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JP6159569B2 - 金属化合物 - Google Patents
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Description

本発明は、金属化合物に関する。より詳しくは、金属原子と酸素原子とが特定の配置となるよう配位した構造を有する新規な金属化合物に関する。
金属原子と酸素原子とが配位した構造を有する金属化合物は、金属原子の種類やその配位状態によって異なる特性を有し、様々な用途への使用が期待されている。中でも、ヘテロ原子を中心とし、ポリ原子がヘテロ原子に酸素を介して配位した構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造を1つ以上有する金属化合物には、酸化反応や酸塩基反応等の有機反応用触媒として使用できることが知られているものがある。
ヘテロポリオキソメタレート化合物においては、特に、ケギン型へテロポリオキソメタレートの構造中にあるべき原子が2つ欠けている欠損構造を有し、その欠損部位に1種類以上の金属元素を2個含有するもの、すなわちポリ原子が1種類以上の他の金属元素により2つ置換された二置換型ヘテロポリオキソメタレートが、一置換型へテロポリオキソメタレートや三置換型へテロポリオキソメタレートに比較して特異な酸化触媒活性を示すことが知られている(非特許文献1参照)。ヘテロ元素がケイ素であるヘテロポリオキソメタレートの二欠損構造部位にTiを導入した二置換型ポリオキソメタレートについては、該化合物が二欠損型ポリオキソメタレートに2個のTiが2個の酸素原子を介して二量化した構造を有していることがX線結晶構造解析により明らかにされている(非特許文献2参照)。
また、二欠損型及び/又は三欠損構造部位を有するヘテロポリオキソメタレートアニオンと、バナジウム、タンタル、ニオブ、アンチモン、ビスマス、クロム、モリブデン、セレン、テルル、レニウム、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、白金、イリジウム、銀、金、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、ゲルマニウム、スズおよびランタノイドからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む触媒により、エチレン性二重結合を酸化剤により酸化させて、目的のエポキシ化合物を得ることができることが開示されている(特許文献1参照)。その他、二欠損型ポリオキソメタレートに、希土類、4族、5族、6族、7族、および9、10族のニッケル、パラジウム、イリジウム、白金からなる群から選ばれた元素を欠損部位に導入し、エチレン性二重結合を酸素により酸化させて、目的のエポキシ化合物を得ることができることが開示されている(特許文献2参照)。
国際公開第02/072257号公報 特開2003−64007号公報
Y.Nishiyama、Y.Nakagawa、N.Mizuno、「アンゲバンテ ヘミー インターナショナル エディション(Angew.Chem.Int.Ed.)」(独国)、2001年、第40巻、p.3639。 Y.Goto、K.Kamata、K.Yamaguchi、K.Uehara、S.Hikichi、N.Mizuno、「インオーガニック ケミストリー(Inorg.Chem.)」(米国)、2006年、第45巻、p.2347。
上記のように、様々な構造のポリオキソメタレート化合物が知られている。多様な構造を有する前周期遷移金属酸化物のアニオン性クラスターであるポリオキソメタレートは、高い安定性と容易に調整可能な化学的・物理的な性質により、触媒・医薬・機能材料など様々な分野で魅力的な物質である。このため、更に新たな構造を有するポリオキソメタレート化合物の開発が求められている。
本発明は上記現状に鑑みてなされたものであり、新しい機能性材料等として有望な新規な金属化合物を提供することを目的とするものである。
本発明者は、ヘテロ原子に対してポリ原子が酸素原子を介して配位した構造を有する欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を少なくとも1つ含む金属化合物について検討し、複数の新たな金属化合物を見出した。これらの化合物は、いずれも、一欠損構造部位、二欠損構造部位及び三欠損構造部位からなる群より選択される少なくとも1つの欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を有するとともに、特定の元素のヘテロ原子、並びに、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子であって特定の元素のものを有することを特徴とする金属化合物である。このような構造的特徴を有する金属化合物はこれまでに知られておらず、本発明において初めて見出された新規な構造を有する金属化合物である。
そして、このような構造的特徴に有する金属化合物が、磁性材料等としての利用が期待される有望な化合物であることを見出し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を少なくとも1つ有する金属化合物であって、前記ヘテロポリオキソメタレート化合物は、ヘテロ原子に対してポリ原子が酸素原子を介して配位した構造を有し、前記金属化合物は、一欠損構造部位、二欠損構造部位及び三欠損構造部位からなる群より選択される少なくとも1つの欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を有し、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を含み、前記一欠損又は二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物は、P、Si、Ge及びZnからなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含み、前記三欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物は、P、Si及びGeからなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含み、前記金属原子は、ランタノイド、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Znからなる群より選択される少なくとも1種の原子であることを特徴とする金属化合物である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の金属化合物は、ヘテロ原子に対してポリ原子が酸素原子を介して配位した構造を有する欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を少なくとも1つ含む金属化合物である。
大きな負電荷を有する欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物は金属カチオンと高い親和性を示すことから、多座配位子として利用することで、欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を1つ含む化合物や、該構造部位にサンドイッチされた単核や多核の金属酸化物コアを合成することができる。これらの金属核を利用して、ヘテロポリオキソメタレート化合物は独自の触媒的、光化学的、電気化学的、磁気的な特性を示すこととなる。
上記欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位は、欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物に由来するものである限り、欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物の構造をそのまま保持しているものであってもよく、欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物の構造が変化したものであってもよい。また、欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位の数は、1つ以上であれば、特に制限されないが、欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を2つ以上有することは本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、上記欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位とは、欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物の構造の一部であって、ヘテロ原子、ポリ原子及び酸素原子によって構成される構造部位である。
上記欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物は、一欠損構造部位、二欠損構造部位及び三欠損構造部位からなる群より選択される少なくとも1つの欠損構造部位を有するものである。本発明の金属化合物は、欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を少なくとも1つ有するが、2つ以上有する場合、これら複数の欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位は、ポリ原子の欠損数が同じものであってもよく、異なるものであってもよい。好ましくは、ポリ原子の欠損数が同じであるものである。
上記欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物のうち、一欠損又は二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物は、P、Si、Ge及びZnからなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含み、三欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物は、P、Si及びGeからなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含むものである。
一欠損又は二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位のうち、本発明の金属化合物が有する構造部位としてより好ましいのは、二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位である。また、一欠損又は二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位が有するヘテロ原子としては、P、Si及びGeからなる群より選択される少なくとも1種の原子が好ましい。
