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JP6265355B2 - 潤滑油および潤滑システム - Google Patents
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JP6265355B2 - 潤滑油および潤滑システム - Google Patents

潤滑油および潤滑システム Download PDF

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Description

本発明は、潤滑油に関し、詳しくは、表面にナノ結晶粒層を有する金属材料に適用する潤滑油、およびこれを用いた潤滑システムに関する。
金属材料への強加工により、結晶粒径が1μm未満であるナノ結晶組織が形成された材料を得る方法が知られている。ナノ結晶組織を持つ金属材料は、非常に高い強度や優れた靭性を有している。それ故、金属材料表面に強加工を施し、金属部品表層の硬化や圧縮残留応力の付与による疲労強度の向上を図ることが可能である。
これまで、ナノ結晶組織を得るための様々な強加工方法が考案されており、高圧下でねじり応力を与える方法や、ショットピーニングによる方法、すべり摩擦による方法などが知られている。たとえば、すべり摩擦による方法の一形態として、超硬チップを高速回転する試料の表面に押し当てることにより、表面にナノ結晶組織を形成する表層ナノ結晶粒化摩擦加工方法が知られている。この加工方法によれば、簡便に金属表面の硬度を上げることが可能であり、加工処理後の金属材料は強度、疲労特性および耐摩耗性にも優れている(特許文献1、2参照)。また、このような表面にナノ結晶粒層を有する金属材料に対して熱処理を行うことで、さらに表面硬度を上げた金属材料も知られている(特許文献3参照)。
特開2003−39398号公報 再公表特許2005−070614号公報 特開2011-105991号公報
一方、特許文献1〜3に記載された金属材料は、安定して良好な摩擦特性(摩擦係数)を得ることが困難であった。
本発明は、表面にナノ結晶粒層を有する金属材料に対し、安定して良好な摩擦特性を与えることのできる潤滑油、およびこれを用いた潤滑システムを提供することを目的とする。
本発明者らは、表面にナノ結晶粒層を有する金属材料に対して、各種潤滑剤の初期摩擦特性と経時後の摩擦特性を鋭意検討した。その結果、当初から摩擦係数が低く、かつ経時後も摩擦係数が大きく変化しない潤滑油を見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、以下に示すような潤滑油および潤滑システムを提供するものである。
(1)表面にナノ結晶粒層を有する金属材料に適用される潤滑油であって、極性を有する有機化合物を配合してなることを特徴とする潤滑油。
(2)上述の(1)に記載の潤滑油において、前記極性を有する有機化合物が、ヘテロ原子および不飽和結合の少なくともいずれかを含む極性基を有することを特徴とする潤滑油。
(3)上述の(2)に記載の潤滑油において、前記極性基が、カルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、ホスホリル基、チオホスホリル基,アミノ基、
水酸基およびアルケニル基のうち少なくともいずれかであることを特徴とする潤滑油。
(4)上述の(1)から(3)までのいずれか1つに記載の潤滑油において、前記極性を有する有機化合物が、エステル、アミドおよびα−オレフィンのうち少なくともいずれかであることを特徴とする潤滑油。
(5)上述の(1)から(4)までのいずれか1つに記載の潤滑油において、基油として鉱油あるいは合成油の少なくともいずれかを配合してなることを特徴とする潤滑油。
(6)上述の(1)から(5)までのいずれか1つに記載の潤滑油において、前記ナノ結晶粒層の厚みが10nm以上であることを特徴とする潤滑油。
(7)上述の(1)から(6)までのいずれか1つに記載の潤滑油において、前記金属材料は、前記ナノ結晶粒層より内層に焼き入れ組織を有することを特徴とする潤滑油。
(8)上述の(1)から(7)までのいずれか1つに記載の潤滑油において、前記金属材料が熱誘起相変態をする材料であることを特徴とする潤滑油。
(9)上述の(8)に記載の潤滑油において、前記金属材料が高炭素クロム鋼であることを特徴とする潤滑油。
(10)上述の(1)から(9)までのいずれか1つに記載の潤滑油を用いることを特徴とする潤滑システム。
本発明によれば、表面にナノ結晶粒層を有する金属材料に対し、安定して良好な摩擦特性を与えることのできる潤滑油、およびこれを用いた潤滑システムを提供することができる。
本発明において、表面にナノ結晶粒層を有する金属材料を製造する方法の一例を示す図。
本発明は、表面にナノ結晶粒層を有する金属材料(以下、「本金属材料」ともいう。)に適用される潤滑油(以下、「本潤滑油」ともいう。)であって、極性を有する有機化合物を配合してなることを特徴とする。以下、本潤滑油について詳細に説明する。
〔ナノ結晶粒層を有する金属材料〕
ナノ結晶とは、その結晶粒の大きさ(長さ)が100nm以下の結晶をいい、ナノ結晶粒層とは、その結晶組織の少なくとも50%以上に前記したナノ結晶が含まれている組織をいう。ただし、ナノ結晶は、その結晶粒の大きさ(長さ)がいずれの方向においても100nm以下である必要はなく、少なくとも一方向において100nm以下であれば足りる趣旨である。すなわち、ナノ結晶は、必ずしも断面円形の結晶である必要はなく、断面偏平形状の結晶であってもよい。
