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JP6197811B2 - 鋼板のスケール残り判定装置およびスケール残り判定方法 - Google Patents
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JP6197811B2 - 鋼板のスケール残り判定装置およびスケール残り判定方法 - Google Patents

鋼板のスケール残り判定装置およびスケール残り判定方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼板のスケール残り判定装置およびスケール残り判定方法に関する。
鋼の熱間圧延工程において、鋼板の表面部に酸化皮膜の一種であるスケールが生じることがよく知られている。このスケールは薄鋼板から厚鋼板の鋼板全般において、様々な欠陥要因となり、圧延過程やさらに下工程の酸洗ラインなどにおいて、スケール除去する工程(デスケーリング)が適宜行われる。
厚鋼板においては、熱間圧延中に適宜制御冷却を行い、鋼板の温度調節を行うことで一定の材質を実現する制御圧延が行われるが、冷却不均一の一因となる板表層のスケールを残存させないよう、制御冷却の前段で、板表面にノズルを介して高圧水を吹き付けることでスケールを剥離させ、除去するデスケーリングが行われている。冷却が不均一となると表層部の硬度や伸び性能などに影響を及ぼし、材質の均一性が保てなくなるため、これを防止するためである。
ところが、ノズル故障や水圧不足などの何らかの不具合によってデスケーリング不良が起こると、厚鋼板にスケールが残存する、いわゆるスケール残りが発生してしまう。このため、厚鋼板の性能低下を抑制するためには、スケール残りの有無を判定することが求められる。
スケール残りの有無を判定する方法として、板表面に光を照射しその反射光をカメラで撮像する光学的な手法や、人による目視検査などが知られている。また、スケールが母材となる金属の酸化物であることに着目すると、スケール部分の電気伝導率は母材よりも低下する。鋼板同様に銅板についても酸化銅は母材よりも電気伝導率が低下するため、特許文献1には、銅板の表面部に生じた酸化銅層の厚さを、探針式の電気抵抗測定法によって測定する技術が開示されている。
特開2002−62115号公報
ところで、厚鋼板を製造する際、板表面にはスケールとは別に、板表面のむら模様が筋状に形成された場合や単なる汚れなど、無害な疑似模様が生じる場合がある。そのため、上述した光学的な手法や目視検査では、その疑似模様を含むスケールと疑わしきものを発見できるが、スケールと疑似模様とを判別することは困難である。
また、スケールには厚さが数μm程度の酸化皮膜が含まれる。そのため、レーザ式変位計や超音波などを用いてスケールの厚みを計測する方法では、その厚さが表面粗さと同程度であるため、スケールを検出することが困難である。
そこで、特許文献1に記載された探針式の電気抵抗測定法によって、厚鋼板のスケール残りを判定することを試みた。しかしながら、特許文献1に開示されている技術をそのまま厚鋼板のスケール残り判定に用いると、スケール残りと電気抵抗値の関係が必ずしも一定せず、スケール残りを判定することができなかった。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、探針式の電気抵抗測定法によって鋼板の表面に残存するスケールを精度よく検出することができる鋼板のスケール残り判定装置およびスケール残り判定方法を提供することを目的とする。
本発明に係る鋼板のスケール残り判定装置は、処理対象の鋼板の表面に接触している複数本の探針に、前記鋼板に形成されているスケールが還元することを抑制可能な所定電流値の電流を通電する電流値制御手段と、前記探針間の電圧を計測し、かつその計測された電圧と前記所定電流値とを用いて前記鋼板の電気抵抗を計測する電気抵抗算出手段と、前記電気抵抗算出手段によって計測された前記鋼板の電気抵抗値が、予め定められた所定閾値よりも大きい場合、前記鋼板にはスケール残りがあるとして不合格判定するスケール残り判定手段とを備えていることを特徴とする。
