JP6146908B2 - 表面性状に優れたステンレス鋼とその製造方法 - Google Patents
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Description
Cはオーステナイト安定化元素であるが、多量に存在すると、CrおよびMo等と結合して炭化物を形成し、母材に含まれる固溶CrおよびMo量を低下させ、耐食性を劣化させる。そのため、C含有量は0.1%以下とした。なお、好ましくは0.08%以下であり、より好ましくは0.07%である。
Siは本発明で、とても重要な元素である。Siは脱酸に有効な元素であり、酸素濃度を0.01%以下に制御するためには、0.2%は必要である。さらに、CaO−SiO2−MgO−Al2O3−F系スラグ中のCaOやMgOを還元し、溶鋼中にCaやMgをそれぞれ0.0001%以上供給する役割もある。その観点からも0.2%は必要である。一方、1%を超えて含有すると、スラグ中のCaOやMgOを還元しすぎてしまい、Ca、Mgを0.01%超供給してしまう。その結果Caは、CaO単体の介在物を形成させてしまい、製品に表面欠陥を発生させてしまう。また、Mgはスラブ中にMg気泡を形成して表面欠陥をもたらす危険がある。そのため、Si含有量は、0.2%〜1%と規定した。好ましくは0.4〜0.8%である。
Mnは脱酸に有効な元素である。Mn含有量が、0.2%未満では、その効果が十分に得られず、逆に、2%を超えて存在すると、シグマ相の生成を促進し、脆化を招く。そのため、Mn含有量は0.2%〜2%と規定した。
Sは熱間加工性を阻害する元素であるため、極力低下させるべきであり、S含有量は0.005%以下とした。好ましくは0.003%以下である。さらに好ましくは0.002%以下である。そのためには、AODおよび/またはVODにてスラグを用いて脱硫する必要がある。スラグの塩基度C/Sを2〜5未満として、溶鋼中にSiを0.2%〜1%含有させることで脱硫することが可能であり、本範囲を満たすことが出来る。
Niは塩化物を含む溶液環境における耐孔食性、耐隙間腐食性ならびに耐応力腐食割れ性を改善する効果を有する。しかしながら、その効果を得る為には、3%以上の必要である。しかしながら、その効果は、15%以下の添加で十分であり、それ以上ではコスト上昇を招くため好ましくない。そこで、Ni含有量は、3%〜15%と規定した。
Crは、耐食性を確保するために必要不可欠な不動態皮膜を、鋼鈑表面に形成させる元素であり、耐酸性、耐孔食性、耐隙間腐食性ならびに耐応力腐食割れ性を改善するための母材の構成成分として、最も重量な元素である、しかしながら、Cr含有量が13%未満では、十分な耐食性が得られない。逆に、含有量が20%を超えると、シグマ相を生成し脆化を招く。以上の理由から、Cr含有量は13%〜20%と規定した。
Alは、クラスター起因の表面欠陥をもたらすMgO・Al2O3を50個数%以上形成させるとともに、アルミナ介在物を形成する元素であるため、極力低減せねばならない元素である。さらには、溶接ビード部の品質を劣化させる元素でもある。そのため、Al含有量は0.005%未満と規定した。好ましくは0.004%以下である。この範囲に制御するには、もちろんAlを脱酸剤として用いないことが最重要である。
Mgは鋼中の非金属介在物の組成を、クラスターを形成せず、表面品質に悪影響の無い酸化物系MgOあるいはCaO−SiO2−Al2O3−MgO系酸化物に制御するために有効な元素である。その効果は、含有量が0.0001%未満では得られず、逆に、0.01%を超えて含有させると、スラブ中にMg気泡を形成するため、最終製品に表面欠陥をもたらす。そのため、Mg含有量は、0.0001%〜0.01%と規定した。好ましくは、0.0002〜0.005%である。より好ましくは、0.0003〜0.003%である。
2(MgO)+Si=(SiO2)+2Mg …(1)
括弧内はスラグ中成分を示し、下線は溶鋼中成分を示す。
上記の範囲にMgを制御するには、スラグ塩基度を2〜5未満に制御するとともに、スラグ中MgO濃度を3〜15%に調整すればよい。
