JP6098538B2 - 糖ペプチドの分析方法、および糖鎖構造解析用プログラム - Google Patents
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Description
本明細書において、「質量」とは、統一原子質量単位(unified atomic mass unit: u) またはDa, およびそれに準ずる単位によって表される値であり、無次元数である。また、質量電荷数比(m/z)は、上記の質量mをイオンの電荷数zで割ったものである。
一般に、質量分析によるペプチドの構造解析において、ペプチド部分のアミノ酸残基数が多いと、MS1でのイオン化が困難となったり、MS2スペクトルにおけるピーク数が増大し、解析が困難となる傾向がある。そのため、プロテアーゼ消化や化学処理を行い、ペプチド部分を質量分析に適した長さ(アミノ酸残基数)に切断したペプチド断片を用いて分析が行われる。同様に、本発明の糖ペプチドの分析方法においても、質量分析を実行する前の試料調製において、プロテアーゼ消化等により、質量分析に適した長さを有する糖ペプチド断片が生成されることが好ましい。質量分析に適した長さとは、例えば、アミノ酸残基数が30以下、好ましくは20以下、より好ましくは15以下である。一方、糖ペプチドの由来を明確とする観点から、ペプチド部分のアミノ酸残基数は2以上が好ましい。
糖ペプチド試料は、多段階質量分析に供される。多段階質量分析の2段階目(MS2)以降は、フラグメントイオンの開裂を生じさせる分析法であり、イオン開裂法は、ポストソース型とインソース型に分類される。ポストソース型のイオン開裂法としては、ポストソース分解(Post Source Decay; PSD)、衝突誘起解離(Collision Induced Dissociation; CID)、赤外多光子解離(infrared multiphoton dissociation; IRMPD)、表面誘起解離(surface-induced dissociation; SID)、および光誘起解離(photo-induced dissociation; PID)等が挙げられる。また、電子捕獲解離(electron-capture dissociation; ECD)、電子移動解離(electron-transfer dissociation; ETD) 、電子脱離解離(electron-detachment dissociation; EDD)およびそれらに準じる奇数電子誘発型の解離技術が用いられても良い。MS3分析により糖ペプチドの構造解析を行う場合は、MS2およびMS3におけるイオン開裂が、衝突誘起解離(collision induced dissociation; CID)、ならびに赤外多光子解離(infrared multiphoton dissociation; IRMPD)およびこれに準ずる振動励起を伴うイオン活性化法であることが好ましい。CIDやIRMPDによるイオン開裂を実施可能な質量分析装置としては、衝突室、又は衝突室の機能を持つ四重極もしくはイオントラップを有する質量分析装置が挙げられる。具体的には、イオントラップ型質量分析計、二重収束型質量分析計、三連四重極型質量分析計、四重極飛行時間型質量分析計、四重極−イオントラップ型質量分析計、四重極−フーリエ変換型質量分析計、四重極−オービトラップ型質量分析計、イオントラップ−飛行時間型質量分析計、飛行時間型−飛行時間型質量分析計等が挙げられる。
糖ペプチドの質量分析においては、MS1分析ステップにおいて、糖ペプチドが負イオン化され、MS1分析が実行される。第一質量分析(MS1)のイオン化法としては、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法、エレクトロスプレーイオン化(ESI)やナノエレクトロスプレーイオン化(nano−ESI)法等が挙げられる。特に、MALDI法が好適である。
次いで、MS2分析(MSn−1分析ステップ)において、MS1で得られた負イオンがCIDやIRMPD等により開裂され、MS2分析が実行される。MS2分析では、MS1で得られた全てのピークを網羅的にMS2に供することもできるが、MS1スペクトルに現れる糖ペプチド由来の負イオンをMS2プリカーサとして選定し、選定された負イオンを選択的にMS2に供することが好ましい。
