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JP6146797B2 - Her2タンパク質検出プローブ、her2タンパク質検出プローブの製造方法およびher2タンパク質の検出方法 - Google Patents
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JP6146797B2 - Her2タンパク質検出プローブ、her2タンパク質検出プローブの製造方法およびher2タンパク質の検出方法 - Google Patents

Her2タンパク質検出プローブ、her2タンパク質検出プローブの製造方法およびher2タンパク質の検出方法 Download PDF

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本発明は、HER2タンパク質検出技術に関し、特に新規の融合タンパク質、その融合タンパク質を用いるHER2タンパク質検出プローブ、HER2タンパク質検出プローブの製造方法およびHER2タンパク質の検出方法に関する。
HER2は、心臓や神経の発達や維持に関与し、その他の細胞でも細胞増殖、分化などの調節に関与する受容体型チロシンキナーゼであり、1234残基から形成される約185kDaの糖タンパク質である。多くの癌細胞でHER2が過剰発現していることから、癌マーカーとして知られている。癌マーカーであるHER2を検出するために、HER2に対する抗体に標識化合物を結合させた分子が用いられている。標識化合物を抗体に結合させるには、通常、化学結合法が用いられている。一方、HER2に特異的に結合する分子として、プロテインAのZドメインが知られている(例えば、非特許文献1−3参照)。これは抗体に比べ分子の大きさが小さく、大腸菌等の微生物で作製可能であり、Affibody(登録商標)として知られているほか、標識分子と化学結合させたハイプリッド分子が作製されている。
しかしながら、標識分子と抗体を化学的に結合した分子は、抗体の結合力が低下したり、標識分子の性能が低下することがある。特に、標識分子が酵素の場合は、酵素の性能が低下することが避けられない。また、標識分子と抗体を化学的に結合させる場合は、結合させるための化学反応や、化学反応後に結合しなかった余分な単体の分子を除去する精製作業が必要になり、作製するための手間が多くかかる。さらには、抗体を生産するには、一般的に、ウサギやマウス、ヤギといった高等生物を用いる必要があり、高コストであることが避けられないほか実験動物を使用せざるを得ない。
一方、アミノ酸のリシン(Lys)とグルタミン(Gln)の側鎖同士を結合する活性を持つ酵素であるトランスグルタミナーゼ(TGase)を用いて、タンパク質に対して部位特異的に酵素修飾する技術がある(例えば、特許文献1、非特許文献4参照)。
特開2008−54658号公報
Karin Nord, Elin Gunneriusson, Jenny Ringdahl, Stefan Stahl, Mathias Uhlen, Pre-Ake Nygren, Binding protein s selected from combinatorial libraries of an alpha-helical bacterial receptor domain, Nat.Biotechnol.,15, 772-777(1997) Anna Orlova, Mikaela Magnusson, Tove L.J.Eriksson, Martin Nilsson, Barbro Larsson, Ingmarie Hoiden-Guthenberg, Charles Widstrom, Jorgen Carlsson, Vladirmir Tolrmachev, Stefan Stahl, Fredrik Y.Nilsson, Tumor Imaging Using a Picomolar Affinity HER2 Binding Affibody Molecule, Cancer Res 2006;66:(8).April 15, 2006 Ilya Lyakhov, Rafal Zielinski, Monika Kuban, Gabriela Kramer-Marek, Robert Fisher, 0leg Chertov, Lakshman Bindu, Jacek capala, HER2- and EGFR-Specific Affiprobes: Novel Recombinant Oprical Probes for Cell Imaging, ChemBioChem 2010, 11, 345-350 M.Kitaoka, Y.Tsuruda, Y Tanaka, M.Goto, M.Mitsumori, K.Hayashi, Y.Hiraishi, K.Miyawaki, S.Noji, N.Kamiya, Transglutaminase-mediated synthesis of a novel DNA-(enzyme)n probe for highly sensitive DNA detection, Chem.Eur.J., 19, 5387-5392(2011)
本発明の目的は、良好な感度でHER2タンパク質を検出可能であり、HER2タンパク質検出プローブの製造等に適用可能な融合タンパク質を提供することにある。
また、本発明の目的は、良好な感度でHER2タンパク質を検出可能なHER2タンパク質検出プローブ、HER2タンパク質検出プローブの製造方法およびHER2タンパク質の検出方法を提供することにある。
また、本発明は、複数のグルタミン(Gln)残基を有する高分子担体に、リシン(Lys)残基を有する複数の融合タンパク質が結合されて構成されており、前記複数のグルタミン(Gln)残基を有する高分子担体は、下記式(5)のヌクレオシド三リン酸誘導体が複数導入された核酸であり、前記融合タンパク質は、HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体と標識酵素とが融合されたものであり、リシン(Lys)残基を含むタグを有する、HER2タンパク質検出プローブである。
(式(5)中、XおよびYは、それぞれ独立して、エテニレン基、−(CO)−または−(CO)−(ここで、n=2,4,8,12,24)基で置換されていてもよい、炭素数1〜48のアルキレン基または炭素数2〜48のアルケニレン基であり、Zは、ジニトロフェニル基またはL−3,4−ジヒドロキシフェニル基で置換されていてもよい、炭素数1〜48のアルキル基、炭素数1〜48のアルコキシ基、炭素数6〜48のアリール基、炭素数6〜48のアリールオキシ基、炭素数7〜48のアリールアルキル基または炭素数7〜48のアリールアルキルオキシ基である。また、Y,Zは独立してLys以外のアミノ酸により少なくとも一方が置換されていてもよい。Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。mは0または1である。)
また、本発明は、トランスグルタミナーゼ(TGase)を用いて、複数のグルタミン(Gln)残基を有する高分子担体に、リシン(Lys)残基を有する複数の融合タンパク質を結合し、前記複数のグルタミン(Gln)残基を有する高分子担体は、下記式(5)のヌクレオシド三リン酸誘導体が複数導入された核酸であり、前記融合タンパク質は、HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体と標識酵素とが融合されたものであり、リシン(Lys)残基を含むタグを有する、HER2タンパク質検出プローブの製造方法である。
(式(5)中、XおよびYは、それぞれ独立して、エテニレン基、−(CO)−または−(CO)−(ここで、n=2,4,8,12,24)基で置換されていてもよい、炭素数1〜48のアルキレン基または炭素数2〜48のアルケニレン基であり、Zは、ジニトロフェニル基またはL−3,4−ジヒドロキシフェニル基で置換されていてもよい、炭素数1〜48のアルキル基、炭素数1〜48のアルコキシ基、炭素数6〜48のアリール基、炭素数6〜48のアリールオキシ基、炭素数7〜48のアリールアルキル基または炭素数7〜48のアリールアルキルオキシ基である。また、Y,Zは独立してLys以外のアミノ酸により少なくとも一方が置換されていてもよい。Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。mは0または1である。)
また、本発明は、HER2タンパク質の検出方法であって、前記HER2タンパク質検出プローブと、対象物中に存在するHER2タンパク質とを結合させ、結合している前記HER2タンパク質検出プローブを、前記標識酵素により検出するHER2タンパク質の検出方法である。
本発明では、HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体と標識酵素とを融合させることにより、良好な感度でHER2タンパク質を検出可能であり、HER2タンパク質検出プローブの製造等に適用可能な融合タンパク質を提供することができる。
また、本発明では、その融合タンパク質を用いることにより、良好な感度でHER2タンパク質を検出可能なHER2タンパク質検出プローブ、HER2タンパク質検出プローブの製造方法およびHER2タンパク質の検出方法を提供することができる。
