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JP6325274B2 - ポリイミド樹脂表面改質剤及びポリイミド樹脂表面改質方法 - Google Patents
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JP6325274B2 - ポリイミド樹脂表面改質剤及びポリイミド樹脂表面改質方法 - Google Patents

ポリイミド樹脂表面改質剤及びポリイミド樹脂表面改質方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリイミド樹脂の表面を、金属イオンが吸着し易くなるように改質するためのポリイミド樹脂表面改質剤、及びそれを用いたポリイミド樹脂表面改質方法に関する。
エレクトロニクス部品や装飾品等の分野において、金属膜パターンが形成された樹脂材料は古くから利用されてきた。代表的な例として、樹脂フィルム表面に金属膜からなる回路パターンが形成されたフレキシブルプリント配線板等がある。
電子機器の小型化に伴い、フレキシブルプリント配線板も小型化し、回路パターンはより緻密なものが求められるようになった。加えて樹脂表面への金属膜の密着性も同時に求められる。
一般的な回路パターン形成方法としては、ポリイミド樹脂フィルムの全面に蒸着法やスパッタ法あるいは接着剤による銅箔張り合わせにより金属皮膜を形成した後、フォトリソグラフィーによるパターン露光および現像により不要な金属のエッチング除去を行う方法が知られているが、大部分の金属を除去するために生産性が低いことやエッチング廃液による環境負荷、フォトマスクや露光機、フォトレジストなどによる装置や材料のコスト高といった問題がある。
また、金属ナノインクを用いたパターン印刷技術が注目されている。インクジェット印刷法やスクリーン印刷法により金属ナノインクやペーストを基材上にパターンニングし、ダイレクトに導電パターンを形成することができるが、原料コストの高さや、印刷後に焼成工程が必要であり基材が耐熱性のあるものに限定されること、まためっき法と比較して形成される導体パターンの比抵抗が高く電子機器用途として電気特性面での課題を有すること、といった問題がある。
そこで近年、これらの課題を解決するものとして、特許文献1、2、3では、ポリイミド樹脂フィルムの表面をアルカリ処理してイミド環を開環させた後、開環によって形成されたカルボキシル基に金属塩を吸着させ、この金属塩を還元することにより金属膜を形成する、ダイレクトメタライゼーション法が注目されている。
特許文献4、5には、インクジェット方式を用いてポリイミド樹脂基材の無機膜形成部位に、選択的にアルカリ性のインクを塗布してイミド環を開環処理し、この部位に金属イオンを吸着させて金属塩とし、更に金属塩を還元して無機膜パターンを形成する方法が開示されている。これによれば、ポリイミド樹脂基材の表面全体に金属膜を形成した後、エッチングによって不要な部分の金属膜を取り除くといった処理をする必要がない。
特許第3825790号公報 特開2008−053682号公報 特開2011−014801号公報 特開2005−029735号公報 特開2005−045236号公報
しかしながら、特許文献1〜3で開示される方法では、従来技術と同様にあらかじめ基材全面に金属膜を形成し、次いで金属膜をパターン化するためにエッチング工程を必要とする。エッチング工程によって、パターン状に残された金属膜と基材との界面が浸蝕されアンダーエッチが形成されることにより、金属膜の密着性が低下することや、あらかじめ全面に金属膜を形成するために、パターンめっき形成後のマイグレーション耐性も低下するという問題がある。これらは金属膜パターンが微細になるほど影響が大きい。
これに対して、アルカリ水溶液をパターン状に付与し、最初から金属膜を必要な部分のみに形成させる方法もあるが、イミド環を開環させるような強いアルカリ水溶液は、印刷装置への負荷が大きい。例えば、スクリーン印刷などで用いられる印刷版には感光性乳剤などが用いられているが、強いアルカリ剤によって感光性乳剤がダメージを受け、印刷精度の低下を招く虞があった。特許文献4、5に開示されるインクジェット方式においても、強いアルカリ性のインクを用いることによって、ヘッド本体の腐食の原因となる以外にも、インクを吐出するインクジェットヘッドのオリフィスプレート上の撥液樹脂層にもダメージを与え、インク吐出性を悪化させてしまうという問題があった。
また、スクリーン印刷版へのダメージを抑制させるためにアルカリ解離を抑制した有機アルカリを用いた溶剤系の改質剤を用いた場合においては、ポリイミド樹脂表面でのアルカリ加水分解反応が十分に進行せず、改質能が劣る(改質度が弱い、改質ムラが生じるなど)という課題があった。
本発明が解決しようとする課題は、印刷版や印刷装置へのダメージを最小限に抑制し、かつ、ポリイミド樹脂表面に対し十分なイミド環の開環を起こすことができる、すなわち十分な改質能を有するポリイミド樹脂表面改質剤を提供することであり、また、このポリイミド樹脂表面改質剤を用いたポリイミド樹脂表面改質方法を提供することである。
すなわち、本発明は、以下に示すポリイミド樹脂表面改質剤、及びそれを用いたポリイミド樹脂表面改質方法に関するものである。
(1)アルカリ金属の水酸化物及び水酸化第四級アンモニウムからなる群から選択されるアルカリ成分と、水酸基を有する沸点120℃以上の有機溶媒とを含有し、且つ、前記アルカリ成分の配合量がKOH換算値として0.1〜10重量%であり、水の含有量が0〜10重量%であることを特徴とする、ポリイミド樹脂表面改質剤。
(2)さらに水溶性高分子化合物を含有することを特徴とする、(1)記載のポリイミド樹脂表面改質剤。
(3)前記有機溶媒がアルコール類であることを特徴とする、(1)又は(2)記載のポリイミド樹脂表面改質剤。
(4)前記アルコール類が炭化水素系アルコール、アルキレングリコール類及びグリコールエーテル類からなる群から選択されるものである、(3)記載のポリイミド樹脂表面改質剤。
(5)前記水溶性高分子化合物が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選択されるものである、(2)記載のポリイミド樹脂表面改質剤。
