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JP6202295B2 - 複合多孔質体及びその製造法 - Google Patents
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JP6202295B2 - 複合多孔質体及びその製造法 - Google Patents

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本発明は、気体または液体の選択透過性を有する多孔質体に係り、多孔質膜等の多孔質基材の細孔内部において金属有機構造体(MOF)を形成した複合多孔質膜等の複合多孔質体とその製造法に関する。
多数の微細な細孔を有する多孔質膜は、海水淡水化・廃水処理・アルコールや各種の化学製品の濃縮等の液体分離用途や、水素製造・酸素富化・二酸化炭素分離等の気体分離用途に向けて分離性能の向上と実用化が進められている。具体的には、ゼオライト膜、シリカ膜、多孔質α−アルミナ膜、多孔質ガラス膜、多孔質カーボン膜、多孔質高分子膜等の開発が行われてきた。多孔質膜の分離性能のさらなる向上と、より困難な各種の炭化水素分離に対しても多孔質膜を適用することを目指して、新規な多孔質膜の開発と性能向上が必要である。
近年、新しい多孔質物質として、金属有機構造体(MOF:Metal-Organic Framework)と呼ばれる新しい多孔質物質が注目されている。これは、金属塩が溶液に溶解して生じる金属イオンと、その金属イオンと配位結合を形成できる有機配位子が、配位結合を形成して生成する、結晶性の規則的な多孔質物質である。金属イオンと有機配位子の組み合わせから多くの種類が報告されている。金属有機構造体(MOF)は、細孔径は0.3nm程度から3nm程度であり、比表面積は1000‐2000m2/g程度から最大では5000m2/gを超えるものまで報告されている。この規則的な細孔径と高い比表面積を有する金属有機構造体(MOF)の特徴を利用して、新しい多孔質膜の開発が進められてきた。
例えば非特許文献1では、多孔質α−アルミナ基材の表面において金属有機構造体(MOF)の結晶を形成した膜である複合多孔質体が報告されている。ここでは、金属塩と有機配位子の両方を含む溶液に多孔質α−アルミナ基材を浸漬し、水熱合成を行って多孔質α−アルミナ基材の表面に金属有機構造体(MOF)の一種であるMOF−5の結晶を形成している。
非特許文献2においては、金属有機構造体(MOF)の原料である金属塩と有機配位子のそれぞれの水溶液を調整し、多孔質α−アルミナ基材を交互に浸漬する工程を複数回行うことで薄い結晶層を形成し、さらに金属塩と有機配位子の両方を含む溶液に浸漬して水熱合成を行って多孔質α−アルミナ基材の表面に金属有機構造体(MOF)の一種であるCu−BTCの結晶を形成している。
非特許文献3においては、金属有機構造体(MOF)の微小な結晶を含む溶液を高温に熱した多孔質α−アルミナ基材に滴下して微小な結晶を表面に付着させ、さらに金属塩と有機配位子の両方を含む溶液に浸漬して水熱合成を行って多孔質α−アルミナ基材の表面に金属有機構造体(MOF)の一種であるCu−BTCの結晶を形成している。
非特許文献4においては、多孔質ナイロン膜の両面から金属塩と有機配位子のそれぞれの水溶液を供給して合成を行っている。二種類の水溶液が膜面を透過して混合し、多孔質ナイロン膜の表面において、金属有機構造体(MOF)の一種であるZIF−8の結晶を形成している。
これらの非特許文献の方法においては、いずれも多孔質基材の表面上に金属有機構造体(MOF)の結晶を緻密に形成しており、走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって形成した結晶が観察されている。また、これらにおいて用いられている多孔質基材の細孔径は約100−200nmであるが、多孔質基材の表面上に形成された金属有機構造体(MOF)の結晶径は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察から少なくとも1μm以上である。断面方向においては、多孔質基材の表面上に走査型電子顕微鏡(SEM)観察によって少なくとも5μm以上の金属有機構造体(MOF)の緻密層が観察されている。水素、二酸化炭素、窒素、メタン等の気体透過性の測定も報告され、分離膜としての性能を示すことが確認されている。
特許文献1においては、金属有機構造体(MOF)と、メソポーラスシリカ、ゼオライト、金属酸化物、多孔質粘土、活性炭等の多孔質基材を複合化した物質をハイブリッド多孔性物質として報告している。この従来法では、多孔性基材を金属有機構造体(MOF)の原料である金属塩と有機配位子の二種類の原料の片方に含浸させて乾燥し、その後残り一方に含侵させて水熱合成によって金属有機構造体(MOF)を形成する工程により得られた物質を、ハイブリッド多孔性物質として出願している。実施例として、メソポーラスシリカと金属有機構造体(MOF)の一種であるMOF−5からなる複合多孔質物質を示している。
特開2011−126775(三星電子株式会社)
Liu, Y. Y.;Ng, Z. F.; Khan, E. A.; Jeong, H. K.; Ching, C. B.; Lai, Z. P. Microporous and Mesoporous Materials 2009, 118, 296-301. Nan, J. P.; Dong, X. L.; Wang, W. J.; Jin, W. Q.; Xu, N. P. Langmuir2011, 27, 4309-4312. Guerrero, V. V.; Yoo, Y.; McCarthy, M. C.; Jeong, H. K. Journal ofMaterials Chemistry 2010, 20, 3938. Yao, J. F.; Dong, D. H.; Li, D.; He, L.; Xu, G. S.; Wang, H. T.Chemical Communications 2011, 47, 2559-2561.
