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JP6265331B2 - セロビオースリピッドの塩及びその用途 - Google Patents
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JP6265331B2 - セロビオースリピッドの塩及びその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、セロビオースリピッドの塩及びその用途に関する。
糖脂質は、糖部分の性質に由来する親水性と脂質部分の性質に由来する親油性の2つの性質を併せ持つ両親媒性物質であり、界面活性剤としての機能を有する。生体中には各種の両親媒性物質が存在し、様々な界面で物質、エネルギー、情報等の交換に関与し、生体の秩序形成に大きな役割を果たしている。
これらの界面活性物質を生産する微生物の存在が知られている。この微生物由来の界面活性剤(バイオサーファクタント)は、安全性が高く、生分解性に優れることから、合成界面活性剤と比較して環境に対する負荷が少なく、さらに、合成では容易に作り出せないような複雑な構造をしており、優れた生理機能を有することが知られている。例えば、糖脂質系のバイオサーファクタントは、それ自体の保湿効果が高いことが知られており、化粧品等の成分として利用されることが期待されている。バイオサーファクタントはこのような特異性を持つことから、食品工業、化粧品工業、医薬品工業、化学工業、環境分野等の各方面において研究が進められている。
近年、糖脂質系バイオサーファクタントの一種であるセロビオースリピッドが、抗真菌活性を示すことが報告され、注目を集めている(非特許文献1参照)。セロビオースリピッドは、ウスチラゴ メイディス(Ustilago maydis)やクリプトコッカス フミコーラ(Cryptococcus humicola)によって生産されることが知られている(非特許文献2参照)。また、シュードザイマ フロキュローサ(Pseudozyma flocculosa)もセロビオースリピッドの一種であるフロキュロシンを生産することが知られている(非特許文献3参照)。さらに、ウスチラゴ エスキュレンタ(Ustilago esculenta)はセロビオースリピッドを大量に生産できることが知られている(特許文献1参照)。
また、セロビオースリピッドは、洗剤、化粧品等の幅広い分野で工業利用が進められており、例えば、リポソーム形成剤(特許文献2参照)、乳化剤・可溶化剤(特許文献3参照)、タンパク質分離用担体(特許文献4参照)、低分子オルガノゲル(特許文献5参照)などの利用例が報告されている。
特開2004−254595号公報 特開2006−028069号公報 特開2007−181789号公報 特開2006−219455号公報 特開2012−176904号公報
J. Oleo Sci., Vol.58, No.3, p.133-140, 2009 Biochim. Biophys. Acta, Vol.1558, No.2, p.161-170, 2002 Appl. Environ. Microbiol., Vol.69, No.5, p.2595-2602, 2013
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、セロビオースリピッドの改良技術及び新たな用途等を提供することを一つの目的とする。
セロビオースリピッドは通常、水に難溶性を示すが、本発明者らは、セロビオースリピッドの塩を調製し、水性溶媒への溶解性を検討したところ、驚くべきことに、セロビオースリピッドの塩が水性溶媒に容易に溶解することを見出した。さらに驚くべきことに、セロビオースリピッドの塩を含む水溶液が、水性ゲル及び水性ゾルを形成することを見出した。そして、当該水性ゲルが、比較的小さなひずみでゲル状態からゾル状態へと転移すること、及び温度に依存してゲル状態からゾル状態へまたゾル状態からゲル状態へと可逆的に転移することなどの優れた特性を有することを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づき、さらなる研究・考察を重ねることにより本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、代表的には、以下の項に記載の発明を提供する。
項1.
セロビオースリピッドの塩。
項2.
塩が、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である、上記項1に記載のセロビオースリピッドの塩。
項3.
アルカリ金属塩が、ナトリウム塩又はカリウム塩である、上記項2に記載のセロビオースリピッドの塩。
項4.
上記項1〜3のいずれかに記載のセロビオースリピッドの塩を含む組成物。
項5.
セロビオースリピッドの塩を、0.1〜30質量%含む、上記項4に記載の組成物。
項6.