(6)アルカリ金属の水酸化物及び水酸化第四級アンモニウムからなる群から選択されるアルカリ成分と水酸基を有する沸点120℃以上の有機溶媒とを含有し、且つ、前記アルカリ成分の配合量がKOH換算値として0.1〜10重量%であり水の含有量が0〜10重量%であるポリイミド樹脂表面改質剤を用いてポリイミド樹脂基材の表面を改質する方法であって、
前記ポリイミド樹脂表面改質剤を用いてポリイミド樹脂基材の表面に所定のパターンを印刷する印刷工程、
前記ポリイミド樹脂基材の表面にパターン印刷されたポリイミド樹脂表面改質剤中の有機溶媒を除去する有機溶媒除去工程、及び
有機溶媒除去後のポリイミド樹脂表面改質剤を水と接触させる水処理工程
を含むことを特徴とする、ポリイミド樹脂表面改質方法。
(7)前記ポリイミド樹脂表面改質剤が、さらに水溶性高分子化合物を含有することを特徴とする、(6)記載のポリイミド樹脂表面改質方法。
(8)前記印刷の方法がスクリーン印刷である、(6)又は(7)記載のポリイミド樹脂表面改質方法。
(9)前記印刷の方法がインクジェット印刷である、(6)又は(7)記載のポリイミド樹脂表面改質方法。
本発明のポリイミド樹脂表面改質剤及びそれを用いたポリイミド樹脂表面改質方法によれば、印刷工程において印刷版や印刷装置へのアルカリ成分によるダメージを与えずに、ポリイミド樹脂の表面に所望のパターンで改質を施すことができる。また、印刷工程後に水と接触させて樹脂用改質剤のアルカリ成分を解離させることで、所定のパターンでポリイミド樹脂表面のアルカリ加水分解反応を促進させ、ポリイミド樹脂表面をムラなく十分に改質することができる。
本発明のポリイミド樹脂表面改質剤及びそれを用いたポリイミド樹脂表面改質方法を用いて表面改質がなされたポリイミド樹脂に金属イオンを吸着させ、これを還元して得られる金属皮膜は、エッチング工程を要しないため、アンダーエッチは存在しない。また、所定のパターン部のみに金属皮膜が形成されるため耐マイグレーション性が確保される。
本発明のポリイミド樹脂表面改質剤を用いたポリイミド樹脂表面改質方法の一態様を示す概略図である。
1 ポリイミド樹脂基材
2 ポリイミド樹脂表面改質剤
3 ポリイミド樹脂表面改質剤によってパターン状に改質された改質部
4 水
1.ポリイミド樹脂表面改質剤
本発明のポリイミド樹脂表面改質剤は、アルカリ成分と、水酸基を有する沸点120℃以上の有機溶媒とを必須成分として有する。
(1)アルカリ成分
アルカリ成分とは、水に溶解することによってアルカリ性を呈する化合物である。本発明で用いられるアルカリ成分としては、無機系化合物としてアルカリ金属の水酸化物、有機系化合物として水酸化第四級アンモニウムが挙げられる。
水酸化第四級アンモニウムの例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)等が挙げられる。
アルカリ金属の水酸化物の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
このように本発明における前記アルカリ成分としては、アルカリ金属の水酸化物及び水酸化第四級アンモニウムからなる群から選択されるものが用いられる。
なかでも溶剤への溶解性の理由から、水酸化第四級アンモニウムとしてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)及びテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、アルカリ金属の水酸化物として水酸化ナトリウム(NaOH)及び水酸化カリウム(KOH)が特に好ましい。
本発明のポリイミド樹脂表面改質剤全量中、アルカリ成分の配合割合は、KOH換算値として0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。アルカリ成分の割合をこの範囲内とすることで印刷装置にダメージを与えることなく、十分なポリイミド樹脂基材の表面改質が実施できるという利点を有する。




なお、アルカリ成分のKOH換算値は、以下の式にしたがって求めることができる。
(数式)
アルカリ成分配合量のKOH換算値(重量%)=アルカリ成分配合量(重量%)×[(KOH分子量=56.12)/(アルカリ成分分子量)]
(2)有機溶媒
本発明で用いられる有機溶媒は、印刷工程の取り扱い性の点で、沸点が120℃以上のものである必要がある。沸点が120℃未満の有機溶媒を用いた場合、印刷工程においてポリイミド樹脂表面改質剤の流動性が低下してしまう虞がある。これにより印刷品位が悪くなり、精密なパターン形成が困難になる。有機溶媒はアルカリ成分を安定に溶解させることができる電気的極性が必要であり、したがって分子中に水酸基が存在することが求められる。更に有機溶媒は前記アルカリ成分を溶解、あるいは分散できるものである必要がある。
本発明で使用される水酸基を有する沸点120℃以上の有機溶媒としてはアルコール類が好ましい。より好ましくは、前記アルコール類として炭化水素系アルコール、アルキレングリコール類及びグリコールエーテル類からなる群から選択されるものが挙げられる。
炭化水素系アルコールとしては、非環状飽和炭化水素に由来するもの、好ましくは炭素数5〜10の非環状飽和炭化水素に由来するアルコール、より好ましくは炭素数5〜9の第1級アルコールが挙げられる。より具体的には、炭素数5のペンタノール、あるいは炭素数6のヘキサノールの異性体の中で沸点が120℃以上のものが挙げられる。このような炭化水素系アルコールとしては、1−ペンタノール(沸点138℃)、1−ヘキサノール(沸点158℃)及び1−オクタノール(沸点195℃)等が挙げられる。
アルキレングリコール類の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のジオール系溶剤が挙げられる。
グリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のE.O.系(エチレンオキサイド系)溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレグリコールモノメチルエーテル等のP.O.系(プロピレンオキサイド系)溶剤等が挙げられる。
なかでも印刷性の観点から、沸点が十分に高いエチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。これらの溶剤を2種以上混合して配合することも可能である。
