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JP6356497B2 - サイジング剤付着繊維束およびその製造方法 - Google Patents
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JP6356497B2 - サイジング剤付着繊維束およびその製造方法 - Google Patents

サイジング剤付着繊維束およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明はサイジング剤付着繊維束に関し、さらに詳しくは繊維とマトリックス樹脂からなる複合材料に最適なサイジング剤が付着した繊維束およびその製造方法に関する。
繊維によってマトリックス樹脂を強化された複合材料は、軽量でありながら強度、剛性、寸法安定性等に優れることから、事務機器用途、自動車用途、コンピュータ用途(ICトレイ、ノートパソコンの筐体(ハウジング)など)等の一般産業分野に広く展開され、その需要は年々増加しつつある。しかしこの複合材料に用いられる強化用の繊維は、マトリックス樹脂と化学組成や分子構造が異なるために、親和性や接着性の向上が大きな課題となっている。
また、中でも強化用の繊維が、マトリックス樹脂中にて繊維束の形態で使用される場合には、上記の繊維とマトリックス樹脂との親和性、接着性などの界面の問題に加えて、様々な問題があった。例えば繊維束をカットしたり開繊する工程の安定性や、マトリックス樹脂を含浸する工程における加工性などの問題があった。繊維束の状態が安定しない場合には、内層部に高粘度の樹脂を含浸させる際に含浸の度合が大きく異なることとなり、安定した複合材料の物性を得ることができないのである。
従来、繊維束とマトリックス樹脂との親和性を高める目的では、さまざまなサイジング剤が検討されている。例えば特許文献1では、エポキシエマルジョン系サイジング剤を繊維束に付着させることで、繊維束とマトリックス樹脂との界面接着性を向上させて、複合材料の強度を改善する方法が開示されている。あるいは特許文献2では、熱可塑性樹脂のポリプロピレンをマトリックスとする場合に、酸変性ポリオレフィン系サイジング剤で処理する方法が開示されている。
しかしこれらの方法では、界面接着強度こそ向上するものの繊維束の風合いが硬くなりやすく、取扱性および加工性が著しく低下するという問題があった。さらに最終的に得られる複合材料の物性としても、不十分なものとなっていた。補強用繊維束が複合材料中において均一に分散されず、十分な補強効果が得られない結果となるのである。
特に、複合材料のマトリックス樹脂が高粘度の熱可塑性樹脂である場合や、補強用繊維束をさらに拡幅、開繊し、分繊、切断して繊維束をランダムに塗布し、樹脂と含浸させるランダムマットの場合には、この問題が顕著であった。
高い加工性とともに、繊維束内層部への樹脂含浸性、マトリックス樹脂と繊維間の接着性などの複数の課題を同時に満足させ、複合材料の物性を十分に向上させる繊維束の開発が待たれていたのである。
特開平4−170435号公報 特開2006−124847号公報
本発明は、ランダムマット等の複合材料に最適な、風合いと収束性を満足するサイジング剤付着繊維束、およびその製造方法を提供することにある。
本発明のサイジング剤付着繊維束は、表面にサイジング剤が付着した繊維束であって、繊維束の全体形状が扁平繊維束で、該繊維束の厚みが200μm以下であり、該サイジング剤がエポキシ化合物とアミン化合物の反応物であるアミンアダクトを中和したアミンアダクト塩と、ポリウレタンとを含有することを特徴とする。
さらには、アミンアダクトとポリウレタンとの重量配合比率が1:9〜9:1であることや、繊維束が炭素繊維束であることが好ましい。
またもう一つの本発明のサイジング剤付着繊維束の製造方法は、強化繊維から構成される繊維束であって、繊維束の全体形状が扁平繊維束で、該繊維束の厚みが200μm以下であり、当該繊維束の表面に、エポキシ化合物とアミン化合物の反応物であるアミンアダクトを中和したアミンアダクト塩と、ポリウレタンエマルジョンとを含有する処理液を付着させ、乾燥させることを特徴とする
さらに本発明は、これらのサイジング剤付着繊維束から得られる強化繊維とマトリックス樹脂からなる複合材料の発明を包含する。
本発明によれば、ランダムマット等の複合材料に最適な、風合いと収束性を満足するサイジング剤付着繊維束、およびその製造方法が提供される。
本発明のサイジング剤付着繊維束は、表面にサイジング剤が付着した繊維束であって、該サイジング剤がエポキシ化合物とアミン化合物の反応物であるアミンアダクトとポリウレタンとを含有するものである。さらにはサイジング剤に含有されるポリウレタンはエマルジョンまたはディスパージョン由来の難水溶性のポリウレタン樹脂であることが好ましく、さらには熱可塑性のポリウレタン樹脂であることが好ましい。また、サイジング剤に含有されるアミンアダクトとしては水溶性であることが好ましい。
ここで本発明のサイジング剤付着繊維束に好ましく用いられる繊維としては、マトリックス樹脂を補強することができる各種の強化繊維を挙げることができる。具体的にそのような強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭化ケイ素繊維などの各種無機繊維、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアリレート繊維、ポリアセタール繊維、PBO繊維、ポリフェニレンサルフィド繊維、ポリケトン繊維などの各種有機繊維、を好ましく挙げることができる。中でも本発明に適した繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維が好ましく、特に比強度、比弾性率が良好で、軽量かつ高強度の繊維強化複合材料が得られるポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維であることが好ましい。
本発明では、これらの強化繊維は繊維束として使用される。繊維束を構成するフィラメント(単糸)の構成本数としては10本以上であれば繊維束状態となるが、100本以上であることが好ましく、さらには1000〜100000本であることが好ましい。特に好ましい態様であるサイジング剤付着繊維束が炭素繊維束である場合には、生産性の観点などから3000〜80000本であることが好ましく、さらには6000本〜50000本の範囲であることが好ましい。繊維束を構成するフィラメントの本数が少なすぎると、繊維束の柔軟性が増してハンドリング性こそ向上するものの、強化繊維の生産性が低下する傾向にある。一方、本数が多すぎる場合は繊維束の生産が困難になることに加え、表面処理剤が十分に処理されにくい傾向にある。例えば強化繊維が炭素繊維である場合には、80000本を超えると炭素繊維前駆体繊維の耐炎化または不融化処理を十分に完了することが困難になり、最終的に得られる炭素繊維の機械物性を低下させる傾向にある。
