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JP6081156B2 - ハイドロゲル - Google Patents
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Description

本発明は、ハイドロゲルに関する。より詳しくは、抗菌機能を有し、皮膚や創傷に用いるハイドロゲルに関する。
ハイドロゲルは、水に対して親和性が高く水分をよく吸収し、生体への順応性及び密着性に優れ、さらに冷感を付与し得る材料として知られている。
このような特性から、ハイドロゲルは、医療、化粧品及びヘルスケア等の生体への利用が広く検討されている。特に、医療における創傷被覆材への展開には、その多くの特性を効果的に活かすことができる。ハイドロゲルは、創傷への密着性が良好で、創傷からの滲出液を速やかに吸収・保持し、創傷を湿潤環境に保つことで創傷治癒を促進し、さらに冷感付与により疼痛を緩和することができる。また、ハイドロゲルは、その透明性から創傷の観察性に優れ、その柔軟性・順応性により貼付時は違和感なく、剥離時は新生組織を損傷せず、剥離刺激も軽減することができる。
近年の生活習慣病の増加や高齢化により、糖尿病性、静脈性、又は動脈性の下腿潰瘍や、褥瘡等の非常に治り難い創傷が増加しており、治療に苦慮している。このような慢性創傷をもった患者は、栄養状態や血行状態が悪いことが多く、皮膚組織も脆弱なため、浸出液による皮膚障害や細菌による感染リスクが非常に高い。そして、いったん皮膚障害や創感染が発生してしまうと、状態が一気に悪化して治癒が遅延し、下腿潰瘍の場合は、下肢を切断せざるを得ない場合もある。このような慢性創傷に対して、ハイドロゲルの特性を活かした創傷被覆材による創傷管理は有効である。
例えば、特許文献1には、創傷被覆材として利用され得るポリビニルアルコール(PVA)ハイドロゲルの製造方法に関して「ポリビニルアルコール水溶液から製造されるプレハイドロゲルに放射線を照射しPVAハイドロゲルを製造する方法」が記載されている。
特許文献2には、「水溶性高分子、糖類、および水からなるハイドロゲルを利用した創傷被覆材」が提案されている。そして、この特許文献2には、糖類として殺菌作用のある銀を含んだ糖酸の金属塩が例示されている。
特開平9−263671号公報 特開平10−28726号公報
このように、ハイドロゲルは、生体へ好適に利用できるように種々の検討が行われ、創傷被覆材等の利用においては、抗菌剤を含有させ、感染を予防できるようにしたものも検討されている。しかし、ハイドロゲルに含有させた抗菌剤は、感染の起因菌のみならず、治癒過程の正常な細胞にも作用してしまい、慢性創傷のような治り難い創傷に対しては、かえって治癒を遅延させてしまうおそれもあった。
そこで本発明は、持続的な抗菌作用をもち、かつ正常組織への刺激が少なく、生体適合性の高いハイドロゲルを提供することを主目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために、ハイドロゲル構造、抗菌剤の種類、及びハイドロゲル中の抗菌剤の挙動を鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、親水性高分子と、水と、第四級アンモニウム塩系化合物とを含み、放射線照射により架橋されたハイドロゲルを提供する。
このハイドロゲルにおいて、前記第四級アンモニウム塩系化合物は、セチルピリジニウム塩であることが好ましい。
本発明のハイドロゲルは、親水性高分子としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上を7〜40質量%と、水59〜92質量%と、第四級アンモニウム塩系化合物として塩化セチルピリジニウム0.03〜1質量%と、を含むことが好ましい。
また、親水性高分子として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムの3つを添加する場合は、ポリビニルアルコール:ポリビニルピロリドン:カルボキシメチルセルロース・ナトリウムのそれぞれの含有質量比が、97〜50:2〜49:0.2〜20であることが好ましい。このようにセチルピリジニウム塩が特定の親水性高分子を含んだハイドロゲルに含有させることで、持続的な抗菌作用をもち、かつ正常組織への刺激が少ないハイドロゲルが得られる。
また、本発明は、親水性高分子と、水と、第四級アンモニウム塩とを含み、IC50値が20%以上であるハイドロゲルをも提供する。
本発明によれば、持続的な抗菌作用をもち、かつ正常組織への刺激が少なく、生体適合性の高いハイドロゲルを提供することができる。
