図1は、本発明の実施形態に係る免震装置1が有する免震支承3の概略構成を示す斜視図である。なお、図1において、x方向及びy方向は水平方向であり、z方向は鉛直方向である。
免震装置1(免震支承3)は、不図示の免震対象物と不図示の支持構造物との間に配置され、免震対象物を支持構造物に対して水平方向に移動可能に支持するものである。
免震対象物及び支持構造物の組み合わせは、例えば、建築物(家屋等)及び当該建築物を支持する基礎部分の組み合わせ、什器及び什器を支持する建築物の組み合わせ等が挙げられる。とりわけ、建築物に支持される物のうち免震されることが好ましい物としては、例えば、芸術品やコンピュータ機器(サーバ)が挙げられる。また、ビルの高層階や屋上等に配置される免震対象物は、ビルの共振によって大きな加速度及び/又は変位で振動する可能性が高いことから、免震されることが好ましいとともに、変位が抑制されることが好ましい。
免震支承3は、例えば、総ボール式又はボールリテーナ式のリニアガイドを含んで構成されており、いわゆる転がり支承として構成されている。具体的には、以下のとおりである。
免震支承3は、例えば、支持構造物に支持される下部テーブル5と、下部テーブル5の上面に対向して配置され、免震対象物に固定される上部テーブル7と、下部テーブル5と上部テーブル7との間に介在し、上部テーブル7を下部テーブル5に対して水平方向に移動可能に支持する複数(本実施形態では4つ)のリニアガイド9とを有している。
リニアガイド9は、例えば、下部テーブル5に固定される下部レール11と、下部レール11に支持されるスライダ13と、スライダ13に支持され、上部テーブル7に固定される上部レール15とを有している。下部レール11とスライダ13との間、及び、スライダ13と上部レール15との間には、不図示の複数のボールが介在している。
下部レール11とスライダ13とは、下部レール11の延在方向において相対移動可能であり、また、下部レール11の延在方向以外の方向における相対移動が規制されている。同様に、スライダ13と上部レール15とは、上部レール15の延在方向において相対移動可能であり、また、上部レール15の延在方向以外の方向における相対移動が規制されている。下部レール11及び上部レール15は、水平方向に延びるように配置され、また、互いに直交している。
従って、下部レール11と、上部レール15とは、水平方向の任意の方向に相対移動可能であり、ひいては、これらに固定された下部テーブル5(支持構造物)及び上部テーブル7(免震対象物)は、水平方向の任意の方向に相対移動可能である。ただし、下部レール11及び上部レール15の水平方向における相対回転は規制されている。
複数のリニアガイド9は、互いの動きを規制し合わないように、下部レール11同士が互いに平行になり、上部レール15同士が互いに平行になるように配置されている。複数のリニアガイド9は、下部テーブル5及び上部テーブル7に対して固定されて互いに連結されているから、複数のリニアガイド9間において、x方向の移動量(下部レール11に対するスライダ13の移動量)は互いに同一であり、また、y方向の移動量(スライダ13に対する上部レール15の移動量)も互いに同一である。
なお、複数のリニアガイド9の数、配置位置及び配置の向きは、適宜に設定されてよい。図1では、矩形の下部テーブル5及び上部テーブル7の4隅に、下部レール11及び上部レール15がこれらテーブルの辺に平行になるように配置されている場合を例示したが、レールは矩形のテーブルの対角線に平行であってもよい。
図2は、免震支承3の一部及び変位抑制装置17の概略構成を示す平面図である。
変位抑制装置17は、下部テーブル5(下部レール11)に固定される本体部19と、スライダ13に固定される入力チェーン21とを有している。スライダ13の下部レール11に対する移動に伴って入力チェーン21は引張られて移動する。本体部19は、この入力チェーン21の移動に対して摩擦力による抵抗を生じるように構成されている。
従って、例えば、比較的高い加速度の地震が生じ、免震対象物(スライダ13)が支持構造物(下部レール11)に対して移動すると、免震対象物の運動エネルギーは摩擦によって熱エネルギーに変換されて散逸される。これにより、免震対象物の変位が抑制される。別の観点では、免震対象物の振動が減衰される。なお、比較的加速度が低い地震(長周期の地震)が生じたときは、免震対象物は、摩擦力に抗して入力チェーン21を引張って移動させることができず、支持構造物に対して変位しない。
