JP6167011B2 - 電気絶縁性高熱伝導性樹脂組成物 - Google Patents
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中でも、酸化マグネシウムは、熱伝導率が比較的高い上に、適度な硬度や絶縁性を有することから有用であり、本出願人は、表面処理された酸化マグネシウム、すなわちリン酸マグネシウム系化合物よりなる被覆層等を有する酸化マグネシウム、及びPAS樹脂等を含む高熱伝導性樹脂組成物を提案した(特許文献1)。この高熱伝導性樹脂組成物により、成形性や耐湿熱性を向上させるという課題を解決した。
特許文献2には、PAS樹脂、及びアルコキシシラン化合物で表面処理された酸化マグネシウム等を含む樹脂組成物が記載されている。この樹脂組成物において、表面処理された酸化マグネシウムを使用する目的は耐蝕性の付与である。また、当該酸化マグネシウムの添加量は少量であり、樹脂組成物が高熱伝導性を発揮し得る量ではない。つまり、当該樹脂組成物は、高熱伝導性を有する樹脂組成物ではない。
特許文献3には、PAS樹脂、及び800℃以上で焼成後表面処理してなる酸化マグネシウム等を含む樹脂組成物(電気絶縁・放熱部品用成形材料)が記載されている。この樹脂組成物において、表面処理した酸化マグネシウムを使用する目的は高熱伝導性及び耐湿熱性の付与である。そして、当該表面処理された酸化マグネシウムの特徴は、800℃以上で焼成後に表面処理を行うことにある。また、表面処理に用いる表面処理剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等が例示されている。
特許文献4には、熱可塑性ポリマー、酸化マグネシウム(シラン等のカップリング剤で被覆したもの)、及びフィラー(ガラス繊維)を所定の比率で含む熱伝導性ポリマー組成物(金属/ポリマーハイブリッド物品)が記載されている。この熱伝導性ポリマー組成物は、熱伝導性や機械強度等の向上を図ったものであるが、曲げ強度および薄肉流動性については考慮されていない。
上記特許文献1に記載の高熱伝導性樹脂組成物は、高い流動性を示すものの、薄肉流動性に優れると言える程の流動性を有するものではない。その他の特許文献に記載の樹脂組成物も、薄肉流動性を有するものではない。
(1)(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂と、(B)ビニルアルコキシシラン化合物で予め表面処理された酸化マグネシウムと、(C)ガラス繊維と、(D)アルコキシシラン化合物と、を含む電気絶縁性の高熱伝導性樹脂組成物であって、
前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量が、前記(A)成分100質量部に対して80〜130質量部であり、かつ
前記(A)成分100質量部に対する前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量(質量部)をx軸、前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量に対する前記(B)成分の含有率(質量%)をy軸としたとき、x=83(質量部)、y=88.9(質量%)で表される点a、x=101(質量部)、y=80.0(質量%)で表される点b、x=124(質量部)、y=54.5(質量%)で表される点c、x=101(質量部)、y=90.0(質量%)で表される点d、及びx=124(質量部)、y=72.7(質量%)で表される点eからなる5つの点を頂点とする、線分ab、線分bc、線分ce、線分ed、及び線分daからなる図形の領域内に、前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量に対する前記(B)成分の含有率が存在することを特徴とする高熱伝導性樹脂組成物。
以下、本発明の高熱伝導性樹脂組成物の各成分について詳述する。
(A)成分としてのポリアリーレンスルフィド樹脂は、主として、繰返し単位として−(Ar−S)−(但しArはアリーレン基)で構成された高分子化合物であり、本発明では一般的に知られている分子構造のPAS樹脂を使用することができる。
本発明において、(B)ビニルアルコキシシラン化合物で予め表面処理された酸化マグネシウム(以下、「表面処理酸化マグネシウム」と呼ぶ場合がある。)は、高熱伝導性及び高薄肉流動性を付与するために添加される。このように、本発明においては、酸化マグネシウムの表面処理剤としてビニルアルコキシシラン化合物を用いるのであるが、アルコキシシラン化合物の中でも、ビニルアルコキシシラン化合物を用いた場合のみが顕著な薄肉流動性を示す。逆に言えば、ビニルアルコキシシラン化合物以外のアルコキシシラン化合物で予め表面処理した酸化マグネシウムを用いても顕著な薄肉流動性は示さず、顕著な薄肉流動性を発揮させるにはビニルアルコキシシラン化合物による表面処理が必要不可欠である。
なお、本発明において、「レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径」とは、レーザー回折・散乱法により測定した粒度分布における積算値50%の粒径を意味する。
本発明において用いるガラス繊維としては特に制限はないが、例えば、繊維径5〜15μm(好ましくは、6〜13μm)のものを用いることができる。中でも、成形後の強度が高くなることから、繊維径8〜10μmのものが特に好ましい。
