以下、添付図面を参照して、実施形態にかかる超音波診断装置及びプログラムを詳細に説明する。なお、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。第1の実施形態にかかる超音波診断装置は、エラストグラフィーを実行可能な装置である。エラストグラフィーでは、生体組織の硬さを映像化した画像(硬さ画像)が生成されて表示される。図1に示すように、第1の実施形態にかかる超音波診断装置は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力部3と、装置本体10とを有する。
超音波プローブ1は、複数の振動子を有する。超音波プローブ1における複数の振動子は、装置本体10が有する送受信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を送信する。超音波プローブ1が有する振動子は、例えば、圧電振動子である。超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波信号を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内にある生体組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
なお、第1の実施形態は、図1に示す超音波プローブ1が、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである場合や、一列に配置された複数の圧電振動子が機械的に揺動される1次元超音波プローブである場合、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである場合のいずれであっても適用可能である。
モニタ2は、超音波診断装置の操作者が入力部3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像データ等を表示したりする表示装置である。
入力部3は、超音波診断装置の操作者から各種要求の入力を受け付け、受け付けた各種要求を装置本体10に転送する。入力部3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール等である。例えば、入力部3は、硬さ画像の表示要求、各種設定要求及び設定内容などの入力を操作者から受け付け、受け付けた硬さ画像の表示要求、各種設定要求及び設定内容を制御部17に出力する。なお、硬さ画像の表示要求は、被検体Pの生体組織を変形させるための超音波を送信する旨の要求の一例である。
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置である。装置本体10は、送受信部11と、Bモード処理部12と、ドプラ処理部13と、画像生成部14と、画像メモリ15と、内部記憶部16と、制御部17とを有する。
送受信部11は、制御部17の指示に基づいて、超音波プローブ1が行う超音波送受信を制御する。送受信部11は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
なお、送受信部11は、制御部17の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧、送信駆動電流等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源電圧を電気的に切り替えて矩形パルスを送信する機構によって実現される。
また、送受信部11は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延部は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延部によって処理された反射波信号の加算処理を行って反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
送受信部11は、被検体Pを2次元走査する場合、超音波プローブ1から2次元の超音波ビームを送信させる。そして、送受信部11は、超音波プローブ1が受信した2次元の反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、送受信部11は、被検体Pを3次元走査する場合、超音波プローブ1から3次元の超音波ビームを送信させる。そして、送受信部11は、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
なお、送受信部11からの出力信号の形態は、RF(Radio Frequency)信号と呼ばれる位相情報が含まれる信号である場合や、包絡線検波処理後の振幅情報である場合等、種々の形態が選択可能である。
また、送受信部11は、硬さ画像の表示要求を受け付けた場合には、制御部17の指示に基づいて、超音波プローブ1からプッシュパルスを送信させることにより、被検体Pの生体組織に剪断波を発生させる。
