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JP6221782B2 - 半導電性樹脂組成物、電力ケーブルおよび電力ケーブルの製造方法 - Google Patents
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半導電性樹脂組成物、電力ケーブルおよび電力ケーブルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、半導電性樹脂組成物、電力ケーブルおよび電力ケーブルの製造方法に関する。
電力ケーブルは、内側から外側に向けて、導体、内部半導電層、絶縁層および外部半導電層によって構成される。これまで、民需用の低電圧の電力ケーブルでは、外部半導電層は、半導電性のテープを巻き付けることにより形成されていた。電力ケーブルを布設する作業者は、当該テープを巻き付けた外部半導電層を剥離して、電力ケーブルの接続を行っていた。しかしながら、テープを巻き付けた外部半導電層の凹凸に起因して部分放電が生じる可能性があり、またテープを巻き付けた外部半導電層の凹凸が水トリー劣化を促進する要因となることから、その被覆性を改善することが望まれていた。
そこで、近年では、外部半導電層の被覆性を改善するため、外部半導電層を絶縁層等とともに同時に押出成形した電力ケーブルが開発されている。3.3kV以上33kV以下の電力ケーブルでは、押出成形した外部半導電層を絶縁層から剥離可能であることが必要とされ、様々な組成を有する電力ケーブルが提供されている。また、電力ケーブルを低コストに製造するため、同時押出を行った後に、シラングラフト・水架橋法により絶縁層を架橋させる方法が用いられている(例えば、特許文献1および2)。
特許第3551755号公報 特許第4399076号公報
しかしながら、発明者等は、シラングラフト・水架橋法による水架橋工程においてドラムに電力ケーブルを巻き付ける際に、外部半導電層の組成に依存して、隣接した電力ケーブルの外部半導電層が相互に接着してしまう可能性があるという課題を見出した。
本発明の目的は、外部半導電層を絶縁層から容易に剥離可能で、且つ水架橋工程において隣接する電力ケーブルの外部半導電層が相互に粘着することを抑制することができる半導電性樹脂組成物、電力ケーブルおよび電力ケーブルの製造方法を提供することである。
本発明の第1の態様によれば、
シラングラフト・水架橋法により架橋される絶縁層の外周に外部半導電層を形成する半導電性樹脂組成物であって、
酢酸ビニルを含むエチレン−酢酸ビニル共重合体と、プロピレン−オレフィン共重合体と、を有するベース樹脂と、
導電性のカーボンブラックと、
を有し、
前記ベース樹脂に対する前記酢酸ビニルの含有量が10質量%以上25質量%未満である
ことを特徴とする半導電性樹脂組成物が提供される。
本発明の第2の態様によれば、
前記ベース樹脂を100重量部としたとき、前記プロピレン−オレフィン共重合体の含有量は1重量部以上50重量部以下である
第1の態様に記載の半導電性樹脂組成物が提供される。
本発明の第3の態様によれば、
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体に対する前記酢酸ビニルの含有量は、25質量%以上50質量%以下である
第1または第2の態様に記載の半導電性樹脂組成物が提供される。
本発明の第4の態様によれば、
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートは、測定温度190℃、荷重2.16kgfとしたとき、0.1g/10min以上10g/10min以下である
第1〜第3の態様のいずれかに記載の半導電性樹脂組成物が提供される。
本発明の第5の態様によれば、
前記プロピレン−オレフィン共重合体のメルトフローレートは、測定温度190℃、荷重2.16kgfとしたとき、1g/10min以上20g/10min以下である
第1〜第4の態様のいずれかに記載の半導電性樹脂組成物が提供される。
本発明の第6の態様によれば、
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の融点は、50℃以上100℃以下である
第1〜第5の態様のいずれかに記載の半導電性樹脂組成物が提供される。
本発明の第7の態様によれば、
前記プロピレン−オレフィン共重合体の融点は、140℃以上180℃以下である
第1〜第6の態様のいずれかに記載の半導電性樹脂組成物が提供される。
本発明の第8の態様によれば、
融点は、100℃以上180℃以下である
第1〜第7の態様のいずれかに記載の半導電性樹脂組成物が提供される。
本発明の第9の態様によれば、
前記ベース樹脂は、ポリプロピレンを含む
第1〜第8の態様のいずれかに記載の半導電性樹脂組成物が提供される。
本発明の第10の態様によれば、
前記カーボンブラックの含有量は、前記ベース樹脂を100重量部としたとき、10重量部以上300重量部以下である
第1〜第9の態様のいずれかに記載の半導電性樹脂組成物が提供される。
本発明の第11の態様によれば、
前記絶縁層は、架橋ポリエチレンからなる
第1〜第10の態様のいずれかに記載の半導電性樹脂組成物が提供される。
本発明の第12の態様によれば、
導体と、
前記導体の外周を覆うように設けられる内部半導電層と、
前記内部半導電層の外周を覆うように設けられ、シラングラフト・水架橋法により架橋される絶縁層と、
前記絶縁層の外周を覆うように設けられる外部半導電層と、
を有し、
前記外部半導電層は、第1〜第11の態様のいずれかに記載の半導電性樹脂組成物により形成される電力ケーブルが提供される。
本発明の第13の態様によれば、
導体の外周に、内側から外側に向けて、内部半導電層、絶縁層および外部半導電層を押出すことにより、ケーブル中間体を形成する押出工程と、
前記ケーブル中間体をドラムに巻き付ける巻付工程と、
前記ケーブル中間体を前記ドラムに巻き付けた状態で、シラングラフト・水架橋法により前記絶縁層を架橋させることにより、電力ケーブルを形成する水架橋工程と、
を有し、
前記押出工程では、
酢酸ビニルを含むエチレン−酢酸ビニル共重合体とプロピレン−オレフィン共重合体とを有するベース樹脂と、導電性のカーボンブラックと、を有し、前記ベース樹脂に対する前記酢酸ビニルの含有量が10質量%以上25質量%未満である半導電性樹脂組成物を用いて、前記外部半導電層を形成する
電力ケーブルの製造方法が提供される。
本発明の第14の態様によれば、
前記水架橋工程では、
前記ケーブル中間体を70℃以上100℃以下で且つ80%RH以上95%RH以下の雰囲気に曝す
第13の態様に記載の電力ケーブルの製造方法が提供される。
本発明によれば、外部半導電層を絶縁層から容易に剥離可能で、且つ水架橋工程において隣接する電力ケーブルの外部半導電層が相互に粘着することを抑制することができる半導電性樹脂組成物、電力ケーブルおよび電力ケーブルの製造方法が提供される。
本発明の一実施形態に係る電力ケーブルの軸方向と直交する断面図である。 本実施例および比較例に係る剥離強度および相互粘着性の指標値を示す図である。
<本発明の一実施形態>
(1)電力ケーブルの構造
