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JP6167011B2 - 電気絶縁性高熱伝導性樹脂組成物 - Google Patents
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JP6167011B2 - 電気絶縁性高熱伝導性樹脂組成物 - Google Patents

電気絶縁性高熱伝導性樹脂組成物 Download PDF

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本発明は、ポリアリーレンサルファイド樹脂を用いた、電気絶縁性の高熱伝導性樹脂組成物に関する。
ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下「PPS樹脂」と呼ぶ場合がある)に代表されるポリアリーレンサルファイド樹脂(以下「PAS樹脂」と呼ぶ場合がある)は、高い耐熱性、機械的物性、耐化学薬品性、寸法安定性、難燃性を有していることから、電気・電子機器部品材料、自動車機器部品材料、化学機器部品材料等に広く使用されている。このようなPAS樹脂の耐熱性と、熱伝導性フィラーの熱伝導性を活かし、PAS樹脂と熱伝導性フィラーとを配合した高熱伝導性樹脂組成物が知られている。熱伝導性フィラーとしては、例えば、銅、銀、鉄、アルミニウム等の金属又はこれらの合金からなる金属系フィラーや、カーボン、グラファイト等の炭素系フィラーや、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物からなるフィラー等が用いられる。
中でも、酸化マグネシウムは、熱伝導率が比較的高い上に、適度な硬度や絶縁性を有することから有用であり、本出願人は、表面処理された酸化マグネシウム、すなわちリン酸マグネシウム系化合物よりなる被覆層等を有する酸化マグネシウム、及びPAS樹脂等を含む高熱伝導性樹脂組成物を提案した(特許文献1)。この高熱伝導性樹脂組成物により、成形性や耐湿熱性を向上させるという課題を解決した。
その他、PAS樹脂と、表面処理された酸化マグネシウムとを用いた樹脂組成物としては、特許文献2〜4に記載された樹脂組成物が挙げられる。
特許文献2には、PAS樹脂、及びアルコキシシラン化合物で表面処理された酸化マグネシウム等を含む樹脂組成物が記載されている。この樹脂組成物において、表面処理された酸化マグネシウムを使用する目的は耐蝕性の付与である。また、当該酸化マグネシウムの添加量は少量であり、樹脂組成物が高熱伝導性を発揮し得る量ではない。つまり、当該樹脂組成物は、高熱伝導性を有する樹脂組成物ではない。
特許文献3には、PAS樹脂、及び800℃以上で焼成後表面処理してなる酸化マグネシウム等を含む樹脂組成物(電気絶縁・放熱部品用成形材料)が記載されている。この樹脂組成物において、表面処理した酸化マグネシウムを使用する目的は高熱伝導性及び耐湿熱性の付与である。そして、当該表面処理された酸化マグネシウムの特徴は、800℃以上で焼成後に表面処理を行うことにある。また、表面処理に用いる表面処理剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等が例示されている。
特許文献4には、熱可塑性ポリマー、酸化マグネシウム(シラン等のカップリング剤で被覆したもの)、及びフィラー(ガラス繊維)を所定の比率で含む熱伝導性ポリマー組成物(金属/ポリマーハイブリッド物品)が記載されている。この熱伝導性ポリマー組成物は、熱伝導性や機械強度等の向上を図ったものであるが、曲げ強度および薄肉流動性については考慮されていない。
近年、電気製品等の各種製品の部品において、小型化、薄肉化が進み、高熱伝導性や、優れた機械的特性を維持したまま、薄肉流動性に優れる樹脂組成物が要求されている。
上記特許文献1に記載の高熱伝導性樹脂組成物は、高い流動性を示すものの、薄肉流動性に優れると言える程の流動性を有するものではない。その他の特許文献に記載の樹脂組成物も、薄肉流動性を有するものではない。
特開2006−282783号公報 特開平8−12886号公報 特開2002−38010号公報 特表2013−500352号公報
本発明は、上記従来の技術に鑑みなされたものであり、その課題は、高熱伝導性及び優れた薄肉流動性を維持しつつ、高い曲げ強度を有する、電気絶縁性の熱伝導性樹脂組成物を提供することにある。
前記課題を解決する本発明は以下の通りである。
(1)(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂と、(B)ビニルアルコキシシラン化合物で予め表面処理された酸化マグネシウムと、(C)ガラス繊維と、(D)アルコキシシラン化合物と、を含む電気絶縁性の高熱伝導性樹脂組成物であって、
前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量が、前記(A)成分100質量部に対して80〜130質量部であり、かつ
前記(A)成分100質量部に対する前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量(質量部)をx軸、前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量に対する前記(B)成分の含有率(質量%)をy軸としたとき、x=83(質量部)、y=88.9(質量%)で表される点a、x=101(質量部)、y=80.0(質量%)で表される点b、x=124(質量部)、y=54.5(質量%)で表される点c、x=101(質量部)、y=90.0(質量%)で表される点d、及びx=124(質量部)、y=72.7(質量%)で表される点eからなる5つの点を頂点とする、線分ab、線分bc、線分ce、線分ed、及び線分daからなる図形の領域内に、前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量に対する前記(B)成分の含有率が存在することを特徴とする高熱伝導性樹脂組成物。