水性組成物である、上記項4又は5に記載の組成物。
項7.
ゲル状又はゾル状組成物である、上記項4〜6のいずれかに記載の組成物。
項8.
上記項1〜3のいずれかに記載のセロビオースリピッドの塩を含む増粘剤。
項9.
化粧品、医薬部外品、医療用品、衛生用品、医薬品又は飲食品用の配合剤として用いる、上記項4〜8のいずれかに記載の組成物。
項10.
上記項1〜3のいずれかに記載のセロビオースリピッドの塩を含む水溶液を48℃以下で静置する工程を含む、水性ゲルの製造方法。
本発明のセロビオースリピッドの塩は、セロビオースリピッドと比較して、水などの水性溶媒への溶解性が格段に向上するため、セロビオースリピッドの塩を配合した水性溶媒に粘性を付与することができる。そのため、本発明のセロビオースリピッドの塩は、増粘剤、ゲル化剤、粘度調整剤等として利用することができる。
さらに、本発明のセロビオースリピッドの塩は微生物由来のセロビオースリピッドから得られることから、従来、増粘剤等の成分として用いられてきた高分子化合物等と比較して、生分解性が高く、低毒性で環境に優しい増粘剤等を提供することができる。
また、本発明のセロビオースリピッドの塩は、水などの水性成分が存在する系において、水性成分を取り込むことにより水性ゲル又は水性ゾルを形成するため、新たなゲル状又はゾル状組成物を提供することができる。
しかも、本発明のセロビオースリピッドの塩が形成する水性ゲルは、比較的小さなひずみによりゲル状態からゾル状態へと転移し、比較的温和な温度下でゲル−ゾル転移が起こるという特性を有するため、ゲルに内包した有効成分の放出制御など、当該特性を利用した新たな化粧品、医薬部外品、医療用品、衛生用品、医薬品、飲食品等を提供することができる。
水性ゲルの貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)の角周波数(ω)依存性を測定した結果を示す。 水性ゲルの貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)のひずみ(γ)依存性を測定した結果を示す。 水性ゲルの貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)の温度依存性を測定した結果を示す。
以下、本発明について詳細に説明する。
セロビオースリピッド
セロビオースリピッド(以下、「CL」ということがある。)は、それを生産する微生物の種類によって様々な分子構造をとり得る。例えば、クリプトコッカス(Cryptococcus)属微生物は、主に下記構造式(I)で表される構造からなるセロビオースリピッドを生産し、ウスチラゴ(Ustilago)属の微生物は、主に下記構造式(II)で表される構造からなるセロビオースリピッドを生産することが知られている。
Figure 0006265331
(式(I)中、Rは、水素原子又はヒドロキシル基であり、R、R及びRは、同一又は異なって、アセチル基又はヒドロキシル基であり、n1は、12〜14の整数を表す。)
Figure 0006265331
(式(II)中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子またはヒドロキシル基であり、n1は11又は12であり、n2は2〜4の整数を表す。)
セロビオースリピッドの製造方法は特に限定されないが、例えば、セロビオースリピッド生産微生物を培養し、当該培養液から抽出及び精製することにより得ることができる。
セロビオースリピッド生産微生物としては、セロビオースリピッド生産能を有する微生物であれば特に限定されないが、例えば、クリプトコッカス(Cryptococcus)属に属するクリプトコッカス フミコーラ(Cryptococcus humicola)、ウスチラゴ(Ustilago)属に属するウスチラゴ エスキュレンタ(Ustilago esculenta)やウスチラゴ メイディス(Ustilago maydis)、シュードザイマ(Pseudozyma)属に属するシュードザイマ フロキュローサ(Pseudozyma flocculosa)やシュードザイマ グラミニコーラ(Pseudozyma graminicola)等が挙げられる。
なお、セロビオースリピッド生産微生物の培養方法は特に限定的ではなく、培地組成、pHや温度等の培養条件、培養時間等は、用いるセロビオース生産微生物に応じて適宜決定すればよい。
