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JP6175199B2 - 高度不飽和脂肪酸を含有する粉末油脂の製造方法および焼成品の製造方法 - Google Patents
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高度不飽和脂肪酸を含有する粉末油脂の製造方法および焼成品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高度不飽和脂肪酸を含有する粉末油脂の製造方法および焼成品の製造方法に関する。
高度不飽和脂肪酸は、二重結合が末端の炭素から数えて3番目にある脂肪酸は「ω3系脂肪酸」、6番目にある脂肪酸は「ω6系脂肪酸」と称されている。これらの脂肪酸は体内では合成されない必須脂肪酸であり、ω3系脂肪酸は、心血管系疾患の予防効果、記憶学習の維持向上作用、痴呆症の改善、抗腫瘍作用、抗炎症作用等、ω6系脂肪酸は、月経困難症改善効果、肝細胞の保護作用、血中コレステロール値低下作用等の様々な生理活性があり、摂取することが推奨されている。
このような高度不飽和脂肪酸を含有する油脂は、精製しても、本来持っている独特の風味(異味)がある。そのため、健康の維持、増進や疾患の予防、改善等のために摂取する際に、油脂自体が無味であり、そのまま喫食する場合や他の素材と混合して用いる場合等に他の素材の風味を損なうことなく使用できることが望まれている。また高度不飽和脂肪酸を含有する油脂は、二重結合を多く含有するため、保存中に酸化しやすく劣化臭を発生する。そのため、劣化臭を抑制することも望まれている。
また高度不飽和脂肪酸は常温で液状であり、またこれらを多く含有する油脂も常温で液状である。そのため、このような油を賦形剤等により粉末化して粉末油脂とすることで、劣化臭の抑制作用や他の素材との混合性を向上させることが行われている。
従来、粉末油脂の一般的な製法としては、賦形剤に油脂を吸着させて粉末化する方法、常温で固体の油脂を粉砕して粉末化する方法、凍結乾燥法、加熱乾燥法などが知られているが、加熱乾燥法は粉末油脂に一般に求められる特性を満足するのに適した方法として使用されている。この加熱乾燥法では、例えば、賦形剤を含む水相と油脂を含む油相とを攪拌、均質化することにより水中油型乳化物とし、これを加熱乾燥することによって粉末油脂を製造する。加熱乾燥は、例えば、水中油型乳化物を噴霧乾燥機の入口に供給し、高温熱風を吹き込み、噴霧乾燥機の槽内に噴霧することによって行われる。
しかし加熱乾燥法は、高温条件であるため、高度不飽和脂肪酸を含有する油脂を用いた場合、高度不飽和脂肪酸に起因する強い異臭などに懸念がある。強い異臭があると、水に溶解して飲んだときに不快臭があり、後味が悪くなったりする場合もある。また食品素材として各種食品に配合した場合にも、この異臭が問題となる。
長期保存による高度不飽和脂肪酸に起因する劣化臭を抑制する技術としては、δ−トコフェロールや、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸又はその塩などの抗酸化剤を用いる技術(特許文献1等参照)や、フレーバーを添加する技術(特許文献2、3等参照)が行われている。しかし抗酸化剤では、高度不飽和脂肪酸に起因する強い異臭と風味を抑制することはできない。またフレーバーでは、高度不飽和脂肪酸に起因する風味や風味劣化をマスキングすることはできるが、フレーバー自体の風味が残ってしまう場合があり、その場合、他の素材と混合した際にその風味を生かすことができない。
上記のような問題点への油脂によるアプローチとしては、エステル交換反応を行う技術が提案されている(特許文献4)。しかしエステル交換反応は高温下での反応であるため、高度不飽和脂肪酸が酸化しやすい。また高温下の反応であり、製造機に臭いが残存し他の油脂を生産する際には洗浄を要するため生産性を満足することが難しい。
また特許文献5には、粉末油脂の油脂成分として、DHA、EPAを使用し、かつ中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等の油脂を併用することで粉末油脂の安定化を図る技術が提案されている。
特開平9−263784号公報 特開平3−263499号公報 特開平7−274823号公報 特開平6−287593号公報 特開2008−188010号公報
しかしながら、特許文献5に記載の技術は、DHA等の脂溶性素材の外側に油皮膜を形成するとも記載されているように、高度不飽和脂肪酸含有油脂と、これと併用する油脂との相溶性が悪く、併用する油脂のみが固化している状態であるため、高度不飽和脂肪酸に起因する強い異臭や、長期保存による高度不飽和脂肪酸に起因する劣化臭の抑制を満足することは難しい。また親水性の乳化剤を使用するため水の蒸発が悪く、粉末油脂の流動性を満足することができない。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、油脂及び賦形剤を含有する水中油型乳化物を加熱乾燥する粉末油脂の製造方法において、高度不飽和脂肪酸に起因する異臭及び風味発現(異味)と、長期保存による高度不飽和脂肪酸に起因する劣化臭を抑制することができ、かつ粉体の流動性と水への溶解性の良好な粉末油脂の製造方法および焼成品の製造方法を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明の粉末油脂は、高度不飽和脂肪酸含有油脂と、ヨウ素価が50未満の油脂とを含有し、かつ30℃での固体脂含量が8%以上である油脂(A)及び賦形剤(B)を含有する水中油型乳化物を加熱乾燥することを特徴としている。
本発明の焼成品の製造方法は、上記の方法で粉末油脂を製造した後、この粉末油脂を配合した製菓製パン生地を焼成することを特徴としている。
本発明によれば、高度不飽和脂肪酸に起因する異臭及び風味発現と、長期保存による高度不飽和脂肪酸に起因する劣化臭を抑制することができ、かつ粉体の流動性と水への溶解性も良好である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
1.油脂(A)
本発明において粉末油脂の製造に使用される油脂(A)は、高度不飽和脂肪酸含有油脂と、ヨウ素価が50未満の油脂とを含有し、かつ30℃での固体脂含量が8%以上である。
このような油脂(A)を使用することで、高度不飽和脂肪酸に起因する強い異臭と風味発現(異味)や、長期保存による高度不飽和脂肪酸に起因する劣化臭を抑制できる。さらに、粉体の流動性が良好である。
高度不飽和脂肪酸含有油脂に含まれる高度不飽和脂肪酸は、不飽和結合を2つ以上持つ不飽和脂肪酸であり、例えば、ω3系脂肪酸のα−リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ω6系脂肪酸のリノール酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸などが挙げられる。
高度不飽和脂肪酸としてα−リノレン酸を含有する高度不飽和脂肪酸含有油脂としては、シソ油、エゴマ油、アマニ油などが挙げられる。
高度不飽和脂肪酸としてEPAやDHAを含有する高度不飽和脂肪酸含有油脂としては、魚油、海藻油などが挙げられる。
高度不飽和脂肪酸としてγ−リノレン酸を含有する高度不飽和脂肪酸含有油脂としては、月見草油、ボラージ油などが挙げられる。
上記高度不飽和脂肪酸含有油脂は、原料油を冷却によって析出させ固体部を除去分別することや、リパーゼ等でトリグリセリド中の高度不飽和脂肪酸以外の構成脂肪酸のエステル結合を選択的に加水分解し、除去することにより、高度不飽和脂肪酸の含有量を増加させたものを使用することもできる。
高度不飽和脂肪酸含有油脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高度不飽和脂肪酸含有油脂の含有量は、粉末油脂中の高度不飽和脂肪酸量を高めることで、粉末油脂の単位量当たりで高度不飽和脂肪酸を多く摂取できることから、油脂(A)全量に対して50質量%超92質量%未満が好ましい。
また本発明において粉末油脂の製造に使用される油脂(A)の含有量は、粉末油脂(水分を除く)に対して30〜80質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましく、40〜60質量%がさらに好ましく、40〜55質量%が特に好ましい。当該含有量が80質量%以下であると後述する賦形剤(B)により皮膜が強化され、粉体の流動性が向上する。特に55質量%以下であると粉末油脂を水に再溶解したときの油滴のメディアン径が1μm未満となり、長期保存による高度不飽和脂肪酸に起因する劣化臭の抑制効果をさらに高めることができる。
高度不飽和脂肪酸の含有量は、粉末油脂(水分を除く)に対して8〜40質量%が好ましい。この範囲であれば、粉末油脂の単位量当たりで高度不飽和脂肪酸を多く摂取することができ、かつ粉末油脂の流動性も良好なものとすることができる。
なお、高度不飽和脂肪酸の含有量は、粉末油脂から油脂をレーゼゴッドリーブ法で抽出後、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」)に従って測定することができる。
上記ヨウ素価が50未満の油脂は、食用のものであれば特に限定されるものではないが、例えば豚脂(ラード)、牛脂、乳脂などの動物油脂、パーム油、ヤシ油、パーム核油、菜種油、大豆油、綿実油、ひまわり油、米油、サフラワー油、オリーブ油、ごま油などの植物油脂、及びこれらの分別油、硬化油などを、全体として当該ヨウ素価となるよう1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも動植物油脂の硬化油及びパーム分別硬質油から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
パーム分別硬質油はパーム油を分別した結晶部であり、例えば、パームミッドフラクション、パームステアリンが挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。パーム分別硬質油のヨウ素価としては、10〜50未満、好ましくは20〜40である。
ヨウ素価が50未満の油脂は、より低いヨウ素価であると、少ない添加量で高度不飽和脂肪酸に起因する強い異臭、風味発現、劣化臭を抑制でき、油脂中の高度不飽和脂肪酸量を多くすることができるため、粉末油脂の単位量当たりで高度不飽和脂肪酸を多く摂取できるので好ましい。この観点よりヨウ素価は好ましくは40以下、より好ましくは35以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは2以下である。
動植物油脂の硬化油としては、上記観点より、ヨウ素価が2以下である極度硬化油が好ましく、その中でもパーム極度硬化油が好ましい。また極度硬化油を用いることで、動脈硬化症のリスクを増加させると言われており、健康への影響が懸念されるトランス酸の含有量を少なくすることができる。
また、高度不飽和脂肪酸含有油脂を含んだ油脂(A)全体で結晶化することにより、長期保存による高度不飽和脂肪酸に起因する劣化臭や風味劣化をより抑制する点を考慮すると、極度硬化油、パーム分別硬質油が好ましく、中でもパーム極度硬化油、パーム分別硬質油であるパームステアリンが好ましい。
ヨウ素価が50未満の油脂は、これを含む油脂(A)全体の30℃での固体脂含量が8%以上となるように配合することができる。
ヨウ素価が50未満の油脂の含有量は、油脂(A)全量に対して8〜50質量%が好ましい。
中でも極度硬化油を使用する場合、その含有量は、油脂(A)全量に対して8〜19質量%が好ましく、パーム分別硬質油を使用する場合、その含有量は、油脂(A)全量に対して20〜40質量%が好ましい。
本発明において粉末油脂の製造に使用される油脂(A)は、30℃での固体脂含量が8%以上であり、また口溶けと溶解性がより向上する観点から30℃での固体脂含量が50%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
また、油脂(A)は、10℃での固体脂含量が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
2.賦形剤(B)
本発明において粉末油脂の製造に使用される賦形剤(B)は、被覆材として機能し、加熱乾燥後の粉末油脂は、油脂(A)が賦形剤(B)で覆われた(カプセル化した)形状となっている。
賦形剤(B)としては、例えば、乳タンパク、大豆タンパク、小麦タンパク、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエーパウダー、バターミルクパウダー、コラーゲン、ゼラチン等のタンパク、これらタンパクの分解物、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等の二糖類、澱粉、デキストリン、オリゴ糖等の多糖類、増粘多糖類、糖アルコールなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
乳タンパクとしては、例えば、酸カゼイン、レンネットカゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、ホエータンパク、それらの酵素分解物である乳ペプチド、ミルクプロテインコンセントレート、トータルミルクプロテインなどが挙げられる。これらの中でも、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、ホエータンパク、乳ペプチド、酸カゼイン等の非ミセル状態であるものは、乳化安定性が向上する点で好ましい。