また、ナノ結晶粒層は、前記したナノ結晶を少なくとも50%以上含むものであれば、混粒組織であることも可能であり、ナノ結晶以外の残部がどのような態様の結晶から構成されていてもよい。ナノ結晶粒の大きさは走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することで測定できる。
このような本金属材料は、特開2003−39398号公報や再公表特許2005−070614号公報に開示された方法によって製造することができる。例えば、図1に示すような装置を用いて、高速回転する供試材(金属材料)の表面に硬い工具(超硬チップ等)を押し当てて摩擦加工を行えばよい。
ベースとなる金属材料としては、熱誘起相変態をする材料であることが好ましく、高炭素クロム鋼であることがより好ましい。本金属材料の具体的な製造方法については、後述する。
なお、本金属材料に対し、さらに焼入れを行ってもよい(特開2011-105991号公報参照)。
〔極性を有する有機化合物〕
本潤滑油に用いられる極性を有する有機化合物は、酸素、硫黄、リン、窒素などのヘテロ原子や、二重結合などの不飽和結合を含む極性基を有するものが好ましく挙げられる。
本金属材料は、高炭素クロム鋼のような熱誘起相変態をする金属材料の表層をナノ結晶粒化することで得られるが、表面には転位、空孔などの格子欠陥ができ、電子の偏りが存在していると考えられる。この電子の偏りに対応した上記極性を有する有機化合物を配合することにより低摩擦で、かつ摩擦係数の変化の少ない潤滑油が得られるものと推定される。
上記した極性を有する有機化合物の配合量は、潤滑性の観点より潤滑油全量基準で0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。
極性基の具体例としては、カルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、ホスホリル基、チオホスホリル基,アミノ基、水酸基およびアルケニル基などが好ましく挙げられる。
このような極性基を備えることで化合物全体として極性を有することになる。極性を有する有機化合物の具体例としては、エステル類、脂肪酸類、リン酸エステル類(リン酸トリエステル、酸性リン酸エステル(リン酸モノエステル、リン酸ジエステル)、亜リン酸エステル、および酸性亜リン酸エステルなど)、スルホネート類、アミン類、アミド類、イミド類、アルコール類、およびオレフィン類などが好ましく用いられる。
また、スルフィド類(スルフィド、ジスルフィド等)や複素環式化合物も好適である。硫黄を有する複素環式化合物としては、チオフェン類などが挙げられ、窒素を有する複素環式化合物としては、ピリジン類、キノリン類、インドール類、およびカルバゾール類などが挙げられる。
エステル類としては、モノエステル、ジエステル、芳香族系および脂肪族系のいずれでもよい。
エステルを構成する脂肪酸としては、例えば、炭素原子数6以上60以下のモノカルボン酸やジカルボン酸が好ましく挙げられる。具体的には、カプロン酸、カプリル酸、ノナン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノレイン酸、ヒドロキシ脂肪酸(例えば、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸等)、アラキン酸、ベヘン酸、メリシン酸、イソノナン酸、ネオデカン酸、イソステアリン酸、ナフテン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、モノまたはジヒドロキシアラキン酸、オレイン酸、リシノール酸、リシノレイン酸、およびヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
エステルを構成するアルコールとしては、直鎖状または分岐状のいずれでもよく、また飽和または不飽和のいずれでもよい。飽和アルコールの具体例としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、へプタデシルアルコール、およびオクタデシルアルコールが挙げられる。不飽和アルコールの具体例としては、エテニルアルコール、プロペニルアルコール、ブテニルアルコール、ペンチニルアルコール、ヘキセニルアルコール、ペプテニルアルコール、ノネニルアルコール、デセニルアルコール、ウンデセニルアルコール、ドデセニルアルコール、トリデセニルアルコール、テトラデセニルアルコール、ペンタデセニルアルコール、ヘキサデセニルアルコール、ヘプタデセニルアルコール、オクタデセニルアルコールが挙げられる。
上記したエステルは、必ずしも上記したカルボン酸とアルコールから製造する必要はなく、エステル交換法など他の方法で製造してもよい。
上記エステルの具体例としては、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、オレイン酸2−エチルヘキシル、およびイソデシルアジペートなどが挙げられる。
以上、モノエステルとジエステルのみ例示したが、他の構造のエステルでもよい。
脂肪酸類としては、上記したエステルを構成する脂肪酸として挙げたものが好適に用いられる。
