以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付し、重複した説明を適宜省略する。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、以下の実施の形態の説明に用いる「上」、「上方」または「上部」、ならびに「下」、「下方」または「下部」はそれぞれ、半導体装置の基板の主面に対して直角に遠ざかる向き、並びに基板の主面に近づく向きを示し、半導体装置の実装状態における上下方向とは必ずしも一致しない点にも留意する必要がある。
まず、本発明の実施の形態について説明するにあたり、本発明の理解を容易にするために、上述した課題を解決すべく本発明者が行った鋭意検討について説明する。まず、本発明者が鋭意検討を行う対象となった従来の窒化物半導体装置について説明する。図12は、従来の窒化物半導体装置としてのショットキーバリアダイオード(SBD)を示す模式的な断面図である。
すなわち、図12に示すように、従来のSBD100は、基板101上に順次積層された、バッファ層102、電子走行層103、および電子供給層104上に、選択的にアノード電極105Aおよびカソード電極105C、ならびに絶縁膜106を備える。
このように構成されたSBD100などの窒化物半導体装置において、その素子抵抗は、主にアクセス抵抗とコンタクト抵抗とによって決定される。ここで、コンタクト抵抗は、オーミック電極であるカソード電極105Cと、電子供給層104を介してカソード電極105Cとオーミック接触する2DEG層Aとの間のコンタクト部Conにおける抵抗である。また、アクセス抵抗は、2DEG層Aにおける、ショットキー電極であるアノード電極105Aとコンタクト部Conとの間のアクセス部Acにおける抵抗である。
ここで、アクセス抵抗は、2DEG層Aにおける電子のキャリア密度(2DEG濃度Ns)と移動度(電子移動度)との積に反比例する。そこで、アクセス抵抗を低減するには、2DEG層Aの2DEG濃度Nsを増加させるか、電子移動度を増加させる必要がある。ところが、本発明者の知見によれば、2DEG濃度Nsが高すぎると、ショットキー電極であるアノード電極105Aの部分において電界強度が強くなりすぎるという問題が生じる。この問題を回避する観点から、2DEG濃度Nsにおいては、8×1012〜10×1012cm-2程度が最適値となる上限が存在する。これにより、本発明者は、素子抵抗を低減するには、電子移動度を増加させる必要があることを想起した。これは、SBD100に限らず、アクセス部に2DEGを利用している、HFET、HEMT、MOSFET、およびMISFETなどの窒化物半導体装置においても同様である。
また、本発明者の知見によれば、電子走行層103は通常、アンドープの窒化ガリウム(u−GaN)から構成されることから、電子移動度を増加させるために転位密度を低減する方法がある。ところが、窒化物半導体装置において通常用いられるシリコン(Si)基板上にGaNを成長させる場合、Si基板とGaN層との格子定数の相違から転位密度には108cm-2程度の下限が存在するため、転位密度の低減にも限界がある。
そこで、電子移動度を増加させるために電子供給層104における電子の波動関数のしみ出しを抑制して合金散乱を減少させる方法が考えられる。従来、この合金散乱を減少させるために、電子供給層を構成するAlGaN層と電子走行層を構成するGaN層との間にAlNからなるスペーサ層を設けたAlGaN/AlN/GaN積層構造が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、電子移動度を増加させ、アクセス抵抗を低減することができても、カソード電極105Cなどのオーミック電極において良好なオーミック接触が得られなくなると、コンタクト抵抗が増加してしまう。そこで、本発明者は、この特許文献1に記載された窒化物半導体装置におけるコンタクト抵抗を、オーミック電極にTi/Al電極を用いてTLM(Transmission Line Model)法によって測定し、コンタクト部Conの接触比抵抗(Ω・cm2)における、AlNスペーサ層の膜厚依存性を測定した。この測定結果を図13に示す。なお、AlNスペーサ層の膜厚はX線反射測定を用いて算出し、AlNの設計膜厚と概ね相違が無いことを確認した。また、図面に記載したグラフにおいて、αE±βはα×10±βを示す。
図13から、AlGaN/AlN/GaN積層構造を採用した半導体装置においては、AlNスペーサ層の膜厚の増加に従って、コンタクト部の接触比抵抗が増加することが分かる。そして、半導体装置において良好なオーミック接触を得るための接触比抵抗である2.0×10-5Ωcm2以下の範囲(図13中、点線から矢印方向)を考慮すると、AlNスペーサ層の膜厚を0.5nm未満に小さくする必要がある。他方、本発明者が同様の半導体装置における電子移動度のAlNスペーサ層の膜厚依存性をホール効果(Hall効果)測定により測定したところ、AlNスペーサ層の膜厚が0.5nmの場合において、電子移動度が最大になることが確認された。すなわち、電子供給層の下層にAlNスペーサ層を設けたAlGaN/AlN/GaN積層構造を採用した場合、2DEGの電子移動度を増加させて良好なオーミック接触を両立させるのは極めて困難であることが確認された。
そこで、本発明者は、電子供給層に、窒化アルミニウム(AlN)層と窒化ガリウム(GaN)層とを交互に順次積層させてAlN/GaN超格子層とした擬似混晶構造を採用することにより、電子移動度を増加させる方法について検討を行った。この構成によれば、格子緩和させることなく擬似混晶の平均Al組成比を増加できるとともに、電子供給層104の膜厚を増加させることが容易になる。これにより、AlN/GaN超格子層を構成するAlN層およびGaN層の層数、またはAlN層およびGaN層を組とした場合においては組数と、平均Al組成比とを調整することによって、2DEG層の2DEG濃度Nsを制御できる。さらに、2DEG濃度Nsを高濃度に維持できるとともに電子移動度を増加できるので、半導体装置におけるアクセス抵抗を低減できる。
そこで、本発明者は、上述した理由から、電子供給層104を擬似混晶構造とした半導体装置におけるコンタクト抵抗を測定し、コンタクト部Conの接触比抵抗(Ω・cm2)における、電子供給層の平均Al組成比依存性を測定した。なお、この電子供給層104としては、0.5nmの膜厚のAlN層と2nmの膜厚のGaN層とを1組として、7〜8組積層させて構成した。また、AlN層の膜厚を0.5nmに固定しつつ擬似混晶内におけるGaN層膜厚を変化させることで平均Al組成比を変化させた場合の測定結果を図14に示す。なお、AlN層およびGaN層の膜厚はそれぞれ、X線反射測定(XRR)法から見積もった。
図14から、電子供給層をAlN/GaN超格子構造とした場合、コンタクト部Conにおける接触比抵抗は、平均Al組成比を増加させてもほぼ一定であることが分かる。そして、半導体装置に適用可能な接触比抵抗である2.0×10-5Ωcm2以下の範囲(図14中、点線から矢印方向)を考慮しても、AlN/GaN超格子構造の平均Al組成比が、電子供給層がAlGaNの単層から構成されているとみなして電子走行層に対する電子供給層の歪み量がAlGaNの単層の臨界膜厚以下となる平均Al組成比、具体的にはたとえば平均Al組成比が40%以下であれば、良好なオーミック接触が確保できることが分かる。また、本発明者が電子供給層を擬似混晶構造とした場合の2DEG層の電子移動度を計測したところ、電子供給層の下層にAlNスペーサ層を設けた半導体装置において、AlNスペーサ層の膜厚を0.5nmとした場合とほぼ同等の高い電子移動度が得られることが確認された。
