発明の詳細な説明
本発明は、インスリン受容体(INSR)またはインスリン受容体−インスリン複合体に対し特異的な抗体、および異常グルコース値に関連した障害、例えば、高血糖または低血糖、異常インスリンレベルまたは異常インスリン感受性、例えば、インスリン抵抗性の障害もしくはインスリン感受性の障害、の治療におけるその使用を提供する。これらの抗体は、INSR−INSシグナル伝達複合体成分の結合および解離に対する動力学的速度定数を変えることにより、またはシグナル伝達複合体の構造の状態を変える、例えば、遷移に結合してシグナル伝達の活性を加速する、等のことを含む他の機序により、INSRの細胞応答に与える正または負の効果を誘導することができる。
シグナル伝達複合体の調節により、シグナル入力に対する感受性の増加または減少およびシグナル伝達の随伴性増加または減少が生ずることができる。モジュレーター抗体の投与は、細胞経路の感受性および/または細胞応答の絶対的レベルを増加または減少させる。本発明のモジュレーターは、その特性に応じ、モジュレーター、増強剤、制御因子、エフェクターまたは感作物質として機能することができる。
多くの抗体医薬は、細胞表面受容体またはその同族リガンドに結合することによりシグナル伝達経路をブロックし、受容体に結合し受容体を活性化するリガンドの能力を排除するように作用する。このようなブロッキング薬剤は、受容体−リガンド複合体の形成を妨害することによりその効果を化学量論的に媒介する。
一部の疾患の治療を成功させるためには、受容可能な副作用プロファイルで正常な生理的状態に回復させるために、シグナル伝達経路の完全な抑制よりもむしろ減弱化が必要となり得る。本発明で提供される抗体は、このような利点を提供することが期待されている。
他の治療薬は、細胞表面受容体に結合することにより細胞シグナル伝達経路に影響を与え、受容体の活性を変える。このような直接アゴニスト薬剤は、天然リガンドの活性の模倣によりその効果を媒介することができ、その結果、固有の活性を有する、すなわち、それらは、その効果を媒介するためのリガンドの存在を必要としない。さらに、この治療薬は、リガンドに結合することにより細胞シグナル伝達経路に影響を与える。このような間接的アゴニスト薬剤は、リガンド安定性または結合価を変えることによりその効果を媒介できる。
生物学的プロセスは、通常、二者択一的というより連続的に調節されており、この結果、多くの場合、完全な経路遮断または刺激に比べ、経路活性の調節の方がより適切な治療の戦略となりうる。完全な経路遮断または刺激でなく、経路活性の調節に関する機能的な、細胞ベース選別を行うことは、困難であり、ハイスループットな方式で簡単に行うことはできない。なぜなら、このような選別は、通常、既知の濃度の試験化合物が必要であり、また、試験化合物調製におけるどのような不純物にも敏感である可能性があるからである。特に、経路活性の調節のためのハイスループットな機能的細胞ベース選別を実行する能力は、細胞内環境に入ることができない細胞非透過性の分子に対しては、また、特に、種々の発現レベル、純度および使用する産生系の安定性を有する可能性のある組換え型生物学的分子に対しては、制限されている。さらに、一部の結合相互作用では、機能的選別の際に測定するシグナル伝達産物(例えば、デコイ受容体の場合は、デコイ基質、または標的の不活性型)が無い場合もあり、これらの相互作用を撹乱する試薬を特定することを難しくする。
本発明は、これらの欠点を克服し、正および負のINSR活性モジュレーターおよび所望の効力の薬剤をハイスループットな方式で特定する手段を提供する。また、本発明は、所望の範囲の活性の調節ができるINSR活性の正および負モジュレーターを提供し、また、これらのモジュレーターがグルコース取り込みを変えて所望の生物学的効果を発揮することを示すデータを提供する。
定義
用語の「化合物」は、有機または無機の、内在性または外因性の任意の化学化合物を指し、これに限定されないが、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、小分子、核酸(例えば、DNAおよびRNA)、炭水化物、脂質、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、ペプチド模倣薬、ポリケチドおよびそれらの誘導体、構造類似体または組み合わせを含む。「内在性」は、哺乳動物中で天然に存在することを意味し、一方、「外因性」は、哺乳動物中で天然には存在しない、例えば、投与した外来の化合物、を意味する。
用語の「ポリペプチド結合剤」は、抗原、例えば、標的もしくはそのシグナル伝達相手に特異的に結合可能な、または測定可能な結合親和性で抗原と結合可能なポリペプチドを指す。ポリペプチド結合剤の例には、任意で他のペプチド成分または非ペプチド成分に結合している、抗体、ペプチボディ、ポリペプチドおよびペプチドが含まれる。ポリペプチド結合剤が結合できる抗原には、抗体応答を誘発可能な、または非特異的結合より大きい検出可能な結合親和性でポリペプチド結合剤に結合可能な任意のタンパク質性または非タンパク質性分子が含まれる。調節ポリペプチド結合剤が結合する抗原には、標的、標的のシグナル伝達相手、および/または標的およびそのシグナル伝達相手を含む複合体を含んでもよい。
用語の「抗体」は、最も広範な意味で使用され、完全に組み立てられた抗体、四量体の抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、抗原に結合可能な抗体断片(例えば、Fab'、F'(ab)2、Fv、単鎖抗体、二重特異性抗体)、および所望の生物活性を示す限り、前述のものを含む組換え型ペプチド、が含まれる。「免疫グロブリン」または「四量体の抗体」は、2つの重鎖および2つの軽鎖から構成される四量体の糖タンパク質で、それぞれが可変領域および定常領域を含む。抗原結合部分は、インタクト抗体の組換DNA技術または酵素的もしくは化学的開裂によって作ることができる。抗体断片または抗原結合部分には、特に、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体(dAb)、相補性決定領域(CDR)断片、CDRグラフト化抗体、単鎖抗体(scFv)、単鎖抗体断片、キメラ抗体、二重特異性抗体、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、直鎖抗体;キレート化組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、細胞内抗体、ナノボディ、小モジュール免疫薬剤(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ科化抗体、VHH含有抗体、またはそれらの変異体もしくは誘導体、および抗体が所望の生物活性を維持している限りは、ポリペプチドに対し特異的抗原結合を付与するのに十分な、少なくとも免疫グロブリンの一部、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDR配列、を含むポリペプチド、が含まれる。
「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体、すなわち、それぞれの抗体を含む集団が少量存在する可能性のある天然変異を除いて同等である集団から得た抗体を指す。
本明細書で使われる「抗体変異体」は、天然抗体可変領域ドメインの可変領域に少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失、または挿入を含む抗体ポリペプチド配列を指す。変異体は、未修飾抗体に対し実質的に相同、または実質的に同等であり得る。
本明細書で使われる「キメラ抗体」は、通常、異なる種を起源とする2つの異なる抗体(例えば、米国特許第4,816,567号参照)由来の配列を含む抗体を指す。最もよくあるものとしては、キメラ抗体は、ヒトおよびげっ歯類抗体断片、多くは、ヒト定常領域およびマウス可変領域を含む。
「中和抗体」は、結合する抗原の生物学的機能を無くするか大きく減らすことができる抗体分子である。従って、「中和」抗体は、生物学的機能、例えば、酵素活性、リガンド結合、または細胞内のシグナル伝達、を無くすか大きく減らすことができる。
「単離」抗体は、天然環境の成分から特定、分離、回収されている抗体である。その天然環境の混入成分は、診断または治療上の抗体の使用を妨害する可能性のある物質で、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含みうる。好ましい実施形態では、抗体は、(1)ローリー法で測定して、抗体の95重量%超に、最も好ましくは99重量%超に、(2)スピニング−カップ配列決定機器を使って、少なくともN末端もしくは内部アミノ酸配列の15残基を得るのに十分な程度に、または(3)還元もしくは非還元条件下、クマシー・ブルーもしくは、完全な銀色染色を使って、SDS−PAGEにより均質性が得られるまで、精製される。抗体の天然環境の少なくとも1つの要素が存在しないので、単離抗体には、組換え型細胞内のインサイツ抗体が含まれる。しかし、通常は、単離抗体は、少なくとも1つの精製ステップにより調製される。
本明細書で使われる「重鎖可変領域」は、前記抗体重鎖可変ドメインの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む抗体分子の領域を指す。重鎖可変領域は、1つ、2つまたは3つの前記重鎖のCDRを含んでもよい。
本明細書で使われる「軽鎖可変領域」は、前記抗体軽鎖可変ドメインの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む抗体分子の領域を指す。軽鎖可変領域は、1つ、2つまたは3つの前記軽鎖(抗体に依存して、カッパまたはラムダ軽鎖どちらであってもよい)のCDRを含んでもよい。
本明細書で使われる、「特異的結合」が「抗原特異的」である、抗原標的「に対して特異的」である、または抗原と「免疫反応性」である抗体は、類似配列の他の抗体より大きい親和性で抗原と結合する本発明の抗体またはポリペプチド結合剤を指す。一態様では、本発明のポリペプチド結合剤、またはその断片、変異体、もしくは誘導体は、他の種、すなわち、非ヒトの類似の抗原に対する結合親和性と比べて、ヒト抗原に大きな親和性で結合する。しかし、標的のオルソログを認識し、それに結合するポリペプチド結合剤は、本発明の範囲内にある。
例えば、その同族抗原「に対し特異的な」抗体またはその断片であるポリペプチド結合剤は、抗体の可変領域が検出可能な優先度により所望の抗原を認識し、結合することを示す(例えば、所望の抗原がポリペプチドの場合、ファミリーメンバー間の局所的配列同一性、相同性、または類似性の存在の可能性があるにもかかわらず、抗体の可変領域は、結合親和性の測定可能な差により抗原ポリペプチドと同じファミリーの既知のポリペプチドを区別することができる)。特異的抗体は、また、他のタンパク質(例えば、ELISA技術における黄色ブドウ球菌タンパク質Aまたは他の抗体)と抗体の可変領域以外の配列、特に、分子の定常領域の配列との相互作用を通して作用することができることは理解できよう。本発明の方法で使用するための、ポリペプチド結合剤、例えば抗体、の結合特異性を測定するアッセイは、当技術分野でよく知られ、日常的に使用されている。このようなアッセイの包括的な考察に関しては、Harlow et al.(Eds)、抗体:実験マニュアル;Cold Spring Harbor Laboratory;ColdSpring Harbor、NY(1988)、Chapter6、を参照のこと。本発明で使用する抗体は、当技術分野で既知のいずれかの方法を使って産生できる。
用語の「エピトープ」は、1つまたは複数の抗原結合領域にあるにより認識され、結合されることができる任意の分子の一部を指す。エピトープは、通常、分子の化学的に活性な表面群、例えば、アミノ酸または炭水化物側鎖からなり、また、特異的3次元構造特性ならびに特異的電荷特性を有する。本明細書で使われるエピトープは、連続していても、そうでなくてもよい。
ポリペプチド結合剤および本発明のポリペプチドとの関連で使われる場合、用語の「誘導体」は、ユビキチン化、治療薬または診断薬に結合、標識化(例えば、放射性核種または種々の酵素で)、共有結合のポリマー付加、例えば、ペグ化(ポリエチレングリコールで誘導体化)およびオルニチン等のアミノ酸の化学合成による挿入または置換(ヒトタンパク質においては、通常は起こらない)、等の技術により修飾されたポリペプチドを指す。誘導体は、本発明の非誘導体化分子の結合特性を維持している。
「検出可能成分」または「標識」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段により検出可能な組成物を指す。例えば、有用な標識には、32P、35S、蛍光染料、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAで通常使われるような)、ビオチン−ストレプトアビジン、ジゴキシゲニン、ハプテンおよび抗血清またはモノクローナル抗体が適用できるタンパク質、または別の標識核酸分子に相補的な配列の核酸分子、含まれる。検出可能成分は、検体の検出可能成分に結合した量の定量に使用可能な放射性、発色性、または蛍光シグナル等の、測定可能シグナルを生成することが多い。
「ペプチド」または「オリゴペプチド」は、短いアミノ酸配列、通常、3〜100アミノ酸残基の長さで、また、単独でまたは天然アミノ酸残基と組み合わせてペプチドに特定の立体構造特異性または特定の生物活性、例えば、蛋白質分解抵抗性を付与することができる天然のアミノ酸残基および残基の非天然類似体を含む。ペプチドは、ペプチド配列の反復を含み、ヘッドトゥーテールまたはヘッドトゥーヘッド配置アミノ酸配列の2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上の複製を含んでもよい。ペプチドは、非ペプチド成分、例えば、[伸張部]に結合してもよい。ペプチドには、二量体、三量体または、例えば、PEG等の他の高分子または非高分子成分への結合により形成された、より高次の多量体が含まれる。
「ポリペプチド」は、よりさらに長いアミノ酸配列で、通常、100以上のアミノ酸残基の長さであり、また、単独でまたは天然アミノ酸残基と組み合わせてペプチドに特定の立体構造特異性または特定の生物活性、例えば、蛋白質分解抵抗性を付与することができる天然のアミノ酸残基および残基の非天然類似体を含む。
本明細書で使われる「ペプチボディ」は、全または一部の免疫グロブリン(Ig)定常領域に融合した1つまたは複数のペプチドを含む融合体ポリペプチドである。例えば、米国特許第6,660,843号を参照のこと。ペプチドは、天然または組換えにより調製した、または化学的に合成した抗原に結合するいずれかのペプチドであってもよい。ペプチドは、ペプチド配列の反復を含み、ヘッドトゥーテールまたはヘッドトゥーヘッド配置アミノ酸配列の2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上の複製を含んでもよい。Ig定常領域の一部は、少なくとも1つの定常領域ドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3、および/またはCH4)、複数のドメイン(例えば、CH3を伴ったCH2)、複数のドメインの複製(例えば、CH2−CH2)、所望の活性、例えば、循環中の免疫グロブリンの半減期延長に関与するサルベージ受容体(salvage receptor)エピトープを維持する定常領域の任意の断片、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
「小」分子または「小」有機分子は、本明細書では、約1000ダルトン以下の分子量を有する非高分子有機化学化合物として定義されている。
本明細書で使用される「シグナル伝達複合体」は、細胞性シグナル伝達を媒介するタンパク質および/または内在性または外因性化合物の構築物である。シグナル伝達複合体の例には、これに限定されないが、膜結合受容体に結合したリガンド、シグナルカスケードに関与する生化学的反応の伝搬に関連する基質または任意の細胞性分子に結合した酵素が含まれる。シグナル伝達複合体には、また、共受容体、補助因子、足場タンパク質、アロステリックモジュレーターおよび細胞性シグナル伝達に関与する多くの他のタイプのタンパク質および分子、を含み得る。シグナル伝達複合体は、一時的にも、または永続するようにも形成可能である。シグナル伝達複合体の分子成分または成分は、時間経過と共に変化可能であり、また、各成分および細胞環境の活性化状態に依存しうる。シグナル伝達複合体に対し、伝達活性のわずかな変化、完全な不活性化および恒常的活性化または正および負両方の調節を含む、複合体に対する多様な効果を誘導する化学修正および調節を行うことが可能である。
本明細書で使用される用語の「治療有効量」は、異常な(例えば、異常に高いまたは異常に低い)シグナル伝達複合体のシグナル伝達に関連した疾患の症状または徴候を回復させる、または和らげるために有効な本発明の標的特異的組成物の量を示している。
本明細書で使用される「結合」は、1つまたは複数の、水素結合、ファンデルワールス、イオン双極子および疎水性相互作用を含む弱い力および強い力のイオン結合から成る非共有結合の相互作用の特異的ネットワークから生ずる、2つ以上の異なる分子実体間の物理的結合である。結合のレベルまたは度合いは、親和性の観点から測定できる。親和性は、平衡結合定数または動力学的結合速度パラメーターにより決まる2つ以上の異なる分子実体間の結合相互作用強度の想定値である。適切な定数またはパラメータおよびその測定単位の例には、当技術分野でよく知られており、これに限定されないが、例えば、次のものが含まれる:平衡会合定数(KA)、約105M−1以上、約106M−1以上、約107M−1以上、約108M−1以上、約109M−1以上、約1010M−1以上、約1011M−1以上または約1012M−1以上;平衡解離定数(KD)、例えば、約10−5M以下、または約10−6M以下、または約10−7M以下、または約10−8M以下、または約10−9M以下、または約10−10M以下、または約10−11M以下、または約10−12M以下;オン速度(例えば、sec−1、mol−1)およびオフ速度(例えば、sec−1))。KAの場合には、大きい値は、「より強い」または「強化された」結合親和性を意味し、一方KDの場合には、より小さい値は、「より強い」または「強化された」結合親和性を意味する。本明細書で使用される「強化された」結合速度パラメーターは結合維持時間の増加、より強い会合またはより弱い解離を意味する。本明細書で使用される「弱くなった」結合速度パラメーターは、結合維持時間の減少、より弱い会合またはより強い解離を意味する。オン速度の場合には、大きい値は、より速いまたはより回数の多い会合を意味し、従って、通常、結合親和性の強化が生ずる。オフ速度の場合には、小さい値は、通常、より少ない解離を示し、従って、通常、より強い結合親和性を生ずる。しかし、以降でさらに詳細に説明するように、結合親和性を示すのは、オン速度とオフ速度の比率である。
シグナル伝達複合体の2つの化合物の間、例えば、抗体と抗原の間、または第1と第2の成分の間の親和性は、直接または間接的に測定可能である。親和性の間接的測定は、親和性を示すおよび/またはそれに比例する代用特性を使って行うことができる。このような代用特性には、第1成分の第2成分に対する見かけの結合親和性の予測となる、またはそれと相関関係がある、シグナル伝達複合体の第1成分の第2成分への結合量またはレベル、または第1の成分または第2は成分の生物物理学的特性が含まれる。具体的な例には、第1または第2の成分の亜飽和濃度での第1成分の第2成分への結合量またはレベルの測定が含まれる。測定可能な他の生物物理学的特性には、これに限定されないが、正味分子電荷、回転活性、拡散速度、融解温度、静電的ステアリング(electrostatic steering)、または第1および第2成分の1つまたは両方の高次構造が挙げられる。さらに他の測定可能な生物物理学的特性には、温度、pH、またはイオン強度の変動の影響に対する結合相互作用の安定性の測定が含まれる。
測定される親和性は、測定に使った正確な条件に依存し、この条件には、多くの他の因子の中でも、結合成分の濃度、アッセイ準備、結合成分の価数、緩衝液組成物、pH、イオン強度および温度ならびに結合反応に加えた添加成分、例えば、アロステリックモジュレーターおよび制御因子が含まれる。定量的および定性的方法は、絶対的および相対的結合相互作用強度の測定に使用可能である。
見かけの親和性は、アロステリックモジュレーター、阻害剤、結合成分価数、等の結合反応の条件または成分により親和性が変化する条件の下の、2つ以上の異なる分子実体間の結合相互作用強度の測定値である。
本明細書で使用される「亜飽和濃度」は、他の成分の全ての結合部位を占有するために必要な濃度未満の結合反応の1つの成分の結合親和性KDおよび/または濃度よりかなり低い結合反応の1つまたは複数の成分の濃度である。亜飽和条件下では、かなりの割合の1つの結合反応の結合成分が、利用可能な結合部位を有する。
本明細書で使用される「生物物理学的アッセイ」は、絶対定期または相対的な方法で、少なくとも2つの化合物間の結合、会合、解離、結合親和性、結合レベル、または結合速度パラメーターを測定するいずれかの方法である。生物物理学的アッセイは、通常、インビトロで、精製結合成分、未精製成分、細胞結合成分ならびに精製および細胞結合成分の組み合わせを使って行うことができる。
「アゴニスト」は、受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を活性化するリガンドまたは薬剤のタイプを記載するために使われる用語である。受容体が活性を変える能力は(アゴニスト効力としても知られている)は、受容体に同様に結合するが、受容体のシグナル伝達を活性化しない、受容体リガンドの一タイプであるアンタゴニストとアゴニストとを区別する特性である。アゴニストの効力は、受容体の活性の増加を起こす正であっても、または受容体の活性を減少させる負であってもよい。完全なアゴニストは、受容体に結合して活性化し、その受容体で完全な効力を示す。部分アゴニストも同様に所定の受容体に結合して活性化するが、受容体に対し、完全アゴニストに比べ部分的効力しか有さない。逆アゴニストは、同じ受容体結合部位にその受容体に対するアゴニストとして結合し、受容体の恒常的な活性を逆転させる試薬である。逆アゴニストは、受容体アゴニストの逆の薬理学的効果を与える。コアゴニストは、他のコアゴニストと共に働き、共に所望の効果を生み出す。
競合的、またはオルソステリックアゴニストは、リガンドとして、同じ結合部位(活性部位)で可逆的に受容体に結合し、そのために、受容体の同じ結合部位のリガンドと競合になる。
異なる態様では、本明細書で開示の抗体は、アロステリックアゴニストとして作用する。それらは、活性なインスリン結合部位とは異なるINSRの部位に結合し、インスリンとINSRの結合親和性を2倍を超えるほどには大きくは変化させない。それらは、また、INSRのインスリン活性化のEC50を大きくは変化させず、例えば、EC50を2倍に満たない程度だけ変化させる。このような抗体は、インスリンの最大アゴニスト応答の80%以下、例えば、15%〜80%、20〜60%、20%〜40%または15%〜30%、の最大アゴニスト応答でINSRを恒常的に活性化する。特定の実施形態では、抗体は、インスリンの最大アゴニスト応答の少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%;および45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%までの最大アゴニスト応答でINSRを恒常的に活性化する。それぞれの可能な組み合わせを列挙することなく、これらのいずれかの範囲の端点の任意の組み合わせも意図されていることは理解されよう。一部の実施形態では、最大アゴニスト応答は、AKTアッセイより測定される。さらなる実施形態では、本発明は、10−5、10−6、10−7、10−8、10−9、10−10、または10−11M以下の親和性でインスリン受容体に結合するアロステリックアゴニスト抗体を提供する。本発明の理論にとらわれずに、アロステリックアゴニストの弱いアゴニスト活性は、天然の基底インスリン分泌レベルの効果を模倣するのに役立ち、一方、外因的に投与されたインスリンに対し、その正常なグルコース低減効果を許容する。特定の実施形態では、アロステリックアゴニストは、部分アロステリックアゴニストである。アンタゴニストは、アゴニストによる活性から受容体を遮断する。選択的アゴニストは、ある特定のタイプの受容体に対し選択的である。アゴニストは、さらに、上述のタイプのいずれかであってもよい。
アゴニストの効力、通常、EC50値の逆数で定義される。これは、所与のアゴニストに対し、最大生物学的応答の半分を誘発するのに必要なアゴニストの濃度を測定することにより計算できる。EC50が小さいほど、アゴニストの効力は大きくなる。
受容体の「アンタゴニスト」は、受容体に結合時にそれ自体で生物学的応答を誘発しないが、アゴニスト媒介応答を遮断するか弱めるタイプの受容体リガンドまたは薬剤である。アンタゴニストは、親和性はあってもよいが、それの同族受容体に対し効力は無く、結合により相互作用を破壊し、受容体に対するアゴニストまたは逆アゴニストの機能を阻害する。アンタゴニストは、受容体の活性部位またはアロステリック部位に結合することによりその効果を媒介し、または通常は受容体の活性の生物学的調節に関与しないユニークな結合部位と相互作用できる。アンタゴニスト活性は、アンタゴニスト-受容体複合体の長寿命に依存して、可逆的でも、不可逆的でもありうるが、この長寿命は、今度は、アンタゴニスト受容体結合の性質に依存する。大抵のアンタゴニストは、受容体の構造的に決まった結合部位で、内在性リガンドまたは基質と競合することによりその効力を得ている。
アンタゴニストは、結合している受容体を活性化する効力は示さない。しかし、結合するとするとすぐに、アンタゴニストは、アゴニスト、逆アゴニストおよび部分アゴニストの機能を阻害し得る。機能的アンタゴニスト試験では、用量反応曲線により、アゴニストの活性を逆転するアンタゴニストの濃度範囲の能力の効果を測定する。アンタゴニストの効力は、通常はそのIC50値から求められる。これは、所与のアンタゴニストに対し、アゴニストの最大生物学的応答抑制の半分を誘発するのに必要なアンタゴニストの濃度を測定して、計算できる。IC50がより小さければ、アンタゴニストの効力はより大きくなる。
競合的、またはオルソステリック、アンタゴニストは、受容体を活性化しないで、リガンドまたはアゴニストと同じ結合部位(活性部位)で可逆的に受容体に結合し、その結果、アゴニストと受容体の同じ結合部位に対し競合する。非競合的、またはロステリック、アンタゴニストは、アゴニストとは別の結合部位に結合し、別の結合部位経由でその受容体に作用を行使する。従って、アゴニストと結合に関しては競合しない。不競合的アンタゴニストは、別のアロステリック結合部位への結合の前に、アゴニストによる受容体活性化が必要であるという点で、非競合的アンタゴニストとは異なる。
「インスリン抵抗性」は、生理的な量のインスリンでは、細胞または組織からの正常なインスリン応答が得られない状態を表現する。
「インスリン感作物質」は、細胞または組織インスリン感受性を増加させ、所与の亜飽和濃度のインスリンに対し、より大きなレベルのグルコース取り込みを生させる化合物または薬剤である。
利点
本発明は、INSRの細胞外の領域に結合することにより、インスリン−INSRシグナル伝達複合体を調節する治療薬を開発できるという発見に関する。新規選択および選別方法を採用して、例えば、INSRの細胞外の領域を標的にし、増強するインスリン作用を強化するインスリン感作物質、を特定する。特に、本明細書で特定された一部の抗体は、INSRの細胞外領域に結合し、インスリン−INSRシグナル伝達複合体を正または負に調節する非アゴニスト抗体である。
本発明は、現存する治療に比べ独特の利点を提供するインスリン−INSRシグナル伝達複合体モジュレーターを包含する。これらは、インスリンの全範囲の作用の誘導を許容し、一方で、望まれない副作用を最小限に抑えることができるINSRのレベルで作用する。INSRアゴニズムの回避では、機能性低血糖のリスクを減らすべきである。さらに、より正確なグルコース値の制御が達成される可能性がある。従って、血糖レベルが増加する場合は、インスリンレベルの増大につながり、このようなモジュレーターがより大きなこうかを有する可能性がある。INSRの細胞外の領域の標的化により、内在性または外因性のインスリン、インスリン類似体またはインスリン模倣剤の効果を調節するインスリン−INSRシグナル伝達複合体モジュレーターのような生物学的分子の使用が可能となる;これらには、半減期の改善、投与量または投与頻度の低減、毒性の低減および製造の容易さが増す、等の利点があると思われる。本発明は、末梢インスリン抵抗性を低下させ、血糖調節を改善するインスリン−INSRシグナル伝達複合体モジュレーターを包含する。モジュレーターの感作効果は、インスリンレベルが、外因性のインスリン治療が無い場合は適切なグルコース取り込みを刺激するのに十分な多さではないレベルの対象の末梢組織によるグルコース取り込みレベルの改善を可能にすべきである。従って、本発明の抗体の投与は、他の薬剤に代えて、または他の抗糖尿病薬に対する補助治療として、インスリン抵抗性の初期段階で使用可能である。他の抗糖尿病薬に対する補助治療として投与する場合は、本発明の抗体は、正常な範囲近くに血糖レベルを維持するのに必要な抗糖尿病薬の合計毎日量を減らすことができる、または抗糖尿病薬の投薬頻度を減らすことができる、または、例えば、高血糖の発症をより少なくして、または最大高血糖(観察される最高異常グルコース値の減少)のレベルを減らして、同じ用量および/または頻度で血糖調節の改善を行うことができる。
インスリン受容体(INSR)
INSRは、刺胞動物や昆虫のような原始的な生物中で見つかったチロシンキナーゼ受容体である。高度な生物では、これはグルコース恒常性のために必須である。また、マウスのノックアウト研究により、INSRは、脂肪生成、血管新生、肝臓グルコース合成の調節およびグルコース誘導膵臓インスリン分泌に重要であることが示された(Kitamura et al、Ann.Rev.Physiol.、65:313−3322003)。INSRシグナル伝達は、また、食物摂取、末梢脂肪沈着および生殖内分泌軸の調節ならびに学習および記憶に関与する脳に重要である(Wada et al、J.Pharmacol.Sci.99:128−143、2005)。機能障害性INSRシグナル伝達は、I型およびII型糖尿病、痴呆および癌を含む疾患に関連付けられている。
インスリン様増殖因子受容体(IGFR−1)と密接に関連しているドメインは、INSRと高い(47〜67%)アミノ酸同一性を示す。構造では類似であるが、IGF−IRとINSRは、異なる生理的な機能を果たす。IGF−IRは、肝臓を除くほとんど全ての正常な成人組織中で発現する。肝臓は、それ自身IGF−I産生の主要部位である。INSRは、主に代謝機能に関与し、一方、IGF−IRは、増殖と分化を媒介する(Adams et al、Cell.Mol.Life Sci.57:1050−1093、2000)。
INSRは、2つのスプライス変異体アイソフォーム、INSR−AおよびINSR−Bとして存在し、これらは、エキソン11によりコードされている12アミノ酸をそれぞれ欠いているか、または含んでいる。より長い変異体、INSR−B、は、代謝応答シグナル伝達に関与するアイソフォームである。対照的に、主に分裂促進的応答シグナルを伝達するINSR−Aは、選択的にいくつかの癌中で発現するアイソフォームで(Denley et al.、Horm.Metab.Res.35:778−785、2003)、また、インスリン様増殖因子2(IGF−II)と高親和性で結合することができる(Denley et al、Mol.Endocrinol.18:2502−2512、2004)。
成熟ヒトINSRは、2つのαサブユニットおよび2つのβサブユニット(鎖)を含むホモダイマーである。αおよびβ鎖は、単一遺伝子によってコードされており、残基720〜723の位置のフューリン開裂部位にある1370アミノ酸前駆物質の翻訳後開裂により生じている。α−鎖およびβ−鎖の194残基は、INSRの細胞外部分を含む。単一の膜貫通型配列およびチロシンキナーゼを含む403残基細胞質ドメインがある。各外部ドメインモノマーのN末端側の半分は、約150アミノ酸のサイズのシステインリッチ領域(CR)で分離された、約150アミノ酸の2つの相同ロイシンリッチ反復ドメイン(L1およびL2)からなる。各外部ドメインモノマー(約460残基)のC末端側の半分は、3つのフィブロネクチンIII型ドメイン(FnIII−1、FnIII−2およびFnIII−3)から成る。FnIII−2ドメインは、約120残基の挿入ドメイン(ID)を含み、その中に成熟受容体のαおよびβ鎖を生成するフューリン開裂部位がある。細胞内部で、各モノマーは、2つの調節の領域が隣接するチロシンキナーゼ触媒ドメイン(膜近傍領域およびC末端)を含み、このドメインは、シグナル伝達分子のためのホスホチロシン結合部位を含む(Ward et al、Acta Physiol.192:3−9、2008)。
インスリン結合の現在のモデルでは、基礎状態で、INSRホモダイマーは、各モノマー上に2つの同じ対の結合部位(部位1および部位2と呼ぶ)を含む(De Meyts、Bioessays、26:1351−1362、2004)ことが提案されている。1つのα−サブユニット上の低親和性部位へのインスリンの結合(部位1)に、結合インスリンと第2のINSRα−サブユニット(部位2)の別の領域の間の第2の結合イベントが続く。この2つのαサブユニット間のリガンド媒介架橋結合が、シグナル伝達を起こす高親和性状態を生成する。対照的に、そのC末端で繋ぎ止められていない可溶のINSR外部ドメインは、高親和性受容体−リガンド複合体を生成できない。それは、2つのインスリン分子を同時にその2つの部位1で結合することができるが、親和性は低い(Adams et al、Cell.Mol.Life Sci.57:1050−1093、2000)。部位1は、L1ドメインの中央部のβ−シートおよびα−鎖の最後の16残基(CTペプチドと呼ばれる)由来の配列からなると考えられている。部位2は、大抵FnIII−1およびFnIII−2の接合部にループを含む。インスリン結合は、インスリンおよびその受容体の両方の構造変化を伴うと考えられている(Ward and Lawrence、BioEssays 31:422−434、2009)。
インスリン分子が受容体に結合し、その作用を及ぼすとすぐに、インスリンは、細胞外の環境に放出されるか、または細胞によって分解されうる。通常、分解は、インスリン−INSR複合体のエンドサイトーシスを伴い、続いて、インスリン分解酵素が作用する。大抵のインスリン分子は、肝臓細胞により分解される。典型的なインスリン分子は、循環系への最初の放出から約71分で最終的に分解されると推定されている(Duckworth et al、Endocr.Rev.19(5):608-24、1998)。
インスリンシグナル伝達
インスリンは、分子のシグナル伝達ネットワークを誘導し、INSRから代謝および増殖に関与するエフェクタータンパク質に情報を運ぶ。INSRに結合しているインスリンは、内因性チロシンキナーゼ活性の活性化を促進する立体構造変化を誘導し、INSRβ−サブユニットの自己リン酸化をもたらす。インスリン受容体基質(IRS)タンパク質は、リン酸化INSRとの相互作用を通じて細胞膜へ補充され、また、これらもチロシン残基でリン酸化され、別のシグナル伝達タンパク質の複合体への補充を促進し、2つの主要経路(1)主に代謝を調節し、増殖に対しわずかに影響を与えるPI3キナーゼ/PDK1/PKB経路、および(2)主に細胞増殖を調節するRas/ERK分裂促進的経路、によりシグナル伝達をもたらす。
特定の市販インスリン類似体は、培養した癌細胞中でIGF−1様分裂促進的および抗アポトーシス性活性を示し、ヒトでの長期的安全性に疑念が生じていることが報告されている(Weinstein et al、Diabetes Metab Res Rev25:41−49、2009)。従って、代謝と分裂促進的INSRシグナル伝達の間のバランスを変えない、または分裂促進的INSRシグナル伝達に対し優先的代謝シグナル伝達を促進するINSRアゴニストを得ることが望ましいと思われる。
抗体モジュレーターの特定方法
本発明は、シグナル伝達複合体の第1および第2成分、例えば、インスリン受容体等の受容体およびそのリガンドインスリン、の間の結合を調節するポリペプチド結合剤候補、例えば、抗体、を特定する方法を提供する。
本発明の理論に拘泥することなく、本開示は、シグナル伝達複合体の2つの成分(第1の成分、C1および第2の成分、C2)間の相互作用のモジュレーター(M)による速度論的摂動は、数学的に次のように記述できることを示す:
ここで、成分間の結合平衡定数(K’
C1C2)の変化は、成分間の平衡定数(K
C1C2)、モジュレーター濃度(M)、複合体に対するモジュレーター親和性(K
[C1C2]M)および第1成分に対するモジュレーター親和性(K
MC1)または第2成分に対するモジュレーター親和性(K
MC2)、の関数である。
シグナル伝達複合体が受容体−リガンド複合体、およびモジュレーターが抗体の場合は、受容体−リガンド相互作用の抗体による速度論的摂動は、数学的に次のように記述できる:
ここで受容体−リガンド結合平衡定数(K’
RL)の変化は、受容体−リガンド平衡定数(K
RL)、抗体濃度(A)、複合体に対する抗体親和性(K
[RL]A)および受容体に対する抗体親和性(K
AR)またはリガンドに対する抗体親和性(K
AL)の関数である。
モジュレーターは、そのシグナル伝達相手に対する標的の結合親和性または結合速度パラメーターが弱められる、または強化される様な形で、標的、またはそのシグナル伝達相手、または標的とシグナル伝達相手との複合体に結合する。例えば、標的が受容体またはリガンドの場合は、リガンドのその受容体に対する結合親和性または結合速度パラメーターが、モジュレーターの存在下で弱められる、または強化される。K[C1C2]Mが充分に大きい場合は、K’C1C2が無限大に近づくために、完全な遮断活性を有するモジュレーターは、この分析で境界条件を表す。このモデルの1つの意味は、モジュレーター濃度([M])が、結合リガンドで飽和状態のモジュレーター/抗原相互作用の平衡解離定数(KD)よりも充分に大きい場合は、シグナル伝達調節の度合いは、モジュレーター濃度と無関係であることである。従って、[M]>KD(モジュレーターとその抗原の間のKD)の場合、相互作用の調節は、成分に対する複合体の親和性の比率に関係する。
本開示は、モジュレーターの標的および/またはそのシグナル伝達相手との相互作用の生物物理学的性質は、モジュレーターの標的シグナル伝達経路に対する機能的効果を予測するために使用できることを示す。従って、シグナル伝達経路を変えるモジュレーターは、非複合化型に対する複合化型における標的(および/またはそのシグナル伝達相手)に対するその相対的親和性に基づいて特定可能である。本発明は、シグナル伝達複合体の2つの成分(第1成分、C1および第2成分、C2)間のモジュレーター(M)による相互作用の速度論的摂動が下記のように予測できることを意図している:
K[C1C2]M またはK[MC2]C1 またはK[MC1]C2 < KMC2 またはKMC1 正の調節をもたらす
K[C1C2]M またはK[MC2]C1 またはK[MC1]C2 = KMC2 またはKMC1 調節しない
K[C1C2]M またはK[MC2]C1 またはK[MC1]C2 > KMC2 またはKMC1 負の調節をもたらす
シグナル伝達複合体が受容体(R)−リガンド(L)複合体で、動力学的モジュレーターが抗体(A)である場合は、速度論的摂動は、次のように予測できる:
K[RL]A またはK[AL]R またはK[AR]L < KAL またはKAR 正の動力学的調節をもたらす
K[RL]A またはK[AL]R またはK[AR]L = KAL またはKAR 動力学的調節なし
K[RL]A またはK[AL]R またはK[AR]L > KAL またはKAR 負の動力学的調節をもたらす
一部の実施形態では、抗体(A)等のモジュレーターは、結合相互作用、例えば、第1または第2成分のいずれかの所与の亜飽和濃度(例えば、リガンド(L)の濃度)の受容体(R)−リガンド(L)相互作用、を変えるその能力により特定できる。モジュレーター抗体またはポリペプチドは、500pM相互作用から10pM(正のモジュレーター)または10nM(負のモジュレーター)までの受容体リガンド相互作用の親和性および対応する用量反応を効果的にシフトさせる可能性がある。一部の実施形態では、モジュレーターは、所与のリガンド濃度で、より高いレベルのR−L結合を生成し、アッセイ曲線を左へ(正の調節)シフトさせる。他の実施形態では、モジュレーターは、所与のリガンド濃度で、より低いレベルのR−L結合を生成し、アッセイ曲線を右へ(負の調節)シフトさせる。一部の実施形態では、シフトは一定である。他の実施形態では、他の因子、例えば、複合体中のアクセサリータンパク質、受容体内部移行、等の関与を反映して、シフトは一様でない。
モジュレーターおよび標的、そのシグナル伝達相手および/または標的およびそのシグナル伝達相手を含む複合体の間の相互作用の結合特性は、通常、動力学的モジュレーターの標的シグナル伝達経路に与える機能的効果を予測するものである。調査対象標的に依存して、特定の他の因子を考慮する必要がある可能性がある。これら他の因子には、次の項目が含まれる:(1)動力学的モジュレーターの濃度、標的の濃度、および/またはそのシグナル伝達相手の濃度(例えば、モジュレーター濃度([M])が、モジュレーターとその抗原の間の結合のKDよりもかなり大きい場合、予測は最適化される)、(2)使用されるモジュレーターの構造型、例えば、一価対二価(divalent)または二価(bivalent)、(3)標的の高次構造を制限するおよび/または標的の活性化を起こすことができる標的内/間架橋、(4)構築または結合を変えるモジュレーターの能力、またはシグナル伝達複合体の追加成分を立体的もしくはアロステリック機序により変えるモジュレーターの能力、(5)「ボトルネック」を導入する疾患によるシグナル経路の変化、等のシグナル伝達経路特異的特性、(6)シグナル伝達経路の負の/正のフィードバック調節、(7)シグナル伝達複合体の成分のクリアランス/内部移行割合の変化、(8)リガンド結合および活性化を切り離すまたは異なるように変える、例えば、モジュレーターがリガンド結合を強化するが、受容体を脱感作状態にする、またはモジュレーターがリガンド結合を弱めるが、その活性化している受容体中の立体構造変化を誘導する、等の標的の変化。
一部の態様では、本発明は、試験ポリペプチド試薬の存在または非存在下での、シグナル伝達複合体の第2の成分に対する、シグナル伝達複合体の第1の成分の特異的結合を測定する方法を提供する。これらの態様では、特異的結合は、第1または第2成分の亜飽和濃度である場合に観察するのが好ましい。一部の好ましい実施形態では、第1または第2成分の濃度を減らし亜飽和条件にすることができる。
一部の態様では、本発明は、複合化および非複合化型における、試験ポリペプチド結合剤、例えば、抗体、の標的および/またはそのシグナル伝達相手に対する特異的結合を測定する方法を提供する。これらの態様では、特異的結合は、試験ポリペプチド結合剤の亜飽和濃度である場合に観察するのが好ましい。一部の好ましい実施形態では、試験ポリペプチド結合剤の濃度を減らし亜飽和条件にすることができる。
一部の実施形態では、試験ポリペプチド試薬が無い場合の試験は、好ましくは、試験ポリペプチド試薬と類似の構造の種類の化合物であるが、試験されるシグナル伝達複合体に対し効果の無い異なる抗原に結合する対照化合物を使って行った。例えば、試験抗体に対する対照は、無関係の抗原、例えば、スカシ貝ヘモシアニン(KLH)に結合するアイソタイプ適合抗体であってもよい。
所与の亜飽和濃度C1の正のモジュレーターに対し、より大きいC1親和性が、正のモジュレーターの存在下のC1のC2に対する結合の、より大きいシグナルとして反映される。モジュレーターの優先的結合は、C1単独またはC2単独のシグナルに比べ、C1およびC2を含む複合体のより大きいシグナルとして反映される。一部の態様ではモジュレーターのC1とC2の複合体に対する結合はあるが、C1単独またはC2単独に対する測定可能な結合はない。
所与の亜飽和濃度C1の負のモジュレーターに対し、より低いC1親和性が、モジュレーターの存在下のC1のC2に対する結合の、より小さいシグナルとして反映される。モジュレーターの優先的結合は、C1およびC2の複合体に対するモジュレーターの結合のシグナルに比べ、C1単独またはC2単独の結合に対するより大きいシグナルとして反映される。
本発明は、シグナル伝達複合体の第1と第2の成分の間の得結合を調節するポリペプチド結合剤候補、例えば、抗体、を特定する方法を提供する。一部の実施形態では、第1と第2の成分は、ポリペプチドである。代表的な具体的実施形態では、第1と第2の成分は内在性である。
一態様では、調節抗体候補を特定する方法には、以下が含まれる:(a)試験ポリペプチド結合剤、例えば、抗体の存在下、前記第1の成分の前記第2の成分に対する結合親和性または結合速度パラメーターの測定、(b)前記試験ポリペプチド結合剤が無い場合の、前記第1の成分の前記第2の成分に対する結合親和性または結合速度パラメーターの測定;および(c)前記試験ポリペプチド結合剤が、工程(a)および(b)で測定して結合親和性または結合速度パラメーターで少なくとも1.5倍の差を示す場合、前記試験ポリペプチド結合剤の調節薬剤候補としての特定。一部の実施形態では、結合親和性または結合速度パラメーターの差は、約1.5倍(すなわち50%)〜約1000倍、または約1.5倍〜約100倍、または約2倍〜25倍、または約2倍〜約50倍、または約1.5倍〜約25倍、または約1.5倍〜約50倍の範囲である。
一部の実施形態では、試験ポリペプチド結合剤は、試験ポリペプチド試薬が、前記第1成分および前記第2成分の間の結合親和性または結合速度パラメーターを高める場合は、正のモジュレーター候補として特定される。他の実施形態では、試験ポリペプチド試薬が、前記第1成分および前記第2成分間の結合親和性または結合速度パラメーターを小さくする場合は、負のモジュレーター候補として特定される。
特定の結合親和性値または結合速度パラメーター値の変化(増加または減少)が、「強化された」(またはより強い)、または「弱くなった」(またはより弱い)結合親和性または結合速度パラメーターを示すかどうかは、パラメータ値およびその単位に依存し、このことは当技術分野でよく知られている。例えば、パラメータKAの場合には、より大きい値は、「強化された」結合親和性を意味し、KAの約106M−1は、KAの約105M−1よりも強い。別の例として、パラメータKDの場合には、より小さい値は、「強化された」結合親和性を意味し、KDの約10−6Mは、KDの約10−5Mよりも強い。逆に、KAの場合には、より小さい値は、「弱くなった」結合親和性を意味し、KAの約105M−1は、KAの約106M−1に比べて弱くなった結合親和性である。別の例として、KDの場合には、より大きい値は、「弱くなった」結合親和性を意味し、KDの約10−5Mは、KDの約10−6Mに比べ、弱くなった結合親和性である。
本明細書で使われる「強化された」結合速度パラメーターは、結合維持時間の増加、より強い会合または、より弱い解離を意味する。本明細書で使われる「弱くなった」結合速度パラメーターは、結合維持時間の減少、より弱い会合または、より強い解離を意味する。
結合親和性は、また、オン速度およびオフ速度の結合速度パラメーターの比率によっても決定可能である。通常、オン速度の場合は、より大きい値は、より速い、またはより強い会合またはより長い結合維持時間を意味し、通常は、より強い結合親和性を生ずる。逆に、より小さいオン速度値は、より遅いまたはより弱い会合または短くなった結合維持時間を意味し、通常は、より弱い結合親和性を生ずる。一般的に、オフ速度の場合は、より大きい値は、より速い解離または短くなった結合維持時間を意味し、通常は、より弱い結合親和性を生ずる。逆に、より小さいオフ速度値は、より遅い解離または短くなった結合維持時間を意味し、通常は、より強い結合親和性を生ずる。これは、オフ速度のオン速度に対する比率、またはオン速度のオフ速度に対する比率が、下記の式で示すように結合親和性を示すことが理由である:
ここで
。
結合親和性が検出可能なほど、または顕著に変化しない場合でも、結合維持時間の変化、すなわち、増加したオン速度もしくは減少したオフ速度により増加した結合維持時間、または減少したオン速度もしくは増加したオフ速度により減少した結合維持時間は、尚、シグナル伝達経路の特異的活性化を生ずる可能性がある。例えば、受容体が、2つの異なる経路を活性化できる場合の一部の例では、各経路は、完全な効果に必要な受容体活性化の程度が異なる。1つのシグナル伝達経路では、低いレベルの受容体活性化または結合維持時間で完全に活性化され、一方、第2の経路の完全活性化には、より高いレベルの受容体活性化または結合維持時間が必要である。
抗INSR抗体の機能的効果がその結合特性と相関することを示すデータの説明のための例を次の表に示す。
従って、モジュレーターおよび標的、そのシグナル伝達相手および/または標的およびそのシグナル伝達相手を含む複合体の間の相互作用の結合特性は、通常、モジュレーターポリペプチドの標的シグナル伝達経路に対する機能的効果の予測となる。
別の態様では、調節抗体候補を特定する方法には、次が含まれる:(a)(i)前記第2成分の存在下、試験ポリペプチド結合剤、例えば、抗体、の前記第1成分に対する結合親和性または結合速度パラメーターの測定、または(ii)前記第1成分の存在下、試験ポリペプチド結合剤の前記第2成分に対する結合親和性または結合速度パラメーターの測定;および(b)(i)前記第2成分が存在しない場合に、前記試験ポリペプチド結合剤の前記第1成分に対する結合親和性または結合速度パラメーターの測定、または(ii)前記第1成分が存在しない場合に、前記試験ポリペプチド結合剤の前記第2成分に対する結合親和性または結合速度パラメーターの測定;および(c)工程(a)および(b)で測定して、前記試験ポリペプチド結合剤が、結合親和性または結合速度パラメーターの少なくとも1.5倍(すなわち50%)の差を示す場合に、前記試験ポリペプチド結合剤を動力学的調節薬剤候補として特定する。
一部の実施形態では、工程(a)で測定して、結合親和性または結合速度パラメーターが、工程(b)で測定した結合親和性または結合速度パラメーターよりも、少なくとも1.5倍(すなわち、50%)強い場合は、試験ポリペプチド結合剤は、正のモジュレーター候補として特定される。具体的実施形態では、工程(a)で測定した結合親和性または結合速度パラメーターが、工程(b)で測定したものに比べ、約1.5倍(すなわち、50%)〜約1000倍強い(工程(b)に対する工程(a)で比較して)、または約1.5倍〜約100倍、または約2倍〜25倍、または約2倍〜約50倍、または約1.5倍〜約25倍、または約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍または20倍、または500倍、または200倍、または150倍、または100倍、または90倍まで、または80倍まで、または70倍まで、または60倍まで、または50倍まで、または40倍まで、30倍まで、20倍まで、または10倍まで強い。
