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JP6197584B2 - 固体電解質、固体電解質の製造方法およびリチウムイオン電池 - Google Patents
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固体電解質、固体電解質の製造方法およびリチウムイオン電池 Download PDF

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Description

本発明は、固体電解質、固体電解質の製造方法およびリチウムイオン電池に関するものである。
携帯型情報機器をはじめとする多くの電気機器の電源として、リチウム電池(一次電池及び二次電池を含む)が利用されている。なかでも、高エネルギー密度と安全性を両立したリチウム電池として、正・負極間のリチウムの伝導に固体電解質を用いた全固体型リチウム電池が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
固体電解質は、有機電解液を用いることなくリチウムイオンを伝導することができ、電解液漏れや駆動発熱による電解液の揮発等が生じないため、安全性が高い材料として注目されている。
このような全固体型リチウム電池に用いられる固体電解質として、リチウムイオン伝導性が高く、絶縁性に優れ、また化学的安定性の高い酸化物系の固体電解質が広く知られている。このような酸化物として、チタン酸ランタンリチウム系の材料が特筆すべき高いリチウムイオン伝導率を有しており、電池への適用が期待されている。
このような固体電解質が粒子状の形状(以下、固体電解質粒子と称することがある)である場合、圧縮成形することにより所望の形状に合わせて成形されることが多い。しかし、固体電解質粒子は非常に硬いため、得られる成形品では固体電解質粒子同士の接触が不十分で粒界抵抗が高くなり、リチウムイオン伝導度が低くなりやすい。
粒界抵抗を低減する方法として、固体電解質粒子を圧縮成形した後に、1000℃以上の高温で焼結することで、粒子同士を溶着させる方法が知られている。しかし、この方法では、高熱により組成が変化しやすく、所望の物性を有する固体電解質の成形体を製造しにくい。
そこで、固体電解質の粒界抵抗を低減するための方法として、チタン酸ランタンリチウムの粒子表面をSiOで被覆した後、高温で焼結する方法が検討されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、固体電解質を形成する手法として、液相材料を用いた合成系、特にゾル−ゲル法が採用される場合がある。ゾル−ゲル法により、例えばチタン酸ランタンリチウムを製造することができる(例えば、特許文献3参照)。
特開2009−215130号公報 特表2011−529243号公報 特開2003−346895号公報
しかしながら、上記方法には次のような問題がある。特許文献2の方法では、固体電解質粒子の表面をSiOで被覆する操作が困難である。その上に、高温で焼成することで、得られる固体電解質からリチウムが揮発したり、電極を構成する材料と反応したりすることで組成がずれ、さらに異相が多量に形成されてしまうおそれがある。異相の形成を抑制するために焼成温度を低くすると、粒子同士の界面が十分に焼結せず、粒界抵抗を低減することができない。
特許文献3の方法では、生成物が均一層を形成するため、形成される固体電解質粒子の構造を制御しにくく、所望の物性を得られにくい。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、粒界抵抗を低減させ、高い総イオン伝導率を示す固体電解質を提供することを目的とする。また、高い総イオン伝導率を示す高性能な固体電解質の製造方法およびこのような固体電解質を有するリチウムイオン電池を提供することをあわせて目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、少なくともリチウム原子と、原子の結晶半径が78pm以上の金属原子と、を含む立方晶ペロブスカイト型の結晶質を形成材料とする複数の第1領域と、前記複数の第1領域の間に介在し、リチウム原子と前記金属原子とを含む非晶質を形成材料とする第2領域と、を有し、前記金属原子の存在比率は、前記第1領域から前記第2領域に向けて漸増している固体電解質を提供する。
