ターゲット体の位置に関する情報を保持していない場合、X線発生装置は、基板に埋設されたターゲット体の位置を検出するために、ターゲット部の所定領域内で電子ビームを走査させて、走査させた結果からターゲット体の位置情報を取得する必要がある。X線発生装置が所定の走査範囲内において電子ビームを水平方向に順次走査させる場合、一般的には鋸波状の制御信号に基づいて偏向コイルを動作させることが考えられる。例えば、図19に示すターゲット部の走査領域において、水平方向(X軸方向)に電子ビームを走査させる場合、X線発生装置は、水平方向に電子ビームを偏向させるための磁力を発生する偏向コイル(スキャンコイル)を動作させる。この場合、X線発生装置は、図20(A)に示すような鋸波状の制御信号に対応した鋸波状の入力電圧で偏向コイルを動作させる。
加えて、X線発生装置は、垂直方向(Y軸方向)に電子ビームを走査させるための磁力を発生する偏向コイル(スキャンコイル)を併用することにより、ターゲット部上において図19に示す矢印の走査経路で電子ビームを走査させることができる。矢印で示した走査経路の内、実線の矢印は、ターゲット部に入射した電子ビームに基づく入射信号(ターゲット信号)をX線発生装置が取得するための走査経路を示す。点線の矢印は、次の水平方向(X軸方向)の走査の開始部へ折り返すための走査経路を示す。図19に示すようにターゲット部には、走査範囲のX軸方向の端部領域(図面上での右側端部領域)において、Y軸方向全体に延在するようなターゲット体23が設けられている。
上述のように電子ビームを走査させた場合において、X線発生装置が、偏向コイルを動作させる制御信号と同期して、ターゲット信号(例えば、ターゲット部における吸収電子量)を取得すると、ターゲット体の吸収電子量が基板の吸収電子量よりも小さい場合には、理想的には図20(B)に示すような関係で吸収電子量の変化が見られる。すなわち、X線発生装置が、ターゲット体に電子ビームを出射している間は、吸収電子量が小さくなる。図21に、X線発生装置が図19に示すターゲット部の走査領域において図20(A)に示すような鋸波状の制御信号によって電子ビームを走査させ、図20(B)に示すような理想的な吸収電子量の変化を持ったデータが得られた場合の画像を示す。図21に示す画像における領域Dがターゲット体23の位置を示している。
対して、X線発生装置が、実際に、図19に示すターゲット部の走査領域において、電子ビームを走査させることで吸収電子量に関するデータを取得し、それに基づいて作成された画像を図22に示す。図22に示すように、実際にはターゲット体23がない位置に、ターゲット体23を示す像と類似した像である虚像Fが発生してしまう場合があり、ターゲット体の位置に関する情報を保持していない場合には、その判別が困難となる場合がある。従って、X線発生装置は、ターゲット体23に関する正確な位置情報を取得することが困難な場合があった。
本発明者らは鋭意研究の結果、該虚像Fは以下のような原因に基づいて発生することを発見した。図23(A)に示す点線のような制御信号に基づいて、X線発生装置が偏向コイルを動作させた場合、発生する磁場は、理想的には制御信号に同期する。しかしながら、実際には、磁場は制御信号の急激な変化(時間軸に対して垂直または垂直に近い角度での立ち上がりまたは立下りであって、この場合は急激な立下り)に追随できず、あたかも図23(A)に示す実線のような制御信号によって制御されたような特性を示す磁場が発生してしまう。この結果、制御信号に対応した磁場を発生することができず、制御信号と発生する磁場にずれが発生してしまう。
具体的には、図23(A)に示す期間aにおいて、X線発生装置が予定している電子ビームの走査箇所と、実際に電子ビームを走査させている箇所とがずれてしまうため、X線発生装置は、予定している走査箇所における正確な吸収電子量を得ることができない。
