従来の技術においては、接合層による熱電素子とCu電極との接合強度を向上させ、接合層の電気抵抗および熱抵抗の増大を抑制することが困難であった。すなわち、導電性ペーストを焼結すると、ペーストに流動性を与える溶媒が揮発し、揮発後の空間に隙間が形成される。従って、接合層内に多くの隙間が存在する状態となり、接合層の強度が弱くなり、電気抵抗および熱抵抗が高くなる。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、接合層の接合強度を向上させ、電気抵抗および熱抵抗の増大を抑制する技術を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明においては、Cu電極と、熱電素子と、前記Cu電極と前記熱電素子とを接合するAgとCuの混合物から構成される接合層とを備える、熱電変換部品を構成する。
すなわち、熱電素子との接合層をAg単体で形成する場合、Agの溶融温度は熱電素子の溶融温度よりも高いためAgを溶融させて接合層を形成することはできず、焼結などによりAgの溶融温度よりも低く熱電素子の溶融温度よりも低い温度で熱処理を行って接合層を形成する必要がある。このため、熱電素子との接合層をAg単体で形成すると接合層内に隙間が発生せざるを得ない。しかし、Ag単体ではなく、AgとCuとの混合物によって接合層を形成すれば、隙間が少ない接合層を形成することができる。この結果、接合層の接合強度を向上させ、電気抵抗および熱抵抗の増大を抑制することが可能である。
なお、AgとCuの混合物から構成される接合層を形成するための例としては、Ag粒子を含むペーストの焼結体であるAgと、Cu電極から焼結体の隙間に拡散したCuと、によって混合物を形成する構成例を採用可能である。すなわち、Ag粒子を含むペーストを焼結すれば、Agの溶融温度よりも低く熱電素子の溶融温度よりも低い温度で接合層の基体となるAg焼結体を形成可能である。当該Ag焼結体には隙間が含まれるため、Cu電極から当該隙間にCuを拡散させれば、AgとCuの混合物から構成される接合層を容易に形成することができる。
ここで、Cu電極は熱電変換を行うことができるように熱電素子を電気的に接続することができる、Cuからなる電極であればよい。例えば、複数のn型熱電素子と複数のp型熱電素子とをCu電極間に挟むとともにこれらの熱電素子を複数のCu電極で接続する構成において、素子の一方側で1個のn型熱電素子と1個のp型熱電素子とが1個のCu電極によって電気的に接続され、各素子の反対側において当該n型熱電素子と当該p型熱電素子とが異なるCu電極に接続されているように構成する例を採用可能である。すなわち、電気的にはn型熱電素子とp型熱電素子とが順番に直列接続されており、n型熱電素子とp型熱電素子との間がCu電極で接続されるように構成されていてもよい。
なお、熱電変換部品は、Cu電極と熱電素子と接合層とを備える部品であり、当該部品を熱電変換に利用できれば良い。従って、熱電変換部品に対して、熱電変換が適正に行われるようにするための付随的な構成を採用しても良い。例えば、n型熱電素子とp型熱電素子との間に配置される各Cu電極が一対の基板に対して交互に接合された構成を採用しても良い。また、基板とCu電極との電気的な絶縁を確保するための部材(絶縁部材等)をCu電極等に取り付ける構成等を採用してもよい。
熱電素子は、熱電変換を行うことが可能な熱電材料を規定の大きさ、および形状とすることによって形成された素子であれば良い。例えば、一方向に延びる軸の両端にCu電極への接合面が存在し、当該接合面の間において軸に平行に配向した側面が存在する柱状の部材によって熱電素子が構成されていれば良い。むろん、柱状部材の形状は四角柱であってもよいし三角柱や五角以上の多角柱であってもよいし、熱電素子は複数個であってもよいし、n型熱電素子とp型熱電素子とによって構成されてもよい。
