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JP6136478B2 - 靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、主として大型クレーンのブーム等、建機の構造用部材に使用される高強度熱延鋼板に関するものであり、特に、高い降伏強度を有し、かつ、靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法に関するものである。なお、本発明で述べる高強度熱延鋼板とは、板厚の範囲が4.0〜10mmのものを指す。
建設機械用のクレーンブームは、近年の建設対象物の高層化に伴い、より長尺化や大型化が進んでいる。そのため、ブーム自体の軽量化およびつり上げ運搬容量の拡大を図るために、素材となる鋼板に対しては薄肉化する傾向にあり、より高い降伏強度が要求されている。これまでは、高強度化のために、鋼成分中にSi、Mnなどの固溶強化元素や、Ti、Nb等の析出強化元素が多量に添加されてきた。例えば、特許文献1〜5は、いずれもTi析出強化を活用するためにTi添加量を高めているが、特許文献1〜3では、析出強化を十分に活用するために、0.12%以上のTi添加と1250℃以上の高温加熱とが必須となっている。
また、特許文献6、7は、マルテンサイト相又は焼き戻しマンサイト相を主相とすることで強度と靭性を確保した高強度鋼板に関する発明であり、熱延板を(Ms点+50℃)以下まで冷却し、次いで、冷却停止温度±100℃で保持した後に巻き取ることで焼き戻しを行う。
一方、薄肉化に伴って部材の剛性は低下するが、高強度化しても剛性の低下を抑制することはできない。また、薄肉化を図るためには、高強度化と合わせて素材の高ヤング率化を図る必要がある。一般的に、鉄のヤング率は206GPaと言われるが、圧延などによって鉄の結晶方位を特定の方向に揃えることにより、一方向のヤング率を高められることはよく知られている。例えば、大型クレーンのブームのような長尺部材の場合、熱延の圧延方向が部材長手方向になることから、圧延方向のヤング率を高めることで部材としての剛性を向上させることが出来る。このような、圧延方向のヤング率を高める技術としては、例えば、特許文献8、9等がある。しかしながら、これらの技術は極めて高い圧延方向ヤング率を達成するために、熱延時に鋼板表面に高い剪断力がかかることから、圧延機への負荷が高いという問題があった。
特開平7−138638号公報 特開平5−230529号公報 特開平5−271865号公報 特開2002−97545号公報 特開2004−250744号公報 特開2011−52320号公報 特開2011−52321号公報 特開2007-46146号公報 特開2008-274395号公報
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、200℃以下で巻き取ることで、高価な合金元素を多量に添加することなく安価であり、高い降伏強度を有し、かつ、靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記問題に関し、Nb、Tiを含む成分系において成分範囲と熱延条件を最適化することによって、靭性と圧延方向の剛性を両立しつつ、YP880MPa超の高強度熱延鋼板が得られることを知見した。即ち、圧延方向の剛性を高めるためには、NbやTiを添加し、オーステナイト域での再結晶を抑制し、熱間圧延を行うことで熱延集合組織の主方位群であるαfiber方位{100}〜{111}<011>を発達させることが有効である。これらの方位は、いずれも圧延方向に結晶の<011>が揃うことから、220GPa程度の圧延方向のヤング率を得ることが可能である。一方、過剰なTi、Nbの添加や未再結晶域での圧下率の増加は、粒界でのTi、Nb炭化物の形成や、圧延方向に伸びたミクロ組織形成をもたらし、結果として鋼板の靭性を低下させる。そこで、本発明者らが鋭意研究の結果、靭性を確保しつつ圧延方向の剛性を確保するために最適な、Nb、TiまたはBの成分範囲、および熱延条件を新たに見出した。また、200℃以下まで20℃/s以上で冷却することで、マルテンサイト変態による強度アップが図られるとともに、熱延の加工中に形成されたオーステナイト集合組織から、ランダム化することなく高い集積度を有する変態集合組織が得られることが出来ることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法は、
[1] 質量%で、C:0.05%以上、0.2%以下、Si:0.01%以上、0.6%以下、 Mn:0.5%以上、2.5%以下、P:0.001%以上、0.1%以下、S:0.0005%以上、0.05%以下、Al:0.01%以上、0.2%以下、N:0.0001%以上、0.010%以下、B:0.0003%以上、0.005%以下、Ti:48N/14+0.01%以上、0.14%以下を、下記(1)式を満足する範囲で含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼組成を有し、
