以下、本発明の窒化物半導体発光素子について図面を用いて説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
以下では、位置関係を表すために、図1の下側に記載した部分を「下」と表現し、図1の上側に記載した部分を「上」と表現することがある。これは便宜上の表現であり、重力方向に対して定められる「上」および「下」とは異なる。
「バリア層」は井戸層に挟まれた層を表わす。井戸層に挟まれていないバリア層は「最初のバリア層」または「最後のバリア層」と表わし、井戸層に挟まれたバリア層とは表記を変えている。
「ドーパント濃度」と、n型ドーパントまたはp型ドーパントのドープに伴い発生する電子またはホールの濃度である「キャリア濃度」とを用いている。これらの関係については後述する。
「キャリアガス」とは、III族原料ガス、V族原料ガスおよびドーパント原料ガス以外のガスである。キャリアガスを構成する原子は膜中などに取り込まれない。
「n型窒化物半導体層」は、電子の流れを実用上妨げない程度の厚さの低キャリア濃度のn型層またはアンドープ層を含んでいても良い。「p型窒化物半導体層」は、ホールの流れを実用上妨げない程度の厚さの低キャリア濃度のp型層またはアンドープ層を含んでいても良い。「実用上妨げない」とは窒化物半導体発光素子の動作電圧が実用的なレベルであることを言う。
<窒化物半導体発光素子の構造>
図1および図2は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体発光素子1の概略断面図および概略平面図である。図1は、図2に示すI−I線における断面図に相当する。図3は、図1に示す窒化物半導体発光素子1の第1n型窒化物半導体層8からp型窒化物半導体層16までにおけるバンドギャップエネルギーEgの大きさを模式的に示すエネルギー図である。図3の縦軸方向は図1に示す窒化物半導体発光素子1の上下方向を表わし、図3の横軸のEgは各層におけるバンドギャップエネルギーの大きさを模式的に表わす。図3にはn型ドーパントがドープされている層の右側にはドットを付して「n」と記している。図4は、図1に示す窒化物半導体発光素子1の基板3の拡大平面図である。
図1に示す窒化物半導体発光素子1は、窒化物半導体発光素子用下地基板(以下では単に「下地基板」と記す)6を備える。下地基板6は、基板3と、バッファ層5と、下地層7と、第1n型窒化物半導体層(n型コンタクト層)8と、第2n型窒化物半導体層(変調ドープ層)9とを備える。下地基板6の成長面61上には、第3n型窒化物半導体層11、発光層14および第1p型窒化物半導体層19が順に設けられている。第3n型窒化物半導体層11は、Vピット発生層10と多層構造体121と超格子層122とを備える。第1p型窒化物半導体層19は、p型窒化物半導体層16,17,18を備える。
下地基板6の一部と第3n型窒化物半導体層11と発光層14と第1p型窒化物半導体層19とは、エッチングされてメサ部30を構成している。p型窒化物半導体層18の上には、透明電極23を介してp側電極25が設けられている。メサ部30の外側(図1における右側)では、第1n型窒化物半導体層8の上面の一部分が第2n型窒化物半導体層9などから露出しており、第1n型窒化物半導体層8の露出面の上にはn側電極21が設けられている。透明保護膜27は、透明電極23とエッチングにより露出した各層の側面とを覆っており、n側電極21とp側電極25とを露出している。
窒化物半導体発光素子1の断面を超高倍率STEM(Scanning Transmission Electron Microscopy)観察すると、Vピット15が発生していることが確認される。本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1では、Vピット発生層10を設けることによりVピット15の発生をコントロールしている。
<下地基板>
下地基板6は、本実施形態では基板3とバッファ層5と下地層7と第1n型窒化物半導体層8と第2n型窒化物半導体層9とを備えるが、第1n型窒化物半導体層8と第2n型窒化物半導体層9とを備えていれば良い。本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1は基板3を備えていなくても良く、その場合には、下地基板6は下地層7と第1n型窒化物半導体層8と第2n型窒化物半導体層9とを備える。
本実施形態における第2n型窒化物半導体層9は、n型ドーパント濃度が第1n型窒化物半導体層8よりも低いn-層9Aを含む。これにより、第2n型窒化物半導体層9がn-層9Aを全く備えていない場合に比べて第3n型窒化物半導体層11の結晶品質を高く維持することができる。よって、第3n型窒化物半導体層11上に設けられる発光層14の結晶品質を高く維持することができるので、窒化物半導体発光素子1の発光出力を高めることができる。「n型ドーパント濃度が第1n型窒化物半導体層8よりも低いn-層9A」とは、n-層9Aのn型ドーパント濃度が第1n型窒化物半導体層8のn型ドーパント濃度の1/1000倍以上1倍未満であることを意味する。n-層9Aのn型ドーパント濃度が第1n型窒化物半導体層8のn型ドーパント濃度の1/1000倍であるとき、そのn-層9Aはアンドープ層である。つまり、「n型ドーパント濃度が第1n型窒化物半導体層8よりも低いn-層9A」には、アンドープ層も含まれる。このように、本明細書では、「アンドープ層」は、導電型ドーパントが全くドープされていない層だけでなく導電型ドーパントが結晶成長中に意図せずドープされた層も含む。「アンドープ層」は、0cm-3以上1×1016cm-3以下の導電型ドーパントを含む層と言うこともできる。
下地基板6は、成長面61を有する。成長面61は、下地基板6の表面であって第3n型窒化物半導体層11が結晶成長される面を意味する。本実施形態における下地基板6はバッファ層5と下地層7と第1n型窒化物半導体層8と第2n型窒化物半導体層9とが基板3側から順に積層されて構成されているので、成長面61は第2n型窒化物半導体層9の上面(第1n型窒化物半導体層8と第2n型窒化物半導体層9との界面とは反対側に位置する第2n型窒化物半導体層9の面)に相当する。
成長面61を構成する半導体層は、アンドープ層であることが好ましい。これにより、成長面61が大気中に曝された場合であっても、成長面61が大気中の水分または酸素などにより酸化されることを防止できる。よって、成長面61上の層(たとえば第3n型窒化物半導体層11)の結晶品質をさらに高めることができる。また、成長面61上にn型窒化物半導体層を成長させるときには、成長面61と当該n型窒化物半導体層との界面でのn型ドーパントのドープ量の増加(パイルアップ)を防止することができる。これらのことから、発光層14の結晶品質をさらに高めることができるので、窒化物半導体発光素子1の発光出力をさらに高めることができる。「成長面61を構成する半導体層」は、第2n型窒化物半導体層9が1層からなる場合には第2n型窒化物半導体層9に相当し、第2n型窒化物半導体層9が2以上の層を有する場合には第2n型窒化物半導体層9を構成する2以上の層のうち第1n型窒化物半導体層8から最も離れて位置する層に相当する。
成長面61を構成する半導体層は、ドープ層であっても良い。この場合には、第2n型窒化物半導体層9は、第1n型窒化物半導体層8側から、n-層9Aと、n型ドーパント濃度がn-層9Aよりも高いn+層9Bとが交互に積層されてなることが好ましい。これにより、順方向電圧を低下させることができ、逆バイアス印加時の漏洩電流の発生を防止することができる。「ドープ層」は、導電型ドーパントが結晶成長中に意図してドープされた層を意味する。ドープ層は、たとえば、1×1017cm-3以上1×1019cm-3以下の導電型ドーパントを含むことが好ましい。n+層9Bのn型ドーパント濃度は、第1n型窒化物半導体層8のn型ドーパント濃度の1倍より大きく100倍以下であることが好ましい。以下、下地基板6の構成要素をそれぞれ示す。
<基板>