リン酸エステル類のうちリン酸トリエステルとしては、トリアリールホスフェート、トリアルキルホスフェート、トリアルキルアリールホスフェート、トリアリールアルキルホスフルキルホスフェート、トリアルケニルホスフェートなどがあり、具体的には、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ベンジルジフェニルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、エチルジブチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、エチルフェニルジフェニルホスフェート、ジ(エチルフェニル)フェニルホスフェート、プロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジ(プロピルフェニル)フェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、トリプロピルフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジ(ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリブチルフェニルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリデシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリミリスチルホスフェート、トリパルミチルホスフェート、トリステアリルホスフェート、およびトリオレイルホスフェートなどを挙げることができる。
酸性リン酸エステルとしては、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、およびイソステアリルアシッドホスフェートなどを挙げることができる。
亜リン酸エステルとしては、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、およびトリオレイルホスファイトなどを挙げることができる。
酸性亜リン酸エステルとしては、ジブチルハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジステアリルハイドロゲンホスファイト、およびジフェニルハイドロゲンホスファイトなどを挙げることができる。
リン酸エステル類の中で、トリクレジルホスフェート、およびトリフェニルホスフェートが潤滑性の観点より好適である。
スルホネート類としては、アルカリ土類金属スルホネートが好ましく用いられる。アルカリ土類金属スルホネートとしては、過塩基性のものが好ましい。具体的には、全塩基価(TBN)が100mgKOH/g以上であることが好ましく、300mgKOH/g以上であることがより好ましい。アルカリ土類金属としては、CaやMgが好適である。
アミン類としては、モノ置換アミンの例として、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベンジルアミンなどを挙げることができ、ジ置換アミンの例として、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン、ジベンジルアミン、ステアリル・モノエタノールアミン、デシル・モノエタノールアミン、ヘキシル・モノプロパノールアミン、ベンジル・モノエタノールアミン、フェニル・モノエタノールアミン、トリル・モノプロパノールアミンなどを挙げることができ、トリ置換アミンの例として、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリステアリルアミン、トリオレイルアミン、トリベンジルアミン、ジオレイル・モノエタノールアミン、ジラウリル・モノプロパノールアミン、ジオクチル・モノエタノールアミン、ジヘキシル・モノプロパノールアミン、ジブチル・モノプロパノールアミン、オレイル・ジエタノールアミン、ステアリル・ジプロパノールアミン、ラウリル・ジエタノールアミン、オクチル・ジプロパノールアミン、ブチル・ジエタノールアミン、ベンジル・ジエタノールアミン、フェニル・ジエタノールアミン、トリル・ジプロパノールアミン、キシリル・ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミンなどを挙げることができる。
アミド類としては、上記した脂肪酸類と上記したアミン類とから得られるものが挙げられる。
イミド類としては、モノタイプ及びビスタイプのアルキルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸イミドが好適に用いられる。アルケニル基としては、ポリブテニル基、ポリイソブテニル基、エチレン−プロピレン共重合体を挙げることができ、アルキル基としてはこれらを水添したものである。好適なアルケニル基としては、ポリブテニル基又はポリイソブテニル基が挙げられる。
アルコール類としては、上記したエステルを構成するものが好適に用いられる。
オレフィン類としては、α−オレフィンが例示できる。α−オレフィンとしては、炭素数6以上18以下のものが好ましく、炭素数8以上16以下のものがより好ましく、炭素数10以上16以下のものがさらに好ましく、炭素数12以上16以下ものが最も好ましい。このようなα−オレフィンとしては直鎖状のものが潤滑性の観点より好ましい。
