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JP6103215B2 - 偽造防止用紙 - Google Patents
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JP6103215B2 - 偽造防止用紙 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば紙幣、株券、債券、商品券、宝くじ等の紙からなる有価証券類の偽造防止に関するもので、更に詳しくは、電子複写機による偽造や改竄をしようとした時にそれらの行為が極めて困難である偽造防止用紙に関する。
現在、紙は、紙幣をはじめ、株券、債券、商品券、宝くじ等々金銭的価値を有する有価証券として幅広く使用されている。この様な有価証券類に用いられている用紙には、容易に偽造又は変造出来ないように、紙自身に透かしを施したり、セキュリティスレッドを紙層中に漉き込んだり、あるいはマイクロ文字や凹版、隠し文字等の特殊な印刷を施したり、紫外線や赤外線など可視光外の波長を照射すると可視光で発光する特殊なインキで印刷したり(特許文献1)、電子複写装置で印刷の複写を行うと複写後の印刷模様に複写した事が分かるような文字や画像が出現する特殊な模様を施したり(特許文献2)、金箔や銀箔のような金属光沢を有する箔、もしくは光の干渉を用いて立体画像や特殊な装飾画像を表現し得るホログラムや回折格子のような回折構造を有する箔を転写又はシールで施し、更に再利用防止のために剥離しようとする部分的に破壊される脆性構造とした転写箔や転写シール(特許文献3)等が使用されている。
この内、セキュリティスレッドとしては、金属光沢を持つ光反射層と印刷層とをスレッド基材上に積層したものや、前記金属光沢を持つ光反射層を部分的に除去してパターン状に設けたもの、ホログラムや回折構造をスレッド基材上に有するもの(特許文献4)などが挙げられる。
特許第5067029号公報 特許第4701730号公報 特許第3684653号公報 特許第4680023号公報
しかしながら、特許文献1の偽造防止用紙では、真贋判定の祭に可視光外の波長の光を照射するための特殊な光源や検証装置が必要となり、一般の人がその場で真贋判定を行う事ができないという問題を有する。
また、特許文献2の偽造防止用紙では、電子複写装置による複製を想定した偽造防止技術であり、電子複写装置以外の方法による複製には対応していないという問題を有する。
更に、特許文献3の偽造防止用紙は、用紙に偽造防止箔やシールを転写や貼付して作製され、物理的に再剥離を試みた場合は十分な効果が得られるが、溶剤などを用いて接着層を溶かす方法に対してその効果は十分ではないという問題を有する。
また、特許文献4の偽造防止用紙でも、溶剤などによって接着層を溶かす事で、セキュリティスレッドが再利用されてしまうという問題を有する。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、溶剤による不正な改ざんや再利用を防止し、特殊な装置を用いずとも容易に不正を検知し得、且つ、偽造や改ざんが困難な偽造防止用紙を提供する事を目的としている。
本願請求項1に係る発明は、スレッド基材の一方の面に機能層を設け、他方の面に接着層を設けたスレッドを、機能層を用紙基材中に漉き込んでなるものであって、前記機能層は、特定の有機溶剤に浸漬すると、その溶剤が揮発する過程で浸漬部分に、浸漬前に対して可視光透過率又は反射率で10%以上の光学変化の差が生じ、この光学変化が不定形なまだら模様となる偽造防止用紙を特徴とする。
本願請求項2に係る発明は、請求項1に記載の偽造防止用紙において、前記特定有機溶剤が、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エチルアルコール、ベンゼン、トルエン、パークロロエチレンから選ばれる少なくとも1種を含む事を特徴とする。
本願請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の偽造防止用紙において、機能層が2種以上の混合樹脂材料で構成されている事を特徴とする。
