以下で説明の実施の形態は、上述の発明が解決しようとする課題の欄や発明の効果の欄に記載した内容に止まること無くその他にもいろいろな課題を解決し、効果を呈している。以下の実施の形態が解決する課題の主なものを、次に列挙する。
〔特性改善〕
振動状態に応じて周波数感応部において、減衰力特性(ピストン速度に対する減衰力)を変更する際に、より滑らかに変更する等の特性設定が求められている。これは、小さな減衰力が発生する特性と、大きな減衰力が発生する特性の切り替わりが唐突に起こると、実際に発生する減衰力も唐突に切り替わるので、車両の乗り心地が悪化し、さらには減衰力の切り替わりが車両の操舵中に発生すると、車両の挙動が不安定となり、運転者が操舵に対して違和感を招く恐れがあるためである。特に、アクチュエータによる減衰力調整で高い減衰力にした際には、周波数に応じた減衰力の変化の幅が大きくなるので、より滑らかに変更することが重要となる。
〔大型化の抑制〕
高周波に対応した高出力のアクチュエータは、ソレノイドを大きくする必要があるという課題がある。また、周波数感応部、アクチュエータによる減衰力調整部をピストン部に設けた場合、よりピストン部の軸長が長くなるので、アクチュエータを含めシリンダ装置全体が軸方向に長くなるということがあげられる。このためシリンダ装置が大型化すると、車体への取付け自由度が低下するため、シリンダ装置の軸方向長の増加は、大きな課題である。
〔部品数の低減〕
高周波振動の制御を正確に行う場合は、振動状態(ばね上下速度、ばね下上速度、相対速度)を測定する高感度の加速度センサや車高センサ等が必要となる。この場合、センサを多数設けることは、部品数の増加という課題が有り、さらに、配線も必要となるので、車両への取付性が悪くなるという課題も存在する。また、昨今では、これらセンサ数を減らし、振動状態を推定するものが開発されているが、高周波を正確に制御する場合、推定では十分な精度が得られないという課題がある。
以下、本発明の実施の形態によるサスペンション装置を、例えば4輪自動車に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、車両のボディを構成する車体1の下側には、例えば左,右の前輪2と左,右の後輪3(一方のみ図示)とが設けられている。左,右の前輪2側と車体1との間には、前輪側のサスペンション4,4(以下、前輪サスペンション4という)が介装して設けられている。
左,右の前輪サスペンション4は、左,右の懸架ばね5(以下、ばね5という)と、該各ばね5と並列になって左,右の前輪2側と車体1との間に設けられた左,右の緩衝器6とにより構成されている。左,右の緩衝器6は、後述するように周波数感応部24が付設された減衰力調整式油圧緩衝器(即ち、減衰力調整+周波数感応緩衝器)により構成されている。
後輪側のサスペンション7,7(以下、後輪サスペンション7という)は、左,右の後輪3側と車体1との間に介装して設けられている。左,右の後輪サスペンション7は、左,右の懸架ばね8(以下、ばね8という)と、該各ばね8と並列になって左,右の後輪3側と車体1との間に設けられた左,右の緩衝器9とにより構成されている。これらの緩衝器9についても、後述するように周波数感応部24が付設された減衰力調整式油圧緩衝器(即ち、減衰力調整+周波数感応緩衝器)により構成されている。なお、減衰力調整+周波数感応緩衝器を4輪に設けた例を示したが、前輪側または後輪側を減衰力調整のみや周波数感応のみの緩衝器としてもよい。
ここで、図2を参照して前輪側,後輪側の緩衝器6(9)について説明する。なお、両者の構成は基本的に同一であるから、例えば前輪側の緩衝器6について説明し、後輪側の緩衝器9については、その説明を省略するものとする。
図2において、緩衝器6(9)のシリンダを構成する内筒11は、緩衝器6(9)の外殻をなす外筒(図示せず)内に同軸に設けられている。内筒11の下端側は、ボトムバルブ(図示せず)を介して前記外筒の下端側に固定されている。内筒11の上端側は、ロッドガイド(図示せず)等を介して外筒の上端側に固定されている。内筒11内には作動流体としての油液が封入され、前記外筒と内筒11との間には、油液とガスが封入された環状のリザーバ室(図示せず)が形成されている。
12は内筒11内に摺動可能に挿嵌されたピストンで、該ピストン12は、内筒11内をロッド側油室Aとボトム側油室Bとの2室に画成している。ピストン12には、ロッド側油室Aとボトム側油室Bとを連通可能な油路12A,12Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成され、これらの油路12A,12Bは、ピストン12の軸線に対して斜めに傾いた油穴により構成されている。油路12A,12Bは、ロッド側油室Aとボトム側油室Bとの間で油液を流通させる主通路を構成している。
また、ピストン12には、油路12Aの一側開口を取囲むようにピストン12の一側となる下側端面に形成された環状凹部12Cと、該環状凹部12Cの径方向外側に位置し伸長側のディスクバルブ13が離着座する環状弁座12Dと、油路12Bの他側開口を取囲むようにピストン12の他側となる上側端面に形成された環状凹部12Eと、該環状凹部12Eの径方向外側に位置し縮小側のディスクバルブ14が離着座する環状弁座12Fとが設けられている。
15は内筒11内を軸方向に延びたピストンロッドで、該ピストンロッド15は、一端側としての下端側が内筒11内に挿入され、後述するハウジング25の蓋付ナット26等によりピストン12に固着して設けられている。また、ピストンロッド15の他端側としての上端側は、前記ロッドガイド等を介して前記外筒および内筒11の外部に突出している。ピストンロッド15の内周側には、その下端側に開口して形成され後述のシャッタ18が回動可能に挿嵌されるシャッタ装入穴15Aと、該シャッタ装入穴15Aの上端側から上向きに延びた小径のロッド挿入穴15Bとが軸方向に貫通して設けられている。
また、ピストンロッド15には、シャッタ装入穴15Aから径方向外向きに延びた複数の油孔15C,15D,15E,15Fが軸方向と周方向とに離間して設けられている。これらの油孔15C〜15Fのうち各油孔15C〜15Eは、ロッド側油室Aに開口するように配置され、残りの各油孔15Fは、内筒11内のボトム側油室Bに開口するように配置されている。油孔15C〜15Fのうち最も上側に位置する各油孔15Cは、後述するシャッタ18の内孔18Aに径方向の連通路18Bを介して常時連通している。
