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JP6180189B2 - 電解液組成物及びレドックスフロー電池 - Google Patents
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JP6180189B2 - 電解液組成物及びレドックスフロー電池 - Google Patents

電解液組成物及びレドックスフロー電池 Download PDF

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Description

本発明は、電解液組成物及びそれを用いたレドックスフロー電池に関する。
近年、世界的に自然由来のエネルギー源への転換が進んでいる。同時に自然由来のエネルギーを一時貯蔵するための大容量蓄電池の必要性が高まっている。大容量蓄電池として必要な安全性と耐久性を兼ね備えた蓄電池として、近年最も有望視されているものがレドックスフロー電池である。
レドックスフロー電池は、隔膜と、隔膜を介して対向する正極電極及び負極電極からなるセルに正極電解液及び負極電解液をそれぞれ供給して充放電を行う。電解液には、酸化還元により価数が変化する金属イオンを活物質として、これを含有する水溶液が一般的に使用されている。例えば、正極電解液に鉄イオン水溶液、負極電解液にクロムイオン水溶液を用いた鉄−クロム系レドックスフロー電池の他、正負極の電解液にバナジウムイオン水溶液を用いたバナジウム系レドックスフロー電池がよく知られている。
ここでレドックスフロー電池の正極電解液と負極電解液の金属イオンは、隔膜を介して微量ながら相互に透過することから、例えば鉄−クロム系レドックスフロー電池など、正極電解液と負極電解液の金属イオンが異なる場合は、電池の容量が低下してしまう。一方、バナジウム系レドックスフロー電池は、正極電解液と負極電解液の金属イオンが等しい為、電池の容量が低下しないという利点があり、レドックスフロー電池の中でも最も重要視されている。
レドックスフロー電池の課題は、エネルギー密度を向上させることである。例えばバナジウム系レドックスフロー電池のエネルギー密度は、リチウムイオン二次電池と比較すると約1/10、亜鉛−臭素電池と比較すると約1/4である。
レドックスフロー電池のエネルギー密度を向上させる為、例えば特許文献1に挙げるように、正極電解液及び負極電解液中に溶存している金属イオンの濃度を向上させる方法が提案されている。
特開平08−064223号公報
しかしながら、電解液中のバナジウムイオン濃度を高めると、電解液中のバナジウムイオンが化合物となって析出するという課題がある。具体的には、5価のバナジウムイオンを含む電解液においては、温度が50℃程度に上昇した際にバナジウム化合物が電解液中に析出する。また、2価、3価、又は4価のバナジウムイオンを含む電解液においては、温度が−5℃程度に低下した際にバナジウム化合物が電解液中に析出する。電解液組成物の温度が低下するなどして、バナジウム化合物が電解液を送液するチューブやセルの内部で析出すると電解液の流れが妨げられる。
上記のバナジウムイオンの析出を防止するため、例えば特許文献1では、保護コロイド剤やリン酸などを電解液に添加し、析出発生の速度を遅らせている。しかし、特許文献1に記載の手法を用いても、高温状態や、バナジウムイオンの濃度が高い時など、厳しい条件では、バナジウム化合物を析出させずに電解液の安定化を実現することは困難である。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、エネルギー密度が高く、かつ高温及び低温で長期間安定な電解液組成物、及びそれを用いたレドックスフロー電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、電解液に特定の添加剤を加えることで、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記のとおりである。
〔1〕
水と、
バナジウムイオンと、
50℃の水に対するモル溶解度が4.0mol/kg−HO以上であり、−5℃の水に対するモル溶解度が1.5mol/kg−HO以下である、酸及び/又は塩と、