繊維束を構成する各強化繊維(単繊維)の平均直径としては、3〜20μmの範囲が好ましい。より好ましい平均直径の範囲としては4〜15μm、更には5〜10μmである。強化繊維の平均直径が小さすぎる場合には同じ補強効果を得るためには繊維の総本数を増加させる必要がある。その場合、特に短い繊維を用いてマトリックス樹脂を補強する場合、結果的に繊維成分が嵩高くなって複合材料中の繊維の体積分率を高めることができず、機械強度の優れた複合材料を得ることが困難になる場合がある。特に炭素繊維のような無機繊維の場合にはこの傾向は顕著である。一方、強化繊維の平均直径が20μmを超えると、十分な繊維強度を確保することが困難な傾向にある。たとえば強化繊維が炭素繊維の場合には、炭素繊維前駆体繊維の耐炎化または不融化処理を十分に完了させることが出来ず、最終的に得られる炭素繊維の機械物性が低下しやすい傾向にある。
また繊維束の全体形状としては扁平繊維束であることが好ましい。繊維束の内部にまで塗布したサイジング剤、及びその後の複合材料とした時に用いるマトリックス樹脂が、より拡散しやすくなるためである。特に最終的に複合材料を製造する際には、繊維束の中にマトリックス樹脂が含浸するまでの時間は、扁平繊維束の場合には繊維束の厚みの2乗に比例する。このため、短時間で含浸を完了させるためには繊維束を拡幅し、サイジング剤付着繊維束の厚みを薄くすることが好ましい。含浸時間を効率的に短縮できるのである。具体的には繊維束の厚みとしては200μm以下であることが好ましい。もっとも例えば、繊維束の厚みが薄すぎても、特に短繊維からなる長さの短い繊維束を用いる場合に、かさが不必要に高くなり、ハンドリング性と成形性が低下する傾向にある。その観点からは繊維束の厚みとしては10μm以上であることが好ましい。さらには繊維束の厚みとしては30〜150μmの範囲が好ましく、特には50〜120μmの範囲がより好ましい。
このような本発明のサイジング剤付着繊維束の幅としては5mm以上であることが好ましく、10〜100mmの範囲であることが特に好ましい。繊維束の扁平率(繊維束の幅/厚み)としては10倍以上、特には50〜400倍の範囲にあることが好ましい。また繊維束の長さとしては1〜100mmの範囲であることが好ましい。さらには5〜50mmの範囲であることが好ましい。このような高い扁平率の、特に短い繊維束とすることにより、後の工程にて繊維束を容易に開繊しやすいため、ランダムマット形状に加工することが容易となる。このようなランダムマット形状を経て作られた複合材料は、成形速度が速くかつ物性に優れるために、特に工業生産に適した複合材料となる。
本発明のサイジング剤付着繊維束は、上記のような繊維束の表面に、サイジング剤を付着させるものである。そしてサイジング剤がアミンアダクトとポリウレタンを含有するものであることを特徴とする。
このサイジング剤に含有されるアミンアダクトは、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物である。さらにはこのアミンアダクトは水溶性であることが好ましく、いわゆる熱硬化してしまうような3次元網目構造体ではなく、直鎖状の熱可塑性樹脂であることが好ましい。このような観点から、立体障害の為反応性が乏しく3次元網目構造を作り難い脂環式エポキシ樹脂を出発原料に用いるのが好ましい。またモノマーやオリゴマーのような低分子量の化合物よりも、高分子であることが好ましい。例えば、エポキシ化合物とアミン化合物のユニット数としては、10以上の高分子であることが好ましい。またこのアミンアダクトとしては、分子骨格中に脂環式炭化水素構造を有することが好ましい。
さらに本発明で用いられるサイジング剤には、そのようなアミンアダクトと共にポリウレタンを含有するものである。さらにはこのサイジング剤に含有されるポリウレタンはエマルジョンまたはディスパージョン由来の難水溶性のポリウレタン樹脂、特には熱可塑性ポリウレタン樹脂であることが好ましい。熱可塑性ポリウレタン樹脂はゴムのようなしなやかな弾力性と硬質プラスチックのような強靭さを合わせ持つ樹脂である。このため、エマルジョンまたはディスパージョン由来のポリウレタン樹脂を用いることでサイジング剤付着繊維束の収束性を高めることが出来るともに、繊維束に適度なドレープ性を付与する事も可能となる。なお、耐熱性の観点からポリエステル系やポリカーボネート系のポリウレタン樹脂を使用する事が好ましい。
このようなサイジング剤は、特に繊維束の形態をとる強化繊維の表面処理に用いることにより、繊維束の高い開繊性と工程通過性が確保される。さらにこのような強化繊維を複合材料に用いた場合に、マトリックス樹脂に対する高い接着性および含浸性を両立することが可能となる。このような本発明に用いられるサイジング剤は、強化繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化複合材料用のサイジング剤として、本発明に特に適するものなのである。
本発明に好適に用いられるアミンアダクトについて、さらに詳細を述べる。
本発明で用いられるアミンアダクトは、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物である。さらに本発明で用いられるアミンアダクトは、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物であり、エポキシ化合物とアミン化合物の構成比(モル比)としては若干アミン化合物が過剰であることが好ましく、具体的には1:1.01〜1:1.1の範囲にあることが好ましい。ここでエポキシ化合物またはアミン化合物の片方の含有量が過剰になると、高分子が形成されずにモノマーやオリゴマーが形成されるために好ましくない。
さらに本発明に使用されるアミンアダクトとしては、基本的にはエポキシ化合物由来のエポキシ基が封鎖された熱可塑性樹脂化合物であることが好ましい。アミンアダクト中には若干ならば未反応のエポキシ基が残っていても良いが、残りすぎている場合には、分子量が低くなる傾向にあり、接着性が低下する傾向にある。また、強化繊維の製造工程にて、わずかに残存した未反応のエポキシ基がアミンアダクト同士で三次元網目構造を形成し、強化繊維への接着性を阻害する傾向にある。最終的に得られる複合材料のコンポジット物性が低下するのである。