従来法における金属有機構造体(MOF)の複合膜は、分離膜として実用に供する上で様々な問題点が揚げられる。非特許文献1−4においては、多孔質基材の表面上に形成した金属有機構造体(MOF)の結晶が表面上から脱離することや、さらに機械的衝撃や熱や溶媒乾燥時の体積変化やひずみによる結晶の破損など、耐久性に問題がある。実際に、非特許文献3において、多孔質基材表面に形成した金属有機構造体(MOF)の結晶が、含水状態からの乾燥時に水の表面張力によって亀裂が生じることが報告され、これを防ぐためには表面張力の低いエタノールに置換した後に乾燥する工程が必要としており、これによる取扱い工程の複雑化と長期化も解決すべき課題である。
特許文献1においては、実施例において多孔質基材上に形成された金属有機構造体(MOF)の結晶径は走査型電子顕微鏡写真から100−500μm程度と見積もられ、さらに多孔質基材上に分散して形成されており、多孔質基材の表面が露出した状態である。このことから、この従来法は多孔質基材の表面上に金属有機構造体(MOF)を分散して形成する方法であり、多孔質基材の細孔中に形成された金属有機構造体(MOF)の粒子間に隙間があり、その隙間を気体や液体が容易に通り抜けてしまうため、分離膜として実用に供する目的に十分な金属有機構造体(MOF)の結晶層は得られない。
非特許文献4においては、本発明で用いる製造法と同じ形式である、膜の両側から原料溶液を供給する対向拡散法を用いている。しかし非特許文献4においては、多孔質基材の表面に金属有機構造体(MOF)を形成することを目的としており、多孔質基材の細孔中にMOFを形成することには成功していない。これは、製造時の反応条件が細孔中において金属有機構造体(MOF)を形成するために必要な条件を用いていないためであるが、細孔中において金属有機構造体(MOF)を形成することの利点を認知していないことが根本的な理由であると言える。
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決し、分離膜等の分離エレメントとして実用に供することが十分に期待できる金属有機構造体(MOF)の結晶層を具備する複合多孔質体、及び、その製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意研究の結果、先行技術における問題点は多孔質基材の表面上において金属有機構造体(MOF)を形成することに起因しているとの結論に至り、多孔質基材の細孔内部において金属有機構造体(MOF)を形成することによって従来法の問題点を解決することが可能であることを見出し、新規な複合多孔質体とその製造法に開発に至った。
すなわち、本発明の複合多孔質体は、多孔質基材の細孔内部において金属有機構造体(MOF)を形成した複合多孔質体であって、多孔質基材の細孔径が10μm以下であること、多孔質基材の細孔径測定で得られる多孔質基材の細孔径より複合多孔質体金属有機構造体(MOF)の結晶径が小さいこと、を特徴とする。
さらに、本発明の複合多孔質体は、金属有機構造体(MOF)を多孔質基材の細孔内部に形成するにあたり、金属塩と有機配位子を多孔質基材の膜状等の基材の両側からそれぞれ溶液状態で供給することを特徴とする。
本発明は、上記のような特徴を有するものであり、次のように要約することができる。
(1)多孔質基材の細孔内部において金属有機構造体(MOF)を形成した複合多孔質体であって、
多孔質基材の細孔径測定で得られる多孔質基材の平均細孔径が10μm以下であること、
多孔質基材の該平均細孔径より複合多孔質体金属有機構造体(MOF)の結晶径が小さいこと、
を特徴とする複合多孔質体。
(2)上記多孔質基材の材質が、α−アルミナ、ジルコニア、チタニア、炭化ケイ素、マグネシア、ガラス、カーボン、ゼオライト、粘土鉱物、PTFE、ポリイミド、ポリエチレンおよびこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする、上記(1)に記載の複合多孔質体。
(3)上記金属有機構造体(MOF)の原料である金属塩は、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物、金属フッ化物、金属炭酸塩、金属蟻酸塩、金属リン酸塩、金属硫化物および金属水酸化物からなる群より選択される少なくとも一種であり、該金属塩の金属元素は、Cu、Zn、Co、In、Al、Fe、V、Mg、Mn、Ni、Ru、Mo、Cr、W、RhおよびPdからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の複合多孔質体。
(4)上記金属有機構造体(MOF)の原料である有機配位子は、ジカルボン酸、トリカルボン酸、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、アザベンゾイミダゾールおよびこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の複合多孔質体。
(5)一面と別の面との間を連通する多数の細孔を有する多孔質基材の該細孔内部に金属有機構造体(MOF)を形成した複合多孔質体の製造法であって、該細孔内部に金属有機構造体(MOF)が形成される条件で、金属塩の溶液を該一面側から、有機配位子の溶液を前記別の面側からそれぞれ供給することを特徴とする、複合多孔質体の製造法。