上記鋼板のスケール残り判定装置は、前記複数本の探針は、前記鋼板の長手方向に沿って所定間隔で一列に配置されているチャンネルを形成し、前記チャンネルでは、前記長手方向で隣り合う探針同士が電気的に結合されていることが好ましい。
上記鋼板のスケール残り判定装置は、前記チャンネルは、前記鋼板の幅方向に所定間隔を空けて複数配列されており、前記電流値制御手段は、前記チャンネル毎に時分割で前記所定電流値の電流を通電し、前記電気抵抗算出手段は、前記電気抵抗値を前記チャンネル毎に計測し、前記スケール残り判定手段は、前記電気抵抗値が前記所定閾値よりも大きい場合、前記チャンネル毎に不合格判定することが好ましい。
上記鋼板のスケール残り判定装置は、前記スケール残り判定手段は、前記幅方向で隣り合う前記二つのチャンネルに対していずれも不合格判定された場合、前記スケールの幅に対して不合格判定することが好ましい。
上記鋼板のスケール残り判定装置は、前記探針は、前記鋼板の幅方向間隔が、不合格判定とするスケール幅の半分以下に設定されていることが好ましい。
上記鋼板のスケール残り判定装置は、前記所定電流値は、1μ〜100μAの範囲内に含まれる値であることが好ましい。
本発明に係る鋼板のスケール残り判定方法は、処理対象の鋼板の表面に接触している複数本の探針に、前記鋼板に形成されているスケールが還元することを抑制可能な所定電流値の電流を通電する電流値制御ステップと、前記探針間の電圧を計測し、かつその計測された電圧と前記所定電流値とを用いて鋼板の電気抵抗を計測する電気抵抗算出ステップと、前記電気抵抗算出ステップによって計測された前記鋼板の電気抵抗値が、予め定められた所定閾値よりも大きい場合、前記鋼板にはスケール残りがあるとして不合格判定するスケール残り判定ステップとを含むことを特徴とする。
上記鋼板のスケール残り判定方法は、前記電流値制御ステップは、前記複数本の探針を前記鋼板の長手方向に沿って所定間隔で一列に配置し、かつ長手方向で隣り合う探針同士を電気的に結合しているチャンネルが、前記幅方向に所定間隔を空けて複数配列されている複数チャンネルに対して、チャンネル毎に時分割で前記所定電流値の電流を通電するステップを含み、前記電気抵抗算出ステップは、前記電気抵抗値を前記チャンネル毎に計測するステップを含み、前記スケール残り判定ステップは、前記電気抵抗値が前記所定閾値よりも大きい場合、前記チャンネル毎に不合格判定するステップを含むことが好ましい。
上記鋼板のスケール残り判定方法は、前記スケール残り判定ステップは、前記幅方向で隣り合う前記二つのチャンネルに対していずれも不合格判定された場合、前記スケールの幅に対して不合格判定するステップを含むことが好ましい。
上記鋼板のスケール残り判定方法は、前記電流値制御ステップは、前記所定電流値を1μ〜100μAの範囲内に含まれる値に制御するステップを含むことが好ましい。
本発明によれば、探針式の電気抵抗測定法によって、鋼板の表面に生じたスケールを精度よく検出することができる。また、鋼板の電気抵抗値を測定時、酸化物であるスケールで起きる還元現象を抑制する所定電流値に制御されるため、還元反応が進みスケールと鋼板との電気抵抗差が縮まることを抑制できる。したがって、スケールに起因して生じる電気抵抗値を計測できるとともに、その電気抵抗値が所定閾値を超える場合にスケール残りがあると判定することにより、スケール残りの判定精度を向上させることができる。
図1は、本実施形態における鋼板のスケール残り判定処理フローを示すフローチャートである。 図2は、本実施形態における鋼板のスケール残り判定装置を模式的に示す図である。 図3は、複数本の探針の配置例を示したスケルトン図である。 図4(a)は、図3に示す矢印A方向から見た探針ヘッドを示す側面図である。図4(b)は、図3に示す矢印B方向から見た探針ヘッドを示す正面図である。 図5は、試験装置を模式的に示すモデル図である。 図6は、その試験結果の一例を示す線グラフである。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態における鋼板のスケール残り判定装置について具体的に説明する。