澱粉としては、例えば、馬鈴薯デンプン、コーンスターチ、小麦デンプン、米デンプン、甘藷デンプン、タピオカデンプン、緑豆デンプン、サゴデンプン、コーン、ワキシーコーン、馬鈴薯、タピオカ等を原料とし、これをエーテル化処理したカルボキシメチルデンプンや、エステル化処理したリン酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプン、酢酸デンプン、エーテル化処理したヒドロキシプロピルデンプン、湿熱処理デンプン、酸処理デンプン、架橋処理デンプン、α化処理デンプンなどが挙げられる。
デキストリンは、澱粉を化学的または酵素的方法により低分子化した澱粉部分加水分解物であり、市販品などを使用できる。澱粉の原料としては、コーン、キャッサバ、米、馬鈴薯、甘藷、小麦などが挙げられる。
デキストリンは、DEが30以下であることが好ましい。DEが30以下であるデキストリンを用いることにより、加熱乾燥によって粉末化した際に油脂(A)への皮膜能がより強化され、長期保存による高度不飽和脂肪酸に起因する劣化臭や風味劣化をさらに抑制できる。
デキストリンのDEは、20以下がより好ましく、10〜20がさらに好ましい。この範囲であると皮膜能が高く、また低甘味であるため粉末油脂自体が無味であり、そのまま喫食する場合や他の素材と混合して用いる場合等に他の素材の風味を損なうことなく用いることができる。
デキストリンのDE(Dextrose Equivalent)とはデキストリンの構成単位であるグルコース残基の鎖長の指標となるものであり、デキストリン中の還元糖の含有量(%)を示す値である。DE値はウィルシュテッターシューデル法により測定することができる。
デキストリンは市販品を用いることができ、例えば、パインデックス#100、パインデックス#1、マックス1000、パインデックス#2、パインデックス#3、マックス2000N、TK−16(以上は松谷化学工業(株)製)、サンデック#30、サンデック#70、サンデック#70FN、サンデック#100(以上は三和澱粉工業(株)製)、N.S.D100、N.S.D300、N.S.D500、N.S.D700、N.S.DL−P(以上はサンエイ糖化(株)製)などが挙げられる。
デキストリンの含有量は、粉末油脂全量(水分を除く)に対して20〜70質量%が好ましく、25〜50質量%がより好ましい。
賦形剤(B)は、DE30以下のデキストリンを含有することが好ましい。賦形剤(B)としてDE30以下のデキストリンと増粘多糖類を併用することで油脂(A)への皮膜能がより強化され、高度不飽和脂肪酸に起因する強い異臭と、長期保存による高度不飽和脂肪酸に起因する劣化臭をさらに抑制できる。
増粘多糖類としては、例えば、プルラン、アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、ジェランガム、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、寒天、LMペクチン、HMペクチンなどが挙げられる。
増粘多糖類に対するDE30以下のデキストリンの質量比は5〜100が好ましく、7〜50がより好ましく、15〜50がさらに好ましい。この範囲であると、油脂(A)への皮膜能がより強化されて上記の効果がより向上し、かつ、粉末化前の水中油型乳化物の増粘を抑制できるので生産効率が向上する。
増粘多糖類の含有量は、粉末油脂全量(水分を除く)に対して好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜6質量%である。この範囲であると風味、劣化臭の抑制効果と粉体の流動性が向上する。
増粘多糖類は、プルラン及びアラビアガムから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらを用いると油脂(A)への皮膜能がより強化され、高度不飽和脂肪酸に起因する強い異臭と、長期保存による高度不飽和脂肪酸に起因する劣化臭をさらに抑制できる。特に製造時の水中油型乳化物を調製する際に低粘度であり、生産性が向上すること、また粉末化した際に皮膜の酸素透過性が低く、より劣化臭を抑制できることからプルランを用いることがより好ましい。
プルランは水飴を原料とし、糸状菌(Aureobasidium pullulans)を培養して得られたマルトトリオースが規則正しくα−1,6結合した多糖類であり、市販品としては「プルラン」((株)林原製)などを使用できる。
アラビアガムは、マメ科アラビアゴムノキ又はその他の同属植物の分泌液から得られた多糖類を主成分とするものであれば特に制限はなく、例えば分泌液を乾燥したもの、分泌液を乾燥したものを粉砕したもの、分泌液を水に溶解して噴霧乾燥したもの、分泌液を水に溶解して脱塩し噴霧乾燥したものなどが挙げられる。市販品としては「ガムアラビックSD」(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)、「アラビックコールSS」(三栄薬品貿易(株))などを使用できる。
また、賦形剤(B)として、DE30以下のデキストリンと増粘多糖類に加えて、さらにトレハロースを含有させることが好ましい。トレハロースを含有させることにより、長期保存による高度不飽和脂肪酸に起因する風味劣化をさらに抑制できる。
3.その他の成分(C)
本発明において粉末油脂には、その他の成分(C)として、必要に応じて乳化剤を配合することもできる。
乳化剤は食品用であれば特に限定されものではなく、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウムなどを用いることができる。
これらの中でも、親油性グリセリン脂肪酸エステルを用いることが好ましい。親油性グリセリン脂肪酸エステルを含有することにより、油脂(A)の相溶性が向上し、油脂(A)全体での結晶化の促進を図ることができ、長期保存による高度不飽和脂肪酸に起因する劣化臭をさらに抑制できる。また粉末油脂の水への溶解性がさらに向上する。
親油性グリセリン脂肪酸エステルとしては、HLBが1〜10であるもの、例えばモノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステルなどを用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に飽和脂肪酸を主体とするものが好ましく、融点が55℃以上であることが好ましい。
ここでHLB値は、Griffin式(Atlas社法)により求めることができる。
また融点測定は、「食品添加物公定書解説書」記載の融点測定(B−233)方法により行うことができる。
親油性グリセリン脂肪酸エステルの含有量は、油脂(A)全量に対して0.1〜5.0質量%が好ましい。この範囲であれば、上記効果が発現し、乳化剤の異味や、粉末油脂の水への溶解性が低下することも抑制できる。