この理由は、制御信号の立下りに応じて、電子ビームが次の水平走査の開始部へ折り返すために要する時間は、理想的には0であるが、実際には偏向コイルで発生した磁場の変化に要する時間に起因して、時間a1を必要とするためである。そして、X線発生装置は、図23(A)に示す点線のような制御信号と同期してターゲット信号を取得するために、期間aにおける時間a1の間、折り返し経路上においてターゲット信号を取得してしまう。X線発生装置は、この折り返し経路上において取得したターゲット信号を、次回の水平走査における初期段階の時間a1分のターゲット信号と認識してしまうことにより、虚像Fを含む画像を作成してしまう場合がある。つまり、水平走査した後の、次の水平走査における初期段階である期間aの間にX線発生装置が取得するターゲット信号は、始まりから時間a1に相当する時間までは前回の水平走査の折り返し経路上のターゲット信号であり、それ以降は正しい走査経路上ではあるものの、X線発生装置が当該時間に予定している走査箇所とはズレ(遅れ)が生じている。このように、鋸波の立下り部分のような、偏向コイルにより発生する磁力による磁場が追随できない急激な制御信号の変化によって、X線発生装置が予定している走査箇所と、偏向コイルの動作により実際に走査している箇所とがずれてしまう。これにより、X線発生装置は、ターゲット体23に関する正確な位置情報を取得することが困難となる場合がある。
本発明は、この知見に基づき、ターゲット体の正確な位置情報を取得し得るX線発生装置を提供することを目的とする。
本発明に係るX線発生装置では、電子ビームを出射する電子銃部と、基板と、該基板に埋設されており電子ビームの入射によりX線を発生する材料からなるターゲット体と、を有するターゲット部と、電子銃部から出射された電子ビームを、磁力によって基板の電子ビームの入射面に沿う第一方向と第一方向に直交する第二方向に偏向可能な電子ビーム偏向部と、第一方向に電子ビームを偏向させるための第一の制御信号又は第二方向に前記電子ビームを偏向させるための第二の制御信号を電子ビーム偏向部に出力して、電子ビーム偏向部を制御する制御部と、ターゲット部に入射した電子ビームに基づく入射信号を検出する検出部と、検出部が検出した入射信号に基づいて、ターゲット部内のターゲット体の位置情報を取得するターゲット体位置情報取得部と、を備え、制御部は、第一の制御信号として、立下りと立ち上がりとを含み、且つ立下りから立下り後に立ち上がるまで、または立ち上がりから立ち上がり後に立ち下がるまで所定期間有する波形である制御信号を出力することを特徴とする。
本発明に係るX線発生装置は、第一の制御信号として、立下りと立ち上がりとを含み、且つ立下りから立ち下り後に立ち上がるまで、または立ち上がりから立ち上がり後に立ち下がるまで所定期間有する波形の制御信号を出力するようにしているので、所定期間を利用して、磁力による磁場を確実に所望の状態とすることができる。よって、X線発生装置は、制御信号の変化に対して電子ビーム偏向部が追随できなくなることによって、X線発生装置が予定している走行箇所と、電子ビーム偏向部の動作により実際に走査している箇所とがずれてしまうことを防止することができる。これにより、X線発生装置は、ターゲット体の正確な位置情報を取得することができる。
制御部は、第一の制御信号として、立ち上がり及び立下りの一方が他方と比して急峻な波形を有する制御信号を出力し、所定期間は急峻な波形の後に設けられた、波形の変化が無い期間である第一の休止期間でもよい。この場合、X線発生装置は、急峻な波形後の休止期間によって、急峻な波形の前の制御信号に基づく磁力による磁場と、急峻な波形の後の制御信号に基づく磁力による磁場とを確実に分けることができる。よって、X線発生装置は、制御信号の変化に対して電子ビーム偏向部が追随できなくなることを防止することができる。
制御部は、第二の制御信号として、第一の休止期間に同期した第二の休止期間を有する制御信号を出力してもよい。この場合、X線発生装置は、第一の制御信号が休止期間であるタイミングで、第二の制御信号も休止期間となるので、走査されない箇所が増えてしまうことを防止することができる。
制御部は、第一の制御信号として、立下りから立下り後に立ち上がるまで、及び立ち上がりから立ち上がり後に立ち下がるまで所定期間有する波形である制御信号を出力してもよい。この場合、X線発生装置は、制御信号に対して、適切な磁場を確実に追随させることができる。
制御部は、第一の制御信号として、三角波の制御信号を出力してもよい。この場合、X線発生装置は、簡単な制御信号を用いて、制御信号に対して、適切な磁場を確実に追随させることができる。