そしてこの繊維処理剤に含有されるエポキシ化合物とアミン化合物の反応物からなるアミンアダクトは、その250℃における表面張力が25mN/m以上であることが好ましい。加熱された際の高分子の表面張力を25mN/m以上とすることにより、コンポジット物性をより高く保つことが可能となる。特にはアミンアダクトは、その250℃における表面張力が27〜40mN/mの範囲であることが好ましい。サイジング剤付着繊維束の表面に付着するアミンアダクトが、上記のように非常に大きな表面張力を持った場合、さらに使用される繊維束の表面自由エネルギーを事前に高めておくことが好ましい。そのようにすることで、繊維表面上でアミンアダクトが凝集することなく、より容易に濡れ広がることを可能とする。すなわち、本発明のサイジング剤を表面処理液に用い、その後繊維束を加熱乾燥する際に、凝集することなくより均一に繊維表面に高分子が濡れ広がることになる。その結果最終的に、そのようなサイジング剤付着繊維束を用いたコンポジット物性をより高くすることが可能となる。また、本発明で用いられるアミンアダクトの、この大きな表面張力は、分子構造に含まれる極性項、水素結合項由来の官能基によるものである。したがってこのように高い表面張力を有する場合、使用する強化繊維と非常に強固に接着することになる。サイジング剤付着繊維束を構成するフィラメント(単糸)同士を強く結着し、繊維束の収束力をさらに高める効果を有する。そしてこのようなサイジング剤付着繊維束は、特に後述するランダムマットの製造に適したサイジング剤付着繊維束となる。なお、ここで表面張力とは分子間力に依存するパラメーターであり、分子内の極性項や水素結合項によりその分子内凝集力が決定される値である。エポキシ化合物やアミン化合物の骨格中の炭素元素を、酸素元素や窒素元素に置き換えるなどして表面張力を大きくすることが可能である。
ただし表面張力が大きすぎると、強化繊維表面に塗布されたサイジング剤が、熱処理時に溶融凝集しやすくなる。するとこのサイジング剤が強化繊維の表面に濡れ広がることが阻害され、逆に物性が低下する傾向にある。すなわち表面張力が大きすぎると、強化繊維へのマトリックス含浸性、ひいては最終的に得られる複合材料のコンポジット物性が低下する傾向にあるのである。そのため本発明では、サイジング剤にポリウレタンを併用している。ポリウレタンを併用することで表面張力を低下させ、凝集力を調整する役割もあるのである。
なお、強化繊維表面に塗布されたエマルジョンから溶剤等を除去する熱処理工程としては、せいぜい250℃であることが一般的であり、この温度での物性を規定することにより適切な繊維束を得ることが可能となる。この250℃における高分子量アミンアダクトの表面張力の特に好ましい範囲としては29〜35mN/mの範囲であることが好ましい。
そして本発明に用いられるアミンアダクトを構成するエポキシ化合物としては、通常のエポキシ樹脂に用いられる物を使用できる。例えば、グリシジルエーテルタイプ、グリシジルアミンタイプ、グリシジルエステルタイプ、およびオレフィン酸化(脂環式)タイプ等のエポキシ化合物を挙げることができる。さらに好ましい形態である直鎖状の高分子を得るためには、エポキシ基を複数個、好ましくは2個有するエポキシ化合物であることが特に好ましい。
さらに本発明で用いるエポキシ化合物としては、脂環式エポキシ基を有することが好ましい。そのようなオレフィン酸化(脂環式)タイプの脂環式エポキシ化合物は、立体障害がおこりやすいために反応性も低く、三次元網目構造を形成しにくい。例えばこの脂環式エポキシ樹脂を用いた場合、無触媒下において次に述べるアミン化合物と熱反応させることにより、容易に直鎖状の高分子を形成することが出来る。
中でも反応性の高さ等を加味すると、エポキシ化合物は分子中にエステル結合を有することが好ましく、特に好ましくは2つの脂環式エポキシの間にエステル結合が存在するエポキシ化合物であることが好ましい。例えば本発明で用いるエポキシ化合物としては、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製、セロキサイド「CEL−2021P」、分子量252.3)を用いることが好ましい。
これらエポキシ化合物は単独でもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で他のエポキシ樹脂を混合して使用しても良い。
次に本発明に用いられるアミンアダクトを構成するアミン化合物について詳細を述べる。本発明に用いられるアミン化合物としては、2官能以上のアミン化合物を用いることが好ましい。特には、直鎖状の高分子を得やすい2官能のアミン化合物であることが好ましい。このようなアミン化合物として、例えば、商品名「JEFFAMINE D−230」、「JEFFAMINE D−400」、「JEFFAMINE D−2000」、「JEFFAMINE D−4000」、「JEFFAMINE HK−511」、「JEFFAMINE ED−600」、「JEFFAMINE ED−900」、「JEFFAMINE ED−2003」、「JEFFAMINE EDR−148」、「JEFFAMINE EDR−176」、「JEFFAMINE XTJ−582」、「JEFFAMINE XTJ−578」、「JEFFAMINE XTJ−542」、「JEFFAMINE XTJ−548」、「JEFFAMINE XTJ−559」、「JEFFAMINE T−403」、「JEFFAMINE T−3000」、「JEFFAMINE T−5000」(以上、HUNTSMAN社製)などの市販品を使用することもできる。
なお本発明で用いるアミン化合物としては、一部になら芳香族構造を持つアミン化合物、具体的にはジアミノジフェニルスルホンやジアミノジフェニルメタンなどを用いることも可能であるが、好ましくは芳香族構造を有するアミン化合物を含まないことが好ましい。本発明の繊維束を用いて複合材料としたときに、芳香族構造がマトリックス樹脂との接着性を若干阻害する傾向にあるからである。
本発明の繊維処理剤では上記のようなエポキシ化合物とアミン化合物からなるアミンアダクトを用いるのではあるが、そのアミンアダクトは分子骨格中に脂環式炭化水素構造を有することが好ましい。さらには、エポキシ化合物が脂環式エポキシ基を有することが好ましい。中でも、本発明で用いるアミンアダクトとしては、脂環式エポキシ化合物と脂肪族アミン化合物からなるものであることが好ましい。また、アミン化合物が脂環式構造を有することが好ましい。特には、アミン化合物として飽和脂環式炭化水素構造を持つアミン化合物と、直線状の脂肪族構造を持つアミン化合物の混合物を用いることが好ましく、このような脂肪族アミン化合物と脂環式エポキシ樹脂と反応させた反応物である高分子を用いることが好ましい。このような化合物を用いることにより、高分子が直鎖状となりやすく、かつ耐熱性も良好となる。
また、本発明ではこのアミンアダクトの軟化点が0℃以上であることが好ましい。さらには、その軟化点温度が40〜150℃に範囲にあることが好ましい。軟化点温度が低温であると、繊維束の表面粘着力が増加するため、その後の工程通過性が低下する。一方、軟化点温度が高すぎても処理した繊維束が固くなり、たとえポリウレタンを併用したとしても毛羽が発生しやすく工程通過性に問題が生じやすい。加えてドレープ性(風合い)が高くなりすぎ、ランダムマットの製造に悪影響を及ぼす傾向がある。なお、ここで言う軟化点とは熱可塑性樹脂が十分に流動できる温度であり、例えば軟化点測定装置などで測定出来る。結晶性樹脂の場合、軟化点は融点よりも数℃高い温度となり、非晶性樹脂の場合は分子量にもよるがガラス転移温度よりも10〜150℃高い温度が軟化点となる。