基板3は、たとえば、サファイア基板などの絶縁性基板であっても良いし、GaN、SiCまたはZnOなどからなる導電性基板であっても良い。基板3の厚さは、窒化物半導体層の成長時には900μm以上1200μm以下であることが好ましく、製造された窒化物半導体発光素子1においては50μm以上300μm以下であることが好ましい。つまり、窒化物半導体発光素子1の製造方法は基板3を研磨する工程を備えても良い。また、窒化物半導体発光素子1の製造方法は基板3を除去する工程を備えても良い。
バッファ層5などが設けられる基板3の面(基板3の上面)は、図1に示すように凸部3aと凹部3bとが交互に形成されてなる凹凸形状を有することが好ましい。凸部3aは、図4に示すように基板3の上面において略円形形状を有することが好ましく、図4に示す仮想三角形3tの頂点に配置されていることが好ましい。隣り合う凸部3aの頂点の間隔(図4に示す仮想三角形3tの1辺)は、1μm以上5μm以下であることが好ましい。凸部3aは側面視において台形形状を有していても良いが、凸部3aの頂点は図1に示すように丸みを帯びていることが好ましい。
<バッファ層>
バッファ層5は、基板3の凸部3aとその凹部3b上とに設けられている。バッファ層5は、たとえば、AlsoGatoOuoN1-uo(0≦s0≦1、0≦t0≦1、0≦u0≦1、s0+t0≠0)層であることが好ましく、AlN層またはAlON層であることがより好ましい。バッファ層5がAlON層である場合には、AlON層中のNのごく一部(0.5〜2%)が酸素に置き換えられていることが好ましい。これにより、基板3の成長表面の法線方向に伸長するようにバッファ層5が形成されるので、結晶粒の揃った柱状結晶の集合体からなるバッファ層5が得られる。バッファ層5の厚さは特に限定されないが、3nm以上100nm以下であることが好ましく、より好ましくは5nm以上50nm以下である。バッファ層5がスパッタ法により形成されたAlON層であれば、X線スペクトルに現れるピークの半値幅(下地層7の結晶品質の指標)が狭くなる。よって、バッファ層5はスパッタ法により形成されたAlON層であることが好ましい。
<下地層>
下地層7は、第1下地層71と第2下地層75とを有することが好ましい。これにより、X線スペクトルに現れるピークの半値幅(下地層7の結晶品質の指標)が狭くなる、つまり下地層7の結晶品質が高くなる。第1下地層71は、バッファ層5を挟んで基板3の凹部3b上に設けられ、好ましくは斜めファセット面71aを含む側面視略三角形の形状を有し、上面71bを有しても良い。「斜めファセット面」とは、基板3の凹部3bに対して10度以上の角度で傾斜した方向に延びる面であり、窒化物半導体の結晶面であることが好ましい。第2下地層75は、第1下地層71を覆っているとともにバッファ層5を挟んで基板3の凸部3aを覆っており、バッファ層5と第1下地層71とに接している。第1n型窒化物半導体層8に接する下地層7の面(下地層7の上面75b)は平坦である。本明細書では、特に限定する場合を除いて、第1下地層71と第2下地層75とを総じて下地層7と表わすことがある。
第1下地層71は、たとえば、Alx2Gay2Inz2N(0≦x2≦1、0≦y2≦1、0≦z2≦1、x2+y2+z2≠0)からなることが好ましい。第2下地層75は、たとえば、Alx3Gay3Inz3N(0≦x3≦1、0≦y3≦1、0≦z3≦1、x3+y3+z3≠0)からなることが好ましい。
第1下地層71および第2下地層75は、それぞれ、III族元素としてGaを含む窒化物半導体層であることが好ましい。これにより、柱状結晶の集合体からなるバッファ層5中の転位などの結晶欠陥を引き継ぐことなく第1下地層71および第2下地層75を形成することができる。詳細には、バッファ層5中の結晶欠陥を引き継ぐことなく第1下地層71および第2下地層75を設けるためにはバッファ層5との界面(バッファ層5の上面)付近で転位をループさせる必要がある。第1下地層71および第2下地層75がGaを含むIII族窒化物半導体層であれば、バッファ層5との界面付近で転位のループが生じやすい。つまり、第1下地層71および第2下地層75がIII族元素としてGaを含む窒化物半導体層であれば、バッファ層5中の結晶欠陥はバッファ層5との界面付近でループ化されて閉じ込められる。よって、バッファ層5中の結晶欠陥が第1下地層71および第2下地層75に引き継がれることを防止することができる。たとえば第1下地層71がAlx2Gay2N(0≦x2<1、0<y2<1)からなり、第2下地層75がAlx3Gay3N(0≦x3<1、0<y3<1)からなる場合、特に第1下地層71および第2下地層75がそれぞれGaNからなる場合、バッファ層5中の結晶欠陥はバッファ層5との界面付近でループ化されて閉じ込められ易くなる。これにより、転位密度が小さく良好な結晶品質を有する第1下地層71および第2下地層75が得られる。
第1下地層71および第2下地層75は、たとえば、1×1017cm-3以上1.5×1019cm-3以下のn型ドーパントを含んでいても良い。下地層7に含まれるn型ドーパントは、たとえば、Si、GeおよびSnの少なくとも1つであることが好ましく、Siであることがより好ましい。n型ドーパントがSiである場合には、n型ドーパントの原料ガスは、たとえば、シランまたはジシランであることが好ましい。しかし、良好な結晶品質を維持するという観点では、第1下地層71および第2下地層75は、それぞれ、アンドープ層であることが好ましい。
下地層7の厚さ(基板3の凹部3bに接する下地層7の面と下地層7の上面75bとの間の距離)は特に限定されない。下地層7の厚さが大きければ大きいほど、下地層7中の結晶欠陥は減少する。しかし、下地層7の厚さをある程度以上大きくすると、下地層7における結晶欠陥の減少という効果が飽和することがある。これらのことから、下地層7の厚さは、1μm以上8μm以下であることが好ましく、3μm以上5μm以下であることがより好ましい。
第1下地層71および第2下地層75の形成方法は、それぞれ、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法であることが好ましい。第1下地層71は、斜めファセット面71aが形成されるファセット成長モードで成長されることが好ましい。これにより、結晶欠陥が少なく、結晶品質が高い第1下地層71が形成される。第2下地層75は、斜めファセット面71aを埋め込んで平坦な上面75bを形成可能な埋込成長モードで成長されることが好ましい。これにより、平坦な上面75bを有し、結晶欠陥が少なく、結晶品質が高い第2下地層75が形成される。
第1下地層71および第2下地層75の成長温度は、800℃以上1250℃以下であることが好ましく、900℃以上1150℃以下であることがより好ましい。これにより、結晶欠陥が少なく且つ結晶品質に優れた第1下地層71および第2下地層75を形成することができる。本明細書では、「成長温度」は、その層を結晶成長させるときの基板3の温度を意味する。
<第1n型窒化物半導体層>
第1n型窒化物半導体層8は、第2下地層75の上面75b上に設けられ、n型コンタクト層として機能する。第1n型窒化物半導体層8は、たとえば、Als2Gat2Inu2N(0≦s2≦1、0≦t2≦1、0≦u2≦1、s2+t2+u2≒1)層にn型ドーパントがドープされた層であることが好ましく、Als2Ga1-s2N(0≦s2≦1、好ましくは0≦s2≦0.5、より好ましくは0≦s2≦0.1)層にn型ドーパントがドープされた層であることがより好ましい。第1n型窒化物半導体層8は、アンドープ層または低キャリア濃度層などをさらに含んでも良い。
第1n型窒化物半導体層8に含まれるn型ドーパントは、特に限定されないが、Si、P、AsまたはSbなどであることが好ましく、Siであることがより好ましい。第1n型窒化物半導体層8のn型ドーパント濃度は、特に限定されないが、1.5×1019cm-3以下であることが好ましい。