制御部は、第二の制御信号として、立下りから立下り後に立ち上がるまで、及び立ち上がりから立ち上がり後に立ち下がるまで所定期間有する波形の制御信号を出力する。この場合、X線発生装置は、制御信号に対して、適切な磁場を確実に追随させることができるとともに、走査経路を急激な変化の少ない連続的なものにすることができる。よって、X線発生装置は、X線発生装置が予定している走行箇所と、電子ビーム偏向部の動作により実際に走査している箇所とがずれてしまうことをさらに防止することができる。
本発明によれば、ターゲット体の正確な位置情報を取得し得るX線発生装置を提供することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
まず、図1を参照して、本実施形態に係るX線発生装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係るX線発生装置を示す概略構成図である。
X線発生装置1は、開放型であり、使い捨てに供される密封型と異なり、真空状態を任意に作り出すことができ、ターゲット部Tや電子銃部3のカソード等の交換を可能にしている。X線発生装置1は、動作時に真空状態になり、導電性材料(例えば、ステンレスなど)からなる円筒形状の筒状部5を有している。筒状部5は、下側に位置し、電子銃3を収容する電子収容部5aと上側に位置し、ターゲット部Tを保持するターゲット保持部5bとからなる。ターゲット保持部5bはヒンジ(不図示)を介して電子銃収容部5aに取り付けられている。したがって、ターゲット保持部5bが、ヒンジを介して横倒しになるように回動することで、電子銃収容部5aの上部を開放させることができ、電子銃収容部5a内に収容されている電子銃部3(カソード)へのアクセスを可能にする。なお、以降、ターゲット部T側を上方、電子銃3側を下方とする。
ターゲット保持部5b内には、電子ビーム集束部として機能する筒状のコイル部7と、電子ビーム偏向部として機能する、筒状のコイル部9とが設けられる。コイル部9は、通電によって磁力を発生するスキャンコイルである。ターゲット保持部5b内では、コイル部7,9の中心を通るよう、筒状部5の長手方向に電子通路11が延在している。
コイル部9は、図2に示すように、電子ビームEBをX軸方向(基板21の電子ビームEBの入射面に沿う第一方向)に偏向させる、X軸方向に設けられたコイル部9xの組と、電子ビームEBをY軸方向(第一方向に直交する第二方向)に偏向させる、Y軸方向に設けられたコイル部9yの組とからなる。以降、第一方向をX軸方向、第二方向をY軸方向とする。なお、第一方向をY軸方向、第二方向をX軸方向としてもよい。
再び図1を参照する。電子通路11はコイル部7,9で包囲される。ターゲット保持部5bの下端にはディスク板13が蓋をするように固定される。ディスク板13の中心には、電子通路11の下端側に一致させる電子導入孔13aが形成されている。
ターゲット保持部5bの上端は円錐台に形成され、頂部には、電子通路11の上端側に位置してX線出射窓を形成する透過型のターゲット部Tが装着されている。ターゲット部Tは、接地させた状態で電子通路11の上端部を真空封止するように、図示しない着脱構造によって着脱自在に固定されている。これにより、X線発生装置1は、消耗品であるターゲット部Tの交換も可能になる。
電子銃収容部5aには真空ポンプ17が固定される。真空ポンプ17は、筒状部5内を高真空状態にする。すなわち、X線発生装置1が真空ポンプ17を装備することによって、ターゲット部Tやカソード等の交換が可能になっている。
筒状部5の基端側には、電子銃部3との一体化が図られたモールド電源部19が固定されている。モールド電源部19は、電気絶縁性の樹脂(例えば、エポキシ樹脂)でモールド成形させたものであると共に、金属製のケース内に収容されている。
モールド電源部19内には、高電圧(例えば、−数十kV以下)を発生させるようなトランスを構成させた高圧発生部(不図示)が封入されている。モールド電源部19は、下側に位置して直方体形状をなすブロック状の電源本体部19aと、電源本体部19aから上方に向けて電子銃収容部5a内に突出する円柱状のネック部19bとからなる。高圧発生部は、電源本体部19a内に電気絶縁性の樹脂によって封入されている。ネック部19bの先端部には、電子通路11を挟むように、ターゲット部Tに対峙させるよう配置させた電子銃部3が装着されている。モールド電源部19の電源本体部19a内には、高圧発生部に電気的に接続させた電子放出制御部(不図示)が封入されている。電子放出制御部は、電子銃部3に接続されており、電子の放出のタイミングや管電流などを制御している。