なお、図2では、下部レール11とスライダ13との相対変位(免震対象物と支持構造物とのx方向における相対変位)を抑制する変位抑制装置17を例示しているが、この変位抑制装置17に加えて又は代えて、スライダ13と上部レール15との相対変位(免震対象物と支持構造物とのy方向における相対変位)を抑制する変位抑制装置17が設けられてもよい。この変位抑制装置17では、例えば、本体部19は、上部テーブル7(上部レール15)に固定され、入力チェーン21はスライダ13に固定される。
以下では、説明の便宜上、下部レール11とスライダ13との変位を抑制する変位抑制装置17についてのみ説明するが、上部レール15とスライダ13との変位を抑制する変位抑制装置17の構成も概略同様である。
図3は、変位抑制装置17を一部の部材を省略して示す平面図であり、図4は、変位抑制装置17を一部の部材を省略して示す一部に断面図を含む側面図である。
変位抑制装置17は、上述した入力チェーン21(図3)と、入力チェーン21を案内する1対の案内スプロケット23と、入力チェーン21の張力により回転される入力スプロケット25と、入力スプロケット25の回転を伝達する伝達機構27と、伝達機構27の回転に抗する摩擦力を生じる摩擦機構29と、これらを保持する基体30とを有している。
入力チェーン21の種類は適宜なものとされてよく、例えば、ローラチェーン、ブッシュチェーン又はサイレントチェーンである。入力チェーン21は、例えば、図2に示すように、一端が一のスライダ13に固定されるとともに、他端が他のスライダ13に固定されている。この入力チェーン21の両端が固定されるスライダ13を有する2つのリニアガイド9は、下部レール11とスライダ13との相対移動の方向において互いに隣接している。
なお、既に述べたように、複数のリニアガイド9は、下部テーブル5及び上部テーブル7に固定されていることから、下部レール11に対するスライダ13の移動量は互いに同一である。すなわち、複数のスライダ13の位置関係はリニアガイド9の移動に関わらず一定である。従って、入力チェーン21が固定される2つのスライダ13は、一つの部材(第2支承部材)として捉えられてもよい。
入力チェーン21の端部と、スライダ13との固定は、適宜な方法によりなされてよい。例えば、特に図示しないが、スライダ13に固定されたナットと、入力チェーン21の端部に固定されたナットと、両ナットに螺合するボルトとによって固定がなされてよい。この場合、ボルトとナットとの位置を調整することにより、簡便に入力チェーン21の張り具合(弛み、遊び)を調整できる。
図3に示すように、入力チェーン21は、両端が2つのスライダ13に固定されるとともに、1対の案内スプロケット23及び入力スプロケット25に接して案内されることによって、所定の経路で張られている。各スプロケットの配置や入力チェーン21の経路は、例えば、以下のとおりである。
1対の案内スプロケット23は、スライダ13の移動方向(x方向)において互いに離間して配置されている。1対の案内スプロケット23の外周部のうちx方向に直交する方向の一方側(y方向の正側)の頂部の位置と、入力チェーン21のスライダ13に対する固定位置とは、y方向の位置が概ね一致している。また、入力スプロケット25の外周部のうちy方向の負側の頂部は、1対の案内スプロケット23の外周部のうちy方向の正側の頂部よりもy方向の負側に位置している。そして、入力チェーン21は、1対の案内スプロケット23のy方向の正側の外周部に接し、且つ、入力チェーン21のうち1対の案内スプロケット23間の部分は、入力スプロケット25のy方向の負側の外周部に接している。
これにより、入力チェーン21のうち1対の案内スプロケット23よりも両端側の部分はx方向に概ね平行になり、また、入力チェーン21のうち1対の案内スプロケット23間の部分は入力スプロケット25にて折り返されている。
入力チェーン21のうち2つのスライダ13に固定される両端側部分が、2つのスライダ13の移動方向(x方向)に概ね平行に延びていることから、2つのスライダ13がx方向の同一側へ同一の移動量で移動した場合、入力チェーン21は、その張り巡らされた経路に沿って移動する。また、入力チェーン21において、一方の案内スプロケット23から引き出される量と、他方の案内スプロケット23へ引き込まれる量とは概ね同等である。すなわち、入力チェーン21に遊び(弛み)の過度な増大又は縮小は生じない。
