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JP6137002B2 - 溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法および溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents
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JP6137002B2 - 溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法および溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法および溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関し、特に、酸化処理における最高加熱温度を効率的に決定して、良好な機械的特性とめっき特性とを兼ね備える溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法、および本発明の方法により製造された溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関するものである。
近年、自動車、家電、建材等の分野においては、素材鋼板に防錆性を付与した表面処理鋼板、中でも安価に製造でき、かつ防錆性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板が使用されている。
一般に、溶融亜鉛めっき鋼板は、以下の方法により製造される。すなわち、まず、スラブを熱延、冷延あるいは熱処理した薄鋼板の表面を、前処理工程にて脱脂および/または酸洗して洗浄するか、あるいは前処理工程を省略して予熱炉内で鋼板表面の油分を燃焼除去した後、非酸化性雰囲気中あるいは還元性雰囲気中で加熱することにより再結晶焼鈍を行う。その後、非酸化性雰囲気中あるいは還元性雰囲気中で鋼板をめっきに適した温度まで冷却し、大気に接触させることなく微量のAl(0.1〜0.2質量%程度)を添加した溶融亜鉛めっき浴中に浸漬して溶融亜鉛めっき処理を施す。こうして溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。さらに、溶融亜鉛めっき処理に引き続き、鋼板を合金化炉内で熱処理することにより、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
ところで、近年、素材鋼板の高性能化とともに軽量化が推進され、素材鋼板の高強度化が求められてきており、防錆性を兼ね備えた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の使用量が増加している。ここで、鋼板の高強度化のために、鋼にSi、Mn、P、Al等の固溶強化元素の添加を行うのが一般的である。中でもSiやAlは、鋼の延性を損なわずに高強度化できる利点を有しており、特にSiを含有する鋼板は高強度鋼板として有望である。
このSi含有鋼板について、鋼板中のSi量に対するMn量の比(以下、「Mn/Si比」と称する)が低い方が、残留γ相が形成されやすくなり、良好な機械的特性を確保しやすい。しかし、鋼板中のMnが少なく、SiやAlを多量に含有する高強度鋼板を素材鋼板として溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合、以下の問題が存在する。
すなわち、上述のように、溶融亜鉛めっき鋼板を製造する際に、還元性雰囲気中で、例えば600〜900℃程度の温度で再結晶焼鈍を行った後に、溶融亜鉛めっき処理を行う。しかし、鋼中のSiやAlは易酸化性元素であるため、一般的に用いられる還元雰囲気中においても、選択表面酸化されて表面に濃化し、SiやAlの酸化物が形成される。これらの酸化物は、めっき処理時の溶融亜鉛との濡れ性を低下させ、不めっきが生じるか、不めっきに至らなかった場合でも、めっき密着性を悪化させる問題がある。