セロビオースリピッド生産微生物を培養することによりセロビオースリピッドを製造する場合、培養後の培養液をそのままセロビオースリピッドとして使用してもよく、また、培養後の培養液を必要に応じて濾過、遠心分離、抽出、精製、滅菌等の任意の操作を適宜加え、得られたエキスを希釈、濃縮、乾燥等したものをセロビオースリピッドとして使用してもよい。
セロビオースリピッド生産微生物の培養液からセロビオースリピッドを回収又は精製する方法は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、培養液を遠心分離して油分を回収し、酢酸エチル等の有機溶媒で抽出濃縮することにより回収することができる。
抽出方法は特に限定されず、通常、常温・常圧下での溶媒の沸点の範囲であればよく、抽出後は濾過またはイオン交換樹脂を用い、吸着・脱色・精製して溶液状、ペースト状、ゲル状、粉末状とすればよい。通常は、そのままの状態で利用できるが、必要であれば、その効力に影響のない範囲でさらに脱臭、脱色などの精製処理を加えてもよい。脱臭・脱色等の精製処理手段としては、活性炭カラムなどを用いればよく、抽出物質により一般的に適用される通常の手段を任意に選択して行えばよい。必要に応じて、シリカゲルカラムを用いて精製することにより、純度の高いセロビオースリピッドを得ることができる。
抽出溶媒としては、水、アルコール類、ケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、エステル類、キシレン、ベンゼン、クロロホルムなどの有機溶媒を、単独であるいは2種類以上の混液を任意に組み合わせて使用することができ、また、各々の溶媒抽出物が組み合わされたものでも使用することができる。
セロビオースリピッドの塩
本発明のセロビオースリピッドの塩は、セロビオースリピッドにおけるカルボキシル基の水素原子が他の金属カチオン又は金属性基により置き換えられたものである。
本発明のセロビオースリピッドの塩は、セロビオースリピッドとアルカリ金属又はアルカリ土類金属との塩であることが好ましい。セロビオースリピッドを、アルカリ金属又はアルカリ土類金属との塩として用いることによって、水性溶媒に対する溶解性が向上し、良好に溶解することができる。
セロビオースリピッドとの塩を構成するアルカリ金属としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム等が挙げられる。中でも、アルカリ金属が好ましく、ナトリウム又はカリウムがより好ましく、ナトリウムが特に好ましい。セロビオースリピッドのナトリウム塩は、水溶性が高く、溶媒に対する溶解度がさらに向上するという利点がある。
本発明のセロビオースリピッドの塩の製造方法は特に限定されないが、例えば、セロビオースリピッドとアルカリ金属との塩を得る場合、セロビオースリピッドを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物を用いて中和することによって得ることができる。より具体的な例としては、以下の手法によりセロビオースリピッドの塩を得ることができる。セロビオースリピッドを水と混合し、スターラーにより攪拌しながら任意のアルカリを添加して水溶液を中和し、セロビオースリピッドを溶解させる。最終pHを7.5程度とした水溶液を凍結乾燥することにより、セロビオースリピッドの塩を得ることができる。なお、本発明のセロビオースリピッドの塩の形態は、上記の方法等により得られる固形のセロビオースリピッドの塩であってもよいし、凍結乾燥する前のアルカリにより中和されたセロビオースリピッド溶解液(セロビオースリピッドの塩を含有する水溶液)であってもよい。
セロビオースリピッドの塩を含む組成物
本発明の組成物は、セロビオースリピッドの塩を含む。本発明の組成物において、セロビオースリピッドの塩の配合量は特に限定されないが、通常0.1〜30質量%程度とすればよく、0.5〜15質量%程度とすることが好ましい。
また、本発明の組成物は、水性組成物とすることができる。すなわち、本発明の水性組成物は、セロビオースリピッドの塩と水性成分を含む。
本発明の水性組成物に含まれる水性成分は、セロビオースリピッドの塩を溶解し得る水性溶媒であれば特に限定されず、例えば、水、又は水に炭素数1〜4の低級アルコール、グリコール等が溶解又は分散した水溶液などが挙げられる。水性溶媒とは、水または親水性の溶媒を主体とした溶媒であり、疎水性の溶媒が全く含まれていないものが好ましい。
