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JP6202719B2 - スラグ粉末成型体およびその製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、鉄鋼製品製造の副産物として発生する鉄鋼スラグを海洋環境用途材として海水に浸漬して使用するのに適したスラグ粉末成型体およびその製造方法に関する。
鉄鋼製品を製造する過程で副産物として発生する鉄鋼スラグは、路盤材や地盤改良材などに有効利用されている。ここで、鉄鋼スラグとは、銑鉄製造過程から副産される高炉スラグおよび鋼製造過程から副産される製鋼スラグの総称である。また、高炉スラグは、高炉水砕スラグおよび高炉徐冷スラグを含み、製鋼スラグは、転炉スラグ、脱硫スラグ、電気炉スラグなどを含む。
このうち鋼製造工程において多量に生成する製鋼スラグは、FeO、CaO、MgO、SiO、Pなど海洋生物の生育環境に有効な成分を多く含んでおり、有害物質を含んで海底に沈殿している底質を覆い、底質から海水中に有害物質が溶出しないようにする覆砂材や、藻場千潟造成材、人工海浜造成材、流出した海砂の補填といった海洋環境用途材として有用であることが知られている。
しかし、製鋼スラグをそのまま海水に浸漬させると、製鋼スラグ中に不可避的に含まれる未反応のCaO(フリーライム)が海水と反応し、周囲の海水のpH上昇および白濁化を引き起こしやすい。このような現象が生じると環境破壊に業がり、好ましくない。
海水のpH上昇および白濁現象は主として下記(1)〜(2)式の反応によって起こると考えられている。
CaO + HO → Ca2+ + 2OH ・・・(1)
Mg2+ + 2OH → Mg(OH)↓ ・・・(2)
すなわち、製銅スラグを海水に浸漬すると、(1)式のようにCaO(フリーライム)が水と反応し、電離して水中のOHイオン濃度を増大させる。その結果、海水のpHが上昇する。一方、海水中にはMg2+イオンが存在する。海水のpHが高い場合には(2)式の反応が進行し、不溶性のMg(OH)が生成する。このMg(OH)が白濁の原因となる。この白濁自体は環境にとって有害なものではないが、環境を悪化させているかのような悪い印象を与えるため、製鋼スラグの利用上は好ましくない。
製鋼スラグを海水に浸漬したときの高pH化や白濁化を防止するためには、製鋼スラグ粒子中に存在するフリーライムの海水中への溶出を抑制する処理が有効であることが知られている。それにより、上記(1)式の反応を抑制することができ、その結果、(2)式の反応も抑制される。
製鋼スラグ中からの各種物質の溶出を抑制する処理として、特許文献1には、40℃以上の融点をもつ有機物またはその金属塩によって表面が被覆されていることを特徴とするスラグ粒およびその製造方法が開示されている。しかし、この発明は土壌中からの溶出抑制を目的としたものであり、単純にスラグ中からの各種物質溶出を抑制してしまうと、前述の海洋生物の生育環境に有効な成分の溶出も妨げられるため、海洋環境用途材としての利点が損なわれてしまう。
特開2002−104848号公報
上述のように、製鋼スラグは海洋生物の生育環境に有効な成分を多く含んでおり、海洋環境用途材として有用であるにもかかわらず、海水のpH上昇や白濁を引き起こす要因となりうるので、そのまま海水中に浸漬するには問題が多い。そこで、製鋼スラグ中からの各種物質溶出を抑制する技術がいくつか提案されてきた。しかし、それら既往の技術は、製鋼スラグを海洋環境で利用する上で問題となる点を解決するための手法であり、海洋環境で利用する上での利点をもたらすものではない。その点で、工業的規模で広く普及を図るうえではさらなる改善が望まれる。
本発明はこのような現状に鑑み、海水のpH上昇や白濁を防止できる海洋環境用途に適した製鋼スラグ製品を提供しようというものである。