また、鋼中のSiが選択表面酸化されて表面に濃化すると、めっき処理中に著しい合金化遅延が生じ、その結果、生産性が著しく低下する。そこで、生産性を高めるために過剰な高温で合金化処理すると、今度は耐パウダリング性が劣化する新たな問題が生じ、高い生産性と良好な耐パウダリング性とを両立させることは困難である。また、高温での合金化処理により、残留γ相が不安定になって機械的特性が悪化し、SiやAlを添加することによるメリットを享受できなくなる場合もある。
さらに、鋼中のSi量が同じであっても、鋼中のMn/Si比が低い場合、濡れ性が劣り、めっき後の合金化反応性が低いSiO2が多量に形成され、濡れ性やめっき後の反応性が比較的良好なMn2SiO4が形成されにくい。そのため、Mn/Si比が低く機械的特性が良好であっても、良好なめっき特性と両立させることは困難である。
このように、良好な機械的特性とめっき特性を兼ね備える高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造することは困難である。加えて、近年、このような高強度鋼板が外板や一部の足回り部品のように外見上見えやすい場所に使用される場合があり、表面の外観の美麗さについてもこと厳しく要求されるようになった。
このような問題に対して、幾つかの技術が開示されている。例えば、特許文献1には、空気比0.95〜1.10の酸化性雰囲気中で鋼板を予め加熱し、平均酸化速度30オングストローム/秒で急速に酸化して鋼板表面に酸化鉄を形成した後、水素濃度10%以下の還元性雰囲気中で鋼板を加熱して還元焼鈍を行うことにより、溶融亜鉛めっき後の密着性および外観の均一性を図る技術について記載されている。
また、特許文献2には、溶融亜鉛めっき処理に先立って、硫黄または硫黄化合物を鋼板表面にS量として0.1〜1000mg/m2付着させた後、予熱工程を弱酸化性雰囲気で行い、続いて、水素を含む非酸化性雰囲気中で焼鈍することにより、表面外観が良好で、線状マークが生じず、高強度でかつめっき皮膜の均一性に優れ、さらに密着性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法について記載されている。
さらに、特許文献3には、酸化処理における雰囲気中の酸素濃度や水蒸気量を制御することにより、良好なめっき特性を確保する技術について記載されている。
特許第2587724号公報 特開平11−50223号公報 特許第3415191号公報
ところで、上記特許文献1〜3に記載された技術はいずれも、素材となる鋼板を酸化性雰囲気中で加熱して、鋼板表層に酸化鉄を形成させる酸化処理を施した後、還元雰囲気中で加熱し、酸化処理により形成された酸化鉄を還元する還元処理を施す、いわゆる酸化・還元処理を施すことにより、Si系酸化物の選択表面酸化を抑制し、溶融亜鉛との濡れ性を改善させる技術に基づくものである。この技術では、還元処理におけるSi系酸化物の選択表面酸化を抑制するために、酸化処理において、必要かつ十分な量の酸化量を確保することが肝要である。
この鋼板の酸化量は、酸化処理において、主に最高加熱温度や加熱炉内の雰囲気により制御することができる。このうち、加熱炉内の雰囲気を速やかに変化させることは、実工程では困難であるため、最高加熱温度を変化させることにより、酸化量を制御することが好ましい。高強度鋼板の開発は活発に行われており、多くの様々な新規鋼種が開発されているが、これを実工程に展開するに当たり、鋼種毎に適正な最高加熱温度を決定する必要がある。以降、「適正な最高加熱温度」とは、実製造(実操業)における酸化処理において、鋼板表層に十分な酸化鉄が形成され、不めっきやめっき密着性不良等のめっき不良が発生せず、良好な機械的特性とめっき特性とを兼ね備えるめっきを形成できる、酸化処理時の最高加熱温度のことを指す。
しかしながら、この適正な最高加熱温度を見つけるためには、実験室で様々な最高加熱温度で焼鈍した鋼板を作製し、必要十分な酸化量を確保できる条件を見出す必要がある。これは非常に煩雑な作業であり、新規な鋼種を開発しても、それを実工程に展開するまでに多大な時間を要することが、開発上の大きな課題となっていた。
