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JP6201680B2 - 導電性酸化亜鉛粉末およびその製造方法 - Google Patents
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JP6201680B2 - 導電性酸化亜鉛粉末およびその製造方法 - Google Patents

導電性酸化亜鉛粉末およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、導電性酸化亜鉛粉末の簡便な製造方法、およびその簡便な製造方法で得られる、体積抵抗率が低く、体積抵抗率の経時劣化が少ない導電性酸化亜鉛粉末に関する。
現在、太陽電池などに用いられる透明電極膜の殆どにはアンチモンが固溶した酸化インジウムが用いられている。しかし、希少金属のインジウムを用いることによる費用の問題とアンチモンを用いることによる人体への影響を考慮し、費用・安全性の観点から、アンチモンが固溶した酸化インジウムに代わる透明電極膜用の材料が探索されてきた。
このような背景から、現在では透明電極膜用の材料として、アルミニウムが固溶した酸化亜鉛が注目されている。酸化亜鉛が、人体に対する危険性が低く、安価で、透明電極膜として好ましいバンドギャップを有することと、アルミニウムが、亜鉛に近いイオン半径を持っているため酸化亜鉛の亜鉛サイトに置換固溶しやすく、また安価であることからである。
透明電極膜は、一般的には、焼結体ターゲットを用いたスパッタリング法による成膜によって形成される。導電性が良好な透明電極膜を得るには、導電性が良好な焼結体ターゲットが必要であり、そのためには、導電性が良好な粉末が必要である。そこで、アルミニウムが固溶した導電性酸化亜鉛粉末の導電性をはじめとする諸特性を向上させる研究が、近年盛んに行われている。
アルミニウムが固溶した導電性酸化亜鉛粉末は、通常、水溶性亜鉛化合物と固溶剤の水溶性の化合物との混合液を水酸化アルカリまたは炭酸アルカリなどの水溶液で中和し共沈析出物を得て、得られた共沈析出物を洗浄、乾燥後、還元雰囲気中で加熱焼成する方法によって製造される。
例えば特許文献1には、次のような、アルミニウムが固溶した導電性酸化亜鉛粉末の製造方法が記載されている。はじめに、酸化亜鉛粉末と、崩壊剤として作用する重炭酸水素アンモニウム粉末とを水溶液中で反応させて塩基性炭酸亜鉛を生成させ、得られた塩基性炭酸亜鉛を熟成することにより結晶成長させる。次に、結晶成長させた塩基性炭酸亜鉛の水分散液と、硫酸アルミニウム水溶液とを混合して熟成し、生成した固形物を濾取する。そして、得られた固形物を乾燥し、仮焼した後に、更に水素雰囲気下で還元焼成し、得られた焼成物を解砕して導電性酸化亜鉛粉末を製造する方法である。
また、特許文献2には、次のような、アルミニウムが固溶した導電性酸化亜鉛粉末の製造方法が記載されている。はじめに、崩壊剤として作用する炭酸ナトリウムの水溶液に、硫酸亜鉛および硫酸アルミニウムの水溶液を徐々に滴下して反応させ、沈殿物を生成させる。次に、生成した沈殿物を洗浄した後、固液分離により沈殿物を分離し、乾燥する。そして、乾燥した沈殿物を粉砕した後、水素ガスおよび水蒸気を含む還元雰囲気中で焼成し、得られた凝集体を粉砕して導電性酸化亜鉛粉末を製造する方法である。
また、特許文献3には、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムまたは塩化アルミニウムを賦活剤(アルミニウム源)に用いた、次のような、アルミニウムが固溶した導電性酸化亜鉛粉末の製造方法が記載されている。はじめに、これらアルミニウム源のいずれかを溶解させた水溶液と、崩壊剤として作用する重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、尿素、または硝酸アンモニウムを溶解させた水溶液とを混合する。得られた混合液を酸化亜鉛の水分散液に投入し、昇温した後、アエロジルを加えて撹拌する。撹拌終了後に濾過・水洗し、乾燥後、還元雰囲気中で加熱処理して、導電性酸化亜鉛粉末を製造する方法である。
特許第4393460号公報 特開2012−62219号公報 特開平1−126228号公報 特許第2707325号公報
Lithium aluminum amide, LiAl(NH2)4 - preparationn, x-ray study, IR spectrum, and thermal decomposition Zeitschrift fuer Anorganische und Allgemeine Chemie (1985), 531, 125-39. Optical investigations on the annealing behavior of gallium‐ and nitrogen-implanted ZnO, JOUNAL of APPLIED PHYSICS, VOLUME 95,NUMBER 7
以上のように、アルミニウムが固溶した導電性酸化亜鉛粉末の製造は、通常、亜鉛塩とアルミニウム塩の溶液を調製する工程、崩壊剤を用いて亜鉛の結晶を崩壊する工程、亜鉛とアルミニウムを含む沈殿物を生成させる工程、得られた沈殿物を洗浄する工程、洗浄後の沈殿物を乾燥する工程、および乾燥後の沈殿物を焼成する工程を必要とする。亜鉛にアルミニウムを固溶しやすくするための崩壊剤を必要とすること、従来のアルミニウム源が酸化亜鉛との反応性が低く、反応を促進するための助剤を必要とすること、アルミニウム源と亜鉛源を均一に混合するため水溶液中での混合が必須で、その後の水洗・乾燥などの工程を必要とすること、焼成の雰囲気に還元性ガスを用いる必要があることなどから、通常、アルミニウムが固溶した酸化亜鉛粉末の製造工程は複雑で、その製造には時間とコストを要している。
また、以上のような従来の製造方法により製造された、アルミニウムが固溶した従来の導電性酸化亜鉛粉末は、そのままでは、室温の大気雰囲気下では体積抵抗率が時間経過と共に大きくなるという特性上の課題も有している。従来のアルミニウムが固溶した導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率が経時変化する原因として考えられるのは酸素欠損である。従来の導電性酸化亜鉛粉末は、還元性ガス雰囲気中で焼成して製造されることに起因して、酸素欠損を持つため、アルミニウムの固溶による導電機構以外に、酸素欠損による導電機構を有する。導電性酸化亜鉛粉末の酸素欠損は、室温であっても大気暴露によって減少しやすいので、従来の導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率は大気雰囲気下で時間経過と共に高くなると考えられる。
このような体積抵抗率の経時劣化を抑制する方法として、特許文献4には、金属の水溶性金属化合物を含有する溶液とアルカリ性水溶液との反応を、反応系のpHが6〜12.5の範囲の所定のpH値になるように両溶液を並行添加して、生成した共沈物を還元雰囲気中で焼成する、アルミニウムが固溶した酸化亜鉛粉末の製造方法が開示されている。この製造方法は、酸化亜鉛へのアルミニウムの固溶割合を大きくできるので、導電性への酸素欠損の影響を相対的に低減させることができ、体積抵抗率の経時劣化の抑制に一定の効果があると考えられる。しかし、原料溶液のpHを厳密に調整しながら混合することが必要で、この製造工程は、複雑なことに加えて、管理が困難な工程となる。
従来、アルミニウムが固溶した酸化亜鉛粉末が、以上のような複雑な工程によって製造されているのは、簡便な方法、例えば、酸化亜鉛と、従来のアルミニウム源とを混合し焼成する方法では、実用的な導電性酸化亜鉛粉末を得ることができないからである。従来のアルミニウム源を用いる以上、このような簡便な方法で得られる導電性酸化亜鉛粉末は、実用に足る低い体積抵抗率を示さないか、あるいは室温の大気雰囲気下でも時間経過に伴う体積抵抗率の上昇が特に顕著になる。酸化亜鉛と従来のアルミニウム源とを混合し焼成するだけの簡便な製造方法では、得られる酸化亜鉛粉末にアルミニウムを固溶させることが困難であることに加えて、特に酸素欠損が生じやすいからと推察される。場合によっては、酸素欠損のみがキャリアーとなって、得られる導電性酸化亜鉛粉末が、製造直後に一時的に低い体積抵抗率を示すこともあるが、大気雰囲気では、時間経過により酸素欠損が徐々に減少し、体積抵抗率が高くなるものと推察される。
そこで本発明は、体積抵抗率が低く、その経時劣化が少ない、アルミニウムが固溶した導電性酸化亜鉛粉末の簡便な製造方法と、その製造方法により得られる、新規な、アルミニウムが固溶した酸化亜鉛粉末を提供することを目的とする。