降伏強度が880MPa以上であり、圧延方向のヤング率が210GPa以上であり、板厚方向1/2位置での{100}〜{111}<011>方位群の最大X線ランダム強度比が3.5以上、{110}<001>方位のX線ランダム強度比が2.0以下であることを特徴とする靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板。
0.2≦(1.3×Nb(mass%)+Ti*(mass%))×B*(ppm)≦1.0 ・・・・・ (1)
{但し、上記(1)式中、Ti*=(Total Ti(mass%)−48N/14)であり、Ti*<0の場合は、Ti*=0である。また、B≦14ppmの場合は、B*=(−0.05×B 1.5B(ppm))であり、B>14ppmの場合は、B*=11.2である。}
[2] さらに、質量%で、Nb:0.005%以上、0.09%以下を含有することを特徴とする[1]に記載の靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板。
[3] さらに、質量%で、Mo:0.02%以上、0.5%以下、Cr:0.1%以上、2.0%以下、W:0.01%以上、2.0%以下、Cu:0.04%以上、2.0%以下、Ni:0.02%以上、1.0%以下、V:0.001%以上、0.10%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]又は[2]に記載の靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板。
[4] さらに、質量%で、Ca、Mg、Zr、REMの1種または2種以上を合計で0.0005%以上、0.05%以下で含有することを特徴とする[1]〜[3]の何れかに記載の靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板
] [1]〜[]の何れかに記載の高強度熱延鋼板を製造する方法であって、[1]〜[4]のいずれかに記載の鋼成分を有するスラブを1150℃以上1250℃以下に加熱した後、1000℃以下でのトータル圧下率が20%以上、60%以下、仕上げ温度が850℃以上、950℃以下となる条件で熱間圧延を行い、その後、20℃/秒以上の冷却速度で冷却し、200℃以下の温度でコイル状に巻き取ることを特徴とする靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
] 前記コイル状に巻き取った鋼板を室温まで冷却した後、さらに、最高到達温度150〜500℃の焼鈍を施すことを特徴とする[]に記載の靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
の各構成を有する。
本発明の靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法によれば、上記構成により、降伏強度が高く、また、靭性を確保しつつ圧延方向のヤング率の高い高強度熱延鋼板を低コストで実現することが出来る。さらに、高い圧延方向のヤング率と靱性を両立させることで、熱延時に鋼板表面に高い剪断力がかかることが無く、圧延機への負荷が軽減できることから生産性が向上する。従って、例えば、大型クレーンのブームをはじめとする建機の構造用部材等に本発明を適用することにより、ブーム自体の軽量化、および、つり上げ運搬容量の拡大を図ることができ、作業効率が顕著に向上するメリットを十分に享受することができることから、その社会的貢献は計り知れない。
本発明の実施形態である靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法について説明する図であり、φ2=45°断面のODF上にオーステナイト相の主な方位を示した模式図である。
以下、本発明の実施形態である高強度熱延鋼板、および、その製造方法について説明する。なお、本実施形態は、本発明の靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り本発明を限定するものではない。
本発明の靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板(以下、単に高強度熱延鋼板と略称することがある)は、質量%で、C:0.05%以上、0.2%以下、Si:0.01%以上、0.6%以下、 Mn:0.5%以上、2.5%以下、P:0.001%以上、0.1%以下、S:0.0005%以上、0.05%以下、Al:0.01%以上、0.2%以下、N:0.0001%以上、0.010%以下、B:0.0003%以上、0.005%以下、Ti:48N/14+0.01%以上、0.14%以下を、下記(1)式を満足する範囲で含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼組成を有し、降伏強度が880MPa以上であり、圧延方向のヤング率が210GPa以上であり、板厚方向1/2位置での{100}〜{111}<011>方位群の最大X線ランダム強度比が3.5以上、{110}<001>方位のX線ランダム強度比が2.0以下とされ、概略構成される。
0.2≦(1.3×Nb(mass%)+Ti*(mass%))×B*(ppm)≦1.0・・・・・(1)