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、少なくともリチウム原子と、タンタル原子と、を含む立方晶ペロブスカイト型の結晶質を形成材料とする複数の第1領域と、前記複数の第1領域の各々の間に介在し、リチウム原子とタンタル原子とを含む非晶質を形成材料とする第2領域と、を有し、タンタル原子の存在比率は、前記第1領域から前記第2領域に向けて漸増している固体電解質を提供する。
この構成によれば、原子の結晶半径が78pm以上の金属原子が少ない第1領域では、好適に立方晶ペロブスカイト型の結晶相を呈し、当該金属原子が相対的に多く存在する第2領域では立方晶ペロブスカイト型の結晶相となることができずに非晶質となる。
また、当該金属原子の存在比が不連続に変化するのではなく、連続的に変化することで、第1領域と第2領域との境界が不明確となる。
従来知られている、固体酸化物の粒子を用いた固体電解質では、粒子間の界面で生じる粒界抵抗により、リチウムイオン伝導率が低下するという課題がある。しかし、本実施形態の固体電解質においては、上述の構成を有することにより、「粒子間の界面」が不明確となり存在しない。
そのため、本発明の一態様に係る固体電解質においては、従来知られた固体電解質であって固体酸化物の粒子を用いたものと比べ、粒界抵抗を低減することができ、高い総イオン伝導率を示す固体電解質とすることができる。
本発明の一態様においては、前記結晶質は、組成式ABOで表される複合酸化物である構成としてもよい。ここで、組成式中、A及びBは、互いに異なる金属元素であり、Aは、Liを含み、さらにLa,Mg,Baからなる群から選ばれる1以上の元素を含み、Bは、Ti,Ta,Zr,Alからなる群から選ばれる1以上の元素である。
この構成によれば、立方晶ペロブスカイト型の結晶質である第1領域において、高いイオン伝導性が期待でき、高い総イオン伝導率を示す固体電解質とすることができる。
本発明の一態様においては、前記結晶質は、Li3xLa2/3−xTiO(0<x<0.16)であり、前記金属原子は、Taである構成としてもよい。
この構成によれば、示性式Li3xLa2/3−xTiO(0<x<0.16)であるペロブスカイト結晶は高いイオン伝導性を示し、高いバルクイオン伝導性を期待できる。また、Ta添加の効果により第2領域が好適に非晶質となり、第1領域と第2領域とが複合化されるため、高い総イオン伝導率を得ることができる。
本発明の一態様においては、固体電解質全体に含まれるTi原子に対する、固体電解質全体に含まれるTa原子の物質量比が0より多く0.10以下である構成としてもよい。
この構成によれば、Ta原子を含まない固体電解質と比べ、総イオン伝導率を向上することが可能となる。
本発明の一態様においては、前記非晶質は、少なくともLi,LaおよびTaを含む構成としてもよい。
この構成によれば、第2領域においても好適なイオン伝導性を確保することができ、総イオン伝導率を向上させた固体電解質とすることができる。
また、本発明の一態様は、リチウム化合物、ランタン化合物、チタン化合物および原子の結晶半径が78pm以上の金属原子を含む化合物が溶解した溶液から溶媒を除去してゲル化させる工程と、得られたゲルを熱処理する工程と、を有する固体電解質の製造方法を提供する。
また、本発明の一態様は、リチウム化合物、ランタン化合物、チタン化合物およびタンタル原子を含む化合物が溶解した溶液から溶媒を除去してゲル化させる工程と、得られたゲルを熱処理する工程と、を有する固体電解質の製造方法を提供する。
この方法によれば、溶液を塗布、含浸など任意の簡便な手段によって所望の材料表面に配置し、ゲル化および熱処理を行うことで、所望の材料表面に容易にリチウムイオン伝導性に優れた固体酸化物を形成することができる。
本発明の一態様においては、前記原子の結晶半径が78pm以上の金属原子を含む化合物がタンタル化合物であり、前記熱処理する工程は、熱処理温度が540℃以上800℃以下である製造方法としてもよい。
この方法によれば、熱処理温度が540℃以上であると、熱処理により成長する結晶中に異相が生じにくく、結晶が成長しやすい。そのため、十分なバルクイオン伝導性を有する結晶が成長した第1領域となる。
また、熱処理温度が800℃以下であると、第2領域で結晶化が進行しにくく、第2領域が非晶質となりやすい。そのため、結晶質である第1領域と、非晶質である第2領域とが複合化された構造が得やすく、粒界抵抗を低減した固体酸化物が得られやすい。
また、本発明の一態様は、正極と負極と、前記正極および前記負極に挟持された固体電解質層と、を有し、前記固体電解質層は、上記の固体電解質を形成材料とするリチウムイオン電池を提供する。
この構成によれば、固体電解質層の総イオン伝導率が高く、高い性能を有するリチウムイオン電池とすることができる。