融合タンパク質(ZZ−AP)とZ−QG導入DNA((Z−QG)−DNA)とから、MTGを用いた反応により(ZZ−AP)−DNAプローブを得る方法の一例を示す概略図である。 Z−QG−dUTPの合成方法の一例を示す図である。 pUCminusMCS−ZZ−APプラスミドの情報を示す図である。 pET22b(+)−ZZ−APの構築を示す図である。 pET22b(+)−Z−APの構築を示す図である。 pET22b(+)−Z−GS−APの構築を示す図である。 pET22b(+)−ZZ−GS−APの構築を示す図である。 実施例において得られた融合タンパク質のSDS−PAGEの結果を示す図である。 実施例における各種APの酵素活性評価を示す図である。 実施例において、得られた融合タンパク質に対し、蛍光物質をリジンを含むタグに結合させた後に、HER2陽性細胞を特異的に検出した例を示す図である。 実施例において得られた融合タンパク質のHER2特異的結合力評価におけるWestern Blotの結果を示す図である。 実施例において得られた(Z−GS−AP)−DNAのアガロースゲル電気泳動の結果を示す図である。 実施例において得られた(Z−GS−AP)−DNAのアニオン交換クロマトグラムの結果を示す図である(310bp)。 実施例において得られた(Z−GS−AP)−DNAのアニオン交換クロマトグラムの結果を示す図である(960bp)。 実施例において得られた(Z−GS−AP)−DNAのZ−GS−APラベル量を示す図である(310bp)。 実施例において得られた(Z−GS−AP)−DNAのZ−GS−APラベル量を示す図である(960bp)。 実施例において得られた(Z−GS−AP)−DNAの酵素数増加によるシグナル増幅の効果に関するELISAの結果を示す図である。 実施例において得られた(Z−GS−AP)−DNAのZ342の多価効果に関するELISAの結果を示す図である。
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
本発明者らは、新規の融合タンパク質、およびその融合タンパク質を用いた新規高感度HER2タンパク質検出プローブの作製を検討した。アフィニティプロテインとして、例えば、Staphylococcal protein A由来Zドメインのライブラリからファージディスプレイ法を利用して選抜されたAffibody(登録商標)に着目した。Affibody(登録商標)は、抗体にはない特性としてサイズが約6kDaと非常に小さく、翻訳後修飾を必要としないため、微生物を宿主とした大量発現が可能であることを大きな特徴とする。2004年にAnti−HER2 Affibodyが、Wikmanらによって初めて報告され、2006年には、Orlovaらによってアフィニティ成熟の行程を経て、よりアフィニティの強いZher2:342(Z342)が見出され、二量体化させるとアフィニティが増大することが示された。
本発明者らは、遺伝子工学的手法により、HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体と標識酵素とを融合した融合タンパク質を発現させることを検討し、新規の融合タンパク質を得た。また、部位特異的に酵素修飾する技術として、微生物由来トランスグルタミナーゼ(MTG)などのトランスグルタミナーゼ(TGase)が有する部位特異的なタンパク質修飾能に着目した。TGaseはアシル転移反応を触媒する酵素であり、例えば、タンパク質中の特定のGln残基(Q)のγ−カルボキシアミド基と、Lys残基(K)のε−アミノ基や各種一級アミンとの共有結合を触媒する酵素である。融合タンパク質の発現の際に、標識酵素にTGaseが認識可能なLys残基(K)またはGln残基(Q)を含むTGase認識配列をタグとして付与して、タグを付与した融合タンパク質を得る。一方、PCR法等を利用して、TGaseが認識可能なGln残基(Q)またはLys残基(K)を少なくとも1つ、好ましくは複数導入したDNAを調製する。これらをTGase触媒反応により架橋させることで、HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体と標識酵素が少なくとも1つ、好ましくは複数導入されたHER2タンパク質検出プローブを創製する。
例えば図1に示すように、遺伝子工学的手法により、HER2に特異的に結合する能力を持つZ342の二量体(ZZ)と大腸菌由来アルカリホスファターゼ(BAP)とを融合した融合タンパク質(Z342−BAPとして発現させ、その際、BAPのC末端側にMTG認識配列K−tag(MRHKGS)を付与して、(Z342−BAP−CK(ZZ−AP)等の新規の融合タンパク質を得る。一方、PCR法を利用して、MTG認識基質であるZ−QGを少なくとも1つ、好ましくは複数導入したDNA((Z−QG)−DNA)、n=1以上)を調製する。これらをMTG触媒反応により架橋させることで、Z342の二量体(ZZ)とBAPが少なくとも1つ、好ましくは複数導入されたHER2タンパク質検出プローブ((ZZ−AP)−DNA)を創製する。
このような複合体を作製することで、例えば、1分子のプローブ中に導入する標識酵素数を増加することにより、シグナルの増幅による検出の高感度化が期待される。また、プローブ中に抗原認識部となるZ342の二量体(ZZ)を導入することにより、Z342の多価効果による抗原に対する見かけの親和力の増大が期待される。さらにDNAの特性を利用して負電荷による水溶性の付与、構造体の厳密な分子設計等も可能である。また、Affibodyライブラリの変異は13カ所のみであることから、HER2だけでなくあらゆるタンパク質検出技術の革新的プラットフォームとなることが期待される。
<融合タンパク質>
本発明の実施形態に係る融合タンパク質は、HER2タンパク質に結合可能なアフィニティ分子と標識酵素との融合タンパク質であり、HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体と標識酵素とを融合した融合タンパク質である。本実施形態に係る融合タンパク質は、微生物等で生産可能である。この融合タンパク質を用いて、HER2タンパク質を特異的に検出することができる。
本実施形態に係る融合タンパク質は、部位特異的な酵素修飾が可能なタグを有することが好ましく、TGaseによる部位特異的な酵素修飾が可能なタグ、例えば、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基を有するタグを有することがより好ましい。HER2タンパク質に対して特異的に結合することで知られているプロテインA変異体であるZドメインと、標識酵素のハイブリッド分子を、融合タンパク質として作製する。これにより、化学結合法によらずに、HER2に対するアフィニティ分子と標識酵素のハイプリット体を作製することができる。
化学結合法によらず、標識酵素とアフィニティ分子が融合した融合タンパク質を得ることにより、アフィニティ分子の性能をほとんど低下させることない。また、融合タンパク質が部位特異的な酵素修飾が可能なタグを有することにより、アフィニティ分子の性能をほとんど低下させることなく、蛍光物質等の標識を可能にする。さらに、そのタグを利用し、高分子担体に複数の融合タンパク質を連結させることにより、HER2タンパク質の検出能力および性能を向上させることも可能となる。
アフィニティ分子である、HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体としては、Affibody(登録商標)として知られているものがある。Affibody(登録商標)は、Staphylococcal protein Aの免疫グロブリン結合領域のうち、Bドメインに由来するタンパク質である。Bドメインは、比較的に短くCys残基を持たない58残基のペプチド(約6kDa)であり、3つのα−ヘリックスから形成される。フォールディング速度は、既報のタンパク質の中でも最も迅速なものの1つであり、加えて高い水溶性と耐熱性を有する。このBドメインに対し、化学的な耐性を高めるために変異を導入した組み換え体は、Zドメイン(Zwt, pI 5.16,Mw=6640)と称される。変異導入によるZドメインは、抗体のFc部に対するアフィニティを維持する一方で、Fab領域に対する弱いアフィニティが欠損されている。Zドメインの耐性力と、多種多様な免疫グロブリン種、プロテインA、免疫グロブリン結合ドメインの誘導体に特異的に結合する能力から、バイオテクノロジの分野で広く利用されている。Zドメインの有益な性質は、抗体結合種としての性質にとどまらず、いっそう広範にわたる多様なアプリケーションにおいても優れた利点である。
標識酵素としては、発色反応などを利用して検出を行うことができる性質を有するものであればよく特に制限はない。例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼなどが挙げられる。これらのうち、高い触媒活性と安定性の観点から、アルカリホスファターゼあるいはペルオキシダーゼが好ましい。ペプチドタグが容易に導入可能との観点からは、遺伝子工学的に製造可能なタンパク質が好ましい。融合タンパク質を大腸菌で作製できるように、標識酵素にバクテリア由来アルカリホスファターゼを用いることが好ましい。
HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体と標識酵素とを融合した融合タンパク質としては、Zドメイン(Z)が2つ連なり、アルカリホスファターゼ(AP)が融合したZZ−APの他に、1つのZドメインにアルカリホスファターゼが融合したZ−AP、または発現効率等への影響も考慮し、ZZとAPの間、ZとAPの間に空間的余裕をもたせるためにリンカーを導入した分子(ZZ−linker−AP、Z−linker−AP)等がある。
リンカーとしては、GGGGSリンカー、GGGSGSGGGGSリンカー等が挙げられる。
本発明の実施形態に係る融合タンパク質は、HER2タンパク質の特異的検出、後述するHER2タンパク質検出プローブの製造等に適用可能な他、分離、精製等に利用可能である。
本発明の実施形態に係る融合タンパク質は、HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体と標識酵素とを融合したものであるが、アフィニティ分子は、HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体以外にも、一本鎖抗体、ラクダ抗体等であってもよい。
<HER2タンパク質検出プローブおよびその製造方法>
本実施形態に係るHER2タンパク質検出プローブは、少なくとも1つのグルタミン(Gln)残基を有する高分子担体に、リシン(Lys)残基を含む部位特異的な酵素修飾が可能なタグを有する、HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体と標識酵素とを融合した少なくとも1つの融合タンパク質が結合されて構成されているものである。または、本実施形態に係るHER2タンパク質検出プローブは、少なくとも1つのリシン(Lys)残基を有する高分子担体に、グルタミン(Gln)残基を含む部位特異的な酵素修飾が可能なタグを有する、HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体と標識酵素とを融合した少なくとも1つの融合タンパク質が結合されて構成されているものである。
また、本実施形態に係るHER2タンパク質検出プローブの製造方法は、トランスグルタミナーゼ(TGase)を用いて、少なくとも1つのグルタミン(Gln)残基を有する高分子担体に、リシン(Lys)残基を含む部位特異的な酵素修飾が可能なタグを有する、HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体と標識酵素とを融合した少なくとも1つの融合タンパク質を結合する方法である。または、本実施形態に係るHER2タンパク質検出プローブの製造方法は、トランスグルタミナーゼ(TGase)を用いて、少なくとも1つのリシン(Lys)残基を有する高分子担体に、グルタミン(Gln)残基を含む部位特異的な酵素修飾が可能なタグを有する、HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体と標識酵素とを融合した少なくとも1つの融合タンパク質を結合する方法である。
上記融合タンパク質を高分子担体に共有結合的に導入する手法として、微生物由来トランスグルタミナーゼ(MTG)などのトランスグルタミナーゼ(TGase)が有する部位特異的なタンパク質修飾能に着目した。TGaseはアシル転移反応を触媒する酵素であり、例えば、タンパク質中の特定のGln残基(Q)のγ−カルボキシアミド基と、Lys残基(K)のε−アミノ基や各種一級アミンとの共有結合を触媒する酵素である。このTGaseを用いて、上記融合タンパク質を高分子担体に導入したHER2タンパク質検出プローブの創製を行う。MTG等は基質認識特性が高いため、高分子担体の反応点と上記融合タンパク質の反応タグ部分を選択的に架橋することができ、標識酵素の活性をほとんど低下させずに導入できる。
具体的には、例えば、図1に示すように、遺伝子工学的手法により、HER2に特異的に結合する能力を持つZ342の二量体(ZZ)と大腸菌由来アルカリホスファターゼ(BAP)とを融合した融合タンパク質(Z342−BAPとして発現させ、その際、BAPのC末端側にMTG認識配列K−tag(MRHKGS)を付与して、(Z342−BAP−CK(ZZ−AP)等の新規の融合タンパク質を得る。一方、例えば、図2に示すように、デオキシウリジン三リン酸(deoxyuridine triphosphate:dUTP)に、TGaseが認識するGln(MTG認識Gln)を有するZ−QGを結合させたヌクレオチド誘導体であるZ−QG−dUTPを合成する。Z−QG−dUTPを用い、PCR法を利用して、MTG認識基質であるZ−QGを少なくとも1つ、好ましくは複数導入したDNA((Z−QG)−DNA)、n=1以上)を調製する。これらをMTG触媒反応により架橋させることで、Z342の二量体(ZZ)とBAPが少なくとも1つ、好ましくは複数導入されたHER2タンパク質検出プローブ((ZZ−AP)−DNA)を創製する。
なお、図1において、(Z−QG)−DNAにおけるGln残基と、融合タンパク質におけるLys残基とは逆であってもよい。すなわち、融合タンパク質(Z342−BAPとして発現させる際、BAPのC末端側にMTG認識Gln残基を含むタグを付与して、融合タンパク質を得る。一方、MTG認識Lys残基を少なくとも1つ、好ましくは複数導入したDNAを調製する。これらをMTG触媒反応により架橋させることで、Z342の二量体(ZZ)とBAPが少なくとも1つ、好ましくは複数導入されたHER2タンパク質検出プローブ((ZZ−AP)−DNA)を創製する。
このようにして、HER2タンパク質の認識部位、標識酵素の活性部位への影響を抑制し、高分子担体に部位特異的に上記標識部分を含む融合タンパク質を導入することができる。
高分子担体としては、DNA、PNAおよびRNA等の核酸、アクリル酸ポリマ、メタクリル酸ポリマ、ポリアクリルアミド等の合成高分子等が挙げられる。核酸の配列および長さには特に制限はない。高分子担体がDNAであることにより、DNAの特性を利用して負電荷による水溶性の付与、構造体の厳密な分子設計等も可能である。
高分子担体が核酸である場合、MTGなどのTGaseが認識可能なグルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基を有するヌクレオシド三リン酸誘導体を用いて、TGase認識Gln残基またはLys残基を少なくとも1つ、好ましくは複数導入したDNAを調製すればよい。グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基を有するヌクレオシド三リン酸誘導体としては、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基を有する、ウリジン三リン酸(uridine triphosphate:UTP)誘導体、アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate:ATP)誘導体、グアノシン三リン酸(guanosine triphosphate:GTP)誘導体、シチジン三リン酸(cytidine triphosphate:CTP)誘導体、デオキシウリジン三リン酸(deoxyuridine triphosphate:dUTP)誘導体、デオキシアデノシン三リン酸(deoxyadenosine triphosphate:dATP)誘導体、デオキシグアノシン三リン酸(deoxyguanosine triphosphate:dGTP)誘導体、デオキシシチジン三リン酸(deoxycytidine triphosphate:dCTP)誘導体などが挙げられる。本実施形態に係るヌクレオシド三リン酸誘導体において、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基は、例えば、ウラシル、アデニン、グアニン、シトシンの部分に直接または置換基を介して結合されている。
これらのヌクレオシド三リン酸誘導体は、UTP、ATP、GTP、CTP、dUTP、dATP、dGTP、dCTPまたはそれらの各種誘導体から得ることができる。
また、これらのヌクレオシド三リン酸誘導体は、ウリジン、ウリジンの一リン酸(UMP)および二リン酸(UDP)、アデノシン、アデノシンの一リン酸(AMP)および二リン酸(ADP)、グアノシン、グアノシンの一リン酸(GMP)および二リン酸(GDP)、シチジン、シチジンの一リン酸(CMP)および二リン酸(CDP)、デオキシウリジン、デオキシウリジンの一リン酸(dUMP)および二リン酸(dUDP)、デオキシアデノシン、デオキシアデノシンの一リン酸(dAMP)および二リン酸(dADP)、デオキシグアノシン、デオキシグアノシンの一リン酸(dGMP)および二リン酸(dGDP)、デオキシシチジン、デオキシシチジンの一リン酸(dCMP)および二リン酸(dCDP)ならびにそれらの各種誘導体から得てもよい。
例えば、ウリジン、アデノシン、グアノシン、シチジン、デオキシウリジン、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシシチジンのリン酸化酵素などによるリン酸化(例えば、生物工学会誌,85(9),p397−399(2007)、Journal of Bioscience and Bioengineering,87(6),p.732−738(1999)など参照)や、プロトンスポンジ存在下でのオキシ塩化リンなどによるリン酸化(例えば、Tetrahedron Letters,29(36),p.4525−4528(1988)など参照)などによって、それらの三リン酸体を得ることができる。