本発明のポリイミド樹脂表面改質剤全量中、水酸基を有する沸点120℃以上の有機溶媒の配合割合は、好ましくは30〜99.9重量%、より好ましくは50〜99重量%、特に好ましくは80〜99重量%である。前記有機溶媒の割合をこの範囲内とすることでポリイミド樹脂表面改質剤に適切な印刷性を与えるという利点を有する。
(3)水の含有量
また、本発明のポリイミド樹脂表面改質剤は、主溶媒が水酸基を有する沸点120℃以上の有機溶媒であり水の含有量が0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%であることが必要である。ポリイミド樹脂表面改質剤中の水の含有量が10重量%を超える場合には、水の作用によるアルカリ成分の解離が進行してポリイミド樹脂表面改質剤自体のアルカリ性が強まり、これが印刷装置へ大きなダメージを与え、パターン印刷の精度を著しく悪化させると同時に印刷装置の寿命をも低下させる虞がある。
なお、本発明のポリイミド樹脂表面改質剤においては、水の含有量は極力少ないことが好ましく、最も好ましい水の含有量は0重量%であるが、原料中に含まれる不純物や原料、改質剤自体の水蒸気吸収に由来する水の存在などが確認される場合があり、水の含有量を0重量%とすることは実際上容易でない。実際には、本発明のポリイミド樹脂表面改質剤中の水の含有量が10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の範囲は、本発明の目的を達成する上で許容される範囲である。水の含有量が10重量%以下であって有機溶媒が主体となっている場合には、多量の有機溶媒中における水分子の電離状態が水系溶媒の場合とは異なるため、含有される水分がアルカリ成分の活性に与える影響は小さいと考えられるからである。
本発明においては、ポリイミド樹脂の改質に作用するアルカリ成分が印刷装置へダメージを与えるほどのアルカリとしての特性を示さないような状態となっている改質剤を提供することを目的にしており、その目的を達成できるかどうかを示す指標のひとつが改質剤中の水の含有量であり、水の含有量が10重量%以下の改質剤は本発明の目的を達成することができる。
(4)水溶性高分子化合物
本発明においては、前記ポリイミド樹脂表面改質剤に水溶性高分子化合物を配合することもできる。本発明で用いる水溶性高分子化合物は、前記有機溶媒に可溶であり、且つ、水にも可溶な性質をもつものである。
本発明においては、ポリイミド樹脂表面改質剤に水溶性高分子化合物を配合することにより、広範囲な粘度の調整が可能になる。その結果、各種印刷工程に最適化した粘度調整が可能となり、印刷のヌケや滲みを防止することができることから、印刷精度が大幅に向上する。また、印刷後に水と接触させることにより、ポリイミド樹脂表面改質剤中の水溶性高分子化合物が水を取り込みアルカリ成分の解離をより促進させるため、印刷部の改質反応が特異的に促進される。そして、ポリイミド樹脂表面改質剤を除去する際には、水溶性高分子化合物が水に溶解するために容易に除去することができる。
本発明のポリイミド樹脂表面改質剤に好ましく用いられる水溶性高分子化合物の例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミンなどの合成高分子化合物、およびコーンスターチ、マンナン、ペクチン、キトサン、寒天、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、セリシン、各種ガム類、デキストラン、ゼラチンなどの天然高分子化合物が挙げられる。
これらのうち、耐アルカリ性に優れているという理由で、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選択されるものが好ましい。特に好ましいものはポリビニルピロリドンである。
水溶性高分子化合物を用いる場合、その配合割合は、本発明のポリイミド樹脂表面改質剤全量中、好ましくは0.1〜60重量%、より好ましくは0.5〜50重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。
本発明のポリイミド樹脂表面改質剤は、印刷手法に適した成分と混合して使用することができる。例えば、スクリーン印刷に用いる場合には、顔料、無機微粒子(フィラー)、レオロジーコントロール剤、分散安定剤等を添加することで、スクリーン印刷に適した粘性を付与することが可能である。
また、インクジェット印刷に用いる場合にも、顔料や無機微粒子(フィラー)、レベリング剤、分散安定性剤、消泡剤等を配合することで、粘度や表面張力、改質剤吐出性をコントロールすることが可能である。かかる成分としては公知のものが使用可能であるが、例えば顔料や無機微粒子(フィラー)等の具体例としては、タルク、ベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、シリカ、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カリウム、酸化亜鉛、酸化チタン等が挙げられる。
これら成分の配合割合は特に制限されず、使用方法に応じて適量併用できるが、好ましくは本発明のポリイミド樹脂表面改質剤全量に対し0.5〜500%、好ましくは1〜300重量%程度である。
2.ポリイミド樹脂表面改質方法
本発明のポリイミド樹脂表面改質剤を用いたポリイミド樹脂表面改質方法は、図1に一態様を示したように、上述したポリイミド樹脂表面改質剤を用いてポリイミド樹脂基材の表面に所定のパターンを印刷する印刷工程(図1中、工程(a))、前記ポリイミド樹脂基材の表面に印刷されたポリイミド樹脂表面改質剤中の有機溶媒を除去する有機溶媒除去工程(図1中、工程(b))、及び有機溶媒除去後のポリイミド樹脂表面改質剤を水と接触させる水処理工程(水処理工程;図1中、工程(c))を含むものである。
有機溶媒を主溶媒とするポリイミド樹脂表面改質剤を用いて所定のパターンを印刷したのち当該有機溶媒を除去する、という方法を採用することにより、ポリイミド樹脂の改質に作用するアルカリ成分が印刷装置へダメージを与えるほどのアルカリとしての特性を示さないような状態となっている改質剤を用いて所望のパターンを容易にポリイミド樹脂基材表面に形成することができる。そのため、印刷工程において印刷版や印刷装置へのアルカリ成分によるダメージを与えずに、ポリイミド樹脂の表面に所望の微細パターンを確実に形成して改質を施すことができる。