図2は、プッシュパルス及び剪断波について説明するための説明図である。例えば、図2に示すように、送受信部11は、超音波プローブ1に、焦点位置2aの一点を焦点として、数十Vで1000波程度の超音波照射(プッシュパルス)を行わせる。このプッシュパルスは、被検体Pの生体組織を変形させ、その変形された生体組織において剪断波2bを発生させるために送信される超音波である。このように、プッシュパルスは、Bモード用パルスやトラッキングパルスなどの生体組織の映像化に直接的に用いられる超音波とは異なり、生体組織の映像化に直接的に用いられる超音波ではない。
そして、送受信部11は、焦点位置2aに沿って焦点を深い位置にずらしながらプッシュパルスを送信させることにより、ラテラル方向(横方向)に剪断波2bを発生させる。続いて、送受信部11は、発生させた剪断波2bの伝播速度を計測するために、超音波プローブ1に、制御部17の指示に基づいて剪断波計測用のトラッキングパルス3aを送信させる。なお、プッシュパルスは、被検体Pの生体組織を変形させて、剪断波2bを発生させるために送信される超音波の一例である。
Bモード処理部12及びドプラ処理部13は、送受信部11が反射波信号から生成した反射波データに対して、各種の信号処理を行う信号処理部である。Bモード処理部12は、送受信部11から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行って、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。また、ドプラ処理部13は、送受信部11から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。ここで、移動体とは、例えば、血流や、心壁等の組織、造影剤である。
ここで、超音波診断装置は、生体組織の硬さを測定し、測定した硬さの分布を映像化するエラストグラフィーを実行可能な装置である。超音波診断装置は、音響放射力を与えて生体組織に変位を発生させることで、エラストグラフィーを実行可能な装置である。
すなわち、送受信部11は、音響放射力で生じる剪断波により変位を発生させる変位発生用超音波(プッシュパルス)を超音波プローブ1から送信させる。そして、送受信部11は、プッシュパルスにより発生する変位を観測する観測用超音波(トラッキングパルス3a)を、走査領域内の複数の走査線それぞれで超音波プローブ1から複数回送信させる。トラッキングパルス3aは、プッシュパルスにより発生した剪断波の伝播速度を、走査領域内の各サンプル点で観測するために送信される。通常、トラッキングパルス3aは、走査領域内の各走査線に対して、複数回(例えば、100回)、送信される。Bモード処理部12は、走査領域内の各走査線で送信された観測用パルスの反射波信号から、反射波データを生成する。
そして、ドプラ処理部13は、走査領域内の各走査線で複数回送信されたトラッキングパルス3aの反射波データを解析して走査領域の硬さの分布を示す硬さ分布情報を算出する。具体的には、ドプラ処理部13は、プッシュパルスによって発生した剪断波の伝搬速度を各サンプル点で測定することで、走査領域の硬さ分布情報を生成する。
例えば、ドプラ処理部13は、トラッキングパルス3aの反射波データを周波数解析する。これにより、ドプラ処理部13は、各走査線の複数のサンプル点それぞれで、運動情報(組織ドプラデータ)を複数時相に渡って生成する。そして、ドプラ処理部13は、各走査線の複数のサンプル点それぞれで得られた複数時相の組織ドプラデータの速度成分を時間積分する。これにより、ドプラ処理部13は、各走査線の複数のサンプル点それぞれの変位を複数時相に渡って算出する。続いて、ドプラ処理部13は、各サンプル点で変位が最大となる時間を求める。そして、ドプラ処理部13は、各サンプル点で最大変位が得られた時間を、各サンプル点における剪断断波の到達時間として取得する。続いて、ドプラ処理部13は、各サンプル点における剪断波の到達時間の空間的微分を行うことで、各サンプル点での剪断波の伝搬速度を算出する。以下、「剪断波の伝播速度」を、「剪断速度」と記載する。
そして、ドプラ処理部13は、剪断速度をカラーコード化し、対応するサンプル点にマッピングすることで、硬さ分布情報を生成する。硬い組織では剪断速度が大きく、柔らかい組織では剪断速度が小さくなる。すなわち、剪断速度の値は、組織の硬さ(弾性率)を示す値となる。上記の場合、トラッキングパルス3aは、組織ドプラ用の送信パルスである。なお、上記の剪断速度は、ドプラ処理部13が、各サンプル点で変位が最大となる時間に基づくのではなく、隣接する走査線における組織の変位の相互相関により検出することで算出する場合であっても良い。