本発明の水性組成物において、水性成分は、通常、70〜99.5質量%程度含まれ、好ましくは85〜99.5質量%程度含まれる。
また、本発明のセロビオースリピッドの塩は、水性成分が存在する系において、水性成分を取り込むことにより水性ゲル又は水性ゾルを形成する。よって、本発明の水性組成物は、ゲル状又はゾル状組成物とすることができる。
本発明のゲル状又はゾル状組成物におけるセロビオースリピッドの塩の配合量は特に限定されないが、水性ゲルを形成する観点から、0.5〜30質量%程度とすることが好ましく、0.5〜15質量%程度とすることがより好ましい。
本発明のゲル状又はゾル状組成物のpHは、通常6.0〜9.0程度、好ましくは6.5〜8.0程度の範囲に調整すればよい。
水性ゲルの製造方法
本発明のセロビオースリピッドの塩を用いて水性ゲルを製造する方法は特に限定されないが、例えば、セロビオースリピッドの塩を作成する際のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含むアルカリ性水溶液の溶媒をそのまま水性成分とし、セロビオースリピッドをアルカリ性水溶液により中和しながら溶解させ、セロビオースリピッドの塩の濃度を調整して水性ゲルを製造することができる。
理由は明らかではないが、水性ゲルを作製する際、セロビオースリピッドの塩及び水性成分を含有する水溶液を低温条件下で静置することによりゲル化が促進されることが分かっている。静置する際の温度としては、通常48℃程度以下とすればよく、40℃程度以下とすることが好ましく、15℃程度以下とすることがより好ましく、10℃程度以下とすることが特に好ましい。また、静置する時間又は期間としては特に限定されないが、6時間以上が好ましく、24時間以上がより好ましく、2〜4日が特に好ましい。
セロビオースリピッドの塩の用途
本発明のセロビオースリピッドの塩は、セロビオースリピッドと比較して、水などの水性溶媒への溶解性が格段に向上するため、セロビオースリピッドの塩を配合した水性溶媒に粘性を付与することができる。そのため、本発明のセロビオースリピッドの塩は、増粘剤、ゲル化剤、粘度調整剤等として利用することができる。
さらに、セロビオースリピッドの塩は、水性成分が存在する系において自己集合化して水性成分を取り込み、水性ゲル又は水性ゾルを形成する。セロビオースリピッドの塩及び水性成分を含むゲル状組成物は水性であることから、当該ゲル状組成物の被配合物に適度な粘度を付与することができる。一方、塩を形成していないセロビオースリピッドを用いた場合には、ゲル化は起こらず、セロビオースリピッドが沈殿して水性成分と分離してしまう。
また、本発明のセロビオースリピッドの塩を含む組成物は、化粧品、医薬部外品、医療用品、衛生用品、医薬品、飲食品等に配合して利用することができる。
化粧品、医薬部外品、医療用品、衛生用品、医薬品としては、例えば、内用・外用薬用製剤、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、ローション、オイル、パックなどの基礎化粧料、洗顔料や皮膚洗浄料、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、ヘアクリーム、ポマード、ヘアスプレー、整髪料、パーマ剤、ヘアートニック、染毛料、育毛・養毛料などの頭髪化粧料、ファンデーション、白粉、おしろい、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、眉墨、まつ毛などのメークアップ化粧料、美爪料などの仕上げ用化粧料、香水類、浴用剤、その他、歯磨き類、口中清涼剤・含嗽剤、液臭・防臭防止剤、衛生用品、衛生綿類、ウエットティシュなどが挙げられる。また、本発明の水性ゲル状組成物は、軟膏剤や湿布剤などに配合して使用することもできる。