(2)前記(D)アルコキシシラン化合物を、前記(A)成分100質量部に対して0.45〜1.5質量部含有する前記(1)に記載の高熱伝導性樹脂組成物。
(3)さらに、(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体を、前記(A)成分100質量部に対して5〜15質量部有する前記(1)又は(2)に記載の高熱伝導性樹脂組成物。
(4)前記(E)成分が、α−オレフィン由来の構成単位と、α,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位とを含むオレフィン系共重合体である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の高熱伝導性樹脂組成物。
(5)前記(E)成分が、さらに(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含むオレフィン系共重合体である前記(4)に記載の高熱伝導性樹脂組成物。
本発明によれば、高熱伝導性及び優れた薄肉流動性を維持しつつ、高い曲げ強度を有する、電気絶縁性の熱伝導性樹脂組成物を提供することができる。
(B)表面処理酸化マグネシウム及び(C)ガラス繊維の合計含有量に対する(B)表面処理酸化マグネシウムの含有率の関係をグラフで示す図である。
本発明の高熱伝導性樹脂組成物は、(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂と、(B)ビニルアルコキシシラン化合物で予め表面処理された酸化マグネシウムと、(C)ガラス繊維と、(D)アルコキシシラン化合物と、を含む電気絶縁性の高熱伝導性樹脂組成物であって、前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量が、前記(A)成分100質量部に対して80〜130質量部であり、かつ前記(A)成分100質量部に対する前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量(質量部)をx軸、前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量に対する前記(B)成分の含有率(質量%)をy軸としたとき、x=83(質量部)y=88.9(質量%)表される点a、x=101(質量部)、y=80.0(質量%)で表される点b、x=124(質量部)、y=54.5(質量%)で表される点c、x=101(質量部)、y=90.0(質量%)で表される点d、及びx=124(質量部)、y=72.7(質量%)で表される点eからなる5つの点を頂点とする、線分ab、線分bc、線分ce、線分ed、及び線分daからなる図形の領域内に、前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量に対する前記(B)成分の含有率が存在することを特徴としている。
以下、本発明の高熱伝導性樹脂組成物の各成分について詳述する。
[(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂]
(A)成分としてのポリアリーレンスルフィド樹脂は、主として、繰返し単位として−(Ar−S)−(但しArはアリーレン基)で構成された高分子化合物であり、本発明では一般的に知られている分子構造のPAS樹脂を使用することができる。
上記アリーレン基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’−ジフェニレンスルフォン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンエーテル基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基等が挙げられる。PAS樹脂は、上記繰返し単位のみからなるホモポリマーでもよいし、下記の異種繰返し単位を含んだコポリマーが加工性等の点から好ましい場合もある。
ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp−フェニレン基を用いた、p−フェニレンサルファイド基を繰返し単位とするPPSが好ましく用いられる。また、コポリマーとしては、前記のアリーレン基からなるアリーレンサルファイド基の中で、相異なる2種以上の組み合わせが使用できるが、中でもp−フェニレンサルファイド基とm−フェニレンサルファイド基を含む組み合わせが特に好ましく用いられる。この中で、p−フェニレンサルファイド基を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含むものが、耐熱性、成形性、機械的特性等の物性上の点から適当である。また、これらのPAS樹脂の中で、2官能性ハロゲン芳香族化合物を主体とするモノマーから縮重合によって得られる実質的に直鎖状構造の高分子量ポリマーが、特に好ましく使用できる。尚、本発明に用いる(A)PAS樹脂は、異なる2種類以上の分子量のPAS樹脂を混合して用いてもよい。