本発明の一実施形態に係る電力ケーブルについて、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る電力ケーブル10の軸方向と直交する断面図である。
本実施形態の電力ケーブル10のうち外部半導電層140は、絶縁層130から容易に剥離可能であり、且つ絶縁層130の水架橋工程において隣接する電力ケーブル10の外部半導電層140が相互に粘着することを抑制するよう構成される。以下、詳細を説明する。
(全体構造)
図1に示されているように、電力ケーブル10は、内側から外側に向けて、導体110、内部半導電層120、絶縁層130および外部半導電層140を有する。
(導体)
導体110は、例えば純銅(Cu)または銅合金等からなる複数の導電芯線を撚り合わせてなる銅導体等である。
(内部半導電層)
内部半導電層120は、導体110および絶縁層130の接着性を向上し、導体110の撚り線表面における電界集中を抑制するために、導体110の外周を覆うように設けられる。内部半導電層120は、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体等の少なくともいずれかと、導電性のカーボンブラックと、を有する。
(絶縁層)
絶縁層130は、内部半導電層120の外周を覆うように設けられ、例えば、シラン化合物を遊離ラジカル発生剤によってグラフト共重合させたポリエチレン系樹脂を、シラノール縮合触媒および水分の存在下で架橋させることにより形成される架橋ポリエチレンからなる。このような架橋法は、シラングラフト・水架橋法と呼ばれる。
ここで用いられるポリエチレン系樹脂としては、例えば高圧法低密度ポリエチレン、高圧法中密度ポリエチレン、低圧法低密度ポリエチレン(直鎖状及びメタロセン触媒ポリエチレン)、低圧法中密度ポリエチレン(直鎖状及びメタロセン触媒ポリエチレン)等を、単独、もしくは2種類以上混合して用いることが可能である。
また、ここで用いられるシラン化合物は、一般式:
RR’SiY
で表されるアルコキシシラン化合物である。式中Rは、オレフィン性不飽和炭化水素基またはハイドロカーボンオキシ基であり、ビニル基、アルリル基、ブテニル基、ジクロヘキセニル基、シクロペンタジエニル基等であり、好ましくはビニル基である。Yは、加水分解可能な有機基であり、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基のようなアルコキシ基、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオノキシ基のようなアシロキシ基、その他オキシム基、アルキノアミノ基、アリールアミノ基等であり、好ましくはアルコキシ基である。R’はR基またはY基である。最も好適なシラン化合物は、ビニルアルコキシシランであり、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルジエトキシメチルシラン、ビニルメトキシジメチルシラン、ビニルエトキシジメチルシランの少なくともいずれかである。
また、ここで用いられる遊離ラジカル発生剤は、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ブチルクミルパーオキサイド、イソプロピルクミル−t−ブチルパーオキサイド等の少なくともいずれかである。
シラノール縮合触媒は、ポリエチレン系樹脂中に添加され、あるいは、成形物表面からポリエチレン系樹脂中に浸透させられる。シラノール縮合触媒は、錫、亜鉛、鉄、鉛、コバルト等の金属のカルボン酸塩、有機塩基、無機酸、有機酸などである。具体的には、シラノール縮合触媒は、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクタエート、酢酸第一錫、カブリル酸第一錫、ナフテン酸鉛、カブリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン、硫酸、塩酸などの無機酸、トルエンスルホン酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸などの有機酸等である。
(外部半導電層)
外部半導電層140は、絶縁層130の表面の微細な凹凸からの外部放電を抑制するために絶縁層130の外周を覆うように設けられ、上述のように良好な剥離性および非粘着性を有するよう構成される。本実施形態の外部半導電層140を形成する半導電性樹脂組成物については、詳細を後述する。
(電力ケーブルのその他の構成)
その他、外部半導電層140の外側には、必要に応じて遮蔽層やシースが設けられていても良い。遮蔽層は、例えば外部半導電層140の外周に巻かれた銅テープや、複数の軟銅線等の導電素線が被覆されたワイヤシールド等である。また、被覆層は、例えばポリ塩化ビニル製の被覆材からなる。
(各寸法)
なお、電力ケーブル10における具体的な寸法としては、例えば、導体110の直径は3mm以上60mm以下であり、内部半導電層120の厚さは0.5mm以上3mm以下であり、絶縁層130の厚さは2mm以上10mm以下であり、外部半導電層140の厚さは0.5mm以上3mm以下である。本実施形態の電力ケーブル10に適用される電圧は、例えば3.3kV以上33kV以下である。
(2)半導電性樹脂組成物
本実施形態の外部半導電層140は、例えば、酢酸ビニル(VA)を含むエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)とプロピレン−オレフィン共重合体とを有するベース樹脂と、導電性のカーボンブラックと、を有する半導電性樹脂組成物により形成される。
(エチレン−酢酸ビニル共重合体)
半導電性樹脂組成物のベース樹脂は、多段重合により合成され分子量の大きいエチレン−酢酸ビニル共重合体を有する。エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR)は、JISK7210の試験法により、測定温度190℃、荷重2.16kgfとしたとき、0.1g/10min以上10g/10min以下であることがより好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートが10g/10min以下、すなわち、エチレン−酢酸ビニル共重合体が高分子量化されていることにより、絶縁層130と外部半導電層140との界面における高分子の分子拡散が抑制され、絶縁層130からの剥離性が向上する。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体の融点は、例えば50℃以上100℃以下であり、好ましくは60℃以上80℃以下である。エチレン−酢酸ビニル共重合体の融点が50℃未満である場合、水架橋工程において隣接する電力ケーブルの外部半導電層が粘着する可能性がある。エチレン−酢酸ビニル共重合体の融点が100℃より高い場合、すなわち、エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの含有量が少ない場合、外部半導電層140を構成する半導電性樹脂組成物の極性が低下するため、外部半導電層140が非極性のポリエチレンからなる絶縁層130と接着し易くなる。このため、外部半導電層140の絶縁層130からの剥離性が不十分となる可能性がある。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニルを含む。前駆体としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体に対する酢酸ビニルの含有量は、25質量%以上50質量%以下である。酢酸ビニルが予め定められた含有量で含まれるエチレン−酢酸ビニル共重合体と、後述するプロピレン−オレフィン共重合体と、を所定の混合比率で混合することにより、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量を所望の値に調整することができる。酢酸ビニルの含有量については、さらに詳細を後述する。