他の実施形態では、試験ポリペプチド結合剤は、工程(b)で測定した結合親和性または結合速度パラメーターが、工程(a)で測定した結合親和性または結合速度パラメーターよりも少なくとも1.5倍(すなわち、50%)強い場合は、負のモジュレーター候補として特定される。具体的実施形態では、工程(b)で測定した結合親和性または結合速度パラメーターが、工程(a)で測定したものに比べ、約1.5倍(すなわち50%)〜約1000倍強い(工程(a)に対する工程(b)で比較して)、または約1.5倍〜約100倍、または約2倍〜25倍、または約2倍〜約50倍、または約1.5倍〜約25倍、または約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍または20倍、または500倍まで、または200倍まで、または150倍まで、または100倍まで、または90倍まで、または80倍まで、または70倍まで、または60倍まで、または50倍まで、または40倍まで、または30倍まで、20倍まで、または10倍まで強い。
一部の実施形態では、試験ポリペプチド結合剤の第1成分単独に対する結合親和性または結合速度パラメーターが、測定される。一部の実施形態では、試験ポリペプチド結合剤の第2成分単独に対する結合親和性または結合速度パラメーターが、測定される。
一部の実施形態では、(A)第1および第2成分を含む複合体に対する試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメーター、任意でK[C1C2]M、(B)ポリペプチド結合剤および第2成分を含む複合体に対する第1成分の結合親和性または結合速度パラメーター、任意でK[MC2]C1、または(C)ポリペプチド結合剤および第1成分を含む複合体に対する第2成分の結合親和性または結合速度パラメーター、任意でK[MC1]C2からなる群より選択される1つまたは複数の結合親和性または結合速度パラメーターが、(1)第2成分単独に対する試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメーター、任意でKMC2、または(2)第1成分単独に対する試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメーター、任意でKMC1からなる群より選択される1つまたは複数の結合親和性または結合速度パラメーターより少なくとも約1.5倍強い場合は、試験ポリペプチド結合剤は、正のモジュレーターとして特定される。一部の実施形態では、(A)、(B)または(C)のいずれかの1つまたは複数の特異的結合親和性または結合速度パラメーターが、(1)または(2)のいずれかの1つまたは複数の結合親和性または結合速度パラメーターより約1.5倍(すなわち、50%)〜約1000倍強い;あるいは、約1.5倍〜約100倍強い、または約2倍〜25倍、または約2倍〜約50倍、または約1.5倍〜約25倍、または約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍または20倍、または500倍まで、または200倍まで、または150倍まで、または100倍まで、または90倍まで、または80倍まで、または70倍まで、または60倍まで、または50倍まで、または40倍まで、30倍まで、20倍まで、または10倍まで強い。例えば、一部の実施形態では、(A)、(B)または(C)のいずれかの1つまたは複数の結合親和性または結合速度パラメーターが、(1)および(2)の両方の結合親和性または結合速度パラメーターより強い。一部の実施形態では、(1)の結合親和性または結合速度パラメーターが、(2)の結合親和性または結合速度パラメーターより強い。他の実施形態では、(2)の結合親和性または結合速度パラメーターが、(1)の結合親和性または結合速度パラメーターより強い。一部の実施形態では、2つ以上の結合親和性または結合速度パラメーターが測定され、例えば、オフ速度およびオン速度、またはKAおよびKD、またはそれらの任意の組み合わせが、比較される。
具体的実施形態では、測定された結合親和性が平衡解離定数KDである場合、K[C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2のいずれかが、KMC2またはKMC1のいずれかよりも、低く、例えば、約1.5倍〜1000倍小さい。同様に、測定した結合親和性がオフ速度である場合、(A)[C1C2]およびM、または(B)[MC2]およびC1、または(C)[MC1]およびC2の間のいずれかのオフ速度が、(1)MおよびC2または(2)MおよびC1の間のオフ速度のいずれかより低く、例えば、約1.5倍〜1000倍小さい。代表的一実施形態では、K[C1C2]Mは、約1.5倍〜1000倍KMC2より小さい。別の代表的実施形態では、K[MC2]C1は、約1.5倍〜1000倍KMC2より小さい。別の代表的実施形態では、K[MC1]C2は、約1.5倍〜1000倍KMC2より小さい。別の代表的実施形態では、K[C1C2]Mは、約1.5倍〜1000倍KMC1より小さい。別の代表的実施形態では、K[MC2]C1は、約1.5倍〜1000倍KMC1より小さい。さらに別の代表的実施形態では、K[MC1]C2は、約1.5倍〜1000倍KMC1より小さい。(1)MおよびC2または(2)MおよびC1の間のそれぞれのオフ速度と比較して、(A)[C1C2]およびM、または(B)[MC2]およびC1、または(C)[MC1]およびC2の間のそれぞれのオフ速度に対して、類似の例を予測することができる。
逆に、測定された結合親和性が平衡会合定数KAの場合には、K[C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2のいずれかは、KMC2またはKMC1のいずれかよりも高く、例えば、約1.5倍〜1000倍大きい。同様に、測定された結合親和性がオン速度の場合には、(A)[C1C2]およびM、または(B)[MC2]およびC1、または(C)[MC1]およびC2間のいずれかのオン速度が、(1)MおよびC2または(2)MおよびC1間のいずれかのオン速度よりも高く、例えば、約1.5倍〜1000倍大きい。一代表的実施形態では、K[C1C2]Mは、約1.5倍〜1000倍KMC2より大きい。別の代表的実施形態では、K[MC2]C1は、約1.5倍〜1000倍KMC2より大きい。別の代表的実施形態では、K[MC1]C2は、約1.5倍〜1000倍KMC2より大きい。別の代表的実施形態では、K[C1C2]Mは、約1.5倍〜1000倍KMC1より大きい。別の代表的実施形態では、K[MC2]C1は、約1.5倍〜1000倍KMC1より大きい。さらに別の代表的実施形態では、K[MC1]C2は、約1.5倍〜1000倍KMC1より大きい。(1)MおよびC2または(2)MおよびC1の間のそれぞれのオン速度と比較して、(A)[C1C2]およびM、または(B)[MC2]およびC1、または(C)[MC1]およびC2の間のそれぞれのオン速度に対して、類似の例を予測することができる。
一部の実施形態では、(1)第2成分単独に対する試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメーター、任意でKMC2、または(2)第1成分単独に対して試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメーター、任意でKMC1からなる群より選択される1つまたは複数の結合親和性または結合速度パラメーターが、(A)第1および第2成分を含む複合体に対する試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメーター、任意でK[C1C2]M、(B)ポリペプチド結合剤および第2成分を含む複合体に対する第1成分の結合親和性または結合速度パラメーター、任意でK[MC2]C1、または(C)ポリペプチド結合剤および第1成分を含む複合体に対する第2成分の結合親和性または結合速度パラメーター、任意でK[MC1]C2からなる群より選択される1つまたは複数の結合親和性または結合速度パラメーターよりも少なくとも約1.5倍強い場合は、試験ポリペプチド結合剤は、負のモジュレーター候補として特定される。一部の実施形態では、(1)または(2)のいずれかの1つまたは複数の特異的結合親和性または結合速度パラメーターが、(A)、(B)または(C)のいずれかの1つまたは複数の結合親和性または結合速度パラメーターよりも約1.5倍(すなわち、50%)〜約1000倍強い;あるいは、約1.5倍〜約100倍強い、または約2倍〜25倍、または約2倍〜約50倍、または約1.5倍〜約25倍、または約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍または20倍、または500倍まで、または200倍まで、または150倍まで、または100倍まで、または90倍まで、または80倍まで、または70倍まで、または60倍まで、または50倍まで、または40倍まで、30倍まで、20倍まで、または10倍まで強い。一部の実施形態では、(1)または(2)のいずれかの結合親和性または結合速度パラメーターが、(A)、(B)および(C)の全ての結合親和性または結合速度パラメーターより強い。一部の実施形態では、(1)の結合親和性または結合速度パラメーターが、(2)の結合親和性または結合速度パラメーターよりも強い。他の実施形態では、(2)の結合親和性または結合速度パラメーター(1)の結合親和性または結合速度パラメーターよりも強い。一部の実施形態では、2つ以上の結合親和性または結合速度パラメーターが測定され、また、例えば、オフ速度とオン速度、またはKAとKD、またはこれらのいずれかの組み合わせが、比較される。
具体的実施形態では、測定される結合親和性が、平衡解離定数KDの場合は、KMC2またはKMC1のいずれかが、K[C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2のいずれかよりも低く、例えば、約1.5倍〜1000倍小さい。同様に、測定される結合親和性が、オフ速度の場合には、(1)MとC2または(2)MとC1の間のいずれかのオフ速度が、(A)[C1C2]とM、または(B)[MC2]とC1、または(C)[MC1]とC2の間のいずれかのオフ速度よりも小さい、例えば、約1.5倍〜1000倍小さい。一代表的実施形態では、KMC2は、約1.5倍〜1000倍K[C1C2]Mより小さい。別の代表的実施形態では、KMC2は、約1.5倍〜1000倍K[MC2]C1より小さい。別の代表的実施形態では、KMC2は、約1.5倍〜1000倍K[MC1]C2より小さい。別の代表的実施形態では、KMC1は、約1.5倍〜1000倍K[C1C2]Mより小さい。別の代表的実施形態では、KMC1は、約1.5倍〜1000倍K[MC2]C1より小さい。さらに別の代表的実施形態では、KMC1は、約1.5倍〜1000倍K[MC1]C2より小さい。(A)[C1C2]とM、または(B)[MC2]とC1、または(C)[MC1]とC2の間のそれぞれのオフ速度と比較して、(1)MとC2または(2)MとC1の間のそれぞれのオフ速度に対して、類似の例を予測することができる。
逆に、結合親和性が平衡会合定数KAである場合、KMC2またはKMC1のいずれかが、K[C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2のいずれかよりも高く、例えば、約1.5倍〜1000倍大きい。同様に、測定される結合親和性がオン速度である場合、(1)MとC2または(2)MとC1の間のいずれかのオン速度が、(A)[C1C2]とM、または(B)[MC2]とC1、または(C)[MC1]とC2間のいずれかのオン速度よりも高く、例えば、約1.5倍〜1000倍大きい。一代表的実施形態では、KMC2は、約1.5倍〜1000倍K[C1C2]Mより大きい。別の代表的実施形態では、KMC2は、約1.5倍〜1000倍K[MC2]C1より大きい。別の代表的実施形態では、KMC2は、約1.5倍〜1000倍K[MC1]C2より大きい。別の代表的実施形態では、KMC1は、約1.5倍〜1000倍K[C1C2]Mより大きい。別の代表的実施形態では、KMC1は、約1.5倍〜1000倍K[MC2]C1より大きい。さらに別の代表的実施形態では、KMC1は、約1.5倍〜1000倍K[MC1]C2より大きい。(A)[C1C2]とM、または(B)[MC2]とC1、または(C)[MC1]とC2の間のそれぞれのオン速度と比較して、(1)MとC2または(2)MとC1の間のそれぞれのオン速度に対して、類似の例を予測することができる。
特定の実施形態では、モジュレーターは、抗体であり、C1とC2は、インスリンおよびインスリン受容体からなる群より選択される。
これらの実施形態のいずれかでは、試験ポリペプチド結合剤および第2成分は、複数の異なる濃度の前記第1成分と接触可能である。これらの実施形態のいずれかでは、試験ポリペプチド結合剤および第1成分は、複数の異なる濃度の前記第2成分と接触可能である。これらの実施形態のいずれかでは、複数の異なる濃度の試験ポリペプチド結合剤は、前記第1成分および前記第2成分と接触可能である。
試験ポリペプチド結合剤の第1成分と第2成分の間の結合相互作用に対する効果が測定される場合は、一部の具体的実施形態で試験ポリペプチド結合剤に対する抗原が、第1成分、例えば、リガンドである場合、試験ポリペプチド結合剤は、第1成分の濃度に比較して、飽和濃度である。あるいは、試験ポリペプチド結合剤に対する抗原が第2成分、例えば、受容体である場合、試験ポリペプチド結合剤は、第2成分の濃度に比較して、飽和濃度である。一部の実施形態では、試験ポリペプチド結合剤の濃度は、第1成分および第2成分を含む複合体に対する試験ポリペプチド結合剤のKDよりも大きいか、または等しい。さらなる実施形態では、第2成分の濃度は、第1成分、例えば、リガンドに対する試験ポリペプチド結合剤のKD未満である。またさらなる実施形態では、第1成分、例えば、リガンド、の濃度は、第1成分の第2成分、例えば、受容体、に対する結合に関し、亜飽和濃度である。一部の実施形態では、第1成分、例えば、リガンド、の濃度は、第1成分の第2成分との相互作用に関し、約EC20〜EC80の範囲内である。一部の実施形態では、1つまたは複数の濃度の試験ポリペプチド結合剤が、1つまたは複数の濃度の第2成分、例えば、受容体の存在下、複数の異なる濃度の第1成分、例えば、リガンド、と接触する。一部の実施形態では、1つまたは複数の濃度の試験ポリペプチド結合剤が、1つまたは複数の濃度の第1成分、例えば、リガンドの存在下複数の異なる濃度の第2成分、例えば、受容体と接触する。
複合化/非複合化標的および/またはシグナル伝達相手に対する試験ポリペプチド結合剤の特異的結合を、正のモジュレーターを特定する目的で判定する場合、一部の実施形態では、第1成分および第2成分を含む複合体に対して、試験ポリペプチド結合剤は、飽和濃度である。一部の実施形態では、第1成分、例えば、リガンド、および第2成分、例えば、受容体を含む複合体に対し、試験ポリペプチド結合剤の濃度は、試験ポリペプチド結合剤のKDより大きいか等しい。さらなる実施形態では、第1成分、例えば、リガンドに対して、第2成分、例えば、受容体の濃度は、第2成分、例えば、受容体のKDより大きい。さらなる実施形態では、第2成分、例えば、受容体に対し、第1成分、例えば、リガンドの濃度は、飽和濃度である。またさらなる実施形態では、第1成分および第2成分を含む複合体に対して、試験ポリペプチド結合剤は、亜飽和濃度である。一部の実施形態では、第1成分の第2成分との相互作用に関して、ポリペプチド結合剤の濃度は、約EC20〜EC80の範囲内にある。一部の実施形態では、第1成分、例えば、リガンドに対して、第2成分、例えば、受容体の濃度は、第2成分、例えば、受容体のKDより大きい。一部の実施形態では、第2成分、例えば、受容体の濃度に対して、第1成分、例えば、リガンドの濃度は、飽和濃度である。
複合化/非複合化標的および/またはシグナル伝達相手に対する試験ポリペプチド結合剤の特異的結合を、負のモジュレーターを特定する目的で判定する場合で、一部の実施形態で、試験ポリペプチド結合剤が結合する抗原が、第1成分、例えば、リガンドである場合は、第1成分に対して、試験ポリペプチド結合剤は、亜飽和濃度である。試験ポリペプチド結合剤が結合する抗原が、第2成分、例えば、受容体である場合、第2成分に対し、試験ポリペプチド結合剤は亜飽和濃度である。さらなる実施形態では、第1成分の第2成分との相互作用に関し、ポリペプチド結合剤の濃度は、約EC20〜EC80の間にある。さらなる実施形態では、第1成分、例えば、リガンドに対して、第2成分、例えば、受容体の濃度は、第2成分、例えば、受容体のKDより大きい。さらなる実施形態では、第2成分、例えば、受容体に対して、第1成分、例えば、リガンドの濃度は、飽和濃度である。
一部の実施形態では、方法は、(a)第1成分、(b)第2成分、または(c)第1成分および第2成分を含む複合体のいずれかの1つとの結合親和性に関する、複数の試験ポリペプチド結合剤、例えば、抗体、のアッセイをさらに含む。一部の具体的実施形態では、ポリペプチド結合剤は、例えば、約10−5M以下、または約10−6M以下、または約10−7M以下、または約10−8M以下(小さいKDは、より強い結合親和性を意味する)の平衡解離定数KDを特徴とする結合親和性を有する。一部の実施形態では、選別された複数の試験ポリペプチド結合剤は、親ポリペプチド結合剤に1つまたは複数の異なる変異を導入して作られた親ポリペプチド結合剤の変異体である。
さらなる実施形態では、ポリペプチド結合剤は、デコイ受容体、クリアランス受容体、または別のシグナル経路成分、等の異なる結合相手と比べて、第1または第2成分に対する効果の選択性で選別できる。このような方法は、第1または第2成分が結合相手ではない別の結合相手に対する第1または第2成分の結合親和性または結合速度パラメーターを大きく変化させないポリペプチド結合剤を特定することを含むことができる。一部の実施形態では、ポリペプチド結合剤の存在により、異なる結合相手に対する第1または第2成分の結合親和性または結合速度パラメーターが、5倍以下、または10倍以下、または20倍以下、または30倍以下、または40倍以下、または50倍以下、変化する。
前述の方法のいずれも、試験ポリペプチド結合剤の存在または非存在下の、シグナル伝達複合体によるシグナル伝達媒介レベルの測定、および試験ポリペプチド結合剤が、追加的にアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニストまたは部分アンタゴニストであるか否かの判定をさらに含むことができる。アンタゴニズムまたはアゴニズムは、リン酸化アッセイ、イオンフラックスアッセイ、分子輸送アッセイ、または遺伝子発現アッセイ(これらに限定されない)でのシグナル伝達を含む、当技術分野で既知のいずれかのインビトロでまたはインビボアッセイで測定できる。
一部の実施形態では、試験ポリペプチド結合剤は、第1成分、例えば、リガンドの第2成分、例えば、受容体との相互作用の用量反応曲線をシフト(正に、または負に)させる。シフトは、EC50の少なくとも約1.5倍、例えば、約1.5倍〜約100倍の増加または減少として現れうる。一部の実施形態では、試験ポリペプチド結合剤は、シグナル伝達複合体の第1および第2成分の相互作用により生成された最大アゴニスト応答シグナルを大きくは変えない。他の実施形態では、試験ポリペプチド結合剤それ自体、アンタゴニスト(例えば、前記シグナル伝達複合体により生成された最大アゴニスト応答シグナル伝達を減少させる)またはアゴニスト(例えば、前記シグナル伝達複合体により生成された最大アゴニスト応答シグナル伝達を増加させる)として作用する。
試験ポリペプチド結合剤がアンタゴニストまたは部分アンタゴニストとして作用する場合は、最大アゴニスト応答を、例えば、約1.5倍〜約100倍、または約2倍〜約25倍、または約1.5倍〜約50倍減少させることができる;または、約10%、25%、50%(1.5倍)、75%、2倍、3倍、または4−、5−、6−、7−、8−、9−または10倍減少させることができる。あるいは、試験ポリペプチド結合剤が、アゴニストまたは部分アゴニストとして作用する場合、最大アゴニスト応答を、例えば、少なくとも約10%、25%、50%(1.5倍)、75%、2倍、3倍、または4−、5−、6−、7−、8−、9−または10倍増加させることができる。さらに、試験ポリペプチド結合剤が、アンタゴニストまたは部分アンタゴニストとして作用する場合、IC50は、1x10−5以下とすることができる。試験ポリペプチド結合剤は、さらに望ましい特性を示すことができ、例えば、試験ポリペプチド結合剤は、前記第1成分、または前記第2成分、または第1および第2成分を含む前記シグナル伝達複合体のクリアランスを大きく減少させない。
調節試薬、例えば、動力学的調節試薬、を特定する方法、が、2009年9月25日出願、同時係属の共有米国特許出願第61/246,079号、2010年2月19日出願の米国特許出願第61/306,324号、および2010年9月24日出願の国際公開特許出願番号 __________、(整理番号27129/41726)、でさらに記載されている。
試験ポリペプチド結合剤は、さらに望ましい特性を示すことができ、例えば、試験ポリペプチド結合剤は、前記第1成分、または前記第2成分、または第1および第2成分を含む前記シグナル伝達複合体のクリアランスを大きく減少させない。
関連する態様では、本発明は、インスリン/インスリン受容体シグナル伝達複合体のモジュレーターおよび上述または本出願の他の場所のいずれかの方法で特定された抗体または他のモジュレーターを特定する方法を提供する。
抗体のタイプとソース
本発明は、インスリン、インスリン受容体またはインスリン/インスリン受容体複合体に結合する標的特異的抗体を包含する。代表的実施形態では、本発明の標的特異的抗体は、ヒトカッパ(κ)またはヒトラムダ(λ)軽鎖もしくはそれ由来のアミノ酸配列、またはヒト重鎖もしくはそれ由来の配列、または単鎖、二量体、四量体もしくは他の形の重鎖と軽鎖の両方一緒のもの、を含んでもよい。一部の実施形態では、標的特異的免疫グロブリンの重鎖と軽鎖は、異なるアミノ酸分子である。他の実施形態では、同じアミノ酸分子が、標的特異的抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
用語の「抗体」は、最も広範な意味で使用され、完全集合抗体、四量体の抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒトおよびヒト化抗体、抗原に結合可能な抗体断片(例えば、Fab'、F'(ab)2、Fv、単鎖抗体、二重特異性抗体)、および所望の生物活性を示す限り、前述のものを含む組換え型ペプチド、が含まれる。「免疫グロブリン」または「四量体の抗体」は、2つの重鎖および2つの軽鎖から構成される四量体の糖タンパク質で、それぞれが可変領域および定常領域を含む。抗原結合部分は、インタクト抗体の組換DNA技術または酵素的もしくは化学的開裂によって作ることができる。抗体断片または抗原結合部分には、特に、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体(dAb)、相補性決定領域(CDR)断片、単鎖抗体(scFv)、単鎖抗体断片、キメラ抗体、二重特異性抗体、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、直鎖抗体;キレート化組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、細胞内抗体、ナノボディ、小モジュール免疫薬剤(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ科化抗体、VHH含有抗体、またはそれらの変異体もしくは誘導体、および抗体が所望の生物活性を維持している限りは、ポリペプチドに対し特異的抗原結合を付与するのに十分な、少なくとも免疫グロブリンの一部を含むポリペプチド、が含まれる。
天然の免疫グロブリンでは、各各四量体は、2つの同等な対のポリペプチド鎖からなり、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各重鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識に関与する約100〜110以上のアミノ酸の可変領域を含む。各重鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を定める。ヒト軽鎖は、カッパ(κ)およびラムダ(λ)軽鎖に分類される。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(Δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)、およびイプシロン(ε)に分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして規定する。軽鎖および重鎖内で、可変領域と定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって結合され、また、重鎖は約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。一般的な説明は、「免疫学の基礎、7章」(Paul、W.、ed.、2nd ed.Raven Press、N.Y.(1989))(参照によってその全体が目的に応じ組み込まれる)を参照のこと。各軽/重鎖対の可変領域は、インタクト免疫グロブリンが2つの結合部位を有するように抗体結合部位を形成する。
各重鎖は、1つの末端で可変ドメイン(VH)、とそれに続く多くの定常領域を有する。各軽鎖は、1つの末端で可変ドメイン(VL)、もう一つの末端で定常領域を有する;軽鎖の定常領域は、重鎖の第1の定常領域と整列し、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基は、軽鎖と重鎖可変ドメインの間の境界を形成していると考えられている(Chothia et al.、J.Mol.Biol.196:901−917、1987)。
免疫グロブリン可変ドメインは、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)とこれに結合した3つの高頻度可変性領域、すなわちCDR、からなる同じ一般構造を示す。N末端末端からC末端にかけ、軽鎖および重鎖両方とも、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4ドメインを含む。各ドメインへのアミノ酸の割り付けは、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(アメリカ国立衛生研究所、ベゼズダ、メリーランド(1987および1991))、またはChothia & Lesk、(J.Mol.Biol.196:901−917、1987);Chothia et al.、(Nature 342:878−883、1989)に従っている。
抗体の高頻度可変性領域は、抗体のCDRアミノ酸残基と呼ばれ、抗原結合に関与する。高頻度可変性領域は、CDR[すなわち、:Kabatetal.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5thEd.公衆衛生局、アメリカ国立衛生研究所、ベゼズダ、メリーランド(1991)の記載に従って、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3)]からのアミノ酸残基、および/または高頻度可変性ループ(すなわち、[Chothia et al.、J.Mol.Biol.196:901−917(1987)]の記載に従って、軽鎖可変ドメイン中の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3))からのアミノ酸残基を含む。しかし、個々の抗体の配列が特定されるときには、CDR残基の実際の位置は、上述の予測残基とは変化してもよいことは当業者には理解されている。
フレームワークまたはFR残基は、高頻度可変性領域残基以外の可変ドメイン残基である。
それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、異なるクラス、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMに割り当てられ、これらはさらにサブクラスまたはアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2に分けることができる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元構造は、よく知られている。異なるアイソタイプは、異なるエフェクター機能をもつ;例えば、IgG1およびIgG3アイソタイプは、ADCC活性を有する。本発明の抗体は、定常領域を含む場合、これらのサブクラスまたはアイソタイプのいずれかでありうる。
代表的実施形態では、本発明の抗体は、ヒトカッパ(κ)またはヒトラムダ(λ)軽鎖もしくはそれら由来のアミノ酸配列、またはヒト重鎖もしくはそれら由来の配列、または単鎖、二量体、四量体または他の形の重鎖および軽鎖の両方一緒のものを含んでもよい。
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体集団から得た抗体を指す。モノクローナル抗体は、異なる決定因子(エピトープ)に対する異なる抗体を含む、従来の(ポリクローナル)抗体調製とは対照的に、通常、高度に特異的で、単一抗原性部位に対して指向させて作ることができる。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、均質培養により、異なる特異性と特性を有する他の免疫グロブリンの混入がないように合成されるという利点がある。
本発明に従って使われるモノクローナル抗体は、Kohler et al.、(Nature、256:495−7、1975)によって最初に記載された、ハイブリドーマ法により、または組換えDNA法(例えば米国特許第4,816,567号、参照)により作製できる。モノクローナル抗体は、また、例えば、Clackson et al.、(Nature 352:624−628、1991)およびMarks et al.、(J.Mol.Biol.222:581−597、1991)に記載された技術を使って、ファージ抗体ライブラリーから単離することができる。
ハイブリドーマ方法では、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えば、ハムスターまたはマカクザル、に免疫して、免疫に使われるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生する、または産生できるリンパ球を誘発する(Harlow&Lane;抗体:実験マニュアル、Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor、New York(1988)。
抗体の組換え産生
また、本発明は、本発明の抗体をコードした核酸分子を包含する。一部の実施形態では、異なる核酸分子が、抗原特異的抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードする。他の実施形態では、同じ核酸分子が、抗原特異的抗体の重鎖および軽鎖可変領域をコードする。
本発明のモノクローナル抗体をコードしたDNAは、従来の方法を使って(例えば、モノクローナル抗体の重鎖と軽鎖をコードした遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使って)、抗体を分泌するハイブリドーマ細胞から単離し、配列決定できる。配列決定は、通常、関心対象の遺伝子またはcDNAの少なくとも一部の単離が必要である。通常は、これには、モノクローナル抗体をコードしたDNAのクローニングまたは好ましくは、モノクローナル抗体をコードしたmRNA(すなわち、cDNA)が必要である。クローニングは、標準的な方法を使って行う(例えば、Sambrook et al.(1989)「分子クローニング:研究室ガイド」、Vol1〜3、Cold Spring Harbor Pressを参照。この文献は、参照により本明細書に組み込まれる)。例えば、cDNAライブラリーは、ポリA+mRNA、好ましくは膜結合mRNA、およびヒト免疫グロブリンポリペプチド遺伝子配列に特異的なプローブを使って選別されたライブラリーの逆転写により構築できる。ヌクレオチドプローブ反応および他のヌクレオチドハイブリダイゼーション反応を、特定条件下相互にハイブリダイズするポリヌクレオチドの特定を可能とする条件で行った。ハイブリダイゼーション条件は、Sambrook、et al.、(Eds.)、分子クローニング:実験マニュアル、Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor、New York(1989)、pp.9.47−9.51、に記載のように計算できる。
好ましい実施形態では、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、目的の免疫グロブリン遺伝子セグメント(例えば、軽鎖可変セグメント)をコードしたcDNA(または完全長cDNAの一部)を増幅する。増幅された配列は、いずれかの適切なベクター、例えば、発現ベクター、ミニ遺伝子ベクター、またはファージディスプレイベクター、に容易に挿入できる。目的の免疫グロブリンポリペプチドの一部の配列を決定できる限り、使用した特定のクローニング方法は、重大ではないことは理解されよう。本明細書で使われる、「単離された」核酸分子または「単離された」核酸の配列は、(1)通常は核酸の天然ソースに付随する少なくとも1つの混入核酸分子が特定され、分離されている、または(2)クローン化、増幅、標識、または他の方法でバックグラウンド核酸と区別され、の目的の核酸配列が決定できる、核酸分子を単離されていると見なすことができる。単離された核酸分子は、天然に認められる形または状態以外のものである。従って、単離された核酸分子は、天然の細胞中に存在する核酸分子とは区別される。しかし、単離された核酸分子には、例えば、核酸分子が天然細胞の染色体位置とは異なる位置にある、抗体をいつも発現する細胞中に含まれる核酸分子が含まれる。
クローニングおよび配列決定に使われるRNAの1つのソースは、遺伝子導入マウスからB細胞を得て、B細胞を不死化細胞に融合したハイブリドーマである。あるいは、RNAは、免疫動物のB細胞(または全脾臓)から単離することができる。ハイブリドーマ以外のソースが使われる場合は、特異的結合特性を有する免疫グロブリンまたは免疫グロブリンポリペプチドをコードした配列を選別することが望ましい。このような選別の1つの方法は、ファージディスプレイ技術を使用することである。ファージディスプレイは、本明細書でさらに記載されており、また、当技術分野ではよく知られている。例えば、Dower et al.、WO91/17271、McCafferty et al.、WO92/01047、およびCaton and Koprowski、(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:6450−54(1990))を参照のこと。これらは、参照により、本明細書に組み込まれる。一実施形態では、免疫遺伝子導入マウス由来のcDNA(例えば、全脾臓cDNA)を単離し、ポリメラーゼ連鎖反応を使って、免疫グロブリンポリペプチドの一部、例えば、CDR領域、をコードしたcDNA配列を増幅し、増幅された配列をファージベクターに挿入する。目的のペプチド、例えば、所望の結合特性を有する可変領域ペプチド、をコードしたcDNAが、標準的ファージディスプレイ技術、例えば、パニング、により特定される。
次に、増幅またはクローン化核酸の配列を決定する。典型的には、免疫グロブリンポリペプチドの全体可変領域をコードした配列が決定さるが、しかし、この方法は、可変領域の一部、例えば、CDRをコードした部分、のみの配列を決定するのに適している場合が多いと思われる。通常は、配列決定された部分は、少なくとも30塩基長で、さらによく行われるものとしては、可変領域の少なくとも約3分の1または少なくとも約半分の長さが、配列決定される。
cDNAライブラリーから単離したクローンで、または、PCRを使う場合には、増幅した配列のサブクローニング後、または増幅セグメントの直接PCRシーケンシングによって、配列決定を行うことができる。配列決定は標準的な方法を使って行われる(例えば、Sambrook et al.(1989)「分子クローニング:研究室ガイド」、Vol1−3、Cold Spring Harbor Press、およびSanger、F.et al.(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463−5467、を参照のこと。これら文献は、参照により本明細書に組み込まれる)。クローン化核酸の配列を、ヒト免疫グロブリン遺伝子およびcDNAの報告された配列と比較することにより、当業者なら、配列決定された領域に応じて、容易に、(i)ハイブリドーマ免疫グロブリンポリペプチド(重鎖のアイソタイプ含む)の生殖系列セグメントの使用および(ii)N領域付加および体細胞変異プロセスから生じた配列を含む、重鎖および軽鎖可変領域の配列、を決定することができる。免疫グロブリン遺伝子配列情報の1つのソースは、国立バイオテクノロジー情報センター、国立医学図書館、国立衛生研究所、ベセズダ、メリーランド州、である。
単離されるとすぐに、DNAは、発現ベクターに挿入され、次に、他の方法では免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルコス細胞、ヒト胎児由来腎臓293細胞(例えば、293E細胞)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはミエローマ細胞、等の宿主細胞に形質移入して、組換え型宿主細胞中にモノクローナル抗体の合成物を得る。抗体の組換え産生は、当技術分野でよく知られている。
発現制御配列は、特定の宿主生物体の機能的に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。原核生物に適した制御配列には、例えば、プロモーター、遷移選択でオペレーター配列、およびリボソーム結合部位が含まれる。真核細胞は、プロモータ、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られている。
別の実施形態では、目的の免疫グロブリンのアミノ酸配列は、直接タンパク質シーケンシングによって決定することができる。適切なコード化ヌクレオチド配列は、ユニバーサルコドン表に従って設計できる。
所望の抗体のアミノ酸配列変異体は、コード化DNAに適切なヌクレオチド改変を導入するか、または、ペプチド合成によって調製可能である。このような変異体には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、および/または残基への挿入、および/または残基の置換、が含まれる。最終構築物が所望の特性を有する限りにおいて、欠失、挿入、および置換のいずれの組み合わせを行っても、最終構築物を得られる。アミノ酸の改変は、また、グリコシル化部位の数または位置を変える、等のように、抗体の翻訳後プロセスも変えることができる。
抗体のアミノ酸配列変異体をコードした核酸分子は、当技術分野で既知種々の方法で調製可能である。これらの方法には、これに限定されないが、天然ソースからの単離(天然アミノ酸配列変異体の場合)またはオリゴヌクレオチド媒介(または部位特異的な)変異生成、PCR変異生成、および抗体の初期調製変異体または非変異体バージョンのカセット変異導入による調製、がある。
また、本発明は、任意で、宿主細胞、ベクターおよび核酸を含む宿主細胞に認識される制御配列に機能的に連結されている、本発明の抗体をコードした単離核酸、および宿主細胞を培養して核酸を発現させ、任意で、宿主細胞培養なたは培地から抗体を回収する、抗体の産生のための組換え技術、を提供する。抗体産生用の種々のシステムおよび方法が、Birch & Racher(Adv.Drug Deliv.Rev.671−685(2006))で概説されている。
抗体の組換え産生のため、その抗体をコードした核酸を単離し、さらなるクローニングのために(DNAの増幅)または発現のために、複製可能ベクターに挿入される。モノクローナル抗体をコードしたDNAは、容易に単離され、従来の方法を使って(例えば、抗体の重鎖と軽鎖をコードした遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使って)配列決定される。多くのベクターは、入手可能である。ベクターの成分には、通常、これに限定されないが、次の内の1つまたは複数が含まれる:シグナル配列、複製起点、1つまたは複数の選択的マーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終止配列。
本明細書のベクター中のDNAのクローニングまたは発現用として適切な宿主細胞は、原核生物、酵母、または高等真核生物細胞である。この目的のために適切な原核生物には、真正細菌、例えば、グラム陰性またはグラム陽性菌、例えば、腸内細菌科、例えば、大腸菌類、例えば、大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア、クレブシエラ、プロテウス属、サルモネラ、例えば、ネズミチフス菌、セラチア、例えば、セラチア菌、および赤痢菌属、ならびに桿菌、例えば、枯草菌、およびバチルスリケニホルミス(例えば、バチルスリケニホルミス41P(1989年4月12日発行のDD266,710で開示))、シュードモナス、例えば、緑膿菌およびストレプトマイセス、が挙げられる。1つの好ましい大腸菌クローニング宿主は、大腸菌294(ATCC31,446)であるが、他の菌株、例えば、大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31,537)、および大腸菌W3110(ATCC27,325)も適合する。これらの例は、限定するというよりは、説明のためのものである。
原核生物に加えて、真核生物微生物、例えば、繊維状菌類または酵母も、抗体をコードしたベクター用の適切なクローニングまたは発現宿主である。出芽酵母、または一般的なパン酵母は、下等真核生物宿主微生物の中で最も普通に使われる。しかし、多くの他の属、種、および株が、一般に入手可能で、本明細書で使用可能で、分裂酵母;例えば、ルイベロミセス・ラクチス、クリヴェロマイセス・フラギリス(ATCC12,424)、クルイベロマイセスブルガリカス(ATCC16,045)、クルベロミセス・ウィケラミイ(ATCC24,178)、クルベロミセスワルチイ(ATCC56,500)、クルイベロマイセスドロソフィラム(ATCC36,906)、クリュイベロミセス・テモトレランス、およびクリュイベロミセス・マルシアヌス、等のクリベロマイセス宿主;ヤロウイア属(EP402,226);ピチア・パストリス(EP183,070);カンジダ;トリコデルマ・リージア(EP244,234);アカパンカビ;シュワニオミセスオキシデンタリス、等のシュワニオミセス属;および、例えば、パンカビ、アオカビ類、トリポクラジウム、等の糸状菌類、ならびに偽巣性コウジ菌およびクロコウジカビ、等のアスペルギルス宿主、が挙げられる。
グリコシル化抗体の発現用の適切な宿主細胞は、多細胞生物から得られる。無脊椎動物細胞の例には、植物および昆虫細胞が含まれる。ヨトウガ(イモムシ)、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、キイロショウジョウバエ(ショウジョウバエ)、およびカイコ、等宿主由来の、多くのバキュロウイルス株および変異体ならびに対応する許容される昆虫宿主細胞が特定されている。トランスフェクション用の種々のウイルス株が公的に入手可能であり、例えば、オートグラファ・カリフォルニカNPVのL−1変異体およびカイコNPVのBm−5株、ならびに本発明の明細書にあるウイルスとして、特にヨトウガ細胞のトランスフェクション用に、使用可能なウイルスが挙げられる。
綿、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ豆、ペチュニア、トマト、タバコ、アオウキクサ属、および他の植物細胞の植物細胞培養物も宿主として使用可能である。
有用な哺乳動物宿主細胞株の例には、CHOK1細胞(ATCCCCL61)、DXB−11、DG−44、およびチャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaubetal.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣細胞;SV40(COS−7、ATCCCRL1651)によって形質転換されたサル腎臓CV1系統;ヒト胚腎臓系統(293または増殖のために懸濁培養液中でサブクローニングされた293細胞、(Graham et al.、J.Gen Virol.36:59、1977);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCCCCL10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、(Biol.Reprod.23:243−251、1980);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCCCRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);水牛ラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(HepG2、HB8065);マウス房腫瘍(MMT060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.、Annals N.YAcad.Sci.383:44−68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝細胞腫系統(HepG2)、が挙げられる。
宿主細胞は、抗体産生のために形質転換されるか、または上述の発現またはクローニングベクターを形質移入され、さらに、形質転換体を選択して、または所望の配列をコードした遺伝子を増幅して、プロモーター誘導のための必要に応じて改質された通常の栄養素培地中で培養される。さらに、選択マーカーによって分離された転写ユニットの多数の複製を有する新規ベクターおよび形質移入された細胞株が、所望の抗原に結合する抗体の発現のために、特に有用で、好ましい。
所望の抗体核酸配列を含む宿主細胞を種々の培地中で培養できる。市販品で入手可能な培地、例えば、ハムF10培地(シグマ)、最小必須培地((MEM)、(シグマ)、RPMI−1640(シグマ)、およびダルベッコ変法イーグル培地((DMEM)、シグマ)は、宿主細胞培養に適している。さらに、Ham et al.、(Meth.Enz.58:44、1979)、Barnes et al.、Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許4,767,704;4,657,866;4,927,762;4,560,655;もしくは5,122,469;WO90103430;WO87/00195;または米国再発行特許30,985に記載のいずれかの培地が宿主細胞用の培地として使用できる。これらの培地のいずれも、必要に応じ、ホルモンおよび/または他の増殖因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子、等)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩、等)、緩衝液(ヘペス、等)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジン、等)、抗生物質(ゲンタマイシン(登録商標)薬剤、等)、微量成分(マイクロモルレンジで最終濃度中に通常存在する無機化合物として定義される)、およびグルコースまたは相当するエネルギーソースで補充してもよい。任意の他に必要な補充剤もまた、当業者には既知の適切な濃度で添加することができる。培養条件、例えば、温度、pH、等、は、発現用に選んだ宿主細胞で前に使用したものであり、当業者には明らかであろう。
組換え技術を使う場合には、抗体は、微生物の培養由来のものを含め、細胞周辺腔中で細胞内産生するか、または培地中へ直接分泌させることができる。抗体が細胞内で産生される場合は、第1ステップとして、粒子状の壊死組織片、宿主細胞または溶解断片を、例えば、遠心分離または限外濾過により除去する。Better et al.(Science 240:1041−43、1988;ICSU Short Reports 10:105(1990);およびProc.Natl.Acad.Sci.USA 90:457−461(1993)には、大腸菌の細胞周辺腔に分泌された抗体を単離する方法が記載されている。[(Carter et al.、Bio/Technology 10:163−167(1992)も参照のこと]。
微生物または哺乳動物細胞から調製された抗体体組成は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー、および親和性クロマトグラフィーを使って精製できるが、親和性クロマトグラフィーが好ましい精製技術である。タンパク質Aの親和性リガンドとしての適合性は、抗体中に存在するいずれかの免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。タンパク質Aは、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖に基づく抗体の精製に使用できる(Lindmark et al.、J.Immunol.Meth.62:1−13、1983)。タンパク質Gは、全てのマウスアイソタイプおよびヒトγ3用に推奨されている(Guss et al.、EMBOJ.5:15671575(1986))。親和性リガンドが結合する担体は、アガロースが最もよく使われるが、他の担体も適用可能である。機械的に安定な担体、例えば、気孔制御ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンは、アガロースを使った場合より速い流量およびより短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合には、Bakerbond ABX(登録商標)樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が精製に有用である。タンパク質精製用の他の技術、例えば、イオン交換カラム分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカクロマトグラフィー、ヘパリンセファロースクロマトグラフィー(登録商標)陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム、等)クロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS−PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿もまた、回収する抗体に応じて、適用可能である。