以上の課題に鑑みて、本発明者らは鋭意検討した結果、アルミニウム源としてイミド基および/またはアミド基を含有するAl−N−H系化合物粉末を用いると、酸化亜鉛粉末とアルミニウムイミド粉末とを混合し、不活性雰囲気中で焼成する簡便な製造方法によっても、すなわち、崩壊剤や複雑な工程を必要としない製造方法によっても、多くのアルミニウムを酸化亜鉛に固溶でき、体積抵抗率が低い導電性酸化亜鉛粉末を製造できることを突き止めた。さらに、この製造方法により得られた、アルミニウムが固溶した酸化亜鉛粉末は、特定の割合の窒素も併せて固溶した、新規な導電性酸化亜鉛粉末であり、体積抵抗率の経時変化が極めて少ないことを突き止め、本発明にいたった。
すなわち本発明は、酸化亜鉛粉末とイミド基および/またはアミド基を含有するAl−N−H系化合物粉末とを混合し、不活性雰囲気中、900〜1200℃の範囲で焼成することを特徴とする導電性酸化亜鉛粉末の製造方法に関する。
また本発明は、前記酸化亜鉛粉末と該酸化亜鉛粉末に対して、アルミニウム換算で0.5mol%〜10mol%の割合の、イミド基および/またはアミド基を含有するAl−N−H系化合物粉末とを混合することを特徴とする前記導電性酸化亜鉛粉末の製造方法に関する。
また本発明は、前記酸化亜鉛粉末と該酸化亜鉛粉末に対して、アルミニウム換算で2mol%〜10mol%の割合の、前記イミド基および/またはアミド基を含有するAl−N−H系化合物粉末とを混合することを特徴とする前記導電性酸化亜鉛粉末の製造方法に関する。
また本発明は、前記イミド基および/またはアミド基を含有するAl−N−H系化合物粉末の炭素不純物濃度が質量基準で2%以下であることを特徴とする前記導電性酸化亜鉛粉末の製造方法に関する。
また本発明は、アルミニウムおよび窒素が固溶していることを特徴とする導電性酸化亜鉛粉末に関する。
また本発明は、アルミニウムが、酸化亜鉛に対して0.01質量%〜1.00質量%の割合で固溶していることを特徴とする前記導電性酸化亜鉛粉末に関する。
また本発明は、窒素が、酸化亜鉛に対して0.02〜0.40質量%の割合で固溶していることを特徴とする前記導電性酸化亜鉛粉末に関する。
また本発明は、アルミニウムが、酸化亜鉛に対して0.3質量%〜1.00質量%の割合で固溶し、窒素が、酸化亜鉛に対して0.1質量%〜0.40質量%の割合で固溶していることを特徴とする前記導電性酸化亜鉛粉末に関する。
また本発明は、比表面積が3.00m/g〜5.00m/gであり、体積抵抗率が100Ω・cm以下であることを特徴とする前記導電性酸化亜鉛粉末に関する。
本発明によれば、体積抵抗率が低く、その経時変化が少ない、実用的な、アルミニウムが固溶した導電性酸化亜鉛粉末の簡便な製造方法を提供することができる。また、その製造方法により得られる、アルミニウムと窒素とが共に固溶した新規な導電性酸化亜鉛粉末を提供することができる。
実施例1〜4の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折図である。 実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトル図である。 実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトル図である。 比較例2で得られた、焼成後の坩堝の固着物のX線回折図である。 比較例3〜6の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折図である。 比較例3の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトル図である。 比較例3の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトル図である。 比較例4の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトル図である。 比較例4の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトル図である。 比較例5の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトル図である。 比較例5の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトル図である。 比較例6の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトル図である。 比較例6の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトル図である。 実施例1、比較例3〜6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトル図である。
はじめに、本発明の導電性酸化亜鉛粉末の製造方法について説明する。
本発明の導電性酸化亜鉛粉末の製造方法は、酸化亜鉛粉末と、イミド基および/またはアミド基を含有するAl−N−H系化合物粉末(以下、Al−N−H系化合物粉末と記す)とを混合し、不活性雰囲気中、900〜1200℃の範囲で焼成する導電性酸化亜鉛粉末の製造方法である。
本発明に用いる酸化亜鉛粉末は特に限定されるものではなく、例えば、亜鉛を溶融させ蒸発させて気相で酸化させるフランス法、亜鉛鉱石を仮焼し還元した後酸化するアメリカ法等の、公知の方法によって製造された酸化亜鉛粉末を使用することができる。特に好ましいのはフランス法により製造された酸化亜鉛粉末を使用することである。フランス法で製造された酸化亜鉛粉末はアメリカ法で製造された酸化亜鉛粉末に比べて、粒径が均一であり、また純度も高いからである。
本発明に用いるAl−N−H系化合物粉末は、Al元素、N元素、H元素からなり、イミド基(−NH)および/またはアミド基(−NH)を含有し、これらの置換基が、アルミニウム原子に一つ以上結合している化合物からなる粉末である。本発明に用いるAl−N−H系化合物粉末は、イミド基および/またはアミド基を含有していれば、これら以外の基を含有していても良い。例えば、イミド基のみを持つAl(NH)、アミド基のみをもつAl(NH)に加えて、Al(C)(NH)のような化合物であっても良い。また、イミド基とアミド基のいずれもがアルミニウム原子に一つ以上結合していれば、イミド基とアミド基とを共に含有する化合物でも良い。
本発明に用いるAl−N−H系化合物粉末として特に好ましいのは、密閉した反応容器中において、トリエチルアルミニウム(Al(C)ヘキサン(C14)溶液とアンモニアとを、デカン(C1022)溶媒で反応させた後、デカンを留去することにより得られるAl−N−CH系化合物粉末を、アンモニア流通下で加熱して得られる、イミド基を含有するAl−N−H系化合物粉末である。ここで、Al−N−CH系化合物粉末とは、アルミニウム原子に結合した一つ以上のイミド基、および、アルミニウム原子に結合した一つ以上のエチル基を含有する化合物の粉末である。この方法によって得られるAl−N−H系化合物粉末は、炭素不純物、金属不純物、酸素不純物の混入量が少ないので、アルミニウム源として用いることで、高純度な導電性酸化亜鉛粉末が得られる。このような導電性酸化亜鉛粉末を用いれば、高純度なターゲット焼結体が得られるので、特に透明性の良好な透明電極膜を形成することができる。
本発明において、酸化亜鉛粉末とAl−N−H系化合物粉末との混合割合は、酸化亜鉛粉末に対して、Al−N−H系化合物粉末の割合がアルミニウム換算で0.5mol%〜10mol%であることが好ましい。酸化亜鉛粉末に対するAl−N−H系化合物粉末の割合がアルミニウム換算で0.5mol%以上の場合は、酸化亜鉛に対するアルミニウムの固溶割合を大きくでき、得られる導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率がより低くなる。また、酸化亜鉛粉末に対するAl−N−H系化合物粉末の割合が10mol%以下の場合は、例えば、一般式:ZnAlで表される化合物のような導電性の低い化合物が生成しにくいので、得られる導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率が低くなりやすい。酸化亜鉛粉末とAl−N−H系化合物粉末との混合割合は、Al−N−H系化合物粉末の割合がアルミニウム換算で2mol%〜10mol%であることがさらに好ましく、6mol%〜10mol%であることが特に好ましい。酸化亜鉛粉末とAl−N−H系化合物粉末との混合割合が、Al−N−H系化合物粉末の割合がアルミニウム換算で6mol%〜10mol%の範囲である場合は、特に体積抵抗率が低く、特に体積抵抗率の経時変化が少ない導電性酸化亜鉛粉末を得ることができる。
Al−N−H系化合物粉末の炭素不純物濃度は、質量基準で2%以下であることが好ましい。Al−N−H系化合物粉末の炭素不純物濃度が質量基準で2%以下であれば、炭素不純物濃度が特に低い導電性酸化亜鉛粉末が得られる。このような導電性酸化亜鉛粉末を用いれば、炭素不純物濃度が特に低いターゲット焼結体が得られるので、特に透明性の良好な透明電極膜を形成することができる。