本実施形態に係る固体電解質の模式図である。 本実施形態に係る固体電解質の製造方法を示すフローチャートである。 本実施形態のリチウムイオン電池を示す断面図である。 実施例の測定結果を示す写真である。 実施例の測定結果を示す写真である。 実施例の測定結果を示す写真である。 実施例の測定結果を示すグラフである。
[固体電解質]
以下、図1〜図3を参照しながら、本実施形態に係る固体電解質および固体電解質の製造方法について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
図1は、本実施形態に係る固体電解質の模式図であり、固体電解質の任意の位置における断面図である。図に示すように、本実施形態の固体電解質は、結晶質を形成材料とする複数の第1領域AR1と、非晶質を形成材料とする第2領域AR2と、を有している。
第1領域AR1は、リチウム原子と、原子の結晶半径が78pm以上の金属原子と、を含む立方晶ペロブスカイト型の結晶質を形成材料としている。
ここで、「原子の結晶半径が78pm以上の金属原子」としては、Ta,Mo,W,Nb,Hfを例示することができる。
第1領域AR1を構成する結晶質は、組成式ABOで表される複合酸化物であるとよい。ここで、式中、A及びBは、互いに異なる金属元素であり、Aは、Liを含み、さらにLa,Mg,Baからなる群から選ばれる1以上の元素を含み、Bは、Ti,Ta,Zr,Alからなる群から選ばれる1以上の元素である。
このような結晶質は、第1領域AR1において高いイオン伝導性が期待でき、高い総イオン伝導率を示す固体電解質とすることができる。
第2領域AR2は、第1領域AR1の間に介在する領域であり、リチウム原子と上述の金属原子とを含む非晶質を形成材料としている。
本実施形態の固体電解質は、これら第1領域AR1と第2領域AR2とからなることが好ましい。
第2領域AR2に含まれる「原子の結晶半径が78pm以上の金属原子」は、第1領域AR1から第2領域AR2に向けて、存在比率が連続的に変化し漸増している。当該金属原子がこのような比率で存在することで、当該金属原子が少ない第1領域AR1では、好適に立方晶ペロブスカイト型の結晶相を呈し、当該金属原子が相対的に多く存在する第2領域AR2では立方晶ペロブスカイト型の結晶相となることができずに非晶質となっている。
また、当該金属原子の存在比が不連続に変化するのではなく、連続的に変化することで、第1領域AR1と第2領域AR2との境界が不明確となる。
従来知られている、固体酸化物の粒子を用いた固体電解質では、粒子間の界面で生じる粒界抵抗により、リチウムイオン伝導率が低下するという課題がある。しかし、本実施形態の固体電解質においては、上述の構成を有することにより、「粒子間の界面」が不明確となり存在しない。そのため、本実施形態の固体電解質においては、従来知られた固体電解質であって固体酸化物の粒子を用いたものと比べ、粒界抵抗を低減することができる。
「原子の結晶半径が78pm以上の金属原子」が、第1領域AR1から第2領域AR2に向けて、存在比率が連続的に変化し漸増している様子は、得られた固体電解質の断面のX線回折法(XRD)で測定し、当該金属原子の分布を調べることで確認することができる。
本実施形態の固体電解質としては、例えば、結晶質の組成としては、Li3xLa2/3−xTiO(0<x<0.16)であるものを好適に用いることができる。また、「原子の結晶半径が78pm以上の金属原子」としては、Taを例示することができる。
このような固体電解質は、示性式Li3xLa2/3−xTiO(0<x<0.16)であるペロブスカイト結晶は高いイオン伝導性を示し、高いバルクイオン伝導性を期待できる。また、Ta添加の効果により第2領域が好適に非晶質となり、第1領域と第2領域とが複合化されるため、高い総イオン伝導率を得ることができる。
「原子の結晶半径が78pm以上の金属原子」がTaである場合、固体電解質全体に含まれるTi原子に対する、固体電解質全体に含まれるTa原子の物質量比が0より多く0.10以下であると好ましい。Ta原子の物質量比がこの範囲に含まれると、Ta原子を含まない固体電解質と比べ、総イオン伝導率を向上させることが可能となる。Ta原子の物質量比が0.10を超えると、異相の形成が優先しイオン伝導率が低下するという悪影響が生じる。
Ti原子に対するTa原子の物質量比は、0.01以上であることがより好ましく、0.02以上であることがさらに好ましい。また、Ti原子に対するTa原子の物質量比は、0.08以下であることがより好ましく、0.06以下であることがさらに好ましい。これらの上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