なお、ドプラ処理部13は、剪断速度から、ヤング率又は剪断弾性率を算出し、算出したヤング率又は剪断弾性率により硬さ分布情報を生成してもよい。剪断速度、ヤング率及び剪断弾性率は、いずれも生体組織の硬さを表す物理量として用いることができる。以下では、ドプラ処理部13が、生体組織の硬さを表す物理量として剪断速度を用いる場合について説明する。
ここで、1回のプッシュパルス送信で発生する剪断波は、伝播とともに、減衰する。広い領域に渡って剪断速度を観測しようとした場合、ある特定の一つの走査線において送信されたプッシュパルスにより発生した剪断波は、伝播に伴い減衰し,プッシュパルス位置から十分離れると、やがて観測不可能となる。
かかる場合、プッシュパルスを方位方向における複数の位置において送信する必要がある。具体的には、走査領域(或いは、関心領域)は、方位方向に沿って複数の領域に分割される。送受信部11は、各分割領域においてトラッキングパルス3aを送受信する前に、それぞれ異なった走査線位置においてプッシュパルスを送信し、剪断波を発生させる。この際、典型的には,プッシュパルスの送信位置は、各領域の近傍に設定される。かかる送信位置の移動は、例えば、変更される領域の左端からの距離が予め設定されたテーブルを送受信部11が参照することで行なわれる。また、同時並列受信数が少数に限定されている場合、送受信部11は、プッシュパルスを1回送信した後に、ある領域の各走査線でトラッキングパルス3aを複数回送信する処理を、方位方向に沿って分割された複数の領域それぞれで繰り返す。
画像生成部14は、Bモード処理部12及びドプラ処理部13が生成したデータから超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度で表した2次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表す2次元ドプラ画像データを生成する。2次元ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。
ここで、画像生成部14は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成部14は、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成部14は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行う。また、画像生成部14は、超音波画像データに、付帯情報(種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等)を合成する。
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成部14が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
また、画像生成部14は、ドプラ処理部13によって生成された歪み分布情報から、生体組織の硬さがカラー表示された硬さ画像データを生成する。図3は、画像生成部14によって生成される硬さ画像データの一例を示す説明図である。図3に示すように、画像生成部14は、生体組織の硬さが色や網掛け具合などの表示態様の違いで区分された画像をモニタ2に表示させる。
画像メモリ15は、画像生成部14が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ15は、Bモード処理部12やドプラ処理部13が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ15が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成部14を経由して表示用の超音波画像データとなる。
内部記憶部16は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行うための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、内部記憶部16は、必要に応じて、画像メモリ15が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、内部記憶部16が記憶するデータは、外部装置へ転送することができる。
制御部17は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部17は、入力部3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部16から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信部11、Bモード処理部12、ドプラ処理部13及び画像生成部14の処理を制御する。また、制御部17は、画像メモリ15や内部記憶部16が記憶する表示用の画像データをモニタ2にて表示するように制御する。また、制御部17は、画像生成部14が生成した表示用の画像データを内部記憶部16等に格納するように制御する。また、制御部17は、操作者から入力部3を介して受け付けた医用画像データが外部装置からLAN(Local Area Network)等のネットワーク及びインターフェース部(いずれも図示しない)を介して内部記憶部16や画像生成部14に転送されるように制御する。