1対の案内スプロケット23の外周部のうち互いに対向する頂部間の距離は、例えば、入力スプロケット25の径と概ね同等である。従って、入力チェーン21のうち案内スプロケット23と入力スプロケット25との間の部分は、スライダ13の移動方向に直交する方向(y方向)に延びている。これにより、入力チェーン21は、入力スプロケット25に対して半周程度掛けられている。
1対の案内スプロケット23の径は、例えば、互いに同一とされている。ひいては、1対の案内スプロケット23の歯数も互いに同一である。1対の案内スプロケット23の径は、例えば、入力スプロケット25の径よりも大きくされている。
伝達機構27は、図3及び図4に示すように、例えば、入力スプロケット25側から摩擦機構29側へ順に、第1伝達スプロケット31と、第1伝達スプロケット31に掛けられた環状の伝達チェーン33(図3)と、伝達チェーン33が掛けられた第2伝達スプロケット35とを有している。
第1伝達スプロケット31は、例えば、入力スプロケット25に同軸状に固定されており、入力スプロケット25と同一の回転数で回転する。第2伝達スプロケット35は、その回転軸が第1伝達スプロケット31の回転軸と平行になるように配置されている。第2伝達スプロケット35の径は、第1伝達スプロケット31の径よりも大きくされている。ひいては、第2伝達スプロケット35の歯数は、第1伝達スプロケット31の歯数よりも多くされている。
従って、第2伝達スプロケット35は、伝達チェーン33によって第1伝達スプロケット31の回転が伝達されて、第1伝達スプロケット31の回転数よりも低い回転数で回転する。すなわち、伝達機構27は、入力スプロケット25の回転をその回転数を小さくして摩擦機構29に入力する。別の観点では、入力スプロケット25(第1伝達スプロケット31)のモーメントと釣り合う第2伝達スプロケット35のモーメントは大きくなる。
第1伝達スプロケット31の径は、例えば、入力スプロケット25の径よりも大きくされている。従って、梃子の原理により、入力チェーン21の張力と釣り合う伝達チェーン33の張力は小さくなる。なお、第1伝達スプロケット31の歯数は、入力スプロケット25の歯数よりも多くされている。
入力スプロケット25の径に対する第1伝達スプロケット31の径の比は、例えば、第1伝達スプロケット31の径に対する第2伝達スプロケット35の径に対する比よりも大きい。例えば、図3では、前者は3程度であり、後者は1.5〜2である。従って、伝達機構27全体としては、入力チェーン21の張力と釣り合う第2伝達スプロケット35のモーメントは小さくなる。
伝達チェーン33は、例えば、チェーンを構成する各部材(プレートや軸等)が入力チェーン21よりも大きいものとされている。ただし、これらのチェーンは互いに同一の大きさの部材から構成されていてもよい。
なお、案内スプロケット23及び入力スプロケット25と、第1伝達スプロケット31及び第2伝達スプロケット35とは、回転軸方向の位置が互いに重ならないように配置されている。従って、本実施形態のように、平面視において、案内スプロケット23と第1伝達スプロケット31とは互いに重なっていてもよい。
摩擦機構29は、例えば、第2伝達スプロケット35と、第2伝達スプロケット35に当接する第1摩擦部材37A及び第2摩擦部材37B(以下、単に「摩擦部材37」といい、両者を区別しないことがある。)と、これらを支持する軸部材39と、1対の摩擦部材37の第2伝達スプロケット35に対する接触圧を調整する複数のねじ41とを有している。
なお、第2伝達スプロケット35は、伝達機構27及び摩擦機構29に兼用されている。ただし、第2伝達スプロケット35の外周部分が伝達機構27のスプロケットであり、第2伝達スプロケット35の内周部分が摩擦機構29の減衰回転部材であると捉えられてもよい。
軸部材39は、基体30に固定されている。第2伝達スプロケット35は、軸部材39にその軸回りに回転可能に支持されている。1対の摩擦部材37は、軸部材39にその軸回りに回転不可能に支持され、また、軸部材39の軸方向において第2伝達スプロケット35を挟んでいる。別の観点では、各摩擦部材37は、第2伝達スプロケット35に対してその回転軸の方向において対向して当接している。複数のねじ41は、軸部材39に固定されたフランジ43に形成された雌ねじ部43a(図4)に螺合しており、その先端は板ばね45等を介して第2摩擦部材37Bを第2伝達スプロケット35及び第1摩擦部材37A側へ押圧している。
