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JP6084083B2 - バスバー用アルミニウム合金材、ならびに、当該アルミニウム合金材を用いたバスバーと他部材とのレーザー溶接体 - Google Patents
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JP6084083B2 - バスバー用アルミニウム合金材、ならびに、当該アルミニウム合金材を用いたバスバーと他部材とのレーザー溶接体 - Google Patents

バスバー用アルミニウム合金材、ならびに、当該アルミニウム合金材を用いたバスバーと他部材とのレーザー溶接体 Download PDF

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Description

本発明は、例えば電気自動車、ハイブリット車又は鉄道車両等の移動体や、配電盤や蓄電システム等の定置型の産業設備において、電池や電気機器を電気的に接続するためのバスバー用アルミニウム合金材、ならびに、これを用いたバスバーと他部材とのレーザー溶接体に関する。
一般に電池や電気機器を接続するためのバスバーは、導電率と強度のバランスから銅(Cu)合金が主に用いられているが、コスト低減(原料費として、Cuの方がアルミニウム(Al)より高価)や軽量化のため、Cu製のバスバー材をAl又はAl合金へ置き換える試みが近年活発になっている。
バスバー材をCuからAlへ置き換える上で問題となるのは、強度や導電性などの材料特性と、バスバー材同士の電気的な接合性、或いは、バスバー材と電池や電気機器との電気的な接合性(接触抵抗等)である。これらバスバー材の接合に関しては、従来はボルト締めが主流であったが、Cuと比較してAlの接触抵抗が高いことを一因として、近年ではレーザー溶接が多用されるようになっている。
特許文献1には、添加元素Fe、Siの添加量を制限したAl合金をバスバー材に適用し、レーザー溶接にてバスバー材を接合する方法が提案されている。しかしながら、添加元素量が少ないAl合金では十分な母材強度が確保されない。したがって、製品組み立て時のハンドリングや、製品として使用中の振動などで不適切に変形する可能性があり、バスバーとしての適用範囲が制限されるという問題があった。また、バスバー材の接合相手材は主にJIS規格の1000系、3000系、5000系及び6000系のアルミニウム合金が用いられるが、特に、5000系や6000系とレーザー溶接を行う場合には、割れが発生することが多いという問題があった。
特開2011−171080号公報
本発明は、電池や電気機器を接続するためのバスバー用アルミニウム合金材であって、強度、導電率及びレーザー溶接性に優れたバスバー用アルミニウム合金材、ならびに、これを用いたバスバーと他部材とのレーザー溶接体の提供を目的とする。
本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、バスバー用アルミニウム合金におけるFe含有量、ならびに、Al−Fe系金属間化合物の面密度を厳密に調整することによって、前述の問題を解決できることを見出して本発明を完成するに至った。
本発明は請求項1において、Fe:0.70〜2.50mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなり、55.0%IACS以上の導電率を有し、金属組織中に円相当径1〜3μmのAl−Fe系金属間化合物が14000/mm以上存在することを特徴とするバスバー用アルミニウム合金材とした。
本発明は請求項2では請求項1において、前記アルミニウム合金が、Ti:0.005〜0.30mass%を単独で、或いは、これに、B:0.0001〜0.05mass%及びC:0.0001〜0.002mass%の少なくとも一方を更に含有するものとした。
本発明は請求項3では請求項1又は2において、バスバー用アルミニウム合金材が、Xを1〜9の整数としてH1X又はH2Xに調質され、100〜210MPaの引張強度を有するものとした。
本発明は請求項4では請求項1〜3のいずれか一項において、バスバー用アルミニウム合金材が、O材に調質された際において80MPa以上の引張強度を有するものとした。
本発明は請求項5において、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルミニウム合金材を用いたバスバーと他部材とのレーザー溶接体とした。
