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JP6270726B2 - 鉄高含有酵母抽出物の製造方法、及び、食品の製造方法 - Google Patents
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鉄高含有酵母抽出物の製造方法、及び、食品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鉄高含有酵母抽出物及びその製造方法、並びに、前記鉄高含有酵母抽出物を含む食品に関する。
鉄は、ヘモグロビンや各種酵素の構成成分であり、欠乏によって貧血や運動機能、認知機能等の低下を招くことが知られている。また、月経血による損失と妊娠中の需要の増大が必要量に与える影響は大きい(非特許文献1参照)。このため、鉄を効率良く生体内に摂取乃至吸収することができ、鉄欠乏による貧血や運動機能、認知機能の低下を改善し得るものであり、食品等に安全に用いることができる素材の開発が必要である。
酵母は古くから人類が食品素材として利用しており、例えば、菌体内に鉄を高濃度に含有させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。そのため、菌体内に鉄を取り込ませた酵母又はその抽出物は、鉄を補強した安全な食品素材として利用可能であると考えられる。
しかしながら、従来の鉄含有酵母においては、食品素材として用いることはできるものの、金属臭や不快臭といった非食品的臭いや、金属的味、異味、えぐ味といった非食品的味の更なる低減が求められている。また、従来の鉄含有酵母は、水に可溶でないため、食品に添加した際ににごりや沈殿が生じ、特に清涼飲料水等としての用途には利用できないという問題があった。
また、鉄等のミネラル含有酵母から抽出物を得るためには、(1)熱水抽出法、(2)自己消化法、(3)酵素分解法が提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
しかしながら、前記(1)〜(3)の方法では、ミネラルの回収率(抽出率)が低いという問題があった。更に、前記(2)及び(3)の方法には、酵母抽出物に特有の酵母臭及びエキス味が残り、前記(3)の方法には、高コストであり、使用した酵素が抽出物中に残存するという問題があった。
したがって、天然物由来の鉄を高濃度に含有し、水への溶解性に優れ、非食品的臭いや非食品的味が十分に低減されており、食品等に添加した際に外観を損なわず、しかも添加した食品の風味等を損なうことがない鉄高含有酵母抽出物及びその製造方法、並びに、前記鉄高含有酵母抽出物を含む食品の速やかな開発が強く求められている。
「日本人の食事摂取基準 2010年版」 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書、第一出版株式会社、p.218−p.226、XLVIII(2010年) 杉本 洋 「酵母エキス製造法の変遷(I)−国内の特許出願の傾向から−」 New Food Industry 1994, Vol.36, No.10, p.41−48
特開平8−332083号公報
本発明は、このような要望に応え、現状を打破し、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、天然物由来の鉄を高濃度に含有し、水への溶解性に優れ、非食品的臭いや非食品的味が十分に低減されており、食品等に添加した際に外観を損なわず、しかも添加した食品の風味等を損なうことがない鉄高含有酵母抽出物及びその製造方法、並びに、前記鉄高含有酵母抽出物を含む食品を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 鉄を含有する酵母を、カルボン酸及びカルボン酸塩の少なくともいずれかを含む溶液に懸濁させ、得られた懸濁液の固体成分と液体成分とを分離する抽出工程を含むことを特徴とする鉄高含有酵母抽出物の製造方法である。
<2> カルボン酸が1価から3価のカルボン酸であり、カルボン酸塩が1価から3価のカルボン酸塩である前記<1>に記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法である。
<3> カルボン酸が3価のカルボン酸であり、カルボン酸塩が3価のカルボン酸塩である前記<1>から<2>のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法である。
<4> カルボン酸がクエン酸であり、カルボン酸塩がクエン酸三ナトリウムである前記<1>から<3>のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法である。
<5> 抽出工程における懸濁液の温度が、30℃から100℃である前記<1>から<4>のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法である。
<6> 抽出工程における懸濁液のpHが、4.0から9.5である前記<1>から<5>のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法である。
<7> カルボン酸及びカルボン酸塩の総量が、酵母中の鉄1モルに対して、2.0モルから17.0モルである前記<1>から<6>のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法である。