本発明の抗体
本発明は、インスリン、インスリン受容体および/またはインスリン/インスリン受容体複合体に結合する標的特異的抗体包含し、好ましくは、インスリン受容体のシグナル伝達および/またはグルコース値とグルコース取り込みに与えるその効果を変える(例えば、増加または減少させる)。代表的実施形態では、本発明の標的特異的抗体は、ヒトカッパ(κ)またはヒトラムダ(λ)軽鎖もしくはそれら由来のアミノ酸配列、またはヒト重鎖もしくはそれ由来の配列、または単鎖、二量体、四量体もしくは他の形の重鎖と軽鎖の両方一緒のものを含むことができる。一部の実施形態では、標的特異的免疫グロブリン重鎖と軽鎖は、異なるアミノ酸分子である。他の実施形態では、同じアミノ酸分子が、標的特異的抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。
一部の実施形態では、抗標的抗体のアミノ酸配列は、配列番号1〜150の抗体またはその変異体の成熟(すなわち、シグナル配列の欠けている)軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列の1つまたは複数のCDRを含む。一部の実施形態では、VLは、前述の抗体のいずれかの1つの軽鎖のCDR1の開始からCDR3の末端までのアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、標的特異的抗体は、軽鎖CDR1、CDR2またはCDR3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)を含み、それぞれは、配列番号1〜150に記載のVL領域のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する抗体のCDR1、CDR2およびCDR3領域から独立に選択される。一態様では、軽鎖CDR1は、残基24〜36内にあり、CDR2は、残基50〜56内にあり、CDR3は、残基89〜101内にある(Chothiaナンバリングによる)。標的特異的抗体のポリペプチドは、配列番号1〜150からなる群より選択されるVL領域のアミノ酸配列を有する抗体のCDR1、CDR2およびCDR3領域を含むことができる。
一部の実施形態では、標的特異的抗体は、配列番号151〜303に示される抗体またはその変異体の成熟(すなわち、シグナル配列を欠く)重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列の1つまたは複数のCDRを含む。一部の実施形態では、VHは、前述の抗体の重鎖のいずれかの1つのCDR1の開始からCDR3の末端までのアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、標的特異的抗体は、重鎖CDR1、CDR2またはCDR3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)を含み、それぞれは、配列番号151〜303に記載のVH領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する抗体のCDR1、CDR2およびCDR3領域から独立に選択される。標的特異的抗体は、重鎖CDR1、CDR2またはCDR3を含み、それぞれは、配列番号151〜303に記載のVH領域のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を有する抗体のCDR1、CDR2およびCDR3領域から独立に選択されることがさらに意図される。一態様では、重鎖CDRは、Chothiaナンバリングに従い位置づけされ、CDR1は、残基26〜35内であり、CDR2は、残基50〜58内であり、CDR3は、残基95〜111または97〜118内である。標的特異的抗体のポリペプチドは、配列番号151〜303からなる群より選択されるVH領域のアミノ酸配列を有する抗体のCDR1、CDR2およびCDR3領域を含むことができる。
表1と2および配列番号1〜303のCDRは、IMGT system、LeFranc et al IMGT、the INTERNATIONAL IMMUNOGENETICS INFORMATION SYSTEM(登録商標)、Nucl.Ac.Res.33 D593−597(2005)に従って決定された。
別の実施形態では、抗体は、前述の成熟軽鎖可変領域および成熟重鎖可変領域を表3に示すように対で含む。別の実施形態では、本発明は、モノクローナル抗体の精製調製物を意図し、配列番号1〜303に記載のいずれかの抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域を、表3に示すように対で含む。
代表的実施形態では、本発明は、以下を意図する:
1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの配列番号151〜303および配列番号1〜150のいずれかをそれぞれ保持し、任意でこれらのCDRのいずれかに1つまたは2つの変異、例えば、保存的または非保存的置換、を、任意で表3に示す対を形成して含む、モノクローナル抗体;
全てのHCDR1、HCDR2、HCDR3、または配列番号151〜303のいずれかの1つの重鎖可変領域を保持し、任意で、このようなCDRのいずれかの1つまたは2つの変異をさらに含み、また、任意で、いずれかの適切な重鎖定常領域、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、もしくはIgE、そのヒト配列、またはそれらの複合型またはそのヒトコンセンサスをさらに含むモノクローナル抗体;
全てのLCDR1、LCDR2、LCDR3、または配列番号1〜150のいずれかの1つの軽鎖可変領域を保持し、任意で、このようなCDRのいずれかの1つまたは2つの変異をさらに含み、また、任意で、いずれかの適切な軽鎖定常領域、例えば、カッパまたはラムダ軽鎖定常領域、そのヒト配列、またはそれらの複合型またはそのヒトコンセンサスをさらに含むモノクローナル抗体;
例えば、X線結晶解析または重水素交換質量分析、アラニンスキャニングおよびペプチド断片ELISA、等の他の生物物理学的または生化学的技術により測定して、配列番号1〜303に記載の可変領域を含む抗体と同じ直鎖またはINSRの3次元エピトープに結合するモノクローナル抗体;
ヒトINSRへの結合に対し、約75%超、約80%超、または約81%超、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%または95%、まで配列番号1〜303に記載の可変領域を含む抗体と競合するモノクローナル抗体。
一部の実施形態では、抗体は、軽鎖および重鎖の3つの軽鎖CDR全て、3つの重鎖CDR全て、または6つのCDR全てを、表3に示す対を形成して含む。一部の代表的実施形態では、ある抗体由来の2つの軽鎖CDRを、異なる抗体由来の第3の軽鎖CDRと組み合わせることができる。あるいは、1つの抗体由来のLCDR1を、異なる抗体由来のLCDR2およびさらに別の抗体由来のLCDR3と組み合わせることができる(CDRが高い相同性を有する場合は特に)。同様に、ある抗体由来の2つの重鎖CDRを、異なる抗体由来の第3の重鎖CDRと組み合わせることができる;または、1つの抗体由来のHCDR1を、異なる抗体由来のHCDR2およびさらに別の抗体由来のHCDR3と組み合わせることができる(CDRが高い相同性を有する場合は特に)。
コンセンサスCDRも使用できる。本明細書からのいずれかの1つのコンセンサスCDRを、任意の抗体の同じ鎖(例えば、重鎖または軽鎖)由来の2つの他のCDRと組み合わせて、例えば、適切な重鎖または軽鎖可変領域を形成することができる。
一部の実施形態では、配列番号148〜284に記載の重鎖可変領域に少なくとも約65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上および/または配列番号1〜150に記載の軽鎖可変領域に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチド少なくとも約65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つの、または全てのCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2またはCDRL3をさらに含む抗体が提供される。一部の実施形態では、軽鎖可変領域に対し、一定割合の同一性を有するアミノ酸配列は、1つ、2つ、または3つの軽鎖CDRを含んでもよい。他の実施形態では、重鎖可変領域に対し、一定割合の同一性を有するアミノ酸配列は、1つ、2つ、または3つの重鎖CDRを含んでもよい。
本発明の抗体は、抗体のCDR領域中に1つ、または2つ以上のアミノ酸置換、例えば、非保存的または保存的置換を持つことができることが意図されている。
関連する実施形態では、フレームワークの残基は、変えられる。重鎖フレームワーク領域は、H−FR1、H−FR2、H−FR3およびH−FR4と命名された領域内にあり、この領域は、重鎖CDR残基を取り囲んでいる。また、変更可能な軽鎖フレームワーク領域の残基は、L−FR1、L−FR2、L−FR3およびL−FR4と命名された領域内にあり、この領域は、軽鎖CDR残基を取り囲んでいる。フレームワーク領域内のアミノ酸は、例えば、ヒトフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークで特定されたいずれかの適切なアミノ酸で置換可能である。
本発明では、配列番号151〜303のいずれかの1つのアミノ酸配列に融合した配列番号1〜150のいずれかのアミノ酸配列を、任意で表3に記載した重鎖/軽鎖可変領域の対として含む、または配列番号1〜150および配列番号151〜303の少なくとも一部を含むそれらの断片を任意で表3に示す対で含む、精製されたポリペプチドで、結合インスリン受容体、インスリンまたはインスリン/インスリン受容体複合体に結合するポリペプチドを提供することがさらに意図されている。
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの本明細書記載の軽鎖可変領域のCDRを含み、その軽鎖可変領域が、配列番号1〜150に記載のLCDR配列に対し少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む精製ポリペプチドを提供する。一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1〜150に記載のLCDRのいずれかに対して、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一でありうる。さらなる態様では、本発明は、少なくとも1つの本明細書記載の重鎖可変領域のCDRを含み、その重鎖可変領域が、配列番号151〜303に記載のHCDR配列に対し少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む精製ポリペプチドを提供する。一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号151〜303に記載のHCDRのいずれかに対して、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一でありうる。
抗体重鎖および軽鎖のCDRは、抗体結合親和性を改善することができ、例えば、親和性成熟により得られる変異体アミノ酸配列を含むことが、さらに意図されている。一態様では、本発明の抗体は、配列番号151〜303に記載の親抗体配列のHCDR2に対して約35%同一性を有する重鎖HCDR2配列を含むことが意図されている。関連する態様では、本発明の抗体は、配列番号151〜303に記載の親抗体配列のHCDR3に対して約50%同一性を有する重鎖HCDR3配列を含むことが意図されている。
一実施形態では、本発明は、配列番号1〜150および151〜303のいずれかの1つに記載の可変領域アミノ酸配列を有する機能的断片を含む抗原結合化合物を提供する。関連する実施形態では、上述の抗原結合化合物は、完全集合四量体抗体、ポリクローナル抗体、ヒトENGINEERED(登録商標)抗体を含むモノクローナル抗体;ヒト化抗体;ヒト抗体;キメラ抗体;多特異性抗体、抗体断片、Fab、F(ab’)2;Fv;scFvまたは単鎖抗体断片;ダイアボディ;トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、直鎖抗体;キレート化組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、細胞内抗体、ナノボディ、小モジュール免疫薬剤(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ科化抗体、VHH含有抗体、または1つまたは複数の本発明のCDR配列を含み、所望の生物活性を示すいずれかの抗体の変異体または誘導体からなる群より選択される。本発明の抗原結合化合物は、表面プラズモン共鳴法で測定して、10−5、10−6、10−7、10−8、10−9、10−10、10−11Mまたはそれ以下の結合親和性を有することが好ましい。
一態様では、本発明の抗体は、アミノ酸配列の配列番号151〜303および配列番号1〜150に記載の、それぞれ重鎖可変領域または軽鎖可変領域を、表3の対を形成して、含む。抗体は、上記アミノ酸配列に記載の抗体の全てまたは一部を含むことができることが意図されている。一実施形態では、抗体は、配列番号151〜303の重鎖のCDR1、CDR2、またはCDR3の少なくとも1つ、または配列番号1〜150の軽鎖のCDR1、CDR2またはCDR3の少なくとも1つを、表3の対を形成して、含む。
一実施形態では、重鎖は、重鎖CDR3配列として特定されるアミノ酸配列を含む。このような「重鎖CDR3配列」(HCDR3)は、表2および配列番号151〜303に記載の重鎖CDR3配列として特定されるアミノ酸配列を含む。あるいは、HCDR3配列は、表2に特定のいずれかのHCDR3アミノ酸配列に比較して、1つまたは複数のアミノ酸改変、すなわち、置換、挿入または欠失、を含むアミノ酸配列を含む。好ましい置換には、表2の別のHCDR3内の対応する位置にあるアミノ酸への置換が含まれる。あるいは、HCDR3配列は、本明細書記載のHCDR3のコンセンサスアミノ酸配列を含むこともできる。
あるいは、上述の本発明のHCDR3配列を含む重鎖は、配列番号151〜303および表2でHCDR2として特定されるいずれかのアミノ酸配列を含む本発明の「重鎖CDR2配列」(HCDR2)、配列番号151〜303および表2で特定されるいずれかのHCDR2に比較して1つまたは複数のアミノ酸改変を含み、好ましくは、表2の別のHCDR2内の対応する位置にあるアミノ酸への置換を含むアミノ酸配列、または本明細書記載のHCDR2のコンセンサス配列、をさらに含むことができる。
上述の本発明の重鎖CDR3配列を含む重鎖は、また、(a)上述の本発明の重鎖CDR1配列および(b)上述の本発明の重鎖CDR2配列、の両方を含むこともできる。
本発明の一態様では、下記の本発明のいずれかの1つ、2つ、および/または3つの重鎖CDR配列を含む重鎖を含む標的抗原に結合する抗体が提供される。
上述のいずれかの重鎖CDR配列は、また、CDRのどちらかの末端に付加したアミノ酸を含むこともできる。アミノ酸類似体を含む変異体または誘導体の親和性成熟または調製を含む、本発明の抗体および抗原結合化合物の変異体および誘導体の調製は、本明細書でさらに詳細に記載される。代表的変異体には、アミノ酸配列内の対応するアミノ酸の保存的または非保存的置換またはヒト抗体配列の対応するアミノ酸によるアミノ酸の置換が含まれる。
いずれか1つの上述の重鎖を含む抗体は、軽鎖、好ましくは標的抗原に結合する軽鎖、最も好ましくは下記の本発明の軽鎖CDR配列を含む軽鎖をさらに含むことができる。
本発明の別の態様では、下記の本発明のいずれかの1つ、2つ、および/または3つの軽鎖CDR配列を含む軽鎖を含む標的抗原に結合する抗体を提供する。
好ましくは、軽鎖は、軽鎖CDR3配列として特定されたアミノ酸配列を含む。このような「軽鎖CDR3配列」(LCDR3)は、表1および配列番号1〜150内の軽鎖CDR3配列として特定されるアミノ酸配列を含む。あるいは、軽鎖CDR3配列は、表1に特定のいずれかの軽鎖CDR3アミノ酸配列に比較して、1つまたは複数のアミノ酸改変、すなわち、置換、挿入または欠失、を含むアミノ酸配列を含む。好ましい置換には、表1の別の軽鎖CDR3内の対応する位置にあるアミノ酸への置換が含まれる。あるいは、軽鎖CDR3配列は、表1に示す軽鎖CDR3のコンセンサスアミノ酸配列を含むこともできる。
上述の本発明の軽鎖CDR3配列を含む軽鎖は、配列番号1〜150または表1で軽鎖CDR1として特定されるいずれかのアミノ酸配列を含む本発明の「軽鎖CDR1配列」、配列番号1〜150または表1で特定されるいずれかの軽鎖CDR1に比較して1つまたは複数のアミノ酸改変を含み、好ましくは、表1の別の軽鎖CDR1内の対応する位置にあるアミノ酸への置換を含むアミノ酸配列、または本明細書記載の軽鎖CDR1のコンセンサス配列、をさらに含むことができる。
あるいは、上述の本発明の軽鎖CDR3配列を含む軽鎖は、配列番号1〜150または表1で軽鎖CDR2として特定されるいずれかのアミノ酸配列を含む本発明の「軽鎖CDR2配列」、表1で特定されるいずれかの軽鎖CDR2に比較して1つまたは複数のアミノ酸改変を含み、好ましくは、配列番号1〜150または表1の別の軽鎖CDR2内の対応する位置にあるアミノ酸への置換を含むアミノ酸配列、または表1に示す軽鎖CDR2のコンセンサス配列、をさらに含むことができる。
関連する態様では、本発明では、少なくとも1つの配列番号151〜303のHCDRまたは配列番号1〜150のLCDRを含み、重鎖可変領域のフレームワーク領域および軽鎖可変領域のフレームワーク領域が、ヒト抗体由来のフレームワーク領域を含む精製ポリペプチドが意図されている。別の実施形態では、重鎖可変領域のフレームワーク領域および軽鎖可変領域のフレームワーク領域が、アミノ酸置換によって、ヒト抗体配列に対し、より高い相同性となるように化学的に改変される。例えば、各重鎖フレームワーク領域(H−FR1〜4)内で、少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、または少なくとも6つのマウス重鎖可変領域のネイティブフレームワーク領域残基が、アミノ酸置換により改変され、軽鎖フレームワーク領域(L−FR1〜4)内で、少なくとも1つの、少なくとも2つの、少なくとも3つの、少なくとも4つの、少なくとも5つの、または少なくとも6つのマウス軽鎖可変領域のネイティブフレームワーク領域残基が、アミノ酸置換により改変されることが意図されている。
上述の本発明の軽鎖CDR3配列を含む軽鎖は、また、(a)上述の本発明の軽鎖CDR1配列および(b)上述の本発明の軽鎖CDR2配列を含むこともできる。
いずれか1つの上述の軽鎖可変領域を含む抗体は、重鎖可変領域を、任意で表3の対を形成して、好ましくは標的抗原に結合する重鎖可変領域を、最も好ましくは上述の本発明の重鎖CDR配列を含む重鎖可変領域をさらに含むことができる。
一態様では、抗体は、インスリン受容体またはインスリンおよびインスリン受容体を含む複合体と10−5M以下の平衡解離定数KDで結合し、インスリンとインスリン受容体の間の結合親和性を約5倍〜200倍まで強化することができる。一実施形態では、抗体は、例えば、インスリンとインスリン受容体の間の結合親和性を強化する正のモジュレーター抗体である。一部の実施形態では、正のモジュレーター抗体には、これに限定されないが、Ab006、Ab030、Ab004、Ab013、Ab009、Ab007、Ab011、Ab001、Ab012、Ab010、Ab003、Ab008、Ab002、Ab005、Ab076、Ab077、Ab079、Ab080、Ab083、Ab059、Ab078、Ab085または表1および2に記載の、もしくは配列番号76、80、101、128、132および配列番号291、196、239、267、271に記載の抗体可変領域中のいずれかの1つの上記抗体に対応する1つまたは複数のCDRを含むいずれかのポリペプチドが挙げられる。
さらなる実施形態では、正のモジュレーター抗体は、インスリン受容体、インスリン/インスリン受容体複合体に結合するか、またはインスリン受容体およびインスリン/インスリン受容体複合体の両方に結合する。関連する実施形態では、インスリン受容体またはインスリン/インスリン受容体複合体、または両方に結合する正のモジュレーター抗体には、これに限定されないが、Ab006、Ab030、Ab004、Ab013、Ab009、Ab007、Ab011、Ab001、Ab012、Ab010、Ab003、Ab008、Ab002、Ab005、Ab076、Ab077、Ab079、Ab080、Ab083または表1および2に記載の、もしくは配列番号76、80、101および配列番号291、196、239に記載の抗体可変領域中のいずれかの1つの上記抗体に対応する1つまたは複数のCDRを含むいずれかのポリペプチドが挙げられる。
さらなる実施形態では、正のモジュレーター抗体は、インスリン/インスリン受容体複合体に結合するが、非複合化インスリン受容体に対しては、検出可能なほどは結合しない。関連する実施形態では、インスリン/インスリン受容体複合体に結合する正のモジュレーター抗体には、これに限定されないが、Ab059、Ab078、Ab085または表1および2に記載の、もしくは配列番号128、132および配列番号267と271に記載の抗体可変領域中のいずれかの1つの上記抗体に対応する1つまたは複数のCDRを含むいずれかのポリペプチドが挙げられる。
関連する態様では、抗体は、アゴニスト抗体である。一実施形態では、抗体は、インスリン受容体と、10−5、10−6、10−7、10−8、10−910−10、10−11Mまたはそれ以下の親和性で結合し、任意で、pAKTアッセイで測定した場合にインスリンの最大アゴニスト活性の20%〜100%の最大アゴニスト活性を示すアゴニスト抗体である。さらなる実施形態では、抗体は、インスリン受容体と、10−5、10−6、10−7、10−8、10−910−10、10−11Mまたはそれ以下の親和性で結合し、(a)pAKTアッセイで測定した場合にインスリンの最大アゴニスト活性の20%〜80%の最大アゴニスト活性を示し、(b)存在する場合は、インスリンのINSRに対するEC50を2倍超までは変えず、かつ(c)存在する場合は、インスリンのINSRに対するKDを2倍超までは変えないアロステリックアゴニスト抗体である。
特定の実施形態では、アゴニスト抗体には、これに限定されないが、Ab021、Ab029、Ab022、Ab017、Ab023、Ab024、Ab025、Ab026、Ab031、Ab035、Ab027、Ab036、Ab037、Ab028、Ab038、Ab039、Ab040、Ab041、Ab042、Ab032、Ab043、Ab044、Ab045、Ab046、Ab047、Ab018、Ab033、Ab048、Ab014、Ab015、Ab049、Ab034、Ab051、Ab053、Ab054、Ab056、Ab058、Ab062、Ab064、Ab066、Ab067、Ab068、Ab086、Ab069、Ab071、Ab073、Ab075、Ab082、Ab084または表1および2に記載の、もしくは配列番号7、113、114、124、126、130ならびに配列番号164、252、253、263、265および269に記載の抗体可変領域中のいずれかの1つの上記抗体に対応する1つまたは複数のCDRを含むいずれかのポリペプチドが挙げられる。
さらなる態様では、抗体は、インスリン受容体またはインスリンおよびインスリン受容体を含む複合体と10−5M以下の平衡解離定数KDで結合し、インスリンとインスリン受容体の間の結合親和性を少なくとも約3倍、任意で1000倍、弱めることができる。一実施形態では、抗体は、インスリンとインスリン受容体の間の結合親和性を弱める負のモジュレーター抗体である。関連する実施形態では、負のモジュレーター抗体には、これに限定されないが、次の抗体が含まれる:Ab087、Ab019、Ab088、Ab089、Ab020、Ab050、Ab052、Ab055、Ab057、Ab061、Ab063、Ab065、Ab070、Ab072、Ab074およびAb081。
さらなる態様では、抗体は、インスリン受容体またはインスリン/インスリン受容体複合体との結合に関し、いずれかの本明細書記載の抗体と競合する抗体である。特定の実施形態では、抗体は、部分的な競合を示す。関連する実施形態では、部分的競合は、約30%〜70%、約30%〜80%、または約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%の競合である。一部の実施形態では、抗体は、完全な競合を示す。一実施形態では、完全な競合は、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%を超える競合である。抗体競合を測定する代表的アッセイには、これに限定されないが、本明細書および当技術分野で記載されている受容体負荷アッセイおよびエピトープビニングアッセイがある。
一実施形態では、抗体は、Ab079、Ab076、Ab083、Ab080、Ab062、Ab020、Ab019、Ab088、およびAb089からなる群より選択されるいずれか1つ、2つ、3つまたは全ての抗体と70%以上の競合を示し、任意で、Ab086、Ab064、Ab001、およびAb018からなる群より選択されるいずれか1つ、2つ、3つまたは全ての抗体と30%以上の競合を示す。さらなる実施形態では、抗体は、任意で、1つまたは複数のAb062およびAb086と競合しない。特定の実施形態では、抗体は、ヒトおよびマウス両方のインスリン受容体または複合体と結合する。
さらなる実施形態では、本明細書記載の抗体と競合する抗体は、Ab040、Ab062、Ab030、Ab001、およびAb018からなる群より選択されるいずれか1つ、2つ、3つまたは全ての抗体と70%以上の競合を示し、任意で、AB037、Ab078、AB083、AB080、およびAB085からなる群より選択されるいずれか1つ、2つ、3つまたは全ての抗体と30%以上の競合を示す。関連する実施形態では、抗体は、Ab053、Ab064、83−7、Ab019、Ab088、およびAb089と競合しない。任意で、抗体は、ヒトおよびマウスインスリン受容体または複合体と結合する。
さらなる実施形態では、本明細書記載の抗体と競合する抗体は、Ab030、Ab037、Ab053、Ab001、Ab018、Ab064、Ab040からなる群より選択されるいずれか1つ、2つ、3つまたは全ての抗体と70%以上の競合を示し、任意で、Ab085およびAb086からなる群より選択されるいずれか1つ、2つ、3つまたは全ての抗体と30%以上の競合を示す。任意で、抗体は、Ab079、Ab076およびAb088と競合を示さず、また、任意で、抗体は、ヒトおよびマウスの両方のインスリン受容体または複合体と結合する。
さらなる実施形態では、本明細書記載の抗体と競合する抗体は、Ab064、Ab062、Ab085、およびAb078からなる群より選択されるいずれか1つ、2つ、3つまたは全ての抗体と70%以上の競合を示し、任意で、Ab077、Ab001、Ab018、Ab030、Ab037、Ab079、Ab076、Ab083、Ab019、Ab088、Ab089、およびAb040と競合を示さない。任意で、抗体は、ヒトおよびマウスのインスリン受容体または複合体と結合する。
さらなる実施形態では、本明細書記載の抗体と競合する抗体は、Ab079、Ab076、Ab083、Ab080、Ab062、Ab020、Ab019、Ab088、Ab089からなる群より選択されるいずれか1つ、2つ、3つまたは全ての抗体と70%以上の競合を示す。任意で、抗体は、Ab062、Ab086、Ab001、Ab018、Ab030、Ab037、Ab064と競合を示さない;また、任意で、抗体は、ヒトとのみ反応性があり、マウスインスリン受容体または複合体に結合しない。
さらなる実施形態では、抗体は、任意の抗体と30%以上の競合を示す。任意で、抗体は、Ab061と30%以上の競合を示し、任意で、Ab019およびAb074と30%未満の競合を有し、任意で、Ab088と競合しない。任意で、抗体は、ヒトおよびマウスのインスリンの両方の受容体または複合体と結合する。
またさらなる別の実施形態では、抗体は、配列番号281、278、277、209、275、223、284、276、および236からなる群より選択される重鎖可変領域を含み、また、配列番号141、138、137、35、135、57、144、136、および98からなる群より選択される軽鎖可変領域を含む。
またさらなる別の実施形態では、抗体は、配列番号195、220、303、197、208、243、245および251からなる群より選択される重鎖可変領域を含み、また、配列番号77、50、90、84、34、104、106および112からなる群より選択される軽鎖可変領域を含む。
またさらなる別の実施形態では、抗体は、配列番号241、279、258、155、および228からなる群より選択される重鎖可変領域を含み、また、配列番号103、139、119、8、および89からなる群より選択される軽鎖可変領域を含む。
本発明の抗体核酸
また、本発明は、上述の標的特異的抗体をコードした核酸分子を包含する。一部の実施形態では、異なる核酸分子が、標的特異的抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードする。他の実施形態では、同じ核酸分子が、標的特異的抗体の重鎖および軽鎖可変領域をコードする。一実施形態では、核酸は、本発明の標的特異的抗体をコードする。
一態様では、本発明の核酸分子は、配列番号1〜150のいずれかの1つまたはその一部に示されるVLアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。関連する態様では、VLアミノ酸配列は、コンセンサス配列である。一部の実施形態では、核酸は、前記抗体の軽鎖CDRのアミノ酸配列をコードする。一部の実施形態では、前記一部は、CDR1〜CDR3を含む近接する部分である。一実施形態では、前記一部は、少なくとも1つの、2つまたは3つの軽鎖CDR1、CDR2、またはCDR3領域を含む。
一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号1〜150に示されるVLアミノ酸配列に対し、少なくとも60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一であるVLアミノ酸配列をコードする。本発明の核酸分子は、高ストリンジェント条件下でハイブリダイズする核酸を含む。
本発明の核酸分子は、配列番号151〜303のいずれかの1つ、またはその一部のVHアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むことが意図されている。関連する態様では、VHアミノ酸配列は、コンセンサス配列である。一部の実施形態では、核酸は、前記抗体の重鎖CDRのアミノ酸配列をコードする。一部の実施形態では、前記一部は、重鎖CDR1〜CDR3を含む隣接する部分である。一実施形態では、前記一部は、少なくとも1つ、2つ、または3つの重鎖CDR1、CDR2、またはCDR3領域を含む。
一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号151〜303に示されるVHアミノ酸配列に対し、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるVHアミノ酸配列をコードする。本発明の核酸分子は、高ストリンジェント条件下でハイブリダイズする核酸を含む。
本発明の核酸は、配列番号1〜303に示される重鎖または軽鎖可変領域を含み、任意で、表3に示す対を形成した、完全長抗体の軽鎖または重鎖をコードすることが意図されている。この場合、完全長軽鎖または完全長重鎖は、軽鎖定常領域または重鎖定常領域をそれぞれ含む。
本発明では、上述の本発明の抗原結合領域を含む変異体およびポリペプチドをコードした核酸がさらに意図されている。
本発明の抗体をコードしたポリヌクレオチドを調製および単離する方法は、当業者にはよく知られている。本発明によるポリヌクレオチドは、確立され組換DNA技術により、いずれかの種々の他のヌクレオチド配列に結合できる(Sambrook et al.、(2dEd.;1989)「分子クローニング:実験マニュアル」、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY、を参照)。ポリペプチドに結合するための有用なヌクレオチド配列には、各種ベクター、例えば、プラスミド、コスミド、ラムダファージ誘導体、ファージミド、等があり、当技術分野でよく知られている。従って、本発明は、また、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターおよびポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。一般的に、ベクターは、宿主細胞のために、少なくとも1つの生物体中で機能できる複製起点、簡便な制限エンドヌクレアーゼ部位、および選択可能マーカーを含む。本発明によると、ベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、シーケンシングベクター、およびレトロウイルスベクターが含まれる。本発明によると、宿主細胞は、原核生物または真核細胞でもよく、また、単細胞生物体でも、多細胞生物体の一部でもよい。多数の適切なベクターおよびプロモーターが当業者には既知であり、本発明の組換え型構築物生成の目的には、市販品として入手可能である。
種々の発現ベクター/宿主系が、コード配列の組み込み、および発現に利用可能である。これらには、これに限定されないが、組換え型バクテリオファージ、プラスミド、ファージミド、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌等の微生物;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)を形質移入された、または細菌発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド)で形質転換された植物細胞系;また、動物細胞系も、含まれる。組換え型タンパク質産生に有用な哺乳動物細胞には、これに限定されないが、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、コス細胞(COS−7、等)、WI38、BHK、HepG2、3T3、RIN、MDCK、A549、PC12、K562およびHEK293細胞がある。
ポリヌクレオチド変異体および抗体断片は、生物学的に活性な断片、変異体、または天然抗体と同じまたは類似の生物活性を有する天然抗体分子の変異体をコードする技術を持った作業者により容易に生成できる。これは、抗体重鎖および軽鎖領域、等をコードしたDNAのPCR技術、切断および消化により行うことができる。例えば、当技術分野でよく知られたPCRおよび他の技術を使った点変異生成は、アミノ酸残基が、抗体活性に関連する特定の活性に重要である特殊性を特定するために採用可能である。従って、当業者なら、DNA鎖中に1つの塩基改変を作り、改変コドンおよびミスセンス変異を生成できるであろう。
抗体断片
抗体断片は、インタクト完全長抗体の一部、好ましくは、インタクト抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片;二重特異性抗体;直鎖抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);多特異性抗体断片、例えば、二重特異性、三重特異性、等の抗体(例えば、二重特異性抗体、トリアボディ、テトラボディ);ミニボディ;キレート化組換え抗体;トリボディまたはバイボディ;細胞内抗体;ナノボディ;小モジュール免疫薬剤(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質;ラクダ科化抗体;VHH含有抗体;および抗体断片から形成される他のポリペプチドが含まれる。例えば、Holliger & Hudson(Nat.Biotech.23(9)1126−36(2005))を参照のこと。
抗体のパパイン消化により、2つの同一の「Fab」断片と呼ばれる一価の抗原結合断片が産生される。これは、単一の抗原結合部位、および残りの「Fc」断片をそれぞれ有するVL、VH、CLおよびCHドメインからなり、その名称は、容易に結晶化するその能力を反映している。ペプシン処理により、F(ab’)2断片の二価の断片が得られ、ヒンジ部でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片からなり、これらのFab断片にある2つの「単鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、単一ポリペプチド鎖中に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、VHおよびVLドメインの間に、抗原結合のために望ましい構造をFvが形成するのを可能にするポリペプチドリンカーをさらに含み、VLおよびVH領域が対をなして、合成リンカーを介して一価分子を形成し、それらに単一タンパク質鎖を作らせる単鎖抗体(scFv)を生ずる(Bird et al.、Science 242:423−426、1988、およびHuston et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879−5883、1988)。scFvの概説は、Pluckthun、「モノクローナル抗体の薬理学」、vol.l13、Rosenburg and Mooreeds.、Springer−Verlag、New York、pp.269−315(1994)、を参照のこと。Fd断片は、VHおよびCH1ドメインからなる。
別の抗体断片には、VHドメインからなるドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al.、Nature 341:544−546、1989)が含まれる。二重特異性抗体は、内部のVHおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現しているが、しかし、同じ鎖上の2つのドメインの間の対形成を許容するには短すぎるリンカーを使っているため、ドメインに別の鎖の相補的なドメインと対を形成させ、2つの抗原結合部位を作っている二価の抗体である(例えば、欧州特許EP404,097;WO93/11161;Holliger et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444−6448、1993、およびPoljak et al.、構造2:1121−1123、1994)を参照のこと。二重特異性抗体は、二重特異性、または単一特異性でありうる。
軽鎖を欠く機能的重鎖抗体は、テンジクザメ(Greenberg et al.、Nature 374:168−73、1995)、オオセ(Nuttall et al.、Mol Immunol.38:313−26、2001)およびラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカおよびラマ、等のラクダ科(Hamers−Casterman et al.、Nature 363:446−8、1993;Nguyen et al.、J.Mol.Biol.275:413、1998)、中に天然に存在する。これらの動物では、抗原結合部位は、単一ドメイン、VHHドメイン、に縮小されている。これらの抗体は、重鎖可変領域のみを使って抗原結合領域を形成する、すなわち、これらの機能的抗体は、構造H2L2を有する重鎖のみのホモダイマーである(「重鎖鎖抗体」または「HCAb」と呼ばれる)。ラクダVHHは、ヒンジ、CH2、およびCH3ドメインを含み、CH1ドメインを欠くIgG2およびIgG3定常領域と組み換えると報告されている(Hamers−Casterman et al.、同上)。例えば、ラマIgG1は、その中のVHが、ヒンジ、CH1、CH2およびCH3ドメインを含む定常領域と組み換える従来の(H2L2)抗体アイソタイプであるが、一方、ラマIgG2およびIgG3は重鎖のみのアイソタイプで、CH1ドメインを欠き、軽鎖を含まない。ラクダVHHドメインは、抗原に高親和性で結合し(Desmyter et al.、J.Biol.Chem.276:26285−90、2001)、溶液中で高安定性を有することが明らかになっている(Ewertet al.、Biochemistry 41:3628−36、2002)。古典的VHのみの断片は、可溶性のある形態で産生するのは困難であるが、フレームワーク残基を、よりVHH様に改変すると、溶解度の改善および特異的結合が得られる(例えば、Reichman、et al.、Immunol Methods 1999、231:25−38.)。ラクダ重鎖を有する抗体を生成する方法は、例えば、米国特許公開公報第20050136049号および20050037421号、に記載されている。
抗体重鎖の可変ドメインは、15kDaの分子量を有し、ナノボディ(Cortez−Retamozo et al.、Cancer Research 64:2853−57、2004)と呼ばれている。ナノボディライブラリーは、Conrath et al.、(Antimicrob Agents Chemother 45:2807−12、2001)に記載のように免疫ヒトコブラクダから、またはRevets et al、Expert Opin.Biol.Ther.5(1):111−24(2005)、に記載のように組換え方法を使って、産生することができる。
二重特異性Fab−scFv(「バイボディ」)および三重特異性Fab−(scFv)(2)(「トリボディ」)の産生は、Schoonjans et al.(J Immunol.165:7050−57、2000)およびWillems et al.(J Chromatogr BAnalyt Technol Biomed Life Sci.786:161−76、2003)、に記載されている。バイボディまたはトリボディに関しては、1つまたは両方のVL−CL(L)およびVH−CH1(Fd)鎖にscFv分子を融合する;例えば、トリボディを産生するには、2つのscFvをFabのC末端に融合し、一方、バイボディの場合は、1つのscFvをFabのC末端に融合する。
ペプチドリンカー(ヒンジレス)またはIgGヒンジを介した、scFvのCH3への融合を含む「ミニボディ」は、Olafsen、et al.、Protein Eng Des Sel.2004Apr;17(4):315−23、に記載されている。
細胞内抗体は、細胞内発現を示し、細胞内のタンパク質機能を操作できる単鎖抗体である(Biocca、et al.、EMBOJ.9:101-108、1990;Colby et al.、Proc Natl Acad Sci USA.101:17616−21、2004)。抗体構築物を細胞内の領域に保持する細胞シグナル配列を含む細胞内抗体は、Mhashilkar et al(EMBO J 14:1542−51、1995)およびWheeler et al.(FASEB J.17:1733−5.2003)、に記載のように産生可能である。細胞透過抗体は、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)が単鎖可変断片(scFv)抗体と融合した細胞透過性抗体である。Heng et al.、(Med Hypotheses.64:1105−8、2005)。
抗原に特異的なSMIPまたは結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である抗体が、さらに意図されている。これらの構築物は、抗体エフェクター機能実行に必要な免疫グロブリンドメインに融合した抗原結合ドメインを含む単鎖ポリペプチドである。例えば、WO03/041600、米国公開特許公報第20030133939号および同第20030118592号、を参照のこと。
1つまたは複数のCDRを、共有結合か、または非共有結合で分子に組み込み、それをイムノアドヘシンにすることができる。イムノアドヘシンは、より大きなポリペプチド鎖の一部としてCDRを組み込む事ができ、CDRを別のポリペプチド鎖に共有結合でき、または非共有結合でCDRに組み込む事ができる。CDRは、イムノアドヘシンを特定の目的抗原に特異的に結合させる。
またさらなる別の実施形態では、抗体または抗原結合化合物は、定常領域および1つまたは複数のヒト抗体配列の重鎖および軽鎖可変フレームワーク領域を含む。関連する実施形態では、抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4の修飾または未修飾定常領域を含む。
あるいは、抗体断片は、タンパク質足場に融合することができる。タンパク質足場のライブラリーには、これに限定されないが、アドネクチン、アフィボディ、アンチカリン、DARPin、操作したKunitz型阻害剤、テトラネクチン、A−ドメインタンパク質、リポカリン、反復タンパク質、例えば、アンキリン反復タンパク質、免疫タンパク質、α2p8ペプチド、昆虫デフェンシンA、PDZドメイン、カリブドトキシン、PHDフィンガー、TEM−1β−ラクタマーゼ、フィブロネクチンタイプIIIドメイン、CTLA−4、T細胞レセプター、ノッティン、ネオカルチノスタチン、炭水化物結合モジュール4−2、緑色蛍光タンパク質、チオレドキシン(Gebauer & Skerra、Curr.Opin.Chem.Biol.13:245−55(2009);Gill & Damle、Curr.Opin.Biotech 17:653−58(2006);Hosse et al、Protein Sci.15:14−27(2006);Skerra、Curr.Opin.Biotech 18:295−3−4(2007))。
従って、抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域の1つ、2つおよび/または3つのCDRを含む種々の組成物は、当技術分野で既知の技術により産生可能である。
多特異性抗体
一部の実施形態では、同じまたは異なる分子の少なくとも2つの異なるエピトープに対し結合特異性を有する多特異性(例えば、二重特異性)の本発明の抗体を産生することが望ましいことがありうる。代表的二重特異性抗体は、抗原の2つの異なるエピトープに結合できる。あるいは、抗原特異的抗体アームを、細胞の防護機序を所望の抗原に集中させるように、T細胞受容体分子(例えば、CD2またはCD3)、等の細胞表面分子、またはFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)、等のIgGのFc受容体(FcγR)に結合するアームと結合させることができる。また、二重特異性抗体は、所望の抗原を発現、または取り込む細胞のところに細胞障害性の試薬を局在化させるために使用することもできる。これらの抗体は、抗原結合アームおよび細胞障害性の試薬(例えば、サポリン、抗インターフェロン−60、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレザトまたは放射性同位元素ハプテン)に結合するアームを持つ。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製可能である。
二重特異性抗体作製の別の方法によって、抗体分子対間の境界は、組換え型細胞培養から回収されるヘテロダイマーの割合を最大にするように操作できる。好ましい界面は、少なくとも抗体定常領域のCH3ドメインの一部を含む。この方法では、第1の抗体分子界面由来の1つまたは複数の小さなアミノ酸側鎖が、大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)と置換される。大きなアミノ酸側鎖を小さな側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置き換えることにより、大きな側鎖に対する同等または類似サイズの埋め合わせ用の「空隙」が、第2の抗体分子の界面上に形成される。これが、他の望まれないホモダイマー等の最終産物よりもヘテロダイマーの収率を増やす機序を提供する。WO96/27011(1996年9月6日刊行)を参照のこと。
二重特異性抗体は、架橋または「ヘテロ結合」抗体を含む。例えば、ヘテロ結合の1つの抗体は、アビジン結合し、もう一つの抗体はビオチンに結合できる。ヘテロ結合抗体は、任意の従来の架橋法を使って作製できる。適切な架橋剤は、当技術分野でよく知られており、米国特許第4,676,980号で、多くの架橋技術と一緒に開示されている。
抗体断片から二重特異性抗体を生成する技術は、また、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学連鎖を使って調製可能である。Brennan et al.、(Science 229:81−83、1985)には、インタクト抗体がタンパク分解により切断されてF(ab’)2断片を生成する方法が記載されている。これらの断片は、ジチオール錯化剤亜ヒ酸ナトリウムの存在下還元されて、隣接ジチオールを安定化し、分子内ジスルフィド形成を防ぐ。生成したFab’断片は、次に、チオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に変換される。次に、1つのFab’−TNB誘導体は、メルカプトエチルアミンの還元によりFab’−チオールに再変換され、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体が形成される。産生した二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化用の試薬として使用できる。またさらなる実施形態では、大腸菌から直接回収されたFab’−SH断片は、インビトロで化学的にカップリングされて、二重特異性抗体を形成することができる(Shalaby et al.、J.Exp.Med.175:217−225(1992))。