図2は、本実施形態における鋼板のスケール残り判定装置を示す模式図である。図3は、複数本の探針の配置例を示すスケルトン図である。図2に示すように、鋼板のスケール残り判定装置(以下、単に「判定装置」という)1は、処理対象となる厚鋼板2の電気抵抗値Rを計測する測定装置3と、リード線4を介して測定装置3と電気的に接続される複数本の探針5と、厚鋼板2の板表面2aに対向する対向面側から複数本の探針5が突出している探針ヘッド6とにより構成されている。
判定装置1とは、探針式の電気抵抗測定法によって、板表面2aに存在しているスケールSを検出するものである。つまり、複数本の探針5が先端部を板表面2aに接触させている状態で、所定電流値Iaの電流を厚鋼板2に流すことにより厚鋼板2の電気抵抗値Rを計測し、測定装置3に設けられている電子制御部10によってスケールSの有無を判定する。なお、電子制御部10についての詳細は後述する。
図3に示すように、スケールSの形状は、厚鋼板2の長手方向に延びる筋状となる。これは、熱間圧延工程で厚鋼板2に発生したスケール(酸化皮膜)がデスケーリング不良などによって板表面2aに残存するためである。そのスケールSの主成分は、マグネタイト(Fe)である。
デスケーリングの一例として、厚鋼板2を製造ライン上に通板させながら、厚鋼板2の幅方向に複数配列されたノズルから高圧水を板表面2aに向けて噴射し、板表面2aからスケールを剥離して除去する場合がある。その場合、横並びのノズルのうちいずれか一つで不具合が起きると、板表面2aにおいて幅方向で同じ位置にスケールSが生じる。そのため、スケールSの形状は、幅(スケール幅)Wで厚鋼板2の長手方向(通板方向)に沿って筋状に延びている。そのデスケーリング不良は、通板中の厚鋼板2がばたついて高圧水の届かない位置(高さ)に板表面2aが動くことや、水圧不足など様々な要因によって起こる。つまり、スケール幅Wは、一定でない場合や太い場合や狭い場合もある。そのスケール幅Wが大200mm程度になる場合もある。
そこで、探針ヘッド6には、長手方向に一列に並ぶ6本の探針5a,5b,5c,5d,5e,5fが、幅方向に20列設けられている。全120本の探針5が、長手方向間隔d、かつ幅方向間隔gに配置されている。これにより、板表面2aの所定面積に対して120本の探針5を同時に接触させられる。
加えて、その6本の探針5a,5b,5c,5d,5e,5fによって一つのチャンネルChを形成する。つまり、探針ヘッド6には、全20チャンネルCh1〜Ch20が形成されており、チャンネル同士が幅方向間隔gに配列されている。要は、判定装置1は、いずれかのチャンネルChが筋状のスケールSに接触するとともに、その長手方向に延びるスケールSに対して、一つのチャンネルChに含まれる6本の探針5a,5b,5c,5d,5e,5f全てが接触するように構成されている。
例えば、長手方向間隔dを5mm、幅方向間隔gを4mmに設定できる。特に、幅方向間隔gは、判定装置1によって検出したい有害なスケール幅Wの半分以下の大きさに設定される。仮に検出したい有害なスケール幅Wを10mmとすると、幅方向間隔gは5mm以下に設定されればよい。実際にそのような有害なスケールSが生じた場合、幅方向で隣り合う二つのチャンネルChがそのスケールSに触れることになる。この場合の判定装置1で一度に計測できる板表面2aの所定面積は、長手方向間隔d(=5mm)×5となる長さ25mm、かつ幅方向間隔g(=4mm)×19となる幅76mmの四角形状となる。
なお、図示しないが探針5にはスプリング機能が設けられている。各探針5は、スプリングの弾性力によって、その先端部が探針ヘッド6の対向面から5mm程度突出している。そして、対向面が板表面2aに接触するように探針ヘッド6を厚鋼板2に押し当てることで各スプリングが縮むため、全ての探針5について先端部を確実に板表面2aに接触させられる。さらに、探針ヘッド6の対向面を板表面2aに押し当てる方法は手動、自動のどちらでもよい。手動の場合、探針ヘッド6には棒(図示せず)などの把持部が設けられている。そして、目視検査においてスケールSと疑わしいものを発見した際、厚鋼板2の走行を停止させ、探針ヘッド6の把持部を掴んで、そのスケールSと疑わしきもの(無害な疑似模様を含む)が探針ヘッド6の幅方向中心に位置するようにして対向面を板表面2aに押し当てる。また、自動の場合、探針ヘッド6をサーボモータなどにより、スケールSと疑わしいものが直下に位置するようにライン内を横行させ、下降させることで対向面を板表面2aに押し当てる。その対向面にリミッタスイッチを取り付けることで、厚鋼板2に接触したことを検知し自動降下を停止させた後に、電気抵抗値Rを測定してもよい。厚鋼板2の温度が200℃を超えるような場合に人が近づくのは危険であるため自動の場合は安全性が高い。
