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JP6288645B2 - 潤滑剤とそれを用いた金属加工方法 - Google Patents
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JP6288645B2 - 潤滑剤とそれを用いた金属加工方法 - Google Patents

潤滑剤とそれを用いた金属加工方法 Download PDF

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Description

本発明は、切削や研削あるいは研磨などの金属加工を行う際に、工具の刃先加工点に供給される潤滑剤に係り、特に、環境に与える負荷が小さい潤滑剤とそれを用いた金属加工方法に関する。
一般に、金属材料の機械加工を行う場合、工具の刃先加工点に対して多量の潤滑油が供給される。しかしながら、このような方法では、加工熱によって油煙が発生するため、作業環境の悪化を招くおそれがある。また、加工物に付着したオイルは、環境負荷を生じないように、回収して適切に処理しなければならない。
このような課題に対処するべく、従来、環境負荷の小さい潤滑剤や金属加工方法が求められていた。そこで、近年では、水をベースとした潤滑剤が提案されており、それに関し、既に幾つかの発明や考案も開示されている。
例えば、特許文献1には、「ミスト加工用潤滑剤及びミスト加工方法」という名称で、アルミニウムやアルミニウム合金の切削加工を行う際に用いる潤滑剤及びそれを用いた加工方法に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された加工方法に関する発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金の切削加工において、ダイヤモンドライクカーボンでコーティングした工具の刃先加工点に対して、水酸基を有する水溶性液状化合物又はその水溶液を含む潤滑剤をミスト状にして供給することを特徴とする。
このような加工方法においては、潤滑剤が油分を含まず、かつ、ミスト状にして供給されるため、揮発し易い。したがって、加工時に十分な冷却効果と潤滑効果を得ることができる。
また、特許文献2には、「クーラントおよびそれを用いた塑性加工又は研削又は切削又は研磨装置およびその方法」という名称で、加工具と被加工物の接触部分に供給される冷却液(クーラント)とそれを用いて塑性加工等を行う方法及びその加工装置に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明であるクーラントは、水溶性と増粘性を有し、摂食可能な多糖類又は糖タンパク質又はこれらの混合体が水に溶解又は分散された水溶液からなり、常温における粘度が3〜10[mPa・sec]の範囲内であって、加工部位にミスト化して供給されることを特徴とする。
このような構成のクーラントは、金属からなる被加工物の表面に被膜を形成するという作用を有する。したがって、工具と被加工物の間の摩擦を低減させるとともに、工具や被加工物の表面温度を低下させることができる。また、このクーラントは環境に与える負荷が小さいため、使用後に大気中に拡散させて消失させたり、水で希釈して下水として排水したりすることができる。
特開2012−57069号公報 特許第5392740号公報
潤滑剤は加工点に届いて初めて効果を発揮するものであるが、本来、水は表面張力が大きく濡れ難い液体であることから、水をベースとした潤滑剤を加工点に到達させるためには、その表面張力を小さくしなければならない。そこで、特許文献1に開示された発明では、水の表面張力を下げ、濡れ性を付与する目的でアルコールを添加しているのである。しかしながら、この場合、よほど多量のアルコールを添加しない限り、加工対象物の表面を濡らすのに十分な濡れ性は得られない。また、この発明においては、加工対象物と工具の間の摩擦を低減するために、多糖類を添加しなければならず、さらに、十分な潤滑性を得るために、工具の刃先加工点をダイヤモンドライクカーボンでコーティングする必要がある。