本発明により、強度、導電率及びレーザー溶接性に優れたバスバー用アルミニウム合金材、ならびに、これを用いたバスバーと他部材とのレーザー溶接体が得られる。
本発明に係るバスバー用アルミニウム合金材は、所定のAl合金組成と導電率を有し、更に、金属組織中に円相当径1〜3μmのAl−Fe系金属間化合物が所定の面密度で存在する。以下に、これらについて詳細に説明する。
1.Al合金組成
本発明に係るバスバー用アルミニウム合金材は、必須元素としてFe:0.70〜2.50mass%(以下、単に「%」と記す)を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなる。また、選択的添加元素として、Ti:0.005〜0.30mass%を単独で、或いは、これに、B:0.0001〜0.05mass%及びC:0.0001〜0.002mass%の少なくとも一方を更に含有してもよい。
Fe:0.70〜2.50%
Feは材料中にはほとんど固溶しないため、固溶による導電率低下への影響が小さく、Al−Fe系金属間化合物として、分散により強化及び溶接性に寄与する必須元素である。Feの含有量が0.70%未満では、十分な母材強度が得られない。一方、2.50%を超えると、粗大なAl−Fe系金属間化合物が形成されるために加工が困難となる。Feの好ましい含有量は、0.80〜1.50%である。
Ti:0.005〜0.30%、B:0.0001〜0.050、C:0.0001〜0.002%
Tiはマトリクス中に固溶して強度向上させる他に、層状に分布して板厚方向の腐食の進展を防ぐ効果を発揮する。また、TiとBからなるTiBと、TiとCからなるTiCは、鋳塊組織の微細化材として作用する。本発明では、選択的添加元素として、Ti:0.005〜0.30mass%を単独で、或いは、これに、B:0.0001〜0.05mass%及びC:0.0001〜0.002mass%の少なくとも一方を更に含有させるのが好ましい。Tiが0.005%未満では、上記効果が十分に得られず、0.30%を超えると十分な導電率が得られない。Bが0.0001%未満では、微細化材の効果が十分に得られない場合があり、0.050%を超えるとTi−B系化合物(例えば、TiB)の粗大凝集物によってレーザー吸収の増加が起こり、溶け込み深さやビート幅が不均一となってレーザ溶接性の安定性が悪化する。また、Cが0.0001%未満では、十分な微細化効果が得られない場合があり、0.002%を超えるとTi−C系化合物(例えば、TiC)の粗大凝集物により、レーザー溶接性の安定性が悪化する。なお、Ti、B、Cの上記含有量の更に好ましい範囲は、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0005〜0.005%、C:0.0005〜0.001%である。
上記Al合金の不可避的不純物として、Si、Mn、Cu、Mgについて説明する。まず、Siはアルミニウム地金に含有されるためAl合金中に含有される代表的な不可避的不純物である。Si量を0.3%以下、好ましくは0.1%以下に規制するのが好ましい。Si量が0.3%を超えるとFeとの化合物が形成され易く、粗大晶出物が生成し易くなり加工性が低下する。また、Siは溶接性も阻害するため、0.3%を超えて含有されるのは不適当である。
MnはAl合金に多く固溶して導電率を低下させるため、0.05%以下、好ましくは
0.01%以下に規制するのが好ましい。CuとMgはAl合金中にあって固溶する場合は導電率を低下させる。更に、MgはAl合金中にあって溶接性を阻害し、Cuは耐食性を低下させるため、CuとMgはそれぞれ、0.05%以下、好ましくは0.01%以下に規制することが好ましい。
本発明では上記Si、Mn、Cu、Mg以外の不純物を全体で0.15%以下、更に含有していてもよい。
2.導電率
バスバー材には、高い導電性が要求される。本発明では、バスバー用アルミニウム合金材の導電率を55.0%IACS以上に規定する。IACSが55.0%未満では、バスバー材として必要な導電性が不十分となり、電力損失が増大するような障害が発生する。導電率の上限は特に規定するものではないが、材料により自ずと上限が決まる。本発明では、上限を61.0%IACSとする。
3.Al−Fe系金属間化合物の面密度
