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JP6292843B2 - エレクトロスプレー装置 - Google Patents
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本発明は、エレクトロスプレー(ES)法を用いて有機エレクトロルミネッセンス素子などに利用される有機薄膜を作製するエレクトロスプレー装置に関する。
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略称することがある)素子は、有機材料から成る薄膜の両面に電極を設け、その電極間に電圧を印加することによって両面の電極から有機薄膜中に注入される電荷(電子と正孔)の再結合による発光を利用する電流駆動型の発光素子であり、低電圧で高い発光輝度が得られることや自発光による高い視認性などから薄型軽量ディスプレイや照明などへの応用研究が活発に進められている。
現在有機EL素子作製に主に使用されている有機薄膜の成膜方法には、真空蒸着法に代表されるドライプロセスとスピンコート法に代表されるウエットプロセスがある。ドライプロセスは、比較的低分子量の有機材料を用いる成膜プロセスで、膜厚のコントロールが容易、適当な開口部を持ったマスクを用いた塗り分けが可能、性質の異なった有機材料の積層構造が容易に作成可能などの特長がある。この中でも、積層構造が容易に作成できる多層化技術は特に重要で、この技術が有機ELの発光効率や素子寿命を飛躍的に向上させ、有機ELを実用デバイスとして多くのアプリケーションに採用させるまでに飛躍させてきた。しかし、このドライプロセスには真空装置を必要とするため、装置の初期導入や維持費用が高額であることに加え、大型基板使用が困難であることなどから、生産性の向上、すなわち製造コストの改善に制約があるとされている。
一方のウエットプロセスは、成膜性や耐熱性などの物理的な安定性に優れる高分子材料に適用できることや、装置が単純で真空など特殊雰囲気を必要としないなど大量生産に適したプロセスであり、省エネルギー、かつ低価格での製品製造には適しているとされている。しかし、高効率化や長寿命化実現のためには、前記したような異なった性質を持った材料による積層構造を作製することが重要であるが、ウエットプロセスにおいては、上層塗液溶媒が下層の有機材料を溶出したり、浸透により下層の剥離を生じさせたりする。こうした現象を抑制するために架橋硬化剤など添加剤が使用されることもあるが、これらの添加剤は発光機能の障害となることが知られており、デバイス性能を損なわずに高性能な多層構造を実現することは極めて困難とされている。
こうした中、容易にパターン作製が可能などとして、ES法を有機EL素子をはじめとした有機半導体薄膜素子の作製に利用する提案が複数なされている。ES法は機能材料を溶解させた溶液を、導電性の基体とその溶液を放出するノズルとの間に高電圧を印加しながら、その基体に吹き付ける方法である。この方法は帯電した溶解液が細かいナノオーダーレベルの液滴となって互いに反発・分散して、微細なナノオーダーレベルの液滴を形成するが、この際の急激な表面積増加に伴って溶媒が蒸発し、溶液中の溶質(機能材料)のみがほぼ乾燥した状態で基体に付着して均一な層を作成するため複数層を積層するのにも適すると言える。
特許文献1には、ES法に使用する塗液が室温で蒸気圧500Pa以下の溶媒を含有するものとすることが記載されている。また特許文献2には、ESの原料液に対して電荷付与、吐出を段階的に行うことが記載されている。さらに、特許文献3には、電荷輸送機能を有するデバイス、特に電子写真感光体に関わる発明が記載されている。
また、非特許文献1、及び2には高分子有機EL材料を用いた有機EL素子の作製に関する記載がされている。特許文献4、5には低分子系有機材料を使用した有機EL素子の製造方法に関する開示がされている。
一方、特許文献6には質量分析装置に利用されるエレクトロスプレーイオン化装置用スプレーニードルの内径や形状、材質に関するに開示がされている。
特開2007−305507号公報 特開2009−43561号公報 特開2009−251386号公報 WO2011−001613号公報 WO2013−105534号公報 特開2004−186113号公報