また、特許文献2に開示された発明であるクーラントは、環境汚染性が極めて低いため、廃棄処理にかかる手間とコストを低減できるものの、十分な潤滑性と濡れ性を得るために、多糖類を多く添加しなければならず、また、加工点に対して多量に供給しなければならないという課題があった。
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、工具に特殊な加工を施す必要がなく、安価であって、かつ、環境に与える負荷が小さい潤滑剤とそれを用いた金属加工方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、アルミニウム若しくはアルミニウム合金又は鉄若しくは鉄鋼材からなる金属材料を加工する際にミスト化された状態で用いられる水と界面活性剤からなる潤滑剤であって、上記金属材料に対する接触角が30°より小さく、界面活性剤としてラウリルグルコシドが添加されていることを特徴とするものである。
このような構成の潤滑剤においては、ミスト状であるため、加工点に到達し易く、また、加工点に供給された際に、工具や加工対象物の表面上で極めて薄く、均一に広がり易いという作用を有する。加えて、ミスト状であるため、液体の表面積が大きく、加工点に供給された後、水分の蒸発が促進されるという作用を有する。この場合、水分の蒸発により、気化熱が奪われるため、加工点が冷却される。加えて、潤滑剤を構成する界面活性剤に、強い潤滑性を有する反面、人体に対して悪い影響を与えるような工業用の界面活性剤を用いる必要がなく、また、界面活性剤とは別に潤滑性物質を添加する必要もない。さらに、潤滑剤を構成する界面活性剤に、強い潤滑性を有する工業用の界面活性剤を用いた場合でも、加工点に対する供給量が少なくて済む。
また、請求項2記載の発明である金属加工方法は、アルミニウム若しくはアルミニウム合金又は鉄若しくは鉄鋼材からなる金属材料を加工する際に請求項1に記載の潤滑剤を用いることを特徴とするものである。
このような金属加工方法においては、請求項1に記載された発明と同様の作用が発揮される。
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の金属加工方法において、金属材料はアルミニウム又はアルミニウム合金であって、潤滑剤を、4〜12cc/hの割合で加工点に供給することを特徴とするものである。
このような金属加工方法によれば、アルミニウム又はアルミニウム合金の加工に際し、請求項2に記載の発明の作用が発揮される。
請求項4記載の発明は、請求項2に記載の金属加工方法において、金属材料は鉄又は鉄鋼材であって、潤滑剤を、22〜48cc/hの割合で加工点に供給することを特徴とするものである。
このような金属加工方法においては、鉄又は鉄鋼材の加工に際し、請求項2に記載の発明の作用に加え、工具が摩耗し難いという作用を有する。
以上説明したように、本発明の請求項1に記載の潤滑剤によれば、加工点において水分が蒸発した結果、濃縮された状態となるため、界面活性剤が本来有している濡れ性や潤滑性が最大限に発揮される。また、加工点が冷却されることで、潤滑性がより一層発揮されるとともに、工具寿命も長くなる。さらに、人体に対して悪い影響を与えるような界面活性剤を使用する必要がなく、また、仮に使用した場合でも加工点に対する供給量をできるだけ少なくして、環境に与える負荷を小さく抑えることが可能である。そして、界面活性剤とは別に潤滑性物質を添加物として水に加える必要がないため、潤滑剤の製造コストを安くすることができる。
本発明の請求項2に記載の金属加工方法によれば、請求項1に記載された発明と同様の効果が発揮される。
本発明の請求項3に記載の金属加工方法によれば、アルミニウム又はアルミニウム合金の加工に際し、請求項2に記載の発明の効果が発揮される。