ターゲット部Tは、図3にも示されるように、基板21と、ターゲット体23と、を有しており、X線発生装置1におけるX線出射部となるX線出射窓を兼ねた透過型ターゲットとなっている。基板21は、電子入射によるX線の発生が少なく、X線透過性および放熱性に優れた材料(例えばダイヤモンド)からなる平板状部材である。基板21は、互いに対向する第一主面21aと第二主面21bとを有している。基板21の厚みは、例えば100μm程度に設定されている。ターゲット体23は、基板21の第一主面21a側に位置している。ターゲット体23は、基板21とは異なる材料からなる金属(例えば、タングステン、金、白金等)によって円柱状に形成されており、ナノサイズ(例えば、外径が100nm程度)とされている。本実施形態では、ターゲット体23の金属として、タングステン(W)を採用している。なお、ターゲット部Tにおいては、第一主面21a側に電子ビームが入射し、第二主面21b側から発生したX線が取り出される。よって、第一主面21aが電子入射側の面であり、第二主面21bがX線出射側の面となる。また、図3では、ターゲット部Tには、ターゲット体23が1つのみ設けられているが、同様の構造のターゲット体23が複数設けられていてもよい。
再び、図1を参照する。X線発生装置1は、検出部としての電流検出器31と、制御部及びターゲット体位置情報取得部としてのコントローラ33と、を備えている。電流検出器31は、ターゲット部Tに入射した電子ビームEBに基づく入射信号(ターゲット信号)としての電気信号を検出する際に、電流を検出する。電流検出器31は、ターゲット部Tと電気的に接続されることにより、ターゲット部Tにおける吸収電流を検出する。電流検出器31は、コントローラ33へターゲット信号(吸収電流値)を出力する。
電子ビームを物質に照射した時、物質の原子番号に依存する量の電子が吸収される。すなわち、原子番号が大きいほど吸収電流値は小さく、原子番号が小さいほど吸収電流値は大きい。本実施形態では、ダイヤモンドからなる基板21中にタングステンからなるターゲット体23を埋設しているので、X線発生装置1は、吸収電流値が小さい場所をターゲット体23と判定することができる。なお、本実施形態においては、吸収電流値はターゲット電流値として取得される。
コントローラ33は、X線発生装置1に関する各種の制御を行い、例えばモールド電源部19の高圧発生部及び電子放出制御部を制御する。これにより、電子銃部3とターゲット部T(ターゲット体23)との間に所定の電流及び電圧が印加され、電子銃部3が電子ビームEBを出射する。電子銃部3から出射された電子ビームEBは、コントローラ33により制御されたコイル部7にて適切に集束されて、ターゲット体23に入射する。ターゲット体23に電子ビームEBが入射すると、ターゲット体23からX線XRが放射され、このX線XRは、基板21を透過して外部に出射される。また、コントローラ33は、電流検出器31が検出する吸収電流(ターゲット電流)をリアルタイムに監視する。
また、コントローラ33は、第一の制御信号として、電子ビームEBをX軸方向に偏向させる制御信号を、電子ビームEBをX軸方向に偏向させるコイル部9xへ出力する。また、コントローラ33は、第二の制御信号として、電子ビームEBをY軸方向に偏向させる制御信号を、電子ビームEBをY軸方向に偏向させるコイル部9yへ出力する。このように、コントローラ33は、上記2つの制御信号をコイル部9へ出力することにより、コイル部9の動作を制御する。これにより、X線発生装置1は、電子ビームEBを偏向させることができ、ターゲット部T上に電子ビームEBを走査させることができる。
