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JP6185016B2 - フィルム製造方法及びフィルム延伸装置 - Google Patents
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Description

本発明は、フィルム製造方法及びフィルム延伸装置に関する。
帯状の熱可塑性樹脂フィルムは、搬送方向(縦方向)や幅方向(横方向)に延伸することによって、所望の厚さの薄型フィルムにされる。また、延伸によって面内レタデーション(Re)や厚み方向のレタデーション(Rth)を発現させることができる。このような特性により、熱可塑性樹脂フィルムは、例えば液晶表示装置の位相差フィルム等の光学用途に用いられている。
横方向への延伸(以下、横延伸と称する)により薄型フィルムを製造する場合に、延伸時のクリップによる把持跡を切り取るために、スリッタによりフィルムの両側部をフィルム製品部から切り離している(例えば、特許文献1 図7参照)。
また、横延伸した後は、例えば特許文献2に示されるように、横延伸後の弛みによって発生するシワによって、巻き取り時にフィルムが破断するなどの不具合が発生することがある。このため、特許文献2に記載のフィルム製造方法では、エキスパンダーロールやマルチテンションロールなどを用いて、搬送方向に長く発生するシワや幅方向の弛みを解消させている。
特開2013−63569号公報 特開2010−162740号公報
ところで、最近の液晶表示装置は、軽量、薄型、高品質が求められるようになり、使用されるフィルムも、例えば40μm以下程度の薄く高品質なものが求められている。このような薄型フィルムを既存の延伸設備にて製造すると、フィルムの側部に搬送方向に長い波形変形の面状むらが発生することがある。このような波形変形はその後のフィルム乾燥やフィルム巻き取り等を経ると、より顕在化して問題になる。また、スリッタによりフィルムを裁断して、両側部を本体部分から、例えば前述のフィルム製品部から切り離す際に、波形変形の影響を受けて、裁断不良が発生する場合がある。
特許文献2(明細書段落0015)のように、エキスパンダーロールやマルチテンションロールなどを用いる場合には、フィルムの幅方向で部分的にテンション(張力)を変えても、波形変形を完全に除去できないという問題がある。また、上記のエキスパンダーロールやマルチテンションロールは幅方向にテンションを作用させるため、エキスパンダーロールやマルチテンションロール上でフィルムを幅方向に滑らせることによる傷や、幅方向に径の異なるロールが巻き掛けられることによる周速差での傷が懸念される。
本発明はこのような課題を解決するものであり、薄型フィルムを横延伸した後に両側部を連続して切り離す裁断の際に、波形変形の影響を小さくして、裁断不良が発生することがないフィルム製造方法及びフィルム延伸装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明のフィルム製造方法は、長尺の熱可塑性樹脂フィルムを搬送しながら幅方向に延伸して厚みが40μm以下のフィルムを製造する。フィルム製造方法は、延伸工程、冷却工程、裁断工程、パスローラ搬送工程を有する。延伸工程は、熱可塑性樹脂フィルムの両側部を把持部により把持して幅方向に延伸する。冷却工程は、延伸工程で延伸された幅を一定に保持した状態で熱可塑性樹脂フィルムを冷却する。裁断工程は、熱可塑性樹脂フィルムの把持部により把持された両側部を切断刃により切り離す。パスローラ搬送工程は、熱可塑性樹脂フィルムの互いに異なる面側に配されるように搬送方向に離間した状態で隣り合う2本以上のパスローラに、冷却工程で両側部の把持が開放された熱可塑性樹脂フィルムを巻き掛けて熱可塑性フィルムの搬送路を上記の2本以上のパスローラの各々において鋭角に折り返し、切断刃へ搬送する。
本発明のフィルム延伸装置は、長尺の熱可塑性樹脂フィルムを搬送しながら幅方向に延伸して厚みが40μm以下のフィルムを製造する。フィルム延伸装置は、テンタ、切断刃、2本以上のパスローラを備える。テンタは、延伸エリアと、冷却エリアとを有する。延伸エリアでは、熱可塑性樹脂フィルムの両側部を把持部により把持して幅方向に延伸する。冷却エリアでは、延伸エリアで延伸された幅を一定に保持した状態で熱可塑性樹脂フィルムを冷却する。切断刃は、熱可塑性樹脂フィルムの把持部により把持された両側部を切り離す。2本以上のパスローラは、冷却エリアにおける上記の両側部の把持開放位置から切断刃までの間で、熱可塑性樹脂フィルムの互いに異なる面側に配されるように搬送方向に離間した状態で隣り合い、熱可塑性樹脂フィルムの搬送路をそれぞれ鋭角に折り返す
冷却工程で冷却された熱可塑性樹脂フィルムは、非加熱でパスローラ搬送工程に導入されることが好ましい。パスローラには、冷却エリアで冷却された熱可塑性樹脂フィルムが巻き掛けられることが好ましい。パスローラは、熱可塑性樹脂フィルムの幅方向全域に延びていることが好ましい。両側部の把持を開放する把持開放位置は、冷却工程において搬送方向の下流側に設けられていることが好ましい。延伸工程で、熱可塑性樹脂フィルムの幅を1.07倍以上に拡げることが好ましい。また、把持部による熱可塑性樹脂フィルムの把持開放位置から切断刃までの熱可塑性樹脂フィルムの搬送路長が1.0m以上であることが好ましい。把持部が熱可塑性樹脂フィルムの両側部を挟持するクリップであることが好ましい。また、熱可塑性樹脂フィルムがセルロースアシレートフィルムであることが好ましい。