本発明の金属化合物は、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子として、ランタノイド、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Znからなる群より選択される少なくとも1種の原子を有するものである。
本発明の多核金属化合物が、一欠損又は二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を有する場合、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子としては、ランタノイド、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Znからなる群より選択される少なくとも1種の原子が好ましい。より好ましくは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Er、Yb、Lu、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Znからなる群より選択される少なくとも1種の原子である。
本発明の金属化合物が、三欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を有する場合、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子としては、ランタノイド、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Znからなる群より選択される少なくとも1種の原子が好ましい。より好ましくは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Er、Yb、Lu、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Znからなる群より選択される少なくとも1種の原子である。
本発明の金属化合物は、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を1種有するものであってもよく、2種以上有するものであってもよいが、本発明の金属化合物がヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子としてランタノイド原子を2つ以上有する場合、後述する磁性材料としての特性の点から、2種以上の金属原子を有する異核金属化合物であることが好ましい。より好ましくは、2種以上のランタノイド原子を有する異核金属化合物である。
本発明の金属化合物としては、上記のものの中でも、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を1種又は2種有するものが好ましい。
本発明の金属化合物において、ポリ原子は、周期律表第5及び6族の元素の群より選択される少なくとも1種の原子であることが好ましい。周期律表第5及び6族の元素としては、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wが挙げられる。これらの中でも、V、Mo、Wからなる群より選択される少なくとも1種の原子がより好ましい。
本発明の金属化合物は、上記金属原子のうち少なくとも1つが、1つのヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位当たり1つのポリ原子とのみ1つの酸素原子を介して配位し、かつ、いずれの上記金属原子も、金属原子同士が1つの酸素原子を介して配位した構造を有さない構造(以下、構造aと記載)、上記金属原子のうち少なくとも1つが、2つ以上のヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位中のポリ原子と1つの酸素原子を介して配位し、かつ、1つのヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位当たり2つ以上のポリ原子と1つの酸素原子を介して配位した構造(以下、構造bと記載)、4つの上記金属原子が互いに少なくとも2つの他の金属原子と直接結合した構造(以下、構造cと記載)、及び、4つの上記金属原子が互いに1つの酸素原子を介して他の3つの金属原子に配位した構造(以下、構造dと記載)から選択される少なくとも1つの構造を有するものであることが好ましい。なお、ここでいう金属原子とは、上記ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子のことである。
上記構造aは、金属化合物を構成するヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子の中に、ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位との間に、(金属原子−酸素原子−ポリ原子)の配位結合を、1つのヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位当たり1つだけ有する金属原子(以下、金属原子aとも記載する)が存在し、かつ、いずれ金属原子同士の間にも(金属原子−酸素原子−金属原子)の配位結合が存在しない構造である。
構造aを有する金属化合物には、金属原子aが少なくとも1つ存在すればよいが、金属原子aの数は2〜4つであることが好ましい。
上記構造bは、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子の中に、(金属原子−酸素原子−ポリ原子)の配位結合を2つ以上のヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位との間に有し、かつ、1つのヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位当たり(金属原子−酸素原子−ポリ原子)の配位結合を2つ以上有する金属原子(以下、金属原子bとも記載する)が少なくとも1つ存在する構造である。したがって、構造bの金属化合物には、(金属原子−酸素原子−ポリ原子)の配位結合が少なくとも4つ存在することになる。
構造bを有する金属化合物において、金属原子bの数は、1〜4つであることが好ましい。また、金属原子bは、1つのヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位当たり(金属原子−酸素原子−ポリ原子)の配位結合を2つ以上有するが、2〜4つ有することが好ましい。
また、構造bを有する金属化合物は、金属原子b以外の金属原子を有していてもよく、(金属原子−酸素原子−ポリ原子)の配位結合を2つ以上のヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位との間に有し、かつ、そのうち1つのヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位に対しては、(金属原子−酸素原子−ポリ原子)の配位結合を1つだけ有する金属原子を含むものであってもよい。
上記構造cは、下記一般式(1);
(式中、Mは、同一又は異なって、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を表す。)で表される構造を有するものである。なお、上記一般式(1)で表される構造を構成する金属原子Mには、更に他の金属原子が結合していてもよい。
上記構造dは、例えば、下記一般式(2−1)や(2−2);
(式中、Mは、同一又は異なって、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を表す。Oは、酸素原子を表す)で表される構造を有するものであるが、これらの構造に限定されない。なお、上記一般式(2−1)、(2−2)で表される構造を構成する金属原子Mには、更に他の金属原子や酸素原子が結合していてもよい。
上記金属化合物は、上記構造a〜dのうち少なくとも1つを含んでいることが好ましいが、これらのうち2つを含んでいてもよく、3つ以上を含んでいてもよい。
本発明の金属化合物中のヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子の合計含有量は、該金属化合物中のヘテロ原子1個に対して1個を超えることが好ましい。より好ましくは、1.2個以上であり、更に好ましくは、1.5個以上である。また、8個以下であることが好ましい。より好ましくは7個以下であり、更に好ましくは、6個以下である。
また、金属化合物全体の中に、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を1〜8個有することが好ましい。より好ましくは、1〜6個である。
本発明の金属化合物が、上記構造aを有する場合、金属化合物全体の中に、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を2〜4個有することが好ましい。
本発明の金属化合物が、上記構造bを有する場合、金属化合物全体の中に、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を1〜6個有することが好ましい。
本発明の金属化合物が、上記構造cを有する場合、金属化合物全体の中に、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を4〜6個有することが好ましい。
本発明の金属化合物が、上記構造dを有する場合、金属化合物全体の中に、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を4〜6個有することが好ましい。
本発明の金属化合物のうち、2つ以上のヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を2つ以上有し、これらの構造部位を結合している部分にヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を1つだけ有する化合物を単核金属化合物、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を2つ以上有する化合物を多核金属化合物ともいう。
本発明の金属化合物は、欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を少なくとも1つ有するものであるが、欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を2つ有するものが好ましい。
本発明の金属化合物は、ポリ原子が酸素原子を介して配位したポリオキソメタレート(イソポリオキソメタレート)や、ヘテロ原子に対してポリ原子が酸素原子を介して配位した構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物であり、欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に、上記ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子が元素(B)として導入された構造を有するもの、又は、そのような構造の化合物を特定の溶媒中に溶解することで得られるものである。