尚、直鎖状構造のPAS樹脂以外にも、縮重合させるときに、3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物等のモノマーを少量用いて、部分的に分岐構造または架橋構造を形成させたポリマーや、低分子量の直鎖状構造ポリマーを酸素等の存在下、高温で加熱して酸化架橋または熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも挙げられる。しかし、分岐構造や架橋構造を形成させたポリマーは、分岐構造や架橋構造の形成量が多くなるほど流動性が低下するため、使用するに当たり注意する必要がある。
本発明に使用する基体樹脂としてのPAS樹脂の溶融粘度(310℃・せん断速度1216sec−1)は、上記混合系の場合も含め200Pa・s以下が好ましく、中でも8〜150Pa・sの範囲にあるものは、機械的物性と流動性のバランスが優れており、特に好ましい。溶融粘度が200Pa・sを超えると流動性を良好とすることが困難となり、不具合が生じることがある。
[(B)ビニルアルコキシシラン化合物で予め表面処理された酸化マグネシウム]
本発明において、(B)ビニルアルコキシシラン化合物で予め表面処理された酸化マグネシウム(以下、「表面処理酸化マグネシウム」と呼ぶ場合がある。)は、高熱伝導性及び高薄肉流動性を付与するために添加される。このように、本発明においては、酸化マグネシウムの表面処理剤としてビニルアルコキシシラン化合物を用いるのであるが、アルコキシシラン化合物の中でも、ビニルアルコキシシラン化合物を用いた場合のみが顕著な薄肉流動性を示す。逆に言えば、ビニルアルコキシシラン化合物以外のアルコキシシラン化合物で予め表面処理した酸化マグネシウムを用いても顕著な薄肉流動性は示さず、顕著な薄肉流動性を発揮させるにはビニルアルコキシシラン化合物による表面処理が必要不可欠である。
(B)表面処理酸化マグネシウムにおいて、表面処理に用いるビニルアルコキシシラン化合物としては、1分子中にビニル基を1個以上有し、アルコキシ基を2個あるいは3個有するシラン化合物が好ましく、例えばビニルトリメトキシシラン加水分解物、ビニルトリエトキシシラン加水分解物、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン加水分解物等が挙げられ、中でも、ビニルトリメトキシシラン加水分解物が好ましい。
本発明において、(B)表面処理酸化マグネシウム表面における、酸化マグネシウムに対するビニルアルコキシシラン化合物の付着量は0.3〜1.5質量%であることが好ましく、0.5〜1質量%であることがより好ましい。当該ビニルアルコキシシラン化合物の付着量が0.3〜1.5質量%であることで、顕著な薄肉流動性を示す。
(B)表面処理酸化マグネシウムのレーザー回折・散乱法により測定した平均粒径(以下、単に「平均粒径」と呼ぶ場合ある。)は、薄肉流動性をより向上させる観点から、10μm超100μm以下であることが好ましく、15μm以上60μm以下であることがより好ましく、25μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。
なお、本発明において、「レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径」とは、レーザー回折・散乱法により測定した粒度分布における積算値50%の粒径を意味する。
本発明においては、(B)表面処理酸化マグネシウムと、後記の(C)ガラス繊維とを、所定の含有比率で併用することでその効果を発揮させていることから、当該(B)成分の好ましい含有量は単独で規定することができないため、(C)ガラス繊維の含有量とともに後述する。
[(C)ガラス繊維]
本発明において用いるガラス繊維としては特に制限はないが、例えば、繊維径5〜15μm(好ましくは、6〜13μm)のものを用いることができる。中でも、成形後の強度が高くなることから、繊維径8〜10μmのものが特に好ましい。
このような本発明において用いるガラス繊維は、市販のものを用いることができる。上市しているものとしては、例えば、富士ファイバーグラス(株)製、チョップドガラス繊維(CS 3DE−257、平均繊維径:6μm)、日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維(ECS03T−747H、平均繊維径:10μm)、日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維(ECS03T−747、平均繊維径:13μm)等が挙げられる。
本発明においては、(B)成分及び(C)成分の合計含有量が前記(A)成分100質量部に対して80〜130質量部であるが、当該合計含有量が80質量部未満であると熱伝導性に劣り、130質量部を超えると曲げ強度又は薄肉流動性に劣る。(B)成分及び(C)成分の合計含有量は、83〜124質量部が好ましく、90〜124質量部がより好ましい。
一方、熱伝導率が0.6W/m・K以上あれば、一般的に、良好な熱伝導性を有する樹脂組成物といえる。曲げ強度又は薄肉流動性を維持した上で熱伝導率を0.6W/m・K以上とするには、(B)成分及び(C)成分の合計含有量を上記範囲とするのみならず、(B)成分及び(C)成分の合計含有量に対する(B)成分の含有率について、以下の条件を満足する必要がある。