図4では、摩擦部材37が第2伝達スプロケット35から離間している状態を示しているが、変位抑制装置17の使用に際しては、ねじ41をねじ込むことにより、1対の摩擦部材37により第2伝達スプロケット35は所定の圧力で挟持される。
従って、第2伝達スプロケット35が回転すると、第2伝達スプロケット35と摩擦部材37との間に摩擦力が生じる。摩擦力の大きさは、ねじ41のねじ込み量を調整することによって適宜に調整可能である。
上述のように第2伝達スプロケット35の径は、第1伝達スプロケット31の径よりも大きくされている。また、第2伝達スプロケット35に当接する摩擦部材37の径(外径)は第1伝達スプロケット31の径よりも大きくされている。
基体30は、例えば、金属からなる1又は複数(本実施形態では複数)の板状部材が不図示のスペーサを介して積層されるとともに互いに固定されて構成されている。複数の板状部材の間には上述した各種のスプロケットが配置され、軸部材を介して回転可能に基体30に支持されている。
以上に説明した免震装置1の作用を説明する。
まず、比較的加速度が高い地震が発生した場合について説明する。この場合、支持構造物が水平方向に振動する。免震対象物は、免震支承3を介して支持構造物に支持されているから、慣性力により支持構造物に対して相対的に水平方向に振動する。その結果、免震対象物に大きな加速度が加えられることが抑制される。
この際、免震対象物(上部テーブル7)の支持構造物(下部テーブル5)に対する振動がx方向成分を含んでいる場合においては、スライダ13が下部レール11に対してx方向に振動する。これにより、入力チェーン21は、両端が交互に引張られ、その経路に沿って、一方側及び他方側へ移動する。
入力チェーン21の張力は、入力スプロケット25の外周部に対して当該外周部に沿う方向に作用し、入力スプロケット25を回転させる。入力チェーン21は、両端が交互に引張られるから、入力スプロケット25は、回転方向の一方側及び他方側に交互に回転する。
入力スプロケット25の回転は第2伝達スプロケット35に伝達される。そして、第2伝達スプロケット35と摩擦部材37との間で摩擦力が生じる。その結果、免震対象物の運動エネルギーは、摩擦によって熱エネルギーに変換されて散逸され、免震対象物の変位が抑制される。別の観点では、免震対象物の振動が減衰される。
次に、比較的加速度が低い地震(長周期の地震)が生じた場合について説明する。この場合も、支持構造物を基準として免震対象物には加速度が加えられる。しかし、その加速度が小さいことから、入力チェーン21の張力は小さく、ひいては、第2伝達スプロケット35に入力されるモーメントも小さい。そして、このモーメントは、第2伝達スプロケット35と摩擦部材37との間の最大摩擦力を超えず、第2伝達スプロケット35は回転しない。
従って、免震対象物は支持構造物に対して移動しない。その結果、長周期の地震によって免震対象物が支持構造物に対して大きく変位するおそれが低減され、ひいては、免震対象物が周囲の構造物に衝突するおそれが低減される。
以上のとおり、本実施形態の変位抑制装置17は、可撓性の入力チェーン21と、この入力チェーン21の張力が外周部に付与されて回転される入力スプロケット25と、入力スプロケット25と同軸に固定され、入力スプロケット25よりも径が大きい第1伝達スプロケット31と、摩擦機構29とを有している。摩擦機構29は、第1伝達スプロケット31の外周部から力が伝達されて駆動される第2伝達スプロケット35と、この第2伝達スプロケット35との相対移動の際に第2伝達スプロケット35との間で減衰力を生じる摩擦部材37とを有している。
従って、入力チェーン21の張力に釣り合う伝達チェーン33の張力を小さくし、ひいては、地震により支持構造物に対して免震対象物に働く力に釣り合う摩擦機構29の摩擦力を小さくできる。その結果、摩擦機構29を小型化することができる。ひいては、変位抑制装置17を小型化し、既存の免震支承3への変位抑制装置17の取り付けが容易化される。
また、本実施形態では、変位抑制装置17は、可撓性を有し、第1伝達スプロケット31と第2伝達スプロケット35とに架け渡され、第1伝達スプロケット31の回転を第2伝達スプロケット35に伝達して第2伝達スプロケット35を回転させる環状の伝達チェーン33を更に有している。