また、本発明者は、素子抵抗をより一層低減させるために、コンタクト抵抗のさらなる低減について鋭意検討を行った。まず、本発明者が種々実験および検討を行ったところ、擬似混晶の電子供給層を構成するAlN/GaN超格子層におけるAlN層が1nm以上に厚いと、コンタクト抵抗が急激に悪化することが判明した。すなわち、本発明者は、擬似混晶内のAlN層の存在がコンタクト抵抗の増減に大きな影響を及ぼすことを知見した。そこで、本発明者は、コンタクト抵抗を悪化させないような擬似混晶構造について種々検討を行ったところ、擬似混晶構造をAlGaN/AlGaN超格子層とすることによって、コンタクト抵抗を悪化させることなく電子移動度を向上できることを想起した。
すなわち本発明者は、電子供給層を、AlN/GaN超格子層に代えて、平均Al組成比Xに対して大きいAl組成比x1(x1>X)と小さいAl組成比x2(X>x2)との少なくとも2種類の異なるAl組成比のAlGaN層を交互に積層する構成を想起した。その上で、本発明者は、さらなる実験および検討を行い、オーミック電極の部分において良好なオーミック接触を確保するために、AlGaN超格子層を構成する複数のAlGaN層におけるAl組成比が、AlGaN超格子層の膜厚方向(深さ方向)に沿って連続的に、たとえば三角波状や正弦波状に増減変調させる構成を想起した。また、このAl組成比の増減は、従来の矩形状の増減よりも比較的緩やかにするのが好ましい。この場合、電子供給層を構成するAlGaN超格子層は、平均Al組成比Xよりも大きいAl組成比x1となる極大部分(以下、極大Al組成比x1)と、平均Al組成比Xよりも小さいAl組成比x2となる極小部分(以下、極小Al組成比x2)とが交互に並んだ、いわゆるAl組成変調超格子構造を有する。これにより、2DEG層Aを構成する電子の波動関数は、同じ膜厚のAlN層に対してAlx1Ga1-x1N層の方が伝導帯端のエネルギーが低いため、AlGaN超格子層の基体側から表面側に向かってしみ出しやすくなり、コンタクト抵抗を低減できる。以上により、窒化物半導体装置において、コンタクト抵抗を低減できるとともに、電子走行層内に生じる2DEG層のキャリア密度(2DEG濃度)を高い水準に維持しつつ電子移動度を向上させてアクセス抵抗を低減することができる。以下に説明する実施の形態は、以上の鋭意検討に基づいて案出されたものである。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1による窒化物半導体装置を製造するための半導体積層基板の構成を示す断面図である。すなわち、この実施の形態1における半導体積層基板10においては、基体11上に、電子走行層12、電子供給層13、エッチング犠牲層14、および半導体層15が順次積層されて構成されている。
基体11は、たとえば、基板およびバッファ層などから構成される。基板は、たとえばシリコン(Si)基板、ガリウム砒素(GaAs)基板、ガリウムリン(GaP)基板、GaN基板、AlN基板、炭化ケイ素(SiC)基板、炭素(C)基板、またはサファイア基板などからなる。バッファ層は、たとえばGaN層やAlN層などからなる。なお、バッファ層にC、Fe、Mgなどの不純物を添加することによって、バッファ層を半絶縁化させてもよい。また、必要に応じて、窒化物半導体装置の構成に必要な種々の層を設けても良い。そして、これらの基板、バッファ層、および必要に応じたその他の層により基体11が構成されている。
第1半導体層としての電子走行層12は、たとえば膜厚が700nm(0.7μm)のアンドープの窒化ガリウム(u−GaN)から構成される。なお、電子走行層12を構成する材料としては、GaN以外の材料を用いても良く、AlGaNを用いる場合、そのAl組成比は5%以下とするのが好ましい。
第2半導体層としての電子供給層13は、Al組成比が異なりバンドギャップが異なる少なくとも2種類のIII族窒化物系化合物半導体を複数積層した超格子層から構成される。この実施の形態1において電子供給層13は、たとえば平均Al組成比XのAlXGa1-XNの擬似混晶構造を有し、少なくとも2種類の互いに異なる極大Al組成比x1または極小Al組成比x2の種々の値をとるAl組成比xのAlxGa1-xN層13−1〜13−n(n:自然数)が複数積層されたAlGaN超格子層から構成される。そして、電子供給層13は、窒化物半導体装置の設計に応じて、少なくとも2層、好適には4層以上のAlxGa1-xN層13−1〜13−nから構成される。すなわち、電子供給層13の平均Al組成比Xと、AlxGa1-xN層13−1〜13−nの層数または2層を1組とした場合の組数とによって、2DEG濃度Nsを設計に基づく所望の濃度に制御する。なお、組数は0.5組単位である。そして、この実施の形態1においては、2DEG濃度Nsがたとえば1×1013cm未満になるように、平均Al組成比Xと各AlxGa1-xN層13−1〜13−nの層数(n)または組数(n/2)とが調整される。ここで、この実施の形態1におけるAlxGa1-xN層13−1〜13−nの組数としては、4.5組以上の5〜10組程度、層数としては9層以上の10〜20層程度が好ましい。なお、電子供給層13を構成するそれぞれのAlxGa1-xN層13−1〜13−nのAl組成比xは、AlおよびGaを含むことから、少なくとも0<x<1を満たす。
また、各AlxGa1-xN層13−1〜13−nはいずれも、それらの内部に2DEGが発生しないように膜厚やAl組成比を調整して構成するのが好ましい。また、電子供給層13のバンドギャップは平均のバンドギャップであり、具体的には積層構造を構成する各AlxGa1-xN層13−1〜13−nの膜厚比によって重み付け(積分)をしたバンドギャップの値である。そして、電子供給層13は、その平均バンドギャップが、電子走行層12のバンドギャップよりも大きくなるように構成されている。これにより、電子走行層12と電子供給層13との界面に、2DEG層Aが発生する。
そして、具体的に電子供給層13を構成するAlGaN超格子層は、極大Al組成比x1のAlx1Ga1-x1N層と、極小Al組成比x2のAlx2Ga1-x2N層とが交互に配置されるように積層されている。なお、Alx1Ga1-x1N層は極大Al組成比x1のAlGaN層を指し、Alx2Ga1-x2N層は最小Al組成比x2のAlGaN層を指す。
また、AlGaN超格子層のAl組成比は、深さ方向(積層方向)に沿って連続的に、たとえば三角波状や正弦波状に増減変調している。図2は、電子供給層13を構成する各AlxGa1-xN層における、Al組成比x(縦軸)と深さ方向に沿った膜厚d(横軸)との関係を示すグラフである。なお、グラフの左側がエッチング犠牲層14または半導体層15側、右側が電子走行層12側である。また、図2中、実線がこの実施の形態1による各擬似混晶構造の電子供給層13におけるAl組成比のグラフを示し、下部の数字は図1中の対応する符号を示す。また、図2中、点線が電子供給層13を従来技術によるAlN/GaN超格子層とした場合におけるAl組成比のグラフを示し、下部の数字は図1中の対応する符号を示す。そして、これらの実施の形態1および従来の電子供給層13において、いずれも平均Al組成比Xは同じである。
図2に示すように、この実施の形態1による電子供給層13のAl組成比は、深さ方向に沿って連続的に増減を繰り返している。具体的には、第1窒化物半導体層としてのAlx1Ga1-x1N層13−1において深さ方向とは逆向きの方向である積層方向に沿って山状に増加して、平均Al組成比Xより高い極大Al組成比x1の極大を経て減少する。また、その上層の第2窒化物半導体層としてのAlx2Ga1-x2N層13−2において、積層方向に沿って連続的に谷状に減少し、平均Al組成比Xより低い極小Al組成比x2の極小を経て増加する。そして、これらが繰り返されて、Al組成比xが、Alx1Ga1-x1N層13−1からAlx1Ga1-x1N層13−nに連続的に増減するように積層されている。