(6)前記多孔質基材の一面と別の面との一方に、予め、2〜5nmの微細孔を有する被覆層を形成することを特徴とする上記(5)に記載の複合多孔質体の製造法。
また、本発明は、つぎのような態様を含むことができる。
(7)多孔質基材が厚さ0.2〜5mmの膜状である上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の複合多孔質体。
(8)膜状多孔質基材の厚さが1〜3mmである上記(7)に記載の複合多孔質体。
(9)多孔質基材が、10μm超の径の細孔を有する1又は2以上の多孔質層からなる多孔質基材層と、該多孔質基材層表面の10μm以下の細孔を有する薄肉多孔質層との積層構造であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の複合多孔質体。
(10)前記多孔質基材層の厚さが5mm超であり、薄肉多孔質層の厚さが0.1〜3mmである上記(9)に記載の複合多孔質体。
(11)多孔質基材が平板状、曲板状、波板状、管状、円筒状、角筒状、モノリス状のいずれかである上記(1)〜(4)、(7)〜(10)のいずれか1項に記載の複合多孔質体。
(12)前記別の面が前記一面と反対側の面である上記(5)又は(6)に記載の上記(5)に記載の複合多孔質体の製造法。
(13)多孔質基材の細孔径測定で得られる多孔質基材の平均細孔径が10μm以下である上記(5)、(6)、(12)のいずれか1項に記載の複合多孔質体の製造法。
(14)上記多孔質基材の材質が、α−アルミナ、ジルコニア、チタニア、炭化ケイ素、マグネシア、ガラス、カーボン、ゼオライト、粘土鉱物、PTFE、ポリイミド、ポリエチレンおよびこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする、上記(5)、(6)、(12)、(13)のいずれか1項に記載の複合多孔質体の製造法。
(15)上記金属有機構造体(MOF)の原料である金属塩は、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物、金属フッ化物、金属炭酸塩、金属蟻酸塩、金属リン酸塩、金属硫化物および金属水酸化物からなる群より選択される少なくとも一種であり、該金属塩の金属元素は、Cu、Zn、Co、In、Al、Fe、V、Mg、Mn、Ni、Ru、Mo、Cr、W、RhおよびPdからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、上記(5)、(6)、(12)〜(14)のいずれか1項に記載の複合多孔質体の製造法。
(16)上記金属有機構造体(MOF)の原料である有機配位子は、ジカルボン酸、トリカルボン酸、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、アザベンゾイミダゾールおよびこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする、上記(5)、(6)、(12)〜(15)のいずれか1項に記載の複合多孔質体の製造法。
(17)前記2〜5nmの微細孔を有する被覆層を形成する材料がγ−アルミナである上記(6)に記載の複合多孔質体の製造法。
(18)前記溶液の供給速度と、金属有機構造体(MOF)の形成反応速度との少なくとも一方を調整して、細孔内において金属有機構造体(MOF)を形成する、上記(5)、(6)、(12)〜(17)のいずれか1項に記載の複合多孔質体の製造法。
(19)前記溶液の濃度を上げること、および/又は、前記溶液の温度を上げることにより、金属有機構造体(MOF)の形成反応速度を高くし、細孔内において金属有機構造体(MOF)を形成する、上記(18)に記載の複合多孔質体の製造法。
(20)細孔径の小さい多孔質基材を用いること、および/又は、表面に供給を妨げる層を持つ多孔質基材を用いることにより、前記溶液の供給速度を遅くし、細孔内において金属有機構造体(MOF)を形成する、上記(18)に記載の複合多孔質体の製造法。
本発明によれば、多孔質基材の細孔径が10μm以下であること、多孔質基材の細孔径測定で得られる多孔質基材の細孔径より複合多孔質体金属有機構造体(MOF)の結晶径が小さいことを特徴とする、多孔質基材の細孔中に金属有機構造体(MOF)の微結晶層を形成した多孔質複合膜を製造できる。このため、従来法において問題であった、多孔質基材表面の金属有機構造体(MOF)の結晶の脱離や耐久性の課題を克服することができる。さらに気体分離性能について、本発明の複合多孔質体は、同一の金属有機構造体(MOF)を用いた従来法と比較して大幅に高い気体分離性能を示すことを特徴とし、より高性能な複合多孔質体とその製造法を提供できる。
本発明の複合多孔質体の一実施形態と従来法の一実施形態を示す模式断面図である。 本発明の複合多孔質体のX線回折測定結果の一実施形態を示す模式図である。 本発明の複合多孔質体の作製法の一実施形態を示す模式断面図である。 本発明の一実施例における走査型電子顕微鏡観察結果である。(a)は管外表面、(b)は管内表面を示す。 本発明の一実施例における断面の走査型電子顕微鏡観察結果(a)とエネルギー分散型X線分光法(EDX)の分析結果〔(b)Al、(c)O、(d)C、(e)Cu〕である。 本発明の一実施例における透過型電子顕微鏡観察結果である。 本発明の一実施例におけるX線回折測定の結果である。 本発明の一実施例における気体透過度測定の結果である。