本実施形態に係るヌクレオシド三リン酸誘導体は、例えば、下記式(1)で示され、TGaseが認識可能なGln残基またはLys残基を有するウリジン三リン酸誘導体である。

(式(1)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基を有する置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
本実施形態に係るヌクレオシド三リン酸誘導体は、例えば、下記式(2)で示され、TGaseが認識可能なGln残基またはLys残基を有するアデノシン三リン酸誘導体である。

(式(2)中、AおよびAのうち少なくとも1つは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基を有する置換基で残りは水素原子を表し、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
本実施形態に係るヌクレオシド三リン酸誘導体は、例えば、下記式(3)で示され、TGaseが認識可能なGln残基またはLys残基を有するシチジン三リン酸誘導体である。

(式(3)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基を有する置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
本実施形態に係るヌクレオシド三リン酸誘導体は、例えば、下記式(4)で示され、TGaseが認識可能なGln残基またはLys残基を有するグアノシン三リン酸誘導体である。

(式(4)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基を有する置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
Aで表されるグルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基を有する置換基としては、特に制限はないが、例えば、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基を有する直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を含む置換基が挙げられ、合成のし易さなどを考慮して決めればよい。
本実施形態に係るヌクレオシド三リン酸誘導体は、例えば、下記式(5)で示され、TGaseが認識可能なGln残基またはLys残基を有するTGase基質修飾ヌクレオチド誘導体であることが好ましい。

(式(5)中、XおよびYは、それぞれ独立して2価の連結基を表し、Zは、置換基を表す。Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。mは0または1である。)
XおよびYで表される2価の連結基としては、それぞれ独立して、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数1〜48のアルキレン基、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基などの炭素数2〜48のアルケニレン基などが挙げられる。これらのうち、X,Yは、それぞれ独立して炭素数1〜48のアルキレン基または炭素数2〜48のアルケニレン基、炭素数1〜48のアルコキシ基であることが好ましく、Xはエテニレン基、Yはメチレン基であることがより好ましい。X,Yはさらにエテニレン基、オキシアルキレン基、例えば−(CO)−または−(CO)−(nは繰り返し数でありn=2,4,8,12,24)基などで置換されていてもよい。Yとしては、例えば、−(CO)−C−が挙げられる。
Zで表される置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1〜48のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基などの炭素数1〜48のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜48のアリール基、フェニルオキシ基などの炭素数6〜48のアリールオキシ基、ベンジル基などの炭素数7〜48のアリールアルキル基、ベンジルオキシ基などの炭素数7〜48のアリールアルキルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、Zは、炭素数1〜48のアルキル基、炭素数1〜48のアルコキシ基、炭素数6〜48のアリール基、炭素数6〜48のアリールオキシ基、炭素数7〜48のアリールアルキル基または炭素数7〜48のアリールアルキルオキシ基であることが好ましく、Zはベンジルオキシ基であることがより好ましい。Zはさらにジニトロフェニル基、L−3,4−ジヒドロキシフェニル基などで置換されていてもよい。また、上述したYで表される置換との組み合わせで、Y,Zは独立してLys以外のアミノ酸により少なくとも一方が置換されていてもよい。
X,Yを適宜選択することにより、Z−QGとUTPとを連結するリンカー部位の構造を最適化し、例えば柔軟なリンカー部位を導入することで、酵素などのアクセスを向上することができる。また、Y,Zを適宜選択することにより、基質ペプチド配列を最適化し、例えば酵素などの親和性を向上することができる。
微生物由来TGase(MTG)を用いる場合、MTGが認識可能なGln残基は、ベンジルオキシカルボニル−L−グルタミルグリシン(Z−QG)として存在することが好ましい。Z−QGは、ジゴキシゲニン(DIG)などよりも分子サイズが小さいため好ましい。式(5)で示されるヌクレオシド三リン酸誘導体において、Xがエテニレン基、Yがメチレン基、Zがベンジルオキシ基、Bが水素原子、m=0であるヌクレオチド誘導体が、dUTPにZ−QGを結合させたヌクレオチド誘導体Z−QG−dUTPである。また、ヌクレオシド三リン酸誘導体中には、TGaseが認識可能なGln残基とLys残基または第一級アミンとが共存しないようなものを選択することが好ましい。共存する場合には、TGaseにより、自己架橋する可能性があり、目的のタンパク質−核酸複合体の収率に好ましくない影響を与える場合があるからである。
また、微生物由来TGaseの良基質として、LLQG(配列番号:1)、LAQG(配列番号:2)、LGQG(配列番号:3)、PLAQSH(配列番号:4)、FERQHMDS(配列番号:5)、もしくはTEQKLISEEDL(配列番号:6)のアミノ酸配列からなるペプチド、またはGLGQGGG(配列番号:7)、GFGQGGG(配列番号:8)、GVGQGGG(配列番号:9)、もしくはGGLQGGG(配列番号:10)のアミノ酸配列からなるペプチドが知られている。また、guinea pig liver由来のTGaseの良基質として、ベンジルオキシカルボニル−L−グルタミルフェニルアラニン(Z−QF)、またはEAQQIVM(配列番号:11)のアミノ酸配列からなるペプチド、またはGGGQLGG(配列番号:12)、GGGQVGG(配列番号:13)、GGGQRGG(配列番号:14)、GQQQLG(配列番号:15)、PNPQLPF(配列番号:16)もしくはPKPQQFM(配列番号:17)のアミノ酸配列からなるペプチドが知られている。TGaseが認識可能なGln残基は、用いるTGaseの種類に応じ、このようなペプチドとして存在してもよい。
なお、N末端がグリシン(G)である基質ペプチドは、N末端アミノ基がTGaseの基質になりうるため、自己架橋による副産物が生じうる。したがって、N末端がグリシン(G)である基質ペプチドについては、N末端アミノ基の水素を適切な基で置換することによりTGaseの基質とはならないように保護して、所望の連結を行うことができるようにするとよい。なお、本明細書において「N末端保護」というときは、特別な場合を除き、このような意味で用いている。そして、N末端保護の手段により、反応性が異なることが知られている。詳細には、ほ乳類由来TGaseに関して、GQQQLGのN末端アセチル化による保護(すなわち、Ac−GQQQLG)、またN末端アミノ酸をDOPA(L−3,4−dihydroxyphenylalanine)にする(すなわち、DOPA−GQQQLG)と反応性が向上することが知られている。このような保護の例を、本実施形態においても利用することができる。
Z−QG−dUTPの調製方法を図2に示す。これは、本実施形態に係るヌクレオシド三リン酸誘導体の調製方法の一例であって、これに限定されるものではない。
まず、ベンジルオキシカルボニル−L−グルタミルグリシン(Z−QG)にN−ヒドロキシスクシンイミド(N−hydroxysuccinimide:NHS)基などを導入し、活性化しておく(NHS化Z−QG)。そして、アミノアリルUTPなどの末端をアミノ化した置換基を有するdUTPと、NHS化Z−QGとを縮合することにより、Z−QG−dUTPを得ることができる。