本発明に係るバスバー用アルミニウム合金材は、金属組織中に円相当径1〜3μmのAl−Fe系金属間化合物が14000個/mm以上存在する。Al−Fe系金属間化合物はレーザーの吸収率を増大させるため、レーザーによるアルミニウム合金の溶け込み深さを深くする。上記面密度が14000個/mm未満では、レーザー吸収率が低くアルミニウム合金の溶け込み深さが十分でなく、バスバー材の接合が困難になる。また、上記面密度が14000個/mm未満の場合にはFeの固溶量が多量となり、バスバー材として必要な導電率が55.0%IACS未満となる可能性が高くなる。金属間化合物の面密度の上限は特に規定するものではないが、組成と製造工程により自ずと上限は決まる。本発明では、上限を50000個/mmとする。なお、Al−Fe系金属間化合物とは、FeAl、FeAl、FeAl、FeAlSiなどの金属間化合物をいう。
また、対象となるAl−Fe系金属間化合物の円相当径は、1〜3μmである。円相当径が1μm未満のAl−Fe系金属間化合物は、バスバー材の要求特性に悪影響を与えることがない。従って、円相当径が1μm未満のものは対象外とした。一方、円相当径が3μmを超えるAl−Fe系金属間化合物はレーザー溶接性への寄与は小さいので、これも対象外とした。なお、円相当径とは円相当直径を意味する。
4.調質と引張強度
本発明に係るバスバー用アルミニウム合金材は、H1X又はH2X(Xは1〜9の整数)に調質され、100〜210MPa、好ましくは130〜170MPaの引張強度を有するのが好ましい。
母材の上記引張強度が100MPa未満では、組み付けの際のハンドリング時や、製品としての使用時における振動で変形する可能性があるため好ましくない。また、母材の引張強度が210MPaを超える場合は、バスバー材の曲げ加工を行う際に割れが発生する可能性が高いため好ましくない。
5.O材に調質された際の引張強度
本発明に係るバスバー用アルミニウム合金材は、O材に調質された際において80MPa以上の引張強度を有するのが好ましい。溶接部及びその近傍の熱影響部では、加工ひずみによる強化は消失又は低減する。従って、調質をO材とした際の引張強度を80MPa以上とすることにより、構造用材料として溶接部において最低限の強度を確保できる。O材としたときの引張強度の上限は特に規定するものではないが、組成と製造工程により自ずと上限は決まる。本発明では、上限を170MPaとする。
6.製造方法
本発明に係るバスバー用アルミニウム合金材は、鋳造工程、均質化工程、面削工程、熱間圧延の予備加熱工程、熱間圧延工程、冷間圧延工程、焼鈍工程を経て製造される。
6−1.鋳造工程
所定の組成に調整したアルミニウム合金の溶湯を用いて、鋳造工程により鋳塊を作製する。導電率55.0%IACS以上を達成するために、鋳造方法は半連続鋳造法(DC法)を用いるのが好ましい。連続鋳造法(CC法)によって鋳塊を製造した場合には、Fe固溶量が多量となり規定の導電率を得られない場合がある。
6−2.均質化処理工程
鋳造工程で作製された鋳塊は、均質化処理工程にかけられる。均質化処理条件は、520〜620℃の温度で4〜10時間加熱し、次いで、500℃から400℃への冷却速度を50℃/時間以下、好ましくは30℃/時間以下とする。これにより、円相当径が1〜3μmのAl−Fe系金属間化合物の面密度を14000個/m以上とすることができる。均質化処理温度を520℃未満としたり、加熱時間を4時間未満とした場合には、Al−Fe系金属間化合物を十分析出させることができない。一方、均質化処理温度が620℃を超えると、鋳塊が溶融する虞があるため好ましくない。また、加熱時間が10時間を超える場合、材料特性は問題ないが、生産性が損なわれる。また、上記冷却速度が50℃/時間を超える場合は、Al−Fe系金属間化合物の面密度は14000個/mを下回る可能性がある。
6−3.面削工程と予備加熱工程
均質化処理工程の前又は後に鋳塊を面削工程にかけて、表面部分を除去する面削を行う。均質化処理工程前に面削工程にかける場合は、均質化処理工程が熱間圧延のための予備加熱工程を兼ねることができる。この場合には、面削した鋳塊を均質化処理温度で所定時間保持後に所定温度まで冷却した後に、熱間圧延のための予備加熱工程を経ずに直ちに熱間圧延工程を開始してもよく、或いは、熱間圧延工程の開始温度とそれより40℃高い温度との範囲内で、0.5〜4時間の熱間圧延のための予備加熱工程にかけてから熱間圧延工程を開始してもよい。
均質化処理工程後に面削工程にかける場合は、面削後に熱間圧延のための予備加熱工程にかけることが必要になる。この予備加熱工程では、熱間圧延工程の開始温度とそれより40℃高い温度の範囲内で、面削した鋳塊を0.5〜4時間加熱する。
面削工程を均質化処理工程の前後のいずれに行った場合であっても、予備加熱工程の温度が、上記範囲を超える場合には熱間圧延開始温度に調整するために長めの時間が必要となり、生産性が損なわれ、上記範囲未満の場合には熱間圧延開始温度に届かないため、非効率である。また、予備加熱時間が0.5時間未満ではスラブ全体を十分に加熱できないため、安定した熱間圧延が困難となり、4時間を超えても材料特性は問題ないが、生産性が損なわれる。