本発明の請求項4に記載の金属加工方法によれば、鉄又は鉄鋼材の加工に際し、請求項2に記載の発明の効果が発揮される。
本発明の潤滑剤を用いてアルミニウム合金(A5052)の切削を行い、加工点への供給量と切削抵抗との関係を調べた結果を示すグラフである。 図1に示した切削抵抗の最小値を界面活性剤の濃度ごとにプロットしたグラフである。 本発明の潤滑剤について接触角と粘度を測定し、その結果を界面活性剤の濃度ごとにプロットしたグラフである。 図1に示した切削抵抗の最小値を潤滑剤の粘度ごとにプロットしたグラフである。 図1に示した切削抵抗の最小値を潤滑剤の接触角ごとにプロットしたグラフである。 接触角が22.4〜25.0°の範囲内にある本発明の潤滑剤について、図1に示した切削抵抗の最小値に対応する潤滑剤の供給量を接触角ごとにプロットしたグラフである。 本発明の潤滑剤を用いて鉄鋼材(S50C)の切削を行い、加工点への供給量と切削抵抗との関係を調べた結果を示すグラフである。 図7に示した切削抵抗の最小値を界面活性剤の濃度ごとにプロットしたグラフである。 図7に示した切削抵抗の最小値を潤滑剤の接触角ごとにプロットしたグラフである。 接触角が21.0〜30.7°の範囲内にある本発明の潤滑剤について、図7に示した切削抵抗の最小値に対応する潤滑剤の供給量を接触角ごとにプロットしたグラフである。 界面活性剤の濃度が0.5〜2.0[wt%]の範囲内にある本発明の潤滑剤について、切削加工後に測定した工具の刃先の摩耗幅と、接触角を界面活性剤の濃度ごとにプロットしたグラフである。 界面活性剤の濃度が0.5〜2.0[wt%]の範囲内にある本発明の潤滑剤について、鉄鋼材(S50C)の切削加工を行って、切削距離と切削抵抗との関係を調べた結果を示すグラフである。
水はオイルと異なり、濡れ性と潤滑性という潤滑剤に必要な特性を有していない。そのため、水をベースとする潤滑剤には、この濡れ性と潤滑性を付与するために、何らかの物質が添加される。水の表面張力を下げる物質としては、例えば、界面活性剤が知られている。
界面活性剤は、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性界面活性剤などの種類に分けられる。そのうち、工業用途で使用されるものは、強力な潤滑性を有しているが、水に添加して潤滑剤として用いる場合には、十分な濡れ性や潤滑性を発揮させるために、添加量を多くしたり、加工点に多量に供給したりする必要がある。しかしながら、これらの界面活性剤のほとんどは、人体に対して悪い影響を与えるため、大量に使用することは望ましくない。
一方、化粧品やシャンプーなど人体に触れる状況で使用される界面活性剤は、安全性が高い反面、十分な潤滑性を有していないため、それ単独で潤滑剤に用いられることはなく、通常、他の潤滑性物質が組み合わされた状態で用いられる。
環境に与える負荷を小さくするには、加工点に供給する潤滑剤の量をできるだけ少なくすることが望ましい。この点、オイルベースの潤滑剤であれば、潤滑性と濡れ性を有しているため、ミスト化することで、供給量を抑えつつ、加工点にも到達し易くすることができる。一方、界面活性剤が添加された水をベースとする潤滑剤については、従来、「ミスト化すると、加工点への供給量が制限されることになり、もともと十分とは言えない潤滑性能がさらに低下するおそれがある」と考えられていた。そのため、これまで、水と界面活性剤からなる潤滑剤をミスト化して加工点に供給するという発想は無かった。
これに対し、本発明の潤滑剤は、加工点(加工対象物と工具が接触する箇所)に対してミスト状に供給されるものであって、水と界面活性剤からなり、かつ、接触角が30°より小さいことを特徴としている。
このような構成の潤滑剤においては、ミスト状であるため、加工点に到達し易く、また、加工点に供給された際に、工具や加工対象物の表面上で極めて薄く、均一に広がり易いという作用を有する。加えて、ミスト状であるため、液体の表面積が大きく、加工点に供給された後、水分の蒸発が促進されるという作用を有する。そして、水分の蒸発に伴い、潤滑剤は濃縮された状態となるため、界面活性剤が本来有している濡れ性や潤滑性が最大限に発揮される。さらに、水分が蒸発する際、気化熱が奪われて加工点が冷却される。その結果、潤滑性がより一層発揮される。また、工具の寿命も長くなる。