上記課題は、製鋼スラグ粉末とリグニンスルホン酸またはその金属塩を容器内で混合および造粒し、ガラス質物質と例えばFe、Si、Pの化合物のうち1種以上を含有する材料の混合粉末を容器内に装入し、混合後加熱することによってスラグ粉末成型体表面にガラス質物質の被覆を得ることを特徴とするスラグ粉末成型体の製造方法によって達成される。
発明は、製鋼スラグ粉末とリグニンスルホン酸またはその金属塩の混合体と、その混合体の表面の少なくとも一部を被覆するガラス質物質である被覆材とを備えるスラグ粉末成型体である。
更に、被覆材は、Fe、Si、Pの化合物のうち1種以上を含有する材料混合されている構成にしてもよい
また、本発明は、製鋼スラグ粉末とリグニンスルホン酸またはその金属塩を容器内で混合後に成型して混合体としその混合体の表面にガラス質物質である被覆被覆するスラグ粉末成型体の製造方法である
また、被材は、Fe、Si、Pの化合物のうち1種以上を含有する材料を混合しても良い。
更に、被覆材による被覆後にその被覆材の融点以上に加熱その後融点以下に冷却し混合体の表面にガラス質物質の溶融被覆を生成してもよい
本発明によって得られたスラグ粉末成型体は、海水に浸漬したときにpH上昇や白濁に対して優れた抵抗力を呈する。したがって、本発明は製鋼工程で多量に発生する製鋼スラグの有効利用に寄与するものである。
リグニンスルホン酸またはその金属塩と混合し、ガラス質材料によって表面が被覆されたスラグ粉末成型体を模式的に示す図である。 スラグ粉末とリグニンスルホン酸またはその金属塩の成型体1とガラス質物質粉末2の混合状態を模式的に示す図である。 混合容器にてスラグ粉末成型体の表層にガラス質物質粉末を接着させて被覆する工程の概略図である。
本発明は製鋼スラグ中からのCa溶出に起因する海水pH上昇や白濁の抑制を目的として、製鋼スラグ粉末とリグニンスルホン酸またはその金属塩を混合し、表面にガラス質物質の被覆を有するスラグ粉末成型体を提供する。図1は、本発明のスラグ粉末成型体の模式図であり、スラグ粉末とリグニンスルホン酸またはその金属塩を混合した粉末成型体1の表面にガラス質物質2が被覆されている。
本発明で処理の対象とする製鋼スラグは、製鋼工程の転炉や電気炉などから生成するスラグである。スラグ製鋼スラグにはPが豊富に含まれている。その量はP換算で1〜5質量%程度である。また、主成分の1つであるCaOの含有量は35〜55質量%程度であるが、シリカ等と結合していない可溶性のCaO(フリーライム)が1〜8質量%程度含まれているのが通常である。この可溶性CaOの含有量は湿式分析の過程において例えばエチレングリコールに溶解するCaO分として把握することができるものである。本明細書において、この可溶性CaO「f―CaO」と表記することがある。
本発明で提供するスラグ粉末成型体は、特に以下の(i)〜(iii)点に特徴を有する。
(i)粉末から粉末成型体を成型することにより、スラグ粒に比べて比表面積が低減され、スラグ中からの各種物質溶出を抑制する。スラグ粒は一般的に表面が凹凸に富み、内部に空孔や色要等も存在するため比表面積が大きいが、本発明で提供するスラグ粉末成型体は粉末を成型することにより、スラグ粒に比べて平滑な表面が得られ、空孔や亀裂等も少ないために各種物質溶出を抑制することができる。
(ii)スラグにリグニンスルホン酸またはその金属塩を混合することでスラグ粉末成型体の強度およびガラス質被覆の密着性が向上する。これによって海水のpH上昇を防止または緩和することができる。
(iii)スラグ粉末成型体表層をガラス質物質で被覆することでスラグ中からの各種物質溶出を抑制する。これにより、スラグと海水との接触を回避することができ、スラグ中からの各種物質の溶出を抑制することができるため、海洋環境用途においても問題なく利用することが可能となる。
本発明で提供するスラグ粉末成型体の大きさは特に限定しないが、海域の覆砂材、操場再生材等への利用や膨張安定性を考慮すると、被覆後の平均粒径が1〜25mmであるものが好適である。造粒に用いるスラグ粉末も特に大きさは限定しないが、平均粒子径1mm未満であるものが造粒性の点から好適である。