また、これらのAlxGa1-xN層13−1〜13−nにおけるAl組成比xは、平均Al組成比Xを挟んで極大のAl組成比x1と極小のAl組成比x2との間で交互に増減している。ここで、電子供給層13の深さ方向に沿って、Al組成比xが極大から極小になる平均の減少率の絶対値は、Al組成比xが極小から極大になる場合の平均の増加率の絶対値よりも小さくなるようにするのが好ましい。換言すると、電子供給層13の積層方向に沿って、Al組成比xが極小から極大になる場合の平均の増加率の絶対値は、極大から極小になる場合の平均の減少率の絶対値よりも小さくするのが好ましい。
また、図2においては、極大Al組成比x1を第1窒化物半導体層としての各Alx1Ga1-x1N層13−1,13−3,…,13−nにおいて同じAl組成比にしているが、これらの極大Al組成比x1は各Alx1Ga1-x1N層13−1,13−3,…,13−nにおける少なくとも一部、場合によっては各層ごとに相違するAl組成比でも良い。同様に、極小Al組成比x2を第2窒化物半導体層としての各Alx2Ga1-x2N層13−2,13−4,…,13−(n−1)において同じAl組成比にしているが、これらの極小Al組成比x2においても各Alx2Ga1-x2N層13−2,13−4,…,13−(n−1)における少なくとも一部、場合によっては各層ごとに相違するAl組成比でも良い。さらに、図2においては、電子供給層の深さ方向に沿ったAl組成比の増減形状を、増減が急峻な矩形状(図2中点線)に比して増減が緩やかな、三角波形状としているが、同様に増減が緩やかな正弦波状や台形状とすることも可能である。
ここで、第1窒化物半導体層としてのAlx1Ga1-x1N層13−3,…,13−nは、電子供給層13の深さ方向とは逆向きの方向(積層の向き)に沿って、Al組成比xの極小から極大に至るまでの厚さ差分の中間値の位置から、極大を含み、極大から次の極小に至るまでの厚さ差分の中間値の位置までの領域を指す。また、第2窒化物半導体層としてのAlx2Ga1-x2N層13−2,13−4,…,13−(n−1)は、電子供給層13の深さ方向とは逆向きの方向に沿って、Al組成比xの極大から極小に至るまでの厚さ差分の中間値の位置から、極小点を含み、極小点から次の極大点に至るまでの厚さ差分の中間値の位置までの領域を指す。ただし、もっとも電子走行層12側に位置する、第1窒化物半導体層の1つであるAlx1Ga1-x1N層13−1は、下層の電子走行層12との境界の位置から極大値を挟んで、次の中間値の位置までの領域を指すものとする。
また、極大Al組成比x1が大きいと極大となる部分で電子の波動関数がしみ出しにくくなって電子走行層12における2DEG濃度Nsを増加できる反面、コンタクト抵抗が増加する。そこで、2DEG濃度Nsの増加およびコンタクト抵抗の低減を考慮すると、極大Al組成比x1は、電子供給層13の平均Al組成比Xに対して、0.03以上0.3未満の範囲内、好適には0.06以上0.25未満の範囲内、より好適には0.1以上0.2未満の範囲内で高くするのが望ましい。すなわち、以下の(1)式が成立するのが望ましい。
X+0.03≦x1<X+0.3……(1)
また、極大Al組成比x1が、各Alx1Ga1-x1N層13−1,13−3,…,13−nにおける少なくとも一部、場合によって各層ごとで相違する場合には、それぞれの層における極大Al組成比x11,x13,…,x1nに対して、極大Al組成比x1に代表された(1)式が成立するのが望ましい。すなわち、Alx11Ga1-x11N層13−1,Alx13Ga1-x13N層13−3,…,Alx1nGa1-x1nN層13−nにおいて、以下の(1−1)式が成立するのが望ましい。
X+0.03≦x11,x13,…,x1n<X+0.3……(1−1)
さらに、極小Al組成比x2が小さいと所望の2DEG濃度Nsを確保するために平均Al組成比Xを確保する観点から極大Al組成比x1を大きくする必要が生じる。この点を考慮すると、極小Al組成比x2は、電子供給層13の平均Al組成比Xに対して、0.03以上0.2未満の範囲内、好適には0.06以上0.18未満の範囲内、より好適には0.1以上0.15未満の範囲内で低くするのが望ましい。すなわち、以下の(2)式が成立するのが望ましい。
X−0.2<x2≦X−0.03……(2)
また、極小Al組成比x2が、各Alx2Ga1-x2N層13−2,13−4,…,13−(n−1)における少なくとも一部、場合によっては各層ごとで相違する場合には、それぞれの層における極小Al組成比x22,x24,…x2(n−1)に対して、極小Al組成比x2に代表された(2)式が成立するのが望ましい。すなわち、Alx22Ga1-x22N層13−2,Alx24Ga1-x24N層13−4,…,Alx2(n-1)Ga1-x2(n-1)N層13−(n−1)において、以下の(2−1)式が成立するのが望ましい。
X−0.2≦x22,x24,…,x2(n−1)<X−0.03……(2−1)
以上のように、Al組成比xが積層方向や深さ方向に沿って三角波状または正弦波状に連続的に増減するようにAlGaN層を積層させることにより、電子走行層12側からエッチング犠牲層14や半導体層15の側に向かって2DEGの波動関数を電子供給層13の表面側にしみ出しやすくできるので、コンタクト抵抗を低減できて、良好なオーミックコンタクトを得ることができる。さらに、Al組成比x1(x11〜x1n),x2(x22〜x2(n−1))は、0<x2<X<x1≦1であり、電子供給層13における2DEGの波動関数のしみ出しやすさを考慮すると、最大Al組成比x1(x11〜x1n)は、比較的低い範囲である20%以上60%未満(0.2≦x1<0.6)が好ましく、好適には20%以上50%以下(0.2≦x1≦0.5)、より好適には20%以上40%以下(0.2≦x1≦0.4)である。また、所望の2DEG濃度Nsを確保するための平均Al組成比Xを確保する観点から、極小Al組成比x2(x22〜x2(n−1))は、0%より大きく20%未満(0<x2<0.2)が好ましく、好適には5%より大きく20%未満(0.05<x2<0.20)、より好適には10%以上20%未満(0.10≦x1<0.20)である。すなわち、所望の2DEG濃度Nsとなるように平均Al組成比Xを設定することを考慮すると、たとえば、極小Al組成比x2を0にしてしまうと、擬似混晶構造を採用した場合に電子移動度が大きくなる平均Al組成比Xの15%程度にするには、極大Al組成比x1を増加させる必要がある。極大Al組成比x1を増加させると、2DEG層Aの電子の波動関数がしみ出しにくくなってコンタクト抵抗が悪化するので好ましくない。さらに、これらのAlGaN層、とりわけ、50%を超える高いAl組成を有するAlGaN層を例えば有機金属気相成長(MOCVD)法によって結晶成長させる際に、良好な結晶品質を確保するのは困難である。このような観点からも、極大Al組成比x1および極小Al組成比x2は、上述した範囲に設定するのが好ましい。
また、この実施の形態1において電子供給層13の平均Al組成比Xは、0<X<1を前提として、電子走行層12との界面での2DEG層Aにおいて所望の2DEG濃度を得ることを考慮すると、10%以上40%以下(0.1≦X≦0.4)が好ましく、好適には15%以上35%以下(0.15≦X≦0.35)、より好適には20%以上30%以下(0.2≦X≦0.3)である。また、AlxGa1-xN超格子層におけるシート抵抗の観点、さらにひずみに対して自由に積層できる格子緩和の観点からも、電子供給層13の平均Al組成比Xは上述した範囲が好ましい。