加えて、潤滑剤を構成する界面活性剤に、人体に対して悪い影響を与えるようなものを用いる必要がなく、また、仮に用いたとしても加工点に対する供給量をできるだけ少なくして、環境に与える負荷を小さく抑えることが可能である。さらに、界面活性剤とは別に潤滑性物質を水に添加する必要がないため、潤滑剤の製造コストを安くすることができる。
なお、このような潤滑剤を用いた金属加工方法においては、上述の潤滑剤の作用及び効果が同様に発揮される。
本発明の潤滑剤をミスト状にして加工点に噴き付けながらアルミニウム合金(A5052)を切削し、切削抵抗を測定した結果について説明する(主に、請求項1乃至請求項3に対応)。
図1は、界面活性剤の濃度の異なる12種類の潤滑剤について、加工点に対する潤滑剤の供給量と切削抵抗との関係を調べた結果を示すグラフである。なお、切削抵抗の測定には、固定式動力計(日本キスラー株式会社製:型式9257B)を使用し、界面活性剤には、主に化粧品やシャンプー、あるいは歯磨き粉などに使用され、人体に対して安全性の高い成分からなるラウリルグルコシドを使用した。また、比較のため、イオン交換水(以下、単に水という。)とオイルミストについても同様の実験を行った。
この図から、界面活性剤の濃度が0.01[wt%]の潤滑剤では、水やオイルミストと同様に、供給量が多いほど切削抵抗が小さくなるのに対し、界面活性剤の濃度が0.02〜10[wt%]の範囲内にある潤滑剤では、供給量を少なくした方が切削抵抗を小さくできることがわかる。これは、加工点への供給量が少ない場合には、潤滑剤が工具や加工対象物の表面上で極めて薄く均一に広がり易くなり、その結果、水分の蒸発が促進されて濃縮され、界面活性剤が本来有している濡れ性や潤滑性が最大限に発揮されることを示している。
また、界面活性剤の濃度が1.0[wt%]以上の潤滑剤では、加工点への供給量を調節することで、オイルミストとほぼ同等の潤滑性能が得られることがわかる。
なお、加工点に対する潤滑剤の供給量が少な過ぎる場合には、当然、濡れ性や潤滑性が十分に発揮されない。また、加工点に対する潤滑剤の供給量が多くなるにしたがって、切削抵抗が大きくなっているが、これは、水分の蒸発とそれに伴う潤滑剤の濃縮が進行し難くなることによるものと推察される。
図2は図1に示した切削抵抗の最小値を界面活性剤の濃度ごとにプロットしたグラフである。ただし、横軸は対数目盛となっている。
この図を見ると、界面活性剤の濃度が高いほど切削抵抗が小さくなっているが、これは、界面活性剤の濃度が高く、もともと強い潤滑性を有していた潤滑剤ほど、加工点において水分が蒸発し濃縮された際に、より強い潤滑性を発揮することを意味している。なお、本実施例では、界面活性剤の濃度が0.02〜10[wt%]の範囲内にある潤滑剤について、実験を行っているが、界面活性剤の濃度が10[wt%]を超える場合であっても、図2に示した場合と同様に界面活性剤の濃度が高いほど切削抵抗が小さくなる傾向があるものと推察される。ただし、界面活性剤の濃度が高すぎると、潤滑剤をミスト状にして加工点に供給することが困難となる。したがって、界面活性剤の濃度の上限値は、ミスト化が可能という条件によって決定される。
図3は潤滑剤の接触角と粘度を界面活性剤の濃度ごとにプロットしたグラフである。なお、横軸は対数目盛となっている。また、接触角の測定には、接触角計(協和界面科学株式会社製:CA−Sミクロ2型)を使用し、粘度の測定には、粘度計(株式会社三商製:オストワルド粘度計No.1,No.3)を使用した。
この図から、界面活性剤の濃度が高いほど、潤滑剤の接触角は小さくなるが、潤滑剤の粘度は逆に高くなることがわかる。
図4は図1に示した切削抵抗の最小値を潤滑剤の粘度ごとにプロットしたグラフである。なお、図4は図3に示した潤滑剤の粘度と界面活性剤の濃度の関係を用いて図2の横軸を潤滑剤の粘度に置き換えたグラフに相当する。