各油孔15Cの下側に位置する油孔15D,15Eは、ピストンロッド15の周方向で互いに離間し、軸方向ではほぼ同一の位置に配置されている。しかし、油孔15D,15Eは、その孔径(オリフィス径)が異なり、後述するシャッタ18の油溝18Cにより選択的に開,閉される。これにより、後述の如く減衰力が可変に調整される。さらに、ピストンロッド15の外周側には環状の段部15Gが形成され、この段部15Gは、ピストン12との間で縮小側のディスクバルブ14を軸方向に位置決めしている。
前記ディスクバルブ13,14のうちピストン12の一側となる下端面に設けられた伸長側のディスクバルブ13は、ピストンロッド15の伸長行程でピストン12が上向きに摺動変位するときに、各油路12A内を流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生する。また、ピストン12の他側となる上端面に設けられた縮小側のディスクバルブ14は、ピストンロッド15の縮小行程でピストン12が下向きに摺動変位するときに、各油路12B内を流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生するものである。
16は後述する周波数感応部24の蓋付ナット26とピストン12との間に設けられたポート部材で、該ポート部材16は、ピストンロッド15の外周側に嵌合して設けられた環状のリング等により構成されている。ポート部材16は、ボトム側油室Bとピストンロッド15の油孔15Fとの間で油液を流入,出させるものである。
17は本実施の形態で採用した減衰力可変機構で、該減衰力可変機構17は、後述のシャッタ18、コントロールロッド19およびステッピングモータ等のアクチュエータ20を含んで構成されている。減衰力可変機構17のアクチュエータ20は、例えばピストンロッド15の突出端側に設けられ、後述のコントロールロッド19を介してシャッタ18を回動操作する。このとき、シャッタ18は、ピストンロッド15の油孔15D,15E等を開,閉することにより、緩衝器6(9)の減衰力特性を2段階または3段階以上で断続的に調整する。
なお、減衰力可変機構17のアクチュエータ20は、前記減衰力特性を必ずしも断続的に調整する構成である必要はなく、油孔15D,15Eを周方向で徐々に開口面積が変化する孔とすることで、減衰力特性を連続的に変化させる構成としてもよい。また、アクチュエータ20は、ハードな特性(硬特性)からソフトな特性(軟特性)に連続的に調整するため、ステッピングモータ等の電動モータに限らず、例えばソレノイド等からなるリニアアクチュエータで構成してもよい。
18はピストンロッド15のシャッタ装入穴15A内に回動可能に設けられたシャッタで、該シャッタ18は、減衰力可変機構17の開口面積調整部材を構成するものである。シャッタ18は、コントロールロッド19の下端側に一体回転するように設けられ、コントロールロッド19と一緒にピストンロッド15のシャッタ装入穴15A内で回動される。コントロールロッド19は、ピストンロッド15のロッド挿入穴15B内に挿通して設けられ、その上端側がアクチュエータ20の出力軸(図示せず)に連結されている。
シャッタ18の内周側は、軸方向に延びる内孔18Aとなり、その下端側は後述するハウジング25内の上側室Cと常時連通している。また、シャッタ18には、ピストンロッド15の油孔15Cに内孔18Aを常時連通させる径方向の連通路18Bと、該連通路18Bからシャッタ18の軸方向に離間しシャッタ18の外周面に形成された油通路としての油溝18Cとが設けられている。油溝18Cはシャッタ18の軸方向に延び、その下端側は、ピストンロッド15の油孔15Fに常時連通している。また、油溝18Cの上端側は、シャッタ18の回動操作に応じてピストンロッド15の油孔15D,15E等のいずれかに選択的に連通,遮断される。
ここで、シャッタ18の内孔18Aと油溝18Cとは、内筒11内のロッド側油室Aとボトム側油室Bとの間で互いに並列な2つの通路を構成している。2つの通路のうち第1通路100は、ピストンロッド15の油孔15D,15E、シャッタ18の油溝18C、ピストンロッド15の油孔15Fおよびポート部材16等により構成される。第1通路100においては、ロッド側油室Aとボトム側油室Bとの間で油液が油溝18Cを流通するときに、シャッタ18の回動操作(例えば、油孔15D,15E等の開口面積)に応じた減衰力が発生する。ピストンロッド15の油孔15D,15Eは、アクチュエータ20によりシャッタ18を介して減衰力が調整可能な減衰力発生部を構成している。
この場合、第1通路100は、ピストンロッド15の油孔15D,15E、シャッタ18の油溝18C、ピストンロッド15の油孔15Fおよびポート部材16等により構成されており、伸び側と縮み側とで共通な同一の通路として形成される。これにより、内筒11内のロッド側通路Aとボトム側通路Bとを連通、遮断する流路(通路)の構造を単純化して簡素化することができる。
一方、第2通路101は、ピストンロッド15の油孔15C、シャッタ18の連通路18B、内孔18Aおよび後述の上側室C等により構成される。第2通路101は、第1通路100側の前記減衰力発生部(油孔15D,15E)をバイパスするバイパス通路でもある。第2通路101においては、ロッド側油室Aとボトム側油室Bとの間で油液がシャッタ18の内孔18A内を流通するときに、シャッタ18の回動位置に拘わりなく、後述の周波数感応部24により減衰力特性が可変に制御される。
また、ピストンロッド15のシャッタ装入穴15A内には、シャッタ18の上側(軸方向の他側)に位置して筒状のガイド部材21とシール部材22とが設けられ、シャッタ18の下側(軸方向の一側)には、前記第2通路101の一部を構成する筒体23が設けられている。シール部材22は、シャッタ装入穴15Aとコントロールロッド19との間から油液が外部に漏洩するのを阻止するものである。前記筒体23は、シャッタ18がシャッタ装入穴15Aから下方に脱落するのを防ぐ脱落防止部材を構成している。