Ti原子に対するTa原子の物質量比は、0.04であることが最も好ましい。
このとき、非晶質としては、少なくともLi,LaおよびTaを含むものが好ましい。非晶質がLi,TaおよびLaを含むことで、非晶質の第2領域においても好適なリチウムイオン伝導性を確保し、総イオン伝導率を向上させた固体電解質とすることができる。
従来、結晶相中にTaを含むLiLaTiOは公知であるが、当該公知の物質は、リチウムイオン伝導性が低く、固体電解質としては採用できない。対して、本実施形態の固体電解質は、リチウムイオン伝導性が上記従来の物質より高く、固体電解質として好適である。
[固体電解質の製造方法]
図2は、本実施形態に係る固体電解質の製造方法を示すフローチャートである。以下、図1を併せて参照し、図1に示した符号を用いて説明を行う。
本実施形態の固体電解質の製造方法は、(1)リチウム化合物、ランタン化合物、チタン化合物および原子の結晶半径が78pm以上の金属原子を含む化合物が溶解した溶液から溶媒を除去してゲル化させる工程と、(2)得られたゲルを熱処理する工程と、を有する。
ここでは、原子の結晶半径が78pm以上の金属原子を含む化合物としてTaを用いた固体電解質を形成することとして説明する。
[1.ゲル化させる工程]
まず、「(1)ゲル化させる工程」(ステップS1)として、リチウム化合物、ランタン化合物、チタン化合物およびタンタル化合物が溶解した溶液を得る(ステップS11)。以下の説明では、ステップS11で調整する溶液を「前駆体溶液」と称する。
リチウム化合物としては、LiOH、LiF、LiBr、LiCl、LiNO、LiSOなどの無機塩;
ギ酸リチウム(LiHCOO)、酢酸リチウム(LiCHCOO)、LiC、クエン酸リチウム(Li)、LiC、LiC1835などの有機酸塩;
メチルリチウム(CHLi)、ブチルリチウム(LiC)、フェニルリチウム(CLi)などの有機リチウム化合物;
リチウムメトキシド(LiOCH)、リチウムエトキシド(LiOC)、リチウムプロポキシド(LiOC)などのリチウムアルコキシド;
などを挙げることができる。
リチウムアルコキシドを構成するアルコキシ基は、直鎖状でもよく分岐していてもよい。
ランタン化合物としては、無機塩、有機酸塩、有機ランタン化合物、ジケトン錯体および金属アルコキシドなどを挙げることができる。無機塩および有機酸塩を構成する陰イオン、有機ランタン化合物を構成する有機基、金属アルコキシドを構成するアルコキシ基は、上述のリチウム化合物において例示したものと同様のものを用いることができる。
ジケトン錯体を構成する配位子は、2,4−ペンタンジオンのようなβ−ジケトンを用いることができる。
チタン化合物としては、タンタルの無機塩、有機酸塩、錯体、金属アルコキシドなどを挙げることができる。無機塩および有機酸塩を構成する陰イオン、有機ランタン化合物を構成する有機基、金属アルコキシドを構成するアルコキシ基は、上述のリチウム化合物において例示したものと同様のものを用いることができる。
錯体を構成する配位子は、2,4−ペンタンジオンのようなβ−ジケトンを用いることができる。
タンタル化合物としては、タンタルの無機塩、有機酸塩、錯体、金属アルコキシドなどを挙げることができる。無機塩および有機酸塩を構成する陰イオン、有機ランタン化合物を構成する有機基、金属アルコキシドを構成するアルコキシ基は、上述のリチウム化合物において例示したものと同様のものを用いることができる。
錯体を構成する配位子は、2,4−ペンタンジオンのようなβ−ジケトンを用いることができる。
前駆体溶液に用いることができる溶媒としては、上述の各化合物を溶解する極性溶媒を用いることができ、n−ブタノールのようなアルコールや、プロピオン酸のような有機酸を挙げることができる。
ここでは、リチウム化合物としてLiCHCOO、ランタン化合物として、酢酸ランタン(La(CHCOO))、チタン化合物として、テトライソプロポキシチタン(Ti(OC)タンタル化合物として、ペンタエトキシタンタル(Ta(OC)を用いることとして説明する。
次いで、「(1)ゲル化させる工程」(ステップS1)として、前駆体溶液から溶媒を除去してゲル化させる(ステップS12)。
例えば、前駆体溶液を140℃に加熱し、1時間保持することで、透明なゲルが得られる。
なお、本工程は、次の熱処理する工程と連続的に行うこととしてもよい。
[2.熱処理する工程]
次いで、得られたゲルを熱処理し、固体酸化物を得る(ステップS2)。
熱処理することにより、ゲルに含まれるリチウム原子、ランタン原子、チタン原子が立方晶ペロブスカイト型の結晶を形成する。同時に、ゲルに含まれるタンタル原子は、立方晶ペロブスカイト型の結晶が形成される領域から排斥されながら、結晶が成長していない領域に偏在する。