本願請求項4に係る発明は、請求項3に記載の偽造防止用紙において、2種以上の混合樹脂材料で構成された機能層の樹脂組成割合が変化すると、前記有機溶剤に混合溶解又は分散させた時に、溶液が相溶状態から非相溶状態、又は非相溶状態から相溶状態に変化する事を特徴とする。
本願請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4に記載の偽造防止用紙において、前記機能層を構成する材料が、少なくともセルロース誘導体樹脂を含む事を特徴とする。
本願請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5に記載の偽造防止用紙において、前記機能層が単層である事を特徴とする。
本願請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6かに記載の偽造防止用紙において、前記機能層と接するか、又は可視光透明性を有する中間層を介して光学反射層が設けられている事を特徴とする。
本願請求項8に係る発明は、請求項1乃至請求項7に記載の偽造防止用紙において、前記機能層の少なくとも一部が用紙基材から露出するようにスレッドが設けられている事を特徴とする。
本願請求項9に係る発明は、請求項1乃至請求項8に記載の偽造防止用紙において、前記機能層が、前記有機溶剤に対し溶解又は透過する材料で被覆されている事を特徴とする。
即ち、本願請求項1に係る発明によれば、用紙基材に漉き込まれたスレッドは、有機溶剤に浸漬すると、その溶剤が揮発する過程によって、浸漬部分に浸漬前と比較して可視光透過率又は反射率で10%以上の光学変化の差が生じ、これが不定形なまだら模様となって機能層に発現するため、溶剤による不正な改竄を容易に検知し、且つ、スレッドの再利用を防止する事ができる。
本願請求項2に係る発明によれば、特定有機溶剤が、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エチルアルコール、ベンゼン、トルエン、パークロロエチレンから選ばれる少なくとも1種を含む事で、特定溶剤に対する検知機能を持たせる事ができる。
本願請求項3に係る発明によれば、機能層を2種類以上の混合樹脂材料で構成する事で、機能層を容易に作製する事ができる。
本願請求項4に係る発明によれば、2種以上の混合樹脂材料で構成された機能層の樹脂組成割合が変化すると、有機溶剤に混合溶解又は分散させた時に、溶液が相溶状態から非相溶状態、又は非相溶状態から相溶状態に変化するために、機能層を更に容易に作製する事ができる。
本願請求項5に係る発明によれば、機能層を構成する材料が、少なくともセルロース誘導体樹脂を含む事で、機能層を更に容易に作製することができる。
本願請求項6に係る発明によれば、機能層が単層である事から、機能層を薄膜化することができ、スレッドを薄くする事ができる。
本願請求項7に係る発明によれば、機能層と接するか、又は可視光透明性を有する中間層を介して光学反射層が設けられている事で、溶剤浸漬後に発現するまだら模様が容易に観察する事ができる。
本願請求項8に係る発明によれば、機能層の少なくとも一部が用紙基材から露出するようにスレッドが設けられている事から、本偽造防止用紙を溶剤に浸漬すると、容易に溶剤が機能層に染み込むため短時間でまだら模様が発現し、更に機能層に発現したまだら模様を直接観察する事が可能となる。
本願請求項9に係る発明によれば、機能層が、有機溶剤に対し溶解又は透過する材料で被覆された状態で設けられている事から、機能層が用紙基材から露出している部分のスレッドの耐摩擦性を向上する事ができる。
本発明によれば、溶剤に浸漬すると用紙基材中に漉き込まれたスレッドにまだら模様が発現する事で有機溶剤への浸漬を容易に検知し得、且つ、改竄やスレッドの再利用を防止することのできる偽造防止用紙を提供することができる。
本発明の一実施の形態に係る偽造防止用紙の表面側を示した図である。 図1のB領域におけるスレッドを断面して示した図である。 図1のA−Aを断面して示した図である。 本発明の一実施の形態に係る偽造防止用紙を有機溶剤に浸漬し、スレッド上に出現したまだら模様を用紙基材越しに前面側を観察した状態を示した図である。 本発明の一実施の形態に係る偽造防止用紙に適用される樹脂材料の一例を示した図である。 本発明の他の実施の形態に係る偽造防止用紙に使用されるスレッドを断面して示した図である。 図6のスレッドを漉き込んだ偽造防止用紙の表面側を示した図である。 図7のC−Cを断面して示した図である。 図7のD領域におけるスレッドを断面して示した図である。 本発明の他の実施の形態に係る偽造防止用紙に使用されスレッドを断面して示した図である。