この図を見ると、粘度が大きく変化する2[mPa・s]以上の範囲では切削抵抗が変化しておらず、潤滑剤の粘度は切削抵抗に影響しないことがわかる。このことは、「粘度が加工点での潤滑に影響しない」という既に知られている事実とも一致する。
図5は図1に示した切削抵抗の最小値を潤滑剤の接触角ごとにプロットしたグラフである。なお、図5は図3に示した潤滑剤の接触角と界面活性剤の濃度の関係を用いて図2の横軸を潤滑剤の接触角に置き換えたグラフに相当する。
この図から、潤滑剤の接触角が小さいほど切削抵抗が小さくなり、特に、接触角が30°より小さい場合(より好ましくは、25°以下の場合)には切削抵抗が著しく小さくなることがわかる。
なお、本実施例では、潤滑剤の接触角が22.4°より小さい場合については実験を行っていないが、図2及び図3を用いて説明したように、潤滑剤に含まれる界面活性剤の濃度が高いほど切削抵抗が小さくなるとともに、潤滑剤の接触角も小さくなることから、接触角が22.4°より小さい場合であっても、図5に示した場合と同様に、潤滑剤の接触角が小さいほど切削抵抗が小さくなる傾向があるものと推察される。
図6は接触角が22.4〜25.0°の範囲内にある潤滑剤について、図1に示した切削抵抗の最小値に対応する潤滑剤の供給量を接触角ごとにプロットしたグラフである。
この図から、接触角が22.4〜25.0°の範囲内にある潤滑剤については、加工点に対する供給量を4〜12[cc/h]にすると切削抵抗が小さくなることがわかる。
以上説明したように、アルミニウム合金(A5052)を切削する場合、接触角が30°より小さくなるようにラウリルグルコシドを水に添加し、この液体を潤滑剤として、加工点に対して4〜12[cc/h]の割合でミスト状にして供給すると、切削抵抗が小さくなる。この場合、加工点に対する供給量が少ないため、環境に与える負荷が小さい。
また、このような方法においては、潤滑剤がもともと有している濡れ性や潤滑性が最大限発揮されるため、潤滑剤を構成する界面活性剤に、潤滑性が弱くとも安全性の高いものを用いることが可能である。
なお、このような加工方法はA5052以外の他のアルミニウム又はアルミニウム合金に対しても適用可能であり、上述の作用及び効果は同様に発揮されるものと推察される。
本発明の潤滑剤をミスト状にして加工点に噴き付けながら鉄鋼材(S50C)を切削し、切削抵抗と工具摩耗幅を測定した結果について説明する(主に、請求項2及び請求項4に対応)。
図7は、界面活性剤の濃度の異なる4種類の潤滑剤について、加工点に対する潤滑剤の供給量と切削抵抗との関係を調べた結果を示すグラフである。なお、図7は実施例1の場合における図1に対応する。また、本実施例に示す実験で使用した切削抵抗の測定方法と界面活性剤の種類は実施例1の場合と同じである。
この図から、界面活性剤の濃度が0.01[wt%]の潤滑剤では、供給量を変えても切削抵抗はほとんど変化しないが、界面活性剤の濃度が0.05〜4.0[wt%]の範囲内にある潤滑剤では、供給量を少なくした方が切削抵抗を小さくできることがわかる。これは、実施例1において説明したように、加工点に対する潤滑剤の供給量を少なくすることで、潤滑剤が工具や加工対象物の表面上で極めて薄く均一に広がり易くなり、その結果、水分の蒸発が促進されて潤滑剤が濃縮され、界面活性剤が本来有している濡れ性や潤滑性が最大限に発揮されるためと考えらえれる。
なお、加工点に対する潤滑剤の供給量が少な過ぎると、潤滑剤の濡れ性や潤滑性が十分に発揮されず、また、加工点に対する潤滑剤の供給量が多過ぎると、水分の蒸発とそれに伴う潤滑剤の濃縮が進行し難くなるため、いずれの場合にも切削抵抗が大きくなることは実施例1の場合と同じである。
図8は図7に示した切削抵抗の最小値を界面活性剤の濃度ごとにプロットしたグラフである。なお、横軸は対数目盛となっている。また、図8は実施例1の場合における図2に対応する。