但し、上記(1)式中、Ti*=(Total Ti(mass%)−48N/14)であり、Ti*<0の場合は、Ti*=0である。また、B≦14ppmの場合は、B*=(−0.05×B 1.5B(ppm))であり、B>14ppmの場合は、B*=11.2である。
以下に、本発明における鋼特性および製造条件の限定理由について詳しく説明する。
[鋼組成]
本発明の高強度熱延鋼板における成分組成に関し、各元素の限定理由について以下に詳述する。なお、以下の説明においては、特に指定の無い限り、「%」は質量%を表すものとする。
(C:炭素)0.05%以上、0.2%以下
Cは、安価に強度を確保出来る元素であり、本発明の必須元素である。強度を満足するためには、Cが0.05%未満では、本発明で規定する強度が満足できない。また、Cが0.2%を超えると強度が上がりすぎ、延性が低下するとともに溶接性も劣化する。このため、本発明では、Cの含有量を0.05%以上、0.2%以下に規定した。
(Si:ケイ素)0.01%以上、0.6%以下
Siは、強度を確保するために0.01%以上添加する。また、溶接性の観点からは、Siを0.1%以上添加することが望ましい。しかしながら、Siを0.6%超添加すると、表面にSiスケールと呼ばれる欠陥が発生し、表面品位を著しく低下させることから、0.6%を上限とする。また、この観点から、Siの添加量は、より好ましくは0.3%以下、さらに好ましくは0.15%以下とする。
(Mn:マンガン)0.5%以上、2.5%以下
Mnは、強度確保の観点から0.5%以上添加する。また、この観点からは、Mnは1.0%以上添加することが望ましく、さらに望ましくは1.3%以上である。また、Mn添加量が2.5%を超えると、溶接割れ感受性が劣化することから、その上限を2.5%以下とする。また、この観点からは、Mnの添加量を2.2%以下とすることが望ましく、さらに望ましくは2.0%以下である。
(P:リン)0.001%以上、0.1%以下
Pは、鋼板の強度を上げる元素として、必要な強度レベルに応じて添加する。しかしながら、Pの添加量が多いと、粒界へ偏析するために局部延性、溶接性、靱性を劣化させる。従って、Pの上限値は0.1%とする。また、この観点からは、Pは0.05%以下とすることが望ましい。一方、0.001%未満では、Pによる劣化効果は無視できる他、これ未満にするにはコストの上昇を招くことから、0.001%を下限とする。
(S:硫黄)0.0005%以上、0.05%以下
Sは、MnSを生成することで、局部延性、溶接性、靭性を劣化させる元素であり、鋼中に存在しない方が好ましい元素であることから、その上限を0.05%とする。また、この観点からは、Sは0.01%以下とすることが望ましい。一方、Sを0.0005%未満にするにはコストの上昇を招くことから、これを下限とする.
(Al:アルミニウム)0.01%以上、0.2%以下
Alは、脱酸材として0.01%以上添加する必要がある。一方、Alを過度に添加しても、かえって鋼を脆化させるとともに溶接性も低下させるため、0.2%を上限とする。
(N:窒素)0.0001%以上、0.010%以下
Nは、鋼中に不可避的に含まれる元素であるが、BNを形成し、固溶Bを低減させて焼き入れ性を劣化させることから、その含有量を0.010%以下とする。また、この観点からは、Nは0.006%以下の添加が望ましい。一方、不必要にNを低減することは、製鋼工程でのコストが増大するので、その含有量を0.001%以上に制御する。
(B:ボロン)0.0003%以上、0.005%以下
Bは、本発明において重要な元素であり、安価な焼き入れ性向上元素である。また、Bは、Nb、Tiと複合添加することでオーステナイト相での未再結晶温度域を広げ、圧延方向のヤング率を向上させる加工集合組織の発達を促すとともに、焼き入れ時のバリアント選択に影響を及ぼし、{100}〜{111}<011>方位群、特に{211}<011>方位を強める効果がある。そのため、本発明では、Bを0.0003%以上添加し、さらに上記観点からは0.0006%以上の添加が望ましい。一方、Bを0.005%超添加しても、特段の効果が得られないばかりでなく、靭性の劣化を招くことから、0.005%を上限とする。また、この観点からは、Bは0.003%以下の添加が望ましい。
(Ti:チタン)48N/14+0.01%以上、0.14%以下
Tiは、高温でTiNを形成することでBNの析出を阻害することから、次式{48N/14+0.01}%以上で添加する。また、固溶Tiは再結晶を遅延し、熱延中の加工集合組織の発達を促すことから、積極的に添加する。一方、Tiを0.14%超で添加しても、それ以上の再結晶遅延効果が得られないばかりでなく、靭性や溶接性の低下を招くことから、この値を上限とする。
(Nb:ニオブ)0.005%以上、0.09%以下
本発明においては、上記の必須元素に加え、さらに、Nbを所定範囲で添加することが、より望ましい。ここで、Nbも、Tiと同様、再結晶を抑制し、加工集合組織の形成を促す元素であることから、0.005%以上添加することが望ましい。一方、Nbの0.09%超の添加は、靭性の靭性や延性を著しく劣化させることから、この値を上限とする.