本発明で用いるリグニンスルホン酸またはその金属塩は、分散性・粘結性・キレート性に優れており、粘結剤として用いられていることから成形体の強度やガラス質被覆の密着性を向上させる効果が期待される。リグニンスルホン酸は必要に応じてpH調整が可能であるが、本発明で用いるリグニンスルホン酸またはその金属塩は海水のpH上昇や白濁抑制の観点から非アルカリ性であることが望ましい。特に酸性であることが好ましく、海水のpH上昇を防止または緩和する効果が得られる。リグニンスルホン酸金属塩の種類は特に限定しないが、Na、K、Mg、Ca、Fe、Zn、Cu、Al、Mn、Co等の金属のいずれか1つまたは、複数を混合して使用される。取り扱い性やコストを考えると特にMg、Ca、Naが望ましい。本発明におけるリグニンスルホン酸または金属塩の形態は特に限定されず、粉末の状態で添加してもよいし、水溶液の状態で添加することも可能である。
本発明では、スラグに対するリグニンスルホン酸またはその金属塩の混合量は、海水のpH上昇や白濁を目標値または規制値以下に抑制できる範囲であれば特に限定しないが、経済的観点から効果が得られる必要最低限量に抑えることが望ましい。
表層に被覆する物質はガラス質物質粉末を用いる。これにより、スラグと海水との接触を回避することができ、スラグ中からの各種物質の溶出を抑制することができる。十分な効果を得るためには被覆後に被覆材の融点以上に加熱し、融点未満に冷却して溶融被覆を得ることが望ましい。ただし海水のpH上昇や白濁を目標値または規制値以下に抑制する効果が得られるのであれば、必ずしも加熱する必要はない。ガラス質物質粉末としてはガラス粉末のほかに窯業用の釉薬等を用いることができる。
また、必要に応じてガラス質物質にFe、Si、Pの化合物のうち1種以上を含有する材料を混合することにより、これら海洋生物の生育環境に有効な成分が海水中へ溶出し、海洋環境用途材料としての有用性を高めることができる。被覆材に混合する材料としては、工場等で発生する鉄粉や使用後の使い捨てカイロの内容物、赤土などを用いることができる。
本発明ではスラグ粉末成型体に対する被覆の厚み等は特に限定しない。また、必ずしも全表面を被覆する必要はなく、図1の一部のスラグ粉末成型体のように部分的に被覆されていない、または被覆に亀裂等が生じている状態でも構わない。本発明の目的から、海水のpH上昇や白濁を目標値または規制値以下に抑制できれば十分であり、またスラグ中からの有用成分溶出を目的とした場合にはむしろ部分的に被覆されていないほうが効果的である。その場合でも、スラグ粉末と混合したリグニンスルホン酸またはその金属塩の効果により海水のpH上昇や白濁は抑制できるため、海洋環境用途での利用に問題はない。
図2は、スラグ粉末とリグニンスルホン酸またはその金属塩の成型体1とガラス質物質粉末2の混合状態を模式的に示す図である。均一な粉末成型体を得、被覆との密着性のむらを防止するため、十分混合する。混合時間は10分以上であれば十分である。混合方法としては特に限定されず、一般的なミキサーでも十分である。
スラグ粉末とリグニンスルホン酸またはその金属塩を十分混合した後に、所望の大きさ、形状に成型する。成型方法としては特に限定されず、例えば造粒機を用いた造粒や、ポンチ・ダイスやブリケットマシンを用いた加圧成型等が可能である。
得られたスラグ粉末成型体の表層にガラス質物質粉末を接着させて被覆する。成型体の表層に必要に応じて水分または接着剤を付着せしめ、そこにガラス物質粉末を接着させて被覆を形成する。被覆の形成方法は特に限定されず、例えば混合容器内に成型体とガラス物質粉末を装入し、水分や接着剤を添加して混合する、ガラス物質粉末と接着剤を混合した溶液を成型体表層にスプレーする、などの手法を用いることができる。