を含む、
電解液組成物。
〔2〕
前記酸及び/又は塩が、マンデル酸、マンデル酸誘導体、マンデル酸塩、及びマンデル酸誘導体の塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む、前項〔1〕に記載の電解液組成物。
〔3〕
前記バナジウムイオンのモル濃度が、2.0mol/Lを超える、前項〔1〕又は〔2〕に記載の電解液組成物。
〔4〕
前記酸及び/又は塩の他に、アニオン性物質を少なくとも1種類含む、前項〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の電解液組成物。
〔5〕
前記アニオン性物質が硫酸イオンを含む、前項〔4〕に記載の電解液組成物。
〔6〕
前記アニオン性物質のモル濃度が、前記バナジウムイオンのモル濃度の10倍以下である、前項〔4〕又は〔5〕に記載の電解液組成物。
〔7〕
前記電解液組成物中の前記酸及び/又は塩が、50℃において一部が固体状態で存在する、前項〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の電解液組成物。
〔8〕
前記固体である、酸及び/又は塩が、粉体層を形成する、前項〔7〕に記載の電解液組成物。
〔9〕
前記粉体層が、流動層である、前項〔8〕に記載の電解液組成物。
〔10〕
前項〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の電解液組成物を含む、レドックスフロー電池。
本発明によれば、エネルギー密度が高く、かつ高温及び低温で長期間安定な電解液組成物、及びそれを用いたレドックスフロー電池を提供することができる。
実施例で用いた電解装置の一例を示す概略図である。 実施例で用いた粉体流動層の一例を示す概略図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下「本実施の形態」と記載する。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
〔電解液組成物〕
本実施の形態に係る電解液組成物は、
水と、
バナジウムイオンと、
50℃の水に対するモル溶解度が4.0mol/kg−HO以上であり、−5℃の水に対するモル溶解度が1.5mol/kg−HO以下である、酸及び/又は塩と、
を含む。
〔水〕
本実施の形態において用いられる水としては、特に限定されないが、例えば、蒸留水、イオン交換水を好適に用いることができる。さらに、溶存酸素による酸化の可能性を回避するため、窒素ガスによるバブリングや、真空にて脱気するなどの手段を用い、溶存酸素を減少させた水を用いることが好ましい。
〔バナジウムイオン〕
本実施の形態において用いられるバナジウムイオンのモル濃度は、エネルギー密度を高くする観点から、1.0mol/L以上であることが好ましく、2.0mol/Lを超えることがより好ましく、3.0mol/L以上であることがさらに好ましい。なお、バナジウムイオンのモル濃度の上限は特に限定されないが、10.0mol/L以下が好ましい。なお、本明細書において、バナジウムイオンはバナジルイオンを含む。
本実施の形態に係る電解液中に溶解させるバナジウムイオンの供給源、すなわちバナジウムの原料は、特に限定されないが、水への溶解度が高いという観点から、酸化硫酸バナジウムが好ましい。
〔酸及び塩〕
本実施の形態において用いられる酸及び塩は、溶解度の温度依存性が大きいことが好ましい。すなわち、酸及び塩の50℃の水に対するモル溶解度は、4.0mol/kg−HO以上であり、5.0mol/kg−HO以上であることが好ましく、10mol/kg−HO以上であることがより好ましい。また、−5℃の水に対するモル溶解度は、1.5mol/kg−HO以下であり、1.0mol/kg−HO以下であることが好ましく、0.6mol/kg−HO以下であることがより好ましい。本明細書において、−5℃の水に対する溶解度は、下式1により定義する。
−5℃の水に対する溶解度=0℃の水に対する溶解度−(10℃の水に対する溶解度−0℃の水に対する溶解度)÷2 式1