そこで、本発明の目的は、酸化処理における適正な最高加熱温度を効率的に決定して、良好な機械的特性とめっき特性とを兼ね備える溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法を提供することにある。
発明者らは、上記課題を解決する方途について鋭意検討した。そのために、環境制御型走査電子顕微鏡(Environmental Scanning Electron Microscope, E-SEM)を用いて、鋼板表面に対してその場観察実験を行い、実製造(実操業)時の酸化処理を模した模擬的な酸化処理における鋼板表層での酸化鉄の形成状況の把握を行った。その結果、以下に詳述するように、鋼板表層での酸化鉄の粒径が急激に増大し、酸化鉄の形態が遷移する温度が存在することが判明した。
図1は、E-SEMで観察しながら酸化性雰囲気下で昇温していった時のSi1.8質量%含有鋼板表面のSEM像である。ここで、(a)〜(d)は、鋼板表面の温度が(a)750℃、(b)860℃、(c)890℃および(d)950℃の場合にそれぞれ対応している。
図1(a)および(b)を比較すると、いずれの温度においても、酸化鉄の粒径は0.1μm〜0.2μm程度であり、温度を750℃から860℃に上昇させても、酸化鉄の形態はほとんど変化しなかった。ところが、温度を860℃から890℃に上昇させると、酸化鉄の形態が大きく変化した。すなわち、図1(c)に示すように、860℃から890℃までの狭い範囲の温度上昇において、酸化鉄の粒径が0.2μm〜1μm程度に急激に増大した。この粒径の急激な増大は、860℃から890℃まで温度上昇の間に、個々の酸化鉄粒が徐々に粗大化するのではなく、観察領域中の一部において、1℃以内の温度変化で急激に粗大化するように生じ、その現象があちこちで発生し、最終的に890℃まで昇温された時点で、ほぼ観察領域全域において粒径が増大するように進行した。本発明においては、鋼板表層の酸化鉄の粒径が急激に増大する現象を「酸化鉄形態遷移」と称し、酸化鉄形態遷移が発生する温度を「酸化鉄形態遷移温度」と称することとする。
発明者らは、観察結果をさらに詳細に検討したところ、酸化鉄形態遷移に伴い、鋼板表層の酸化鉄の量が急激に増加して、良好なめっき特性を得るのに十分な酸化鉄が形成されていることも判明した。こうしたことから、発明者らは、この酸化鉄形態遷移が生じる酸化鉄形態遷移温度こそが、従来は実験室で酸化量測定やめっき実験まで行ない、試行錯誤の末に決定していた、実製造(実操業)時の酸化処理における適正な最高加熱温度に相当するのではないかと推測した。
そこで発明者らは、酸化処理における適正な最高加熱温度が確立されている様々な既存鋼種の鋼板について、それらの酸化鉄形態遷移温度を調べた。その結果、鋼板Xに対する適正な最高加熱温度Xaは、鋼板Xの酸化鉄形態遷移温度Xt、および酸化処理における適正な最高加熱温度Waが確立されている鋼板(以下、「対比鋼板」と称する)Wの酸化鉄形態遷移温度Wtとの間に、以下の関係式(A)が成り立つことを見出した。
Xa=Wa+Xt−Wt (A)
このことから、酸化処理における適正な最高加熱温度Xaが未知の鋼板Xおよび、適正な最高加熱温度Waが確立している対比鋼板Wについて、酸化鉄形態遷移温度XtおよびWtを予め求めておけば、上記式(A)から、鋼板Xの適正な最高加熱温度Xaを効率的に決定できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)0.1〜3質量%のSiを含有する鋼板に対して、該鋼板を酸化性雰囲気中で加熱して該鋼板の表面に酸化鉄を形成する酸化処理と、該酸化処理後の鋼板を非酸化性雰囲気中で加熱して前記酸化鉄を還元する還元処理と、該還元処理後の鋼板に溶融亜鉛めっきを施すめっき処理とを経て溶融亜鉛めっき鋼板を製造するに当たり、前記鋼板および、酸化処理における適正な最高加熱温度Waが確立している対比鋼板につき、酸化性雰囲気下の加熱過程における鋼板表層での酸化鉄形成状況を把握し、酸化鉄の形成状況から、前記鋼板での酸化鉄の形態が遷移する温度Xtと前記対比鋼板での酸化鉄の形態が遷移する温度Wtとを求め、これらXtおよびWtと前記Waとから、下記式(A)に従って求めた、Xaを最高加熱温度として前記酸化処理を行い、前記酸化性雰囲気下の加熱過程は5℃/分以上50℃/分以下の昇温速度で行うことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(記)