<8> 抽出工程の前に、酵母を60℃〜120℃の熱水に懸濁させ、得られた懸濁液の固体成分と液体成分とを分離する熱水処理工程を含む前記<1>から<7>のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法である。
<9> 熱水処理工程において、熱水にリン酸塩を添加する前記<8>に記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法である。
<10> 酵母菌体由来の鉄を0.2質量%以上含有する鉄高含有酵母抽出物であって、鉄高含有酵母抽出物1gを水100mLに溶解乃至分散させたときの濁度が、波長660nmの吸光度(O.D.660)として、0.1以下であることを特徴とする鉄高含有酵母抽出物である。
<11> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の製造方法により製造された前記<10>に記載の鉄高含有酵母抽出物である。
<12> 酵母が、食用酵母である前記<10>から<11>のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物である。
<13> 食用酵母が、パン酵母、ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母及び味噌醤油酵母から選択される少なくとも1種である前記<12>に記載の鉄高含有酵母抽出物である。
<14> 食用酵母が、Saccharomyces cerevisiaeである前記<12>に記載の鉄高含有酵母抽出物である。
<15> 食品に添加されて用いられる前記<10>から<14>のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物である。
<16> 食品が、流動食及び清涼飲料水のいずれかである前記<15>に記載の鉄高含有酵母抽出物である。
<17> 前記<10>から<16>のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物を含むことを特徴とする食品である。
本発明によると、従来における前記問題を解決することができ、天然物由来の鉄を高濃度に含有し、水への溶解性に優れ、非食品的臭いや非食品的味が十分に低減されており、食品等に添加した際に外観を損なわず、しかも添加した食品の風味等を損なうことがない鉄高含有酵母抽出物及びその製造方法、並びに、前記鉄高含有酵母抽出物を含む食品を提供することができる。
図1は、試験例1における純水、塩化ナトリウム、及び各カルボン酸塩による鉄抽出率を示すグラフである。 図2は、試験例2における各カルボン酸塩による鉄抽出率を示すグラフである。 図3は、試験例3における鉄抽出率に対する懸濁液の温度の影響を示すグラフである。 図4は、試験例4における鉄抽出率に対する懸濁液のpHの影響を示すグラフである。 図5は、試験例5におけるクエン酸三ナトリウム水溶液の濃度と鉄抽出率との関係を示すグラフである。 図6Aは、試験例6における本発明の一態様である鉄高含有酵母抽出物の粉末、及びミネラル酵母Feの水への溶解性を示す写真の一例である。 図6Bは、図6Aの水溶液を3,000rpmで5分間遠心した後の写真である。 図6Cは、試験例6における本発明の一態様である鉄高含有酵母抽出物の粉末、及びミネラル酵母Feのリンゴ果汁溶液への溶解性を示す写真の一例である。 図6Dは、図6Cのリンゴ果汁溶液を3,000rpmで5分間遠心した後の写真である。
(鉄高含有酵母抽出物の製造方法)
本発明の鉄高含有酵母抽出物の製造方法は、抽出工程を含み、更に必要に応じて、熱水処理工程、乾燥工程などのその他の工程を含む。
<抽出工程>
前記抽出工程は、鉄を含有する酵母を、カルボン酸及びカルボン酸塩の少なくともいずれかを含む溶液に懸濁させ、得られた懸濁液の固体成分と液体成分とを分離する工程である。前記抽出工程により、鉄を高含有する液体成分(抽出物)を得ることができる。
<<酵母>>
前記酵母は、菌体内に鉄を含んでいる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記酵母における鉄含有量としては、鉄高含有酵母抽出物を鉄強化食品素材等として用いる場合には多いほど好ましいが、酵母における鉄の取込みの限界、及び鉄高含有酵母抽出物を効率的に製造する観点からは、乾燥菌体質量当たり0.01質量%〜5質量%が好ましく、1質量%〜5質量%がより好ましい。
ここで、前記酵母における鉄含有量とは、酵母菌体内における鉄含有量を指し、例えば、水等で洗浄した菌体であっても、洗浄後においても鉄含有量が高く維持されることが好ましい。このような酵母は、洗浄を行っても該鉄は除去されず菌体内部に保持されたままであるので、菌体由来の鉄であって安全性が高く、酵母特有の臭いや味を低減するための熱水処理(洗浄)を行った場合に、添加した食品の風味等を損なうことがなく、しかも前記鉄を高濃度含有しているので、食品素材等として好適である。
なお、前記酵母における鉄含有量は、公知の方法で測定することができ、例えば、原子吸光法、ICP発光分光分析法により測定することができる。