以上、第1の実施形態にかかる超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態にかかる超音波診断装置は、エラストグラフィーによって生体組織の硬さを映像化する。
図4は、第1の実施形態にかかる超音波診断装置の動作の一例を示すフローチャートである。具体的には、制御部17の制御のもと、エラストグラフィーによって生体組織の硬さを映像化するエラストモードにおいて実行される処理手順であり、操作者による入力部3の操作によって、超音波診断装置の動作モードがエラストモードに切り替えられた後の処理手順を示すフローチャートである。
図4に示すように、処理が開始されると、制御部17は、Bモード画像を略リアルタイムでモニタ2に表示させるために、Bモード用パルスの送受信を送受信部11に実行させる(S11)。これにより、モニタ2には、Bモード用パルスの送受信により生成されたBモード画像が略リアルタイムで表示される。操作者は、モニタ2の表示を確認することで、被検体PのBモード画像を略リアルタイムに確認できる。
次いで、制御部17は、入力部3においてエラストモードにかかる各種設定を行うための設定要求を受け付けたか否かを判定する(S12)。設定要求を受け付けていない場合(S12:NO)、制御部17は、S18へ処理を進め、入力部3において硬さ画像の表示要求を受け付けたか否かを判定する(S18)。具体的には、S12、S18において、各種設定を開始するための操作や、硬さ画像の表示を行うため操作が入力部3で行われたか否かを制御部17は判定する。
硬さ画像の表示要求を受け付けていない場合(S18:NO)、制御部17はS11へ処理を戻す。これにより、エラストモードにおいて、各種設定を行うための設定要求又は硬さ画像の表示要求を受け付けていない間は、略リアルタイムでのBモード画像の表示が継続される。
設定要求を受け付けた場合(S12:YES)、制御部17は、モニタ2にエラストモードにかかる各種設定を行うための設定用のGUIを表示させる(S13)。図5は、モニタ2の表示画面50の一例を示す説明図である。具体的には、設定用のGUIを表示したモニタ2の表示画面50を例示する図である。
図5に示すように、表示画面50は、エラストモードにかかる各種設定を行うためのGUIとして、超音波プローブ1より走査されたBモード画像51を有する。Bモード画像51上には、生体組織の硬さを計測するROI52を重畳して表示する。これにより、操作者は、Bモード画像51を参照しながらROI52を確認できる。
ROI52の大きさや位置の初期値は、予め内部記憶部16などに記憶されている。制御部17は、操作者からROI52の大きさや位置を変更する指示を入力部3より受け付けて、受け付けた指示に応じてROI52の大きさや位置を適宜変更する。
また、表示画面50は、プッシュパルスの強さにかかる指標値の設定を受け付ける設定受付部61と、硬さ画像の生成・表示を所定の間隔時間を空けて連続して行う連続表示の有無の設定を受け付ける設定受付部62と、設定の完了(終了)を受け付けるボタン63とを有する。
設定受付部61では、プッシュパルスの強さにかかる指標値、すなわちプッシュパルスが被検体Pに及ぼす機械的衝撃を示す指標値を、入力部3のロータリースイッチやキーパッドの操作により受け付ける。具体的には、設定受付部61は、プッシュパルスのメカニカル・インデックス(MI)の値を受け付ける。なお、プッシュパルスが被検体Pに及ぼす機械的衝撃の指標値は、メカニカル・インデックスの他、プッシュパルスの送信にかかる超音波プローブ1の駆動電圧値、プッシュパルスの送信にかかる超音波プローブ1の駆動電流の振幅値などであってもよい。
操作者は、設定受付部61における指標値を適宜設定することで、プッシュパルスの強さを被検体Pに合わせて調整する。例えば、皮下脂肪が厚い被検体Pについては、ROI52において伝播速度を測定するのに必要な剪断波2bを十分に発生させるため、プッシュパルスを強める指標値を設定する。また、皮下脂肪が薄い被検体Pについては、ROI52において剪断波2bを発生させるのに必要以上の機械的衝撃が加わらないように、プッシュパルスを弱める指標値を設定する。
設定受付部62では、連続表示の有無を、入力部3のスイッチ操作やカーソル操作によるチェックボックスにおけるチェックの有無の指定などにより受け付ける。また、表示画面50におけるGUIでは、超音波プローブ1による超音波が生体組織に及ぼす熱的作用に対する指標値(TI:サーマル・インデックス)、超音波プローブ1の表面温度、Bモード用パルスやトラッキングパルス3aなどの生体組織の映像化にかかる超音波の強さ(音響パワー)の設定を受け付けてもよい。