Caは鋼中の非金属介在物の組成を、クラスターを形成せず、表面品質に悪影響の無いCaO−SiO2−Al2O3−MgO系酸化物に制御するために有効な元素である。その効果は、含有量が0.0001%未満では得られず、逆に、0.01%を超えて含有させると、CaO単体の介在物が形成し、最終製品に表面欠陥をもたらす。そのためCa含有量は、0.0001%〜0.01%と規定した。好ましくは、0.0002〜0.005%である。より好ましくは、0.0003〜0.003%である。
溶鋼中に効果的にCaを添加させるには、下記の反応を利用することが好ましい。
2(CaO)+Si=(SiO2)+2Ca …(2)
上記の範囲にCaを制御するには、スラグ塩基度を2〜5未満に制御すればよい。
Oは、鋼中に0.01%を超えて存在すると、脱硫を阻害し、溶鋼中S濃度が0.005%を超えてしまう。逆に0.0005%未満と低くなると、Siがスラグ中のMgOやCaOを還元する能力を高めすぎてしまう。つまり、上記の(1)および(2)式の反応が進行しすぎてしまうことにより、溶鋼中のMgやCaがそれぞれ、0.01%を超えて高くなってしまう。そのため、O含有量は、0.0005%〜0.01%と規定した。この範囲に制御するためには、Si濃度を0.2%〜1%に調整することと、スラグの塩基度を2〜5未満に調整することが必要である。好ましくは、0.0006〜0.005%未満であり、さらに好ましくは、0.001〜0.004%である。
Cu:1〜5%
Cuは、加工効果しにくくして成形性を高めたるため、有用な元素である。さらに、抗菌性や硫酸に対する耐食性を向上する元素でもある。しかしながら、多量に添加すると熱間加工性が低下すると共に靱性も低下する。そのため、1〜5%が望ましい。より望ましくは2〜4%である。なお、精錬に及ぼす作用として、Cuは溶鋼中Mgの溶解度を高め、MgO介在物を形成しやすくする作用を持つ。同時に逆の側面では、Cuは溶鋼中のAlの作用を強くするため、Mgと反応して、MgO・Al2O3スピネル介在物を形成し易くする作用もある。そのため、Cu含有鋼に対しては、本発明の適用は極めて効果的である。
Moは耐食性を向上する元素である。5%を超えると、σ相の形成傾向が強まり、脆化する傾向がある。そのため、5%以下に留めるのが望ましい。好ましくは3%以下である。
Nbは析出硬化型ステンレス鋼に必要な元素であり、硬化に対して寄与するとともに、Cを固着して耐食性を高める。このような効果を得るためには、0.05%以上必要である。一方、これらの元素の含有量が過剰になると、固溶化熱処理温度においてフェライトが多く形成されてしまい、時効硬化後の硬さが低下してしまう。したがって、これらの元素の総含有量は、1%以下とすべきである。よって、0.05〜1%が望ましい範囲である。好ましくは0.1〜0.7%である。
Nは、侵入型元素であり、鋼の硬さ及び耐食性を向上させるので、0.01%以上の添加が好ましい。しかしながら、N含有量が過剰になると、Nb、Crと共に窒化物を形成し、加工性に悪影響を及ぼす。したがって、N含有量は、0.05%以下である必要がある。よって、0.01%〜0.05%が望ましい。好ましくは、0.015〜0.04%である。
Bは900℃程度の比較的低温側での熱間加工性を改善する元素である。しかしながら、0.01%を超えての添加は、1200℃程度の比較的高温側での熱間加工性を阻害する。そのため、添加は0.01%以下に留めるのが良い。好ましくは0.005%以下である。
本発明では、非金属介在物組成は、MgO、MgO・Al2O3、CaO−SiO2−MgO−Al2O3系酸化物の1種または2種以上を含み、MgO・Al2O3を個数比率で50%以下であることを好ましい態様としている。以下、非金属介在物の個数比率限定の根拠を示す。
本発明に係るステンレス鋼は、鋼のSi、Al、Mg、Caの含有量に従い、MgO、MgO・Al2O3、CaO−SiO2−MgO−Al2O3系酸化物のうち1種または2種以上含む。これらの介在物を含有させる理由は、まず、MgOは融点が2800℃と高いために、連続鋳造機の浸漬ノズル内で焼結しないため付着堆積しない。そのため、表面欠陥を引き起こさない。CaO−SiO2−MgO−Al2O3系酸化物は、融点が1300℃程度と低いため、これも焼結しない。そのため、表面欠陥を引き起こさない。