上記ヘテロポリオキソメタレート化合物においては、元素(B)がヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損構造部位に導入されることになる。欠損構造部位に導入されるとは、元素(B)が欠損構造部位に組み込まれる形態、すなわち、あるべきポリ原子が元素(B)により置換された形態であってもよいし、特に元素(B)のイオン半径が大きい場合には、欠損構造部位に元素(B)が組み込まれることなく、配位した形態であってもよい。
上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、一欠損型、二欠損型、三欠損型からなる群より選択される少なくとも1つの欠損構造部位を有するものであるが、これらの欠損構造とヘテロ原子、ポリ原子、並びに、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子との好ましい組み合わせは上述したとおりである。
本発明の金属化合物としては、これらの中でも二欠損型構造、又は、三欠損型構造を有するものが好ましい。
上記ヘテロポリオキソメタレート化合物は、ケギン型、ドーソン型等特に限定はされないが、ケギン型ヘテロポリオキソメタレート化合物であることが好ましい。
また、元素(B)の配置としては、元素(B)が互いに隣接していることが好ましい。元素(B)が互いに隣接する異性体としては、α、β、γ、δ、ε体等が存在するが、α、β体は角を共有した異性体であり、γ、δ、ε体は稜を共有した異性体である。より好ましくは、α体、β体及びγ体からなる群より選択される少なくとも1種の欠損構造部位含有ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンの骨格中に元素(B)が導入された形態であり、この中でも最も好ましくはα体及び/又はγ体の欠損構造部位含有ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンに導入された形態である。すなわち、本発明において、欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物は、α体、β体及びγ体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物が、二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物であって、かつ、γ体であること、又は、三欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物であって、かつ、α体であることである。
このようなヘテロポリオキソメタレート化合物の構造は、X線結晶構造解析、元素分析、UV、XRDやFT−IR分光測定等から決定または推定される。
上述のように、本発明の金属化合物が、ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)がα型及び/又はγ型のケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンであることもまた本発明の好適な実施形態の1つである。
上記ヘテロポリオキソメタレート化合物は一般に塩を形成しており、該塩を製造する際のカチオン源としては、無機塩でも有機塩でも良いが、中でもアルカリ金属塩、アルカリ土類塩、遷移金属塩、典型金属塩、プロトン塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩、有機ホスホニウム塩等が好適であり、例えば、上記へテロポリオキソメタレートアニオン(A)と上記元素(B)が共存する液に、該塩を粉体のまま、もしくは溶液として添加して、上記へテロポリオキソメタレート化合物の製造を行うことになる。上記へテロポリオキソメタレートアニオン(A)や上記元素(B)が元々持つカチオンを利用してもよい。
上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、結晶構造中で、あるべきポリ原子が欠けている欠損構造部位を有するヘテロポリオキソメタレートアニオンであって、ヘテロ原子がケイ素、リン、ゲルマニウム及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種以上であり、かつ、ポリ原子がモリブデン、タングステン、バナジウム及びニオブからなる群より選択される少なくとも1種以上のものであることが好ましい。このようなヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、ヘテロ原子に酸素を介してポリ原子が9〜11個配位したケギン型と呼ばれる結晶構造を有するものである。
上記二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物におけるヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、下記一般式(3);
[QZ10k− (3)
(式中、Qはヘテロ原子であるケイ素、リン、ゲルマニウム、又は、亜鉛原子を表す。Zはポリ原子を表す。jとkは正数であり、kはQとZの価数によって決まる。)で表されるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンであることが好ましい。
また上記三欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物におけるヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)は、下記一般式(4);
[QZn− (4)
(式中、Qはヘテロ原子であるケイ素、リン、又は、ゲルマニウム原子を表す。Zはポリ原子を表す。mとnは正数であり、nはQとZの価数によって決まる。)で表されるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンであることが好ましい。
ここで、一般式(3)、(4)において、より好ましくは、Zがタングステンであるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンである。
すなわち、金属化合物が、ヘテロ原子が、ケイ素、リン、もしくはゲルマニウム原子であり、ポリ原子が、タングステンであるヘテロポリオキソメタレート化合物であることもまた本発明の好適な実施形態の1つである。
更に、上記ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンは、その異性体構造がα体及び/又はβ体及び/又はγ体であるものが好ましい。二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物の場合、より好ましくは、一般式(3)におけるQがリン、ケイ素又はゲルマニウムである[α−PW10367−及び/または[β−PW10367−及び/または[γ−PW10367−、または、[α−SiW10368−及び/または[β−SiW10368−及び/または[γ−SiW10368−、または、[α−GeW10368−及び/または[β−GeW10368−及び/または[γ−GeW10368−である。更に好ましくは、[γ−PW10367−、[γ−SiW10368−または[γ−GeW10368−である。
また、三欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物の場合、より好ましくは、一般式(4)におけるQがリン、ケイ素又はゲルマニウムである[α−PW349−及び/または[β−PW349−及び/または[γ−PW349−、または、[α−SiW3410−及び/または[β−SiW3410−及び/または[γ−SiW3410−、または、[α−GeW3410−及び/または[β−GeW3410−及び/または[γ−GeW3410−である。
更に好ましくは、[α−PW349−、[α−SiW3410−または[α−GeW3410−であり、最も好ましくは、Qがリン又はケイ素である[α−PW349−または[α−SiW3410−である。
上記ヘテロポリオキソメタレートアニオンと塩を形成する対カチオンとしては、例えば、プロトン;アルカリ金属カチオン;アルカリ土類カチオン;遷移金属カチオン;典型金属カチオン;第四級アンモニウム塩(アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、トリラウリルメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、セチルピリジニウム塩)や第四級ホスホニウム塩(テトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウム塩、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩)等の有機カチオンが好適である。これらの中でも、第四級アルキルアンモニウム塩の有機カチオンであることがより好ましい。第四級アルキルアンモニウム塩としては、アルキル基の炭素数が4〜48のものが好ましい。更に好ましくは、4〜40である。
上記第四級アルキルアンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、トリラウリルメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、セチルピリジニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩が好ましい。より好ましくは、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩である。特に好ましくは、テトラブチルアンモニウム塩である。
対カチオンは1種又は2種以上用いることができる。
元素(B)、すなわち、本発明の金属化合物におけるヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子として好ましいものは上述したとおりである。
上記元素(B)を導入する際に使用する形態としては塩の形態でも、酸化物等の形態でも良い。これらは無機物でも有機物でも良いが、中でも酸化物、硝酸塩、ハロゲン化物塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、プロトン塩、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、カルボキシラート化合物、アセテート化合物、アセチルアセトナート化合物等が好適である。
本発明の金属化合物の合成に使用する上記元素(B)を含む化合物のモル量としては、ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)1モルに対して、1モルより多いことが好ましい。より好ましくは1.1モル以上であり、更に好ましくは、1.5モル以上である。また、8モル以下であることが好ましい。より好ましくは7モル以下であり、更に好ましくは、6モル以下である。