本発明において粉末油脂には、本発明の効果を損なわない範囲内において、その他の成分(C)として、抗酸化剤、フレーバー等を配合してもよい。
抗酸化剤は、これを含有させることで、長期保存による高度不飽和脂肪酸に起因する劣化臭をさらに抑制できる。抗酸化剤としては、油溶性、水溶性のいずれも使用することができ、具体的には、アスコルビン酸又はその誘導体、エリソルビン酸又はその誘導体、トコフェロール、フラボノイド類、フェノール酸類、リグナン類、クルクミン類、クマリン類などが挙げられる。
アスコルビン酸又はその誘導体としては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸カリウム、L−アスコルビン酸カルシウム、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル、L−アスコルビン酸硫酸エステルの2ナトリウム塩、L−アスコルビン酸脂肪酸エステル(脂肪酸としてはミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が挙げられる)、L−アスコルビン酸2−グルコシドなどが挙げられる。
エリソルビン酸又はその誘導体としては、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウム、エリソルビン酸カルシウム、エリソルビン酸リン酸エステル、エリソルビン酸硫酸エステルなどが挙げられる。
トコフェロールとしては、α型、β型、γ型、δ型等の各種の化学構造を有するものが知られているが、本発明ではいずれも使用することができる。
フラボノイド類としては、カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルチンなどが挙げられる。
フェノール酸類としては、クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピルなどが挙げられる。
これらの中でも、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、カテキンを用いると、長期保存による劣化臭の抑制効果が強く、風味の点ではアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体が好ましい。また賦形剤(B)としてタンパクを用いる場合は、油溶性のアスコルビン酸誘導体であるアスコルビン酸脂肪酸エステルを用いることでタンパクの凝集を抑制でき、乳化が安定となる。中でも融点が低く、製造時に高温とせず使用できることからL−アスコルビル酸パルミチン酸エステル(ビタミンCパルミテート)が好ましい。またL−アスコルビル酸パルミチン酸エステルの油脂(A)への溶解性を向上させる点ではレシチンを併用することが好ましい。
フレーバーは、これを含有させることで、長期保存による高度不飽和脂肪酸に起因する風味劣化をさらに抑制できる。フレーバーとしては、油溶性、水溶性のいずれも使用でき、具体的には、柑橘由来(レモン、オレンジ、カボス、ユズ、ライム、グレープフルーツ)、乳由来(バター、ミルク、チーズ)、ジンジャー、ニンニク、ネギ、山椒、ワサビ、ハーブ由来(ローズマリー、ミント、レモンバーム、レモングラス、オレガノ、バジル、ラベンダー)のものなどが挙げられる。
これらの中でも柑橘由来のフレーバーが好ましく、水相に添加するとフレーバーに起因する風味発現も抑制できる。すなわち粉末油脂自体が無味であり、そのまま喫食する場合や他の素材と混合して用いる場合等に他の素材の風味を損なうことなく用いることができる。
フレーバーの含有量は、油脂(A)全量に対して0.01〜0.5質量%が好ましい。
4.粉末油脂の製造
本発明において粉末油脂は、例えば、油脂(A)、賦形剤(B)、水、及び必要に応じてその他の成分(C)などの他の原材料を配合して水中油型に乳化後、水中油型乳化物を加熱乾燥し粉末化することによって製造することができる。以下に本発明の粉末油脂の製造方法の一例を説明する。
賦形剤(B)を含む水相と油脂(A)を含む油相を調製し、これらをホモミキサー等で加温下にて攪拌後、ホモジナイザー等で均質化することにより水中油型乳化物とし、その後、加熱乾燥して粉末油脂を得る。水相と油相は、好ましくは50〜90℃、より好ましくは65〜85℃に加温し、これにより添加した成分を完全に溶解しておくことが望ましい。乳化工程は、好ましくは50〜90℃、より好ましくは65〜85℃に調温して行う。高度不飽和脂肪酸含有油脂は、高温下において油脂の酸化により劣化し、製造中での異臭が発生すること、粉末油脂自体の風味が劣化することから、油相の加温と乳化工程は60〜70℃で行うことが特に好ましい。水中油型乳化物を加熱乾燥し粉末化する方法としては、一般的に知られている噴霧乾燥法を用いることができる。賦形剤(B)は被覆材として機能し、乾燥後の粉末油脂は、油脂(A)が賦形剤(B)で覆われた(カプセル化した)形状となる。より具体的には、本発明において粉末油脂は以下の工程で製造することができる。
乳化工程では、前記の原材料を乳化機の撹拌槽に投入して撹拌混合した後、圧力式ホモジナイザーで油滴サイズを微細化する。
水の配合量は、特に限定されないが、例えば、水以外の原材料の合計量100質量部に対して50〜200質量部の範囲にすることができる。
配合手順は、特に限定されないが、例えば、賦形剤(B)などの水溶性の原材料を水に添加し、加温下に攪拌して完全に溶解させた後、ホモミキサーで攪拌しながら、油脂(A)を含む油相を加熱溶解させたものを滴下して乳化することができる。
得られた乳化液は、圧力式ホモジナイザーに供給することによって油滴サイズが微細化される。例えば、市販の圧力式ホモジナイザーを用いて、10〜250kgf/cm2程度の圧力をかけて均質化し、油滴サイズを微細化することができる。
次に、油滴サイズを微細化した乳化液を高圧ポンプで噴霧乾燥機の入口に供給し、高温熱風を吹き込み、噴霧乾燥機の槽内に上方から噴霧する。噴霧乾燥された粉末油脂は槽内底部に堆積される。噴霧乾燥機としては、例えば、アトマイザー方式やノズル方式で噴霧するスプレードライヤーを用いることができる。
次に、噴霧乾燥された粉末油脂を噴霧乾燥機の槽内から取り出した後、振動流動槽などにより搬送しながら冷風で冷却することによって、粉末油脂を製造することができる。なお、適宜のときに加熱殺菌工程などを設けることもできる。
粉末油脂は劣化を抑制する観点から、窒素置換し充填することが好ましい。
本発明により得られる粉末油脂は水中油型乳化物を乾燥したものであり、水に添加すると元の水中油型乳化物となり、微細な油滴が再分散した状態となる。再溶解後の油滴のメディアン径は、例えば0.3〜2μmであり、好ましくは0.5〜1.2μm、さらに好ましくは0.5〜1μm未満である。
なお、最終的に得られた粉末油脂は0.5〜4.0質量%程度の水分を含んでいる。