第1n型窒化物半導体層8の厚さが厚ければ厚いほど、第1n型窒化物半導体層8の抵抗は低くなる。しかし、第1n型窒化物半導体層8の厚さを大きくすると、窒化物半導体発光素子1の製造コストの上昇を招くことがある。両者の兼ね合いから、第1n型窒化物半導体層8の最大厚さは1μm以上10μm以下であることが好ましい。
第1n型窒化物半導体層8の構成は特に限定されない。第1n型窒化物半導体層8は、n型ドーパントが均一にドープされた1層のn型窒化物半導体層のみからなっても良いし、n型ドーパント濃度が互いに異なるn型窒化物半導体層8A,8Bを含んでいても良いし、3層以上のn型窒化物半導体層を含んでいても良い。第1n型窒化物半導体層8が2以上のn型窒化物半導体層を含む場合、2以上のn型窒化物半導体層は、同一の組成からなっても良いし、異なる組成からなっても良い。また、2以上のn型窒化物半導体層は、同一の厚さを有していても良いし、異なる厚さを有していても良い。
<第2n型窒化物半導体層>
第2n型窒化物半導体層9は、第1n型窒化物半導体層8上に設けられている。第2n型窒化物半導体層9は、n-層9Aのみからなっても良いが、変調ドープ層であることが好ましい。第2n型窒化物半導体層9が変調ドープ層であれば、順方向電圧を十分に低下させることができ、逆バイアス印加時の漏洩電流の発生を十分に防止することができる。「変調ドープ層」は、ドーパントの種類またはドーパントの量が異なる2種以上の層が交互に積層されてなる層を意味する。たとえば、第2n型窒化物半導体層9は、第1n型窒化物半導体層8側からn-層9Aとn+層9Bとが交互に積層されてなることが好ましい。
n-層9Aは、第1n型窒化物半導体層8よりもn型ドーパント濃度が低い窒化物半導体層であり、好ましくはn+層9Bよりもn型ドーパント濃度が低い窒化物半導体層であり、より好ましくはアンドープ層である。n-層9Aは、たとえば、n型ドーパント濃度が3×1018cm-3以下であるAls3Gat3Inu3N(0≦s3≦1、0≦t3≦1、0≦u3≦1、s3+t3+u3≒1)層であることが好ましく、アンドープAls3Gat3Inu3N(0≦s3≦1、0≦t3≦1、0≦u3≦1、s3+t3+u3≒1)層であることがより好ましい。
n+層9Bは、n-層9Aよりもn型ドーパント濃度が高い窒化物半導体層であることが好ましく、たとえば、n型ドーパント濃度が1.0×1019cm-3以上であるAls4Gat4Inu4N(0≦s4≦1、0≦t4≦1、0≦u4≦1、s4+t4+u4≒1)層であることが好ましく、n型ドーパント濃度が1.0×1019cm-3以上3×1019cm-3以下であるGaN層であることがより好ましい。n型ドーパントは、特に限定されないが、Si、P、AsまたはSbなどであることが好ましく、Siであることがより好ましい。
n-層9Aおよびn+層9Bのそれぞれの積層数は特に限定されない。第2n型窒化物半導体層9は、n-層9Aとn+層9Bとの組み合わせを2組以上有していることが好ましいが、上述のように1層のn-層9Aのみからなっても良い。
n-層9Aのそれぞれの厚さは、たとえば、5nm以上500nm以下であることが好ましく、50nm以上100nm以下であることがより好ましい。n-層9Aのそれぞれの厚さが50nm以上であれば、結晶品質に優れたn+層9Bを形成することができるので、変調ドープ層を設けたことにより得られる効果を十分に得ることができる。具体的には、順方向電圧を十分に低くすることができ、逆バイアス印加時の漏洩電流の発生を十分に防止することができる。n-層9Aのそれぞれの厚さが100nm以下であれば、駆動電圧を低く抑えることができる。
n+層9Bのそれぞれの厚さは、たとえば、5nm以上500nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下であることがより好ましい。n+層9Bのそれぞれの厚さが10nm以上であれば、第2n型窒化物半導体層9をn型層として十分に機能させることができる。n+層9Bのそれぞれの厚さが100nm以下であれば、駆動電圧を低く抑えることができる。n+層9Bの厚さは、n-層9Aの厚さ以下であることが好ましい。これにより、ESD(Electrostatic Discharge)耐圧を向上させることができる。
第2n型窒化物半導体層9がn-層9Aとn+層9Bとの組み合わせを2組有している場合、第3n型窒化物半導体層11側のn+層9Bの厚さは第1n型窒化物半導体層8側のn+層9Bの厚さよりも薄いことが好ましい。たとえば、第1n型窒化物半導体層8側のn+層9Bの厚さが50nmである場合、第3n型窒化物半導体層11側のn+層9Bが25nm以上50nm以下であれば、順方向電圧の低下と逆バイアス印加時の漏洩電流の発生の防止とESD耐圧の向上とを図りつつ第2n型窒化物半導体層9の厚さを薄くすることができる。
<第3n型窒化物半導体層>
第3n型窒化物半導体層11は、Vピット発生層10と多層構造体121と超格子層122とを備える。以下、第3n型窒化物半導体層11の構成要素をそれぞれ示す。
<Vピット発生層>
Vピット発生層10は、下地基板6の成長面61上に設けられ、Vピット15の始点の平均的な位置が発光層として実効的に機能する層(本実施形態では発光層14)よりも下地基板6側に位置する層(本実施形態では超格子層122)内に位置するようにVピット15を形成するための層である。「Vピット15の始点」とは、Vピット15の底部(図1におけるVピット15の最下端部)を意味する。「Vピット15の始点の平均的な位置」とは、発光層14に形成されたVピット15の始点の位置を窒化物半導体発光素子1の厚さ方向(図1における上下方向)で平均化して得られた位置を意味する。
Vピット発生層10は、たとえば、厚さが25nmであるハイドープn型GaN層であることが好ましい。「ハイドープ」とは、Vピット発生層10の下に位置する第1n型窒化物半導体層8または第2n型窒化物半導体層9よりも有意に(たとえば1.1倍以上、好ましくは1.4倍以上、より好ましくは1.8倍以上)n型ドーパント濃度が高いことを意味する。具体的には、Vピット発生層10のn型ドーパント濃度は、5×1018cm-3以上であることが好ましく、7×1018cm-3以上であることがより好ましく、1×1019cm-3以上であることがさらに好ましい。これにより、Vピット発生層10の膜質が第2n型窒化物半導体層9の膜質よりも低下するので、Vピット発生層10によるVピット発生効果が有効に発揮される。
なお、下地基板6の成長面61を構成する半導体層がn+層9Bである場合、Vピット発生層10は、アンドープ層であっても良く、たとえば、厚さが10nmのアンドープ窒化物半導体層であることが好ましい。
<多層構造体>
本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1では、Vピット15の始点は発光層14よりも下地基板6側に位置する。Vピット発生層10と超格子層122との間に多層構造体121が設けられていれば、Vピット発生層10で形成されたVピット15が多層構造体121に達する前に当該Vピット15を大きくすることができる。よって、高温駆動時または大電流駆動時における発光効率を高く維持でき、ESDに起因する不良率が低下する。
多層構造体121は、バンドギャップエネルギーが異なる複数種の窒化物半導体層が積層されて構成されたものであり、バンドギャップエネルギーが相対的に小さな窒化物半導体層とバンドギャップエネルギーが相対的に大きな窒化物半導体層とが交互に積層されて構成されたものであることが好ましい。これにより、Vピット発生層10で発生したVピット15の大きさが大きくなる。よって、ESDに起因する不良率が低下する。
多層構造体121の一例は、Vピット発生層10の上に、厚さが7nmであるn型InGaN層、厚さが30nmであるn型GaN層、厚さが7nmであるn型InGaN層および厚さが20nmであるn型GaN層が順に積層されたものである。