現段階では、m/z=(G+97−z)/zのフラグメントイオンの分子構造は明らかではないが、このフラグメントイオンは糖鎖残基よりも質量が大きく、かつペプチド部分のアミノ酸配列に影響を受けないことから、N‐結合型糖鎖残基と、糖鎖が結合しているアスパラギン(分子量:132)の一部とを含む負イオンと考えられる。アスパラギンの分子量が132であることから、G+97は、G+Asn−35と表すことができ、質量35に相当する化学種がAsnから脱離したものであると考えられる。アスパラギンの化学式を考慮すると、ONH5=35が脱離している可能性が高く、m/z=(G+97−z)/zのフラグメントイオンは、アスパラギンからH2OおよびNH3が脱離した化学構造と糖鎖残基とを含むものと推定される。なお、電荷数zの負のフラグメントイオンでは、z個のプロトンが脱離しているため、フラグメントイオンの質量電荷比m/zは(G+97−z)/zとなり、z=1の場合、m/z=G+96である。
MS3分析(MSn分析ステップ)では、MS2で得られた負のフラグメントイオンがCIDやIRMPD等により開裂され、MS3分析が実行される。MS3分析は、糖ペプチドにおける糖鎖構造の解析を目的として行われる。そのため、MS2ピークの中から、質量電荷比m/z=(G+97−z)/zを有するフラグメントイオンをMS3プリカーサとして選定した上で、MS3分析が行われる。
a1=(A1−z1)/z1 …(式1)
a2=(A2−z2)/z2 …(式2)
と表すことができる。
A1=a1z1+z1 …(式1a)
A2=a2z2+z2 …(式2a)
であるから、
A1−A2=a1z1+z1−a2z2−z2 …(式3)
となる。
本発明の分析方法では、得られた質量分析結果(MS1,MS2およびMS3スペクトル)に基づいて、N‐結合型糖鎖の構造情報が抽出され、糖鎖構造の解析が行われることが好ましい。抽出される糖鎖の構造情報は特に限定されない。
さらには、MS2におけるm/z=(G+97−z)/zのフラグメントイオンは、ペプチド部分の糖鎖が結合したアスパラギンの一部のみを含むため、糖ペプチドにおけるN‐結合型糖鎖の構造が同一であれば、このフラグメントイオンの化学構造は、ペプチドのアミノ酸配列に依存することなく、同一である。そのため、このフラグメントイオンをMS3プリカーサとしてMS3分析を実施した場合は、糖鎖の構造が同一であれば、同一のMS3スペクトルが得られる。すなわち、本発明の分析方法により得られるMS3スペクトルは、ペプチド部分の構造に大きな影響を受けないため、MS3スペクトルやMS3ピークリストのデータベース化が容易である。
本発明の分析方法は、上記のプログラム、あるいはその他のデータ照合手段を備える糖ペプチドの糖鎖構造解析用質量分析装置を用いて実施することもできる。この質量分析装置は、質量分析部、質量分析部で得られた分析データが記憶される分析データ記憶部、既存の糖鎖構造データベースから得られる構造情報が記憶されるデータベース記憶部、および分析対象の糖ペプチドの糖鎖構造の同定を行うデータ処理部を備える。
以上、MS1で負イオン化された糖ペプチドを、MS2で開裂させ、MS2スペクトルにおける糖ペプチドの負イオン由来のフラグメントイオンの中から、(G+97−z)/zの質量電荷比を有するフラグメントイオンをMS3プリカーサとして選定する場合、すなわち、n=3のMSn分析を中心に、本発明の実施形態を説明した。なお、糖ペプチドの負イオン由来のフラグメントイオンの中から、(G+97−z)/zの質量電荷比を有するフラグメントイオンをプリカーサとしてMSn分析を実行することによる糖ペプチドの分析は、nが4以上のMSn分析にも適用できる。
200μLのマイクロピペットチップの先端に、少量のコットンを詰め、その上に1mgのセルロースパウダーを加えた。得られたセルロースマイクロチップに、上から水100μLを加え、上方からシリンジで空気を送り、下方(チップ先端)から排出した。これを2回繰り返した。さらに50%アセトニトリル(ACN)、0.1%TFA水溶液100μLで2回、80%ACN、0.1%TFA水溶液で2回、同様の操作を行い、セルロースマイクロチップの洗浄および平衡化を行った。
<測定用糖ペプチドの調製>
SIGMAより購入したヒト免疫グロブリンG(IgG)を、尿素:6M、重炭酸アンモニウム:50mM、およびトリス(2‐カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP):5mMの存在下、室温で45分反応させ、変性および還元を行った。次いで、ヨードアセトアミド(IAA):10mMの存在下、室温遮光条件下で45分反応させアルキル化を行った後、ジチオスレイトール(DTT):10mM存在下、室温遮光条件下で45分反応させ、余剰のIAAを不活性化した。その後、プロナーゼEを加え、37℃で一夜反応させ、プロテアーゼ消化を行った。消化後、カーボンカラムを用いて脱塩を行った。