このような本発明において用いるガラス繊維は、市販のものを用いることができる。上市しているものとしては、例えば、富士ファイバーグラス(株)製、チョップドガラス繊維(CS 3DE−257、平均繊維径:6μm)、日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維(ECS03T−747H、平均繊維径:10μm)、日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維(ECS03T−747、平均繊維径:13μm)等が挙げられる。
すなわち、(A)成分100質量部に対する(B)成分及び(C)成分の合計含有量(質量部)をx軸、(B)成分及び(C)成分の合計含有量に対する(B)成分の含有率(質量%)をy軸としたとき、x=83(質量部)、y=88.9(質量%)で表される点a、x=101(質量部)、y=80.0(質量%)で表される点b、x=124(質量部)、y=54.5(質量%)で表される点c、x=101(質量部)、y=90.0(質量%)で表される点d、及びx=124(質量部)、y=72.7(質量%)で表される点eからなる5つの点を頂点とする、線分ab、線分bc、線分ce、線分ed、及び線分daからなる図形の領域内に、前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量に対する前記(B)成分の含有率が存在する。
本発明において、機械的物性の向上のためには、(D)アルコキシシラン化合物を配合してもよい。ただし、(D)アルコキシシラン化合物を添加すると流動性が低下するため、機械的特性を得ようとすると流動性が犠牲となる。従って、後述するように、配合する場合におけるその量は少量であることが好ましい。
本発明においては、靱性を更に向上させるために、(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体を含有することが好ましい。(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体は、特に限定されない。(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明の高熱伝導性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、機械的強度、耐熱性、寸法安定性(耐変形、そり)、電気的性質等の性能の改良のため無機又は有機充填剤を配合したものでもよく、これには目的に応じて繊維状、粉粒状、板状の充填剤が用いられる。
また、板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレークが挙げられる。
以上の無機充填剤は1種又は2種以上併用することができる。
本発明の高熱伝導性樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、一般に熱可塑性樹脂に添加される公知の物質、すなわち難燃剤、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、潤滑剤、結晶化促進剤、結晶核剤等も要求性能に応じ適宜添加することができる。
表1〜7に示す各原料成分をドライブレンドした後、シリンダー温度320℃の二軸押出機に投入し(酸化マグネシウムは押出機のサイドフィード部より別添加)、溶融混練し、ペレット化した。表7、8に示す、実施例11〜12及び比較例19にのみ、(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体を含有している。
このペレットから射出成形機により各種試験片(評価項目により異なる。)を作製し、評価を行った。結果を表1〜7に示す。
なお、図1における点a〜点eはそれぞれ実施例1、4、10、3、8に相当する。
また、表1〜8において、「(B)成分含有率」は、(B)成分及び(C)成分の合計含有量に対する(B)成分の含有率(質量%)を示す。
さらに、表1〜8において、(B)成分の欄及び(C)成分の欄それぞれの含有量の数値は小数点以下を四捨五入して掲載しているのに対し、「(B)成分及び(C)成分の合計含有量」の欄においては、各成分の含有量の数値を四捨五入しないで計算して得た数値を掲載している。そのような事情から、表1〜8において、(B)成分の欄及び(C)成分の欄の各数値の合計と、「(B)成分及び(C)成分の合計含有量」とが一致しない場合がある。
各実施例・比較例・参考例において使用した各原料成分の詳細を以下に示す。
PPS樹脂:(株)クレハ製、フォートロンKPS W203A (溶融粘度:30Pa・s(せん断速度:1216sec−1、310℃))
(B)表面処理酸化マグネシウム
酸化マグネシウム:宇部マテリアルズ(株)製 RF−50−SC(表面処理:ビニルアルコキシシラン0.5質量%) (平均粒径50μm)
(C)ガラス繊維
日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維 ECS03T−747H(平均繊維径10μm)
(D)アルコキシシラン化合物
アルコキシシラン化合物:γ-アミノプロピルトリエトキシシラン:信越化学工業(株)製、KBE−903P
(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体
住友化学(株)製、ボンドファースト7L
(1)溶融粘度
(A)成分(PPS樹脂)については、東洋精機(株)製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmL/フラットダイを使用し、バレル温度310℃、せん断速度1216sec−1での溶融粘度を測定した。