炭素数が5以下のα−オレフィンを用いると、成分が揮発しやすく、一方、炭素数が19以上のα−オレフィンは、潤滑油としたときに固体状となるおそれがあり、安定性の点で使用が困難である。
α−オレフィンの具体例としては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンあるいはこれらの混合物などを挙げることができる。これらのα−オレフィンは、様々な製法によって得たものを用いることができる、例えばエチレンを通常の手段で重合させて得たエチレンオリゴマーを使用することができる。
本発明においては、必要に応じて所定の基油を配合してもよい。基油としては通常使用される鉱油や合成油が、単独またはそれぞれより選ばれる2種以上の混合物として用いられる。例えば、1種以上の鉱油、1種以上の合成油、1種以上の鉱油と1種以上の合成油との混合油等を挙げることができる。鉱油としては、例えば原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、および水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいは鉱油系ワックスやフィッシャ−トロプシュプロセス等により製造されるワックス(ガストゥリキッドワックス)を異性化することによって製造される基油等が挙げられる。鉱油のなかでも、API分類のグループ2以上のものが好ましい。グループ2以上の鉱油を用いることで、潤滑油の酸化安定性を良好に保つとともに、良好な潤滑特性を得ることができる。
一方、合成油としては、α−オレフィンの重合体(PAO)、その水素添加物、ポリオールエステル、アルキルベンゼンやアルキルナフタレン等の芳香族系合成油、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。これらの合成油のうち、極性を有するものは、前記極性化合物としての効果をも奏する。
PAOとしては、α−オレフィンの低分子量重合体(オリゴマー)が好ましく用いられる。モノマーであるα−オレフィンの炭素数としては、粘度指数や蒸発性の観点より6から20までが好ましいが、8から16までがより好ましく、特に10から14までがさらに好ましい。具体的には、1−オクテンや1−デセンなどが挙げられる。
また、PAOとしては、低蒸発性の観点よりα−オレフィンの3量体が好ましいが、目的とする性状にあわせ、α−オレフィンの炭素数とその配合比、重合度を適宜調節すればよい。α−オレフィンの重合触媒としては、BF触媒、AlCl触媒、チーグラー型触媒、メタロセン触媒などが使用可能である。
本潤滑油の好ましい40℃動粘度は、5mm/s以上4000mm/s以下であり、より好ましくは7mm/s以上2000mm/s以下であり、さらに好ましくは10mm/s以上500mm/s以下である。
〔添加剤〕
本潤滑油には、本発明の目的を損なわない範囲で各種の添加剤を配合することができる。
これらの添加剤としては、酸化防止剤、油性剤、極圧剤、清浄分散剤、防錆剤、金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、および消泡剤などを挙げることができる.これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
酸化防止剤としては、従来の炭化水素系合成潤滑油に使用されているアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤を使用することができる。これらの酸化防止剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン系化合物、4,4’−ジブチルジフェニルアミン、4,4’−ジペンチルジフェニルアミン、4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4,4’−ジノニルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン系化合物、テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン系化合物、α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、ブチルフェニル−α−ナフチルアミン、ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘプチルフェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン系化合物が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールなどのモノフェノール系化合物、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)などのジフェノール系化合物が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、五硫化リンとピネンとの反応物などのチオテルペン系化合物、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどのジアルキルチオジプロピオネートなどが挙げられる。
これらの酸化防止剤の配合量は、潤滑油全量基準で、0.01質量%以上10質量%以下程度であり、好ましくは0.03質量%以上5質量%以下である。
