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JP6375829B2 - Ag合金スパッタリングターゲット - Google Patents
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Description

本発明は、有機EL素子の反射電極膜やタッチパネルの配線膜等の導電性膜を形成する際に使用するAg合金スパッタリングターゲットに関し、特に、大面積のスパッタリング表面を有する大型のAg合金スパッタリングターゲットに関する。
有機EL素子は、有機EL発光層を挟み込むように配置された陽極と陰極との間に電圧を印加し、陽極からは正孔を、陰極からは電子をそれぞれ有機EL膜に注入し、有機EL発光層で正孔と電子とが結合する際に発光する原理を利用した発光素子である。
このような有機ELは、近年、ディスプレイデバイス用の発光素子として注目されている。
有機EL素子の駆動方式としては、パッシブマトリックス方式と、アクティブマトリックス方式と、がある。アクティブマトリックス方式は、1つの画素に、1つ以上の薄膜トランジスタを設けることで、スイッチング速度の高速化が実現可能であるため、高コントラスト比、高精細化に有利である。
したがって、アクティブマトリックス方式は、有機EL素子の特性を発揮させやすい駆動方式である。
一方、有機EL素子の光の取り出し方式としては、透明基板側から光を取り出すボトムエミッション方式と、透明基板の反対側に光を取り出すトップエミッション方式と、がある。トップエミッション方式は、開口率が高いため、高輝度化に有利な方式である。
トップエミッション方式が適用された有機EL素子を構成する反射電極膜は、有機EL発光層で発光した光を効率良く反射するために、反射率が高く、かつ耐食性に優れていることが好ましい。また、トップエミッション方式が適用された有機EL素子を構成する電極としては、低抵抗であることが好ましい。
従来、電極の低抵抗化を図ることの可能な材料として、Ag合金やAl合金が知られている。より高輝度の有機EL素子を得るためには、Al合金よりも可視光反射率の高いAg合金が好ましい。
有機EL素子の反射電極膜としてAg合金膜を用いる場合には、スパッタリング法が採用されている。この場合、スパッタリング装置のターゲットとしては、Ag合金スパッタリングターゲットが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
ところで、Agは、高い導電性や高い反射率を有する金属であり、これらの特性を活かし、近年では、有機ELパネルの反射電極膜として使用されている。
一方、純Ag膜は、高い導電性、及び高い反射率を有する反面、耐食性(特に、耐硫化性)や熱的な安定性に欠けるため、有機ELパネルの反射電極膜に適用するためには、これらの特性を改善する必要がある。
上記純Agの特性を改善する手段として、Inが添加されたAg合金よりなるスパッタ用ターゲットが提案されている(例えば、特許文献2,3参照。)。
近年、有機EL素子製造時のガラス基板の大型化に伴い、反射電極膜を形成する際に使用されるAg合金スパッタリングターゲットも大型化が進展している。
しかし、生産性の向上の観点から、大型化されたAg合金スパッタリングターゲットに高い電力を投入してスパッタリングすると、異常放電が発生すると共に、スプラッシュと呼ばれる現象(溶融した微粒子が基板に付着してしまう現象)が発生してしまう。
このような現象が発生すると、微粒子によって、配線や電極間がショートするため、有機EL素子の歩留りが低下してしまう。
トップエミッション方式の有機EL素子を構成する反射電極層は、有機EL発光層の下地層となるため、高い平坦性が要求される。したがって、トップエミッション方式の有機EL素子では、異常放電やスプラッシュ現象を抑制することが重要となる。
上記異常放電やスプラッシュ現象を抑制するために、特許文献2,3にされたAg合金ターゲットでは、合金の結晶粒の平均粒径を150〜400μmとし、結晶粒の粒径のばらつきを平均粒径の20%以下としている。これにより、大型化されたスパッタリングターゲットに大電力が投入された場合でも、異常放電やスプラッシュ現象を抑制することが可能となる。
国際公開第02/077317号 特開2011−100719号公報 特開2011−162876号公報