上述の酸化亜鉛粉末と、上述のAl−N−H系化合物粉末とを、不活性雰囲気中において所望の質量を量り取り混合する。混合の方法は特に限定されるものではないが、好ましくは、ポット内を窒素で置換したミキサーミル、振動ミル等の乾式のミルにより、窒素雰囲気中で混合する方法である。
以上の方法で混合して得られた混合粉末を不活性雰囲気中、900℃〜1200℃の範囲で焼成することにより、本発明の導電性酸化亜鉛粉末を得る。混合粉末中のAl−N−H系化合物粉末の酸化を抑制するために、混合粉末を不活性雰囲気中、好ましくは窒素雰囲気中で焼成する。焼成炉としては、不活性雰囲気中での焼成が可能な抵抗加熱式の電気炉、誘導加熱式の電気炉等を用いることができ、通常は窒化ホウ素坩堝に収容した混合粉末を、これらの電気炉を用いて不活性雰囲気中、好ましくは窒素雰囲気中で焼成する。焼成温度が900℃よりも低いと、焼成後の酸化亜鉛粉末にアルミニウムが殆ど固溶しないため、得られる導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率は高くなる。また、焼成温度は1200℃より高くできない。1200℃より高い温度で、酸化亜鉛およびAl−N−H系化合物のいずれとも反応せず、いずれをも変質させない坩堝がないからである。1200℃より高い温度では、窒化ホウ素坩堝は酸化亜鉛と反応し、炭素坩堝は酸化亜鉛を還元して亜鉛に変え、他の酸化物製の坩堝や高融点金属製の坩堝は、Al−N−H系化合物と反応する。
アルミニウム源として、Al−N−H系化合物粉末を用いると、重炭酸水素アンモニウムに代表されるような崩壊剤を用いなくても、酸化亜鉛粉末とAl−N−H系化合物粉末とを混合して、不活性雰囲気中、900〜1200℃の範囲で焼成するだけの方法によって、酸化亜鉛粉末に、実用的な体積抵抗率を発現できる割合のアルミニウムを固溶させることができる。つまり、崩壊剤を酸化亜鉛に反応させるための、溶液中での撹拌、濾過、乾燥などの処理を行わなくても、原料粉末を混合して焼成するだけの方法によって、酸化亜鉛粉末に、実用的な体積抵抗率を発現できる割合のアルミニウムを固溶させることができる。このような簡便な方法で、酸化亜鉛粉末にアルミニウム固溶させることができるのは、焼成時の高温下で、Al−N−H系化合物粉末からイミド基またはアミド基が脱離する際に発生するアンモニアによって、気相中であっても酸化亜鉛の構造が崩壊し、それと同時に、イミド基またはアミド基の脱離によって生じたアルミニウムが、その崩壊した部位へ供給されることにより、酸化亜鉛粉末へのアルミニウムの固溶が促進されているからと考えられる。
また、酸化亜鉛粉末とAl−N−H系化合物粉末とからなる混合粉末を、不活性雰囲気中、900〜1200℃の範囲で焼成すると、アルミニウムと窒素とが共に固溶した、新規な導電性酸化亜鉛粉末を得ることができる。
酸化亜鉛粉末とAl−N−H系化合物粉末とからなる混合粉末を、不活性雰囲気中、900〜1200℃の範囲で焼成すると、酸化亜鉛に、アルミニウムと窒素がともに固溶するのは、焼成時の高温下で、Al−N−H系化合物粉末からイミド基またはアミド基が脱離する際に発生するアンモニアによって酸化亜鉛の構造が崩壊した際に、そのアンモニアから脱離した窒素が、構造が崩壊した酸化亜鉛にアルミニウムとともに供給され、酸化亜鉛にアルミニウムと窒素が同時に固溶する、本発明特有の反応が起こるためと考えられるが、そのメカニズムは明らかではない。
次に、上述した本発明の製造方法で得られる本発明の導電性酸化亜鉛粉末について説明する。
本発明の導電性酸化亜鉛粉末は、アルミニウムおよび窒素が固溶していることを特徴とする、体積抵抗率の経時変化が極めて少ない新規な導電性酸化亜鉛粉末である。そして、酸化亜鉛にアルミニウムだけでなく窒素が固溶していることが、本発明の導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率が殆ど経時変化しない理由であると推察される。酸化亜鉛は還元されやすい酸化物であり、焼成時の雰囲気が不活性雰囲気であっても、還元性雰囲気ほどではないものの、焼成時に、酸化亜鉛からは多少の酸素の脱離が生じると考えられる。しかし、本発明においては、焼成時に、酸素の脱離により生じた格子空孔に窒素が固溶して、見かけ上酸素欠損が殆どない、すなわち格子空孔が殆どない酸化亜鉛が得られると推察される。
また、酸化亜鉛にn型のドーパントであるアルミニウムと、p型のドーパントである窒素が同時に固溶していることが、本発明の導電性酸化亜鉛粉末の結晶構造の安定性を高め、さらに、本発明の導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率の経時変化を抑制していると推察される。本発明の導電性酸化亜鉛粉末においては、n型ドーパントのアルミニウムイオンとp型ドーパントの窒素イオンとが共に固溶していることにより、双方のイオンのクーロン引力によって静電的相互作用利得が得られ、格子エネルギーの増大が抑制されて、結晶構造の安定性が高くなっていると考えられる。これによって、ドーパントの化学状態などの僅かな変化も抑制され、本発明の導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率は、殆ど経時変化しないものと推察される。
本発明の導電性酸化亜鉛粉末において、アルミニウムは、酸化亜鉛に対して0.01質量%〜1.00質量%の割合で固溶していることが好ましい。アルミニウムの酸化亜鉛に対する固溶割合がこの範囲であれば、体積抵抗率が100Ω・cm以下の導電性酸化亜鉛粉末を得ることができる。
本発明の導電性酸化亜鉛粉末において、窒素は、酸化亜鉛に対して0.02質量%〜0.40質量%の割合で固溶していることが好ましい。窒素の酸化亜鉛に対する固溶割合がこの範囲であれば、導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率が大きくならず、体積抵抗率の経時変化(体積抵抗率が時間経過と共に大きくなること)を抑制することができる。さらには、アルミニウムが、酸化亜鉛に対して0.3質量%〜1.00質量%の割合で固溶し、窒素が酸化亜鉛に対して0.1質量%〜0.40質量%の割合で固溶していることが好ましい。
また本発明の導電性酸化亜鉛粉末は、比表面積が3.00m/g〜5.00m/gであり、体積抵抗率が100Ω・cm以下であることが好ましい。比表面積が3.00m/gより小さいと成型が難しくなり、透明導電膜の成膜に用いる際の焼結体ターゲットの作製が困難になる。また、比表面積が5.00m/gより大きいと、体積抵抗率が目的とする100Ω・cm以下にならない場合があるからである。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
(導電性酸化亜鉛粉末の比表面積の測定方法)
本発明の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は、粉末をガラス製のセルに充填して、島津-マイクロメリティックス製フローソーブIII2310装置により測定した。
(導電性酸化亜鉛粉末におけるアルミニウムの固溶割合の測定方法)
本発明の導電性酸化亜鉛粉末におけるアルミニウムの固溶割合は、以下に説明する方法によって測定した。
本発明の導電性酸化亜鉛粉末に固溶しているアルミニウムの割合は、アルミニウムの固体NMR分析(固体核磁気共鳴分光分析)により得られた導電性酸化亜鉛粉末中の全アルミニウムに対する酸化亜鉛に固溶したアルミニウムの割合と、ICP−AES(誘導結合プラズマを利用した発光分析)により得られた、導電性酸化亜鉛粉末中のアルミニウムの含有割合とを乗じることにより算出した。以下、具体的に説明する。
本発明の導電性酸化亜鉛粉末および比較例の酸化亜鉛粉末を、硝酸、フッ化水素酸、硫酸で加熱溶解し、得られた溶液を、エスアイアイ・ナノテクノロジー製SPS5100型のICP発光分析装置を用いたICP発光分析に供して、導電性酸化亜鉛粉末中の全アルミニウムの含有割合を測定した。また、本発明の導電性酸化亜鉛粉末および比較例の酸化亜鉛粉末を、日本電子製JNM−ECA400型FT−NMR装置を用いた固体NMR分析に供して、得られたNMRスペクトルにおける、アルミニウムに由来する全てのピークの面積に対する、酸化亜鉛に固溶したアルミニウムに由来するピークの面積の割合から、(導電性)酸化亜鉛粉末中の全アルミニウムに対する、酸化亜鉛に固溶したアルミニウムの割合を求めた。
以上のようにして得られた導電性酸化亜鉛粉末中のアルミニウム含有割合と、導電性酸化亜鉛粉末中の全アルミニウムに対する酸化亜鉛に固溶したアルミニウムの割合とを乗じることにより、本発明の導電性酸化亜鉛粉末および比較例の酸化亜鉛粉末に固溶しているアルミニウムの割合を算出した。
(導電性酸化亜鉛粉末における窒素の固溶割合の測定方法)