接合層は、Cu電極と熱電素子とを接合する層であり、Cu電極と熱電素子との間に形成される。また、接合層は、AgとCuの混合物から構成されていることにより、接合層の接合強度を向上させ、電気抵抗および熱抵抗の増大を抑制することができればよい。混合物を構成するAgを、Ag粒子を含むペーストの焼結体で形成する場合、ペーストはAg粒子が流動性のある溶媒に含まれた材料であって、ペースト自体に流動性のある材料であるが、焼結後には溶媒が揮発してAg粒子が残り流動性のない状態となる。これと同時にAg粒子同士が結合することによって電気的抵抗が低い状態となることでCu電極側と熱電素子側とが電気的に接合された状態となればよい。従って、熱電素子とCu電極とを接合する前においては、熱電素子とCu電極との間にペーストが存在し、互いの位置を自由に変えられる状態で熱電素子とCu電極との位置を規定の位置に調整し、位置を調整した後に焼結を行うことで当該位置に熱電素子とCu電極とが固定されるようにペーストが利用される。
また、ペースト内のAg粒子の大きさは特に限定されないが、100nmより小さいAg粒子を含むペーストであることが好ましい。すなわち、100nmより小さいAg粒子は焼結によって互いに結合し、焼結後に熱電素子とCu電極とが電気的に接続される。また、ペーストを構成する溶媒は有機溶媒であることが好ましい。すなわち、Ag粒子が有機溶媒中に分散したペーストであれば、焼結によって有機溶媒を揮発させることが可能であり、焼結後に溶媒成分によって電気伝導率が高くなることを防止することが可能である。
なお、Ag粒子の大きさは、例えば、10nmより大きく、100nmより小さい大きさであってもよい。すなわち、10nm以下のAg粒子は酸化しやすいため、10nmより大きく、100nmより小さいAg粒子を利用すれば、接合層に含まれる酸素の量を抑制しながら接合層を形成することができる。また、焼結前に100nmより小さい粒径で存在するAg粒子は、焼結後により大きな結晶粒となって互いに強く結合して接合層を構成する。この結果、接合層の強度が強くなる。また、接合層の電気伝導率は大きくなり、熱電変換部品における熱電変換効率が低下することを防止することができる。
以上のようなAg粒子を含むペーストを焼結すると、Ag粒子同士が結合した焼結体の間に隙間が形成される。従って、この隙間にCuが存在するように構成することで、AgとCuとの混合物を形成することが可能である。さらに、電極はCu電極であるため、接合層を形成するAgとCuとは互いに近接している。従って、Cu電極のCuをAgに拡散させることにより、容易に、Agの隙間にCuが存在する混合物を形成することができる。この結果、Ag間の隙間が抵抗率の小さいCuで埋められ、接合層内に隙間が少なく、かつ抵抗率の小さいAgおよびCuによって構成された接合層を形成することができる。この結果、接合層の接合強度を向上させ、電気抵抗および熱抵抗の増大を抑制することができる。
なお、Ag粒子を含むペーストの焼結は、Ag粒子が粗大化し、前記熱電素子の結晶粒が粗大化しない温度で行うことが好ましい。すなわち、焼結後に接合層の強度を確保するためには、ペースト内のAg粒子同士が焼結によって互いに結合し、熱応力によって結合が破壊されない状態となる必要がある。そこで、Ag粒子が粗大化する温度以上で焼結を行えば、焼結の過程でAg粒子同士が結合して粗大化することになり、焼結後には熱応力によって当該結合が破壊されない状態とすることができ、高い強度の接合層を形成することができる。
さらに、Ag粒子を含むペーストの焼結体内に形成された隙間にCu電極からCuを拡散させるための構成としては、例えば、焼結体の形成時または形成後に焼結体とCu電極とが接した状態で320℃以上に加熱する構成を採用可能である。すなわち、隙間を含むAgの焼結体にCu電極が接した状態において320℃以上に加熱すると、Cu電極のCuがAgの焼結体の隙間に拡散する。従って、当該温度での加熱を行えば、所定時間にAgの焼結体の隙間にCuが拡散し、接合層の接合強度を向上させ、電気抵抗および熱抵抗の増大を抑制することができる。
さらに、接合層と熱電素子との間には、接合層と熱電素子との間における材料の拡散を防止する拡散防止層が形成されていてもよい。すなわち、接合層と熱電素子とを直接接合させると、その界面において接合層内の材料が熱電素子側に拡散し、あるいは、熱電素子内の材料が接合層側に拡散することが発生し得る。そこで、このような拡散を防止するために、拡散が発生しにくい材料による層を形成して拡散防止層とする構成は熱電素子に関連する構成としてよく利用される。なお、拡散防止層として機能する材料は、接合層と熱電素子とCu電極との組成によって選択可能であるが、例えば、NiやTiによって層を形成すれば拡散防止層を形成することができる。むろん、接合層とCu電極との間に、接合層とCu電極との間における材料の拡散を防止する拡散防止層が形成されていても良い。