次に、図4を参照して、厚鋼板2の電気抵抗値Rを測定するための電気回路(測定用回路)について説明する。図4(a)は、図3の矢印A方向から探針ヘッド6を見た場合の側面図であり、図4(b)は、図3の矢印B方向から探針ヘッド6を見た場合の正面図である。
図4(a)に示す例では、第1チャンネルCh1における6本の探針5a,5b,5c,5d,5e,5fを含む二端子法の測定用回路が形成されている。判定装置1では、一本の探針5が、リード線4を介して電流源7および電圧計8に接続されて、通電用探針かつ電圧測定用探針となる。そして、測定装置3に設けられているマルチプレクサ9により、第1チャンネルCh1を含む回路が電流源7および電圧計8に電気的に接続されて測定用回路を形成している。
その測定用回路において、電流源7から流れる電流Iは、上流側リード線4aから第1探針5a,第2探針5b,第3探針5cの三本を介して厚鋼板2に流れる。そして、その通電された厚鋼板2から第4探針5d,第5探針5e,第6探針5fの三本を介して下流側リード線4bへ電流が流れて電流源7へ至る。そして、電圧計8は、第1から第3探針5a,5b,5cと、第4から第6探針5d,5e,5fとの間の電圧値Vを計測する。
その上流側となる第1から第3探針5a,5b,5cの三本は、上流側リード線4aによって電気的に結合されている。また、下流側となる第4から第6探針5d,5e,5fの三本は、下流側リード線4bよって電気的に結合されている。すなわち、この測定用回路では、電流源7の上流側および下流側で厚鋼板2に接触する端子部分が枝分かれしており、その枝分かれ部分が一つのチャンネルChによって構成されている。
例えば、粉塵などの異物が板表面2a上にのって、たまたま探針5と厚鋼板2との接触箇所に位置する可能性がある。その異物によって探針5と厚鋼板2との間で電気抵抗値Rが増大するため、従来構成の二本の探針のみからなる二端子法では、その異物によって増大した電気抵抗値Rを検出することでスケール残りがあると誤判定してしまう。この判定装置1によれば、三本の探針5が電気的に結合されているので、例えば第2探針5bと厚鋼板2との間に異物が存在する場合でも、それ以外の第1探針5aおよび第3探針5cによって異物が存在しない箇所で厚鋼板2の電気抵抗値Rを計測できる。このように、判定装置1では、異物による誤判定を抑制し、スケールSの検出精度を向上できる。さらに、その従来構成では異物により誤判定した場合、探針と厚鋼板との接触箇所をずらして再度電気抵抗値Rを計測しなければならない。この判定装置1によれば、電気的に結合された三本の探針5が板表面2aの異なる箇所三点で接触しているので、一度の計測でスケールSを精度よく検出することができる。また、二端子法では四端子法に比べてリード線4の本数を削減できるため、判定装置1を簡便な構造に構成できる。
図4(b)に示すように、判定装置1では、マルチプレクサ9により第1から第20チャンネルCh1〜Ch20までを逐次切り替えながら時分割処理を行い、チャンネルCh毎に電気抵抗値Rを算出する。
図4(b)に示す例では、マルチプレクサ9により、第1チャンネルCh1を含む回路が測定用回路となる。この場合、第1チャンネルCh1以外の回路、例えば第2チャンネルCh2を含む回路や、第20チャンネルCh20を含む回路などは、電流源7(図4(b)には示さず)からは電気的に遮断されている。
例えば、従来通り目視検査によってスケールSを発見する方法では、スケールSを発見後に板表面2aに物差しを当ててスケール幅Wを計測することで、製品仕様に対して厚鋼板2の性能を低下させる有害なスケール幅Wよりも大きいことを判定していた。その目視検査が、仮に厚鋼板2を所定製品寸法値にせん断した以降の工程であっても、板表面2aの温度は200℃を超える場合があるため、安全性を考慮する必要がある。そこで、判定装置1によれば、幅方向間隔gで全20チャンネルCh1〜Ch20が横並びに設けられているので、スケールSの有無を判定でき、かつそのスケールSが有害となるスケール幅Wであることを判定できる。これにより、スケールSの検出工程を削減できるとともに、安全性を向上させることができる。