以下、本発明の実施の形態に係る偽造防止用紙を、図1乃至図10を参照して詳細に説明する。
図面では、必要最小限の構成や材料を示しており、本発明による構成はこれに限るものではなく、例えば、回折構造やホログラムを形成した層を設けたり、ICチップ入りインレットを組み込んだりした構成等も可能である。
図1は、本発明に係る偽造防止用紙10の例えば表面側を構成する一方の面を示すもので、スレッド4が用紙基材5の中に漉き込まれて形成される。スレッド4は、図2に示すように機能層1とスレッド基材2と接着層3で+構成される。スレッド4は、スレッド基材2上の一方の面に機能層1が設けられ、スレッド基材2の他方の面には、接着層3が設けられている。
そして、このスレッド4は、図3に示すように用紙基材5の中に漉き込まれて図1に示す偽造防止用紙10が形成される。但し、機能層1は、用紙基材5から露出していないが、用紙基材5の厚みは、スレッド4が漉き込まれている部分と漉き込まれてない部分とでほぼ同じ厚みとなっているため、機能層1上を覆っている用紙基材5の厚みが薄くなり、スレッド4の機能層1は、用紙基材5越しに透けた状態で観察が可能となっている。
ここで、機能層1は、機能層1を通してスレッド基材2の状態が目視で確認できる構造である事が好ましいが、本発明の使用目的や用途によっては、機能層1に可視光不透過性を有する材料を用いる事も可能である。例えば、機能層1が可視光透過性を有する場合、図2では、機能層1を通して、機能層1の裏側に位置するスレッド基材2を目視にて観察できるが、機能層1が可視光不透過性を有する場合、スレッド基材2は機能層1に隠れて観察不可能となる。
上記構成により、偽造防止用紙10を特定の有機溶剤に浸漬した場合、スレッド4が漉き込まれている部分Bが図4に示すように、まだら模様が発現される。図4では、偽造防止用紙10に漉き込まれたスレッド4上の機能層1にまだら模様6が発現されているのが、用紙基材5越しでも観察できる事を示している。
まだら模様6は、図1や図3に示される偽造防止用紙10を特定の有機溶剤に浸漬させ、その溶剤が揮発する過程で機能層1上に発現する。このまだら模様6を生じさせる有機溶剤は、偽造や改ざんで使用が想定されるものを予め選択し、この選択された有機溶剤でまだら模様6を生じさせるような樹脂材料によって機能層1が構成される。
まだら模様6は、本発明においては、透明な表層部分に、不透明な部分が不規則な浮島状に混在している状態、又は、不透明な表層部分に透明な部分が不規則な浮島状に混在している状態を意味する。
これらの不規則な浮島状となった不透明部又は透明部は、各々溶剤浸漬前の状態に比べて、透過率又は反射率が10%以上の差となる光学変化が生じる。また、これらの島の数や大きさは不規則に発生する。
上記有機溶剤に浸漬した後の偽造防止用紙10に漉き込まれたスレッド4を表面から観察すると、図4に示すようにスレッド4に、まだら模様6が発生しており、まだら模様6は、透過率又は反射率が10%以上の差となる透明部および不透明部からなるため、用紙基材5越しでも目視で観察が可能である。
上記樹脂材料は、一例として、例えば図5に示すように機能層1を構成する2種類の混合樹脂材料であって、メチルエチルケトンとトルエンの混合液に混合溶解又は分散させた時に、その樹脂組成割合の変化によって、相溶状態から非相溶状態、又は非相溶状態から相溶状態に変化する樹脂材料が組み合わされる。
ここで、図5に記載の材料は、本発明に用いられる樹脂材料の組み合わせの一例であり、本発明はこれらに限るものではなく、他の樹脂材料も機能層1として使用可能である。
例えば、アクリル(BR―75)とセルロースアセテートブチレート(CAB)の組み合わせを考えた場合、セルロースアセテートブチレート(CAB)の樹脂組成割合が10%や30%や50%の時は○(相溶する)であるが、70%になると×(相溶しない)となる。このような樹脂の組み合わせを用いる事で、本発明に記載の偽造防止用紙に使用されるスレッドの機能層1を、より容易に得る事ができる。