エラストモードにかかる各種設定を行うためのGUIをモニタ2に表示させた後、制御部17は、入力部3の操作により、ROI52、プッシュパルスの強さにかかる指標値の設定を受け付ける(S14)。次いで、制御部17は、S14において設定されたROI52及びプッシュパルスの強さにかかる指標値をもとに、トラッキングパルス3aの走査幅と、その走査幅でのROI52の分割数とを設定する(S15)。
トラッキングパルス3aの走査幅は、プッシュパルスが被検体Pに及ぼす機械的衝撃に依存する。具体的には、プッシュパルスによって被検体Pの焦点位置2aに生じる変位は、一般的に数〜数十枚マイクロメートルという微小なものであり、プッシュパルスの強さが小さいほど小さくなる。また、プッシュパルスによる変位によって生じる剪断波2bは、伝播の過程で減衰するので、生体組織内においては数ミリメートル程度しか観測できない。この剪断波2bのラテラル方向の感度は、プッシュパルスの強度、すなわち変位が小さいほど小さくなる。よって、剪断波2bが観測できる範囲、すなわちトラッキングパルス3aの走査幅は、プッシュパルスの強さが小さいほど狭くなる。このようなプッシュパルスの強さとトラッキングパルス3aの走査幅との相関関係をもとに、制御部17は、プッシュパルスの強さにかかる指標値からトラッキングパルス3aの走査幅を設定する。
また、設定されたトラッキングパルス3aの走査幅よりもROI52の幅が広い場合には、1箇所にプッシュパルスを送信してトラッキングパルス3aで走査したとしても、ROI52全体をカバーできないこととなる。したがって、ROI52の幅が広い場合は、複数箇所にプッシュパルスを送信して、それぞれの箇所で生じる焦点位置2aをトラッキングパルス3aで走査する。そして、トラッキングパルス3aの走査幅で得られる複数の硬さ画像を結合することで、ROI52全体の硬さ画像を得ることとなる。
したがって、制御部17は、設定されたトラッキングパルス3aの走査幅がROI52の幅以上である場合は分割数を0と設定する。また、制御部17は、設定されたトラッキングパルス3aの走査幅よりもROI52の幅が広い場合には、トラッキングパルス3aの走査幅とROI52の幅との関係をもとに、ROI52をトラッキングパルス3aの走査幅以下の小領域(分割ROI)に分割するための分割数を設定する。具体的には、設定されたトラッキングパルス3aの走査幅でROI52を区分していった場合(所定幅での重複があってもよい)の分割数を演算して設定する。
この時、各分割ROIの位置についても、ROI52の位置、設定されたトラッキングパルス3aの走査幅、ROI52の分割数をもとに算出して設定してもよい。なお、各分割ROIの位置は、ROI52の位置、ROI52の分割数、トラッキングパルス3aの走査幅が分かれば、所定幅での重複を考慮して一意に求めることができることから、事前に設定することなく、必要に応じて算出してもよい。
なお、ROI52の大きさ及びプッシュパルスの強さにかかる指標値からトラッキングパルス3aの走査幅及びROI52の分割数を得るためのテーブルデータや関係式などは予め内部記憶部16などに記憶されていてよい。S15において制御部17は、S14で受け付けた値をもとに、内部記憶部16に予め記憶されたテーブルデータや関係式を参照することで、トラッキングパルス3aの走査幅及びROI52の分割数を得ることができる。
次いで、制御部17は、S14、S15での設定をもとに、その設定を反映した表示画面50とするようにモニタ2の表示を更新する(S16)。図6は、モニタ2の表示画面50の一例を示す説明図である。具体的には、S14、S15での設定を反映した表示画面50を例示する図である。
図6に示すように、表示画面50には、S14で設定されたROI52が表示される。また、ROI52については、S14で設定されたROI52、S15で設定されたトラッキングパルス3aの走査幅及びROI52の分割数をもとに、分割ROI53、54、55が重畳して表示される。また、表示画面50には、分割ROI53、54、55に対応したプッシュパルス送信位置56、57、58が表示される。
一般に、プッシュパルス送信位置56、57、58でプッシュパルスを送信し、生体組織内において変位を発生させる焦点位置2aにおいては、剪断波2bの伝播速度を正しく求めることができない。したがって、分割ROI53、54、55から離れた位置にプッシュパルス送信位置56、57、58が設定される。例えば、分割ROI53、54、55との距離を規定したオフセット値を内部記憶部16に記憶させておく。制御部17は、分割ROI53、54、55の左端(又は右端)からオフセット値だけ離れた位置をプッシュパルス送信位置56、57、58として算出する。そして、制御部17は、算出したプッシュパルス送信位置56、57、58をモニタ2の表示画面50に表示させる。