また、電子供給層13を構成するAlGaN層のうち、極大Al組成比x1のAlx1Ga1-x1N層および極小Al組成比x2のAlx2Ga1-x2N層13−iの膜厚di(i=1,2,3,…,n)としては、層状になる最低膜厚である2原子層以上、さらには、所望の平均Al組成比によって2DEG層Aの電子の波動関数をしみ出させる必要がある観点から、具体的には例えば0.5nm以上4.0nm以下、好適には0.5nm以上3.5nm以下、より好適には0.5nm以上3.0nm以下とし、この実施の形態1においては、たとえばそれぞれ1.5nm程度にする。また、各AlxGa1-xN層13−iの膜厚diは、ミスフィット転位を生じさせないために臨界膜厚以下にするのが好ましい。AlxGa1-xN層の臨界膜厚は、具体的には、GaN層の格子定数に対してAl組成比xが0.6の場合に5nm程度、Al組成比xが0.1の場合に100nm程度である。なお、臨界膜厚は、積層構造において隣接する層に応じて異なる膜厚になることから、必ずしもこれらの膜厚に限定されない。そして、上述の条件に基づいて、各AlxGa1-xN層13−1〜13−nの膜厚、ならびに層数(n)および組数(n/2)は、2DEG層Aの2DEG濃度Nsの設定濃度や窒化物半導体装置の設計に応じて適宜最適な値が選択される。
また、電子供給層13の膜厚の下限としては、電子供給層13を極大Al組成比x1のAlx1Ga1-x1N層と極小Al組成比x2のAlx2Ga1-x2N層とが1組積層されたAlx1Ga1-x1N/Alx2Ga1-x2N超格子層から構成することを考慮すると、2nm以上にするのが好ましく、2DEG層Aの2DEG濃度Nsを増加させることを考慮すると、好適には5nm以上、より好適には10nm以上が好ましい。また、電子供給層13の膜厚の上限としては、ミスフィット転位が生じない臨界膜厚以下が好ましく、オーミック接触の限界を考慮すると、100nm以下、好適には50nm以下、より好適には30nm以下が好ましい。
また、図1に示すエッチング犠牲層14は、平均Al組成比Yが電子供給層13の平均Al組成比Xより大きい(X<Y)、AlYGa1-YN層(0<Y<1)からなる。これは、AlyGa1-yN層上に設けられた半導体層15がたとえばGaN層などのAl組成比が0または極めて小さい材料からなる場合、GaN層とのエッチングレートがAlGaN層の約100倍程度と極めて大きく、AlGaN層がGaN層に対するエッチングストップとして極めて有効に作用するためである。また、詳細は後述するが、エッチング犠牲層14を構成するAlGaNの局所的なAl組成比yは、電子供給層13を構成するAlGaN層における極大Al組成比x1以下、極小Al組成比x2以上になるように構成される。その上で、局所的なAl組成比yは、エッチング犠牲層14の電子供給層13側から半導体層15側に向かう積層方向に沿って、谷状のプロファイルを描くように順次減少増加するように構成されている。
また、エッチング犠牲層14は、その局所的なAl組成比yがエッチング犠牲層14の表面近傍から半導体層15に向かって、なだらかに減少するように構成されている。このようにAlGaN層からなるエッチング犠牲層14からGaN層からなる半導体層15に向かって、局所的なAl組成比yを連続的または段階的に変化させることにより、半導体層15のエッチング時において、エッチングがエッチング犠牲層14に到達した時点からエッチング速度が連続的または段階的に変化する。これにより、半導体層15のエッチングにおいて、エッチング犠牲層14へのオーバーエッチング時におけるエッチング速度が制御できる。そのため、エッチングが電子供給層13にまで到達することなく、エッチング犠牲層14においてエッチングを制御性良く止めることが可能になる。また、エッチング犠牲層14を設けることによって、エッチング時に電子供給層13における比較的高いAl組成比x1のAlx1Ga1-x1N層が最表面に露出することを防止できるので、表面酸化などによってオン電圧やコンタクト抵抗が増加したり電流コラプスが悪化したりすることを防止できる。
ここで、エッチング犠牲層14の膜厚は、その上層に形成される半導体層15のエッチングを、オーバーエッチング時におけるエッチング速度の制御によって精密に制御できる膜厚以上にするのが好ましく、具体的には、たとえば1nm以上が好ましい。また、エッチング犠牲層14の膜厚は、内部に発生する2DEGの2DEG濃度Nsを、窒化物半導体装置に対する影響が無視できる程度に低くするために、12nm以下にするのが好ましい。従って、エッチング犠牲層14の膜厚は、1nm以上12nm以下、この実施の形態1においては、たとえば4nm程度とする。
また、半導体積層基板10から製造する窒化物半導体装置の構造に応じて、エッチング犠牲層14または電子供給層13の上層には、第3半導体層としての半導体層15が設けられる。半導体層15は、電子走行層12に生じる2DEG層Aの2DEG濃度Nsを少なくとも2水準で変調させるために、電子供給層13の平均バンドギャップより狭いIII族窒化物系化合物半導体、具体的にはAl組成比zのAlzGa1-zN層(0≦z≦1)からなる。また、この半導体層15の膜厚は、20nm以上200nm以下、好適には、成長とエッチングを用いた膜厚制御により2DEG濃度の制御が容易になる20nm以上100nm以下、より好適には、膜厚のばらつきによる2DEG濃度のばらつきを受けにくくなる25nm以上80nm以下である。この実施の形態1において半導体層15は、たとえば膜厚が30nmのGaN層からなる。
そして、上述した電子走行層12、電子供給層13、エッチング犠牲層14、および半導体層15により、この実施の形態1における半導体積層体が構成される。なお、半導体積層基板10から製造される窒化物半導体装置の構成によって、半導体積層体を電子走行層12および電子供給層13から構成しても良い。また、電子供給層13の最上層をエッチング犠牲層として用いてエッチング犠牲層14を設けない場合には、電子走行層12、電子供給層13、および半導体層15により半導体積層体を構成しても良い。以上により、この実施の形態1による窒化物半導体装置を製造するための半導体積層基板10が構成されている。
(半導体積層基板の製造方法)
次に、この実施の形態1における半導体積層基板10の製造方法について説明する。図3は、この実施の形態1における半導体積層基板10の基体11上に、有機金属化学気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法により各層を成長させる際の供給ガスのシーケンスチャートである。なお、図3において、「RUN」および「VENT」はそれぞれ、MOCVD装置の反応炉(MOCVD反応炉)へのガスの供給状態および供給停止状態(排気状態)を示す。
図1および図3に示すように、この実施の形態1における半導体積層基板10の製造方法においては、まず、基体11を設置したMOCVD反応炉(図示せず)内に、たとえばIII族ガスとしてのトリメチルガリウム(TMGa)と、V族ガスとしてのアンモニア(NH3)と、キャリアガスとしての水素(H2)および窒素(N2)とをそれぞれ供給する。これにより、基体11上にGaNを成長させてu−GaN層からなる電子走行層12を形成する。ここで、u−GaNからなる電子走行層12の成長条件の一例を挙げると、不純物濃度を低下させる点を考慮して、雰囲気圧力を比較的高圧の200Torr(26.7kPa)とし、III族元素(Ga)に対するV族元素(N)のモル比(V/IIIモル比)を10000程度、キャリアガスのH2ガスの流量をたとえば85L/min程度にする。
続けて、MOCVD反応炉への、NH3、H2およびN2の供給を継続しつつTMGaの供給を停止する。なお、NH3、H2、およびN2は、MOCVD反応炉内に基体11を設置している間、中断することなく常時供給される。そして、所定時間T0の間に、MOCVD装置における所定の操作によって成長条件を変更し、続けてMOCVD反応炉内を安定化させる。ここで、この実施の形態1においては、成長条件の変更をたとえば120秒間、安定化をたとえば60秒間行った後、さらにたとえば6秒間程度の中断時間を設ける。すなわち、この実施の形態1において所定時間T0は、たとえば186秒間程度(約3分間)である。