本発明によれば、横延伸後の熱可塑性樹脂フィルムの波形変形の影響が抑えられ、裁断不良が発生することが無くなる。
溶液製膜設備の一例の概要を示す側面図である。 フィルム延伸装置の概要を示す平面図である。 テンタのチャンバ及びダクトの概要を示す側面図である。
本発明により製造するフィルムにおける樹脂は、透明な熱可塑性樹脂(ポリマー)である。本実施形態では熱可塑性樹脂としてセルロースアシレートを用いている。
セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(1)〜(3)を満たすようなTAC(セルローストリアセテート)を用いる場合に、本発明は特に有効である。式(1)〜(3)において、A及びBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、セルロースアシレートの総アシル基置換度Zは、A+Bで求める値である。
(1) 2.7≦A+B≦3.0
(2) 0≦A≦3.0
(3) 0≦B≦2.9
また、TACに代えて、または加えて、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(4)を満たすようなDAC(セルロースジアセテート)を用いる場合にも、本発明は特に有効である。
(4)2.0≦A+B<2.7
レタデーションの波長分散性の観点から、式(4)を満たしながらも、DACのアセチル基の置換度A、及び炭素数3以上22以下のアシル基の置換度の合計Bは、下記式(5)及び(6)を満たすことが、好ましい。
(5) 1.0<A<2.7
(6) 0≦B<1.5
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基(ヒドロキシル基)を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
図1の溶液製膜設備10は、ドープ11から長尺のセルロースアシレートフィルム(以下、単に「フィルム」と称する)12を製造するためのものである。ドープ11はポリマーが溶媒に溶解したものである。溶液製膜設備10は、流延装置14と、テンタ15及びスリッタ(切除装置)16からなるフィルム延伸装置17と、乾燥室18と、冷却室19と、巻取装置20とを、上流側から順に備える。
流延装置14は、ドープ11から溶媒を含んだ状態のフィルム12を形成するためのものである。流延装置14は、ベルト30と、流延ダイ31と、バックアップローラ33と、剥取ローラ35とを、外部空間と仕切るチャンバ36の中に備える。流延ダイ31は、ベルト30に向けてドープ11を流出する。ベルト30は、環状に形成された無端の流延支持体であり、1対のバックアップローラ33に掛け渡される。
1対のバックアップローラ33の少なくともいずれか一方は駆動部(図示無し)を有し、この駆動部によって、軸33aを中心に回転する。この回転により、周面に掛け渡されているベルト30は長手方向に搬送される。搬送されているベルト30の周面に向けて、流延ダイ31からドープ11が流出することにより、ベルト30の周面上でドープ11が流延されて流延膜32になる。流延ダイ31からベルト30にかけては、ドープ11からなるビードが形成される。バックアップローラ33の回転方向におけるビードの上流には、空気を吸引することによりビードの上流側エリアを減圧するチャンバ(図示無し)が備えてある。
各バックアップローラ33は、温調機33bにより、周面の温度が制御される。バックアップローラ33の内部には、伝熱媒体が流れる流路が形成されている。温調機33bは、伝熱媒体の温度を調整し、バックアップローラ33との間で、伝熱媒体を循環させる。バックアップローラ33の周面温度を調整することにより、ベルト30を介して流延膜32の温度が制御される。例えば、流延膜32を冷却固化(ゲル化)させるいわゆる冷却流延の場合には、温調機33bは伝熱媒体を冷却し、冷却された伝熱媒体をバックアップローラ33に送り込む。この送り込みを例えば連続的に行うことにより、伝熱媒体は、バックアップローラ33の内部の流路を巡り、温調機33bに戻る。流延膜32を乾燥して固化させるいわゆる乾燥流延の場合には、温調機33bは、例えばバックアップローラ33を加熱する。
なお、流延支持体は、ベルト30に限定されない。例えば、ベルト30に代えて、周方向に回転するドラム(図示無し)を流延支持体として用いてもよい。乾燥流延の場合には、ベルト30を用いることが多く、冷却流延の場合にはドラムを用いることが多い。ドラムを流延支持体として用いる場合には、ドラムの内部に伝熱媒体を通過させることにより、ドラムの周面の温度を調整し、このドラムを通じて流延膜32の温度を制御する。
剥取ローラ35は、流延膜32がベルト30から剥ぎ取られる剥取位置を一定に保持するためのものであり、軸方向がバックアップローラ33の軸方向と平行になるように配される。フィルム12が搬送方向Z1に引っ張られ、このフィルム12を剥取ローラ35が周面で支持することにより、流延膜32は所定の位置でベルト30から剥がされる。この連続的な剥ぎ取りにより、フィルム12が長尺に形成される。
流延装置14の内部には、ドープ11、流延膜32、フィルム12のそれぞれから蒸発して気体となった溶媒を凝縮させる凝縮器(コンデンサ)が備えられる。この凝縮器で液化した溶媒は、チャンバ36の外部に配された回収装置へ案内され、この回収装置で回収される。なお、凝縮器と回収装置との図示は略す。