本発明のポリイミド樹脂表面改質方法を、以下に工程ごとに説明する。
(1)印刷工程
最初に印刷工程(図1中、工程(a))を行う。印刷工程においては、前記ポリイミド樹脂表面改質剤をインクとして用い、ポリイミド樹脂基材(ポリイミド樹脂からなる基材)の表面に各種印刷方法によって所定のパターンを印刷する。本発明のポリイミド樹脂表面改質剤は水の含有量が0〜10重量%であるためアルカリ性が非常に弱く、印刷時にはアルカリ性を呈しておらず、室温条件にて行われる印刷工程においては印刷版や印刷装置にダメージを与えない。
印刷方法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷などが挙げられる。印刷装置としては、スクリーン印刷装置、グラビア印刷装置、グラビアオフセット印刷装置、インクジェット印刷装置、フレキソ印刷装置など、公知の各種印刷装置を用いることができる。
(2)有機溶媒除去工程
有機溶媒除去工程においては、前記印刷工程の後、パターン形状に印刷されたポリイミド樹脂表面改質剤の中に含有される、水酸基を有する沸点120℃以上の有機溶媒を除去する(図1中、工程(b))。
有機溶媒を除去する方法としては、加熱乾燥、温風乾燥、減圧乾燥などの乾燥方法を採用でき、特に限定されないが、好ましいのは加熱乾燥である。有機溶媒を除去することによって、パターン形状に印刷されたポリイミド樹脂表面改質剤は流動性を失い、これによってポリイミド樹脂基材表面の改質されるべきパターン形状が確定する。有機溶媒の除去を加熱乾燥によって行う場合、例えば40〜200℃、好ましくは100〜180℃にて、1〜120分、好ましくは1〜60分の加熱処理を実施するのが望ましい。
本発明においては、当該有機溶媒除去工程において加熱乾燥を行う際に、ポリイミド樹脂改質剤が加熱処理されることにより、ポリイミド樹脂改質剤に含まれるアルカリ成分によるポリイミド樹脂基材表面の改質反応が進行する場合がある。この改質反応の詳細な化学反応機構は明らかではないものの、改質剤中に不純物として含まれていた水分による改質、あるいは、印刷工程や有機溶媒除去の後に雰囲気中から吸収されたわずかな水分による改質が、加熱によって促進された結果であると推察される。
(3)水処理工程
本発明においては、上記有機溶媒除去工程において有機溶媒が除去された後のポリイミド樹脂表面改質剤を水と接触させる水処理を行う(水処理工程;図1中、工程(c))。水と接触させることにより、ポリイミド樹脂基材表面のポリイミド樹脂表面改質剤(その主体は有機溶剤除去後に残存するアルカリ成分)のアルカリ成分が水によって解離し、ポリイミド樹脂のアルカリ加水分解反応(改質反応)が進行する。水と接触させる際の温度や時間を調整することによって、ポリイミド樹脂表面の改質の程度を調整することができる。
また、当該水処理工程では、ポリイミド樹脂基材表面の改質後にポリイミド樹脂表面改質剤が除去される場合があり、その場合は当該水処理工程を後述する水による洗浄工程(図1中、(d))と兼ねることもできる。
水処理工程は、水溶性高分子化合物を配合したポリイミド樹脂表面改質剤を用いたポリイミド樹脂基材表面改質方法においては、特に重要である。なぜなら、パターン印刷されたポリイミド樹脂表面改質剤を水と接触させることにより、ポリイミド樹脂表面改質剤中の水溶性高分子化合物が水を取り込み、アルカリ成分の解離が促進されるため、印刷部の改質反応が特異的に進行するからである。また、水溶性高分子化合物の配合により相対的にアルカリ成分の割合が減少しているため、より確実に表面改質を行うために水との接触を必要とする。
また、水溶性高分子化合物が水に溶解するために、水処理を行うことによりポリイミド樹脂表面改質剤を容易に除去することができる。ポリイミド樹脂表面改質剤に含有されるアルカリ成分を適切に選択することによって、水による洗浄をもって前述の水処理工程と兼ねることもできる。
水との接触方法の例として、ポリイミド樹脂基材を水中に浸漬させる方法、スプレーを用いてポリイミド樹脂基材の表面に水を噴射する方法、あるいは、水を滴下する方法、湿度環境に放置し水蒸気と接触させて吸収させる水蒸気吸収方法、ポリイミド樹脂基材の表面をゲルや水で濡れた布に接触させる方法、水中で超音波を照射する超音波処理法などが挙げられる。好ましい方法は、水中浸漬法又は水蒸気吸収法であり、特に好ましくは水中浸漬法である。以下に、水中浸漬法及び水蒸気吸収法について説明する。
a)水中浸漬法
本発明における水中浸漬法は、ポリイミド樹脂基材を水中に浸漬させる方法であり、水中に浸漬させる温度や時間を調整することによって、ポリイミド樹脂表面の改質の程度を調整することができる。好ましくは10℃以上の水に5秒以上、より好ましくは20℃以上の水に90秒以上、特に好ましくは21℃の純水中に90秒間浸漬させることで、ポリイミド樹脂基材表面での改質反応が十分に促進される。水中に浸漬させることで、浸漬させない場合と比較してポリイミド樹脂表面の改質率は3倍以上に飛躍的に向上する。
また、何らかの溶質が溶解した水溶液でも同様の効果が得られるため、任意の水溶液に浸漬させる方法を用いてもよい。ポリイミド樹脂表面が好ましくない化学的な変化を起こさないためにも、pH9以下、好ましくは中性以下、より好ましくはイオンの影響のない純水を用いることが好ましい。
任意の水溶液の具体例としては、各種緩衝液が挙げられる。たとえば長尺のポリイミド樹脂フィルムなどに対して連続的に改質を行う場合には、水接触工程として水を貯めた槽にポリイミド樹脂フィルムを通す場合があるが、改質剤中のアルカリ成分の一部が脱落することにより水のpHが上がると、本来改質されるべきではない部分まで改質されてしまう恐れがあるためである。緩衝液の例としては、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、トリスバッファーなどが挙げられる。
b)水蒸気吸収法
本発明における水蒸気吸収法では、ポリイミド樹脂表面改質剤をポリイミド樹脂に印刷し、該改質剤中の有機溶剤を揮発させたのち、水蒸気を含む空気中に放置して水蒸気を改質剤に吸収させ、その後加熱することで改質を進めることができる。液体の水との直接的な接触がないのが特徴である。空気の温度および湿度、放置時間、加熱温度や時間でポリイミド樹脂表面の改質程度を調整できる。