これにより、操作者は、表示画面50におけるROI52、分割ROI53、54、55及びプッシュパルス送信位置56、57、58を参考に、エラストモードにかかる各種設定を行うことができる。なお、ROI52、分割ROI53、54、55及びプッシュパルス送信位置56、57、58については、図示例のようにすべてを組み合わせて表示する構成だけでなく、入力部3の操作などにより指定された、少なくとも一つのものを表示する構成であってもよい。
次いで、制御部17は、ボタン63の操作の有無をもとに、GUIによる設定を終了するか否かを判定する(S17)。設定を終了しない場合(S17:NO)、制御部17は、S13へ処理を戻し、設定用のGUIの表示を継続する。設定を終了する場合(S17:YES)、制御部17は、設定用のGUIの表示を終了する(S18へ処理を進める)。
S18において、硬さ画像の表示要求を受け付けた場合(YES)、制御部17は、エラストモードにかかる各種設定が設定済みであるか否かを判定する(S19)。設定済みでない場合(S19:NO)、制御部17は、S13へ処理を戻してエラストモードにかかる各種設定を受け付ける。設定済みである場合(S19:YES)、制御部17は、硬さ画像データ生成処理を開始する(S20)。
図7は、硬さ画像データ生成処理の一例を示すフローチャートである。図7に示すように、硬さ画像データ生成処理が開始されると、制御部17は、分割ROI53、54、55に対応する変数nを「n=1」と設定する(S201)。
次いで、制御部17の制御により、送受信部11は、n番目の分割ROIにおけるプッシュパルス送信位置において、S14で設定された指標値をもとにした強さで超音波プローブ1からプッシュパルスを送信させる(S202)。ここで、制御部17は、プッシュパルスの強さにかかる指標値として、超音波プローブ1の駆動電圧値又は超音波プローブ1の駆動電流の振幅値が設定されている場合は、その設定値を使用して超音波プローブ1からプッシュパルスを送信させる。また、制御部17は、プッシュパルスの強さにかかる指標値として、メカニカル・インデックスの値が設定されている場合は、そのメカニカル・インデックスの設定値を超音波プローブ1の駆動電圧値又は超音波プローブ1の駆動電流の振幅値に換算し、換算した値を使用して超音波プローブ1からプッシュパルスを送信させる。これにより、被検体Pに剪断波2bを生じさせるプッシュパルスは、S14において操作者が設定した指標値に対応した強さに調整されて、送信されることとなる。
次いで、制御部17の制御により、送受信部11は、n番目の分割ROI内において、S15で設定された走査幅でトラッキングパルス3aの送受信を超音波プローブ1に実行させる(S203)。例えば、トラッキングパルス3aは、n番目の分割ROI内のある走査線(ラスタ)に対して複数回(100回程度)送受信される。これにより、各点(各サンプル点)における変位の時間変化を算出する。1つのパルスに対して多数の受信を行うことができるシステムを有している場合、1度のプッシュパルスの送信でROI52内の全領域の変位の時間変化を知ることができるが、同時受信本数が限られている場合は、複数回のトラッキングパルス3aの送受信を、ラスタ位置を変えて複数回行われる。その際は、ラスタ位置を変えてトラッキングパルス3aを送信するたびに、プッシュパルスを送信する。
続いて、ドプラ処理部13は、n番目の分割ROIの各点(各サンプル点)で、変位を算出して、歪み分布情報を生成する(S204)。次いで、画像生成部14は、S204で生成された歪み分布情報をもとに、n番目の分割ROIに対応する硬さ画像データを生成する(S205)。
次いで、制御部17は、変数nがS15で設定された分割数(N)であるか否か、すなわち「n=N」であるか否かを判定する(S206)。「n=N」でない場合(S206:NO)、制御部17は、「n=n+1」と「n」をインクリメントし(S207)、S202へ処理を戻す。「n=N」である場合(S206:YES)、ROI52内のすべての分割ROIについて硬さ画像データを生成したことから、制御部17は硬さ画像データ生成処理を終了する。
図4に戻り、制御部17は、硬さ画像データ生成処理(S20)の後、ROI52内のすべての分割ROIについて生成した硬さ画像データを合成する。次いで、制御部17は、合成して得られたROI52の硬さ画像データをモニタ2に表示する(S21)。
以上のように、第1の実施形態において、操作者は、被検体Pに対する機械的衝撃を示す指標値を適宜設定することで、プッシュパルスの強さを被検体Pに合わせて調整することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態として、硬さ画像の生成・表示を、所定の間隔時間を空けて連続して行う連続表示を行う場合の動作を例示する。図8は、第2の実施形態にかかる超音波診断装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、設定用のGUIにおいて設定受付部62で連続表示を行う設定を受け付けた場合、制御部17は、S15に次いで、S14において設定されたプッシュパルスの強さにかかる指標値をもとに、硬さ画像の生成・表示を連続して行う場合の間隔時間を設定する(S15a)。