本発明の導電性酸化亜鉛粉末における窒素の固溶割合は、以下に説明する方法によって測定した。
はじめに、日本分光株式会社製レーザーラマン分光装置を用いたラマン分光分析により得られた本発明の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルに、酸化亜鉛への窒素の固溶に由来するピークが存在することを確認した。次いで、本発明の導電性酸化亜鉛粉末を黒鉛坩堝に投入して、LECO社製酸素・窒素・水素分析装置TCH600を用いて加熱し融解し、融解した試料から発生した窒素を前記分析装置に備わる熱伝導度検出器によって定量することで、本発明の導電性酸化亜鉛粉末の窒素含有割合を測定した。また、上述の(導電性酸化亜鉛粉末におけるアルミニウムの固溶割合の測定方法)にて説明した、固体NMR分析により得られたNMRスペクトルに、窒化アルミニウムの生成を示す、4配位の窒素に由来する100ppm周辺のピークが存在しないことを全ての実施例において確認した。以上により、TCH600により検出された窒素の全てが、本発明の導電性酸化亜鉛粉末に固溶している窒素に由来することが確認されたので、TCH600により測定された窒素含有量を、窒素の固溶割合として確定した。
(導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率の測定方法)
本発明の導電性酸化亜鉛粉末を、断面積がπcmのテフロン(登録商標)製の内径20mmの円筒形の型に充填して、10MPaの圧力を加えて、円板状の圧粉体に成形した。得られた圧粉体について、市販のマルチメーターを用いて室温で体積抵抗率を測定し、その値を本発明の導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率とした。製造直後の各導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率を測定する場合は、製造時の雰囲気が保たれた高周波誘導炉から取り出して24時間経過する前に各導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率の測定を行った。
(導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率の経時変化の評価方法)
製造直後の導電性酸化亜鉛粉末4gを、温度25℃、湿度50%の大気雰囲気下で、容量10gのポリエチレン製の袋(チャック付)に収容し、チャックを閉めた状態で、温度25℃、湿度50%を保持した大気雰囲気下で保存した。製造直後より30日経過後および210日経過後に、(導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率の測定方法)で説明した方法と同様の方法で導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率を測定し、製造直後の体積抵抗率と比較した。
(製造例)
本発明に係るAl−N−H系化合物粉末としては、以下の方法にて製造したAl(NH)粉末を用いた。
容量1000mLのガラス製三口フラスコに、ガス導入用三方コック、温度計用さや管、留分を受ける、容量500mLの二つ口ナスフラスコと組み合わせた分留管を設置した。これらの器具は130℃のオーブンで事前に充分乾燥し、更に組み立てた後に真空下でホットブラスターにより加熱して、内壁表面に付着した水分を除去した。こうして乾燥し、内部をNガス雰囲気に保持して密閉した装置を同じくN雰囲気のグローブボックスに入れた。グローブボックス出口ガスの酸素濃度と露点を測定し、酸素と水分が少ない雰囲気であることを確認した後、200mLのトリエチルアルミニウムへキサン溶液(和光純薬製、トリエチルアルミニウム濃度:1mol/L)を前記の容量1000mLのガラス製三口フラスコに導入した。次いでデカン(水分10ppm以下)200mLを導入し、充分に混合した後、ガラス装置全体を密閉状態に保持してグローブボックスから取り出した。
容量1000mLのガラス製三口フラスコをオイルバスによって加熱しながら、内部のトリエチルアルミニウム溶液中にアンモニアガスをバブリングした。アンモニアガス供給の流量は100mL/分(25℃、常圧)であり、内部液はマグネチックスターラーで攪拌した。まず、オイルバス温度を120℃に保ち、反応混合物中のヘキサンを留去して、分留管に接続した、容量500mLの二つ口ナスフラスコに受けた。ヘキサンの留去が終了した後、オイルバス温度を180℃に上げると、白色沈殿が析出し始め、反応の進行が確認された。こうしてアンモニアガスを継続して供給しながらオイルバス温度180℃(フラスコ内のスラリー液温度170℃)で4時間反応を行った。
次にオイルバス温度を200℃に上げ、生成した白色沈殿を含有するスラリーからデカンを留去した。デカンの留去操作においても、アンモニアガスは継続して供給した。次いでアンモニアガスの供給を止め、装置全体を密閉状態としてグローブボックスに入れ、主として(C)Al(NH)からなる白色固体15.16gを回収した。白色固体中のAl量は、CyDTA-亜鉛逆滴定法(JIS R1675:2007準拠)により37.8質量%と分析され、N量は、直接分解−水蒸気蒸留−中和滴定法(JIS R1675:2007準拠)により19.9質量%と分析された。またこの白色固体を少量採取し、水/プロパノール混合液によって加水分解させた。発生したガスを捕集してガスクロマトグラフィーによって分析し、絶対検量線法により定量したところ、白色固体1gあたり12.4mmolのエタンが検出され、白色固体中のエチル基とAlのモル比はエチル基/Al=0.89(モル/モル)と計算された。これらの値は、前記組成式(C)Al(NH)における理論値(Al:38.0質量%、N:19.7質量%、エチル基/Al=1)とよく一致している。一方、白色固体中のIRスペクトルの測定から、3263cm−1と1554cm−1にN−H結合に帰属されるピークが検出された。また、本固体の1H−NMR測定を日本電子製ECA−400型により行ったところ、δ0.72ppmの位置に頂点を持つブロードなシグナルが観察された(外部基準物質:トリメチルシリルプロパン酸塩重水溶液)。これらはエチル基及びイミド基上のHに由来すると考えられる。
グローブボックス内にて、上記で合成した白色固体6.17gを両末端に三方コックを設置した内径17mmのU字型ガラス管に充填した。この三方コック及びガラス管は、前記の有機アルミニウム化合物溶液とアンモニアの反応に用いたガラス器具と同様の方法で乾燥したものである。このガラス管にヒーターを取り付け、アンモニアガスを片方のコックから供給し、もう片方のコックから排出させながら白色固体充填層を加熱した。この時のアンモニアガス供給の流量は100mL/分(25℃、常圧)、ヒーター温度は240℃であり、供給アンモニアの空塔速度は1.3cm/sである。6時間後に加熱を終了し、グローブボックス内にてAl(NH)からなる白色固体を回収した。収量は4.26gであり、処理前後での質量変化率は69.0%で、下記の反応式、式(1)に基づく固形成分の質量変化率の理論値69.7%と良い一致を示した。
2(C)Al(NH)+NH→Al(NH)+2C (1)
CyDTA-亜鉛逆滴定法によって求めたAl濃度は55.8質量%であった(組成式Al(NH)での計算値:54.5質量%)。また、IRスペクトルの測定から、3227cm−1と1539cm−1にN−H結合に帰属されるピークが検出された。この白色固体を少量採取し、水/プロパノール混合液によって加水分解させ、発生したガスを捕集してガスクロマトグラフィーによって分析したところ、検出されるエタン量は白色固体1gあたり0.52mmolと僅かであった。これらの結果から、白色固体中のエチル基とAlのモル比はエチル基/Al=0.03(モル/モル)であり、白色固体中の炭素不純物濃度は1.2質量%と算出された。また、不純物酸素量をLECO社製TCH−600型酸素・窒素・水素分析装置を用いて赤外線吸収法により分析すると1.4質量%であった。蛍光X線分析により金属不純物を調べたところ、金属成分中のAl濃度は99.7質量%であり、実質的に金属不純物は存在しなかった。島津-マイクロメリティックス製フローソーブIII2310を使用し、BET1点法で比表面積を測定したところ、868m/gであった。また、本固体の1H−NMR測定を日本電子製ECA−400型により行ったところ、δ0.97ppmの位置に頂点を持つブロードなシグナルが観察された(外部基準物質:トリメチルシリルプロパン酸塩重水溶液)。これはイミド基上のHに由来すると考えられる。