得られた試料を水に再溶解し、MALDIプレート上で、3−アミノキノリンとα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸からなる液体マトリックス(3AQ/CHCA)と混合し、MALDI‐MS分析装置(島津製作所製、AXIMA(登録商標)‐Resonance)により負イオンCIDによる多段階質量分析を行った。
分析1および分析2では、MS1で得られたm/z=1900.7の負イオン(コアフコースを含まない糖ペプチドの脱プロトン化体)、およびm/z=2046.8の負イオン(コアフコースを含む糖ペプチドの脱プロトン化体)のそれぞれをプリカーサとして、負イオンCIDにより開裂させ、MS2分析を行い、図3(A)および図4(A)に示すMS2スペクトルを得た。なお、MS1で得られた上記の脱プロトン化体は、いずれもペプチド部分がPhe‐Asnのアミノ酸配列を有しており、アスパラギンに糖鎖が付加した糖ペプチドの脱プロトン化体である。
コアフコースを含まない糖ペプチドから1個のプロトンが脱離した負イオン(m/z=1900.7)のMS2(図3(A))で得られた、m/z=1478.5のフラグメントイオン(2,4AR)およびm/z=1718.5のフラグメントイオン([Glycan+96]−)のそれぞれをプリカーサとして、さらにCIDにより開裂させMS3分析を行い、図3(B1)および図3(B2)に示すMS3スペクトルを得た。なお、2,4ARと[Glycan+96]−とのm/zの差は240である。
コアフコースを含む糖ペプチドから1個のプロトンが脱離した負イオン(m/z=2046.8)のMS2(図4(A))で得られた、m/z=1478.5のフラグメントイオン(2,4AR)およびm/z=1864.7のフラグメントイオン([Glycan+96]−)のそれぞれをプリカーサとして、さらに負CIDにより開裂させMS3分析を行い、図4(B1)および図4(B2)に示すMS3スペクトルを得た。なお、2,4ARと[Glycan+96]−とのm/zの差は386である。
MS1で得られたm/z=2931.2の負イオン(分析3)およびm/z=3119.3の負イオン(分析4)のそれぞれをプリカーサとして、CIDにより開裂させ、MS2分析を行い、図5(A)および図6に示すMS2スペクトルを得た。なお、m/z=2931.2の負イオン、およびm/z=3119.3の負イオンは、それぞれ、Thr‐Lys−Pro−Arg−Glu−Glu−Gln−Tyr−Asn、およびThr‐Lys−Pro−Arg−Glu−Glu−Gln−Tyr−Asn−Ser−Thrのアミノ酸配列を有しており、アスパラギンに糖鎖が付加した糖ペプチドの脱プロトン化体である。これらは、いずれも分析2の糖ペプチドと同一構造の糖鎖を有している。
図3(A)のMS2スペクトルおよび図4(A)のMS2スペクトルでは、いずれも2,4AR、BR−1、2,4AR‐1、D等のフラグメントイオンが同一のm/zを有しており、2,4ARのm/zは1478.5である。また、図3(A)および図4(A)のいずれにおいても、2,4ARよりも大きいもピーク強度の大きい[Glycan+96]−フラグメントイオンが検出されている。図3(A)および図4(A)のいずれにおいても、[Glycan+96]−フラグメントイオンは、糖ペプチド負イオン[M−H]−よりもm/zが182小さく、[M−H]−から同一の化学種が脱離したものであることがわかる。[Glycan+96]−および[M−H]−のm/zは、いずれも、分析2(図4(A))が分析1(図3(A))よりも146大きく、この差は、フコース(分子量164)から水分子が脱離したものと同一である。これらの結果から、図3(A)と図4(A)のMS2スペクトルの相違([Glycan+96]−フラグメントイオンのm/zの相違)は、糖鎖構造におけるコアフコースの有無を反映したものであるといえる。
<測定用糖ペプチドの調製>
SIGMAより購入したヒトトランスフェリンを、実施例1に準じて、トリプシンで消化した後、カーボンカラムを用いて脱塩を行った。脱塩後のトランスフェリン消化物を、80℃の0.8%TFA水溶液中で40分処理し、糖鎖還元末端のシアル酸を除去した。実施例1と同様に、セルロースマイクロチップにより精製および濃縮を行った試料を用いて、負イオンCIDによる多段階質量分析を行った。