MgO・Al2O3は表面欠陥を引き起こす介在物であるので、極力少ない方が好ましい。ただし、その含有量が個数割合で50%以下であれば、MgO・Al2O3はノズル内に付着しないことから、個数比率で50%以下と定めた。
MgO:10〜40%、Al 2 O 3 :60〜90%
MgO・Al2O3は比較的広い固溶体を持つ化合物である。上記の範囲で固溶体となるので、このように定めた。
CaO:20〜60%、SiO 2 :10〜40%、Al 2 O 3 :30%以下、MgO:5〜50%
基本的には、CaO−SiO2−Al2O3−MgO系酸化物の融点を1300℃程度以下に保つために、上記範囲に設定した。なお、CaOが20%未満では融点が高くなり、CaOが60%を超えるとCaO介在物が共存する。SiO2が10%未満ならびに40%超では、融点が高くなってしまう。Al2O3が30%超では純粋なAl2O3介在物が共存する。MgOが5%未満ならびに40%超では、融点が高くなってしまう。以上から、CaO:20〜60%、SiO2:10〜40%、Al2O3:30%以下、MgO:5〜50%とした。
本発明では、ステンレス鋼の製造方法も提案する。まず、原料を溶解し、Ni:3〜15%、Cr:13〜20%を含有するステンレス溶鋼を溶製し、次いで、AODおよび/またはVODにおいて脱炭した後に、石灰、蛍石、フェロシリコン合金を投入しCaO/SiO2比:2〜5未満、MgO:3〜15%、Al2O3:5%未満からなるCaO−SiO2−MgO−Al2O3−F系スラグを用いて溶鋼を精錬する方法である。これによれば、本発明のステンレス溶鋼中S濃度を効果的に0.005%以下まで低下させることが可能である。さらに、非金属介在物もMgO、MgO・Al2O3、CaO−SiO2−MgO−Al2O3系酸化物の1種または2種以上を含み、MgO・Al2O3を個数比率で50%以下に制御して、最終製品での表面欠陥を防止して良好な表面性状を確保することが可能となる。
CaO/SiO 2 比:2〜5未満
合金溶湯を効率よく脱酸、脱硫し、かつ非金属介在物組成を本発明の範囲に制御するためには、スラグのCaO/SiO2比を制御する必要がある。この比の値が5を超えると、スラグ中CaOの活量が高くなり、(2)式の反応が進行しすぎる。そのため、溶鋼中に還元されるCa濃度が0.01%を超えて高くなり、CaO単体の非金属介在物が生成し、ノズル内に付着して、最終製品に表面欠陥をもたらす。そのため、上限を5(未満)とした。一方、CaO/SiO2比が2未満になると、脱酸、脱硫が進まずに、本発明におけるS濃度、O濃度の範囲に制御することができなくなる。そのため、下限を2とした。このようなCaO/SiO2比に制御するため、CaO成分として、石灰または蛍石を添加することで調整可能である。一方、SiO2成分は脱酸剤であるSiの酸化により得ることが出来る。すなわち、Cr還元期にFeSi合金を投入して、Cr酸化物を還元すると、スラグ中にはSiO2シリカが形成される。限定はしないが、不足があれば、SiO2成分として珪砂を適宜添加しても構わない。したがって、塩基度は2〜5未満と定めた。好ましくは、2.7超〜4.9である。
スラグ中のMgOは、溶鋼中に含まれるMg濃度を請求項に記載される濃度範囲に制御するために、重要な元素であるとともに、非金属介在物を本発明に好ましい組成に制御するためにも重要な元素である。そこで、下限を3%とした。一方、MgO濃度が15%を超えると、(2)式の反応が進行しすぎてしまい、溶鋼中のMg濃度が高くなり、スラブ中にMg気泡を形成するため、最終製品に表面欠陥をもたらす。そこで、MgO濃度の上限を15%とした。スラグ中のMgOは、AOD精錬、あるいはVOD精錬する際に使用されるドロマイトレンガ、またはマグクロレンガがスラグ中に溶け出すことで、所定の範囲となる。あるいは、所定の範囲に制御するため、ドロマイトレンガ、またはマグクロレンガの廃レンガを添加してもよい。
スラグ中のAl2O3は、高いと溶鋼中のAl濃度も0.005%以上と高くなり、MgO・Al2O3が50個数%を超えて生成させる。また、アルミナ介在物も形成してしまうため、スラグ中のAl2O3濃度は極力下げる必要がある。そのため、上限を5%(未満)とした。なお、上限を満足させるためには、Alを脱酸剤として用いないことが重要である。