超音波プローブ1の音響パワーは、消費電力量の制約、サーマル・インデックス、超音波プローブ1の表面温度などの出力規制範囲内となるように、単位時間あたりの音響パワー(平均パワー)を抑える必要がある。したがって、S15aでは、S14において設定された指標値に対応するプッシュパルスの強さに応じた、硬さ画像の生成・表示を連続して行う場合の間隔時間を設定することで、超音波プローブ1の平均パワーが出力規制範囲内に収まるようにする。
具体的には、制御部17は、S14において設定された指標値に対応するプッシュパルスの送信時の音響パワーと、トラッキングパルス3a、Bモード用パルスの送受信時における音響パワーとを合算して、所定の間隔時間で連続表示を行う場合の平均パワーを求める。次いで、制御部17は、求めた平均パワーが出力規制範囲以上である場合は、間隔時間を長くして再度平均パワーを求める処理を繰り返し、平均パワーが出力規制範囲内に収まるようにする。これにより、プッシュパルスの強さにかかる指標値を設定する場合であっても、平均パワーが出力規制範囲内に収まるように連続表示における硬さ画像のフレームレートが調整される。
なお、制御部17は、求めた平均パワーが出力規制範囲内である場合は、間隔時間を短くして再度平均パワーを求める処理を繰り返すことで、平均パワーを出力規制範囲の上限に近づけるようにしてもよい。この場合、プッシュパルスの強さにかかる指標値を設定する場合であっても、平均パワーを出力規制範囲の上限に近づけることで、連続表示における硬さ画像のフレームレートを短くでき、リアルタイム性を確保できる。したがって、硬さ画像による生体組織の診断性能を向上できる。
硬さ画像の表示要求を受け付けた(S18:YES)後の、硬さ画像データの表示(S21)に次いで、制御部17は、入力部3より終了の操作を受け付けたか否かを判定することで、表示を終了するか否かを判定する(S22)。表示を終了する場合、制御部17は処理を終了する。
表示を終了しない場合、制御部17は、直近の硬さ画像データ生成処理(S20)から設定された間隔時間を経過したか否かを判定する(S23)。この間隔時間の計測は、制御部17内のRTC(Real Time Clock)機能などにより実施される。
間隔時間を経過した場合(S23:YES)、制御部17は、S20へ処理を戻し、硬さ画像データ生成処理を開始する。間隔時間を経過していない場合(S23:NO)、制御部17は、Bモード用パルスの送受信を送受信部11に実行させてモニタ2のBモード画像を更新し(S24)、S22へ処理を戻す。これにより、硬さ画像の生成・表示は、設定された間隔時間空けて連続して行われることとなる。
図9は、Bモード用パルス、プッシュパルス、トラッキングパルスの送受信のタイミングを説明する説明図である。図9に示すように、硬さ画像の表示要求があった時刻t1までの期間T1では、Bモード用パルス送受信71が繰り返される。次いで、硬さ画像の表示要求があった時刻t1より、硬さ画像データ生成処理が終了した時刻t2までの期間T2では、プッシュパルス送信72とトラッキングパルス送受信73とが繰り返される。そして、設定された間隔時間に対応した期間T3(時刻t2〜t3)の間は、硬さ画像データ生成処理を休止する。
この期間T3がプッシュパルスの強さにかかる指標値に応じて調整される期間である。なお、硬さ画像データ生成処理を休止している期間T3においては、少なくとも1回のBモード用パルス送受信71を行ってBモード画像を更新すればよく、図示例のようにBモード用パルス送受信71を所定の時間間隔で繰り返し行ってもよい。
時刻t2より設定された間隔時間経過した時刻t3からは、硬さ画像データ生成処理が開始されて、時刻t4までの期間T4の間にプッシュパルス送信72とトラッキングパルス送受信73とが繰り返された後、次の期間T5へ続くこととなる。
以上のように、第2の実施形態では、操作者が被検体Pに対する機械的衝撃を示す指標値を適宜設定する場合であっても、平均パワーが出力規制範囲内に収まるように連続表示における硬さ画像のフレームレートを調整することができる。
なお、上述した第2の実施形態では、硬さ画像の生成・表示を、所定の間隔時間を空けて連続して行う場合を例示したが、プッシュパルスの送信を所定の間隔時間で連続して行う場合としてもよい。具体的には、硬さ画像のフレームレートの調整と同様、プッシュパルスの強さにかかる指標値をもとに、プッシュパルスを送信する間隔時間を、平均パワーが出力規制範囲内に収まるように調整してもよい。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、被検体に剪断波を生じさせるための超音波の強さを調整可能とすることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。