以下に、本発明の複合多孔質体とその製造法について、さらに詳細かつ具体的に説明する。
図1は、本発明の複合多孔質体の一実施形態と従来法の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す本発明の複合多孔質体においては、多孔質基材の細孔の内部において金属有機構造体(MOF)の微結晶層を形成している。従来法においては、多孔質基材の表面上において、金属有機構造体(MOF)の結晶を形成している。
本発明の複合多孔質体は、多孔質基材の細孔内部において金属有機構造体(MOF)を形成した複合多孔質体であって、多孔質基材の細孔径が10μm以下であること、多孔質基材の細孔径測定で得られる多孔質基材の細孔径より複合多孔質体金属有機構造体(MOF)の結晶径が小さいこと、を特徴とする
[細孔内部の説明]
本発明における多孔質基材の細孔内部とは、多孔質基材の一方の表面から他方の表面へ通じた直径10μm以下の空間の内部を指す。本発明の複合多孔質体は、多孔質基材の細孔内部に金属有機構造体(MOF)を形成した複合多孔質体である。これは、少なくとも多孔質基材の細孔内部に金属有機構造体(MOF)を形成した構造を意味するものであり、細孔内部と多孔質基材の表面に同時に金属有機構造体(MOF)を形成することを妨げるものではない。
本発明において、多孔質基材の細孔内部において金属有機構造体(MOF)を形成した複合多孔質体の構造は、電子顕微鏡観察で確認できる。すなわち、複合多孔質体内部の電子顕微鏡観察と元素分析によって金属有機構造体(MOF)を構成する元素を検出することによって、確認が可能である。電子顕微鏡観察は、複合多孔質体の断面を走査型電子顕微鏡によって観察する方法が最も簡便であり、多孔質基材の細孔内部が閉塞された構造を確認できる。走査型電子顕微鏡と元素分析を組み合わせた方法では、金属有機構造体(MOF)を構成する元素を検出することによって、多孔質基材の細孔内部に金属有機構造体(MOF)を形成した複合多孔質体の構造を確認することができる。透過型電子顕微鏡と、これに元素分析を組み合わせた方法においても、さらに詳細に複合多孔質体の構造を確認することができる。
本発明における細孔径測定は、パームポロメトリー法または水銀圧入法によって測定することができる。パームポロメトリー法は細孔中の最も広い部分を測定し、水銀圧入法は、細孔中の最も細いネック部分を測定する手法である。本手法においては多孔質基材の細孔の最も広い部分の内側に金属有機構造体(MOF)の微粒子が生成することから、最も最適な測定方法はパームポロメトリー法である。ただし、実際には水銀圧入法とパームポロメトリー法とは同程度の細孔径評価が可能であり、当業者によって双方が用いられている。本発明の細孔径測定においては、パームポロメトリー法と水銀圧入法の少なくとも一方の手法を用いて細孔径を測定することができるが、より好ましくはパームポロメトリー法を用いることができる。
[パームポロメトリー測定法の説明]
本発明におけるパームポロメトリー測定法は、バブルポイント法(JIS K3832)による貫通細孔評価手法を拡張した方法である。バブルポイント法は、多孔質基材の細孔内部に適当な液体を満たして膜状部分の片側から気体によって圧力をかけ、細孔径の大きな細孔から順に細孔中の液体が押し出されて最後に気体が泡状に吹き出す時の圧力値を用いて、細孔径を評価する方法である。パームポロメトリー測定法においては、多孔質基材の細孔内部に液体を満たした状態でバブルポイント法による測定とさらに圧力を上げて気体流量の変化を測定し、ウェットフローカーブを得る。次に多孔質基材を乾燥した状態で気体流量の変化を測定し、ドライフローカーブを得る。パームポロメトリー測定法において、ある測定圧力Pにおける多孔質基材の細孔径diは、次の式で求められる。
i=4σcosθ/Pi
ここで、σは液体の表面張力、θは液体と多孔質基材の材質との接触角である。diより大きい細孔径の累積割合(%)である細孔径の累積分布Diは、次の式で求められる。
i=100×(FDi−FWi)/FDi
ここで、FDiはドライフローカーブにおける流量の値、FWiはウェットフローカーブにおける流量の値である。ここで求めた細孔径の累積分布から、多孔質基材の平均細孔径(該累積分布Diの50%におけるdi)を求めることができる。
[水銀圧入測定法の説明]
本発明における水銀圧入法は、一般的に多くの多孔物質の口径および空隙率を測定するために用いられており、3nmから500nm程度の広い細孔径の測定が可能である。水銀は毛細管力が高くほとんどの物質に対して接触角が90°以上になる。毛細管力以上の圧力を水銀にかけることで細孔の中に水銀が入るので、この性質を利用して細孔径を見積もることができる。毛細管モデルの式は、以下となる。
r=−2σCOSθ/P
ここで、rは細孔半径、σは水銀の表面張力で484erg/cm2、θは接触角で140°前後である。さらに、圧入時の水銀の体積減少を測定するポロシメーターを用いることにより、細孔径分布を測定することも可能である。
本発明における結晶径の評価は、透過型電子顕微鏡による方法、またはX線回折測定による方法を用いることができ、より好ましくは透過型電子顕微鏡による測定を用いることができる。
[本発明における透過型電子顕微鏡測定]