分析5では、MS1で得られたm/z=3097.3の負イオン([M−H]−)をプリカーサとしてCID開裂させたMS2スペクトル(図7(A))、およびMS2で得られたm/z=1718.6の[Glycan+96]−をプリカーサとしてさらにCID開裂させたMS3スペクトル(図7(B))を得た。なお、m/z=3097.3の負イオンは、ペプチド部分がCys−Gly−Leu−Val−Pro−Val−Leu−Ala−Glu−Asn−Tyr−Asn−Lysのアミノ酸配列(Cys残基はカルバミドメチル化されている)を有しており、C末端から2残基目のAsnに糖鎖が付加した糖ペプチドの脱プロトン化体である。MS2スペクトル(図7(A))において、2,4ARと[Glycan+96]−とのm/zの差は240であった。
<測定用糖ペプチドの調製>
SIGMAより購入したヒトα1−酸性糖タンパク質(α-Acid glycoprotein)を、実施例1と同様にプロナーゼEで消化した後、カーボンカラムによる脱塩およびセルロースマイクロチップによる精製および濃縮を行い、この試料を用いて、負イオンCIDによる多段階質量分析を行った。
分析6では、MS1で得られたm/z=2445.0の負イオンをMS2プリカーサとしてCID開裂させてMS2分析を実施し、MS2おけるm/z=1718.6の[Glycan+96]−フラグメントイオンをMS3プリカーサとしてさらにCID開裂させ、MS3スペクトルを得た(図8(A))。なお、m/z=2445.0の負イオンは、ペプチド部分がArg−Asn−Glu−Glu−Tyr−Asnのアミノ酸配列を有しており、C末端のAsnに糖鎖が付加した糖ペプチドの脱プロトン化体である。MS2スペクトル(図8(A))において、2,4ARと[Glycan+96]−とのm/zの差は240であった。
図8(A)、図8(B)および図8(C)は、それぞれ、分析6(α1−酸性糖タンパク質)、分析1(IgG)および分析5(トランスフェリン)のマススペクトルであり、各図において上段はMS2スペクトル、下段はm/z=1718.6の[Glycan+96]−フラグメントイオンをプリカーサとして得られたMS3スペクトルである。図8の各MS3スペクトルは、いずれも略同一であることから、糖鎖がコアフコースを有していない場合も、コアフコースを有する場合(分析2および分析3)と同様に、m/zが糖鎖残基+96であるフラグメントイオンをMS3プリカーサとして得られるMS3スペクトルは、ペプチド部分の構造とは無関係に、同一のスペクトルパターンを示すことが分かる。
<測定用糖ペプチドの調製>
SIGMAより購入したヒトラクトフェリンを、実施例1と同様にプロナーゼEで消化した後、カーボンカラムによる脱塩およびセルロースマイクロチップによる精製および濃縮を行い、この試料を用いて、負イオンCIDによる多段階質量分析を行った。
MS1で得られたm/z=1619.6の負イオン(分析7)およびm/z=1819.7の負イオン(分析8)のそれぞれをMS2プリカーサとして、CIDにより開裂させ、MS2分析を行い、図9(A)および図10に示すMS2スペクトルを得た。分析7では、さらにMS2におけるm/z=1312.4の[Glycan+96]−フラグメントイオンをMS3プリカーサとしてCID開裂させたMS3スペクトル(図9(B))を得た。なお、m/z=1619.6の負イオンは、ペプチド部分がSer−Gly−Gln−Asnのアミノ酸配列を有しており、m/z=1819.7の負イオンは、ペプチド部分がSer−Gly−Gln−Asn−Val−Thrのアミノ酸配列を有しており、いずれもアスパラギンに糖鎖が付加した糖ペプチドの脱プロトン化体である。分析7および分析8のいずれも、MS2スペクトル(図9(A)および図10)において、2,4ARと[Glycan+96]−とのm/zの差は240であった。
分析7および分析8のいずれも、MS2スペクトルにおいて、m/z=1072.4の2,4ARに加えて、m/z=1312.4の[Glycan+96]−フラグメントイオンが得られている。また、分析7のMS3(図9(B))では、m/z=1072.4を有する2,4ARのピークの他、BR−1、2,4AR−1、D、0,3AR−1、C2等のMS2スペクトルと共通するフラグメントイオンが得られている。この結果から、MS2の[Glycan+96]フラグメントイオンは、2,4ARよりもさらに還元末端側の糖鎖構造を有するフラグメントイオンであることが分かる。このMS3スペクトルは、上記の分析1〜3、5、6のMS3スペクトルとは明らかにパターンが相違しており、糖鎖構造の相違を反映していることが分かる。