次に、電子制御部10について詳述する。電子制御部10は、マイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータに基づいて所定のプログラムに従って演算を実行するように構成されている。つまり、電子制御部10によって探針ヘッド6から入力されるデータに基づいて厚鋼板2の電気抵抗値Rを算出する。なお、電子制御部10は図示しない記憶装置とデータの送受信可能に接続されていてもよい。
電子制御部10は、電流値制御部11と、電気抵抗算出部12と、スケール残り判定部13と、時分割処理部14とを備えている。電流値制御部11は、電流源7から予め定められた所定電流値Iaの電流が流れるように制御する。電気抵抗算出部12は、所定電流値Iaと電圧計8により計測された電圧値Vとを用いて、チャンネルCh毎の電気抵抗値Rを算出する。スケール残り判定部13は、電気抵抗算出部12により算出された電気抵抗値Rが、予め定められた判定用の所定閾値αよりも大きい場合にスケール残りありとして不合格判定する。時分割処理部14は、マルチプレクサ9を制御し、時分割処理によりチャンネルCh毎の測定用回路を形成する。例えば第1チャンネルCh1から第2チャンネルCh2へ切り替わり、その後第2チャンネルCh2から第3チャンネルCh3へ切り替わるように、幅方向で隣り合うチャンネルChへと電気的な接続が切り替わる。要するに、時分割処理部14の制御により、電流値制御11ではチャンネル毎に時分割で所定電流値Iaの電流を探針5へ通電させることができる。
次に、図1を参照して、判定装置1が実行するスケール残りの判定処理フローについて説明する。判定装置1は、複数のチャンネルChに対して、電子制御部10の制御により時分割にてチャンネルCh毎に所定電流値Iaを通電する(ステップS1)。例えば、所定電流値Iaは10μAに設定される。さらに、電圧計8よってチャンネルCh毎に探針5間の電圧値Vを計測し、その所定電流値Iaと電圧値Vとに基づいてチャンネルCh毎の電気抵抗値Rを算出する(ステップS2)。
判定装置1は、チャンネルCh毎の電気抵抗値Rが、予め定められた判定用の所定閾値αよりも大きいか否かを判断する(ステップS3)。この所定閾値αは、例えば500Ωに設定できる。ステップS3とは、スケールSの有無を判定するための処理手段である。
電気抵抗値Rが判定用の所定閾値α以下であることによりステップS3で否定的に判断した場合、この制御ルーチンは終了する。この場合、そのチャンネルChが触れている板表面2a部分にはスケールSがないと判定したことになる。
電気抵抗値Rが判定用の所定閾値αよりも大きいことによりステップS3で肯定的に判断した場合、判定装置1は、そのチャンネルChが触れている板表面2a部分にはスケールSがあるとして不合格判定する(ステップS4)。
また、判定装置1は、幅方向で隣り合う二つのチャンネルCh,Chn+1に対し連続して不合格判定したか否かを判断する(ステップS5)。例えば、第2チャンネルCh2における電気抵抗値Rが所定閾値500Ωを超え、かつ第3チャンネルCh3における電気抵抗値Rが所定閾値500Ωを超えた場合に、ステップS5で否定的に判断する。このステップS5は、スケールSの幅が、幅方向で隣り合う二つのチャンネルCh,Chn+1に亘る大きさの有害なスケール幅Wであるか否かを判定するための処理手段である。
例えば、有害なスケール幅Wを10mmとして、チャンネルCh同士の幅方向間隔gが4mmに設定されている場合、上述したステップS5で肯定的に判断されることにより、有害となるスケールSを確実に検出できる。判定装置1では、単にスケールSの有無を判定するだけではなく、有害なスケール幅Wについても判定することができる。
不合格判定が幅方向で隣り合う二つのチャンネルCh,Chn+1に対して不合格判定が連続しないことによりステップS5で否定的に判断した場合、この制御ルーチンは終了する。この場合には、厚鋼板2において、10mmを超える有害なスケール幅WのスケールSが板表面2aには存在しないことになる。