以上の粉末油脂の製造工程において、好ましい一つの態様では、油相に油脂(A)を含有し、水相に賦形剤(B)を含有する水中油型乳化物にアルコールを含有させ、このアルコールを含有する水中油型乳化物を加熱下で乾燥する。
より具体的には、水相にアルコールを添加し、このアルコールを含有する水相と油相とを上記の工程で水中油型に乳化後、この水中油型乳化物を加熱乾燥し粉末化する。水相にアルコールを添加することにより、油脂(A)に含まれる、高度不飽和脂肪酸に起因する異臭成分を粉末化の際に揮発させることが可能であり、異臭をより低減できる。また、粉末油脂の風味を向上させることができる。異臭を加熱乾燥の際にアルコールとともに揮発させることで異臭が低減すると、風味の向上に寄与するものと推測される。
アルコールとしては、食品に使用可能なものであれば特に限定されず、例えば、エタノール、酒類、味醂、アルコール製剤などが挙げられる。
これらの中でも、アルコール含有量が高い方が、低添加量で上記の効果を得ることができることから、エタノールを用いることが好ましい。アルコールの添加量は、水中油型乳化物の水を除く全量(固形分)に対して0.01〜10質量%が好ましい。この範囲であると、高度不飽和脂肪酸に起因する異臭を低減でき、かつ粉末化前の水中油型乳化物を製造する際の乳化安定性が不安定となることも抑制できる。
なお、以上のアルコールを添加する方法によって最終的に得られた粉末油脂は1質量%以下のアルコール由来の残存成分を含んでいてもよい。
5.粉末油脂を用いた飲食品
本発明により得られる粉末油脂は、保存時の異臭の発生が起こりにくいことから長期にわたり良好な風味を維持することができる。また、粉体の流動性と水への溶解性も良好である。したがって広い範囲の飲食品に使用することができ、製菓製パン、スープ類、ソース類、飲料、フライバッター、スナック惣菜類、水産練り製品、畜肉製品、ミックス粉、栄養強化食品、サプリメント、ペットフード、飼料などに好適に用いることができる。
本発明により得られる粉末油脂は、焼成品に好適に用いることができる。焼成品は、この粉末油脂を配合した製菓製パン生地を焼成することによって製造される。
焼成品のパンとしては、例えば、食パン、ロールパン、フランスパン、菓子パン、デニッシュ、クロワッサン、パイなどのペストリーなどが挙げられる。
焼成品の焼き菓子としては、例えば、クッキー、ビスケット、シュトーレン、パネトーネ、クグロフ、ブリオッシュ、ドーナツ、バターケーキ、パウンドケーキ、スポンジ、ブッセ、ホットケーキ、ワッフルなどが挙げられる。
本発明において粉末油脂の製造に使用される油脂(A)は、高度不飽和脂肪酸含有油脂と共に、ヨウ素価が50未満の油脂を含有し、かつ30℃での固体脂含量が8%以上であることから、このような油脂(A)を使用することで、高度不飽和脂肪酸の臭いなどによる風味への影響が小さく、焼成品の風味が良好である。また焼成品を長期保存しても、高度不飽和脂肪酸の酸化が抑制されて、良好な風味を維持できる。また、酸化しやすい高度不飽和脂肪酸含有油脂を含んだ油脂(A)の酸化を抑えるために抗酸化剤を用いると、抗酸化剤の影響によって焼成品の色調が強くなり、商品価値が低いものとなりやすい。しかし本発明では、抗酸化剤を含有していても賦形剤(B)により被覆され粉末油脂の形状となっているため、焼成品の色調を害することなく、商品価値を維持することができ、かつ抗酸化剤によって長期に油脂(A)の劣化を抑制できる。
焼成品がパンである場合には、高度不飽和脂肪酸を含有する油脂(A)を配合しても、これに起因する臭いを抑えかつ、生地切れが起こりにくく機械耐性に優れ、ボリュームのある(比容積の大きい)パンを得ることができる。生地に配合する油脂が粉末状(粉体状)ではなく液体状であると、パン生地を製造する際に生地切れが起きやすいという問題がある。一方、高度不飽和脂肪酸含有油脂を粉末化した油脂を用いても、生地切れ及び高度不飽和脂肪酸含有油脂に起因する臭いの抑制をいずれも満足することは難しい。本発明において粉末油脂の製造に使用される油脂(A)は、高度不飽和脂肪酸含有油脂と共に、ヨウ素価が50未満の油脂を含有し、かつ30℃での固体脂含量が8%以上であることから、生地切れが起こりにくく機械耐性に優れ、かつ高度不飽和脂肪酸含有油脂に起因する臭いを抑制できる。生地切れに関しては、本発明において加熱乾燥により製造される粉末油脂は、再溶解後の粒子径が小さいことから製パンの生地作製時にグルテンの周りに微細に分散し、生地の柔軟性が得られ、生地切れが起きにくくなると考えられる。賦形剤(B)の増粘多糖類は、配合量が多くなると生地が硬くなり生地切れが起こりやすくなることなどを考慮すると、賦形剤(B)は、DE30以下のデキストリンと増粘多糖類とを含有することが好ましく、増粘多糖類に対するデキストリンの質量比は5〜100であることがより好ましい。生地の機械耐性とパンのボリュームの双方が良好となる点を考慮すると、増粘多糖類としてはプルランが好ましい。また、生地の機械耐性がさらに向上する点を考慮すると、乳化剤としてモノグリセリン脂肪酸エステルなどの親油性グリセリン脂肪酸エステルを水中油型乳化物に配合することが好ましい。
焼成品は、本発明により得られる粉末油脂を製菓製パン生地に配合し、この生地を焼成することによって得られる。焼成は、例えば公知の方法及び条件に従って行うことができる。
生地は穀粉を主成分とし、穀粉としては、通常、焼成品の生地に配合されるものであれば、特に限定されないが、例えば、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉など)、大麦粉、米粉、とうもろこし粉、ライ麦粉、そば粉、大豆粉などが挙げられる。
また本発明により得られる粉末油脂は粉体状であるため、この粉末油脂は、製菓製パン生地に配合する他の粉体状の原材料と混合したミックス粉としても好適に用いることができる。
本発明により得られる粉末油脂の生地における配合量は、焼成品の種類によっても異なり特に限定されないが、生地に配合される穀粉100質量部に対して、例えば0.1〜40質量部である。焼成品がパンの場合、本発明により得られる粉末油脂の配合量は、生地に配合される穀粉類100質量部に対して、例えば0.1〜20質量部であり、焼成したパンの風味がさらに向上することを考慮すると、0.1〜15質量部が好ましい。パン生地は、直捏法、中種法、液種法、オールインミックス法、中種法などによって製造することができる。焼成品がクッキーの場合は、本発明により得られる粉末油脂の配合量は、生地に配合される穀粉類100質量部に対して、例えば0.1〜30質量部であり、焼成したクッキーの食感が良好であることから0.1〜20質量部が好ましい。