Claims (15)
- アスパラギンにN‐結合型糖鎖が結合した糖ペプチドを、質量分析法を用いて分析する方法であって、
糖ペプチドの負イオン由来のフラグメントイオンの中からMSnプリカーサを選定するMSnプリカーサ選定ステップ;および
前記MSnプリカーサ選定ステップで選定されたMSnプリカーサを開裂させ、MSn分析を実行するMSn分析ステップ、
をこの順に有し、
前記MSnプリカーサ選定ステップにおいて、(G+97−z)/zの質量電荷比を有するフラグメントイオンがMSnプリカーサとして選定される、糖ペプチドの分析方法(ただし、nは2以上の整数であり、Gは糖鎖残基の質量であり、zはフラグメントイオンの電荷数であり自然数である)。 - 前記MSnプリカーサ選定ステップにおいて、
糖ペプチドの負イオン由来のフラグメントイオンのピークリストと、任意の既知の糖鎖のデータベースにおける各糖鎖の質量Sxとを照合して、
前記ピークリストの中から、(Sx+79−z)/zの質量電荷比を有するフラグメントイオンが、前記MSnプリカーサとして選定される、請求項1に記載の分析方法。 - 前記MSnプリカーサ選定ステップにおいて、
糖ペプチドの負イオン由来のフラグメントイオンのピークリストから、2つのピークが抽出され、
抽出されたピークの質量電荷比の差が、予め設定された1以上の所定値のいずれかと一致するピークの組み合わせから、前記MSnプリカーサが選定される、請求項1に記載の分析方法。 - 前記1以上の所定値が、240および386であり、抽出された2つのピークのうち、質量電荷比が大きい方のフラグメントイオンが、前記MSnプリカーサとして選定される、請求項3に記載の分析方法。
- 前記MSnプリカーサ選定ステップの前に、
アスパラギンにN‐結合型糖鎖が結合した糖ペプチドを負イオン化し、MS1分析を実行するMS1分析ステップ;および
前記MS1分析ステップで得られた糖ペプチドの負イオン、または前記MS1分析ステップで得られた糖ペプチドの負イオンを開裂させて得られたフラグメントイオンを、MSn−1プリカーサとして開裂させ、MSn−1分析を実行するMSn−1分析ステップ、を有し
前記MSnプリカーサ選定ステップにおいて、前記MSn−1分析ステップで得られた糖ペプチドの負イオン由来のフラグメントイオンの中から前記MSnプリカーサが選定される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析方法(ただし、nは3以上の整数である)。 - 前記MS1分析に供されるアスパラギンにN‐結合型糖鎖が結合した糖ペプチドが、ペプチドのC末端のアスパラギン残基、またはC末端のアミノ酸残基に隣接するアスパラギン残基に、N‐結合型糖鎖が結合している糖ペプチドである、請求項5項に記載の糖ペプチドの分析方法。
- 前記MS1分析よりも前に、プロテアーゼ消化により前記糖ペプチドを調製する試料調製ステップを有し、
前記試料調製ステップにおいて、ペプチドのC末端アスパラギン残基、またはC末端のアミノ酸残基に隣接するアスパラギン残基に、N‐結合型糖鎖が結合している糖ペプチドが生成される、請求項6に記載の糖ペプチドの分析方法。 - 前記試料調製ステップにおいて、前記プロテアーゼとして、エンドペプチダーゼおよびエキソペプチダーゼの両方が用いられる、請求項7に記載の分析方法。
- 前記MSn分析ステップで得られたMSnスペクトルに基づいて、N‐結合型糖鎖の構造情報を抽出する解析ステップ、をさらに有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の分析方法。
- 前記解析ステップにおいて、
前記MSn分析ステップで得られたMSnスペクトルと、
任意の既知のN‐結合型糖鎖の質量をGxとした場合に、(Gx+97−zx)/zxの質量電荷比を有するプリカーサイオン(ただし、zxは電荷数であり自然数である)を開裂させて得られるフラグメントイオンの、既知のMSNスペクトルまたはMSNピークリストのデータベース(ただし、Nは2以上の整数である)と、
を照合することにより、前記構造情報の抽出が行われる、請求項9に記載の分析方法。 - 前記解析ステップにおいて、
前記MSn分析ステップで得られたMSnスペクトルと、
任意の糖鎖データベースに格納されている糖鎖構造に基づいて計算された、(Sx+79−zx)/zxの質量電荷比を有するフラグメントイオンの仮想MSNスペクトルまたは仮想MSNピークリスト(ただし、Nは2以上の整数であり、Sxは既知のN‐結合型糖鎖の質量であり、zxは電荷数であり自然数である)と、