すなわち、(A)成分100質量部に対する(B)成分及び(C)成分の合計含有量(質量部)をx軸、(B)成分及び(C)成分の合計含有量に対する(B)成分の含有率(質量%)をy軸としたとき、x=83(質量部)、y=88.9(質量%)で表される点a、x=101(質量部)、y=80.0(質量%)で表される点b、x=124(質量部)、y=54.5(質量%)で表される点c、x=101(質量部)、y=90.0(質量%)で表される点d、及びx=124(質量部)、y=72.7(質量%)で表される点eからなる5つの点を頂点とする、線分ab、線分bc、線分ce、線分ed、及び線分daからなる図形の領域内に、前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量に対する前記(B)成分の含有率が存在する。
図1は、(A)成分100質量部に対する(B)成分及び(C)成分の合計含有量(質量部)をx軸、(B)成分及び(C)成分の合計含有量に対する(B)成分の含有率(質量%)をy軸とするグラフであり、前記点a〜点eをプロットしている。図1において、線分ab、線分bc、線分ce、線分ed、及び線分daからなる図形内に(B)成分及び(C)成分の合計含有量に対する(B)成分の含有率が存在するのであれば、曲げ強度又は薄肉流動性を維持した上で熱伝導率を0.6W/m・K以上とすることができる。逆に、同(B)成分の含有率が上記図形外に存在するのであれば、熱伝導率を0.6W/m・K以上とすることができない。
[(D)アルコキシシラン化合物]
本発明において、機械的物性の向上のためには、(D)アルコキシシラン化合物を配合してもよい。ただし、(D)アルコキシシラン化合物を添加すると流動性が低下するため、機械的特性を得ようとすると流動性が犠牲となる。従って、後述するように、配合する場合におけるその量は少量であることが好ましい。
(D)アルコキシシラン化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、エポキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン等のアルコキシシランが挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。尚、アルコキシ基の炭素数は1〜10が好ましく、特に好ましくは1〜4である。
エポキシアルコキシシランの例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
アミノアルコキシシランの例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ジアリルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ジアリルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
ビニルアルコキシシランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
メルカプトアルコキシシランの例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらの内、エポキシアルコキシシランとアミノアルコキシシランが好ましく、特に好ましいものはγ−アミノプロピルトリエトキシシランである。
本発明において、(D)アルコキシシラン化合物は、(A)PAS樹脂100質量部に対して0.45〜1.5質量部配合することが好ましく、0.5〜0.8質量部配合することがより好ましい。
[(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体]
本発明においては、靱性を更に向上させるために、(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体を含有することが好ましい。(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体は、特に限定されない。(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体としては、例えば、α−オレフィン由来の構成単位とα,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位とを含むオレフィン系共重合体が挙げられ、中でも、特に優れた靭性(曲げ破断ひずみ)を発現する高熱伝導性樹脂組成物(成形体)が得られることから、更に(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含むオレフィン系共重合体が好ましい。なお、以下、(メタ)アクリル酸エステルを(メタ)アクリレートともいう。例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルをグリシジル(メタ)アクリレートともいう。また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸との両方を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとの両方を意味する。
α−オレフィンとしては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられ、特にエチレンが好ましい。α−オレフィンは、1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体がα−オレフィン由来の構成単位を含むことで、樹脂部材には可撓性が付与されやすい。可撓性の付与により樹脂部材が軟らかくなることは、靱性(曲げ破断ひずみ)の改善に寄与する。