従って、第1伝達スプロケット31(入力スプロケット25)に対する摩擦機構29の配置の自由度が向上する。すなわち、歯車機構によって入力スプロケット25側から摩擦機構29側へ回転を伝達する場合(この場合も本願発明に含まれる)、歯車の大きさは、回転の変速等に必然的に関係することから、摩擦機構29の大きさや配置を任意に設定することが困難になるが、本実施形態では、そのような不都合は生じない。その結果、例えば、入力スプロケット25及び第1伝達スプロケット31の径の比、並びに、摩擦機構29の大きさの設定と、摩擦機構29の配置位置の設定とを独立に行いやすくなる。より具体的には、例えば、基体30は設計変更せずに、入力スプロケット25及び第1伝達スプロケット31の径の比、並びに、摩擦機構29の大きさのみを設計変更することが可能である。
また、本実施形態では、入力チェーン21は、環状に形成されておらず、両端部を有している。
従って、入力チェーン21の一端のみを引き出す場合(この場合も本願発明に含まれる。特許文献1参照)に比較して、免震対象物の所定の方向の一方側への移動及び他方側への移動の双方に対して、一の変位抑制装置17で対応可能である。また、入力チェーン21を環状に形成する場合(この場合も本願発明に含まれる。特許文献2や後述する図5(a)参照)に比較して、入力チェーン21の配置の自由度が高い。
例えば、入力チェーン21は、両端部が2つのスライダ13に固定されるとともに、両端部を含む両端側部分(本実施形態では、1対の案内スプロケット23よりも端部側の部分)が互いに逆方向に延びるように張られてよい。この場合、環状のチェーンを配置する場合に比較して、入力チェーン21の経路が簡素であるとともに入力チェーン21の長さを短くすることができる。入力チェーン21を免震支承3外の部材に取り付けること等も容易化される。
また、本実施形態では、変位抑制装置17は、互いに離間して配置され、外周部を入力チェーン21に当接させて入力チェーン21を案内する1対の案内スプロケット23を更に有している。入力チェーン21は、1対の案内スプロケット23に当接する間の部分が入力スプロケット25に当接して折り返している。
従って、入力チェーン21の両端側部分についてはx方向に平行にしつつ、できるだけ長い距離で入力チェーン21と入力スプロケット25とを当接させ、入力チェーン21の張力を確実に入力スプロケット25に伝達することができる。また、1対の案内スプロケット23と入力スプロケット25との間における入力チェーン21の長さや向きを、入力チェーン21の両端の位置に関わらず任意に設定できることになり、設計の自由度が向上する。
また、本実施形態では、摩擦部材37及び第2伝達スプロケット35は、第2伝達スプロケット35の回転軸の軸方向において互いに対向して当接している。
従って、例えば、トルクリミッタにより減衰機構を構成した場合(この場合も本願発明に含まれる。後述する図6の変形例参照)に比較して、摩擦部材37と第2伝達スプロケット35とをねじ等により締め付けることによって、これらの接触圧を強くすることが容易である。ひいては、小型な構成で大きな摩擦力を得ることが容易である。
なお、以上の実施形態において、下部レール11及び/又は下部テーブル5は第1支承部材の一例であり、スライダ13は第2支承部材の一例であり、入力チェーン21は第1長尺部材の一例であり、入力スプロケット25は入力回転部材の一例であり、摩擦機構29は減衰機構の一例であり、第1伝達スプロケット31は伝達回転部材の一例であり、第2伝達スプロケット35は可動部材の一例であり、摩擦部材37は固定部材の一例であり、伝達チェーン33は第2長尺部材の一例である。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
免震支承は、2軸のリニアガイドを利用したものに限定されない。例えば、免震支承は、公知のすべり支承、積層ゴム支承又は転がり支承であってよく、これらは水平方向の任意の方向において免震対象物と支持構造物との相対変位を許容するものであってよい。この場合、免震支承とは別に免震対象物の荷重を殆ど支持しない2軸のリニアガイドが設けられ、このリニアガイドに変位抑制装置が連結されてもよい。
変位抑制装置は、免震対象物の支持構造物に対する変位を抑制するものに限定されない。例えば、変位抑制装置は、免震支承を介さずに床面や地面に載置された対象物の変位抑制に利用されたり、構造物の部材間の変位抑制に利用されたりしてもよい(後述の図7参照)。また、変位抑制装置によって変位が抑制される方向は、水平方向に限定されず、鉛直方向又は鉛直方向の成分を含む方向であってもよい。