本生成物0.4708gをBN製るつぼに入れ、Nガス雰囲気下1600℃で2時間焼成すると0.3915gの粉末が得られた。XRD分析ではこの粉末はAlNと同定され、これ以外の結晶相は観測されなかった。元素分析結果も次の通りAlNと良い一致を示した;Al(CyDTA-亜鉛逆滴定法により測定):65.0質量%(計算値65.9質量%)、N(LECO社製TCH−600型酸素・窒素・水素分析装置を用いて電気伝導度法により測定):33.8質量%(計算値34.1質量%)。また、使用した原料に対する焼成後に回収した生成物の質量比率は83.2%であった。これは、下記の反応式、式(2)が定量的に進行していることを支持するものであり、焼成前の白色固体が組成式Al(NH)で表されることが確認できた。
Al(NH) → 2AlN + NH (2)
(実施例1)
アルミニウム源として(製造例)で得られたAl(NH)粉末5molと、酸化亜鉛粉末(関東化学株式会社製NanoTek(登録商標))90molとを原料粉末として用い、次のように実施例1の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。原料粉末の和が4gになるように原料粉末を秤量し、窒素雰囲気のグローブボックス内でナイロンボールと共にステンレスポット中に収容して、ポット内の窒素雰囲気が保たれるようにステンレスポットを密閉した。このステンレスポットを、Retsch製のミキサーミルを用いて、15Hzの振動数で、30分間振動して、原料粉末を混合した。窒素雰囲気のグローブボックス内で、ステンレスポットを開封し、得られた混合粉末をステンレスポットから取り出して、窒化ホウ素坩堝に収容した。さらに、その窒化ホウ素坩堝を黒鉛坩堝に収容して、高周波誘導炉を用いて、窒素雰囲気下で、1000℃/時間の昇温速度で室温から1000℃まで加熱し、1000℃で10分保持して、混合粉末を焼成した。焼成後の粉末を、アルミナ乳鉢とアルミナ乳棒を用いて解砕し、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末を得た。
得られた実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を図1に示す。図1からは、酸化亜鉛に由来する回折ピークが観察され、得られた粉末が酸化亜鉛からなることが確認された。
次に、上述の(導電性酸化亜鉛粉末におけるアルミニウムの固溶割合の測定方法)で説明した方法により、得られた導電性酸化亜鉛粉末のアルミニウムの固溶割合を測定した。はじめに、固体NMR分析により、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルを得た。得られた実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルを図2に示す。図2からは、酸化亜鉛へのアルミニウムの固溶を示す、200ppm周辺にピークを持つNMRスペクトルが観察され、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の酸化亜鉛にはアルミニウムが固溶していることが確認された。また、得られたNMRスペクトルから、アルミニウムに由来する全てのピークの面積に対する、酸化亜鉛に固溶したアルミニウムに由来するピークの面積の割合を計算し、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末中の全アルミニウムに対する、酸化亜鉛に固溶したアルミニウムの割合を、28.29%と算出した。次いで、ICP発光分析により、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末中の全アルミニウムの含有割合を測定した。ICP発光分析により得られた、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末中の全アルミニウムの含有割合3.5質量%に、NMRスペクトルにより得られた、全アルミニウムに対する、酸化亜鉛に固溶したアルミニウムの割合28.29%を乗じて、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のアルミニウムの固溶割合を算出した。その結果は、表1に示す通り、0.990質量%であった。
また、(導電性酸化亜鉛粉末における窒素の固溶割合の測定方法)で説明した方法により、得られた導電性酸化亜鉛粉末の窒素の固溶割合を測定した。はじめに、ラマン分光分析により、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルを得た。得られた実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルを図3に示す。図3からは、酸化亜鉛への窒素の固溶に由来する275cm−1、508cm−1、579cm−1、642cm−1付近のピーク(非特許文献1、2参照)が存在することが確認された。次いで、酸素・窒素・水素分析装置を用いて、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末中の窒素の含有割合を測定した。また、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のアルミニウムの固溶割合の測定に用いたNMRスペクトルに、窒化アルミニウムの生成を示す100ppm付近のピークが存在しないことを確認した。実施例1の導電性酸化亜鉛粉末中の窒素は、酸化亜鉛に固溶するか、窒化アルミニウムを形成する以外には存在しえないことから、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末においては、酸化亜鉛に固溶した以外の窒素は存在しないと断定し、酸素・窒素・水素分析装置を用いて得られた、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末中の窒素の含有割合0.314質量%を、表1に示す通り、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の窒素の固溶割合とした。
実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積を、島津製作所製フローソーブ2310を用いて測定した。その結果は、表1に示す通り、4.73m/gであった。
次に、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末2gを、テフロン(登録商標)製の内径20mmの円筒に充填して10MPaの圧力で加圧成形し、得られた圧粉体の体積抵抗率を、室温で、東陽テクニカ社製「体積抵抗率測定装置」を用いて測定した。製造直後の実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の、室温における体積抵抗率は、表1に示す通り、10.6Ω・cmであった。さらに実施例1の導電性酸化亜鉛粉末を、上述の(導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率の経時変化の評価方法)で説明した方法により保存し、製造後30日経過させた。30日経過後の実施例1の導電性酸化亜鉛粉末についても、製造直後と同様の方法で体積抵抗率を測定した。30日経過後の実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率は、表1に示す通り、12.7Ω・cmであり、体積抵抗率の経時変化は殆どないことが確認された。
また、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末を製造直後から30日経過させた方法と同様にして、製造直後から210日経過させ、製造直後の体積抵抗率の測定と同様の方法で、210日経過後の実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率を測定した。210日経過後の実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率は、表1に示す通り、15.4Ω・cmであり、210日経過後でも、体積抵抗率の経時変化は殆どないことが確認された。
また、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定し、格子空孔(酸素欠損)の有無を調べた。酸化亜鉛に格子空孔(酸素欠損)があれば、それに起因して格子空孔(酸素欠損)が埋まるまでの間は一時的に導電性を示すことがわかっているので、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末が低い体積抵抗率を示すことが、アルミニウムの固溶に起因することを確認するためである。一般的に、酸化亜鉛中に格子空孔(酸素欠損)があれば、蛍光スペクトルの500nm付近にピークが現れることが知られている。日本分光株式会社製の蛍光分光光度計FP−6500を用いて、それに付帯する積分球内で、石英ガラス製の受光部を持つ粉末試料用ホルダに収容した実施例1の導電性酸化亜鉛粉末に320nmの光を照射し、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定した。その結果を、比較例3、4、5、6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルと併せて図14に示す。比較例3、4、5、6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには500nm付近にピークが観察されたが、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、500nm付近のピークが観察されなかった。実施例1の導電性酸化亜鉛粉末には格子空孔(酸素欠損)が殆どないことがわかり、その低い体積抵抗率は、酸化亜鉛にアルミニウムが固溶していることに起因していることが確認された。