Shalaby et al.、J.Exp.Med.175:217−225(1992)には、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子の産生について記されている。各Fab’断片は、別々に大腸菌から分泌され、直接インビトロ化学カップリングを行い、二重特異性抗体が形成される。このように形成された二重特異性抗体は、HER2受容体を過剰発現している細胞および正常なヒトT細胞に結合でき、さらに、ヒト乳房腫瘍抗原に対するヒト細胞障害性のリンパ球の溶菌活性を誘発する。
また、二重特異性抗体断片を組換え型細胞培養から直接作製および単離する種々の技術が記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを使って産生されている(Kostelny et al.、J.Immunol.148:1547−1553、1992)。FosおよびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドが、遺伝子融合により2つの異なる抗体のFab’部分に結合された。抗体ホモダイマーは、ヒンジ部で還元され、モノマーを形成し、次に、再酸化されて抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法は、また、抗体ホモダイマーの産生にも適用可能である。Holliger et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444−48、1993)により記載されている「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片作製の代替機序を提供した。
断片は、リンカーによって軽鎖可変領域(VL)に結合した重鎖可変領域(VH)を含むが、同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成を許容するにはあまりにも接近しすぎている。従って、1つの断片のVHおよびVLドメインは、別の断片の相補的なVLおよびVHドメインと対形成することを強いられ、その結果、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(scFv)二量体を使って二重特異性抗体断片を作る別の戦略も報告されている。Gruber et al.、J.Immunol.152:5368(1994)を参照のこと。
あるいは、二重特異性抗体は、Zapata et al.Protein Eng.8:1057−62(1995)に記載のように産生した「直鎖抗体」であってもよい。直鎖抗体は、1対の抗原結合領域を形成する1対の直列型Fdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む。直鎖抗体は、二重特異性または単一特異性とすることが可能である。
さらなる実施形態では、二重特異性抗体は、キレート化組換え抗体(CRAb)であってもよい。キレート化組換え抗体は、抗原の隣接および非重畳エピトープを認識し、充分に柔軟で同時に両方のエピトープに結合できる(Neri et al.、JMolBiol.246:367−73、1995)。
また、3価以上の抗体も意図されている。例えば、三重特異性抗体が調製できる(Tutt et al.、J.Immunol.147:60、1991)。
キメラおよびヒト化抗体
キメラまたはヒト化抗体は、ヒトにおいては、親のマウスモノクローナル抗体より免疫原性が小さいために、ヒトの治療に使って、アナフィラキシーのリスクをはるかに少なくできる。
マウスモノクローナル抗体のIg可変領域がヒトIg定常領域に融合したキメラモノクローナル抗体を、当技術分野で既知の標準的方法を使って得ることができる(Morrison et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA81、6841−6855(1984);および、Boulianne et al、Nature 312、643−646、(1984))を参照のこと。一部のキメラモノクローナル抗体は、ヒトでは免疫原性が小さいことがわかったが、マウス可変Ig領域は、それでも大きなヒト抗マウス応答を導くことができる。
ヒト化抗体は、例えば、下記を含む種々の方法で実現可能である:(1)非ヒト相補性決定領域(CDR)のヒトフレームワークおよび定常領域への移植(当技術分野では、「CDR移植(CDR grafting)」によるヒト化と呼ばれるプロセス)(2)全体非ヒト可変ドメインの移植であるが、表面残基の置換によりヒト様表面で移植ドメインを「覆い隠す(cloaking)」(当技術分野で「ベニアリング(veneering:見せかけ)」と呼ばれているプロセス)、または、代替法として、(3)抗原結合またはタンパク質折り畳みに悪影響を与えないが、ヒト環境で免疫原性を低下させそうだと判断された位置のヒトアミノ酸の置換(当技術分野でHUMAN ENGINEERED(登録商標)と呼ばれているプロセス)。本発明では、ヒト化抗体は、「ヒト化」、「ベニア化(veneered)」および「HUMANENGINEERING(登録商標)」抗体を全て含む。これらの方法は、例えば、Jones et al.、Nature 321:522525(1986);Morrison et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.、U.S.A.、81:6851−6855(1984);Morrison and Oi、Adv.Immunol.、44:65−92(1988);Verhoeyer et al.、Science 239:1534−1536(1988);Padlan、Molec.Immun.28:489−498(1991);Padlan、Molec.Immunol.31:169−217(1994);Kettleborough et al.、Protein Eng.4:773−783(1991);Studnicka et al.米国特許第5,766,886号;Studnicka et al.、(Protein Eng 7:805−814、1994)で開示されている。これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
遺伝子導入動物由来ヒト抗体
また、抗原に対するヒト抗体は、内部での免疫グロブリン産生が無く、ヒト免疫グロブリン座位を含むように操作される遺伝子導入動物を使っても産生可能である。例えば、WO98/24893には、動物が、内在性重鎖と軽鎖座位の不活性化のために機能的内在性免疫グロブリンを産生しないヒトIg座位を有する遺伝子導入動物が開示されている。WO91/00906には、また、免疫原に対する免疫応答を開始することができる遺伝子導入非霊長類哺乳動物宿主が開示され、この宿主は、抗体は、霊長類定常領域および/または可変領域を有し、座位をコードした内在性免疫グロブリンが置換または不活化されている。WO96/30498および米国特許第6,091,001号には、哺乳動物中の免疫グロブリン座位を改変する、例えば、全てまたは一部の定常もしくは可変領域を置き換えて改変抗体分子を形成する、Cre/Loxシステムの使用が開示されている。WO94/02602には、不活化内在性Ig座位および機能性ヒトIg座位を有する非ヒト哺乳動物宿主が開示されている。米国特許第5,939,598号には、内在性重鎖を欠き、1つまたは複数の異種定常領域を含む外因性の免疫グロブリン座位を発現する遺伝子導入マウスを作る方法が開示されている。また、米国特許第6,114,598号、6,657,103号および6,833,268号も参照のこと。
上述の遺伝子導入動物を使って、選択抗原に対する免疫応答を生成させ、細胞産生抗体を動物から取り出して、ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを産生するために使用できる。免疫化プロトコル、アジュバント、等は当技術分野では既知で、例えば、遺伝子導入マウスの免疫化に使用される(WO96/33735)。この特許では、IL−6、IL−8、TNFa、ヒトCD4、Lセレクチン、gp39、および破傷風毒素を含む種々の抗原に対するモノクローナル抗体が開示されている。モノクローナル抗体に対し、対応するタンパク質の生物活性または生理的な効果を阻害または中和する能力を試験することができる。WO96/33735では、IL−8で免疫し、好中球のIL−8誘導機能を遮断した遺伝子導入マウスの免疫細胞由来のIL−8に対するモノクローナル抗体が開示されている。遺伝子導入動物を免役するために使われる抗原に対し特異性を有するヒトモノクローナル抗体も、WO96/34096および米国公開特許第20030194404号;および米国公開特許第20030031667号、で開示されている。
モノクローナル抗体の作製に有用なさらなる遺伝子導入動物には、米国特許第5,770,429号、およびFishwild、et al.(Nat.Biotechnol.14:845−851(1996))に記載のMedarex HuMAb−MOUSE(登録商標)があり、これは、ヒト抗体の重鎖と軽鎖をコードする非再配列ヒト抗体遺伝子由来の遺伝子配列を含む。HuMAb−MOUSE(登録商標)の免疫化により、抗原に対する完全ヒトモノクローナル抗体の産生が可能となる。
また、Ishida et al.(Cloning Stem Cells.4:91−102(2002))には、メガベースサイズのヒトDNAセグメントを含み、また全体ヒト免疫グロブリン(hIg)座位を組み込むTransChromo Mouse(TCMOUSE(登録商標))が記載されている。TCMOUSE(登録商標)は、IgGの全サブクラス(IgG1−G4)を含む、hIgの充分に多様性のあるレパートリーを有する。TCMOUSE(登録商標)の種々のヒト抗原での免疫化により、ヒト抗体を含む抗体の応答が生ずる。
Jakobovits et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:2551(1993);Jakobovits et al.、Nature、362:255−258(1993);Bruggermann et al.、Yearin Immunol.、7:33(1993);および米国特許第5,591,669号、5,589,369号、5,545,807号;および米国公開特許公報第20020199213号、も参照のこと。米国公開特許公報第20030092125号には、動物の免疫応答を所望のエピトープに偏らせる方法が記載されている。また、ヒト抗体は、インビトロで活性化したB細胞により産生させることもできる(米国特許第5,567,610号および5,229,275号参照)。
ディスプレイ法によるヒト抗体
組換え型ヒト抗体遺伝子のレパートリーを作製する技術、および、繊維状バクテリオファージの表面へのコード化抗体断片のディスプレイ技術の開発により、ヒト抗体を直接作製する手段が提供された。ファージ法により産生された抗体は、細菌中の抗原結合断片(通常は、FvまたはFab断片)として産生され、従ってエフェクター機能が欠けている。エフェクター機能は、2つの戦略の内の1つにより導入可能である:断片を、哺乳動物細胞中で発現用の完全な抗体へ作り替える、または、エフェクター機能を開始させることができる第2の結合部位を有する二重特異性抗体断片へ作り替える。
本発明では、抗原特異的抗体またはその抗原結合部分を産生する方法が意図され、該方法は、ファージ上にヒト抗体のライブラリーを合成し、抗原またはその一部でライブラリーを選別し、抗原に結合するファージを単離し、さらに、ファージから抗体を得ることを含む。例として、ファージディスプレイ法で使用する抗体のライブラリーを調製する1つの方法は、ヒト免疫グロブリン配座を含む非ヒト動物を抗原またはその抗原性部分で免疫化して免疫応答を引き起こし、免疫した動物から抗体産生細胞を抽出し;抽出した細胞からRNAを単離し、RNAを逆転写してcDNAを産生し、プライマーを使ってcDNAを増幅して、cDNAをファージディスプレイベクターに挿入して抗体をファージ上に発現させることを含む。本発明の組換え型抗原特異的抗体は、このような方法で得ることができる。別の例では、抗体産生細胞が非免疫動物から抽出され、抽出細胞から単離され、cDNAを産生するために逆転写されたRNAは、プライマー使って増幅され、ファージディスプレイベクターに挿入されて、抗体がファージ上に発現する。ファージディスプレイ法は、繊維状バクテリオファージの表面に抗体レパートリーをディスプレイし、次に、目的抗原への結合によりファージを選択することにより免疫選択を模倣する。1つのこのような技術が、WO99/10494に記載されており、ここでは、このような手法を使って、MPLおよびmsk受容体に対する、高親和性および機能的アゴニスト抗体が単離される。本発明の抗体は、組換え型コンビナトリアル抗体ライブラリー、好ましくは、ヒトリンパ球由来のmRNAから調製したヒトVLおよびVHcDNAを使って調製されたscFvファージディスプレイライブラリー、の選別により単離することができる。このようなライブラリーの調製と選別の方法は、当技術分野で既知である。例えば、米国特許第5,969,108号、を参照のこと。ファージディスプレイライブラリー生成用の市販品として入手可能なキットがある(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01;およびStratagene SurfZAP(登録商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。また、抗体ディスプレイライブラリーの生成と選別に使うことができる他の方法および試薬がある(例えば、Ladner et al.米国特許第5,223,409号;Kang et al.PCT公開特許公報WO92/18619;Dower et al.PCT公開特許公報WO91/17271;Winter et al.公開特許公報WO92/20791;Markland et al.PCT公開特許公報WO92/15679;Breitling et al.公開特許公報WO93/01288;McCafferty et al.PCT公開特許公報WO92/01047;Garrard et al.公開特許公報WO92/09690;Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hay et al.(1992)Hum.Antibod.Hybridomas 3:81−85;Huse et al.(1989)Science 246:1275−1281;McCafferty et al.、Nature(1990)348:552−554;Griffiths et al.(1993)EMBOJ12:725−734;Hawkins et al.(1992)J.Mol.Biol.226:889−896;Clackson et al.(1991)Nature 352:624−628;Gram et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:3576−3580;Garrad et al.(1991)Bio/Technology 9:1373−1377;Hoogenboom et al.(1991)Nuc Acid Res 19:4133−4137;およびBarbas et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7978−7982、を参照のこと)。
一実施形態では、所望の結合特性を有する抗原特異的ヒト抗体を単離するために、ヒトVHおよびVLライブラリーを選別し、所望の特異性を持つ抗体断片を選択する。この方法で使われる抗体ライブラリーは、好ましくは、本明細書記載のように、また当技術分野において調製し選別されるscFvライブラリーが好ましい(McCafferty et al.、PCT 公開公報 WO92/01047、McCafferty et al.、(Nature 348:552−554(1990));およびGriffiths et al.、(EMBO J 12:725−734(1993))。scFv抗体ライブラリーは、抗原を使って選別されるのが好ましい。
あるいは、抗体のFd断片(VH−CH1)および軽鎖(VL−CL)を、PCRにより別々にクローニングして、無作為に組み換えてコンビナトリアルファージディスプレイライブラリーを作り、次に、特定の抗原への結合により選択できる。Fab断片をファージ表面に発現、すなわち、それら断片をコードした遺伝子に物理的に結合させる。従って、抗原結合によるFabの選択は、同時に、Fabをコードした配列を選択しており、その後、増幅することができる。抗原結合と再増幅を数回繰り返す、パニングと名付けられる方法、により抗原特異的Fabが濃縮され、最終的に単離される。
1994に、「誘導選択(guided selection)」と呼ばれる、抗体のヒト化に手法が記載された。誘導選択は、マウスモノクローナル抗体のヒト化に対しファージディスプレイ法の能力を利用する(Jespers、L.S.、et al.、Bio/Technology 12、899−903(1994)を参照)。このために、マウスモノクローナル抗体のFd断片が、ヒト軽鎖ライブラリーと組み合わせて提示され、次に、得られたハイブリッドFabライブラリーを抗原で選択することができる。それにより、マウスFd断片はテンプレートを提供し、選択をガイドする。その後、選択されたヒト軽鎖は、ヒトFd断片ライブラリーと組み合わされる。得られたライブラリーの選択により、完全なヒトFabが得られる。
ファージディスプレイライブラリーからヒト抗体を誘導する種々の方法が記述されている(例えば、Hoogenboom et al.、J.Mol.Biol.、227:381(1991);Marks et al.、J.Mol.Biol、222:581−597(1991);米国特許第5,565,332号および5,573,905号;Clackson、T.、and Wells、J.A.、TIBTECH 12、173−184(1994)を参照)。特に、ファージディスプレイライブラリー由来の抗体のインビトロ選択と取得は、強力なツールになっている(Burton、D.R.、andBarbasIII、C.F.、Adv.Immunol.57、191−280(1994);Winter、G.、et al.、Annu.Rev.Immunol.12、433−455(1994);米国公開特許公報第20020004215号およびWO92/01047;米国公開特許公報第20030190317号;および米国特許第6,054,287号および5,877,293号を参照のこと。
Watkins、「分子生物学における「キャプチャーリフト(Capture Lift)」法によるファージ発現抗体ライブラリーの選別、抗体ファージディスプレイ:方法とプロトコル178:187−193(2002)、および2003年3月6日刊行の米国公開特許公報第20030044772号には、キャプチャーリフトによるファージ発現抗体ライブラリーまたは他の結合分子を選別する方法が記載されており、この方法には、固体支持体上への候補結合分子の固定化が含まれる。
Fv断片は、ファージタンパク質との融合体(例えば、M13遺伝子IIIとの)として発現した1つの鎖の結合によって、可溶性断片として発現した相補的な鎖と共に、ファージ表面上に提示される。ファージは、クラスIファージ:fd、M13、f1、If1、lke、ZJ/Z、Ff、の内の1つ、およびクラスIIファージ:Xf、Pf1およびPf3、の内の1つ、等の繊維状ファージでありうることが意図されている。ファージは、M13、またはfdもしくはその誘導体であってもよい。
最初のヒトVLおよびVHセグメントが選択されると、最初に選択されたVLとVHセグメント対とは異なる対が抗原結合に対して選別される「混合と整合(mix and match)」実験を行い、好ましいVL/VH対の組み合わせの選別を行うことができる。さらに、抗体の質をさらに改善するために、好ましいVL/VH対のVLおよびVHセグメントを、天然免疫応答の間の抗体の親和性成熟に関与するインビボ体細胞変異プロセスに類似のプロセスで、好ましくは、VHおよび/またはVLのいずれかのCDR1、CDR2またはCDR3領域の範囲内で、無作為に変異させることができる。このインビトロ親和性成熟は、それぞれ、VHCDR1、CDR2、およびCDR3、またはVLCDR1、CDR2、およびCDR3に相補的なPCRプライマーを使って、VLおよびVH領域を増幅することにより達成できる。この場合、生成PCR産物が、VHおよび/またはVLCDR3領域にランダム変異が導入されているVLおよびVHセグメントをコードするように、このプライマーには、特定位置の4つのヌクレオチド塩基のランダム混合物が「添加されて(spiked)」いる。これらの無作為に変異させたVLおよびVHセグメントは、抗原への結合に関し、再選別することができる。
組換え型免疫グロブリンディスプレイライブラリーからの抗原特異的抗体の選別と単離に続いて、選択抗体をコードした核酸をディスプレイパッケージから(例えば、ファージゲノムから)回収し、標準的組換DNA技術により、他の発現ベクターに再クローニングすることができる。所望なら、核酸をさらに操作して、下記に示すように、本発明の他の抗体型を産生することができる。コンビナトリアルライブラリーの選別により単離した組換え型ヒト抗体を発現させるために、その抗体をコードしたDNAを組み換え体発現ベクターに挿入し、本明細書記載のように、哺乳動物宿主細胞中に導入される。
ファージディスプレイ法を、細菌または宿主細胞の変異誘発株を使って行うことができることが意図されている。変異誘発株は、その親のDNAに比較して、DNAを細胞中で変異させて複製させるという遺伝的欠損を有する宿主細胞である。変異誘発株の例は、NR9046 mut D5およびNR9046 mut T1である。
ファージディスプレイ法を、ヘルパーファージを使って行うことができることが意図されている。これは、不完全ファージゲノムを含む細胞を感染させるために使用し、また、欠損を補完する機能を有するファージである。不完全ファージゲノムは、一部の機能をコードした遺伝子配列が取り除かれたファージミドまたはファージであってもよい。ヘルパーファージの例は、M13K07、M13K07遺伝子IIIno.3、ハイパーファージ;およびカプシッドタンパク質融合結合分子を提示しているまたはコードしているファージ、である。
また、抗体は、WO92/01047で開示のように、階層的二重組み合わせ手法(hierarchical dual combinatorial approach)使って、ファージディスプレイ選別法により作製できる。この特許では、H鎖またはL鎖クローンを含むそれぞれのコロニーを使って他の鎖(LまたはH)をコードしたクローンの完全ライブラリーに感染させ、得られた2つの鎖に特異的な結合メンバーを、本明細書に記載のようなファージディスプレイ法によって選択する。この技術は、Marks et al、(Bio/Technology、10:779−783(1992))にも、開示されている。
ウイルス、酵母、微生物および哺乳動物細胞の表面上にポリペプチドを提示する方法も、抗原特異的抗体を特定するために使用されている。例えば、米国特許第5,348,867号;5,723,287号;6,699,658号;Wittrup、Curr Op.Biotech.12:395−99(2001);Lee et al、Trends in Biotech.21(1)45−52(2003);Surgeeva et al、Adv.Drug Deliv.Rev.58:1622−54(2006)、を参照のこと。抗体ライブラリーを酵母タンパク質、例えば、アグルチニン、に結合させて、免疫系のB細胞による抗体の表面ディスプレイを効果的に模倣することができる。
ファージディスプレイ方法に加えて、抗体は、リボソームディスプレイおよびmRNAディスプレイを含むインビトロディスプレイ法を使って単離できる(Amstutz et al、Curr.Op.Biotech.12:400−05(2001))。リボソームディスプレイを使ったポリペプチドの選択は、Hanes et al.、(Proc.Natl Acad Sci USA、94:4937−4942(1997))およびKawasakiに対し発行された米国特許第5,643,768号および5,658,754号、に記載がある。リボソームディスプレイもまた、急速大量抗体変異分析に有用である。選択的変異生成手法もまた、リボソームディスプレイ技術を使って選択できる活性改善抗体の産生方法を提供する。
改変グルコシル化
また、親抗体に対して修飾グリコシル化パターンを有する、例えば、抗体にあるべき1つまたは複数の炭水化物成分が欠如したおよび/または抗体に存在しない1つまたは複数のグリコシル化部位を付加した抗体変異体も産生可能である。
抗体のグリコシル化は、通常、N結合型またはO結合型である。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物成分の結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−トレオニン(Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸)は、炭水化物成分のアスパラギン側鎖への酵素結合のための認識配列である。ポリペプチド中のこれらいずれかのトリペプチド配列の存在により、潜在的グリコシル化部位が形成される。従って、N結合型グリコシル化部位は、1つまたは複数のこれらトリペプチド配列を含むようにアミノ酸配列を変更することにより、抗体に付加できる。O結合型グリコシル化は、糖であるN−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのヒドロキシアミノ酸のいずれか、最も一般的には、セリンもしくはトレオニン、への結合を指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンも使用可能である。O結合型グリコシル化部位は、1つまたは複数のセリンまたはトレオニン残基を元の抗体配列へ挿入または置換することにより抗体に付加することもできる。
Fcグリカンは、IgGのFc受容体とC1qへの結合に影響を与えるため、IgGエフェクター機能に対し重要である。修飾Fcグリカンおよび改変エフェクター機能を有する抗体変異体を産生可能である。例えば、シアル酸、コアフコース、二分したN−アセチルグルコサミン、およびマンノース残基、等の修飾末端糖を有する抗体は、FcγRIIIa受容体に対する改変結合および改変ADCC活性を有することができる。さらなる例では、修飾末端ガラクトース残基を有する抗体は、C1qに対する改変結合および改変CDC活性を有することができる(Raju、Curr.Opin.Immunol.20:471−78(2008)。
また、ADCC活性の改善を示すフコシル化のない、または減少した抗体分子も意図されている。これを達成するための種々の方法が当技術分野で知られている。例えば、ADCCエフェクター活性は、抗体分子のFcγRIII受容体に対する結合により媒介され、この結合は、CH2ドメインのAsn−297にあるN結合型グリコシル化の炭水化物構造に依存することが示されている。非フコシル化抗体は、この受容体に増加した親和性で結合し、ネイティブのフコシル化抗体よりもさらに効率的にFcγRIII媒介エフェクター機能を誘導する。例えば、CHO細胞中での、α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ酵素がノックアウトされている非フコシル化抗体の組換え産生では、ADCC活性が100倍増加した抗体が得られる(Yamane−Ohnuki et al.、Biotechnol Bioeng.87:614−22(2004))。類似の効果は、フコシル化経路この酵素または他の酵素の活性を減少させることにより、例えば、siRNAまたはアンチセンスRNA処理、酵素をノックアウトするように操作された細胞株、または選択的グリコシル化阻害剤を使った培養によって、得ることができる(Rothman et al.、Mol Immunol.26:1113−23(1989))。一部の宿主細胞株、例えば、Lec13またはラットハイブリドーマYB2/0細胞株は、低フコシル化レベルの抗体を天然に産生する(Shields et al.、J Biol Chem.277:26733−40(2002);Shinkawa et al.、J Biol Chem.278:3466−73(2003))。例えば、GnTIII酵素を過剰発現している細胞中での組換え抗体産生による、二分した炭水化物レベルの増加も、ADCC活性を増加させることがわかっている(Umana et al.、Nat Biotechnol.17:176−80(1999))。2つのフコース残基の内のいずれかの1つが存在しないだけで、ADCC活性を増加させるには充分であると予測されている(Ferrara et al.、Biotechnol Bioeng.93:851−61(2006))。
改変エフェクター機能を有する変異体
抗体の他の修飾も意図されている。一態様では、例えば、癌治療での抗体の有効性を強化するために、エフェクター機能に関して本発明の抗体を修飾することが望ましことがありうる(Natsume et al、Drug Design Dev't & Ther.3:7−16(2009)。代表的エフェクター機能には、Clq結合;CDC;Fc受容体結合;ADCC;食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の発現低下、等がある。エフェクター機能を修飾する1つの方法では、システイン残基をFc領域に導入し、それにより、この領域内の鎖間ジスルフィド結合形成を可能とする。このようにして得られたホモダイマー抗体は、細胞内部移行能力および/または補体媒介細胞殺作用の増加および抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)の改善ができる。Caron et al.、(J.Exp Med.176:1191−1195(1992))およびShopes、B.(J.Immunol.148:2918−2922(1992))を参照のこと。抗腫瘍活性が強化されたホモ二量体抗体は、また、Wolff et al.、(Cancer Research 53:2560−2565(1993))に記載のように、ヘテロ二機能性架橋剤を使って調製可能である。あるいは、二重Fc領域を有する抗体を操作して、補体溶解およびADCC能力を強化することができる。Stevenson et al.、(Anti−Cancer Drug Design 3:219−230(1989))を参照のこと。さらに、CDR内の配列がMHCクラスIIへの抗体の結合の原因になり、望まれないヘルパーT細胞応答を誘導することが示されている。保存的置換により、望まれないT細胞応答を誘発する能力を失っても結合活性を抗体に維持させることができる。Steplewski et al.、(Proc Natl Acad Sci USA.85:4852−56(1998))も参照のこと。この文献には、マウス可変領域がヒトガンマ1、ガンマ2、ガンマ3、およびガンマ4定常領域と結合するキメラ抗体が記載されている。
本発明の特定の実施形態では、例えば、腫瘍浸透を増加させるために、無傷抗体よりも、抗体断片の使用が望ましいことがありうる。この場合、抗体の血清半減期を増加させるために、抗体断片を修飾する、例えば、PEGまたは多糖ポリマーを含む他の水溶性ポリマー、等の分子を抗体断片に付加して、半減期を増加させる、ことが望ましいことがありうる。これは、また、例えば、サルベージ受容体結合エピトープの抗体断片への組み込みによって(例えば、抗体断片中の適切な領域の変異によって、または、例えば、DNAまたはペプチド合成により、エピトープをペプチドタグに組み込み、次に、どちらかの末端または中央で抗体断片に融合することによって、)達成できる(例えば、WO96/32478を参照)。
サルベージ受容体結合エピトープは、いずれか1つまたは複数のアミノ酸残基をFcドメインの1つまたは2つのループから抗体断片の類似の位置へ移している領域を構成するのが好ましい。Fcドメインの1つまたは2つのループから3つ以上の残基を移すと、さらに好ましい。Fc領域(例えば、IgG)のCH2ドメインからエピトープを取り出し、抗体のCH1、CH3、もしくはVH領域または2つ以上のこのような領域に移すと、またさらに好ましい。あるいは、Fc領域のCH2ドメインからエピトープを取り出し、抗体断片のCL領域もしくはVL領域、または両方に移す。WO97/34631およびWO96/32478も参照のこと。これらの特許には、Fc変異体およびそれらのサルベージ受容体との相互作用について記載されている。
従って、本発明の抗体は、ヒトFc部分、ヒトコンセンサスFc部分、またはFcサルベージ受容体と相互作用する能力を保持するその変異体を含む。このような変異体には、ジスルフィド結合に関与するシステインが修飾または除去されている、および/またはメチオニンがN−末端に付加されている、および/または1つまたは複数のN末端20アミノ酸が除去されている、および/または補体と相互作用する領域、例えば、C1q結合部位、が除去されている、および/またはADCC部位が除去されている[例えば、Sarmay et al.、Molec.Immunol.29:633−9(1992)を参照]、変異体が含まれる。
以前の研究では、ヒトおよびマウスIgGのFcRに対する結合部位を主にIgG残基233〜239からなる低ヒンジ部に位置づけていた。他の研究では、追加の広範なセグメント、例えば、ヒトFc受容体IのGly316〜Lys338、ヒトFc受容体IIIのLys274〜Arg301およびTyr407〜Arg416、を提案し、または低ヒンジ部以外のわずかな特異的残基、例えば、マウスFc受容体IIと交互作用するマウスIgG2bのAsn297およびGlu318を見出した。ヒトFc受容体IIIAに結合したヒトIgG1Fc断片の3.2Å分解能結晶構造の報告では、Fc受容体IIIAに対する結合に関与するものとして、IgG1残基Leu234〜Ser239、Asp265〜Glu269、Asn297〜Thr299、およびAla327〜Ile332を図示している。低ヒンジ部(Leu234〜Gly237)に加えて、IgGCH2ドメインループFG(残基326〜330)およびBC(残基265〜271)中の残基がFc受容体IIAとの結合に対しある種の役割を有する可能性が、結晶構造に基づいて示唆されている。Shields et al.、(J.Biol.Chem.、276:6591−604(2001))参照。本文献は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。Fc受容体結合部位内の残基の変異は、改変エフェクター機能、例えば、改変ADCCまたはCDC活性、または改変半減期、につながる可能性がある。上述のように、潜在的変異には、アラニンによる置換、保存的置換、非保存的置換、または異なるIgGサブクラスの同じ位置の対応するアミノ酸残基による置換(例えば、IgG1残基のその位置の対応するIgG2残基による置き換え)を含む1つまたは複数の残基の挿入、欠失または置換がある。
Shields et al.は、全てのヒトFc受容体との結合に関与するIgG1残基は、ヒンジの近位にあるCH2ドメイン中に位置し、次の2つのカテゴリーに入ることを報告した:1)Leu234〜Pro238、Ala327、およびPro329(あるいは、Asp265)を含む、全てのFcRと直接交互作用することができる位置;2)炭水化物特性に影響を与える位置、またはAsp265およびAsn297を含む位置。Fc受容体IIに対する結合に対し影響された追加のIgG1残基は、次の通り:(最大の影響)Arg255、Thr256、Glu258、Ser267、Asp270、Glu272、Asp280、Arg292、Ser298、および(少ない影響)His268、Asn276、His285、Asn286、Lys290、Gln295、Arg301、Thr307、Leu309、Asn315、Lys322、Lys326、Pro331、Ser337、Ala339、Ala378、およびLys414。A327Q、A327S、P329A、D265AおよびD270Aは、結合を弱めた。全FcRに対する上記の残基に加えて、Fc受容体IIIAに対する結合を40%以上弱める別のIgG1残基には次のものがある::Ser239、Ser267(グリシンのみ)、His268、Glu293、Gln295、Tyr296、Arg301、Val303、Lys338、およびAsp376。FcRIIIAに対する結合を改善する変異体には、T256A、K290A、S298A、E333A、K334A、およびA339Tが含まれる。Lys414は、FcRIIAおよびFcRIIBに対する結合の40%減少を示し、Arg416はFcRIIAおよびFcRIIIAに対し30%減少、Gln419はFcRIIAに対し30%減少およびFcRIIBに対し40%減少、さらにLys360はFcRIIIAに対し23%の改善を示した。Presta et al.、(Biochem.Soc.Trans.30:487-490、2001)も参照のこと。本文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。また、本文献は、IgG1のFc領域中のいくつかの位置が、特異的Fcガンマ受容体(R)に対してのみ得結合を改善する、または同時に、1つのタイプのFcガンマRに対する結合を改善し、別のタイプに対する結合を弱めることを見出したことを記載している。FcガンマRIIIaに対する結合を改善した選択IgG1変異体を、次にインビトロ抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)アッセイで試験し、末梢血単核細胞またはナチュラルキラー細胞が使用される場合、ADCCが強化されていることが示された。
例えば、米国特許第6,194,551号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)には、ヒトIgGFc領域の、アミノ酸位置329、331または322(Kabatナンバリングによる)に変異を含む改変エフェクター機能を有する変異体が記載されており、一部の変異は、C1q結合またはCDC活性の減少を示す。別の例として、米国特許第6,737,056号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)には、改変エフェクターまたはFcガンマ受容体結合を有する変異体が記載されている。この変異には、ヒトIgGFc領域の、次のアミノ酸位置の変異が含まれる:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439(Kabatナンバリングによる)。この内の一部は、ADCCまたはCDC活性の減少に関連する受容体結合プロファイルを示す。これらの中で、238、265、269、270、327または329のアミノ酸位置の変異は、FcRIに対する結合を弱めると記載されており、238、265、269、270、292、294、295、298、303、324、327、329、333、335、338、373、376、414、416、419、435、438または439のアミノ酸位置の変異は、FcRIIに対する結合を弱めると記載されており、さらに、238、239、248、249、252、254、265、268、269、270、272、278、289、293、294、295、296、301、303、322、327、329、338、340、373、376、382、388、389、416、434、435または437のアミノ酸位置の変異は、FcRIIIに対する結合を弱めると記載されている。
米国特許第5,624,821号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)には、マウス抗体のClq結合活性は、重鎖のアミノ酸残基318、320または322を変異させることで変えることができ、また、残基297(Asn)の置換により溶菌活性が除かれることが報告されている。
米国公開特許公報第20040132101号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)には、次のアミノ酸位置の変異を有する変異体が記載されている:240、244、245、247、262、263、266、299、313、325、328、または332(Kabatナンバリングによる)または234、235、239、240、241、243、244、245、247、262、263、264、265、266、267、269、296、297、298、299、313、325、327、328、329、330、または332(Kabatナンバリングによる)。このうち、234、235、239、240、241、243、244、245、247、262、263、264、265、266、267、269、296、297、298、299、313、325、327、328、329、330、または332の位置の変異はADCC活性またはFcガンマ受容体に対する結合を減少させる可能性がある。
Chappel et al.(Proc Natl Acad Sci USA.88:9036−40(1991))(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、IgG1の細胞親和性活性は、その重鎖CH2ドメインの内因特性であることを報告した。IgG1の234〜237のいずれかのアミノ酸残基の単一点変異は、その活性を大きく低下させるか、または消失させる。完全結合活性を回復させるには、全てのIgG1残基234〜237(LLGG)のIgG2およびIgG4への置換が必要であった。全ELLGGP配列(残基233〜238)を含むIgG2抗体は、野性型IgG1より活性が高いことが明らかになった。
Isaacs et al.(J Immunol.161:3862−9(1998))(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、FcガンマR結合に対する重要なモチーフ(グルタメート233〜プロリン、ロイシン/フェニルアラニン234〜バリン、およびロイシン235〜アラニン)内での変異は、標的細胞の枯渇を完全に防止したと報告している。グルタメート318〜アラニンの変異は、除去したマウスIgG2bのエフェクター機能を取り除き、ヒトIgG4の効力も減少させた。
Armour et al.(Mol Immunol.40:585−93(2003))(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、活性化受容体、FcガンマRIIa、と野生型IgG1よりも少なくとも10倍低い効率で反応するが、阻害受容体、FcガンマRIIb、に対する結合は、4倍低下させるに過ぎないIgG1変異体を特定した。アミノ酸233〜236の領域中、および/またはアミノ酸位置327、330および331で変異をさせた。WO99/58572(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)も参照のこと。
Xu et al.(J Biol Chem.269:3469−74(1994))(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、IgG1 Pro331〜Serの変異は、C1q結合を顕著に低下させ、実質的に溶菌活性を除去したことを報告した。対照的に、IgG4中のProのSer331による置換により、IgG4 Pro331変異体に部分的溶菌活性(40%)が付与された。
Schuurman et al.(Mol Immunol.38:1−8(2001))(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、重鎖間結合形成に関与する1つのヒンジシステインCys226のセリンへの変異により、より安定な重鎖間結合が生ずることを報告した。また、IgG4ヒンジ配列Cys−Pro−Ser−CysのIgG1ヒンジ配列Cys−Pro−Pro−Cysへの変異により、重鎖間の共有結合の相互作用が著しく安定化する。
Angal et al.(Mol Immunol.30:105−8(1993))(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、IgG4のアミノ酸位置241のセリンをプロリン(IgG1およびIgG2のその位置で見つかった)に変異させることにより、元のキメラIgG4に比べ、均質な抗体の産生、ならびに血清半減期延長および組織分布の改善につながることを報告している。
共有結合修飾
本発明のポリペプチド結合剤、例えば、抗体、の共有結合修飾もまた、本発明の範囲に含まれる。それらは、該当する場合は、ポリペプチド結合剤の化学合成または酵素的もしくは化学的開裂によって、作製可能である。他のタイプのポリペプチド結合剤の共有結合修飾が、ポリペプチド結合剤の標的アミノ酸残基を選択側鎖またはNもしくはC末端残基と反応可能な有機誘導体化試薬と反応させることにより導入される。
システイニル残基は、通常、クロロ酢酸またはクロルアセトアミド等のα−ハロアセタート(および対応するアミン)と反応させ、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を得る。また、システイニル残基は、ブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルリン酸、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル2−ピリジルジスルフィド、p−クロロメルクリベンゾアート、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール、またはクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応により誘導体化される。
ヒスチジル残基は、ジエチルピロカルボナートとpH5.5〜7.0で反応させることにより誘導体化される。理由は、この試薬がヒスチジル側鎖に対し比較的特異的であるためである。パラ−ブロモフェナシルブロミドも有用である;反応は、0.1Mナトリウムカコジラート中でpH6.0で行うのが好ましい。
リシニルおよびアミノ末端残基をコハク酸または他のカルボン酸無水物と反応させる。これらの試薬による誘導体化は、リシニル残基の電荷を逆転させる効果がある。α−アミノ含有残基を誘導体化する他の適切な試薬には、メチルピコリンイミダート等のイミドエステル、ピリドキサールホスファート、ピリドキサール、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O−メチルイソ尿素、2,4−ペンタンジオン、およびグリオキシラートとのトランスアミナーゼ触媒反応がある。
アルギニル残基は、1つまたはいくつかの従来の試薬との反応で修飾される。この試薬には、フェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンが含まれる。アルギニン残基の誘導体化には、グアニジン官能基の高いpKaのために、アルカリ性条件下で反応を行うことが必要である。さらに、これらの試薬は、リシン基ならびにアルギニンε−アミノ基と反応できる。
チロシル残基の特異的修飾は、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応により、スペクトル標識をチロシル残基中に導入する特定の目的をもって行われる。大抵は、N−アセチルイミジゾールおよびテトラニトロメタンを使って、それぞれ、O−アセチルチロシル種および3−ニトロ誘導体を生成する。チロシル残基は、125Iまたは131Iを使ってヨウ素化され、ラジオイムノアッセイに使用する標識タンパク質が調製される。
カルボキシル側鎖(アスパルチルまたはグルタミル)は、カルボジイミド(R−N=C=N−R’)との反応により選択的に修飾される。前式中、RおよびR’は異なるアルキル基、例えば、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドである。さらに、アスパルチルおよびグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応により、アスパラギニルおよびグルタミニル残基に変換される。
グルタミニルおよびアスパラギニル残基は、脱アミド化され、それぞれ対応するグルタミルおよびアスパルチル残基になることが多い。これらの残基は、中性または塩基性条件下で脱アミド化される。これらの残基の脱アミド化型は、本発明の範囲に入る。
他の修飾には、プロリンおよびリシンのヒドロキシル化、セリルまたはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、メリシン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton、「タンパク質:構造と分子特性」、W.H.Freeman & Co.、San Francisco、pp.79−86(1983))、N末端アミンのアセチル化、および任意のC末端カルボキシル基のアミド化、が挙げられる。
別のタイプの共有結合修飾には、グリコシドのポリペプチド結合剤への、化学的、または酵素的カップリングが含まれる。これらの方法は、NまたはO結合型グリコシル化に対するグリコシル化能力を有する宿主細胞中でのポリペプチド結合剤生成が必要ではないという点で、有利である。使用される結合モードに応じて、糖が、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システインの場合のような遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、トレオニン、もしくはヒドロキシプロリンの場合のような遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファンの場合のような芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基、に結合できる。これらの方法は、WO87/05330およびAplin and Wriston、(CRC Crit.Rev.Biochem.、pp.259−306(1981))に記載されている。
ポリペプチド結合剤に存在するいずれかの炭水化物成分の除去は、化学的にまたは酵素的に行うことができる。化学的脱グリコシル化には、ポリペプチド結合剤を化合物トリフルオロメタンスルホン酸、または等価化合物に曝す必要がある。この処理により、連結糖(linking sugar)(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)以外のほとんどの、または全ての糖の開裂が生ずるが、一方、ポリペプチド結合剤は、そのまま残される。化学的脱グリコシル化については、Hakimuddin、et al.、(Arch.Biochem.Biophys.259:52(1987))およびEdge et al.、(Anal.Biochem.118:131(1981))に記載がある。Thotakura et al.、(Meth.Enzymol.138:350(1987))により記載されているように、ポリペプチド結合剤の炭水化物成分の酵素的開裂は、種々のエンドおよびエキソグリコシダーゼの使用により行うことができる。