その後、TMGaのMOCVD反応炉への供給を停止した状態で、MOCVD反応炉に、たとえばIII族ガスとしてのトリメチルアルミニウム(TMAl)を供給する。これにより、電子走行層12上にAlxGa1-xN層13−1を成長させる。ここで、上述した所定時間T0の間においては、MOCVD反応炉にN2およびNH3に加えてH2が供給されている。そのため、成長させた電子走行層12を構成するu−GaN層の表面は、所定時間T0の間エッチングされる。このとき、u−GaN層のエッチング表面においては、窒素(N)が脱離する一方でGaが残留する。他方、AlNの共有結合エネルギーはGaNの共有結合エネルギーより大きい。これにより、MOCVD反応炉にTMAlを供給すると、GaがAlと置換して、電子走行層12上にAlN優位の結晶成長が行われ、Al組成比xが比較的高いAlGaN変成層からなるAlxGa1-xN層13−1が成長される。
続けて、MOCVD反応炉への、NH3、H2、およびN2の供給を継続しつつ、TMAlの供給を停止する。そして、中断時間tとしてたとえば6秒間、成長ガスのMOCVD反応炉への供給を中断することで結晶成長を中断させる。この中断の間、MOCVD反応炉内においては、N2およびNH3に加えてH2が供給されている。そのため、成長させたAlxGa1-xN層13−1の表面は、中断時間tの間エッチングされる。このとき、AlxGa1-xN層13−1のエッチング表面においては、Nが脱離する一方でAlおよびGaが残留する。
続けて、MOCVD反応炉へのTMAlの供給を停止した状態でTMGaを供給する。ここで、同じ温度条件下においてはGaの蒸気圧に比してAlの蒸気圧が低いため、Al原子に比してGa原子が脱離しやすい。そのため、AlxGa1-xN層13−1のエッチング表面には主にAlが残留している。そして、この残留したAlは、TMGaおよびNによって成長されるGaNと結合する。また、上述と同様の理由からGaがAlと置換する。これによって、AlxGa1-xN層13−1上にGaN優位の結晶成長が行われ、Al組成比xが比較的低いAlGaN変成層からなるAlxGa1-xN層13−2が成長される。
その後、MOCVD反応炉への、NH3、H2、およびN2の供給を継続しつつ、TMGaの供給を停止し、たとえば6秒間程度の中断時間t、成長ガスの供給を中断して、結晶成長を中断する。この結晶成長の中断の間、MOCVD反応炉内においては、N2およびNH3に加えてH2が供給されている。そのため、成長されたAlxGa1-xN層13−2の表面は、中断時間tの間エッチングされる。このとき、AlxGa1-xN層13−2のエッチング表面においては、Nが脱離する一方でAlおよびGaが残留する。
そして、中断時間tが経過した後、MOCVD反応炉への、TMGaの供給を停止した状態でTMAlを供給する。これにより、Al組成比xが比較的低いAlxGa1-xN層13−2上にAlN優位の結晶成長が行われ、上述したAlxGa1-xN層13−1の成長と同様にして、Al組成比xが比較的高いAlGaN変成層からなるAlxGa1-xN層13−3を成長させる。その後、MOCVD反応炉内へのTMAlの供給を停止する。
以上のTMAlの供給および中断、ならびにTMGaの供給および中断を、所望とするAlxGa1-xN層13−1〜13−nを形成するまで順次交互に繰り返し行う。そして、AlxGa1-xN層13−nを成長させてから中断時間tだけ結晶成長を中断した後、MOCVD反応炉へのTMAlの供給を停止させた状態でTMGaを供給する。これにより、AlxGa1-xN層13−n上にAl組成比xが比較的低いAlxGa1-xN層(図示せず)が成長される。以上のように、中断時間tを挟んで結晶成長を交互に繰り返すことによって、電子走行層12上に擬似混晶構造のAlGaN超格子層からなる電子供給層13が形成される。
ここで、これらのAlxGa1-xN層13−1〜13−nの成長条件の一例を挙げると、TMAlの流量をたとえば200μmol/min、TMGaの流量をたとえば160μmol/min、NH3の流量をたとえば35L/min、H2ガスの流量をたとえば50L/min、N2ガスの流量をたとえば15L/min、TMAlの供給時におけるV/IIIモル比をたとえば8000、TMGaの供給時におけるV/IIIモル比をたとえば10000とする。また、MOCVD反応炉内の雰囲気条件の一例を挙げると、成長温度を960℃以上1060℃以下のたとえば1020℃とし、TMAlとNH3との気相反応を抑制するために、雰囲気圧力を低めに設定して30Torr(4.0kPa)以上200Torr(26.7kPa)以下のたとえば50Torr(6.67kPa)とする。この条件において、TMAlを供給して成長させる場合における成長速度は7nm/min程度であり、TMGaを供給して成長させる場合における成長速度は3nm/min程度である。そして、これらの成長速度と各AlxGa1-xN層13−1〜13−nにおけるそれぞれの所望の膜厚から、TMAlやTMGaの供給時間が算出されて適用される。なお、Al組成比を変化させる場合には、NH3流量を固定してTMAlまたはTMGaの流量を変化させる。これによって、AlxGa1-xN層13−1〜13−nにおけるそれぞれのAl組成比が、所望の比率に制御される。
次に、MOCVD反応炉への、NH3、H2およびN2の供給を継続しつつ、TMGaの供給を中断する。そして、所定時間T1の間に、TMGaの供給の中断、MOCVD装置におけるエッチング犠牲層14の成長条件への変更、およびMOCVD装置の安定化を順次行う。ここで、この実施の形態1においては、中断をたとえば6秒間、成長条件の変更をたとえば120秒間、安定化をたとえば60秒間行う。すなわち、この実施の形態1において所定時間T1は、たとえば186秒間程度である。この所定時間T1の間においても、MOCVD反応炉にはNH3、H2、およびN2が供給されている。そのため、この所定時間T1の間に、AlxGa1-xN層13−n上に形成された最上層のAlxGa1-xN層はエッチング除去される。
そして、所定時間T1の経過後、MOCVD反応炉内にTMGaおよびTMAlを供給する。これにより、電子供給層13上にエッチング犠牲層14を形成する。ここで、エッチング犠牲層14の成長条件の一例を挙げると、成長温度を960〜1060℃のたとえば1020℃とし、圧力を30〜200Torrのたとえば60Torrとし、V/IIIモル比を、TMAlにおいて8000程度、TMGaにおいて10000程度とする。また、それぞれのガスの流量の一例を挙げると、TMGaの流量をたとえば160μmol/min、TMAlの流量をたとえば200μmol/minとし、NH3の流量をたとえば35L/min、キャリアガスとしてのH2の流量をたとえば50L/min、N2の流量をたとえば15L/minとする。そして、エッチング犠牲層14が所望の膜厚に形成された後、MOCVD反応炉内へのTMGaおよびTMAlの供給を停止する。
次に、MOCVD反応炉への、NH3、H2およびN2の供給を継続しつつ、TMGaおよびTMAlの供給を中断する。そして、所定時間T2の間に、MOCVD装置における半導体層15の成長条件への変更、およびMOCVD反応炉内の安定化を順次行う。ここで、この実施の形態1においては、成長条件の変更をたとえば120秒間、安定化をたとえば60秒間とする。すなわち、この実施の形態1において所定時間T2は、たとえば180秒間程度である。このとき、エッチング犠牲層14におけるAlGaN層の表面がエッチングされてGaが脱離し、表面にAlが残留した状態を作ることができる。
そして、所定時間T2の経過後、MOCVD反応炉内にTMGaを供給することによって、エッチング犠牲層14上に半導体層15を形成する。これにより、そのエッチング犠牲層14における局所的なAl組成比yを、エッチング犠牲層14の表面近傍から半導体層15に向かって、なだらかに減少させることができる。ここで、半導体層15の成長条件の一例を挙げると、V/IIIモル比についてはやや高い20000程度にする点以外は、上述した電子走行層12の成長条件とほぼ同様であるので、説明を省略する。