(実施例2)
原料粉末を、Al(NH)粉末1mol、および酸化亜鉛粉末98molとしたこと以外は実施例1と同様の方法によって、実施例2の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。得られた実施例2の導電性酸化亜鉛粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折分析、比表面積の測定、アルミニウムの固溶割合の測定、および窒素の固溶割合の測定と製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率の測定を行った。得られた実施例2の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を図1に示す。X線回折分析の結果からは、図1に示す通り、酸化亜鉛に起因する回折ピークが観察され、得られた粉末が酸化亜鉛からなることがわかった。また、実施例2の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積、アルミニウムの固溶割合、窒素の固溶割合と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率を表1に示す。実施例2の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は、3.76m/g、アルミニウムの固溶割合は0.143質量%、窒素の固溶割合は0.030質量%であった。また、その体積抵抗率は、製造直後で54.9Ω・cm、30日経過後で65.4Ω・cm、210日経過後で84.8Ω・cmと、若干の経時変化はあるものの、210日経過後でも100Ω・cm以下の低い値に留まった。
(実施例3)
原料粉末を、Al(NH)粉末3mol、および酸化亜鉛粉末94molとしたこと以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例3の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。得られた実施例3の導電性酸化亜鉛粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折分析、比表面積の測定、アルミニウムの固溶割合の測定、および窒素の固溶割合の測定と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率の測定を行った。得られた実施例3の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を図1に示す。X線回折分析の結果からは、図1に示す通り、酸化亜鉛に由来する回折ピークが観察され、得られた粉末が酸化亜鉛からなることがわかった。また、実施例3の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積、アルミニウムの固溶割合、窒素の固溶割合と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率を表1に示す。実施例3の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は、3.48m/g、アルミニウムの固溶割合は0.331質量%、窒素の固溶割合は0.130質量%であった。また、その体積抵抗率は、製造直後で17.7Ω・cm、30日経過後で17.3Ω・cm、210日経過後で14.0Ω・cmと、特に低い体積抵抗率を示し、210日経過後でも、その経時変化は殆どないことが確認された。
(実施例4)
混合粉末の焼成温度(焼成時の最高温度)を1100℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例4の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。得られた実施例4の導電性酸化亜鉛粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折分析、比表面積の測定、アルミニウムの固溶割合の測定、および窒素の固溶割合の測定と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率の測定を行った。得られた実施例4の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を図1に示す。X線回折分析の結果からは、図1に示す通り、酸化亜鉛に由来する回折ピークが観察され、得られた粉末が、酸化亜鉛からなることがわかった。実施例4の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積、アルミニウムの固溶割合、窒素の固溶割合と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率を表1に示す。実施例4の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は、3.80m/g、アルミニウムの固溶割合は0.408質量%、窒素の固溶割合は0.174質量%であった。また、その体積抵抗率は、製造直後で45.9Ω・cm、30日経過後で41.8Ω・cm、210日経過後で41.5Ω・cmと、100Ω・cm以下の低い体積抵抗率を示し、210日経過後でも、その経時変化は殆どないことが確認された。
(比較例1)
混合粉末の焼成温度を800℃としたこと以外は実施例1と同様の方法によって、比較例1の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。得られた比較例1の導電性酸化亜鉛粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折分析、比表面積の測定、アルミニウムの固溶割合の測定、および窒素の固溶割合の測定と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率の測定を行った。得られた比較例1の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を図4に示す。X線回折分析の結果からは、図4に示す通り、酸化亜鉛に由来する回折ピークが観察され、得られた粉末が酸化亜鉛からなることがわかった。比較例1の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積、アルミニウムの固溶割合、窒素の固溶割合と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率を表1に示す。比較例1の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は、7.37m/g、アルミニウムの固溶割合は0質量%、窒素の固溶割合は1.21質量%であった。また、その体積抵抗率は、製造直後、30日経過後および210日経過後のいずれにおいても、測定装置の測定限界(1×10Ω・cm)を上回るほど高かった。
(比較例2)
混合粉末の焼成温度を1300℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法によって混合粉末を焼成した。焼成後の比較例2の試料は窒化ホウ素坩堝と反応してガラス化し、窒化ホウ素坩堝の底に固着していた。この固着物を解砕し、X線回折分析を行った。得られた比較例2の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を図4に示す。図4に示すように、酸化亜鉛に由来する回折ピークは観察されず、焼成温度を1300℃とした比較例2では酸化亜鉛粉末が得られなかった。
(比較例3)