ポリペプチド結合剤の別のタイプの共有結合修飾には、ポリペプチド結合剤の種々の疎水性の成分または非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセリン、ポリオキシアルキレン、またはデキストラン等の多糖ポリマー、の1つへの結合を含む。このような方法は、当技術分野で既知であり、例えば、米国特許第4,640,835号;4,496,689号;4,301,144号;4,670,417号;4,791,192号;4,179,337号;4,766,106号;4,179,337号;4,495,285号;4,609,546号または欧州特許第EP315456号を参照のこと。
誘導体
誘導体は、ユビキチン化、標識化(例えば、放射性核種または種々の酵素で)、ペグ化(ポリエチレングリコールで誘導体化)等の共有結合ポリマー結合およびオルニチン等のアミノ酸の化学合成による挿入または置換のような技術により化学的に修飾された、抗体を含む、ポリペプチド結合剤を指す。本発明の抗体等のポリペプチド結合剤の誘導体は、また、治療薬として有用であり、本発明の方法により産生可能である。
複合化成分は、例えば、放射性のヌクレオチド、またはストレプトアビジンにより認識されるビオチン化されたヌクレオチドの組み込みのように、共有結合で、またはイオン、ファンデルワールスまたは水素結合によりポリペプチド結合剤に組み込む、または結合することができる。
ポリエチレングリコール(PEG)は、ポリペプチド結合剤に結合し、より長いインビボの半減期を提供できる。PEG基は、任意の都合のよい分子量でよく、また、直鎖でも分岐でもよい。PEGの平均分子量は、好ましくは、約2キロダルトン(「kD」)〜約100kDa、より好ましくは約5kDa〜約50kDa、最も好ましくは約5kDa〜約10kDaの範囲である。PEG基は、通常、PEG成分の天然または操作反応基(例えば、アルデヒド、アミノ、チオール、またはエステル基)からポリペプチド結合剤の反応基(例えば、アルデヒド、アミノ、またはエステル基)へのアシル化または還元アルキル化によって本発明のポリペプチド結合剤に結合される。ポリペプチド結合剤へのPEG成分の付加は、当技術分野でよく知られた技術を使って行うことができる。例えば、国際公開番号WO96/11953および米国特許第4,179,337号参照のこと。
ポリペプチド結合剤とPEGの連結反応は、通常、水相で起こり、逆相分析HPLCにより容易にモニターできる。ペグ化物質を、分取HPLCにより精製し、分析HPLC、アミノ酸分析およびレーザー脱離質量分析により特性解析を行う。
抗体複合体
ポリペプチド結合剤は、その「裸の(naked)」または非複合化形態で投与してもよく、または他の治療または診断薬に直接複合化してもよく、またはこのような他の治療または診断薬を含む担体ポリマーに間接的に複合化してもよい。一部の実施形態では、ポリペプチド結合剤は、化学療法剤、薬剤、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物または動物起源の酵素的に活性毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位元素(すなわち、放射性複合体(radioconjugate))等の細胞障害性の試薬に複合化される。適切な化学療法剤には:ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレザト、およびビンデシンが含まれる(Rowland et al.、(1986)同上文献)。適切な毒素には次のものが含まれる:ジフテリア毒素等の細菌性毒素;リシン等の植物毒素;ゲルダナマイシン等の小分子分子毒素(Mandler et alJ.Natl.Cancer Inst.92(19):1573−81(2000);Mandler et al.、Bioorg.Med.Chem.Letters 10:1025−1028(2000);Mandler et al.、Bioconjugate Chem.13.786−91(2002))、マイタンシノイド(EP1391213;Liu et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618−23(1996))、オーリスタチン(Doronina et al.、Nat.Biotech.21:778−84(2003)およびカリチアマイシン(Lode et al.、Cancer Res.58:2928(1998);Hinman et al.、Cancer Res.53:3336−3342(1993))。
ポリペプチド結合剤は、放射性同位体、親和標識(例えば、ビオチン、アビジン、等)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、等)蛍光または発行もしくは生物発光標識(例えば、FITCまたはローダミン、等)、常磁性原子、等の使用により、検出可能な程度に標識付けできる。これらの標識化を行う方法は、当技術分野でよく知られている;例えば、(Sternberger、L.A.et al.、J.Histochem.Cytochem.18:315(1970);Bayer、E.A.et al.、Meth.Enzym.62:308(1979);Engval、E.et al.、Immunol.109:129(1972);Goding、J.W.J.Immunol.Meth.13:215(1976))を参照のこと。
ポリペプチド結合剤成分の複合については、米国特許第6,306,393号に記載されている。また、一般的技術については、Shih et al.、Int.J.Cancer 41:832−839(1988);Shih et al.、Int.J.Cancer 46:1101−1106(1990);およびShih et al.、米国特許第5,057,313号に記載されている。一般的方法は、酸化された炭水化物部分を含むポリペプチド結合剤成分を担体ポリマーと反応させることを含み、この担体ポリマーは、少なくとも1つの遊離アミン官能基を有し、複数の薬剤、毒素、キレート剤、ホウ素付加試薬、または他の治療薬と一緒に添加される。この反応は、初期シッフ塩基(イミン)結合を生成し、これは第二級アミンに還元されて安定化し、最終複合体を形成する。
担体ポリマーは、例えば、少なくとも50アミノ酸残基のアミノデキストランまたはポリペプチドであってもよい。薬剤または他の試薬を担体ポリマーに複合化する種々の技術が当技術分野で知られている。ポリペプチド担体は、アミノデキストランの代わりに使用可能であるが、ポリペプチド担体は、鎖中に少なくとも50アミノ酸残基、好ましくは100〜5000アミノ酸残基、を持たなくてはならない。少なくとも一部のアミノ酸は、リジン残基またはグルタメートまたはアスパルタート残基でなければならない。リジン残基の突き出たアミンおよび突き出たグルタミンとアスパルタートのカルボキシラートは、薬剤、毒素、免疫調節物質、キレート剤、ホウ素付加試薬または他の治療薬を取り付けるには好都合である。適切なポリペプチド担体の例には、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、それらのコポリマー、および得られた坦持担体および複合体に望ましい溶解特性を与えるためのこれらのアミノ酸と他のもの、例えば、セリン、の混合ポリマー、が挙げられる。
あるいは、複合化ポリペプチド結合剤は、ポリペプチド結合剤を治療薬を伴った成分と直接複合化して調製できる。一般的手法は、治療薬が酸化されたポリペプチド結合剤成分に直接結合している以外は、複合化の間接的方法と類似である。例えば、ポリペプチド結合剤の炭水化物成分を、ポリエチレングリコールに結合させて半減期を延長できる。
あるいは、治療薬を、ジスルフィド結合形成を介して、またはヘテロ二機能性架橋剤、例えば、N−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロプリオナート(SPDP)を使って、還元抗体成分のヒンジ部に結合することができる。Yu et al.、Int.J.Cancer 56:244(1994)。このような複合化の一般的技術は、当技術分野でよく知られている。例えば、Wong、「タンパク質複合化および架橋の化学」(CRCPress 1991);Upeslacis et al.、「モノクローナル抗体:原理と応用」の中の「化学的方法による抗体の修飾」、Birch et al.(eds.)、pages 187−230(Wiley−Liss、Inc.1995);Price、「モノクローナル抗体:産生、エンジニアリングおよび臨床的応用」の中の「合成ペプチド由来抗体の産生およびキャラクタリゼーション」、Ritter et al.(eds.)、pages 60−84(Cambridge University Press 1995)を参照のこと。種々の二官能性タンパク質結合試薬が当技術分野で既知で、例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジプイミダートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベラート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビスアジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン等)、ジイソシアナート(トリエン2,6−ジイソシアナート等)、およびビス活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン等)、が挙げられる。
抗体融合タンパク質
抗体融合タンパク質の作製方法は当技術分野でよく知られている。例えば、米国特許第6,306,393号を参照。インターロイキン2成分を含む抗体融合タンパク質は、Boleti et al.、Ann.Oncol.6:945(1995)、Nicolet et al.、Cancer Gene Ther.2:161(1995)、Becker et al.、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 93:7826(1996)、Hank et al.、Clin.Cancer Res.2:1951(1996)、およびHu et al.、Cancer Res.56:4998(1996)に記載されている。さらに、Yangetal.、(Hum.Antibodies Hybridomas 6:129(1995))、は、F(ab’)2断片および腫瘍壊死因子α成分を含む融合タンパク質について記載している。抗体融合タンパク質のさらなる例は、Pastan et al、Nat.Reviews Cancer 6:559−65(2006)に記載がある。
組換え型分子が1つまたは複数の抗体成分および毒素または化学療法剤を含む抗体毒素融合タンパク質の作成方法もまた、当業者には既知である。例えば、抗体−緑膿菌外毒素A融合タンパク質が、Chaudhary et al.、Nature 339:394(1989)、Brinkmann et al.、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 88:8616(1991)、Batra et al.、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89:5867(1992)、Friedman et al.、J.Immunol.150:3054(1993)、Wels et al.、Int.J.Can.60:137(1995)、Fominaya et al.、J.Biol.Chem.271:10560(1996)、Kuan et al.、Biochemistry 35:2872(1996)、およびSchmidt et al.、Int.J.Can.65:538(1996)により記載されている。ジフテリア毒素成分を含む抗体−毒素融合タンパク質が、Kreitman et al.、Leukemia 7:553(1993)、Nicholls et al.、J.Biol.Chem.268:5302(1993)、Thompsonetal.、J.Biol.Chem.270:28037(1995)、およびVallera et al.、Blood 88:2342(1996)により記載されている。Deonarain et al.、Tumor Targeting 1:177(1995)、は、リボヌクレアーゼ成分を有する抗体−毒素融合タンパク質を記載し、一方、Linardou et al.、Cell Biophys.24−25:243(1994)、はデオキシリボヌクレアーゼI成分を含む抗体−毒素融合タンパク質を作製した。ゲロニンが、Wang et al.の抗体−毒素融合タンパク質の毒素成分として使用された(Abstracts of the 209th ACS National Meeting、Anaheim、Calif.、Apr.2−6、1995、Part 1、BIOT005)。さらなる例では、Dohlsten et al.、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 91:8945(1994)、が、ブドウ状球菌エンテロトキシンAを含む抗体−毒素融合タンパク質を報告した。
融合タンパク質の調整に採用される適切な毒素の例には、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼI、ブドウ状球菌エンテロトキシン−A、ヨウシュヤマゴボウ抗ウィルス蛋白質、ゲロニン、ジフテリア菌毒素、緑膿菌外毒素、およびシュードモナス菌体内毒素がある。例えば、Pastan et al.、Cell 47:641(1986)、およびGoldenberg、CA−−A Cancer Journal for Clinicians 44:43(1994)を参照。他の適切な毒素は、当業者には既知である。
本発明の抗体は、また、抗体を、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤(WO81/01145参照))を活性抗癌剤に変換するプロドラッグ活性化酵素に複合化することによりADEPTとしても使用できる。例えば、WO88/07378および米国特許第4,975,278号を参照のこと。
ADEPTに有用な免疫複合体の酵素成分には、より活性な細胞障害性の形態に変換するようにプロドラッグに対して作用することができる任意の酵素が含まれる。
本発明に有用な酵素には、これに限定されないが、:アルカリホスファターゼ;アリールスルファターゼ;シトシンデアミナーゼ、5−フルオロウラシル;セラチアプロテアーゼ、サーモリシン、スブチリシン、カルボキシペプチダーゼおよびカテプシン(カテプシンBおよびL、等)等のプロテアーゼ;D−アラニルカルボキシペプチダーゼ、;β−ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼ等の炭水化物開裂酵素;β−ラクタマーゼ;およびペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼ等のペニシリンアミダーゼ、が含まれる。あるいは、当技術分野でアブザイムとしても知られる、酵素活性を有する抗体が、本発明のプロドラッグを遊離活性薬剤に変換するのに使用できる(例えば、Massey、Nature 328:457−458(1987)を参照)。抗体−アブザイム複合体は、本明細書記載のようにアブザイムを腫瘍細胞集団に送達することを目的として調整可能である。
上記酵素は、上記で考察したヘテロ二機能性架橋試薬の使用、等の当技術分野でよく知られた技術により抗体に共有結合することができる。あるいは、少なくとも機能的に活性な本発明の酵素の一部に結合した少なくとも本発明の抗体の抗原結合領域を含む融合タンパク質が、当技術分野でよく知られた組換DNA技術を使って構築可能である(例えば、Neuberger et al.、Nature 312:604−608(1984)参照)。
アミノ酸配列変異体の調製
1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、および/または6つの抗体またはポリペプチド結合剤のCDRを含む修飾ポリペプチド組成物が生成され、その組成物では、抗原に対する特異性または親和性を増加させ、または標的とそのシグナル伝達相手との間の結合親和性の調節を増加させるように、CDRまたは非CDR領域が改変されることが意図されている。例えば、抗体CDR内の部位は、通常、系統的に修飾される。例えば、最初、保存的選択による置換(例えば、疎水性のアミノ酸による非同一疎水性アミノ酸の置換)、次いでさらに類似性の少ない選択による置換(例えば、帯電アミノ酸を疎水性のアミノ酸で置換)、さらに、標的部位で欠失または挿入を作る。CDR内での保存的置換により可変領域に対し生物活性を保持させることが意図されている。例えば、CDR周辺の保存フレームワーク配列を使って、これらのコンセンサス配列に相補的なPCRプライマーが生成され、プライマー領域の間に位置する抗原特異的CDR配列が増幅される。ヌクレオチドおよびポリペプチド配列をクローニングし、発現させる技術は、当技術分野で確立されている[例えば、Sambrook et al.、「分子クローニング:実験マニュアル」、2nd Edition、Cold Spring Harbor、New York(1989)を参照]。増幅されたCDR配列は、適切なプラスミドに連結される。1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、および/または6つのクローン化CDRを含むプラスミドは、任意でCDRに結合する領域をコードした追加のポリペプチドを含む。
修飾CDRを含むポリペプチド結合剤は、元の抗原に対する結合親和性で選別される。さらに、抗体またはポリペプチドは、抗原の活性を中和する能力をさらに試験される。例えば、本発明の抗体は、標的の生物活性を妨げる能力を判定する実施例で示すように、分析することができる。
修飾は、下記でさらに詳細に記載した保存的または非保存的アミノ酸置換によって行うことができる。「挿入」または「欠失」は、好ましくは約1〜20アミノ酸、さらに好ましくは1〜10アミノ酸、の範囲内にある。変位は、抗体ポリペプチド分子中のアミノ酸の置換を、組換DNA技術を使って系統的に行い、得られた組換え型変異体の活性をアッセイすることにより導入可能である。核酸の改変は、異なる種由来の核酸の異なる部位(可変位置)または高度保存領域(定常領域)で作ることができる。抗体配列を改変し、本発明に有用な抗体ポリペプチド組成物を発現させる方法は、以下で詳細に記述される。
アミノ酸配列挿入は、1つの残基から100以上の残基を含むポリペプチドの長さの範囲のアミノ−および/またはカルボキシル−末端融合体、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基またはエピトープタグを有する抗体またはサルベージ受容体エピトープに融合した抗体(抗体断片を含む)が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体血清半減期を増加させるポリペプチドへの、例えば、N末端またはC末端での、融合体、が含まれる。
用語の「エピトープタグを付けた(epitope tagged)」は、エピトープタグに融合された抗体を指す。エピトープタグポリペプチドは、対抗抗体が作られるエピトープを提供するのに十分な残基を有するが、充分に短いため、抗体の活性を妨害しない。エピトープタグは、抗体が他のエピトープと交差反応しないように充分にユニークであるのが好ましい。適切なタグポリペプチドは、一般的には、少なくとも6アミノ酸残基を有し、通常は、約8〜50アミノ酸残基の間(好ましくは約9〜30残基の間)である。例には、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)タグポリペプチドおよびその抗体12CA5(Field et al.、Mol.Cell.Biol.8:2159−2165(1988));c−mycタグならびにそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体(Evan et al.、Mol.Cell.Biol.5:3610−16(1985));ならびに単純疱疹ウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体(Paborsky et al.、Protein Engineering 3:547−53(1990))が含まれる。他の代表的タグは、通常は、およそ6ヒスチジン残基の、ニッケルキレート化を使って、そのように標識付けした化合物の単離を可能とするポリヒスチジン配列である。当技術分野でよく知られ、日常的に使用されているFLAG(登録商標)タグ(Eastman Kodak、Rochester、NY)のような、他の標識とタグは、本発明に包含される。
本明細書で使われる用語の「サルベージ受容体結合エピトープ」は、IgG分子のインビボ血清半減期の増加に関与するIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す。
別のタイプの変異体は、アミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基が取り除かれ、異なる残基がその位置に挿入されている。高頻度可変性もしくはCDR領域またはフレームワーク領域のいずれか内の置換変異生成が意図されている。保存的置換には、アミノ酸のそのクラスの別のメンバーによる置換が含まれる。非保存的置換は、これらのクラスの1つを別のクラスのメンバーで置換することを含む。
保存的アミノ酸置換は、当該残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の類似性に基づいて行われる。例えば、非極性(疎水性の)アミノ酸には、アラニン(Ala、A)、ロイシン(Leu、L)、イソロイシン(Ile、I)、バリン(Val、V)、プロリン(Pro、P)、フェニルアラニン(Phe、F)、トリプトファン(Trp、W)、およびメチオニン(Met、M)が含まれる;極性が中性のアミノ酸には、グリシン(グリシン、G)、セリン(Ser、S)、トレオニン(Thr、T)、システイン(Cys、C)、チロシン(Tyr、Y)、アスパラギン(Asn、N)、およびグルタミン(Gln、Q)が含まれる;陽性帯電(塩基性)アミノ酸には、アルギニン(Arg、R)、リシン(Lys、K)、およびヒスチジン(His、H)が含まれる;さらに陰性帯電(酸性の)アミノ酸には、アスパラギン酸(Asp、D)およびグルタミン酸(Glu、E)が含まれる。
抗体の固有の高次構造維持に関与しないいずれのシステイン残基も置換可能で、通常、セリンに置換され、分子の酸化安定性を改善し、異常架橋を防ぐ。逆に、システイン結合を抗体に追加してその安定性を改善することができる(抗体がFv断片のような抗体断片の場合は特に)。
親和性成熟
親和性成熟は、通常、親抗体のCDR内に置換を有する抗体変異体を調製および選別し、親抗体に比較して高い結合親和性等の改善された生物学的特性を有する変異体を選択することを含む。このような置換変異体を生成するのに便利な方法がファージディスプレイを使った親和性成熟である。手短に述べると、いくつかの高頻度可変性領域部位(例えば、6〜7部位)を変異させ、各部位で全ての可能性のあるアミノ置換を生成する。このようにして得られた抗体変異体は、各粒子中にパッケージされたM13の遺伝子III産物に対する融合体として、一価形式で、繊維状ファージ粒子から提示される。ファージディスプレイされた変異体は、次に、その生物活性(例えば、結合親和性)で選別される。例えば、WO92/01047、WO93/112366、WO95/15388およびWO93/19172を参照のこと。
現行の抗体親和性成熟方法は、2つの変異生成カテゴリー:確率的および非確率的、に属する。エラープローンPCR、変異誘発細菌株(Low et al.、J.Mol.Biol.260、359−68(1996))、および飽和変異誘発法(Nishimiya et al.、J.Biol.Chem.275:12813−20(2000);Chowdhury、P.S.Methods Mol.Biol.178、269−85(2002))は、典型的な確率的変異生成方法の例である(Rajpal et al.、Proc Natl Acad Sci USA.102:8466−71(2005))。非確率的技術としては、アラニンスキャニングまたは部位特異的変異誘発が、特異的変異体の限定された収集物を得るためによく使われる。いくつかの方法は、下記でさらに詳細に説明する。
パニング法による親和性成熟-組換え型抗体の親和性成熟を通常の方式で、抗原の量を徐々に減らしながら候補抗体の数回のパニングにより行う。各回毎の抗原量を減らすことにより、抗原に対する最も大きい親和性を有する抗体が選択され、その結果、出発物質の大きなプールから高親和性抗体が得られる。パニングによる親和性成熟は、当技術分野でよく知られ、例えば、Huls et al.(Cancer Immunol Immunother.50:163−71(2001))に記載されている。ファージディスプレイ法を使った親和性成熟の方法は、本明細書野別のところで記載され、当技術分野で既知である(例えば、Daugherty et al.、Proc Natl Acad Sci USA.97:2029−34(2000)参照)。
ルックスルー変異誘発−ルックスルー変異誘発(LTM)(Rajpal et al.、Proc Natl Acad Sci USA.102:8466−71(2005))は、抗体結合部位の急速マッピング方法を適用する。LTMでは、20の天然アミノ酸により提供される主要側鎖の化学の内の代表的な、9つのアミノ酸が選択され、抗体の6つのCDR全ての位置で、機能的側鎖の結合に対する寄与を分析する。LTMは、各「野性型」残基が、9つの選択アミノ酸の内の1つにより系統的に置換されるCDR内の一連の位置における単一変異を生成する。変異CDRは、組み合わされて、全変異体の量的ディスプレイに対する制約なしに複雑さとサイズが拡大できる、コンビナトリアル単鎖可変断片(scFv)ライブラリーを生成する。正の選択後、より大きい結合親和性を有するクローンが配列決定され、有益な変異がマッピングされる。
エラープローンPCR-エラープローンPCRには、異なる選択ラウンド間の核酸の無作為化が含まれる。使ったポリメラーゼの内因性エラー率のため、無作為化が起こる率は低いが、転写中の高い内因性エラー率を有するポリメラーゼ(Hawkins et al.、J Mol Biol.226:889−96(1992))を使ったエラープローンPCRにより改善することができる(Zaccolo et al.、J.Mol.Biol.285:775−783(1999))。変異サイクル後、抗体に対しさらに大きい結合親和性を有するクローンが、当技術分野のルーチン的方法を使って選択される。
DNAシャフリング−核酸シャフリングは、インビトロまたはインビボでより短いまたは小さいプールのポリヌクレオチドを相同組換えし、変異体ポリヌクレオチドを産生する方法である。DNAシャフリングは、米国特許第6,605,449号、6,489,145号、WO02/092780およびStemmer、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91:10747−51(1994)に記載されている。一般的に、DNAシャフリングは、3ステップ:シャッフルされる遺伝子のデオキシリボヌクレアーゼIを用いた断片化、断片のランダムハイブリダイゼーション、およびDNAポリメラーゼの存在下でのPCRによる断片化遺伝子の再構築または挿入(sexual PCR)、ならびに再構築した産物の従来のPCRによる増幅からなる。
DNAシャフリングは、インバース連鎖反応であるという点でエラープローンPCRとは異なる。エラープローンPCRでは、ポリメラーゼ開始部位の数と、分子の数は、指数的に増加する。対照的に、ランダムポリヌクレオチドの核酸再構築またはシャフリングでは、開始部位の数およびランダムポリヌクレオチドの数(サイズではなく)は、時間と共に減少する。
抗体の場合には、DNAシャフリングは、例えば、全てのCDR1と全てのCDR2、およびこれらとさらに全てのCDR3との自由な組み合わせの結合を可能にする。複数の配列ファミリーが同じ反応でシャッフル可能であることが意図されている。さらに、シャフリングは、通常、相対的順序を保存し、例えば、CDR2の位置にCDR1が認められることはない。まれにシャッフルされたものが多くの最良(例えば、最高の親和性)のCDRを含むことがあり、これらは、その優れた親和性に基づいて選択されうる。
DNAシャフリングで使用できるテンプレートポリヌクレオチドは、DNAでも、RNAでもよい。組換えまたは再構築するのに、それは、遺伝子のサイズに応じて、多様な長さでよく、または短いもしくは小さいポリヌクレオチドでもよい。好ましくは、テンプレートポリヌクレオチドは、50bp〜50kbである。テンプレートポリヌクレオチドは、二重鎖が必要であることが多い。
テンプレートポリヌクレオチドに対し同一の領域、およびテンプレートポリヌクレオチドに対し異種構造の領域を有する単鎖または二重鎖核酸ポリヌクレオチドを、遺伝子選択の初期ステップの間に、テンプレートポリヌクレオチドに添加可能であることが意図されている。また、2つの、異なるが関連しているポリヌクレオチドテンプレートを、初期ステップの間に、混合することができることも意図されている。
アラニンスキャニング−アラニンスキャニング変異誘発を行って、抗原結合に大きく寄与する高頻度可変性領域残基を特定することができる:Cunningham and Wells、(Science 244:1081−1085(1989))。標的残基の残基または基は、特定され(例えば、arg、asp、his、lys、およびglu等の帯電残基)、さらに中性または負に帯電したアミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)により置換され、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を与える。次に、置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸位置が、追加のまたは他の変異体を置換部位に、または置換用に導入することにより、精密化される。
コンピュータ支援設計−あるいは、またはさらに、抗原−抗体複合体の結晶構造を分析し、抗体と抗原の間の接触点を特定する、またはコンピュータソフトウェアを使って、このような接触点のモデル化をすることは有益であろう。このような接触残基および隣接残基は、本明細書で詳述される技術による置換の候補である。このような変異体が生ずるとすぐに、変異体パネルは、本明細書記載の選別に供され、1つまたは複数の関連アッセイにおける優れた特性の抗体が、さらなる展開のために選択できる。
医薬組成物の製剤
本発明のポリペプチド結合剤をヒトまたは試験哺乳動物に投与するために、ポリペプチド結合剤を1つまたは複数の無菌の薬学的に許容可能な担体を含む無菌の組成物に処方するのが好ましい。語句の「薬学的または薬理学的に受容可能な」は、下記に示すような当技術分野でよく知られた経路を使って投与する場合、アレルギー性、または他の有害反応を生じない分子実体および組成物を指す。「薬学的に許容可能な担体」には、いずれか、および全ての臨床的に使用できる溶剤、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張性および吸収遅延剤、等が含まれる。
ポリペプチド結合剤は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、および鼻腔内、ならびに、局所治療のために所望なら、病巣内投与、を含むいずれかの適切な手段により登用される。非経口注入には、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮内または皮下投与、が含まれる。好ましくは、投薬は、1つには、投与が短期か慢性かにも依存するが、注射、最も好ましくは静脈内または皮下注射、により与えられる。局所的、特に経皮、経粘膜的、直腸、経口または、例えば、所望の部位近くに置かれたカテーテルによる局所投与、を含む他の投与方法も、意図されている。
本発明のポリペプチド結合剤を有効成分として含む本発明の医薬組成物は、投与経路に応じて、無菌の薬学的に許容可能な担体または添加物を含むことができる。このような担体または添加物の例には、水、薬学的に受容可能な有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ナトリウムアルギナート、水−可溶のデキストラン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンゴム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、薬学的に許容可能な界面活性剤、等が挙げられる。使用される添加物は、これに限定されないが、必要に応じ、また本発明の剤形に応じて、上記またはこれらの組み合わせから選択される。溶液または乳剤に対しては、適切な担体には、例えば、食塩水および緩衝溶媒を含む、水溶液またはアルコール/水の溶液、乳剤または懸濁液、が挙げられる。非経口の賦形剤には、塩化ナトリウム溶液、デキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウムリンゲル液、乳酸リンゲル液または不揮発性油を含むことができる。静脈内用賦形剤には、種々の添加物、防腐剤、または体液、栄養素または電解質補充液を含むことができる。種々の水性担体、例えば、無菌のリン酸塩緩衝食塩水溶液、静菌性水、水、緩衝水、0.4%食塩水、0.3%グリシン、等のが適切で、安定性向上のための他のタンパク質、例えば、軽く化学的修飾、等を受けたアルブミン、リポタンパク質、グロブリン、等、を含んでもよい。
ポリペプチド結合剤の治療用製剤は、所望の純度のポリペプチド結合剤を、任意選択の凍結乾燥した製剤または水溶液の形態の生理学的に受容可能な担体、賦形剤または安定剤(「レミントンの薬学」第16版、Osol、A.Ed.(1980))、と混合して、貯蔵用として調製される。受容可能な担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる用量と濃度でレシピエントに非毒性であり、次のものが含まれる:リン酸塩、クエン酸塩、スクシナートおよび他の有機酸、等の緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール、等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性高分子、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシン;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート化剤、例えば、EDTA;糖、例えば、ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩成形対イオン、例えば、ナトリウム;金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体);および/または非イオン性界面活性剤、例えば、ツイーン(登録商標)、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG)。
また、有効成分は、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、コロイド状薬剤デリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミン微粒子、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョン中の、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタシラート)マイクロカプセル、中に封入することもできる。このような技術は、「レミントンの薬学」第16版、Osol、A.Ed.(1980)、で開示されている。
インビボ投与に使われる製剤は、無菌でなければならない。これは、無菌濾過膜を使った濾過により、容易に達成できる。
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物中に活性化合物を入れることができる。このような賦形剤は、懸濁剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムアルギナート、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴムである;分散剤または湿潤剤は、天然ホスファチド、例えば、レシチン、またはアルキレン酸化物と脂肪酸の縮合物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合物、例えば、ヘプタデカエチル−エネオキシセタノール、またはエチレンオキシドと脂肪酸由来の部分エステルの縮合物およびヘキシトール、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート、またはエチレンオキシドと脂肪酸由来の部分エステルの縮合物およびヘキシトール無水物、例えば、ポリエチレンソルビタンオレイン酸モノエステル、であってもよい。また、水性懸濁液は、1つまたは複数の防腐剤、例えば、エチル、またはn−プロピル、p−ヒドロキシベンゾアートを含んでもよい。
本発明の抗体は、貯蔵用に凍結乾燥され、使用の前に、適切な担体中で再構成される。この技術は、従来の免疫グロブリンで有効であることが明らかになった。任意の適切な凍結乾燥および再構成技術が使用できる。凍結乾燥および再構成は、程度の差はあれ、抗体活性の減少をもたらし、これを補償するために、使用量の調製が必要であることは、当業者なら理解するであろう。
水添加による水性懸濁液の調製に適した分散可能な粉末および粒剤は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤および1つまたは複数の防腐剤を含んだ混合物中に入った活性化合物として提供される。適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤は、すでに上で例示されている。
これらの製剤中のポリペプチド結合剤の濃度は、広範に、例えば、重量で、約0.5%未満から、通常は、1%または少なくとも約1%から15または20%まで、変えることができ、主に、液量、粘度、等、特定の選択投与モードに応じて、選択される。従って、非経口の注射用の典型的な医薬組成物は、1ml無菌緩衝水、および50mgのポリペプチド結合剤を含むように作ることができる。静脈内注入用の典型的組成物は、250mlの無菌リンゲル溶液、および150mgのポリペプチド結合剤を含むように作ることができる。実際の非経口投与可能組成物の調製方法は、当業者には既知または明らかであると思われ、また、例えば、「レミントンの薬学」第15版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.(1980)にさらに詳細に記載されている。ポリペプチド結合剤の効果的投与量は、1kg体重、1投与あたり0.01mg〜1000mgの範囲である。
医薬組成物は、無菌注射可能溶液または分散液の即時調製用の無菌の注射可能水性、油性の懸濁液、分散液または無菌粉末の形態であってもよい。懸濁液は、上述のこれらの適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使った既知の技術により処方できる。無菌の注射可能製剤は、また、無毒の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液としての、無菌の注射可能溶液または懸濁液であってもよい。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール、等)、適切なこれらの混合物、植物油、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液を含む溶媒または分散媒であってもよい。さらに、無菌の、不揮発性油は、溶媒または懸濁剤として、従来法で採用されている。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む、任意のブランドの不揮発性油が採用可能である。さらに、オレイン酸、等の脂肪酸は、注射剤の製剤に使用される。
全ての場合で、形態は無菌でなければならず、また、容易に注射できる特性(easy syringability)がある程度に流動性がなければならない。固有の流動度は、例えば、レシチン等によるコーティングの使用により、分散の場合には必要粒形の維持により、また、界面活性剤の使用により、維持できる。製造および貯蔵の条件下安定でなければならず、また、細菌および真菌、等の微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。微生物の作用の予防は、種々の抗菌薬および抗真菌薬、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、等、により行うことができる。多くの場合、等張性試薬、例えば、糖または塩化ナトリウム、を含むことが望ましい。注射可能組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる試薬、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン、を含む組成物の使用により達成できる。
投与に有用な組成物は、取り込みまたは吸収増強剤と共に処方し、その有効性を増加させることができる。このようなエンハンサーには、例えば、サリチル酸塩、グリココラート/リノレアート、グリコラート、アプロチニン、バシトラシン、SDS、カプラート、等が含まれる。例えば、Fix(J.Pharm.Sci.、85:1282−1285(1996))およびOliyai and Stella(Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.、32:521−544(1993))を参照のこと。
生物物理学的アッセイ
複合体生物学的イベントは、それらを統計力学、熱力学および化学反応速度論の観点から理解される相互作用ユニットの系とみなす分子生物物理学的手法を介して調査できる。
特定の実施形態では、本発明のアッセイは、検出可能成分を用いることができる。検出可能成分は、検体中の結合した検出可能成分または標識の定量に使用可能な、直接、間接的に測定可能なシグナル、例えば、放射性、発色性、発光、蛍光シグナル、を生成できるいずれか1つであってもよい。当技術分野で既知の検出可能標識には、3H、14C、32P、35S、または125I、等の放射性同位元素、電気化学発光標識(基体に結合したルテニウム(Ru)ベース触媒、等)、発光または生物発光標識(例えば、ユウロピウム、バナジウム)、蛍光または、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、またはルシフェリン等の化学発光化合物、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはセイヨウワサビペルオキシダーゼ、等の酵素)、コロイド状金、着色ガラスまたはプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス、等)等の比色分析標識、常磁性原子または磁性試薬、高電子密度試薬、蛍光染料含有ナノまたはミクロビーズ、ナノ結晶、量子ドット、量子ビーズ、ナノタグ、蛍光標識を持ったデンドリマー、マイクロトランスポンダ−、電子ドナー分子もしくは分子構造、または光反射粒子、が含まれる。微粒子は、ナノ結晶または量子ドットであってもよい。ナノ結晶は、光のフォトンを吸収し、次いで、異なる波長でフォトンを再放射する物質である(フルオロフォア)。さらに、別の蛍光標識、または二次抗体を、ナノ結晶に複合化可能である。ナノ結晶は、市販品としてインビトロゲンやEvident Technologies(Troy、N.Y.)から入手可能である。他の標識には、(E)−5−[2−(メトキシカルボニル)エテニル]シチジンがあり、これは、非蛍光分子であるが、紫外線(UV)照射を受けて強力な蛍光シグナルを出す生成物の3−β−D−リボフラノシル−2,7−ジオキソピリド[2,3−d]ピリミジンが得られる。バーコード標識は、米国公開特許公報US20070037195に記載がある。
競合的結合アッセイ、直接、間接的サンドイッチ法、免疫沈降アッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、電気免疫測定法、表面プラズモン共鳴法(SPR)、およびナノ粒子由来技術(nanoparticle−derived technique)等の当技術分野で既知の種々のアッセイ方法が本発明に採用可能である。
競合的結合アッセイは、標識標準(例えば、ポリペプチド結合剤が結合する抗原またはその断片)の、試験検体中の抗原とのポリペプチド結合剤に対する結合に関し競合する能力に依存する。試験検体中の抗原の量は、抗体と結合する標準の量に逆比例する。結合している標準の量の測定を促進するため、結合している抗原が非結合抗原から容易に分離できるように、抗体は、通常、競合の前、または後で不溶化される。別の実施形態では、競合的結合アッセイで、標識ポリペプチド結合剤の非標識ポリペプチド結合剤との抗原またはその断片に対する結合に関し、競合する能力が測定される。
サンドイッチ法には、通常、それぞれが、検出されるおよび/または定量されるタンパク質の異なる免疫原性部分、またはエピトープに結合できる2つの抗体の使用が含まれる。サンドイッチ法では、検体中の分析物は、通常は、固相に固定化されている第1のポリペプチド結合剤に結合され、その後、第2のポリペプチド結合剤が分析物に結合し、その結果、3つの部分により構成される不溶性の複合体が形成される。例えば、米国特許第4,376,110号を参照。第2のポリペプチド結合剤は、それ自身、検出可能成分で標識して(直接サンドイッチ法)、または検出可能成分で標識した抗免疫グロブリン抗体を使って(間接サンドイッチ法)測定できる。例えば、1つのタイプのサンドイッチ法は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)で、この場合、検出可能成分が酵素である。例えば、「分子生物学の最新プロトコル」18章、Ausubel et al.、eds.、John Wiley & Sons、New York、NY(1995)、を参照のこと。
アッセイ方法さらに他の例には、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)発光がある。例えば、1つの化合物をFRETドナー分子で標識付けし、その結合相手をFRETレセプター分子で標識付けする、等。結合相手間に結合が生じると、FRETドナーとFRETレセプター分子は、近接状態になり、ある特定の波長で蛍光を発光する。狭帯域フィルターを使って、標識の波長以外の全ての波長を遮断することができる。FRET分子対は、当技術分野で市販品として入手可能であり(例えば、インビトロゲンから)、メーカーのプロトコルに従って使用できる。FRET発光は、CCDカメラ等の光学的画像処理技術を使って検出される。
アッセイ方法のさらに別の例には、例えば、WO/06/086883に記載のバイオセンサーを使った、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)がある。
別のタイプのアッセイには、電子ドナーによる標識化が含まれる。1つの分子が電子ドナーで標識付けされ、相互作用分子が電気接点に結合される、等。結合相手間に結合が起こると、標識は、電気接点に電子を与える。例えば、Ghindilis、Biochem Soc Trans.28:84−9、(2000)およびDai et al.、Cancer Detect Prev.29:233−40(2005)、を参照。この文献は、電気免疫測定の方法について記載している。次に、電子接触がAからD(アナログからデジタル)への変換器により読み取られ、定量される。電子カウントが多ければ多いほど、多くの相互作用が起きたことになる。
単一分子検出の可能な標識の一実施形態は、光学的レポーターとしてのプラズモン共鳴粒子(PRP)の使用である。この方法は、Schultz et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA97:996−1001(2000)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。PRPは、金属のナノ粒子、例えば、直径40〜100nmで、金属中の伝導電子の集団共鳴のために光を散乱する(すなわち、表面プラズモン共鳴)。ナノ粒子に関連したプラズモン共鳴の振幅、ピーク波長、およびスペクトルバンド幅は、粒子のサイズ、形、および材料組成、ならびに局所環境に依存する。調製中にこれらのパラメーターを動かすことにより、PRPは、可視範囲のどこかにスペクトルの散乱ピークを持つように作ることができる。球状のPRPに対しては、ピーク散乱波長と散乱効率の両方が半径の増加と共に増加し、異なった色の標識を作る手段を提供している。例えば、銀色の球の集団が、調製中に球の最終半径を調節することにより、ピーク散乱波長が目的波長の数ナノメーター以内に入るように、再現性よく調製可能である。ナノサイズでもPRPは明るいので、単一分子検出用の指標として使われる;すなわち、視野内の結合PRPの存在は、単一結合イベントを示している可能性がある。表面プラズモン共鳴法検出器システムの例は、BIAcoreアッセイシステムである。例えば、Malmquist、J Molec Recognition、7:1−7(1994)を参照のこと。
分子相互作用は、また、ナノ粒子由来技術を使って検出できる。例えば、金ナノ粒子消光について記載のAo et al.、Anal Chem.78:1104−6(2006);抗体検出におけるSiO(2)/Auナノ粒子界面について記載のTang et al.、Biosens Bioelectron.2005 Nov 30;および、固体基質室温リン光イムノアッセイ(SS−RTP−IA)での使用のためのジブロモフルオレセインを含むシリコンジオキシドナノ粒子について記載のLieu et al.、J Immunol Methods.307:34−40(2005)、を参照のこと。