R. Saf et al., Nature Materials, vol.3, p323 (2004) J. Ju, Y. Yamagata and T. Higuchi, Adv. Mater., vol.21, p4343(2009)
本発明は、エレクトロスプレー(ES)法を用いて有機エレクトロルミネッセンス素子などに利用される均質なアモルファス状有機薄膜を効率的に作製できる装置を提供することを目的とする。
ES法で有機EL素子などの有機電子デバイスを作製するために必要な極薄、高平滑度な膜を形成するためには、微細な液滴の安定供給が必須であり、こうした微細液滴の供給にはインク吐出量を低流量で制御することが必要である。しかし、ES法での流量制御は制御用精密ポンプを装備したとしても、印加電圧によるインキの引き出しやノズル先端での液柱分裂等の複数の制御因子が重なり、これらをバランスさせて安定した送液状態を維持することはきわめて困難である。
こうした状況を鑑み、発明者らはスプレー噴霧するノズルの先端形状に着目し、適切なノズル内径を有し、かつノズルの先端方向に向けて適度な勾配角度で絞りを設けることにより、噴霧が安定することを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、有機材料を溶媒に溶解させた溶液を帯電させて微小液滴として噴霧することにより薄膜作製をおこなう薄膜作製用エレクトロスプレー装置において、噴霧部のノズル内部には先端部に向かって先細りとなるテーパーが形成されており、該先端部内径が20μm以上50μm以下であり、かつ該テーパーの勾配角度が1°以上6°以下であることを特徴とするエレクトロスプレー装置である。
上記噴霧部のノズルはガラス製であることができる。また、上記エレクトロスプレー装置からの送液量、又は該装置への送液量が0.1〜5ml/h、その際の印加電圧が3〜15kVであることがよい。
本発明のエレクトロスプレー装置によって、ES法を用いて有機薄膜を形成しようとする場合において、安定な低流量送液を実現し、これにより微細液滴の安定供給を可能として、平滑な有機材料薄膜を再現性良く製造できる。
エレクトロスプレー装置の構成を説明するための模式図である。 噴霧部のノズル先端の形状を説明するための模式図である。 噴霧部のノズル先端部の拡大写真である。
本発明のエレクトロスプレー装置の一例を、図1を参照して説明する。
エレクトロスプレー装置は、送液部、貯液部と噴霧部を有し、送液部はポンプに接続し、貯液部に試料溶液(インキともいう。)を供給し、噴霧部から試料溶液を噴霧する。
貯液部を構成する溶液蓄積用シリンジ1に、スプレーされる試料溶液を装入する。噴霧部を構成するニードル21は、溶液蓄積用シリンジ1の下部に取り付けられ、これに試料溶液を送り込む。ニードル21には試料溶液に電圧を付与するための電圧印加部6が備えられ、その先端部はノズル22となっている。
ノズル先端から噴霧されたスプレーフレーム3は、正に帯電しており、アース電位の導電層4又はその上に積層された有機層に到達し、新たな有機層が形成される。導電層4はガラス基板5上に積層されており、ガラス基板5は本体テーブル10上に配置されている。電圧印加部6に電圧を加えるスプレー用電源7の負極側は接地されている。また、導電層4は接地用導電テープ8、アルミホイル9及び本体テーブル10を介して接地されている。
エレクトロスプレー装置でのインキの流量制御は送液部の制御用精密ポンプからの送液速度を制御することによりある程度可能であるが、印加電圧によるインキの引き出し力等が関連する上、ノズル先端での液柱分裂等の複数の制御因子が重なり、これらをバランスさせて安定した送液状態と噴霧状態を維持することはきわめて困難である。精密ポンプと印加電圧の制御は比較的容易であるが、それだけでは安定した送液状態と噴霧状態を維持することができない。そこで、本発明者らはノズル先端の形状がこれに大きな影響を与えると考え、種々の検討を行った。
本発明のエレクトロスプレー装置に適用されるノズルの一例を、図2を参照して説明する。