すなわち、結晶の成長箇所では、タンタル原子が取り込まれないことにより、立方晶ペロブスカイト型の結晶が成長する。一方、結晶の成長箇所の周囲では、タンタル原子が濃縮されるため、立方晶ペロブスカイト型の結晶を形作ることが徐々に困難となり、結果として非晶質の領域になる。
このようにして、結晶質の第1領域AR1と、第1領域AR1の間に介在する非晶質の第2領域AR2と、を有する固体電解質が得られる。
熱処理温度は、540℃以上800℃以下であることが好ましい。例えば、得られたゲルを540℃で1時間加熱して熱処理する。
熱処理温度が540℃以上であると、熱処理により成長する結晶中に異相が生じにくく、結晶が成長しやすい。そのため、十分なバルクイオン伝導性を有する結晶が成長した第1領域AR1となる。
また、熱処理温度が800℃以下であると、第2領域AR2で結晶化が進行しにくく、第2領域AR2が非晶質となりやすい。そのため、結晶質である第1領域AR1と、非晶質である第2領域AR2とが複合化された構造が得やすく、粒界抵抗を低減した固体酸化物が得られやすい。
本実施形態の固体酸化物の製造方法では、上述のように、前駆体溶液をゲル化し、熱処理することで、好適に結晶質の第1領域AR1と非晶質の第2領域AR2とを有する固体酸化物を製造することができる。したがって、例えば前駆体溶液を塗布、含浸など任意の簡便な手段によって所望の材料表面に配置し、ゲル化および熱処理を行うことで、所望の材料表面に容易にリチウムイオン伝導性に優れた固体酸化物を形成することができる。
以上のような構成の固体電解質によれば、粒界抵抗を低減させ、高い総イオン伝導率を示す固体電解質を提供することができる。
また、以上のような構成の固体電解質の製造方法によれば、高い総イオン伝導率を示す高性能な固体電解質を容易に製造することができる。
なお、「原子の結晶半径が78pm以上の金属原子」としてTa以外の金属を用いる場合、「原子の結晶半径が78pm以上の金属原子を含む化合物」としては、原子の結晶半径が78pm以上の金属の無機塩、有機酸塩、有機ランタン化合物、ジケトン錯体および金属アルコキシドなどを挙げることができる。無機塩および有機酸塩を構成する陰イオン、有機ランタン化合物を構成する有機基、金属アルコキシドを構成するアルコキシ基は、上述のリチウム化合物において例示したものと同様のものを用いることができる。
ジケトン錯体を構成する配位子は、2,4−ペンタンジオンのようなβ−ジケトンを用いることができる。
[リチウムイオン電池]
次に、本実施形態のリチウムイオン電池について説明する。図3は、本実施形態のリチウムイオン電池を示す断面図である。
図3に示すリチウムイオン電池100は、集電体1と、活物質層2と、固体電解質層3と、電極4がこの順に積層された構成となっている。固体電解質層3は、上述した固体電解質を形成材料として用いる。
集電体1の形成材料としては、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)およびパラジウム(Pd)からなる群から選ばれる1種の金属(金属単体)や、この群から選ばれる2種以上の金属元素を含む合金等が挙げられる。
集電体1の形状は、板状、箔状、網状等を採用することができる。集電体1の表面は、平滑であってもよく、凹凸が形成されていてもよい。
活物質層2は、リチウムイオン電池100において集電体1を正極側に使用する場合と、負極側に使用する場合とで、形成材料が異なる。
集電体1を正極側に使用する場合には、活物質層2の形成材料として、正極活物質として通常知られている物質を用いることができる。このような物質としては、例えば、リチウム複酸化物が挙げられる。
リチウム複酸化物としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMn、LiFePO、LiFeP、LiMnPO、LiFeBO、Li(PO、LiCuO、LiFeF、LiFeSiO、LiMnSiO等が挙げられる。また、これらのリチウム複酸化物の結晶内の一部原子が他の遷移金属、典型金属、アルカリ金属、アルカリ希土類、ランタノイド、カルコゲナイド、ハロゲン等で置換された固溶体も正極活物質として用いることができる。
集電体1を負極側に使用する場合には、活物質層2の形成材料として、負極活物質として通常知られている物質を用いることができる。