例えば、空気の状態は常温常湿、たとえば、温度10〜40℃、湿度30〜90%が望ましく、放置時間も空気の状態によって例えば1分〜24時間でおこなうことができる。また加熱処理は40〜200℃、好ましくは100〜180℃にて、1〜120分、好ましくは1〜60分の加熱処理を行うのが望ましい。また空気中での水蒸気吸収と加熱処理のサイクルを複数回繰り返すことで、ポリイミド樹脂表面の改質の程度を調整することができる。この場合、上記の処理プロセスを2〜10回繰り返すことが望ましい。
本発明の水処理工程において水蒸気吸収法を採用する場合、水処理工程時に改質剤の除去は行われないため、水による洗浄工程で改質剤の除去を行う。
(4)洗浄工程
本発明の方法においては、上記水処理工程において必要な改質が完了した後に、ポリイミド樹脂基材表面を適当な溶媒で洗浄し、ポリイミド樹脂表面改質剤が改質後のポリイミド樹脂基材表面の改質部に残存しないようにすることができる(洗浄工程;図1中、(d))。ポリイミド樹脂基材の改質部への触媒付与やめっき析出をおこなう際に、ポリイミド樹脂表面改質剤の成分が残存しないようにすることは、めっき密着性や均一なめっき選択性にとって望ましいことである。
洗浄に用いられる溶媒として好ましいものは水である。水による洗浄方法としては、公知の洗浄方法を適用することができ、例えば、超音波洗浄、スプレー・シャワー洗浄、ブラシ洗浄、浸漬洗浄、二流体洗浄などを適宜用いることができ、特に限定されない。
水による洗浄工程は、上記水処理工程、とくに水中浸漬法と兼ねることもできる。また、上記水処理工程の後に、必要に応じてさらに洗浄工程を実施することもできる。
本発明のポリイミド樹脂表面改質剤として水溶性高分子化合物を配合したものを用いる場合、水溶性高分子化合物が水に溶解するために、水で洗浄することによりポリイミド樹脂表面改質剤を容易に除去することが可能である。ポリイミド樹脂表面改質剤に含有されるアルカリ成分を適切に選択することによって、水による洗浄をもって前述の水との接触による改質工程(水処理工程)と兼ねることもできる。
本発明のポリイミド樹脂表面改質方法によって改質されたポリイミド樹脂の表面には、金属イオンを吸着可能なカルボキシル基が生成されている。ここに金属イオンを含む溶液を接触させることにより金属塩を形成させ、さらにこれを還元してメッキ処理等することで金属皮膜が形成され、ポリイミド樹脂上に導電パターン形成ができる。
金属イオンの具体例としては、パラジウムイオン が挙げられる。金属皮膜の具体例としては、ニッケル、銅 が挙げられる。
本発明が適応できるポリイミド樹脂としては、電子材料用途としての使用目的を考慮し耐熱性や耐薬品性を有しており、また、アルカリ加水分解反応により主鎖のイミド環の開環反応にともなうカルボキシル基の生成が起きる、ポリイミドやポリエーテルイミドといったイミド環骨格を有する高分子樹脂が好ましい。
本発明で用いられるポリイミド樹脂基材としては、上記ポリイミド樹脂により形成されるフレキシブルプリント配線板、フレキシブルシートヒーター、立体配線基板、電磁波シールド材、太陽電池用電極、ICタグ用アンテナ、フレキシブルアンテナ、照明用電極等が挙げられる。
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。
<実施例1−2,比較例1−3>
表1に示した実施例1、2、および比較例1〜3のポリイミド樹脂表面改質剤を用いて、スクリーン印刷におけるポリイミド樹脂の表面改質効果について評価した。評価はポリイミド樹脂の改質性、スクリーン印刷装置へのダメージ、およびスクリーン印刷のパターン印刷性について行った。
使用した改質剤は、いずれも水で100倍に希釈してpH測定をしたときpH10以上のアルカリ性を示すことが確認されている。このことは、これらの改質剤自体はアルカリ成分が解離してアルカリとしての特性を示すのに十分な量の水が存在すれば、ポリイミド樹脂を改質する能力を十分に有するものであることを示している。
なお、表1には各ポリイミド樹脂表面改質剤について水の含有量を記載しているが、意図的に水を配合していない実施例、比較例については、原料由来または大気中からの吸湿によって取り込まれた水分量について記載している。吸湿によって取り込まれた水分量については、ポリイミド樹脂表面改質剤2mlを大気開放状態で室温(21℃)にて4時間保存したときの重量増加分から算出した。また、原料由来の水分量については文献等を参考にした。
一方、意図的に水を配合した実施例、比較例については、表1に記載した水の含有量中に、原料由来又は大気中からの吸湿によって取り込まれた水分量は含まれていない。
(ポリイミド樹脂の改質性評価)
ポリイミド樹脂フィルム(商品名「カプトン100H」、東レ・デュポン製)にポリイミド樹脂表面改質剤を2μL滴下し、150℃・20分で加熱処理を行って有機溶媒を除去した。処理後、フィルム上に残留したポリイミド樹脂表面改質剤を、水を用いてシャワー洗浄の方法で洗浄して除去した。
次いで、上記加熱処理箇所の改質性をフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)で評価した。FT−IRでの測定はATR法で行い、改質箇所におけるベンゼン環由来の1502.3cm−1吸収強度に対するイミド環由来の1718.3cm−1吸収強度の比率を算出し、イミド環残留度とした。イミド環残留度をもとに、さらに未処理のポリイミド樹脂のイミド環残留度を100%とした比率を算出し、イミド環残率とした。この値を樹脂改質性の指標とし、以下の基準で改質剤のポリイミド樹脂の改質性を評価した。
〇:加熱後のイミド環残率 50%未満
△:加熱後のイミド環残率 50%以上、75%未満
×:加熱後のイミド環残率 75%以上
(スクリーン印刷装置へのダメージ評価)
ステンレスメッシュ上に感光乳剤を幅540μm、スペース200μmとなるように塗布し、線幅200μmのストライプ状スクリーンマスクを成型した。このスクリーンマスク切片をポリイミド樹脂表面改質剤に3時間浸漬した。浸漬直後のスクリーンマスク切片を顕微鏡で観察し、浸漬前後での感光乳剤の外観変化を確認し、同時に感光乳剤間のスペース(乳剤同士の間隔)の変化から、以下の方法で膨潤量を測定した。