前記鉄を含有する酵母は、培養液に鉄を添加して酵母を培養することにより、酵母菌体内に鉄を取り込ませて作製してもよいし、鉄を2,000質量ppm以上含有する溶液中で、酵母を懸濁状態でゆっくりと攪拌及び/又は振とうすることにより作製してもよいし(例えば、特開平8−332083号公報参照)、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ミネラル酵母Fe(オリエンタル酵母工業株式会社製)などが挙げられる。前記培養液に添加する鉄の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、鉄利用率(鉄の菌体内取込率)と対糖収率(増殖率)とを良好なレベルで両立させることが好ましい。
なお、添加する鉄の種類、培地の種類、培養条件などは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記鉄を含有する酵母の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿菌体の態様、粉末の態様などが挙げられる。
前記酵母は、鉄以外に、更にその他のミネラル成分を含有していてもよく、該ミネラル成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マンガン、銅、マグネシウム、亜鉛等が挙げられる。これらのミネラル成分は、酵母中に、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよく、また、含まれている濃度としては、目的に応じて異なり一概に規定することはできないが、一般に高濃度であることが好ましい。
前記酵母としては、その抽出物を食品素材として用いる場合には、食用酵母であることが特に好ましい。
前記食用酵母としては、特に制限はなく、公知のものの中から選択することができ、例えば、パン酵母、ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母、味噌醤油酵母などが挙げられる。これらの中でも、パン酵母が特に好ましい。
前記食用酵母の菌株としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、トルロプシス(Torulopsis)属、ミコトルラ(Mycotorula)属、トルラスポラ(Torulaspora)属、キャンディダ(Candida)属、ロードトルラ(Rhodotorula)属、ピキア(Pichia)属などが挙げられる。
前記食用酵母の菌株の具体例としては、Saccharomyces cerevisiaeSaccharomyces carlsbergensisSaccharomyces uvarumSaccharomyces rouxiiTorulopsis utilisTorulopsis candidaMycotorula japonicaMycotorula lipolyticaTorulaspora delbrueckiiTorulaspora fermentatiCandida sakeCandida tropicalisCandida utilisHansenula anomalaHansenula suaveolensSaccharomycopsis fibligeraSaccharomyces lipolyticaRhodotorula rubraPichia farinosaなどが挙げられる。
これらの中でも、Saccharomyces cerevisiaeSaccharomyces carlsbergensisが好ましく、Saccharomyces cerevisiaeが特に好ましい。
<<カルボン酸及びカルボン酸塩>>
前記カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、鉄の抽出率(鉄溶出率)の観点から、1価から3価のカルボン酸が好ましく、3価のカルボン酸がより好ましい。
前記1価のカルボン酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ピルビン酸、グルコン酸などが挙げられる。
前記2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、オキサロ酢酸、α−ケトグルタル酸などが挙げられる。
前記3価のカルボン酸としては、例えば、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、オキサロコハク酸などが挙げられる。
これらの中でも、食品添加及び鉄抽出率の観点から、酢酸、グルコン酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸が好ましく、クエン酸がより好ましい。
前記カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記カルボン酸塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、鉄の抽出率(鉄溶出率)の観点から、1価から3価のカルボン酸塩が好ましく、3価のカルボン酸塩がより好ましい。
これらのカルボン酸塩としては、例えば、上記カルボン酸の具体例の塩などが挙げられる。
これらの中でも、食品添加及び鉄抽出率の観点から、酢酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩が好ましく、クエン酸塩がより好ましい。前記クエン酸塩としては、クエン酸三ナトリウムが好適に挙げられる。