容量60トンの電気炉により、フェロニッケル、純ニッケル、フェロクロム、鉄屑、ステンレス屑、Fe−Ni合金屑などを原料として、溶解した。一部の鋼種ではFeMo、FeNbあるいはCuも原料として添加した。その後、AODまたはVODにおいてCを除去するための酸素吹精(酸化精錬)を行い、石灰石および蛍石を投入し、CaO−SiO2−Al2O3−MgO−F系スラグを生成させ、さらに、FeSi合金を投入し、Cr還元を行い、次いで脱酸した。その後、さらにAr撹拌して脱硫を進めた。AOD、VODではマグクロレンガをライニングした。その後、取鍋に出鋼して、温度調整ならびに成分調整を行い、連続鋳造機によりスラブを製造した。
1)合金の化学成分およびスラグ組成:蛍光X線分析装置を用いて定量分析を行い、合金の酸素濃度は不活性ガスインパルス融解赤外線吸収法で定量分析を行った。
2)非金属介在物組成:鋳込み開始直後、タンディッシュにて採取したサンプルを鏡面研磨し、SEM−EDSを用いて、サイズ5μm以上の介在物を20点ランダムに測定した。
3)スピネル介在物の個数比率:上記2)の測定の結果から個数比率を評価した。
4)品質評価:圧延により製造した上記薄板表面を目視で観察し、非金属介在物起因の表面欠陥(板幅中央近傍に線状の疵が発生、線状欠陥)ならびに熱間加工性低下起因の表面欠陥(板のエッジ部にめくれ状に疵が発生、耳割れ)の発生有無を判定した。コイル全長を観察して、その欠陥数をそれぞれ示した。
Claims (6)
- C:0.1%以下、Si:0.2〜1%、Mn:0.2〜2%、S:0.005%以下、Ni:3〜15%、Cr:13〜20%、Al:0.005%未満、Mg:0.0001〜0.01%、Ca:0.0001〜0.01%、O:0.0005〜0.01%、残部がFeおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼において、
該ステンレス鋼中に含まれる非金属介在物が、MgO、MgO・Al2O3、CaO−SiO2−MgO−Al2O3系酸化物の1種または2種以上を含み、
前記非金属介在物のうち長さ5μm以上の物が任意の1cm2あたり100個以下であり、
前記非金属介在物のうちMgO・Al2O3が個数比率で50%以下であることを特徴とするステンレス鋼。 - 前記非金属介在物のうちMgO・Al2O3が個数比率で20%以下であることを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼。
- 前記非金属介在物のうちMgO・Al2O3が個数比率で0%であることを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼。
- 前記非金属介在物のうち、MgO・Al2O3はMgO:10〜40%、Al2O3:60〜90%であり、CaO−SiO2−Al2O3−MgO系酸化物は、CaO:20〜60%、SiO2:10〜40%、Al2O3:30%以下、MgO:5〜50%であることを特徴とする請求項1または2に記載のステンレス鋼。
- さらに、Mo:5%以下、Cu:1〜5%、Nb:0.05〜1%、N:0.01〜0.05%、B:0.01%以下の1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のステンレス鋼。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のステンレス鋼の製造方法であって、原料を溶解し、Ni:3〜15%、Cr:13〜20%を含有するステンレス溶鋼を溶製し、次いで、AODおよび/またはVODにおいて脱炭した後に、石灰、蛍石、フェロシリコン合金を投入しCaO/SiO2比:2〜5未満、MgO:3〜15%、Al2O3:5%未満からなるCaO−SiO2−MgO−Al2O3−F系スラグを用い、C:0.1%以下、Si:0.2〜1%、Mn:0.2〜2%、S:0.005%以下、Ni:3〜15%、Cr:13〜20%、Al:0.005%未満、Mg:0.0001〜0.01%、Ca:0.0001〜0.01%、O:0.0005〜0.01%、残部がFeおよび不可避的不純物からなるステンレス溶鋼に調整することを特徴とするステンレス鋼の製造方法。
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