6−4.熱間圧延工程
熱間圧延工程の開始時における鋳塊温度は特に限定されるものではないが、効率的な熱間圧延を行うためには350〜520℃とするのが好ましい。この温度が350℃未満では安定した熱間圧延が困難となり、520℃を超えると熱間圧延における再結晶粒が粗大化し、外観不良の原因となる場合がある。また、板厚が2mm以上のアルミニウム合金板をバスバー材として用いる場合には、後述の冷間圧延工程を経ないで、熱間圧延工程後のアルミニウム合金板(調質H112材又はO材)をバスバー材として用いるのが好ましい。
6−5.冷間圧延工程と焼鈍工程
熱間圧延工程後に圧延材を冷間圧延工程にかけることによって、所定の板厚まで圧延することができる。特に、製品板厚が2mmを下回る場合は冷間圧延工程にかけるのが好ましい。また、冷間圧延工程の途中又は冷間圧延工程後に焼鈍工程を設けてもよい。これに代わって、熱間圧延工程後に冷間圧延工程を設けずに焼鈍工程を設けてもよい。冷間圧延条件と焼鈍条件は特に限定されるものではなく、製品の要求強度と成形性に応じて、両者のバランスを考慮することによって適宜決定すればよい。中間焼鈍やO材とするための最終焼鈍では、均一な再結晶組織を得るために、バッチ焼鈍炉を用いて350〜500℃で0.5〜8時間保持する条件が好適である。この焼鈍は、場合により急速に加熱冷却する連続焼鈍ラインを用いて実施してもかまわないが、その場合、370〜520℃の好適範囲で設定された所定焼鈍温度に材料温度が到達した後の保持時間を0秒(保持無しで直ちに冷却)〜60秒とするのが好ましい。また、H2X材とするための最終焼鈍は、必要とする回復度を達成するために条件を適宜選択して実施すればよいが、バッチ焼鈍炉を用いて150〜280℃で0.5〜8時間保持する条件範囲が好適である。ただし、中間焼鈍を行わない場合の冷間圧延のトータル圧下率、或いは、中間焼鈍を行う場合の中間焼鈍後の冷間圧延の圧下率が70%以上になると硬化し過ぎて曲げ性が悪化するため、70%未満とすることが好ましい。
7.形状
本発明に係るバスバー用アルミニウム合金材は、通常、断面が矩形の棒状をなす。棒状の厚さは、0.5〜10mmとするのが好ましい。厚さが0.5mm未満では、十分な通電性を確保することができない場合がある。一方、10mmを超えると、実用上必要なプレス成形性や曲げ加工性が得られない場合がある。なお、本発明に係るバスバー用アルミニウム合金材は、その厚さに応じて、熱間圧延板を用いてもよく、或いは、冷間圧延板を用いてもよい。
8.アルミニウム合金材を用いたバスバーと他部材とのレーザー溶接体
本発明に係るアルミニウム合金材を用いたバスバーと他部材とをレーザー溶接することによってレーザー接合体が得られる。他部材としては、アルミニウム製バスバーや各種電気機器が用いられ、本発明に係るアルミニウム合金材を用いたバスバー同士、本発明に係るアルミニウム合金材を用いたバスバーと他のバスバー、或いは、本発明に係るアルミニウム合金材を用いたバスバーと各種電気機器の接合体とすることができる。用いるレーザーには、連続波とパルス波のいずれを用いてもよい。また、レーザー溶接法による接合に代えて、ボルト締めを採用することもできる。更に、本発明に係るアルミニウム合金材を用いたバスバーの一方側を他のバスバーや電気機器にレーザー溶接法を用いて接合し、他方側を他のバスバー等にボルト締めを用いて接合してもよい。
本発明について、以下の実施例に基づいて説明する。なお、これらの実施例は本発明の一実施形態を示すものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
下記の5種の製造方法によって、本発明例及び比較例のバスバー用アルミニウム合金材試料を作製した。製造方法(1)と製造方法(2)は熱間圧延板の製造方法であり、(1)は調質をH112材、(2)は調質をO材としたものである。製造方法(3)と製造方法(4)は冷間圧延板の製造方法であり、(3)は調質をO材又はH2X材、(4)は調質をH1X材としたものである。なお、製造方法(1)〜(4)はいずれも半連続鋳造法(DC鋳造法)を用いたもので、同一のスラブから試料を作製した。製造方法(5)では、連続鋳造法(CC鋳造法)を用いた。
(1)DC鋳造→均質化処理→面削→熱間圧延
(2)DC鋳造→均質化処理→面削→熱間圧延→最終焼鈍
(3)DC鋳造→均質化処理→面削→熱間圧延→冷間圧延→最終焼鈍
(4)DC鋳造→(均質化処理)→面削→熱間圧延→冷間圧延(→中間焼鈍→冷間圧延)