またこのアミンアダクトはエステル結合やエーテル結合、特にはエステル結合を有するものであることが好ましく、処理した繊維のマトリックス樹脂との接着性を向上させる。
さらに本発明では後述するように側鎖や分子構造をコントロールすることや、溶解方法を工夫することによって、水溶性のあるアミンアダクトとすることが好ましい。
また、本発明で用いられる高分子量のアミンアダクトは、その空気中における5%重量減少温度が250℃以上であることが好ましい。昇温した際に、空気中における5%重量減少温度が250℃以上であるそのようなアミンアダクトは、原料となるエポキシ樹脂とアミン化合物の構造の最適化により得ることが可能である。さらには280℃以上であることが好ましい。例えば、2官能の低分子脂環式エポキシ化合物に、飽和脂環式炭化水素構造を持つアミン化合物と脂肪族構造を持つアミン化合物の混合物を併用して反応させることで、昇温時の重量減少度合いが少ない、本発明に特に適した直鎖状の高分子を得ることができる。5%重量減少温度が低すぎる場合、特にマトリックス樹脂を高温で含浸すると、その含浸過程でボイドが発生し、コンポジット物性の低下を引き起こす傾向にある。一方で、5%重量減少温度が高い高分子量のアミンアダクトは、反応物が三次元架橋している部分を含むことが多く、そのためゲル化しやすい傾向にある。そしてこのようなアミンアダクトでは、繊維束の表面に付着しにくい傾向にある。アミンアダクトの空気中における5%重量減少温度のより好ましい範囲は、290〜350℃であり、特には330℃以下であることが好ましい。
本発明のサイジング剤付着繊維束は、強化繊維の表面に上記のようなアミンアダクトとポリウレタンとを含有するサイジング剤が付着したものである。ここでアミンアダクトとポリウレタンとの重量配合比率としては1:9〜9:1であることが好ましく、さらには(アミンアダクト:ポリウレタン)の値が、4:6〜9:1、特には7:3〜9:1の範囲であることが好ましい。
なお、このようなポリウレタンを含む集束剤としては、例えば強制乳化タイプの商品名「ボンディク」(DIC株式会社製、親水性部:ノニオン系乳化剤)、や自己乳化タイプの商品名「ボンディク2200シリーズ」、「ハイドラン HWシリーズ」、「ハイドラン APシリーズ」、「ハイドラン ADS」、「ハイドラン CPシリーズ」(いずれもDIC株式会社製、親水性部は、COOH基、SONa基、あるいはノニオンまたはカチオン)等を使用することが好ましい。
特に本発明のアミンアダクトとポリウレタンとが付着した繊維束を作製した場合、短い繊維束がランダムに配向したランダムマットの製造に最適なサイジング剤付着繊維束となる。適度なドレープ性(風合い)と収束力を兼ね備えた繊維束を形成しやすくなるのである。その理由は定かでなないが、アミンアダクトとポリウレタンとが適度にバランスの取れた風合いを生み出しているためと考えられる。特にこのようなサイジング剤付着繊維束を用いたランダムマットは、強化繊維が特定本数集合して存在する不完全な開繊の繊維束と、十分に開繊された繊維束とを、特定の割合で含むものであることが好ましい。このような形態を形成するためにも、繊維束のドレープ性(風合い)と収束力を調整することが重要である。
また、本発明の繊維束においては、このようなアミンアダクトとポリウレタンを用いることによって、最終的に得られるサイジング剤付着繊維束の高次加工性をさらに高めることが可能となった。
本発明で使用するポリウレタンはディスパージョンあるいはエマルジョン形態のサイジング処理液に用いられることが多く、その場合には繊維束を構成する繊維と繊維の隙間直径よりも大きなポリウレタン粒子が、その繊維−繊維間の隙間に多く存在する。そこで繊維束の表層部と内層部で付着状態が異なる傾向こそあるものの、サイジング剤付着繊維束の収束性を高くし、良好なプロセスハンドリング性を確保する役割を果たす。
一方、アミンアダクトは水に溶解した水溶性高分子としてサイジング用処理液に用いられることが多い。この場合、ポリウレタンエマルジョン等と異なり、均一に繊維束に付着させることが出来る。その際、繊維束の収束性を確保し難い傾向にあるが、本発明においてはポリウレタンエマルジョンを併用することでその問題を解消し、良好なプロセスハンドリング性(強化繊維の収束性)と均質なサイジング剤付着を両立することが可能となったのである。
また、アミンアダクトが水に溶解する場合、水酸基やカルボン酸などの多くの極性基を分子構造内に有している。このような水溶性のアミンアダクトをサイジング処理して得たサイジング剤付着繊維束は、その表面がローラーなどの金属表面と極性力、水素結合力で粘着し、繊維束の引取り摩擦抵抗を大きくする傾向にある。アミンアダクトのみを用いた場合には、アミンアダクトがローラーなどの金属表面に濡れ広がりやすいために、この引取り摩擦抵抗が大きくなる傾向にあるのである。ところが、このようなサイジング剤の一部にポリウレタンエマルジョンを混合すると、驚くべきことに繊維束の引取り摩擦抵抗が急激に小さくなることが可能となった。そして工程におけるスカムの発生を大幅に抑えることが可能となったのである。この理由は定かではないが、おそらくポリウレタンエマルジョンが処理液中の固形分に占める極性基の数を希釈するとともに、固形分の粘度を増加させ、金属表面への濡れ広がりを抑制したためであると推測される。
本発明の繊維束は金属ロール上で拡幅、開繊処理などを経て、ランダムマット作製の処理が施されるが、その時に金属ロールへの粘着性が低下し、工程通過性が著しく向上するのである。また粘着性が減少したために繊維束の毛羽、スカムの発生を十分に抑えることが可能となり、最終的なサイジング剤付着繊維束とマトリックス樹脂からなる複合材料の物性も向上することとなった。
本発明は、本発明のサイジング剤付着繊維束に用いられる繊維処理液や、本発明のサイジング剤付着繊維束とマトリックス樹脂からなる複合材料の発明を包含する。
このような本発明のサイジング剤付着繊維束は、繊維束の表面に付着しているサイジング剤が熱によって溶融軟化し、最終的に繊維束とマトリックス樹脂からなる複合材料になる際には、繊維束が崩壊、分繊してマトリックス樹脂が繊維束の内層部に含浸し、強化繊維に付着したサイズ剤がマトリックス樹脂と分子レベルで絡み合い、強固な界面接着を実現する。このようにして本発明のサイジング剤付着繊維束を使用した複合材料は、最終的にコンポジット物性が良好なものとなるのである。
このような本発明のサイジング剤付着繊維束は、もう一つの本発明であるサイジング剤付着繊維束の製造方法にて得ることができる。さらに具体的に本発明のサイジング剤付着繊維束の製造方法を述べると、強化繊維から構成される繊維束の表面に、エポキシ化合物とアミン化合物の反応物であるアミンアダクトとポリウレタンエマルジョンとを含有する処理液を付着させ、乾燥させるサイジング剤付着繊維束の製造方法である。
ここで使用される強化繊維から構成される繊維束は、上記の本発明のサイジング剤付着繊維束に用いるものを使用することができる。