飲食品としては、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料、アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓、そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類、飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類、カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物、かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品、加工乳、発酵乳等の乳製品、サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂および油脂加工食品、ソース、たれ等の調味料、カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品、種々の形態の健康・栄養補助食品、保健機能食品、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチなどが挙げられる。
本発明の組成物を化粧品に配合する場合には、その形態は特に限定されず、固体、液体、ペースト、ゼリー、粉末などのいずれの状態をとるものであってもよい。特に、本発明の水性組成物を化粧品に配合する場合には、適度な粘度を付与できるだけでなく、さっぱりとした使用感を付与することができ、使用感に優れた化粧品を提供することができる。
また、本発明のゲル状組成物は、比較的小さなひずみや比較的温和な温度においてゲル状態からゾル状態へと転移するという特性を有する水性ゲルを形成する。そのため、本発明のゲル状組成物を配合した化粧品は、保管時にはゲル状態であるが、皮膚に塗布して使用する際に、皮膚表面の温度及び指や手のひらで伸ばすことにより、容易にゾル状態へと転移するため、皮膚上でのなじみ性やのび性が良好であり、しかも上記した優れた使用感を発揮する。
本発明の組成物を医薬部外品、医療用品、衛生用品、医薬品等に配合する場合は、その剤形は特に限定されず、アンプル、カプセル、粉末、顆粒、丸剤、錠剤、固形剤、液剤、ゲル、気泡、乳液、クリーム、軟膏、シート、ムース、浴用剤など多様なものとすることができる。また、セロビオースリピッドの塩が形成する水性ゲルの特性により、本発明の水性組成物を配合する場合には、ゲルに内包した有効成分を容易に放出することが可能な医薬部外品、医療用品、衛生用品、医薬品等を提供することができる。また、本発明のゲル状組成物は、薬剤等を内包し、薬剤の有効成分等の苦味・渋味などの不快感を低減できる矯味剤としても利用することができる。
本発明の組成物の化粧品、医薬部外品、医療用品、衛生用品、医薬品、飲食品等への配合量は、吸収程度、作用程度、製品形態、使用頻度などによって決められ、特に限定されるものではないが、例えば、化粧品に配合する場合には、0.001質量%〜10質量%、好ましくは0.01質量%〜5.0質量%、より好ましくは0.1質量%〜1.0質量%となるように配合すればよい。直接ヒトの皮膚に塗布する皮膚外用剤、例えば液剤又はクリーム、乳液、ローション、化粧水、軟膏などの化粧品又は医薬品に配合する場合には、0.001質量%〜10質量%、好ましくは0.01質量%〜5.0質量%、より好ましくは0.1質量%〜1.0質量%となるように配合すればよい。
また、本発明の組成物を含有する化粧品、医薬部外品 、医療用品、衛生用品、医薬品等には、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、化粧品、医薬部外品 、医療用品、衛生用品、医薬品等に使用される成分や添加剤等の任意の成分を併用して配合することができる。
なお、本発明の組成物の各種用途はヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が期待できる限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
実施例1:クリプトコッカス フミコーラ(Cryptococcus humicola)を用いたセロビオースリピッド(CL)の製造
クリプトコッカス フミコーラ(Cryptococcus humicola NBRC 10251)を下記組成の種培地50mLに植菌した後、27℃で一晩培養することにより種菌培養を行った。
(種培地組成)
グルコース 100g/L
硝酸ナトリウム 30g/L
硫酸マグネシウム7水和物 3g/L
リン酸二水素カリウム 3g/L
酵母エキス 1g/L
上記種菌培養により得られた種菌培養液100mLを下記組成の生産培地6Lに植菌し、27℃、530rpm(攪拌回転)、3L/min(Air)の条件で6日間培養することにより本培養を行った。