本発明の金属化合物は、上述のような構造を有するものであれば、その製造方法は特に制限されないが、好適な製造方法としては、上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)に上記元素(B)を導入する際に、有機溶媒中又は有機溶媒を含む溶媒中で混合することが挙げられる。有機溶媒中又は有機溶媒を含む溶媒中で混合した場合に、水中で混合した場合とは異なって、本発明の金属原子と酸素原子とが特定の位置関係にある新規な構造を有するヘテロポリオキソメタレート化合物が得られる。
また、上記元素(B)の混合に加え、後述するように酸を添加してもよい。また、元素(B)を添加して、1つのヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)に元素(B)を導入した後、更にヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)を添加して金属化合物とする方法も用いることができる。
また、1つのヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)に元素(B)を導入して得られた化合物を有機溶媒中又は有機溶媒を含む溶媒に溶解した溶液に当該1つのヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)に元素(B)を導入して得られた化合物を更に添加し、そこに貧溶媒を添加することで金属化合物とする方法も用いることができる。なお、上記有機溶媒を含む溶媒は有機溶媒を含んでいる限り、その他の成分を含んでいてもよいが、上記有機溶媒を含む溶媒の好ましい形態の1つとして、有機溶媒と水との混合溶媒の形態が挙げられる。
上記有機溶媒と水との混合溶媒における、有機溶媒と水との体積比としては、特に制限されないが、100:0〜30:70であることが好ましく、より好ましくは、100:0〜50:50である。更に好ましくは、100:0〜70:30である。
上記有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロエタン、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレンカーボネート、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、メタノール、エタノール、ブタノール、ジクロロエタン、ヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレンカーボネート、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ニトロメタンが好ましく、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、メタノール、エタノール、ブタノール、ジクロロエタン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレンカーボネート、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ニトロメタンがより好ましい。特に好ましくは、アセトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ブタノール、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレンカーボネート、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ニトロメタンである。
上記貧溶媒としては、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレンカーボネート、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジクロロエタン、クロロホルム等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記溶媒の体積は、上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)1ミリモルに対して、0.1mL以上であることが好ましい。より好ましくは0.5mL以上であり、更に好ましくは1.0mL以上である。また、300mL以下であることが好ましい。より好ましくは250mL以下であり、更に好ましくは、200mL以下である。
上記元素(B)の添加方法としては、ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)を含む溶液または混合液中に、元素(B)の塩又は化合物を、粉体のまま若しくは溶液として添加して行うことが好ましいが、(A)と同時に添加するか、又は先に溶媒中に溶解された状況で行っても良い。元素(B)の塩又は化合物の添加は、一括添加しても良いし、徐々に添加しても良い。へテロポリオキソメタレート化合物の製造は、一回の工程で行っても良いし、複数回に分けて行っても良い。例えば、(B)の所定量のうちの一部を残した状態でいったん生成物を取り出し、再度生成物を溶媒に再溶解した後、残りの(B)を添加する方法としてもよい。
上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)と元素(B)との混合時間としては、1分以上であることが好ましい。1分未満の混合であると、元素(B)がヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)の欠損部位に完全に導入されない可能性がある。より好ましくは、10分以上であり、更に好ましくは、20分以上である。また、72時間以内であることが好ましい。より好ましくは、48時間以内であり、更に好ましくは、24時間以内である。
なお、混合時間が1分以上とは、ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)0.34ミリモルを使用した時に、主に均一系溶液中で元素(B)と溶媒中で共存、混合される時間を意味し、ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)を含む溶液又は混合液中に、元素(B)を含む塩又は化合物を添加し終えた時点から、上記無機塩や有機塩の添加等により、上記へテロポリオキソメタレート化合物を析出させる時点までの間の時間を指す。混合中に不純物等の沈殿が発生した場合は、必要に応じて取り除くことができる。混合する時間の設定は、へテロポリオキソメタレート化合物の構造を決定する重要な要素の一つであり、元素(B)の種類によって上記の範囲内で適宜選定すればよい。へテロポリオキソメタレート化合物は、再結晶等により精製することが可能である。また、単離することなく系中で調製・保存・触媒や材料としての適用等を行うこともできる。
上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)と元素(B)とを混合する際の温度としては、0℃以上150℃以下が好ましい。より好ましくは、5℃以上100℃以下であり、更に好ましくは、10℃以上90℃以下である。
上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)に元素(B)を導入する際に、更に酸を添加してもよい。酸は、元素(B)を含む塩又は化合物を添加した後に添加してもよく、元素(B)を含む塩又は化合物とともに添加してもよいが、元素(B)を含む塩又は化合物を添加した後に添加することが好ましい。
酸としては、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸の他、p−トルエンスルホン酸、酢酸、安息香酸、マロン酸等の有機酸を用いることができる。
酸の添加量は、上記ヘテロポリオキソメタレートアニオン(A)1モルに対して、0.0001モル以上であることが好ましい。より好ましくは、0.001モル以上である。
本発明の金属化合物は、上述した方法により本発明の金属化合物に該当する化合物を製造した後、当該金属化合物に対して更に別の操作を行う、多段階(stepwise)の製造方法により製造されるものであってもよい。そのような多段階の製造方法により、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を2種以上含む金属化合物や、特定の構造を有する金属化合物を製造することができる。
また、得られたヘテロポリオキソメタレート化合物(金属化合物)を有機溶媒に溶解させ、対カチオンを加えて攪拌した後、溶媒を除去して得られた固形分を特定の有機溶媒存在下で再結晶する多段階の製造方法も好適である。このような製造方法により、金属原子がキュバン型等の特定の配列をした金属化合物を製造することができる。
また、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を1種有する金属化合物を製造した後、当該金属化合物を有機溶媒に溶解し、得られた溶液に当該金属化合物が有する金属原子とは別の金属原子の化合物を添加、攪拌することで2種以上の金属原子を有する金属化合物を製造する多段階の製造方法も好適である。このような製造方法により、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を2種以上有する金属化合物を製造することができる。特にこのような多段階の製造方法は、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を2種以上有する化合物を選択的に製造することができる点で、非常に有用な製造方法である。このような方法を用いると、これまで合成法が開発されていなかった、ランタノイドを2種以上含む異核ランタノイド構造の金属化合物も製造することができる。
また、多段階の製造方法により、金属原子を上記特定の配列とすることもできる。
後述するように、本発明の金属化合物は、磁性材料(単分子磁石)としての性質を有するものである。中でも、ランタノイド金属からなる単分子磁石は、スピン−軌道結合したランタノイド金属の基底状態に由来する大きな磁気異方性のため、大きなエネルギー障壁を有し高い動作温度を示す可能性がある。ラジカル架橋配位子を持ついくつかの2核構造体の例を除いて、ほとんどのランタノイド錯体は非常に弱い磁気的相互作用しか示さない。そのため、大きな磁気異方性を獲得するためにそれぞれのランタノイドカチオンの配位構造を設計することが、単分子磁石を設計する上で非常に重要である。上記多段階の製造方法を用いることで、異核ランタノイド構造を有するポリオキソメタレートも製造することができるため、ランタノイドカチオンを有する単分子磁石を設計する上で上記製造方法は非常に有用である。
上記多段階の製造方法により金属化合物を製造する場合の2段目以降の操作に用いる有機溶媒としては、上記有機溶媒のほか特に限定されないが、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、酢酸エチル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、酢酸エチルが好ましい。より好ましくは、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン、ニトロメタン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、酢酸エチルである。