多層構造体121は、バンドギャップエネルギーが相対的に小さな窒化物半導体層およびバンドギャップエネルギーが相対的に大きな窒化物半導体層のそれぞれの層数は特に限定されない。多層構造体121は、2組以上のバンドギャップエネルギーが相対的に小さな窒化物半導体層およびバンドギャップエネルギーが相対的に大きな窒化物半導体層を有することが好ましい。これにより、多層構造体121の厚さを大きくすることができる。よって、Vピット15の始点の平均的な位置は、その多くが超格子層122の厚さ方向中央付近よりも下地基板6側となる。したがって、高温駆動時または大電流駆動時における発光効率を高く維持することができる。
<超格子層>
Vピット発生層10と発光層14との間であって多層構造体121上には、超格子層122が設けられている。超格子層122の主たる働きは、発光層14からVピット発生層10をさらに離間して設け、Vピット15の始点の位置を発光層14内の下側または超格子層122内とすることである。超格子層122は、単層からなっても良いし、2〜3層が積層されて構成されていても良い。
「超格子層」とは、非常に薄い結晶層を交互に積層することにより、その周期構造が基本単位格子よりも長い結晶格子からなる層を意味する。超格子層122は、複数種の窒化物半導体層が積層されて超格子構造を構成しており、図3に示すようにバンドギャップエネルギーが相対的に大きなワイドバンドギャップ層122Aとバンドギャップエネルギーが相対的に小さなナローバンドギャップ層122Bとが交互に積層されて超格子構造を構成している。
<発光層>
発光層14は、第3n型窒化物半導体層11上に設けられている。発光層14には、部分的にVピット15が形成されている。「部分的にVピット15が形成されている」とは、発光層14の上面をAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)で観察したときにVピット15が発光層14の上面において点状に観察されることを意味する。発光層14の上面におけるVピット数の密度は1×108cm-2以上1×1010cm-2以下であることが好ましい。従来においても発光層にはVピットが形成されていたが、従来の発光層の上面におけるVピット数の密度は1×108cm-2未満であった。
発光層14は、図3に示すように、バリア層14Aと井戸層14Wとが交互に積層されてなる積層構造を有することが好ましい。超格子層122のすぐ上には、最初のバリア層14Azが設けられることが好ましい。井戸層14Wのうち最も第1p型窒化物半導体層19側に位置する井戸層14W1の上には、最後のバリア層14A0が設けられることが好ましい。
本実施形態では、各バリア層14Aおよび各井戸層14Wを識別するために、p型窒化物半導体層16から超格子層122へ向かって番号を付して井戸層14W1、バリア層14A1、井戸層14W2、バリア層14A2、・・・などと表記している。なお、各バリア層14Aおよび各井戸層14Wのそれぞれを特定する場合を除いては、「バリア層14A」および「井戸層14W」と表記する。
各井戸層14Wの組成は、窒化物半導体発光素子1に求められる発光波長に合わせて調整されることが好ましく、たとえば、AlcGadIn(1-c-d)N(0≦c<1、0<d≦1)であることが好ましく、Alを含まないIneGa(1-e)N(0<e≦1)であることがより好ましい。たとえば波長が375nm以下の紫外光を窒化物半導体発光素子1に発光させる場合には、発光層14のバンドギャップエネルギーを大きくする必要があるので、各井戸層14Wの組成はAlを含むことが好ましい。
<第1p型窒化物半導体層>
第1p型窒化物半導体層19は、発光層14上に設けられている。第1p型窒化物半導体層19は、図1に示すように3層のp型窒化物半導体層16,17,18が積層されて構成されていても良いし、2層以下のp型窒化物半導体層を有していても良いし、4層以上のp型窒化物半導体層を有していても良い。p型窒化物半導体層16,17,18は、たとえば、Als6Gat6Inu6N(0≦s6≦1、0≦t6≦1、0≦u6≦1、s6+t6+u6≠0)層にp型ドーパントがドープされた層であることが好ましく、Als6Ga(1-s6)N(0<s6≦0.4、好ましくは0.1≦s6≦0.3)層にp型ドーパントがドープされた層であることがより好ましい。たとえば、p型窒化物半導体層16は、p型AlGaN層である。p型窒化物半導体層17は、p型GaN層である。p型窒化物半導体層18は、p型ドーパント濃度がp型窒化物半導体層17よりも高いp型GaN層である。
p型ドーパントは特に限定されず、たとえばMgであることが好ましい。p型窒化物半導体層16,17,18のキャリア濃度は1×1017cm-3以上であることが好ましい。ここで、p型ドーパントの活性率は0.01程度であることから、p型窒化物半導体層16,17,18のp型ドーパント濃度(キャリア濃度とは異なる)は1×1019cm-3以上であることが好ましい。ただし、p型窒化物半導体層16のうち発光層14側に位置する部分のp型ドーパント濃度は1×1019cm-3未満であっても良い。
p型窒化物半導体層16,17,18の合計の厚さ(第1p型窒化物半導体層19の厚さ)は特に限定されず、50nm以上300nm以下であることが好ましい。p型窒化物半導体層16,17,18の厚さを薄くすれば、その成長時における加熱時間が短くなるので、p型ドーパントが発光層14へ拡散することを防止できる。
<n側電極、透明電極、p側電極>
n側電極21およびp側電極25は、窒化物半導体発光素子1に駆動電力を供給するための電極である。図2には、n側電極21およびp側電極25がパッド電極部分のみで構成されていることを図示している。しかし、電流拡散を目的とする細長い突出部(枝電極)が、図2に示すn側電極21およびp側電極25に接続されていても良い。また、p側電極25よりも下には、電流がp側電極25へ注入されることを防止するための絶縁層が設けられていることが好ましい。これにより、発光層14が発した光がp側電極25に遮蔽される量を減少させることができる。
n側電極21は、たとえば、チタン層、アルミニウム層および金層がこの順序で積層されてなる積層構造を有することが好ましい。n側電極21にワイヤボンディングを行う場合を想定して、n側電極21の厚さは1μm以上であることが好ましい。
p側電極25は、たとえば、ニッケル層、アルミニウム層、チタン層および金層がこの順序で積層されてなる積層構造を有することが好ましいが、n側電極21と同一の材料からなっても良い。p側電極25にワイヤボンディングを行う場合を想定して、p側電極25の厚さは1μm以上であることが好ましい。
透明電極23は、たとえばITO(Indium Tin Oxide)またはIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電材料からなることが好ましく、20nm以上200nm以下の厚さを有していることが好ましい。
<Vピットの始点>
本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1において、Vピット15の始点の大部分は発光層14内に存在しておらず、その過半数は超格子層122内に存在していると考えられる。Vピット15は貫通転位に起因して発生すると考えられるので、貫通転位の多くはVピット15の内側にあると考えられる。よって、発光層14に注入された電子およびホールがVピット15の内側の貫通転位に達することを抑制することができる。したがって、電子およびホールが貫通転位に捕獲されたために非発光再結合が発生することを抑制できると考えられる。これにより、発光効率の低下を防止できる。このことは、高温下または大電流駆動時において顕著となる。
詳細には、高温下では発光層14への注入キャリア(ホールまたは電子)の移動が活発になるので、注入キャリアが貫通転位へ到達する確率が増大する。しかしながら、本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1では、発光層14内における貫通転位の多くがVピット15で覆われるので(貫通転位の多くがVピット15の内側に存在するので)、貫通転位での非発光再結合が抑制される。よって、高温下での発光効率を高く維持できる。