図3にスラグ粉末成型体の表層にガラス質物質粉末を接着させて被覆する手法の一例を示す。混合容器3内にスラグ粉末とリグニンスルホン酸またはその金属塩の混合成型体1とガラス物質粉末2を装入し、混合して成型体の表層にガラス物質粉末を接着させて被覆を形成する。必要に応じて水分や接着剤を添加することもできる。
また、より確実に効果を得るために被覆後に被覆材の融点以上に加熱し、融点未満に冷却して溶融被覆を得ることも可能である。加熱条件は混合するリグニンスルホン酸またはその金属塩やガラス質物質被覆の熱伝導性、粒子径などによって変えるが、例えば0.1mm以下のガラス粉末の場合では800℃で10分以上保持すれば十分である。
上記の製造方法により提供されるスラグ粉末成型体は、リグニンスルホン酸またはその金属塩を混合することによりスラグ中からの物質溶出に起因するpH上昇を抑制しようとするものである。従って、目的用途である海洋環境用途において利用可能なことに加え、それ以外の高pH環境を好まない用途にも利用できる。
製鋼スラグとして、表1に示す組成を有するスラグ粉末を用意した。表1中、CaOの欄に記載した数値は、f―CaOを含むCaO成分の含有量である。
Figure 0006202719
スラグ粉末とリグニンスルホン酸金属塩粉末を所定の割合で混合し回転ドラム式混合容器で造粒した。その後造粒物と被覆材粉末を回転ドラム式混合容器内に投入し、接着剤として1%リグニンスルホン酸水溶液を適量添加し、十分混合して被覆を形成した。被覆材にはガラス粉末、ガラス粉末と鉄粉(使用済み使い捨てカイロ:T−Fe53.7%,C20%,NaO1.75%,SiO1%,LOI10%)の混合材および釉薬(SiO60.3%,Al15.0%,CaO6.0%、Na3.59%,FeO35.4%,MgO1.7%,LOI5.5%)を用いた。その後成型体を容器から取り出し、所定の条件で加熱して溶融被覆を形成させた。
得られたスラグ粉末成型体各30kgを、pH8.3、温度20℃の人工海水300L中に浸漬し、24h保持する海水浸漬試験に供した。24h保持後の海水を目視観察し、白濁の有無を調べた。また、浸漬試験後の海水のpHを測定した。結果を表2、表3に示す。
Figure 0006202719
Figure 0006202719
表2、表3からわかるように、本発明例の方法で得られたスラグ粉末成型体は海水のpH上昇を抑制する効果に優れ、海水の白濁も認められなかった。比較例であるNo.7はリグニンスルホン酸金属塩の混合および被覆なしで海水に浸漬したもので海水投入後に白濁を生じた。No.8は被覆なしで海水に浸漬した例、No.9、10はリグニンスルホン酸金属塩の混合なしで海水に浸漬した例であり、白濁が生じなかったものの、高いpHを示した。またNo.9、10では表層の被覆されていない部分に白濁物が生成しているのが見られた。
1 スラグ粉末とリグニンスルホン酸金属塩粉末の混合成型体
2 ガラス質物質
3 混合容器

Claims (5)

  1. 製鋼スラグ粉末とリグニンスルホン酸またはその金属塩の混合体と、
    その混合体の表面の少なくとも一部を被覆するガラス質物質である被覆材とを備える
    ことを特徴とするスラグ粉末成型体。
  2. 被覆材は、Fe、Si、Pの化合物のうち1種以上を含有する材料混合されている
    ことを特徴とする請求項1に記載のスラグ粉末成型体。
  3. 製鋼スラグ粉末とリグニンスルホン酸またはその金属塩を容器内で混合後に成型して混合体とし
    その混合体の表面にガラス質物質である被覆被覆する
    ことを特徴とするスラグ粉末成型体の製造方法。
  4. にFe、Si、Pの化合物のうち1種以上を含有する材料を混合する
    ことを特徴とする請求項3に記載のスラグ粉末成型体の製造方法。
  5. 被覆材による被覆後にその被覆材の融点以上に加熱その後融点以下に冷却し混合体の表面にガラス質物質の溶融被覆を生成する
    ことを特徴とする請求項3または4に記載のスラグ粉末成型体の製造方法。
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