調製した樹脂組成物(上記ペレット)については、東洋精機製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmL/フラットダイを使用し、バレル温度310℃、せん断速度1000sec−1での溶融粘度を測定した。
(2)薄肉流動性(厚み0.5mmtバーフロー:0.5mmtBF)
射出成形にて、シリンダー温度320℃、射出圧力100MPa、金型温度150℃での条件で、幅5mm、厚さ0.5mmの棒状成形品を成形し、流動距離を測定した。5回の試験における平均値を流動距離とした。
(3)熱伝導率
射出成形にてシリンダー温度320℃、金型温度150℃で直径30mm、厚さ2mmの円板状成形品を作製した。試験片を4枚重ねたサンプルを用い、ホットディスク法熱物性測定装置(京都電子工業(株)製 TPA-501)で熱伝導率を測定した。
(4)曲げ強度及び曲げ破断ひずみ
射出成形にて、シリンダー温度320℃、金型温度150℃でISO3167に準じた試験片(幅10mm、厚み4mmt)を作製し、ISO178に準じて曲げ強度(FS)及び曲げ破断ひずみ(Fγ)を測定した。
実施例1〜6及び実施例8〜12はいずれも、薄肉流動性、熱伝導率及び曲げ強度において優れた評価結果が得られた。特に、(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体を用いた実施例11及び12においては、それぞれ(B)成分及び(C)成分の合計含有量が同程度である実施例1、3と比較して曲げ破断ひずみ(靱性)に優れていた。すなわち、(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体を用いることで靱性に優れることが分かる。
(A)成分100質量部に対する(B)成分及び(C)成分の合計含有量が80質量部未満の比較例1は熱伝導率に劣り、同合計含有量が130質量部超の比較例15〜18は、曲げ強度又は薄肉流動性に劣っていた。
熱伝導率が0.6(W/m・K)以上であると、一般的に、良好な熱伝導性を有する樹脂組成物といえるが、(B)成分及び(C)成分をともに用いた場合、(A)成分100質量部に対する(B)成分及び(C)成分の合計含有量と、(B)成分及び(C)成分の合計含有量に対する(B)成分の含有率との関係が本発明に規定する範囲内でないと、熱伝導率を0.6(W/m・K)以上とすることができないことが分かる。
以上より、高熱伝導性及び優れた薄肉流動性を維持しつつ、高い曲げ強度を有するものとするには、(A)成分100質量部に対する(B)成分及び(C)成分の合計含有量を80〜130質量部とするとともに、(B)成分及び(C)成分の合計含有量に対する(B)成分の含有率との関係を本発明に規定する範囲内にする必要があることが分かる。
Claims (5)
- (A)ポリアリーレンサルファイド樹脂と、(B)ビニルアルコキシシラン化合物で予め表面処理された酸化マグネシウムと、(C)ガラス繊維と、(D)アルコキシシラン化合物と、を含む電気絶縁性の高熱伝導性樹脂組成物であって、
前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量が、前記(A)成分100質量部に対して80〜130質量部であり、かつ
前記(A)成分100質量部に対する前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量(質量部)をx軸、前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量に対する前記(B)成分の含有率(質量%)をy軸としたとき、x=83(質量部)、y=88.9(質量%)で表される点a、x=101(質量部)、y=80.0(質量%)で表される点b、x=124(質量部)、y=54.5(質量%)で表される点c、x=101(質量部)、y=90.0(質量%)で表される点d、及びx=124(質量部)、y=72.7(質量%)で表される点eからなる5つの点を頂点とする、線分ab、線分bc、線分ce、線分ed、及び線分daからなる図形の領域内に、前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量に対する前記(B)成分の含有率が存在することを特徴とする高熱伝導性樹脂組成物。 - 前記(D)アルコキシシラン化合物を、前記(A)成分100質量部に対して0.45〜1.5質量部含有する請求項1に記載の高熱伝導性樹脂組成物。
- さらに、(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体を、前記(A)成分100質量部に対して5〜15質量部含有する請求項1又は2に記載の高熱伝導性樹脂組成物。
- 前記(E)成分が、α−オレフィン由来の構成単位と、α,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位とを含むエポキシ基含有オレフィン系共重合体である請求項3に記載の高熱伝導性樹脂組成物。
- 前記(E)成分が、さらに(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含むエポキシ基含有オレフィン系共重合体である請求項4に記載の高熱伝導性樹脂組成物。
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