なお、エチレン−酢酸ビニル共重合体の硬度は、ショアA65以上80以下である。
(プロピレン−オレフィン共重合体)
半導電性樹脂組成物のベース樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合体に加えて、プロピレン−オレフィン共重合体を有する。ポリエチレンからなる絶縁層130に対して相溶性(接着性)が低いプロピレン−オレフィン共重合体を混合することにより、外部半導電層140の絶縁層130からの剥離性が向上する。
本実施形態でのプロピレン−オレフィン共重合体は、ポリプロピレンの結晶の大きさをナノオーダーで制御した共重合体である。本実施形態でのプロピレン−オレフィン共重合体は、プロピレンに由来する構成単位と、及び炭素数2以上のオレフィンに由来する構成単位と、を含む。炭素数2以上のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等である。炭素数2以上のオレフィンは単独で用いても良く、2種類以上を併用してもよい。
また、プロピレン−オレフィン共重合体の密度は、850kg/m以上900kg/m以下、好ましくは860kg/m以上880kg/m以下である。
また、プロピレン−オレフィン共重合体のショアA硬度は、70以上85以下である。プロピレン−オレフィン共重合体の硬度が上記範囲内であることにより、エチレン−酢酸ビニル共重合体との混練性、相溶性を向上させることができる。
また、プロピレン−オレフィン共重合体の融点は、エチレン−酢酸ビニル共重合体の融点よりも高く、水架橋工程における温度以上である。具体的には、上述のようにエチレン−酢酸ビニル共重合体の融点が50℃以上100℃以下であるのに対して、プロピレン−オレフィン共重合体の融点は、140℃以上180℃以下である。このように、ベース樹脂に含まれるプロピレン−オレフィン共重合体の融点が高いことにより、半導電性樹脂組成物全体としての融点を高く維持することができる。これにより、水架橋工程において隣接する電力ケーブル10の外部半導電層140が相互に粘着することを抑制することができる。
また、プロピレン−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、JISK7210の試験法により、測定温度190℃、荷重2.16kgfとしたとき、1g/10min以上20g/10min以下である。プロピレン−オレフィン共重合体のMFRが上記範囲内であること、すなわちプロピレン−オレフィン共重合体の分子量が大きいことにより、外部半導電層140から絶縁層130への分子の拡散が抑制され、外部半導電層140を絶縁層130から剥離し易くすることができる。
また、ベース樹脂に対するプロピレン−オレフィン共重合体の混合比率は、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が所望の値となるように調整される。具体的には、ベース樹脂を100重量部としたとき、プロピレン−オレフィン共重合体の含有量は、1重量部以上50重量部以下である(すなわち、エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量は50重量部以上99重量部以下である)。プロピレン−オレフィン共重合体の含有量が上記上限値より大きい場合、絶縁層130から外部半導電層140を剥離するときの剥離強度が50N/0.5inch以上となり、絶縁層130から外部半導電層140を剥離することが困難となる。
また、上述のように、ベース樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体に比較して高融点のプロピレン−オレフィン共重合体を所定の含有量で有することにより、半導電性樹脂組成物の全体としての融点を高くすることができる。具体的には、半導電性樹脂組成物の全体としての融点は、100℃以上180℃以下に調整される。これにより、水架橋工程において外部半導電層140の粘着や変形を抑制し、電力ケーブル10を使用した際の加熱による変形を抑制することができる。
また、後述するように、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が大きいほど、隣接する電力ケーブル10の外部半導電層140が相互に粘着してしまう可能性がある。本実施形態では、ベース樹脂に含まれるプロピレン−オレフィン共重合体の融点がエチレン−酢酸ビニル共重合体の融点よりも高いことにより、ベース樹脂が所定量の酢酸ビニルを含有した状態でも半導電性樹脂組成物全体としての融点を高く維持することができ、水架橋工程における外部半導電層140の非粘着性を向上させることができる。したがって、外部半導電層140の剥離性と非粘着性とを両立するように、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量を最適化することができる。
なお、ベース樹脂は、複数種のプロピレン−オレフィン共重合体を含んでいても良い。
また、ベース樹脂は、プロピレン−オレフィン共重合体に加え、単独重合体のポリプロピレンを含んでいても良い。ここで、ポリプロピレンの融点は、140℃以上180℃以下であり、ポリプロピレンのロックウェル硬度は、80以上である。ベース樹脂に混合されるポリプロピレンの硬度がエチレン−酢酸ビニル共重合体の硬度よりも高いことにより、外部半導電層140の絶縁層130からの剥離性が向上する。また、ベース樹脂に混合されるポリプロピレンの融点がエチレン−酢酸ビニル共重合体よりも高いことにより、水架橋工程における外部半導電層140の非粘着性が向上する。
(酢酸ビニルの含有量)
上述のようにエチレン−酢酸ビニル共重合体とプロピレン−オレフィン共重合体との混合比を調整することにより、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量は、10質量%以上25質量%未満に調整される。
ここで、絶縁層130から外部半導電層140を剥離するときの剥離強度は、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量に対して単調に減少する。ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が多いほど、外部半導電層140を構成する半導電性樹脂組成物の極性が大きくなることにより、外部半導電層140を絶縁層130から剥離し易くなる。したがって、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が上記下限値以上であることにより、絶縁層130から外部半導電層140を剥離するときの剥離強度を50N/0.5インチ以下とすることができる。