前記カルボン酸塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記塩の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記カルボン酸及びカルボン酸塩は、どちらか一方を使用してもよいし、両者を使用してもよい。
前記カルボン酸又は前記カルボン酸塩の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、鉄の抽出率の観点から、カルボン酸及びカルボン酸塩の総量が、酵母中の鉄1モルに対して、2.0モルから17.0モルが好ましく、2.0モルから15.0モルがより好ましく、2.5モルから11.0モルが特に好ましい。
前記カルボン酸及び前記カルボン酸塩の少なくともいずれかを含む溶液(以下、「カルボン酸緩衝液」と称することがある)に用いられる溶媒としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、通常水であり、該水とアルコール等の有機溶媒との混合溶液であってもよい。
前記カルボン酸緩衝液の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、鉄の抽出率の観点から、70ミリモル/Lから700ミリモル/Lが好ましく、80ミリモル/Lから500ミリモル/Lがより好ましく、90ミリモル/Lから450ミリモル/Lが特に好ましい。
前記カルボン酸緩衝液のpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、前記pHは、前記カルボン酸及び前記カルボン酸塩の量比を変更することにより、調整することができる。
前記抽出工程における懸濁液のpHとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、鉄の抽出効率の観点から、2.0から10.0が好ましく、4.0から9.5がより好ましく、5.0から8.0が特に好ましい。
前記抽出工程における懸濁液の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、鉄の抽出効率の観点から、30℃から100℃が好ましく、50℃から100℃がより好ましく、70℃から100℃が特に好ましい。
前記抽出工程における抽出時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記抽出工程における鉄の抽出率(以下、「溶出率」と称することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高いほど好ましく、16%以上が好ましく、25%以上がより好ましく、60%以上が特に好ましい。
前記鉄の抽出率は、下記式により求めることができる。
鉄の抽出率(%)={抽出物中の鉄全量(質量)/抽出に用いた酵母に含まれる鉄全量(質量)}×100
<<懸濁>>
前記酵母を前記カルボン酸及びカルボン酸塩の少なくともいずれかを含む溶液に懸濁させる方法としては、特に制限はなく、公知の攪拌方法や振とう方法を用いることができる。
また、前記抽出工程において、前記懸濁液を更に振とうしてもよい。前記振とうの条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<<固体成分と液体成分との分離>>
前記懸濁液の固体成分と液体成分とを分離する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、濾過による分離、遠心による分離などが挙げられる。
前記濾過の方法としては、特に制限はなく、公知の濾過装置を適宜選択して行うことができ、例えば、フィルタープレス、ラインフィルターなどを用いることができる。なお、これらは併用してもよい。
前記遠心分離の方法としては、特に制限はなく、公知の遠心装置を適宜選択して行うことができる。また、前記遠心の条件としても、特に制限はなく、前記懸濁液の量に応じて適宜選択することができ、例えば、前記懸濁液の量が5mLの場合は、3,000rpmで5分間という条件とすることが挙げられる。
前記カルボン酸緩衝液による抽出の痕跡として前記鉄高含有酵母抽出物中にカルボン酸が残るため、前記カルボン酸緩衝液による抽出が行われたか否かは、前記鉄高含有酵母抽出物中のカルボン酸を分析して判別することができる。前記分析の方法としては、特に制限はなく、例えば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)によってカルボン酸量を測定することにより行うことができる。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱水処理工程、乾燥工程、濃縮工程、希釈工程などが挙げられる。これらの中でも、熱水処理工程を含むことが好ましい。
<<熱水処理工程>>
前記熱水処理工程は、前記抽出工程の前に、鉄を含有する前記酵母を60℃〜120℃の熱水に懸濁させ、得られた懸濁液の固体成分と液体成分とを分離する工程である。前記抽出工程の前に、前記熱水処理工程を行うことにより、酵母特有の臭い及び味(酵母臭、酵母味)を低減することができ、得られた鉄高含有酵母抽出物を食品等に添加した際に食品等の風味をより損なわない点で好ましい。
前記熱水の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、酵母臭及び酵母味の低減効果が高い点で、80℃〜120℃が好ましく、95℃〜120℃がより好ましい。