さらに、接合層とCu電極との間には、接合層とCu電極との間の接合強度を向上させる接合強度向上層が形成されていてもよい。すなわち、接合層とCu電極との間にAgやAuなどの層を形成すれば、接合層とCu電極との接合強度を向上させることが可能である。むろん、接合層と熱電素子との間や、接合層と拡散防止層との間に接合強度向上層を形成しても良い。
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)熱電変換部品の製造方法:
(2)実施例:
(3)他の実施形態:
(1)熱電変換部品の製造方法:
図1は、熱電変換部品の一実施形態の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態における熱電変換部品の製造方法は、熱電材料のバルクが製造された後に実行される。すなわち、図1に示す熱電変換部品の製造方法を実行する前に、予めn型熱電材料およびp型熱電材料のバルクを製造する。本実施形態にかかるn型熱電材料およびp型熱電材料はBi2Te3系の熱電材料であり、Bi,Sbからなる群から選択される少なくとも1種の元素と、Te,Seからなる群から選択される少なくとも1種の元素とによって(Bi,Sb)2(Te,Se)3の組成となるように秤量された原料に対して各種の加工法を適用することでn型熱電材料およびp型熱電材料が製造される。なお、(Bi,Sb)と(Te,Se)との組成比が2:3から僅かにずれたとしても、Bi2Te3と同様の結晶構造(空間群R3−mの菱面体結晶構造(−は通常、3の上方に表記される))である限り、Bi2Te3系の熱電材料である。
Bi2Te3系のn型熱電材料およびp型熱電材料は、例えば、押出処理(ホットプレス法等)や塑性変形を伴う押出処理(せん断付与押出法,ECAP法,ホットフォージ法等)、圧延処理、一方向凝固法,単結晶法等によって特定の結晶軸が特定の配向方位に配向するように加工することで製造することができる。
図2A〜図2Eは、図1に示す製造方法における主な工程を模式的に示す図であり、以下、適宜図2A〜図2Eを参照して図1に示す製造方法を説明する。図1に示す製造方法においては、Bi2Te3系の熱電材料のバルクを切断して薄板状のウエハを製造する(ステップS100)。ウエハの厚さは熱電素子の軸方向の長さである。図2Aにおいては、n型熱電材料あるいはp型熱電材料のウエハをWとして示している。
ウエハが製造されると、次に、ウエハ表面に拡散防止層が形成される(ステップS105)。拡散防止層は、例えば、メッキ処理等によって形成可能である。なお、当該拡散防止層が形成された後のウエハに対してさらに後述するペーストに含まれるAg粒子と同一の金属による金属メッキ層を形成する処理を行ってもよい。
拡散防止層が形成されると、当該拡散防止層が形成された後のウエハWが切断されて熱電素子が製造される(ステップS110)。本実実施形態においては、ウエハの円形の面内で互いに垂直な2方向に切断方向が設定される。この切断により、四角柱状の熱電素子が得られる。図2Bは、当該柱状の熱電素子Pの断面図であり、図の上下方向の端面に拡散防止層Ldが形成されている。
次に、予め形成されたCu電極上にペーストPMが塗布される(ステップS120)。ここで、ペーストは、100nmより小さいAg粒子を含む有機溶媒であり、焼結によって有機溶媒は全て揮発する。また、焼結時には、熱電素子Pの軸方向に圧力がかけられる。このため、有機溶媒の量と焼結時に作用させる圧力とによって有機溶媒が全て揮発した場合の接合層の厚さを所望の厚さにすることが可能である。なお、有機溶媒とAg粒子との比率は限定されないが、例えば、Ag粒子を含むペースト(DOWAエレクトロニクス社製銀ナノペースト、大研化学工業製NAG-10、三ツ星ベルト社製MDot等)を利用可能である。また、図2CはCu電極上にペーストPMが塗布された状態におけるCu電極およびペーストPMの断面図である。