以上により、図1に示す半導体積層基板10が形成される。そして、以上のようにして製造された半導体積層基板10に対して、3次元アトムプローブ(3DAP)法を用いて積層構造を分析した結果を図4および図5に示す。図4は、図1に示す半導体積層基板10において、Al、Ga、およびNの合計の組成比率を100%とし、Nの含有率を50%として、Al、Ga、およびNの組成比を、深さ方向に沿って分析したグラフである。図5は、III族元素(Al、Ga)とV族元素(N)とを同じ比率にした場合における図1に示す半導体積層基板10の深さ方向に沿ったAl組成比x(%)(図5中、III族Al組成比(%))の分析結果であり、グラフの上部の数値は図1中で示す符号に対応している。
図4および図5から、電子供給層13における各AlGaN層が、極大Al組成比x1のAlGaN層と極小Al組成比x2のAlGaN層とで交互に積層されていることが分かる。また、平均Al組成比Xが24%(X=0.24)程度であるのに対して、極大Al組成比x1が27%から35%程度(0.27≦x1≦0.35)であり、極小Al組成比x2が15%から18%程度(0.15≦x2≦0.18)であることが分かる。また、本発明者が、この半導体積層基板10を用いてSBD製造工程を実施し、TLM法によってオーミック電極の部分におけるオーミック接触の特性を測定したところ、接触抵抗値が5×10-6Ω・cm2程度になることが確認され、コンタクト抵抗が極めて低い良好なオーミック接触を得られることが確認された。また、本発明者が、上述した半導体積層基板10の製造方法に基づいての種々の半導体積層基板10を製造し、3DAP法により分析したところ、最大の極大Al組成比x1が20%以上60%未満(0.2≦x1<0.6)で、最小の極小Al組成比x2が0%より大きく20%未満の(0<x2<0.2)の、Al組成変調超格子構造の電子供給層を有する半導体積層基板を製造できることが確認された。
また、図5から、エッチング犠牲層14を構成するAlyGa1-yN層の局所的なAl組成比yが、電子供給層13を構成するAlGaN層における極大Al組成比x1以下、極小Al組成比x2以上になっていることが分かる。その上で、局所的なAl組成比yは、エッチング犠牲層14の電子供給層13側から半導体層15側に向かう積層方向に沿って、谷状のプロファイルを描くように順次減少増加し、エッチング犠牲層14の表面近傍において最大となった位置から半導体層15側に向かって、なだらかに減少していることが分かる。このエッチング犠牲層14の表面近傍におけるAl組成比yが局所的に最大ピークとなっている部分は、上述した製造方法において、エッチング犠牲層14の成長後に所定時間T2の中断期間を設けたことによって生じたものと考えられる。このようにエッチング犠牲層14から半導体層15に向かってAl組成比yが連続的または段階的に変化していることにより、半導体層15のエッチング時において、エッチングがエッチング犠牲層14の上面まで到達した時点から、エッチング速度がAl組成比yに応じて連続的または段階的に変化する。これにより、エッチング犠牲層14の表面をエッチングすることでエッチング速度が制御でき、エッチング犠牲層14においてエッチングを制御性良く止めることが可能になる。
次に、以上のように構成された本発明の実施の形態1による電子供給層を有する窒化物半導体装置について説明する。
まず、実施の形態1による窒化物半導体装置としてのSBDについて説明する。図6は、実施の形態1による窒化物半導体装置としてのSBDの模式的な断面図である。
図6に示すように、この実施の形態1によるSBD1は、上述した半導体積層基板10の構造に加えて、エッチング犠牲層14上に選択的に、ショットキー電極としてのアノード電極16Aと、このアノード電極16Aと離間したオーミック電極としてのカソード電極16Cとが設けられている。さらに、エッチング犠牲層14上には、カソード電極16Cと離間して、半導体層15の一部からなるフィールドプレート層15aがアノード電極16A側に設けられている。そして、これらのエッチング犠牲層14およびフィールドプレート層15aと、アノード電極16Aおよびカソード電極16Cの少なくとも一部を覆うように、絶縁膜17が設けられている。ここで、絶縁膜17はたとえばSiO2から構成されるが、その他の材料、具体的には窒化シリコン(SiN)や酸化アルミニウム(Al2O3:アルミナ)などを用いても良く、複数種類の材料を適宜組み合せたり、順次積層させたりして構成しても良い。
このSBD1においては、フィールドプレート層15aが設けられていることによって、2DEG層aの2DEG濃度Nsが、2DEG層a以外の2DEG層Aにおける2DEG濃度Nsより低濃度に変調される。これにより、フィールドプレート層15aが設けられた部分における電界強度を抑制できる。反面、図1に示す半導体積層基板10のように、フィールドプレート層15aを構成する半導体層15を設けた状態では、2DEG濃度Nsが低濃度になるため、電子走行層12のアクセス部におけるアクセス抵抗は、半導体層15が設けられていない場合に比して高くなる。そのため、2DEG層Aの2DEG濃度Nsを制御しつつアクセス抵抗を低減するために、SBD1の製造においては、図6に示すように、所望のフィールドプレート層15aの形成領域以外の半導体層15はエッチング除去される。この際、上述したように、エッチング犠牲層14の局所的なAl組成比yを半導体層15に向かってなだらかに減少させているので、フィールドプレート層15aの形成時に、エッチング犠牲層14の表面の部分がオーバーエッチングされてエッチング速度が制御され、半導体層15のエッチングを制御性良く行うことができる。また、電子走行層12に生じる2DEG濃度Nsは、半導体層15の一部からなるフィールドプレート層15aの膜厚が大きいほど低下するように変調される。そのため、この実施の形態1において、フィールドプレート層15aの膜厚、すなわち半導体層15の膜厚は、たとえば20nm以上200nm以下が好ましく、好適には成長とエッチングを用いた膜厚制御により2DEG濃度Nsの制御が容易な20nm以上100nm以下、より好適には膜厚ばらつきによる2DEG濃度Nsのばらつきを受けにくい25nm以上80nm以下である。
また、第1電極としてのアノード電極16Aは、たとえば、下部電極層がNi層で上部電極層がAu層のNi/Auの積層構造を有する。これにより、アノード電極16Aは、エッチング犠牲層14および電子供給層13を介して電子走行層12に発生した2DEG層Aとショットキー接触する。なお、アノード電極16Aは、電子供給層13におけるアノード電極16Aの形成領域をリセスエッチングによって除去し、フィールドプレート層15aの下層に存在する2DEGに対して側面からショットキー接触させても良い。
また、アノード電極16Aは、フィールドプレート層15a上に乗り上げて少なくとも1段の段差を形成しているとともに、カソード電極16C側に向かってせり出すように延伸している。この実施の形態1においてアノード電極16Aは、フィールドプレート層15aの側面および上面の一部に接触して設けられている。なお、アノード電極16Aとフィールドプレート層15aとの間に他の半導体膜や誘電体膜を介在させて互いに非接触としても良い。さらに、この実施の形態1においては、アノード電極16Aに多段の段差を有する形状、たとえば2段の階段状にフィールドプレート部を設ける。
第2電極としてのカソード電極16Cは、たとえば、下部電極層がTi層で上部電極層がAl層のTi/Alの積層構造を有する。これにより、カソード電極16Cは、エッチング犠牲層14および電子供給層13を介して電子走行層12に発生した2DEG層Aオーミック接触する。