Xa=Wa+Xt−Wt (A)
(2)前記酸化鉄形成状況の把握は、環境制御型走査電子顕微鏡あるいはX線回折を用いた観察により行う、前記(1)に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(3)前記(1)または(2)に記載された方法により製造された溶融亜鉛めっき鋼板を加熱して、めっきされた溶融亜鉛を合金化する合金化処理を施すことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(4)前記(1)または(2)に記載された方法により製造された溶融亜鉛めっき鋼板。
(5)前記(3)に記載された方法により製造された合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
本発明によれば、酸化処理における適正な最高加熱温度を効率的に決定して、良好な機械的特性とめっき特性とを兼ね備える溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
模擬的な酸化処理時のSi含有鋼板の表面のSEM像である。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明にかかわる鋼板としては、Siを含有する高強度鋼板を用いる。なお、以下に記載した鋼板成分に関する「%」表示は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
Si:0.1%以上3%以下
Siは、上述のように、鋼の延性や加工性等を低下させることなく強度向上に寄与する元素である。しかしながら、含有量が0.1%未満の場合には、その添加効果に乏しい。一方、3%を超えて含有する場合には、鋼板表面に酸化物として濃化し、不めっきの原因となるばかりでなく、外観性状が悪化するため、本手法の適用が困難である。そこで、Siは0.1%以上3%以下の範囲で含有した鋼板を対象とする。
本発明にかかわる鋼板は、上記組成のSiを基本元素として含有する。これ以外の組成については、要求される溶融亜鉛めっき鋼板の特性に応じて適宜添加することができるが、基本的な成分組成の一例として以下があげられる。
Mn:0.5%以上3.5%以下
高強度化を図るにはMnを0.5%以上添加するとより効果的である。一方、Mnは3. 5%を超えると溶接性やめっき密着性の確保、強度延性バランス確保が困難になる。よって、Mn量は0.5%以上3. 5%以下の範囲で含有した鋼板を素材として用いることが好ましい。
C:0.05%以上0.25%以下
Cは、鋼の強度向上に寄与する元素である。しかし、含有量が、0.25%を超えると溶接性が劣化する。そこでCは0.05%以上0.25%以下の範囲で含有した鋼板を素材として用いることが好ましい。
Al:0.005%以上3.0%以下
AlはSiと補完的に添加される元素である。Alを含有せずにSiを充分添加すれば機械的特性の確保は可能であるものの、製鋼工程で不可避的に混入するため、Alは通常0.005%以上含有することが好ましい。一方、Al添加量が3.0%を超えると酸化皮膜の生成抑制が困難で密着性改善が困難である。よってAl量は0.005%以上3.0%以下の範囲で含有した鋼板を素材として用いることが好ましい。
P:0.001%以上0.10%以下
Pは不可避的に含有されるものであり、セメンタイトの析出を遅延させ変態の進行を遅らせるため、0.001%以上が好ましい。一方、0.10%を超えると溶接性が劣化するだけでなく、表面品質が劣化するため、非合金化時にはめっき密着性が劣化し、合金化処理時には合金化温度が上昇し、延性が劣化すると同時に合金化めっき皮膜の密着性が劣化する場合がある。よって、P量は0.001%以上0.10%以下の範囲で含有した鋼板を素材として用いることが好ましい。