アルミニウム源を硫酸アルミニウム(Al(SO)粉末とし、原料粉末を、硫酸アルミニウム粉末5mol、酸化亜鉛粉末90molとしたこと以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例3の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。得られた比較例3の導電性酸化亜鉛粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折分析、比表面積の測定、アルミニウムの固溶割合の測定、および窒素の固溶割合の測定と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率の測定を行った。得られた比較例3の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を図5に示す。X線回折分析の結果からは、図5に示す通り、酸化亜鉛に由来する回折ピークが観察された。図6に、得られた比較例3の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルを示す。比較例3の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルには、酸化亜鉛へのアルミニウムの固溶を示す200ppm周辺にピークが観察されるが、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルのそれと比較すると非常に小さなピークであった。図7に、比較例3の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルを示す。比較例3の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルには実施例1のような窒素の固溶ピークが観察されなかった。
比較例3の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積、アルミニウムの固溶割合、窒素の固溶割合と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率を表1に示す。比較例3の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は2.70m/g、アルミニウムの固溶割合は0.015質量%、窒素の固溶割合は0質量%であった。また、その体積抵抗率は、製造直後では37.9Ω・cmと低かったが、30日経過後では189.1Ω・cm、210日経過後では測定装置の測定限界(1×10Ω・cm)を上回るほど高くなり、著しく経時変化することが確認された。比較例3の導電性酸化亜鉛粉末は、実用的な導電性酸化亜鉛粉末ではないことが分かった。
また、比較例3の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定し、格子空孔(酸素欠損)の有無を調べた。実施例1と同様の方法で比較例3の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定した。その結果を、実施例1、比較例4、5、6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルと併せて図14に示す。実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、500nm付近にピークが観察されないのに対して、比較例3の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、他の比較例と同様に500nm付近にピークが観察された。比較例3の導電性酸化亜鉛粉末が、製造直後に、低い体積抵抗率を持ち、導電性を示し、その経時変化が著しいのは、比較例3の導電性酸化亜鉛粉末の導電性が、格子空孔(酸素欠損)に起因することによるからと推察される。
(比較例4)
アルミニウム源を硝酸アルミニウム(Al(NO)粉末とし、原料粉末を、硝酸アルミニウム粉末10mol、酸化亜鉛粉末90molとしたこと以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例4の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。得られた比較例4の導電性酸化亜鉛粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折分析、比表面積の測定、アルミニウムの固溶割合の測定、および窒素の固溶割合の測定と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率の測定を行った。得られた比較例4の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を図5に示す。X線回折分析の結果からは、図5に示す通り、酸化亜鉛に由来する回折ピークが観察された。図8に、比較例4の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルを示す。比較例4の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルには、酸化亜鉛へのアルミニウムの固溶を示す200ppm周辺のピークは観察されなかった。図9に、比較例4の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルを示す。比較例4の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルには窒素の固溶に由来するピークは観察されなかった。比較例4の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積、アルミニウムの固溶割合、窒素の固溶割合と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率を表1に示す。比較例4の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は1.97m/g、アルミニウムの固溶割合は0質量%、窒素の固溶割合は0.021質量%であった。また、その体積抵抗率は、製造直後でも200.7Ω・cmと高く、30日経過後では423.3Ω・cmとさらに高くなり、また210日経過後では測定装置の測定限界(1×10Ω・cm)を上回るほど高くなり、著しく経時変化することが確認された。
また、比較例4の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定し、格子空孔(酸素欠損)の有無を調べた。実施例1と同様の方法で比較例3の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定した。その結果を、実施例1、比較例3、5、6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルと併せて図14に示す。実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、500nm付近にピークが観察されないのに対して、比較例4の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、他の比較例と同様に500nm付近にピークが観察された。比較例4の導電性酸化亜鉛粉末が、製造直後に、体積抵抗率が高いものの導電性を示し、その経時変化が著しいのは、比較例4の導電性酸化亜鉛粉末の導電性が、格子空孔(酸素欠損)に起因することによるからと推察される。
(比較例5)