この図から、界面活性剤の濃度が高いほど切削抵抗が小さいことがわかる。これは、実施例1の場合と同様に、加工点に到達しさえすれば、界面活性剤の濃度が高く、もともと強い潤滑性を有していた潤滑剤ほど、良好な潤滑性能を発揮することを意味している。また、本実施例では、界面活性剤の濃度が0.05〜4.0[wt%]の範囲内にある潤滑剤について、実験を行っているが、界面活性剤の濃度が4.0[wt%]を超える場合であっても、図8に示した場合と同様に界面活性剤の濃度が高いほど切削抵抗が小さくなるものと推察される。なお、ミスト化が可能という条件によって界面活性剤の濃度の上限値が決定されることは実施例1の場合と同じである。
図9は図7に示した切削抵抗の最小値を潤滑剤の接触角ごとにプロットしたグラフであり、図3に相当する潤滑剤の接触角と界面活性剤の濃度の関係を用いて図8の横軸を潤滑剤の接触角に置き換えたグラフに相当する。なお、図9は実施例1の場合における図5に対応する。
この図から、潤滑剤の接触角が小さいほど切削抵抗が小さくなり、特に、接触角が30°のあたりから、接触角が小さくなるにしたがって切削抵抗も急激に小さくなることがわかる。
なお、本実施例では、潤滑剤の接触角が21.0°より小さい場合については実験を行っていないが、図3及び図8を用いて説明したように、潤滑剤に含まれる界面活性剤の濃度が高いほど、潤滑剤の接触角が小さくなるとともに切削抵抗も小さくなることから、接触角が21.0°より小さい場合であっても、図9に示した場合と同様に、潤滑剤の接触角が小さいほど切削抵抗が小さくなる傾向があるものと推察される。
図10は接触角が21.0〜30.7°の範囲内にある潤滑剤について、図7に示した切削抵抗の最小値に対応する潤滑剤の供給量を潤滑剤の接触角ごとにプロットしたグラフである。なお、図10は実施例1の場合における図6に対応する。
この図から、接触角が21.0〜30.7°の範囲内にある潤滑剤については、加工点に対する供給量を22〜48[cc/h]にすると切削抵抗が小さくなることがわかる。
図11は、界面活性剤の濃度が0.5〜2.0[wt%]の範囲内にある潤滑剤について、潤滑剤の接触角と切削加工後に測定した工具の刃先の摩耗幅を界面活性剤の濃度ごとにプロットしたグラフである。なお、界面活性剤の濃度が0[wt%]のデータは、比較のために水(イオン交換水)について行った実験結果を示している。
この図を見ると、界面活性剤の濃度が0.5〜2.0[wt%]の範囲内にある潤滑剤は、接触角が20.5〜22.0°であり、工具摩耗幅は水を潤滑剤として用いた場合の60%以下となっている。これは、接触角が30°よりも小さい本発明の潤滑剤を用いることで、工具の摩耗を少なくできることを表している。
図12は、界面活性剤の濃度が0.5〜2.0[wt%]の範囲内にある潤滑剤について、図7の場合と同様に鉄鋼材(S50C)の切削加工を行って、切削距離と切削抵抗との関係を調べた結果を示すグラフである。なお、比較のため、水(イオン交換水)とオイルミストについても同様の実験を行った。
この図を見ると、切削距離が長くなるにしたがって切削抵抗は大きくなること、及び、接触角が30°よりも小さい本発明の潤滑剤を用いると、オイルミストを用いた場合には及ばないものの、切削距離に応じて切削抵抗が大きくなる割合が水を用いた場合に比べて大きく改善されることがわかる。
以上説明したように、鉄鋼材(S50C)を切削する場合、接触角が30°より小さくなるようにラウリルグルコシドを水に添加し、この液体を潤滑剤として、加工点に対し、22〜48[cc/h]の割合でミスト状にして供給すると、切削抵抗が小さくなるとともに、工具の摩耗量が少なくなる。また、この場合、加工点に対する潤滑剤の供給量が少ないため、環境に与える負荷が小さい。
また、このような方法においては、潤滑剤がもともと有している濡れ性や潤滑性が最大限に発揮されるため、潤滑剤を構成する界面活性剤に、潤滑性が弱くとも安全性の高いものを用いることができる。
なお、このような方法はS50C以外の他の鉄又は鉄鋼材を加工する際にも適用可能であり、上述の作用及び効果は同様に発揮されるものと推察される。