生地には、穀粉と本発明により得られる粉末油脂以外にも、通常、焼成品の生地に配合されるものであれば、特に制限なく配合することができる。また、これらの配合量も、通常、焼成品の生地に配合される範囲を考慮して特に制限なく配合することができる。具体的には、例えば、水、乳、乳製品、蛋白質、糖質、卵、卵加工品、澱粉、塩類、乳化剤、乳化起泡剤(乳化油脂)、イースト、イーストフード、カカオマス、ココアパウダー、チョコレート、コーヒー、紅茶、抹茶、野菜類、果物類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、肉類、魚介類、豆類、きな粉、豆腐、豆乳、大豆蛋白、膨張剤、甘味料、調味料、香辛料、着色料、フレーバー、酵素などが挙げられる。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、表1、表2、表5、表6、表9〜11の配合は質量部を示す。また表1、表2、表5、表10における実施例1〜42の油脂及び賦形剤は、上記油脂(A)及び賦形剤(B)に相当する。
(1)分析
各油脂のヨウ素価は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1−2013 ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」で測定した。
油脂の固体脂含量(SFC)は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.2.9−2013 固体脂含量(NMR法)」で測定した。
粉末油脂の再溶解時のメディアン径は、粉末油脂を10質量%になるよう水に溶解し、島津製作所製:SALD−2300湿式レーザー回折装置により測定し、粒子径分布の中央値として求めた。
(2)粉末油脂の評価
<粉末油脂の製造>
表1、表2に記載の油脂に乳化剤、抗酸化剤、フレーバーを添加し70℃に加熱し撹拌後、油相とした。表1、表2の合計質量と同量の温水(60℃)にカゼインナトリウム、デキストリン、増粘多糖類、トレハロース、エタノール、フレーバーを添加し70℃に加熱し、水相とした。水相と油相を混合した後、圧力式ホモジナイザーを用いて150kgf/cm2の圧力で均質化し、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物を、ノズル式スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、水分1.2質量%の粉末油脂を得た(噴霧乾燥条件:入口温度210℃)。
<評価>
実施例及び比較例の各試料について以下の評価を行った。以下の評価において、パネルは、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
[粉末油脂の臭い]
20℃で1日保管した後、パネル10名により高度不飽和脂肪酸含有油脂由来の臭い(魚油臭あるいはエゴマ臭)の有無を判断した。これに基づいて以下の基準で評価した。
評価基準
5点:9名以上が油脂由来の臭いなく良好であると評価した。
4点:8〜7名が油脂由来の臭いなく良好であると評価した。
3点:6〜5名が油脂由来の臭いなく良好であると評価した。
2点:4〜3名が油脂由来の臭いなく良好であると評価した。
1点:油脂由来の臭いなく良好であると評価したのは2名以下であった。
[粉末油脂の劣化臭]
30℃で180日間保管した後、パネル10名により劣化臭の有無の判断をした。これに基づいて以下の基準で評価した。
評価基準
5点:9名以上が劣化臭なく良好であると評価した。
4点:8〜7名が劣化臭なく良好であると評価した。
3点:6〜5名が劣化臭なく良好であると評価した。
2点:4〜3名が劣化臭なく良好であると評価した。
1点:劣化臭なく良好であると評価したのは2名以下であった。
[粉末油脂の風味]
20℃で1日保管した後、パネル10名により粉末油脂を摂取し、高度不飽和脂肪酸含有油脂由来の異味を判断した。これに基づいて以下の基準で評価した。
評価基準
5点:9名以上が異味なく良好であると評価した。
4点:8〜7名が異味なく良好であると評価した。
3点:6〜5名が異味なく良好であると評価した。
2点:4〜3名が異味なく良好であると評価した。
1点:異味なく良好であると評価したのは2名以下であった。
[粉末油脂の流動性]
粉末油脂を手に取り、触感、目視にて、以下の基準で評価した。
評価基準
5点:粉が均一で、流動性が非常に良い。
4点:粉が均一で、流動性が良い。
3点:粉がやや不均一であるが、流動性が良い。
2点:粉が不均一で、流動性が悪い。
1点:粉が不均一で、流動性がかなり悪い。
[粉末油脂の溶解性]
40℃の水197gに粉末油脂3gを入れ、薬さじで30秒間攪拌し、粉末油脂の溶け方を以下の基準で評価した。
評価基準
5点:溶け残りがない。
4点:溶け残りがあまりない。
3点:溶け残りが少しある。
2点:溶け残りがある。
1点:溶け残りがかなりある。
上記の評価結果を表3、表4に示す。なお、表2の※1〜※12は、表1の※1〜※12と同じものを使用した。
Figure 0006175199
※1 エマルジーMS(理研ビタミン(株)製)融点65℃、飽和酸含量97% HLB4.3
※2 エマルジーP-100(理研ビタミン(株)製)融点64℃、飽和酸含量97% HLB4.3
※3 レシチンM(昭和産業(株)製)
※4 ビタミンCパルミテート(DSM社製)
※5 パインデックス#1(松谷化学工業(株)製)
※6 パインデックス#2(松谷化学工業(株)製)
※7 パインデックス#3(松谷化学工業(株)製)
※8 パインデックス#6(松谷化学工業(株)製)
※9 プルラン((株)林原製)
※10 ガムアラビックSD(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)
※11 SM−1200(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)
※12 トレハ((株)林原製)
Figure 0006175199
Figure 0006175199
Figure 0006175199
表1〜表4より、高度不飽和脂肪酸含有油脂とともにヨウ素価が50未満の油脂を含有し、30℃での固体脂含量が8%以上である油脂(A)を配合した粉末油脂を使用した実施例1〜18は、粉末油脂中の高度不飽和脂肪酸量を高めても、高度不飽和脂肪酸に起因する異臭と風味発現(異味)や、長期保存による高度不飽和脂肪酸に起因する劣化臭が抑制された。さらに、粉末の流動性と水への溶解性も良好であった。
賦形剤(B)としてDE30以下のデキストリンを用いると、高度不飽和脂肪酸に起因する異臭と劣化臭をさらに抑制でき、粉末の流動性も良好であった。また賦形剤(B)としてDE30以下のデキストリンと増粘多糖類を併用すると、高度不飽和脂肪酸に起因する異臭と劣化臭をさらに抑制できた。増粘多糖類はプルラン及びアラビアガムが特に効果が大きい。
また乳化剤として親油性グリセリン脂肪酸エステルを用いると、上記のような各効果は全体的に向上した。
粉末油脂を製造する際に、水相にアルコールを添加し、この水中油型乳化物を加熱乾燥し粉末化したものでは、異臭を特に低減することができた。