一方で、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が大きいほど、半導電性樹脂組成物の融点が低下する。このため、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が所定量を超えると、水架橋工程において、隣接する電力ケーブル10の外部半導電層140が粘着し易くなる。本実施形態ではベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が上記上限値以下であることにより、水架橋工程において、隣接する電力ケーブル10の外部半導電層140が粘着することを抑制することができる。
(カーボンブラック)
半導電性樹脂組成物は、導電性のカーボンブラックを有する。カーボンブラックは、例えばファーネスブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックの少なくともいずれかである。カーボンブラックの含有量は、所望の導電性に応じて設定され、例えば、ベース樹脂を100重量部としたとき、カーボンブラックの含有量は、10重量部以上300重量部以下であり、好ましくは10重量部以上100重量部以下である。カーボンブラックの含有量が10重量部以上であることにより、外部半導電層140の体積固有抵抗値が100Ω・cm未満となり、外部半導電層140として充分な導電性が得られる。一方、カーボンブラックの含有量が300重量部以下であることにより、電力ケーブル10を安定的に押出成形することができ、電力ケーブル10の良好な機械的特性が得られる。
(半導電性樹脂組成物のその他の構成)
半導電性樹脂組成物は、上記の構成物のほかに、添加剤として、酸化防止剤、銅害防止剤、受酸剤等を含んでいても良い。酸化防止剤は、例えば2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール等である。銅害防止剤は、例えば1,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン、2−ヒドロキシ−N−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イルベンズアミド、N’1,N’12−ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン等である。受酸剤は、湿熱環境下で使用される際に導体110の変色を抑えるために用いられ、例えばハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等である。
なお、外部半導電層140は、非架橋でも架橋されてもよい。外部半導電層140の架橋方法としては、例えば絶縁層130と同様の架橋法、すなわちシラングラフト・水架橋法が用いられる。この場合、半導電性樹脂組成物は、上述のシラン化合物、遊離ラジカル発生剤、およびシラノール縮合触媒を含んでいても良い。
(3)半導電性樹脂組成物の製造方法
本発明の一実施形態に係る半導電性樹脂組成物の製造方法について説明する。
バンバリミキサを用い、以下のように半導電性樹脂組成物を構成する材料を混練する。まず、バンバリミキサのホッパ部から、酢酸ビニルを含むエチレン−酢酸ビニル共重合体とプロピレン−オレフィン共重合体とを有するベース樹脂と、導電性のカーボンブラックと、を投入する。
このとき、前駆体としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体に対する酢酸ビニルの含有量は、使用する材料の組成によって25質量%以上50質量%以下に予め定められている。また、ベース樹脂を100重量部としたとき、プロピレン−オレフィン共重合体を、1重量部以上50重量部以下の範囲で、エチレン−酢酸ビニル共重合体とプロピレン−オレフィン共重合体と混合する。これにより、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量を、10質量%以上25質量%未満となるように調整する。なお、半導電性樹脂組成物の添加剤として、酸化防止剤、銅害防止剤、受酸剤等を同時に投入してもよい。
次に、バンバリミキサのホッパ部からケーシングに上記の材料を押し込んでいく。材料を噛み込むようにロータを回転させることにより、ロータおよびケーシングの間で発生する剪断力を材料に加え、材料を混練する。
次に、材料の混練が所定時間終了したとき、バンバリミキサの排出口を開け、混練物を排出する。次に、バンバリミキサから排出された混練物をペレット状に成形する。以上により、半導電性樹脂組成物が製造される。
(4)電力ケーブルの製造方法
本発明の一実施形態に係る電力ケーブル10の製造方法について説明する。
(押出工程S110)
まず、3層同時押出機のうち、内部半導電層120を形成する押出し機Aに、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体等と、導電性のカーボンブラックと、を所定の割合で混合したペレットを投入する。押出し機Aの温度は、例えば150℃以上230℃以下である。
次に、絶縁層130を形成する押出し機Bに、例えば、直鎖状ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ビニルアルコキシシラン等のシラン化合物、ジクミルパーオキサイド等の遊離ラジカル発生剤、およびジブチル錫ジラウレート等のシラノール縮合触媒を所定の割合で投入し、加熱して混練する。押出し機Bの温度は、例えば150℃以上230℃以下である。これにより、ポリエチレン系樹脂を遊離ラジカル発生剤によってグラフト共重合させる。
次に、外部半導電層140を形成する押出し機Cに、酢酸ビニルを含むエチレン−酢酸ビニル共重合体とプロピレン−オレフィン共重合体とを有するベース樹脂と、導電性のカーボンブラックと、を有し、上記のようにペレット状に混練された半導電性樹脂組成物を投入する。また、押出し機Cの温度は、例えば150℃以上230℃以下である。
次に、押出し機A〜Cからのそれぞれの混合物をコモンヘッドに導き、導体110の外周に、内側から外側に向けて、内部半導電層120、絶縁層130および外部半導電層140を同時に押出すことにより、ケーブル中間体(押出成形物)を形成する。
(巻付工程S120)
次に、3層同時押出機からケーブル中間体を押出しながら、ケーブル中間体をドラムに巻き付けていく。
(水架橋工程S130)
次に、ケーブル中間体をドラムに巻き付けた状態で、所定の温度および湿度に保たれた恒温恒湿室に投入する。これにより、シラングラフト・水架橋法により絶縁層130を架橋させることによって、電力ケーブル10を形成する。
このとき、恒温恒湿室において、ケーブル中間体を70℃以上100℃以下で且つ80%RH以上95%RH以下の雰囲気に12時間以上48時間以下曝す。ケーブル中間体を上記の雰囲気に曝すことにより、水蒸気を外部半導電層140を介して絶縁層130に透過させ、絶縁層130を安定的に水架橋させることができる。