本発明の潤滑剤は、アルミニウムや鉄に限らず、銅やステンレスなど各種の金属を加工する際にも使用することができる。また、加工の種類も切削加工に限定されるものではなく、塑性加工、旋削加工、研削加工、研磨加工などにも適用可能である。
なお、金属の種類や加工方法によって、加工点に対する潤滑剤の適切な供給量は異なるが、供給量を少なくすることで、潤滑剤が本来有する濡れ性や潤滑性が最大限に発揮されるという本発明の作用、及び環境に対する負荷を低減できるという効果は、金属の種類や加工方法にかかわらず同様に発揮される。
また、実施例1や実施例2では、界面活性剤にラウリルグルコシドを用いているが、本発明の潤滑剤に用いられる界面活性剤は、これに限定されるものではない。例えば、ノニオン系界面活性剤(非イオン性)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンロジンエステル、ポリオキシエチレンラノリンエーテル、ポリオキシエチレン多価アルコールエーテル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、酸化エチレン酸化プロピレンブロック重合体、酸化エチレン酸化プロピレンランダム重合体、酸化プロレン重合体、アルキルグルコシド、多価アルコールアルキレンオキサイド重合体を用いることができる。
また、アニオン系界面活性剤(陰イオン性)としては、脂肪酸誘導体(脂肪酸石けん、ナフテン酸石けん、脂肪酸アミン塩、脂肪酸アミド等)、カルボン酸金属塩、カルボン酸アミン塩、硫酸エステル系化合物(アルコール硫酸エステル塩、オレフィン硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸多価アルコール硫酸エステル塩等)、スルホン酸系化合物(アルカンスルホン酸塩、石油スルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩等)、リン酸エステル系化合物(アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルリン酸エステル塩等)を用いることができる。
その他、カチオン系界面活性剤(陽イオン性)や両性界面活性剤(アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、スルホベタイン、アミノ酸系両性界面活性剤、アミンオキサイド等)を用いても良い。
請求項1に記載された潤滑剤及び請求項2乃至請求項4に記載された金属加工方法は、各種の金属材料に対して塑性加工、旋削加工、切削、研削、及び研磨等の機械加工を施す際に適用可能である。

Claims (4)

  1. アルミニウム若しくはアルミニウム合金又は鉄若しくは鉄鋼材からなる金属材料を加工する際にミスト化された状態で用いられる水と界面活性剤からなる潤滑剤であって、
    前記金属材料に対する接触角が30°より小さく、
    前記界面活性剤としてラウリルグルコシドが添加されていることを特徴とする潤滑剤。
  2. アルミニウム若しくはアルミニウム合金又は鉄若しくは鉄鋼材からなる金属材料を加工する際に請求項1記載の潤滑剤を用いることを特徴とする金属加工方法。
  3. 前記金属材料はアルミニウム又はアルミニウム合金であって、
    前記潤滑剤を、4〜12cc/hの割合で加工点に供給することを特徴とする請求項2記載の金属加工方法。
  4. 前記金属材料は鉄又は鉄鋼材であって、
    前記潤滑剤を、22〜48cc/hの割合で加工点に供給することを特徴とする請求項2記載の金属加工方法。
JP2014073875A 2014-03-31 2014-03-31 潤滑剤とそれを用いた金属加工方法 Expired - Fee Related JP6288645B2 (ja)

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