図4に、X線発生装置1がターゲット部T上に電子ビームEBを走査させる例を示す。図4はターゲット部Tの一部領域の拡大図である。図4は、電子ビーム偏向部として機能するコイル部9によって電子ビームEBが走査可能な走査範囲を模式的に図示している。説明を分かりやすくするために、ターゲット部Tには、走査範囲のX軸方向の端部領域(図面上での右側端部領域)において、Y軸方向全体に延在するようなターゲット体23が設けられている。図4に示すように、コントローラ33が、ターゲット部T上における、矢印方向に(ターゲット体23配置側端部に向かって)順次電子ビームEBを走査させる場合の例を示す。
図5は、X線発生装置1が図4に示したように電子ビームEBを走査させた場合における、吸収電流値の変化を示すグラフである。図5に示すように、X線発生装置1が電子ビームをターゲット体23へ入射させている時に、吸収電流値が小さくなる。そして、コントローラ33は、ターゲット信号として各部の吸収電流値を取得し、他の領域と比較して吸収電流値が小さい位置をターゲット体23がある箇所であると判断する。このように、コントローラ33は、ターゲット体23の位置を特定し得る位置情報を取得する。
そして、コントローラ33は、当該位置情報を出力する。具体例として、コントローラ33は、当該位置情報を、画像データや座標データ等として、図示しない表示装置へ出力する。このように、コントローラ33は、ターゲット体位置情報取得部としてのみならず、ターゲット体位置情報出力部としても機能する。
続いて、図6〜18を参照して、コントローラ33によるコイル部9の制御の一例について説明する。図6、10、13、及び15は、コントローラ33によるコイル部9の制御により、電子ビームEBが図4に示したターゲット部T上をどのように走査するかを説明するための図である。図7、9、11、14、16、17、及び18は、走査時における、制御信号のグラフである。図8及び12は、走査時における、制御信号に基づくコイル部9の入力電圧のグラフである。
図6に示すように、X線発生装置1は、ターゲット部T上において、X軸方向(図面上の左右)に電子ビームEBを走査させつつ、Y軸方向(図面上の上から下)にも電子ビームEBを走査させる。なお、図面上、左から右に向かって、常にX軸上及びY軸上の座標を変えながら延びる実線の矢印は、ターゲット信号を取得するための走査経路を示す。図面上、右から左に向かって、Y軸の座標は変えずにX軸の座標のみを変えながら延びる点線の矢印は、次の水平走査の開始部へ折り返すための走査経路を示す。
図6に示すように電子ビームEBを走査させる場合における、X軸方向に偏向させる制御信号を図7(A)に示し、Y軸方向に偏向させる制御信号を図7(B)に示す。図7(A)に示す制御信号に基づいてコイル部9(コイル部9x)に入力される電圧のグラフを図8(A)に示す。図7(B)に示す制御信号に基づいて、コイル部9(コイル部9y)に入力される電圧のグラフを図8(B)に示す。
図7(A)に示すように、コントローラ33が出力するX軸方向の制御信号では、鋸波が立ち下がった時刻である時刻t4から、当該時刻t4の次に立ち上がる時刻である時刻t5まで波形の変化の無い期間である休止期間T1(第一の休止期間)を有する。上記制御信号の波形は、休止期間T1の後に立ち上がる。図7(B)に示すように、Y軸方向の制御信号の波形は、X軸方向の制御信号が立ち上がっている間は、一律の変化率で立ち上がり、X軸方向の制御信号の休止期間T1と同期して時刻t4から時刻t5まで休止期間T2(第二の休止期間)を有する。
図7(A)に示すX軸方向の制御信号の波形は、立ち上がりの波形に比して立下りが急峻な波形を有し、立下りの後に休止期間T1を有している。これにより、X線発生装置1は、休止期間T1を利用して、コイル部9(コイル部9x)の発生する磁力による磁場を確実に所望の状態とすることができる。
より詳細には、X線発生装置1は、急峻な立下りによって生じた制御信号に対する磁場のズレ(遅れ)を、休止期間T1の間に、制御信号(立ち上がり)に適合した磁場状態とする。X線発生装置1は、休止期間T1によって、制御信号の先の立ち上がりに基づく磁力による磁場と、次の立ち上がりに基づく磁力による磁場とを確実に分ける(互いへの影響を抑制する)ことができる。これにより、X線発生装置1は、コントローラ33が出力した制御信号の変化に対してコイル部9が追随できなくなることを防止することができる。