なお、酵母を懸濁させる方法及び得られた懸濁液の固体成分と液体成分とを分離する方法としては、特に制限はなく、前述した抽出工程と同様の方法が挙げられる。
前記熱水処理工程においては、酵母特有の臭い及び味を低減させるため、酵母臭や酵母味の抽出(除去)を促進する抽出促進剤を熱水に添加することが好ましい。前記抽出促進剤としては、次の抽出工程における鉄の抽出率に悪影響を与えない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボン酸塩以外の塩が挙げられる。これらの中でも、酵母臭を抽出する効果が高く、熱水工程において鉄が抽出され難い点で、リン酸塩が好ましい。
前記抽出促進剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乾燥酵母菌体質量当たり、5質量%〜50質量%が好ましく、20質量%〜50質量%がより好ましい。
<<乾燥工程、濃縮工程、希釈工程>>
前記乾燥工程は、前記鉄高含有酵母抽出物を乾燥させる工程である。
前記乾燥の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スプレードライヤーL−8(大川原化工機株式会社製)を用いて行うことができる。これにより、鉄を高含有した酵母抽出固形物(粉体)を得ることができ、後述する種々の用途に用いることができる。なお、前記固形物とする際には、デキストリン等の賦形剤を適宜含有させてもよい。
前記濃縮工程は、前記鉄高含有酵母抽出物を濃縮する工程であり、前記希釈工程は、前記鉄高含有酵母抽出物を希釈する工程である。
前記濃縮及び希釈の方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
(鉄高含有酵母抽出物)
本発明の鉄高含有酵母抽出物は、酵母菌体由来の鉄を0.2質量%以上含有する鉄高含有酵母抽出物であって、鉄高含有酵母抽出物1gを水100mLに溶解乃至分散させたときの濁度が、波長660nmにおける吸光度(O.D.660)として、0.1以下である。
前記鉄高含有酵母抽出物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記本発明の鉄高含有酵母抽出物の製造方法によって好適に製造することができる。即ち、鉄を含有する酵母を、カルボン酸及びカルボン酸塩の少なくともいずれかを含む溶液で抽出して製造することが好ましい。
<鉄含有量>
前記鉄高含有酵母抽出物における鉄含有量としては、鉄高含有酵母抽出物を鉄強化食品素材等として用いる観点から、多いほど好ましい。本発明において「鉄高含有」とは、酵母菌体由来の鉄を0.2質量%以上含有することをいい、0.5質量%以上含有することが好ましく、0.7質量%以上含有することがより好ましい。
このように鉄を高濃度に含有することにより、流動食、飲料等の経口経管栄養組成物、食品素材等として好適に用いることができる。
なお、前記鉄含有量は、公知の方法で測定することができ、例えば、原子吸光法、ICP発光分光分析法などにより測定することができる。
<濁度>
本発明の鉄高含有酵母抽出物は、水に対する溶解性が高いため、水溶液とした場合の透明度が高く、鉄高含有酵母抽出物1gを水100mLに溶解乃至分散させたときの濁度が、波長660nmにおける吸光度(O.D.660)として、0.1以下であり、0.08以下が好ましく、0.05以下がより好ましい。前記濁度が0.1を超えると、食品等に添加した際ににごりが生じ、変色することがあり、食品等の外観を損ねることがある。また、水に対する溶解性が十分でなく、沈殿することがあるため、特に清涼飲料水等、透明性が必要とされる食品としての用途に用いる際に問題が生じることがある。
前記鉄高含有酵母抽出物の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記抽出工程によって得られた液体(ろ液、上清等の抽出液)であってもよいし、粉末(パウダー)、粒子状、シート状等の固形物であってもよいし、ゲル状、スラリー状等の半固形物であってもよい。ただし、前記濁度を測定する際の「鉄高含有酵母抽出物1g」は、乾燥させた固形物であり、前記固形物の水分含有量が7質量%以下であるものを指す。前記乾燥の方法としては、特に制限はなく、上述の方法を用いることができ、その条件等は、特に制限はない。
なお、前記濁度は、分光光度計を使用して、波長660nmにおける吸光度(O.D.660)を測定することができ、前記分光光度計としては、例えば、U−2000型(株式会社日立製作所製)などが挙げられる。
<用途>
本発明の鉄高含有酵母抽出物の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、食品に添加されて用いられる食品素材、飼料、餌料としての用途が好ましく、前記食品素材としての用途がより好ましい。前記食品素材の中でも、本発明の鉄高含有酵母抽出物が溶解性に優れる点で、前記食品としては、流動食、清涼飲料水の用途が好ましい。本発明の鉄高含有酵母抽出物を用いることにより、鉄高含有食品、鉄高含有飼料、鉄高含有餌料等が得られる。また、本発明の鉄高含有酵母抽出物の他の用途としては、食品発酵培地等への添加剤も挙げられる。