本発明の金属化合物の製造時に有機溶媒を2種以上用いる場合、その比率は特に制限されないが、有機溶媒を2種用いる場合には、2種類の有機溶媒を99/1〜1/99の比率で用いることが好ましい。このような比率を外れると、2種類の溶媒を用いることの効果が充分に発揮されないおそれがある。より好ましくは、90/10〜10/90の比率である。
本発明の金属化合物は、その磁気的特性から磁性体(単分子磁石)として利用することが可能であり、高密度情報記録材料やデータ処理デバイス等、磁性体が使用される種々の分野での利用が期待される有望な化合物である。
また本発明の金属化合物は、種々の酸化反応や酸塩基反応等の有機反応用触媒としても適用することができるものである。本発明のヘテロポリオキソメタレート化合物を触媒として利用する場合、気相・液相・超臨界相等いずれの反応場においても使用することができる。その使用形態としては、気相反応で用いる場合、触媒自体を固体として反応を行う形態や触媒を担体に担持して反応を行う形態が可能である。触媒担体としては、一般的に気−固反応に使用される担体を用いることができる。
触媒自体を固体として使用する場合、対カチオンとしては、上述したものと同様のものを用いることができる。
また、液相反応で用いる場合には、触媒を溶解させて均一系で反応させる形態、触媒を溶媒に溶解させずに液相に懸濁させて反応を行う形態が挙げられる。触媒を固相として反応を行うことも可能である。この時、対カチオンや溶媒を変更することで触媒自体を固体として使用することができ、反応後の触媒と生成物の分離が容易になる。
その他、触媒を担体に担持することによっても、触媒を固相として使用することができる。触媒担体としては、各種イオン交換樹脂、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫や他の酸化物等の一般的に不均一系反応に使用される担体を用いることができる。均一系及び/又は不均一系で反応を行うに際し、対カチオンとしては、上述したものと同様のものを用いることができる。
上記金属化合物は、種々の酸化反応や酸塩基反応等の有機反応用触媒として適用することができるものであるが、中でも酸化反応や酸塩基反応を液相で行う際に好適に適用することができるものである。
上記酸化反応の具体例としては特に限定されず、例えば、(1)不飽和結合の酸化(アルケンやアルキンの不飽和二重結合や不飽和三重結合の酸化)、(2)水酸基の酸化、(3)ヘテロ原子の酸化(硫黄原子や窒素原子、ケイ素原子等の酸化)、(4)飽和炭化水素部位の酸化、(5)芳香環の酸化、(6)水素化ヘテロ原子や炭化水素の水酸基化(硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子等の水素化物の水酸基化)(7)これら(1)〜(6)以外の酸化カップリング反応等の酸化反応等が挙げられる。このような酸化反応により被酸化性官能基が酸化され、酸化された有機化合物が製造されることになる。
本発明の金属化合物は、上述の構成よりなり、欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位とヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子とを含んで構成される新規な構造を有する化合物であり、磁性材料が用いられる各種分野での利用や触媒としての利用が期待されるものである。
実施例1で合成された四核亜鉛PW10の結晶構造を示した図である。図1中、aは亜鉛原子を、bは酸素原子を表す。亜鉛原子は4つ存在する。 実施例2で合成された二核コバルトPW10の結晶構造を示した図である。図2中、bは酸素原子を、cはコバルト原子を表す。コバルト原子は2つ存在する。 実施例3で合成された四核銀GeW10の結晶構造を示した図である。図3中、dは銀原子を表す。銀原子は4つ存在する。 実施例4で合成された六核銀GeW10の結晶構造を示した図である。図4中、dは銀原子を表す。銀原子は6つ存在する。 実施例5で合成された二核コバルトSiW10の結晶構造を示した図である。図5中、bは酸素原子を、cはコバルト原子を表す。コバルト原子は2つ存在する。 実施例6で合成された四核コバルトcubanSiW10の結晶構造を示した図である。図6中、bは酸素原子を、cはコバルト原子を表す。コバルト原子は4つ存在する。 実施例7で合成されたFe1の結晶構造を示した図である。図7中、eは鉄原子を表す。鉄原子は1つ存在する。 実施例8で合成されたFeMn4の結晶構造を示した図である。図8中、eの模様のある球は鉄原子を、fはマンガン原子を表す。鉄原子1つ、マンガン原子4つが存在する。 実施例9で合成されたMn5の結晶構造を示した図である。図9中、fはマンガン原子を表す。マンガン原子は5つ存在する。 実施例10で合成されたCo1の結晶構造を示した図である。図10中、cはコバルト原子を表す。コバルト原子は1つ存在する。 実施例11で合成されたCoMn4の結晶構造を示した図である。図11中、cはコバルト原子を表し、fはマンガン原子を表す。コバルト原子1つ、マンガン原子4つが存在する。 実施例12で合成されたNi1の結晶構造を示した図である。図12中、gはニッケル原子を表す。ニッケル原子は1つ存在する。 実施例13で合成されたNiMn4の結晶構造を示した図である。図13中、gはニッケル原子を表し、fはマンガン原子を表す。ニッケル原子1つ、マンガン原子4つが存在する。 実施例14で合成されたCu1の結晶構造を示した図である。図14中、hは銅原子を表す。銅原子は1つ存在する。 実施例15で合成されたCuMn4の結晶構造を示した図である。図15中、hは銅原子を表し、fはマンガン原子を表す。銅原子1つ、マンガン原子4つが存在する。 実施例16で合成されたMn1の結晶構造を示した図である。図16中、fはマンガン原子を表す。マンガン原子は1つ存在する。 実施例17で合成されたMnNi4の結晶構造を示した図である。図17中、fはマンガン原子を、gの模様のある球はニッケル原子を表す。マンガン原子1つ、ニッケル原子4つが存在する。 実施例19で合成されたCu5(OMe)の結晶構造を示した図である。図18中、bは酸素原子を、hは銅原子を表す。銅原子は5つ存在する。 実施例20で合成されたDy6の結晶構造を示した図である。図19中、bは酸素原子を、iはジスプロジウム原子を、jは炭素原子を表す。ジスプロジウム原子は6つ存在する。ジスプロジウム原子にはacac由来を含めた酸素原子が直接配位している。 実施例21で合成されたDy1の結晶構造(a)と、実施例22で合成されたDyEuの結晶構造(b)を示した図である。 SiW10からDy1を経てDyLn(Ln=Eu,Yb,Lu)を合成するまでの反応を示した図である。 実施例21〜24で合成されたDy1(a)、DyEu(b)、DyYb(c)、DyLu(d)のCSI−MS測定結果を示した図である。 実施例22〜24で合成された、DyEu(a)、DyYb(b)、DyLu(c)のFT−IR測定結果を示した図である。 実施例21〜24で合成されたDy1(a)、DyEu(b)、DyYb(c)、DyLu(d)の磁性測定結果を示した図である。 実施例22で合成されたDyEuの磁性測定結果を示した図である。 合成例5で合成されたDyDyの磁性測定結果を示した図である。 実施例24で合成されたDyLuの磁性測定結果を示した図である。 実施例23で合成されたDyYbの磁性測定結果を示した図である。 実施例23で合成されたDyYbの磁性測定結果を示した図である。 DyEu、DyDy、及び、DyLuのχ´´シグナルの周波数依存性から緩和時間を計算し、lnτ vs.1/Tプロットとして示した図である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。「TBA」はテトラ−n−ブチルアンモニウムの略であり、「acac」はアセチルアセトナートの略である。
X線結晶構造解析は、SHELXH−97を使用した。
IRの測定はJASCO FT/IR−460を用いて行った。
H−NMR測定は、JEOL JNM−EX−270を用い、270MHzで、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として測定した。
コールドスプレーイオン化質量分析は、JEOL JMS−T100CSを用いて行った。
磁性測定は、Quantum Design MPMS−XL7を使用した。
(合成例1)TBA[PW1036]・3HOの合成
氷浴中(0℃)、約2.6M硝酸8mLにTBABr30mg(0.093mmol)を加え、ここにCs[PW1036]・HO100mg(0.029mmol)を加えた。同じ温度で10分間撹拌し、得られた沈殿を濾過により回収して水10mLで洗浄した。5分間乾燥することによりTBA[PW1036]79mg(収率82%)を得た。
本化合物は、下記別法でも合成可能である。
Cs[PW1036]・HO2.0g(0.59mmol)を水1Lに加え、濃硝酸によりpHを2.0とした。5分間撹拌して不純物を濾過により取り除いた後、TBABr20g(62mmol)を加え、5分間撹拌した。得られた沈殿を濾過により回収して水1Lで洗浄し、乾燥することにより、TBA[PW1036]1.5g(収率80%)を得た。
(実施例1)四核亜鉛PW10の合成
TBA[PW1036]94mg(0.029mmol)をアセトン1.5mLに溶解させ、Zn(acac)を15mg(0.058mmol)加え、攪拌させ、溶液をろ過、静置することで無色透明結晶が得られた。得られた結晶の結晶構造解析の結果を図1に示した。
得られた結晶の結晶学的データ(アニオン構造のみ決定)は、表1のとおりである。
(実施例2)二核コバルトPW10の合成
TBA[PW1036]187mg(0.058mmol)をアセトン3mLに溶解させ、Co(NO17mg(0.058mmol)を加え、約15分攪拌させることで緑色沈殿を得た(収率は10%程度)。アセトニトリル、ジエチルエーテルの混合溶媒から緑色結晶が得られた。得られた結晶の結晶構造解析の結果を図2に示した。
得られた結晶の結晶学的データ(TBAも確認)は、表2のとおりである。
(実施例3)四核銀GeW10の合成
TBA[GeW1036]101mg(0.029mmol)をアセトン2mLに溶解させ、AgOAcを9.7mg(0.058mmol)加え、攪拌させることで白色沈殿を得た。ニトロメタン、ジエチルエーテルの混合溶媒から無色透明結晶を得た。得られた結晶の結晶構造解析の結果を図3に示した。
得られた結晶の結晶学的データ(アニオン構造のみ決定)は、表3のとおりである。
(実施例4)六核銀GeW10の合成
TBA[GeW1036]101mg(0.029mmol)をアセトン2mLに溶解させ、AgOAcを14.1mg(0.087mmol)と、[GeW1036]に対して1当量のジメチルフェニルシランとを加え、攪拌させることで黄色沈殿を得た。ニトロメタン、ジエチルエーテルの混合溶媒から黄色透明結晶を得た。得られた結晶の結晶構造解析の結果を図4に示した。
得られた結晶の結晶学的データ(アニオン構造のみ決定)は、表4のとおりである。
(合成例2)TBA−SiW10の合成
ケイ素中心二欠損型ケギン型ポリオキソメタレートTBA[γ−SiW1036]・2HO(「TBA−SiW10」ともいう。)は、以下の文献に従い合成した。
K.Kamata、K.Yonehara、Y.Sumida、K.Yamaguchi、S.Hikichi、N.Mizuno、「サイエンス(Science)」(米国)、2003年、第300巻、p.964。