α,β−不飽和酸のグリシジルエステルとしては、特に限定されず、例えば、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、エタクリル酸グリシジルエステル等が挙げられ、特にメタクリル酸グリシジルエステルが好ましい。α,β−不飽和酸のグリシジルエステルは、1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体がα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを含むことで、靱性(曲げ破断ひずみ)が向上する効果が得られやすい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸−n−オクチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−アミル、メタクリル酸−n−オクチル等のメタクリル酸エステルが挙げられる。中でも、特にアクリル酸メチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位は、靱性(曲げ破断ひずみ)の向上に寄与する。
α−オレフィン由来の構成単位とα,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位とを含むオレフィン系共重合体、及び、更に(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含むオレフィン系共重合体は、従来公知の方法で共重合を行うことにより製造することができる。例えば、通常よく知られたラジカル重合反応により共重合を行うことによって、上記共重合体を得ることができる。共重合体の種類は、特に問われず、例えば、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。また、上記オレフィン系共重合体に、例えば、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸−2エチルヘキシル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリル酸ブチル・スチレン共重合体等が、分岐状に又は架橋構造的に化学結合したオレフィン系グラフト共重合体であってもよい。
本発明に用いるオレフィン系共重合体は、本発明の効果を害さない範囲で、他の共重合成分由来の構成単位を含有することができる。
より具体的には、(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体としては、例えば、グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体、グリシジルエーテル変性エチレン共重合体等が挙げられ、中でも、グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体が好ましい。
グリシジルメタクリレート変性エチレン系共重合体としては、グリシジルメタクリレートグラフト変性エチレン重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸メチル共重合体を挙げることができる。中でも、特に優れた金属樹脂複合成形体が得られることから、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体及びエチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸メチル共重合体が好ましく、エチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸メチル共重合体が特に好ましい。エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体及びエチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸メチル共重合体の具体例としては、「ボンドファースト」(住友化学(株)製)等が挙げられる。
グリシジルエーテル変性エチレン共重合体としては、例えば、グリシジルエーテルグラフト変性エチレン共重合体、グリシジルエーテル−エチレン共重合体を挙げることができる。
本発明においては、(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体は、靱性を向上させる観点から、(A)成分100質量部に対して5〜15質量部含有することが好ましく、7〜9質量部含有することがより好ましい。
[充填剤]
本発明の高熱伝導性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、機械的強度、耐熱性、寸法安定性(耐変形、そり)、電気的性質等の性能の改良のため無機又は有機充填剤を配合したものでもよく、これには目的に応じて繊維状、粉粒状、板状の充填剤が用いられる。
繊維状充填剤としては、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維等の無機質繊維状物質が挙げられる。尚、ポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機質繊維物質も使用することができる。
粉粒状充填剤としては、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトのごとき珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛のごとき金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのごとき金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのごとき金属の硫酸塩が挙げられる。