前記鉄高含有酵母抽出物の使用形態としては、特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができ、乾燥された粉末の状態(例えば、抽出物をスプレードライ等により乾燥したものなど)で使用してもよいし、溶媒に溶解された溶液の状態で使用してもよいし、半固形物の状態(例えば、ゲル状、クリーム状のものなど)で使用してもよい。なお、前記使用形態にするための鉄高含有酵母抽出物の調製方法としては、特に制限はなく、公知の装置等を用い公知の方法に従って行うことができる。
(食品)
本発明の食品は、本発明の鉄高含有酵母抽出物を含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
ここで、前記食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品などの区分に制限されるものではなく、例えば、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものを意味する。
前記食品の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、流動食、パン、ビスケット、クラッカー等の製菓、水産加工品、食肉加工品、麺類、味噌等の調味料、加工野菜製品、ジュース等の飲料、アイスクリーム等の氷菓、健康食品等が好ましく、流動食、飲料が特に好ましい。
前記食品中の前記鉄高含有酵母抽出物の添加量としては、特に制限はなく、用途、目的等に応じて適宜選択することができる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、食品を製造するにあたって通常用いられる、補助的原料又は添加物などが挙げられる。
前記補助的原料又は添加物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤などが挙げられる。
前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
以下、本発明の試験例を説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。
(試験例1:カルボン酸塩による鉄の抽出−1)
乾物質量5gの鉄高含有酵母粉末(ミネラル酵母Fe、鉄含有量:15,390質量ppm、オリエンタル酵母工業株式会社製)に、表1に示す200ミリモル/Lの各カルボン酸ナトリウム水溶液を50mL加えて攪拌し、100mLにメスアップした。なお、前記各カルボン酸ナトリウムの量は、抽出される酵母中の鉄1モルに対して、7.3モルであった。対照としては、水又は200ミリモル/Lの塩化ナトリウム(食塩)水溶液を用い、以下同様の試験を行った。ここで得られた各懸濁液のpHをpHメーターMP230(METTLER TOREDO社製)で測定した。
前記懸濁液をスターラーによって攪拌しながら、5mLを試験管に取り、沸騰水中で10分間加熱した。この懸濁液を3,000rpmで5分間遠心分離し、上清のみを試験管に採取し、酵母抽出物を得て、その質量を測定した。
前記鉄の抽出率は、酵母抽出物中の鉄含有量を、ICP発光分光分析装置(Optima2100DV、パーキンエルマー社製)を用いてICP発光分光分析法により測定し、抽出液へ抽出された鉄の割合を計算した。結果を表1及び図1に示す。
また、前記抽出物を乾燥粉末とし、前記乾燥粉末における鉄含有量(質量%)を以下のようにして測定した。即ち、鉄を抽出した抽出液にデキストリンを添加し、固形物含量を10質量%に調整後、スプレードライヤーL−8(大川原化工機株式会社製)を用いて乾燥させ、ICP発光分光分析装置(Optima2100DV、パーキンエルマー社製)を用いてICP発光分光分析法により鉄を定量することにより行った。結果を表1に示す。
表1及び図1の結果から、鉄抽出率及び抽出物における鉄含有量は、カルボン酸塩を用いることで鉄抽出率が高くなり、鉄を高含有した抽出物が得られることがわかった。
(試験例2:カルボン酸塩による鉄の抽出−2)
乾物質量1gの鉄高含有酵母粉末(ミネラル酵母Fe、鉄含有量:15,390質量ppm、オリエンタル酵母工業株式会社製)に、表2に示す200ミリモル/Lの各カルボン酸ナトリウム水溶液を10mL加えて攪拌し、各pHに調整後、20mLにメスアップした。なお、酵母中の鉄1モルに対する前記各カルボン酸ナトリウムの量は、表2のとおりであった。また、前記pHの調整は、pHメーターMP230(METTLER TOREDO社製)で測定しながら行った。
前記懸濁液を20℃で2時間、振とう(スターラーによって攪拌)した。
その後、前記懸濁液をスターラーによって攪拌しながら、5mLを試験管に取り、沸騰水中で10分間加熱した。この懸濁液を3,000rpmで5分間遠心分離し、上清のみを試験管に採取し、酵母抽出物を得て、その質量を測定した。
前記鉄の抽出率は、酵母抽出物中の鉄含有量を、ICP発光分光分析装置(Optima2100DV、パーキンエルマー社製)を用いてICP発光分光分析法により測定し、抽出液へ抽出された鉄の割合を計算した。結果を表2及び図2に示す。
また、試験例1と同様にして、抽出物の乾燥粉末を得て抽出物における鉄含有量を測定した。結果を表2に示す。
表2及び図2の結果から、鉄抽出率及び抽出物における鉄含有量は、カルボン酸塩として、酢酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムを用いた場合にも高くなることがわかった。
(試験例3:鉄抽出率に対する抽出温度の影響)