また、Vピット15の始点が発光層14よりも下に位置するため、バリア層(特にアンドープバリア層)の層数を増やして発光層14の体積を増やすことができる。これにより、大電流駆動時での発光効率を高く維持することができる。
<キャリア濃度とドーパント濃度とについて>
キャリア濃度は電子またはホールの濃度を意味し、n型ドーパントの量またはp型ドーパントの量だけで決定されない。このようなキャリア濃度は、窒化物半導体発光素子1の電圧対容量特性の結果に基づいて算出され、電流が注入されていない状態のキャリア濃度のことを意味し、イオン化した不純物、ドナー化した結晶欠陥およびアクセプター化した結晶欠陥から発生したキャリアの合計である。
n型ドーパントであるSiなどの活性化率は高い。よって、n型キャリア濃度はn型ドーパント濃度とほぼ同じと考えることができる。また、n型ドーパント濃度はSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy(二次イオン質量分析計))にて深さ方向の濃度分布を測定することにより容易に求めることができる。さらに、ドーパント濃度の相対関係(比率)はキャリア濃度の相対関係(比率)とほぼ同じである。測定により得られたn型ドーパント濃度を厚さ方向に平均すれば、平均n型ドーパント濃度を得ることができる。
<第2n型窒化物半導体層と超格子層との別の作用・効果について>
本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1では、第1n型窒化物半導体層8と発光層14との間には、第1n型窒化物半導体層8側から順に、第2n型窒化物半導体層9(好ましくはn型変調ドープ層)、Vピット発生層10、多層構造体121および超格子層122が積層されている。これにより、ESD破壊の原因となる逆バイアス方向の高電圧がn側電極21とp側電極25との間に印加された場合には、空乏層が第2n型窒化物半導体層9および超格子層122側に伸長する。よって、発光層14に印加される逆バイアス電圧(電界)を低減することができる。したがって、ESD破壊が生じる閾値電圧(すなわちESD耐圧)が高くなる。
本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1がVピット15を意図的に導入しないように構成されている場合であっても、バイアス電圧が順方向に印加されたときのリーク電流の増大を抑えることができ、Vピット15の形成による発光面積の低下を抑えることもできる。よって、本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1がVピット15を意図的に導入しないように構成されている場合であっても、窒化物半導体発光素子1の発光特性の低下を有効に防止することができる。
本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1が第2n型窒化物半導体層9または超格子層122のいずれか一方のみを備えている場合であっても、上記作用および効果を得ることができる。しかし、本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1は、第2n型窒化物半導体層9および超格子層122の両方を備えていることが好ましい。これにより、ESD耐圧がより高くなる。バイアス電圧が順方向に印加されたときのリーク電流の増大をより効果的に低減させることができる。また、Vピット15の形成による発光面積の低下をより効果的に抑えることができる。
<窒化物半導体発光素子の製造>
図5は、図1に示す窒化物半導体発光素子1の製造方法の一部を工程順に示すフロー図である。図6は、図5に示す下地基板の準備工程を工程順に示すフロー図である。図7は、図1に示す窒化物半導体発光素子1の別の製造方法の一部を工程順に示すフロー図である。なお、窒化物半導体発光素子1の各構成要素の組成または厚みなどについては上記<窒化物半導体発光素子の構成>で示したとおりである。
図5に示すステップS501において下地基板6を準備する。たとえばスパッタ法などにより基板3の上にバッファ層5を形成する。バッファ層5が形成された基板3を第1結晶成長装置内に入れ、たとえばMOCVD法などによりバッファ層5の上に下地層7を形成する。次に、図6に示すステップS511において第1n型窒化物半導体層8を形成してから、図6に示すステップS512において第2n型窒化物半導体層9を形成する。
下地層71、第1n型窒化物半導体層8および第2n型窒化物半導体層9の成長温度は、800℃以上であることが好ましく、900℃以上であることがより好ましく、1000℃以上であることがさらに好ましい。これらの成長温度は高ければ高いほど、形成される窒化物半導体層の結晶品質は良好となる。しかし、これらの成長温度が高すぎると、形成された窒化物半導体層が窒素抜けなどの影響を受け、その結果、形成された窒化物半導体層の結晶品質の悪化を招くことがある。そのため、これらの成長温度は、1250℃以下であることが好ましく、1200℃以下であることがより好ましい。
第1下地層71は、斜めファセット面71aが形成されるファセット成長モードで成長されることが好ましい。第2下地層75は、斜めファセット面71aを埋め込んで平坦な上面75bを形成可能な埋込成長モードで成長されることが好ましい。具体的には、第1下地層71は、第2下地層75よりも3次元成長しやすい雰囲気下で形成されることが好ましく、第2下地層75よりも高圧且つ低温下で形成されることがより好ましい。たとえば、第1下地層71は、500Torrの圧力下且つ990℃の温度下で形成されることが好ましく、第2下地層75は、200Torrの圧力下且つ1080℃の温度下で形成されることが好ましい。
第1n型窒化物半導体層8および第2n型窒化物半導体層9は、それぞれ、MOCVD法、ハイドライド気相成長法または液相成長法により形成されることが好ましく、MOCVD法により形成されることがより好ましい。MOCVD法により第1n型窒化物半導体層8を形成すると、結晶品質に優れた第1n型窒化物半導体層8を得ることができる。MOCVD法により第2n型窒化物半導体層9を形成した場合にも同様の効果が得られる。ハイドライド気相成長法または液相成長法により第1n型窒化物半導体層8を形成すると、第1n型窒化物半導体層8を安価に形成することができる。ハイドライド気相成長法または液相成長法により第2n型窒化物半導体層9を形成した場合にも同様の効果が得られる。液相成長法は、たとえば液相エピタキシャル成長(liquid phase epitaxy)法であることが好ましい。
第2n型窒化物半導体層9のn-層9Aのn型ドーパント濃度が第1n型窒化物半導体層8のn型ドーパント濃度よりも低くなるように、第1n型窒化物半導体層8および第2n型窒化物半導体層9を形成する。これにより、n-層9Aを全く形成することなく第2n型窒化物半導体層9を形成する場合に比べて、結晶品質に優れた第3n型窒化物半導体層11を形成することができる。よって、結晶品質に優れた発光層14を形成することができるので、発光出力の高い窒化物半導体発光素子1が得られる。このように本実施形態では、発光出力の高い窒化物半導体発光素子1を得るための熱処理または膜形成などを行うことなく発光出力の高い窒化物半導体発光素子1を得ることができる。したがって、第3n型窒化物半導体層11などの成長条件に制限されることなく発光出力の高い窒化物半導体発光素子1を製造することができる。
第2n型窒化物半導体層9を形成するとき、成長面61を構成する半導体層をアンドープ層とすることが好ましい。これにより、たとえば第1結晶成長装置内からの下地基板6の取り出しなどにより下地基板6の成長面61が大気中に曝されても、成長面61が大気中の水分または酸素などにより酸化されることを防止できる。また、成長面61と第3n型窒化物半導体層11(具体的にはVピット発生層10)との界面でのn型ドーパントのドープ量の増加(パイルアップ)を防止することができる。これらのことから、結晶品質がさらに優れた第3n型窒化物半導体層11を成長させることができるので、結晶品質がさらに優れた発光層14を得ることができる。よって、発光出力がさらに高い窒化物半導体発光素子1を得ることができる。