しかしながら、マグネトロンスパッタリングにおいては、ターゲットが局所的に掘られてエロージョンが形成されるため、ターゲットの結晶に異方性があると、エロージョン部分の表面に現れる結晶面が、最初のターゲット表面の結晶面から変化してしまう。
これにより、ターゲットのスパッタレートが経時的に変化するため、ターゲットの使用量によりスパッタ膜の成膜レートが変化してしまうという問題があった。
そこで、本発明は、スパッタされることによるスパッタリング表面の経時的な変化に依存することなく、スパッタ膜の成膜レートを安定させることの可能なAg合金スパッタリングターゲットを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の一観点によれば、0.1〜1.5質量%のInを含有し、残部がAg及び不可避不純物よりなるAg合金スパッタリングターゲットであって、スパッタリング表面のX線回折測定において検出される(200)面/(111)面の回折強度比が0.25以上0.55以下、(220)面/(111)面の回折強度の比が0.10以上0.40以下、(311)面/(111)面の回折強度の比が0.10以上0.40以下であることを特徴とするAg合金スパッタリングターゲットが提供される。
本発明によれば、Ag合金スパッタリングターゲットが0.1〜1.5質量%のInを含むことで、スパッタ膜の表面に酸化被膜を形成しやすくなるため、耐硫化性を向上させることができる。また、Inの添加量を0.1〜1.5質量%の範囲内とすることで、スパッタ膜の反射率の低下を抑制できる。
また、(200)面/(111)面の回折強度比を0.25以上0.55以下、(220)面/(111)面の回折強度の比を0.10以上0.40以下、(311)面/(111)面の回折強度の比を0.10以上0.40以下とすることで、結晶配向の異方性が無くなる(言い換えれば、無配向となる。)。
これにより、スパッタリング表面内におけるAg合金スパッタリングターゲットのスパッタレートの経時変化を小さくすることが可能となるので、スパッタ膜の成膜レートを安定させることができる。
上記Ag合金スパッタリングターゲットにおいて、前記スパッタリング表面における平均結晶粒径は、150μm以下であってもよい。これによりスパッタリング表面に凹凸が生じることを抑制可能となるので、異常放電の発生を抑制できる。
上記Ag合金スパッタリングターゲットにおいて、前記スパッタリング表面の面積が、0.25m以上であってもよい。
このような大型化されたAg合金スパッタリングターゲット(スパッタリング表面の面積が0.25m以上のAg合金スパッタリングターゲット)に適用した場合でも、大電力が投入されたスパッタ膜の成膜処理を可能とし、異常放電やスプラッシュ現象の発生を十分に抑制した上で、耐熱性に優れたスパッタ膜を成膜することができる。
上記Ag合金スパッタリングターゲットにおいて、さらに、Sb,Mg,Pd,Cu,Sn,Geのうち、少なくとも1種を、0.01〜3.5質量%含有してもよい。
これにより、スパッタ膜の耐熱性、耐湿性、耐食性(具体的には、耐硫化性や耐塩水性)をさらに向上させることができる。
また、スパッタ膜を成膜後に行われる工程(具体的には、例えば、熱処理工程や、薬品を使用したエッチング工程等)において、製品として出荷された後で生じるスパッタ膜の変質(例えば、熱による凝集や腐食)による特性の低下をより一層抑制することができる。
本発明のAg合金スパッタリングターゲットによれば、スパッタされることによるスパッタリング表面の経時的な変化に依存することなく、スパッタ膜の成膜レートを安定させることができる。
以下、本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。
(実施の形態)
<Ag合金スパッタリングターゲット>
本発明の実施の形態のAg合金(Ag−In合金)スパッタリングターゲットは、有機EL素子の反射電極膜やタッチパネルの配線膜等の導電膜の母材となるスパッタ膜(Ag合金薄膜)等を成膜する際に使用するAg合金スパッタリングターゲットである。
本実施の形態のAg合金スパッタリングターゲットは、0.1〜1.5質量%のInを含有し、残部がAg及び不可避不純物よりなるAg合金スパッタリングターゲットであって、スパッタリング表面のX線回折測定において検出される(200)面/(111)面の回折強度比が0.25以上0.55以下、(220)面/(111)面の回折強度の比が0.10以上0.40以下、(311)面/(111)面の回折強度の比が0.10以上0.40以下となるように構成されている。