アルミニウム源を塩化アルミニウム(AlCl)粉末とし、原料粉末を、塩化アルミニウム粉末10mol、酸化亜鉛粉末90molとしたこと以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例5の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。得られた比較例5の導電性酸化亜鉛粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折分析、比表面積の測定、アルミニウムの固溶割合の測定、および窒素の固溶割合の測定と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率の測定を行った。得られた比較例5の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を図5に示す。X線回折分析の結果からは、図5に示す通り、酸化亜鉛に由来する回折ピークが観察された。図10に、比較例5の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルを示す。比較例5の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルには、酸化亜鉛へのアルミニウムの固溶を示す200ppm周辺のピークは観察されなかった。図11に、比較例5の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルを示す。比較例5の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルには、窒素の固溶に由来するピークは観察されなかった。比較例5の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積、アルミニウムの固溶割合、および窒素の固溶割合と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率を表1に示す。比較例5の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は2.32m/g、アルミニウムの固溶割合は0質量%、窒素の固溶割合も0質量%であった。また、その体積抵抗率は、製造直後では94.1Ω・cmと低かったが、30日経過後では191.0Ω・cmと高くなり、210日経過後では測定装置の測定限界(1×10Ω・cm)を上回るほど高くなって、経時変化することが確認された。
また、比較例5の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定し、格子空孔(酸素欠損)の有無を調べた。実施例1と同様の方法で比較例5の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定した。その結果を、実施例1、比較例3、4、6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルと併せて図14に示す。実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、500nm付近にピークが観察されないのに対して、比較例5の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、他の比較例と同様に500nm付近にピークが観察された。比較例5の導電性酸化亜鉛粉末が、製造直後に、低い体積抵抗率を持ち、導電性を示し、その経時変化が著しいのは、比較例5の導電性酸化亜鉛粉末の導電性が、格子空孔(酸素欠損)に起因することによるからと推察される。
(比較例6)
アルミニウム源を窒化アルミニウム(AlN)粉末とし、原料粉末を、窒化アルミニウム粉末10mol、酸化亜鉛粉末90molとしたこと以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例6の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。得られた比較例6の導電性酸化亜鉛粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折分析、比表面積の測定、アルミニウムの固溶割合の測定、および窒素の固溶割合の測定と製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率の測定を行った。得られた比較例6の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を図5に示す。X線回折分析の結果からは、図5に示す通り、酸化亜鉛に由来する回折ピークが観察された。図12に、比較例4の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルを示す。比較例6の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルには、酸化亜鉛へのアルミニウムの固溶を示す200ppm周辺のピークは観察されなかった。図13に、比較例6の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルを示す。比較例6の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルには、窒素の固溶に由来するピークは観察されなかった。比較例6の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積、アルミニウムの固溶割合、窒素の固溶割合と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率は表1に示す通りであった。比較例6の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は3.17m/g、アルミニウムの固溶割合は0質量%、窒素の固溶割合は0.060質量%であった。また、その体積抵抗率は、製造直後でも424.0Ω・cmと高く、30日経過後および210日経過後のいずれにおいても、測定装置の測定限界(1×10Ω・cm)を上回るほど高くなり、著しく経時変化することが確認された。
また、比較例6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定し、格子空孔(酸素欠損)の有無を調べた。実施例1と同様の方法で比較例6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定した。その結果を、実施例1、比較例3、4、5の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルと併せて図14に示す。実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、500nm付近にピークが観察されないのに対して、比較例6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、他の比較例と同様に500nm付近にピークが観察された。比較例6の導電性酸化亜鉛粉末が、製造直後に、体積抵抗率が高いものの導電性を示し、その経時変化が著しいのは、比較例6の導電性酸化亜鉛粉末の導電性が、格子空孔(酸素欠損)に起因することによるからと推察される。
(比較例7)
混合粉末の焼成時の雰囲気をアンモニア(NH)雰囲気としたこと以外は、比較例3と同様の方法によって、混合粉末を焼成した。ところが、焼成後の坩堝内には、焼成物が残存しなかった。酸化亜鉛粉末がアンモニア雰囲気において加熱されたことにより、酸化亜鉛が還元されて亜鉛が生成し、生成した亜鉛がその沸点以上の温度に加熱されて、蒸発したためと考えられる。
以上の通り、導電性酸化亜鉛粉末の製造に、本発明のAl−N−H系化合物粉末の一種であるAl(NH)粉末をアルミニウム源として用いることで、焼成後の解砕は行うものの、原料を混合して特定の温度範囲で焼成するだけの簡便な方法によって、体積抵抗率が低く、その経時変化が少ない、実用的な導電性酸化亜鉛粉末を製造することができた。そして、その導電性酸化亜鉛粉末は、アルミニウムと窒素がともに固溶した新規な導電性酸化亜鉛粉末であった。一方、従来のアルミニウム源である硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、および塩化アルミニウムを用いても、またアルミニウムと窒素をともに含有する窒化アルミニウムを用いても、あるいは従来のアルミニウム源を用いてアンモニア雰囲気で焼成しても、原料を混合して焼成するだけの方法では、体積抵抗率が低く、その経時変化が少ない、アルミニウムと窒素とがともに固溶した導電性酸化亜鉛粉末を得ることはできなかった。
Figure 0006201680

Claims (4)

  1. 酸化亜鉛粉末と、イミド基および/またはアミド基を含有するAl−N−H系化合物粉末とを混合し、不活性雰囲気中、900℃〜1200℃の範囲で焼成することを特徴とする導電性酸化亜鉛粉末の製造方法。
  2. 前記酸化亜鉛粉末と、該酸化亜鉛粉末に対してアルミニウム換算で0.5mol%〜10mol%の割合の、前記イミド基および/またはアミド基を含有するAl−N−H系化合物粉末とを混合することを特徴とする請求項1記載の導電性酸化亜鉛粉末の製造方法。
  3. 前記酸化亜鉛粉末と、該酸化亜鉛粉末に対してアルミニウム換算で2mol%〜10mol%の割合の、前記イミド基および/またはアミド基を含有するAl−N−H系化合物粉末とを混合することを特徴とする請求項1記載の導電性酸化亜鉛粉末の製造方法。
  4. 前記イミド基および/またはアミド基を含有するAl−N−H系化合物粉末の炭素不純物濃度が質量基準で2%以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載の導電性酸化亜鉛粉末の製造方法。
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