具体的にそのような強化繊維としては、各種無機繊維や、各種の有機繊維を挙げることができ、中でも炭素繊維、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維が好ましく、特に比強度、比弾性率が良好で、軽量かつ高強度の繊維強化複合材料が得られるポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維であることが好ましい。
これらの中でも、複合材料のマトリックスに高粘度の熱可塑性樹脂を用いる場合、サイジング剤付着繊維束の表面に熱可塑性樹脂を濡れ広がらせるために、高い表面自由エネルギーを持つサイジング剤を用いる事が好ましく、このような観点からサイジング剤はその分子骨格内にアミド結合、ウレタン結合、エステル結合から選ばれる少なくとも一つ以上の結合を繰り返し単位に持つことが好ましい。さらには、アミド結合、ウレタン結合、エステル結合から選ばれる少なくとも二つ以上の結合を繰り返し単位に持つことがより好ましい。このため、本発明で使用するサイジング剤としては、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル・ポリエステルポリウレタンなどの各種ポリウレタン樹脂と共に、エポキシ化合物とアミン化合物の反応物であるアミンアダクト、あるいはそのようなアミンアダクトを炭酸、酢酸などで中和したアミンアダクト塩を用いることがより好ましい。
本発明で使用するサイジング剤としては、アミンアダクトと共にポリウレタンのディスパージョンあるいはエマルジョン形態を含むサイジング用処理液に、繊維束を浸漬させ、その後水等の溶媒を除去することが好ましい実施態様である。ここで本発明に好ましく用いられる強化繊維用処理液としては、エポキシ化合物とアミン化合物の反応物であるアミンアダクトとポリウレタンエマルジョンとを含有する処理液である。
このような本発明の方法では、繊維束を構成する繊維と繊維の隙間直径よりも大きなポリウレタンの粒子が存在するため、繊維−繊維間の隙間にその粒子が偏在し、サイジング剤付着繊維束の収束性を高くし、良好なプロセスハンドリング性を確保できる。一方、本発明では同時に水に溶解したアミンアダクトをサイジング用処理液に用いているため、ポリウレタン粒子と異なりサイジング剤を均一に繊維束に付着させることが出来る。本発明で用いるサイジング剤では、良好なプロセスハンドリング性(強化繊維の収束性)と均質なサイジング剤付着を両立することが可能となるのである。
ポリウレタンとアミンアダクトの混合割合としては、合計の混合重量を100重量%とした場合、ポリウレタンを10〜90wt%の範囲で添加する事が好ましい。さらには10〜60wt%、より好ましくは10〜30wt%の範囲である。
本発明のサイジング剤付着繊維束の製造方法では、繊維束に前述のような処理液を付着させ、乾燥する。処理液としては上述のように水溶液であることが好ましく、乾燥工程ではその水溶液中の余分な水分や溶剤を除去することになる。
処理液を塗布する方法としては、処理液中に繊維束を浸漬する方法が最も一般的である。また、繊維束から水分や溶剤を除去する方法に限定はなく、本発明の乾燥処理では、熱処理、風乾、遠心分離などの様々な手段を併用しても良い。コストの観点から熱処理が好ましく、熱処理の加熱手段としては、例えば、熱風、熱板、ローラー、赤外線ヒーターなどを使用することができる。熱処理(乾燥処理)の温度としては、繊維束の表面温度が50〜250℃の範囲となるように調整し、溶剤等を除去することが好ましい。また、この熱処理の温度は50〜250℃の間で段階的に昇温させることも好ましく、より均一な乾燥が可能となる。また100℃以上の高温で処理することで、強化繊維とマトリックスとの接着を阻害する界面活性剤などの各種成分を除去することができる。ただし処理温度が高すぎる場合には、サイジング剤、ひいては繊維束が劣化する傾向にある。
また本発明のサイジング剤付着繊維束の製造方法では、通常のサイジング液と同様の条件にて処理液を塗布することが可能である。この時、繊維に対する処理液の付着量としては、乾燥固形分濃度で0.01重量%以上3重量%未満とすることが好ましい。さらに好ましい範囲は0.1重量%以上2.0重量%未満、特に好ましくは0.15重量%以上1.5重量%未満である。なお、ここで言う処理液の固形分重量とは、処理液に浸漬させた繊維束から溶媒を除去した後に残る高分子に加え、不揮発の微量成分のすべてを合計したものである。処理液の固形分中の高分子の割合としては、10重量%〜100重量%、さらには50重量%〜100重量%の範囲であることが好ましい。処理液の付着量が少なすぎる場合には、最終的に熱可塑性樹脂(熱可塑性高分子)をマトリックスとした複合材料を得た場合に、マトリックスと強化繊維との表面接着性が低下しやすく、複合材料の機械特性が低くなる傾向にある。逆に処理液の付着量が多すぎる場合には、処理液中に微量に存在する界面活性剤の析出により、マトリックスと強化繊維との接着性を低下させる傾向にある。
本発明のサイジング剤付着繊維束は、特に大きな表面自由エネルギーを持つ強化繊維を用いる場合に、比較的大きな表面張力を持つ高分子を繊維表面に均一に付着させることが可能となった。これによって、よりランダムマット製造に適したドレープ性(風合い)と収束性を兼ね備えたサイジング剤付着繊維束となる。また、成形過程で含浸し難い繊維束の束形状を崩壊、分繊し、繊維束厚み方向へのマトリックス含浸を容易にすることが可能となった。本発明で使用するサイジング剤は耐熱性も良好であることから、複合材料を製造する熱含浸工程で分解ガスも発生しにくく、良好な機械物性を有する複合材料を得ることが出来るものである。
このような本発明のサイジング剤付着繊維束の製造方法により、本発明のサイジング剤付着繊維束を得ることができる。本発明のサイジング剤付着繊維束はマトリックス樹脂と共に用いて繊維・樹脂複合体に最適なものとなる。
さらには、本発明のサイジング剤付着繊維束は、繊維束がランダムな方向に配向したランダムマットに好適に用いられる。
さらに本発明のサイジング剤付着繊維束がランダムに配向しているランダムマットは、マトリックス樹脂と複合させることによって、強度に優れた複合材料を形成する。これらのランダムマットや複合材料は、本発明のサイジング剤付着繊維束を含有するものであるが、さらにはそのマトリックス樹脂が熱可塑性高分子であることが好ましい。
ここでランダムマットとは、マット面内において、強化繊維が特定の方向に配向しておらず、無作為な方向に分散して配置されているものである。マット面内とは幅、長さ方向である平面のことを意味し、厚さ方向を含む三次元方向とは異なる。通常マット形状にした場合、ある程度の長さを有する繊維は平面に平行となっており、ランダムな配向は得られにくい。本発明ではマット面内での強化繊維のランダム配向が重要なのである。このランダムマットは強化繊維のみからなる形態以外に、マトリックス樹脂が含まれるものであっても良い。そしてランダムマットの繊維形態をとる場合、繊維束の繊維長としては2〜100mmの不連続繊維束であることが好ましく、ランダムマットを構成する繊維の目付としては25〜10000g/mとすることが好ましい。さらには繊維長を3〜60mmの不連続繊維束とし、目付を25〜3000g/mとすることが好ましい。