変位抑制装置が免震装置に利用される場合において、実施形態では、支持構造物(又は免震対象物)に本体部19(基体30や入力スプロケット25等)が支持され、入力チェーン21がスライダ13に固定された。これとは逆に、本体部19がスライダ13に支持され、入力チェーン21が支持構造物(又は免震対象物)に直接又は間接に固定されてもよい。
第1及び/又は第2の長尺部材は、チェーンに限定されない。例えば、長尺部材は、ベルト(ゴムベルト等。歯付きであることが好ましい)又はワイヤーであってもよい。軽量免震対象物の場合、長尺部材として強度の高いテグスを用いることも可能である。
また、長尺部材がチェーンに限定されないことに関連して、入力回転部材や案内回転部材は、スプロケットである必要は無い。例えば、長尺部材が歯付きベルトである場合においては、入力回転部材は歯車であってもよい。また、例えば、長尺部材がワイヤーやテグスである場合においては、入力回転部材は、長尺部材の中央側部分が巻き付けられ、回転によって長尺部材の一端側の引出しを許容するとともに他端側を巻き取るものであってもよい。案内回転部材は、長尺部材の構成によらず、歯を有さないものであってもよい。
第1長尺部材は、その張力を直接的に付与する回転部材(実施形態では入力回転部材、入力スプロケット25)を基準として、引き出される量と、引き込まれる量とが概ね同等となるような経路で張られていれば、どのような経路で張られていてもよい。典型的には、第1長尺部材は、入力回転部材の外周部に接し、その接する部分に対して両側となる位置(実施形態では入力チェーン21の両端)にて第2支承部材(実施形態ではスライダ13)に固定され、その固定される位置から入力回転部材側への2つの部分が、第2支承部材の第1支承部材(実施形態では下部テーブル5)に対する振動方向(実施形態ではx方向)において互いに反対の向きで延びている。
図5(a)及び図5(b)は、そのような典型的な第1長尺部材の張り巡らせ方の、実施形態とは別の例を示している。
図5(a)に示すように、下部レール11の延びる方向の両側に中継スプロケット51を設け、入力チェーン21の両端を一のスライダ13に固定してもよい。別の観点では、固定位置から入力スプロケット25側への2つの部分は、固定位置から入力スプロケット25側へ延びていると表現するものとしたときに、実施形態では、互いに近づく側へ延びていたのに対して、図5(a)では互いに離れる側へ延びている。すなわち、振動方向における互いに反対の向きは、互いに近づく向きであってもよいし、互いに離れる向きであってもよい。
なお、点線で示すように、入力チェーン21は、輪に形成されて、一部がスライダ13に固定されてもよい。この場合においても、入力チェーン21は、入力スプロケット25の外周部に接し、その接する部分に対して両側となる位置(但し1ヶ所)にてスライダ13に固定され、その固定される位置から入力スプロケット25側への2つの部分が、スライダ13の下部レール11に対する振動方向において互いに反対の向きで延びている(より詳細には、固定される位置から入力スプロケット25側へ延びると表現した場合に、互いに離れる向きで延びている)と捉えることができる。
また、図5(b)に示すように、中継スプロケット51が適宜に配置されることにより、入力チェーン21のうち入力スプロケット25に対して一端側の部分及び他端側の部分の経路が互いに異なっていてもよい。また、別の観点では、入力スプロケット25に対する案内スプロケット23の位置(方向)や入力スプロケット25に対する第2伝達スプロケット35の位置(方向)は、下部レール11の延びる方向に対して適宜に設定されてよい。
なお、本願発明は、第1長尺部材を用いることによって、ラック・ピニオン機構を用いた場合に比較して、変位抑制装置の製造又は取り付けの誤差がある程度は許容されることを発明の作用効果の一つとしている。従って、本願において、第1長尺部材のうち対象物に固定される部分を含む一部が変位を抑制する方向(振動方向)に平行という場合、厳密な平行である状態を指すものではなく、多少傾斜している場合も含むものとする。また、同様に、第1長尺部材が張られているという場合、多少の遊び(弛み)がある場合を含むものとする。
さらに、入力チェーン21は、図5(c)に示すように、互いに平行でなくてもよく、また、スライダ13の移動方向等に対する傾斜角(θ1、θ2)が互いに異なっていてもよい。
入力回転部材は、その外周部に第1長尺部材が直接に接するものに限定されず、第1長尺部材が外周部に直接に接する回転部材から、長尺部材又は歯等を介して回転が伝達されるものであってもよい。
