規化係数を第2の正規化係数α2(=Nt)としたものに相当する。
このようなMMSE空間フィルタ(送信信号に対する重み係数のプリコーディング・マトリックスW)は、送信された「摂動ベクトルが付加された信号」と受信された「摂動ベクトルの付加された信号」との間の各ストリームについての平均二乗誤差(MSE)を最小化することに相当する。
したがって、最適な摂動ベクトルを算出した後に、基地局1000は、送信シンボルを以下のように設定する:
図6は、本実施の形態の2重の正規化係数を用いるビームフォーミング法を説明するためのフローチャートである。
図6では、基地局1000が送信側で、移動端末1100が受信側である。
図6を参照して、送信側の基地局1000の制御部50では、受信側からフィードバックされたチャネル状態情報に基づいて、使用される送信条件のパラメータに応じて、第1の正規化係数α1を有するMMSE規範型のプリコーディング・マトリックスが算出され(S100)、このプリコーディング・マトリックスに基づいて、加算される摂動ベクトルの探索処理が実行される(S102)。
さらに、重み係数に対応する第2の正規化係数α2を有するMMSE規範型のプリコーディング・マトリックスが算出され、摂動ベクトルが加算された信号に対して乗算されて、アンテナ100−1〜100−Ntから送信される(S104)。
受信側の移動端末1100では、OFDM復調後の信号から抽出された参照信号により伝搬路の推定が行われ、送信側にフィードバックされるチャネル状態情報が生成される(S110)。
さらに、受信側の移動端末1100では、参照信号により、モジュロ幅の推定処理が実行される(S112)。
続いて、受信側の移動端末1100では、OFDM復調後の信号に対してモジュロ演算が実行され(S114)、さらに、復調部270における復調処理およびデスクランブル処理等が実行されて(S116)、復号器280において、誤り検出・誤り訂正などの処理が実行される(S116)。
一方で、受信側の移動端末1100では、推定されたチャネル状態情報を送信側の基地局1000に対してフィードバックする(S118)。
なお、送信側にフィードバックされる情報は、上述したようなサブキャリアごとのチャネル状態情報そのものでもよいし、サブバンドごとのチャネル状態情報であってもよいし、あるいは、チャネル状態情報に応じて、端末側で適切であるとして選択された重み行列を特定するための情報であってもよい。
[シミュレーション結果]
平坦フェージングおよび相関のある周波数選択フェージングのMIMOチャネルにおける提案された方法のシミュレーションによる性能評価について、以下説明する。
(1)数値計算による正規化係数α1の算出
まず、前提として、正規化係数α1の最適値を見つけるために、数値計算を利用した結果について説明する。
ここでは、数値計算として、モンテカルロシミュレーションを行った。
図7は、QPSK変調のシミュレートされたBERの結果を示す。
図8は、16QAM変調のシミュレートされたBERの結果を示す。
図9は、64QAM変調のシミュレートされたBERの結果を示す。
図7〜図9では、基地局側の送信アンテナ数Nt=8であり、移動端末側のアンテナ数Nr=2であって、移動端末数(ユーザ数)は4であるとしている。
また、この数値計算においては、i.i.d. MIMOチャネルの上で、正規化係数α1の異なる値を用いるVP法のアルゴリズムのビットエラーレート(BER)の性能をシミュレートする。
ここで、i.i.d.チャネル(independent identically distributed channel)とは、送信アンテナ素子間の伝搬路特性が統計的に同一でかつ無相関のチャネルのことをいう。
基地局側では、完全なチャネル状態情報を取得しているものとし、摂動ベクトルの探索アルゴリズムとしては、QRDM−Eアルゴリズムを使用する。
QRDM−Eアルゴリズムのパラメータ(探索範囲Tと選択するブランチ数M)は、(T,M)=(3,7)を仮定する。
シミュレーションの結果によれば、(8×8)i.i.dチャネル上のMMSE−VPアルゴリズムのための正規化係数α1の最適値しては、QPSK変調、16QAM変調、64QAM変調に対して、それぞれ、1,2、および4となった。
(2)平坦フェージングMIMOチャネル上での2重の正規化係数を用いる非線形プリコーディング方法の性能評価
図10および図11は、i.i.d.MIMOチャネルの上の異なる変調方式に対して、2重の正規化係数を用いる非線形プリコーディング方法をシミュレートした結果を示す図である。
ここでも、QRDM−EアルゴリズムのためにNt=8および(T,M)=(3,7)を仮定する。
第2の正規化係数α2の値の変化の影響をみるために、ビットエラーレート(BER)のパフォーマンスを比較する。
ここで、図の中のオリジナルの方法(図中でoriginal method)とは、第1の正規化係数と第2の正規化係数の値を等しくしたMMSE−VPアルゴリズムを指す。そして、これらは、各変調方式に対して、図7〜図9において、最も良好な特性を示した値としている。
シミュレーション結果によれば、第2の正規化係数α2の値を送信アンテナ数Ntと等しくした場合(α2=8の場合、すなわち、α2=Ntの場合)には、本実施の形態の2重の正規化係数を用いる非線形プリコーディング方法は、すべての変調方式について、オリジナルの方法よりも、BER特性を改善している。特に、QPSK変調に対するMMSE−VPのパフォーマンスの改善が大きい。
(3)相関周波数選択フェージングMIMOチャネル上の重の正規化係数を用いる非線形プリコーディング方法の性能評価
図12は、シミュレーション仕様を示す図である。
本実施の形態の2重の正規化係数を用いる非線形プリコーディング方法およびオリジナルの方法を比較するために1つの屋内の相関チャネル・モデルを選ぶ。
チャネル・モデルは、Winner II A1 LOSである。
平均遅延時間の分散は、40nsである。また、平均AoA(到来角)/AoD(発射角)は44/45[度]である。また、平均K-ファクタは約5−6dBである。
また、基地局は、サブキャリアごとに、完全なCSI情報のフィードバックを受けていると仮定している。
図13は、ストリーム当たりのSNRと本実施の形態の2重の正規化係数を用いる非線形プリコーディング方法でのスペクトラム効率の関係のシミュレーション結果を示す図である。
第1の正規化係数α1と第2の正規化係数α2の値は、i.i.d. MIMOチャネルの図10および図11に示したシミュレーションに基づいて設定する。
本実施の形態の2重の正規化係数を用いる非線形プリコーディング方法により、全ての変調方式において、スペクトラム効率が向上することが確認された。特に、QPSK変調のためのMMSE−VPのスペクトル効率の増加が、他の変調方式よりも顕著である。
以上説明したように、本実施の形態の2重の正規化係数を用いる非線形プリコーディング方法を用いる無線通信方法、無線通信システムおよび無線通信装置によれば、MIMO通信方式において、良好な信号対干渉・雑音比ならびにストリーム間の干渉の抑制を実現することが可能である。その結果、スペクトラム効率も向上させることができる。
今回開示された実施の形態は、本発明を具体的に実施するための構成の例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲および均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。