フィルム12は、ローラ40により、流延装置14からフィルム延伸装置17のテンタ15へ案内される。テンタ15は、フィルム12の各側部12b(図2参照)を複数のクリップ(把持部)50で挟持(把持)することにより保持するいわゆるクリップテンタであり、クリップ50が所定軌道を走行する。クリップ50の走行によりフィルム12は搬送される。
テンタ15は、図2に示すように、フィルム12の搬送路を囲んでこの搬送路及び周辺を外部空間と仕切るチャンバ43を備える。なお、以下の説明において、単に「搬送路」とあるのは、フィルム12の搬送路を意味する。チャンバ43は、搬送方向Z1の上流側から順に、予熱エリア45、延伸エリア46、冷却エリア47を分けられており、エリア毎に温度制御された乾燥空気が送られる。
テンタ15は、クリップ50と、レール51,52と、チェーン53,54と、エア流出部としてのダクト(図3参照)55と、エア供給部56とを備える。クリップ50は、フィルム12の側部12bを把持する。レール51,52はクリップ50の走行を案内するもので、搬送路の両側に設置される。エア供給部56は、ダクト55に所定条件の乾燥空気を送り込む。ダクト55は、乾燥空気を流出させ、フィルム12を乾燥させる。
複数のクリップ50は、所定の間隔をもってチェーン53,54に取り付けられている。このチェーン53,54は、レール51とレール52とにそれぞれ取り付けられており、レール51,52に沿って移動自在とされている。チェーン53,54は、予熱エリア45の上流側に配されるターンホイール57と、冷却エリア47の下流端に配されるスプロケット58とに噛み合っている。スプロケット58が回転することにより、チェーン53,54は連続走行する。チェーン53,54の走行により、クリップ50はレール51,52に沿って移動する。
予熱エリア45の上流側には、クリップ50にフィルム12の側部12bの把持を開始させる把持開始部材64が設けられる。また、冷却エリア47の下流側には、クリップ50にフィルム12の側部12bの把持を解除させる把持解除部材65が設けられる。これにより、フィルム12は、予熱エリア45の上流側の把持開始位置PAにてクリップ50に把持され、クリップ50がレール51,52に沿って移動することで長手方向へ搬送され、予熱エリア45と延伸エリア46と冷却エリア47とを順次通過する。予熱〜冷却エリア45〜47を通過する間にフィルム12は、予熱〜冷却エリア45〜47において所定の処理が施され、冷却エリア47の下流側の把持開放位置PBでクリップ50による把持が解除される。
レール51とレール52とは、所定のレール幅で互いに離間している。このレール幅は、図示しないレール移動機構によって調節が可能であり、レール幅を変更することにより、延伸倍率を変更することができる。レール幅は、予熱エリア45では幅W1と一定である。これにより、予熱エリア45では、フィルム12は幅が規制された状態で一定の幅を保持しながら搬送される。
延伸エリア46は、延伸処理を行う(延伸工程)ためのものであり、搬送方向Z1、すなわち下流に向かうに従ってレール幅は次第に広くなる。これにより延伸エリア46では、フィルム12は搬送されながら幅方向Z2に延伸(横延伸)され、幅が拡げられる。具体的には、延伸エリア46に導入されるフィルム12の幅をW1、延伸エリア46を出るフィルム12の幅をW2とするときに、延伸エリア46でのレール幅を調整することにより、W2/W1で求める延伸倍率を例えば1.01倍以上5.0倍以下にする。
冷却エリア47は、冷却処理を行う(冷却工程)ためのものであり、レール幅は一定とされる。これにより、冷却エリア47では、フィルム12は幅をW2で一定に保持された状態で搬送される。なお、予熱エリア45及び冷却エリア47におけるレール幅に関する上記「一定」とは、厳密である必要はなく、上流から下流にかけて幅W1、幅W2でそれぞれ略一定(例えば2%以内の変化)と言える程度にレール幅を若干変化させる態様でもよい。
図3に示すように、ダクト55は、フィルム12の搬送路との間隔が略一定となるように、搬送路の上方に設けられる。ダクト55の下部には、フィルム12の幅方向Z2に延びたスリット上の吹き出し口61が形成されており、吹き出し口61は搬送方向Z1に沿って複数設けられている。フィルム12の搬送路の下方にも、搬送路との間隔が略一定となるように、ダクト55と同様の構成をもつダクトが設けられているが、図示は略す。搬送路の下方のダクト(図示無し)では、各吹き出し口は、上部に形成されている。なお、搬送方向Z1と幅方向Z2とは直交する。
ダクト55の内部は、複数の仕切り板62により例えば第1給気室55a〜第3給気室55cに区画されている。本実施形態においては、図3に示すように、第1給気室55a〜第3給気室55cの吹き出し口61をそれぞれ複数としている。具体的には、第1給気室55aの吹き出し口61は2つ、第2給気室55b,第3給気室55cの吹き出し口61はそれぞれ3つであるが、第1給気室55a〜第3給気室55cのそれぞれにおける吹き出し口61の数はこれに限られない。また、図示は省略したが、各吹き出し口61の間には排気口や排気溝などを設けてもよい。
エア供給部56は、ダクト55の第1給気室55a〜第3給気室55cに乾燥空気を供給する。エア供給部56は、第1給気室55a〜第3給気室55cにそれぞれ供給する各乾燥空気の温度を独立して制御する温調機(図示無し)を備える。この温調機により、所定温度に調節された乾燥空気が、それぞれ第1給気室55a〜第3給気室55cを介して予熱エリア45、延伸エリア46、冷却エリア47へ供給される。なお、第1給気室55a〜第3給気室55c内の温度は一定でもよいし、あるいは、さらに温度領域をフィルム12の搬送方向Z1で細分化してもよい。
