JP6356497B2 - サイジング剤付着繊維束およびその製造方法 - Google Patents
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Description
高い加工性とともに、繊維束内層部への樹脂含浸性、マトリックス樹脂と繊維間の接着性などの複数の課題を同時に満足させ、複合材料の物性を十分に向上させる繊維束の開発が待たれていたのである。
さらには、アミンアダクトとポリウレタンとの重量配合比率が1:9〜9:1であることや、繊維束が炭素繊維束であることが好ましい。
またもう一つの本発明のサイジング剤付着繊維束の製造方法は、強化繊維から構成される繊維束であって、繊維束の全体形状が扁平繊維束で、該繊維束の厚みが200μm以下であり、当該繊維束の表面に、エポキシ化合物とアミン化合物の反応物であるアミンアダクトを中和したアミンアダクト塩と、ポリウレタンエマルジョンとを含有する処理液を付着させ、乾燥させることを特徴とする。
さらに本発明は、これらのサイジング剤付着繊維束から得られる強化繊維とマトリックス樹脂からなる複合材料の発明を包含する。
このサイジング剤に含有されるアミンアダクトは、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物である。さらにはこのアミンアダクトは水溶性であることが好ましく、いわゆる熱硬化してしまうような3次元網目構造体ではなく、直鎖状の熱可塑性樹脂であることが好ましい。このような観点から、立体障害の為反応性が乏しく3次元網目構造を作り難い脂環式エポキシ樹脂を出発原料に用いるのが好ましい。またモノマーやオリゴマーのような低分子量の化合物よりも、高分子であることが好ましい。例えば、エポキシ化合物とアミン化合物のユニット数としては、10以上の高分子であることが好ましい。またこのアミンアダクトとしては、分子骨格中に脂環式炭化水素構造を有することが好ましい。
本発明で用いられるアミンアダクトは、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物である。さらに本発明で用いられるアミンアダクトは、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物であり、エポキシ化合物とアミン化合物の構成比(モル比)としては若干アミン化合物が過剰であることが好ましく、具体的には1:1.01〜1:1.1の範囲にあることが好ましい。ここでエポキシ化合物またはアミン化合物の片方の含有量が過剰になると、高分子が形成されずにモノマーやオリゴマーが形成されるために好ましくない。
これらエポキシ化合物は単独でもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で他のエポキシ樹脂を混合して使用しても良い。
さらに本発明では後述するように側鎖や分子構造をコントロールすることや、溶解方法を工夫することによって、水溶性のあるアミンアダクトとすることが好ましい。
また、本発明の繊維束においては、このようなアミンアダクトとポリウレタンを用いることによって、最終的に得られるサイジング剤付着繊維束の高次加工性をさらに高めることが可能となった。
このような本発明のサイジング剤付着繊維束は、繊維束の表面に付着しているサイジング剤が熱によって溶融軟化し、最終的に繊維束とマトリックス樹脂からなる複合材料になる際には、繊維束が崩壊、分繊してマトリックス樹脂が繊維束の内層部に含浸し、強化繊維に付着したサイズ剤がマトリックス樹脂と分子レベルで絡み合い、強固な界面接着を実現する。このようにして本発明のサイジング剤付着繊維束を使用した複合材料は、最終的にコンポジット物性が良好なものとなるのである。
具体的にそのような強化繊維としては、各種無機繊維や、各種の有機繊維を挙げることができ、中でも炭素繊維、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維が好ましく、特に比強度、比弾性率が良好で、軽量かつ高強度の繊維強化複合材料が得られるポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維であることが好ましい。
本発明のサイジング剤付着繊維束の製造方法では、繊維束に前述のような処理液を付着させ、乾燥する。処理液としては上述のように水溶液であることが好ましく、乾燥工程ではその水溶液中の余分な水分や溶剤を除去することになる。
さらには、本発明のサイジング剤付着繊維束は、繊維束がランダムな方向に配向したランダムマットに好適に用いられる。