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
本発明に係るハイドロゲルは、少なくとも親水性高分子、水、及び第四級アンモニウム塩系化合物を含み、放射線照射により架橋されたものである。
本発明に係るハイドロゲルを構成するために用いられる親水性高分子は、放射線の照射により架橋し、ゲルを形成することができるものが少なくとも1種以上含まれていればよく、特に限定されない。
放射線の照射により架橋する親水性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリアクリロイルモルホリン、水溶性ポリビニルアセタール、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ゼラチン、及びカゼイン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。これら親水性高分子の誘導体としては、各種のモノマーが共重合やグラフト重合された誘導体や、樹脂が有している水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基を例えばエーテル化、エステル化、アミド化、アセタール化して得られる誘導体、及び架橋剤により部分的に架橋された誘導体などを例示することができる。特に、放射線の照射により架橋する親水性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムがより好ましい。
また、浸出液の吸水性や生体への密着性等を向上させるために、上記親水性高分子以外の親水性高分子を添加してもよく、例えば、次に示す合成、半合成、又は天然の各種親水性高分子を用いることができる。
合成親水性高分子としては、特に限定されないが、例えば、ビニル系高分子(例えば、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー等)、アクリル系高分子(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等)、ポリエチレンイミン、及びポリエチレンオキシド等を用いることができる。
半合成親水性高分子としては、特に限定されないが、例えば、デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、並びにメチルヒドロキシプロピルデンプン等)、セルロース系高分子(例えば、エチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム等)、及びアルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、並びにアルギン酸プロピレングリコールエステル等)等を用いることができる。
天然親水性高分子化合物としては、特に限定されないが、例えば、植物系高分子、微生物系高分子、及び動物系高分子等を用いることができる。
上記植物系高分子の具体例としては、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、及びデンプン(例えば、コメ、トウモロコシ、バレイショ、並びにコムギのデンプン)等が挙げられる。
上記微生物系高分子の具体例としては、キサンタンガム、デキストリン、デキストラン、サクシノグルカン、及びプルラン等が挙げられる。
上記動物系高分子の具体例としては、アルブミン等が挙げられる。
上記各親水性高分子は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよく、また、2種以上の骨格を有する共重合体でも、2種以上を含む混合物を用いてもよい。
上記の各親水性高分子のうち、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記することがある。)、ポリビニルピロリドン(以下、「PVP」と略記することがある。)、及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウム(以下、「CMC・Na」と略記することがある。)からなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。また、これらの親水性高分子のうち、PVA及び/又はPVPを用いることが好ましく、PVA、PVP及びCMC・Naの組み合わせを用いることがさらに好ましい。これらの親水性高分子を用いることで、放射線の照射により相互に架橋し、水分吸収性と水の保持性に優れたハイドロゲルを形成し易くすることができる。また、後述する第四級アンモニウム塩系化合物(ひいては、塩化セチルピリジニウム等のセチルピリジニウム塩)との親和性に優れたハイドロゲルを得ることができる。
