JP6288645B2 - 潤滑剤とそれを用いた金属加工方法 - Google Patents
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Description
このような課題に対処するべく、従来、環境負荷の小さい潤滑剤や金属加工方法が求められていた。そこで、近年では、水をベースとした潤滑剤が提案されており、それに関し、既に幾つかの発明や考案も開示されている。
特許文献1に開示された加工方法に関する発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金の切削加工において、ダイヤモンドライクカーボンでコーティングした工具の刃先加工点に対して、水酸基を有する水溶性液状化合物又はその水溶液を含む潤滑剤をミスト状にして供給することを特徴とする。
このような加工方法においては、潤滑剤が油分を含まず、かつ、ミスト状にして供給されるため、揮発し易い。したがって、加工時に十分な冷却効果と潤滑効果を得ることができる。
特許文献2に開示された発明であるクーラントは、水溶性と増粘性を有し、摂食可能な多糖類又は糖タンパク質又はこれらの混合体が水に溶解又は分散された水溶液からなり、常温における粘度が3〜10[mPa・sec]の範囲内であって、加工部位にミスト化して供給されることを特徴とする。
このような構成のクーラントは、金属からなる被加工物の表面に被膜を形成するという作用を有する。したがって、工具と被加工物の間の摩擦を低減させるとともに、工具や被加工物の表面温度を低下させることができる。また、このクーラントは環境に与える負荷が小さいため、使用後に大気中に拡散させて消失させたり、水で希釈して下水として排水したりすることができる。
このような構成の潤滑剤においては、ミスト状であるため、加工点に到達し易く、また、加工点に供給された際に、工具や加工対象物の表面上で極めて薄く、均一に広がり易いという作用を有する。加えて、ミスト状であるため、液体の表面積が大きく、加工点に供給された後、水分の蒸発が促進されるという作用を有する。この場合、水分の蒸発により、気化熱が奪われるため、加工点が冷却される。加えて、潤滑剤を構成する界面活性剤に、強い潤滑性を有する反面、人体に対して悪い影響を与えるような工業用の界面活性剤を用いる必要がなく、また、界面活性剤とは別に潤滑性物質を添加する必要もない。さらに、潤滑剤を構成する界面活性剤に、強い潤滑性を有する工業用の界面活性剤を用いた場合でも、加工点に対する供給量が少なくて済む。
このような金属加工方法においては、請求項1に記載された発明と同様の作用が発揮される。
このような金属加工方法によれば、アルミニウム又はアルミニウム合金の加工に際し、請求項2に記載の発明の作用が発揮される。
このような金属加工方法においては、鉄又は鉄鋼材の加工に際し、請求項2に記載の発明の作用に加え、工具が摩耗し難いという作用を有する。
界面活性剤は、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性界面活性剤などの種類に分けられる。そのうち、工業用途で使用されるものは、強力な潤滑性を有しているが、水に添加して潤滑剤として用いる場合には、十分な濡れ性や潤滑性を発揮させるために、添加量を多くしたり、加工点に多量に供給したりする必要がある。しかしながら、これらの界面活性剤のほとんどは、人体に対して悪い影響を与えるため、大量に使用することは望ましくない。
一方、化粧品やシャンプーなど人体に触れる状況で使用される界面活性剤は、安全性が高い反面、十分な潤滑性を有していないため、それ単独で潤滑剤に用いられることはなく、通常、他の潤滑性物質が組み合わされた状態で用いられる。
このような構成の潤滑剤においては、ミスト状であるため、加工点に到達し易く、また、加工点に供給された際に、工具や加工対象物の表面上で極めて薄く、均一に広がり易いという作用を有する。加えて、ミスト状であるため、液体の表面積が大きく、加工点に供給された後、水分の蒸発が促進されるという作用を有する。そして、水分の蒸発に伴い、潤滑剤は濃縮された状態となるため、界面活性剤が本来有している濡れ性や潤滑性が最大限に発揮される。さらに、水分が蒸発する際、気化熱が奪われて加工点が冷却される。その結果、潤滑性がより一層発揮される。また、工具の寿命も長くなる。