以上により、本実施形態に係る電力ケーブル10が製造される。
(5)本実施形態に係る効果
本実施形態やその変形例によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
(a)本実施形態によれば、シラングラフト・水架橋法により架橋される絶縁層の外周に外部半導電層を形成するため、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が10質量%以上25質量%未満である半導電性樹脂組成物が用いられる。
ここで、絶縁層130から外部半導電層140を剥離するときの剥離強度(剥離力)は、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量に対して単調に減少する。ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が多いほど、外部半導電層140を構成する半導電性樹脂組成物の極性が大きくなり、絶縁層130および外部半導電層140の溶解性パラメータの差が大きくなる。これにより、外部半導電層140を絶縁層130から容易に剥離することができる。本実施形態では、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が10質量%以上であることにより、絶縁層130から外部半導電層140を剥離するときの剥離強度を50N/0.5inch以下とすることができる。
一方で、発明者等は、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が大きいほど、水架橋工程において隣接する電力ケーブル10の外部半導電層140が相互に粘着してしまう可能性があることを見出した。ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が大きいほど、半導電性樹脂組成物の融点が低下する。このため、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が所定量を超えると、水架橋工程において、隣接する電力ケーブル10の外部半導電層140が粘着し易くなる。本実施形態では、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が25質量%未満であることにより、水架橋工程においてドラムにケーブルを巻き付ける際に、隣接する電力ケーブル10の外部半導電層140が粘着することを抑制することができる。
したがって、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が10質量%以上25質量%未満であることにより、外部半導電層140を絶縁層130から剥離可能とすること(剥離性)と、水架橋工程において隣接する電力ケーブル10の外部半導電層140が相互に粘着することを抑制すること(非粘着性)とを両立することができる。
(b)本実施形態によれば、半導電性樹脂組成物のベース樹脂は、プロピレン−オレフィン共重合体を有する。
ここで、比較例として、ベース樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体に加え、高密度ポリエチレンやエチレン−オレフィン共重合体を用いた場合について考える。高密度ポリエチレンやエチレン−オレフィン共重合体などのエチレン系重合体は、同じくエチレン系としてポリエチレンからなる絶縁層130に対して相溶性(接着性)が高い。このため、ベース樹脂として高密度ポリエチレンやエチレン−オレフィン共重合体を用いた外部半導電層を絶縁層から剥離することが困難となる可能性がある。また、高密度ポリエチレンの融点は120〜140℃でありエチレン−酢酸ビニル共重合体の融点(50〜100℃)よりも高いが、エチレン−オレフィン共重合体の融点は50〜100℃であり、エチレン−酢酸ビニル共重合体の融点に近い。このため、ベース樹脂としてエチレン−オレフィン共重合体を用いた場合、水架橋工程において、隣接する電力ケーブルの外部半導電層が相互に粘着してしまう可能性がある。このように、高密度ポリエチレンやエチレン−オレフィン共重合体などのエチレン系重合体をベース樹脂として用いた場合では、外部半導電層の剥離性と非粘着性とを両立することが困難である可能性がある。
これに対して、本実施形態によれば、ポリエチレンからなる絶縁層130に対して相溶性(接着性)が低いプロピレン系重合体としてプロピレン−オレフィン共重合体を混合することにより、外部半導電層140の絶縁層130からの剥離性を向上させることができる。また、ベース樹脂に含まれるプロピレン−オレフィン共重合体の融点がエチレン−酢酸ビニル共重合体の融点よりも高いことにより、ベース樹脂が所定量の酢酸ビニルを含有した状態でも半導電性樹脂組成物全体としての融点を高く維持することができ、水架橋工程における外部半導電層140の非粘着性を向上させることができる。したがって、本実施形態では、剥離性と非粘着性とを両立するように、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量を最適化することができる。
(c)本実施形態によれば、エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR)は、JISK7210の試験法により、測定温度190℃、荷重2.16kgfとしたとき、0.1g/10min以上10g/10min以下である。エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートが10g/10min以下、すなわち、エチレン−酢酸ビニル共重合体が高分子量化されていることにより、絶縁層130と外部半導電層140との界面における高分子の分子拡散が抑制され、絶縁層130からの剥離性が向上する。
(d)本実施形態によれば、プロピレン−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、測定温度190℃、荷重2.16kgfのとき、1g/10min以上20g/10min以下である。プロピレン−オレフィン共重合体のMFRが上記範囲内であること、すなわちプロピレン−オレフィン共重合体の分子量が大きいことにより、外部半導電層140から絶縁層130への分子の拡散が抑制され、外部半導電層140を絶縁層130から剥離し易くすることができる。
(e)本実施形態によれば、例えば3層同時押出により、内部半導電層120および絶縁層130とともに、上記した半導体樹脂組成物を用いて外部半導電層140を形成することにより、ケーブル中間体を形成する。その後、ケーブル中間体をドラムに巻き付けた状態で、シラングラフト・水架橋法により絶縁層130を架橋させる。これにより、熱架橋に用いられる大きな設備を必要とせず、低コストに電力ケーブル10を製造することができる。