S:0.2%以下
SはPと同様不可避的に含有される元素であるが、多量に含有されると溶接性が劣化する。鋼中のS量が増加すると、熱間赤熱脆性の原因となり、製造工程中に、熱延板の破断等の不具合を生じることがある。また、鋼板に介在物MnSを形成し、冷間圧延後に板状の介在物として存在することにより、特に材料の極限変形能を低下させ、また伸びフランジ性などの成形性を低下させるため、0.2%を上限とした鋼板を素材として用いることが好ましい。さらに0.0050%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.0030%以下である。
Nb:0.010以上0.080%以下
Nbは、固溶強化または析出強化により鋼板の強度の向上に寄与する元素である。しかし、含有量が0.010%に満たないとその添加効果に乏しい。一方、0.080%を超えて含有すると、熱延板が硬質化し、熱間圧延や冷間圧延時の圧延荷重の増大を招くこととなる。そこで、0.010%以上0.080%以下の範囲で含有した鋼板を素材として用いてもよい。
このような成分組成を有する鋼板に対して、酸化処理、還元処理を施し、その後溶融亜鉛めっき処理を施す場合、さらにその後、合金化処理を行う場合において、本発明を適用することにより、良好な機械的特性とめっき特性とを兼ね備える溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を効率よく製造することができる。以下、各処理について説明するが、これに限定されるものではなく、通常のめっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するときに使用されている条件を用いることができる。
(酸化処理)
酸化手段の違いが本発明の効果を妨げるものではなく、鋼板を酸化することができればどのような手段であってもよい。従って実際に製造に用いられる加熱手段としては、バーナー加熱,誘導加熱,放射加熱および通電加熱など、従来から使用されている加熱方式でよく、特に限定するものではない。例えば、バーナー加熱方式としては、従来用いられている酸化炉や無酸化炉等の加熱炉を使用することができる。無酸化炉の場合、例えば直火バーナーの空燃比を1.0超えとすることにより容易に鋼板を酸化することができる。
また、誘導加熱方式、放射加熱方式および通電加熱方式の場合は、加熱する鋼板近傍の雰囲気を酸化性雰囲気とすることにより容易に鋼板を酸化することができる。酸化性雰囲気としては、酸素、水蒸気および二酸化炭素等の酸化性ガスを1種または2種以上含有する雰囲気が一般的であるが、これらを窒素等と混合して用いてもよく、鋼板を酸化することができれば特に限定するものではない。
なお、上記は代表的な例を示したのであって、いずれにしても鋼板を酸化させることができれば良く、その手段は特に限定するものではない。
(還元処理)
次に、還元処理における還元方法は、従来使用されている方法を行えばよく、特に限定するものではない。例えば、放射加熱方式の焼鈍炉内で水素を含む還元性雰囲気中にて600〜900℃程度の温度で還元処理を行うのが一般的ではあるが、鋼板表面の酸化皮膜を還元することができれば手段は問わない。
(めっき処理)
上記の還元処理後、非酸化性あるいは還元性雰囲気中にてめっきに適した温度まで冷却したのち、めっき浴中に浸漬して溶融亜鉛めっきを施す。この溶融亜鉛めっき処理は、従来から行われている方法に従えばよい。例えば、めっき浴温は440〜520℃程度、鋼板のめっき浴浸漬時の温度はめっき浴温とほぼ等しくし、また亜鉛めっき浴中のAl濃度は0.1〜0.2質量%程度とするのが一般的であるが、特に限定するものではない。
なお、製品の用途によっては、めっき温度やめっき浴組成等のめっき条件を変更する場合があるが、めっき条件の違いは本発明の効果に何ら影響を与えるものではなく、特に限定されるものではない。例えば、めっき浴中にAl以外に、Pb,Sb,Fe,Mg,Mn,Ni,Ca,Ti,V,Cr,Co,Sn等の元素が混入していても本発明の効果は何ら変わらない。