40質量%のクリームになるようミネラル酵母Fe(鉄含有量:15,390質量ppm、オリエンタル酵母工業株式会社製)の粉末を300mLの水に懸濁した。得られたクリームを沸騰水中で10分間加熱した後、洗浄し、沈殿を300mLにメスアップした。得られたクリーム10mLにクエン酸及びクエン酸三ナトリウム・2水和物を含む水溶液(クエン酸緩衝液)10mLを添加して懸濁させた。なお、前記クエン酸緩衝液の濃度は、200ミリモル/Lであり、前記クエン酸緩衝液のpHは、4.5とした。
前記懸濁液の温度を4℃、50℃、又は75℃としてから2時間後、遠心分離を行い、得られた上清(酵母抽出物)について、試験例1と同様にして、鉄抽出率を測定した。また、試験例1と同様にして、抽出物の乾燥粉末を得て抽出物における鉄含有量を測定した。結果を下記表3及び図3に示す。
表3及び図3の結果から、懸濁液の温度が高いほど、鉄抽出率が高くなる傾向が見られるものの、幅広い温度範囲において、20%以上の高い鉄抽出率を示し、鉄を高含有する酵母抽出物が得られることがわかった。
(試験例4:鉄抽出率に対するpHの影響)
試験例3において、クエン酸緩衝液を下記表4に記載の各水溶液(クエン酸緩衝液)に代え、懸濁液の温度を75℃とした以外は、試験例3と同様にして、上清(酵母抽出物)を得た。なお、前記クエン酸緩衝液のpHは、クエン酸とクエン酸三ナトリウム・2水和物との量比を適宜変更することにより、調整した。
前記上清(酵母抽出物)について、試験例1と同様にして、鉄抽出率を測定した。また、試験例1と同様にして、抽出物の乾燥粉末を得て抽出物における鉄含有量を測定した。結果を下記表4及び図4に示す。
表4及び図4の結果から、抽出に用いる溶媒(カルボン酸緩衝液)のpHが中性付近であるほど、鉄抽出率は高くなる傾向が見られるものの、懸濁液のpHの広い範囲において、20%以上の高い鉄抽出率を示し、鉄を高含有する酵母抽出物が得られることがわかった。また、抽出に用いる溶媒として、カルボン酸のみ、カルボン酸及びカルボン酸塩、並びにカルボン酸塩のみを用いたいずれの場合にも高い鉄抽出率を示し、鉄を高含有する酵母抽出物が得られることがわかった。
(試験例5:鉄抽出率に対する酵母中に含まれる鉄量と、カルボン酸及びカルボン酸塩の総量との関係)
原料としてミネラル酵母Fe(鉄含有量:15,390質量ppm、オリエンタル酵母工業株式会社製)を用いてカルボン酸及びカルボン酸塩の総量と鉄の抽出効率との関係を試験した。抽出溶媒に含まれるカルボン酸塩として、クエン酸三ナトリウムを用い、下記表5に示した濃度のクエン酸三ナトリウム水溶液を用意した。なお、クエン酸三ナトリウム水溶液のpHは、7.8とした。
下記表5に示した濃度の各クエン酸三ナトリウム水溶液を用い、懸濁液の温度を75℃とした以外は、試験例3と同様にして、上清(酵母抽出物)を得た。
前記上清(酵母抽出物)について、試験例1と同様にして、鉄抽出率を測定した。また、試験例1と同様にして、抽出物の乾燥粉末を得て抽出物における鉄含有量を測定した。結果を下記表5及び図5に示す。なお、図5中、「◆」は鉄抽出率を示し、「■」は懸濁液のpHを示す。
表5及び図5の結果から、カルボン酸及びカルボン酸塩の総量が、抽出される酵母中の鉄1モルに対して一定量以上であると、鉄抽出率が非常に高くなることがわかった。
(試験例6:溶解性の評価)
試験例4−10で得られた鉄高含有酵母抽出物の粉末1gを水又はリンゴ果汁(10体積%リンゴ果汁入り飲料、アサヒ飲料株式会社製)で100mLにメスアップして、鉄高含有酵母抽出物の1%(質量/体積)溶液を作製した。
そして、前記各溶液の濁度について、分光光度計(U−2000型、株式会社日立製作所製)を使用して、波長660nmにおける吸光度(O.D.660)を測定することにより求めた。
また、前記各溶液を3,000rpmで5分間遠心した後の沈殿の有無を観察した。
なお、対照として、ミネラル酵母Fe(オリエンタル酵母工業株式会社製;抽出を行っていない)について、鉄含量が同じになるように添加して、同様に溶液の濁度の測定、遠心後の沈殿の有無の評価を行った。結果を表6、図6A(遠心前の水溶液)、図6B(遠心後の水溶液)、図6C(遠心前のリンゴ果汁入り飲料)、及び図6D(遠心後のリンゴ果汁入り飲料)に示す。
試験例6−1の水溶液の濁度は、試験例6−2の水溶液の濁度に比べ、有意に低い値を示した。また、図6Aから、試験例6−1の水溶液は、目視でも試験例6−2の水溶液に比べ、有意に清澄性が高かった。更に、図6Bから、水溶液を3,000rpmで5分間遠心したところ、試験例6−1では沈殿物が確認されず、清澄性の高い溶液だったのに対し、試験例6−2では沈殿物が確認された。
これらの結果は、水の代わりにリンゴ果汁入り飲料を用いた試験例6−3、及び試験例6−4でも同様であった。
したがって、本発明の鉄高含有酵母抽出物は、水等への溶解性が高いため、流動食や飲料等にも添加して使用することができ、また、濁りや変色が生じないため、添加する食品等の外観を損なうことがなく、特に透明度の高い清涼飲料水等にも添加して使用することができることがわかった。
(試験例7:臭いと味の評価)
試験例4−10で得られた鉄高含有酵母抽出物の粉末(以下、「粉末」と称する)、前記粉末の1%(質量/体積)水溶液、リンゴ果汁(10体積%リンゴ果汁入り飲料、アサヒ飲料株式会社製)に前記粉末を1%(質量/体積)となるように溶解させたもの(以下、「リンゴ果汁」と称する)、調整粉乳(チルミル、森永乳業株式会社製)14gを水100mLに溶解又は懸濁させた水溶液に前記粉末を1%(質量/質量)となるように溶解させたもの(以下、「ミルク」と称する)、栄養調整食品(メイバランス(ヨーグルト味)、株式会社明治製)に前記粉末を1%(質量/質量)となるように添加したもの(以下、「流動食」と称する)を用意した。