さらに、本発明においては、鋼特性を改善するための元素として、必要に応じて、Mo、Cr、W、Cu、Ni、Vの1種または2種以上を添加することがより望ましい。
(Mo:モリブデン)0.02%以上、0.5%以下
(Cr:クロム)0.1%以上、2.0%以下
(W:タングステン)0.01%以上、2.0%以下
Mo、Cr、Wは、いずれも、焼入性を向上させるとともに炭化物を形成して強度を高める効果を有する元素である。そのため、各々0.02%以上(Mo)、0.1%以上(Cr)、0.01%以上(W)で添加することが望ましい。一方、各々0.5%超(Mo)、2.0%超(Cr)、2.0%超(W)の添加は、延性や溶接性を低下させる。以上の観点から、Moは0.02%以上、0.5%以下、Crは0.1%以上、2.0%以下、Wは0.01%以上、2.0%以下の範囲で、必要に応じて添加することが望ましい.
(Cu:銅)0.04%以上、2.0%以下
Cuは、鋼板強度を上げるとともに、耐食性やスケールの剥離性を向上させる元素であることから、0.04%以上添加することが望ましい。一方、Cuの2.0%超の添加は表面疵の原因となるため、0.04%以上、2.0%以下の範囲で必要に応じて添加することが望ましい。
(Ni:ニッケル)0.02%以上、1.0%以下
Niは、鋼板強度を上げるとともに、靭性を向上させる元素であることから、0.02%以上添加することが望ましい。一方、Niの1.0%超の添加は延性劣化の原因となるため、0.02%以上、1.0%以下の範囲で必要に応じて添加することが望ましい。
(V:バナジウム)0.001%以上、0.10%以下
Vは、強度の向上に効果がある元素である。しかしながら、0.001%未満のVの添加ではその効果が得られず、0.10%を超える添加では、逆に靱性の低下を招くため、その範囲を0.001〜0.10%以下とする。
さらに、本発明においては、鋼特性を改善するための元素として、Ca、Mg、Zr、REM(希土類元素)の1種または2種以上を合計、または単独で、0.0005%以上、0.05%以下で含有することができる。
Ca、Mg、Zr、REMは、硫化物や酸化物の形状を制御して靭性を向上させる。この目的のためには、これらの元素の1種または2種以上を合計、または単独で0.0005%以上添加する必要がある。しかしながら、これらの元素の過度の添加は加工性を劣化させるため、その上限を0.05%とした。
また、本発明の鋼は、以上の元素の他、Sn、Asなどの不可避的に混入する元素を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる。
(各元素の関係式)
次に、各元素の関係式である下記(1)式について説明する。
本発明の高強度熱延鋼板において、上記各本発明の効果を得るためには、鋼組成が下記(1)式の関係を満足する必要がある。
0.2≦(1.3×Nb(mass%)+Ti*(mass%))×B*(ppm)≦1.0 ・・・・・ (1)
但し、上記(1)式中、Ti*=(Total Ti(mass%)−48N/14)であり、Ti*<0の場合は、Ti*=0である。また、B≦14ppmの場合は、B*=(−0.05×B 1.5B(ppm))であり、B>14ppmの場合は、B*=11.2である。
上記(1)式の値が0.2未満では、十分な熱延集合組織が発達しないことから、210GPa以上の圧延方向のヤング率を得ることが出来ない。また、この観点からは、上記(1)式の値を0.3以上とすることがより望ましい。一方、上記(1)式の値が1.0を超えると、未再結晶域圧延によって圧延方向に伸びた組織になるとともに、粒界にNb、Ti炭化物が生成することで靭性が劣化するため、この値を上限とする。また、この観点からは、上記(1)式の値を0.8以下とすることがより望ましい。
[圧延方向のヤング率]
本発明の高強度熱延鋼板においては、圧延方向のヤング率を210GPa以上に規定し、高い剛性を確保している。
ヤング率は結晶方位によって変化することから、熱延板中の結晶方位は、下記規定を満足する必要がある。即ち、Nb、Ti、B等を含有する鋼板では、板厚1/2厚の位置においては未再結晶圧延・変態集合組織が発達し、{100}〜{111}<011>方位群が強くなる。鋼板の圧延方向のヤング率を210GPa以上にするためには、この方位群の最大X線ランダム強度比を3.5以上にする必要がある。また、この観点から、{100}〜{111}<011>方位群の最大X線ランダム強度比は4以上にすることが望ましい。また、{100}〜{111}<011>方位群の最大X線ランダム強度比の上限は、特に定めないが、8以上で集積させても特段の効果が得られない。