また、絶縁膜17は、たとえば酸化シリコン(SiO2)から構成される。絶縁膜17は、主に、フィールドプレート層15a、アノード電極16A、カソード電極16C、およびエッチング犠牲層14の表面を保護する。以上により、実施の形態1によるSBD1が構成されている。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2による窒化物半導体装置としてのHEMT型電界効果トランジスタについて説明する。図7は、この実施の形態2による窒化物半導体装置としてのHEMT2を示す模式的な断面図である。
図7に示すように、実施の形態2によるHEMT2は、実施の形態1における半導体積層基板10における構造に加えて、エッチング犠牲層14上に選択的に、フィールドプレート層15bと、互いに離間したソース電極21S、ゲート電極21Gおよびドレイン電極21Dと、絶縁膜22とを備える。
ここで、電子走行層12に生じる2DEG濃度Nsは、半導体層15の一部からなるフィールドプレート層15bの膜厚が大きいほど低下するように変調される。そのため、この実施の形態2において、フィールドプレート層15bの膜厚は、実施の形態1における理由と同様の理由から、たとえば20nm以上200nm以下が好ましく、好適には20nm以上100nm以下、より好適には25nm以上80nm以下である。また、このフィールドプレート層15bは、実施の形態1と同様に、半導体積層基板10における半導体層15を、エッチング犠牲層14をオーバーエッチングされるエッチングストップ層として用いてエッチングすることによって形成される。
また、この実施の形態2においては、電子走行層12、電子供給層13、エッチング犠牲層14、およびフィールドプレート層15bによって半導体積層体が構成される。そして、フィールドプレート層15bにより半導体積層体の内部の2DEG濃度Nsが変調される。すなわち、フィールドプレート層15bの下方領域に2DEG濃度が低い2DEG層aが生成される。ここで、HEMT2の高耐圧化の観点からは、2DEG層aの2DEG濃度Nsは、7×1012cm-2以下にするのが好ましい。また、HEMT2のオン抵抗を低減する観点から、2DEG濃度が比較的高い2DEG層Aの2DEG濃度は、7×1012cm-2よりも高くするのが好ましい。なお、上述したように、電子供給層13における平均Al組成比Xと積層層数を調整することにより、2DEG濃度Nsは10.0×1012cm-2よりも低くなるように設定される。
また、第2電極としてのドレイン電極21Dおよび第3電極としてのソース電極21Sは、エッチング犠牲層14上に設けられ、たとえばTi/Alの積層構造から構成される。これにより、ドレイン電極21Dおよびソース電極21Sは、エッチング犠牲層14および電子供給層13を介して、2DEG層Aとオーミック接触する。
また、第1電極としてのゲート電極21Gは、ドレイン電極21Dとソース電極21Sとの間に配置され、フィールドプレート層15b上、および絶縁膜22にせり出して設けられている。このゲート電極21Gは、たとえばNi/Auの積層構造から構成される。これによって、ゲート電極21Gは、エッチング犠牲層14および電子供給層13を介して、電子走行層12における2DEG層Aとショットキー接触する。また、ゲート電極21Gは、多段の階段状、たとえばソース電極21Sおよびドレイン電極21Dの両側に向かって階段状にフィールドプレート部がせり出すように延伸して設けられている。なお、実施の形態2においては、ゲート電極21Gの部分がエッチング犠牲層14と接触するように形成されているが、エッチング犠牲層14とゲート電極21Gとの間にフィールドプレート層15bを介するように構成することも可能である。
また、絶縁膜22は、たとえばSiO2から構成される。絶縁膜22は、主に、フィールドプレート層15aと、ゲート電極21Gと、ドレイン電極21Dと、ソース電極21Sと、エッチング犠牲層14の表面とを保護する。以上により、実施の形態2によるHEMT2が構成されている。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3による窒化物半導体装置としてのSBDについて説明する。図8は、この実施の形態3による窒化物半導体装置としてのSBD3を示す模式的な断面図である。
図8に示すように、この実施の形態3によるSBD3においては、実施の形態1における半導体積層基板10の構造において、エッチング犠牲層14および半導体層15を設けない構成を有する。すなわち、実施の形態1による電子供給層13上に選択的に、ショットキー電極としてのアノード電極31Aとオーミック電極としてのカソード電極31Cとが互いに離間して設けられている。アノード電極31Aおよびカソード電極31Cの構成は、実施の形態1と同様である。また、絶縁膜32は、実施の形態1,2における絶縁膜と同様の構成を有する。このように、半導体層15を設けない構成の場合、このSBD3の製造において半導体層15をエッチングする工程がないことから、エッチング犠牲層14を設けない場合がある。以上により、実施の形態3によるSBD3が構成されている。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4による窒化物半導体装置としてのHEMTについて説明する。図9は、この実施の形態4による窒化物半導体装置としてのHEMT4を示す模式的な断面図である。
図9に示すように、この実施の形態4によるHEMT4においては、実施の形態1における半導体積層基板10の構造において、エッチング犠牲層14および半導体層15を設けない構成を有する。すなわち、実施の形態による電子供給層13上に選択的に、ソース電極41S、ゲート電極41G、およびドレイン電極41Dが互いに離間して設けられている。ソース電極41Sおよびドレイン電極41Dは、電子供給層13上に形成されるオーミック電極として機能し、ゲート電極41Gは、電子供給層13の上に形成されるショットキー電極として機能する。これらのソース電極41S、ゲート電極41G、およびドレイン電極41Dの構成は、実施の形態2と同様の構成を有する。また、絶縁膜42は、実施の形態1〜3と同様の構成を有する。以上により、実施の形態4によるHEMT4が構成されている。
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5による窒化物半導体装置としてのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor FET)について説明する。図10は、この実施の形態5による窒化物半導体装置としてのMOSFET5を示す模式的な断面図である。
図10に示すように、この実施の形態5によるMOSFET5においては、実施の形態1における半導体積層基板10の構造において、エッチング犠牲層14および半導体層15を設けない構成を有する。すなわち、実施の形態による電子供給層13上に選択的に、互いに離間したソース電極51Sおよびドレイン電極51Dが設けられている。また、ソース電極51Sとドレイン電極51Dとの間における、電子供給層13および電子走行層12の選択的にエッチング除去されたリセス部分に、ゲート酸化膜52を介してゲート電極51Gが形成されている。これらのソース電極51S、ゲート電極51G、およびドレイン電極51Dの構成は、実施の形態2,4と同様の構成を有する。また、絶縁膜53は、実施の形態1〜4における絶縁膜と同様の構成を有する。以上により、実施の形態5によるMOSFET5が構成されている。なお、このMOSFET5において、ゲート電極51Gの下層の部分にフィールドプレート層を設けても良い。この場合、半導体層15をエッチングしてフィールドプレート層を形成する必要が生じることから、実施の形態によるエッチング犠牲層14および半導体層15を備えた半導体積層基板10を用いてMOSFET5が製造される。
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6によるMISFET(Metal Insulator Semiconductor FET)について説明する。図11は、この実施の形態6によるMISFETを示す模式的な断面図である。