(実施例5)二核コバルトSiW10(TBA[Co{γ−HSiW1036]・3HO)の合成
200mg(0.058mmol)のTBA−SiW10のアセトン溶液3mLに、硝酸コバルト17mg(0.058mmol)を加え、生じた黄色沈殿を回収した(収率69%)。ニトロメタン、ジエチルエーテルの混合溶媒から黄色結晶が得られた。得られた結晶の結晶構造解析の結果を図5に示した。
得られた結晶の結晶学的データは、表5のとおりである。
(合成例3)四核コバルトSiW10(TBA[{Co(HO)}(μ−OH){Co(HO){γ−HSiW1036]・5HO) (Co4)の合成
100mg(0.029mmol)のTBA−SiW10のアセトン溶液1.5mLに、Co(acac)を0.017g(0.058mmol)と、DMFを21.2mg(0.29mmol)と、1M硝酸29μL(0.029mmol)とを加え、得られた紫色沈殿を回収した(収率80%)。単結晶は溶液を30℃で静置することで得られた。
(実施例6)四核コバルトcubanSiW10(TBA[{Co(OH){γ−HSiW1036])の合成
合成例3で合成した化合物Co4を99mg(0.0145mmol)アセトンに懸濁させ、TBAOH(1Mメタノール溶液)0.029mLを加え、35℃程度で30分程攪拌し、析出した茶色粉末を回収した(収率50%程度)。ニトロメタン、ジエチルエーテルの混合溶媒に溶解させ、一度−20℃に静置したのち、30℃で静置することで茶色結晶を得た。得られた結晶の結晶構造解析の結果を図6に示した。
得られた結晶の結晶学的データは、表6のとおりである。
(合成例4)SiW9の合成
ケイ素中心三欠損型ケギン型ポリオキソメタレートSiW9は、以下の文献を参考に合成した。
A.Teze、G.Herve、「インオーガニック シンセシーズ(Inorg.Synth.)」(米国)、1990年、第27巻、p.87。
(実施例7)TBA[Fe(A−α−SiW31(HO)(OH))]・3HO (Fe1)の合成
6mLスクリュー管にFe(acac)を52.4mg(0.154mmol)取り、アセトン45mLと水1.35mLを加えた。そこに、撹拌しながらSiW9を1.00 g(0.307mmol)加えた。室温で4時間撹拌した後、溶液をろ過した。ろ液にジエチルエーテルを35mL加え、1晩静置することで278mg(収率29%)の黄色板針状結晶を得た。得られた結晶の結晶学的データを表7に示し、結晶構造解析の結果を図7に示した。
得られた結晶のコールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)の測定、及び、元素分析の結果は以下のとおりである。
CSI−MS(アセトン):m/z [TBAFe(SiW332+ 3333(計算値), 3333(測定値); [TBAFe(SiW33 : 6423(計算値), 6423(測定値)
元素分析(%)TBA[Fe(SiW31(HO)(OH)))]・3HO:
C,21.45; H,4.31; N,1.56; Si,0.90; W,52.77; Fe,0.89(計算値)
C,21.38; H,4.44; N,1.58; Si,0.88; W,51.1; Fe,0.87(測定値)
(実施例8)TBA[FeMn(OH)(A−α−SiW34]・2HO (FeMn4)の合成
6mLスクリュー管に実施例7で合成したFe1を120mg(19.1μmol)取り、アセトンを35mL加えた。そこに、撹拌しながらMn(acac) 27.0mg(76.8μmol)加えた。室温で4時間撹拌した後、ジエチルエーテルを加え、紫色粉末120mgを得た(収率97%)。得られた紫色粉末15mgを1,2−ジクロロエタン20mLに溶解させた。ジエチルエーテルを0.6mL加え、1晩静置することでこげ茶色板針状結晶を得た。得られた結晶の結晶学的データを表7に示し、結晶構造解析の結果を図8に示した。
得られた結晶のコールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)の測定、及び、元素分析の結果は以下のとおりである。
CSI−MS(1,2−ジクロロエタン):m/z [TBAFeMn(SiW342+ 3472(計算値), 3472(測定値); [TBAFeMn(SiW34 6703(計算値), 6703(測定値)
元素分析(%)TBA[FeMn(OH)(SiW34]・5HO:
C,20.71; H,4.00; N,1.51; Si,0.86; W,50.94; Fe,0.86; Mn,3.38(計算値)
C,20.65; H,3.93; N,1.40; Si,0.79; W,51.1; Fe,1.02; Mn,3.59(測定値)
(実施例9)TBA[Mn(OH)(A−α−SiW34]・2HO・CHClCHCl (Mn5)の合成
6mLスクリュー管にMn(acac)を27.1mg(77.3μmol)取り、アセトンを10mL加えた。そこに、撹拌しながらSiW9を100mg(30.9μmol)加えた。室温で2時間撹拌した後、溶液をろ過した。ろ液にジエチルエーテルを加え、茶色粉末87.6mgを得た(収率88%)。得られた茶色粉末10mgを1,2−ジクロロエタン10mLに溶解させた後、酢酸エチルを0.8mL加えた。293Kで1晩静置することで4.3mg(収率43%)の、こげ茶色ブロック状結晶を得た。得られた結晶の結晶学的データを表7に示し、結晶構造解析の結果を図9に示した。
得られた結晶のFT−IR、コールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)の測定、及び、元素分析の結果は以下のとおりである。
FT−IR(KBr):1700,1380,1153,1107,1014,990, 957,934,923,709,669,614,534,480,410,376, 344,333,262,255,269cm
CSI−MS(1,2−ジクロロエタン):m/z [TBAMn(SiW342+ 3472(計算値), 3472(測定値); [TBAMn(SiW34 6702(計算値), 6702(測定値)
元素分析(%)TBA[Mn(OH)(SiW34]・2HO・CHClCHCl:
C,20.7; H,4.00; N,1.49; Si,0.85; W,50.2; Mn,4.17(計算値)
C,20.3; H,3.93; N,1.20; Si,0.89; W,50.0; Mn,4.48(測定値)
(実施例10)TBA11[Co(A−α−SiW34]・3HO (Co1)の合成
6mLスクリュー管にCo(acac)・2HOを4.50mg(0.0154mmol)取り、アセトン2.85mLと水0.15mLとを加えた。そこに、撹拌しながらSiW9を100mg(0.0307mmol)加えた。室温で4時間撹拌した後、溶液をろ過した。ろ液にジエチルエーテルを10mL加え、69mg(収率72%)のピンク色粉末を得た。この粉末をジクロロエタン/ジエチルエーテル中で再結晶することでオレンジ色結晶を得た。得られた結晶の結晶構造解析の結果を図10に示した。
得られた結晶のFT−IR、コールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)の測定結果は以下のとおりである。
FT−IR(KBr):1630,1484,1380,1152,1006,957,919,875,789,534,429,378,361,313,301,293,287,271,263,252cm
CSI−MS(アセトン):m/z [TBACoOH(SiW312+:3307(計算値), 3307(測定値); [TBACoOH(SiW312+ : 6372(計算値), 6372(測定値)
(実施例11)TBAH[CoMn(OH)(A−α−SiW34]・2HO (CoMn4)の合成
6mLスクリュー管に実施例10で合成したCo1を44.0mg(7.01μmol)取り、ジクロロエタン4mLを加えた。そこに、撹拌しながらMn(acac)を9.88mg(28.0μmol)加えた。室温で4時間撹拌した後、溶液にジエチルエーテルを加え、39mg(収率86%)の紫色粉末を得た。この粉末38mgを1,2−ジクロロエタン3mLに溶解させ、ジエチルエーテル1.5mLを加えた。1晩静置することでこげ茶色板針状結晶を得た。得られた結晶の結晶構造解析の結果を図11に示した。
得られた結晶のコールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)の測定結果は以下のとおりである。
CSI−MS(1,2−ジクロロエタン):m/z [TBACoMn(SiW342+:3475(計算値), 3475(測定値); [TBACoMn(SiW34: 6706(計算値), 6706(測定値)
(実施例12)TBA11[Ni(A−α−SiW34]・3HO (Ni1)の合成
6mLスクリュー管にNi(acac)・2HOを4.49mg(0.0154mmol)取り、アセトン2.85mLと水0.15mLとを加えた。そこに、撹拌しながらSiW9を100mg(0.0307mmol)加えた。室温で4時間撹拌した後、溶液をろ過した。ろ液にジエチルエーテルを10mL加え、76mg(収率79%)の白色粉末を得た。この粉末をジクロロエタン/ジエチルエーテル中で再結晶することで緑白色結晶を得た。得られた結晶の結晶構造解析の結果を図12に示した。
得られた結晶のFT−IR、コールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)の測定結果は以下のとおりである。
FT−IR(KBr):2961,2933,2872,1632,1485,1380,1153,1107,994,953,903,816,797,768,729,559,523,455,361,336cm
CSI−MS(アセトン):m/z [TBANiOH(SiW312+:3307(計算値), 3307(測定値); [TBANiOH(SiW312+: 6372(計算値), 6372(測定値)
(実施例13)TBAH[NiMn(OH)(A−α−SiW34]・2HO (NiMn4)の合成
6mLスクリュー管に実施例12で合成したNi1を41.0mg(6.53μmol)取り、ジクロロエタン4mLを加えた。そこに、撹拌しながらMn(acac)を9.20mg(26.1μmol)加えた後、室温で4時間撹拌した。その後、溶液にジエチルエーテルを加え、39mg(収率86%)の紫色粉末を得た。この粉末38mgを1,2−ジクロロエタン3mLに溶解させ、ジエチルエーテル1.5mLを加えた。1晩静置することでこげ茶色板針状結晶を得た。得られた結晶の結晶構造解析の結果を図13に示した。
得られた結晶のコールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)の測定結果は以下のとおりである。
CSI−MS(1,2−ジクロロエタン):m/z [TBANiMn(SiW342+:3475(計算値), 3475(測定値); [TBANiMn(SiW34 : 6706(計算値), 6706(測定値)
(実施例14)TBA11[Cu(A−α−SiW34]・3HO (Cu1)の合成