24はピストンロッド15の下端側に設けられた周波数感応部で、該周波数感応部24は、図2に示すように、ピストンロッド15と一体に内筒11内を変位する筒状のハウジング25と、該ハウジング25内に相対変位可能に設けられた後述のフリーピストン28、Oリング29,30とを含んで構成されている。
ハウジング25は、ピストンロッド15の下端側に螺合して設けられた蓋部材としての蓋付ナット26と、有底筒状体27とにより構成されている。蓋付ナット26は、ピストンロッド15の下端側外周に螺着された内側ナット部26Aと、該内側ナット部26Aの上端側から径方向外向きに延びた環状蓋部26Bと、該環状蓋部26Bの外周側から下向きに垂下され内周面がフリーピストン28に対するガイド面となった外側の筒状垂下部26Cとにより構成されている。筒状垂下部26Cの下端面は、後述のOリング29が接触するハウジング接触面を構成する。
有底筒状体27は、上端側が蓋付ナット26の環状蓋部26Bに外側からカシメ等の手段で固定され内筒11内を下向きに延びた筒状部27Aと、該筒状部27Aの下端側を閉塞する環状の底板部27Bとにより構成されている。底板部27Bの中心側には、後述の下側室Dとボトム側油室Bとを連通させる連通孔27Cが形成されている。
筒状部27Aの内周側には、後述のOリング30が接触するハウジング接触面としての傾斜円弧面27Dが形成され、この傾斜円弧面27Dは、後述するフリーピストン28の移動方向(即ち、軸方向)に対して傾斜した面で、かつ曲面を有する面を構成している。ここで、傾斜円弧面27Dは、フリーピストン28が下向きに変位するときに後述の環状凸部28Aとの間でOリング30を弾性的に圧縮変形させ、このときの抵抗力によりフリーピストン28のストロークエンドに向けた変位を抑制する機能を有している。
28はハウジング25内に摺動可能に設けられたフリーピストンで、該フリーピストン28は、図2に示す如く有底筒状のピストンとして形成され、その外周側には軸方向の中間位置から径方向外向きに突出する環状凸部28Aが設けられている。フリーピストン28は、軸方向の一側となる下端側が有底筒状体27の筒状部27A内に変位可能に挿嵌され、軸方向の他側となる上端側が蓋付ナット26の筒状垂下部26C内に変位可能に挿嵌されている。
ハウジング25内を軸方向に相対変位するフリーピストン28は、蓋付ナット26の環状蓋部26Bと有底筒状体27の底板部27Bとに当接することによって、上,下方向のストークエンドが規定される。フリーピストン28は、ハウジング25内(即ち、第2通路101)を上流側,下流側の2室である上側室Cと下側室Dとに区画している。即ち、第2通路101の一部を構成するハウジング25内は、フリーピストン28により上側室Cと下側室Dとに画成されている。
ここで、第2通路101は、フリーピストン28によって閉塞されており、ロッド側油室Aとボトム側油室B間で油液が置換する流れは生じない。しかし、フリーピストン28がハウジング25内で上,下に相対移動している間は、ロッド側油室Aの油液が上側室Cに流入,流出し、下側室Dからは同量の油液が有底筒状体27の連通孔27Cを介してボトム側室B側に流出,流入する。このため、前記第2通路101側でも、実質的に油液の流れが生じるものである。
フリーピストン28の外周に設けた環状凸部28Aは、その上,下面側が傾斜円弧面28B,28Cとして形成され、これらの傾斜円弧面28B,28Cは、後述のOリング29,30が接触するフリーピストン接触面となっている。傾斜円弧面28B,28Cは、フリーピストン28の軸方向に対して傾斜した曲面を有する面を構成している。ここで、フリーピストン28の傾斜円弧面28Bは、Oリング29を挟んで筒状垂下部26Cの下端面と軸方向で対向し、傾斜円弧面28Cは、Oリング30を挟んで有底筒状体27の傾斜円弧面27Dと軸方向で対向するものである。
29,30は周波数感応部24の抵抗要素を構成する弾性体としてのOリングで、該Oリング29,30は、ハウジング25の筒状部27Aとフリーピストン28の外周面との間に配置され、両者の間を液密にシールしている。ハウジング25内の上側室Cと下側室Dとは、Oリング29,30により互いに封止した状態に保持される。
フリーピストン28がハウジング25内を上向きに変位するときには、筒状垂下部26Cの下端面とフリーピストン28の環状凸部28A(傾斜円弧面28B)との間でOリング29が弾性的に圧縮変形される。このときOリング29は、フリーピストン28のストロークエンドに向けた上向き変位に対する抵抗力を発生する。また、フリーピストン28がハウジング25内を下向きに変位するときには、筒状部27A側の傾斜円弧面27Dとフリーピストン28の環状凸部28A(傾斜円弧面28C)との間でOリング30が弾性的に圧縮変形される。このときOリング30は、フリーピストン28のストロークエンドに向けた下向き変位に対する抵抗力を発生する。
図2に示す如く内筒11内に位置してピストンロッド15の下端側に設けられた周波数感応部24は、車両走行時の高周波の振動に対してハウジング25内でフリーピストン28が軸方向に相対変位することにより、例えばシャッタ18の連通路18Bを流通する油液の量が少なくなるので、発生する減衰力を低減する機能を有している。
なお、本発明に用いることが可能な緩衝器は、周波数感応部とアクチュエータによる減衰力調整部を有しているものであればよく、周波数感応部は、フリーピストン28をコイルバネで支持するものであってもよく、また、フリーピストンによって、ロッド側油室Aとボトム側油室Bとを連通遮断するタイプのものであってもよい。また、アクチュエータによる減衰力調整部は、回転式のシャッタ18の例を示したが、上下方向に移動するものでもよく、また、パイロット制御型の減衰弁であってもよい。さらに、アクチュエータによる減衰力調整部は、外筒の側面に取り付けられるタイプであってもよい。さらに、上記緩衝器は複筒式の緩衝器を例に説明したが、モノチューブの緩衝器であってもよい。
31は車体1に設けられたばね上側の上下加速度センサ(以下、Gセンサ31という)で、該Gセンサ31は、ばね上側となる車体1側で上,下方向の振動加速度を検出するものである。なお、本実施の形態にあっては、後述のCAN32からの車両運転情報や他の機器やセンサからの情報がコントローラ37に入力されるため、1台の車体1に対して1個のGセンサ31を設けるだけでよい。しかし、例えば合計3個のGセンサ31を車体1に設ける構成としてもよい。この場合、Gセンサ31は、各前輪2側の緩衝器6の上端側(ロッド突出端側)近傍となる位置で車体1に取付けられると共に、左,右の後輪3間の中間位置でも車体1に取付けられる。