不合格判定が幅方向で隣り合う二つのチャンネルCh,Chn+1に対して不合格判定が連続したことによりステップS5で肯定的に判断した場合、有害なスケール幅WのスケールSが厚鋼板2の板表面2aに存在していると判定する(ステップS6)。ステップS6では、スケール幅Wに対して不合格判定することになる。
なお、上述したステップS1からステップS4までは時分割により実行されてよく、チャンネルCh毎に不合格判定することができる。そのため、第1チャンネルCh1を含む測定用回路について不合格判定された結果を記憶手段に一時記憶し、その後、第2チャンネルCh2を含む測定用回路について不合格判定した場合に、記憶手段を参照してステップS5の判断を行うように構成されてもよい。
さらに、判定装置1は、上述したステップS4およびステップS6を報知するための報知部(図示せず)が設けられてもよい。上述したステップS5で肯定的に判断した場合に有害なスケール幅WのスケールSが検出された旨を識別可能な情報で、例えば音や光で、報知部から報知できる。さらに、上述したステップS3で否定的に判断した場合、報知部からスケールSが検出された旨を識別可能な情報で報知してもよい。
次に、図5,図6を参照して、二端子法によってスケールSの有無を判定可能な所定電流値Iaを調べるために行った試験の結果について説明する。図5は、その試験装置を示すモデル図である。図6は、横軸を電流の試験値Iex、縦軸を電気抵抗の測定値Rexとして試験結果を示す実線で表している線グラフである。その図6に示す実線は、各試験値Iexにおける測定値Rexを示す黒点を通過している。
試験用の厚鋼板2には、厚さ数μm、幅数mmのスケールSが板表面2aに故意に形成されている。図5に示すように、厚鋼板2を停止させた状態で、スケールSに対して一つのチャンネルCh(六本の探針5a〜5f)を接触させている。各探針5a〜5fの長手方向間隔dは5mmである。なお、その厚鋼板2の表面温度は200℃以下である。なお、図5に示す試験モデルは、上述した判定装置1と同様の構成を備えているため、その参照符号を引用して図5に記載してある。
その試験方法として、0.001mA〜1000mAの試験範囲内で、電流源7から流れる試験電流を任意の試験値Iexに設定する。つまり、試験値Iexは、最小値0.001mA(1μA)から最大値1000mA(1A)までの任意の固定値に設定される。そして、電圧計8によって、各試験値Iexに対する測定値Rexを計測する。この場合、試験電流は、第1探針5a,第2探針5b,第3探針5cからスケールSおよび厚鋼板2を介して第4探針5d,第5探針5e,第6探針5fへ流れる。なお、周辺ノイズを受けない電流値として試験Iexの最小値を0.001mAに設定できる。
図6に示すように、試験値Iexが最小値0.001mAの場合、測定値Rexは約1400Ωとなり、最大値となった。試験値Iexが最大値1000mAの場合、測定値Rexは0Ωとなり、最小値となった。また、試験値Iexが100mA付近の場合、その測定値Rexはほぼゼロに等しくなり、試験値Iexが100mAを超えるとゼロになる。
ここで、図6に黒点を結ぶ実線で示すグラフ形状、すなわち試験値Iexの変化に対する測定値Rexの変化について着目する。試験値Iexが増大すると、測定値Rexは減少する。これは、試験値Iexを大きくすると、スケールSの主成分であるマグネタイト(Fe)が還元現象を促進されてしまうことが要因として挙げられる。
さらに、測定値Rexは、試験値Iexの変化に対して一定の変化を示さなかった。詳細には、試験値Iexが最小値0.001mAから0.1mA付近までの範囲では、測定値Rexは約1250〜1400Ωで緩やかに変化する。試験値Iexが0.1mAよりも大きくなると、測定値Rexは、試験値Iexが0.1mA以下の場合に比べて、急激に減少する。これは、試験値Iexが1mA付近になると、スケールSの還元現象が促進されることを予測できる。そして、試験値Iexが100mAを超えると、スケールSが存在しているにもかかわらず測定値Rexはゼロになる。要するに、過大電流をスケールSに通電すると、スケールSが還元されてしまうため、厚鋼板2とスケールSとの電気抵抗差が小さくなり、目的とする電気抵抗値Rの計測が困難になってしまう。