ここで、Ag合金スパッタリングターゲットに含まれるInの含有量として、0.1〜1.5質量%の範囲内が好ましい理由について説明する。
Inの含有量が0.1質量%よりも少ないと、スパッタ膜の耐硫化性を向上させることが困難となってしまう。一方、Inの含有量が1.5質量%よりも多いと、スパッタ膜の反射率が低下してしまう。
よって、Ag合金スパッタリングターゲットに含まれるInの含有量を、0.1〜1.5質量%の範囲内とすることで、スパッタ膜の反射率を低下させることなく、スパッタ膜の耐硫化性を向上させることができる。
また、(200)面/(111)面の回折強度比を0.25以上0.55以下、(220)面/(111)面の回折強度の比を0.10以上0.40以下、(311)面/(111)面の回折強度の比を0.10以上0.40以下とすることで、結晶配向の異方性が無くなる(言い換えれば、無配向となる。)。
これにより、スパッタリング表面内におけるAg合金スパッタリングターゲットのスパッタレートの経時変化を小さくすることが可能となるので、スパッタ膜の成膜レートを安定させることができる。
また、上記Ag合金スパッタリングターゲットは、スパッタリング表面における平均結晶粒径を150μm以下にすることが好ましい。これによりスパッタリング表面に凹凸が生じることを抑制可能となるので、異常放電の発生を抑制できる。
また、上記Ag合金スパッタリングターゲットは、スパッタリング表面の面積が、0.25m以上の大型化されたAg合金スパッタリングターゲットに適用することが好ましい。
このような大型化されたAg合金スパッタリングターゲットに適用した場合でも、大電力が投入されたスパッタ膜の成膜処理を可能とし、異常放電やスプラッシュ現象の発生を十分に抑制した上で、耐熱性に優れたスパッタ膜を成膜することができる。
また、上記Ag合金スパッタリングターゲットは、Sb,Mg,Pd,Cu,Sn,Geのうち、少なくとも1種を、0.01〜3.5質量%含有してもよい。
Ag合金スパッタリングターゲットが、Sb,Mg,Pd,Cu,Sn,Geのうち、少なくとも1種を、0.01〜3.5質量%含有することで、スパッタ膜の耐熱性、耐湿性、耐食性をさらに向上させることができる。
これにより、スパッタ膜を成膜後に行われる工程において、製品として出荷された後で生じるスパッタ膜の変質による特性の低下をより一層抑制することができる。
Ag合金スパッタリングターゲットに含まれるSb,Mg,Pd,Cu,Sn,Geのうち、少なくとも1種の含有量が0.01質量%よりも少ないと、上記効果を得ることができない。
一方、Ag合金スパッタリングターゲットに含まれるSb,Mg,Pd,Cu,Sn,Geのうち、少なくとも1種の含有量が3.5質量%を超えると、スパッタ膜の電気抵抗が高くなりすぎたり、スパッタ膜の反射率が低下したりしてしまう。
スパッタ膜の耐熱性、耐湿性、耐食性のより一層の向上や、出荷後のスパッタ膜の変質による特性の低下をより抑制する観点から、Ag−In合金(Ag合金スパッタリングターゲットの材料)に、Sb,Mg,Pd,Cu,Sn,Geのうち、少なくとも1種の元素を添加する際には、Sb,Mg,Pd,Cu,Sn,Geの各元素の組成範囲を限定することが好ましい。
具体的には、各元素の組成の範囲は、例えば、Sbが0.1〜3.5質量%、Mgが0.01〜0.5質量%、Pdが0.1〜3.5質量%、Cuが0.2〜2.5質量%、Snが0.1〜2.0質量%、Geが0.2〜2.5質量%とすることができる。
添加量が上記各範囲の下限値に満たない場合には、上記説明したような効果を得ることができない。一方、添加量が上記各範囲の上限を超える場合には、スパッタ膜の電気抵抗が高くなったり、スパッタ膜の反射率が低下したりする恐れがある。
以上、Ag−In合金に、Sb,Mg,Pd,Cu,Sn,Geのうち、少なくとも1種の元素を添加する場合について説明したが、これらの元素が添加されたAg合金スパッタリングターゲットを用いて成膜されたスパッタ膜は、例えば、Sbの添加により、耐熱性及び耐湿性を向上させることができる。
また、Mgを添加することで、スパッタ膜の耐熱性及び耐塩水性を向上させることができる。また、Pdを添加することで、スパッタ膜の耐湿性、耐硫化性、及び耐塩水性を向上させることができる。