第1給気室55aからの乾燥空気の供給により、フィルム12を延伸エリア46へ入る前に予め加熱する。この予熱エリア45による加熱により、延伸エリア46での延伸が迅速に開始され、延伸エリア46での延伸の際に、フィルム12に対して幅方向Z2でより均一なテンションが付与される。
テンタ15の延伸工程では、フィルム12の温度を例えば140℃以下に保った状態でフィルム12を幅方向Z2に延伸することが好ましい。延伸倍率は、1.01倍以上5.0倍以下の範囲内で任意に設定可能である。本実施形態では、延伸倍率は1.07倍以上5.0倍以下であり、好ましくは1.07倍以上2.00倍以下である。
テンタ15を通過する間にフィルム12は乾燥が進む。このテンタ15では、フィルム12の乾燥を進めることにより、フィルム12の残留溶媒量を例えば3質量%以上20質量%以下の範囲内にすることが好ましい。本明細書における残留溶媒量とは、残留溶媒量を求めるべき測定対象のフィルム12の質量をX、このフィルム12を完全に乾燥した後の質量をYとするときに、{(X−Y)/Y}×100で求めるいわゆる乾量基準の値である。なお、「完全に乾燥」とは溶媒の量が厳格に0(ゼロ)である必要はない。例えば、140℃で3時間、測定対象のフィルム12に対して乾燥処理を行った後の質量をYとすればよい。
テンタ15の下流に配されるスリッタ16は、第1パスローラ71〜第4パスローラ74と、切断刃75とを備え、裁断を行う(裁断工程)。第1パスローラ71〜第4パスローラ74は、搬送方向Z1での上流側から下流側に向けて、離間して配され、これら第1パスローラ71〜第4パスローラ74によりフィルム12を搬送する(パスローラ搬送工程)。第1パスローラ71〜第3パスローラ73は切断刃75よりも上流に配され、第4パスローラ74は切断刃75よりも下流に配される。
切断刃75よりも上流に配される第1パスローラ71〜第3パスローラ73のうち、少なくとも2本にはフィルム12が巻き掛けられ、総巻き掛け角度が90°以上とされる。総巻き掛け角度は、切断刃75よりも上流に配される複数のパスローラの各々での巻き掛け角度(ラップ角度)の総和であり、この例では、第1パスローラ71〜第3パスローラ73の各々での巻き掛け角度(ラップ角度)の総和である。すなわち、第1パスローラ71における巻き掛け角度をθ71、第2パスローラ72における巻き掛け角度をθ72、第3パスローラ73における巻き掛け角度をθ73とするときに、総巻き掛け角度は、θ71+θ72+θ73の算出式で求められる。なお、巻き掛け角度は、図1のようにパスローラを側方からみたときに、周面のうちフィルム12が巻き掛けられた巻き掛け領域と断面円形の中心とから形成される扇形の中心角である。
本実施形態においては、第1パスローラ71はテンタ15を出たフィルム12を下方から支持する。このように、第1パスローラ71は搬送路を水平に維持するために設けられており、第1パスローラ71の上流と下流との搬送路の方向は同じである。すなわち、第1パスローラ71におけるフィルム12の巻き掛け角度θ71は0°である。しかし、第1パスローラ71によって搬送路の方向を変化させてもよく、この場合には、第1パスローラ71にフィルム12を巻き掛けて、第1パスローラ71の上流と下流との搬送路の方向を互いに異なるものとする。すなわち、このように搬送路の方向を変化させる場合には第1パスローラ71に対するフィルム12の巻き掛け角度θ71を0°より大きくする。なお、搬送路を水平に維持するように第1パスローラ71を設けた場合であっても、フィルム12の自重の影響で第1パスローラ71との接触が線接触にはならずに面接触となってしまい、第1パスローラ71にフィルム12が巻き掛かってしまうことがあるが、このように搬送路を水平に維持するために下方からフィルム12を支持する場合のパスローラに対するフィルム12の巻き掛け角度は0°とみなす。
フィルム12は、第2パスローラ72と第3パスローラ73とに巻き掛けられており、巻き掛け角度θ72と巻き掛け角度θ73とは、それぞれ0°よりも大きくされている。前述の通り巻き掛け角度θ71は0°とされているので、この例では、総巻き掛け角度が90°以上となるように、第2パスローラ72及び第3パスローラ73はフィルム12の巻き掛け角度の和が90°以上とされ、これによりフィルム12を側面から見た搬送路(パス)形状がZ字状に折り返される。つまり、本実施形態においては、総巻き掛け角度は、第2パスローラ72と第3パスローラ73とに巻き掛けられるフィルム12の巻き掛け角度の和である。第1パスローラ71にもフィルム12を巻き掛けた場合にはθ71も総巻き掛け角度の算出対象になる。なお、Z字状には、折り返し部分が鋭角(90°未満)の本来のZ形状の他に、鈍角(90°以上180°未満)の略Z形状も含まれる。
本実施形態では、切断刃75よりも上流に配されるパスローラは、第1パスローラ71〜第3パスローラ73とされているが、この本数に限られない。本数が2である場合には、その2つのパスローラの両方にフィルム12を巻き掛け、総巻き掛け角度を90°以上にする。また、本数が4以上である場合には、少なくとも2つのパスローラにフィルム12を巻き掛けて総巻き掛け角度を90°以上にし、このように総巻き掛け角度の対象となるパスローラの本数は3本以上であってもよい。