(生産培地組成)
グルコース 50g/L
硝酸ナトリウム 3g/L
硫酸マグネシウム7水和物 0.5g/L
リン酸二水素カリウム 0.02g/L
リン酸水素二カリウム 0.5g/L
酵母エキス 8g/L
上記本培養により得られた本培養液から、以下の方法によりセロビオースリピッドの抽出処理を行った。まず、本培養液を遠心分離(7500rpm、20分)により集菌した後、得られた菌体に等量の酢酸エチルとアセトンを4:1の割合で混合した溶液を添加して攪拌後、上清を得た。次に、得られた上清をエバポレーターにより乾燥させ、粉末を得た。その後、得られた粉末から脂質不純物を除去するため、当該粉末にヘキサン(300g)を添加して攪拌した後、ガラスフィルターろ過及びエバポレーションを順次行うことにより、ヘキサンを除去し、セロビオースリピッドを得た。
実施例2:ウスチラゴ エスキュレンタ(Ustilago esculenta)を用いたセロビオースリピッドの製造
ウスチラゴ エスキュレンタ(Ustilago esculenta NBRC 9887)を下記組成の種培地50mLに植菌した後、27℃で一晩培養することにより種菌培養を行った。
(種培地組成)
グルコース 50g/L
硝酸ナトリウム 3g/L
硫酸マグネシウム7水和物 0.5g/L
リン酸二水素カリウム 0.02g/L
リン酸水素二カリウム 0.5g/L
酵母エキス 8g/L
上記種菌培養により得られた種菌培養液100mLを下記組成の生産培地6Lに植菌し、27℃、530rpm(攪拌回転)、3L/min(Air)の条件で6日間培養することにより本培養を行った。
(生産培地組成)
グルコース 50g/L
硝酸ナトリウム 3g/L
硫酸マグネシウム7水和物 0.5g/L
リン酸二水素カリウム 0.025g/L
リン酸水素二カリウム 0.5g/L
酵母エキス 8g/L
上記本培養により得られた本培養液から、下記の方法によりセロビオースリピッドの抽出処理を行った。まず、本培養液を遠心分離(7500rpm、20分)により集菌した後、得られた菌体に等量の酢酸エチルとアセトンを4:1の割合で混合した溶液を添加して攪拌後、上清を得た。次に、得られた上清をエバポレーターにより乾燥させ、粉末を得た。その後、得られた粉末から脂質不純物を除去するため、当該粉末にヘキサン(300g)を添加して攪拌した後、ガラスフィルターろ過及びエバポレーションを順次行うことにより、ヘキサンを除去し、セロビオースリピッドを得た。
実施例3:セロビオースリピッドの塩の水への溶解性の検討及び水性ゲルの調製
実施例1により得られたセロビオースリピッドを、水酸化ナトリウムにより中和しながら蒸留水に添加し、下記表1に記載の濃度でセロビオースリピッドの塩を含有する水溶液(pH7.6)をそれぞれ調製した。
また、比較対象として、実施例1により得られたセロビオースリピッドを水酸化ナトリウムによる中和処理を行うことなく蒸留水に添加し、下記表1に記載の濃度でセロビオースリピッドを含有する水溶液(pH7.6)をそれぞれ調製した。
上記の方法により調製した各水溶液を、4℃の条件下で4日間静置した後、各サンプルのゲル化の有無を目視により確認した。ゲル化が確認されたサンプルを○、水溶液に溶解したものの、ゲル化が確認されなかったサンプルを△、水溶液に溶解せず、沈殿が確認されたサンプルを×で示す。なお、ゲル化の有無は、水溶液が入ったサンプル瓶を逆さにし、水溶液がたれ落ちてこないものをゲル化したと判断した。
以上の結果を下記表1に示す。
Figure 0006265331
表1の結果から明らかなように、水酸化ナトリウムによる中和処理を行わなかったサンプル(サンプルA〜J)は、セロビオースリピッドが水溶液に溶解せず、沈殿を形成した。これに対して、水酸化ナトリウムによる中和処理を行ったサンプル(サンプル1〜10)は、セロビオースリピッドの塩が水溶液に溶解することが確認された。中でも、セロビオースリピッドの塩の濃度が0.5重量%以上のサンプル(サンプル3〜10)については、ゲル化が確認された。
実施例4:水性ゲルの粘弾性測定
上記実施例3によりゲル化が確認されたサンプルのうち、セロビオースリピッドの塩の濃度が2重量%(サンプル6)について、アントンパール社製のレオメーター(MCR302)を用いて、下記の方法により粘弾性測定を行った。なお、粘弾性測定には、直径24.98mm、角度1.994°のコーンプレート(CP25・2)を用いた。