本発明における透過型電子顕微鏡測定は、一般的な透過型電子顕微鏡を用いて行うことができる。厚さ100nm程度の薄片を作製し、透過型電子顕微鏡を用いて観察することで、多孔質基材の細孔中に形成された金属有機構造体(MOF)の微粒子の直接観察を行うことで、微粒子大きさを測定することが可能である。透過型電子顕微鏡による測定においては、多孔質基材の任意の3か所の細孔の内部の観察を行い、それぞれの細孔の内側から任意に抽出された3個の結晶粒子について、重心を通る長径と短径を測定する。これらから得られた合計9個の結晶径の平均値を、複合多孔体の細孔中に存在する結晶粒子の平均結晶径として用いる。
[本発明におけるX線回折測定]
本発明におけるX線回折測定は、CuKα線(波長0.15418nm)の入射角を変えながら回折強度を測定することで、本発明の複合多孔質体の構造を解析する手法である。この測定により、第1には複合多孔質体に形成された結晶の格子構造を確認することができる。これは、得られたX線回折測定の結果を既往の非特許文献に記載のデータと比較することで、容易に達せられる。第2には、複合多孔質体に形成された結晶の結晶径を解析することができる。この方法で得られる結晶径は、測定部分に存在する金属有機構造体(MOF)の平均の結晶径である。これは一般的に知られるシェラーの式に基づく解析方法であり、結晶径Dは以下の式によって求められる(下記参考文献参照)。
D=Kλ/Bcosθ
B=Bobs−b
ここで、Kはシェラーの定数であり一般的には0.89、λはX線の波長でありCuKα線の場合は0.15418nm、θはX線の入射角、BはX線回折ピークの半値全幅、BobsはX線回折ピークの半値全幅の測定値、bは装置によるX線回折ピークの広がりである。Bobsは図2に示す通り、X線回折測定における回折ピークの半値全幅として得られる値である。bは、複合多孔質体とは別に作製した十分に大きな結晶を用いて測定したX線回折測定から得られるX線回折ピークの半値全幅である。
[参考文献]Guinier. A(1963). X-ray Diffraction. San Francisco: Freeman & Co.
[請求項1についてのまとめ]
本発明の請求項1に記載の複合多孔質体は、以上の解析方法に基づいて特徴づけることが可能である。すなわち、多孔質基材の細孔内部に金属有機構造体(MOF)が存在することは、電子顕微鏡と元素分析を組み合わせた解析によって確認できる。多孔質基材の細孔径は、パームポロメトリー測定や水銀圧入測定法によって測定が可能である。X線回折測定によって、金属有機構造体(MOF)の結晶の格子構造を確認することが可能であり、さらに金属有機構造体(MOF)の結晶径をシェラーの式に基づいて解析できるし、透過型電子顕微鏡測定によって求めることもできる。以上の方法によって、本発明の複合多孔質体の特徴を、確認することができる。
[多孔質基材]
本発明における多孔質基材は、ある一面から別の面(好ましくは、前記一面と反対側の面)へ連通し、細孔径測定による平均細孔径が10μm以下である細孔を有するものである。細孔径測定による平均細孔径が10μmを超えると、多孔質基材の細孔を金属有機構造体(MOF)で充填する上で、欠陥の無い緻密な充填を行うことが困難になる等の点で望ましくないので、本発明では、10μm以下と規定している。該平均細孔径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下である。パームポロメトリー測定法による平均細孔径は、細孔の内部に金属有機構造体(MOF)が形成される限り、どのように小さくても良い。金属有機構造体(MOF)を内部に形成することのできる該平均細孔径は、通常、10nm程度以上(好ましくは50nm以上)である。(細孔径は50nm程度から10μm程度まで各種が作製可能である。)
該多孔質基材の材質は、限定するものではないが、α−アルミナ、ジルコニア、チタニア、炭化ケイ素、マグネシア、ガラス、カーボン、ゼオライト、粘土鉱物、PTFE、ポリイミド、ポリエチレンおよびこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも一種とすることができる。これらのうちより好ましくは、α−アルミナ、ジルコニア、チタニア、ガラスおよびこれらの誘導体であり、さらに好ましくは、α−アルミナとこれの誘導体である。α−アルミナはAl23の組成を持つセラミック材料である。
本発明における多孔質基材は、複数種類の材料の積層構造体であっても良いし、二種類又はそれ以上の種類の材料が海−島構造等の適宜のパターンで分散した構造体であっても良い。例えば、多孔質基材の一面と別の面の一方に、予め、3〜6nm程度の微細孔を有する被覆層を形成しておくことができる。そのような微細孔を有する被覆層を多孔質基材の一方の面に形成しておくと、原料溶液が膜の細孔中に侵入する際の抵抗となって、金属有機構造体(MOF)の薄い層を形成する点で望ましい。そのような微細孔を有する被覆層の材料としては、例えばγ−アルミナ、高分子の被覆等を用いることができる。(α−アルミナの誘導体として、表面を細孔径が4nm程度のγ−アルミナで被覆した多孔質基材を用いることもできる。)高分子の被覆としては、ポリエーテル、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、PTFE、ナイロンからなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。