また、板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレークが挙げられる。
以上の無機充填剤は1種又は2種以上併用することができる。
[他の成分]
本発明の高熱伝導性樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、一般に熱可塑性樹脂に添加される公知の物質、すなわち難燃剤、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、潤滑剤、結晶化促進剤、結晶核剤等も要求性能に応じ適宜添加することができる。
本発明の高熱伝導性樹脂組成物の製造は、(1)全ての原料を混ぜて混練する方法、(2)アルコキシシラン化合物をPAS樹脂に添加し、溶融混練後、表面処理酸化マグネシウム及びガラス繊維を添加する方法、(3)PAS樹脂を溶融させた後、表面処理酸化マグネシウム及びガラス繊維にアルコキシシラン化合物を添加したフィラーとして添加する方法等、何れの方法でも本発明の効果は発揮されるが、PAS樹脂とアルコキシシラン化合物が反応することにより機械的強度が向上するため、より効率良くPAS樹脂とアルコキシシラン化合物が反応するように、(2)のアルコキシシラン化合物をPAS樹脂に添加し、溶融混練後、表面処理酸化マグネシウム及びガラス繊維を添加する方法にて製造することが好ましい。
以上のようにして得られる本発明の高熱伝導性樹脂組成物は、薄肉流動性に優れるため、小型で複雑な形状の部品や、薄肉化されたものであっても、高い熱伝導性及び曲げ特性を維持しつつ容易に成形することができる。また、本発明の高熱伝導性樹脂組成物を用い、射出成形や押出成形、ブロー成形等で得られた成形品は、高い耐湿熱性、耐化学薬品性、寸法安定性、難燃性、電気絶縁性、優れた放熱性を示す。この利点を活かして自動車部品(モーター周辺)、電気デバイス(LEDヒートシンク)、熱交換器、放熱板、光ピックアップ等といった内部で発生した熱を外部に放熱する部品に好適に用いることができる。
また、その他の用途として、例えばLED、センサー、コネクター、ソケット、端子台、プリント基板、モーター部品、ECUケース等の電気・電子部品、照明部品、テレビ部品、炊飯器部品、電子レンジ部品、アイロン部品、複写機関連部品、プリンター関連部品、ファクシミリ関連部品、ヒーター、エアコン用部品等の家庭・事務電気製品部品に用いることができる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜6、8〜12、比較例1〜19、参考例1
表1〜7に示す各原料成分をドライブレンドした後、シリンダー温度320℃の二軸押出機に投入し(酸化マグネシウムは押出機のサイドフィード部より別添加)、溶融混練し、ペレット化した。表7、8に示す、実施例11〜12及び比較例19にのみ、(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体を含有している。
このペレットから射出成形機により各種試験片(評価項目により異なる。)を作製し、評価を行った。結果を表1〜7に示す。
なお、図1における点a〜点eはそれぞれ実施例1、4、10、3、8に相当する。
また、表1〜8において、「(B)成分含有率」は、(B)成分及び(C)成分の合計含有量に対する(B)成分の含有率(質量%)を示す。
さらに、表1〜8において、(B)成分の欄及び(C)成分の欄それぞれの含有量の数値は小数点以下を四捨五入して掲載しているのに対し、「(B)成分及び(C)成分の合計含有量」の欄においては、各成分の含有量の数値を四捨五入しないで計算して得た数値を掲載している。そのような事情から、表1〜8において、(B)成分の欄及び(C)成分の欄の各数値の合計と、「(B)成分及び(C)成分の合計含有量」とが一致しない場合がある。
各実施例・比較例・参考例において使用した各原料成分の詳細を以下に示す。
(A)PAS樹脂
PPS樹脂:(株)クレハ製、フォートロンKPS W203A (溶融粘度:30Pa・s(せん断速度:1216sec−1、310℃))
(B)表面処理酸化マグネシウム
酸化マグネシウム:宇部マテリアルズ(株)製 RF−50−SC(表面処理:ビニルアルコキシシラン0.5質量%) (平均粒径50μm)
(C)ガラス繊維
日本電気硝子(株)製、チョップドガラス繊維 ECS03T−747H(平均繊維径10μm)
(D)アルコキシシラン化合物
アルコキシシラン化合物:γ-アミノプロピルトリエトキシシラン:信越化学工業(株)製、KBE−903P
(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体
住友化学(株)製、ボンドファースト7L
各実施例・比較例において、以下に示す試験片を作製し各評価を行った。
(1)溶融粘度
(A)成分(PPS樹脂)については、東洋精機(株)製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmL/フラットダイを使用し、バレル温度310℃、せん断速度1216sec−1での溶融粘度を測定した。
調製した樹脂組成物(上記ペレット)については、東洋精機製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmL/フラットダイを使用し、バレル温度310℃、せん断速度1000sec−1での溶融粘度を測定した。