一方、{110}<001>方位は、熱延の圧下率が低く加工集合組織が発達しないと相対的に増加する。この方位は、圧延方向のヤング率を下げる方位であることから、そのX線ランダム強度比は2.0以下とする。また、{110}<001>方位のX線ランダム強度比の上限は特に定めないが、定義上0が下限となる。
ここで、{100}〜{111}<011>方位群の最大X線ランダム強度比、および、{110}<001>方位のX線ランダム強度比は、X線回折によって測定される{110},{100},{211},{310}極点図のうち、複数の極点図を基に級数展開法で計算した、3次元集合組織を表す結晶方位分布関数(Orientation Distribution Function,ODFという。)から求めればよい。なお、本発明でいうX線ランダム強度比とは、特定の方位への集積を持たない標準試料と供試材のX線強度を同条件でX線回折法等により測定し、得られた供試材のX線強度を標準試料のX線強度で除した数値である。
図1に、本発明の結晶方位が表示されるφ2=45°断面のODFを示す。
図1のΦ=0°の軸上の点で示したように、{100}〜{111}<011>方位群は、厳密には、Φ=0°,φ1=0〜54.74°の範囲を指すものである。しかしながら、試験片加工や試料のセッティングに起因する測定誤差を生じることがあるため、{100}〜{111}<011>方位群のX線ランダム強度比の最大値は、図1中の斜線部で示した、Φ=0〜5°,φ1=0〜55°の範囲内での最大のX線ランダム強度比とする。
上記同様の理由から、3次元集合組織のφ2=45°の断面において、図1の点で示した位置を中心として、{110}<001>方位は、Φ=85〜90°,φ1=85〜90°の範囲の最大値を、それぞれその方位の強度比として代表させる。
ここで、結晶の方位は、通常、板面に垂直な方位を[hkl]又は{hkl}、圧延方向に平行な方位を(uvw)又は<uvw>で表示する。{hkl},<uvw>は、等価な面の総称であり、[hkl],(uvw)は、個々の結晶面を指す。即ち、本発明においてはbcc構造を対象としているため、例えば、(111),(−111),(1−11),(11−1),(−1−11),(−11−1),(1−1−1),(−1−1−1)面は等価であり、区別がつかない。このような場合、これらの方位を総称して{111}と称する。
なお、ODFは、対称性の低い結晶構造の方位表示にも用いられるため、一般的にはφ1=0〜360°,Φ=0〜180°,φ2=0〜360°で表現され、個々の方位が[hkl](uvw)で表示される。しかしながら、本発明では、対称性の高いbcc結晶構造を対象としているため、Φとφ2については0〜90°の範囲で表現される。また、φ1は、計算を行う際に変形による対称性を考慮するか否かによって、その範囲が変化するが、本発明においては、対称性を考慮してφ1=0〜90°で表記する。即ち、φ1=0〜360°での同一方位の平均値を、0〜90°のODF上に表記する方式を選択する。この場合は、[hkl](uvw)と{hkl}<uvw>は同義である。従って、例えば、図1に示したφ2=45°断面におけるODFの、(100)[0−11]のX線ランダム強度比は、{100}<011>方位のX線ランダム強度比である。
ヤング率の測定は、JIS Z 2280に準拠した常温での横共振法によって行う。即ち、試料を固定せずに振動を加え、発振機の振動数を徐々に変化させて一次共振振動数を測定して、下式(2)よりヤング率を算出する。
E=0.946×(l/h)3×m/w×f2 ・・・・・ (2)
但し、上記(2)式中において、E:動的ヤング率(N/m)、l:試験片の長さ(m)、h:試験片の厚さ(m)、m:質量(kg)、w:試験片の幅(m)、f:横共振法の一次共振振動数(s−1)である。
なお、試験片表面にスケールが残っていたり、凹凸があったりすると測定精度が低下することから、試験片の表面は機械研削等によって平滑な金属面とした後、測定を行う。
また、X線回折用試料の作製は、次のようにして行う。
まず、鋼板を、機械研磨や化学研磨などによって板厚方向に所定の位置まで研磨し、必要に応じて、電解研磨や化学研磨によって歪みを除去すると同時に、1/2板厚部が測定面となるように調整する。なお、測定面を正確に1/2板厚部とすることは困難であるので、目標とする位置を中心として、板厚に対して3%の範囲内が測定面となるように試料を作製すればよい。なお、板厚中心部で偏析等の異常が認められる場合には、板厚の7/16〜9/16の範囲内で、偏析部分を避けて試料を作製すれば良い。また、X線回折による測定が困難な場合には、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)法やECP(Electron Channeling Pattern)法により、統計的に十分な数の測定を行っても良い。