多孔質基材の形状については、作製可能な各種の形状の多孔質基材を用いることが可能であり、限定するものではないが、例えば、平板状、曲板状、波板状、管状、円筒状、角筒状、またはモノリス状等の形状を用いることができる。モノリス状の多孔質基材は、一例として円筒状の形状の内側に多数の貫通孔が開いた構造である。多孔質基材の厚みは、限定するものではないが、50−1000μm、好ましくは100−800μm、より好ましくは200−500μmとすることができる。
[金属有機構造体(MOF)の説明]
本発明における金属有機構造体(MOF:Metal-Organic Framework)は、金属イオンと有機配位子が配位結合を形成し、この基本構造が連続して結晶構造まで成長したものである。金属有機構造体(MOF)は多孔質物質であり、結晶格子内に0.3nm程度から3nm程度の細孔構造を持ち、比表面積は1000−2000m2/g程度から最大では5000m2/gを超えるものまで報告されている。金属有機構造体(MOF)の中でも特にゼオライト骨格を有するゼオライトイミダゾレート構造体(ZIF:Zeolitic Imidazolate Framework)があるが、ゼオライトイミダゾレート構造体(ZIF)も金属イオンと有機配位子の配位結合によって構造を形成しており、金属有機構造体(MOF)の一部に分類される。
本発明において用いることのできる金属有機構造体(MOF)としては、例えば、Cu−BTC、MOF−5、IRMOF−3、MIL−47、MIL−53、MIL−96、MMOF、SIM−1、ZIF−7、ZIF−8、ZIF−22、ZIF−69、ZIF−90が挙げられるが、金属有機構造体(MOF)は200種類以上の構造が存在するため、これだけに限定されるものではない。
[金属有機構造体(MOF)原料の説明]
本発明の金属有機構造体(MOF)は金属イオンと有機配位子によって形成される。金属有機構造体(MOF)の原料は、溶液中で金属イオンを得ることができる金属塩と、有機配位子である。これは、金属塩と有機配位子の両方について少なくともそれぞれ1種類を原料に用いることを意味し、必要であれば複数の種類を原料に用いることを妨げるものではない。さらに必要であれば、金属塩と有機配位子以外の原料も用いることができる。
[金属塩の説明]
本発明の金属有機構造体(MOF)原料として用いる金属塩は、各種の金属元素を含むものから選択することができる。金属塩に含まれる金属元素としては、好ましくはCu、Zn、Co、In、Al、Fe、V、Mg、Mn、Ni、Ru、Mo、Cr、W、RhおよびPdからなる群より選択される元素であり、より好ましくはCu、Zn、Co、In、Al、Fe、Vからなる群より選択される元素であり、さらに好ましくはCu、Zn、Coからなる群より選択される元素である。
前記の金属元素を含む金属塩としては、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物、金属フッ化物、金属炭酸塩、金属蟻酸塩、金属リン酸塩、金属硫化物および金属水酸化物からなる群より選択することができる。より好ましくは、金属硝酸塩および金属塩化物からなる群から選択される金属塩である、
本発明において用いることのできる具体的な金属塩は、好ましくは硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸コバルト、硝酸インジウム、硝酸アルミニウム、硝酸鉄、硝酸バナジウム、塩化銅、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化インジウム、塩化アルミニウム、硝酸塩化鉄および塩化バナジウムからなる群より選択される金属塩であり、より好ましくは硝酸銅、硝酸亜鉛、硝酸コバルト、硝酸インジウムおよび塩化バナジウムからなる群から選択される金属塩である。
[有機配位子の説明]
本発明における有機配位子は、上述の金属元素の金属イオンと配位結合を形成する有機配位子から選択される。該有機配位子は、ジカルボン酸、トリカルボン酸、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、アザベンゾイミダゾールおよびこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種とすることができる。
ジカルボン酸として用いることができる有機配位子は、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸およびビフェニレンジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一種である。
トリカルボン酸として用いることができる有機配位子は、好ましくは1,2,3−ベンゼントリカルボン酸および1,3,5−ベンゼントリカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一種である。テトラカルボン酸として用いることができる有機配位子は、好ましくは1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸および1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸からなる群から選択される少なくとも一種である。
さらに、選択されるこれらの有機配位子は、必要に応じて骨格中に別の置換基として、ヒドロキシル基、アミノ基、メトキシ基、メチル基、ニトロ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、シアノ基、クロロ基、ブロモ基およびフルオロ基を有することができる。