次に、ペーストPMに熱電素子が挿入される(ステップS125)。すなわち、図2Dに示すように、焼結前で流動性のあるペーストPMに対し、熱電素子Pの端部がペーストPM内に存在するようになるまで熱電素子PがペーストPM内に挿入される。なお、図2Dに示す図においては、熱電素子Pの端部の一方のみをペーストに挿入しているが、熱電素子の上下からペーストが塗布されたCu電極で挟むようにして、熱電素子Pの端部の双方をペーストPMに挿入しても良い。
次に、加圧、焼結および熱処理が行われる(ステップS130)。すなわち、熱電素子PとCu電極Eの表面とが近づく方向の圧力(図2Dに示すPa)が熱電素子PおよびCu電極Eに与えられた状態でリフロー炉内に搬入される。そして、リフロー炉内が所定の雰囲気(真空、アルゴン、窒素、空気等)とされた後、所定の焼結温度で所定時間加熱することによって焼結が行われる。この結果、図2Eに示すように、熱電素子Pの端部が挿入される凹部を備える接合層Ljが形成される。
なお、焼結温度は、ペーストに含まれる100nmより小さなAg粒子が粗大化し、熱電材料の結晶粒が粗大化しない温度である。すなわち、本実施形態におけるペーストには100nmより小さいAg粒子が含まれており、このような微小なAg粒子を加熱すると、当該金属の融点よりもはるかに低い温度で結晶同士が結合してAg粒子が粗大化する。また、有機溶媒は揮発する。このような焼結によってAg粒子の粗大化が発生すると、ペーストであった部分に流動性はなくなり、強固に固化する。そして、当該固化した部分は、当該金属の融点に達するまで溶融せず、熱電変換部品の高温部として想定される300℃程度に再加熱された場合であっても固体として安定した状態を維持する。
従って、焼結前にペーストであった部分は、焼結後に熱電素子とCu電極とを強固に接合する接合層となり、熱電変換部品が使用される温度域に加熱されたとしても熱電材料間を強固に接合する層として機能する。なお、焼結温度が高くなるほどペースト内のAg粒子が粗大化しやすくなるが、過度に高い温度にすると熱電材料内の結晶粒が粗大化して性能指数が低下する。従って、焼結温度は、熱電材料内の結晶粒が粗大化する温度よりも低い温度に設定される。
さらに、ペーストが焼結温度に維持される所定時間は、焼結によるAg粒子の粗大化により、接合層が充分に高強度化し、また、接合層における電気伝導率が充分に低下するように設定されていればよく、例えば、所定時間経過後に1μm以上のAg粒子が確認されるような長さとして所定時間を設定する構成等を採用可能である。
本実施形態における熱処理は焼結と同時、あるいは、焼結後に行われる。当該熱処理は、焼結によって形成されるAgの隙間にCuを拡散させるために行われる。当該Cuの拡散は、Agの焼結体とCu電極とが接触した状態で320℃以上に加熱され、所定時間(例えば、5分)維持されることによって行われる。従って、焼結の温度が320℃よりも低い場合には、焼結後に熱処理を行うことになり、焼結の温度が320℃以上である場合には、焼結と熱処理とを同時に行うことができ、焼結後の熱処理は必ずしも必要ではない。
図3Aおよび図3Bは、拡散の有無を説明するための図である。これらの図3Aおよび図3Bは、Bi2Te3系の熱電素子の端部にNiの拡散防止層を形成した状態で接合層によって熱電素子とCu電極とを接合した熱電変換部品を、熱電素子の軸に平行な方向に切断して走査電子顕微鏡で撮影した結果を示す図である。また、図3AはCuの拡散を行っていないサンプルの図、図3BはCuの拡散を行ったサンプルの図であり、同一色は同一の組織からなる層である。
例えば、図3Aにおいては、上から、Bi2Te3系の熱電素子、NiがBi2Te3系の熱電素子に拡散した層、Niの拡散防止層、Agの焼結層Lv、Cu電極である。図3Bにおいては、上から、Bi2Te3系の熱電素子、NiがBi2Te3系の熱電素子に拡散した層、Niの拡散防止層、AgおよびCuの接合層Lj、Cu電極である。なお、図3Bの接合層Ljにおいては、薄い色がAgの焼結層、濃い色が拡散によって形成されたCuであり、一部の黒い部分は隙間であるが、同図3Bに示すようにAg焼結層内の隙間には一部にCuが拡散していない部位があるものの、隙間がほぼ存在しない程度にCuが拡散している。
以上のように、CuをAg焼結層内の隙間に拡散させると、Agの焼結層内の隙間が埋められるため、AgとCuとからなる接合層Ljの強度が向上する。さらに、Agの焼結層内の隙間が電気抵抗率、熱抵抗率が小さいCuで埋められるため、電気抵抗および熱抵抗の増大を抑制することが可能である。