このように補強用の強化繊維をランダムに配置するためには、使用する繊維束は、一旦適度に開繊させたものであることが好ましい。そしてランダムマットとしては繊維束だけからなるものでも良いが、そのような開繊された繊維束を短繊維にカットしたものと、樹脂、好ましくは熱可塑性樹脂とから構成され、強化繊維が実質的に面内ランダムに配向しているものであることが好ましい。あるいは完全に単繊維状態に開繊された強化繊維を用いる形態とすることも可能であるが、その表面において繊維束状態が残存していることが、好ましい。
本発明のサイジング剤付着繊維束を構成要素とするこのようなランダムマットは、複合材料の強化材として最適に用いられる。さらにはランダムマットと共に、複合材料の強化材として一軸配向繊維、織物などの各種の強化繊維の形態を併用することも好ましい。
ランダムマットとしては、繊維束の開繊程度をコントロールし、強化繊維が特定本数以上で存在する不完全な開繊の繊維束と、十分に開繊された繊維とを、特定の割合で含むランダムマットであることが好ましい。場合によっては完全に単繊維に開繊した強化繊維を用いることも可能である。そして本発明では適切な開繊率のランダムマットを作製することにより、強化繊維と熱可塑性樹脂をより緻密に密着させ、高い物性を達成することが可能となる。
もう一つの本発明の複合材料は上記の本発明のサイジング剤付着繊維束から得られる強化繊維とマトリックス樹脂からなるものである。ここでサイジング剤付着繊維束から得られる強化繊維とは、サイジング剤付着繊維束を処理して得た各種形態の強化繊維であることをいい、開繊処理を完全に行い単繊維となった強化繊維や、不完全に開繊されたストランド形態の強化繊維をも含むものである。複合材料を構成する繊維としては、単繊維となった強化繊維のみであっても良いし、逆に繊維束状態の強化繊維のみから構成されていても良いが、複合材料には一部繊維束の状態で残存していることが好ましい。
ここで複合材料中の強化繊維の含有量としては、10〜60体積%の範囲であることが好ましい。本発明のサイジング剤付着繊維束を含有するこのような複合材料は、複合化させるマトリックス樹脂の含浸が十分に行われ、また強度ムラなどが少ない高品位なものとなる。このような強化繊維を含有する複合材料には、本発明の目的を損なわない範囲で各種の添加剤を含んでも良い。また、強化繊維以外に含まれている物として、その他の強化繊維単糸、1種類以上の熱可塑性樹脂が挙げられる。
本発明の複合材料に用いられるマトリックス樹脂は限定されないが、特には熱可塑性高分子からなる樹脂であることが好ましく、特にはポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、酸変性ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
なお本発明の複合材料に用いられるマトリックス樹脂としては、そのマトリックス樹脂の250℃における表面自由エネルギーが、35mN/m以下であることが好ましい。マトリックス樹脂の表面自由エネルギーが大きすぎる場合、マトリックス樹脂が強化繊維またはサイジング剤で被覆された繊維束の表面にて、十分に濡れ広がることが出来ず、溶融凝集する傾向にある。マトリックス樹脂が溶融凝集した場合には、複合材料の界面接着性およびコンポジット物性が低下する。さらにマトリックス樹脂の表面自由エネルギーとしては、強化繊維およびサイジング剤の表面自由エネルギーよりも小さい値であることが好ましい。なお、複合材料の成形温度は、せいぜい300℃であることが一般的であり、一方でマトリックス樹脂の表面自由エネルギーは250℃以上でおおよそ平衡に到達する。すなわち250℃の温度でのマトリックス樹脂の物性を規定することにより、適切な複合材料を得ることが可能となる。本発明の複合材料においては、マトリックス樹脂の250℃における表面自由エネルギーとしては24〜34mN/mの範囲がより好ましく、特には26〜33mN/mの範囲であることが好ましい。このような範囲のマトリックス樹脂としては、例えばポリアミド樹脂であることが好ましい。
また、本発明の複合材料に用いられるサイジング剤付着繊維束の表面に付着したサイジング剤に含まれる主成分であるアミンアダクトの表面張力は、前述したように25mN/m以上であることが好ましい。そして、本発明の複合材料においては、その成形温度における、サイジング剤成分とマトリックス樹脂の表面自由エネルギー差の絶対値が、6mN/m以下であることが好ましい。表面自由エネルギー差の絶対値のより好ましい範囲は3mN/m以下、さらには2mN/m以下であることである。
さらに、成形温度におけるサイジング剤主成分の表面自由エネルギーが、マトリックス樹脂の表面自由エネルギーよりも大きいことが好ましい。この場合、サイジング剤で被覆された強化繊維の表面を、複合材料のマトリックス樹脂が、短時間で濡れ広がることが可能となる。なお、サイジング剤がマトリックス樹脂と反応する場合においても、サイジング剤成分の表面自由エネルギーがマトリックス樹脂の表面自由エネルギーよりも大きいことが好ましい。この場合、サイジング剤とマトリックス樹脂の表面自由エネルギー差の絶対値はあまり影響を与えないことになる。
また、本発明のサイジング剤付着繊維束とマトリックス樹脂とから構成された複合材料には、上記のランダムマットに用いた切断された短い繊維束に加えて、長繊維状態の一軸配向材を併用することもできる。ここで一軸配向材とは、一軸配向強化繊維束(サイジング剤付着繊維束)を引き揃えた後、溶融軟化した熱可塑性樹脂と接触させることで得ることができるものである。
なおこの複合材料には、本発明の目的を損なわない範囲で、無機フィラー等の各種の添加剤を含んでも良い。無機フィラーとしては、タルク、珪酸カルシウム、ワラストナイト、モンモリロナイトや各種の無機ナノフィラーを挙げることができる。また、必要に応じて、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、軟化剤、分散剤、充填剤、着色剤、滑剤など、従来から熱可塑性樹脂に配合されている他の添加剤を、配合することもできる。また、本発明のサイジング剤付着繊維束以外に含まれている構成成分として、各種の強化繊維単糸や、1種類以上の熱可塑性樹脂を併用することも好ましい。
このような複合材料は繊維とマトリックス樹脂の間に存在するサイジング剤の存在により、高い物性を確保することが可能となった。この複合材料は、本発明のサイジング剤付着繊維束から得られる強化繊維とマトリックス樹脂との接着性が高いため、軽量であるにも関わらず、強度特性、特に曲げ強度や曲げ弾性率等の曲げ特性に優れた複合材料となる。そして本発明の複合材料は、事務機器用途、自動車用途、コンピュータ用途(ICトレイ、ノートパソコンの筐体(ハウジング)など)等の様々な分野に最適に使用される。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではない。なお、本発明の実施例は、下記に示す方法で評価した。