また、X線発生装置1は、制御信号と同期させてターゲット信号を取得するので、休止期間T1の間にはターゲット信号を取得しない。このように、X線発生装置1は、ターゲット信号を取得しない期間中に磁場を所望の状態にすることにより、X線発生装置1が予定している走査箇所と、コイル部9の動作により実際に走査している箇所とがずれてしまうことを防止することができる。
従って、X線発生装置1は、制御信号に対する磁場のズレに起因した虚像Fや不適切な情報が混入しない、ターゲット体23の正確な位置情報が得られるため、正確にターゲット体23の位置を把握することができる。さらに、X線発生装置1は、X軸方向の制御信号が休止期間T1であるタイミングで、Y軸方向の制御信号も休止期間T2となるので、ターゲット信号を取得しない状態で走査が進んでしまうこと、すなわち走査されない箇所を増やしてしまうことを防止することができる。
なお、図9(A)及び(B)に示すように、X線発生装置1は、X軸方向の制御信号のみが休止期間T1を有するようにしてもよい。この場合、X線発生装置1は、走査しない領域(未走査領域)を増やしてしまうが、短い時間で走査を完了させることができるので、ターゲット体23の位置についての概略情報を高速に得ることができる。
ところで、電子ビームEBの走査は、次のように走査させることも可能である。
図10に示すように、X線発生装置1は、ターゲット部T上において、X軸方向(図面上の左右)及びY軸方向(図面上の上から下)に連続的に電子ビームEBを走査させてもよい。具体的に、X線発生装置1は、X軸上及びY軸上の座標を常に変えながら、走査範囲内をジグザグ状に電子ビームEBを連続走査させて、全ての走査経路においてターゲット信号を取得する。図10のように電子ビームEBを走査させる場合における、X軸方向に偏向させる制御信号を図11(A)に示し、Y軸方向に偏向させる制御信号を図11(B)に示す。図11(A)に示す制御信号に基づいてコイル部9(コイル部9x)に入力される電圧のグラフを図12(A)に示す。図11(B)に示す制御信号に基づいて、コイル部9(コイル部9y)に入力される電圧のグラフを図12(B)に示す。
コントローラ33は、X軸方向の制御信号として、図11(A)に示すような一般的な三角波の制御信号を出力し、コイル部9は、当該制御信号に基づいた図12(A)に示す入力電圧にて動作する。図11(A)に示すように制御信号の波形は、立下りと立ち上がりとを含み、且つ時刻t1に示す波形の立下り時点から、該立下りの後に立ち上がる時刻t2まで所定期間有し、且つ時刻t2に示す波形の立ち上がる時刻から、該立ち上がりの後に立下がる時刻t3まで所定期間有する。
図11(A)及び(B)に示す制御信号の波形には、鋸波のような急激な制御信号の変化をする箇所がなく、いずれも所定期間を持って変化していくので、コントローラ33が出力した制御信号に基づいてコイル部9が動作しても、コイル部9が制御信号に追随できなくなることがない。すなわち、X線発生装置1は、制御信号に対して、適切な磁場を確実に追随させることができる。よって、X線発生装置1は、X線発生装置1が予定している走査箇所と、コイル部9の動作により実際に走査している箇所とがずれてしまうことを防止することができる。従って、X線発生装置1は、制御信号に対する磁場のズレに起因した虚像や不適切な情報が混入しない、正確な位置情報が得られるため、正確にターゲット体23の位置を把握することができる。
また、図13に示すように、X線発生装置1は、電子ビームEBのX軸方向又はY軸方向のいずれか一方の位置(座標)を固定して、他方の位置を変動させて、所定位置(座標)まで走査した後に、当該他方の位置(座標)を固定して、一方の位置(座標)を変動させることを繰り返し、中心部まで徐々に集束させるように電子ビームEBを走査してもよい。
この場合における、X軸方向に偏向させる制御信号を図14(A)に示す。そして、Y軸方向に偏向させる制御信号を図14(B)に示す。これらの制御信号に基づいて、コイル部9(コイル部9x、コイル部9y)に電圧が入力される。