なお、このような潤滑剤を用いた金属加工方法においては、上述の潤滑剤の作用及び効果が同様に発揮される。
図1は、界面活性剤の濃度の異なる12種類の潤滑剤について、加工点に対する潤滑剤の供給量と切削抵抗との関係を調べた結果を示すグラフである。なお、切削抵抗の測定には、固定式動力計(日本キスラー株式会社製:型式9257B)を使用し、界面活性剤には、主に化粧品やシャンプー、あるいは歯磨き粉などに使用され、人体に対して安全性の高い成分からなるラウリルグルコシドを使用した。また、比較のため、イオン交換水(以下、単に水という。)とオイルミストについても同様の実験を行った。
また、界面活性剤の濃度が1.0[wt%]以上の潤滑剤では、加工点への供給量を調節することで、オイルミストとほぼ同等の潤滑性能が得られることがわかる。
なお、加工点に対する潤滑剤の供給量が少な過ぎる場合には、当然、濡れ性や潤滑性が十分に発揮されない。また、加工点に対する潤滑剤の供給量が多くなるにしたがって、切削抵抗が大きくなっているが、これは、水分の蒸発とそれに伴う潤滑剤の濃縮が進行し難くなることによるものと推察される。
この図を見ると、界面活性剤の濃度が高いほど切削抵抗が小さくなっているが、これは、界面活性剤の濃度が高く、もともと強い潤滑性を有していた潤滑剤ほど、加工点において水分が蒸発し濃縮された際に、より強い潤滑性を発揮することを意味している。なお、本実施例では、界面活性剤の濃度が0.02〜10[wt%]の範囲内にある潤滑剤について、実験を行っているが、界面活性剤の濃度が10[wt%]を超える場合であっても、図2に示した場合と同様に界面活性剤の濃度が高いほど切削抵抗が小さくなる傾向があるものと推察される。ただし、界面活性剤の濃度が高すぎると、潤滑剤をミスト状にして加工点に供給することが困難となる。したがって、界面活性剤の濃度の上限値は、ミスト化が可能という条件によって決定される。
この図から、界面活性剤の濃度が高いほど、潤滑剤の接触角は小さくなるが、潤滑剤の粘度は逆に高くなることがわかる。
この図を見ると、粘度が大きく変化する2[mPa・s]以上の範囲では切削抵抗が変化しておらず、潤滑剤の粘度は切削抵抗に影響しないことがわかる。このことは、「粘度が加工点での潤滑に影響しない」という既に知られている事実とも一致する。
この図から、潤滑剤の接触角が小さいほど切削抵抗が小さくなり、特に、接触角が30°より小さい場合(より好ましくは、25°以下の場合)には切削抵抗が著しく小さくなることがわかる。
なお、本実施例では、潤滑剤の接触角が22.4°より小さい場合については実験を行っていないが、図2及び図3を用いて説明したように、潤滑剤に含まれる界面活性剤の濃度が高いほど切削抵抗が小さくなるとともに、潤滑剤の接触角も小さくなることから、接触角が22.4°より小さい場合であっても、図5に示した場合と同様に、潤滑剤の接触角が小さいほど切削抵抗が小さくなる傾向があるものと推察される。
この図から、接触角が22.4〜25.0°の範囲内にある潤滑剤については、加工点に対する供給量を4〜12[cc/h]にすると切削抵抗が小さくなることがわかる。
また、このような方法においては、潤滑剤がもともと有している濡れ性や潤滑性が最大限発揮されるため、潤滑剤を構成する界面活性剤に、潤滑性が弱くとも安全性の高いものを用いることが可能である。
なお、このような加工方法はA5052以外の他のアルミニウム又はアルミニウム合金に対しても適用可能であり、上述の作用及び効果は同様に発揮されるものと推察される。
図7は、界面活性剤の濃度の異なる4種類の潤滑剤について、加工点に対する潤滑剤の供給量と切削抵抗との関係を調べた結果を示すグラフである。なお、図7は実施例1の場合における図1に対応する。また、本実施例に示す実験で使用した切削抵抗の測定方法と界面活性剤の種類は実施例1の場合と同じである。
なお、加工点に対する潤滑剤の供給量が少な過ぎると、潤滑剤の濡れ性や潤滑性が十分に発揮されず、また、加工点に対する潤滑剤の供給量が多過ぎると、水分の蒸発とそれに伴う潤滑剤の濃縮が進行し難くなるため、いずれの場合にも切削抵抗が大きくなることは実施例1の場合と同じである。