また、本発明は上記実施の形態に限るものでなく、図6に示すスレッド9を漉き込んで、図7に示す偽造防止用紙11を形成するように構成してもよい。このスレッド9は、スレッド基材2上に印刷層7と機能層1が設けられ、その反対面に、光学反射層8と接着層3が設けられている。印刷層5は、スレッド基材2上に部分的に設けられている。機能層1とスレッド基材2は、可視光透過性を有しており、機能層1側から観察した場合には、印刷層5と光学反射層8が観察可能となっている。
上記スレッド9は、印刷層7や機能層1が表面となるように用紙基材5の中に漉き込み、この漉き込まれたスレッド9が図8に示すように用紙基材5から部分的に露出される。このため、偽造防止用紙11においては、スレッド9の表面に設けられた印刷層7と機能層1の一部を直接観察する事ができる。この魚意に本構成では、印刷層7が設けられているため、印刷層7による文字(10000 ○◎)が観察でき、印刷層7以外の部分は、機能層1とスレッド基材2が透明であるため、光学反射層6による反射光を観察することができる。
なお、上記スレッド9は、用紙基材5から部分的に露出していればよく、露出部の形状や大きさ、場所、断面形状などは、図7や図8で示したものに限定されるものではない。
上記構成により、偽造防止用紙11を溶剤に浸漬すると、図9に示すようにスレッド9に機能を発現させた状態となる。この状態で、スレッド9を観察すると、まだら模様6は、発現していない部分に比べて、可視光反射率で10%以上の光学変化の差が生じており、印刷層7による文字(10000 ○◎)は、まだら模様6によってその一部が隠されてしまい、観察が困難な状態となる。
この結果、まだら模様6の発現によって、偽造防止用紙11におけるスレッド9は、溶剤浸漬前と比べて外観に明確な変化が生じており、その変化を目視にて観察する事が可能となり。
さらに、本発明は、上記実施の形態に限ることなく、例えば図10に示すようにスレッド13を構成するようにしてもよい。このスレッド13は、被覆層12と機能層1と印刷層7、更にスレッド基材2と光学反射層8と接着層3から構成され、印刷層7は部分的に設けられている。このスレッド13は、上記図6におけるスレッド9の機能層1側に、被覆層12が追加して設けられた構成となっている。
被覆層12は、機能層1にまだら模様6を生じさせる特定の有機溶剤に対し、溶解又は透過する材料で構成される。被覆層12を設ける事で、本発明による特定の有機溶剤に対する機能を保持しつつも、目的や用途に応じて、スレッド13の表面耐侯性や耐摩擦性等の物性を向上させる事が可能となる。
次に、各層について詳細に説明する。
(機能層)
上記機能層1は、可視光透過性を有する材料が選択され、特定の有機溶剤に浸漬しその溶剤が揮発する過程において、浸漬領域表面に、浸漬前に対して可視光透過率又は反射率が10%以上の光学変化の差を有するまだら模様6を発現する機能を有する層である。
特定の有機溶剤は、偽造や改ざんで使用が想定されるものが選択され、例えば、通常の生活において入手が容易であり、様々な生活用品で使用される頻度の高い、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エチルアルコール、ベンゼン、トルエン、パークロロエチレン等から選ばれる少なくとも1種を含む事が好ましい。
更に、機能層1を構成する材料として2種類以上の混合樹脂材料を用いると、容易に機能層1を作製する事が可能となる。
また、これら2種類以上の混合樹脂材料を、予め選定された特定有機溶剤に混合溶解又は分散させた時に、その樹脂組成割合の変化によって、相溶状態から非相溶状態、又は非相溶状態から相溶状態に変化するような樹脂材料の組み合わせとする事で、更に容易に作製可能となる。このような樹脂材料の組み合わせ例は、上述したように図5に示す。
具体的には、機能層1に用いられる材料は、図5に示される樹脂の組み合わせのなかで、○(相溶する)と、△(一部相溶する)や×(相溶しない)の境界にある樹脂組成割合の混合樹脂である事が好ましい。例えばアクリル(BR―75)とセルロースアセテートブチレート(CAB)の組み合わせの場合、BR−75:CAB=50%:50%、又はBR−75:CAB=30%:70%の樹脂組成割合が好ましい。このような樹脂組成割合を用いる事で、まだら模様6が更に発現し易い機能層1とすることが可能である。