[製造法の説明]
本発明の複合多孔質体の製造法は、金属有機構造体(MOF)を多孔質基材の細孔内部に形成するにあたり、該細孔内部に金属有機構造体(MOF)が形成される条件で、上記金属塩と上記有機配位子を多孔質基材の一面と他面の両側から(多孔質基材が膜状である場合、膜状部分の両側から)それぞれ溶液の状態で供給することを特徴とする、複合多孔質体の製造法である。多孔質基材の膜状部分の両側から溶液を供給する際には、細孔内部に溶液を十分に導入するために、あらかじめ多孔質基材を真空下に置いた状態で溶液を導入する等の方法を講じる。図3に示す本発明の複合多孔質体の作製法の一実施形態を示す模式断面図においては、多孔質基材の膜状部分の両側からそれぞれ金属塩と有機配位子を溶液の状態で供給する製造法を模式図として示している。
細孔中において金属有機構造体(MOF)を形成する条件とは、多孔質基材の細孔の内部において金属有機構造体(MOF)を形成する反応を行う条件である。この条件は、例えば、次の(1)〜(3)等のように、反応物質(原料溶液)の供給速度と金属有機構造体(MOF)を形成する反応速度の関係を適切に調整することにより実現することができる。
(1)原料溶液の供給速度を変化せず、多孔質基材の細孔中における金属有機構造体(MOF)の形成反応速度を高くする。
このためには、例えば、反応溶液の濃度を上げること、反応溶液の温度を上げること、などが挙げられる。この際に、選択した反応温度においても耐久性を失わない多孔質基材を用いる必要がある。
(2)金属有機構造体(MOF)の形成反応速度を変化せず、原料溶液の供給速度を遅くする。
このためには、多孔質基材の細孔径の小さいものを用いること、表面に供給を妨げる誘導体の層を持つ多孔質基材を用いること、などが挙げられる。
(3)原料溶液の供給速度と、多孔質基材の細孔中における金属有機構造体(MOF)の形成反応速度との両方を調整する。
用いる金属有機構造体(MOF)の種類によりこれらの適切な供給速度や反応速度は異なるが、MOFの形成位置等の形成状況を確認しつつそれらを調整することにより、金属有機構造体(MOF)を細孔の内部において形成した構造を形成することが可能である。
ここで多孔質基材の膜状部分の両側からそれぞれ金属塩と有機配位子を溶液の状態で供給するというのは、管状または平板状またはモノリス状等の形状の膜によって隔てられた空間にそれぞれ金属塩と有機配位子の溶液が供給されることを意味し、これらの溶液が膜以外の空間において混合しないことを意味する。このためには、用いる多孔質膜は適切な方法で封止される必要があり、管状膜やモノリス状の膜であれば端部を封止して反応容器に配置し、平板状であれば適切な反応容器を用いて両面に溶液が別々に供給されるように配置する必要がある。
[溶液について]
本発明の複合多孔質体の製造法において、溶液の状態とは、金属塩と有機配位子がそれぞれ適切な溶媒に溶解した状態を意味する。金属塩と有機配位子をそれぞれ溶解する際に用いる溶媒は、同一のものである必要は無い。また、溶媒は複数種を混合して用いることもできる。溶媒としては、水、アルコール類、酸アミド類、環状エーテル類、ケトン類、ニトリル類および芳香族類からなる群から選択される少なくとも一種を使用することができる。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールおよびt−ブタノールからなる群から選択される少なくとも一種を使用することができる。酸アミド類としては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、t−ブチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミドおよびt−ブチルアセトアミドからなる群から選択される少なくとも一種を使用することができる。環状エーテル類としては、テトラヒドロフランおよびジオキサンからなる群から選択される少なくとも一種を使用することができる。ケトン類としては、アセトンおよびメチルエチルケトンから選択される少なくとも一種を使用することができる。芳香族類としては、トルエン、キシレン、クロロベンゼンおよびクロロメチルベンゼンから選択される少なくとも一種を使用することができる。
[複合多孔質体の製造条件について]
本発明の複合多孔質体の製造法においては、選択した金属塩と有機配位子の反応性と、選択した溶媒の沸点から、最適な反応温度を選択することが望ましい。一般に金属有機構造体(MOF)は、室温から250℃程度の温度範囲において合成を行う。この合成の際に、反応温度が用いる溶媒の沸点に近く溶媒の減少が大きい場合、また反応温度が用いる溶媒の沸点より高い場合には、加圧条件下において反応を行う。加圧条件下における反応においては、一般に入手可能な加圧反応容器を用いることが可能である。例えば、水とエタノールをそれぞれ用いて120℃において反応を行う場合、水とアルコールの双方の沸点を超える温度であるため、加圧反応容器に封入して反応を行う。
以下、実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は、このような実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜材料変更、設定調整、設計変更することが可能である。