さらに本発明のサイジング剤付着繊維束がランダムに配向しているランダムマットは、マトリックス樹脂と複合させることによって、強度に優れた複合材料を形成する。これらのランダムマットや複合材料は、本発明のサイジング剤付着繊維束を含有するものであるが、さらにはそのマトリックス樹脂が熱可塑性高分子であることが好ましい。
ランダムマットとしては、繊維束の開繊程度をコントロールし、強化繊維が特定本数以上で存在する不完全な開繊の繊維束と、十分に開繊された繊維とを、特定の割合で含むランダムマットであることが好ましい。場合によっては完全に単繊維に開繊した強化繊維を用いることも可能である。そして本発明では適切な開繊率のランダムマットを作製することにより、強化繊維と熱可塑性樹脂をより緻密に密着させ、高い物性を達成することが可能となる。
サイジング用処理液、エマルジョンを熱風乾燥器120℃、5時間の条件にて水分を除去した後、同温度の真空乾燥機(−0.1MPa)で2時間脱水処理を施す事で、サイジング用処理液ないし、エマルジョンから固形分を抽出した。
サイジング用処理液、エマルジョンから抽出した上記(1)の固形分の5%重量減少温度は、セイコー電子株式会社製の示差熱重量測定装置(TGA)を用い、試料10mgを、50mL/分で空気流通下、10℃/分で400℃まで昇温した際の重量減少曲線から計算した。
アミンアダクトの軟化点は、メトラートレド(株)製の軟化点測定装置(FP−90)を用い、1℃/分の昇温速度で評価した。
250℃または260℃で溶融した固形分又はマトリックス樹脂の懸滴を、協和界面科学製の自動接触角計(DM−501)を用いて作製し、懸滴法でその表面張力を測定した。表面張力は3回の懸滴から得られる測定値の平均から求めた。
ガラス製の容器の底から5cmの高さまでアミンアダクトを含有する処理液(水溶液)を入れた。繊維方向に1cmに裁断した処理前の繊維束(未サイジングの扁平形状の炭素繊維束、東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」、直径7μm×24000フィラメント、幅16mm、厚さ142μm)を着液させ、着液後の繊維束表面の濡れ具合、繊維束がガラス容器の底に沈むまでの時間を計測し、処理液の含浸性として評価した。
処理液の固形分付着量は、処理を行った1.0mのサイジング剤付着繊維束(炭素繊維束)を2本採取し、これらを窒素雰囲気下10℃/分で550℃に昇温後、同温度で10分間焼成し、重量減少した分を処理液の固形分付着量として以下の式(1)で算出した。
処理液の固形分付着量=(a−b)/b×100 [%] (1)
a:焼成処理前の繊維束重量[g]
b:焼成処理後の繊維束重量[g]
繊維束の表面粘着力は、タッキング試験装置 TAC−II(RHESCA CO.,LTD.社製)を用いて以下の方法により測定した。試験方法として、120℃に保持された試験ステージに繊維束をセットし、120℃に保持されたφ10のタックプローブで初期荷重400gfの荷重をかけて、押し付け速度0.5mm/秒、保持時間10秒、5mm/秒の試験速度で引き抜いた際の最大の荷重を求めた。
強化繊維束(サイジング剤付着繊維束)とマトリックス樹脂からなる複合材料(成形板)から、幅15mm×長さ100mmの試験片を切り出し、JIS K7074に準拠した中央荷重とする3点曲げにて、物性を評価した。支点間距離を80mmとしたr=2mmの支点上に試験片を置き、支点間中央部にr=5mmの圧子にて、試験速度5mm/分で荷重を与えた場合の最大荷重および中央たわみ量を測定し、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。
<アミンアダクトの製造>
エポキシ化合物として、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製、セロキサイド「CEL−2021P」)を使用し、アミン化合物としてアミン末端ポリプロピレングリコール(HUNTSMAN社製、「JEFFAMINE D230」)を使用した。上述のエポキシ化合物30.0重量部と。アミン化合物35.9重量部を混合し、その後、160℃で2時間撹拌しながら反応させることにより、アミンアダクトを得た。
一方、このアミンアダクトの250℃における表面張力は29mN/m、5%重量減少温度は252℃と低く、軟化点温度も6℃と低いものであった。