本実施の形態において用いられる酸としては、特に限定されないが、例えば、マンデル酸、及びマンデル酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましい。なお、マンデル酸は異性体を含むものとする。このような酸は、適度な溶解度の温度依存性を有し、高温と低温のそれぞれで、バナジウムの析出抑制に適したアニオン濃度に調整する効果があるという点で、優れる傾向にある。マンデル酸誘導体としては、特に限定されないが、例えば、クレソチン酸、o−アニス酸、アドレナリン、ノルアドレナリン、モノアミンオキシダーゼ、カテコール、o−メチルトランスフェラーゼが挙げられる。また、マンデル酸の異性体としては、特に限定されないが、例えば、dl−マンデル酸、l−マンデル酸、d−マンデル酸が挙げられる。
本実施の形態において用いられる塩としては、特に限定されないが、例えば、マンデル酸塩又はマンデル酸誘導体の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましい。このような塩は、適度な溶解度の温度依存性を有し、高温と低温のそれぞれで、バナジウムの析出抑制に適したアニオン濃度に調整する効果があるという点で、優れる傾向にある。塩の対カチオンとしては、特に限定されないが、例えば、K、Na等の一般的な金属イオン類や、R(オキソニウム)、NR (アンモニウム)、SR (スルホニウム)、PR (ホスホニウム)、RC(NHR (アミジニウム)、C(NHR (グアニジニウム)、C(ピリジニウム)、C (イミダゾリウム)、C (イミダゾリニウム)、C (トリアゾリウム)、IR (ヨードニウム)、CR (カルボカチオン)等の一般的なカチオン性の有機化合物が挙げられる(Rは水素、アルキル、アルケニル、アリール等を表す)。
本実施の形態において用いられる酸及び/又は塩は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施の形態において用いられる酸及び/又は塩は、溶液中で一部が固体状態で存在することが好ましい。ここで、「一部が固体状態で存在する」とは、電解液組成物中に酸及び/又は塩が過剰に加えられて、その一部が溶け残っている状態をいう。すなわち、本実施の形態の電解液組成物は、固体と液体の混合物であることが好ましい。特に、酸及び/又は塩は、50℃において一部が固体状態で存在することが好ましく、60℃において一部が固体状態で存在することがより好ましく、80℃において一部が固体状態で存在することがさらに好ましい。酸及び/又は塩の一部が、電解液組成物中に固体状態で存在することにより、電解液組成物の温度が低下して、酸及び/又は塩の溶解度が低下した際に、酸及び/又は塩の再結晶が、既に存在する固体を核として起こる。この再結晶は、固体状態で存在する酸及び/又は塩の表面で起こるので、50℃において固体である酸及び/又は塩を用いることにより、チューブ内壁やセル内部などで再結晶して、結晶が電解液の流れを妨げることを抑制でき、結果として高温及び低温で長期間安定な電解液組成物が得られる傾向にある。
特に、固体状態で存在する酸及び/又は塩は、粉体層を形成することが好ましい。このような酸及び/又は塩を用いることにより、レドックスフロー電池の電解液として用いた場合に、電解液の流れがより妨げられない傾向にある。なお、「粉体層を形成する」とは、レドックスフロー電池の電解液の流路中に粉体が存在する層を有することをいい、酸及び/又は塩が溶解した電解液の温度が低下した際に、酸及び/又は塩の再結晶が粉体表面で効率良く起こり、流路を塞ぐことを防止できるという観点から好ましい。
このなかでも特に、粉体層が流動層であることが好ましい。溶液の流れにより流動層を形成する酸及び/又は塩を用いることにより、レドックスフロー電池の電解液として用いた場合に、電解液の流れがより妨げられない優れる傾向にある。なお、「流動層」とは、前述の紛体層に存在する粉体が電解液の流れにより、流動化した層のことをいい、酸及び/又は塩が溶解した電解液の温度が低下した際に、より酸及び/又は塩の再結晶が粉体表面で効率良く起こり、流路を塞ぐことを防止できるという観点から好ましい。
〔アニオン性物質〕
本実施の形態に係る電解液組成物は、上記の酸及び/又は塩の他に、アニオン性物質を少なくとも1種類含有することが好ましい。アニオン性物質と、アニオン性高分子と併用することで、さらに溶液中アニオン濃度を高めることができるため、5価のバナジウムイオンの高温安定性を向上することができるという観点より、優れる傾向にある。