[実施例1]
本発明に基づく実施例として、α−アルミナの管状多孔質基材と金属有機構造体(MOF)の一種であるMOF−199(Cu−BTC)を複合化した多孔質複合膜を示す。
本実施例で用いたα−アルミナの管状多孔質基材は、外径約3mm、内径約2.4mm、水銀圧入測定法による平均細孔径約100nmの中空管である。α−アルミナの管状多孔質膜は、膜部分を隔てるために一方を溶融ガラスで封止した。多孔質基材を真空処理をした後に硝酸銅2.5水和物の水溶液0.3Mを中空管内側に供給することで、多孔質膜の細孔内部全体に溶液を導入する。溶融ガラスで封止した端部を下側にしてあらかじめ75℃に加熱したトリメシン酸のエタノール溶液0.2Mを満たした反応容器に浸し、その反応容器をオートクレーブ中に配置して120℃において6時間、反応を行った。ここで、トリメシン酸のエタノール溶液をあらかじめ75℃に加熱することが、多孔質基材の内部においてMOF−199(Cu−BTC)を形成する条件である。反応後にエタノールの50%水溶液を用いて、75℃において24時間の洗浄を行い、その後真空乾燥を行った。得られた複合多孔質体の走査型電子顕微鏡観察と、断面の元素分析およびX線回折測定を行った。気体透過測定装置を用いて、ヘリウム、水素、二酸化炭素、酸素、窒素、メタン、4フッ化炭素、六フッ化硫黄の透過度を測定した。
図4に示す走査型電子顕微鏡観察から、本実施例で得られた多孔質複合膜は、図4(a)に示す管外表面においてCu−BTCの結晶が観察されたが同時に多孔質基材の露出も認められた。図4(b)に示す中空管内部においてはCu−BTCの結晶は観察されなかった。また、図5に示す中空管軸直角断面の元素分析の測定結果から、該断面の外表面から深さ方向に約40μmの層状の範囲において図5(d)に示す炭素元素と図5(e)に示す銅元素の存在が確認された。
図7に示すX線回折測定の結果から、図7(c)に示す本実施例で得られた多孔質複合膜は、図7(b)に示すCu−BTCの単体を合成する条件で作製されたCu−BTCと同じ位置に回折ピークを示し、Cu−BTCの存在が確認された。走査型電子顕微鏡観察、元素分析およびX線回折測定の結果から、Cu−BTCはα−アルミナの管状多孔質基材の外表面から深さ方向に約40μmの層状の範囲において存在していることが明らかにされた。
図6に示す多孔質複合膜の透過型電子顕微鏡観察を行った結果から、多孔質基材の細孔図6(a)とその拡大図である図6(b)において、多孔質基材の細孔中に結晶径が約5nmのCu−BTCの粒子が観察された。これらのことから、本実施例で得られた複合多孔質体は、細孔径が約100nmであるα−アルミナの多孔質基材の細孔中において、結晶径が約5nmであるCuBTCの微小な結晶を形成した構造であることが分かった。
本実施例において得られた複合多孔質体の気体透過性測定を行った結果を図8に示す。測定はタイムラグ法を用いて、差圧1気圧、25℃において行った。測定気体は、ヘリウム(He)、水素(H)、二酸化炭素(CO2)、酸素(O2)、窒素(N2)、メタン(CH4)であり、この順に分子の大きさ(Kinetic Diameter)が大きくなる。この結果、水素の選択性は、CO2、O2、N2、CH4のそれぞれの気体に対して3.7、16.2、123、153であった。これは、分子の大きさが大きいほど水素との透過度の差が大きくなり、水素の選択性が上昇することから、極めて高い分子ふるい性の透過挙動を得ることに成功した。同一のMOFであるCu−BTCを用いた気体透過膜としては、例えば非特許文献2においては、CO2、N2、CH4のそれぞれの気体に対して水素の選択性は5.1、3.7、2.9の値が報告されており、分子ふるい性の透過挙動は得られていない。これゆえ、本発明の一実施例であるCu−BTCの複合多孔質体においては、同一のMOFを用いて複合多孔質体を作製した場合を比較すると、従来の報告例と比較して極めて高い分子ふるい性の気体の透過挙動を得ることに成功した。
本発明の複合多孔質体は、極めて高い分子ふるい性等の分離性能を有する。しかも、分離対象に応じて適切なMOFを選択することにより、分離対象に合致した各種の分離性能を得ることもできる。そのため、海水淡水化・廃水処理・アルコールや各種の化学製品の濃縮等の液体分離用途や、水素製造・酸素富化・二酸化炭素分離等の気体分離用途等の省エネルギーな膜分離プロセスへの応用等、幅広い応用が可能である。
01 複合多孔質体
02 多孔質基材
03 金属有機構造体(MOF)の微結晶層
04 金属有機構造体(MOF)の結晶層
21 X線回折測定における回折ピークの半値全幅
31 金属有機構造体(MOF)の原料の溶液A
32 金属有機構造体(MOF)の原料の溶液B

Claims (2)

  1. 一面と別の面との間を連通する多数の細孔を有する多孔質基材の該細孔内部に金属有機構造体(MOF)を形成した複合多孔質体の製造法であって、該細孔内部に金属有機構造体(MOF)が形成される条件で、金属塩の溶液を該一面側から、有機配位子の溶液を前記別の面側からそれぞれ供給することを特徴とする、複合多孔質体の製造法。
  2. 前記多孔質基材の一面と別の面の一方に、予め、2〜5nmの微細孔を有する被覆層を形成することを特徴とする請求項に記載の複合多孔質体の製造法。
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