第2n型窒化物半導体層9を形成するとき、成長面61を構成する半導体層をドープ層としても良い。この場合には、第1n型窒化物半導体層8側からn-層9Aとn+層9Bとを交互に積層して第2n型窒化物半導体層9を形成することが好ましい。つまり、第2n型窒化物半導体層9を変調ドープ層とすることが好ましい。第2n型窒化物半導体層9が変調ドープ層である場合に第2n型窒化物半導体層9を800℃以上1250℃以下の温度で成長させると、次に示す効果が得られる。
窒化物半導体発光素子1の発光出力を高めるためには、発光層14の結晶品質を高く維持することが好ましく、よって、発光層14よりも下地基板6側に位置する層(具体的には第3n型窒化物半導体層11)の結晶品質を高く維持することが好ましい。一般に、成長温度が高ければ、成長される層の結晶品質は高くなると考えられている。そのため、高温下で第3n型窒化物半導体層11を成長させて結晶品質に優れた第3n型窒化物半導体層11を得るということが考えられる。
しかし、高温下で第3n型窒化物半導体層11を結晶成長させると、パーティクルに因る結晶欠陥が結晶成長中に発生することがある。たとえば、第3n型窒化物半導体層11を1000℃で成長させ、発光層14と第1p型窒化物半導体層19とを800℃で成長させ、その後、異なる窒化物半導体発光素子1を製造するために第3n型窒化物半導体層11を1000℃で成長させる場合を考える。このとき、発光層14または第1p型窒化物半導体層19の成長時に、未反応物などがチャンバーの内壁面上に付着することがある。ここで、第3n型窒化物半導体層11の成長温度は、発光層14および第1p型窒化物半導体層19の成長温度よりも高い。そのため、第3n型窒化物半導体層11の2度目の成長時には、上記未反応物がチャンバーの内壁面上から剥がれ落ちることがあり、剥がれ落ちた未反応物がパーティクルまたは不純物となって成長中の第3n型窒化物半導体層11内に取り込まれることがある。その結果、成長中の第3n型窒化物半導体層11内では、取り込まれたパーティクルまたは不純物による結晶欠陥が発生する。
一方、第2n型窒化物半導体層9を800℃以上1250℃以下の温度で成長させると、第2n型窒化物半導体層9の結晶品質を高めることができる。特に、下地基板6の成長面61を構成する半導体層(n-層9Aまたはn+層9B)の結晶品質を高めることができる。よって、比較的低温下で第3n型窒化物半導体層11を成長させても、結晶品質が高く維持された第3n型窒化物半導体層11を形成することができる。したがって、第3n型窒化物半導体層11の成長温度を下地基板6の成長温度よりも低くすることができ、たとえば850℃以下とすることができる。その結果、第3n型窒化物半導体層11の成長時には、未反応物がチャンバーの内壁面上から剥がれ落ちることを防止できるので、未反応物がパーティクルまたは不純物となって成長中の第3n型窒化物半導体層11内に取り込まれることを防止できる。このように、第2n型窒化物半導体層9を800℃以上1250℃以下の温度で成長させれば、パーティクルに因る結晶欠陥を発生させることなく第3n型窒化物半導体層11を成長させることができるので、発光層14の結晶品質をさらに高めることができる。また、結晶品質に優れた第2n型窒化物半導体層9を得ることができるので、第3n型窒化物半導体層11または発光層14などの成長条件は制限されない。以上のことから、成長条件に制限されることなく発光出力の高い窒化物半導体発光素子を製造することができる。
また、第3n型窒化物半導体層11の成長温度を下地基板6の成長温度よりも低くすることができるので、第3n型窒化物半導体層11の成長時における昇温に要する時間を短縮することができる。よって、窒化物半導体発光素子1の製造時間の短縮化を図ることができるので、窒化物半導体発光素子1の製造コストを低く抑えることができる。また、第3n型窒化物半導体層11の成長時に基板3または下地基板6の割れを抑制できるので、製造歩留まりを高く維持することができる。
下地基板6の準備工程が終了したら、下地基板6を第1結晶成長装置内から取り出して第2結晶成長装置内へ入れる。その後、図5に示すステップS502において、下地基板6の成長面61上に第3n型窒化物半導体層11を形成する。下地基板6の成長面61上に、Vピット発生層10、多層構造体121および超格子層122を順に形成する。
Vピット発生層10の形成方法は特に限定されないが、その成長温度は下地基板6の成長温度(たとえば、第1n型窒化物半導体層8または第2n型窒化物半導体層9の成長温度)よりも低いことが好ましく、たとえば850℃以下であることが好ましい。しかし、Vピット発生層10の成長温度が低すぎると、発光層14の発光効率の低下を招くことがある。よって、Vピット発生層10の成長温度は、700℃以上であることがより好ましく、750℃以上であることがさらに好ましい。第2n型窒化物半導体層9のn+層9Bよりもn型ドーパント濃度が高くなるようにVピット発生層10を形成しても良い。これにより、Vピット発生層10によるVピット15の形成効果を増大させることができる。
多層構造体121の形成方法は特に限定されないが、その成長温度は下地基板6の成長温度(たとえば、第1n型窒化物半導体層8または第2n型窒化物半導体層9の成長温度)よりも低いことが好ましく、Vピット発生層10の成長温度以下の温度であることがより好ましく、Vピット発生層10の成長温度と同一(±10℃)であることがさらに好ましい。多層構造体121の成長温度がVピット発生層10の成長温度以下の温度であれば、Vピット発生層10で発生したVピット15の大きさが大きくなるので、ESDに起因する不良率が低下する。この効果を有効に得るためには、多層構造体121の成長温度は、600℃以上であることが好ましく、600℃以上900℃以下であることがより好ましい。
超格子層122の形成方法は特に限定されないが、その成長温度は下地基板6の成長温度(たとえば、第1n型窒化物半導体層8または第2n型窒化物半導体層9の成長温度)よりも低いことが好ましく、Vピット発生層10の成長温度以下の温度であることがより好ましく、Vピット発生層10の成長温度と同一(±10℃)であることがさらに好ましい。超格子層122の成長温度がVピット発生層10の成長温度以下の温度であれば、Vピット発生層10で発生したVピット15の大きさが大きくなるので、ESDに起因する不良率が低下する。この効果を有効に得るためには、超格子層122の成長温度は、600℃以上900℃以下であることが好ましく、600℃以上800℃以下であることがより好ましい。
続いて、図5に示すステップS503において、発光層14を形成する。発光層14の形成方法は特に限定されず、MQW構造の形成方法として公知な方法を特に限定されることなく用いることができる。
続いて、図5に示すステップS504において、第1p型窒化物半導体層19を形成する。第1p型窒化物半導体層19の形成方法は特に限定されず、p型窒化物半導体層の形成方法として公知な方法を特に限定されることなく用いることができる。
続いて、第1n型窒化物半導体層8の一部分が露出するように、第1p型窒化物半導体層19、発光層14、第3n型窒化物半導体層11、第2n型窒化物半導体層9および第1n型窒化物半導体層8の一部をエッチングする。このエッチングにより露出した第1n型窒化物半導体層8の上面上にn側電極21を形成する。また、p型窒化物半導体層18の上面上に透明電極23とp側電極25とを順に積層する。その後、透明電極23と上記エッチングによって露出した各層の側面とを覆うように、透明保護膜27を形成する。これにより、図1に示す窒化物半導体発光素子1が得られる。