その試験結果から、判定装置1において、所定電流値Iaは、0.001m〜0.1mA(1μ〜100μA)の範囲内に設定できる。この範囲内の所定電流値Iaを電流源7から流せば、板表面2aにスケール残りがある場合に、その電気抵抗値Rが約1200〜1400Ωの範囲内となることが予測できる。つまり、その範囲内の所定電流値Iaとは、酸化物であるスケールSが還元することを抑制可能な電流値である。さらに、図6に示すように、測定値Rexが500Ω付近を超えると、測定値Rexの減少が緩やかになるため、上述した判定用の所定閾値αは、500Ω付近の値に設定できる。
また二端子法は、四端子法に比べてリード線4の本数を削減できるが、探針5と厚鋼板2との間の接触抵抗やリード線4の電気抵抗による影響を受けてしまう。そのため、図6に示す試験結果から、例えば電流源7の通電電流を10μA、かつ不合格判定用の所定閾値αを500Ωに設定すれば、その接触抵抗やリード線抵抗による影響を考慮しなくても、二端子法によってスケールSの有無を精度よく検出可能になる。特に、複数チャンネルによって電気抵抗値Rを測定する場合に、二端子法は四端子法よりもリード線4の本数を削減できるため、判定装置1の構造が複雑化することや大型化することを抑制できる。
以上説明した通り、本実施形態における鋼板のスケール残り判定装置によれば、厚鋼板の表面に生じたスケール残りを、探針式の電気抵抗測定法によって精度よく検出することができる。また、探針式によって厚鋼板の電気抵抗値を測定する際、酸化物であるスケール残りで生じる還元現象を抑制する値の通電電流に制御されるため、スケール残りと厚鋼板との電気抵抗差が縮まることを抑制できる。これにより、厚さ数μm程度のスケール残りが厚鋼板上に存在することをその電気抵抗値に基づいて精度よく判定することが可能になる。
また、探針と厚鋼板とが多点接触している状態で電気抵抗値を計測しているので、仮に一本の探針と厚鋼板の表面との間に異物が存在した場合でも、異物により増大した電気抵抗値により誤判定することを抑制できる。さらに、板表面の所定面積に対して一度の計測で、スケール残りの有無を判定できるとともに、厚鋼板の性能を低下させうる有害なスケール幅を判定することが可能になる。
なお、本発明に係る鋼板のスケール残り判定装置およびスケール残り判定方法は、上述した具体例に限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、本発明では、電気的に結合される探針5の本数が三本に限定されず、二本以上であればいずれの本数であってもよい。
また、本発明では、四端子法により鋼板のスケール残りを判定するように構成されてよい。その四端子法の判定装置1では、複数本の探針5が通電専用として電気的に結合されて電流源7に接続され、かつ複数本の探針5が電圧計測専用として電気的に結合されて電圧計8に接続される。四端子法では、二端子法に比べてリード線4の本数は増加するが、探針5を厚鋼板2との接触抵抗や、リード線4の電気抵抗による影響を受けない。そのため、四端子法に構成された判定装置1によれば、より高精度に電気抵抗値Rを測定することが可能である。
さらに、探針ヘッド6の対向面と板表面2aとが接触せずに、探針5の先端部のみが板表面2aと接触するように構成されてもよい。例えば、各探針5がスプリング機能を有する場合、板表面2aから受ける荷重により探針5が探針ヘッド6の内部側へ移動しきっても、探針5の先端部は対向面から突出したままとなるように構成されてもよい。
加えて、上述した実施形態では、測定装置3と探針ヘッド6とが別体に構成されている例について説明したが、本発明では、探針ヘッド6の内部に測定装置3が内蔵されている一体構造に構成されてもよい。そして、上述した実施形態では処理対象を厚鋼板として説明したが、本発明は処理対象が鋼板であればよく、厚鋼板に限定されず、薄鋼板であってもよい。
1 鋼板のスケール残り判定装置
2 厚鋼板
3 測定装置
5 探針
6 探針ヘッド
S スケール

Claims (10)