また、C末端のカルボキシル基を活性エステル化する上述の方法に加えて、TGaseが認識可能なGln残基を有するペプチドをdUTPに導入する方法として、アミノ基と反応性の高い官能基をペプチドに導入する方法がある。例えば、アルデヒド化、アシルアジド化、スルフォニルクロライド化、エポキシ化、イソシアネート化、またはイソチオシアネート化した基質ペプチドを調製できれば、これをアミノ化dUTPと反応させることにより、TGaseが認識可能なGln残基を有するdUTPを調製することができる。ただし、これらの反応性官能基は、基質ペプチドにおいてTGase認識に影響がない部分に導入する必要がある。したがって、上述のように、Gln残基とは離れたC末端のカルボキシル基を活性化する方法は、この目的において最も優れたものの一つである。
Z−QG−dUTPの精製は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、ゲル濾過クロマトグラフィ(GPC)などにより行うことができる。また、Z−QG−dUTPの同定は、MALDI TOF−MS、NMR、IRなどにより行うことができる。また、HPLCにより、生成物の確認および収率を求めることができる。
HER2タンパク質検出プローブにおいて、高分子担体と融合タンパク質との比率nは、1以上であれば特に制限はなく、適宜調整することができるが、nが2以上であることが好ましく、nが大きいほど検出感度が高くなり好ましい。ただし、nが大きすぎると、HER2との結合の効率が低下する場合がある。
また、例えば、以下の方法により、異なる標識酵素を有する複数のHER2タンパク質検出プローブを調製することができる。
(1)TGaseの由来を変える。
(2)TGaseの基質特異性を変える。
(1)の方法では、例えば、用いるTGaseの種類に応じて、異なる基質ペプチドで修飾されたUTPなどを調製すればよい。
(2)の方法では、例えば、TGaseに、タンパク質工学的にアミノ酸変異を導入して基質特異性を変えればよい。例えば、MTGを大腸菌で調製し(例えば、Christian K. Marx,Thomas C. Hertel and Markus Pietzsch,Enzyme and Microbial Technology,Volume 40,Issue 6,2 May 2007,p.1543−1550,”Soluble expression of a pro−transglutaminase from Streptomyces mobaraensis in Escherichia coli”参照)、さらに変異体ライブラリを作って耐熱性の向上したMTGを取得することができる(例えば、Christian K. Marx,Thomas C. Hertel and Markus Pietzsch,Journal of Biotechnology,Volume 136,Issues 3−4,10 September 2008,p.156−162,”Random mutagenesis of a recombinant microbial transglutaminase for the generation of thermostable and heat−sensitive variants”参照)。
本明細書において、「TGaseにより結合する」というときは、特別な場合を除き、得られる連結部は、Lys残基とGln残基とが、ε(γ−グルタミル)リシン結合を形成することにより構成されている。
本実施形態においては、TGaseが認識可能なLys残基は、第一級アミンであってもよい。本明細書では、Lys残基を例に説明するが、その説明は、特別な場合を除き、第一級アミンにも当てはまる。
TGaseに対し、Lys残基供与体となる基質は、Gln残基供与体となる基質に比較して構造的な制約が少ないと考えられる。したがって、修飾しようとする標識酵素が、TGaseが認識可能なLys残基を元来有している場合もあり、TGaseが認識可能なLys残基を含むタグを酵素に付加する場合もある。
TGaseが認識可能なLys残基(K)は、MKHKGS(配列番号:18)、MRHKGS(配列番号:23)、MRRKGS(配列番号:24)、MHRKGS(配列番号:25)のアミノ酸配列を有するペプチドとして存在してもよい。このようなTGaseが認識可能なLys残基を含むペプチドによるタグ化は、標識酵素を、タンパク質の所望の部位、例えばC末端またはN末端に連結する目的で用いることができる。TGaseが認識可能なLys残基を含む他のペプチドまたはそのアミノ酸配列の例としては、改変型S−peptide(GSGMKETAAARFERAHMDSGS(配列番号:19))、MGGSTKHKIPGGS(配列番号:20)、N末端グリシン(N−terminal GGG、N−terminal GGGGG(配列番号:21))、N末端MKHKGSと対象タンパク質間のリンカー部位を伸ばしたMKHKGGGSGGGSGS(配列番号:22)などが挙げられる。
C末端またはN末端にTGaseが認識可能なLys残基を含むペプチドを付加した標識酵素は、遺伝子工学的な手法を用いて、組換えタンパク質として調製することができる。C末端またはN末端にTGaseの基質ペプチドタグが導入された当該組換えタンパク質の精製は、それぞれN末端またはC末端に付加した精製用ペプチドタグ(例えば、(His)6−tag(ヘキサヒスチジンタグ))を利用し(TGaseの反応性の低下を回避するために、基質ペプチドタグを入れた末端とは異なる末端に精製用ペプチドタグを入れるようにデザインするとよい。)、ゲル濾過クロマトグラフィなどにより行うことができ、またアミノ酸配列の確認は当該タンパク質をコードするプラスミドベクターの遺伝子配列をDNAシーケンサにて確認するか、N末端に導入された基質ペプチドについてはN末端分析により直接同定することができる。タンパク質の精製の確認は、SDS−PAGEなどで行うことができる。
融合タンパク質、HER2タンパク質検出プローブを用いる際に、比較的高温(例えば、70℃以上)の条件下で行う場合には、常温菌由来の酵素を利用すると活性の損失が懸念される。その場合は、酵素としては、超好熱菌Pyrococcus furiosus由来アルカリホスファターゼ(PfuAP)が好ましい。
超好熱菌由来の酵素は、一般的に有機溶媒や熱に対して高い安定性を示すことが知られているため好ましく(例えば、H.Atomi,Current Opinion in Chemical Biology,9,p.166−173(2005)参照)、さらに、大腸菌を宿主とした大量調製が比較的容易に行うことができる点においても好ましい。大腸菌を宿主として耐熱性酵素を調製する場合、細胞破砕液を高温処理(例えば、80℃で30分温置)することで、大腸菌由来の共雑タンパク質のほとんどを沈殿させ、粗精製を容易に行うことができる。
超好熱菌は一般の生物がほとんど生育できない極限環境で生育することができる微生物であるため、超好熱菌由来のタンパク質は非常に高い耐熱性を有している。さらに、熱に対する耐性だけでなく、一般的に、変性剤、有機溶媒、pHなどに対する耐性も常温菌由来酵素に比べて極めて高いことから、PfuAPを使用することによって、酵素の失活を伴わない検出を行うことができると考えられる。
また、融合タンパク質、HER2タンパク質検出プローブにおいて、酵素が有機溶媒や熱に対して安定な酵素であってもよい。このような安定性の高い酵素は、自然界からのスクリーニング(例えば、化学と工業,vol.61(No.6),p.571−575(2008)、内山拓,宮崎健太郎,バイオサイエンスとインダストリー,vol.66(No.5),p.234−239(2008)、道久則之,バイオサイエンスとインダストリー,vol.66(No.12),p.667−670(2008))や、タンパク質工学的手法により安定性を高める技術(例えば、荻野博康,BIO INDUSTRY,vol.25(No.7),p.16−23(2008)、宮崎健太郎,BIO INDUSTRY,vol.25(No.7),p.52−58(2008))により得ることができる。これらの手法により、常温菌由来の酵素であっても、有機溶媒耐性や耐熱性を有する酵素へと変換することができる。
トランスグルタミナーゼ(TGase)としては、種々のものを用いることができる。現在、TGaseとして、哺乳類(guinea pig、ヒト)、無脊椎動物(昆虫、カブトガニ、ウニ)、植物、菌類、原生生物(粘菌)由来のものが知られており、またヒトの場合については、8種類のアイソザイムが見つかっている。本実施形態において用いることのできるTGaseの好ましい例は、安定性、ハンドリングの容易さ、バルク生産が可能などの点から微生物由来微生物由来トランスグルタミナーゼ(MTG)である。
本実施形態においてMTGを用いた場合、予想されているMTGの触媒反応から、Lys残基を有する標識酵素を含む融合タンパク質と(Z−QG)−DNAとの連結反応は、MTG活性中心であるシステイン(Cys)残基の、(Z−QG)−DNAのGlnへの求核置換反応によるアシル−酵素複合体の形成と、続いて起こる標識化合物のLysによるアシル−酵素複合体への求核置換反応によるMTGの脱離、の2段階で進行すると予想される。
本実施形態の好ましい態様においては、TGaseが認識可能なGln残基を有する(Z−QG)−DNAに対する、TGaseが認識可能なLys残基を有する融合タンパク質のモル濃度比は、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上である。なお、本明細書で単に「濃度比」というときは、特別な場合を除き、モル濃度による比を指す。
TGaseとしてMTGを用いて連結反応を行う場合には、上述のようにモル濃度比が適切な範囲となるようにすることに加えて、pH5.5〜8.0、温度4〜50℃(例えば、室温(例えば、18℃〜22℃))の条件で行うことが好ましい。このようにすれば、12時間以内、好ましくは6時間以内、より好ましくは3時間以内に、充分に高い反応率が達成可能である。