を照合することにより、前記構造情報の抽出が行われる、請求項9に記載の分析方法。 - アスパラギンにN‐結合型糖鎖が結合した糖ペプチドを、質量分析法を用いて分析する方法であって、
糖ペプチドの負イオンまたは糖ペプチドの負イオン由来のフラグメントイオンをプリカーサとして開裂させて得られたマススペクトルに基づいて、N‐結合型糖鎖の還元末端単糖へのコアフコースの付加の有無の判別を行う判別ステップを有し、
前記判別ステップにおいて、所定の糖鎖由来フラグメントイオンと、(G+97−z)/zの質量電荷比を有するフラグメントイオンとの、質量電荷比の差に基づいて、糖鎖還元末端単糖へのコアフコースの付加の有無が判別される、糖ペプチドの分析方法。 - 前記判別ステップにおいて、前記所定の糖鎖由来フラグメントイオンは、N‐アセチルグルコサミンの2−3位および4−5位のC−C結合で開裂した非還元末端側のフラグメントイオンであり、
前記所定の糖鎖由来フラグメントイオンと(G+97−z)/zの質量電荷比を有するフラグメントイオンとの質量電荷比の差が240である場合は、コアフコースの付加無し、
前記所定の糖鎖由来フラグメントイオンと(G+97−z)/zの質量電荷比を有するフラグメントイオンとの質量電荷比の差が386である場合は、コアフコースの付加有り、
として、前記判別が行われる、請求項12に記載の糖ペプチドの分析方法。 - 質量分析により得られた分析データが記憶される分析データ記憶部;既存の糖鎖構造データベースから得られる構造情報が記憶されるデータベース記憶部;および前記分析データ記憶部のデータと前記データベース記憶部のデータの照合を行うためのコンピュータを備えるデータ処理部、を備える糖鎖構造解析システムを用いて、アスパラギンにN‐結合型糖鎖が結合した糖ペプチドのN‐結合型糖鎖の構造を同定するための糖鎖構造解析用プログラムであって、
前記分析データ記憶部には、糖ペプチドの負イオン由来の(G+97−z)/zの質量電荷比を有する負のフラグメントイオンをプリカーサとして、MSn分析を実行することにより取得されたMSnスペクトルまたはMSnピークリストを含むデータが記憶され、
前記データベース記憶部には、任意の既知のN‐結合型糖鎖の質量をGxとした場合に、(Gx+97−zx)/zxの質量電荷比を有するプリカーサイオン(ただし、zxは負イオンの電荷数であり自然数である)を開裂させて得られるフラグメントイオンの、既知のMSNスペクトルまたはMSNピークリスト(ただし、Nは2以上の整数である)を含むデータが記憶され、
前記分析データ記憶部のデータと前記データベース記憶部のデータとを照合することにより、両者が一致するか否かの判断、または両者の類似度のスコア付けを行うステップを、前記データ処理部のコンピュータに実行させることを特徴とする、糖鎖構造解析用プログラム。 - 質量分析により得られた分析データが記憶される分析データ記憶部;既存の糖鎖構造データベースから得られる構造情報が記憶されるデータベース記憶部;および前記分析データ記憶部のデータと前記データベース記憶部のデータの照合を行うためのコンピュータを備えるデータ処理部、を備える糖鎖構造解析システムを用いて、アスパラギンにN‐結合型糖鎖が結合した糖ペプチドのN‐結合型糖鎖の構造を同定するための糖鎖構造解析用プログラムであって、
前記分析データ記憶部には、糖ペプチドの負イオン由来の(G+97−z)/zの質量電荷比を有する負のフラグメントイオンをプリカーサとして、MSn分析を実行することにより取得されたMSnスペクトルまたはMSnピークリストを含むデータが記憶されており、
前記データベース記憶部には、任意の糖鎖データベースに格納されている糖鎖構造に基づいて計算された、(Sx+79−zx)/zxの質量電荷比を有するフラグメントイオンの仮想MSNスペクトルまたは仮想MSNピークリスト(ただし、Sxは既知のN‐結合型糖鎖の質量であり、zxは電荷数であり自然数であり、Nは2以上の整数である)を含むデータが記憶されており、
前記分析データ記憶部のデータと前記データベース記憶部のデータとを照合することにより、両者が一致するか否かの判断、または両者の類似度のスコア付けを行うステップ を、前記データ処理部のコンピュータに実行させることを特徴とする、糖鎖構造解析用プログラム。
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