32は車体1に搭載されたシリアル通信部としてのCANを示し、該CAN32は、車両に搭載された多数の電子機器とコントローラ37との間で車載向けの多重通信を行うものである。この場合、CAN32に送られる車両運転情報としては、例えば操舵角センサ33、ブレーキ状態検出器34、アクセルセンサ35および車輪速センサ36等からの検出信号(情報)が挙げられる。
操舵角センサ33は、図1中に示すように、車体1の運転席に近い位置に配置され、車両のステアリング操作を検出するものである。即ち、操舵角センサ33は、車両のステアリングハンドル(図示せず)の操作量を検出し、その検出信号をCAN32から後述のコントローラ37に出力する。また、車体1には、ブレーキ状態検出器34、アクセルセンサ35および車輪速センサ36等が設けられている。
ブレーキ状態検出器34は、例えばブレーキペダル(図示せず)の踏込み操作を検出したり、自動ブレーキによる制動状態を検出する。アクセルセンサ35は、例えばアクセルペダル(図示せず)の踏込み操作を検出する。車輪速センサ36は、例えば左,右の前輪2と左,右の後輪3とにそれぞれ近接して設けられ、各車輪の回転速度を車速として検出するものである。
37はマイクロコンピュータ等によって構成される制御手段としてのコントローラで、該コントローラ37は、図1に示すように、入力側がGセンサ31およびCAN32等に接続され、出力側は各緩衝器6(9)のアクチュエータ20等に接続されている。コントローラ37は、Gセンサ31から車体1側の上,下振動を読込み、CAN32からは、操舵角センサ33、ブレーキ状態検出器34、アクセルセンサ35および車輪速センサ36等から各種の検出信号をシリアル通信により読込む。
コントローラ37は、ROM、RAM、不揮発性メモリ等からなる記憶部(図示せず)と、車両の運動としての上,下方向の振動を推定する車体振動推定部38と、ばね上制振制御部39、操縦安定制御部40、車速感応制御部41および制御指令演算部42とを含んで構成されている。即ち、コントローラ37は、Gセンサ31およびCAN32からのセンサ情報より車体振動推定部38で車体1の振動を推定し、操縦安定制御部40では車両の操舵状態を推定する。車速感応制御部41では車両の走行状態を推定する。
制御指令演算部42は、互いに並列に接続されたばね上制振制御部39、操縦安定制御部40および車速感応制御部41からの制御信号に従って、各緩衝器6(9)のアクチュエータ20に出力すべき減衰力指令信号を制御指令値(電流値)として演算処理する。各緩衝器6(9)のアクチュエータ20は、制御指令演算部42から出力された電流値(減衰力指令信号)に従ってシャッタ18を回動し、これにより、減衰力特性をハードとソフトの間で連続的に、または複数段で可変に制御する。
コントローラ37の車体振動推定部38としては、例えば本出願人が先に提案した技術(例えば、特開2009−83614号公報、特開2009−83641号公報、特開2009−262926号公報、特開2010−083329号公報等)を利用し、車体1の振動(例えば、図3に示すばね上速度とピッチレイト)を推定するものである。
ばね上制振制御部39は、図3に示すように、第1,第2のフィルタ部39A,39B、第1,第2のゲイン乗算部39C,39D、加算部39Eおよびマップ演算部39Fを含んで構成されている。ばね上制振制御部39は、車体振動推定部38で推定されたばね上速度Vに対し、第1のフィルタ部39Aにより低周波成分を抽出するフィルタ処理を行う。第2のフィルタ部39Bは、車体振動推定部38で推定されたピッチレイトPに対し、低周波成分を抽出するフィルタ処理を行う。即ち、第1,第2のフィルタ部39A,39Bは、低周波成分を抽出するフィルタ処理を行うことにより、高周波成分を制御対象から外し、低周波成分に従って減衰力の調整制御を行わせるものである。
ここで、第1,第2のフィルタ部39A,39Bによるカットオフ周波数は、周波数感応部24(図2参照)のカットオフ周波数以下に設定するのがよい。また、このカットオフ周波数は、ばね上共振を抽出できるように設定するとよい。次に、第1のゲイン乗算部39Cは、第1のフィルタ部39Aでフィルタ処理を行ったばね上速度に対し、予め決められたゲインを乗算して目標減衰力Fを算出する。第2のゲイン乗算部39Dは、第2のフィルタ部39Bでフィルタ処理を行ったピッチレイトに対し、予め決められたゲインを乗算して目標減衰力Fを算出する。
加算部39Eは、第1,第2のゲイン乗算部39C,39Dで算出したそれぞれの目標減衰力Fを加算する。マップ演算部39Fは、加算部39Eで加算した目標減衰力Fに対し、図3に示す特性線43に従ってマップ演算を行うことにより指令値Iを算出する。この場合、通常のスカイフック制御であれば、伸縮の行程(相対速度)とばね上速度に応じた目標減衰力の関係から制御量を算出する必要がある。これは、例えば、ばね上が上側に移動している際には、伸び側の減衰力は制振作用となるが、縮み側の減衰力は加振作用となるため、伸び行程であれば目標減衰力となるように信号を出力し、縮み行程であればソフトの減衰力となるように信号を出力する必要がある。しかし、本実施の形態では緩衝器6(9)を、図2に示すように周波数感応部24が付設された減衰力調整式油圧緩衝器(即ち、減衰力調整+周波数感応緩衝器)により構成しているため、周波数感応部により減衰力の立ち上がりが遅れるなどにより、減衰力による加振作用が緩和されるため、目標減衰力Fを図3に示す特性線43のマップに代入するだけで指令値Iを算出したものを用いても、制御効果を得ることができ、制御演算を簡素化することができる。
コントローラ37の操縦安定制御部40は、操舵角センサ33からの操舵角信号と車輪速センサ36からの車速信号とより制御量(例えば、横加速度を推定して行う演算式、制御則等に従って制御量)を算出し、算出した制御量を制御指令値として制御指令演算部42に出力する。即ち、操縦安定制御部40により、横加速度に応じて減衰力を制御するアンチロール制御が行われる。