<評価方法>
前記粉末、前記粉末の1%水溶液、前記リンゴ果汁、前記ミルク、及び前記流動食について、臭い(金属臭・不快臭)、及び味(金属的味・異味・えぐ味)を5人の評価者により評価した。なお、前記鉄高含有酵母抽出物の粉末については、臭いのみ評価した。
また、対照として、ミネラル酵母Fe(オリエンタル酵母工業株式会社製、抽出を行っていない)を鉄含有量が同じになるようにしたものも同様に評価した。
<<評価−1>>
前記粉末、前記粉末の1%水溶液、及び前記リンゴ果汁では、鉄高含有酵母抽出物における各評価項目の評価を3(基準)として、試料(ミネラル酵母Fe)について、下記基準に従って5人が評価した数値の平均をとった。結果を表7−1に示す。
−臭い(金属臭・不快臭)の評価基準−
5:非常に強い
4:強い
3:同等
2:弱い
1:非常に弱い
−味(金属的味・異味・えぐ味)の評価基準−
5:非常に強い
4:強い
3:同等
2:弱い
1:非常に弱い
<<評価−2>>
前記ミルク、及び前記流動食では、試料無添加における各評価項目の評価を3(基準)として、各試料(鉄高含有酵母抽出物、及びミネラル酵母Fe)について、下記基準に従って5人が評価した数値の平均をとった。結果を表7−2に示す。
−臭い(金属臭・不快臭)の評価基準−
5:非常に強い
4:強い
3:同等
2:弱い
1:非常に弱い
−味(金属的味・異味・えぐ味)の評価基準−
5:非常に強い
4:強い
3:同等
2:弱い
1:非常に弱い
表7−1及び表7−2から、前記本発明の一態様である鉄高含有酵母抽出物を用いた試験例7−1は、ミネラル酵母Feを用いた試験例7−2よりも金属臭や不快臭といった非食品的臭いや、金属的味、異味、えぐ味といった非食品的味が十分に低減されており、非常に優れていることがわかった。そのため、食品素材として十分に用いることができることがわかった。
本発明の鉄高含有酵母抽出物は、天然物由来の鉄を高濃度に含有し、水への溶解性に優れ、金属臭や不快臭といった非食品的臭いや、金属的味、異味、えぐ味といった非食品的味が十分に低減されており、食品等に添加した際に外観を損なわず、しかも添加した食品の風味等を損なうことがないため、鉄欠乏による貧血や運動機能、認知機能の低下を改善し得る流動食、飲料等の経口経管栄養組成物、食品素材等として好適に用いることができる。
本発明の鉄高含有酵母抽出物の製造方法によれば、鉄を含有する酵母からの鉄抽出率が高く、鉄高含有酵母抽出物を効率的に製造することができる。

Claims (10)

  1. 菌体内に鉄を取り込ませて作製した鉄を含有する酵母を、60℃〜120℃の熱水に懸濁させ、第1の懸濁液を得て、前記第1の懸濁液の固体成分と液体成分とを分離し、固体成分を得る熱水処理工程、及び、前記熱水処理工程で得られた固体成分を、カルボン酸及びカルボン酸塩の少なくともいずれかを含む溶液に懸濁させ、第2の懸濁液を得て、前記第2の懸濁液の固体成分と液体成分とを分離し、鉄を含有する液体成分を得る抽出工程を含むことを特徴とする鉄高含有酵母抽出物の製造方法。
  2. カルボン酸が1価から3価のカルボン酸であり、カルボン酸塩が1価から3価のカルボン酸塩である請求項1に記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法。
  3. カルボン酸がクエン酸であり、カルボン酸塩がクエン酸三ナトリウムである請求項1から2のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法。
  4. 鉄を含有する酵母が乾燥酵母粉末である請求項1から3のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法。
  5. 抽出工程における懸濁液の温度が、30℃から100℃である請求項1から4のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法。
  6. 抽出工程における懸濁液のpHが、4.0から9.5である請求項1から5のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法。
  7. カルボン酸及びカルボン酸塩の総量が、酵母中の鉄1モルに対して、2.0モルから17.0モルである請求項1から6のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法。
  8. 熱水処理工程において、熱水にリン酸塩を添加する請求項1から7のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法。
  9. 鉄高含有酵母抽出物が、酵母菌体由来の鉄を0.2質量%以上含有し、鉄高含有酵母抽出物1gを水100mLに溶解乃至分散させたときの濁度が、波長660nmの吸光度(O.D.660)として、0.1以下である請求項1から8のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載の鉄高含有酵母抽出物の製造方法により製造された鉄高含有酵母抽出物を用いることを特徴とする食品の製造方法。
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