(2)実施例:
次に、上述の製造方法で製造した熱電変換部品の実施例を説明する。本実施例においては、Bi1.9Sb0.1Te2.7Se0.3の組成比の原料を熱電材料の出発原料とした。Bi,Sb,Te,Seを秤量して上述の各出発原料となるように各元素の組成を調整し、各出発原料をアルゴン雰囲気中で700℃に加熱して溶解させ、攪拌した。さらに、攪拌/溶解後の出発原料を冷却して凝固させることにより、熱電材料の合金とした。
さらに、得られた各合金を粉砕、もしくは液体急冷処理することで熱電材料の粉末を製造した。粉砕は、ボールミル、スタンプミル等によって実施可能であり、液体急冷処理はロール型液体急冷装置、回転ディスク装置、ガスアトマイズ装置等によって実施可能である。なお、当該液体急冷処理は、例えば、アルゴン雰囲気中において800℃に加熱した合金を急冷することによって実施可能である。
さらに、得られた各粉末を金型に充填し、ホットプレス装置、あるいはスパークプラズマ焼結装置にて一軸加圧した状態で焼結し上述のバルクを製造した。なお、一軸加圧はアルゴン雰囲気中で450℃に加熱された状態で100MPaの圧力を作用させることによって実施される。むろん、バルクは、上述の組成変形を伴う押出処理や圧延処理等によって製造されてもよい。
さらに、得られたバルクをマルチワイヤーソーにて切断してウエハを製造し(ステップS100)、各ウエハの表面にNiメッキによって3μmの拡散防止層を形成した(ステップS105)。さらに、拡散防止層を形成した後のウエハをカッティングソーにて切断して熱電素子を製造した(ステップS110)。ここでは、熱電素子の大きさが2mm×2mm×2mmになるようにウエハを製造し、切断を行った。さらに、Cu電極上にAgペースト(例えば、大研化学工業製NAG-10)を塗布し(ステップS120)、ステップS110にて製造された熱電素子をAgペーストに挿入し(ステップS125)、加圧しつつリフロー炉内で焼結および熱処理を行った(ステップS130)。
このような製造法において、焼結温度(℃)と熱処理温度(℃)とを変化させて表1に示す実施例1〜8および比較例1〜4のサンプルを製造した。なお、熱処理温度の欄が「なし」であるサンプルは、焼結後に熱処理を行っていないサンプルである。ただし、焼結温度が320℃以上である場合、320℃以上での熱処理を焼結時に行っていることと等価である。さらに、焼結はリフロー炉内の雰囲気をN
2として加熱し、各焼結温度に60分間維持することで行い、熱処理は各熱処理温度に5分間維持することで行った。
同表1における各サンプルの層構成は、Cu電極と熱電素子との間の層構成を示しており、実施例1〜6および比較例1,2は、Cu電極にAg粒子を含むペーストを塗布し、Niの拡散防止層を形成した熱電素子を当該ペーストに挿入して焼結を行った場合のサンプルである。なお、本実施形態においては、熱電素子側のみならずCu電極側に拡散防止層を形成しても良いし、拡散防止層と接合層との間に両層の接合強度を向上させるための接合強度向上層を形成しても良く、実施例7は前者、実施例8は後者の例である。具体的には、実施例7および比較例3は、Niメッキ(厚さ3μm)による層を形成した後にAuメッキ(厚さ0.05μm)による層を形成したCu電極にAg粒子を含むペーストを塗布し、Niの拡散防止層を形成した熱電素子を当該ペーストに挿入して焼結を行った場合のサンプルである。実施例8は、Cu電極にAg粒子を含むペーストを塗布し、Niの拡散防止層を形成した後にAgメッキ(厚さ10μm)による層を形成した熱電素子を当該ペーストに挿入して焼結を行った場合のサンプルである。比較例4はAu−Sn半田で熱電素子とCu電極(厚さ3μmのNiメッキ層と厚さ0.05μmのAuメッキ層を形成したもの)とを接合したサンプルである。
実施例1〜8には、焼結時に熱処理を行う場合(実施例3,5,7,8)と、焼結後に熱処理を行う場合(実施例1,2)と焼結時および焼結後に熱処理を行う場合(実施例4,6)とが含まれるが、いずれにおいても図3Bに示すようにAgの焼結層の隙間にCuが拡散している。一方、比較例1〜3においては、焼結温度が300℃であり、熱処理を行う場合であってもその温度が320℃より小さい300℃である。従って、320℃以上の熱処理は行われておらず、いずれにおいても図3Aに示すようにAgの焼結層に隙間が形成された状態となっている。