上記のように搬送路(パス)形状がZ字状に折り返されるように、第2パスローラ72はフィルム12のベルト30から剥ぎ取られた剥ぎ取り面側に配され、第3パスローラ73は剥ぎ取り面とは反対側の反剥ぎ取り面側に配されている。このように、フィルム12が巻き掛けられるパスローラは搬送路に関して千鳥に配されることがより好ましい。
第3パスローラ73と第4パスローラ74との間には切断刃75が配される。切断刃75は、レザー刃またはゲーベル刃などが用いられ、フィルム12の各側部12bを搬送方向Z1に連続的に切断する。これにより、フィルム12の製品部になる中央部12aから各側部12bを切り離すフィルム12の裁断を行い(裁断工程)、テンタ15でのクリップ50による保持跡が除去される。
テンタ15の把持開放位置PBから切断刃75までのフィルム12の搬送路の長さ(以下、搬送路長と称する)L1は1.0m以上である。この搬送路長L1は、間に第1パスローラ71〜第3パスローラ73がある場合の長さである。なお、図2に示す搬送路長L1は、平面視の関係で把持開放位置PBと切断刃75との距離のように見えるが、この距離ではなく、Z字状に折り曲げられた搬送路の長さ、すなわち、図1において搬送方向Z1に沿った長さである。
切断刃75の下流側には、第4パスローラ74が配される。第4パスローラ74は、切り離した各側部12bを回転して支持し、各側部12bを側部風送装置78に送る。側部風送装置78は、周知のように連続して送られてくる各側部12bを細かくカットしチップにして、吸引風によって図示しない回収装置に送る。なお、切断刃75の下流で第4パスローラ74の上流位置に、または第4パスローラ74の下流位置に、図示省略の第5パスローラを設けて、各側部12bが切りとられたフィルム12の搬送路を例えば上方に向けて変更してもよい。
乾燥室18には、フィルム12を周面で支持するローラ80が複数備えられる。これら複数のローラ80の中には、周方向に回転する駆動ローラがあり、この駆動ローラの回転によりフィルム12が搬送される。乾燥室18には、加熱された乾燥空気が供給されている。この乾燥室18を通過させることにより、フィルム12をさらに乾燥する。
冷却室19には、室温の乾燥空気が供給されている。室温とは、15℃以上30℃以下の範囲内の温度である。この冷却室19を通過させることにより、フィルム12を降温させる。温度が低下したフィルム12は、冷却室19から巻取装置20に案内されて巻芯82に巻き取られる。
次に、上記構成の作用を説明する。テンタ15を出て、クリップ50の把持が開放されたフィルム12は、延伸による残留応力や降温によって収縮する。このとき、フィルム12には搬送によるテンションによって搬送方向Z1にはテンションが作用しているものの、クリップ50の把持開放によって幅方向Z2にはテンションがなくなりフリーの状態になるため、搬送方向Z1に延びた波形変形が発生する。この波形変形が発生した状態で切断刃75によりフィルム12の両側部12bを中央部12aから切り離した場合には、波形変形によって裁断不良が発生する。裁断不良が発生すると、次の側部風送装置78で側部12bの詰まりが発生するため、製造ラインを停止する場合もある。この場合には、再度、流延工程等での立ち上げのための各種作業が必要になり、時間と原料とが無駄になる。
上記構成では、テンタ15を出たフィルム12は、第1パスローラ71〜第3パスローラ73を経て、切断刃75に送られ、フィルム12の両側部12bが中央部12aから切り離される。本実施形態では3つの第1パスローラ71〜第3パスローラ73に対しフィルム12を通過させ、これらのうち、第2パスローラ72と第3パスローラ73とにフィルム12を巻き掛けて総巻き掛け角度を90°以上にしているので、波形変形が第2パスローラ72,第3パスローラ73を通過する間に緩和されて、切断刃75での両側部12bの切り離しの際には、波形変形の影響が少なくなり、円滑に両側部12bを切り離すことができる。
フィルム12が巻き掛けられる第2パスローラ72と第3パスローラ73とは、搬送路に関して千鳥に配されており、これにより波状変形がより緩和されるから、両側部12bの切り離しはより円滑になる。
本実施形態においては、テンタ15としてクリップテンタを用いているが、クリップテンタに代えて、ピンテンタを用いてもよい。この場合にも、スリッタ16を用いて各側部12bを切り離すことによりピンによる保持跡が除去される。ピンテンタは、フィルム12の側部12bに複数のピンを貫通して保持するピンプレートを有し、このピンプレートが所定軌道を走行することにより、フィルム12は搬送される。ピンテンタをテンタ15として用いる場合も、クリップテンタを用いる場合と同様に、フィルム12の乾燥をすすめることにより、フィルム12の残留溶媒量を例えば20質量%以下の範囲内にすることが好ましい。
なお、スリッタ16の下流側には、必要に応じて、図示省略の第2のテンタを設けてもよい。第2のテンタは、特定の延伸パターンによって光学特性を変更させる場合等に用いられる。この第2のテンタでも、第1のテンタ15と同様にスリッタ16を設けることにより、フィルム12の波形変形の影響を抑えて裁断することができる。
ポリマーとしてTACを用いる場合には、フィルム12はTACからなる単層構造であることが好ましい。これに対し、ポリマーとしてDACを用いる場合には、フィルム12は複層構造であることが好ましい。好ましい複層構造は、DACからなる層の一方の面にTACからなる層が設けられている構造である。より好ましい複層構造は、DACからなる層の一方の面及び他方の面にそれぞれTACからなる層が設けられている構造である。このようなDACからなる層をもつ複層構造の光学フィルムは、溶液製膜方法でつくることが好ましく、同時共流延もしくは逐次流延でつくることが好ましい。同時共流延の場合の流延ダイ31は、周知のマルチマニホールドダイである。マルチマニホールドダイに代えて、フィードブロックとシングルマニホールドダイとを組み合わせて用いてもよい。フィードブロックは、供給されてきた複数種類のドープを内部で合流させ、合流した流れをシングルマニホールドダイへ送る。