尚、本発明において「相溶する」とは、溶剤に溶解又は分散された混合樹脂溶液、又は、混合樹脂溶液を乾燥させて得られた固形物が、混合前と比べて透明性に変化がない状態を指す。
混合溶解又は分散された樹脂が相溶性か非相溶性かを判定するには、目視による濁度法が簡便で信頼性がある。例えば、溶剤に溶解又は分散された混合前の樹脂が透明であり、混合後の樹脂溶液が透明であるか、又は、混合後の樹脂溶液を乾燥させてフィルム状試料を作製し、そのフィルム状試料が透明な場合、その試料は相溶性であると判定する。これは目視の場合、可視光の波長(約500nm 程度)の大きさを最小単位と見なしている事になる。よって、透明な場合は、可視光波長以上では濃度と組成が均一である、即ち相溶性であると言える。一方、混合された溶液又は混合乾燥固形物が不透明な場合、濃度と組成が不均一であり、不均一性の原因は2種類の異なる高分子が非相溶性であることに由来する。
また、上記機能層1のまだら模様6を発現させる効果を更に容易にする為に、特定の有機溶剤に対する、複数の樹脂材料それぞれの溶解速度が大きく異なるように設計する事が好ましい。このように設計する事で、相溶状態と非相溶状態の境界となるような樹脂配合割合に調整された機能層1は、特定の有機溶剤に浸漬しその溶剤が揮発する過程において、局所的にその樹脂割合のバランスを崩して非相溶状態又は相溶状態へと変化し易くなる。
特定有機溶剤に対する溶解速度を調整する際は、それぞれの樹脂材料の平均分子量や結晶性、極性、溶解度パラメーターを参考にすると良い。
一般に、平均分子量の高い樹脂材料は溶解速度が遅く、平均分子量の低い樹脂材料は溶解速度が早い。例えば鎖状のポリマー樹脂では、分子鎖が長い(平均分子量が高い)ほど、ポリマー分子間の引力が大きく、溶媒分子による分子鎖の絡まりを解きほぐして分散させ難くなる。また、ポリマー分子間の引力は、ポリマー分子が互いに接する面が大きいほど、即ち、ポリマー分子配向が秩序正しい(結晶性である)ほど大きくなる。従って、鎖状ポリマーでは、平均分子量(重合度)が大きく結晶性の割合が大きいほど、溶媒に溶けにくくなる。
また、樹脂材料の溶解性を決めるもう一つの因子が、溶媒分子との親和性である。例えば極性を持つポリマーは極性溶媒に容易に溶けるが、非極性溶媒には溶けにくいという傾向があり、非極性のポリマーはこの逆の傾向になる。この親和性の強さを判断する因子に溶解度パラメーター(SP値)δがある。このδ値は、下式で表され、ポリマーと溶媒分子のδ値が近いほど、原則的に溶解性が高くなる。
δ=ΔE/V …(1)
ΔEは蒸発エネルギー、Vはモル体積
(1)式における、樹脂材料の主なδ値として、酢酸ビニル(9.1)、ポリメチルメタクリレート(9.2)、塩化ビニル(9.3)、酢酸ビニル(9.4)、ニトロセルロース(10.1)、メタクリレート樹脂(10.7)、酢酸セルロース(11)、セルロースジアセテート(11.4)、ポリスチレン(8.6〜9.7)等が公知の文献にて示されている。また、溶剤の主なδ値として、シクロヘキサン(8.2)、酢酸ブチル(8.5)、トルエン(8.9)、酢酸エチル(9.1)、メチルエチルケトン(9.3)、テトラヒドロフラン(9.5)、アセトン(10)、エチルアルコール(12.7)、水(23.4)等が公知の文献にて示されている。
例えば、溶剤Aに対する溶解速度を上げたい場合には、溶剤Aに近い溶解パラメーターを有する樹脂材料を選択すれば良く、逆に溶剤Aに対する溶解速度を下げたければ、溶剤Aと異なる溶解パラメーターを有する樹脂材料を選択すれば良い。
上記機能層1に用いる材料としては、例えば、ポリエチレン、アクリル、ポリエステル、セルロース誘導体、塩化ビニル、酢酸ビニル等、一般的な熱可塑性樹脂を用いる事ができる。特に、少なくともニトロセルロースやセルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体樹脂材料を含むような構成にすると、比較的容易に作製する事が可能である。
機能層1の塗布方法は、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷などの公知の印刷手法を用いる事が可能である。
(スレッド基材)