油性剤としては、脂肪族アルコール、脂肪酸や脂肪酸金属塩などの脂肪酸化合物、ポリオールエステル、ソルビタンエステル、グリセライドなどのエステル化合物、脂肪族アミンなどのアミン化合物などを挙げることができる。油性剤の配合量は、配合効果の点から、潤滑油全量基準で、0.1質量%以上30質量%以下程度であり、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
極圧剤としては、硫黄系極圧剤、リン系極圧剤、硫黄および金属を含む極圧剤、リンおよび金属を含む極圧剤が挙げられる。これらの極圧剤は一種を単独でまたは二種以上組み合わせて用いることができる。極圧剤としては、分子中に硫黄原子やリン原子を含むものが極圧性の観点より好ましい。分子中に硫黄を含む極圧剤としては、例えば、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリサルファイド、チアジアゾール化合物、アルキルチオカルバモイル化合物、トリアジン化合物、チオテルペン化合物、ジアルキルチオジプロピオネート化合物などを挙げることができる。
これら極圧剤の配合量は、配合効果および経済性の点から、潤滑油全量基準で、0.01質量%以上30質量%以下程度であり、より好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
清浄分散剤としては、金属系清浄剤と無灰分散剤が挙げられる。
無灰分散剤としては、数平均分子量が900から3,500までのポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸イミド、ポリブテニルベンジルアミン、ポリブテニルアミン、及びこれらのホウ酸変性物等の誘導体等が挙げられる。これらの無灰分散剤は、単独でまたは複数種を任意に組合せて含有させることができるが、その好ましい配合量は、潤滑油全量基準で0.1質量%以上20質量%以下の範囲である。
金属系清浄剤としては、例えば、アルカリ金属(ナトリウム(Na)、カリウム(K)等)又はアルカリ土類金属(カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)等)のスルホネート、フェネート、サリシレートおよびナフテネート等が挙げられる。これらは単独でまたは複数種を組合せて使用できる。これらの金属系清浄剤の全塩基価及び添加量は、要求される潤滑油の性能に応じて任意に選択でき、全塩基価は、過塩素酸法で通常0mgKOH/g以上500mgKOH/g以下、望ましくは20mgKOH/g以上400mgKOH/g以下、その好ましい配合量は、潤滑油全量基準で0.1質量%以上10質量%以下の範囲である。
防錆剤としては、金属系スルホネート、コハク酸エステルなどを挙げることができる。これら防錆剤の配合量は、配合効果の点から、潤滑油全量基準で、0.01質量%以上10質量%以下程度であり、好ましくは0.05質量%以上5質量%以下である。
粘度指数向上剤としては、例えば、非分散型ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−ジエン水素化共重合体など)などが挙げられる。これら粘度指数向上剤の質量平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートでは5,000以上1,000,000以下が好ましく、100,000以上800,000以下がさらに好ましい。また、オレフィン系共重合体では800以上300,000以下が好ましく、10,000以上200,000以下がさらに好ましい。これらの粘度指数向上剤は、単独でまたは複数種を任意に組み合わせて配合することができるが、好ましい配合量は、潤滑油全量基準で0.1質量%以上20質量%以下の範囲である。
流動点降下剤としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、
ポリアルキルスチレン等が挙げられ、特に、ポリメタクリレートが好ましく用いられる。これらの好ましい配合量は、潤滑油全量基準で0.01質量%以上5質量%以下の範囲である。
金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、チアジアゾールなどを挙げることができる。これら金属不活性化剤の好ましい配合量は、配合効果の点から、潤滑油全量基準で、通常0.01質量%以上10質量%以下程度であり、好ましくは0.01質量%以上1質量%以下である。
消泡剤としては、メチルシリコーン油、フルオロシリコーン油、ポリアクリレートなどを挙げることができる。これらの消泡剤の配合量は、配合効果の点から、組成物全量基準で、通常0.0005質量%以上0.01質量%以下程度である。
本発明の潤滑油を用いた潤滑システムは、表面にナノ結晶粒層を有する金属材料に対し、安定して良好な摩擦特性を与えることができ、耐摩耗性および耐久性にも優れている。それ故、本発明は、各種軸受部品、エンジン動弁系部品、エンジンピストンリング/ライナー摺動部、工作機械摺動部、大型歯車部品などにおける潤滑システムとして極めて優れている。
次に、本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
〔表面にナノ結晶粒層を有する金属材料の製造〕