上記の実施形態は、溶液製膜過程でフィルム12を幅方向Z2に延伸する場合であるが、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、一旦製造された熱可塑性樹脂フィルムを幅方向Z2に延伸するいわゆるオフライン延伸の場合にも、スリッタ16を用いてフィルム12の両側部12bを中央部12aから切り離してもよい。
フィルム12は、光学フィルムとして使用される。具体的には、フィルム12は、偏光板に用いられ光源からの光を光学的に補償する位相差フィルムとして、特に好ましく用いることができる。中でもVA用位相差フィルムやIPS用位相差フィルムとして、特に有効である。
まず、アシル基の置換度が2.81のセルロースアシレート(TAC)をつくった。つくる際には、触媒として硫酸を用いた。この触媒のセルロースアシレート100質量部に対する添加量は7.8質量部である。アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。アシル基の種類、置換度の調整は、カルボン酸の種類、量を調整することで行った。また、アシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
以下に示す処方のドープ11を調製した。
(ドープ)
セルロースアシレート 100質量部
添加剤A:表1のA−3 11.3質量部
化合物D:化1に示す化合物 4質量部
ジクロロメタン 406質量部
メタノール 61質量部
Figure 0006185016
Figure 0006185016
ドープ11のいずれにも、マット剤分散液を混合、攪拌した。微粒子であるマット剤(AEROSIL R972、日本エアロジル(株)製、2次平均粒子サイズ1.0μm以下)は、セルロースアシレート100質量部に対して0.13質量部とした。
なお、添加剤Aは、ポリエステルであり、このポリエステルは、表1に記載のジカルボン酸とジオールとの組み合わせ及び比率によって得られる。表1においては、「芳香族ジカルボン酸」欄の「TPA」はテレフタル酸、「脂肪族ジカルボン酸」欄の「SA」はコハク酸を表す。表1の「ジカルボン酸比」欄は、芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸を示し、「ジオール比」欄はジオール1/ジオール2を示す。
溶液製膜設備10を用いて上記ドープ11によりフィルム12を製造し、厚みが20,40,60μmのフィルム12を得る実験1〜19を実施した。厚みが20,40,60μmとなるフィルム12は、流延装置14による流延膜32の厚みの調整と、テンタ15での延伸倍率(W2/W1)とを変更して、得ている。また、フィルム延伸装置17の延伸倍率(W2/W1)、把持開放位置PBから切断刃75までの搬送路長L1、テンタ15と切断刃75との間の搬送路においてフィルム12が巻き掛けられるパスローラの本数N及び巻き掛けられたパスローラでの総巻き掛け角度θを表2に示す各実験のように設定した。そして、フィルム延伸装置17において両側部12bを切り離す裁断の安定性(以下、裁断安定性と称する)をそれぞれ評価した。なお、各実験におけるフィルムの厚みは、表2においては「フィルム厚み」欄に、テンタ15と切断刃75との間の搬送路においてフィルム12が巻き掛けられるパスローラの本数Nは「巻き掛けたパスローラ本数N」欄に、それぞれ示している。
Figure 0006185016
実験1〜19は、第1パスローラ71に対するフィルム12の巻き掛け角度を0°とした。実験1〜8は、図1において、第2パスローラ72及び第3パスローラ73を省略してフィルム搬送路の形状を直線状にし、第1パスローラ71と第4パスローラ74との間に切断刃75を有する参考例を示している。実験1では、厚みが60μm、延伸倍率が1.00、搬送路長L1が0.6mとした場合の裁断安定性を評価した。実験2では実験1におけるフィルムの厚みを40μmとした以外は実験1と同じ条件とした。実験3では実験1におけるフィルムの厚みを20μmとした以外は実験1と同じ条件とした。実験4〜6では、実験1〜3の延伸倍率を1.07とした以外は実験1〜3と同じ条件とした。実験7では実験5の延伸倍率を1.12とした以外は実験5と同じ条件とした。実験8では実験6の延伸倍率を1.12とした以外は実験6と同じ条件とした。実験9及び実験10は、図1において、第2パスローラ72を第1パスローラ71と第4パスローラ74との間に配した参考例を示している。実験9では、第2パスローラ72への巻き掛け角度を30°とした以外は実験6と同じ条件とした。実験10では、実験9の第2パスローラ72への巻き掛け角度を90°とした以外は実験9と同じ条件とした。