(1)サイジング用処理液、エマルジョンからの固形分の抽出
サイジング用処理液、エマルジョンを熱風乾燥器120℃、5時間の条件にて水分を除去した後、同温度の真空乾燥機(−0.1MPa)で2時間脱水処理を施す事で、サイジング用処理液ないし、エマルジョンから固形分を抽出した。
(2)5%重量減少温度の測定方法
サイジング用処理液、エマルジョンから抽出した上記(1)の固形分の5%重量減少温度は、セイコー電子株式会社製の示差熱重量測定装置(TGA)を用い、試料10mgを、50mL/分で空気流通下、10℃/分で400℃まで昇温した際の重量減少曲線から計算した。
(3)アミンアダクトの軟化点評価
アミンアダクトの軟化点は、メトラートレド(株)製の軟化点測定装置(FP−90)を用い、1℃/分の昇温速度で評価した。
(4)サイジング用処理液、エマルジョンから抽出した固形分の表面張力の測定
250℃または260℃で溶融した固形分又はマトリックス樹脂の懸滴を、協和界面科学製の自動接触角計(DM−501)を用いて作製し、懸滴法でその表面張力を測定した。表面張力は3回の懸滴から得られる測定値の平均から求めた。
(5)処理液の含浸性評価
ガラス製の容器の底から5cmの高さまでアミンアダクトを含有する処理液(水溶液)を入れた。繊維方向に1cmに裁断した処理前の繊維束(未サイジングの扁平形状の炭素繊維束、東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」、直径7μm×24000フィラメント、幅16mm、厚さ142μm)を着液させ、着液後の繊維束表面の濡れ具合、繊維束がガラス容器の底に沈むまでの時間を計測し、処理液の含浸性として評価した。
(6)処理液の付着量の評価
処理液の固形分付着量は、処理を行った1.0mのサイジング剤付着繊維束(炭素繊維束)を2本採取し、これらを窒素雰囲気下10℃/分で550℃に昇温後、同温度で10分間焼成し、重量減少した分を処理液の固形分付着量として以下の式(1)で算出した。
処理液の固形分付着量=(a−b)/b×100 [%] (1)
a:焼成処理前の繊維束重量[g]
b:焼成処理後の繊維束重量[g]
(7)繊維束の表面粘着力の測定
繊維束の表面粘着力は、タッキング試験装置 TAC−II(RHESCA CO.,LTD.社製)を用いて以下の方法により測定した。試験方法として、120℃に保持された試験ステージに繊維束をセットし、120℃に保持されたφ10のタックプローブで初期荷重400gfの荷重をかけて、押し付け速度0.5mm/秒、保持時間10秒、5mm/秒の試験速度で引き抜いた際の最大の荷重を求めた。
(8)強化繊維複合材料の曲げ物性測定方法
強化繊維束(サイジング剤付着繊維束)とマトリックス樹脂からなる複合材料(成形板)から、幅15mm×長さ100mmの試験片を切り出し、JIS K7074に準拠した中央荷重とする3点曲げにて、物性を評価した。支点間距離を80mmとしたr=2mmの支点上に試験片を置き、支点間中央部にr=5mmの圧子にて、試験速度5mm/分で荷重を与えた場合の最大荷重および中央たわみ量を測定し、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。
[実施例1]
<アミンアダクトの製造>
エポキシ化合物として、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製、セロキサイド「CEL−2021P」)を使用し、アミン化合物としてアミン末端ポリプロピレングリコール(HUNTSMAN社製、「JEFFAMINE D230」)を使用した。上述のエポキシ化合物30.0重量部と。アミン化合物35.9重量部を混合し、その後、160℃で2時間撹拌しながら反応させることにより、アミンアダクトを得た。
一方、このアミンアダクトの250℃における表面張力は29mN/m、5%重量減少温度は252℃と低く、軟化点温度も6℃と低いものであった。
<処理液の作成>
粉砕機で粉砕したアミンアダクト80重量部を炭酸水1000重量部に撹拌しながら少しずつ滴下し、レモン色の透明溶液を作製した。次にポリエステル系ウレタンエマルジョン(固形分濃度10wt%)200重量部を820重量部の蒸留水で希釈後、撹拌しながらアミンアダクト水溶液の全量を添加する事で、水溶性高分子とエマルジョンの混合物からなるサイジング用処理液を得た。なお、処理液の含浸性評価を行ったところ、すぐに繊維束表面が濡れて、約4秒で5cmのガラス容器の底に沈み、繊維束への処理液の浸漬性が、非常に良好であることを確認した。
<サイジング剤付着繊維束の製造>
次に、この処理液の浴に、上記の浸漬性試験で用いた裁断前の未処理の繊維束(炭素繊維束、東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」)を連続的に浸漬させ、繊維束中のフィラメント間に処理液を浸透させた。これを乾燥させ、サイジング剤付着繊維束を得た。得られた繊維束中の処理液の固形分付着量は、強化繊維重量100重量部に対して1.0重量部であり、サイジング剤付着繊維束は適度な風合い度と、収束力を有したものであった。また、120℃における表面粘着力は16.6gfと低値であり、同温度の固定式金属バーで熱拡幅させる際、金属表面との摩擦抵抗は小さく、1時間の連続テストで溶融軟化したスカム状の樹脂溜りは観察されなかった。また、繊維束の擦過性も良好であり、同連続テストにおいて表面毛羽の発生も非常に少ないものであった。
<複合材料の製造>
上記のサイジング剤付着繊維束をカットし、マトリックスとなる熱可塑性樹脂(ナイロン6樹脂パウダー)を用意し、繊維束を散布し、定着させて、適度に開繊された繊維束と単糸が面内にランダムに配向したランダムマット(繊維樹脂組成物)を得た。
得られたランダムマットを、プレスし複合材料(繊維強化熱可塑性樹脂成形体)を得た。得られた複合材料は繊維束と単糸が適度に分散した表面外観をしていた。なお、成形温度である260℃におけるアミンアダクトとナイロン6樹脂パウダーの表面張力はそれぞれ31mN/m、32mN/mであり、アミンアダクトとナイロン6樹脂パウダーの表面張力差の絶対値は1mN/mであった。得られた複合材料には、分解ガスと思われる未含浸部が若干認められた。一方で、アミンアダクトはマトリックス樹脂との馴染み性が良好であり、その曲げ物性は、曲げ強度487MPa、曲げ弾性率23GPaとの高い物性を示した。
[実施例2]
<アミンアダクトの製造>