上記スレッド基材2は、機能層1を支持する為に設けられる。
スレッド基材2に用いる材料は、プラスチックフィルム基材が好ましい。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)などを用いる事ができるが、機能層1を設ける時にかかる熱や圧力等によって変形や変質の少ない材料を用いることが望ましい。但し、用途や目的によっては紙や合成紙、プラスチック複層紙や樹脂含浸紙等をスレッド基材2として用いても良い。
また、本図面には表記していないが、スレッド基材2は必ずしも機能層1と接するように設けられる必要はなく、基材2と機能層1の間に中間層等を設けても良い。
(印刷層)
上記印刷層7は、全面又は部分的に、任意の文字や絵柄等何らかのパターンを設ける層で、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷など、公知の印刷法によって形成する事ができる。
また、印刷層7として、照明角度又は観察角度に応じて色が変化する機能性インキを使用してもよい。このような機能性インキとしては、例えば、光学的変化インキ(Optical Variable Ink)、カラーシフトインキ及びパールインキが挙げられる。
或いは、印刷層7は、トナーを用いて形成してもよい。この場合、例えば、帯電性を持ったプラスチック粒子に黒鉛及び顔料等の色粒子を付着させたトナーを準備する。そして、帯電による静電気を利用して、トナーを基材に転写させ、これを加熱し定着させることで印刷層7を形成する。
また、印刷層7として、回折構造形成層やホログラフィック画像形成層を設け、回折光やホログラム画像による情報や光学変化を付与しても良い。
(光学反射層)
上記光学反射層8は、機能層1の可視光透過率、或いは可視光反射率が10%以上の差の光学変化によるまだら模様6を容易に観察できるようにする為に設けられる。用いられる材料としては、例えば、TiO2、Si2O3、SiO、Fe2O3、ZnS等の屈折率の高い材料、或いは光反射効果の高いAl、Sn、Cr、Ni、Cu、Au等の金属材料が挙げられる。また、膜厚は、10〜500nmで形成するのが望ましく、真空蒸着法、スパッタ法などの公知の薄膜形成方法を用いる事ができる。
光学反射層8は全面に設けても良いが、文字や絵柄等の形状で部分的に設けても良い。この場合、意匠性が向上し、加工がより複雑になる為、より高い偽造防止効果を付与する事が可能となる。
尚、光学反射層8を部分的に設ける方法としては、溶解性の樹脂を部分的に形成した後に光学反射層8を設け、溶解性樹脂とその部分の光学反射層8を洗浄して除去する方法や、光学反射層8として金属薄膜層を用い、金属薄膜層の上に耐酸或いは耐アルカリ性樹脂を用いて部分的に設けた後、金属薄膜を酸やアルカリでエッチングする方法、或いは光を露光する事によって、溶解する或いは溶解し難くなる樹脂材料を塗布し、所望のパターン状のマスク越しに露光した後、不要部分を洗浄或いはエッチングで除去する方法等が挙げられる。尚、このような方法は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、公知の技術が適宜利用可能である。
(接着層)
上記接着層3は、用紙基材5の中に漉き込まれたスレッドを用紙基材5に固定するため為に設けられる。その主となる材料は、好ましくは、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが用いられる。接着層3を設ける方法としては、グラビア印刷法やスクリーン印刷法等の公知の印刷法が適宜用いられる。
(被覆層)
上記被覆層12は、機能層1の特定の有機溶剤に対する機能を保持しながら、物理化学的な損傷その他から機能層1を保護する為に設ける層である。
被覆層12に用いられる材料は、予め選択された特定有機溶剤に対し溶解又は透過する性質を有する必要がある。例えば、特定有機溶剤をメチルエチルケトン・トルエン混合溶剤とした場合、被覆層12として選択可能な材料は、メチルエチルケトン・トルエン混合溶剤で溶解又は透過するアクリルやセルロースアセテートブチレート等が挙げられる。
機能層12は、要求される機能に応じてフィラーやワックス等の添加剤を入れる事で、物理的強度や表面摩擦係数を調整する事が可能である。