この場合、X軸方向およびY軸方向のいずれの制御信号の波形も、立下りから立下り後に立ち上がるまで、及び立ち上がりから立ち上がり後に立ち下がるまで所定期間有する波形である。すなわち、コイル部9を制御する制御信号の波形は、鋸波のような急激な制御信号の変化をする箇所がなく、いずれも所定期間を持って変化していく。コントローラ33が、図14(A)及び(B)に示す制御信号に基づいてコイル部9を動作させた場合、コイル部9が制御信号に追随できなくなることがなく、制御信号に対して適切な磁場を確実に追随させることができる。よって、X線発生装置1は、X線発生装置1が予定している走査箇所と、コイル部9の動作により実際に走査している箇所とがずれてしまうことを防止することができる。従って、X線発生装置1は、制御信号に対する磁場のズレに起因した虚像や不適切な情報が混入しない、正確な位置情報が得られるため、正確にターゲット体23の位置を把握することができる。X線発生装置1は、急激な変化の少ない連続的な走査経路で電子ビームEBを走査させるので、安定な走査が可能となる。
また、図15に示すように、X線発生装置1は、電子ビームEBをいわゆる螺旋状に走査させるようにしてもよい。この場合における、X軸方向に偏向させるための制御信号を図16(A)に示す。そして、Y軸方向に偏向させるための制御信号を図16(B)に示す。
図15に示したように、螺旋状に電子ビームEBを走査させた場合、図16に示すX軸方向およびY軸方向の制御信号の波形は、立下りから立下り後に立ち上がるまで、及び立ち上がりから立ち上がり後に立ち下がるまで所定期間有する波形である。コイル部9を制御する制御信号の波形は、鋸波のような急激な制御信号の変化をする箇所がなく、いずれも所定期間を持って変化していく。コントローラ33が、図16(A)及び(B)に示す制御信号に基づいてコイル部9を動作させた場合、コイル部9が制御信号に追随できなくなることがなく、制御信号に対して、適切な磁場を確実に追随させることができる。よって、X線発生装置1は、X線発生装置1が予定している走査箇所と、コイル部9の動作により実際に走査している箇所とがずれてしまうことを防止することができる。従って、X線発生装置1は、制御信号に対する磁場のズレに起因した虚像や不適切な情報が混入しない、正確な位置情報が得られるため、正確にターゲット体23の位置を把握することができる。また、X線発生装置1は、走査経路を急激な変化の少ない連続的なものにすることができるので、安定な走査が可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
コントローラ33は、ターゲット信号として、ターゲット部Tに入射した電子ビームEBの反射電子に関するデータを取得し、当該データに基づいて、ターゲット体23の位置を特定するようにしてもよい。この場合、X線発生装置1は、電流検出器31の代わりに、反射電子を検出する反射電子検出器を設け、コントローラ33に反射電子に起因する電流値が入力される。
電子ビームEBを物質に照射した時、物質の原子番号に依存する量の反射電子が放出される(原子番号が大きいほど、多くの反射電子を放出する)。本実施形態では、ダイヤモンドからなる基板21中にタングステンからなるターゲット体23を埋設しているので、X線発生装置1は、より多くの反射電子を検出した場所をターゲット体23と判定することができる。なお、ターゲット信号として、吸収電子による信号と反射電子による信号の両方を用いても良いし、吸収電子や反射電子といった電子ビームEBの電子による直接的な電気情報ではなく、ターゲットから発生したX線の強度やエネルギー帯に基づいてターゲット体23の位置を特定するようにしてもよい。走査の進行方向は、図面上の左右や上下は逆でもよい。
休止期間T1は、急峻な立下りの後に設けられていたが、急峻な立ち上がりの後に設けても良い。例えば、図17(A)に示すように、コントローラ33が出力するX軸方向の制御信号では、鋸波が立ち上がった時刻から、当該時刻の次に立ち下がる時刻である時刻まで波形の変化の無い期間である休止期間を設けて、その後で波形を立ち下げるようにしている。一方、図17(B)に示すように、Y軸方向の制御信号の波形も、基本的には一律の変化率で立ち上がる一方で、休止期間と同期して休止期間を設けている。
図18(A)及び(B)に示すように、X線発生装置1は、図18(A)に示すX軸方向の制御信号のみが休止期間を有するようにしてもよい。この場合、X線発生装置1は、走査しない領域(未走査領域)を増やしてしまうが、短い時間で走査を完了させることができるので、ターゲット体23の位置についての概略情報を高速に得ることができる。