(3)粉末油脂を生地に配合したパンの評価
<粉末油脂の製造>
(実施例19〜30、比較例6)
表5、表6に記載の油脂に乳化剤、抗酸化剤、フレーバーを添加し70℃に加熱し撹拌後、油相とした。表5、表6の合計質量と同量の温水(60℃)にカゼインナトリウム、デキストリン、増粘多糖類、トレハロース、エタノール、フレーバーを添加し70℃に加熱し、水相とした。水相と油相を混合した後、圧力式ホモジナイザーを用いて150kgf/cm2の圧力で均質化し、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物を、ノズル式スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、水分1.2質量%の粉末油脂を得た(噴霧乾燥条件:入口温度210℃)。
<可塑性油脂1の製造>
(比較例7)
表6に記載の油脂に乳化剤、抗酸化剤を添加し70℃に加熱し溶解、撹拌した後、コンビネーターによって急冷捏和して、組成物として可塑性油脂1を得た。
<油脂1の製造>
(比較例8)
表6に記載の油脂に乳化剤、抗酸化剤を添加し70℃に加熱し溶解、撹拌し、組成物として油脂1を得た。
<食パンの製造>
イーストを分散させた水、イーストフード、及び強力粉をミキサーボールに投入しフックを使用して、下記条件にてミキシング、発酵を行い、中種生地を得た。
その後、本捏配合の全材料及び中種生地を添加し低速3分、中低速11分でミキシングしパン生地を得た。捏上温度は28℃であった。
その後、20分のフロアータイムをとった後、生地を2P分割丸め機FDR−2−12(株式会社フジサワ・マルゼン社製)に入れ、320gに分割、丸めをし、生地玉を得た。生地玉をボックスに入れ、20分のベンチタイムをとった。生地の成型は、モルダーで5mmに延ばし、ロール型に成型後、ワンローフ型に入れ、38℃、湿度80%で60分間のホイロをとり、その後200℃で25分焼成した。
〈食パンの配合〉
・中種配合
強力粉 70質量部
イースト 2.5質量部
イーストフード 0.1質量部
水 40質量部
・本捏配合
強力粉 30質量部
上白糖 6質量部
食塩 1.8質量部
脱脂粉乳 2質量部
粉末油脂、可塑性油脂1、又は油脂1 15質量部
水 24質量部
<評価>
実施例及び比較例の各試料について以下の評価を行った。以下の評価において、パネルは、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
[機械耐性]
上記製造工程の分割丸め機を通した後の生地玉の生地切れの状態を以下の基準で評価した。
評価基準
4点:生地に切れはない。
3点:生地の底面にわずかに切れがある。
2点:生地の底面に切れがある。
1点:生地の底面と側面に切れがある。
[パンのボリューム]
焼成した食パンを放冷後、20℃で1日保存後に菜種置換法により、比容積を求め以下のように評価した。
比容積(ml/g)= 食パンの体積(ml)/食パンの質量(g)
評価基準
4点:4.8以上
3点:4.65以上4.8未満
2点:4.5以上4.65未満
1点:4.5未満
[パンの臭い]
焼成したパンを20℃で放冷した後、20℃で3日保存したパンについてパネル10名により高度不飽和脂肪酸含有油脂由来の臭い(魚油臭あるいはエゴマ臭)の有無を判断した。
評価基準
5点:9名以上が油脂由来の臭いなく良好であると評価した。
4点:8〜7名が油脂由来の臭いなく良好であると評価した。
3点:6〜5名が油脂由来の臭いなく良好であると評価した。
2点:4〜3名が油脂由来の臭いなく良好であると評価した。
1点:油脂由来の臭いなく良好であると評価したのは2名以下であった。
上記の評価結果を表7、表8に示す。なお、表5、表6の※1〜※12は、表1の※1〜※12と同じものを使用した。
Figure 0006175199
Figure 0006175199
Figure 0006175199
Figure 0006175199
(4)粉末油脂を生地に配合した焼き菓子の評価
<粉末油脂の製造>
(実施例31〜42、比較例9)
表10、表11に記載の油脂に乳化剤、抗酸化剤、フレーバーを添加し70℃に加熱し撹拌後、油相とした。表5、表6の合計質量と同量の温水(60℃)にカゼインナトリウム、デキストリン、増粘多糖類、トレハロース、エタノール、フレーバーを添加し70℃に加熱し、水相とした。水相と油相を混合した後、圧力式ホモジナイザーを用いて150kgf/cm2の圧力で均質化し、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物を、ノズル式スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、水分1.2質量%の粉末油脂を得た(噴霧乾燥条件:入口温度210℃)。
<可塑性油脂2の製造>
(比較例10)
表11に記載の油脂に乳化剤、抗酸化剤を添加し70℃に加熱し溶解、撹拌した後、コンビネーターによって急冷捏和して、組成物として可塑性油脂2を得た。
<油脂2の製造>
(比較例11)
表11に記載の油脂に乳化剤、抗酸化剤を添加し70℃に加熱し溶解、撹拌し、組成物として油脂2を得た。
<油脂3の製造>
(比較例12)
表11に記載の魚油を油脂3として用いた。
以下のクッキーの製造1、2においては、下記表9の配合1〜3のいずれかによってクッキーを製造した。
Figure 0006175199
※ クローネショートニング(ミヨシ油脂(株)製)
<クッキーの製造1>
表10、表11に示す実施例31〜42、比較例9の粉末油脂を用いて配合1、比較例10の可塑性油脂2、比較例11の油脂2、比較例12の油脂3を用いて配合2により以下の工程でクッキーを製造した。
ショートニングと、粉末油脂、可塑性油脂2、又は油脂2と、上白糖をミキサーに入れビーターですりあわせ、その後水を徐々に加えた後、薄力粉をあわせクッキー生地を得た。クッキー生地を一晩冷蔵庫にてリタードした後、棒状に成形し、10mm厚に輪切りし、鉄板に並べて180℃、20分間焼成しクッキーを得た。
<評価1>
実施例及び比較例の各試料について以下の評価を行った。以下の評価において、パネルは、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
[クッキーの風味 直後]
焼成したクッキーを室温で30分放冷した後(直後)、パネル10名によりクッキーの高度不飽和脂肪酸含有油脂由来の臭い(魚油臭あるいはエゴマ臭)の有無を以下の基準で評価した。
評価基準
5点:9名以上が油脂由来の臭いなく良好であると評価した。
4点:8〜7名が油脂由来の臭いなく良好であると評価した。
3点:6〜5名が油脂由来の臭いなく良好であると評価した。
2点:4〜3名が油脂由来の臭いなく良好であると評価した。
1点:油脂由来の臭いなく良好であると評価したのは2名以下であった。