(5)CC鋳造→均質化処理→冷間圧延(→最終焼鈍)
DC鋳造法又はCC鋳造法によって、表1に示すアルミニウム合金の鋳塊を作製した。表1において、「−」は無添加であることを示す。また、表3、6、7、9に本発明例及び比較例の製造方法を示した。なお、これらの表における製造方法の番号は、上述の製造方法の番号である。要求される特性に合わせ、鋳造工程、均質化処理工程、面削工程、予備加熱工程、熱間圧延工程、冷間圧延工程、中間焼鈍工程及び最終焼鈍工程を適宜実施した。
上記のようにして作製した試料の導電率、引張強度、1〜3μmの円相当径を有するAl−Fe系金属間化合物の面密度、曲げ試験及びレーザー溶接性を以下のようにして評価した。
1.導電率
シグマテスターを用いて、渦電流法により導電率(%IACS)を測定した。
2.引張強度
引張強度はJIS Z 2201で規定されるJIS5号試験片を試料から切り出し、JIS Z 2241準拠による引張試験により測定した。また、H112、H1X材及びH2X材については、引張試験形状のものに400℃×2時間の焼鈍を施してO材とした後に、同様にして引張強度を測定した。
3.Al−Fe系金属間化合物の面密度
試料の金属組織中に存在する1〜3μmの円相当径を有するAl−Fe系金属間化合物の分布状態(面密度)は、試料の任意断面を光学顕微鏡にて観察し、これを画像解析ソフトによって解析して求めた。なお、比較例3〜6、12〜15はFe以外の添加元素が多く含有されており、Al−Fe系以外の金属間化合物が多く形成されているため測定から除外した。
4.曲げ試験
曲げ試験をJIS Z 2248に規定されるVブロック法により行った。押金具のRは板厚の1/2とし、Vブロックの角度は90°とした。目視にてクラックを確認したものは「×」(不合格)、確認できなかったものを「○」(合格)とした。
4.レーザー溶接性
4−1.溶け込み深さ
試料表面において、長さ100mmにわたってレーザー照射を連続的に移動させ、照射部における溶け込み深さを測定した。レーザー照射の条件は、レーザー出力を2000W、溶接速度を15m/分、集光径を0.3mmφ、連続波(CW:Continuous Wave)とし、終端部において出力を段階的に低下させる終端処理は行わなかった。全照射長さのうちの3箇所(間隔は15mm)についてその断面を光学顕微鏡によって観察し、各断面における溶け込み深さの最大値を測定した。そして、これらの算術平均値をもって溶け込み深さとした。溶け込み深さが1mm以上のものを「○」(合格)、1mm未満ものを「×」(不合格)と判定した。
4−2.溶接性
評価対象材である試料を相手材とレーザー溶接することによって、その溶接性を評価した。試料と接合の相手材とを幅30mm×長さ100mmの短冊形状に加工し、試料と相手材とを幅方向に沿って付き合わせて、幅方向の全長にわたってレーザー溶接を行った。相手材としては、代表的なアルミニウムのJIS合金である1100、3003、5454、6061(それぞれ表1に示した合金のc、d、e、fを試料と同じ厚さに圧延した後にO材としたもの)を用いた。これらに加えて、評価対象材である試料同士でも溶接性を評価した。溶接条件は、レーザー出力を2000W、溶接速度を5m/分、集光径を0.3mmφ、連続波(PW:Pulse Wave)とした。パルス波形はOn時間を2msec、Off時間を15msecとした。溶接性は、以下のように評価した。まず、溶接部の表面を目視によって観察し、接合部表面の割れの有無を調べた。更に、全溶接長さのうちの5箇所(間隔は5mm)についてその断面を光学顕微鏡によって観察し、各接合部断面における割れの有無を調べた。表面観察及び断面観察ともに割れが発生していないものを「○」(合格)、いずれか又は両方に割れが発生しているものを「×」(不合格)とした。
評価結果を表2、4、5、8、に示す。表2には、表3に示す製造方法によって調質をO材としたものを示した。表4、5には、表6、7に示す製造方法によって調質をH1X、H2Xとしたものを示した。更に、表8には、表9に示す製造方法によって調質をH112材又はO材としたものを示した。表2、4、8に示すように、本発明例の1〜43では、本発明範囲を満たすためいずれの評価も合格であった。
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一方、表2、5、8に示すように、比較例1〜21では、本発明範囲を満たさないため、少なくともいずれかの評価が不合格となった。
比較例1、10及び20では、Fe含有量が上限を超えていたため粗大なAl−Fe系金属間化合物が形成しており、導電率が低く、かつ曲げ試験時にクラックが発生した。