図11に示すように、この実施の形態6によるMISFET6においては、実施の形態1における半導体積層基板10の構造において、エッチング犠牲層14および半導体層15を設けない構成を有する。すなわち、実施の形態による電子供給層13上に選択的にソース電極61Sおよびドレイン電極61Dが設けられている。また、ソース電極61Sとドレイン電極61Dとの間における電子供給層13上に、ゲート絶縁膜62を介してゲート電極61Gが形成されている。これらのソース電極61S、ゲート電極61G、およびドレイン電極61Dの構成は、実施の形態2,4,5と同様の構成を有する。また、絶縁膜63は、実施の形態1〜5における絶縁膜と同様の構成を有する。以上により、実施の形態6によるMISFET6が構成されている。なお、このMISFET6において、ゲート電極61Gの下層の部分にフィールドプレート層を設けても良い。この場合、半導体層15をエッチングしてフィールドプレート層を形成する必要が生じることから、実施の形態によるエッチング犠牲層14および半導体層15を備えた半導体積層基板10を用いてMOSFET5が製造される。
以上説明した本発明の実施の形態によれば、窒化物半導体装置における電子供給層を、平均Al組成比よりも大きい極大Al組成比x1のAlGaN層と、平均Al組成比より小さい極小Al組成比x2とのAlGaN層との、少なくとも2種類の互いに異なるAlGaN層を複数層積層させていることにより、電子供給層13の下層に設けられる電子走行層12の電子供給層13との界面側に2DEGを高濃度で発生させつつ、電子移動度を増加させてアクセス抵抗を低減できるとともに、2DEG層における電子の波動関数をオーミック電極側にしみ出しやすくしてコンタクト抵抗も低減できるので、窒化物半導体装置における素子抵抗を低減することができる。そのため、電子走行層12における2次元電子ガスにおいて高いキャリア密度(2DEG濃度Ns)を維持しつつ、電子移動度を増加させて素子抵抗を低減し、定格電流が同じパワースイッチング用途の窒化物半導体装置を実現しようとした場合に、窒化物半導体装置における素子面積を約20%程度低減することができるので、窒化物半導体装置の小型化、微細化を図ることができ、同一直径の半導体基板を用いて製造する場合において、半導体基板当たりに製品として取ることができるチップ数を増加させることができるので、製造コストを削減することができる。
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施の形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いても良い。また、上述の実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。
たとえば、上述の実施の形態においては、電子供給層をAlGaN超格子層としているが、AlGaN超格子層以外にも、複数のInuAlvGa1-u-vN層(0≦u<1、0<v≦1、0<u+v<1)を積層させて超格子層としたInAlGaN超格子層を採用することも可能である。
たとえば、上述の実施の形態においては、電子供給層13の上層にエッチング犠牲層14を設ける構成について説明しているが、電子供給層13の最上層を、Al組成比xが平均Al組成比Xより大きいAlxGa1-xN層からなるエッチング犠牲層として用いることが可能である。この最上層のAlxGa1-xN層は、さらに上層に形成されるフィールドプレート層などのエッチング時に、電子供給層13がオーバーエッチングされないためのエッチング犠牲層として機能する。このように機能させるためは、電子供給層13の最上層のAlxGa1-xN層の膜厚は1nm以上にするのが好ましい。また、AlxGa1-xN層をAlGaN超格子層の電子供給層13の一部とするには、その膜厚は10nm以下にするのが好ましい。さらに、エッチング犠牲層としてエッチング時に最表層に露出した場合に酸化が問題にならないようするには、Al組成比xを0<x≦0.35とするのが好ましい。
また、上述の実施の形態において説明した以外にも、半導体装置における所望の特性に基づいた構造設計に応じて、電子供給層に本発明の範囲に属する種々の擬似混晶構造を採用することが可能である。
また、電子供給層13は、互いに異なる2種類のAlxGa1-xN層を、膜厚d1で極大Al組成比x1のAlx1Ga1-x1N層と膜厚d2で極小Al組成比x2のAlx2Ga1-x2N層とを一対の組とし、これらを複数回積層して構成することも可能である。
また、ダイオードのアノード電極およびトランジスタのゲート電極の下部電極層は、電子供給層とショットキー接触する電極である。そのため、上述したニッケル(Ni)やチタン(Ti)以外にも、たとえば白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)のうち少なくとも1つを含む金属膜、または、Ti、Ni、Pt、Pd、W、Au、Ag、Cu、Ta、Alのうち少なくとも1つを含む合金よりなる金属膜のうち、少なくとも1つを含む金属膜、または、Ti、W、Taのうち少なくとも1つを含む窒化物合金からなる金属膜など、上記条件を満たす金属材料であれば種々のものを用いても良い。
また、ダイオードのアノード電極およびトランジスタのゲート電極の上部電極層は、下部電極層より仕事関数の小さい金属からなり、この条件を満たす金属材料であれば種々のものを用いても良い。
また、ダイオードのカソード電極およびトランジスタのソース電極およびドレイン電極は、電子供給層とオーミック接触する、または、接触抵抗が十分に小さい状態で接触する電極である。ただし、本発明ではこれに限定されず、たとえばTi、Al、シリコン(Si)、鉛(Pb)、クロム(Cr)、In、Taのうち少なくとも1つを含む金属膜、Ti、Al、Si、Pb、Cr、In、Taのうち少なくとも1つを含む合金よりなる金属膜、または、Ti、Al、Si、Taのうち少なくとも1つを含むシリサイド合金よりなる金属膜、または、Ti、W、Taのうち少なくとも1つを含む窒化物合金よりなる金属膜などのうち、少なくとも1つを含む金属膜など、上記条件を満たす金属材料であれば如何なるものを用いても良い。
また、上述の実施の形態においては、本発明による半導体装置として、SBD、HEMT、MOSFET、およびMISFETを例に挙げたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、MESFET(Metal Semiconductor FET)などの、種々の半導体装置に対して適用することができる。そして、本発明をこれらのFETに適用する場合、ゲート電極とフィールドプレート層との間に酸化膜などの絶縁膜を設けることも可能である。
また、上述の実施の形態においては、電子供給層やエッチング犠牲層の表面に電極を形成しているが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、電子走行層、電子供給層、エッチング犠牲層、および半導体層やフィールドプレート層を含み、必要に応じてその他の層を含む半導体積層体のうちの少なくとも1層の上に電極を設けることが可能である。すなわち、半導体積層体を構成するその他の層の上に電極を設けても良い。具体的には、電子供給層の表面に、絶縁層、フィールドプレート層などの窒化物系半導体層、またはこれらの積層膜を介して、アノード電極、カソード電極、ゲート電極、ドレイン電極、またはソース電極を設けることも可能である。また、電子供給層の電極の形成領域の一部を電子走行層に達するまでエッチング除去してリセス部を形成し、このリセス部の表面、またはリセス部表面に所定の膜を介して、アノード電極、カソード電極、ゲート電極、ドレイン電極、またはソース電極を設けることも可能である。