[降伏強度(YP)]
本発明の高強度熱延鋼板においては、降伏強度(YP)を880MPa以上に規定している。
本発明では、鋼組成を上述した範囲に制御し、さらに、各製造条件を後述の条件とすることで、降伏強度が880MPa以上の高強度熱延鋼板が実現できる。このように、降伏強度を880MPa以上に高めることにより、例えば、鋼板の板厚を4.0〜10mm程度まで薄肉化して用いる場合であっても、十分に高い強度が確保できる。
[製造方法]
本発明に係る靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法について以下に説明する。
本発明の高強度熱延鋼板の製造方法は、上記鋼成分を有するスラブを1150℃以上1250℃以下に加熱した後、1000℃以下でのトータル圧下率が20%以上、60%以下、仕上げ温度が850℃以上、950℃以下となる条件で熱間圧延を行い、その後、20℃/秒以上の冷却速度で冷却し、200℃以下の温度で巻き取る方法である。
まず、鋼を常法により溶製、鋳造し、熱間圧延に供する鋼片(スラブ)を得る。この鋼片は、鋼塊を鍛造又は圧延したものでも良いが、生産性の観点から、連続鋳造により鋼片を製造することが好ましく、または、薄スラブキャスターなどで製造してもよい。あるいは、溶製した鋼を鋳造後、直ちに熱間圧延を行う連続鋳造−直接圧延(CC−DR)のようなプロセスを採用しても良い。
通常、鋼片は、鋳造後に冷却し、熱間圧延を行うために再度加熱する。この場合、熱間圧延を行う際の鋼片の加熱温度は1150℃以上とする。この温度が1150℃未満では、TiやNbが十分に再固溶せず、再結晶抑制効果が発揮されないことから、この温度を下限とする。一方、鋼片を1250℃超に加熱すると、鋼板の結晶粒径が粗大になって加工性を損なうことがあることから、この温度を上限とする。
本発明の高強度熱延鋼板の製造方法においては、仕上圧延温度と圧下率が極めて重要である。本発明では、熱間圧延における温度を1000℃以下、最終パスまでの圧下率の合計(トータル圧下率)を20%以上とする。1000℃超で熱間圧延しても、加工後の組織が再結晶し、1/2板厚部における{110}<111>〜{110}<112>方位群のX線ランダム強度比を高める効果が得られないためである。また、1000℃以下での圧下率の合計が20%未満では、十分な未再結晶域での加工が得られないために集合組織が発達しない。この観点からは、熱間圧延における合計の圧下率を30%以上とすることが望ましい。一方、トータルの圧下率が60%を超えると、熱延終了後、鋼板組織が圧延方向に伸びた伸長組織となり靭性が低下する。また、この観点からは、熱間圧延における合計の圧下率は50%以下とすることが望ましい。
本発明の製造方法においては、熱間圧延の仕上げ温度は850℃以上とする。850℃未満で熱間圧延を終了すると、熱間圧延の荷重が高くなりすぎることから、この温度を下限とする。一方、仕上げ温度が950℃を超えると、未再結晶域で充分な圧延を行うことが出来ず、ヤング率が向上しないことから、この温度を上限とする。
次いで、熱間圧延の後、200℃以下まで、いずれの温度域においても20℃/s以上の冷却速度で冷却する。冷却速度が20℃/s未満では、変態時のバリアント選択が起こらないことから集合組織がランダム化してヤング率が低下し、フェライト変態の進行などに伴ってYPが低下する。従って、この観点からは、25℃/s以上の冷却速度が望ましい。冷却速度の上限は特に定めないが、100℃/s以上の速度で冷却するためには過剰な設備投資が必要となる一方で、特段の効果が得られないことから、100℃/s以下とすることが現実的である。
本発明の製造方法では、巻取温度は200℃以下とする。巻取温度が200℃を超えるとマルテンサイト変態が十分起こらず、強度が低下することから、この値を上限とする。巻取温度の下限は特に定めないが、室温以下に冷却することは過剰な設備を必要とし、かつ特段の効果も得られない。
なお、巻き取ったコイルを室温まで冷却した後、さらに、必要に応じて最高到達温度150〜500℃の熱処理を施してもよい。このような熱処理に伴い、炭化物析出又はマルテンサイトの焼き戻しによるYPの上昇が起こる。焼鈍の方法としては、連続焼鈍、BAF焼鈍等、その方法を問わない。また、150℃未満の焼鈍では十分な効果が得られないことから、巻き取り後に焼鈍を行う場合の下限を150℃とする。また、500℃超の焼鈍は、Nb又はTi炭化物析出による靭性の劣化、炭化物粗大化による強度の著しい低下を招くことから、500℃を上限とする。