本実施の形態において用いられるアニオン性物質としては、特に限定されないが、例えば、硫酸イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ素イオンのような無機酸イオンや、ギ酸イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、シュウ酸イオン、アミノ酸イオン、メタンスルホン酸イオン、安息香酸イオン、サリチル酸イオン、マンデル酸イオンなどの有機酸イオンが挙げられる。電解液のバナジウムの原料として、酸化硫酸バナジウムを溶解する事により、少なくとも硫酸イオンが含まれ、特にイオン交換等の工程を経ずにアニオン性物質を含有させられる観点から、このなかでも、硫酸イオンを含むことが好ましい。これらアニオン性物質は、1種を単独で用いても、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施の形態において用いられるアニオン性物質のモル濃度は、バナジウムイオンのモル濃度の10倍以下であることが好ましく、5倍以下であることがより好ましく、3倍以下であることがさらに好ましく、2.5倍以下であることがよりさらに好ましく、2倍以下であることがさらにより好ましい。アニオン性物質のモル濃度がバナジウムイオンのモル濃度の10倍以下であることにより、低温においても2価、3価、及び4価バナジウムイオンがより安定する傾向にある。また、アニオン性物質のモル濃度の下限は、特に限定されないが、バナジウムイオンの0倍以上が好ましく、0.5倍以上であることがより好ましく、0.8倍以上であることがさらに好ましい。
上記のアニオン性物質には、電解液のバナジウムの原料として、バナジウムの塩を用いた場合に、水に溶解した際に発生するアニオンも含めるものとする。このようなケースとして、例えば酸化硫酸バナジウムを用いた場合の硫酸イオンが挙げられる。
〔電解液の調製方法〕
本実施の形態に係る電解液の調製方法としては、特に限定されないが、例えば、上記各成分を所定の温度下、撹拌することで調製することができる。
〔レドックスフロー電池〕
本実施の形態に係るレドックスフロー電池は、上記電解液組成物を含む。本実施形態に係るレドックスフロー電池は、炭素電極からなる正極を含む正極セル室と、炭素電極からなる負極を含む負極セル室と、正極セル室と、負極セル室とを隔離分離させる、隔膜としての電解質膜と、を含む電解槽を有することができる。正極セル室は活物質を含む正極電解液を、負極セル室は活物質を含む負極電解液を含むものである。活物質を含む正極電解液及び負極電解液は、例えば、正極電解液タンク及び負極電解液タンクによって貯蔵され、ポンプ等によって各セル室に供給される。また、レドックスフロー電池によって生じた電流は、交直変換装置を介して、直流から交流に変換されてもよい。
本実施の形態に係るレドックスフロー電池は、正極電解液中に4価若しくは5価のバナジウムイオン、又はその双方の価数のバナジウムイオンが溶存しており、負極電解液に2価若しくは3価のバナジウムイオン、又はその双方の価数のバナジウムイオンが溶存していることが好ましい。電池の充電及び放電が行われるとき、充電時には、正極セル室においては、バナジウムイオンが電子を放出するため4価のバナジウムイオンが5価のバナジウムイオンに酸化され、負極セル室では外路を通じて戻って来た電子により3価のバナジウムイオンが2価のバナジウムイオンに還元される。この酸化還元反応では、正極セル室ではプロトン(H)が過剰になり、一方負極セル室では、プロトン(H)が不足する。隔膜は正極セル室の過剰なプロトンを選択的に負極室に移動させ電気的中性が保たれる。放電時には、この逆の反応が進む。
また、本実施の形態に係るレドックスフロー電池において、バナジウムイオンの価数を除いた溶液の組成が、正極電解液と負極電解液で等しいことが好ましい。これにより、浸透圧により隔膜を透過するイオン量を最小限に抑えることができる。また電池の充放電や継時変化に伴い、電解液の組成が変化したとしても、元々の正極電解液と負極電解液の組成が等しいため、定期的に正極と負極の液を混合することで、液の組成を元に戻し、充放電や継時変化の影響をリセットすることができる。