また、操縦安定制御部40は、ブレーキ状態検出器34やアクセルセンサ35からの検出信号により車体1の前,後方向加速度を推定し、これに応じて減衰力を制御するアンチダイブスクオット制御を行う機能も有している。一方、車速感応制御部41は、車速に応じて減衰力を調整するための制御部であり、前記車速信号等により制御量を算出し、算出した制御量を制御指令値として制御指令演算部42に出力する。
図4に示す特性線44は、車両走行時の路面状態を一例として挙げたもので、路面凹凸が大きい悪路とうねり路と複合路とが表されている。複合路とは、車両走行時に低周波の振動と高周波の振動とが重畳して発生する路面状態である。図4に示す特性線45は、ばね上速度のフィルタ処理値を表し、ばね上制振制御部39の第1のフィルタ部39Aにおける出力信号である。特性線45に示すように悪路の場合は、低周波成分を抽出(フィルタ処理)することにより予め決められた不感帯の範囲内に収まる信号となっている。これに対して、うねり路と複合路とでは、低周波成分を抽出した状態でも不感帯の範囲を越える信号が、例えば時間T1 〜T2 の間、時間T3 〜T4 の間、時間T5 〜T6 の間、時間T7 〜T8 の間に出力されている。
図4中の特性線46は、第1のフィルタ部39Aから出力されるばね上速度(特性線45によるフィルタ処理値)に対し、第1のゲイン乗算部39Cでゲインを乗算して目標減衰力Fを算出した指令値の特性を表している。特性線46による指令値は、例えば時間T1 までは目標減衰力がソフト特性となり、時間T1 〜T2 の間と時間T3 〜T4 の間がハードな特性に切換えられている。時間T4 〜T5 までは目標減衰力がソフト特性となり、時間T5 〜T6 の間、時間T7 〜T8 の間がハードな特性に切換えられ、時間T8 以降はソフトな特性に切換えられている。
従って、ばね上制振制御部39から出力される指令値は、図4に示す特性線46のように、車両走行時の路面が悪路の場合には乗り心地をよくするため、ソフトな特性の低減衰力を維持し、乗り心地を悪化させない制御を行う。また、うねり路では、例えば時間T1 〜T2 の間と時間T3 〜T4 の間でハードな特性に切換えることにより減衰力を高めることで、ばね上の変位を抑制でき、車体1側のフワつきを抑えることができる。
低周波の振動と高周波の振動とが重畳した複合路では、例えば時間T5 までソフトな特性に維持し、時間T5 〜T6 の間と時間T7 〜T8 の間にハードな特性に切換えて減衰力を高める制御を行う。このような場合、従来技術の制御では乗り心地の悪化を防止するため、減衰力をソフトとハードの中間(ミディアム)な特性に設定していた。しかし、本実施の形態では、緩衝器6,9に周波数感応部24を付設することにより、高周波の振動に対して周波数感応部24によりアクチュエータ等を用いることなく減衰力を低減できるため、時間T5 〜T6 の間と時間T7 〜T8 の間に高減衰力に設定することができ、制御の簡素化を図って低コストシステムとすることができる。
第1の実施の形態によるサスペンション装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、緩衝器6,9を車両に実装するときには、ピストンロッド15の上端側が車両の車体1側に取付けられ、前記外筒のボトム側が車輪(前輪2,後輪3)側に取付けられる。車両の走行時には、路面の凹凸等により上,下方向の振動が発生すると、各緩衝器6,9は、ピストンロッド15が内筒11から伸長、縮小するように変位し、伸長側,縮小側のディスクバルブ13,14と、シャッタ18およびアクチュエータ20等からなる減衰力可変機構17と、周波数感応部24とにより減衰力を発生することができ、車両の振動を緩衝することができる。
即ち、ピストンロッド15の伸長行程では、ピストン12が内筒11内を上向きに摺動変位し、ロッド側油室A内がボトム側油室Bよりも高圧となるので、ロッド側油室A内の油液がピストン12の油路12Aから環状凹部12C内に流入する。この流入油は、伸長側のディスクバルブ13に設けた切欠き(図示せず)等を介してボトム側油室Bに流通することにより予め決められた減衰力を発生する。この状態で、ピストンロッド15の伸長速度が速くなり、油室A,B間の圧力差がリリーフ設定圧を越えるようになると、ディスクバルブ13が環状弁座12Dから離座して開弁し、所定の伸長側減衰力を発生することができる。
また、第1通路100においては、ロッド側油室Aの油液がピストンロッド15の油孔15C,15D,15Eを介してシャッタ18内へと流れる。シャッタ18の油溝18Cが油孔15Dと連通しているときには、ロッド側油室Aの油液が油孔15D、油溝18C、油孔15Fおよびポート部材16を介してボトム側油室Bに流通し、このときには相対的にソフトな減衰力を発生できる。また、シャッタ18の油溝18Cが油孔15Eと連通しているときには、ロッド側油室Aの油液が油孔15E、油溝18C、油孔15Fおよびポート部材16を介してボトム側油室Bに流通し、このときには、オリフィス径の小さい油孔15Eにより相対的にハードな減衰力を発生することができる。
第2通路101においては、ロッド側油室Aからピストンロッド15の油孔15C、シャッタ18の連通路18B、内孔18Aを介して周波数感応部24の上側室Cへと流れた油液が、ハウジング25(有底筒状体27)内でフリーピストン28をOリング30に抗して下向きに変位させる力を発生する。そして、ハウジング25内でフリーピストン28が下向きに変位したとき(振動周波数が高周波のとき)には、例えばシャッタ18の連通路18B等を油液が流通することにより、ソフトな減衰力を発生させて緩衝器6(9)が発生する減衰力を全体として低減することができる。
また、ピストンロッド15の縮小行程では、ピストン12が内筒11内を下向きに摺動変位し、ボトム側油室B内がロッド側油室Aよりも高圧になるので、ボトム側油室B内の油液がピストン12の油路12Bから環状凹部12E内に流入する。この流入油は、縮小側のディスクバルブ14に設けた切欠き(図示せず)等を介してロッド側油室Aに流通することにより予め決められた減衰力を発生する。この状態で、ピストンロッド15の縮小速度が速くなり、油室A,B間の圧力差がリリーフ設定圧を越えるようになると、ディスクバルブ14が環状弁座12Fから離座して開弁し、所定の縮小側減衰力を発生することができる。