以上説明したような、本発明に係る靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法によれば、上記構成により、降伏強度が高く、また、靭性を確保しつつ圧延方向のヤング率の高い高強度熱延鋼板を低コストで実現することが出来る。また、高い圧延方向のヤング率と靱性を両立させることで、熱延時に鋼板表面に高い剪断力がかかることが無く、圧延機への負荷が軽減でき、生産性やメンテナンス性が向上する。
従って、例えば、大型クレーンのブームをはじめとする建機の構造用部材等に本発明を適用することにより、ブーム自体の軽量化、および、つり上げ運搬容量の拡大を図ることができ、作業効率が顕著に向上するメリットを十分に享受することができることから、その社会的貢献は計り知れない。
以下、本発明の靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法の実施例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、もとより下記実施例に限定されるものではなく、前、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
本実施例においては、まず、下記表1に示す組成を有する鋼を溶製し、下記表2、3に示す条件で熱間圧延を施した。下記表4、5に、得られた熱延鋼板の特性を調査した結果を示す。また、いくつかの熱延鋼板については、巻取後、BAF炉にてコイルのまま焼鈍を施した。この際の最高到達温度を下記表2、3中に示す。
Figure 0006136478
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ヤング率は、上述した横共振法により測定した。
また、引張特性(YP)は、JIS5号引張試験片を、圧延方向に対して直角方向から採取して評価した。
また、靭性は、シャルピー衝撃試験で評価した。この際、JIS Z2202試験片を、圧延方向に対して直角方向を長手方向として作製し、試験温度−40℃での吸収エネルギーを測定した。なお、板厚10mm未満の鋼板については、10mmのフルサイズ試験片の値に換算した。
また、板厚1/2厚の位置での{100}〜{111}<011>方位群の最大値、および、{110}<001>方位のX線ランダム強度比は、以下のようにして測定した。まず、鋼板を機械研磨およびバフ研磨した後、さらに電解研磨して歪みを除去し、1/2板厚部が測定面となるように調整した試料を用いてX線回折を行った。なお、特定の方位への集積を持たない標準試料のX線回折も同条件で行った。
次に、X線回折によって得られた{110},{100},{211},{310}極点図を基に、級数展開法でODFを得た。そして、このODFから、{100}〜{111}<011>方位群の最大値、および、{110}<001>方位のX線ランダム強度比を求めた。
以下に、本実施例の結果の詳細について述べる。
表4、5に示す結果から明らかなように、本発明で規定する化学成分を有する鋼を適正な条件で熱間圧延した場合には、YPが880MPa以上で、圧延方向のヤング率が210GPa以上であり、衝撃エネルギーの高い熱延鋼板を得ることができた(表1〜6の備考欄における本発明例)。
一方、製造No.40〜46は、化学成分が本発明の規定の範囲外である鋼No.R〜Y(表1、2参照)を用いた比較例である。製造No.40、42は、それぞれCとMnの添加量が適正範囲を下回っていて強度が不足している。また、製造No.43、45は、Ti又はNbの添加量が高すぎて靭性が劣化したケースである。また、製造No.41、44、46は、Ti又はBの添加量が低すぎるか、又は上記(1)式を満足していないために、ヤング率が210GPa以上とならなかったケースである。
製造No.3、8、13、27、35は、いずれも化学成分は本発明の規定を満足しているが、ヤング率が210GPa未満となった。製造No.3は、加熱温度が低いために、Ti、Nbが十分に再固溶しなかったことから再結晶が抑制されず、集合組織がランダム化した。また、製造No.8は、1000℃以下での圧下率が低すぎたために集合組織が十分に発達しなかった。また、製造No.13は、仕上温度が高すぎるために未再結晶域での加工が不十分であった。また、製造No.27は、冷速が遅かったために変態時のバリアント選択が起こらず、集合組織がランダム化した。また、製造No.35は、熱延後の熱処理温度が高すぎたために、強度が低下したものである。