図1に示す装置を用い、高速回転する供試材に対して超硬チップを押し当てることで、供試材表面に均一にナノ結晶粒層を有する金属材料を製造した。用いた供試材、装置および摩擦加工条件は以下の通りである。組織観察はSEM、TEMにより行い、表面層がナノ結晶粒層であることを確認した。
供試材:軸受鋼として用いられるSUJ2鋼(HV 7.4GPa)
供試材の組成(質量%):C(1.00)、Si(0.20)、Mn(0.41)、P(0.014)、S(0.009)、Ni(0.08)、Cr(1.37)、Mo(0.03)
装置:NC旋盤
押当荷重F:500N
送り速度V:0.01mm/rev
回転速度ω:1600rpm
保持時間:20s
潤滑油:水溶性エマルジョン
〔摩擦試験〕
上記で得られた金属材料および未加工の供試材に対し、所定の潤滑油を塗布してピン・オン・ディスク試験法により摩擦係数を測定した。測定は、摩擦開始後100min経過時の摩擦係数(初期摩擦係数)、および、摩擦開始後600min経過後の摩擦係数(経時摩擦係数)の2通りについて実施した。試験条件は、以下の通りである。
荷重:200g(1.96N)
摺動速度:10mm/s
摺動半径:5mm
ピン材:アルミナボール
〔実施例1〜4、比較例1〜6〕
上記の摩擦試験の結果を表1に示す。
Figure 0006265355
Figure 0006265355
表1、表2で用いた潤滑油の詳細は以下の通りである。潤滑油2、3、5、6、7が本発明の潤滑油である。
潤滑油1:ポリα−オレフィン(40℃動粘度 17.4mm/s)
潤滑油2:イソデシルアジペートを主成分とするエステル系潤滑油(40℃動粘度20.2mm/s)
潤滑油3:潤滑油1にトリクレジルフォスフェートを0.3質量%配合したもの(40℃動粘度 17.3mm/s)
潤滑油4:鉱油(40℃動粘度 17.2mm/s)
潤滑油5:潤滑油1にイミド系添加剤(低分子量ポリブテニルコハク酸イミド、ニュートラル系)を2質量%配合したもの(40℃動粘度 18.2mm/s)
潤滑油6:潤滑油4にイミド系添加剤(低分子量ポリブテニルコハク酸イミド、ニュートラル系)を2質量%配合したもの(40℃動粘度 17.9mm/s)
潤滑油7:潤滑油4に硫黄系添加剤(スルフィド類)を硫黄量換算で0.03質量%配合したもの(40℃動粘度 17.4mm/s)
〔評価結果〕
比較例1は、未加工の供試材(SUJ2鋼:高炭素クロム鋼)とセラミック(アルミナボール)との間の摩擦係数を測定したものであるが(潤滑油なし)、経時摩擦係数は1に近い数値を示し、潤滑システムとしては不適切なものとなる。また、比較例2のように、潤滑油がなくても高炭素クロム鋼の表面にナノ結晶粒層を形成させることで摩擦係数を少し低減させることができるがその低減効果は不十分である。
比較例3は、潤滑油として無極性のPAOを用いたものであるが、未加工の高炭素クロム鋼に対する摩擦低減効果として、経時摩擦係数は低減するものの、初期の摩擦係数が高く、安定した摩擦特性は得られない。
比較例4のように、高炭素クロム鋼の表面にナノ結晶粒層を形成させて、鉱油で潤滑した場合、経時摩擦係数は低減するものの、初期摩擦係数が高く、潤滑システムとしては不十分である。
比較例5は、比較例3と異なり、摩擦加工材に対して無極性のPAOを用いたものであるが、それでもまだ初期摩擦係数が高い。
比較例6は、潤滑油7を未加工材に用いたものであるが、やはり初期摩擦係数がやや高い。
これに対して、実施例1〜5に示すように、高炭素クロム鋼表面にナノ結晶粒層を形成させ、所定の潤滑油と組み合わせることで、小さな初期摩擦係数(0.4未満)が得られ、しかも経時摩擦係数にも大きな変化はない。
すなわち、金属材料表面にナノ結晶粒層を形成させ、所定の潤滑油を組み合わせることで、初期だけでなく、長期に渡って安定した低摩擦係数を得られる潤滑システムを実現できる。

Claims (6)

  1. 表面にナノ結晶粒層を有する金属材料に適用される潤滑油であって、
    前記ナノ結晶粒層が前記金属材料からなり、
    前記金属材料が高炭素クロム鋼であり、
    前記潤滑油が、極性を有する有機化合物を配合してなり、
    前記極性を有する有機化合物が
    イミド類およびチオフェン類のうち少なくともいずれかである
    ことを特徴とする潤滑油。
  2. 請求項1に記載の潤滑油において、
    基油として鉱油あるいは合成油の少なくともいずれかを配合してなる
    ことを特徴とする潤滑油。
  3. 請求項1または請求項2に記載の潤滑油において、
    前記ナノ結晶粒層の厚みが10nm以上である
    ことを特徴とする潤滑油。
  4. 請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の潤滑油において、
    前記金属材料は、前記ナノ結晶粒層より内層に焼き入れ組織を有する
    ことを特徴とする潤滑油。
  5. 請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の潤滑油において、
    前記金属材料が熱誘起相変態をする材料である
    ことを特徴とする潤滑油。
  6. 請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の潤滑油を用いる
    ことを特徴とする潤滑システム。
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