<HER2タンパク質の検出方法>
本実施形態に係るHER2タンパク質の検出方法は、前記HER2タンパク質検出プローブと、対象物中に存在するHER2タンパク質とを結合させ、結合しているHER2タンパク質検出プローブを、標識酵素により検出する方法である。
本実施形態に係るHER2タンパク質の検出方法は、HER2タンパク質の定性、定量、識別、染色、局在化の調査などの目的で用いることができる。
アフィニティ分子を変えることによって、標的物をHER2タンパク質以外のものとすることも可能である。例えば、EGFRに対するアフィニティ分子としてZEGFR:1907、TNFに対するアフィニティ分子としてZTNFα:2やZTNFα:185等が挙げられる。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
プロテインA変異体−BAP融合タンパク質として、Z−AP−(His)−CK−tagおよびZZ−AP−(His)−CK−tagを候補とし、また発現効率への影響も考慮し、プロテインA変異体とAPの間に導入するリンカー長として、GGGSGSGGGGSを導入することとした。そして、GGGSGSGGGGSリンカーを導入する場合は、Z−GS−AP−(His)−CK−tag、ZZ−GS−AP−(His)−CK−tagと表記することとし、またこれ以降は、−(His)−CK−tagの表記は省略し、ZZ−AP、Z−GS−AP、ZZ−GS−APと表記する。
<ZZ−AP発現ベクターの構築>
[遺伝子組み換え用大腸菌JM109株へのZZ−AP遺伝子配列の形質転換]
pel B−(Z342)−BAP−His−CRK(ZZ−AP)(1905bp)の遺伝子をpUCminusMCSプラスミドにコードした「pUCminusMCS−ZZ−AP(5129bp)」を、組換え用大腸菌(Escherichia coil,JM109株)に形質転換し、グリセロールストックとして−80℃で保存した(図3)。
[遺伝子組み換えによるZZ−AP発現ベクターの構築]
得られたpUCminusMCS−ZZ−APが形質転換された大腸菌JM109株のグリセロールストックを、一晩培養を行った後、プラスミド抽出を行った。得られたpUCminusMCS−ZZ−APを、Nde IとHind IIIの2種類の制限酵素で処理した。これをアガロースゲル電気泳動により分離を行い、ZZ−AP遺伝子産物のみを、ゲルカットにより精製した。次に、pET22b(+)(5493bp)を同様にNde IとHind IIIで処理した後、CIAPを用いて脱リン酸化を行った。その後、増幅したZZ−APの遺伝子産物をリガーゼにより挿入し、「pET22b(+)−ZZ−AP(7278bp)」を得た(図4、配列番号26)。調製したpET22b(+)−ZZ−APは、大腸菌JM109株に形質転換し、グリセロールストックとして−80℃で保存した。
<Z−AP発現ベクターの構築>
[インバースPCR法を利用した遺伝子組み換えによるZ−AP発現ベクターの構築]
pET22b(+)−ZZ−AP(7278bp)から、インバースPCRにより、N末端側から2番目のZ342配列が除かれるように、For.側のプライマーは、GGGS(リンカー)+BAP配列と相補的に、Rev.側のプライマーは、Z342配列のC末端側+G(リンカー)と相補的になるよう設計を行った(表1)。
pET22b(+)−ZZ−APが形質転換された大腸菌JM109株のグリセロールストックを、一晩培養を行った後、プラスミド抽出を行った。得られたpET22b(+)−ZZ−APから、primer Z−AP Forとprimer Z−AP Rev(表1)を使用して、pET22b(+)−ZZ−APのインバースPCRを行い、pET22b(+)−Z−APのPCR産物を得た。そして、OriginalのpET22b(+)−ZZ−APを酵素により消化した後、Lygation High kitを使用して、pET22b(+)−Z−APのセルフライゲーションを行い、「pET22b(+)−Z−AP(7062bp)」を調製した(図5、配列番号27)。調製したpET22b(+)−Z−APは、大腸菌JM109株に形質転換し、グリセロールストックとして−80℃で保存した。
<Z−GS−AP発現ベクターの構築>
[インバースPCR法を利用した遺伝子組み換えによるZ−GS−AP発現ベクターの構築]
pET22b(+)−ZZ−AP(7278bp)から、インバースPCRにより、N末端側から2番目のZ342配列が除かれ、追加のGSリンカーを導入できるように、For.側のプライマーは、S挿入部+GGGGS(リンカー)+BAP配列と相補的に設計し、Rev.側のプライマーは、1番目のZ342配列のC末端側+GGGS(リンカー)+G挿入部と相補的になるよう設計を行った(表2)。
pET22b(+)−ZZ−APから、primer Z−GS−AP Forとprimer Z−GS−AP Revを使用して、pET22b(+)−ZZ−APのインバースPCRを行い、pET22b(+)−Z−GS−APのPCR産物を得た。そして、OriginalのpET22b(+)−ZZ−APを酵素により消化した後、Lygation High kitを使用して、pET22b(+)−Z−APのPCR産物をセルフライゲーションさせ、「pET22b(+)−Z−GS−AP(7080bp)」を調製した(図6、配列番号28)。調製したpET22b(+)−Z−GS−APは、大腸菌JM109株に形質転換し、グリセロールストックとして−80℃で保存した。
<ZZ−GS−AP発現ベクターの構築>
[インバースPCR法を利用した遺伝子組み換えによるZZ−GS−AP発現ベクターの構築]
pET22b(+)−ZZ−AP(7278bp)から、インバースPCRにより、追加のGSリンカーを導入できるように、For.側のプライマーは、SGS挿入部+GGGGS(リンカー)+BAP配列と相補的に設計し、Rev.側のプライマーは、2番目のZ342配列のC末端側+GGG挿入部と相補的になるよう設計を行った(表3)。
pET22b(+)−ZZ−APから、primer ZZ−GS−AP Forとprimer ZZ−GS−AP Revを使用して、pET22b(+)−ZZ−APのインバースPCRを行い、pET22b(+)−ZZ−GS−APのPCR産物を得た。そして、OriginalのpET22b(+)−ZZ−APを酵素により消化した後、Lygation High kitを使用して、pET22b(+)−ZZ−APのPCR産物をセルフライゲーションさせ、「pET22b(+)−ZZ−GS−AP(7296bp)」を調製した(図7、配列番号29)。調製したpET22b(+)−ZZ−GS−APは、大腸菌JM109株に形質転換し、グリセロールストックとして−80℃で保存した。
各段階におけるPCRは、サーマルサイクラーを用い、表4,5に示す組成および反応条件のもと反応を行った。各種制限酵素処理、リン酸化、脱リン酸化、ライゲーションは、TaKaRaのカタログで推奨されている緩衝液、反応温度、反応時間で行った。表6,7にそれぞれの典型的な反応条件を示す。また、各種プラスミドベクターを、組換え用大腸菌JM109株および発現用大腸菌(Escherichia coli,BL21株)へ形質転換する際は、それぞれのコンピテントセルに各種プラスミドベクター0.30μLから0.60μLを添加し、サーマルサイクラーにより、表8の温度プログラムで熱処理を加えることで行った。
<(1)ZZ−APの発現>
[ZZ−APの発現]
ZZ−APは、大腸菌BL21株を用いて発現させた。まず、ZZ−AP遺伝子をコードしたプラスミドを大腸菌BL21株に形質転換し、グリセロールストックとした。そして、形質転換体をAnpicillin(100mg/L)を含む1LのLB培地中にて大量培養を行い、約2時間後、OD600=0.6となったところで、IPTGを終濃度0.1mMとなるよう添加し、一晩27℃で培養してZZ−APの発現を行った(配列番号30)。
[菌体の回収および洗浄]
得られた菌体を、遠心分離により集菌し、ショ糖buffer(50mM Tris−HCl(pH7.4)、1mM EDTA、20%(w/w)ショ糖)にて2度洗浄を行った。その後、Wash buffer(ショ糖buffer(pH7.4)、5mM MgCl)を用いて再懸濁させた。そして、液体窒素で凍結後、ディープフリーザで一日保存した。
[大腸菌の超音波破砕]
凍結させた大腸菌溶液を解凍し、その後、超音波処理により大腸菌を破砕した。遠心分離後、得られた無細胞抽出液を、0.45μmフィルタおよび0.22μmのフィルタを用いて濾過した。
[Ni−NTAカラムを利用したタンパク質精製]
His−tagを利用して、HisTrap HP column(5mL volume)により精製を行った。まず、Ni−NTA−平衡化buffer(20mM Tris−HCl(pH7.4)、500mM NaCl、35mM イミダゾール)で平衡化したカラムに、タンパク質溶液を流し、再度平衡化bufferで洗浄後、Ni−NTA−溶出buffer(20mM Tris−HCl(pH7.4)、500mM NaCl、500mM イミダゾール)を用いて、目的組み換えタンパク質の溶出を行った。精製後のタンパク質溶液は、PD−10カラムを用いて10mM Tris−HCl(pH8.0)にバッファ交換を行った。