KinExAアッセイ(結合平衡除外法)も、また、抗原に対する調節抗体の親和性を測定するのに有用である。代表的KinExAアッセイは、実施例20に記載されている。例えば、KinExAアッセイでは、細胞培地中の非常に低いレベルのリガンドを測定できる。このアッセイは、細胞培地のリガンド欠乏レベルを測定することにより、同族受容体を発現している細胞に対するリガンドの結合の測定を可能にする。リガンドが細胞に結合するに従い、細胞培地中のリガンドの濃度が低下する。受容体を発現している細胞の滴定を使って、遊離リガンドの割合を測定することにより、KinExAソフトウェア(Sapidyne、Boise ID)を使って、リガンド−受容体相互作用の親和性が評価される。このアッセイは、種々の抗受容体抗体によって示されるリガンド結合活性の調節度合を測定するために使用される。
1つまたは複数の第1成分、第2成分およびポリペプチド結合剤が溶液になっている場合のアッセイで、または1つまたは複数の第1成分、第2成分およびポリペプチド結合剤が固相に結合している(共有結合でまたは非共有結合で)場合のアッセイで、または1つまたは複数の第1成分、第2成分およびポリペプチド結合剤が細胞表面上に発現している場合のアッセイで、前記のいずれかの結合親和性または結合速度パラメーターの測定を実行することができる。第1および/または第2成分は、それぞれ、それ自体が複数の化合物の複合体であってもよい。
投与法および用量
一態様では、本発明の方法は、医薬組成物を投与する工程を含む。
本発明の方法を、治療薬を哺乳動物対象に直接または間接的に導入するために、これに限定されないが、注射、経口摂取、鼻腔内、局所的、経皮、非経口、吸入噴霧、腟、または直腸の投与、を含む、医学的に受容可能ないずれかの手段を使って行った。本明細書で使われる用語の非経口には、皮下、静脈内、筋肉内、および嚢内注射、ならびにカテーテルまたは注入法が含まれる。皮内、乳腺内、腹腔内、鞘内、眼球後、肺内注射および/または特定の部位での外科的移植、による投与も同様に意図されたている。適切な送達装置には、インスリンの送達用に開発されたものも含むことができる(例えば、Owens et al Diabetic Med.20(11):886−898、2003、を参照)。
一実施形態では、部位への直接注射により、または製剤を内部に送達できる持続送達または徐放機序を介して、治療が必要な癌の部位または罹患した組織に投与が行われる。例えば、組成物(例えば、可溶のポリペプチド、抗体、または小分子)の持続送達できる生分解性微粒子またはカプセル剤または他の生分解性高分子形態も、部位に埋め込まれた本発明の製剤に含むことができる。
治療用組成物は、また、対象の複数部位に対して送達できる。複数の投与を同時に行うことができ、また、ある期間にわたって投与できる。特定の場合では、治療組成物を連続的流れで提供することが有益である。別の治療では、ある期間をベースに、例えば、毎時間、毎日、毎週、2週毎に、3週毎に、または毎月、投与できる。
また、本発明では、本明細書記載のように第2の試薬と併せた抗体組成物、等の複数の試薬の投与が意図されている。
所与の投与量中の抗体組成物の量は、治療薬が投与される予定の個体の大きさ、ならびに治療される障害の特性に応じて変化する。代表的は治療では、約1mg/日、5mg/日、10mg/日、20mg/日、50mg/日、75mg/日、100mg/日、150mg/日、200mg/日、250mg/日、500mg/日または1000mg/日を投与することが必要となり得る。これらの濃度は、単一剤形として、または複数の1回量に分けて投与することができる。最初は動物モデルで、次に臨床試験での標準的用量−反応試験により、特定の疾患状態および対象集団に対する最適投与量が明らかになる。
併用療法
一実施形態では、本発明の抗体は、本明細書記載の疾患または障害の治療に有用な第2の試薬と共に投与される。抗体を一緒に組み合わせることにより、標的ポリペプチドで治療される状態または障害に対するさらに改善された効力を提供するように、標的抗原の異なるエピトープに対する2つ以上の抗体を混合できることが意図されている。1つまたは複数の本発明の抗体を含む組成物は、標的ポリペプチドで治療される状態または障害に罹っている、または罹りやすいヒトまたは哺乳動物に投与できる。
2つの治療薬の同時投与は、試薬がその治療効果を発揮する間の時間内に時間的オーバーラップがある限り、試薬が同じ時間、または同じ経路で投与される必要はない。同時また逐次投与は、異なる日または週の投与が意図されている。
第2の試薬は、抗糖尿病薬、サイトカイン、増殖因子、他の抗炎症性薬、抗血液凝固薬、血圧を低下または減らす試薬、コレステロール、トリグリセリド、LDL、VLDL、もしくはリポタンパク質(a)またはHDLを増やす試薬、コレステロール調節タンパク質のレベルを増加または減少させる試薬、抗腫瘍性薬剤もしくは分子、等の他の治療薬であってもよい。過剰増殖障害、例えば、癌または腫瘍、の対象に対しては、放射線療法、化学療法、光線力学的治療、または手術、等の第2の治療方法との組み合わせも意図されている。
代表的抗糖尿病薬には、次のものが含まれるが、これに限定されない:1)スルホニル尿素(例えば、グリメピリド、グリセンチド、スルホニル尿素、AY31637);2)ビグアナイド(例えば、メトホルミン);3)αグルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ミグリトール);4)チアゾリジンジオン(例えば、トログリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、グリピジド、バラグリタゾン、リボグリタゾン、ネトグリタゾン、トログリタゾン、エングリタゾン、AD5075、T174、YM268、R102380、NC2100、NIP223、NIP221、MK0767、シグリタゾン、アダグリタゾン、CLX0921、ダルグリタゾン、CP92768、BM152054);5)グルカゴン様ペプチド(GLP)およびGLP類似体またはGLP−1受容体のアゴニスト(例えば、エキセンディン)またはその安定剤(例えば、シタグリプチン等のDPP4阻害剤);ならびに6)インスリンまたは類似体もしくはその模倣剤(例えば、LANTUS(登録商標))。
本発明の抗体および第2の試薬は、同時に同じ製剤で与えられることが意図されている。さらに、試薬は、別の製剤で投与され、また、同時に投与されることも意図されている(同時とは、相互の試薬が30分以内に投与されることを指す)。
別の態様では、第2の試薬は、抗体組成物の投与の前に投与される。投与の前とは、抗体を使った治療の1週間前から抗体投与の30分前までの範囲内の第2の試薬の投与を指す。さらに、第2の試薬が、抗体組成物の投与の後で投与されることも意図されている。後の投与は、抗体治療後30分から抗体投与後1週間までの投与を意味する。
さらに、適切であれば、他の補助治療薬が投与されてもよいことも意図されている。例えば、対象は、適切な糖尿病性食事または食物プラン、外科的治療、または照射治療を受けてもよい。
従来の治療薬が本発明の治療薬と組み合わせて投与される場合、投与量が変わりうることも明らかであろう。
使用方法
INSRアゴニスト/正のモジュレーター治療薬の効能
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている対象に標的特異的抗体を投与することにより標的活性を阻害する方法を提供する。いずれのタイプの本明細書記載の抗体も、使用可能である。代表的実施形態では、標的特異的抗体は、ヒト、キメラまたはヒト化抗体である。別の代表的実施形態では、標的はヒトであり、対象はヒトの対象である。あるいは、対象は、標的特異的抗体が交差反応する標的タンパク質を発現している哺乳動物であってもよい。抗体は、獣医学的目的で、またはヒトの疾患の動物モデルとして、抗体が交差反応する標的タンパク質を発現している非ヒト哺乳動物(すなわち、霊長類)に投与してもよい。このような動物モデルは、本発明の標的特異的抗体の治療効力を評価するために有用でありうる。
インスリン抵抗性は、生理的な量のインスリンでは、細胞または組織から正常なインスリン応答を生成するのに不十分である状態を言い表す。インスリン抵抗性は、多くの疾病状態及び容態に関係し、非糖尿病性個体の約30〜40%に存在する。これらの疾病状態及び容態には、これに限定されないが、糖尿病前症、代謝症候群(インスリン抵抗性症候群とも呼ばれる)、2型糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)および非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)(Woods et al、End、Metab & Immune Disorders-Drug Targets 9:187−198、2009、に概説がある)、が含まれる。
糖尿病前症は、耐糖能障害(IGT)または空腹時血糖異常(IFG)を特徴とする耐糖能異常の状態である。糖尿病前症の対象は、インスリン抵抗性であり、顕性2型糖尿病にさらに進行する危険が高い。代謝症候群は、関連形質群であり、これに限定されないが、高インスリン血症、耐糖能異常、肥満症、腹部または上半身部分への脂肪の再分布、高血圧症、線維素溶解不全(dysfibrinolysis)、ならびに高トリグリセリド、低HDLコレステロール、および小形緻密LDL粒子を特徴とする脂質異常症が含まれる。インスリン抵抗性は、各形質に結びついており、代謝症候群とインスリン抵抗性は、相互に密接に関連していることを示唆している。代謝症候群という診断は、2型糖尿病が将来進展する高いリスクを示すものであり、また、心臓発作、脳卒中、および末梢血管疾患の原因となるアテローム性動脈硬化が加速されている結果である。
真性糖尿病は、ヒトの代謝障害で、有病率は、母集団中の約1%である(Foster、D.W.、「ハリソン内科学」、114章、pp.661−678、第10版、McGraw−Hill、New York)。疾患は、それ自体、最終的に、眼、腎臓、神経、および血管を含むいくつかの器官系に関連する、重篤な、長期的および消耗性の合併症につながる一連のホルモン誘導代謝異常として現れる。病理学的には、疾患は、電子顕微鏡下で実証可能な基底膜の病変を特徴とする。真性糖尿病は、2つの臨床的症候群、1型および2型糖尿病に分けることができる。
1型、またはインスリン依存性糖尿病(IDDM)は、若年性開始型とも呼ばれ、慢性自己免疫疾患で、インスリンを産生するランゲルハンス島中のベータ細胞の大幅な減少を特徴とする。これらの細胞は、漸進的に破壊されるので、分泌インスリンの量は減少し、分泌インスリンの量が正常な血糖値に必要な量未満に低下すると、最終的に、高血糖(血液中の異常に高いレベルのグルコース)の原因となる。この免疫応答に対する明確なトリガーはわかっていないが、IDDMの対象は、膵臓ベータ細胞中で発現したタンパク質に対する高いレベルの抗体を有する。しかし、高いレベルのこれらの抗体を有する全ての対象が、IDDMを発症するとは限らない。1型糖尿病対象は、特徴的に、増大したグルカゴンと共に、非常に低いまたは測定不能レベルの血漿インスリンを示す。明確な病因学が何であれ、大抵の1型対象は、インスリンに対する抗体、ランゲルハンス島細胞の細胞質に対する抗体原、および酵素グルタミン酸デカルボキラーゼに対する抗体を含む、自らの膵臓細胞を標的にした循環抗体を有する。ベータ細胞(インスリン産生細胞)を特異的に標的にした免疫応答は、1型糖尿病につながる。1型糖尿病対象に対する現行の治療は、インスリンの注射であり、また、ベータ細胞障害が原因の天然インスリンの欠乏により生じた高血糖を最小限にするための、食事の改善も含まれる。また、食事は、ホルモンの低血糖効果を相殺するために、インスリン投与に関しても改善される。
2型糖尿病(非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)、成人(maturity)発症型、成人(adult)発症型とも呼ばれる)は、筋肉、脂肪および肝臓細胞がインスリンに対し正常に反応しない場合に発症する。この反応に対する失敗(インスリン抵抗性と呼ばれる)は、これらの細胞上のインスリン受容体数の減少、または細胞内のシグナル伝達経路の機能不全、またはこれらの両方に起因する可能性がある。ベータ細胞は、最初、インスリン産生を増やすことにより、このインスリン抵抗性を補償する。時間とともに、これらの細胞は、正常なグルコース値を維持するのに十分なインスリンを産生できなくなり、2型糖尿病への進行を示す。2型糖尿病は、高脂肪食、運動不足、および老化を含む、遺伝および獲得リスク因子の組み合わせにより引き起こされる。糖尿病性集団の90%超が、2型糖尿病に罹患し、発生率は上昇し続け、世界中の死亡率、罹患率および保健医療費の主要な原因になりつつある(Amos et al.、Diabetic Med.14:S1−85、1997)。
2型糖尿病は、グルコースと脂質代謝における欠陥を特徴とする多因子疾患である。典型的には、空腹時血漿グルコース値、遊離脂肪酸レベルおよびトリグリセリドレベルの増加、ならびにHDL/LDLの比率の減少を含む多くの代謝パラメータの変動がある。前に考察したように、糖尿病の主要な根本原因の1つは、末梢組織、主に筋肉と脂肪、中のインスリン抵抗性の増加であると考えられる。2型糖尿病の原因は、よくわかっていない。インスリンの作用に対する標的組織の抵抗およびインスリン分泌の減少(「β細胞機能不全」)の両方が起こると考えられている。グルコース恒常性のための主要インスリン応答性組織は、肝臓であり、そこで、インスリンがグリコーゲン合成を刺激し、糖新生を阻害する;また、筋肉であり、そこで、インスリンがグルコース取り込みを刺激し、さらにグリコーゲンがグルコース取り込みを刺激し、脂肪分解を阻害する。従って、糖尿病性状態の結果として、血液中に高いレベルのグルコースがあり、それがグルコース媒介細胞毒性およびその後の罹患(腎障害、神経障害、網膜症、等)の原因となる可能性がある。インスリン抵抗性は、2型糖尿病の発症と相関性が強い。
最近、種々の2型糖尿病の薬理学的治療手法が登場している(Scheen et al、Diabetes Care、22(9):1568−1577、1999;Zangeneh et al、Mayo Clin.Proc.78:471−479、2003;Mohler et al、Med Res Rev 29(1):125−195、2009)。それらは、異なる作用様式を経由して作用する:1)スルホニル尿素(例えば、グリメピリド、グリセンチド、スルホニル尿素、AY31637)は、基本的にインスリン分泌を刺激する;2)ビグアナイド(例えば、メトホルミン)は、グルコース利用を促進して、肝臓グルコース産生を減らし、腸のグルコース産生量を減らすことにより作用する;3)αグルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ミグリトール)は、炭水化物消化、および結果的に腸からの吸収を減速させ、食後の高血糖を低減する;4)チアゾリジンジオン(例えば、トログリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、グリピジド、バラグリタゾン、リボグリタゾン、ネトグリタゾン、トログリタゾン、エングリタゾン、AD5075、T174、YM268、R102380、NC2100、NIP223、NIP221、MK0767、シグリタゾン、アダグリタゾン、CLX0921、ダルグリタゾン、CP92768、BM152054)は、インスリン作用を高め、結果として、末梢組織中のグルコース利用を促進する;5)グルカゴン様ペプチドおよびアゴニスト(例えば、エキセンディン)またはその安定剤(例えば、シタグリプチン等のDPP4阻害剤)は、グルコース刺激性インスリン分泌を増強する;さらに6)インスリンまたはその類似体(例えば、LANTUS(登録商標))は、組織のグルコース利を刺激し、肝臓グルコース生産を阻害する。上述の薬理学的手法は、それぞれに、または併用療法として利用可能である。しかし、各手法は、限界と有害作用がある。高い比率の2型糖尿病対象で、時間経過と共に、これらの試薬に対する反応がなくなる。63%の2型糖尿病対象が、グローバルHbA1cレベル<7%(米国糖尿病協会の勧告値)が到達できず、その結果、合併症を発症する危険性が高い。さらに、ほとんどいつでも、対象は、膵臓機能の減退ステージ経て病気が進行していく。インスリン治療は、通常は、食事、運動後開始され、経口投薬は、適切に血糖をコントロールするのに失敗した。インスリン治療の欠点は、薬剤注射の必要なこと、低血糖になる可能性があること、および体重増である。従って、未だ、新規抗糖尿病薬に対する緊急の必要性がある。
Schaffer et al.は、ファージディスプレイを使って、INSR上の2つの離れたホットスポットに対する一連のペプチド結合を特定した。これらは、共有結合によりホモダイマーまたはヘテロダイマーを形成する場合、アゴニストまたはアンタゴニスト活性を示した(Schaffer et al、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、100(8):4435−4439、2003)。
2型糖尿病治療用のさらなる薬理学的手法は、INSRを活性化できる、またはINSR活性化をインスリンにより強化できる非ペプチド小分子の使用である(Moller、Nature 414:821−827)。このような分子は、特定するのに捕まえにくいことがわかったが、2つのグループが例を報告しL783281(DMAQ−B1、L7)、その誘導体、化合物2は、INSRチロシンキナーゼを活性化する小分子の選別から特定されたインスリン模倣剤である(Zhang et al、Science284:974−977、1999;Qureshi et al、J.Biol.Chem.275(47):36590−36595、2000)。TLK16998およびTLK19780は、単離された、天然に発現したヒトINSRの自己リン酸化を増加させる能力により特定されたインスリン感作物質である(Manchem et al、Diabetes 50:824−830、2001;Pender et al、J.Biol.Chem.277(46):43565−43571、2002)。L783281およびTLK16998の両方は、INSR β−サブユニットの細胞内の部分に作用し、β−サブユニットの自己リン酸化、および続く下流シグナル伝達を強化することにより、インスリン抵抗性細胞でのインスリン作用を増強する(Li et al、Diabetes 50:2323−2328、2001)。化合物2およびTLK16998は、高用量で連続的に投与された場合、糖尿病のマウスモデルの血糖値を下げることが示された(Strowski et al、Endocrinology 145(11):5259−5268、2004;Manchem et al、Diabetes 50:824−830、2001)。しかし、これらの化合物のいずれも、臨床試験にはいっていないように見える。INSRチロシンキナーゼドメインを標的にする試薬は、他の分子の非特異的活性化相同性チロシンキナーゼドメインによる副作用があることが予測される。INSRβ−サブユニットの細胞内の部分は、抗体のような、細胞中への拡散ができない大きな分子にとって適切な標的ではない。
インスリン抵抗性糖尿病対象の血清由来のポリクローナル自己抗体が特定され、インスリン作用を調査するためにプローブとして使われる。インビトロで組織に曝した場合、これらの自己抗体は、INSRへのインスリン結合を阻害し、二価の(一価ではない)型が、インスリン様生物学的影響をもたらした(Kahn et al、Proc.Natl.Acad.Sci.USA75(9):4209−4213、1978;Heffetz and Zick、J.Biol.Chem.261(2):889−894、1986)。
Jacobs and Cuatrecasasは、2つのウサギポリクローナル抗体について記載し、報告した。他の研究者によって作られた、これらの抗体、ならびに多くのポリクローナル抗体が、種々のインスリン様効果を媒介することができる(Jacobs and Cuatrecasas、CIBA Found.Symp.90:82−90、1982)ことを報告した。
Kull et alは、3つのマウスモノクローナル抗体、αIR−1、αIR−2およびαIR−3ならびにポリクローナル、A410、および、インスリンおよびソマトメジンC(IGF−1)受容体の免疫化学的交差反応性を調査するため、ならびに、インスリンおよびソマトメジンC(IGF−1)受容体のサブユニットを特定するためのそれらの使用について報告した(Kull et al、J.Biol.Chem.258(10):6561−6566、1983)。また、Herrera et alは、抗体(ウサギポリクローナル抗INSRペプチド抗体P4およびP5)を作り、ヒトINSRおよびIGF−1受容体の間の関係を試験した(Herrera et al、J.Biol.Chem.261(6):2489−2491、1986)。
INSRに対するインスリン(インスリン類似体またはINSRアゴニスト)のオン速度を増加させるか、またはオフ速度を減少させる正のモジュレーター抗体は、受容体結合インスリン(インスリン類似体またはINSRアゴニスト)の結合維持時間の増加、INSR内部移行速度の変化および/またはINSRにより活性化または不活化されたシグナル伝達タンパク質のリン酸化度合いの変化、を起こすことができる。これらの変化は、インスリン(インスリン類似体またはINSRアゴニスト)の代謝および分裂促進的活性、ならびに外因性のインスリン(インスリン類似体またはINSRアゴニスト)の投与レベルと頻度を大きく変えることができる。
受容体に対するインスリン(インスリン類似体またはINSRアゴニスト)のオン速度を増加させるか、またはオフ速度を減少させる負の調節抗体は、受容体結合インスリン(インスリン類似体またはINSRアゴニスト)の結合維持時間の減少、INSR内部移行速度の変化および/またはINSRにより活性化または不活化されたシグナル伝達タンパク質のリン酸化度合いの変化、を起こすことができる。これらの変化は、インスリン(インスリン類似体またはINSRアゴニスト)の代謝および分裂促進的活性、ならびに外因性のインスリン(インスリン類似体またはINSRアゴニスト)の投与レベルと頻度を大きく変えることができる。
正に調節する本発明の抗体を投与された糖尿病対象は、治療を受けていない対象に比べ、血糖値、糖負荷試験、および他のインスリン感受性の測定値の改善があることが意図されている。例えば、本発明の正のモジュレーター抗体の投与により、高い血糖値を正常なグルコース値(米国糖尿病協会による空腹時血糖値で約70mg/dL〜125mg/dL)に減らすことが期待される。一実施形態では、本発明の抗体の投与により、抗体治療を受けていない対象と比べて、血糖値が約15%、20%、25%、30%、35%、または40%以上減少する。
世界保健機関および米国糖尿病協会(ADA)の基準によると、正常な耐糖能は、75gの経口グルコース摂取2時間後に測定して、140mg/dL未満のグルコース値と定義されている。耐糖能障害は、75g経口グルコース摂取後の2時間血糖値が140〜199mg/dL(7.8〜11.0mmol)と定義されている。2時間後のグルコースが(正常健康対象に比べ)高いが、2型糖尿病と診断される場合より低い場合は、対象は耐糖能障害があるといわれる。耐糖能障害の対象は、空腹時グルコース値が正常であるか、または少し高いだけという可能性もある。一実施形態では、本発明の抗体の投与により、抗体治療を受けていない対象に比べ、2時間グルコース値(75g経口グルコース服用後)が、約15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%以上減少する。
また、ADAは、7%未満の成人ヘモグロビンA1cの目標レベル値を推奨している。小児に対しては、ADAは、より高いA1c目標レベルを推奨している。6才未満の小児では、推奨レベルは、7.5%〜8.5%である。6〜12差異の小児では、推奨レベルは、8%未満である。13〜19才のティーンエイジャーに対しての推奨レベルは、7.5%未満である。A1cは、測定の2〜3ヶ月間に血糖値が目標範囲内に維持されているかどうかを知る尺度である(米国糖尿病協会、Diabetes Care、28(1):186-212、2005.)。糖尿病を治療するための本発明の抗体の投与は、非糖尿病性個体で観察される値までA1cレベルを減らすことが意図されている。一実施形態では、本発明の抗体の投与により、対象のA1cレベルが、絶対HbA1cパーセンテージによる測定で、少なくとも0.5%、0.7%、1.0%または1.5%減少する。
膵臓ランゲルハンス島中のベータ細胞は、血液中のグルコースレベルを制御するインスリン、ホルモンを.作り、放出する。膵臓により維持されたインスリンのベースラインレベルがあるが、貯蔵したインスリンの放出により、血糖の急上昇に素早く対応することができ、また同時に、さらに多くのインスリンを産生する。応答時間は極めて早い。1型糖尿病では、進行性かつ広範なベータ細胞の減少により、分泌インスリンレベルの減少が起こり、最終的に、高血糖(血液中の異常に高いグルコース値)の原因となる。2型糖尿病では、ベータ細胞は、最初は、インスリン産生の増加により対象のインスリン抵抗性に対応して補償するが、時間経過と共に、細胞は、正常なグルコース値を維持するのに十分なインスリンを産生できなくなる。標的組織のインスリン作用に対する抵抗およびベータ細胞機能不全も幾分関係したインスリン分泌の減少の両方が生ずると考えられている。グルコース取り込みおよび他の糖尿病性症状を改善する本明細書記載の抗体またはポリペプチドの投与は、それを必要としている対象のベータ細胞機能を改善するのにも有用である。このような改善には、これに限定されないが、ベータ細胞生存率の維持もしくはベータ細胞の代謝回転の減少、ベータ細胞増殖の増加、またはインスリン分泌の増強、が挙げられる。ベータ細胞機能改善のさらなる方法およびその結果は、共有WO2010/028273に開示されている。
特定の実施形態では、正の調節抗体または部分アゴニスト抗体による治療で、高血漿トリグリセリド、高血漿非エステル化コレステロール、高血漿総コレステロール、高血漿インスリン(インスリン抵抗性の徴候)、高HOMA−IR、高非HDL/HDLコレステロール比率(または高総コレステロール/HDLコレステロール比率)、ベータ細胞機能の改善、および高血漿レプチン濃度(レプチン抵抗性の徴候)からなる群より選択される1つ、2つ、または3つ以上の糖尿病またはインスリン抵抗の性の症状の改善が得られる。高レベルが糖尿病、インスリン抵抗性または心臓血管合併症の危険の増加の徴候である場合は、「改善」は、レベルの減少、等として現れる。本明細書の「改善」は、健康な対象でみられるレベルを目指したレベルの正常化を指す。
試験により測定される「正常な」レベルは、検査室毎に変動し、各検査室は自分たちの正常な範囲を定めているけれども、一般的に、正常なトリグリセリドレベルは、糖尿病に関し150mg/dl未満(境界域高値150〜199mg/dL);正常なコレステロールレベルは200mg/dL未満、正常または目標非HDL/HDLコレステロール比率は、約<3.25(<130mg/dL非HDL目標値、および>41ng/dLHDL目標値に基づいて)、空腹時インスリンの正常または目標範囲は、約5〜20μU/m、およびレプチンの正常または目標範囲(また、通常、肥満度指数(BMI)または高インスリン血症に関係する)は、3〜25ng/mlであり、例えば、3ng/mLは、正常な代謝機能に必要なレベルのように思われ、20〜25ng/mLは、疾患に関係すると思われる。一部の実施形態では、治療は、上記症状のいずれかの1つまたは複数の、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%以上を正常化する。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、最も一般的な婦人科内分泌障害で、出産可能年齢の女性の約5〜10%にあらわれる。臨床的症状には、月経障害、肥満症、不妊症および多毛症が含まれる。PCOSのインスリン抵抗性は、シグナル伝達のインスリン結合後欠陥が原因である。未知のキナーゼによるINSRおよびインスリン受容体基質(IRS)−1セリン過剰リン酸化がこの欠陥に関与している。PCOSの女性の骨格筋中で分裂促進的シグナル伝達が増強されているのが観察された(Corbould et al、Diabetes 55:751−59、2006)。従って、INSRに結合するインスリンのアゴニストおよび/または正のモジュレーターは、PCOS関連障害および症状の治療および/または発症の可能性低減に有用である可能性がある。アゴニストおよび/または代謝シグナル伝達に対し分裂促進的比率を増加させないINSRに結合するインスリンの正のモジュレーターは、特に、PCOS治療に有用である可能性がある。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、単純脂肪症(脂肪浸潤)からNASHを経て硬変および肝細胞癌まで含む一連の病理学の一部(NAFLDとして知られている)である(Farrell and Larter、Hepatol.43、S99−112、2006)。インスリン抵抗性は、肝臓中の脂肪蓄積に関連し、現在この器官は、インスリン抵抗性の対象の主要標的と認識されている。全成人の約20%がNAFLDであり、成人の2〜3%がNASHに罹っていると推計されている。NASHの対象の1/3もが、長い追跡調査の間に硬変を進行させていく。肝臓疾患は、2型糖尿病の重要な合併症である。
肥満症および脂質異常症の各対象は、平均集団で観察されるものより低いインスリン感受性を示す。肥満症は、慢性疾患であり、広く蔓延していて、社会的不名誉なだけでなく、有害精神発達、皮膚病を含む、感染、静脈瘤、運動不抵抗性、真性糖尿病、インスリン抵抗性、高血圧症、高コレステロール血症、および冠動脈心疾患(Rissanen et al.、British Medical Journal、301:835−837、1990)、等の寿命の短期化や多くの医学上の問題と関連している。肥満症は、実験動物およびヒトで、インスリン抵抗性および糖尿病と相関性が強い。事実、肥満症とインスリン抵抗性は、後者は、通常、高インスリン血症または高血糖または両方が伴うが、2型糖尿病の顕著な特徴である。さらに、2型糖尿病は、2〜4倍の冠状動脈疾患のリスクが伴う。これらの重大な健康問題に関する数十年の研究にもかかわらず、肥満症およびインスリン抵抗性の病因はわかっていない。正のモジュレーター抗体および部分アゴニスト抗体は、糖尿病性動物で観察される体重増を減らすか、または遅らせる、すなわち、体重増を正常化できることが本明細書で開示される。抗体も肥満の対象の体重増に同じ効果があることが意図されている。ベータ細胞集団が枯渇し、大きな体重減少と消耗が起こることが多い糖尿病性動物の体重減少を、正のモジュレーター抗体の投与により、遅延または低減させる、すなわち、体重減少を正常化できることもまた示されている。
一部の実施形態では、本明細書記載の正のモジュレーター抗体または部分アゴニスト抗体の投与により、対象の体重増を、未治療の対象と比べて、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%減らすか、または遅らせることができることも意図されている。
別の実施形態では、本明細書記載の正のモジュレーター抗体または部分アゴニスト抗体の投与により糖尿病対象または少なくとも部分的なベータ細胞の減少を有する個体、等の個体の体重減少を、未治療の対象と比べて、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%減らすか、または遅らせることができることも意図されている。
一部の実施形態では、本明細書記載の正のモジュラー抗体または部分アゴニスト抗体の投与により、未治療対象に比べ、体重減少を、例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%促進または誘導できることが意図されている。
HIV対象の治療に使われるプロテアーゼ阻害剤は、インスリン抵抗性を含む一群の代謝障害の発生に関連している(Graham、JAIDS25:S4−S11、2000)。HIVプロテアーゼ阻害剤誘導インスリン抵抗性は、糖尿病に移行し、最終的に命に関わるケトアシドーシスになる高血糖につながる(Carretal、Lancet351:1881−1883、1998)。一部の対象に対し、これらの代謝副作用は、生命維持薬の使用を大きく制限する。Murata et al(J.Biol.Chem.275(27):20251−54、2000)は、少なくとも3つの市販HIVプロテアーゼ阻害剤も、また、グルコース輸送体が3T3Ll脂肪細胞の細胞膜に局在化するのを阻害し、その後、これらの細胞によるグルコース取り込みが阻害されることを報告した。HIVプロテアーゼ阻害剤による、細胞性グルコースの細胞への輸送の阻害は、プロテアーゼ阻害剤で治療されている診療室の一部の対象で観察されるグルコースおよび脂質の上昇と一致する。従って、INSRに結合するインスリンのアゴニストおよび/または正のモジュレーターは、HIVプロテアーゼ阻害剤の代謝副作用の治療に対して有用となる可能性がある。
インスリン抵抗性は、また、C型肝炎ウイルス(HCV)感染対象の病理学的特徴の1つであり、HCV感染に関する種々の合併症およびイベントの発生に重要な役割を果たしている(Kawaguchi and Sata、WorldJ.Gastroenterol.16:1943−52、2010)。従って、INSRに結合するインスリンのアゴニストおよび/または正のモジュレーターは、HCV感染に関連する合併症およびイベントの治療に有用である可能性がある。
INSRシグナル伝達は、また、他の疾患においても役割を有する。例えば、INSR/IGF−1Rシグナル伝達は、アミロイドベータ代謝に関しある種の役割があると推測されている(Freude et al、Curr.Alzheimer Res.6(3):213−23、2009)。IRの活性化は、光受容体神経保護の必須要素であると見なされてきた(Rajala et al、J.Biol.Chem.283(28):19781−92、2008)。インスリンシグナル伝達は、また、硬骨形成を推進すると推察されてきた(Rosen and Motyl、Cell 142:198−200)。インスリン感作物質による治療は、慢性閉塞性肺疾患および真性糖尿病の両方の対象の肺機能を改善すると報告されている(Kim et al、Int.J.Tuberc.LungDis.14(3):362−67、2010)。
INSR遺伝子ホモ接合変異を有する少数対象は、それがドナヒュー症候群または妖精症の原因になると説明されてきた。この常染色体劣性遺伝疾患は、全く非機能性インスリン受容体を生成する。これらの対象は、(しばしば隆起した)耳介低位、広がった鼻の穴、分厚い唇、および重度の成長遅延を有する。大抵の場合、これらの対象の予後は極めて不良で、生まれて1年以内に死亡する。INSR遺伝子の他の変異は、それほど重篤でないラブソン・メンデンホール症候群の原因となる。この対象は、特徴的に異常な歯、増殖性歯肉炎(歯ぐき)および松果体の拡張がある。両疾患とも、グルコース値の変動を示す:食後、グルコースは、最初非常に高く、その後、急速に異常な低いレベルまで低下する(Longo et al、Hum.Mol.Genet.11(12):1465-75、2002)。
INSRアンタゴニスト/負のモジュレーターの治療薬の効能
INSRは、また、癌と関係付けられている。いくつかの疫学的調査により、高インスリン血症を特徴とするインスリン抵抗性状態は、乳房、前立腺、結腸および腎臓の細胞腫を含む多くの悪性腫瘍のリスクの増加と関連していることが示されてきた。INSR、特にINSR−A型は、いくつかのヒト悪性腫瘍中で高発現している。INSRはIGF−IRと複合型受容体を形成し、これもまた、通常、癌中で高発現している。INSR−Aヘミダイマーを含むハイブリッド受容体は、IGF−IならびにIGF−IIおよびインスリンにも結合するという様な広範な結合特異性を有する。複合型受容体に結合することにより、インスリンは、特異的IGF−IRシグナル伝達経路を刺激することができる。INSRおよび/または複合型INSR/IGF−1R受容体に対して結合するインスリンのアンタゴニストおよび/または負のモジュレーターは、従って、新規癌治療薬として有用でる可能性がある(Belfiore Current Pharm.Design 13 (7):671−686、2007)。INSRは、ウイルス誘導カポジ肉腫腫瘍形成に必須であると報告されている(Rose et al、Onogene 26:1995−2005、2007)。
高インスリン血症は、血液中の異常に高いレベルのインスリンにより定義される状態である。高インスリン血症の原因には、インスリノーマおよびインスリン抵抗性が含まれ、これらは、先天性の高インスリン血症または他の状態、例えば、活性不足、肥満症、多嚢胞性卵巣症候群またはインスリン過剰摂取に起因する可能性がある。インスリノーマは、過剰量のインスリンを産生する膵臓の腫瘍である。高インスリンレベルは、低血糖症、または低い血中グルコース(糖質)の原因である。高インスリン血症は、誕生数時間後の新生児低血糖の最も多い原因である。このような状態の治療は、発作および神経学的後遺症の発症を防ぐために必要な場合が多い。
インスリン過剰摂取は、例えば、:あまりにも多いインスリンの投与;適量インスリンの投与であるが、間違ったタイプ、例えば、長時間作用インスリンの代わりに短時間作用インスリンの投与;インスリン投与後、食事なかった、;または故意のインスリン過剰投与、によって引き起こされる可能性がある。
一般的には、低血糖は、軽症であり得、不安や空腹、等の症状が起こるが、また、対象は重篤な低血糖の危険にさらされおり、発作、昏睡、さらに死亡でさえも生ずる可能性がある。対象が訴える低血糖関連の典型的な症状には、疲労、脱力、震えおよび空腹が含まれる。多くの対象は、低血糖の症状を防ぐために頻繁に食事をしなければならない。一部の対象は、低血糖による精神症状を発症する可能性がある。
最近、インスリノーマまたは他の重篤な型の高インスリン血症の対象は、膵部分切除、等の手術により、またはジアゾキシドまたはソマトスタチン、等の一部のケースでインスリン産生を減らす薬剤の投与により治療されている。一部のケースでは、グルコースを連続的に注入する必要がある。ペプチドINSRアンタゴニストが記載されているが(Schaffer et al、BBRC376:380−383、2008)、循環インスリンの効果を減らす現存する治療はない。INSRに結合するインスリンのアンタゴニストおよび/または負のモジュレーターは、手術の前に、または治療医療設備の一部として、インスリノーマの対象を安定化させるのに有用である可能性がある。また、アンタゴニストおよび/または負のモジュレーターは、カポジ肉腫の治療に有用である。
さらに、米国で透析を受けている著しい数の対象(25,000〜100,000)が、腎不全(慢性腎疾患(chronic kidney disease)、慢性腎臓病(chronic renal disease)、慢性腎臓不全(chronic kidney failure)、慢性腎臓不全(chronic renal failure)、不治の慢性腎疾患(established chronic kidney disease))による低血糖を呈し、本明細書記載のINSRのアンタゴニストまたは負のモジュレーターによる治療で利益を得ることができる。
INSRに結合するインスリンのアンタゴニストおよび/または負のモジュレーターは、不安、異常な空腹、異常な疲労、過食、低血糖関連精神症状、および/または低血糖(低血糖関連発作、昏睡、および死亡を含む)の低減、等の、対象の高インスリン血症に関連する疾患および症状の治療および/または発症の可能性を減らすために有用である可能性がある。INSRに結合するインスリンのアンタゴニストおよび/または負のモジュレーターは、従って、次の種々のタイプの持続性高インスリン血症状態の治療に使うことができる:膵島細胞症(KATP−Hlびまん性疾患、KATP−Hl限局性疾患、または「PHHI」)、GDH−Hl(高インスリン症/高アンモニア血症症候群(HI/HA)、ロイシン過敏性低血糖症、またはジアゾキシド感受性低血糖)、島細胞調節不全症候群、乳幼児特発性低血糖症、乳幼児持続性高インスリン性低血糖症(PHHI)、先天性の高インスリン症、インスリノーマ、インスリン過剰摂取、腎不全による低血糖(急性または慢性)、および慢性腎臓病、例えば、III、IVまたはV型。
INSRアゴニスト/正のモジュレーター診断薬の効能
インスリン受容体特異的抗体は、糖尿病診断用のツールとして使われてきた。米国特許第7,732,154号には、インスリン受容体サブユニットA(IR−A)に対するポリクローナル抗体を糖尿病用診断薬として記載し、高レベルの遊離IR−Aが、糖尿病および癌対象の血清中で検出されたことが報告されている。本明細書で開示のINSR抗体は、インスリン受容体、例えば、可溶性インスリン受容体−A、または対象の検体中のインスリンレベルを測定し、INSRまたはインスリンのレベルが、対象の糖尿病またはインスリン抵抗性を示すか否を判断するのに有用である。別の健康な個体のこれらの因子の正常な許容可能なレベルと比べて、異なるレベルのインスリンまたはインスリン受容体を有する対象は、糖尿病またはインスリン抵抗性に罹っているか、またはその危険にさらされている可能性がある。本明細書で開示のINSR抗体は、また、対象の同じ検体中のインスリン受容体、例えば、可溶のインスリン受容体A、またはインスリンレベルを測定し、INSRまたはインスリンのレベルが、対象の癌を示すか否かを判断するのに有用である。別の健康な個体のこれらの因子の正常な許容可能なレベルと比べて、異なるレベルのインスリンまたはインスリン受容体を有する対象は、癌があるか、またはその危険にさらされている可能性がある。
一実施形態では、本発明は、本明細書記載のいずれかの抗体を使って、インスリン抵抗性またはインスリン感受性を診断する方法を提供する。一実施形態では、方法は、対象の検体中のインスリンまたはインスリン受容体、例えば、可溶のインスリン受容体-Aのレベルを本明細書記載の抗体を使って、測定することを含み、この測定で異なるレベルのインスリンまたはインスリン受容体である場合は、対象が、糖尿病、インスリン抵抗性、インスリン感受性または癌に罹っているか、またはその危険にさらされていることを示す。また、糖尿病、インスリン抵抗性、インスリン感受性または癌に罹っているか、またはその危険にさらされている前記対象に治療薬を投与することを、任意で、前記方法に含めてもよい。特定の実施形態では、検体は生物試料である。一部の実施形態では、生物試料は、血液、血清、血漿、尿、乳頭分泌、脳脊髄液および腫瘍生検からなる群より選択される。検体中のインスリン受容体を測定する方法には、これに限定されないが、イムノアッセイ、競合阻害アッセイ、免疫沈降アッセイ、および本明細書記載の他のアッセイが含まれる。
モジュレーター投与効果の測定に有用なアッセイ
正のまたは負のモジュレーター抗体の対象への投与効果は、インビボまたはインビトロで測定される。一実施形態では、インスリン/インスリン受容体活性を正の調節抗体が、対象のHbA1c、コレステロール、LDL、トリグリセリド、または非エステル化脂肪酸、およびHDLのインビボレベルを減少させることが意図されている。これらの因子は、当業者にとっては、一般的な技術を使って測定される。
正のモジュレーター抗体を受けている対象は、また、体重減少または体重増の減少、低血糖または高血糖性イベントの頻度および/または回数の減少、および、HDL/LDL比率、インスリン分泌、血糖調節(糖負荷試験GTT)で測定して)、インスリン感受性(インスリン抵抗性試験(ITT))で測定して)、ベータ−細胞機能(例えば、細胞量、インスリン分泌、C−ペプチドレベル、で測定して)、ベータ細胞休止状態、脂質異常症、の改善を示す可能性がある。
インスリン抵抗性の改善は、次の肝臓、脂肪組織および/または筋肉:Pck1(PEPCK)、G6pc(G6Pase)、Srebf1(SREBP−1)、Gck(GK)、Ppargc1a(PGC−1)、Abca1(ABC−1)、Acaca(アセチル−CoAカルボキシラーゼ)、IL1b(IL−1beta)、IL6(IL−6)、Tnf(TNF−α)、Ccl2(MCP−1)、Slc2a4(GLUT4)、Il−1rn(IL−1ra)、CD68、SAA1、SAA2、FAS(脂肪酸シンターゼ)、Emr1(F4/80)、Irs1、Irs2、のいずれか中での正常化された遺伝子発現により測定される。上記は、当技術分野でよく知られた技術により測定される。
インビトロアッセイも、また、インスリン/インスリン受容体活性のモジュレーター投与の効果を測定するために有用である。正のモジュレーター抗体は、GLUT4の細胞表面への転移の増加が起こることが期待される。細胞内の位置から細胞膜へのGLUT4の転移測定方法は、例えば、米国特許第6,632,924号、米国公開特許第2007/0141635号、米国公開特許第2003/0104490号、およびLiu et al、Biochem.J.418(2)、413−20(2009)で提供されている。また、正のモジュレーターの効果は、肝臓、脂肪および/または筋細胞によるグルコース取り込みの増強を分析することにより、肝臓、脂肪および/または筋細胞培地からのグルコース欠乏の拡大を分析することにより、および分裂促進的に対する代謝INSRシグナル伝達の増加または不変の比率、pAKT活性化、およびpIRS−1活性化、を測定することにより、評価できる。インスリン−INSR相互作用の相対的ヒルスロープも測定可能である。しかし、一部の用量反応曲線は、検量線より急勾配、または、より緩い勾配である。急勾配はヒルスロープにより定量化でき、スロープファクターとも呼ばれる。標準的な傾斜の用量反応曲線は、1.0のヒルスロープである。急傾斜の曲線はより大きいスロープファクターを有し、より緩い傾斜の曲線は、小さなスロープファクターを有する。これらのファクターを分析する代表的アッセイを実施例に記載する。
薬剤送達試薬としてのINSR抗体の使用
血液脳関門を通過してタンパク質および非ウイルス遺伝子治療薬を送達するために、INSRに対する抗体、83−14、を「分子トロイの木馬」を作ることを狙ってヒト化した。83−14結合は、INSRの急速な内部移行を促進する。従って、この特性または改良特性を有するさらなる抗体は、脳および中枢神経系へ薬剤を送達するのに有用である可能性がある(Boado et al、Biotech and BioEng.96(2):381−391;WO04/050016)。
キット
別の態様として、本発明には、本発明の方法を実施に際し、使用し易いようにまとめられた1つまたは複数の化合物または組成物を含むキットが含まれる。一実施形態では、このようなキットは、密封ビンまたは容器、等のラベルを添付した入れ物に詰めた、または方法を実施する際の化合物もしくは組成物の使用法を記載した容器に入れた、本明細書記載の化合物または組成物(例えば、インスリン受容体もしくはインスリン/インスリン受容体複合体特異的抗体単独、または第2の試薬と組み合わせて、含む組成物)を含む。化合物または組成物は、単位剤形としてまとめられるのが好ましい。キットには、個別の投与経路に応じて組成物を投与するために、または選別アッセイを行うために適した装置をさらに含めてもよい。キットは、抗体組成物の使用法を記載したラベルを含むのが好ましい。
本発明のさらなる態様および詳細は、次の実施例から明らかになろう。これらの実施例は、説明のためのものであり、制限を意図するものではない。
実施例1
抗体ファージディスプレイライブラリーから抗INSR抗体の単離
(1)ファージパニングおよびレスキュー
A.ナイーブ抗体ファージディスプレイライブラリー
ヒトインスリン受容体(hINSR)(R&D Systems、MN)を、メーカーのプロトコルおよび16倍モル過剰のビオチン試薬:スルフォNHS−LC−ビオチン(Pierce、Rockford、IL)を使って、ビオチン化した。hINSRのビオチン化は、表面プラズモン共鳴法(SPR)により確認した。
最初のラウンドのファージパニングでは、scFvファージディスプレイライブラリー(BioInvent、Lund、Sweden)由来の1.6x1011cfuのファージ粒子を1mlの5%ミルク/PBS(Teknova、Hollister、CA)中で、ゆっくり回転させながら室温(RT)で1時間ブロッキングした。ストレプトアビジンコート磁性Dynabeads(登録商標)M−280(Invitrogen Dynal AS、Oslo、Norway)に対して、ブロッキングしたファージの30分間の選択解除(deselect)を2回行った。ビオチン−hINSR−hINS複合体を形成するために、100pモルのビオチン化hINSRを、5%ミルク/PBSに溶解した過剰(2,100pモル)ヒトインスリン(hINS)(Sigma、MO)と共に、ゆっくり回転させながらRTで1時間プレインキュベートした。パニングの第2ラウンドでは、50pモルのビオチン−hINSRを1050pモルhINSと一緒に使用した。パニングの最終ラウンドでは、25pモルのビオチン−hINSRを525pモルhINSと共にインキュベートした。
ビオチン−hINSR/hINS溶液をブロッキングしたストレプトアビジンコート磁性Dynabeads(登録商標)M−280(Invitrogen Dynal AS、Oslo、Norway)と共に、ゆっくり回転させながら30分間インキュベートし、ビオチン−hINSR−hINS複合体を固定した。選択解除したファージを、ビオチン−hINSR−hINSストレプトアビジンビーズと共に、RTで2時間インキュベートした。hINSRをhINSで飽和させるために、追加のhINS(2,100pモル)をその溶液に添加した。ビーズを洗浄した。パニングの最初のラウンドでは、ビーズの素早い洗浄(すなわち、磁石を使い溶液からビースを取り出し、1mlの洗浄緩衝液に再懸濁した)を、PBS−0.1%TWEENを使って3回行い、次に、PBSで3回行った。パニングの第2ラウンドでは、ビーズをPBS−0.1%TWEENで素早く5回洗浄し、次に、PBS−0.1%TWEENで5分間(1mlの洗浄緩衝液を使い、室温でゆっくり回転させながら)の1回の洗浄、さらにPBSで5回の洗浄に続き、5分間のPBSによる1回の洗浄を行った。パニングの第3ラウンドでは、ビーズをPBS−0.1%TWEENで素早く4回洗浄し、次に、PBS−0.1%TWEENで5分間(1mlの洗浄緩衝液を使い、室温でゆっくり回転させながら)の2回の洗浄、さらにPBSで4回の素早い洗浄に続き、5分間のPBSによる2回の洗浄を行った。
hINSR−hINS−結合ファージを100mMトリエチルアミン(TEA)(RTで30分インキュベーション)で溶出し、次いで、1Mトリス塩酸(pH7.4)で中和した。溶出ファージを使ってOD600値が約0.5に達したとき、TG1細菌性細胞(Stratagene、CA)に感染させた。37℃で30分間振盪なしで感染させ、さらに37℃で30分間、90rpmで振盪を加えた後、細胞をペレット化し、100ug/mlアンピシリンおよび2%グルコースを補充した2YT培養液に再懸濁した。再懸濁細胞を100ug/mlカルベニシリンおよび2%グルコースを含む2YT寒天プレートに蒔き、30℃で一晩インキュベートした。