負極活物質としては、シリコン−マンガン合金(Si−Mn)、シリコン−コバルト合金(Si−Co)、シリコン−ニッケル合金(Si−Ni)、五酸化ニオブ(Nb)、五酸化バナジウム(V)、酸化チタン(TiO)、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化ニッケル(NiO)、錫(Sn)が添加された酸化インジウム(ITO)、アルミニウム(Al)が添加された酸化亜鉛(AZO)、ガリウム(Ga)が添加された酸化亜鉛(GZO)、アンチモン(Sb)が添加された酸化スズ(ATO)、フッ素(F)が添加された酸化スズ(FTO)、炭素材料、炭素材料の層間にリチウムイオンが挿入された物質、TiOのアナターゼ相、LiTi12,LiTi等のリチウム複酸化物、Li金属等が挙げられる。
集電体1を正極側に使用する場合、電極4は負極となる。この場合、集電体1の形成材料としてアルミニウムを選択し、電極4の形成材料としてリチウムを選択することができる。
このようなリチウムイオン電池100は、以下のようにして製造することができる。
まず、表面に活物質層2が形成された集電体1を用意し、活物質層2の表面に上述の前駆体溶液を塗布して、前駆体溶液のゲル化および熱処理を行うことで、活物質層2の表面に容易にリチウムイオン伝導性に優れた固体電解質層3を形成する。
このとき、固体電解質層3を得るための熱処理温度は、上述のように540℃以上800℃以下が好適である。このような温度範囲で熱処理を行うと、活物質層2を構成する物質と、熱処理で生じる固体酸化物とが反応し異相を形成することがなく、所望の固体電解質層を容易に形成することができる。
次いで、固体電解質層3の表面に電極4を形成する。これにより、容易にリチウムイオン電池100を製造することができる。
リチウムイオン電池100の製造方法としては、他にも、活物質層2の表面に固体電解質層を形成した部材と、電極4の表面に固体電解質層を形成した部材とをそれぞれ製造した上で、各部材の固体電解質層同士を貼り合わせることとしてもよい。
このようなリチウムイオン電池によれば、固体電解質層の総イオン伝導率が高く、高い性能を有するリチウムイオン電池とすることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
上記実施形態においては、本発明の酸化物粒子をリチウムイオン電池の固体電解質層の形成材料として用いることとして説明したが、これに限らず、例えば、リチウム空気電池の固体電解質層の形成材料として用いることも可能である。
[実施例]
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(a)リチウム化合物の溶液、(b)ランタン化合物の溶液、(c)チタン化合物の溶液、(d)タンタル化合物の溶液を用意し、下記の配合で混合して前駆体溶液を調整した。
(a):LiCHCOOのプロピオン酸溶液(0.36mol/kg) 2g
(b):La(CHCOO)・1.5HOのプロピオン酸溶液(0.27mol/kg) 4g
(c):テトライソプロポキシチタンのn−COH溶液(1.0mol/kg)
(d):ペンタエトキシタンタルのn−COH溶液(1.0mol/kg)
このとき、(c)と(d)との質量比率が、(c):(d)=100:4であり、(c)と(d)との総量が2gになるように秤量し、前駆体溶液の総量を8gとした。すなわち、Ti原子に対するTa原子の物質量比は、0.04である。
次いで、得られた前駆体溶液を140℃で1時間乾燥して透明なゲルを得た。
次いで、得られたゲルを540℃で1時間焼成することにより、透明な生成物が得られた。得られた生成物は、本発明の固体酸化物に対応する。
得られた生成物を粉砕した後、粉砕物100mgを内径10mmのペレットダイスに充填して624MPaの圧力でプレスすることにより、厚み0.5mmの錠剤型ペレットを得た。得られたペレットを、大気雰囲気において700℃で14時間焼成することにより、固体電解質の成形体を得た。
(実施例2)
(c)と(d)との質量比率が、(c):(d)=100:1、すなわちTi原子に対するTa原子の物質量比を、0.01としたこと以外は、実施例1と同様にして、固体酸化物および固体酸化物の成形体を得た。
(実施例3)
(c)と(d)との質量比率が、(c):(d)=100:2、すなわちTi原子に対するTa原子の物質量比を、0.02としたこと以外は、実施例1と同様にして、固体酸化物および固体酸化物の成形体を得た。
(実施例4)
(c)と(d)との質量比率が、(c):(d)=100:6、すなわちTi原子に対するTa原子の物質量比を、0.06としたこと以外は、実施例1と同様にして、固体酸化物および固体酸化物の成形体を得た。
(実施例5)
(c)と(d)との質量比率が、(c):(d)=100:8、すなわちTi原子に対するTa原子の物質量比を、0.08としたこと以外は、実施例1と同様にして、固体酸化物および固体酸化物の成形体を得た。