実験11〜19では、図1に示すように、第1パスローラ71〜第4パスローラ74を配し、第2パスローラ72及び第3パスローラ73へフィルム12を巻き掛けた。第2パスローラ72及び第3パスローラ73への巻き掛け角度の和を総巻き掛け角度θとして、60°、90°、180°とした。実験11では、実験6に第2パスローラ72及び第3パスローラ73を加えてZ字形のフィルム搬送路の形状とし、総巻き掛け角度θを60°にした以外は実験6と同じ条件とした。実験12では、実験11の総巻き掛け角度を90°にした以外は実験11と同じ条件とした。実験13では、実験11の総巻き掛け角度を180°にした以外は実験11と同じ条件とした。実験14では、実験12の搬送路長L1を0.8mとした以外は実験12と同じ条件とした。実験15では、同じく実験12の搬送路長L1を1.0mとした以外は実験12と同じ条件とした。実験16では、実験15の総巻き掛け角度θを180°にした以外は実験15と同じ条件とした。実験17では、実験12のフィルムの厚みを40μmにした以外は実験12と同じ条件とした。実験18では、実験17の延伸倍率を1.12にした以外は実験17と同じ条件とした。実験19では、実験18の搬送路長L1を1.0mとした以外は実験18と同じ条件とした。
Figure 0006185016
実験20〜22では、実験8の搬送路長L1を0.6m、0.8m、1.0mに変え、且つ第1パスローラ71〜第4パスローラ74を配し、第2パスローラ72及び第3パスローラ73へフィルム12を巻き掛けた。第2パスローラ72及び第3パスローラ73への巻き掛け角度の和を総巻き掛け角度θとして90°とした以外は実験8と同じ条件とし、実験8と比較した。
実験23〜26では、実験8,20〜22のフィルム材質をTACから、COP(シクロオレフィンポリマー(cyclic olefin polymer))に変更した以外は実験8,20〜22と同じ条件とした。COPフィルムは、ゼオノア(登録商標)1020RをWO2006/019086号中の製造例1に記載の方法に準じて製膜したもので、膜厚は20μmとした。
実験27〜30では、実験8,20〜22のフィルム材質をTACから、PET(ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate))に変更した以外は実験8,20〜22と同じ条件とした。PETフィルムは以下のように製膜したもので、膜厚は20μmとした。先ず、Ti化合物を触媒として重縮合した固有粘度0.64のPETを含水率50ppm以下に乾燥させ、ヒーター温度が280℃以上300℃以下の設定温度の押し出し機内で溶融させた。次に、溶融させたPETをダイ部より静電印加されたチルロール上に押し出して、帯状の非結晶ベースからなるPETフィルムを得た。
裁断安定性は、破断の有無と、切断線の安定性と、切断端面のざらつきとに基づき評価した。フィルム12が破断することがなく、切断線が搬送方向Z1に直線となり安定しており、且つ切断端面にざらつきがない場合に、評価Aとした。また、フィルム12が破断することがなく、切断線が搬送方向Z1に直線となり安定しているが、切断端面にざらつきがある場合に、評価Bとした。フィルム12が破断することはないが、切断線が搬送方向Z1で蛇行し不安定である場合に、評価Cとした。搬送方向Z1で蛇行とは、切断線がフィルム12の幅方向においてずれることを意味する。切断線が搬送方向Z1に直線とならず不安定であり、数時間の経過でフィルム12が破断した場合に評価Dとした。さらに、切断線が搬送方向Z1に直線とならず不安定であり、数分でフィルム12が破断した場合に評価Eとした。なお、切断線の安定性については、両側部12bが切り離された中央部12aの側縁を目視で観察して評価した。また、切断端面のざらつきについては、両側部12bが切り離された中央部12aの側端面を触ってざらつきを感じた場合、もしくは、黒色の布で中央部12aの側端面を擦り、その布に粉が付いた場合にざらつきがあると評価した。切断線の安定性について不安定と評価した場合には、切断端面のざらつきの評価は行わなかった。評価が二つの評価の中間に位置する場合に、例えばA〜Bのように記載した。
実験1〜実験10のグループは参考例に相当するものであり、フィルム12が薄くなるに従い、裁断安定性が低下することが判る。また、延伸倍率を高くなるに従い、裁断安定性が低下することが判る。巻き掛けたパスローラ本数Nが増えることにより、裁断安定性が良くなることが判る。しかし、フィルムの厚みが40μmまたは20μmで延伸倍率を1.07とすると、裁断安定性が低下することが判る。
実験1〜実験6のグループでは、フィルムの厚みが60μm、40μm、20μmと薄くなるに従い裁断安定性が次第に低下することが判る。また、延伸倍率が1.02から1.07へと高くなると同じく裁断安定性が次第に低下することが判る。
実験2,5,7,3,6,8のグループでは、厚みが同じでも、延伸倍率が1.02、1.07、1.10と高くなるに従い、裁断安定性が次第に低下することが判る。
実験6,9〜13のグループでは、フィルムの厚みを20μm、延伸倍率を1.07とした状態で、総巻き掛け角度θを30°、60°、90°、180°と増やした場合に、総巻き掛け角度θが大きくなるに従い、また、巻き掛けたパスローラ本数Nが増えるほど、裁断安定性が次第に良くなることが判る。
実験14〜16のグループでは、フィルムの厚みを20μm、延伸倍率を1.07とした状態で、搬送路長L1を0.8m、1.0mと長くした場合に、搬送路長L1が長くなるに従い、裁断安定性が次第に良くなることが判る。また、実験17〜実験19のグループでは、フィルムの厚みを40μm、延伸倍率を1.07、1.10と変え、また搬送路長L1を0.6m、1.0mとした場合に、搬送路長L1が長くなるに従い、裁断安定性が次第に良くなることが判る。