また、第1通路100においては、ボトム側油室Bの油液がポート部材16側からピストンロッド15の油孔15Fを介してシャッタ18の油溝18C内へと流れる。シャッタ18の油溝18Cが油孔15Dと連通しているときには、油溝18Cから油孔15Dを介してロッド側油室Aに流れる油液により相対的にソフトな減衰力を発生することができる。また、シャッタ18の油溝18Cが油孔15Eと連通しているときには、油溝18Cから油孔15Eを介してロッド側油室Aに流れる油液により相対的にハードな減衰力を発生することができる。
さらに、第2通路101においては、ピストンロッド15の縮小行程で、ボトム側油室B内の油液が周波数感応部24の下側室D内へとハウジング25(有底筒状体27)の連通孔27Cを介して流入する。下側室D内に流入した油液は、ハウジング25内でフリーピストン28をOリング29に抗して上向きに変位させる力を発生する。ハウジング25内でフリーピストン28が上向きに変位したとき(振動周波数が高周波のとき)には、ハウジング25内の上側室Cからシャッタ18の内孔18A、連通路18B、油孔15Cを介してロッド側油室Aに油液が流出し、例えば連通路18B等を油液が流通することにより、ソフトな減衰力を発生させて緩衝器6(9)が発生する減衰力を全体として低減することができる。
ここで、第1の実施の形態によれば、左,右の前輪サスペンション4の緩衝器6と左,右の後輪サスペンション7の緩衝器9とを、図2に示すように周波数感応部24が付設された減衰力調整式油圧緩衝器(即ち、減衰力調整+周波数感応緩衝器)により構成し、減衰力可変機構17のアクチュエータ20を駆動制御するコントローラ37は、車体1側の上下振動が低周波のときには、その上下振動に応じて減衰力可変機構17(シャッタ18)による減衰力をソフトとハードとの間で可変に調整し、前記振動が前記低周波よりも高周波のときには、前記減衰力の調整制御を行わない構成としている。
これにより、例えば図4中の特性線44〜46に示すように、低周波の振動と高周波の振動とが重畳した複合路でも、例えば時間T5 までソフトな特性に維持し、時間T5 〜T6 の間と時間T7 〜T8 の間にハードな特性に切換えて減衰力を高める制御を行うだけで、車両の乗り心地を確保することができ、減衰力の制御処理を簡素化することができる。
このような場合、従来技術の制御では乗り心地の悪化を防止するため、減衰力をソフトとハードの中間(ミディアム)な特性に設定していた。しかし、本実施の形態では、緩衝器6,9に周波数感応部24を付設することにより、高周波の振動に対して周波数感応部24で減衰力を低減できるため、時間T5 〜T6 の間と時間T7 〜T8 の間に高減衰力に設定することができ、その制御処理を単純にして簡素化を図ることができる。
図5に示す特性線47〜50は、従来品のサスペンション装置(特性線47〜49)と本実施の形態によるサスペンション装置(実線で示す特性線50)との乗り心地を比較するためのシミュレーション結果である。シミュレーションモデルは、車両モデルとしてばね上とばね下の振動を考慮したモデルを用いている。本実施の形態によるサスペンション装置の緩衝器6,9は、周波数感応部24が付設された減衰力調整式油圧緩衝器(即ち、減衰力調整+周波数感応緩衝器)を油圧モデルで構築したモデルである。
従来品のサスペンション装置のうち、減衰力調整機能を持たない緩衝器の特性を点線の特性線47で示し、スカイフック制御を行うセミアクティブサスペンション(以下、セミアクティブという)の特性を二点鎖線の特性線48で示し、従来の減衰力調整式油圧緩衝器の特性を一点鎖線の特性線49で示している。図5に示す特性線47〜50は、車両走行時の振動周波数f(Hz )に対するばね上加速度のパワースペクトル密度PSD(dB)の特性をそれぞれ表している。
これにより、振動周波数fが1Hz 前,後のばね上共振周波数領域では、点線で示す特性線47のように標準ダンパのばね上加速度が大きい。これに対し、これ以外のサスペンション装置(二点鎖線の特性線48で示すスカイフック制御のセミアクティブ、一点鎖線で示す特性線49の減衰力調整式油圧緩衝器、実線で示す特性線50の緩衝器6,9)では、1Hz 前,後のばね上共振周波数領域においてばね上加速度に差がなく、変位抑制に関しては差がないことがわかる。
振動周波数fが2〜8Hz のヒョコ領域では、二点鎖線で示す特性線48のようにスカイフック制御のセミアクティブが最もばね上加速度、振動レベルが小さい。本実施の形態による緩衝器6,9についても、実線で示す特性線50のようにばね上加速度、振動レベルが小さく、標準ダンパ(点線で示す特性線47)、減衰力調整式油圧緩衝器(一点鎖線で示す特性線49)に比較して小さく抑えることができている。
振動周波数fが8Hz 以上の周波数領域においては、本実施の形態による緩衝器6,9(実線で示す特性線50)がセミアクティブ(二点鎖線で示す特性線48)に対して同等以上の制振効果を発揮しており、標準ダンパ(点線で示す特性線47)、減衰力調整式油圧緩衝器(一点鎖線で示す特性線49)と比較すると、周波数が5Hz までは同等であるが、それ以上の領域では振動レベルを大幅に低減できており、制振効果が高いことがわかる。
かくして、本実施の形態によれば、左,右の前輪サスペンション4の緩衝器6と左,右の後輪サスペンション7の緩衝器9とを、周波数感応部24が付設された減衰力調整式油圧緩衝器(即ち、減衰力調整+周波数感応緩衝器)により構成し、減衰力可変機構17のアクチュエータ20を駆動制御するコントローラ37は、走行時の振動周波数のうち低周波の振動に特化して制御を行う構成としている。
これにより、従来技術の減衰力調整(ダンパ装置)で課題となっていた悪路における乗り心地を、フワ抑制を犠牲にすることなく、改善することができる。また、スカイフック制御を用いた周波数感応部を持たないセミアクティブに対しても、緩衝器6,9は、ほぼ同等の乗り心地を確保することができ、ばね下情報の検出や算出を行わない簡素なシステムを用いることにより、制振効果を高めて乗り心地の確保を実現することができる。
即ち、前,後輪側の各緩衝器6,9には、減衰力可変機構17に周波数感応部24の機能を組合せることにより、スカイフック制御を用いた周波数感応部を持たないセミアクティブサスペンションよりも簡素で、かつ低コストで高性能なコストパフォーマンスの高いサスペンション装置を実現することができる。コントローラ37による制御処理は、高周波入力に対する対応を、緩衝器6,9のうち周波数感応部24に任せればよいので、ばね上の加速度の低周波成分やばね上速度の大きさに応じて、図4中の特性線46に示す如く、指令値がソフトからハードへと大きくなるように制御すればよい。