6mLスクリュー管にCu(acac)・HOを9.19mg(0.0461mmol)取り、アセトン9.5mLと水0.5mLとを加えた。そこに、撹拌しながらSiW9を300mg(0.0921mmol)加えた。室温で3時間撹拌した後、溶液をろ過した。ろ液にジエチルエーテルを10mL加え、277mg(収率96%)の白色粉末を得た。この粉末をジクロロエタン/ジエチルエーテル中で再結晶することで緑白色結晶を得た。得られた結晶の結晶構造解析の結果を図14に示した。
得られた結晶のコールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)の測定結果は以下のとおりである。
CSI−MS(アセトン):m/z [TBACuOH(SiW312+:3310(計算値), 3310(測定値); [TBACuOH(SiW312+: 6377(計算値), 6377(測定値)
(実施例15)TBAH[CuMn(OH)(A−α−SiW34]・2HO (CuMn4)の合成
6mLスクリュー管に実施例14で合成したCu1を50.0mg(7.96μmol)取り、ジクロロエタン4mLを加えた。そこに、撹拌しながらMn(acac)を11.2mg(31.8μmol)加えた後、室温で4時間撹拌した。その後、溶液にジエチルエーテルを加え、40mg(収率86%)の紫色粉末を得た。この粉末30mgを1,2−ジクロロエタン3mLに溶解させ、ジエチルエーテル1.7mLを加えた。1晩静置することでこげ茶色板針状結晶を得た。得られた結晶の結晶構造解析の結果を図15に示した。
得られた結晶のコールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)の測定結果は以下のとおりである。
CSI−MS(1,2−ジクロロエタン):m/z [TBACuMn(SiW342+:3477(計算値), 3477(測定値); [TBACuMn(SiW34 : 6711(計算値), 6711(測定値)
(実施例16)TBA[Mn(A−α−SiW31(HO)(OH))]・3HO (Mn1)の合成
6mLスクリュー管にMn(acac)を5.42mg(15.5μmol)取り、アセトンを10mL加えた。そこに、撹拌しながらSiW9を100mg(30.9mol)加えた。室温で2時間撹拌した後、溶液をろ過した。ろ液にジエチルエーテルを0.5mL加え、293Kで1晩静置することで53.3mg(収率55%)の黄色板針状結晶を得た。得られた結晶の結晶学的データを表8に示し、結晶構造解析の結果を図16に示した。
得られた結晶のFT−IR、コールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)の測定、及び、元素分析の結果は以下のとおりである。
FT−IR(KBr):1630,1484,1380,1152,1006,957,919,875,789,534,429,378,361,313,301,293,287,271,263,252cm
CSI−MS(アセトン):m/z [TBAMn(SiW332+:3332(計算値), 3332(測定値); [TBAMn(SiW33 : 6422(計算値), 6422(測定値)
元素分析(%)TBA[Mn(SiW31(HO)(OH))]・3HO:
C,21.5; H,4.33; N,1.56; Si,0.90; W,52.8; Mn,0.88(計算値)
C,21.3; H,4.25; N,1.40; Si,0.88; W,51.1; Mn,0.87(測定値)
(実施例17)TBA[MnNi(OH)(A−α−SiW34]・5HO (MnNi4)の合成
6mLスクリュー管に実施例16で合成したMn1を10mg(1.60μmol)取り、アセトンを10mL加えた。そこに、撹拌しながらNi(OAc)を1.59mg(6.39 μmol)加えた。室温で5時間撹拌した後、溶液をろ過した。ろ液にジエチルエーテルを4mL加え、293Kで1晩静置することで1.8mg(収率17%)の薄茶色板状結晶を得た。得られた結晶の結晶学的データを表8に示し、結晶構造解析の結果を図17に示した。
得られた結晶のFT−IR、コールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)の測定、及び、元素分析の結果は以下のとおりである。
FT−IR(KBr):1631,1484,1382,1152,997,954,908,809,775,634,538,373,332,317,257,253cm
CSI−MS(アセトニトリル):m/z [TBAMnNi(SiW342+ 3466(計算値), 3466(測定値); [TBAMnNi(SiW34 6688(計算値), 6688(測定値)
元素分析(%)TBA[Cu(SiW34]・5HO:
C,20.6; H,4.13; N,1.50; Si,0.86; W,50.6; Mn,0.84; Ni,3.59(計算値)
C,21.9; H,4.15; N,1.55; Si,0.79; W,51.1; Mn,1.02; Ni,3.59(測定値)
(実施例18)TBA[Cu(A−α−SiW34]・CHCOCH・2HO (Cu5)の合成
6mLスクリュー管にSiW9を10mg(3.08μmol)取り、アセトン1mL、HO0.1mLを加えた。撹拌しながらCu(OAc)を1.53mg(7.73μmol)加えた。室温で2時間撹拌した後、溶液をろ過した。ろ液に酢酸エチルを2.9mL加えた。293Kで1晩静置することで5.8mg(収率60%)の緑色板状結晶を得た。
得られた結晶のFT−IR、H−NMR、コールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)の測定、及び、元素分析の結果は以下のとおりである。
FT−IR(KBr):1484,1466,996,963,910,779,693,548,379,345,256cm
H−NMR(270.05MHz,DMSO−d,298K,TMS):δ=0.94 (t,J=8.12Hz,96H),1.26−1.37(m,64H),1.57(m,64H),2.10(s,6H,acetone),3.15−3.23ppm(m,64H)
CSI−MS(アセトニトリル):m/z [TBACu(SiW342+ 3375(計算値), 3375(測定値); [TBACu(SiW34 6508(計算値), 6508(測定値)
元素分析(%)TBA[Cu(SiW34]・CHCOCH・2HO:
C,18.7; H,3.71; N,1.32; Si,0.88; W,52.0; Cu,5.00(計算値)
C,18.7; H,3.86; N,1.30; Si,0.82; W,51.3; Cu,4.88(測定値)
(実施例19)TBA[Cu(A−α−SiW30(OCH10] (Cu5(OMe))の合成
6mLスクリュー管にSiW9を10mg(3.08μmol)取り、メタノールを6mL加えた後、1時間撹拌した。そこに、撹拌しながらCu(OAc)を1.53mg(7.73μmol)加えた。室温で1時間撹拌した後、溶液をろ過した。ろ液を293Kで1晩静置することで2.0mg(収率22%)の緑色六角柱状結晶を得た。得られた結晶の結晶学的データを表8に示し、結晶構造解析の結果を図18に示した。
得られた結晶のFT−IRの測定結果は以下のとおりである。
FT−IR(KBr):1630,1484,1466,1383,996,963,910,779,693,548,379,345,256cm
(実施例20)TBAH[Dy(A−α−SiW34(acac)(HO)(OH)] (Dy6)の合成
6mLスクリュー管にSiW9を50mg(15.4μmol)取り、アセトンを1mL、HOを0.1mL加えた。そこに、撹拌しながらDy(acac)・2HOを22.8mg(46.0μmol)加えた。室温で1時間撹拌した後、溶液をろ過した。ろ液にジエチルエーテルを5.7mL加え、1晩静置することで31mg(収率54%)の無色板状結晶を得た。得られた結晶の結晶構造解析の結果を図19に示した。
得られた結晶のコールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)の測定結果は以下のとおりである。
CSI−MS(アセトニトリル):m/z [TBAHDy(C(OH)(SiW342+ 3980(計算値), 3980(測定値); [TBAHDy(C(OH)(SiW34 7714(計算値), 7714(測定値)
(実施例21)TBA[{Dy(HO)}(γ−SiW1036] (Dy1)の合成
アセトンと水(20/0.3mL)の混合溶媒にTPA−SiW10を1.00g(0.291mmol)、Dy(acac)・2HOを66.9mg(0.146mmol、SiW10に対して0.5当量)加え、室温(約20℃)で90分間攪拌した。その後、ジエチルエーテル5mLを加え、溶液を25℃で1日静置することで661mg(SiW10に対して収率63%)の無色結晶を得た。得られた結晶の結晶学的データを表9に示し、結晶構造解析の結果を図20(a)に示した。
得られた結晶のコールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)の測定、及び、元素分析の結果は以下のとおりである。CSI−MSの測定スペクトルを図22(a)に示した。図22(a)中の挿入図は、m/z 3720−3760と、7200−7260の範囲の実測値と、[TBA10Dy(SiW10362+(m/z 3739)、及び、[TBADy(SiW1036(m/z 7235)のシミュレーションしたパターンである。
CSI−MS(アセトニトリル):m/z [TBA10Dy(SiW10362+ 3738(計算値), 3738(測定値); [TBA10Dy(HO)(SiW10362+ 3747(計算値), 3747(測定値)
元素分析(%)TBA[Dy(HO)(SiW1036]・6HO・(CHCOCH):
C,21.76; H,4.45; N,1.55; Si,0.78; W,50.85; Dy,2.25(計算値)
C,21.73; H,4.29; N,1.61; Si,0.76; W,50.15; Dy,2.14(測定値)
(合成例5)TBA[DyDy(OH)(HSiW1036] (DyDy)の合成
DyDyは、以下の文献に従い合成した。
K.Suzuki、R.Sato、N.Mizuno、「ケミカル サイエンス(Chem.Sci.)」(英国)、2013年、第4巻、p.596。
(実施例22)TBA[DyEu(OH)(HSiW1036] (DyEu)の合成
2mLの1,2−ジクロロエタンに実施例5で合成したDy1を180mg(0.025mmol)、Eu(acac)・HOを15mg(0.031mmol、Dy1に対して1.25当量)を加え、室温(約20℃)で30分間攪拌した。その後、ジエチルエーテル5mLを加えた。生成した白色沈殿(168mg)をろ過により取り出し、モレキュラーシーブ3Aの存在下、脱水ジクロロメタンで再結晶することで23mg(Dy1に対して収率13%)の無色結晶を得た。得られた結晶の結晶学的データを表9に示し、結晶構造解析の結果を表10と図20(b)に示した。また、SiW10からDy1を経てDyLn(Ln=Eu,Yb,Lu)を合成するまでの反応を図21に示した。
得られた結晶のコールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)、FT−IRの測定、及び、元素分析の結果は以下のとおりである。CSI−MSの測定スペクトルを図22(b)に示した。図22(b)中の挿入図は、m/z 7380−7460の範囲の実測値と、[TBADyEu(OH)(HSiW1036(m/z 7420)のシミュレーションしたパターンである。また、FT−IRの測定結果を図23(a)に示した。