上記親水性高分子としてPVAを用いる場合、JIS K6726に準じて測定されるPVAの重合度は、特に限定されないが、例えば300〜5000が好適であり、1000〜4000がより好適である。また、JIS K6726に準じて測定されるPVAのけん化度(PVAのビニルアルコール単位のモル%)は、特に限定されないが、例えば60〜100が好適であり、80〜100がより好適である。
PVAの重合度及びけん化度が上記範囲にあることにより、水分吸収性がよく、水を保持し易いハイドロゲルを形成し易くすることができる。
ハイドロゲル中の上記親水性高分子の含有量は、特に限定されないが、ハイドロゲルの原料全質量中、5〜60質量%であることが好ましく、7〜40質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。
親水性高分子の含有量が上記範囲内にあることにより、凝集力が高く、水分の吸収性が良好なハイドロゲルを形成し易くすることができる。
本発明に係るハイドロゲルが、親水性高分子として、PVA及びPVPを含む場合、ハイドロゲルの原料全質量中、PVA:PVPの含有質量比は、好ましくは97〜50:3〜50であり、より好ましくは95〜80:5〜20である。
また、本発明に係るハイドロゲルが、親水性高分子として、PVA、PVP及びCMC・Naを含む場合、ハイドロゲルの原料全質量中、PVA:PVP:CMC・Naの含有質量比は、好ましくは97〜50:2〜49:0.2〜20であり、より好ましくは95〜80:4〜19:0.5〜10である。
上記親水性高分子の相互架橋を引き起こす放射線としては、特に限定されないが、α線、β線、γ線、X線、電子線、可視光線、紫外線、及び赤外線等が挙げられる。これらの放射線のうち、γ線、X線、電子線、可視光線、及び紫外線のうち少なくとも何れかであることが好ましく、線量のコントロールの容易さや滅菌処理も同時に行え、生産性が良いことからγ線又は電子線がより好ましい。
本発明のハイドロゲルに用いられる親水性高分子は、上記放射線の照射により相互に架橋することから、別途架橋剤を用いなくても、ゲルを形成することができる。そのため、架橋剤を含有しないハイドロゲルとすることで、安全性を高めることができる。
ハイドロゲルを形成する際の上記放射線の照射量は、架橋反応が生じれば特に限定されるものではない。
例えば、γ線、X線及び電子線等を照射させて架橋反応を生じさせる場合には、ハイドロゲルを形成する前の組成物(以下、「ハイドロゲル用組成物」ともいう。)に照射される積算照射量は、通常は0.1〜1000kGyの範囲が可能であり、好ましくは1〜100kGyである。積算照射量を上記範囲とすることで、適度な凝集力(ゲル強度)と水分吸収性を持つ程度に架橋反応を制御することができる。
そのため、放射線の積算照射量は、凝集力及び水分吸収性が良好なハイドロゲルを形成できるよう、親水性高分子等の用いられる原料種類に応じ、適宜設定するのが好ましい。
本発明に係るハイドロゲルは、相互に架橋された親水性高分子の網目構造により、水を内包する。上記ハイドロゲル中の水の含有量は、特に限定されないが、40〜95質量%であることが好ましく、59〜92質量%であることがより好ましく、69〜89質量%であることがさらに好ましい。
本発明に係るハイドロゲルに含まれる第四級アンモニウム塩系化合物は、ハイドロゲルに抗菌機能を付与する。
本発明において、「第四級アンモニウム塩系化合物」とは、「窒素原子に4個のアルキル基又はアリール基が結合した第四級アンモニウム塩」(以下、単に「第四級アンモニウム塩」ということがある。)と、「ピリジニウム塩系化合物」とを含み得るものをいう。
上記「第四級アンモニウム塩系化合物」における第四級アンモニウム型のカチオンとイオン結合するアニオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、及びヨウ化物イオン等が挙げられ、塩化物イオン及び臭化物イオンであることが好ましい。
上記「第四級アンモニウム塩」の具体例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(臭化セトリモニウム)、臭化テトラエチルアンモニウム、及び塩化ジデシルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
上記「ピリジニウム塩系化合物」の具体例としては、塩化セチルピリジニウム及び臭化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩等が挙げられる。