(膨潤量の測定方法)
スペース200μmとなるよう塗布した感光乳剤を改質剤に浸漬した後、スペースを再度測定する。浸漬前のスペース(=200μm)と、感光乳剤の膨潤により狭くなった浸漬後のスペースとの差をもって膨潤量とした。
膨潤量(μm)=浸漬前のスペース(200μm)−浸漬後のスペース(μm)
これらの結果をもとに表面改質剤のスクリーンマスクへのダメージを以下のように評価した。
・感光乳剤の外観変化
〇:浸漬後に見た目の変化なし
×:浸漬後に変色等の変化あり
・感光乳剤の膨潤量
〇:膨潤量 4μm未満
△:膨潤量 4μm以上、8μm未満
×:膨潤量 8μm以上
(スクリーン印刷によるパターン印刷性評価)
このパターン印刷性評価の場合のみ、ポリイミド樹脂表面改質剤として、増粘成分を配合して適切な粘性を付与したものを用いた。すなわち、使用する有機溶媒に対して増粘可能なポリビニルピロリドン(商品名「K−30」:株式会社日本触媒製)及び使用する有機溶媒に対して分散可能なケイ酸ジルコニウムを、ポリビニルピロリドン:ケイ酸ジルコニウム=35:65(重量比)で配合した増粘成分を、前記改質剤1に対し増粘成分1(重量比)となるように加え、ずり速度10s−1、25℃で20〜150Pa・sとなるように改質剤に粘性を付与した。
このようにして粘性を付与したポリイミド樹脂表面改質剤を用い、パターンサイズが150×150mmの任意のパターンで製版されたスクリーンマスクで、ポリイミド樹脂フィルム上にスクリーン印刷を連続で20回行った。
印刷後のパターン部での印刷かすれ、または乳剤マスク下への溶剤の滲みを観察し、改質剤のパターン印刷性を以下のように評価した。
〇:連続印刷20回でかすれ、滲みなし
×:連続印刷20回以下でかすれ、滲みが発生
Figure 0006325274
表1中の略号は以下を示す。
DEGMBE;ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:188.3℃)
DEG;ジエチレングリコール(沸点:244.3℃)
MeOH;メタノール(沸点:64.7℃)(ナカライテスク製、試薬特級)
水(沸点;100℃)
KOH;水酸化カリウム
TBAH;テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
(*1)配合量におけるTBAHのカッコ内の数値はKOH換算値(重量%)
(*2)No Data;使用したメタノールの水含有量が不明のため算出されず。
実施例1、2のポリイミド樹脂表面改質剤はポリイミド樹脂の改質性を有しているうえに、装置へのダメージは確認されずスクリーン印刷性も良好であった。一方で、比較例1〜3のポリイミド樹脂表面改質剤は、スクリーンマスク乳剤が変色し膨潤する等のスクリーン印刷装置へのダメージが認められ、またインクのパターン印刷性についてかすれ、滲みが確認された。
<実施例3−7、比較例4−5>
表2に示した組成のポリイミド樹脂表面改質剤を用いて、インクジェット印刷におけるポリイミド樹脂の表面改質効果について評価した。評価は実施例1−2と同様の方法でポリイミド樹脂の改質性について行い、それに加えてインクジェット印刷性の評価として下記の印刷装置へのダメージ評価、およびインクジェットヘッドのインク吐出安定性の評価について行った。使用した改質剤は、いずれも水で100倍に希釈してpH測定をしたときpH10以上のアルカリ性を示すことを確認している。
(インクジェット印刷装置へのダメージ評価)
ポリイミド樹脂表面改質剤との接触によるオリフィスプレート表面樹脂の撥液性の変化を調べた。はじめにオリフィスプレート表面樹脂の水接触角を測定し、オリフィスプレート表面樹脂にポリイミド樹脂表面改質剤を常温で24時間接触させた。その後、再度オリフィスプレート表面樹脂の水接触角を測定し、表面樹脂の水接触角の低下率からインクジェットヘッドへのダメージを以下のように評価した。
〇: 接触角低下率 5%未満
△: 接触角低下率 5%以上、20%未満
×: 接触角低下率 20%以上
(インク吐出安定性評価)
ポリイミド樹脂表面改質剤を用いてインクジェットヘッドから長さ20mmの直線印刷を行ったのち、印刷された直線中における断線箇所の数をカウントし、その断線数に基づいてインク吐出安定性を評価した。
なお、インク吐出安定性評価の場合のみ、実施例3、4、比較例4、5について、ポリイミド樹脂表面改質剤として、増粘成分を配合して適切な粘性を付与したものを用いた。すなわち、使用する有機溶媒に対して増粘可能なポリビニルピロリドン(商品名「K−30」:株式会社日本触媒製)を、改質剤100に対してポリビニルピロリドン1の割合(重量比;およそ1重量%)で配合し、改質剤の粘度が30℃にて5〜12mPa・sとなるように調整した。実施例5、6、7については、ポリビニルピロリドンを添加しなくても粘度5〜12mPa・sを満たしているため、増粘成分は配合していない。
インク吐出安定性の評価は以下の基準で行った。
〇:断線数 0.05個/mm未満
△:断線数 0.05個/mm以上、0.5個/mm未満
×:断線数 0.5個/mm以上
Figure 0006325274
表2中の略号は以下を示す。
DPGMME;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点:230.4℃)
DEGMBE;ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:188.3℃)
DEG;ジエチレングリコール(沸点:244.3℃)
EGMBE;エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:171℃)
EGMME;エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点:124℃)
EG;エチレングリコール(沸点:197.3℃)
MeOH;メタノール(沸点:64.7℃)(ナカライテスク製、試薬特級)
i−PrOH;イソプロパノール(沸点:82.4℃)
水(沸点;100℃)
KOH;水酸化カリウム
TBAH;テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