Ni−NTAカラム精製では、精製度が不十分であることが考えられたため、さらなるカラムによる精製を検討した。APのpIは4.5であることから、通常中性のpHでは、負電荷を帯びていると考えられるため、HiTrap DEAE columnを用いて精製を行った。
[弱アニオン交換カラムを利用したタンパク質精製]
DEAE−平衡化buffer(20mM Tris−HCl(pH8.0))で平衡化したカラムに、タンパク質溶液を流した。また、この際、DEAEカラムに固定されずに溶出した溶液を残しておいた。再度平衡化bufferで洗浄後、DEAE−溶出buffer(20mM Tris−HCl(pH8.0)、1M NaCl)を使用し、NaCl濃度を緩やかに変化させるグラジエント溶出(NaCl濃度:0M→0.75M)により、目的タンパク質の溶出を行った。精製後のタンパク質溶液は、限外濾過(30kDa cut off)により濃縮した後、PD−10カラムを使用して、10mM Tris−HCl(pH8.0)にバッファ交換を行った。発現および精製の確認は、SDS−PAGEを利用し行った。
[BCA assayによる濃度算出]
アルカリ条件下でタンパク質は、Cu(II)をCu(I)に還元する作用がある。これを利用してBicinchoninic acidとCu(I)の錯体に由来する562nmの吸収波長から、タンパク質濃度の算出を行った。以後、特に述べない限り、タンパク質濃度の測定はBCA assayを利用して行っている。
<(2)Z−GS−APおよびZZ−GS−APの発現と酵素活性評価>
BAPに対し、GSリンカーをはさみZ342が1つまたは2つ導入されたZ−GS−APおよびZZ−GS−APの組換え体を発現し(配列番号31,32)、硫安分画、Ni−NTAカラム、カチオン交換カラムによる精製を行った。
[Z−GS−APおよびZZ−GS−APの発現]
Z−GS−APおよびZZ−GS−APは、形質転換した大腸菌BL21株のグリセロールストックを使用し、この形質転換体をAnpicillin(100mg/L)を含む1LのLB培地中にて大量培養を行った。約2時間後、OD600=0.6となったところで、IPTGを終濃度0.1mMとなるよう添加し、一晩15℃で培養し、目的タンパク質の発現を行った。
[菌体の回収および洗浄]
得られた菌体を、遠心分離により集菌し、TBSにて2度洗浄を行った。その後、Wash buffer(1×TBS(pH7.4)、5mM MgCl、3錠/30mLのprotease inhibitor cocktail Complete mini)を用いて再懸濁させた。そして、液体窒素で凍結後、ディープフリーザで一日保存した。
[大腸菌の超音波破砕]
凍結させた大腸菌溶液を解凍し、その後、超音波処理により大腸菌を破砕した。遠心分離後、得られた無細胞抽出液を、0.45μmフィルタおよび0.22μmのフィルタを用いて濾過した。
[硫安沈殿を利用した目的タンパク質の粗分画]
硫安沈殿を利用して、発現した組換えタンパク質の粗分画を行った。まず、40%飽和となるように、粉末の硫安を少しずつ加えた。30分間静置した後に、遠心を行い、目的タンパク質を含む上清を得た。同様に、硫安を60%飽和とし、目的タンパク質を沈殿させ、濃縮操作を行った。この沈殿物を、1×TBSを用いて懸濁させ、その後、PD−10カラムを用いて1×TBSにバッファ交換を行った。
[Ni−NTAカラムを利用したタンパク質精製]
His−tagを利用して、HisTrap HP column(1mL volume)により精製を行った。まず、Ni−NTA−平衡化buffer(20mM Tris−HCl(pH7.4)、500mM NaCl、35mM イミダゾール)で平衡化したカラムに、タンパク質溶液を流し、再度平衡化bufferで洗浄後、Ni−NTA−溶出buffer(20mM Tris−HCl(pH7.4)、500mM NaCl、500mM イミダゾール)を用いて、目的組み換えタンパク質の溶出を行った。精製後のタンパク質溶液は、PD MidiTrap(商標) G−25カラムを用いて50mM HEPES buffer(pH7.5)にバッファ交換した。
[カチオン交換カラムを利用したタンパク質精製]
Zに由来するタンパク質の正電荷を利用して、HiTrap SP column(GE Healthcare社)により精製を行った。まず、SP−平衡化buffer(50mM HEPES buffer(pH7.5))で平衡化させたカラムに、タンパク質溶液を流し、再度平衡化bufferで洗浄後、SP−溶出buffer(50mM HEPES buffer(pH8.0)、1M NaCl)を使用し、NaCl濃度を緩やかに変化させるグラジエント溶出により、目的タンパク質の溶出を行った。精製後のタンパク質溶液は、PD MidiTrap(商標) G−25カラムを用いて10mM Tris−HCl(pH8.0)にバッファ交換を行い、30kDa cut offの限外濾過カラムを使用して濃縮した。
調製したタンパク質の精製度をSDS−PAGEにより評価した。結果を、図8に示す。ZZ−GS−APに関しては部分的に切断された夾雑タンパク質の存在が示唆されたものの、目的の組換えタンパク質である融合タンパク質Z−GS−APおよびZZ−GS−APが得られた。
また、基質溶液(1M Tris−HCl(pH8.0),1mM p−Nitro Phenyl phosphate)1mLに対し、1μMの各種BAP溶液10μLを加え、十分に撹拌した後、410nmの吸収の時間変化を測定した。得られた傾きを初期活性として、各種BAPの酵素活性の比較を行った。Z−GS−APおよびZZ−GS−APの酵素活性を測定した結果を、図9に示す。図9からわかるように、遺伝子工学的にAPに対してZを1つ導入しても(Z−GS−AP)酵素活性に影響を与えず、アルカリホスファターゼ活性の低下は見られないが、Zを2つ導入すると(ZZ−GS−AP)酵素活性が若干低下した。これは、電気泳動結果でわかるように不純物が含まれるために比活性が低めに測定されたためと考えられる。
<(3)FITC標識Z−GS−APおよびZZ−GS−APの細胞免疲蛍光染色によるHER2結合能力評価>
Z−GS−APおよびZZ−GS−APに対して蛍光基を標識する手法として、Z342の機能に影響を与えないように、Z−GS−APおよびZZ−GS−APに導入されているK−tagを利用して、微生物由来トランスグルタミナーゼ(MTG)により部位特異的に蛍光基を架橋する手法を選択し、選抜した基質配列に蛍光基を導入したFITC−SSYALQMRを使用した。調製したFITC標識Z−GS−APおよびZZ−GS−APのFITCラベル量は、それぞれAP二量体に対し2.2個、3.2個であつた。細胞の免疫蛍光染色実験では、陽性細胞としてSK−BR−3細胞株(HER2発現量3+相当)を使用し、陰性細胞としてHeLa細胞株(HER2発現量0相当)を使用した。HeLa細胞とSK−BR−3細胞に対して、83.3nMとなるように調製したFITC標識Z−GS−APおよびZZ−GS−AP溶液を300μLずつ滴下し、37℃で1時間静置した。ホルマリンによる固定処理、DAPIによる核染色を行った後、蛍光顕微鏡を用いてHER2に対する免疫蛍光染色の観察を行った。図10に結果を示す。HER2陽性のSK−BR−3細胞に対してのみ緑色の蛍光が観察され、Z−GS−AP、ZZ−GS−AP共にHER2を特異的に染色可能であることがわかった。
<(4)Z−GS−APおよびZZ−GS−APの無細胞抽出液のWestern BlotによるHER2特異的結合力評価>
Z−GS−APおよびZZ−GS−APがHER2特異的に結合しているかどうか、また両者のHER2検出能力をWestern Blot法により評価した。ネイティブの状態でタンパク質の分画を行うことが可能なBlue−Native PAGE(BN−PAGE)を利用し、SK−BR−3細胞およびHeLa細胞の無細胞抽出液の泳動を行った。セミドライ式のブロッティングにより、BN−PAGE後のゲルからPVDF膜にタンパク質を転写後、2.09nMとなるように調製したZ−GS−APおよびZZ−GS−APによる免疫反応を行った。内在性のAP活性を抑えるため2mMのLevamisoleを添加した0.02mMのECF substrate溶液を用いて染色を行った。結果を図11に示す。実験条件は異なるが、市販のBiotin−Affibodyを使用した実験で確認されるHER2と思われる90kDa付近のバンドが、Z−GS−AP、ZZ−GS−APでも確認された。非特異的なバンドも確認されないことから両者ともにHER2に対して特異的なアフィニティを有していることがわかった。また、Z−GS−APの方がZZ−GS−APよりも検出感度が高いことを示唆する結果が得られ、精製度、比活性も考慮して、以後の実験では標識酵素としてZ−GS−APを選択した。
<(5)(Z−GS−AP)−DNAの調製>
[Z−QG−dUTPの合成・精製]