上記第四級アンモニウム塩系化合物(第四級アンモニウム塩及びピリジニウム塩系化合物)は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよく、2種以上を含む混合物を用いてもよい。
上記「第四級アンモニウム塩系化合物」としては、上記「ピリジニウム塩系化合物」を用いることが好ましく、上記「ピリジニウム塩系化合物」のうち、セチルピリジニウム塩を用いることがより好ましく、塩化セチルピリジニウムを用いることがさらに好ましい。
ハイドロゲルが、塩化セチルピリジニウム等のセチルピリジニウム塩を含有することにより、ハイドロゲルに優れた抗菌性を付与することができ、かつ、セチルピリジニウム塩をハイドロゲルから溶出(徐放)し難くすることができる。そのため、ハイドロゲル中にセチルピリジニウム塩を保持し易く、抗菌性を維持し易いハイドロゲルを得ることができる。
セチルピリジニウム塩等のアルキルピリジニウム塩がハイドロゲルから溶出(徐放)し難い要因の一つとして、アルキルピリジニウム塩のアルキル基(塩化セチルピリジニウムの場合はヘキサデシル(セチル)基)が、親水性高分子中の分子鎖と結合しているか、又は絡み合っていることが考えられ、その結果、アルキルピリジニウム塩がハイドロゲルから溶出(徐放)し難くなっていると考えられる。この推考から、上記親水性高分子として、PVA、PVP、及びCMC・Naからなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好適であると考えられる。
また、上記要因の一つとして、親水性高分子としてCMC・Na等の塩を含む場合、ハイドロゲル中又は水中でCMC・Naのナトリウムイオン(Na)が遊離すると共に塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩のアニオン(塩化セチルピリジニウムの場合は塩化物イオン;Cl)が遊離し、CMC・Na由来のアニオンと塩化セチルピリジニウム由来のカチオンがイオン結合することが考えられ、その結果、アルキルピリジニウム塩がハイドロゲルから溶出(徐放)し難くなっていると考えられる。この推考から、CMC・Na等のような塩を形成する親水性高分子を用いることが好ましいと考えられる。
上記「第四級アンモニウム塩系化合物」として、塩化セチルピリジニウム等のセチルピリジニウム塩を用いる場合、セチルピリジニウム塩のハイドロゲル全質量中の含有量は、0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%がより好ましく、0.05〜0.5質量%がさらに好ましい。塩化セチルピリジニウム等のセチルピリジニウム塩の含有量が上記範囲内にあることにより、ハイドロゲルの抗菌性を高めることができる。
本発明に係るハイドロゲルは、抗菌性を有しており、かつ添加した第四級アンモニウム塩系化合物の徐放性が低いことが好ましい。ハイドロゲルについて「抗菌性を有する」とは、例えば、後述する抗菌試験等の菌数を確認する試験において、ハイドロゲルにより、試験に用いる菌を減少させるか、又は増殖させないことをいう。
また、ハイドロゲルについて「徐放性が低い」ことは、例えば、後述する徐放性試験において、徐放率が低いこと、好ましくは徐放率が20%未満であることをいう。より好ましくは、ハイドロゲルの徐放率は10%未満である。ハイドロゲルの徐放率がこの範囲にあることで、ハイドロゲルを被覆した所定部位において、持続的な抗菌作用を発揮させることができるとともに、正常な組織や細胞への刺激や損傷を抑えることができる。
本発明に係るハイドロゲルの好ましい組成は、PVA、PVP、及びCMC・Naからなる群から選ばれる1種又は2種以上を7〜40質量%、水59〜92質量%、塩化セチルピリジニウム0.03〜1質量%を含有し、PVA:PVP:CMC・Naの含有質量比が97〜50:2〜49:0.2〜20のものである。本発明に係るハイドロゲルのより好ましい組成は、PVA、PVP、及びCMC・Naからなる群から選ばれる1種又は2種以上を10〜30質量%、水69〜89質量%、塩化セチルピリジニウム0.05〜0.5質量%を含有し、PVA:PVP:CMC・Naの含有質量比が95〜80:4〜19:0.5〜10のものである。
本発明に係るハイドロゲルは、JIS L1902に規定するハロー試験において、円形状に形成される生育阻止帯(ハロー)が幅3mm以下であることが好ましく、幅2mm以下であることがより好ましく、生育阻止帯が形成されないことがさらに好ましい。ハイドロゲル中の第四級アンモニウム塩系化合物の溶出(徐放)を制御することで、上記ハロー試験における生育阻止帯が形成されないか、形成されても3mm以下になると考えられ、持続的な抗菌作用や、新生細胞や組織への悪影響も低減できるものと考えられる