本実施形態に係る窒化物半導体発光素子の製造方法は、図7に示すように、基板3を除去するステップS505を備えていても良い。基板3を除去するタイミングは図7に示すタイミングに限定されず、たとえば下地基板6を準備するステップS501の後であれば良い。
以上説明したように、図5、図6などに示す窒化物半導体発光素子1の製造方法は、成長面61を有する下地基板6を準備する工程S501を備える。下地基板6を準備する工程S501は、基板3上に第1n型窒化物半導体層8を形成する工程S511と、第1n型窒化物半導体層8上にn型ドーパント濃度が当該第1n型窒化物半導体層8よりも低いn-層9Aを含む第2n型窒化物半導体層9を形成する工程S512とを有する。これにより、成長条件に制限されることなく発光出力の高い窒化物半導体発光素子1を得ることができる。
成長面61を構成する半導体層はアンドープ層であることが好ましい。これにより、発光出力がさらに高い窒化物半導体発光素子1を得ることができる。成長面61を構成する半導体層はドープ層であっても良い。
第2n型窒化物半導体層9を形成する工程S512は、第1n型窒化物半導体層8側から、n-層9Aと、n型ドーパント濃度がn-層9Aよりも高いn+層9Bとを交互に積層する工程を含むことが好ましい。これにより、順方向電圧が低く逆バイアス印加時の漏洩電流が防止された窒化物半導体発光素子1を得ることができる。
n+層9Bの厚さは、n-層9Aの厚さ以下であることが好ましい。これにより、ESD耐圧を向上させることができる。
第1n型窒化物半導体層8側から数えて2つ目のn+層9Bの厚さは、50nm以上100nm以下であることが好ましい。第1n型窒化物半導体層8側から数えて3つ目のn+層9Bの厚さは、第1n型窒化物半導体層8側から数えて2つ目のn+層9Bの厚さ以下であることが好ましい。これにより、順方向電圧の低下と逆バイアス印加時の漏洩電流の発生の防止とESD耐圧の向上とを図りつつ第2n型窒化物半導体層9の厚さを薄くすることができる。
第1n型窒化物半導体層8および第2n型窒化物半導体層9は、有機金属化学気相成長法、ハイドライド気相成長法または液相成長法により形成されることが好ましい。これにより、結晶品質に優れた第1n型窒化物半導体層8または第2n型窒化物半導体層9を形成することができる。
本発明に係る窒化物半導体発光素子1は、上記本発明に係る窒化物半導体発光素子1の製造方法にしたがって製造されたものである。
本発明に係る窒化物半導体発光素子用下地基板6は、第1n型窒化物半導体層8と、第1n型窒化物半導体層8上に、n型ドーパント濃度が当該第1n型窒化物半導体層8よりも低いn-層9Aを含む第2n型窒化物半導体層9とを備える。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
まず、100mm径のサファイア基板からなるウエハを準備した。ウエハの上面には、凸部3aと凹部3bとが交互に形成されてなる凹凸形状が形成されていた。
ウエハに対する凹凸形状の形成方法を示す。まず、図4に示す凸部3aの平面配置が規定されたマスクをウエハ上に設けた。次に、このマスクを用いてウエハの上面をドライエッチングした。ドライエッチングされた部分が凹部3bとなり、よって、図4に示す平面配置を有する凹部3bがウエハの上面に形成された。これにより、凸部3aは、ウエアの上面のa(sub)軸方向(<11−20>方向)に配列されるとともに、ウエアの上面のa(sub)軸方向に対して+60°の傾きをなす方向とウエハの上面のa(sub)軸方向に対して−60°の傾きをなす方向(いずれもu方向)とにそれぞれ配置された。凸部3aは、ウエハの上面において、図4に破線で示した仮想三角形3tの頂点にそれぞれ配置され、仮想三角形3tの3辺のそれぞれの辺の方向に周期的に配置されていた。
ウエハの上面における凸部3aの形状は円形であり、その円の直径は1.2μm程度であった。隣り合う凸部3aの頂点の間隔(図4に示す仮想三角形3tの1辺)は2μmであり、凸部3aの高さは0.6μm程度であった。凸部3aは図1に示す側面視形状を有し、その先端は丸みを帯びていた。凹部3bは図1に示す側面視形状を有していた。
凸部3aおよび凹部3bの形成後、ウエハの上面をRCA洗浄した。RCA洗浄後のウエハをチャンバー内に入れ、そのチャンバ内にN2とO2とArとを導入し、チャンバ内のウエハを650℃に加熱した。N2とO2とArとの混合雰囲気下においてAlターゲットをスパッタリングするという反応性スパッタ法により、凸部3aおよび凹部3bが形成されたウエハの上面上にAlON結晶からなるバッファ層5(厚さ25nm)を形成した。形成されたバッファ層5は、ウエハの上面の法線方向に伸長する柱状結晶の集合体であって結晶粒の揃った柱状結晶の集合体からなっていた。
バッファ層5が形成されたウエハを第1MOCVD装置内に入れた。500Torrの圧力下、990℃の温度下で、アンドープGaNからなる第1下地層71をMOCVD法により結晶成長させた。また、200Torrの圧力下、1080℃の温度下で、アンドープGaNからなる第2下地層75をMOCVD法により結晶成長させた。下地層7の厚さは4μmであった。その後、1110℃の温度下で、Siドープn型GaNからなる第1n型窒化物半導体層8をMOCVD法により結晶成長させた。第1n型窒化物半導体層8の厚さは4.5μmであり、第1n型窒化物半導体層8のn型ドーパント濃度は1×1019cm-3であった。
ウエハの温度を1110℃に保持した状態で、第2n型窒化物半導体層9を結晶成長させた。第1n型窒化物半導体層8上に、厚さ87nmのアンドープGaN層(n-層9A)、厚さ50nmのSiドープn型GaN層(n+層9B(n型ドーパント濃度:1×1019cm-3))、厚さ87nmのアンドープGaN層(n-層9A)、および、厚さ25nmのSiドープn型GaN層(n+層9B(n型ドーパント濃度:1×1019cm-3))をこの順でMOCVD法により結晶成長させた。
ウエハを第1MOCVD装置内から取り出して第2MOCVD装置内へ入れた。ウエハの温度を801℃としてから、厚さ25nmのSiドープGaN層(Vピット発生層10)をMOCVD法により結晶成長させた。結晶成長されたSiドープGaN層は第2n型窒化物半導体層9の最上層に接しており、そのn型ドーパント濃度は1×1019cm-3であった。
ウエハの温度を801℃に保持した状態で、多層構造体121を結晶成長させた。厚さ7nmのSiドープInGaN層、厚さ30nmのSiドープGaN層、厚さ7nmのSiドープInGaN層、および、厚さ20nmのSiドープGaN層を2層ずつ交互に積層した。多層構造体121を構成する層のいずれにおいてもn型ドーパント濃度を7×1017cm-3とした。InGaN層のIn組成比を、次に成長させる超格子層122のナローバンドギャップ層122BのIn組成比と同じとした。
ウエハの温度を801℃に保持した状態で、超格子層122を結晶成長させた。SiドープGaNからなるワイドバンドギャップ層122AとSiドープInGaNからなるナローバンドギャップ層122Bとを交互に20周期成長させた。各ワイドバンドギャップ層122Aの厚さは1.55nmであった。各ナローバンドギャップ層122Bの厚さは1.55nmであった。各ワイドバンドギャップ層122Aのn型ドーパント濃度は、ワイドバンドギャップ層122Aのうち発光層14側に位置する5層においては1×1019cm-3であり、その5層よりも下地基板6側に位置する層においては0cm-3(アンドープ)であった。各ナローバンドギャップ層122Bのn型ドーパント濃度は、ナローバンドギャップ層122Bのうち発光層14側に位置する5層においては1×1019cm-3であり、その5層よりも下地基板6側に位置する層においては0cm-3(アンドープ)であった。発光層14の井戸層14Wがフォトルミネッセンスにより発する光の波長が448nmとなるようにTMI(トリメチルインジウム)の流量を調整したため、各ナローバンドギャップ層122Bの組成はInyGa1-yN(y=0.04)であった。