さらに、めっき後のめっき層の厚さを調整する方法についても、特に限定するものではないが、一般的にはガスワイピングが使用され、ガスワイピングのガス圧,ワイピングノズル/鋼板間距離等を調節することによって、めっき層の厚さを調整する。このとき、めっき層の厚さは特に限定されるものではないが、3〜15μm程度とするのが好ましい。というのは3μm未満では十分な防錆性が得られず、一方15μm超えでは防錆性が飽和するだけでなく、加工性や経済性が損なわれるからである。但し、めっき層の厚さの違いは本発明の効果を妨げるものではなく、特に限定するものではない。
(合金化処理)
また、本発明では、上記した溶融亜鉛めっき後に合金化処理を施すことも可能である。
前述したように、本発明によれば、焼鈍時のSi表面濃化を抑制することができるため、Si含有鋼板での著しい合金化遅延という従来技術での問題を解消することができる。その結果、耐パウダリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を生産性を阻害することなく製造することができる。合金化処理方法としては、ガス加熱、インダクション加熱および通電加熱など、従来から用いられているどのような加熱方法を用いてもよく、特に限定するものではない。例えば合金化処理板温は460〜600℃程度、合金化保持時間は5〜60秒程度とするのが一般的である。
上記のような成分組成を有する鋼板に対して、上記のような酸化処理、還元処理を施し、その後溶融亜鉛めっき処理や、さらにその後の合金化処理を行う場合において、酸化処理、の際に、本発明を適用して求められた酸化処理時の最高加熱温度を用いることにより、良好な機械的特性とめっき特性とを兼ね備える溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を効率的に製造することができる。
以下、本発明の骨子である酸化処理時の適正な最高加熱温度の求め方について述べる。
(酸化鉄形態遷移温度を求める)
実際に溶融亜鉛めっき鋼板や合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造しようとする、Si:0.1%以上3%以下の組成を有する鋼板Xを用意する、予め、該鋼板Xを酸化性雰囲気中で鋼板表面を観察しながら昇温加熱して、該鋼板Xの表面に酸化鉄を形成する模擬的な酸化処理を行う。その際、加熱過程における鋼板表層での酸化鉄形成状況を把握し、酸化鉄形態遷移温度Xtを求める。また、適正な最高加熱温度Waが確立している対比鋼板Wにつき、同様に酸化性雰囲気下の加熱過程における鋼板表層での酸化鉄形成状況を把握し、対比鋼板Wでの酸化鉄形態遷移温度Wtを求める。
上記酸化鉄形成状況の把握は、模擬的な酸化処理中の鋼板表層に形成される酸化鉄を観察して、酸化鉄の粒径の変化を把握することである。昇温していくと、一般に、酸化鉄形態遷移に伴い、酸化鉄の粒径は急激に増大するため、この温度を酸化鉄形態遷移温度とする。
上記の模擬的な酸化処理中の鋼板表層の観察を行うための手法に特に制限はなく、E-SEMやX線回折(X-ray Diffraction, XRD)等により行うことができる。例えばE-SEMを用いて行う場合、鋼板表層に900μm2程度の観察視野を設定し、観察視野内で50個の酸化鉄に注目して、その平均粒径を加熱温度に対してプロットし、平均粒径が急激に増加する温度領域の変曲点を酸化鉄形態遷移温度とすればよい。また、上記観察は、実製造(実操業)時の酸化処理雰囲気に近い条件下で行うことが望ましいが、大気圧下での実験は不可能であるため、実炉の酸素分圧に近い酸素分圧の酸化性雰囲気で行えばよい。例えば実炉の酸素分圧が100Paである場合、100Paの純酸素雰囲気で実験を行えばよい。また、この際の酸化性雰囲気は、純酸素雰囲気でよく、また、酸素の他に、水蒸気、希ガスおよび窒素を含む雰囲気としてもよい。