(実施例6)
(c)と(d)との質量比率が、(c):(d)=100:10、すなわちTi原子に対するTa原子の物質量比を、0.10としたこと以外は、実施例1と同様にして、固体酸化物および固体酸化物の成形体を得た。
(比較例1)
(c)と(d)との質量比率が、(c):(d)=100:0、すなわちTa原子を含めないこと以外は、実施例1と同様にして、固体酸化物および固体酸化物の成形体を得た。
(比較例2)
(c)と(d)との質量比率が、(c):(d)=100:20、すなわちTi原子に対するTa原子の物質量比を、0.20としたこと以外は、実施例1と同様にして、固体酸化物および固体酸化物の成形体を得た。
(比較例3)
(c)と(d)との質量比率が、(c):(d)=100:40、すなわちTi原子に対するTa原子の物質量比を、0.40としたこと以外は、実施例1と同様にして、固体酸化物および固体酸化物の成形体を得た。
(結晶構造の同定)
得られた生成物について、粉体X回折装置MRD(フィリップス社製)を用いたX線解析により結晶相の同定を行った。XRD回折図形を基に結晶相の同定を行ったところ、立方晶ペロブスカイト型の結晶相が確認できた。また、Ti原子に対するTa原子の物質量比が0.04以上のとき、回折角25〜30°付近に同定不能の異相ピークが出現することが認められた。
(結晶構造の状態観察)
得られた固体電解質の成形体から薄片を作製し、透過型電子顕微鏡(CM200、フィリップス社製)を用いて得られた薄片を観察した。
図4,5は、固体電解質の成形体についての、エネルギーフィルタ型の透過型電子顕微鏡による観察結果を示す写真である。図4は、比較例1のTa未添加試料の成形体について観察した結果であり、図5は、実施例1のTa添加試料の成形体について観察した結果である。各図(a)は、それぞれの顕微鏡写真であり、各図(b)は各写真の視野全体における電子線回折図形である。
観察の結果、図4(a)に示すように、Ta未添加の試料では明確な微粒子構造が発達し、結晶子間が点接触となっていた。図4(a)において符号αで示すような白色でしめされる領域は、微粒子が存在せず、測定時に用いている基板が露出している部分である。
これに対し、図5(a)に示すように、Taを添加した試料では、結晶相を示す格子縞が確認できる黒色の領域(符号βで示す)の周囲に、格子縞が確認できない領域(符号γで示す)があることが分かった。また、図5(a)においては、図面全体が黒色に色付き、領域βは領域γよりも黒くなっていることが分かった。さらに、領域βと領域γとの間には明確な境界はなく、図においては徐々に黒色の濃さが変化している。
さらに、各視野における電子線回折図形によれば、図4(b)に示すように、Ta未添加の試料では、明確な回折パターンが得られたのに対し、図5(b)に示すように、Ta添加試料では非晶質の存在を示すハローパターンが確認できた。
これらのことから、実施例1のTa添加試料では、結晶質と非晶質とが存在していることが確認できた。
図6は、実施例1のTa添加試料についての観察結果である。図6(a)は、非晶質の領域(図5(a)の領域γに対応)を含むHAADF−STEM(High Angle Annular Dark-Field Scanning Transmission Electron Microscopy)像であり、図6(b)は、図6(a)と同じ視野におけるエネルギー分散型X線分光分析によるTaのマッピングデータである。
図6(a)では、結晶質の領域(図5(a)の領域β)は白く、非晶質の領域(図5(a)の領域γ)は黒く示されている。図6(b)では、Taの存在量を白−黒の明度で示しており、白に近づくほどTaが多いことを示している。
図6に示すように、図6(a)で黒く示されている非晶質の領域ほど図6(b)では白い点が多く存在し、非晶質の領域ほどTaの存在量が多いことが分かる。また、Taは、視野全体で確認できている。さらに、結晶質の領域と非晶質の領域とで、Ta存在量は徐々に変化していることが分かる。
以上のことから、実施例1のTa添加試料においては、結晶質の領域と非晶質の領域とが存在すること、結晶質の領域と非晶質の領域とにはいずれもTaが含まれること、Taの存在量は結晶質の領域よりも非晶質の領域の方が多く、結晶質の領域と非晶質の領域とで、Ta存在量は徐々に変化していること、が確認できた。
(イオン伝導率の計測)
得られた固体電解質の成形体の表面に、スパッタリングによりPt電極を形成し、交流インピーダンスアナライザ(1620型、ソーラトロン社製)を用いてイオン伝導率の解析を行った。