表1においては、各実施例および比較例に対して熱電素子の軸に垂直な方向に力を作用させてシェア試験を行った場合に接合層が破断した場合の破断加重(N)を示している。なお、シェア試験におけるクロスヘッドの速度は0.5mm/分、Cu電極表面からクロスヘッド下面までの距離は0.5mmである。実施例1〜8は、ほぼ70Nあるいはそれ以上の破断加重になっており、Au−Sn半田で熱電素子とCu電極とを接合した比較例4と同等の破断加重で接合されていることがわかる。
一方、比較例1〜3においては、破断加重が40〜45N程度であり、実施例1〜8よりも破断加重が小さい。すなわち、比較例1〜3においては接合層にCuが拡散しておらず、実施例1〜8においては接合層にCuが拡散しているため、接合層の強度が向上し、破断加重が大きくなった。
なお、実施例3,8を比較すると、両者とも焼結温度が同一(焼結後の熱処理は行われない)であり、接合層と熱電素子との間にAgのメッキ層が形成されている点で層構成が異なっている。両者の破断加重を比較すると、実施例8の方が大きくなっており、Agのメッキ層が形成されていることにより、接合層と熱電素子との間の接合強度を向上させる効果があることがわかる。
さらに、Cuと熱電素子との接合強度はAgと熱電素子との接合強度よりも弱いと考えられる。そして、Agペーストの焼結体にCuを拡散させて構成した接合層においては、接合層の界面におけるAgの純度が接合層の内部よりも高くなるため、接合層と熱電素子との接合強度を向上させることができる。具体的には、図3Bに示すように、接合層Ljの上下方向の界面(Niの拡散防止層との界面およびCu電極との界面)にAgが高純度で存在する。一方、界面の間においては、隙間が多く存在し、当該隙間にCuが拡散している。この結果、接合層の界面におけるAgの純度が接合層の内部よりも高くなっており、接合層と熱電素子との接合強度を向上させるように寄与している。
表2は、電気抵抗および熱抵抗の増大を抑制する効果を示す実施例(実施例9,10)および比較例(比較例5)である。これらの例においては、Bi1.9Sb0.1Te2.7Se0.3の組成比およびBi0.4Sb1.6Te3の組成比の原料をn型熱電材料およびp型熱電材料の出発原料とした。そして、Bi,Sb,Te,Seを秤量して上述の各出発原料となるように各元素の組成を調整し、各出発原料をアルゴン雰囲気中で700℃に加熱して溶解させ、攪拌した。さらに、攪拌/溶解後の出発原料を冷却して凝固させることにより、熱電材料の合金とした。
さらに、得られた各合金を粉砕、もしくは液体急冷処理することで熱電材料の粉末を製造した。粉砕は、ボールミル、スタンプミル等によって実施可能であり、液体急冷処理はロール型液体急冷装置、回転ディスク装置、ガスアトマイズ装置等によって実施可能である。なお、当該液体急冷処理は、例えば、アルゴン雰囲気中において800℃に加熱した合金を急冷することによって実施可能である。
さらに、得られた各粉末を金型に充填し、ホットプレス装置、あるいはスパークプラズマ焼結装置にて一軸加圧した状態で焼結し上述のバルクを製造した。なお、一軸加圧はアルゴン雰囲気中で450℃に加熱された状態で100MPaの圧力を作用させることによって実施される。むろん、バルクは、上述の組成変形を伴う押出処理や圧延処理等によって製造されてもよい。
さらに、得られたバルクをマルチワイヤーソーにて切断して厚さ0.81mmのウエハを製造し(ステップS100)、各ウエハの表面にNiメッキによって3μmの拡散防止層を形成した(ステップS105)。さらに、拡散防止層を形成した後のウエハをカッティングソーにて切断して26個のn型熱電素子およびp型熱電素子を製造した(ステップS110)。ここでは、熱電素子の大きさが0.9mm×0.9mm×0.81mmになるようにウエハを製造し、切断を行った。さらに、Cu電極上にAgペースト(例えば、大研化学工業製NAG-10)を塗布し(ステップS120)、ステップS110にて製造された熱電素子をAgペーストに挿入し(ステップS125)、加圧しつつリフロー炉内で焼結を行った(ステップS130)。ここでは、350℃の焼結温度で60分間維持することで焼結を行ったため、焼結後の熱処理は行っていない。