本発明のハイドロゲルは、後述する測定方法によるIC50値(50%阻害濃度)が20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。IC50値は、培養される所定細胞のコロニー数を50%阻害する試験液濃度であり、値が小さいほど生体への毒性が大きく、値が大きいほど毒性が小さく安全性の高いものと評価できる。
本発明のハイドロゲルは、前述の所定の親水性高分子及び第四級アンモニウム塩系化合物を用い、放射線照射により架橋反応を生じさせることで、IC50値が高く、生体への刺激や細胞への毒性が小さいハイドロゲルを実現できるものと考えられる。
なお、IC50値が20%以上、より好ましくは30%以上であるハイドロゲルであれば、上述した親水性高分子及び第四級アンモニウム塩系化合物を用いることができるが、親水性高分子は放射線照射により架橋反応を生じるものでなくてもよい。
なお、本発明に係るハイドロゲルは、必要に応じて、上記「第四級アンモニウム塩系化合物」以外の抗菌剤、防腐剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤、界面活性剤、架橋剤、可塑剤、粘着付与剤、粘度調整剤、着色剤、及び薬効成分等を含んでいてもよい。
本発明に係るハイドロゲルは、親水性高分子と、水と、第四級アンモニウム塩系化合物とを含む液状のハイドロゲル用組成物を調製する調製工程と、該ハイドロゲル用組成物を硬化させる成形工程と、を実行することにより製造することができる。
上記調製工程では、水に親水性高分子と第四級アンモニウム塩系化合物を混合して上記ハイドロゲル用組成物を得る混合工程が実行される。混合工程における各成分の質量割合は、例えば、上述した好ましい範囲にて混合することができる。
混合工程では、水への溶解性の観点から、まず、水に親水性高分子を添加し、溶解させた後に、第四級アンモニウム塩を添加することが好ましい。
また、混合工程では、上記ハイドロゲル用組成物に対して、必要に応じて、加熱や減圧等の条件下で攪拌を行ってもよい。
次に、混合工程を経たハイドロゲル用組成物に対して放射線を照射して、該ハイドロゲル用組成物を硬化させる成形工程を実行する。放射線の照射は、例えば、上述した放射線の種類及び照射線量にて行うことが可能である。
また、成形工程では、ハイドロゲル用組成物に対して放射線を照射し易いように、又はハイドロゲル用組成物が硬化し易いように、例えば、シート状基材、包装体及び成形型等にハイドロゲル用組成物を載置、収容又は充填しておくことが好ましい。
ハイドロゲル用組成物をシート状基材に載置した状態で放射線照射を行う方法は、シート状基材に一体となったハイドロゲルを製造するのに好適である。
ハイドロゲル用組成物を包装体又は成形型に収容又は充填した状態で放射線照射を行う方法は、厚みのあるハイドロゲルを形成するのに好適である。
なお、この方法の場合、包装体は放射線を透過するものが好ましく、滅菌処理済みのものを用いるのが好ましい。また、平坦なシート状のハイドロゲルを得るために、ハイドロゲル用組成物を封入した包装体を抑え板(例えばステンレス板等)で挟んだ状態で放射線照射を行うのが好ましい。
本実施形態に係るハイドロゲルが奏する主たる効果について説明する。
本実施形態に係るハイドロゲルは、上述の通り、凝集力及び水分吸収性に優れたものとすることができる。
また、本実施形態に係るハイドロゲルは、抗菌性を有すると共に、ハイドロゲル中の第四級アンモニウム塩系化合物がハイドロゲルから溶出(徐放)し難いことから抗菌性を維持することができる。そのため、ハイドロゲルを設けた箇所に集中的かつ持続的な抗菌作用を発揮させることができるとともに、正常な組織や細胞への刺激や損傷を抑えることができる。
よって、このハイドロゲルを創傷被覆材として用いれば、汗や滲出液等の水分を効果的に吸収し、創傷の治癒に適した湿潤環境を整えることができ、さらには、創傷の治癒期間を短縮できる可能性もある。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
<実施例1>
フラスコ内に、水400質量部、PVA(日本酢ビ・ポバール株式会社製の商品名「JP−18」(重合度1800、ケン化度87.0〜89.0))90質量部、PVP(BASFジャパン株式会社製の商品名「ルビスコールK90」)10質量部、及びCMC・Na(日本製紙ケミカル株式会社製の商品名「サンローズF30MC」)2.5質量部を加えて、80℃で加熱しながら約20分間攪拌し、混合液1を調製した。