図7は、実施例1〜6および比較例1〜3の成形体についてイオン伝導率を測定した結果を示すグラフである。横軸は、Ti原子に対するTa原子の物質量比、縦軸は、イオン伝導率(単位:S/cm)を示している。
測定の結果、Ti原子に対するTa原子の物質量比が0.01〜0.10のとき(実施例1〜6)、総イオン伝導率がTa未添加品(比較例1)よりも向上することが確認できた。しかし、Ti原子に対するTa原子の物質量比が0.10を超えると、Ta未添加品よりも総イオン伝導率が低下することが分かった(比較例2,3)。これは前述のXRDの結果より、異相の生成を反映したものと推測される。
(正極活物質との反応性)
LiCoOの粉体(シグマ・アルドリッチ)1gに、実施例1の前駆体溶液2gを混合し、大気雰囲気にて700℃で14時間の焼成を行なった後、XRDおよび表面走査型電子顕微鏡による異相生成の有無の確認を行った。この結果、何れの解析においても異相の生成は認められなかった。
(比較例4)
平均粒径4μmのLi0.35La0.55TiO粉末(高純度化学)1gに対し、ポリアクリル酸粉末(シグマ・アルドリッチ)0.035gを添加してメノウ鉢でよく混合し、混合物100mgを内径10mmのペレットダイスに充填して624MPaの圧力で錠剤成型した。
これを大気雰囲気において700℃で14時間焼結して、固体電解質の成形体を得た。
得られた成形体について、上述の方法でイオン伝導率の測定を行ったところ、総イオン伝導率は3.4×10−8S/cmと著しく低いことがわかった。インピーダンススペクトルの同定解析の結果、本焼結体の抵抗の大部分が粒界抵抗であることがわかった。
(比較例5)
焼結温度を1000℃としたこと以外は比較例4と同様にして、固体酸化物の成形体を得た。
得られた成形体について、上述の方法でイオン伝導率の測定を行ったところ、総イオン伝導率は7×10−5S/cmであった。
次いで、正極活物質との反応性を確認するため、LiCoOの粉末(シグマ・アルドリッチ)2gと、Li0.35La0.55TiO粉末(高純度化学)1gを混合し、1000℃で8時間焼成した。
得られた粉末を用いて、XRDおよび透過型電子顕微鏡による観察を行った。
XRDによる観察の結果、結晶相はLi0.35La0.55TiOの正方晶ペロブスカイト結晶にCo原子が拡散したことを示す結果が得られた。
また、透過型電子顕微鏡による観察の結果、Li0.35La0.55TiOとCo化合物がモザイク状に複合化した異相結晶が生成していることが分かった。
以上の結果より、Li0.35La0.55TiO粉末のイオン伝導率を確保するため、高温で焼成すると、正極活物質を反応し異相を生成することが分かった。
以上の結果より、本発明が有用であることが確認できた。
1…集電体、2…活物質層、3…固体電解質層、4…電極、100…リチウムイオン電池、AR1…第1領域、AR2…第2領域

Claims (8)

  1. 少なくともリチウム原子と、タンタル原子と、を含む立方晶ペロブスカイト型の結晶質を形成材料とする複数の第1領域と、
    前記複数の第1領域の各々の間に介在し、リチウム原子とタンタル原子とを含む非晶質を形成材料とする第2領域と、を有し、
    タンタル原子の存在比率は、前記第1領域から前記第2領域に向けて漸増している固体電解質。
  2. 前記結晶質は、組成式ABOで表される複合酸化物である請求項1に記載の固体電解質。
    (式中、A及びBは、互いに異なる金属元素であり、Aは、Liを含み、さらにLa,Mg,Baからなる群から選ばれる1以上の元素を含み、Bは、Ti,Ta,Zr,Alからなる群から選ばれる1以上の元素である。)
  3. 前記結晶質は、Li3xLa2/3−xTiO(0<x<0.16)である請求項2に記載の固体電解質。
  4. 固体電解質全体に含まれるTi原子に対する、固体電解質全体に含まれるTa原子の物質量比が0より多く0.10以下である請求項3に記載の固体電解質。
  5. 前記非晶質は、少なくともLi,LaおよびTaを含む請求項3または4に記載の固体電解質。
  6. リチウム化合物、ランタン化合物、チタン化合物およびタンタル原子を含む化合物が溶解した溶液から溶媒を除去してゲル化させる工程と、
    得られたゲルを熱処理する工程と、を有する固体電解質の製造方法。
  7. 記熱処理する工程は、熱処理温度が540℃以上800℃以下である請求項6に記載の固体電解質の製造方法。
  8. 正極と負極と、前記正極および前記負極に挟持された固体電解質層と、を有し、
    前記固体電解質層は、請求項1から5のいずれか1項に記載の固体電解質を形成材料とするリチウムイオン電池。
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