このため、車両走行時の振動周波数のうち高周波域での切換え回数(減衰力調整の回数)を低減でき、装置全体の耐久性を向上することができる。また、ばね下情報の検出や推定が必要ではないため、センサ入力ポートの削減やマイコン性能の低減、ECU回路の簡素化を図ることができ、製造コストを下げることができる。しかも、このようなシステムと制御にすることにより、従来システムで課題となっていたフワつきの低減と高周波域での乗り心地の確保との両立を低コストなシステムで実現することができる。
なお、上記第1の実施の形態では、ソフトとハードの間で、減衰力を制御する例を示したが、従来のスカイフック制御と同様にばね上速度をフィルタ処理した値に応じて、リニアに減衰力を切換えてもよい。
次に、図6は本発明の第2の実施の形態を示し、第2の実施の形態の特徴は、車両の運動として車体の姿勢を安定させる制御を行う構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
ここで、本実施の形態で採用したコントローラ61は、第1の実施の形態で述べたコントローラ37とほぼ同様に構成され、その出力側は、左,右の前輪サスペンション4の緩衝器6と左,右の後輪サスペンション7の緩衝器9とのアクチュエータ20に接続されている。各緩衝器6(9)は、周波数感応部24が付設された減衰力調整式油圧緩衝器(即ち、減衰力調整+周波数感応緩衝器)により構成されている。しかし、この場合のコントローラ61は、姿勢変化検出部62と制御量算出部63とを含んで構成されている点で第1の実施の形態とは異なっている。
コントローラ61の入力側に接続されるセンサ情報部64は、例えばGセンサ31、操舵角センサ33(図1参照)、車高センサ、ブレーキ状態検出器34、アクセルセンサ35および車輪速センサ36(図1参照)からの検出信号等を含んで構成される。また、センサ情報部64は、エンジンによる駆動力、ブレーキの制動力を検出した信号も含むと共に、車載のカメラ、カーナビゲーションからの情報も含んで構成される。また、コントローラ61の入力側に接続されるその他の情報部65としては、モードスイッチ(例えば、スポーツモードと通常モードとの選択スイッチ)等が含まれる。
姿勢変化検出部62は、車両の運動であるロール、ピッチ、ヒープの少なくともいずれか一つを検出する姿勢変化検出手段を構成し、センサ情報部64からの情報に基づいて車体1の姿勢変化(例えば、ロール、ピッチ、ヒープの状態)を検出したり、予測したり、推定したりするものである。即ち、姿勢変化検出部62は、操作状態検出手段(例えば、操舵角、アクセル、ブレーキ、駆動力の検出信号、制動力の検出信号等)により車両の姿勢変化を予測する場合も含まれるものである。
制御量算出部63は、姿勢変化検出部62から出力される姿勢変化信号に従って車体1の姿勢変化(即ち、ロール、ピッチ、ヒープ等)を抑え、車体1側の姿勢を安定させるように、左,右の前輪2側の緩衝器6と左,右の後輪3側の緩衝器9との減衰力を調整する制御信号を算出し、これを指令値として各緩衝器6(9)のアクチュエータ20に出力するものである。
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、コントローラ61による制御処理は、高周波入力に対する対応を各緩衝器6,9の周波数感応部24に任せればよく、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、車両の低周波の運動である姿勢変化(例えば、ロール、ピッチ、ヒープ等)を抑え、車体1側の姿勢を安定させることができ、低コストシステムにて悪路での乗り心地の悪化防止とフワつき抑制を両立することができる。
次に、図7は本発明の第3の実施の形態を示し、第3の実施の形態の特徴は、車両の運動としての車体の上下振動を振動検出手段で検出し、その検出信号(振動周波数)に応じて減衰力を調整する制御を行う構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
ここで、本実施の形態で採用したコントローラ71は、第1の実施の形態で述べたコントローラ37とほぼ同様に構成され、その出力側は、左,右の前輪サスペンション4の緩衝器6と左,右の後輪サスペンション7の緩衝器9とのアクチュエータ20に接続されている。各緩衝器6(9)は、周波数感応部24が付設された減衰力調整式油圧緩衝器(即ち、減衰力調整+周波数感応緩衝器)により構成されている。しかし、この場合のコントローラ71は、制御ゲイン調整部72、積分器73、ゲイン乗算部74および掛算器75を含んで構成されている点で第1の実施の形態とは異なっている。
コントローラ71は、振動検出手段としてGセンサ31から車体1側の上,下振動を読込み、その振動周波数を算出する。ここで、振動周波数の算出には、ローパスフィルタ(図示せず)を用いて低周波成分と高周波成分とを分離し、その値の大きさに応じて周波数を検出してもよいし、振動の周期から周波数を算出してもよい。また、FFT解析等の手段を用いて周波数を算出してもよい。このように検出される振動周波数は、制御ゲイン調整部72に入力される。
制御ゲイン調整部72は、図7中に示す特性線72Aに従って制御ゲイン(0≦gain≦1)を出力する。即ち、入力された振動周波数が低周波のときには制御ゲイン調整部72から、例えば制御ゲイン「1」を出力し、前記低周波よりも高周波のときには、例えば「1」より小さい制御ゲインを特性線72Aに従って出力する。入力された振動周波数が所定の高周波以上になると、例えば制御ゲインは「0」となり、このときには後述の如く目標減衰力の指令値(例えば、電流値)が零に制御される。
コントローラ71の積分器73は、Gセンサ31の信号(上,下方向の振動加速度)を積分して上,下方向の絶対速度(速度信号)を算出する。ゲイン乗算部74は、その速度信号にゲインを乗算して目標減衰力を算定する。次に、掛算器75は、制御ゲイン調整部72から出力される制御ゲイン(0≦gain≦1)とゲイン乗算部74で算定した目標減衰力とを掛算し、制御ゲインに応じた最終的な目標減衰力としての指令値を、例えば各緩衝器6(9)のアクチュエータ20に対して出力する。