(2)薄肉流動性(厚み0.5mmtバーフロー:0.5mmtBF)
射出成形にて、シリンダー温度320℃、射出圧力100MPa、金型温度150℃での条件で、幅5mm、厚さ0.5mmの棒状成形品を成形し、流動距離を測定した。5回の試験における平均値を流動距離とした。
(3)熱伝導率
射出成形にてシリンダー温度320℃、金型温度150℃で直径30mm、厚さ2mmの円板状成形品を作製した。試験片を4枚重ねたサンプルを用い、ホットディスク法熱物性測定装置(京都電子工業(株)製 TPA-501)で熱伝導率を測定した。
(4)曲げ強度及び曲げ破断ひずみ
射出成形にて、シリンダー温度320℃、金型温度150℃でISO3167に準じた試験片(幅10mm、厚み4mmt)を作製し、ISO178に準じて曲げ強度(FS)及び曲げ破断ひずみ(Fγ)を測定した。
Figure 0006167011
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一方、(E)成分添加の有無と、「曲げ破断ひずみ(Fγ)」との関係について評価するため、(E)成分を添加した実施例11、12及び比較例19と、(E)成分を添加していない実施例1及び3とにおける「曲げ破断ひずみ(Fγ)」の数値を下記表8に示した。
Figure 0006167011
表1〜表8より、以下のことが分かる。
実施例1〜6及び実施例8〜12はいずれも、薄肉流動性、熱伝導率及び曲げ強度において優れた評価結果が得られた。特に、(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体を用いた実施例11及び12においては、それぞれ(B)成分及び(C)成分の合計含有量が同程度である実施例1、3と比較して曲げ破断ひずみ(靱性)に優れていた。すなわち、(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体を用いることで靱性に優れることが分かる。
(A)成分100質量部に対する(B)成分及び(C)成分の合計含有量が80質量部未満の比較例1は熱伝導率に劣り、同合計含有量が130質量部超の比較例15〜18は、曲げ強度又は薄肉流動性に劣っていた。
熱伝導率が0.6(W/m・K)以上であると、一般的に、良好な熱伝導性を有する樹脂組成物といえるが、(B)成分及び(C)成分をともに用いた場合、(A)成分100質量部に対する(B)成分及び(C)成分の合計含有量と、(B)成分及び(C)成分の合計含有量に対する(B)成分の含有率との関係が本発明に規定する範囲内でないと、熱伝導率を0.6(W/m・K)以上とすることができないことが分かる。
以上より、高熱伝導性及び優れた薄肉流動性を維持しつつ、高い曲げ強度を有するものとするには、(A)成分100質量部に対する(B)成分及び(C)成分の合計含有量を80〜130質量部とするとともに、(B)成分及び(C)成分の合計含有量に対する(B)成分の含有率との関係を本発明に規定する範囲内にする必要があることが分かる。

Claims (5)

  1. (A)ポリアリーレンサルファイド樹脂と、(B)ビニルアルコキシシラン化合物で予め表面処理された酸化マグネシウムと、(C)ガラス繊維と、(D)アルコキシシラン化合物と、を含む電気絶縁性の高熱伝導性樹脂組成物であって、
    前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量が、前記(A)成分100質量部に対して80〜130質量部であり、かつ
    前記(A)成分100質量部に対する前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量(質量部)をx軸、前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量に対する前記(B)成分の含有率(質量%)をy軸としたとき、x=83(質量部)、y=88.9(質量%)で表される点a、x=101(質量部)、y=80.0(質量%)で表される点b、x=124(質量部)、y=54.5(質量%)で表される点c、x=101(質量部)、y=90.0(質量%)で表される点d、及びx=124(質量部)、y=72.7(質量%)で表される点eからなる5つの点を頂点とする、線分ab、線分bc、線分ce、線分ed、及び線分daからなる図形の領域内に、前記(B)成分及び前記(C)成分の合計含有量に対する前記(B)成分の含有率が存在することを特徴とする高熱伝導性樹脂組成物。
  2. 前記(D)アルコキシシラン化合物を、前記(A)成分100質量部に対して0.45〜1.5質量部含有する請求項1に記載の高熱伝導性樹脂組成物。
  3. さらに、(E)エポキシ基含有オレフィン系共重合体を、前記(A)成分100質量部に対して5〜15質量部含有する請求項1又は2に記載の高熱伝導性樹脂組成物。
  4. 前記(E)成分が、α−オレフィン由来の構成単位と、α,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位とを含むエポキシ基含有オレフィン系共重合体である請求項3に記載の高熱伝導性樹脂組成物。
  5. 前記(E)成分が、さらに(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含むエポキシ基含有オレフィン系共重合体である請求項4に記載の高熱伝導性樹脂組成物。
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