粉砕機で粉砕したアミンアダクト80重量部を炭酸水1000重量部に撹拌しながら少しずつ滴下し、レモン色の透明溶液を作製した。次にポリエステル系ウレタンエマルジョン(固形分濃度10wt%)200重量部を820重量部の蒸留水で希釈後、撹拌しながらアミンアダクト水溶液の全量を添加する事で、水溶性高分子とエマルジョンの混合物からなるサイジング用処理液を得た。なお、処理液の含浸性評価を行ったところ、すぐに繊維束表面が濡れて、約4秒で5cmのガラス容器の底に沈み、繊維束への処理液の浸漬性が、非常に良好であることを確認した。
次に、この処理液の浴に、上記の浸漬性試験で用いた裁断前の未処理の繊維束(炭素繊維束、東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」)を連続的に浸漬させ、繊維束中のフィラメント間に処理液を浸透させた。これを乾燥させ、サイジング剤付着繊維束を得た。得られた繊維束中の処理液の固形分付着量は、強化繊維重量100重量部に対して1.0重量部であり、サイジング剤付着繊維束は適度な風合い度と、収束力を有したものであった。また、120℃における表面粘着力は16.6gfと低値であり、同温度の固定式金属バーで熱拡幅させる際、金属表面との摩擦抵抗は小さく、1時間の連続テストで溶融軟化したスカム状の樹脂溜りは観察されなかった。また、繊維束の擦過性も良好であり、同連続テストにおいて表面毛羽の発生も非常に少ないものであった。
上記のサイジング剤付着繊維束をカットし、マトリックスとなる熱可塑性樹脂(ナイロン6樹脂パウダー)を用意し、繊維束を散布し、定着させて、適度に開繊された繊維束と単糸が面内にランダムに配向したランダムマット(繊維樹脂組成物)を得た。
得られたランダムマットを、プレスし複合材料(繊維強化熱可塑性樹脂成形体)を得た。得られた複合材料は繊維束と単糸が適度に分散した表面外観をしていた。なお、成形温度である260℃におけるアミンアダクトとナイロン6樹脂パウダーの表面張力はそれぞれ31mN/m、32mN/mであり、アミンアダクトとナイロン6樹脂パウダーの表面張力差の絶対値は1mN/mであった。得られた複合材料には、分解ガスと思われる未含浸部が若干認められた。一方で、アミンアダクトはマトリックス樹脂との馴染み性が良好であり、その曲げ物性は、曲げ強度487MPa、曲げ弾性率23GPaとの高い物性を示した。
<アミンアダクトの製造>
120℃に加熱した脂環式2官能エポキシ化合物(3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製、セロキサイド「CEL−2021P」、分子量252.3)252.3重量部に、アミン化合物として脂環式2官能のアミン化合物であるイソホロンジアミン(3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、分子量170.3)90.3重量部と脂肪族2官能アミン化合物(N,N’−ジ(2−アミノエチル)エチレンジアミン、分子量146.2)76.0重量部の混合物を、滴下漏斗を用いて25分掛けて滴下し、さらに100分撹拌してアミンアダクトを重合した。一方、このアミンアダクトの250℃における表面張力は30mN/m、5%重量減少温度は303℃と高く、軟化点温度は51℃であった。
粉砕機で粉砕したアミンアダクト80重量部を炭酸水1000重量部に撹拌しながら少しずつ滴下し、レモン色の透明溶液を作製した。次にポリエステル系ウレタンエマルジョン(固形分濃度10wt%)200重量部を820重量部の蒸留水で希釈後、撹拌しながらアミンアダクト水溶液の全量を添加する事で、水溶性高分子とエマルジョンの混合物からなるサイジング用処理液を得た。なお、処理液の含浸性評価を行ったところ、すぐに繊維束表面が濡れて、約4秒で5cmのガラス容器の底に沈み、繊維束への処理液の浸漬性が、非常に良好であることを確認した。
次に、この処理液の浴に、上記の浸漬性試験で用いた裁断前の未処理の繊維束(炭素繊維束、東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」)を連続的に浸漬させ、繊維束中のフィラメント間に処理液を浸透させた。これを乾燥させ、サイジング剤付着繊維束を得た。得られた繊維束中の処理液の固形分付着量は、強化繊維重量100重量部に対して0.9重量部であり、サイジング剤付着繊維束は適度な風合い度と、収束力を有したものであった。また、120℃における表面粘着力は9.6gfと低値であり、同温度の固定式金属バーで熱拡幅させる際、金属表面との摩擦抵抗は小さく、1時間の連続テストで溶融軟化したスカム状の樹脂溜りは全く観察されなかった。また、繊維束の擦過性も良好であり、同連続テストにおいて表面毛羽の発生も非常に少ないものであった。