(*1)配合量におけるTBAHのカッコ内の数値はKOH換算値(重量%)
(*2)No Data;使用したメタノールの水含有量が不明のため算出されず。
実施例3〜7では、印刷装置にダメージを与えることがなく、吐出安定性、ポリイミド樹脂表面の改質性も良好であった。一方で、比較例4、5においては、印刷装置に対してダメージを与え、また吐出安定性も不良であった。
<調製例1〜5>
水溶性高分子化合物を含むポリイミド樹脂表面改質剤組成物(以下、単に「組成物」という)1〜5を、表3に示す組成にて調製した。水溶性高分子化合物としてポリビニルピロリドン(商品名「PVP K−90」;株式会社日本触媒製)を使用した。
アルカリ成分としては、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH−37%メタノール溶液:東京化成工業株式会社製)、水酸化カリウム(ナカライテスク株式会社製)を使用した。有機溶媒としては、ジエチレングリコール(ナカライテスク株式会社製)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(ナカライテスク株式会社製)を使用した。
フィラー成分として、タルク(商品名「FG−15」;日本タルク株式会社製)、ベントナイト(商品名「SD−2」;東新化成株式会社製)、ケイ酸ジルコニウム(商品名「ミクロパックスSPZ」;ハクスイテック株式会社製)、酸化ニッケル(株式会社田中化学研究所製)を使用した。
なお、表3には各ポリイミド樹脂表面改質剤組成物について含水量を記載しているが、意図的に水を配合していない組成物については、原料由来または大気中からの吸湿によって取り込まれた水分量をもとに算出し、記載している。吸湿によって取り込まれた水分量については、ポリイミド樹脂表面改質用組成物を大気開放状態で室温(21℃)にて2時間保存したときの重量増加分から算出した。また、原料由来の水分量についてはカタログ値を用いた。
なお、意図的に水を配合した組成物については、表3に記載した含水量中に、意図的に配合した水の量に加えて、原料由来又は大気中からの吸湿によって取り込まれた水分量を加算している。
Figure 0006325274
表3中の略号は以下を示す。
PVP;ポリビニルピロリドン
DPGMME;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点:230.4℃)
DEG;ジエチレングリコール(沸点:244.3℃)
KOH;水酸化カリウム
TBAH;テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
<実施例8〜9、比較例6>
上記表3の組成物1、2、5について、以下の方法でスクリーン印刷装置へのダメージ評価を行った。
(スクリーン印刷装置へのダメージ評価)
ステンレスメッシュ上に感光乳剤を線幅200μmのストライプ状に成型したスクリーンマスク切片を用意した。これに表3の組成物1、2、5を3時間接触させた。接触前後のスクリーンマスク切片を顕微鏡で観察し、感光乳剤の外観変化を確認した。同時に感光乳剤間のスペース(乳剤同士の間隔)の変化から、実施例1−2と同様の方法で膨潤量を測定した。
これらの結果をもとに組成物のスクリーンマスクへのダメージを以下のように評価した。結果を表4に示す。
〇: 接触後の見た目の変化なし
×: 接触後に変色等の変化あり
Figure 0006325274
上記結果より、含水量が10重量%以下であれば、スクリーンマスクへのダメージがないことを確認できた。反対に、10重量%を超える含水量の組成物の場合には、スクリーンマスクの感光乳剤の外観変化を伴うダメージが懸念される。
<実施例10〜13>
上記表3の組成物1〜4を用いて、ポリイミド樹脂基材の改質処理を実施し、評価を行った。処理方法としては、ポリイミド樹脂基材(カプトン100H、厚み25μm:東レ・デュポン株式会社製)に対して、各々の組成物をスクリーン印刷法によって直線パターンを印刷した(印刷工程)後、150℃のオーブンの中で30分間乾燥した(有機溶媒除去工程)。乾燥後に水への浸漬(21℃純水中に90秒浸漬)を行い(水処理工程あるいは水との接触による改質工程)、その後、組成物の除去(純水中にて超音波洗浄3分)を行った(洗浄工程)。この有機溶媒除去工程、水との接触による改質工程、及び洗浄工程によってポリイミド樹脂基材表面の改質処理が行われた。
上記改質処理前後のポリイミド表面の化学的変化をフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)で測定し、ポリイミド樹脂表面の改質率を数値化するとともに、めっき析出性について無電解Niめっき後の外観を目視して評価した。また、ポリイミド樹脂上での印刷物の耐久性、除去性を目視評価した。結果を表5に示す。
(ポリイミド樹脂改質率の数値化)
組成物を印刷し改質処理を施したポリイミド樹脂表面のフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)測定によって得られる吸収スペクトルから、イミド環由来1718.3cm−1の吸収ピーク強度(Absイミド環)および、ベンゼン環由来1502.3cm−1の吸収ピーク強度(Absベンゼン環)を用いて、イミド環のベンゼン環に対する吸収ピーク強度比率(Absイミド環/Absベンゼン環)の値(ここでは[Abs*]と示す)を算出した。
改質処理前のポリイミドについての吸収ピーク強度比率[Abs*]の値を基準(100%)とし、各実施例及び比較例の改質処理後の吸収ピーク強度比率[Abs*]への変化率を算出することで、イミド環がアルカリ加水分解により開裂した割合、つまりは、改質反応の進行具合を数値化した。これを改質率(%)とする。
(めっき析出性評価)
各組成物をポリイミド樹脂基材表面に印刷し改質処理した後、触媒付与、還元、無電解Niめっきを施し、ポリイミド樹脂基材表面にパターンめっきを析出させた。触媒付与工程は、0.15g/Lの塩化パラジウム溶液中に浸漬(40℃、3分)、還元工程では、0.02Mのジメチルアミンボラン溶液中に浸漬(pH5.8クエン酸バッファー、40℃、3分)、めっきは、無電解Niめっき浴(ES−500:荏原ユージライト株式会社製)を用いて40℃、1分の浸漬処理を施した。改質処理後のポリイミド樹脂表面のめっき析出状態を確認し以下の基準にて評価をした。