また、E-SEM以外の観察手法は、XRDをはじめとして、鋼板表層の酸化鉄量をモニターする手法が主となる。XRDを用いる場合、酸化鉄に起因する信号強度の増加を加熱温度に対してプロットし、酸化鉄の信号が急激に増加する温度領域の変曲点を酸化鉄形態遷移温度とする。XRDは、大気圧下での実験が可能であるため、実炉の酸素分圧に近い雰囲気で行えばよい。例えば実炉の酸素分圧が100Paである場合、0.1体積%酸素―窒素雰囲気(酸素分圧が約100Paに相当)下で実験を行うことができる。
上記E-SEMおよびXRDのいずれを用いた場合でも、実験室の装置では測定をしながらの昇温となるため、昇温速度は実機と比較して非常に遅い。しかし、発明者らが鋭意検討した結果、実験室の装置で可能な5℃/分〜50℃/分程度の昇温速度の場合でも、上記式(A)は成立し、酸化処理における適正な最高加熱温度を決定できることが分かった。
ここで、5℃/分未満の場合には、実験が長時間となり効率が悪くなる。一方、50℃/分を超えると、現行のESEMやその場X線回折では十分な時間分解能でデータを取得することができなくなる。そこで、5℃/分以上50℃/分以下とする。技術の進歩により十分な時間分解能でデータを取得することができるようになれば実機の炉と同等の昇温速度としてもよい。加熱炉中の雰囲気を上記のように調整し、炉内に導入された鋼板Xを、酸化鉄形態遷移温度を超えるまで加熱する。
以上の条件は、加熱を一段階で行った場合についての説明であるが、二段階以上に分け、各段階で昇温速度を変えて行うこともできる。
(酸化処理時の適正な最高加熱温度を求める)
こうして得られた鋼板Xの酸化鉄形態遷移温度Xt、対比鋼板Wの酸化鉄形態遷移温度Wtおよび対比鋼板Wの適正な最高加熱温度Waとから、下記式(A)に従ってXaを求める。
Xa=Wa+Xt−Wt (A)
ここで、実製造(実操業)においては、対比鋼板Wの適正な最高加熱温度は、ある程度の範囲を持っているが、その範囲内であれば、どの温度をWaとしてもよい。
また、発明者らの検討によると、対比鋼板Wにおいて確立されている適正な最高加熱温度範囲の下限をWaとして求めたXaより鋼板Xの酸化処理時の最高加熱温度が低いと、酸化鉄の生成量が不足して不めっきが発生する。また、対比鋼板Wの適正な最高加熱温度範囲の上限をWaとして求めたXaより鋼板Xの酸化処理時の最高加熱温度が高いと、過酸化による酸化鉄のロールピックアップや不めっき、めっき密着性不良が生じる。
従来は、開発された様々な新規鋼種を実工程に展開するために、実験室で鋼種毎に様々な最高加熱温度で焼鈍した鋼板を作製し、必要十分な酸化量を確保できる条件を見出す煩雑な作業を要していたが、本発明により、こうした煩雑な作業なしに酸化処理における適正な最高加熱温度を効率的に決定することができる。そして、このようにして決定された、最高加熱温度は0.1〜3.0質量%のSiを含有する鋼板について行なわれる通常の酸化処理に適用できる。
(実施例)
以下、本発明の実施例について説明する。
まず、表1に示した組成を有する厚さ0.7mmの各種冷延鋼板を用意した。表1中の鋼板No.1〜4のPは0.001質量%以上0.10質量%以下であり、Sは0.2質量%以下であった。このうち、鋼板No.4は実製造(実操業)において酸化処理における適正な最高加熱温度が確立されている対比鋼板である。鋼板No.4の適正な最高加熱温度(Wa)は720〜750℃である。これらの鋼板の表面における酸化鉄形成過程を観察し、得られた各鋼板の酸化鉄形態遷移温度を求めた。酸化鉄形態遷移温度は、E-SEMを用いたその場観察で求めた。E-SEMでの条件は、100Paの酸素雰囲気下において30℃/分の昇温速度で室温から950℃まで加熱し、各鋼板の表面における酸化鉄形成過程をその場観察し、上述の方法により求めた。得られた各鋼板の酸化鉄形態遷移温度を表2に示す。鋼板No.4との酸化鉄形態遷移温度差(℃)[Xt−Wt]、および、鋼板No.4の実製造(実操業)における適正な最高加熱温度(Wa)、および、それらの和[Wa+Xt−Wt]を合わせて表2に示した。