以下、本実施の形態を実施例に基づいて具体的に説明するが、本実施の形態は下記実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕
(マンデル酸の溶解度)
dl−マンデル酸(以下、単に「マンデル酸」ともいう。)の水に対する溶解度は、0℃で0.58mol/kg−HO、10℃で0.77mol/kg−HOであった。式1に0℃の水に対する溶解度と10℃の水に対する溶解度の値を代入し、算出された−5℃の水に対する溶解度は、0.49mol/kg−HOであった。また、マンデル酸の50℃の水に対する溶解度は、24.5mol/kg−HOであった。さらに、マンデル酸は50℃において固体であった。
(4価のバナジウムイオンを含む電解液組成物の調製)
50mLポリプロピレン製容器に、酸化硫酸バナジウム6.9gと純水7.9mLとを仕込み、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌し、溶解させた。その後、マンデル酸を13.7g添加し、ウォーターバスにて60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌した。以上の手順により、バナジウム濃度が3mol/Lであり、硫酸イオン濃度が3mol/Lであり、dl−マンデル酸のモル濃度が9mol/Lである溶液を調製し、これを4価のバナジウムイオンを含む電解液組成物とした。
(5価のバナジウムイオンを含む電解液組成物の調製)
上記の手順のスケールを10倍にし、同様の作業を行うことで、4価のバナジウムイオンを含む電解液組成物100mLを得た。それを下記の方法で電解を行い、3価のバナジウムイオンを含む電解液組成物50mLと5価のバナジウムイオンを含む電解液組成物50mLを得た。
(電解方法)
電解条件に詳細に説明する。図1に電解装置の概略図を示す。電解装置は炭素電極からなる正極を含む正極セル室と、炭素電極からなる負極を含む負極セル室と、正極セル室と、負極セル室とを隔離分離させる、隔膜としての電解質膜と、を含むセル1を有する。以下、正極セル室に含まれる電解液組成物を正極電解液、負極セル室に含まれる電解液組成物を負極電解液とする。正極電解液及び負極電解液は、正極電解液タンク2及び負極電解液タンク3によって貯蔵され、送液チューブポンプ4等によって送液チューブ5を介して各セル室に供給される。
電解装置の正極電解液タンク2と、負極電解液タンク3に、4価のバナジウムイオンを含む電解液組成物を50mLずつ供給した。液中の固形物がセルへ流れないようタンク内の液の出入り口には、グラスウールを詰めた。セル1の正極と負極間の電位差をモニタしながら、セル1に定電流50mA/cmを通電し、負極電解液に入れた中のバナジウムイオンの4価から3価への還元と、正極電解液中のバナジウムイオンの4価から5価への酸化を行った。電解中、正極及び負極の電解液は送液チューブポンプ4にて50mL/minにて送液チューブ5を介して送液し、正極電解液タンク2及び負極電解液タンク3中には窒素を10mL/minでフローさせた。セル1の正極と負極間の電位差が1.7Vになった時点で、液色を目視で確認すると、負極は濃緑色、正極は赤茶色であった。その時点で正極の液及び固形物を採取し、正極側の電解液から5価のバナジウムイオンを含む電解液組成物を得た。
(析出試験)
(4価のバナジウムイオンを含む電解液組成物)
50mLポリプロピレン製容器内に4価のバナジウムイオンを含む電解液組成物を10mL入れ、−5℃に保持した冷却槽内に60分間静置し、液中に青色の粉もしくは結晶状の析出物発生の有無を調べた。析出物は発生しなかった。その結果を表1に示す。
(5価のバナジウムイオンを含む電解液組成物)
50mLポリプロピレン製容器内に5価のバナジウムイオンを含む電解液組成物を10mL入れ、ウォーターバスにて50℃で60分間加温し、赤茶色の粉状の析出物発生の有無を調べた。析出物は発生しなかった。その結果を表1に示す。
〔比較例1〕
(シュウ酸の溶解度)