〇・・・析出性良好
△・・・析出するがムラあり
×・・・析出不良
(印刷物耐久性評価)
各組成物をポリイミド樹脂基材表面に印刷し乾燥した後(上記印刷工程及び有機溶媒除去工程後)、ポリイミド樹脂基材を、形成された直線パターン印刷物のパターン方向に対して垂直方向に5回屈曲させたときの印刷物の形状変化を目視評価した。
〇・・・ポリイミド樹脂基材の屈曲時に印刷物変化なし
△・・・ポリイミド樹脂基材の屈曲時に印刷物がひび割れ、あるいは脱落した
×・・・乾燥時にポリイミド樹脂基材上で印刷物がひび割れ、あるいは脱落した
(除去性の評価)
各組成物を、ストライプパターンのスクリーン印刷版を用いてポリイミド樹脂基材(カプトン100H)上に印刷後、120℃のオーブンで30分間乾燥し(有機溶媒除去工程)、21℃純水中に90秒間浸漬させ(水処理工程あるいは水との接触による改質工程)、その後、純水中にて超音波洗浄(40kHz、10分間)処理した。ポリイミド樹脂表面をマイクロスコープ(倍率100倍)にて観察し、残留物の有無を評価した。
〇・・・残留物なし
×・・・残留物あり
Figure 0006325274
上記の結果から、水溶性高分子化合物を含有するポリイミド樹脂表面改質剤組成物を用いることで、ポリイミド樹脂基材表面の改質程度が向上し、均一なめっき析出性を確保することができたことがわかる。また、水溶性高分子化合物を含有するポリイミド樹脂表面改質剤組成物を用いることにより印刷物の耐久性が十分に確保できた。更に、水溶性高分子化合物を含有するポリイミド樹脂表面改質剤組成物は、水を用いた除去においてポリイミド樹脂基材上から完全に除去することができた。
<実施例14〜22>
組成物1または2を、スクリーン印刷を用いてポリイミド樹脂基材(商品名「カプトン100H」)上に印刷し、150℃のオーブンで30分間乾燥させた後、以下に記す種々の水接触方法(浸漬法、スプレー法、濡れ布接触法、滴下法、ゲル接触法、超音波処理法)を用いて処理を行い、改質促進効果を評価した。改質処理、メッキ処理方法は実施例10の方法に準ずる。各評価方法についても前述の方法を用いた。結果を表6に示す。
Figure 0006325274
・浸漬法
印刷物を純水中(21℃または40℃)に浸漬させ、所定の時間経過後に、純水中の超音波洗浄を施した。
・スプレー法
純水をスプレーにて印刷物表面に噴射し、所定の時間経過後、純水中の超音波洗浄を施した。
・濡れ布接触法
純水を含ませたハイドロクロスに、印刷物表面を接触させ、所定の時間経過後、純水中の超音波洗浄を施した。
・滴下法
純水を印刷物上に500μL滴下し、所定の時間経過後、純水中の超音波洗浄を施した。
・ゲル接触法
純水を用いて8%カルボキシメチルセルロース(セロゲンHE−600F:第一工業製薬株式会社製)のゲルを調製した後、印刷物表面をゲルに接触させ、所定の時間経過後、純水中の超音波洗浄を施した。
・超音波処理
25℃の純水中に浸漬した状態で、40kHzの超音波照射を5分間実施した。
なお、各方法での水との接触処理の後に実施する「超音波洗浄」は、25℃の純水中に浸漬した状態で、40kHzの超音波照射を5分間実施する、というものである。
水溶性高分子を含む組成物に対して、各種水接触方法を用いた場合、いずれも十分なポリイミド樹脂表面の改質率が達せられ、ムラなく均一なめっき皮膜が形成できた。
本発明のポリイミド樹脂表面改質剤及びそれを用いたポリイミド樹脂表面改質方法によれば、印刷版や印刷装置へのダメージを抑制し、かつポリイミド樹脂表面におけるイミド環の開環をムラなく十分に起こすことができる。このような方法で表面改質がなされたポリイミド樹脂に金属イオンを吸着させ、これを還元して金属皮膜を形成することにより、アンダーエッチングがなく、また耐マイグレーション性に優れた金属膜パターンを得ることができる。このように、本発明の方法は、フレキシブルプリント配線板等の回路基板の製造に広く利用可能である。


Claims (9)

  1. アルカリ金属の水酸化物及び水酸化第四級アンモニウムからなる群から選択されるアルカリ成分と、水酸基を有する沸点120℃以上の有機溶媒とを含有し、且つ、前記アルカリ成分の配合量がKOH換算値として0.1〜10重量%であり、水の含有量が0〜10重量%であることを特徴とする、ポリイミド樹脂表面改質剤。
  2. さらに水溶性高分子化合物を含有することを特徴とする、請求項1記載のポリイミド樹脂表面改質剤。
  3. 前記有機溶媒がアルコール類であることを特徴とする、請求項1又は2記載のポリイミド樹脂表面改質剤。
  4. 前記アルコール類が炭化水素系アルコール、アルキレングリコール類及びグリコールエーテル類からなる群から選択されるものである、請求項記載のポリイミド樹脂表面改質剤。
  5. 前記水溶性高分子化合物が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選択されるものである、請求項2記載のポリイミド樹脂表面改質剤。
  6. アルカリ金属の水酸化物及び水酸化第四級アンモニウムからなる群から選択されるアルカリ成分と水酸基を有する沸点120℃以上の有機溶媒とを含有し、且つ、前記アルカリ成分の配合量がKOH換算値として0.1〜10重量%であり水の含有量が0〜10重量%であるポリイミド樹脂表面改質剤を用いてポリイミド樹脂基材の表面を改質する方法であって、
    前記ポリイミド樹脂表面改質剤を用いてポリイミド樹脂基材の表面に所定のパターンを印刷する印刷工程、
    前記ポリイミド樹脂基材の表面にパターン印刷されたポリイミド樹脂表面改質剤中の有機溶媒を除去する有機溶媒除去工程、及び
    有機溶媒除去後のポリイミド樹脂表面改質剤を水と接触させる水処理工程
    を含むことを特徴とする、ポリイミド樹脂表面改質方法。
  7. 前記ポリイミド樹脂表面改質剤が、さらに水溶性高分子化合物を含有することを特徴とする、請求項記載のポリイミド樹脂表面改質方法。
  8. 前記印刷の方法がスクリーン印刷である、請求項6又は7記載のポリイミド樹脂表面改質方法。
  9. 前記印刷の方法がインクジェット印刷である、請求項6又は7記載のポリイミド樹脂表面改質方法。
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