  1. 処理対象の鋼板の表面に接触している複数本の探針に、前記鋼板に形成されているスケールが還元することを抑制可能な所定電流値の電流を通電する電流値制御手段と、
    前記探針間の電圧を計測し、かつその計測された電圧と前記所定電流値とを用いて前記鋼板の電気抵抗を計測する電気抵抗算出手段と、
    前記電気抵抗算出手段によって計測された前記鋼板の電気抵抗値が、予め定められた所定閾値よりも大きい場合、前記鋼板にはスケール残りがあるとして不合格判定するスケール残り判定手段と
    を備えていることを特徴とする鋼板のスケール残り判定装置。
  2. 前記複数本の探針は、前記鋼板の長手方向に沿って所定間隔で一列に配置されているチャンネルを形成し、
    前記チャンネルでは、前記長手方向で隣り合う探針同士が電気的に結合されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の鋼板のスケール残り判定装置。
  3. 前記チャンネルは、前記鋼板の幅方向に所定間隔を空けて複数配列されており、
    前記電流値制御手段は、前記チャンネル毎に時分割で前記所定電流値の電流を通電し、
    前記電気抵抗算出手段は、前記電気抵抗値を前記チャンネル毎に計測し、
    前記スケール残り判定手段は、前記電気抵抗値が前記所定閾値よりも大きい場合、前記チャンネル毎に不合格判定する
    ことを特徴とする請求項2に記載の鋼板のスケール残り判定装置。
  4. 前記スケール残り判定手段は、前記幅方向で隣り合う前記二つのチャンネルに対していずれも不合格判定された場合、前記スケールの幅に対して不合格判定する
    ことを特徴とする請求項3に記載の鋼板のスケール残り判定装置。
  5. 前記探針は、前記鋼板の幅方向間隔が、不合格判定とするスケール幅の半分以下に設定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の鋼板のスケール残り判定装置。
  6. 前記所定電流値は、1μ〜100μAの範囲内に含まれる値であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の鋼板のスケール残り判定装置。
  7. 処理対象の鋼板の表面に接触している複数本の探針に、前記鋼板に形成されているスケールが還元することを抑制可能な所定電流値の電流を通電する電流値制御ステップと、
    前記探針間の電圧を計測し、かつその計測された電圧と前記所定電流値とを用いて鋼板の電気抵抗を計測する電気抵抗算出ステップと、
    前記電気抵抗算出ステップによって計測された前記鋼板の電気抵抗値が、予め定められた所定閾値よりも大きい場合、前記鋼板にはスケール残りがあるとして不合格判定するスケール残り判定ステップと
    を含むことを特徴とする鋼板のスケール残り判定方法。
  8. 前記電流値制御ステップは、前記複数本の探針を前記鋼板の長手方向に沿って所定間隔で一列に配置し、かつ長手方向で隣り合う探針同士を電気的に結合しているチャンネルが、前記幅方向に所定間隔を空けて複数配列されている複数チャンネルに対して、チャンネル毎に時分割で前記所定電流値の電流を通電するステップを含み、
    前記電気抵抗算出ステップは、前記電気抵抗値を前記チャンネル毎に計測するステップを含み、
    前記スケール残り判定ステップは、前記電気抵抗値が前記所定閾値よりも大きい場合、前記チャンネル毎に不合格判定するステップを含む
    ことを特徴とする請求項7に記載の鋼板のスケール残り判定方法。
  9. 前記スケール残り判定ステップは、前記幅方向で隣り合う前記二つのチャンネルに対していずれも不合格判定された場合、前記スケールの幅に対して不合格判定するステップを含むことを特徴とする請求項8に記載の鋼板のスケール残り判定方法。
  10. 前記電流値制御ステップは、前記所定電流値を1μ〜100μAの範囲内に含まれる値に制御するステップを含むことを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載の鋼板のスケール残り判定方法。
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