4−1:角周波数依存性の測定
まず、25℃におけるサンプルの貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)の角周波数(ω)依存性を測定した。なお、測定の際のひずみ(γ)は1%に固定した。結果を図1に示す。
図1の結果から明らかなように、いずれの角周波数においても、貯蔵弾性率(G’)の値の方が、損失弾性率(G’’)の値よりも大きいことから、測定に用いたサンプルはゲル状態であることが確認できた。
また、サンプルの貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)の値から、測定に用いたサンプルは比較的やわらかいゲルであることが確認できた。
4−2:ひずみ依存性の測定
次に、25℃におけるサンプルの貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)のひずみ(γ)依存性を測定した。なお、測定の際の角周波数(ω)は1(1/S)に固定した。結果を図2に示す。
図2の結果から明らかなように、低ひずみ領域では、貯蔵弾性率(G’)の値の方が、損失弾性率(G’’)の値よりも大きく、サンプルはゲル状態を維持することが確認できた。さらに、ひずみが3.5%以上となると、サンプルはゲル状態からゾル状態へと転移することが確認できた。
これらのことから、測定に用いたサンプルは、3.5%という比較的小さなひずみによってゲル状態からゾル状態へ転移することから、本発明のゲル状組成物を皮膚に塗布する場合等に、ゲルに内包された有効成分を容易に放出できるものと考えられる。
4−3:温度依存性の測定
さらに、サンプルの貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)の温度依存性を測定した。なお、測定の際のひずみ(γ)は1%に、角周波数(ω)は1(1/S)にそれぞれ固定した。結果を図3に示す。
図3の結果から明らかなように、低温領域では、貯蔵弾性率(G’)の値の方が、損失弾性率(G’’)の値よりも大きく、サンプルはゲル状態を維持することが確認できた。さらに、生体温度付近の40℃程度から、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)が急激に低下し始め、48℃付近では貯蔵弾性率(G’)が装置の検出下限となったことから、サンプルは、48℃付近でゲル状態からゾル状態へと転移することが確認できた。
これらのことから、セロビオースリピッドの塩を含む水性ゲルを調製する際には、セロビオースリピッドの塩を溶解した後、サンプルを48℃程度以下の温度で冷却することが望ましいものと考えられる。
また、セロビオースリピッドの塩の濃度が2質量%のサンプルのゾル−ゲル転移温度が48℃付近であることから、セロビオースリピッドの塩の濃度を適宜調整することによって、ゾル−ゲル転移温度を生体温度付近の温度に設定することができるものと考えられる。なお、生体温度付近でのゲル状態からゾル状態への転移は、本発明のゲル状組成物を皮膚に塗布する場合等に、ゲルに内包された有効成分を容易に放出することができるものと考えられる。
本発明のセロビオースリピッドの塩は、化粧品、医薬品、飲食品等の添加剤として好適に用いることができる。さらに、セロビオースリピッドは微生物由来であることから安全であり、低コストで大量生産が可能であり、しかも長期にわたる使用にも十分に耐えうることから、産業界に大きく寄与することが期待される。

Claims (6)

  1. セロビオースリピッドの塩を含む、ゲル状又はゾル状水性組成物。
  2. 塩が、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である、請求項1に記載の組成物。
  3. アルカリ金属塩が、ナトリウム塩又はカリウム塩である、請求項2に記載の組成物。
  4. セロビオースリピッドの塩を、0.1〜30質量%含む、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  5. セロビオースリピッドの塩を含む、水性組成物増粘剤。
  6. セロビオースリピッドの塩を含む水溶液を48℃以下で静置する工程を含む、水性ゲルの製造方法。
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