(f)本実施形態によれば、前駆体としてのエチレン−酢酸ビニル共重合体に対する酢酸ビニルの含有量は、使用する材料の組成によって25質量%以上50質量%以下に予め定められている。また、ベース樹脂を100重量部としたとき、プロピレン−オレフィン共重合体を、1重量部以上50重量部以下の範囲で、エチレン−酢酸ビニル共重合体とプロピレン−オレフィン共重合体と混合する。これにより、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量を、10質量%以上25質量%未満となるように調整する。このように、酢酸ビニルが予め定められた含有量で含まれるエチレン−酢酸ビニル共重合体と、プロピレン−オレフィン共重合体と、を所定の混合比率で混合することにより、容易にベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量を所望の値に調整することができる。
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
上述の実施形態では、導体の外周に、内側から外側に向けて、内部半導電層、絶縁層および外部半導電層を同時に押出すことにより、ケーブル中間体を形成する、いわゆる3層同時押出の方法について説明したが、内部半導電層と絶縁層の2層を同時に押出した直後に、外部半導電層を押出すタンデム方式で押出すことも可能である。
次に、本発明に係る実施例について比較例と共に説明する。
(1)半導電性樹脂組成物の作製
以下の表1〜4に示すように、実施例1〜22、比較例1〜6の半導電性樹脂組成物を作製した。
実施例1〜7として、1種類のプロピレン−オレフィン共重合体を用いた半導電性樹脂組成物を作製し、実施例8〜13として、複数のプロピレン−オレフィン共重合体を混合した半導電性樹脂組成物を作製し、実施例14〜22として、プロピレン−オレフィン共重合体にポリプロピレンを混合した半導電性樹脂組成物を作製した。比較例1〜3として、ベース樹脂に対するVA濃度が所定範囲外である半導電性樹脂組成物を作製し、比較例4として、プロピレン−オレフィン共重合体を含まない半導電性樹脂組成物を作製し、比較例5として、プロピレン−オレフィン共重合体の代わりに高密度ポリエチレンを用いた半導電性樹脂組成物を作製し、比較例6として、プロピレン−オレフィン共重合体の代わりにエチレン−オレフィン共重合体を用いた半導電性樹脂組成物を作製した。
各々の材料の詳細は、以下のとおりである。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA):三井・デュポン ポリケミカル製
EV170 酢酸ビニル含有量33質量% MFR1.0g/10min
EV270 酢酸ビニル含有量28質量% MFR1.0g/10min
EV45LX 酢酸ビニル含有量46質量% MFR2.5g/10min
V523 酢酸ビニル含有量33質量% MFR14.0g/10min

プロピレン−オレフィン共重合体:三井化学製
タフマーPN−2070
融点140℃ ショアA硬度75 MFR3.2g/10min
タフマーPN−3560
融点160℃ ショアA硬度72 MFR2.7g/10min
タフマーPN−2060
融点160℃ ショアA硬度84 MFR2.7g/10min
タフマーPN−20300
融点160℃ ショアD硬度84 MFR14g/10min

実施例13〜21でのポリプロピレン:日本ポリプロ製
ノバテックPP EC7 融点140℃以上170℃以下 ロックウェル硬度80
ノバテックPP EC9 融点140℃以上170℃以下 ロックウェル硬度80

比較例5での高密度ポリエチレン:プライムポリマー製
ハイゼックス5305E

比較例6でのエチレン−オレフィン共重合体
エチレン系タフマー タフマーDF

カーボンブラック:東海カーボン製
シーストG117

その他、酸化防止剤:大内新興化学工業製
ノクラック300

銅害防止剤:
Chemtura製 Lowinox MD24
ADEKA製 CDA−1

受酸剤:
堺化学工業製 ハイドロタルサイト
神島化学工業製 酸化マグネシウム
(2)試験片の作製
表1〜4に示されている半導電性樹脂組成物を評価するために、以下のようにしてシートサンプルを作製した。
まず、直鎖状ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ビニルアルコキシシラン等のシラン化合物、ジクミルパーオキサイド等の遊離ラジカル発生剤、およびジブチル錫ジラウレート等のシラノール縮合触媒を所定の割合で且つ190℃で混練し、熱プレス成形機にて絶縁層に相当するシートを作製した。
次に、実施例1〜22、比較例1〜6の半導電性樹脂をバンバリミキサにより混練し、熱プレス成形機にて外部半導電層に相当するシートを作製した。
次に、上記した二枚のシートを所定圧力で圧縮した状態で、80℃95%RHの恒温恒湿室に12時間曝すことにより、絶縁層の水架橋を行った。以上により、シートサンプルを作製した。
(3)試験
上記したシートサンプルを用い、以下の試験を行った。
(剥離試験)
AEIC−CS5で規定される方法により、0.5インチ幅のシートサンプルを用い、絶縁層と、実施例1〜22、比較例1〜6に係る外部半導電層と、の剥離力(剥離強度)を測定した。
(相互粘着性試験)
2つのシートサンプルを外部半導電層が対向するように重ね、一定の荷重をかけた状態で、水架橋時と同じ温度に保たれた恒温槽に投入し、12時間放置した。その後、2つのシートサンプルを剥離し、その際の剥離具合によって各実施例に指標値を付与した。指標値0は、全く粘着していない状態、指標値10は一部粘着しているものの剥離可能である状態、指標値20は全体が粘着しているものの剥離可能である状態、指標値30は粘着して全く剥離することができない状態である。剥離0および10の場合を良好な非粘着性を有している状態として評価した。
(4)結果
(VA含有量について)
図2は、本実施例および比較例に係る剥離強度および相互粘着性の指標値を示す図である。図2の横軸は、ベース樹脂に対するVAの含有量(質量%)を示し、図2の左軸は、剥離強度(剥離力)(N/0.5インチ)を示し、図2の右軸は、相互粘着性の指標値を示している。なお、比較例4〜7は図2にプロットされていない。
図2に示されているように、絶縁層から外部半導電層を剥離するときの剥離強度は、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量に対して単調に減少する。ベース樹脂に対するVAの含有量が9.9質量%のとき(比較例2)、剥離力は50N/0.5インチ以上であった。したがって、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量に対して単調に減少することから、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が10質量%以上のとき、剥離強度は50N/0.5inch以下となる。
一方、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が大きいほど、相互粘着性の指標値が大きくなる。ベース樹脂に対するVAの含有量が23.1質量%のとき(例えば実施例1〜3)、シートサンプルは一部粘着しているものの剥離可能である状態となり、指標値は10であった。一方、ベース樹脂に対するVAの含有量が26.4質量%のとき(比較例3)、シートサンプルは全体的に粘着しているものの剥離可能である状態であり、指標値は20であった。すなわち、ベース樹脂に対するVAの含有量が25質量%以上のとき、シートサンプルの相互粘着性が変化し、指標値が上昇している。