CSI−MS(アセトニトリル):m/z [TBADyEu(OH)(HSiW1036 7420(計算値), 7420(測定値); [TBA10DyEu(OH)(HSiW10362+ 3831(計算値), 3831(測定値)
FT−IR(KBr):3646,2961,2931,2873,1635,1483,1380,1153,1103,1000,955,868,758,559cm
元素分析(%)TBA[DyEu(OH)(HSiW1036]・HO:
C,21.37; H,4.15; N,1.56; Si,0.78; W,51.10; Dy,2.26; Eu,2.11(計算値)
C,21.18; H,4.07; N,1.45; Si,0.73; W,47.98; Dy,2.28; Eu,2.39(測定値)
(実施例23)TBA[DyYb(OH)(HSiW1036] (DyYb)の合成
Eu(acac)・HOを用いる代わりにYb(acac)・2HOをDy1に対して1.25当量用いた以外は実施例22と同様にして、無色結晶(Dy1に対して収率14%)を得た。得られた結晶の結晶学的データを表9に示し、結晶構造解析の結果を表10に示した。
得られた結晶のコールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)、FT−IRの測定、及び、元素分析の結果は以下のとおりである。CSI−MSの測定スペクトルを図22(c)に示した。図22(c)中の挿入図は、m/z 7400−7480の範囲の実測値と、[TBADyYb(OH)(HSiW1036(m/z 7441)のシミュレーションしたパターンである。また、FT−IRの測定結果を図23(b)に示した。
CSI−MS(アセトニトリル):m/z [TBADyYb(OH)(HSiW1036 7441(計算値), 7441(測定値); [TBA10DyYb(OH)(HSiW10362+ 3842(計算値), 3842(測定値)
FT−IR(KBr):3649,2960,2873,1635,1483,1380,1153,1097,998,953,890,868,763,557cm
元素分析(%)TBA[DyYb(OH)(HSiW1036]・6HO:
C,21.04; H,4.22; N,1.56; Si,0.77; W,50.32; Dy,2.22; Yb,2.37(計算値)
C,21.00; H,4.24; N,1.44; Si,0.70; W,48.70; Dy,2.21; Eu,2.36(測定値)
(実施例24)TBA[DyLu(OH)(HSiW1036] (DyLu)の合成
Eu(acac)・HOを用いる代わりにLu(acac)・2HOをDy1に対して1.25当量用いた以外は実施例22と同様にして、無色結晶(Dy1に対して収率51%)を得た。得られた結晶の結晶学的データを表9に示し、結晶構造解析の結果を表10に示した。
得られた結晶のコールドスプレーイオン化質量分析(CSI−MS)及びFT−IRの測定結果は以下のとおりである。CSI−MSの測定スペクトルを図22(d)に示した。図22(d)中の挿入図は、m/z 7400−7480の範囲の実測値と、[TBADyLu(HSiW1036(m/z 7442)のシミュレーションしたパターンである。また、FT−IRの測定結果を図23(c)に示した。
CSI−MS(アセトニトリル):m/z [TBADyLu(OH)(HSiW1036 7443(計算値), 7443(測定値); [TBA10DyLu(OH)(HSiW10362+ 3843(計算値), 3843(測定値)
FT−IR(KBr):3647,2961,2934,2873,1635,1483,1380,1153,1095,999,954,889,868,761,556cm
(磁性測定)
実施例で得られた各金属化合物について、磁性測定を行った。結果を図24〜29に示す。
1000 Oeにおけるdc磁気測定より、DyEu、DyYb、DyLuのχT(300K)は、それぞれ、15.3、16.2、及び、14.1cmKmol−1であった。DyLuのχmTはDy1の値と同じであり、DyEuとDyYbの値はDy1の値よりも大きく、DyEu(Eu3+カチオンの磁化率は0,λ,3λのエネルギーをもつ初めのlow−lying stateを許容した場合のVan Vleck式から計算)とDyYbの理論値と一致した。次に、DyEu、DyYb、DyLu、DyDyのゼロ磁場における交流磁化率測定を行った。DyEuとDyLuでは、単分子磁石挙動に特徴的である温度と磁場に依存するDy3+由来のχ´とχ´´のシグナルが観測された。DyYbはゼロ磁場において小さなシグナルしか観測されなかった。これは、おそらくDy3+に隣接するYb3+による強い量子トンネリング(QTM)のためであると考えられる。1800 Oeの外部磁場下において、QTMは抑制され、DyYbも顕著に温度と磁場に依存するχ´とχ´´のシグナルが観測され、DyYbは外部磁場下において単分子磁石挙動を示すことが示唆された。DyDyについても、単分子磁石挙動を示すことが示唆された。
DyEu、DyDy、及び、DyLuのχ´´シグナルの周波数依存性から緩和時間を計算し、lnτ vs.1/Tプロットとして示した(図30)。このプロットをアレニウス則に従ってフィッティングし、磁化反転のエネルギー障壁(ΔE/kB)とpre−exponential factor、73.0K、及び、1.8×10−7s(DyEu)、65.7K、及び、3.1×10−7s(DyDy)、46.7K、及び、1.9×10−6s(DyLu)を得た。エネルギー障壁はDyLu(46.7K)< DyDy
(65.7K)< DyEu(73.0K)の順で増大し、DyEuがこれらの構造体の中で最も高いエネルギー障壁を示した。エネルギー障壁の順番は、Dy3+に隣接するランタノイドカチオンのイオン半径12の順番と良い一致を示した。これは、より大きなLn3+カチオンを持つ{Dy(μ2−OH)2Ln}コアは、Dy3+の4f電子密度と配位子の酸素原子間での相互作用が小さく、その結果大きな異方性が得られたためであると考えられる。ランタノイド金属の異核化によって単分子磁石挙動の活性化障壁を制御した例はこれまでにない。また、DyEuはポリオキソメタレート配位子を用いた単分子磁石の中で最も高いエネルギー障壁を有している。
a:亜鉛原子
b:酸素原子
c:コバルト原子
d:銀原子
e:鉄原子
f:マンガン原子
g:ニッケル原子
h:銅原子
i:ジスプロジウム原子
j:炭素原子

Claims (5)

  1. 欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を2つ以上有する金属化合物であって、
    該ヘテロポリオキソメタレート化合物は、ヘテロ原子に対してポリ原子が酸素原子を介して配位した構造を有し、
    該金属化合物は、二欠損構造部位及び/又は三欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を有し、ヘテロ原子及びポリ原子とは異なる金属原子を含み、
    該二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物は、P、Si及びGeからなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含み、
    該三欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物は、P、Si及びGeからなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含み、該ポリ原子は、Wであり、
    該金属原子がAgであって、ヘテロ原子がGeであり、該金属原子のうち少なくとも1つが、1つのヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位当たり1つのポリ原子とのみ1つの酸素原子を介して配位し、かつ、いずれの前記金属原子も、金属原子同士が1つの酸素原子を介して配位した構造を有さない構造、
    該金属原子がDy、Eu、Yb、Lu、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Agからなる群より選択される少なくとも1種の原子であって、該金属原子のうち少なくとも1つが、2つ以上のヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位中のポリ原子と1つの酸素原子を介して配位し、かつ、1つのヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位当たり2つ以上のポリ原子と1つの酸素原子を介して配位した構造(ただし、該金属原子がAgである場合は、ヘテロ原子はGeである)、
    該金属原子がAgであって、ヘテロ原子がGeであり、4つの該金属原子が互いに少なくとも2つの他の金属原子と直接結合した構造、及び、
    該金属原子がCoであって、4つの該金属原子が互いに1つの酸素原子を介して他の3つの金属原子に配位した構造
    から選択される少なくとも1つの構造を有することを特徴とする金属化合物。
  2. 前記金属化合物は、二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を有し、
    該二欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物は、P、Si及びGeからなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含み、
    前記金属原子は、Dy、Eu、Yb、Lu、Co、Agからなる群より選択される少なくとも1種の原子であることを特徴とする請求項1に記載の金属化合物。
  3. 前記金属化合物は、三欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物由来の構造部位を有し、
    該三欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物は、Siのヘテロ原子を含み、
    前記金属原子は、Dy、Mn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群より選択される少なくとも1種の原子であることを特徴とする請求項1に記載の金属化合物。
  4. 前記欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物は、ケギン型ヘテロポリオキソメタレート化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属化合物。
  5. 前記欠損構造部位含有ヘテロポリオキソメタレート化合物は、α体、β体及びγ体からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属化合物。
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