また、ここでは、n型熱電素子およびp型熱電素子の1個ずつを対とし、熱電素子を挟むCu電極の一方側において同一のCu電極上のAgペーストにn型熱電素子およびp型熱電素子の1個ずつが挿入され、熱電素子を挟むCu電極の他方側においてはこれらのn型熱電素子およびp型熱電素子が異なるCu電極状のAgペーストに挿入されことで、n型熱電素子およびp型熱電素子が電気的に直列になるように構成される。さらに、各熱電素子の一方の端部に接合される各Cu電極が基板に接合され、各熱電素子の他方の端部に接合される各Cu電極が他の基板に接合されることにより、基板間に26対の熱電素子が挟まれた熱電変換モジュールを構成した。なお、比較例5においては、ステップS120,S125を省略し、Cu電極とNiの拡散防止層が形成された熱電素子とをAuSnはんだで接合し、基板間に26対の熱電素子が挟まれた熱電変換モジュールを構成した。
表2は、各サンプルの熱電変換モジュールに配線を行い、一方の基板を100℃に設定した状態で各熱電変換モジュールに対して同一条件で電流を流し、他方の基板の温度を測定した結果を示している。
ここで、ΔTは一方の基板と他方の基板との温度差を示しており、例えば、98℃の場合、他方の基板が2℃になったことを示している。R
ACは熱電変換モジュールのAC抵抗の測定値であり、ΔR
ACは熱電変換モジュールのAC抵抗の測定値の理論値からのずれ((R
AC/0.494)−1)を示している。なお、0.494Ωは、p型熱電素子の比抵抗である0.9×10
-5Ωm、n型熱電素子の比抵抗である1.0×10
-5Ωmから算出した熱電変換モジュールのAC抵抗の理論値である。
同表2に示すように、実施例9においてΔTは98であり、良好な熱電変換性能である。また、実施例9は、Cu電極と熱電素子とがAuSnはんだで接合された比較例5と同等の熱電変換性能である。さらに、熱電変換モジュールのAC抵抗の測定値の理論値からのずれΔRACは、実施例9で0.016(1.6%)、比較例5で0.014(1.4%)であり、両者のずれは同等である。従って、Agペーストの焼結を行ってCuを拡散させた接合層においては、AuSnはんだに匹敵する小ささの電気抵抗であり、電気抵抗の増大が抑制されている。むろん、電気抵抗の増大が抑制されることにより、熱抵抗の増大も抑制される。
実施例10においてはΔTが89、ΔRACは0.117(11.7%)であり、良好な熱電変換性能および低い電気抵抗であるものの、実施例9と比較して若干熱電変換性能が低く、電気抵抗も若干増大している。従って、熱電素子の端部にはNiの拡散防止層が形成される方が好ましい。なお、Niの拡散防止層が形成されていない場合における熱電変換性能の低下および電気抵抗の増大は、熱電素子側へのCuの拡散が原因であると考えられる。
すなわち、図3A、図3Bに示すように、Niの拡散防止層が形成されている熱電素子においては、Niの拡散防止層と熱電素子との界面において反応層(図3A、図3Bに示すNi+BiTe)が形成されるため、接合層のCuがNiの拡散防止層を越えて熱電素子側に拡散する余地がなくなる。しかし、Niの拡散防止層が形成されていない場合、Cu電極から接合層内に拡散したCuがさらに熱電素子側に拡散する。この結果、若干熱電変換性能が低下し、電気抵抗が若干増大する。
(3)他の実施形態:
本発明は、上述の実施形態以外にも種々の実施形態を採用することが可能である。また、種々の要素を発明特定事項とすることができる。さらに、接合層と熱電素子との間に拡散防止層が形成されていない実施例や接合層とCu電極との間に拡散防止層が形成されている実施例を構成することも可能である。さらに、接合層と熱電素子との間に接合強度向上層が形成されていても良い。またCu電極とは、全てがCuからなる電極であってもよいし、Cuが積層された電極、Cuを含む電極、Cu合金であってもよい。Cuが積層された電極においては、接合層側にCuが積層されていることが好ましい。Cuを含む電極とは、Cuと別の材料とが混合されている電極を示す。すなわち、接合層へCuを拡散できることができれば、接合層の空隙をCuで埋めることができ、接合層の強度が強くなる。また、接合層の電気伝導率は大きくなり、熱電変換部品における熱電変換効率が低下することを防止することができる。