この図から、界面活性剤の濃度が高いほど切削抵抗が小さいことがわかる。これは、実施例1の場合と同様に、加工点に到達しさえすれば、界面活性剤の濃度が高く、もともと強い潤滑性を有していた潤滑剤ほど、良好な潤滑性能を発揮することを意味している。また、本実施例では、界面活性剤の濃度が0.05〜4.0[wt%]の範囲内にある潤滑剤について、実験を行っているが、界面活性剤の濃度が4.0[wt%]を超える場合であっても、図8に示した場合と同様に界面活性剤の濃度が高いほど切削抵抗が小さくなるものと推察される。なお、ミスト化が可能という条件によって界面活性剤の濃度の上限値が決定されることは実施例1の場合と同じである。
この図から、潤滑剤の接触角が小さいほど切削抵抗が小さくなり、特に、接触角が30°のあたりから、接触角が小さくなるにしたがって切削抵抗も急激に小さくなることがわかる。
なお、本実施例では、潤滑剤の接触角が21.0°より小さい場合については実験を行っていないが、図3及び図8を用いて説明したように、潤滑剤に含まれる界面活性剤の濃度が高いほど、潤滑剤の接触角が小さくなるとともに切削抵抗も小さくなることから、接触角が21.0°より小さい場合であっても、図9に示した場合と同様に、潤滑剤の接触角が小さいほど切削抵抗が小さくなる傾向があるものと推察される。
この図から、接触角が21.0〜30.7°の範囲内にある潤滑剤については、加工点に対する供給量を22〜48[cc/h]にすると切削抵抗が小さくなることがわかる。
この図を見ると、界面活性剤の濃度が0.5〜2.0[wt%]の範囲内にある潤滑剤は、接触角が20.5〜22.0°であり、工具摩耗幅は水を潤滑剤として用いた場合の60%以下となっている。これは、接触角が30°よりも小さい本発明の潤滑剤を用いることで、工具の摩耗を少なくできることを表している。
この図を見ると、切削距離が長くなるにしたがって切削抵抗は大きくなること、及び、接触角が30°よりも小さい本発明の潤滑剤を用いると、オイルミストを用いた場合には及ばないものの、切削距離に応じて切削抵抗が大きくなる割合が水を用いた場合に比べて大きく改善されることがわかる。
また、このような方法においては、潤滑剤がもともと有している濡れ性や潤滑性が最大限に発揮されるため、潤滑剤を構成する界面活性剤に、潤滑性が弱くとも安全性の高いものを用いることができる。
なお、このような方法はS50C以外の他の鉄又は鉄鋼材を加工する際にも適用可能であり、上述の作用及び効果は同様に発揮されるものと推察される。
なお、金属の種類や加工方法によって、加工点に対する潤滑剤の適切な供給量は異なるが、供給量を少なくすることで、潤滑剤が本来有する濡れ性や潤滑性が最大限に発揮されるという本発明の作用、及び環境に対する負荷を低減できるという効果は、金属の種類や加工方法にかかわらず同様に発揮される。
その他、カチオン系界面活性剤(陽イオン性)や両性界面活性剤(アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、スルホベタイン、アミノ酸系両性界面活性剤、アミンオキサイド等)を用いても良い。
Claims (4)
- アルミニウム若しくはアルミニウム合金又は鉄若しくは鉄鋼材からなる金属材料を加工する際にミスト化された状態で用いられる水と界面活性剤からなる潤滑剤であって、
前記金属材料に対する接触角が30°より小さく、
前記界面活性剤としてラウリルグルコシドが添加されていることを特徴とする潤滑剤。 - アルミニウム若しくはアルミニウム合金又は鉄若しくは鉄鋼材からなる金属材料を加工する際に請求項1記載の潤滑剤を用いることを特徴とする金属加工方法。
- 前記金属材料はアルミニウム又はアルミニウム合金であって、
前記潤滑剤を、4〜12cc/hの割合で加工点に供給することを特徴とする請求項2記載の金属加工方法。 - 前記金属材料は鉄又は鉄鋼材であって、
前記潤滑剤を、22〜48cc/hの割合で加工点に供給することを特徴とする請求項2記載の金属加工方法。
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