ニードル21の先端がノズル22となっているが、ニードル21とノズル22は一体となっていてもよく、ねじ等で取り外し可能なように接合されていてもよい。ノズル22はその先端23の内径が最も小さくなるようにテーパー24が設けられている。テーパー24が設けられている部分より上流側は、ニードル21と同じ径であってもよい。
ノズル先端23の内径は、20〜50μmとする必要があり、好ましくは30〜50μmである。この内径が20μm未満である場合、空気中の微小な塵やほこりなどの影響を大きく受けて閉塞しやすく、50μmを超える場合には先端から気泡などが侵入し、安定的な噴霧が困難となる。
更に、スプレー状態の安定化のためには内径だけでなく、先端に向けたテーパー24の形状が重要であり、テーパー24の勾配角度が一定範囲にないと、先端内径を上記範囲とした場合においても安定したスプレーが保持できなかい。
テーパー24の勾配角度が大きい場合は、管内での大きな圧力損失が生じて安定したスプレーの状態が保持できない。一方、勾配角度が小さい場合は、適度な保持圧力が保てないため、インクの引き出し力とのバランスがとりにくいため、安定したスプレーが保持できない。ここで、安定したスプレー状態とは、噴霧量(速度)と噴霧形状が安定していることをいう。
そこで、テーパー24の勾配角度は、1°〜6°の範囲となるように設定する。この勾配角度は、ノズル先端の内壁からの鉛直線に対する角度αである。テーパー24は、開始点24からノズル先端23に向かって上記角度で設けられるが、テーパーが始まる開始点はそれより上流側のノズル又はニードルの内径で定まる。開始点の直前の内径は、0.5〜5mmであることが好ましい。テーパー24の全体にわたって上記勾配を設けることが望ましいが、開始点付近ではこの範囲を外れてもよく、全体としてこの勾配を有する必要がある。上記ノズルをガラス製とすれば、テーパーの形成等の加工が容易となる。
ノズル先端からの噴霧量は、送液部からの送液速度によって概ね定まり、その他、貯液部から加えられるインキ圧力、噴霧部に与えられる印加電圧によっても変化するが、これらを調整することにより、平均的には一定となるが、短時間で見ると一定させることは困難である。これは、噴霧部を流れるインキの流れが脈動したりして不安定であることに起因する。そこで、上記のようなノズル形状とすることにより、インキの流れを安定化させ、しかも噴霧形状を安定化させて、形成させる膜の厚みを均質化することができる。
上記エレクトロスプレー装置から噴霧量、又は該装置への送液量は0.1〜5ml/hであることがよい。また、印加電圧が3〜15kVであることがよい。エレクトロスプレー装置への送液量と、これからの噴霧量は同じであることがよいが、噴霧量は印加電圧、インキの粘度、インキ圧力、ノズル径等によって変化するので、インキの特性にあった送液量、印加電圧、圧力、ノズル径として、送液量と噴霧量を概ねバランスさせてから、ノズル先端部を上記範囲内で調整することがよい。
本発明のエレクトロスプレー装置は、有機材料を溶媒に溶解させた溶液を帯電させて微小液滴として噴霧することにより薄膜作製をおこなう薄膜作製用エレクトロスプレー装置である。ここで、作製される薄膜としては、有機EL素子の発光層、電荷輸送層等の有機層であることが好ましい。
有機材料としては、有機EL素子の場合は、有機EL素子材料として用いられる有機化合物であって、溶媒に溶解する化合物が適する。この化合物は、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。有機材料を溶解するために使用される溶媒は、有機材料を溶解するものであればよいが、微小液滴として噴霧する際に、揮発しやすいものであることが望ましく、そのためには沸点が150℃以下である有機溶媒が適する。この有機溶媒は、1種類であっても、2種類以上の混合溶媒であってもよい。
以下に本発明を実施例により更に詳しく説明する。
実施例1
先端内径、勾配角度の異なる有機薄膜作製用スプレーノズルを、ガラスキャピラリーを加工して調製した。このガラスキャピラリーをESスプレー装置(メック社製ナノファイバー紡糸装置)に装着し、以下の条件で噴霧性確認試験を行った。
・流量:0.5ml/h
・印加電圧:8kV
・噴霧距離(ノズルから基板まで距離):50mm
・溶媒組成(体積比):ジクロロメタン/DMF=4/1(ε=14.9)