シュウ酸の水に対する溶解度は、0℃で0.44mol/kg−HO、10℃で0.68mol/kg−HOであった。式1に0℃の水に対する溶解度と10℃の水に対する溶解度の値を代入し、算出された−5℃の水に対する溶解度は、0.25mol/kg−HOであった。また、シュウ酸の50℃の水に対する溶解度は、3.5mol/kg−HOであった。
(4価のバナジウムイオンを含む電解液組成物の調製)
50mLポリプロピレン製容器に、酸化硫酸バナジウム6.9gと純水6.3mLとを仕込み、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌し、溶解させた。その後シュウ酸二水和物11.3gを添加し、ウォーターバスにて60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌した。以上の手順により、バナジウム濃度が3mol/L、硫酸イオン濃度が3mol/Lであり、シュウ酸が完溶せず、一部固体状態で存在している電解液組成物を調製し、4価のバナジウムイオンを含む電解液組成物10mLを得た。
(5価のバナジウムイオンを含む電解液組成物の調製)
上記4価のバナジウムイオンを含む電解液を用いて、実施例1と同様の方法により5価のバナジウムイオンを含む電解液組成物を10mL調製した。
(析出試験)
4価のバナジウムイオンを含む電解液及び5価のバナジウムイオンを含む電解液の析出試験を、実施例1と同様に実施した。4価のバナジウムイオンを含む電解液には析出物は発生しなかった。5価のバナジウムイオンを含む電解液には析出物が発生した。その結果を表1に示す。
〔比較例2〕
(クエン酸の溶解度)
クエン酸の水に対する溶解度は、0℃で5.00mol/kg−HO、10℃で6.16mol/kg−HOであった。式1に0℃の水に対する溶解度と10℃の水に対する溶解度の値を代入し、算出された−5℃の水に対する溶解度は、4.42mol/kg−HOであった。また、クエン酸の50℃の水に対する溶解度は、12.7mol/kg−HOであった。
(4価のバナジウムイオンを含む電解液組成物の調製)
50mLポリプロピレン製容器に、酸化硫酸バナジウム6.9gと純水7.9mLとを仕込み、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌し、溶解させた。その後無水クエン酸17.3gを添加し、ウォーターバスにて60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌した。以上の手順により、バナジウム濃度が3mol/L、硫酸イオン濃度が3mol/Lであり、クエン酸が完溶せず、一部固体状態で存在している組成物を調製し、4価のバナジウムイオンを含む電解液組成物10mLを得た。
(5価のバナジウムイオンを含む電解液組成物の調製)
上記4価のバナジウムイオンを含む電解液を用いて、実施例1と同様の方法により5価のバナジウムイオンを含む電解液組成物を10mL調製した。
(析出試験)
4価のバナジウムイオンを含む電解液組成物及び5価のバナジウムイオンを含む電解液組成物の析出試験を、実施例1と同様に実施した。4価のバナジウムイオンを含む電解液組成物には析出物が発生した。5価のバナジウムイオンを含む電解液組成物には析出物が発生しなかった。その結果を表1に示す。
実施例1及び比較例1、2の結果から明らかなように、溶解度の温度依存性を持つ酸として50℃の水に対するモル溶解度が4.0mol/kg−HO以上であり、−5℃の水に対するモル溶解度が1.5mol/kg−HO以下である酸を用いることで、3mol/Lと、バナジウムイオン濃度が高い電解液においても、4価と5価の析出物の発生を抑制することができることが確認された。
バナジウム系レドックスフロー電池のエネルギー容量は、バナジウムイオンのモル数に比例する。電解液中のバナジウムイオン濃度が高ければ、体積当たりのバナジウムイオンのモル数が増加するため、エネルギー密度が高いといえる。これにより、本発明に係る電解液組成物を用いることにより、高いエネルギー密度のバナジウム系レドックスフロー電池が得られることが示された。
(実施例2)