まず、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)4mL中にて、100mM N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、100mM N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、50mM Z−QGを、室温(調製した日は18〜22℃程度)で20時間反応させることによって、NHS化Z−QG(50mM)を調製した。一方、50mM 5−(3−aminoallyl)−dUTP(以下、aminoallyl−dUTPと略記、SIGMA社製)を含む10mM Tris−HCl(pH7.5)溶液(Ambion製)16μLと200mM ホウ酸緩衝液(pH8.8)40μL、滅菌水16μLとを混合し、10mM aminoallyl−dUTP溶液を80μL調製した。この溶液に対して、上記で調製したNHS化Z−QG溶液を80μL添加し、25℃で一晩反応させた。反応終了後、サンプルをMilli−Qで10倍希釈し、HPLC(日本分光製、高速液体クロマトグラフ・ポンプ:TRI ROTAR−V型、バリアブル・ループ・インジェクタ:VL−613型、紫外可視分光検出器:UVIDEC−100−IV型)によって、表9に示す条件で精製を行った。生成物の同定はMALDI TOF−MS(BRUKER DALTONICS製、autoflex III)によって行った。この際、3−ヒドロキシピコリン酸(3−HPA)をマトリックスとして使用した。
Z−QG−dUTPを合成した後、逆相HPLCを行ったところ、aminoallyl−dUTPの場合と比較して、疎水側に新たなピークが出現しており、このピークがZ−QG−dUTPであると推測された。そこで、保持時間19.1分のピークを回収してMALDI TOF−MS分析を行ったところ、841.46のピークが確認され、理論分子量の842.13と良く一致した結果が得られたため、Z−QG−dUTPの合成が示された。
[(Z−GS−AP)−DNAの調製]
DNAを構成する4つのヌクレオチドのうちdTTPに関して、「dTTP+Z−QG−dUTP」濃度を一定(0.4mM)とし、Z−QG−dUTPの濃度比0,10,40,80%と変化させPCRを行うことで、異なる割合でZ−QG基が導入された、(X%Z−QG)−DNA(X=0,10,40,80)を調製した。FITC修飾primerを使用し、5’端が蛍光標識された310bp(配列番号33)、960bp(配列番号34)の足場DNAをそれぞれ調製した。アガロースゲル電気泳動によりDNAの生成を確認した結果、960bpの(80%Z−QG)−DNAのみ得られなかった。これは、本来の基質でない修飾ヌクレオチドの割合が高まることで、伸長反応を続けられない配列部位が生じたためと考えられる。
調製した各種(Z−QG)−DNA(10ng/μL、310bp:52.2nM、960bp:16.9nM)に対し、約3μMのZ−GS−APを、20mM Tris−HCl buffer(pH8.0)中で0.01U/mLのMTG(味の素社製)と混合し、37℃で1時間架橋反応を行った。約3μMのZ−GS−APは、(40%Z−QG)−DNAに理論的に取込まれるZ−QG基のモル濃度と等しくなるように設定している。アガロースゲル電気泳動で反応の進行を評価した。結果を図12に示す。この結果より、MTG存在下でのみ架橋反応が進行し、高分子量側にバンドがシフトしている様子が確認され、(Z−GS−AP)−DNAを調製することができた。
<(6)各種(Z−GS−AP)−DNAのアニオン交換カラムを利用した精製およびZ−GS−APラベル量評価>
(Z−QG)−DNAと、Z−GS−AP、MTGはpIが異なり表面電荷に差がある。この性質を利用して、アニオン交換カラムであるHiTrap Q HPを用いて精製を行った。Q−溶出buffer(20mM Tris−HCl(pH7.5)、1M NaCl)を使用し、塩濃度勾配をかけ目的の(Z−GS−AP)−DNAの溶出を行った。参照実験として、Z−GS−APのみをカラムにかけ、Z−GS−APのピーク位置の確認を行った。実験で得られたクロマトグラムを図13,14に示す。Z−QG導入量の増大に伴いZ−GS−APに由来する保持時間1100秒付近のピークが減少し、新たにピークが現れることが確認された。また、新たなピークはZ−QG導入量の増大に伴いZ−GS−AP側に移動していることから、Z−GS−APのラベル量が増大しDNAの強い負電荷を和らげることで溶出時間が早まったと考えられる。
DNAに対するZ−GS−AP標識数を定量的に評価するため、精製後に得られた(Z−GS−AP)−DNAに関して、5’末端に修飾されたFITCによる蛍光強度と、Z−GS−APに由来する酵素活性から、Z−GS−APラベル量の定量を行った。結果を図15,16に示す。Z−GS−APラベル量が増大し、DNA鎖長310bpでは最大約40分子、DNA鎖長960bpでは最大約77分子のZ−GS−APがラベルされていることがわかった。
<(7)(Z−GS−AP)−DNAのシグナル増幅(DNA等モル)および多価効果の検討(Z−GS−AP等モル)>
ここでは、プローブ中の(a)酵素数増加によるシグナル増幅、(b)Z342の多価効果による見かけの親和力増大を狙いとした。そこで、調製した(Z−GS−AP)−DNAが上述の2つの機能を兼ね備えたプローブとなっているかを、HER2−Fc Chimeraタンパク質を用いたELISAにより評価した。(a)の効果を検討するため、HER2タンパク質100ngを固定化し、DNAモル濃度0.258nMに統一してELISAを行った。また、(b)の効果を検討するため、HER2タンパク質100ng〜0.025ngの希釈系列を固定化し、Z−GS−APモル濃度を1.0nMに統一してELISAを行った。図17の結果より、(a)のシグナル増幅の効果に関して、Z−QG導入量、DNA鎖長の増大に応じてシグナルが増幅する結果を得ることができた。また、図18には310bpの(Z−GS−AP)−DNAの結果のみ示すが、(b)の多価効果に関しても、低濃度領域でも免疫反応が進行することがわかり、Z−GS−AP単体と比較して検出感度が10倍程度向上した。したがって、両実験の結果より本実施例のプローブの有用性が示される結果となった。
以上のように、HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体と標識酵素を基本ユニット(Z−GS−AP)とする融合タンパク質をDNA上に複数提示した新たな分子プローブを用いて、Z−GS−AP単体よりも10倍程度高い検出感度で目的抗原を検出することができた。

Claims (3)

  1. 複数のグルタミン(Gln)残基を有する高分子担体に、リシン(Lys)残基を有する複数の融合タンパク質が結合されて構成されており、
    前記複数のグルタミン(Gln)残基を有する高分子担体は、下記式(5)のヌクレオシド三リン酸誘導体が複数導入された核酸であり、
    前記融合タンパク質は、HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体と標識酵素とが融合されたものであり、リシン(Lys)残基を含むタグを有することを特徴とするHER2タンパク質検出プローブ。
    (式(5)中、XおよびYは、それぞれ独立して、エテニレン基、−(CO)−または−(CO)−(ここで、n=2,4,8,12,24)基で置換されていてもよい、炭素数1〜48のアルキレン基または炭素数2〜48のアルケニレン基であり、Zは、ジニトロフェニル基またはL−3,4−ジヒドロキシフェニル基で置換されていてもよい、炭素数1〜48のアルキル基、炭素数1〜48のアルコキシ基、炭素数6〜48のアリール基、炭素数6〜48のアリールオキシ基、炭素数7〜48のアリールアルキル基または炭素数7〜48のアリールアルキルオキシ基である。また、Y,Zは独立してLys以外のアミノ酸により少なくとも一方が置換されていてもよい。Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。mは0または1である。)
  2. トランスグルタミナーゼ(TGase)を用いて、複数のグルタミン(Gln)残基を有する高分子担体に、リシン(Lys)残基を有する複数の融合タンパク質を結合し、
    前記複数のグルタミン(Gln)残基を有する高分子担体は、下記式(5)のヌクレオシド三リン酸誘導体が複数導入された核酸であり、
    前記融合タンパク質は、HER2タンパク質に結合可能なプロテインA変異体と標識酵素とが融合されたものであり、リシン(Lys)残基を含むタグを有することを特徴とするHER2タンパク質検出プローブの製造方法。
    (式(5)中、XおよびYは、それぞれ独立して、エテニレン基、−(CO)−または−(CO)−(ここで、n=2,4,8,12,24)基で置換されていてもよい、炭素数1〜48のアルキレン基または炭素数2〜48のアルケニレン基であり、Zは、ジニトロフェニル基またはL−3,4−ジヒドロキシフェニル基で置換されていてもよい、炭素数1〜48のアルキル基、炭素数1〜48のアルコキシ基、炭素数6〜48のアリール基、炭素数6〜48のアリールオキシ基、炭素数7〜48のアリールアルキル基または炭素数7〜48のアリールアルキルオキシ基である。また、Y,Zは独立してLys以外のアミノ酸により少なくとも一方が置換されていてもよい。Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。mは0または1である。)
  3. HER2タンパク質の検出方法であって、
    請求項1に記載のHER2タンパク質検出プローブと、対象物中に存在するHER2タンパク質とを結合させ、結合している前記HER2タンパク質検出プローブを、前記標識酵素により検出することを特徴とするHER2タンパク質の検出方法。
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