ウエハの温度を672℃に下げて、発光層14を結晶成長させた。バリア層14AとInGaNからなる井戸層14Wとを交互に結晶成長させて、井戸層14Wを8層結晶成長させた。各バリア層14Aの厚さは4.2nmであった。最初のバリア層14Azおよびバリア層14A7のn型ドーパント濃度は4.3×1018cm-3であり、その他のバリア層14A6、14A5、・・・、14A1はアンドープであった。
ここで、最初のバリア層14Azの厚さは、バリア層14A7の厚さよりも厚くても良く、たとえば5.05nmであっても良い。これにより、超格子層122のうち最も発光層14側にナローバンドギャップ層122Bを形成することができ、超格子層122の組数に含まれないワイドバンドギャップ層122Aの作用を持たせることができる。最初のバリア層14Azのn型ドーパント濃度を、最初のバリア層14Azの上部(最初のバリア層14Azと井戸層14W8との界面から1.55nm離れた領域)において1×1019cm-3とし、最初のバリア層14Azの下部(最初のバリア層14Azの上部以外の部分)において4.3×1018cm-3としても良い。
バリア層14A7の下部(井戸層14W8とバリア層14A7との界面から3.5nm離れた領域)にのみn型ドーパントをドープし、バリア層14A7の上部(バリア層14A7の下部以外の部分)をアンドープとしてもよい。このように、バリア層14A7の上部をアンドープとすることにより、井戸層14W7の注入キャリアがn型にドープされたバリア層部分と直接接することを防止することができる。
井戸層14Wは、キャリアガスとして窒素ガスを用いて結晶成長され、アンドープInxGa1-xN層(x=0.20)であった。各井戸層14Wの厚さは2.7nmであった。井戸層14Wがフォトルミネッセンスにより発する光の波長が448nmとなるようにTMIの流量を調整して、井戸層14WにおけるInの組成xを設定した。
最上層の井戸層14W1の上に、アンドープのGaN層からなる最後のバリア層14A0(厚さ10nm)を結晶成長させた。
ウエハ温度を1000℃に上げて、最後のバリア層14A0の上面上に、p型Al0.18Ga0.82N層(p型窒化物半導体層16)、p型GaN層(p型窒化物半導体層17)およびp型コンタクト層(p型窒化物半導体層18)を順に結晶成長させた。
上述の各層の結晶成長では、Gaの原料ガスとしてはTMG(トリメチルガリウム)を用い、Alの原料ガスとしてはTMA(トリメチルアルミニウム)を用い、Inの原料ガスとしてはTMI(トリメチルインジウム)を用い、Nの原料ガスとしてはNH3を用いた。また、n型ドーパントであるSiの原料ガスとしてはSiH4を用い、p型ドーパントであるMgの原料ガスとしてはCp2Mgを用いた。しかし、原料ガスは上記ガスに限定されず、MOCVD用原料ガスとして用いられるガスであれば限定されることなく用いることができる。たとえば、Gaの原料ガスとしてTEG(トリエチルガリウム)を用いることができ、Alの原料ガスとしてTEA(トリエチルアルミニウム)を用いることができ、Inの原料ガスとしてTEI(トリエチルインジウム)を用いることができ、Nの原料ガスとしてDMHy(ジメチルヒドラジン)などの有機窒素化合物を用いることができ、Siの原料ガスとしてSi2H6または有機Siなどを用いることができる。
ウエハを第2MOCVD装置内から取り出した。その後、第1n型窒化物半導体層8の一部分が露出するように、p型コンタクト層(p型窒化物半導体層18)、p型GaN層(p型窒化物半導体層17)、p型Al0.18Ga0.82N層(p型窒化物半導体層16)、発光層14、超格子層122、多層構造体121、SiドープGaN層(Vピット発生層10)、第2n型窒化物半導体層9および第1n型窒化物半導体層8をエッチングした。このエッチングにより露出した第1n型窒化物半導体層8の上面上に、Auからなるn側電極21を形成した。p型コンタクト層18の上面上に、ITOからなる透明電極23とAuからなるp側電極25とを順に形成した。透明電極23および上記エッチングによって露出した各層の側面を主に覆うように、SiO2からなる透明保護膜27を形成した。その後、ウエハを620×680μmサイズのチップに分割した。これにより、実施例1に係る窒化物半導体発光素子を得た。
得られた窒化物半導体発光素子では、順方向電流120mAにおいて、発光波長が448nmであり、発光出力が170mWであり、順方向電圧が3.1Vであった。また、逆方向電圧5Vを印加したとき、漏洩電流は0.0mAであった。
<実施例2>
以下に示す第2n型窒化物半導体層9を結晶成長させたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって、本実施例の窒化物半導体発光素子を得た。第1n型窒化物半導体層8上に、厚さ87nmのアンドープGaN層(n-層9A)、厚さ50nmのSiドープn型GaN層(n+層9B(n型ドーパント濃度:1×1019cm-3))、および、厚さ87nmのアンドープGaN層(n-層9A)をこの順でMOCVD法により結晶成長させた。
<実施例3>
以下に示す第2n型窒化物半導体層9を結晶成長させたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって、本実施例の窒化物半導体発光素子を得た。第1n型窒化物半導体層8上に、厚さ87nmのアンドープGaN層(n-層9A)、および、厚さ50nmのSiドープn型GaN層(n+層9B(n型ドーパント濃度:1×1019cm-3))をこの順でMOCVD法により結晶成長させた。
<実施例4>
以下に示す第2n型窒化物半導体層9を結晶成長させたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって、本実施例の窒化物半導体発光素子を得た。第1n型窒化物半導体層8上に、厚さ87nmのアンドープGaN層(n-層9A)をMOCVD法により結晶成長させた。
<比較例1>
比較例1では、第1n型窒化物半導体層8からなる下地基板上に、第2MOCVD装置内において第2n型窒化物半導体層9以降の窒化物半導体層を結晶成長させた。具体的には、凹凸形状が形成されたサファイア基板上に、バッファ層5、厚さ4.0μmの下地層、および、厚さ3.0μmのSiドープn型GaN層(第1n型窒化物半導体層8)をMOCVD法により結晶成長させた。これにより、下地基板を得た。
次に、第2MOCVD装置内において、サファイア基板の温度を1110℃にした状態で、厚さ1.5μmのSiドープGaN層、厚さ87nmのアンドープGaN層(n-層9A)、厚さ50nmのSiドープn型GaN層(n+層9B(n型ドーパント濃度:1×1019cm-3))、厚さ87nmのアンドープGaN層(n-層9A)、および、厚さ25nmのSiドープn型GaN層(n+層9B(n型ドーパント濃度:1×1019cm-3))をこの順でMOCVD法により結晶成長させた。その後、第2MOCVD装置内において、サファイア基板の温度を801℃にしてから、上記実施例1と同様の方法にしたがって窒化物半導体発光素子を製造した。
実施例1〜4では、比較例1に比べて、ESD不良、VF不良およびIR不良を合わせたリーク系の不良が10%程度、低減した。
順方向電圧は、実施例1〜4のうち実施例4において最も高く、実施例3、実施例2および実施例1の順に低くなった。逆バイアス印加時の漏洩電流は、実施例1〜4のうち実施例4において最も多く、実施例3、実施例2および実施例1の順に少なくなった。これらの理由として次に示すことが考えられる。実施例4では第2n型窒化物半導体層9がn-層9Aのみからなるのに対し、実施例3では第2n型窒化物半導体層がn-層9Aとn+層9Bとで構成され、実施例2では第2n型窒化物半導体層9がn-層9Aとn+層9Bとn-層9Aとで構成され、実施例1では第2n型窒化物半導体層9がn-層9Aとn+層9Bとn-層9Aとn+層9Bとで構成されている。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。