次に、感染多重度(MOI)約10でヘルパーファージVCSM13(New England Biolabs、MA)を使いファージをレスキューした。0.6のOD600、37℃で30分間、回転なしでヘルパーファージを感染させ、次に37℃、150rpmで30分間インキュベートした後、細胞ペレットを100ug/mlアンピシリンおよび50ug/mlカナマイシンを補充した2YT培養液に再懸濁し、30℃で一晩増殖させた。厳格に遠心分離後、上清中のファージを回収し、次のパニングラウンドに使用した。ファージ選択により達成された濃縮度をモニターするために、3ラウンドのパニングについて、投入と産生ファージ量を滴定した。
遺伝子III除去および細菌性周辺質抽出物の生成
hINSR−hINS複合体に対する結合に関してファージパニング産物scFvクローンを選別する前に、最初に、geneIII遺伝子を、ファージミドベクターから切除し、分泌型scFvの産生を可能とした。このため、第3パニングラウンドクローン産物プールのプラスミドミディプレップ(Qiagen、Valencia、CA)を制限酵素EagI(NewEngland Biolabs、MA)で消化させた。遺伝子IIIを含まない消化産物をT4DNAリガーゼ(NewEngland Biolabs、MA)で自己連結させ、ケミカルコンピテントTOP10大腸菌細胞(Invitrogen、Carlsbad、CA)を形質転換するのに使用した。次に、96ウエルプレート中の個別形質転換コロニーならびに1:3容量比率の氷冷PPB溶液(Teknova、Hollister、CA)と再蒸留水(ddH2O)、および2つのプロテアーゼ阻害剤混合物タブレット(Roche、IN)を使い、標準的方法に従って細菌性周辺質抽出物を生成させた。ライセート上澄みを下記のELISAによりアッセイした。
B.免疫抗体ファージディスプレイライブラリー
米国特許第6,057,098号に記載の方法に従って、hINSR−hINS複合体による過免疫のマウスからOmniclonal(登録商標)ファージディスプレイライブラリーを生成した。免疫化物質は、約等モル量の組換え型ヒトインスリン(cat#I9278、Sigma−Aldrich、Inc.St.Louis、MO)および組換え型ヒトINSR(28−956)(cat#1544−IR/CF、R&DSystems、MN)からなる。複合体のタンパク質濃度は、およそ0.24mg/mlであった。米国特許第6,057,098号のプロトコルに従ってOmniclonal(登録商標)ライブラリーから得たただ1つのコロニーを、下記のELISAアッセイで結合活性により選別した。
(2)hINSR/hINS複合体に関する抗体クローンのELISA選別
ELISA Maxisorp(登録商標)プレート(Thermo Fisher Scientific、Rochester、NY)を3ug/ml hINSRのPBS溶液を使って4℃で一晩コートした。次いで、プレートを400ul/ウエルの5%ミルク/PBSを使ってRTで1時間ブロッキングした。hINSR−hINS複合体を含むウエルを作るために、50ul/ウエルのhINS(2.1uM)をhINSRにRTで30分間結合させた。また、細菌性周辺質抽出物を5%ミルク/PBSを用いて1時間ブロッキングし、次に、コートしたELISAプレート(50ul/ウエル)に添加して、ELISAプレート上で、hINSRまたはhINSR−hINS複合体に室温で2時間結合させた。マウス83−7抗hINSR mAbを陽性ELISA選別対照(Soos et al、Biochem.J.235:199−208、1986)として使用した。結合scFv断片をマウス抗c−myc mAb(Roche、IN)により、室温で1時間検出し、続けて、ヤギ抗マウスHRP−複合化抗血清(Thermo Scientific、Rockford、IL)により検出した。ELISA選別各ステージ後に、PBS−0.1%TWEEN−20(Teknova、Hollister、CA)で、3回の洗浄を行った。室温で1時間のインキュベーション後、ヤギ抗マウスHRP(Thermo Scientific、Rockford、IL)で正対照83−7 mAbを検出した。色は、50ul/ウエルの可溶性3.3’、5.5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質(EMD chemicals、Calbiochem、NJ)を使って、450nmの光吸収により発色させ、1M H2SO4(50ul/ウエル)で停止させた。
結果
細菌性周辺質抽出物のELISA選別により、ファージパニング選択由来の複数のhINSRまたはhINSR−hINS複合体結合剤が特定された。ナイーブライブラリーから選択された48%(1,488中の868)のクローンが、hINSRまたはhINSR−hINS複合体に結合可能であった。免疫ライブラリーから選択された43%(465中の200)のクローンが、hINSRまたはhINSR−hINS複合体に結合可能であった。選択クローン由来の周辺質抽出物は、また、FACS(実施例2参照)によってもアッセイできる。選択クローンをIgG1またIgG2抗体として、再フォーマットした。選択scFv断片の可変重鎖(VH)および軽鎖(VL)を、PCR増幅し、抗体定常領域遺伝子を含むプラスミドベクターに挿入して、標準的な方法を用いて293EEBNAヒト細胞に形質移入した。
実施例2
ヒトインスリンの存在または非存在下のINSRに対する抗体結合を測定するための受容体占有率による選別
この実施例は、ローサイトメトリー法(FACS)に基づくアッセイを使用して、ヒトインスリン(hINS)の存在または非存在下の細胞に対する特異的抗体結合の測定について記載している。アッセイでは、INS−INSR結合のモジュレーターを特定するために、ファージディスプレイライブラリーから抗インスリン受容体(INSR)抗体が選別された。
IM−9細胞を、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)から入手しRPMI1640+10%FBS中で維持した。アッセイでの使用の前に、細胞を無血清RPMI1640で洗浄し、カウント後、RPMI1640+0.5%BSA(Sigma−Aldrich)中の2x106細胞/mlに濃度を調整した。細胞を、この培地中で一晩培養し、「血清飢餓状態」と命名した。これらの細胞を1回洗浄し、0.5%BSAおよび0.01%ナトリウムアジ化物(FACS緩衝液)を含むPBS中に、2x106細胞/mlで再懸濁した。
インスリンに曝した細胞を70nMヒトインスリン(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)を補充したFACS緩衝液に再懸濁した。細胞集団(+hINS)または(−hINS)の両方を、4℃で30分間インキュベートし、FACS緩衝液で1回洗浄後、2x106細胞/mlでFACS緩衝液に再懸濁した。25μlの細胞を、96ウエルプレートに蒔き、25μlの抗体またはPPEと混合し、氷上で1時間インキュベートした。
次に、細胞をFACS緩衝液で1回洗浄し、抗体の結合を、25μlの適切な蛍光色素複合化二次抗体を添加して検出した。最初のインキュベーションがmycタグ付き抗体含有PPEと共に行われる場合は、25μlの1/1000希釈の抗c−myc抗体(Roche)をウエルに添加し、細胞を氷上で30分間インキュベートした。次に、細胞をFACS緩衝液で1回洗浄し、抗c−mycの結合が、フィコエリトリン複合化抗マウスIgGの添加により顕在化した。最後の氷上での15分のインキュベーション後、細胞を洗浄し、ペレットをFACS緩衝液に再懸濁した。細胞をFACSCAN(登録商標)(Becton−Dickinson、Milipitas、CA)で分析し、データは、FLOWJO(登録商標)(Treestar、Ashland、OR)およびMicrosoftExcel(登録商標)の両方を使って解析した。
このアッセイにより、4つのタイプの抗体の検出が可能となり、いくつかの例を図1に示す:
1.ヒトインスリン(INS/INSR複合体に対してのみ結合)に曝された場合、IM−9細胞にのみ結合する抗体
2.ヒトインスリン(INS/INSR複合体に優先的に結合)に曝された場合、IM−9細胞により多く結合する抗体
3.ヒトインスリン(非複合化INSRに優先的に結合)に曝された場合、IM−9細胞にあまり結合しない抗体
INS/INSR複合体に対する抗体結合:非複合化INSRに対する抗体結合の比率が、1.3より大きい場合は、抗体を、正のモジュレーターと予想される抗体として記録した。INS/INSR複合体に対する抗体結合:非複合化INSRに対する抗体結合の比率が、0.6より小さい場合は、抗体を、負のモジュレーターと予想される抗体として記録した。INS/INSR複合体に対する抗体結合:非複合化INSRに対する抗体結合の比率が、0.9より大きく、1.1より小さい場合は、抗体を、非モジュレーターと予想される抗体として記録した。
実施例3
INSRに対するインスリンの結合に与える抗INSR抗体の効果の測定のためのビオチン化リガンドの選別
この実施例は、抗INSR抗体の存在または非存在下で、細胞に対する特異的リガンド(ヒトインスリン)結合を測定するためのFACSベースアッセイの使用に関して記載する。INS−INSR複合体のモジュレーターを特定するためのアッセイにより、ファージディスプレイライブラリーから抗INSR抗体を選別した。
IM9細胞をアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)から入手し、RPMI1640+10%FBS中で維持した。アッセイでの使用の前に、細胞を無血清RPMI1640で洗浄し、計数後、RPMI1640+0.5%BSA(Sigma−Aldrich)中の2x106細胞/mlに濃度を調整した。細胞を、この培地中で一晩培養し、「血清飢餓状態」と命名した。これらの細胞を1回洗浄し、0.5%BSA(結合緩衝液)を含むPBS中に、2x106細胞/mlで再懸濁した。
血清飢餓状態の細胞を、室温で15分間INSR抗体に前暴露し、次に、種々の濃度のR&DSystemsからから購入したビオチン化ヒトインスリンと共にさらに室温で30分間インキュベートした。ビオチン化されたインスリンの結合は、ストレプトアビジン−フィコエリトリンの1/100希釈物をこの混合物に添加して、さらに室温で15分間インキュベートすることにより顕在化した。次に、細胞を結合緩衝液で1回洗浄し、0.5%BSA、0.1%ナトリウムアジ化物および2%パラホルムアルデヒドを含む等容量のPBS中に再懸濁した。細胞をFACSCAN(登録商標)(Becton−Dickinson、Milipitas、CA)で分析し、データは、FLOWJO(登録商標)(Treestar、Ashland、OR)およびMicrosoft Excel(登録商標)の両方を使って解析した。
図2は、抗INSR抗体の存在または非存在下の、異なるインスリン濃度でのIM9細胞に対するビオチン化インスリンの結合を示す。抗体83−7は、ビオチン化インスリンの結合を増強した;抗体MA−20は、ビオチン化インスリンの結合を低下させた;対照マウスIgGは、ビオチン化インスリンの結合に対し効果がなかった。
実施例4
抗INSR抗体のpIRS−1リン酸化刺激能力の測定アッセイ
INSRによりリン酸化される基質タンパク質には、インスリン受容体基質1(IRS−1)と呼ばれるタンパク質が含まれる。pIRS−1を形成すIRS−1リン酸化は、最終的にインスリン応答性組織の外膜上の高親和性グルコース輸送体(Glut4)分子の増加をもたらし、その結果、血液からこれらの組織へのグルコース取り込みの増加につながる。pIRS−1アッセイは、Luminex(登録商標)技術プラットフォーム(Luminex Corp.、Austin、TX)を使って開発された。2つの様式のアッセイが開発された:(a)固定インスリン濃度で試験抗体の滴定、および(b)抗体固定濃度でのインスリンの滴定。複合化および非複合化INSRに対する特異的結合に基づいて選択された抗INSR抗体を、アッセイにより試験しINS−INSR複合体シグナル伝達のモジュレーターを特定した。
細胞処理と溶解
計数、遠心処理、PBSで1回洗浄し、約RPMI+0.5% Sigma Cohn V BSA(RPMI中10%ストック、濾過殺菌、4℃貯蔵)中に約2x106細胞/ml濃度で再懸濁して、16〜20時間、IM−9細胞を血清飢餓状態にした。
インスリン(Sigma I−9278(10mg/ml)1.77mM4℃貯蔵液体ストック)希釈液の2X濃縮液をRPMI+0.5%BSAで調製した。標準的インスリン滴定には、例えば:6.25nM、1.56nM、0.39nM、0.097nM、0.024nM、0.006nM、0.0015nM、0nM、の4倍系列希釈を含めてもよい。
Milliplex MAP細胞内シグナル伝達緩衝液および検出キット(Millipore catalog#48−602)およびPhospho−IRS−1MAPMates(Millipore catalog#46−627)を採用し、メーカーのインストラクションに従ってpIRS−1レベルの検出を行った。手短に述べれば、2X処理培地(0.5%BSA+/−試験抗体を含むRPMI)を入れた50ul/ウエルV底プレートを用意し、50ul RPMI+0.5%BSA中に再懸濁した1x106細胞血清飢餓状態IM−9細胞を各ウエルに添加した。インスリン処理の前に、(a)後でインスリンの系列希釈を含むウエルに添加するための、単一抗体濃度のバルク抗体/細胞混合物として、または(b)細胞を直接抗体系列希釈を含むウエルに添加し、0.1nMインスリンに添加することにより、15分間抗体前処理を行った。プレートを37℃インキュベーター中に置き、処理時間(全体で15分)の最後の3分間、RTで1500rpmの遠心分離を行った。上清を反転して取り出し、緩やかに吸い取りを行い、処理細胞ペレットを、マルチチャンネルピペットを使って下表4に従って調整した100ul溶解緩衝液(不安定な成分、すなわち、プロテアーゼ阻害剤およびベンゾナーゼ、は使用直前に添加)を使って3回トリチュレートして溶解した。プレートを振盪器にRTで30分間置き、3000rpmで10分間遠心分離して、ライセートを清澄化して、破砕中に発生したと思われる全ての気泡を除去した。50ulの清澄化ライセートを取り出し、検出キットの50uLアッセイ緩衝液−1(AB−1)中で1:1に希釈し、2〜3回破砕して混合した後、50ulを、希釈したビーズの25ul/ウエルの上端にあるフィルタープレートメンブレンにロードした(下記参照)。
フィルタープレートメンブレン(Millipore Catalog#MABVN1250)を25μlAB−1/ウエルで前湿処理した。Millipore真空マニホールドを使って、メンブレンを乾燥しないように注意しながら、前湿処理に使った緩衝液をフィルタープレートから吸引し、全ての残っている液体をフィルタープレートの底から吸引した。25μlの1Xビーズ懸濁液を各ウエルに添加した(pIRS−1ビーズ(Millipore catalog#46−627)は、20X濃縮液からAB−1緩衝液で希釈し、5秒間ずつ3回の、ボルテックス、あるいは、超音波処理により前調製した)。
フィルタープレートウエルを、プレート封止剤で覆い、アルミニウムフォイルをかぶせて、光曝露を防いで、プレート振盪器を使い(Labline、Bellcoプレート振盪器または類似モデルで設定7〜8)、RTで2時間、または4℃で一晩、インキュベートした。
Luminex検出
フィルタープレートを吸引し、底部から吸いとった。ウエルに残ったビーズを100μlのAB−1で洗浄し、振盪器に1〜2分置いた。プレートを吸引し、洗浄工程を繰り返した。
20XストックからAB−1緩衝液で希釈した1Xビオチン化検出抗体の25μl/ウエルを添加し、振盪器を使ってRTで1時間インキュベートした。プレートを吸引し、底部から吸い出した。25XストックからAB−1緩衝液で希釈した1Xストレプトアビジンフィコエリトリンの25μl/ウエルを加え、プレートを、振盪器を使って室温で15分間インキュベートした。25ulの増幅緩衝液(Millipore catalog#48−602)を各ウエルに加え、プレートを、振盪器を使ってRTでさらに15分間インキュベートした。プレートを吸引し、ビーズを150μLのLAB−1に再懸濁して、Luminex(登録商標)装置で読み取った。
結果
図3は、固定濃度の代表的試験抗体の存在下のインスリンの滴定によるpIRS−1アッセイ結果を示す。MFIは、カーブ最適フィットが100%に調整されるように正規化した。一部の抗体(正のモジュレーター)は、インスリン滴定曲線を左へシフトさせた。他の抗体(負のモジュレーター)は、インスリン滴定曲線を右へシフトさせた。多様な大きさの調節が観察された。図3のデータは、抗体が、インスリン感受性の9倍までの増加または24倍までの減少を作り出すことを示す。
図4は、pIRS−1アッセイデータに基づく、種々の機能クラスの抗体の代表的な例を示す。それぞれのケースで、次の2つのモードのアッセイ結果を示す:(i)固定抗体濃度化でのインスリンの滴定、および(ii)固定インスリン濃度下での試験抗体の滴定。
図5は、固定濃度の種々の試験抗体の存在または非存在下のpIRS−1アッセイによるインスリンEC50値を示す表である。結果は、EC50比率+Ab/−Abに従ってランクづけした。
実施例5
抗INSR抗体のAKTおよびMAPKのINSR誘導リン酸化に与える効果の測定
INSRは、インスリン結合後、自己リン酸化を行い、続いて、細胞内のタンパク質、例えば、インスリン受容体基質(IRS)ファミリーメンバー、Shc、およびGab1のリン酸化を触媒するチロシンキナーゼである。これらの各タンパク質は、PI(3)K/AKTおよびMAPキナーゼ(MAPK)経路を含む種々のシグナル伝達経路の活性化をもたらす下流シグナル伝達分子の補充のための結合部位として機能する。これらの経路は、最終的には、細胞増殖および分化、遺伝子発現、グリコーゲン、タンパク質および脂質合成、ならびにグルコース代謝を協調して調節する。
INS/INSR複合体を介したシグナル伝達への試験抗体の効果は、INSRシグナル伝達経路に特異的な特定の細胞内タンパク質、例えば、AKTおよびMAPK(ERK1/2)、のインスリン誘導セリンまたはチロシンリン酸化を強化する抗体の能力を評価することにより測定できる。これらのタンパク質のリン酸化は、電気化学発光、ウェスタンブロッティング、ELISA、および当技術分野で既知の他の技術により測定および定量できる。
この実施例のアッセイでは、ヒトまたはマウスINSRを発現するように操作された、CHOK1細胞を使用した。これらの細胞は、CHO細胞(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)用EX−CELL302無血清培地、2mML−グルタミン、および0.4mg/mL GENETICIN(登録商標)(Invitrogen、Carlsbad、CA)を含む増殖培地中で維持した。親CHOK1細胞は、対照として使用し、GENETICIN(登録商標)を含まない増殖培地中で維持した。
アッセイの前日、細胞をPBSで洗浄し、RPMI1640(Invitrogen)、2mML−グルタミン、0.4mg/mL GENETICIN(登録商標)、および0.5%BSAを含む飢餓培地中に、1x106細胞/mLの濃度で再懸濁し、37℃、5%CO2のインキュベーター中で16〜20時間インキュベートした。GENETICIN(登録商標)を含まない飢餓培地中で、親CHOK1細胞をインキュベートした。翌日、細胞を、0.5%BSAを含むPBSに再懸濁し、1x105細胞を、96−ウエルプレートのウエルに添加した。インスリン添加の約10分前に、0、1、または10ug/mlの試験抗体を加えた。37℃、5%CO2インキュベーターで5〜60分インキュベーション後、処理細胞を遠心分離し、20mMトリス塩酸(pH7.5)、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA、1%トリトンX−100、10mM NaF、ホスファターゼ阻害剤混合物1および2(Sigma−Aldrich)、ならびにComplete Miniプロテアーゼ阻害剤(Roche Diagnostics Corporation、Indianapolis、IN)を含む緩衝液に、4℃で振盪を加えながら1時間溶解した。485xgで3分間遠心分離して、ライセートを清澄化した。MesoScale Discovery Multi−spot Assay System(Meso Scale Discovery、Gaithersburg、MD)を使って、電気化学発光によりライセート中に存在するリン酸化AKTまたはMAPKの量を定量した。GraphPad Prism(登録商標)(GraphPad Software Inc.、La Jolla、CA)ソフトウェアを使ってデータを解析し、4−パラメータロジスティック方程式によりEC50値を計算した。
アゴニスト活性の分析のために、アッセイを以下のように行った。アッセイ前日、細胞をPBSで洗浄し、RPMI1640(Invitrogen)、2mML−グルタミン、0.4mg/mL GENETICIN(登録商標)、および0.5%BSAを含む飢餓培地に、1x106細胞/mLの濃度で再懸濁して、37℃、5%CO2インキュベーターで16〜20時間インキュベートした。GENETICIN(登録商標)を含まない飢餓培地中で、親CHOK1細胞をインキュベートした。翌日、0.5%BSAを含むPBSに細胞を再懸濁し、1x105細胞を96−ウエルプレートのウエルに添加した。37℃、5%CO2インキュベーターで5〜60分試験抗体をインキュベーション後、処理細胞を遠心分離し、20mMトリス塩酸(pH7.5)、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA、1%トリトンX−100、10mM NaF、ホスファターゼ阻害剤混合物1および2(Sigma−Aldrich)、ならびにComplete Miniプロテアーゼ阻害剤(Roche Diagnostics Corporation、Indianapolis、IN)を含む緩衝液に、4℃で振盪を加えながら1時間溶解した。485xgで3分間遠心分離して、ライセートを清澄化した。MesoScale Discovery Multi−spot Assay System(Meso Scale Discovery、Gaithersburg、MD)を使って、電気化学発光によりライセート中に存在するリン酸化AKTまたはMAPKの量を定量した。GraphPad Prism(登録商標)(GraphPad Software Inc.、LaJolla、CA)ソフトウェアを使ってデータを解析し、4−パラメータロジスティック方程式によりEC50値を計算した。
図6は、次の代表的抗体のpAKTアッセイ結果である:(A)正のモジュレーター(増加インスリン誘導シグナル伝達の増加);(B)アゴニズムを伴う正のモジュレーター(インスリン誘導シグナル伝達の増加およびインスリン非依存性シグナル伝達の増加)(C)非モジュレーター(インスリン誘導シグナル伝達に有意な効果なし);(D)アゴニスト(インスリンとは無関係にシグナル伝達が増加;調節活性を有する可能があるかまたはない)(E)負のモジュレーター(インスリン誘導シグナル伝達の減少)。また、アッセイ結果は、抗体が、機能的交差反応性、すなわち、ヒトおよびマウス両方のINSR媒介シグナル伝達に対する効果、を有するか否かについても示している。
実施例6
抗INSR抗体は種々のアゴニズムを示す
実施例4のpIRS−1アッセイおよび実施例5のpAKTアッセイを、選択抗INSR抗体のアゴニズムの度合の測定に使用した。抗体またはインスリンの滴定を使うよりはむしろ、インスリンの非存在下、5μg/mlの抗INSR抗体をアッセイに添加した。インスリン(アゴニズム)の非存在下、アッセイで、INSRを介したシグナル伝達の抗体誘導活性化レベルを測定した。
図7は、選択抗体が一連のアゴニズムを示すことを例証する、一覧にした結果である。
実施例7
正のモジュレーターINSR抗体によりもたらされた、INSRに結合するインスリンの協同性の変化
種々の抗体濃度を使い、系列希釈のインスリンを添加して、1つの正のモジュレーター抗体に対して実施例5のpAKTアッセイを行った。結果は、図8に示す。図8Aは、特異的濃度の抗体およびインスリンの存在下、INSR結合の用量反応があることを示す。図8Bは、種々の濃度の抗体の存在下の、インスリン−INSR相互作用の相対的ヒルスロープを示す。
実施例8
正のモジュレーターINSR抗体によるグルコース取り込みの増強
3T3−L1脂肪細胞のグルコース取り込みに与える正のモジュレーターINSR抗体の効果を測定した。インスリン治療の際は、INSRがリン酸化され、シグナル伝達経路を活性化し、脂肪細胞(脂肪)または筋細胞(筋肉)中のグルコース輸送体4(GLUT4)によるグルコース取り込みの増加につながる。測定グルコース取り込みの測定により、インスリン感受性に対する関連するエンドポイントアッセイが提供される。
GLUT4の基質として3H−2−デオキシグルコースを使ったアッセイを採用した(Zen−Bio、Inc.、Research Triangle Park、NC)。手短に述べれば、3T3−L1前駆脂肪細胞を96ウエルイソプレート中で分化した。成熟後、細胞をアッセイ緩衝液で2回洗浄し、細胞をアッセイ緩衝液中で4時間静置した。細胞を抗INSR抗体、または対照抗体(10ug/ml)、および連続的濃度のインスリン、または0.8nMのインスリン、で15分間処理した。15分後、3H−2−デオキシグルコース混合物を添加することによりグルコース取り込みを開始し、細胞を37℃、5%CO2で10分間インキュベートした。10分後、細胞をPBSで洗浄し、溶解後、シンチレーション液と混合した。各ウエルのCPMを測定した。サイトカラシンB(10μM)を陰性対照として使った。
図9に結果を示す。図9は、正のモジュレーター抗体によるインスリン依存性グルコース取り込みの増強を示す。正のモジュレーター抗体は、インスリン単独に比べ、10μg/ml試験抗体Ab001の存在下、3T3−L1細胞による3H−2−デオキシグルコース取り込みの約2倍の増加をもたらす。
これらの結果は、正のモジュレーター抗体が、インビボグルコース取り込みの誘導およびインスリン抵抗性を示す対象の治療に有用であることを示唆している。
実施例9
細胞培地中のグルコース欠乏に与える抗INSR抗体の効果の測定
細胞培地のグルコース欠乏は、グルコース取り込みの代用測定として使用することができる。抗INSR抗体が培地のグルコース欠乏に与える効果を以下のように測定した。
グルコース欠乏を測定するために、Wako autokitグルコース(Cat#439−90901、Autokit C)をメーカーの説明書に従って使用した。手短に述べれば、24または96ウエルプレート中のDMEM+10%FBSで接着するように適合されたCHOK1細胞株を適切な濃度で播種する。使用前に、細胞を0.5%BSADMEM(無グルコース)中で、一晩グルコースおよび血清飢餓状態にする。飢餓培地を吸引し、試験抗体またはアイソタイプ対照抗体の存在下または非存在下で次記を含む培地を添加した:グループ1、DMEM無グルコース4部:DMEM高グルコース(0.9mg/mL)1部;グループ2、DMEM無グルコース4部:DMEM高グルコース(0.9mg/mL)+インスリン1部。それぞれ所望の時点で、各ウエル毎2uLの培地検体を取り出し、118μLのWako作業溶液を添加する。一部の実施形態では、検体は0、1、2−5、5、10、および24時間目に採取する。グルコース取り込みを吸光度505nmおよび600nMでFLEXSTATIONを使って評価した。グルコースの量は、次のように測定する:[類似検体に対する平均読み値]/[基準に対する平均読み値]。細胞数は、実験の前と終了時点で測定し、細胞増殖のために正規化する。
実施例10
抗INSR抗体の分裂促進的および代謝INSRシグナル伝達のバランスに与える効果の測定
INSRは、次の2つの主要経路により信号伝達を行う:(1)主に代謝を制御し、増殖に幾分影響するPI3キナーゼ/PDK1/PKB経路、および(2)主に細胞増殖を制御するRas/ERK分裂促進的経路。抗INSR抗体が分裂促進的と代謝INSRシグナル伝達の間のバランスに与える効果を当技術分野で記載されているようにして測定する。例えば、Jensen et al.(Vitam Horm.80:51−75、2009)、De Meyts and Shymko、(Novartis Found.Symp.227:46-57、2000);およびRakatzi et al.(Diabetes 52:2227-2238、2003)を参照のこと。
実施例11
抗INSR抗体のインビボでの効果の測定
マウスINSRと交差反応するとわかった抗INSR抗体を多くのインビボモデル中で測定する。DIOモデルでは、C57BL/6J(B6)雄マウス(The Jackson Laboratory、Maine)に高脂肪食事(HFD)を12週間摂食させ、肥満で、軽度から中程度の高血糖および耐糖能障害になっている。このモデルを使ってINSR抗体のインスリン感受性に影響する能力を厳重に制御した設定下で評価する。このシステムは、また、正常状態と病気の状態の下のINSR作用および調節の直接比較を可能とする。この実験では、DIOまたは同年齢のB6マウスに、インスリン抵抗性試験(ITT)での所定の準最大用量のインスリンの投与の24時間前に、INSR抗体を投与する。対照IgGまたは最大インスリンは、それぞれ、陰性および陽性対照の役割をする。インスリンに対する応答性は、血漿グルコースの測定により評価する;60分間にわたるグルコースのより大きな減少は、INSR応答の増加を示唆する。別の試験で、DIOまたはB6マウスには、糖負荷試験(GTT)の24時間前に抗体を投与する。この測定により、低下した空腹時グルコースおよび曲線下面積(AUC)は、インスリン感受性の改善を示す。
2匹のマウスモデルを使って、2型糖尿病の進行に与えるINSR抗体の影響を評価する。ob/obマウス(The Jackson Laboratory、ME)は、レプチン欠乏であり、肥満で、代償性高インスリン血症により軽度の高血糖になっているに過ぎない。このモデルでは、動物は、6週齢の最初にINSR抗体または以前これらの動物で血糖調節を改善することが示された試薬のロシグリタゾン(PPAR−ガンマアゴニスト)の投与を受ける。DIO調査の場合のように、ITTおよびGTTにより、血糖調節を2週毎に6週間評価する。さらに、ヘモグロビンA1c(HbA1c)、長期高血漿グルコースの主要指標、および脂質パネルを調査の最後に評価する。第2のモデルのストレプトゾトシン(STZ)/HFDモデルでは、Swiss Albinoマウス(The Jackson Laboratory、Maine)中の膵臓ベータ細胞が複数の低用量のストレプトゾトシンにより除去されており、一方、インスリン抵抗性は、HFD給餌により誘導される。このモデルでは、動物は、膵臓インスリン産生機能障害(後期T2Dに類似の状況)(Dakshinamoorty et al、J.Pharm.and Pharmacology 60:1167−73(2008))による極度の高血糖である。STZ/HFD動物は、治療され、ob/obモデルと類似の方式で評価され、INSR抗体の疾患進行に対する効果を測定される。
実施例12
部分アゴニスト抗INSR抗体がDIOマウスの血糖調節に与える効果
食事誘導肥満症(DIO)モデルでは、C57BL/6マウスは、高脂肪食事(HFD)を約12〜14週摂食後、インスリン抵抗性となる可能性がある。インビトロで部分アゴニストまたは正のモジュレーターとして振る舞うと実証された抗INSR抗体は、このモデルで評価され、これらの抗体が、インビボでインスリン感受性および/または血糖調節を改善するかどうかが判断される。
部分アゴニスト抗INSR抗体が空腹時血糖を低減するかどうかを判断するために、20週齢DIOマウス(HFDを14週摂食;n=8/群)を5時間絶食させ、静脈内に部分アゴニスト抗体Ab030およびAb037、またはアイソタイプ対照(5mg/kg)を投与した。別の対照調査では、DIOマウスをインスリン(0.5U/kg)で治療、または正常な食事(ND)摂食した同年齢マウスに、アイソタイプ対照(5mg/kg)を投与した。注射前(時間=0)、ならびに投与後1、2および4時間目に血糖検体を採取した。同年齢対照に比べ、血糖増加がDIOマウス(HFD−fed/アイソタイプ対照)の1時間時点で観察され、HFD給餌動物のインスリン抵抗性と一致する(図10A)。インスリンまたはどちらかの部分アゴニスト抗体の投与により、統計的に有意な血糖の減少(p<0.05;片側t検定)が生じた(図10B)。いずれの抗体も、いずれの時点でも低血糖を誘導しなかった(血糖値<36mg/dLと定義して)。これらの結果は、抗INSR部分アゴニスト抗体が、安全にまた効果的に空腹時血糖を低下させることを示唆している。
部分アゴニスト抗INSR抗体の血糖調節に対する効果をさらに評価するために、18週齢DIOマウス(HFDを12週摂食;n=8/群)に腹腔内(IP)にAb037(0.1、1.0、または9mg/kg)またはアイソタイプ対照(1.0mg/kg)を注射した。別の対照として、同年齢の対照マウスにアイソタイプ対照(1.0mg/kg)を投与、またはDIO動物にインスリン(0.75U/kg;IP)を投与した。動物を16時間絶食させ(抗体投与約8時間後開始)、グルコース(1.0U/kg)を注入し、血糖を2時間にわたり追跡することにより、抗体投与24時間後(インスリン後30分)糖負荷試験(GTT)を行った。この実験では、HFDは、空腹時グルコースに(図11B)または急速投与後ピークグルコースに(図11A)有意な影響を与えなかった。それにも拘わらず、DIOマウスでは、部分アゴニスト抗体は、1.0mg/kg以上投与の場合アイソタイプ対照に比べて空腹時血糖を有意に低下させ(図11B)、また、9.0mg/kg投与でGTT曲線下面積(AUC)を減少させた(図11C)。
この結果は、抗INSR部分アゴニスト抗体が空腹時グルコースを低減でき、血糖調節をインビボで改善できることを示している。
実施例13
正のモジュレーター抗INSR抗体がDIOマウスの血糖調節に与える効果
正のモジュレーター抗INSR抗体がインビボでインスリン感受性を改善するか否かを判断するために、18週齢DIOマウス(n=8/群)にAb001(正のモジュレーター)(0.1、1.0または10mg/kg)、部分アゴニスト抗体(Ab037)(10mg/kg)またはアイソタイプ対照(1.0mg/kg)のIP注射により投与を行った。ND摂食同年齢マウスにアイソタイプ対照(1.0mg/kg)を投与し、別の対照として使用した(図12A)。5時間の絶食後インスリン(0.5U/kg)を投与し、血糖値を2時間にわたりモニタリングすることにより、24時間後、インスリン抵抗性試験(ITT)を行った。HFDは、通常の食事に比べ、空腹時グルコースに対し(図12B)またはITTのAUC(図12C)に対し有意な影響を与えなかった。また、部分アゴニスト抗体(Ab037)の投与も正のモジュレーター抗体(Ab001)投与も、アイソタイプ対照治療DIO動物(図12C)と比べて、統計的に有意な低いAUCITTをもたらさなかった。部分アゴニスト抗体Ab037は空腹時グルコースを有意に低減したが、一方、正のモジュレーター抗体Ab001は、非統計的に有意な、空腹時グルコースの減少化傾向の用量依存性を誘導した。
次の週に、追加の用量の抗体を投与後、同じ動物にGTTを行った(図13A)。この調査では、対照摂食動物に比べ、HFDによる空腹時グルコース(図13B)およびGTTAUC(図13C)の非統計的増加が生じた。アイソタイプ対照治療DIOマウスに比べ、部分アゴニスト抗体および正のモジュレーター抗体は、試験用量で空腹時グルコースの有意な低減があった。さらに、アイソタイプ対照に比べ、部分アゴニスト抗体および正のモジュレーター抗体の両方が10mg/kgでのGTTのAUCを有意に低減した。
18週齢DIOマウスに抗体(10mg/kg;n=5/群)を週2回(BIW)、12週間のIP投与で処置することにより、Ab001およびAb037の脂質パラメーターに与える効果を試験した。この実験では、空腹時グルコース、GTTおよびITTに関して、2週間の調査(上述)と類似の効力を観察した。調査の終わりに血漿を集め、標準的ELISAベースの技術を使って脂質を測定した。アイソタイプ対照に比べ、Ab001およびAb037の両方が、DIOマウスの空腹時トリグリセリドおよび総コレステロールレベルを低下させ(p<0.05;図14Aおよび14B)、これらの抗体がインスリン抵抗性に関連する脂質調節不全を改善することがことを示唆している。
18週齢DIOマウス(n=10/群)を使って、さらに2つの他の正のモジュレーター抗INSR抗体をインビボでの血糖パラメーターの改善に関し評価した。この調査では、正のモジュレーター抗体Ab083およびAb085をAb001およびAb037、ならびにアイソタイプ対照抗体に対して比較した。アイソタイプ対照抗体で処置したND摂食の同年齢群を追加の対照として使用した。全抗体に10mg/kgをBIWでIP投与した。抗体の3回目の投与の翌日、空腹時血糖を測定し、GTT試験を行った。血糖調節は、同様に処置された同年齢ND摂食動物と比べて、アイソタイプ対照治療DIOマウスで大きく損なわれ、GTT経時変化による評価および対応するAUC測定結果に反映されている(図15Aおよび15B)。この実験では、Ab037およびAb083は、AUCを正常値と区別できないレベルまで改善し(p<0.05HFD/アイソタイプ対照と比較して)、一方、Ab001は、有意な改善をもたらさなかった。同様に、空腹時グルコースに関して、アイソタイプ対照治療DIOおよび同年齢ND摂食マウスの間で有意さが観察され、Ab037およびAb001の両方が統計的に有意な正常化効果を発揮した(p<0.05;図15C)。Ab083は、小さな、非統計的に有意な空腹時血糖の改善をもたらし、一方、Ab085は、このパラメーターに関し何らの変化も誘発しなかった。
抗INSR抗体のインビボ機能に与える効果の別の測定は、恒常性モデル評価-インスリン抵抗性(HOMA−IR)によるものである。HOMA−IRは、空腹時血漿グルコースおよび空腹時血漿インスリンレベルに基づき、インビボインスリン感受性の代用測定として開発された経験的数式である:HOMA−IR=空腹時血漿インスリン(μIU/mL)x空腹時血漿グルコース(mmol/L)/22.5、または代わりに変換因子22.5を組み込んだ式:インスリン(ng/mL)xグルコース(mM)、を使う。HOMA−IRの例は、Owyang et al.、Endocrinology 151:2515−27、2010およびMatthews et al.、Diabetologia.28:412−9、1985、に記載がある。
投薬の4週後、血漿グルコース、インスリンおよび脂質を評価した。Ab083およびAb037は、この時点で、血漿グルコースを下げたが、一方、Ab083およびAb085は、インスリンを低下させた(p<0.05;図16Aおよび16B)。インスリン抵抗性のこのモデルでは、これらの効果は、HOMA−IR(p<0.05;図16C)により求められるAb083およびAb085に関するインスリン感受性の改善に置き換えられる。脂質に関しては、Ab085は、トリグリセリドのみを有意に改善した(p<0.05;図16D)、一方、Ab083およびAb037は、非エステル化、総および非HDLコレステロールを有意に低下させた(p<0.05;図16E−G)。後者2つの抗体は、また、非HDL/HDLコレステロール比率も改善した(図16H)。Ab001は、総および非HDLコレステロールの両方を有意に改善した。
驚くべきことに、全4つの抗体は、アイソタイプ対照と比べて、治療の3週間にわたり、体重をベースライン未満に下げることなく、DIOマウスの体重増を低下させた(図17Aおよび17B)。これらの結果は、正のモジュレーター抗体Ab083およびアゴニスト抗体Ab037が、DIOマウスの耐糖能障害を矯正し、さらに、モジュレーター抗体Ab083およびAb085が、インスリン感受性を改善することを示しており、また、全4つの抗体が、HFDにより生じた体重増を減らす能力を有することを示唆している。
これらの結果は、INSRに特異的な部分アゴニストおよび正のモジュレーター抗体は、糖尿病対象の血糖調節を改善することを示唆している。
実施例14
部分アゴニストおよび正のモジュレーター抗INSR抗体がdb/dbマウスの血糖調節および疾患に与える効果
自発的Leprdb対立遺伝子のホモ接合マウスは、レプチン受容体機能が欠け、3〜4週齢から徐々にインスリン抵抗性および肥満になる。これらのマウスでは、約8〜10週齢までインスリンレベルが上昇し、この時点で、動物は、極度のインスリン抵抗性および高インスリン型である。それにも拘わらず、この遺伝的背景で、約10週齢後、無制御高血糖になり、膵臓ベータ細胞機能障害をもたらし、最終的にベータ細胞機能不全につながる。インビトロで部分アゴニストまたは正のモジュレーターとして行動することが示された抗INSR抗体をこのモデルで評価し、これらの抗体がインビボでインスリン感受性、血糖調節および/または疾患進行を改善するかどうかを判断した。
極度の肥満症と組み合わされた進行性インスリン抵抗性およびベータ細胞機能不全の設定で、db/dbマウスを使用して、Ab001およびAb037の活性を評価した。この実験では、Ab001(1mg/kgもしくは10mg/kg)、Ab037(10mg/kg)またはアイソタイプ対照抗体(1mg/kgもしくは10mg/kg)を5週齢db/dbマウス(n=10/群)にBIWでIP投与した。追加の対照として、表現型的には正常な、同年齢ヘテロ接合同腹仔の群に10mg/kgのアイソタイプ対照抗体を同様に投与した。DIOモデルの場合と同様に、最初の治療の5週の間、アイソタイプ対照治療マウスに比べ、10mg/kgのAb001またはAb037で治療した動物で体重増が有意に減少した(p<0.05;図18Aおよび18C)。重要なことに、10週齢に相当する、5週間の治療後、膵臓ベータ細胞欠乏の結果により、通常db/dbマウスの重量減少が始まるこの時期に、両抗体が体重減少を少なくした(p<0.05;図18Bおよび18D)。10週間の治療後、Ab001またはAb037の10mg/kgでの治療により、対応するアイソタイプ対照治療群と比べて、空腹時血糖の有意な改善が観察された(p<0.05;図19A)。さらに、この時点で、HbA1cが1mg/kgAb001群で有意に減少し、また、10mg/kgのAb001群で、より少ない程度に減少した(p<0.05;図19B)。
投薬の14週後、血漿インスリンおよび脂質を評価した。この時点で、Ab001(10mg/kg)およびAb037の両方がある年齢(約20週齢)で循環インスリンを増加させたが(p<0.05;図20A)、この年齢では、これらの動物は、膵臓ベータ細胞機能不全になっていると予想され、両mAbがインスリン産物をインスリン不足動物中に貯蔵できることを示唆している。さらに、Ab001(10mg/kg)は、血漿トリグリセリド、総コレステロール、非HDLコレステロール、非エステル化コレステロールおよび非HDL/HDLコレステロール比率(p<0.05;図20B−F)を有意に改善した。非エステル化コレステロールの有意な減少およびトリグリセリド低下傾向がAb037治療動物由来血漿で観察された(それぞれ、p<0.05およびp=0.08;図20Bおよび20C)。
興味深いことに、DIOモデルのケースと同様に、動物がインスリン抵抗性であるが、極度のベータ細胞欠乏が予測されない間に、体重増の減少が早期に起こる。しかし、この実験では、血糖調節および糖化ヘモグロビンのAb001誘導による変化は、後期相で起こり、この時期には、動物はベータ細胞機能不全であると予想される。さらに、この時期の間、両抗体は、病理学的体重減を減少させた。理論に拘泥するわけではないが、今結果は、重量および血糖調節に与える抗INSR抗体の効果は、連携しているが別々に起こりうることを示唆している。これらのデータは、インスリン抵抗性およびベータ細胞欠乏の組み合わされた状態下で、Ab001が重量を正常化し、血糖調節を改善し、さらに、部分的に脂質異常症を修正することができることを示唆している。
極度のインスリン抵抗性およびインスリン不足状態下で抗体の作用を評価するために、進行性膵臓ベータ細胞機能不全が現れると予測される10週齢db/dbマウスに、Ab001、Ab037、Ab083、Ab085またはアイソタイプ対照抗体の10mg/kgをBIWで8週間IP投与して治療した。調査期間中、空腹時血糖を毎週測定した。この調査では、アイソタイプ対照に比較して、Ab085が空腹時血糖を有意に減少させた(p<0.05;図21)。これは、Ab085がインスリン抵抗性、低インスリン状態下の疾患を改善することを示す。
極度のインスリン抵抗性が現れると予測される5週齢db/dbマウスのインスリン抵抗性の改善に関して、2つの別の正のモジュレーター抗INSR抗体を評価した。マウスAb001、Ab037、Ab083、Ab085またはアイソタイプ対照抗体の10mg/kgをBIWで4週間IP投与して治療し、ベータ細胞機能不全の発症前に、抗体のインスリン抵抗性に与える効果を評価した。空腹時血漿グルコースおよび空腹時血漿インスリンを調査の終わりに測定し、HOMA−IRを計算した。この調査では、アイソタイプ対照に比較して、Ab083およびAb085がインスリン抵抗性を有意に改善し(p<0.05;図22)、これらの抗体がこの糖尿病モデルでインスリン感受性を改善することを示した。
実施例15
部分アゴニストおよび正のモジュレーター抗INSR抗体がMLDS/HFDマウスの血糖調節および疾患に与える効果
頻 回低用量ストレプトゾトシン(MLDS)/HFDモデルでは、インスリン抵抗性は、6週齢ICRマウスにHFD(40kcal%脂肪)を4週間給餌することにより実現され、この間、5回の一日量ストレプトゾトシン(第3週の間に、40mg/kg)をIP投与し部分的にベータ細胞機能を除去する。インビトロで部分アゴニストまたは正のモジュレーターとして機能することが示された抗INSR抗体をこのモデルで評価し、これらの抗体がインビボでインスリン感受性、血糖調節および/または疾患進行を改善するかどうかを判断した。
Ab001およびAb037のインスリン抵抗性およびベータ細胞機能不全を組み合わせたモデルにおける疾患に対する効果を評価するために、MLDS/HFDマウス(n=10/群)にAb001、Ab037またはアイソタイプ対照抗体の10mg/kgをBIWで6週間IP投与した。最初の投与の1週間後、同年齢の正常な動物と比べて、空腹時血糖の3倍増加がアイソタイプ対照治療の病気のマウスで観察され、糖尿病性表現型が獲得されたことが確認できた。この時点で、GTTを行い、Ab001およびAb037の両方に対し、血糖調節の有意な改善が示された(p<0.05;図23Aおよび23B)。空腹時血糖は、また、Ab037(p<0.05)で治療したマウス群で有意な減少があったが、一方、Ab001による有意な変化は誘発されなかった(図23C)。1週間後、給餌グルコースを評価した。空腹時グルコースと同様に、MLDS/HFDマウスの疾患が著しく高い給餌グルコース値により明らかで、これはAb037により改善された(p<0.05;図24A)。これらのGTTの改善および給餌/空腹時グルコースと整合して、Ab037は、投薬の6週間後、HbA1cを約1.5%減少させた(p<0.05;図24B)。調査の終わりの血漿分析により、Ab037治療は、血漿インスリンの統計的に有意な正常化および非HDL/HDLコレステロール比率のより小さい減少をもたらし、一方、Ab001は、血漿レプチン濃度を有意に改善し、類似だがより小さい矯正的影響を血漿インスリンに対し与える(p<0.05;図25A−C)ことを示した。このモデルは、db/dbモデルの場合のような一貫した、疾患関連重量変化を示さず、このモデルでは、Ab001もAb037も、体重に影響を与えなかった(図26)。これは、他のインビボモデルでこれらの抗体に関し観察された体重増の減少が、非特異的効果ではなかったことを示唆している。このデータは、Ab037がMLDS/HFDマウスの複数の疾患の徴候を改善し、一方、Ab001も、このモデルの障害性血糖調節の一部のパラメーターを修正することを示している。
2つの別の正のモジュレーター抗INSR抗体をインビボでの血糖パラメーターの改善に関し評価した。MLDS/HFDマウス(n=10/群)にAb001、Ab037、Ab083、Ab085またはアイソタイプ対照抗体の10mg/kgをBIWで6週間IP投与した。治療の3週後、GTTを行い、アイソタイプ対照と比べて、Ab037およびAb083が血糖調節を完全に正常化することが示された(p<0.05;図27Aおよび27B)。空腹時血糖も、6週間の調査期間中、Ab037またはAb083で治療したマウスで有意に減少し(p<0.05)、一方、Ab001またはAb085では有意な変化は誘発されなかった(図28)。調査の終わりに、血漿脂質評価した。Ab083は、血漿トリグリセリド、非エステル化コレステロール、総コレステロール、非HDLコレステロール、非HDL/HDLコレステロール比率および遊離脂肪酸を有意に改善した(p<0.05;図29A−F)。さらに、Ab001は、総、非HDLおよび非エステル化コレステロール、ならびに非HDL/HDLコレステロール比率を有意に減少させた。Ab037は、非HDLコレステロール、非エステル化コレステロール、非HDL/HDLコレステロール比率および遊離脂肪酸を改善した。この実験では、Ab085は、遊離脂肪酸のみを有意に減少させた。GTTおよび空腹時グルコースの改善の観察結果と整合して、Ab037およびAb083は、投薬6週間後、HbA1cを有意に減少させた(p<0.05;図30)。さらに、空腹時グルコースおよび耐糖能であまり効果を発揮しなかったが、特定の脂質パラメーターを改善したAb001およびAb085が、また、HbA1cも低減させた。前の実験の場合のように、このモデルでは、投薬の最初の3週間の間、体重増を減したAb085(図31)を除いて、いずれのmAbも体重に有意に影響を与えなかった。このデータは、この体重無変化(weight neutral)モデルで体重に影響を与えることなく、4つの試験抗体全てがMLDS/HFDマウスの複数の疾患の徴候を改善することを示している。
実施例16
部分アゴニストおよび正のモジュレーター抗INSR抗体の24時間投与がインビボのINSRリン酸化に与える効果
抗INSR抗体の短期間投与による肝臓および筋肉、等のインスリン感受性組織のINSRチロシンリン酸化の増加によって、抗体が生物学的に利用可能であり、インビトロで観察されたのと同様にインビボでINSRに対し作用可能であることが確認される。この実験では、インビトロで部分アゴニストまたは正のモジュレーターであると特定された抗INSR抗体をC56BL/6雄マウスに24時間投与し、これら抗体が基底ならびにインスリン誘導肝臓および筋肉INSRリン酸化に与える効果を評価した。