続いて、厚さ0.7mm、70mm×180mmの各鋼板を用いめっき性を調査するために実製造(実操業)を模擬してCGLシミュレータを用いてめっき実験を実施した。鋼板No.1〜4をシミュレータ内にセットし、0.1%O2−N2(露点20℃)、ガス流量40 l/分雰囲気で10℃/秒で昇温し、表2に示した「酸化処理時最高加熱温度」まで加熱を行い酸化処理を行なった。最高加熱温度到達後にN2ガスで冷却を行った。冷却時のN2ガス流量は200 l/分である。その後、酸化処理後の鋼板を10体積%水素+窒素雰囲気中(露点:−35℃)で板温:830℃,保持時間:45秒の条件で還元した。めっき条件は、Alを0.14質量%含む(Fe飽和)460℃の亜鉛めっき浴を用い、侵入板温:460℃および浸漬時間:1秒とし、窒素ガスワイパーで付着量を片面:45g/m2 に調整し溶融亜鉛めっき鋼板を作製した。
(評価)
<めっき外観(不めっき有無)>
得られた溶融亜鉛めっき鋼板に対して、ルーペおよび目視にて外観観察を行い、不めっきが全くない場合を不めっき無し(○)とし、ルーペで確認して不めっきと識別できるレベルの不めっきしか発生していない場合を顕著な不めっきなし(△)、目視にて不めっきが観察できる場合を不めっき有り(×)とした。
<めっき密着性>
得られた溶融亜鉛めっき鋼板について、ボールインパクト試験を行った。試験は、ISO 6272に準拠し、直径1/2インチ径のパンチを用い、2.8kgの重りを1mの高さから 落下させた。その後、衝撃で凸部ができた鋼板の凸部側のめっきに対して、加工部をセロテープ(登録商標)剥離し、めっき層剥離の有無を目視判定することでめっき密着性を評価した。試験後のめっき剥離状態を目視にて調べ、めっき剥離の無い場合を密着性合格とし、めっき剥離の有る場合を密着性不合格とした。
評価結果も合わせて表2に示した。
表2より、鋼板No.1〜3について、実験室で簡便な方法で求めた酸化鉄形態遷移温度差(Xt−Wt)と実製造(実操業)における適正な最高加熱温度(Wa)とから求めた(Wa+Xt−Wt)を最高加熱温度として、酸化処理を行なった鋼板を用いてめっきをしたものは、不めっきがなく外観良好で、かつ、めっき密着性も良好で機械的特性にも優れることが分かる。また、この範囲を外れた温度を最高加熱温度として酸化処理を行なった場合は、結果が良好ではなかった。
このように、本発明により、実験室で様々な最高加熱温度で焼鈍した鋼板を作製し、必要十分な酸化量を確保することのできる条件を探索することなく、酸化処理における適正な最高加熱温度を効率的に決定して、良好なめっき特性を備える溶融亜鉛めっき鋼板を製造できることが分かる。

Claims (3)

  1. 0.1〜3質量%のSiを含有する鋼板に対して、該鋼板を酸化性雰囲気中で加熱して該鋼板の表面に酸化鉄を形成する酸化処理と、該酸化処理後の鋼板を非酸化性雰囲気中で加熱して前記酸化鉄を還元する還元処理と、該還元処理後の鋼板に溶融亜鉛めっきを施すめっき処理とを経て溶融亜鉛めっき鋼板を製造するに当たり、
    前記鋼板および、酸化処理における適正な最高加熱温度Waが確立している対比鋼板につき、酸化性雰囲気下の加熱過程における鋼板表層での酸化鉄形成状況を把握し、酸化鉄の形成状況から、前記鋼板での酸化鉄の形態が遷移する温度Xtと前記対比鋼板での酸化鉄の形態が遷移する温度Wtとを求め、これらXtおよびWtと前記Waとから、下記式(A)に従って求めた、Xaを最高加熱温度として前記酸化処理を行い、前記酸化性雰囲気下の加熱過程は5℃/分以上50℃/分以下の昇温速度で行うことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
    (記)
    Xa=Wa+Xt−Wt (A)
  2. 前記酸化鉄形成状況の把握は、環境制御型走査電子顕微鏡あるいはX線回折を用いた観察により行う、請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載された方法により製造された溶融亜鉛めっき鋼板を加熱して、めっきされた溶融亜鉛を合金化する合金化処理を施すことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。

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