以上、本発明の偽造防止用紙を構成する各層について詳細に説明したが、更に意匠性を向上させるべく各層を着色したり、光学反射層8を多層構成とする事で多層干渉膜層にしてもよい。
以下、本発明の実施の形態に基づいて具体的な実施例を作製して詳細に説明する。
(実施例1)
上記スレッド4を、用紙基材5に漉き込んで偽造防止用紙10を作製する。
まず、スレッド基材2としては、厚み12μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、その片面に下記組成物からなるインキをグラビア印刷法にて厚さ2μmとなるように印刷、乾燥し、機能層1を設けた。そして、スレッド基材2の反対面に接着層7として、下記の組成物からなるインキをグラビア印刷法にて厚さ10μmとなるように全面に設けスレッド原反を作製した後、更に、幅7mmの短冊状にスリット加工を行い、スレッド4を作製した。次に、偽造防止用紙10における用紙基材5の材料として、下記組成物からなる用紙材料を水中で叩解してスラリー(液状用紙材料)を作り、濃度1.5%のスラリーとした。次に、漉き網を手漉き装置にセットし、この漉き網に通常の量の半分の量のスラリーを流し込んで一度脱水し、前記スレッド9を所望の位置に配置した。ここで、更に通常の半分の量のスラリーを漉き網に流し込んで脱水し、1時間自然乾燥させた後、10分間90℃の熱風乾燥装置で完全に乾燥させる事で、坪量100g/mの偽造防止用紙10を作製した。
「機能層インキ組成物」
アクリル樹脂(BR−75) 5部
セルロースアセテートブチレート(CAB) 5部
メチルエチルケトン 45部
トルエン 45部
「接着層インキ組成物」
ポリエステル粘着剤 40部
酢酸エチル 60部
「用紙基材組成物」
針葉樹パルプ 89部
填料(白色顔料) 10部
サイズ剤(ロジン) 0.5部
サイズ定着剤(硫酸バンド)
こうして作製した実施例1の偽造防止用紙は、外観上はスレッドが漉き込まれた偽造防止用紙であり、スレッドは強固に接着しており、抜き取る事ができなかった。また、偽造防止用紙上に文字や画像などの印刷が可能であり、この偽造防止用紙をメチルエチルケトンとトルエンを1:1で混合した溶剤に10秒間浸漬した後に室温にて自然乾燥したところ、偽造防止用紙に漉き込まれた無地のスレッドに白いまだら模様が発生したため、この偽造防止用紙を特定の溶剤に浸漬した痕跡を、まだら模様として目視で確認する事が可能であった。
(実施例2)
上記スレッド9を、用紙基材5に窓開き状に漉き込んだ偽造防止用紙11を作製する。
スレッド基材2としては、厚み12μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、その片面に下記組成物からなるインキをスクリーン印刷法にて”10000”と”○◎”の文字からなる黒色の文字を連続的に設けた後に50℃のオーブンで3時間乾燥させ、印刷層7とした。
次に、上記スレッド基材2上の印刷層7と同じ面の全面に、下記組成物からなるインキをグラビア印刷法にて厚さ2μmとなるように印刷、乾燥し、機能層1を積層した。そして、スレッド基材2の反対面に、光学反射層8としてアルミニウムを真空蒸着法にて50nmの膜厚で形成した後、更に、接着層7として、下記の組成物からなるインキをグラビア印刷法にて厚さ10μmとなるように全面に設けスレッド原反を作製した後、更に、幅7mmの短冊状にスリット加工を行い、スレッド9を作製した。次に、偽造防止用紙11における用紙基材5の材料として、下記組成物からなる用紙材料を水中で叩解してスラリー(液状用紙材料)を作り、濃度1.5%のスラリーとした。次に、窓開き状の漉き網を手漉き装置にセットし、この漉き網に通常の量の半分の量のスラリーを流し込んで一度脱水し、上記スレッド9を窓開き部分に配置した。ここで更に通常の半分の量のスラリーを漉き網に流し込んで脱水し、1時間自然乾燥させた後、10分間90℃の熱風乾燥装置で完全に乾燥させる事で、坪量100g/mの偽造防止用紙11を作製した。
「印刷層インキ組成物」
高分子メタクリル(PMMA)樹脂 15部
低粘性ニトロセルロース 45部
黒色顔料(カーボンブラック) 5部
シクロヘキサノン 35部
「機能層インキ組成物」
アクリル樹脂(BR−75) 5部
セルロースアセテートブチレート(CAB) 5部