120℃に加熱した脂環式2官能エポキシ化合物(3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製、セロキサイド「CEL−2021P」、分子量252.3)252.3重量部に、アミン化合物として脂環式2官能のアミン化合物であるイソホロンジアミン(3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、分子量170.3)90.3重量部と脂肪族2官能アミン化合物(N,N’−ジ(2−アミノエチル)エチレンジアミン、分子量146.2)76.0重量部の混合物を、滴下漏斗を用いて25分掛けて滴下し、さらに100分撹拌してアミンアダクトを重合した。一方、このアミンアダクトの250℃における表面張力は30mN/m、5%重量減少温度は303℃と高く、軟化点温度は51℃であった。
<処理液の作成>
粉砕機で粉砕したアミンアダクト80重量部を炭酸水1000重量部に撹拌しながら少しずつ滴下し、レモン色の透明溶液を作製した。次にポリエステル系ウレタンエマルジョン(固形分濃度10wt%)200重量部を820重量部の蒸留水で希釈後、撹拌しながらアミンアダクト水溶液の全量を添加する事で、水溶性高分子とエマルジョンの混合物からなるサイジング用処理液を得た。なお、処理液の含浸性評価を行ったところ、すぐに繊維束表面が濡れて、約4秒で5cmのガラス容器の底に沈み、繊維束への処理液の浸漬性が、非常に良好であることを確認した。
<サイジング剤付着繊維束の製造>
次に、この処理液の浴に、上記の浸漬性試験で用いた裁断前の未処理の繊維束(炭素繊維束、東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」)を連続的に浸漬させ、繊維束中のフィラメント間に処理液を浸透させた。これを乾燥させ、サイジング剤付着繊維束を得た。得られた繊維束中の処理液の固形分付着量は、強化繊維重量100重量部に対して0.9重量部であり、サイジング剤付着繊維束は適度な風合い度と、収束力を有したものであった。また、120℃における表面粘着力は9.6gfと低値であり、同温度の固定式金属バーで熱拡幅させる際、金属表面との摩擦抵抗は小さく、1時間の連続テストで溶融軟化したスカム状の樹脂溜りは全く観察されなかった。また、繊維束の擦過性も良好であり、同連続テストにおいて表面毛羽の発生も非常に少ないものであった。
<複合材料の製造>
上記のサイジング剤付着繊維束をカットし、マトリックスとなる熱可塑性樹脂(ナイロン6樹脂パウダー)を用意し、繊維束を散布し、定着させて、適度に開戦した繊維束と単糸が面内にランダムに配向したランダムマット(繊維樹脂組成物)を得た。
得られたランダムマットを、プレスし複合材料(繊維強化熱可塑性樹脂成形体)を得た。得られた複合材料は繊維束と単糸が適度に分散した表面外観をしていた。なお、成形温度である260℃におけるアミンアダクトとナイロン6樹脂パウダーの表面張力はそれぞれ29mN/m、32mN/mであり、アミンアダクトとナイロン6樹脂パウダーの表面張力差の絶対値は3mN/mであった。得られた複合材料に未含浸部はなかった。また、アミンアダクトはマトリックス樹脂との馴染み性が良好であり、その曲げ物性は、曲げ強度514MPa、曲げ弾性率26GPaとの高い物性を示した。
[比較例1]
<処理液の作成>
粉砕機で粉砕した実施例1のエポキシ−アミン付加物50重量部を炭酸水1000重量部に撹拌しながら少しずつ添加し、レモン色の透明溶液を作製した。この水溶液をサイジング用の処理液とした。なお、処理液の含浸性評価を行ったところ、すぐに繊維束表面が濡れて、約5秒で5cmのガラス容器の底に沈み、繊維束への処理液の浸漬性が、非常に良好であることを確認した。
<サイジング剤付着繊維束の製造>
次に、この処理液の浴に、上記の浸漬性試験で用いた裁断前の未処理の繊維束(炭素繊維束、東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」)を連続的に浸漬させ、繊維束中のフィラメント間に処理液を浸透させた。これを乾燥させ、サイジング剤付着繊維束を得た。得られた繊維束中の処理液の固形分付着量は、強化繊維重量100重量部に対して1.2重量部であり、繊維束の風合い度や収束力は非常に低いものであった。また、120℃における表面粘着力は46gfと実施例1に比べて高値であり、同温度の固定式金属バーで熱拡幅させる際、金属表面との摩擦抵抗が大きく、1時間の連続テストで溶融軟化したスカム状の樹脂溜りが認められた。さらに繊維束の擦過性も悪く、同連続テストにおいて表面毛羽の発生が非常に多いものであった。
またこの繊維束の開繊率は特段に高く、単糸が多く出てかさ高いものであった。
<複合材料の製造>
上記のサイジング剤付着繊維束を20mmにカットし、マトリックスとなる熱可塑性樹脂(ナイロン6樹脂パウダー)を用意し、繊維束を散布し、強化繊維および熱可塑性樹脂パウダーを定着させたが、単糸が非常に多く出てかさ高いランダムマットとなり、サイジング剤付着繊維束と単糸が面内だけでなく、厚み方向にもランダムに配向したランダムマット(繊維樹脂組成物)となった。
得られたランダムマットを、プレスし複合材料(繊維強化熱可塑性樹脂成形体)を得た。得られた複合材料は単糸が非常に多い表面外観をしていた。なお、成形温度における直鎖状高分子とナイロン6樹脂パウダーの表面張力はそれぞれ30mN/m、28mN/mであり、エポキシ−アミン付加物とナイロン6樹脂パウダーの表面張力差の絶対値は2mN/mであった。得られた複合材料は、ランダムマットがかさ高かった事もあり、未含浸部が所々に観察された。複合材料の曲げ物性は、曲げ強度325MPa、曲げ弾性率15GPaとの特段に低い物性であった。

Claims (6)

  1. 表面にサイジング剤が付着した繊維束であって、繊維束の全体形状が扁平繊維束で、該繊維束の厚みが200μm以下であり、該サイジング剤がエポキシ化合物とアミン化合物の反応物であるアミンアダクトを中和したアミンアダクト塩と、ポリウレタンとを含有することを特徴とするサイジング剤付着繊維束。
  2. アミンアダクトとポリウレタンとの重量配合比率が1:9〜9:1である請求項1記載のサイジング剤付着繊維束。
  3. 繊維束が炭素繊維束である請求項1または2記載のサイジング剤付着繊維束。
  4. 強化繊維から構成される繊維束であって、繊維束の全体形状が扁平繊維束で、該繊維束の厚みが200μm以下であり、当該繊維束の表面に、エポキシ化合物とアミン化合物の反応物であるアミンアダクトを中和したアミンアダクト塩と、ポリウレタンエマルジョンとを含有する処理液を付着させ、乾燥させることを特徴とするサイジング剤付着繊維束の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項記載のサイジング剤付着繊維束から得られる強化繊維とマトリックス樹脂からなる複合材料。
  6. 該サイジング剤付着繊維束が不連続繊維束であって、ランダムな方向に配向したランダムマットである請求項5記載の複合材料。
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