ノズルの先端内径と勾配角度の変化によるスプレーの安定性の評価結果を表1にまとめる。
表中の記号の説明
○:スプレー安定(5分間観察)
△:スプレー不安定
×:噴霧しない
※1 詰まりやすく操作性不良
※2 送液ポンプ設定値を1.0ml/hに増量すると安定化
表1において、ノズル先端内径50μmで、ノズルテーパーの勾配1.4°、2.8°及び5.5°の場合、送液ポンプの流量を増大させることにより、スプレーが安定化する。これはこの実験の場合、ノズル先端の内径がインキの特性等に対して、やや大きく、印加電圧による引き出し力が大きくなって、供給量が不足となってスプレーが不安定になったものと考えられる。そこで、送液ポンプの流量を増大させることで安定化したと考えられる。
表1から、ノズル先端の内径は20μm以上が好ましいことが分かる。50μm以上であっても、送液量を増やすことにより安定化が可能であるが、送液量を増やし過ぎると別の問題が生じるので、500μm以下であることが好ましいと言える。ノズル勾配は1°〜6°の範囲であれば、送液量を調整するなどすれば、安定化が可能であると言える。
同様の実験を、ジクロロエタン/DMF=4/1、トルエン/DMF=9/5、テトラヒドロフラン/メタノール=5/2の各溶媒について、実施したが、スプレー安定化の傾向に変化はなかった。
実施例2
実施例1で見出した好適な噴霧条件を利用して、以下の条件で成膜を行い膜厚と表面平滑度を確認した。
膜厚100nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板を、中性洗剤水(Cica Clean LX−2)、純水、有機溶媒(アセトン、イソプロパノール)の各溶媒中で超音波洗浄後、UV/オゾン洗浄を行った。
次に、図1に示すES装置を使用して、有機層を形成した。
4,4',4''-トリス[3-メチルフェニル−(フェニル)−アミノ]−トリフェニル−アミン(mMTDATA)の薄膜層を下地層としてスピンコートにより20nmの膜厚で形成したITO導電層4を銅テープ8にてアルミホイル9上に導通させたガラス基板5を、ES装置のサンプルテーブル10上に設置する。
上記ITOガラス基板上のITO導電層に以下の噴霧条件でES装置にて成膜を行った。
・印加電圧:8.0 kV
・基板距離:50 mm
・溶質:N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−N,N'−ビス(フェニル)−ベンジジン(TPD)
・溶媒:ジクロロメタン/DMF = 4/1(体積比)
・インキ濃度(TPD濃度):0.05wt.%
ノズル内径30μmでテーパー部の勾配角度が1.4°および2.8°のノズルを使用したときのスプレー時間と膜厚および平滑度の変化を表2にまとめる。表2中、RaはAFM像から算出した算術平均粗さ値である。
表2から、適度な内径と適度な勾配角度が与えられたノズルを有する本発明のES装置を使用した場合、流速等の条件を適度に調整することにより、膜厚に対して平滑度が10%程度の良好な平滑性の薄膜が、安定に成膜できることが判った。
1 溶液蓄積用シリンジ、2 試料溶液、3 スプレーフレーム、4 導電層(ITO)、5 ガラス基板、6 電圧印加部、7 スプレー用電源、8 接地用銅テープ、
9 アルミホイル、10 本体テーブル

Claims (3)

  1. 有機材料を溶媒に溶解させた溶液を帯電させて微小液滴として噴霧することにより薄膜作製をおこなう有機エレクトロルミネッセンス素子の薄膜作製用エレクトロスプレー装置において、噴霧部のノズル内部には先端部に向かって先細りとなるテーパーが形成されており、該先端部内径が20μm以上50μm以下であり、かつ該テーパーの勾配角度が1°以上6°以下であることを特徴とするエレクトロスプレー装置。



  2. 噴霧部のノズルがガラス製であることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロスプレー装置。
  3. エレクトロスプレー装置への送液量が0.1〜5ml/h、その際の印加電圧が3〜15kVである請求項1又は2に記載のエレクトロスプレー装置。
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