以上の結果により、実施例1〜22では、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が10質量%以上25質量%未満であることにより、剥離性と非粘着性とを両立することができることが分かる。
(プロピレン−オレフィン共重合体について)
表4に示されているように、プロピレン−オレフィン共重合体を含まない比較例4では、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が10質量%以上25質量%未満の範囲内であるが、剥離強度は低いものの、相互粘着性の指標値が高かった。プロピレン−オレフィン共重合体を含まないため、ベース樹脂の融点が低くかったことが原因と考えられる。
また、プロピレン−オレフィン共重合体の代わりに高密度ポリエチレンを用いた比較例5では、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が10質量%以上25質量%未満の範囲内であるにもかかわらず、相互粘着性の指標値は低いものの、剥離強度が高かった。高密度ポリエチレンは絶縁層と同じポリエチレンであるため、高密度ポリエチレンの絶縁層に対する相溶性は高くなる。このため、剥離強度が高かったと考えられる。なお、図示されていないが、高密度ポリエチレンを用いた場合においても、実施例と同様に、絶縁層から外部半導電層を剥離するときの剥離強度はベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量に対して単調に減少する傾向を示し、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が大きいほど、相互粘着性が悪化する傾向を示すことが分かった。しかしながら、高密度ポリエチレンを用いた場合では、剥離性と非粘着性とを両立するように、ベース樹脂の組成やベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量等を最適化することが困難であった。
また、プロピレン−オレフィン共重合体の代わりにエチレン−オレフィン共重合体を用いた比較例6では、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量が10質量%以上25質量%未満の範囲内であるにもかかわらず、相互粘着性の指標値は高く、剥離強度も高かった。エチレン−オレフィン共重合体は絶縁層と同じエチレン系重合体であるため、エチレン−オレフィン共重合体の絶縁層に対する相溶性は高くなる。このため、剥離強度が高かったと考えられる。加えて、エチレン−オレフィン共重合体の融点は低いため、半導電性樹脂組成物が相互に粘着しやすく、相互粘着性の指標値が高かったと考えられる。また、エチレン−オレフィン共重合体を用いた場合、高密度ポリエチレンを用いた場合と同様にして、剥離性と非粘着性とを両立するように、ベース樹脂の組成やベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量等を最適化することが困難であった。
これに対して、実施例1〜22では、ベース樹脂が絶縁層130に対して相溶性(接着性)が低いプロピレン系重合体としてプロピレン−オレフィン共重合体であるタフマーPNを有することにより、剥離性と非粘着性とを両立するように、ベース樹脂に対する酢酸ビニルの含有量の最適な範囲を見出すことができた。
(エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRについて)
表1に示されているように、エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRが14g/10minである実施例7では、相互粘着性の指標値は低いものの、剥離強度が40N/0.5inchであった。エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRが高く、すなわちエチレン−酢酸ビニル共重合体の分子量が低かったため、絶縁層と外部半導電層との界面で高分子の分子拡散が生じ、絶縁層と外部半導電層が接着してしまったと考えられる。
これに対して、実施例1〜6、8〜22では、エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRが10g/10min以下であることにより、剥離強度が30N/0.5inch以下であり、実施例7での剥離強度に比べて低かった。エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRが10g/10min以下、すなわち、エチレン−酢酸ビニル共重合体が高分子量化されていることにより、絶縁層と外部半導電層との界面における高分子の分子拡散が抑制され、絶縁層からの剥離性が向上したと考えられる。
(その他)
なお、実施例1〜13を比較したとき、それぞれの実施例において用いられたタフマーPNの融点およびMFRが異なるが、実施例1〜13は、ほぼ同等の剥離性および相互粘着性を示した。このことから、タフマーPNの材料の違い、すなわちプロピレン−オレフィン共重合体の材料の違いによる剥離性および相互粘着性への影響は小さいと考えられる。
また、実施例14〜22を比較したとき、それぞれの実施例において用いられたノバテックPPの融点およびMFRが異なるが、実施例14〜22は、ほぼ同等の剥離性および相互粘着性を示した。このことから、ノバテックPPの材料の違い、すなわちポリプロピレンの材料の違いによる剥離性および相互粘着性への影響は小さいと考えられる。
また、酸化防止剤、銅害防止剤、および受酸剤を含まない実施例(6、13、22)や、異なる酸化防止剤、銅害防止剤、および受酸剤を含む実施例や、これらを異なる配合部数で含む実施例もそれぞれ同様の傾向を示したことから、酸化防止剤、銅害防止剤、および受酸剤は、剥離性および相互粘着性に影響しないと考えられる。
(5)半導電性樹脂組成物の製造
上記結果に基づいて、以下のようにして半導電性樹脂組成物を製造した。
バンバリミキサを用い、例えば、実施例1、8、または17の半導電性樹脂組成物を構成する材料を混練し、バンバリミキサから排出された混練物をペレット状に成形した。これにより、実施例1、8、または17に係る半導電性樹脂組成物を得た。
(6)電力ケーブルの製造
上記結果に基づいて、以下のようにして電力ケーブルを製造した。
まず、3層同時押出機のうち、内部半導電層を形成する押出し機Aに、エチレン−酢酸ビニル共重合体と、導電性のカーボンブラックと、を所定の割合で混合したペレットを投入した。押出し機Aの温度を、例えば230℃以下とした。
次に、絶縁層を形成する押出し機Bに、直鎖状ポリエチレン、ビニルアルコキシシラン、ジクミルパーオキサイド、およびジブチル錫ジラウレートを所定の材料を所定の割合で投入し、加熱して混練した。押出し機Bの温度は、例えば230℃以下とした。