製造No.18、27、35は、いずれもYPが低く本発明の規定範囲を満足していない。製造No.18は、CTが高すぎたため、製造No.27は冷速が遅いためにマルテンサイト変態が十分起こらなかったものである。また、No.35は、熱処理温度が高すぎたために炭化物の粗大化、マルテンサイトの焼き戻し、回復・再結晶が進行したことから強度が低下した例である。また、製造No.30は、1000℃以下での圧下率が高すぎたためにミクロ組織が扁平化し、面内異方性が大きくなったことから靭性が低下した例である。
以上説明した実施例の結果より、本発明により、高い降伏強度を有し、かつ、靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板が実現可能となることが明らかである。
本発明で示された高強度熱延鋼板は、例えば、大型クレーンのブームをはじめとする建機の構造用部材等に適用することにより、ブーム自体の軽量化、および、つり上げ運搬容量の拡大を図ることができ、作業効率が顕著に向上するメリットを十分に享受することができることから、その社会的貢献は計り知れない。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C :0.05%以上、0.2%以下、
    Si:0.01%以上、0.6%以下、
    Mn:0.5%以上、2.5%以下、
    P :0.001%以上、0.1%以下、
    S :0.0005%以上、0.05%以下、
    Al:0.01%以上、0.2%以下、
    N :0.0001%以上、0.010%以下、
    B :0.0003%以上、0.005%以下、
    Ti:48N/14+0.01%以上、0.14%以下
    を、下記(1)式を満足する範囲で含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼組成を有し、
    降伏強度が880MPa以上であり、圧延方向のヤング率が210GPa以上であり、
    板厚方向1/2位置での{100}〜{111}<011>方位群の最大X線ランダム強度比が3.5以上、{110}<001>方位のX線ランダム強度比が2.0以下であることを特徴とする靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板。
    0.2≦(1.3×Nb(mass%)+Ti*(mass%))×B*(ppm)≦1.0 ・・・・・ (1)
    {但し、上記(1)式中、Ti*=(Total Ti(mass%)−48N/14)であり、Ti*<0の場合は、Ti*=0である。また、B≦14ppmの場合は、B*=(−0.05×B 1.5B(ppm))であり、B>14ppmの場合は、B*=11.2である。}
  2. さらに、質量%で、
    Nb:0.005%以上、0.09%以下
    を含有することを特徴とする請求項1に記載の靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板。
  3. さらに、質量%で、
    Mo:0.02%以上、0.5%以下、
    Cr:0.1%以上、2.0%以下、
    W :0.01%以上、2.0%以下、
    Cu:0.04%以上、2.0%以下、
    Ni:0.02%以上、1.0%以下、
    V :0.001%以上、0.10%以下
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板。
  4. さらに、質量%で、Ca、Mg、Zr、REMの1種または2種以上を合計で0.0005%以上、0.05%以下で含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板
  5. 請求項1〜の何れか1項に記載の高強度熱延鋼板を製造する方法であって、
    請求項1〜4の何れかに記載の鋼成分を有するスラブを1150℃以上1250℃以下に加熱した後、1000℃以下でのトータル圧下率が20%以上、60%以下、仕上げ温度が850℃以上、950℃以下となる条件で熱間圧延を行い、その後、20℃/秒以上の冷却速度で冷却し、200℃以下の温度でコイル状に巻き取ることを特徴とする靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
  6. 前記コイル状に巻き取った鋼板を室温まで冷却した後、さらに、最高到達温度150〜500℃の焼鈍を施すことを特徴とする請求項に記載の靭性と圧延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
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