上記の評価結果を表10、表11に示す。なお、表10、表11の※1〜※12は、表1の※1〜※12と同じものを使用した。
Figure 0006175199
Figure 0006175199
<クッキーの製造2>
表10の実施例34の粉末油脂を用いて配合1、配合3、表11の比較例11の油脂2、比較例12の油脂3を用いて配合2により、以下の工程でクッキーを製造した。
ショートニングと、粉末油脂、油脂2、又は油脂3と、上白糖をミキサーに入れビーターですりあわせ、その後水を徐々に加えた後、薄力粉をあわせクッキー生地を得た。クッキー生地を一晩冷蔵庫にてリタードした後、棒状に成形し、10mm厚に輪切りし、鉄板に並べて180℃、20分間焼成しクッキーを得た。
焼成したクッキーを室温で30分放冷した後、クッキー100gをアルミ袋(セイニチ社ラミジップAL−12)に入れ、ヒートシールし30℃の恒温槽で260日保存した。なお、表12左欄の「[I]脱酸素剤入り」は、クッキー100gと脱酸素剤(三菱ガス化学製 エージレスZP−100)をアルミ袋(セイニチ社ラミジップAL−12)に入れヒートシールし30℃の恒温槽で260日保存した。表12右欄の「[II]脱酸素剤なし」は、脱酸素剤を入れずにクッキー100gをアルミ袋に入れヒートシールし30℃の恒温槽で260日保存した。
<評価2>
実施例及び比較例の各試料について以下の評価を行った。以下の評価において、パネルは、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
[クッキーの風味 直後、260日後]
焼成したクッキーを室温で30分放冷した後(直後)と、30℃で260日保存したクッキーの風味を、クッキーの高度不飽和脂肪酸含有油脂由来の臭い(魚油臭あるいはエゴマ臭)の有無に基づき、パネル10名により以下の基準で評価した。
直後のクッキーに関しては喫食した時の風味(直後に関してはアルミ袋に入れる前の状態で喫食した。)であり、260日後の風味は臭気により確認した。
評価基準
5点:9名以上が油脂由来の臭いなく良好であると評価した。
4点:8〜7名が油脂由来の臭いなく良好であると評価した。
3点:6〜5名が油脂由来の臭いなく良好であると評価した。
2点:4〜3名が油脂由来の臭いなく良好であると評価した。
1点:油脂由来の臭いなく良好であると評価したのは2名以下であった。
[クッキーの過酸化物価(POV)]
製造直後のクッキーと260日間保存したクッキーの過酸化物価(POV)を測定した。
クッキー50gを細かく砕き、ジエチルエーテルによりソックスレー法で15時間還流し抽出した油脂を基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)「2.5.2.1−2013」により測定した。
なお、製造直後のクッキーのPOVは、アルミ袋に入れる前に測定した。
[CDM試験]
製造直後のクッキーと260日間保存したクッキーのランシマット(CDM)を測定した。
焼成したクッキーを細かく砕き、クッキーを試料として基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.5.1.2−2013」によりCDM値を求めた。具体的には、120℃に加熱した油脂に空気を吹き込み、酸化により生成した揮発性分解物を水中に捕集し、水の導電率が急激に変化する変曲点までの時間(hr)を調べた。CDM値が高いほど油脂の酸化安定性が高いことを示す。
なお、製造直後のクッキーのCDMは、アルミ袋に入れる前に測定した。
上記の評価結果を表12に示す。
Figure 0006175199
[クッキーの色調]
上記クッキーの製造2により焼成したクッキーの色調を目視した。
実施例34の粉末油脂を用いて配合1、配合3で焼成したクッキーと、比較例12の油脂3(魚油)を用いて配合2で焼成したクッキーは通常の焼き色を呈していた。
それに対して魚油に抗酸化剤を添加した比較例11の油脂2を用いて配合2で焼成したクッキーは、焼き色が強く黒味を呈していた。
表12の試験より、比較例11は実施例34と同様の抗酸化剤を用いており、比較例12よりも酸化安定性の指数であるPOV、CDMの値は良好となるが、抗酸化剤による焼成品の色調が強くなり、商品価値が低いものとなった。これに対して実施例34は、抗酸化剤を含有していても賦形剤により被覆され粉末油脂の形状となっているため、焼成品の色調を害することなく、かつ表12に示されるように長期に油脂の劣化が抑制されることがわかる。

Claims (11)

  1. 高度不飽和脂肪酸含有油脂と、ヨウ素価が50未満の油脂とを含有し、かつ30℃での固体脂含量が8%以上である油脂(A)、及びDE40以下のデキストリンを含有する賦形剤(B)を含有する水中油型乳化物を加熱乾燥する粉末油脂の製造方法。
  2. 前記賦形剤(B)は、DE30以下のデキストリンを含有する請求項1に記載の粉末油脂の製造方法。
  3. 前記賦形剤(B)は、さらに増粘多糖類を含有する請求項1又は2に記載の粉末油脂の製造方法。
  4. 前記増粘多糖類は、プルラン及びアラビアガムから選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の粉末油脂の製造方法。
  5. 前記増粘多糖類に対する前記デキストリンの質量比が5〜100である請求項3又は4に記載の粉末油脂の製造方法。
  6. 高度不飽和脂肪酸含有油脂と、パーム極度硬化油、菜種極度硬化油、大豆極度硬化油、パーム分別硬質油から選ばれる少なくとも1種であるヨウ素価が50未満の油脂とを含有し、かつ30℃での固体脂含量が8%以上である油脂(A)及び賦形剤(B)を含有し、高度不飽和脂肪酸含有油脂の含有量が、前記油脂(A)の全量に対して50質量%超92質量%未満である水中油型乳化物を加熱乾燥する粉末油脂の製造方法。
  7. 高度不飽和脂肪酸含有油脂と、ヨウ素価が50未満の油脂とを含有し、かつ30℃での固体脂含量が8%以上である油脂(A)及び賦形剤(B)を含有する水中油型乳化物を調製する際に、水相にアルコールを添加し、このアルコールを含有する水相と、前記油脂(A)を含有する油相とを水中油型に乳化後、この水中油型乳化物を加熱乾燥する粉末油脂の製造方法。
  8. 前記水中油型乳化物は、さらに親油性グリセリン脂肪酸エステルを含有する請求項1から7のいずれかに記載の粉末油脂の製造方法。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の方法で粉末油脂を製造した後、この粉末油脂を配合した製菓製パン生地を焼成する焼成品の製造方法。
  10. 焼成品がパンである請求項9に記載の焼成品の製造方法。
  11. 焼成品が焼き菓子である請求項9に記載の焼成品の製造方法。
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