次に、外部半導電層を形成する押出し機Cに、例えば、実施例1、8、または17の半導電性樹脂組成物のそれぞれのペレットを投入した。押出し機Cの温度は、例えば230℃以下とした。
次に、内部半導電層、絶縁層および外部半導電層を同時に押出すことにより、ケーブル中間体を形成し、ケーブル中間体をドラムに巻き付けた。
次に、ケーブル中間体をドラムに巻き付けた状態で、70℃95%RHに保たれた恒温恒湿室に投入した。これにより、シラングラフト・水架橋法により絶縁層を架橋させた。以上により、実施例1、7、または16に係る電力ケーブルを得た。
このとき、水架橋工程後において、隣接する電力ケーブルは、相互に粘着することなく剥離可能であった。また、製造後の電力ケーブルにおいて、外部半導電層を絶縁層から容易に剥離することができた。
10 電力ケーブル
110 導体
120 内部半導電層
130 絶縁層
140 外部半導電層

Claims (17)

  1. シラングラフト・水架橋法により架橋される絶縁層の外周に外部半導電層を形成する半導電性樹脂組成物であって、
    酢酸ビニルを含むエチレン−酢酸ビニル共重合体と、プロピレン−オレフィン共重合体と、を有するベース樹脂と、
    導電性のカーボンブラックと、
    を有し、
    前記プロピレン−オレフィン共重合体の融点が前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の融点よりも高く、且つ、前記絶縁層の水架橋温度以上であり、
    前記ベース樹脂に対する前記酢酸ビニルの含有量が10質量%以上25質量%未満である
    ことを特徴とする半導電性樹脂組成物。
  2. 前記ベース樹脂を100重量部としたとき、前記プロピレン−オレフィン共重合体の含有量は1重量部以上50重量部以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載の半導電性樹脂組成物。
  3. 前記エチレン−酢酸ビニル共重合体に対する前記酢酸ビニルの含有量は、25質量%以上50質量%以下である
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の半導電性樹脂組成物。
  4. 前記エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートは、測定温度190℃、荷重2.16kgfとしたとき、0.1g/10min以上10g/10min以下である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導電性樹脂組成物。
  5. 前記エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートは、測定温度190℃、荷重2.16kgfとしたとき、0.1g/10min以上1.0g/10min以下である
    ことを特徴とする請求項4に記載の半導電性樹脂組成物。
  6. 前記プロピレン−オレフィン共重合体のメルトフローレートは、測定温度190℃、荷重2.16kgfとしたとき、1g/10min以上20g/10min以下である
    ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の半導電性樹脂組成物。
  7. 前記プロピレン−オレフィン共重合体のメルトフローレートは、測定温度190℃、荷重2.16kgfとしたとき、1.58g/10min以上20g/10min以下である
    ことを特徴とする請求項6に記載の半導電性樹脂組成物。
  8. 前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の融点は、50℃以上100℃以下である
    ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の半導電性樹脂組成物。
  9. 前記プロピレン−オレフィン共重合体の融点は、140℃以上180℃以下である
    ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の半導電性樹脂組成物。
  10. 前記半導電性樹脂組成物の融点は、100℃以上180℃以下である
    ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の半導電性樹脂組成物。
  11. 前記プロピレン−オレフィン共重合体のショアA硬度は、70以上85以下である
    ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の半導電性樹脂組成物。
  12. 前記ベース樹脂は、ポリプロピレンを含む
    ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の半導電性樹脂組成物。
  13. 前記カーボンブラックの含有量は、前記ベース樹脂を100重量部としたとき、10重量部以上300重量部以下である
    ことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の半導電性樹脂組成物。
  14. 前記絶縁層は、架橋ポリエチレンからなる
    ことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の半導電性樹脂組成物。
  15. 導体と、
    前記導体の外周を覆うように設けられる内部半導電層と、
    前記内部半導電層の外周を覆うように設けられ、シラングラフト・水架橋法により架橋される絶縁層と、
    前記絶縁層の外周を覆うように設けられる外部半導電層と、
    を有し、
    前記外部半導電層は、請求項1〜14のいずれか1項に記載の半導電性樹脂組成物により形成される
    ことを特徴とする電力ケーブル。
  16. 導体の外周に、内側から外側に向けて、内部半導電層、絶縁層および外部半導電層を押出すことにより、ケーブル中間体を形成する押出工程と、
    前記ケーブル中間体をドラムに巻き付ける巻付工程と、
    前記ケーブル中間体を前記ドラムに巻き付けた状態で、シラングラフト・水架橋法により前記絶縁層を架橋させることにより、電力ケーブルを形成する水架橋工程と、
    を有し、
    前記押出工程では、
    酢酸ビニルを含むエチレン−酢酸ビニル共重合体とプロピレン−オレフィン共重合体とを有するベース樹脂と、導電性のカーボンブラックと、を有し、前記プロピレン−オレフィン共重合体の融点が前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の融点よりも高く、且つ、前記絶縁層の水架橋温度以上であり、前記ベース樹脂に対する前記酢酸ビニルの含有量が10質量%以上25質量%未満である半導電性樹脂組成物を用いて、前記外部半導電層を形成する
    ことを特徴とする電力ケーブルの製造方法。
  17. 前記水架橋工程では、
    前記ケーブル中間体を70℃以上100℃以下で且つ80%RH以上95%RH以下の雰囲気に曝す
    ことを特徴とする請求項16に記載の電力ケーブルの製造方法。
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