500mLポリプロピレン製容器に、酸化硫酸バナジウム69gと純水79mLとを仕込み、ウォーターバスにて50〜60℃程度に加温し、スターラーチップにて30分撹拌し、溶解させた。dl−マンデル酸を46g添加し、25℃環境下でスターラーチップにて30分撹拌した。以上の手順により、バナジウム濃度が3mol/Lであり、硫酸イオン濃度が3mol/Lであり、dl−マンデル酸が完溶せず、一部固体状態で存在している組成物を調製し、これを4価のバナジウムイオンを含む電解液組成物とした。
図2に示す粉体流動層保持部8内に、実施例2で調製した電解液組成物を投入した後、送液ポンプ11を駆動し、粉体流動層保持部8の下部より上部へ液を流した。液の流れにより、完溶していないdl−マンデル酸は流動層を形成した。
(粉体の流動層)
粉体の流動層について詳細に説明する。図2にdl−マンデル酸の粉体流動層の一例の概略図を示す。実施例2で調製した電解液組成物を投入した粉体状態のdl−マンデル酸粉体を、粉体流動層保持部8と、その内部に備え付けられたガラスフィルター9で保持した。粉体流動層保持部8内に満たされた溶液は、送液ポンプ11等によって送液チューブ10を介して送液されることで、粉体流動層保持部8の上部から排出され、送液ポンプ11を通過しガラスフィルター9の下部より粉体流動層保持部8の内部に流入するような流れができる。その流れにより、ガラスフィルター9上部に保持されたdl−マンデル酸の粉体が常に流動しているようなdl−マンデル酸の粉体の流動層7を形成した。
粉体流動層7及び送液チューブ10を、−5℃に冷却し、60分運転した後も、粉体流動層及び送液チューブ内壁に、バナジウムを含む析出物は発生しなかった。また、送液チューブ10内壁にdl−マンデル酸の析出物が析出し、流路を閉塞させることもなかった。
粉体流動層7及び送液チューブ10を、50℃に加温し、60分運転した後も、粉体流動層及び送液チューブ内壁に、バナジウムを含む析出物は発生しなかった。また、送液チューブ10内壁にdl−マンデル酸の析出物が析出し、流路を閉塞させることもなかった。
実施例2の結果から明らかな通り、酸及び/又は塩が粉体層を形成し、粉体層が流動層である電解液組成物を用いると、例えば溶液の温度が低下した際に、電解液組成物中に溶解しているアニオン性物質の析出が粉体表面で効率良く起こり、送液チューブ内壁やセル内部で再結晶、析出が起こらず、流路の閉塞を起こすこと無く電池を運転することができることが確認された。
本発明に係る電解液組成物は、レドックスフロー電池の電解液として産業上の利用可能性を有する。
1:セル
2:正極電解液タンク
3:負極電解液タンク
4:送液チューブポンプ
5:送液チューブ
6:グラスウール
7:dl−マンデル酸の粉体の流動層
8:粉体流動層保持部
9:ガラスフィルター
10:送液チューブ
11:送液ポンプ

Claims (9)

  1. 水と、
    バナジウムイオンと、
    50℃の水に対するモル溶解度が4.0mol/kg−H2O以上であり、−5℃の水に対するモル溶解度が1.5mol/kg−H2O以下である、酸及び/又は塩と、
    を含
    前記酸及び/又は塩が、マンデル酸、マンデル酸誘導体、マンデル酸塩、及びマンデル酸誘導体の塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
    電解液組成物。
  2. 前記バナジウムイオンのモル濃度が、2.0mol/Lを超える、請求項1に記載の電解液組成物。
  3. 前記酸及び/又は塩の他に、アニオン性物質を少なくとも1種類含む、請求項1又は請求項2に記載の電解液組成物。
  4. 前記アニオン性物質が硫酸イオンを含む、請求項に記載の電解液組成物。
  5. 前記アニオン性物質のモル濃度が、前記バナジウムイオンのモル濃度の10倍以下である、請求項又は請求項に記載の電解液組成物。
  6. 前記電解液組成物中の前記酸及び/又は塩が、50℃において一部が固体状態で存在する、請求項1〜のいずれか一項に記載の電解液組成物。
  7. 前記固体である、酸及び/又は塩が、粉体層を形成する、請求項に記載の電解液組成物。
  8. 前記粉体層が、流動層である、請求項に記載の電解液組成物。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の電解液組成物を含む、レドックスフロー電池。
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