その後、混合液1に塩化セチルピリジニウム(和光純薬株式会社製)0.4質量部を加え、80℃で加熱しながら約10分間攪拌し、ハイドロゲル用組成物を調製した。
得られたハイドロゲル用組成物をPET製の滅菌包装材料に封入した。
次に、平坦なシート状のハイドロゲルを形成するために、ハイドロゲル用組成物を封入した滅菌包装材料をステンレス板に挟んで形状を保持させた。この状態で、電子線照射装置を用いて、積算照射量50kGyの条件下で、ハイドロゲル用組成物に対して電子線を照射し、該組成物を硬化させて厚さ1mmのシート状のハイドロゲルを製造した。
<実施例2〜4>
実施例1のハイドロゲル用組成物における塩化セチルピリジニウムの含有量を、実施例2は0.8質量部、実施例3は1.0質量部、実施例4は1.2質量部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の方法でハイドロゲルを製造した。
<実施例5、6>
実施例1のハイドロゲル用組成物における塩化セチルピリジニウム0.4質量部を、実施例5は塩化ベンザルコニウム(以下、「BKC」と略記)0.4質量部、実施例6は塩化ベンジルトリメチルアンモニウム(以下、「BTMAC」と略記)0.4質量部とした以外は、実施例1と同様の方法で実施例5、6のハイドロゲルを製造した。
<比較例1、2>
実施例1のハイドロゲル用組成物における塩化セチルピリジニウム0.4質量部を、比較例1はポリヘキサメチレンビグアニド0.5質量部、比較例2はポリヘキサメチレンビグアニド1.0質量部とした以外は、実施例1と同様の方法でハイドロゲルを製造した。
製造した実施例及び比較例のハイドロゲルについて、以下の評価を行った。
<抗菌試験>
本発明における抗菌試験の試験方法を以下に示す。
滅菌シャーレに滅菌された一般寒天培地を静置する。
別途、培養された黄色ブドウ球菌(ATCC12973)(初菌数6.3×10CFU/mL)の1mL溶液を一般寒天培地上に滴下し、培地全体に伸ばす。
これにより、培地表面に細菌が行き渡るようにする。
細菌が寒天培地の表面に吸収されたことを確認した後、直径20mmの円形に切断されたハイドロゲルの試験検体を、菌含有の寒天培地上に乗せる。
37℃で18時間、静置した後、ハイドロゲルを取り除き、ハイドロゲルと接触していた寒天部分のみを取り出す。
滅菌された蒸留水を用いて等倍希釈し、希釈溶液中の細菌数を算出する。
<徐放率>
本発明における第四級アンモニウム塩系化合物の徐放性試験の方法について、塩化セチルピリジニウムを用いる場合の方法を以下に示す。
予め質量を測定したハイドロゲルをポリスチレンバイアルに入れ、次いで0.9%塩化ナトリウム水溶液(以下、生理食塩水という)20mLを加え、37℃にて加温する。
6時間後にこの生理食塩水を全量採取し、ポアサイズ0.45μmのフィルターを通し、光路長10mmの石英セルに入れ、分光光度計を用いて波長200〜400nmの範囲でUVスペクトルを測定する。
なお、ハイドロゲルから親水性高分子等の成分が溶出し、UV吸収に影響を与える可能性があるため、塩化セチルピリジニウムを含まないハイドロゲルを別途調製し、ブランクとして用いる。
徐放率を算出するため、濃度0.39〜50μg/mLとなるように塩化セチルピリジニウムを生理食塩水に溶解し、検量線の標準試料とする。塩化セチルピリジニウムのピリジニウム環に由来する波長260nmの吸収を、上記検量線に当てはめ、徐放率(%)として算出する。
この操作を、ハイドロゲルの生理食塩水への浸漬の24時間後、72時間後についても同様に行う。
<ハロー試験>
本発明におけるハロー試験の試験方法を以下に示す。
滅菌シャーレに滅菌された一般寒天培地を静置する。
別途、培養された黄色ブドウ球菌(ATCC12973)(初菌数6.3×10CFU/mL)の1mL溶液を一般寒天培地上に滴下し、培地全体に伸ばす。これにより、培地表面に細菌が行き渡るようにする。
細菌が寒天培地の表面に吸収されたことを確認した後、直径20mmの円形に切断されたハイドロゲルの試験検体を、菌含有の寒天培地上に乗せる。
37℃で18時間、静置した後、ハイドロゲルが静置された寒天培地を写真撮影し、生育阻止円の長さを、分析ソフト(ウィンルーフ)を用いて測定する。
<IC50値>
(1)試験液の作成
本発明におけるIC50値は、ISO10993に準拠し、以下の測定方法で実施する。
ハイドロゲルの試験片1gを切断し、できるだけ細切にしてポリスチレン容器に入れる。
ここに培地M05を10mL添加した後、炭酸ガス培養機内で37℃、24時間静置する。