上記のサイジング剤付着繊維束をカットし、マトリックスとなる熱可塑性樹脂(ナイロン6樹脂パウダー)を用意し、繊維束を散布し、定着させて、適度に開戦した繊維束と単糸が面内にランダムに配向したランダムマット(繊維樹脂組成物)を得た。
得られたランダムマットを、プレスし複合材料(繊維強化熱可塑性樹脂成形体)を得た。得られた複合材料は繊維束と単糸が適度に分散した表面外観をしていた。なお、成形温度である260℃におけるアミンアダクトとナイロン6樹脂パウダーの表面張力はそれぞれ29mN/m、32mN/mであり、アミンアダクトとナイロン6樹脂パウダーの表面張力差の絶対値は3mN/mであった。得られた複合材料に未含浸部はなかった。また、アミンアダクトはマトリックス樹脂との馴染み性が良好であり、その曲げ物性は、曲げ強度514MPa、曲げ弾性率26GPaとの高い物性を示した。
<処理液の作成>
粉砕機で粉砕した実施例1のエポキシ−アミン付加物50重量部を炭酸水1000重量部に撹拌しながら少しずつ添加し、レモン色の透明溶液を作製した。この水溶液をサイジング用の処理液とした。なお、処理液の含浸性評価を行ったところ、すぐに繊維束表面が濡れて、約5秒で5cmのガラス容器の底に沈み、繊維束への処理液の浸漬性が、非常に良好であることを確認した。
次に、この処理液の浴に、上記の浸漬性試験で用いた裁断前の未処理の繊維束(炭素繊維束、東邦テナックス株式会社製、「テナックスSTS−24K N00」)を連続的に浸漬させ、繊維束中のフィラメント間に処理液を浸透させた。これを乾燥させ、サイジング剤付着繊維束を得た。得られた繊維束中の処理液の固形分付着量は、強化繊維重量100重量部に対して1.2重量部であり、繊維束の風合い度や収束力は非常に低いものであった。また、120℃における表面粘着力は46gfと実施例1に比べて高値であり、同温度の固定式金属バーで熱拡幅させる際、金属表面との摩擦抵抗が大きく、1時間の連続テストで溶融軟化したスカム状の樹脂溜りが認められた。さらに繊維束の擦過性も悪く、同連続テストにおいて表面毛羽の発生が非常に多いものであった。
またこの繊維束の開繊率は特段に高く、単糸が多く出てかさ高いものであった。
上記のサイジング剤付着繊維束を20mmにカットし、マトリックスとなる熱可塑性樹脂(ナイロン6樹脂パウダー)を用意し、繊維束を散布し、強化繊維および熱可塑性樹脂パウダーを定着させたが、単糸が非常に多く出てかさ高いランダムマットとなり、サイジング剤付着繊維束と単糸が面内だけでなく、厚み方向にもランダムに配向したランダムマット(繊維樹脂組成物)となった。
得られたランダムマットを、プレスし複合材料(繊維強化熱可塑性樹脂成形体)を得た。得られた複合材料は単糸が非常に多い表面外観をしていた。なお、成形温度における直鎖状高分子とナイロン6樹脂パウダーの表面張力はそれぞれ30mN/m、28mN/mであり、エポキシ−アミン付加物とナイロン6樹脂パウダーの表面張力差の絶対値は2mN/mであった。得られた複合材料は、ランダムマットがかさ高かった事もあり、未含浸部が所々に観察された。複合材料の曲げ物性は、曲げ強度325MPa、曲げ弾性率15GPaとの特段に低い物性であった。
Claims (6)
- 表面にサイジング剤が付着した繊維束であって、繊維束の全体形状が扁平繊維束で、該繊維束の厚みが200μm以下であり、該サイジング剤がエポキシ化合物とアミン化合物の反応物であるアミンアダクトを中和したアミンアダクト塩と、ポリウレタンとを含有することを特徴とするサイジング剤付着繊維束。
- アミンアダクトとポリウレタンとの重量配合比率が1:9〜9:1である請求項1記載のサイジング剤付着繊維束。
- 繊維束が炭素繊維束である請求項1または2記載のサイジング剤付着繊維束。
- 強化繊維から構成される繊維束であって、繊維束の全体形状が扁平繊維束で、該繊維束の厚みが200μm以下であり、当該繊維束の表面に、エポキシ化合物とアミン化合物の反応物であるアミンアダクトを中和したアミンアダクト塩と、ポリウレタンエマルジョンとを含有する処理液を付着させ、乾燥させることを特徴とするサイジング剤付着繊維束の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載のサイジング剤付着繊維束から得られる強化繊維とマトリックス樹脂からなる複合材料。
- 該サイジング剤付着繊維束が不連続繊維束であって、ランダムな方向に配向したランダムマットである請求項5記載の複合材料。
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