1対の案内回転部材(1対の案内スプロケット23)は設けられなくてもよい。例えば、入力チェーン21の両端が2つのスライダ13に固定されて直線状に張られ、その直線状に張られた入力チェーン21に入力スプロケット25が当接していてもよい。
案内回転部材が設けられる場合において、入力チェーン21のうち1対の案内スプロケット23間の部分は、入力スプロケット25によって180°逆方向に折り返すのではなく、90°超の範囲で折り返してもよいし、90°未満の角度で曲がるのみでもよい。また、1対の案内回転部材は、入力回転部材に対して対称に配置されている必要は無いし(図5(c)参照)、その径が入力回転部材の径よりも大きい必要ない。1対の案内回転部材と入力回転部材とで長尺部材の接する面が互いに逆でなくてもよい。
減衰機構は、摩擦機構に限定されず、可動部材(第2伝達スプロケット35)と固定部材(摩擦部材37)との間で回転に抗する減衰力を生じることができるものであればよい。ここで、減衰力は、速度に比例する力に限定されず、また、振動の減衰に係るものに限定されず、運動エネルギーの散逸を伴う、変位を抑制する力であるものとする。例えば、減衰機構は、磁力乃至は電磁力を利用するマグネット式のトルクリミッタによって構成されてもよいし、粘性流体中に回転部材が配置されて粘性抵抗を利用するものであってもよい。
また、減衰機構は、必ずしも回転が入力されるものでなくてもよい。例えば、伝達回転部材(第1伝達スプロケット31)の回転が可動部材の並進運動に変換されて、その並進運動に対して減衰力を発揮するものであってもよい。
また、減衰機構が摩擦機構である場合において、摩擦機構は、減衰回転部材(第2伝達スプロケット35)と固定部材(摩擦部材37)とを減衰回転部材の回転軸の方向において互いに対向させて当接させるものに限定されない。
例えば、図6に示す摩擦機構61は、1又は複数のトルクリミッタ63を備えて構成されている。トルクリミッタ63は、例えば、内輪65、内輪65を回転可能に収容する外側部品67とを有している。外側部品67は、例えば、筒状部材69と、この筒状部材と内輪65との間に介在する不図示のスプリングとを有している。スプリングは、筒状部材69に対して回転不可能とされ、また、内輪65を締め付けている。スプリングと内輪65との間には潤滑剤が介在されている。
複数のトルクリミッタ63のうち一つの内輪65は、第2伝達スプロケット35に対して同軸に固定されており、第2伝達スプロケット35と共に回転する。一方、他のトルクリミッタ63の内輪65は、複数の歯車71を介して第2伝達スプロケット35の回転が伝達される。なお、複数のトルクリミッタ63は、内輪65が第2伝達スプロケット35に固定されるものを除いて、着脱可能であってもよい。この場合、トルクリミッタ63の着脱によって摩擦力を調整できる。
本願発明において、回転数を変化させて減衰機構に伝達することは必須の要件ではない。例えば、第1伝達スプロケット31と第2伝達スプロケット35とは同径であってもよい。
伝達回転部材(第1伝達スプロケット31)と可動部材(第2伝達スプロケット35)との間の運動の伝達は、これらに掛架されたチェーンによるものに限定されない。例えば、既に述べたように、歯車機構が用いられてもよいし、チェーンに代えて他の長尺部材(歯付きベルト等)が用いられてもよい。
(他の応用例)
図7(a)及び図7(b)は、変位抑制装置17の免震装置以外への応用例を説明する側面図である。また、図7は、第1長尺部材(入力チェーン21)の、上述した典型例の張り方とは異なる張り方の例も示している。
この応用例において、変位抑制装置17は、構造物201の変形抑制装置として利用されている。なお、図7(a)は変形前及び図7(b)は変形後を示している。
構造物201は、例えば、土台203と、土台203に支持された2本の柱205と、2本の柱205に支持された梁207とを有している。変位抑制装置17は、その本体部19が土台に固定されている。入力チェーン21は、中継スプロケット51を介して交差するように延び、その端部は梁207に固定されている。
地震等によって、梁207が土台203に対して水平方向に移動すると、入力チェーン21の一端側は引張られ(矢印y1)、他端側は中継スプロケット51側への移動が許容される(矢印y2)。なお、このとき、入力チェーン21の一端側の引出し量と、他端側の引き込み量とは概ね同等である。そして、実施形態と同様に、入力チェーン21の引出しに対して減衰力が付与されることによって、梁207の土台203に対する変位は抑制される。