メチルエチルケトン 45部
トルエン 45部
「接着層インキ組成物」
ポリエステル粘着剤 40部
酢酸エチル 60部
「用紙基材組成物」
針葉樹パルプ 89部
填料(白色顔料) 10部
サイズ剤(ロジン) 0.5部
サイズ定着剤(硫酸バンド) 0.5部
こうして作製した実施例2の偽造防止用紙は、スレッドが用紙基材の窓開き部分から露出しており、露出部からスレッドの印刷層である”10000”と”○◎”の文字をはっきりと観察する事ができ、更にこのスレッドは用紙基材と強固に密着しており、用紙基材から抜き取る事ができなかった。
また、この偽造防止用紙をメチルエチルケトンとトルエンを1:1で混合した溶剤に10秒間浸漬した後に室温にて自然乾燥したところ、偽造防止用紙に漉き込まれたスレッドに白いまだら模様が発生し、上記印刷層の”10000”や”○◎”の文字が、この白いまだら模様に隠れてしまい判読が不能となり、この偽造防止用紙を特定の溶剤に浸漬した痕跡を目視にて確認する事が可能であった。
なお、本発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。更に、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより、種々の発明が抽出され得る。
例えば実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
本発明によれば、有機溶剤による不正な改ざんや再利用を防止、検知する事が可能なラベルを提供する事が可能となる。このラベルを必要な物品に取り付ける事によって、有価証券やブランド品、証明書、個人認証媒体等の偽造や改ざんを防止し、真正品であることを証明する機能を付与する事が可能となる。
1 … 機能層
2 … スレッド基材
3 … 接着層
4、9 … スレッド
5 … 用紙基材
6 … まだら模様
7 … 印刷層
8 … 光反射層
10、11 … 偽造防止用紙
12 … 被覆層

Claims (9)

  1. スレッド基材の一方の面に接着層が設けられ、他方の面に機能層が設けられたスレッドを用紙基材中に漉き込んでなるものであって、前記機能層は、有機溶剤に浸漬しその溶剤が揮発する過程で、浸漬部分が、浸漬前に対して可視光透過率又は反射率10%差以上の光学変化部分からなるまだら模様を形成する事を特徴とする偽造防止用紙。
  2. 前記有機溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エチルアルコール、ベンゼン、トルエン、パークロロエチレンから選ばれる少なくとも1種を含む事を特徴とする、請求項1に記載の偽造防止用紙。
  3. 前記機能層が2種以上の混合樹脂材料で構成されている事を特徴とする、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の偽造防止用紙。
  4. 前記2種以上の混合樹脂材料で構成された機能層の樹脂組成割合が変化すると、前記有機溶剤に混合溶解又は分散させた時に、溶液が相溶状態から非相溶状態、又は非相溶状態から相溶状態に変化する事を特徴とする、請求項3に記載の偽造防止用紙。
  5. 前記機能層を構成する材料が、少なくともセルロース誘導体樹脂を含む事を特徴とする、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の偽造防止用紙。
  6. 前記機能層が単層である事を特徴とする、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の偽造防止用紙。
  7. 前記機能層と接するか、又は可視光透明性を有する中間層を介して光学反射層が設けられている事を特徴とする、請求項1乃至請求項6の何れかに記載の偽造防止用紙。
  8. 前記機能層が、少なくともその一部が用紙基材から露出するように設けられている事を特徴とする、請求項1乃至請求項7の何れかに記載の偽造防止用紙。
  9. 前記機能層が、前記有機溶剤に対し溶解又は透過する材料で被覆された状態で設けられている事を特徴とする、請求項1から請求項8の何れかに記載の偽造防止用紙。
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