実験8,20〜23のグループでは、フィルムの厚みを20μm、延伸倍率を1.12倍とした状態で、搬送路長L1を0.6m、0.8m、1.0mと長くした場合に、搬送路長L1が長くなるに従い、裁断安定性が次第に良くなることが判る。
実験23〜26のグループでは、実験8,20〜22のフィルム材質がTACであるのに対し、COPに変えた場合でも、TACフィルムと同じように、搬送路長L1を0.6m、0.8m、1.0mとした場合に、搬送路長L1が長くなるに従い、裁断安定性が次第に良くなることが判る。同様に、実験27〜30のグループでは、フィルム材質をPETに変えた場合でも、TACフィルムと同じように、搬送路長L1が長くなるに従い、裁断安定性が次第に良くなることが判る。
以上の実験結果から、フィルムの厚みが40μm以下の薄型フィルムの延伸後の両側部を切断刃で切り離す裁断において、延伸後のフィルムを2本以上のパスローラに総巻き掛け角度θが90°以上になるように巻き掛けて切断刃へ搬送することにより、延伸直後に発生する波形変形の影響を切断刃に伝えることがなく、裁断不良の発生が抑えられる。特に、延伸倍率を1.07倍以上に上げて延伸した場合に、薄型フィルムにおいて裁断不良の発生が抑えられる。また、延伸倍率を1.07倍以上に上げてさらに薄いフィルムを製造する場合に、搬送路長L1を1.0m以上にすることにより、より薄いフィルムに対して裁断不良の発生が抑えられる。また、フィルム材質をTAC以外のCOPやPETに変えた場合でも、同様に薄いフィルムに対して裁断不良の発生が抑えられる。
10 溶液製膜設備
12 フィルム
12a 中央部
12b 側部
15 テンタ
16 スリッタ
17 フィルム延伸装置
71〜74 第1〜第4パスローラ
75 切断刃

Claims (15)

  1. 長尺の熱可塑性樹脂フィルムを搬送しながら幅方向に延伸して厚みが40μm以下のフィルムを製造するフィルム製造方法において、
    前記熱可塑性樹脂フィルムの両側部を把持部により把持して幅方向に延伸する延伸工程と、
    前記延伸工程で延伸された幅を一定に保持した状態で前記熱可塑性樹脂フィルムを冷却する冷却工程と、
    前記熱可塑性樹脂フィルムの前記把持部により把持された両側部を切断刃により切り離す裁断工程と、
    前記熱可塑性樹脂フィルムの互いに異なる面側に配されるように搬送方向に離間した状態で隣り合う2本以上のパスローラに、前記冷却工程で前記両側部の把持が開放された前記熱可塑性樹脂フィルムを巻き掛けて前記熱可塑性フィルムの搬送路を前記2本以上のパスローラの各々において鋭角に折り返し、前記切断刃へ搬送するパスローラ搬送工程と
    を有するフィルム製造方法。
  2. 前記冷却工程で冷却された前記熱可塑性樹脂フィルムは、非加熱で前記パスローラ搬送工程に導入される請求項1記載のフィルム製造方法。
  3. 前記パスローラは、前記熱可塑性樹脂フィルムの幅方向全域に延びている請求項1又は2記載のフィルム製造方法。
  4. 前記両側部の把持を開放する把持開放位置は、前記冷却工程において搬送方向の下流側に設けられている請求項1から3いずれか1項記載のフィルム製造方法。
  5. 前記延伸工程で、前記熱可塑性樹脂フィルムの幅を1.07倍以上に拡げる請求項1から4いずれか1項記載のフィルム製造方法。
  6. 前記両側部の把持を開放する把持開放位置から前記切断刃までの前記熱可塑性樹脂フィルムの搬送路長が1.0m以上である請求項1から5いずれか1項記載のフィルム製造方法。
  7. 前記把持部が前記熱可塑性樹脂フィルムの両側部を挟持するクリップである請求項1からいずれか1項記載のフィルム製造方法。
  8. 前記熱可塑性樹脂フィルムがセルロースアシレートフィルムである請求項1からいずれか1項記載のフィルム製造方法。
  9. 長尺の熱可塑性樹脂フィルムを搬送しながら幅方向に延伸して厚みが40μm以下のフィルムを製造するフィルム延伸装置において、
    前記熱可塑性樹脂フィルムの両側部を把持部により把持して幅方向に延伸する延伸エリアと、前記延伸エリアで延伸された幅を一定に保持した状態で前記熱可塑性樹脂フィルムを冷却する冷却エリアとを有するテンタと、
    前記熱可塑性樹脂フィルムの前記把持部により把持された前記両側部を切り離す切断刃と、
    前記冷却エリアにおける前記両側部の把持開放位置から前記切断刃までの間で、前記熱可塑性樹脂フィルムの互いに異なる面側に配されるように搬送方向に離間した状態で隣り合い、前記熱可塑性樹脂フィルムの搬送路をそれぞれ鋭角に折り返す2本以上のパスローラと
    を備えるフィルム延伸装置。
  10. 前記パスローラには、前記冷却エリアで冷却された前記熱可塑性樹脂フィルムが巻き掛けられる請求項9記載のフィルム延伸装置。
  11. 前記パスローラは、前記熱可塑性樹脂フィルムの幅方向全域に延びている請求項9又は10記載のフィルム延伸装置。
  12. 前記把持開放位置は、前記冷却エリアにおいて搬送方向の下流側に設けられている請求項9から11いずれか1項記載のフィルム延伸装置。
  13. 前記テンタは、前記熱可塑性樹脂フィルムの幅を1.07倍以上に拡げる請求項9から12いずれか1項記載のフィルム延伸装置。
  14. 前記把持開放位置から前記切断刃までの前記熱可塑性樹脂フィルムの搬送路長が1.0m以上である請求項9から13いずれか1項記載のフィルム延伸装置。
  15. 前記把持部が前記熱可塑性樹脂フィルムの前記両側部を挟持するクリップである請求項から14いずれか1項記載のフィルム延伸装置。
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