INSR部分アゴニストおよび正のモジュレーターが肝臓および筋肉のINSRリン酸化を増加させるかどうかを判断するために、10週齢C56BL/6雄マウス(n=3)に抗INSRまたはアイソタイプ対照抗体(10mg/kg)を24時間投与し、さらに、マウスにインスリン急速投与(1U/kg)またはPBSの10分間投与をして、ELISAを使って、肝臓および筋肉のINSRチロシンリン酸化に与える効果を測定した。リン酸化INSR濃度濃度は、全体インスリン受容体濃度に対し正規化し、パーセンテージで表した。
外因性のインスリン(1U/kg)は、肝臓においても筋肉においても、対照動物のINSRリン酸化を有意に増加させなかった(増加させそうな傾向はあったが)(図32A、B)。しかし、肝臓では、Ab083−およびAb037−治療マウスでのインスリン刺激INSRリン酸化の有意な増加(p<0.05)ならびに、ほぼ有意なAb085−治療マウスでの増加(p=0.07)が観察された(図32A)。この結果は、部分アゴニストおよび正のモジュレーター抗体がインビボでのインスリンに対する応答性を増加させることが可能であることを示唆している。興味深いことに、肝臓では、Ab083は、基底状態(外因性のインスリンのない状態)でもINSRリン酸化を有意に増加させ、Ab083は、空腹時レベルの少ない内在性インスリンの存在下でもインスリンへの応答を感作することが可能であることを示唆している。
抗INSR部分アゴニストおよび正のモジュレーター抗体による最も顕著な効果は、筋肉で認められた。3つの抗INSR抗体全ては、インスリン急速投与を受けたマウスのインスリンシグナル伝達を正に調節した一方で、対照動物に比較した場合、Ab083およびAb085(こちらの方が作用が大きい)もまた、内在性の、空腹時レベルのインスリンに対する筋肉INSRシグナル伝達を感作させた(図32B)。
これらの結果は、部分アゴニストおよび正のモジュレーター抗INSR抗体の両方が、インビボでの肝臓および筋肉中のインスリン媒介シグナル伝達に対する応答性を改善することを示唆している。Ab037の効果に比べ、抗体Ab083およびAb085は、相対的に低いインスリン濃度でINSRを感作する。
実施例17
別の抗体ファージディスプレイライブラリー由来の抗INSR抗体の単離
別のナイーブ抗体ライブラリーからINSR特異的抗体を選別した。
(1)ファージパニングおよびレスキュー
ヒトインスリン受容体(hINSR)(R&D Systems、Minneapolis、MN)を実施例1に記載のようにビオチン化し、別のナイーブ抗体ファージディスプレイライブラリーのパニングに使用した。
A.scFvライブラリー
scFvナイーブライブラリー:ファージパニングの最初のラウンドで、scFvラムダファージディスプレイライブラリー由来の4.5x1012cfuのファージ粒子またはscFvカッパファージディスプレイライブラリー(XOMALLC、Berkeley、CA)由来の4.12x1012cfuのファージ粒子を、1mlの5%ミルク/PBS(Teknova、Hollister、CA)中でゆっくり回転させながら室温(RT)で1時間ブロッキングした。これは、2つの別のパニング、scFvカッパおよびscFvラムダ、を表している。ストレプトアビジンコート磁性Dynabeads(登録商標)M−280(Invitrogen Dynal AS、Oslo、Norway)に対して、ブロッキングしたファージの30分の選択解除を2回行った。ビオチン−hINSR−hINS複合体を形成するために、103pモルのビオチン化hINSRを5%ミルク/PBSに溶解した過剰(2,100pモル)のヒトインスリン(hINS)(Sigma、St Louis、MO)と共に、RTで1時間ゆっくり回転させながらプレインキュベートした。第2ラウンドのパニングでは、50pモルのビオチン−hINSRを1050pモルhINSと一緒に使用した。最終ラウンドのパニングでは、25pモルのビオチン−hINSRを525pモルhINSと共にインキュベートした。
B.Fabライブラリー
Fabナイーブライブラリー:最初のラウンドのファージパニングでは、2つの別のレスキューのFabラムダライブラリー(XOMALLC、Berkeley、CA)由来の1.2x1013cfuのファージ粒子もしくは1.8x1013cfuのファージ粒子、または2つの別のレスキューのFabカッパライブラリー(XOMALLC、Berkeley、CA)由来の7.2x1012cfuのファージ粒子または1.8x1013cfuのファージ粒子を、1mlの5%ミルク/PBS(Teknova、Hollister、CA)中でゆっくり回転させながら室温(RT)で1時間ブロッキングした。これは、4つの別個のパニングを表している。ストレプトアビジンコート磁性Dynabeads(登録商標)M−280(Invitrogen Dynal AS、Oslo、Norway)に対して、ブロッキングしたファージの30分の選択解除を2回行った。ビオチン−hINSR−hINS複合体を形成するために、103pモルのビオチン化hINSRを5%ミルク/PBSに溶解した過剰(2,100pモル)のヒトインスリン(hINS)(Sigma、St Louis、MO)と共に、RTで1時間ゆっくり回転させながらプレインキュベートした。第2ラウンドのパニングでは、50pモルのビオチン−hINSRを1050pモルhINSと一緒に使用した。最終ラウンドのパニングでは、25pモルのビオチン−hINSRを525pモルhINSと共にインキュベートした。
ビオチン−hINSR/hINS溶液を、ブロッキングしたストレプトアビジンコート磁性Dynabeads(登録商標)M−280(Invitrogen Dynal AS、Oslo、Norway)と共に30分間、ゆっくり回転させながらインキュベートし、ビオチン−hINSR−hINS複合体に固定化した。選択解除したファージを、ビオチン−hINSR−hINSストレプトアビジンビーズと共にRTで2時間インキュベートした。hINSRをhINSで飽和させるために、追加のhINS(2,100pモル)を溶液に加えた。ビーズを洗浄した。最初のラウンドのパニングでは、0.5%ミルク−PBS−0.1%TWEENで素早く3回ビーズを洗浄し(すなわち、磁石を使ってビーズを溶液から取り出し、1mlの洗浄緩衝液中に再懸濁した)、次に、0.5%ミルク−PBSによる3回の洗浄、続けて、PBSで1回の急速洗浄を行った。第2ラウンドのパニングでは、ビーズに対し、0.5%ミルク−PBS−0.1%TWEENで素早く5回洗浄し、続けて0.5%ミルク−PBS−0.1%TWEENによる5分の洗浄を1回(1mlの洗浄緩衝液中、室温でゆっくり回転させながら)さらに0.5%ミルク−PBSによる5回の洗浄とその後の0.5%ミルク−PBSによる5分の洗浄を1回、およびPBSでの1回の急速洗浄を行った。第3ラウンドのパニングでは、ビーズに対し、0.5%ミルク−PBS−0.1%TWEENを使っての4回の急速洗浄に続けて、0.5%ミルク−PBS−0.1%TWEENによる5分の洗浄を2回、さらに0.5%ミルク−PBSでの4回の急速洗浄とそれに続く、0.5%ミルク−PBSでの5分の洗浄を2回、その後のPBSによる1回の急速洗浄を行った。
C.溶出およびレスキュー
hINSR−hINS−ストレプトアビジンビーズ結合ファージを、0.5mlの100mMトリエチルアミン(TEA)を使い、RTでゆっくり回転させながら30分間溶出した。ビーズを溶出液から分離した。溶出液を取り出し、0.5mlの1Mトリス塩酸(pH7.4)で中和した。ビーズを1mlの1Mトリス塩酸(pH7.4)で中和した。ビーズまたは溶出液由来の溶出ファージを、別々に使用し、OD600が約0.5に達するとTG1細菌性細胞(Stratagene、La Jolla、CA)に注入した。37℃で30分間の振盪なしでの感染、および37℃で90rpmの振盪を30分間加えての感染後、細胞をペレット化し、100ug/mlカルベニシリンおよび2%グルコースを補充した2YT培養液中に再懸濁した。再懸濁細胞を100ug/mlカルベニシリンおよび2%グルコースを含む2YT寒天プレートに播種して、30℃で一晩インキュベートした。
次に、ヘルパーファージM13KO7(New England Biolabs、MA)を使ってファージを約20の感染多重度(MOI)でレスキューした。0.5のOD600で37℃、30分間振盪無しでのヘルパーファージのTG1細胞への感染、および100rpm振盪下の37℃で30分間のインキュベーション後、100ug/mlカルベニシリンおよび50ug/mlカナマイシン補充2YT培養液に細胞ペレットを再懸濁し、25℃、250rpmで一晩増殖させた。厳密な遠心分離を行った後、上清中のファージを回収し、次のラウンドのパニングに使用した。第3ラウンドのパニングに対し、ファージ選択からの濃縮をモニターするために、投入と産生ファージの量を滴定した。
(2)ヒトINSR/hINSまたはマウスINSR/hINS複合体に対する抗体クローンのFACS選別
個別のコロニーを取り出し、96ウエルプレートで増殖させ、1:3容量比率の氷冷PPB溶液(Teknova、Hollister、CA)とddH2O、およびプロテアーゼ阻害剤(Roche、Indianapolis、IN)を使う標準的方法により細菌性周辺質抽出物を生成するために使用した。hINSR/hINSまたはマウスINSR/hINS複合体に対し、ライセート上清をFACSでアッセイした。ここでは、IM−9細胞の代わりに、hINSRまたはmuINSRを形質移入したCHO−K1に適合させた懸濁液を使用し、インスリンに曝した細胞を70nMでなく150nMのヒトインスリンを補充したFACS緩衝液中に再懸濁したことを除いて、実施例2で記載したプロトコルを使用した。このアッセイは、少なくとも次の6タイプの抗体検出を可能とした:
1.ヒトインスリンに曝された場合は、hINSR−CHO細胞にのみ結合する抗体(種特異的方式でINS/INSR複合体だけに結合する)
2.ヒトインスリンに曝された場合は、muINSR−CHO細胞にのみ結合する抗体(種特異的方式でINS/INSR複合体だけに結合する)
3.ヒトインスリンに曝された場合は、hINSR−CHOおよびmuINSR−CHO細胞の両方に結合する抗体(種間交差反応方式でINS/INSR複合体のみに結合する)
4.hINSR−CHO細胞にのみ結合する抗体(種特異的方式でINSRだけに結合する)
5.muINSR−CHO細胞にのみ結合する抗体(種特異的方式でINSRだけに結合する)
6.hINSR−CHOおよびmuINSR−CHO細胞の両方に結合する抗体(種間交差反応方式でINSRだけに結合する)
実施例2に記載のように抗体を記録した。単離抗体の軽鎖および重鎖配列の配列決定を行い、配列番号87〜147(軽鎖)および配列番号223〜284(重鎖)に示す。
結果
細菌性周辺質抽出物のFACS選別により、ヒト受容体または受容体/リガンド複合体、hINSRもしくはhINSR−hINS、またはマウス受容体もしくは受容体/リガンド複合体、muINSRもしくはmuINSR/hINSに結合する複数の抗体が特定された。これらのナイーブライブラリーから選択された33パーセント(1,488中の484)のクローンがhINSRまたはhINSR−hINS複合体に結合可能であった。これらのナイーブライブラリーから選択された25パーセント(1,488中の370)のクローンがmuINSRまたはmuINSR−hINS複合体に結合可能であった。16パーセント(1,488中の234)のクローンがFACSによりhINSRまたはhINSR−hINSおよびmuINSRまたはmuINSR/hINS複合体の両方に結合した。
選択したクローンをIgG2抗体として再フォーマットした。選択されたscFv断片の可変重鎖(VH)および軽鎖(VL)をPCR増幅し、抗体定常領域遺伝子を含むプラスミドベクターに挿入し、標準的方法を使って293EEBNAヒト細胞に形質移入した。再フォーマットした抗体のhINSRまたはhINSR−hINSまたはmuINSRまたはmuINSR/hINSに対する結合を上述のFACSにより評価した。結果を図33に示す。
結果は、特定の再フォーマット抗体が、マウスおよびヒトINSRの両方に結合することを示す。また、図33は、特定の再フォーマット抗体が、インスリンの存在および非存在下で、特異的にINSRに結合し、従って、INSRに対するインスリンの結合を調節することが予想されることを示している。
実施例18
INSRに対するアロステリックアゴニスト抗体のパニング
受容体/リガンドの複合体に対し、遊離受容体より強い結合を示すアゴニスト抗体の選択によって、リガンドと非競合的であり、また、リガンドが受容体のオルソステリック部位へ結合するのを遮断しない、または弱めない抗体を特定できる可能性が高くなる。内在性結合部位とは異なる標的受容体の部位に結合するこのタイプの抗体は、アロステリックアゴニストとして知られている(Kenakin et al.、Journal of Receptors and Signal Transduction、27:247−259、2007;Jahns et al.、J Am Coll Cardiol.36:1280−87、2000;May et al.、Ann Rev Toxicol.47:1−51、2007)。
アゴニスト抗体を選別する上述の方法は、また、アロステリックアゴニストを選別するのに有用である。受容体リガンド複合体に対する試験抗体の好ましい結合は、アロステリック活性と一致するが、一方で、遊離受容体に対する試験抗体の好ましい結合は、オルソステリック部位に対してインスリンと競合する抗体と一致する。選別は、全ての競合的アゴニストではないにしても、一部を除去することにより、アロステリックアゴニストに対する候補クローンのプールを濃縮するのに有用である。
アロステリック抗体は、リガンドの結合親和性および効力を妨害する可能性がより少なく、従って、最大リガンドシグナル伝達またはリガンドに対する最大感受性を妨害する可能性がより少ない。アロステリック抗体は、弱い部分アゴニストから内在性リガンドと類似のアゴニズムレベルまでの様々なアゴニズムを示すことができる。部分アロステリックアゴニストは、内在性リガンドの最大応答よりもかなり小さい大きさの最大シグナル伝達応答を誘発すると思われる。持続性準最大シグナル活性化の方が最大シグナル活性化よりも好ましい一部の用途では、完全アゴニスト抗体よりも部分アゴニスト抗体が好ましい。部分アロステリックアゴニストおよび正のモジュレーター(感作物質)の間の区別できる特徴は、図34および17の用量反応曲線の比較から明らかであり、部分アロステリックアゴニスト(図34)および正のモジュレーター(感作物質)抗体(図35)に対して異なる結合曲線を示す。
図34Aは、内在性リガンドに対する用量反応と比較して、部分アロステリックアゴニストからの用量反応の例を示す。また、図34Bは、アロステリックアゴニストの存在または非存在下での、リガンドによる活性化を示す。図35Aは、内在性リガンドに対する用量反応と比較して、正のアロステリックモジュレーター抗体からの用量反応を示す。一方、図35Bは、正のモジュレーター抗体の存在および非存在下での、内在性リガンドの用量反応曲線を示す。図36は、内在性リガンドと比較して、一連の部分アロステリックアゴニストに対する活性化パラメーターを示す。部分アロステリックアゴニストによるシグナル活性化の性質は、同じ1次選別手法から得た正のモジュレーターの性質とは異なる。
非競合的部分アロステリックアゴニスト抗体は、部分アゴニストおよび内在性リガンドの両方によって同時に別個のシグナル活性化を有するのに有益である場合に、競合的アゴニストよりも治療上の利点を提供することができる。例えば、理論に拘泥するつもりはないが、部分アロステリックアゴニストは、内在性リガンドレベルでの一過性の変動からの応答を依然として許容しながら、シグナル伝達経路の基底の活性化を高めるために使用できる。特定の例では、この種の部分アロステリックアゴニストが存在する条件の下、内在性リガンド用量反応は、ベースライン(恒常的または基底)シグナル伝達レベルの増加を示し、また、ほとんど、または全く有意な変化が無い内在性リガンドと比べて、リガンドEC50において、同じまたはより大きな最大応答を達成すると思われる。例えば、図34Bは、部分アロステリックアゴニストの存在および非存在下の内在性リガンドの用量反応を示し、図37は、陰性対照抗体の存在下の内在性リガンドに対する最大応答と比較して、存在部分アロステリックアゴニスト抗体の存在下のインスリンの最大活性化を示す。図37は、部分アロステリックアゴニスト抗体Ab037およびAb040が、同じアッセイ内の陰性対照抗体と比べて、用量反応のEC50およびインスリンによるAktのSer473の最大リン酸化にほとんど、または全く有意な影響を与えないことを立証している。
実施例19
抗INSR抗体の機能クラスの例:Aktのインスリン誘導リン酸化に対する特異的効果
インスリン/インスリン受容体複合体を介したシグナル伝達に与える試験抗体の効果を、抗体がインスリン誘導Aktリン酸化を感作し、刺激する能力を評価することにより測定した。アッセイを実施例5に記載した方法を使って行った。示した全データで、パーセントpAtk pSer473値は、相対的で、必ずしも絶対的細胞性pAkt pSer473レベルを表していない。
図38〜40は、親のCHO−K1細胞、ヒトインスリン受容体を発現しているCHO−K1細胞およびマウスインスリン受容体を発現しているCHO−K1細胞に対する、インスリンが存在しない場合、または準最大濃度のインスリンの存在下のpAkt抗体用量反応曲線を示す。インスリンが無い場合の抗体の滴定(中空記号)により、抗体アゴニズム活性の徴候が認められる。準最大レベルのインスリンの存在下の抗体の平行滴定(中実記号)により、アゴニズム活性に関する感作活性の徴候が認められる。ある値以上のpAktレベルは、同じ抗体濃度のアゴニズム活性より大きいインスリンのEC30濃度(点線)に起因する。感作活性は、そのpAktレベルの増加として観察される。インスリンが存在しない場合は、抗体Ab077、Ab078およびAb085(図38A〜C)は、有意なアゴニズムを示さない。抗体Ab001、Ab079およびAb083は弱いアゴニストであり(図39A〜C)、また、抗体Ab080は、中等度のレベルのアゴニズムを示す(図40)。また、アッセイ結果は、抗体が機能的交差反応性を有するかどうか、すなわち、ヒトおよびマウスINSR媒介シグナル伝達の両方に対し効果があるかどうかを示している。ここで留意すべきは、FACSベースアッセイでCHO−K1細胞に発現したインスリン受容体に対する結合を評価の結果として、抗体Ab078およびAb085が、インスリンの存在下、インスリン受容体のみに結合する、すなわち、非占有インスリン受容体には検出可能なほどには結合しない、ことである。
図41A〜Cは、IgG2アイソタイプ対照抗体抗KLH(実線)存在下のインスリンと比較して、固定濃度の感作抗体存在下のインスリン誘導pAkt活性化を示す。インスリンが存在しない場合の、インスリン用量反応滴定で使用した濃度での、抗体のpAkt活性化レベルを点線で示す。アイソタイプ対照と比較して、感作抗体の存在下のインスリン誘導pAkt活性化のEC50値およびEC50値の倍率変化を表5に示す。
(表5)感作物質抗体の存在下のpAktのインスリン誘導活性化に関するEC50値
図42A〜Bは、インスリン単独に比較して、インスリンが無い場合の部分アロステリックアゴニスト抗体のpAkt活性化作用を示す。抗体Ab037、Ab053およびAb062は全て、ヒトまたはマウスインスリン受容体を発現しているCHO−K1細胞のインスリンよりも有意に少ない最大活性化プラトーを有するpAkt活性のアゴニストとして作用する。また、アッセイ結果は、抗体が機能的交差反応性を示すかどうか、すなわち、ヒトおよびマウスインスリン受容体媒介シグナル伝達の両方に効果があるかどうかを示している。抗体EC50値および最大活性化レベルを表6に示す。
(表6)最大活性化レベルおよび部分アロステリックアゴニストのEC50値
図43は、インスリン単独に比較して、固定濃度の部分アロステリックアゴニスト抗体の存在下のインスリン依存性pAkt活性化を示す。抗体のアゴニスト活性は、インスリン用量反応のベースラインの増加として観察される。アゴニスト抗体Ab037およびAb053は、インスリン感受性に対しほとんど効果がなく、これは、これらの抗体の存在下で、インスリンEC50およびヒル係数の有意な変化がないことに反映されている(表7参照)。Ab062の存在下のインスリンのEC50が6.6倍高いので、抗体Ab062は、インスリン感受性を低下させるように思われる(表7参照)。
(表7)アゴニスト抗体の存在および非存在下のインスリン活性化パラメーター
実施例20
抗INSR抗体83−7はhINSRに対するインスリン結合の正のモジュレーターではない
抗INSR抗体83−7は、前に、ヒトインスリン受容体に対し特異的であると認定されたが、しかし、83−7抗体が、インスリン−インスリン受容体結合に対しどのような調節能力を有するかは示されなかった。インスリン−インスリン受容体相互作用を動力学的に調節する83−7抗体の能力を評価するために、AKTのインスリン−誘導セリンリン酸化を83−7の存在の下、測定した。
抗体83−7をコードするVHおよびVL配列(McKern et al.、Nature 443:218−221、2006)を合成し、抗体(IgG1、ラムダ軽鎖)をHEK293EBNA細胞中に過渡的に発現させた。プロテインA捕獲およびサイズ排除クロマトグラフィーを使って抗体を精製した。AKTのインスリン誘導セリンリン酸化を強化する83−7の能力を実施例5に記載の方法を使って測定した。図44は、(A)ヒトINSR、または(B)マウスINSRを発現しているCHOK1細胞上の83−7およびAb001に対するpAKTアッセイ結果を示す。抗体83−7は、インスリン依存性INSRシグナル伝達を正に調節せず、ヒトINSRに対するアゴニスト活性のみを示し、また、マウスINSRに対するアゴニズムを示さなかった。対照的に、Ab001は、ヒトINSRおよびマウスINSRの両方に対し、インスリン依存性INSRシグナル伝達を約10倍、正に調節した。
実施例21
INSRに対するインスリン結合親和性の抗INSR抗体による調節の測定アッセイ
インスリン受容体に対するインスリンの結合に影響を与える調節抗体の能力を測定するために、無血清CHOK1細胞(hINSR8−CHOK1)の表面上に発現したヒトINSRに結合する未修飾インスリンの親和性を、INSRに対するモノクローナル抗体の存在および非存在下で測定した。KinExAアッセイを開発して、細胞培地中の非常に低いレベルのインスリンを測定した。このアッセイは、細胞培地からのインスリン欠乏のレベルを測定することにより、INSRを発現している細胞に対するインスリンの結合を測定可能とした。インスリンが細胞に結合するようになるにつれ、細胞培地中のインスリンの濃度が低下した。INSR発現細胞の滴定を使い、遊離インスリンの割合を測定することにより、KinExAソフトウェアを使って、INS−INSR相互作用の親和性を推定することができる。このアッセイは、種々の抗INSR抗体により示されるインスリン結合活性の調節の程度を測定するのに使用した。
hINSR8−CHOK1細胞を一晩血清飢餓状態にし、次に、細胞をペレット化し、最高希釈に対する最終アッセイ濃度(500μg/mLBSAおよび0.1%ナトリウムアジ化物(Sigma Aldrich、St.Louis、MO)を含むPBSアッセイ希釈緩衝液(Teknova、Hollister CA)中の3.5x107および2.0x107細胞/mLの間)の2倍の濃度で再懸濁してアッセイ用の調製を行った。10点希釈シリーズを作って、細胞の2倍系列希釈を調製し、また、非細胞対照も使用した。細胞懸濁液を各2mL容量ポリプロピレンアッセイチューブに分注した。これらの細胞懸濁液に、1mLの40ug/mL試験抗体(またはAb078の100ug/mL)を各チューブに添加し、穏やかに混合して、氷上で30〜45分間インキュベートした。使用した抗体を陰性対照ヒトIgG2抗KLH抗体と比較して試験した。1mLの200pMインスリンを各チューブに添加し、最終インスリン濃度の50pM(300pg/mL)を確立した(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)。検体を4℃で、一晩、18時間インキュベートし、次に、遠心分離して細胞をペレット化し、上清を試験用に取り出した。
抗インスリンモノクローナル抗体をコートしたビーズを使って、KinExA3000分析を行った。2gのポリ(メチルメタクリル酸塩)(PMMA)ビーズ(Sapidyne、Boise、ID)を、65ug/mLのクローンD6C4マウス抗インスリンモノクローナル抗体(Fitzgerald Industries、Acton MA)を含む9mLのアッセイ緩衝PBSに懸濁した。ビーズを室温で6時間回転させ、次に、静置した。上清を50mg/mLBSA画分Vを含むPBS(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)で置換後、4℃で一晩回転させた。使用した検出溶液は、1μg/mLのストレプトアビジン−PE(Invitrogen、Carlsbad、CA)を含む0.15μg/mLのビオチン化マウス抗インスリンクローンD3E7(Fitzgerald Industries、Acton MA)を入れたアッセイ希釈緩衝液とした。KinExA3000で、検体を0.25mL/分で240秒間注入し、次に、緩衝液(0.05%ナトリウムアジ化物含有PBS)を流しながら60秒間洗浄し、その後、240秒間検出溶液を注入し、続いて、最後の90秒間洗浄を1mL/分で行った。操作の初期時点での電圧と終了近くの時点での電圧の差を測定し、親和性の計算に使用した。細胞上のINSR濃度を2.5x105受容体/細胞と見積もった。親和性をKinExAソフトウェア(Sapidyne、Boise ID)を使って測定し、EC50値をプリズム(GraphPad Software、LaJollaCA.)の非線形フィットを使って計算した。
いくつかの抗INSR抗体が細胞のインスリン親和性を高めた。他の抗体は、細胞のインスリン親和性に対し効果がなかった(表8)。1つの試験抗体は、細胞のインスリン親和性を約3倍低下させた。図45は、推定インスリン受容体濃度に対してプロットした遊離インスリンパーセンテージを示す。25μg/mL(167nM)で試験したAb078を除く全クローンに対し、インスリンレベルを50pM、抗体濃度を10μg/mL(67nM)に固定した。示した曲線は、EC50の計算に使用した非線形回帰プリズムによるあてはめである。
図46は、推定インスリン受容体濃度に対してプロットした遊離インスリンパーセンテージを示す。全クローンに対し、インスリンレベルを50pM、抗体濃度を10μg/mL(67nM)に固定した。示した曲線は、EC50の計算に使用した非線形回帰プリズムによるあてはめである。
実施例22
抗INSR抗体の存在または非存在下のインスリン、IGF−1、およびIGF−2媒介MCF−7細胞増殖の測定アッセイ
インスリン、IGF−1、およびIGF−2は、MCF−7ヒト乳腺癌細胞の有糸分裂誘発を促進する。前の研究で、インスリン類似体がINSRに結合後、代謝シグナル伝達に加えて、分裂促進的シグナル伝達を促進することが示された。本明細書記載の正のモジュレーターおよびアゴニスト抗INSR抗体は、INSR媒介代謝シグナル伝達の活性化と同時に、INSR媒介分裂促進的シグナル伝達を促進することが予測された。インスリン媒介分裂促進的刺激に与える調節抗体の効果を、受容体を発現しているMCF−7細胞を使って測定した。
MCF−7細胞を、通常の維持用の10%FBSおよび2mMグルタミン(Invitrogen)を補充した4.5g/Lのグルコースを含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で培養した。増殖アッセイでは、細胞を96ウエル白色不透明マイクロタイタープレート(Costar3917)に、1x104細胞/ウエルの密度で播種し、24時間再付着させた。24時間後、細胞を予熱したPBSで2回洗浄し、インキュベートしたフェノールレッド不含の、0.1%FBSおよび2mMグルタミン(Invitrogen)を補充した1g/Lグルコースを含むDMEM(「飢餓培地」と呼ぶ)中でさらに24時間インキュベートした。インスリン(Sigma)、IGF−1(R&DSystems)、およびIGF−2(R&D Systems)を飢餓培地中で10xストックとして調製し、1uMからはじめて64nMまで5倍系列希釈(6希釈)して、24時間の飢餓期間後に細胞に添加した。増殖因子と共に抗INSR抗体を含むコインキュベーション実験に対しては、各抗体毎に飢餓培地で50μg/mlストックを調製し、増殖因子を添加して5ug/mlの最終濃度にする前に細胞に加えた。37℃で48時間細胞をインキュベートし、Cell Titer−Glo発光細胞生存率アッセイ(Promega)を使って細胞増殖を測定した。結果を表9に示す。
(表9)MCF−7増殖結果
*抗体濃度@ 5ug/ml
これらの結果は、驚くべきことに、抗INSR抗体の存在下、いずれの上述の増殖因子に対しても、95%信頼区間内で分裂促進的応答の有意な変化が観察されなかったことを示している。これらの抗体が交差反応し、IGF−1およびIGF−2に弱く結合する可能性はあるが、しかし、上記アッセイは、いかなる可能性な交差反応による結合も機能的効果を誘発しない、すなわち、受容体を介したシグナル伝達を促進しないことを立証している。このことは、抗体が、分裂促進的INSR媒介シグナル伝達に対する代謝の比率を増加させることができることを示唆している。
実施例23
分化型3T3−L1脂肪細胞のインスリン抵抗性脂肪酸取り込みを反転させる抗INSR抗体の効果
TNFαは、インスリン依存性脂肪酸取り込みを阻害することができる。TNFαは、インスリンシグナル伝達経路中間体、例えば、インスリン依存性グルコース取り込み経路の一部でもあるIRS−1等の不活化によりインスリン抵抗性の原因になることが知られている(Nguyen et al、J.Biol.Chem.280(42):35361−71、2005;Luca and Olefsky、FEBS Let.582:97−105、2008)ため、抗INSR抗体によるインスリン依存性脂肪酸取り込みのTNFα抑制の反転が、インスリン依存性グルコース取り込みのTNFα媒介抑制を反転するこれらの抗体の能力を示す。
3T3−L1マウス胚性線維芽細胞は、脂肪細胞への分化を誘導でき、その後、それらは、インスリン媒介脂肪酸取り込みに対する応答性が高くなる。高脂肪給餌は、脂肪組織インスリン抵抗性の原因として確立されている。この状態をインビトロで調査するために、3T3−L1脂肪細胞を、障害性インスリン受容体媒介シグナル伝達を生じ、最終的にインスリン刺激グルコース取り込みの減少につながる遊離脂肪酸(FFA)で処置した。インスリン抵抗性に寄与する、FFA処置により誘導される下流エフェクター分子の1つがTNFαである。また、TNFαは、インスリン媒介脂肪酸取り込みを阻害し、抗INSR抗体がインスリン抵抗性脂肪酸輸送を反転できるか否かを評価するための充分確立されたインビトロシステムを提供することが明らかになっている。
3T3−L1細胞を、通常の維持用の10%新生仔ウシ血清(NCS;Invitrogen)および2mMグルタミン(Invitrogen)を補充した4.5g/Lのグルコースを含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で培養した。細胞を96ウエルマイクロタイタープレート中で脂肪細胞に分化させるために、次のプロトコルを使った:(1)−5日目に、2x103細胞/ウエルを黒色/透明底96ウエルプレート(BD Falcon353948)に播種し、(2)−2日目に、細胞は、培養密度にたしたが、そのままさらに2日間置き、(3)0日目に、分化培地を添加、(4)3日目に、培地を0.425uMインスリンを含む通常の成長培地に交換し、(5)7日目に、培地を通常の成長培地に交換した。インスリン抵抗性を誘導するために、10xストックのTNFα(R&D Systems)を通常の成長培地中で調製し、分化プロセスの9日目に細胞に添加した。使用したTNFαの作業濃度は、1〜10ng/mlであった。脂肪酸取り込みを10日目の細胞で行った。使用した脂肪酸取り込みプロトコルを、次に示す。細胞を、0.2%脂肪酸遊離BSA(FAF−BSA;シグマ)および20mM HEPES(Invitrogen)を含むハンクス平衡塩類溶液(HBSS;Invitrogen)で2回洗浄し、次に、37℃のHBSS中で1〜2時間血清飢餓状態にした。抗INSR抗体または他の関連対照を10xストックまたはHBSS単独から添加し、37℃で30分間インキュベートして、インスリンを10xストックから希釈して添加後、37℃で30分間インキュベートした。次に、等容量の再構成QBT脂肪酸取り込みアッセイ(Molecular Devices)ローディング緩衝液を添加し、37℃で3時間までインキュベートして、プレートを蛍光プレートリーダーで読み取り、内部に取り込まれた蛍光脂肪酸類似体を測定した。
図47は、抗INSR抗体Ab085の存在下で、TNFαが、3T3−L1脂肪細胞におけるインスリン媒介脂肪酸取り込みの脱感作を誘導することを示す。表10は、脂肪酸取り込みに対する抗体の相対的EC50を示し、Ab085が脂肪酸取り込みに対するEC50を減少させることを立証している。抗INSR抗体Ab085の存在下、インスリン媒介脂肪酸取り込みのTNFα誘導脱感作が、未処理対照の値まで完全に逆戻りさせられた。類似の結果がAb083でも観察された。
(表10)EC50および95%信頼区間値
TNFα濃度@ 1.25 ng/ml
Ab085濃度@ 50 ug/ml
これらの結果は、正のモジュレーター抗体が、脂肪細胞の脂肪酸取り込みを増加させることができることを示し、このことは、抗体が、脂肪酸取り込みを増加により利益が得られる障害または状態を治療するのに有用であることを示唆している。
実施例24
インスリン依存性pAkt活性化による高度精製抗INSR抗体のキャラクタリゼーション
機能的pIRS−1およびpAKTアッセイで、アッセイとアッセイ間の特定量の変動が顕著であった。タンパク質A精製に追加してさらなる工程、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、を使って試験抗体を精製し、約95%超の純粋な抗体を生成した場合は、この変動は減らすことができるであろうと判断された。この精製工程は、機能的アッセイを妨害すると思われる凝集物および混入増殖因子を減らすか、または除去した。
多くの高度精製抗INSR抗体を、ヒトINSRまたはマウスINSRを発現しているCHOK1細胞を使って、実施例5で記載したpAKTアッセイにより試験した。さらに、特定の抗INSR抗体の、カニクイザルINSRを形質移入されたCHOK1細胞株(CHOK1−cynoINSR−4)に対する作用を試験した。
正のモジュレーター抗INSR抗体Ab001、Ab037、Ab077、Ab079、AB080、Ab083の効果をpAKTアッセイにより測定し、結果を図48(ヒトINSR)および図49(マウスINSR)に示す。
アゴニスト抗体Ab037、Ab030、Ab053およびAb062のヒトINSRおよびマウスINSRに対する相対的%pAKTをそれぞれ図50および51に示す。
また、正のモジュレーター抗体およびアゴニスト抗体の相対的%pAKTも、カニクイザルINSR4を発現しているCHOK1細胞で測定した。図52は、抗INSR抗体Ab030、Ab037、Ab053、Ab001、Ab079、AB080およびAb083が、サルINSRの活性化の後、AKTリン酸化を誘導することができることを示している。
さらに、ヒトINSRを発現しているCHOK1細胞で、負のモジュレーター抗体Ab061、Ab070およびAb081のpAKT相対%を測定した。結果を、表11および図53に示す。
これらの結果は、負のモジュレーター抗体がインスリンのEC50を増加させ、場合によっては数百倍にもなることを示している。
実施例25
抗INSR抗体の種間交差反応性の評価
この実施例は、種、例えば、毒物学的調査に使われることが多いウサギおよびカニクイザルの細胞に対するインスリン受容体抗体の結合を評価するためのFACSベースアッセイの使用に関して記載する。ファージディスプレイライブラリー由来の抗INSR抗体を、ヒト、ウサギおよびカニクイザルの末梢血単球に対する結合およびリガンド(インスリン)の存在または非存在下で、上に挙げた種の単球に対する特異的結合の両特性で選別した。
カニクイザル全血を国立カリフォルニア霊長類研究センター(Davis、CA)から入手し、ウサギ全血をLife Source Biomedical、LLC(Moffett Field、CA)から入手した。ヒトPBMCをAmerican Red Crossから入手したバフィーコート由来のフィコール・ハイパックを使って精製した。次に、カニクイザルおよびウサギPBMCを、フィコール・ハイパック勾配分離法(Pharmacia)を使って精製した。アッセイでの使用に先立ち、精製PBMCを凍結し、液体窒素中で貯蔵した。ヒト、カニクイザルおよびウサギPBMCを解凍し、FACS緩衝液(0.5%BSAおよび0.1%NaN3のPBS中溶液)で洗浄した。細胞を調製するとすぐ、最終濃度2x106細胞/mlでFACS染色アッセイに使用した。
特異的結合を調べるために、細胞をインスリンの存在または非存在下で、抗INSR抗体の濃度を減少させながら4℃で1時間インキュベートし、FACS緩衝液で1回洗浄した。抗INSR抗体の結合は、ヤギ抗ヒトIgG Alexa647(Jackson ImmunoResearch)の4℃で30分間の添加により明らかになった。FACS緩衝液2回洗浄後、単球集団を捕獲するために種々のマーカーで細胞を染色した。ヒトおよびカニクイザル細胞をCD45およびCD14で染色した。ウサギ細胞をCD11bおよびCD14で染色した。次いで、抗体を20分間インキュベートし、FACS緩衝液で2回洗浄した。次に細胞を2%パラホルムアルデヒドで固定し、次に、細胞分析に先立ち等容量のFACS緩衝液を添加した。細胞をFACScan(登録商標)(Becton−Dickinson、Franklin Lakes、NJ)で解析し、データをFloJo(登録商標)(Tristar、Paso Robles、CA)およびGraphPad Prism5(GraphPad Software、La Jolla、CA)を使って解析した。
ヒト、ウサギまたはカニクイザルPBMCで認められた結合は、適切な種のインスリン受容体を発現したCHO細胞株を生成し、上述の結合アッセイを繰り返すことにより確認された。図54に示すデータは、ヒトインスリン受容体に結合した多くの抗体も、また、ウサギおよびカニクイザルインスリン受容体に結合し、さらに、この結合が、インスリンの存在により調節されることを示す。
実施例26
ヒトインスリンの存在および非存在下の抗INSR抗体の親和性測定
血清飢餓CHOK1細胞(hINSR8−CHOK1)の表面に発現した組換え型ヒトINSRに対する種々の抗INSR抗体の親和性をインスリンの存在および非存在下で測定した。KinExAアッセイを開発し、インキュベーション緩衝液中の非常に低レベルの抗体を測定した。このアッセイは、インキュベーション緩衝液の抗体の欠乏レベルを測定することにより、INSRを発現している細胞に対する抗体の結合の測定を可能とした。抗体が細胞に結合するに従い、緩衝液中の抗体濃度は低下した。INSR発現細胞の滴定および遊離抗体割合の測定を行うことにより、KinExAソフトウェアを使ってINSRとの相互作用に対する抗体の親和性を推定することが可能である。このアッセイを使って、インスリンの存在および非存在下で試験抗体クローンの相対的親和性を測定し、細胞に対する抗体の結合のインスリン依存性調節を立証した。
hINSR8−CHOK1細胞を一晩血清飢餓状態にし、次に、実施例20に記載のようにアッセイの準備を行った。1mLの4ug/mLインスリンまたは緩衝液を各チューブの細胞に添加し、最終インスリン濃度の0または175nM(1μg/mL)にした。次に、1mLの40ng/mL抗体を各チューブに添加し、抗体濃度の10ng/mLまたは66.6pMを得た。検体を4℃で一晩18時間インキュベートした後、遠心分離して細胞をペレット化し、上清をKinExA試験用に取り出した。KinExA3000分析を、(Fab’)2断片ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson Immuno Research、West Grove PA)でコートしたビーズを使って実施例20記載のように実施した。使用した検出溶液は、R−PE−(Fab’)2断片ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson Immuno Research、West Grove PA)とした。83−7マウス抗体に対指定は、上述のようにビーズをウサギ抗マウスF(ab’)2抗体(Jackson Immuno Research、West Grove PA)と結合させ、使用検出溶液をR−PE−(Fab’)2断片ヤギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson Immuno Research、West Grove PA)とした。細胞上のINSR濃度を2.5x105受容体/細胞と推定し、INSRに対する二価の抗体結合を仮定した。
インスリンの存在および非存在下での多くの抗INSR抗体の親和性を表12に示す。インスリンの存在および非存在下で、アゴニスト抗体Ab037、Ab053、およびAb062は、インスリンとは独立した結合を有し、2倍未満の親和性シフトを示した。83−7マウス抗体は、インスリンの存在下で、中程度の3倍の親和性シフトを有し、一方、正のモジュレーター抗体として、Ab001、Ab079、Ab080、およびAb083は、インスリンの存在下で、Ab080の17倍からAb001の100倍超までの範囲の、全て正の結合調節を示した。正のモジュレーターAb077およびAb078は、インスリンが無い場合は、他のクローンよりも弱い親和性であり、結果として、これらの「インスリンのない場合の」親和性は、受容体ソースとしての細胞の使用に対し許容された最大受容体濃度内に制限されるこのアッセイの範囲を超えた。インスリンが無い場合にも、これらのクローンで結合が観察されるが、それは、インスリンの存在下の場合より実質的に弱く、83−7よりも遙かに大きな程度に調節されている(調節度合いはこれらのアッセイ条件では正確に見積もることができないが)。Ab085は、結合インスリンが無い場合は、結合の証拠がほとんど認められないか、全く認められない状態であり、その結合はインスリン依存性と見なされる。
(表12)hINSR8−CHOK1細胞に対する抗体の親和性
実施例27
抗INSR抗体のエピトープビニング
多因子手法をエピトープビニング(epitope binning)に取り入れ、種々のINSR抗体が潜在的に類似のエピトープに結合するかどうか、またはそれらが特異的結合特性および異なるエピトープの認識を示すかどうかを判定した。競合的結合または「ビニング」実験、ならびに、インスリン受容体の異なるヒトおよびマウス種に結合する抗体の能力の分析、およびインスリンの存在および非存在下での結合の能力の分析を行った。これら全ては、抗体結合エピトープの潜在的類似性または差異を判定する因子である。インスリンの存在および非存在下で血清飢餓状態のhINSR8−CHOK1細胞およびmINSR−CHOK1細胞に対するビオチン化IgGの結合を解析することにより、フローサイトメトリーアッセイを行った。
競合的結合アッセイのために、hINSR8−CHOK1細胞およびmINSR−CHOK1細胞を一晩血清飢餓状態にし、実施例20に記載のようにアッセイの準備をした。一部の実施形態では、細胞表面上の受容体の数を計算し、競合結合試験を実行するのが好都合である。例えば、hINSR8−CHOK1受容体発現レベルは、最初は、標準的細胞染色およびフローサイトメトリー技術によって測定される。手短に述べれば、飽和濃度のMA−20モノクローナルAb(Thermo Fisher Scientific、Waltham MA)で細胞を染色し、ヤギ抗マウスIgG抗体に結合したR−フィコエリトリン(Jackson Immuno Research、West Grove PA)で検出し、次に、相対的蛍光をBD Quantibrite(登録商標)PEビーズ(BD Biosciences、Franklin Lakes NJ)と比較して結合したフィコエリトリン分子の推定値を求め、結合したフィコエリトリン分子の数に基づいてインスリン受容体の数を外挿することにより、この測定を行った。次に、この数を、Rathanaswami et al、(Analytical Biochemistry 373:52−60、2008)に記載のように、KinExA を使って、さらに試験し、精密化した。手短に述べれば、より多くの化学量論的に制限された用量反応を作り出す本明細書記載の親和性測定方法よりも遙かに高いリガンド濃度が使用できる抗体およびインスリン両方の結合を調査するKinExA実験を行った。次に、これを未知のリガンドモデルおよび結合受容体濃度を確定するために使われるリガンド乗算パラメーターの決定結果を使ってKinExAソフトウェア(Sapidyne、Boise ID)で解析した。このアッセイでは、例えば、血清飢餓状態のhINSR8−CHOK1細胞は、約250,000四量体INSR受容体/細胞を発現すると推定される。抗体親和性に関しては、これは、受容体四量体当たり2抗体の化学量論を意味し、高親和性インスリン結合部位に対しては、1:1の四量体:インスリン比率を意味する。
試験される抗体を標準的アミン化学反応および活性化PEG4−ビオチン(Thermo−Fisher、Waltham MA)を使ってビオチン化した。また、マウス抗体83−7および83−14も試験した。これらの抗体は、それぞれ、CRドメインのアミノ酸233〜281およびINSRのFnIII−Iドメインに結合すると報告されている(McKernetal、2006;Nature 443:218−21)。形質移入細胞を一晩血清飢餓状態にした後、細胞を、1μg/mLインスリンの存在下で、ビオチン化抗体の滴定により染色した。細胞上で抗体を4℃で約30分間インキュベートした。次に、検体をFACS緩衝液で2回洗浄し、ストレプトアビジン−フィコエリトリン(Jackson ImmunoResearch Labs、West Grove、PA、USA)を使ってビオチン化抗体を検出した。ビニング実験で使用したビオチン化抗体の濃度は、インスリンの存在下、ヒト細胞株に対し亜飽和であるが、それでも強いシグナルを有する濃度を基準に選択した。使用されるビオチン化抗体の濃度が実験で測定されるとすぐに、競合アッセイを以下のように実行した。
細胞を一晩血清飢餓状態にし、次に、1μg/mLヒトインスリンを含む場合と含まない場合の冷FACS緩衝液中に再懸濁した。次に、細胞を60ug/mLのコールド、すなわち非標識競合抗体と1:1に混合して、4℃で約30分間インキュベートして、30ug/mLのコールドAb濃度にした。3倍濃度として1:2希釈でビオチン化抗体を添加し、4℃で約30分間インキュベートした。次に、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、ストレプトアビジン−フィコエリトリンで検出して、FACSアナライザー(BectonDickinson、SanJose、CA)でアッセイした。
非結合対照抗体または競合抗体と混合した場合には、MFIをビオチン化抗体間で比較した。結合の程度を、インスリンの存在または非存在化で、ヒトおよびマウス細胞株で測定した。各ビオチン化抗体を各コールド競合体に対して試験する場合は、マトリックス手法を用いた。同じ競合プロファイルを有する抗体は、同じビン(bin)にあると見なされる。表13の代表的ビンのグループ化は、実質的に全てのクローンがこれらの条件下で最強結合を有していたものとして、インスリンの存在下のhINSR8−CHOK1細胞から導かれる。表13のクローンは、インスリン依存性およびマウス反応性、等の他の結合特性を反映させるように標識付けしている。
実験の結果から、抗INSR抗体の中から約7つの異なる競合ビンが得られた。hINSR8−CHOK1を使った上記の方法を使って、競合のない抗体は、30%未満の競合を示すものとして定義し、部分競合は、30%超から80%未満の競合、さらに完全競合は、80%超の競合と定義する。
ヒトおよびマウス反応性のビン1にマップされる抗体は、AB079、AB076、AB083とは無競合、AB085およびAB086とは部分から完全競合、さらにAB030、AB037、AB053、AB001、AB018、およびAB064、AB040とは完全競合を示した。
ヒトおよびマウス反応性のビン2の抗体は、AB086とは無競合で、AB078とは部分競合を示す以外は、ビン1の抗体と同じプロファイルを示した。
ヒトおよびマウスINSRの両方に結合するビン3の抗体は、Ab062およびAb086とは無競合、Ab086、Ab064、Ab001、Ab018とは部分競合、さらにAb079、Ab076、Ab083、Ab080、Ab062、およびAb020、Ab019、Ab088、Ab089とは完全競合を示した。
ヒト受容体のみに結合するビン4の抗体は、Ab062、Ab086、Ab001、Ab018、Ab030、Ab037、Ab064とは無競合、さらにAb079、Ab076、Ab083、Ab080、Ab062、およびAb020、Ab019、Ab088、Ab089とは完全競合を示した。
ビン5の抗体は、AB077、AB001、AB018、AB030、AB037、AB079、AB076、AB083、AB019、AB088、AB089、およびAB040と無競合を示し、AB064、AB062、AB085、およびAB078とは完全競合を示した。これらの抗体は、ヒトおよびマウス受容体の両方と反応する。
ビン6の抗体は、ほとんど全ての試験したクローンと完全または部分競合を示した。クローンAb061は、Ab019と30%未満の競合であり、クローンAb074は、Ab088と競合しなかった。これらの抗体は、ヒトおよびマウス受容体の両方と反応する。
ビン7にグループ化された抗体は、Ab053、Ab064、83−7、Ab019、Ab088、およびAb089と競合せず、Ab037、Ab078、Ab083、Ab080、およびAb085と部分競合を示した。また、Ab040、Ab062、Ab030、Ab001、およびAb018と完全競合を示した。これらの抗体は、ヒトおよびマウス受容体の両方と反応する。
マウス83−7クローンを含む競合ビン4は、マウス反応性に欠けた全てのクローンを含有した。抗体グループはそれらの機能特性と相互に関連があった。全てのヒトアゴニスト抗体は、ビン1にグループ化された。正のモジュレーター抗体は、Ab004の例外を除いて、ビン3とビン5にグループ化された。ビン3抗体は、INSR−インスリン複合体およびINSR単独の両方に結合し、一方、ビン5抗体は、INSR−インスリン複合体には結合するが、INSR単独には結合しない。
当業者なら上記説明用の実施例で述べられたような本発明における多くの変更および変化に気付くことが想定される。従って、添付の特許請求の範囲にある制限のみが、本発明に適用されるべきものである。