かくして、コントローラ71から出力される最終的な目標減衰力としての指令値は、入力された振動周波数が低周波のときに、制御ゲイン調整部72による制御ゲインが「1」に設定されるので、相対的に大きくなり、前記指令値(即ち、減衰力調整)のレベルを大きくできる。一方、入力された振動周波数が、前記低周波よりも高周波のときには、制御ゲイン調整部72による制御ゲインが「1」よりも漸次小さくなるので、前記指令値は相対的に小さくなり、減衰力調整のレベルを漸次小さくできる。そして、入力された振動周波数が所定の高周波以上になると、目標減衰力の指令値(例えば、電流値)が零に制御され、車両の運動(上下振動)に応じた減衰力調整を行わないようにできる。
従って、このように構成される第3の実施の形態でも、コントローラ71による制御処理は、高周波入力に対する対応を各緩衝器6,9の周波数感応部24に任せればよく、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
なお、前記第1の実施の形態では、コントローラ37の入力側にGセンサ31とCAN32とを接続する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば左,右の前輪2および左,右の後輪3側にそれぞれ設けた合計4個の車輪速センサ36と操舵角センサ33とをコントローラの入力側に接続する構成としてもよい。この場合、合計4個の車輪速センサ36からの信号により車体1のピッチ(ダイブ,スクオット)状態を検出でき、操舵角センサ33からの信号により車体1のロール状態を検出できる。そして、この点は第2の実施の形態についても同様である。
また、コントローラの入力側には、例えば前,後の車輪側に設けられた合計2個のGセンサ31と、左,右の前輪2側にそれぞれ設けられた合計2個の車輪速センサ36と、操舵角センサ33とを接続する構成としてもよい。また、コントローラの入力側には、例えば左,右の前輪2側と左,右の後輪3間の中間位置とに設けられた合計3個のGセンサ31と、左,右の前輪2側にそれぞれ設けられた合計2個の車輪速センサ36と、操舵角センサ33とを接続する構成としてもよい。
一方、コントローラの入力側には、1個の車高センサと、左,右の前輪2側にそれぞれ設けられた合計2個の車輪速センサ36と、操舵角センサ33とを接続する構成としてもよい。また、コントローラの入力側には、例えば前輪2側と後輪3側とに設けられた合計2個の車高センサと、左,右の前輪2側にそれぞれ設けられた合計2個の車輪速センサ36と、操舵角センサ33とを接続する構成としてもよい。
また、コントローラの入力側には、例えば左,右の前輪2側と後輪3側とに設けられた合計3個の車高センサと、左,右の前輪2側にそれぞれ設けられた合計2個の車輪速センサ36と、操舵角センサ33とを接続する構成としてもよい。さらに、コントローラの入力側には、例えば左,右の前輪2側と左,右の後輪3側とに設けられた合計4個の車高センサと、左,右の前輪2側にそれぞれ設けられた合計2個の車輪速センサ36と、操舵角センサ33とを接続する構成としてもよい。
次に、上記の実施の形態に含まれる発明について記載する。即ち、本発明によると、低周波の運動は、車両の運動であるロール、ピッチ、ヒープの少なくともいずれかである構成としている。これにより、低周波の運動である車両のロール、ピッチ、ヒープ等の姿勢変化を抑え、車体側の姿勢を安定させることができ、低コストシステムにて悪路での乗り心地の悪化防止とフワつき抑制を両立することができる。
本発明によると、前記車両のロール、ピッチ、ヒープを検出する姿勢変化検出手段は、ドライバーの操作を検出する操作状態検出手段により構成している。この場合には、操作状態検出手段(例えば、操舵角、アクセル、ブレーキ、駆動力の検出信号、制動力の検出信号等)により車両の姿勢変化を予測、推定することができる。
本発明によると、運動状態を車両の上下振動とし、コントローラは、前記車両の上下振動が低周波のとき、車両の上下振動に応じて減衰力を調整し、前記車両の上下振動が前記低周波よりも高周波のときは、前記減衰力調整のレベルを前記低周波のときよりも小さくする構成としている。
本発明によると、運動状態を車両の上下振動とし、コントローラは、前記車両の上下振動のうち予め決められた低周波のときに、車両の上下振動に応じた減衰力調整を行う構成としている。
本発明によると、車両の車体側と車輪側との間に設けられアクチュエータにより減衰力を調整可能な緩衝器と、前記アクチュエータを調整するコントローラとからなるサスペンション装置において、前記緩衝器には高周波の振動に対して減衰力を低減する周波数感応部を設け、前記車両には当該車両のロール、ピッチ、ヒープのうち少なくともいずれかを検出する姿勢変化検出手段を設け、前記コントローラは、前記姿勢変化検出手段で検出された前記車両の姿勢状態に応じて前記減衰力を調整する構成としている。
本発明によると、サスペンション装置において、前記緩衝器には高周波の振動に対して減衰力を低減する周波数感応部を設け、前記車両には当該車両の振動を検出する振動検出手段を設け、前記コントローラは、前記振動検出手段で検出された前記振動が低周波のときは、前記振動検出手段の検出値に応じて前記減衰力を調整し、前記振動検出手段で検出された前記振動が前記低周波より高周波のときは、前記振動検出手段の検出値に応じた前記減衰力調整のレベルを小さくする構成としている。
本発明によると、前記緩衝器は、前記アクチュエータにより調整可能な減衰力発生部を有し、前記周波数感応部は、前記減衰力発生部をバイパスするバイパス通路と、該バイパス通路中に移動可能に設けられたフリーピストンとを含んでいる。これにより、周波数感応部は、車両走行時の高周波の振動に対してフリーピストンが軸方向に相対移動することにより、緩衝器が発生する減衰力を低減することができる。
上述の各実施の形態では、アクチュエータが高周波に対応する必要がないため、小型のソレノイドを用いることができ、ピストンロッドに内蔵させることもできる。よって、シリンダ装置としての軸長を短くすることが可能となる。さらには、上述の通り制御を簡素化できるので、センサ数を減らすことが可能であり、車両への取付性も向上する。