ここから取り出した抽出液を100%試験液として、この100%試験液をM05培地でさらに希釈し、濃度50%、25%、12.5%、6.25%の試験液を作成しておく。
(2)細胞株の培養
細胞株のV79をトリプシン処理して細胞を単離した後、24穴マイクロプレートに50細胞以上の出現コロニー数となるように播種する。さらにプレートは15時間静置し、細胞を接着させる。
24穴マイクロプレートから培地を捨て、上記の各濃度の試験液1mLを入れ、37℃で6日間培養する。
培養終了後、洗浄してメタノールにて固定した後、ギムザ染色液を加えて、コロニーを染色する。コロニー数は実体顕微鏡にてカウントする。
(3)IC50値の算出
試験液を添加せずM05培地にて培養されたものをコントロール群(コロニー数100%)として、上記各濃度の試験液添加後に形成されたコロニー数をカウントし、次式によりコロニーの形成率を算出する。
コロニー形成率(%)=(各濃度の試験液添加後のコロニー数/コントロールのコロニー数)×100
上式から算出される各試験液濃度におけるコロニー形成率の関係から、コロニー形成率50%の試験液濃度(%)を求め、この値をIC50値(%)とする。すなわち、コントロールのコロニー数を50%阻害する試験液濃度(%)をIC50値とする。
実施例1〜6、及び比較例1〜2の各ハイドロゲルの配合比及び評価結果を表1〜3に示す。なお、表1〜3中の化合物の省略記号は以下のとおりである。
PVA:ポリビニルアルコール
PVP:ポリビニルピロリドン
CMC・Na:カルボキシメチルセルロース・ナトリウム
CPC:塩化セチルピリジニウム
BKC:塩化ベンザルコニウム
BTMAC:塩化ベンジルトリメチルアンモニウム
PHMB:ポリヘキサメチレンビグアニド
Figure 0006081156
Figure 0006081156
Figure 0006081156
実施例1〜4のハイドロゲルは、IC50値が20%以上であり、また、寒天中の菌数が減少し、生育阻止帯も形成されなかった。これらの結果から、実施例1〜4のハイドロゲルは、抗菌性に優れると共に徐放性がほとんどなく、持続的な抗菌作用を発揮させることができるとともに、正常な組織や細胞への刺激や損傷を抑えることができるものと考えられる。
実施例5、6のハイドロゲルは、IC50値が20%以上であり、また、寒天中の菌数が減少したことから抗菌性を有することが確認された。また、実施例5のハイドロゲルは、生育阻止帯の幅が2.7mmであり、実施例1〜4のハイドロゲルに比べると徐放性を有しているものであったが、比較例1〜2のハイドロゲルに比べると徐放性が低いことが確認された。
比較例1〜2のハイドロゲルは、抗菌性があるものの、ハイドロゲル中のPHMBを溶出(徐放)し易く、IC50値も低いことから、細胞への毒性も強く、持続的な抗菌作用や正常な組織や細胞への刺激の点で十分ではない。
本発明に係るハイドロゲルは、例えば、生体に貼付される創傷被覆材、サージカルテープ、カテーテルや点滴チューブ等の刺入部やライン部の固定用テープ、心電図電極や磁気治療器等の固定用貼付材、ストーマ装具用貼付材、湿布材、及びスキンケアや美容等を目的とした貼付材等として好適に使用される。

Claims (4)

  1. 親水性高分子と、水と、第四級アンモニウム塩系化合物とを含み、
    該親水性高分子が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムからからなり、
    ポリビニルアルコール:ポリビニルピロリドン:カルボキシメチルセルロース・ナトリウムの含有質量比が、97〜50:2〜49:0.2〜20である、
    放射線照射により架橋された、低溶出性ハイドロゲル。
  2. 親水性高分子と、水と、第四級アンモニウム塩系化合物とを含み、
    該親水性高分子が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムからなり、
    ポリビニルアルコール:ポリビニルピロリドン:カルボキシメチルセルロース・ナトリウムの含有質量比が、95〜80:4〜19:0.5〜10である、
    放射線照射により架橋された、低溶出性ハイドロゲル。
  3. 前記第四級アンモニウム塩系化合物が、セチルピリジニウム塩である請求項1又は2に記載の低溶出性ハイドロゲル。
  4. 前記親水性高分子7〜40質量%と、前記水59〜92質量%と、前記第四級アンモニウム塩系化合物として塩化セチルピリジニウム0.03〜1質量%と、を含む請求項1から3のいずれか1項に記載の低溶出性ハイドロゲル。

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