比較例2、11及び21では、Fe含有量が下限値未満であったため、円相当径1〜3μmのAl−Fe系金属間化合物の面密度が小さかった。更に、溶接時の溶け込み深さが不合格であり、突合せ溶接において相手材が5454材と6061材では割れが発生した。
比較例3及び12では、JIS1100合金のFe含有量が下限値未満であり、円相当径1〜3μmのAl−Fe系金属間化合物の面密度が小さいことが推定される。その結果、溶接時の溶け込み深さが不合格であった。更に、突合せ溶接において割れが発生した。
比較例4及び13では、JIS3003合金のFe含有量が下限値未満であり、円相当径1〜3μmのAl−Fe系金属間化合物の面密度が小さいことが推定される。溶接時の溶け込み深さに関しては、Al−Fe系以外の金属間化合物が多く存在することにより良好であるが、Mn及びCuの含有量が上限を超えたため、導電率が低く、突合せ溶接において相手材が同種材以外で割れが発生した。
比較例5及び14では、JIS5454合金のFe含有量が下限値未満であり、円相当径1〜3μmのAl−Fe系金属間化合物の面密度が小さいことが推定される。溶接時の溶け込み深さに関しては、Al−Fe系以外の金属間化合物が多く存在することにより良好であるが、Mn及びMgの含有量が上限を超えたため、導電率が低く、突合せ溶接において割れが発生した。また、比較例14では、曲げ試験時にクラックが発生した。
比較例6及び15では、JIS6061合金のFe含有量が下限値未満であり、円相当径1〜3μmのAl−Fe系金属間化合物の面密度が小さいことが推定される。溶接時の溶け込み深さに関しては、Al−Fe系以外の金属間化合物が多く存在することにより良好であるが、Si、Mn、Cu及びMgの含有量が上限を超えたため、導電率が低く、突合せ溶接において割れが発生した。また、比較例15では、曲げ試験時にクラックが発生した。
比較例7及び16では、鋳造後の均質化温度が480℃と低く、かつ、処理時間が2時間と短かった。さらに、冷却速度も大き過ぎた。その結果、円相当径1〜3μmのAl−Fe系金属間化合物の面密度が小さく、溶接時の溶け込み深さが不合格であった。また、比較例16では、強加工の影響で導電率が低くなった。
比較例8では、均質化処理後の500℃から400℃にかけての冷却速度を100℃/時間と大きくしたため、化合物が十分に析出せず、Al−Fe系の金属間化合物の面密度が小さくなった。その結果、溶接時の溶け込み深さも不合格であった。また、比較例17は均質化処理を行わなかったため、金属間化合物の析出工程の一つがなくなり、Al−Fe系の金属間化合物の面密度が小さくなった。これらの結果、溶接時の溶け込み深さが不合格であった。
比較例9及び19では、連続鋳造(CC法)で製造したためFeを多く固溶しており、円相当径1〜3μmのAl−Fe系金属間化合物の面密度が小さかった。その結果、導電率が低くなった。
比較例18では強加工により引張強度が210MPaを超えたため、曲げ試験にてクラックが発生し不合格であった。
本発明に係るバスバー用アルミニウム合金材及びこれと他部材とのレーザー溶接体は、導電率、強度、レーザー溶接性に優れた特性を有する。

Claims (5)

  1. Fe:0.70〜2.50mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなり、55.0%IACS以上の導電率を有し、金属組織中に円相当径1〜3μmのAl−Fe系金属間化合物が14000個/mm以上存在することを特徴とするバスバー用アルミニウム合金材。
  2. 前記アルミニウム合金材が、Ti:0.005〜0.30mass%を単独で、或いは、これに、B:0.0001〜0.05mass%及びC:0.0001〜0.002mass%の少なくとも一方を更に含有する、請求項1に記載のバスバー用アルミニウム合金材。
  3. Xを1〜9の整数としてH1X又はH2Xに調質され、100〜210MPaの引張強度を有する、請求項1又は2に記載のバスバー用アルミニウム合金材。
  4. O材に調質され80MPa以上の引張強度を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のバスバー用アルミニウム合金材。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルミニウム合金材を用いたバスバーと他部材とのレーザー溶接体。
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