また、Cuを添加することで、スパッタ膜の耐熱性及び耐硫化性を向上させることができる。また、Snを添加することで、スパッタ膜の耐熱性、耐湿性、及び耐硫化性を向上させることができる。
さらに、Geを添加することで、スパッタ膜の反射率を低下させることなく、耐熱性を向上させることができる。
上記説明したように、本実施の形態のAg合金スパッタリングターゲットによれば、マグネトロンスパッタリングに使用されるAg合金スパッタリングターゲットを無配向とすることで、スパッタされていない初期のスパッタリング表面に出てくる結晶面と、使用が進み、経時的に変化したスパッタリング表面に出でくる結晶面と、の両方をランダムな結晶面にすることが可能となる。
これにより、Ag合金スパッタリングターゲットのスパッタリング率が経時的に変化することを抑制可能となるので、ターゲットの使用量(ターゲットの経時的な変化)に起因する成膜レートの変化を抑制できる。
<Ag合金スパッタリングターゲットの製造方法>
次に、Ag合金スパッタリングターゲットの製造方法について説明する。
始めに、純度が99.99質量%以上のAgと、純度が99.99質量%以上のInと、純度が99.99質量%以上とされた添加剤(具体的には、Sb,Mg,Pd,Cu,Sn,Geのうち、少なくとも1種)と、を準備する。
次いで、高周波真空溶解炉内に、所望の質量比となるように、Agと、Inと、添加剤と、をセットする。
次いで、高周波真空溶解炉の真空チャンバー内を真空排気した後、アルゴンガスで置換し、その後、Agを溶解させる。次いで、アルゴンガス雰囲気中において、溶解したAgに、Inと、添加剤と、を添加し、合金溶湯を黒鉛製鋳型に注いで鋳造することで、溶解鋳造インゴットを作製する。なお、不活性ガスであるアルゴンガス雰囲気に替えて、真空中において、Ag、In、及び添加剤を溶解させてもよい。
鋳造処理の方法としては、例えば、一方向凝固法を用いて実施することができる。一方向凝固法は、例えば、鋳型の底部を水冷させた状態で、抵抗加熱により予め側面部を加熱した鋳型に、溶湯を鋳込み、その後、鋳型下部の抵抗加熱部の設定温度を徐々に低下させることで実施できる。
なお、鋳造処理の方法としては、上記説明した一方向凝固法に替えて、完全連続鋳造法や半連続鋳造法等の方法を用いて行ってもよい。
次いで、溶解鋳造インゴットを熱間圧延することで、所望の厚さとされた板材(Ag合金スパッタリングターゲットの母材)を作製する。このとき、総圧下率が65%以上90%以下の条件で、1パスあたりの圧下率を5〜25%の範囲とし、繰り返し熱間圧延することで、無配向とされた板材を作製することができる。
なお、ここでの1パスあたりの圧下率は、下記(1)式により算出することができる。
1パスあたりの圧下率(%)=(パス前の厚み−パス後の厚み)÷パス前の厚さ×100 ・・・(1)
次いで、上記板材を急冷(例えば、加熱された温度から目的の温度までを200℃/分以上の冷却速度で冷却)する。これにより、板材の平均結晶粒径を150μm以下にすることができる。
その後、該板材を機械加工することで、本実施の形態のAg合金スパッタリングターゲットが製造される。
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
以下、実施例及び比較例について説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。
<実施例1〜11のAg合金スパッタリングターゲットT1〜T11の作製>
始めに、表1に示す実施例1〜11の組成となるように、各金属を秤量し、高周波真空溶解炉内に装入した。このとき、Ag、In、及び添加剤(Sb,Pd,Sn,Mg,Cu,Ge)は、純度が99.99質量%のものを用いた。
Figure 0006375829
次いで、高周波真空溶解炉の真空チャンバー内を真空排気した後、アルゴンガスで置換し、その後、Agを溶解させた。このとき、溶解時の総重量は、約350kgとした。
次いで、アルゴンガス雰囲気中において、溶解したAgに、In及び添加剤を添加し、合金溶湯を黒鉛製鋳型に注いで鋳造することで、溶解鋳造インゴットを作製した。鋳造処理の方法としては、先に説明した一方向凝固法を用いた。
次いで、鋳造後、溶湯表面に浮上した酸化膜等の異物を含むインゴット上部の引け巣部分を切断し、健全部として、約325kgのAg合金インゴット(400mm×435mm×180mm)を作製した。
次いで、Ag合金インゴットを熱間圧延させることで、無配向とされた板材(Ag合金スパッタリングターゲットの母材)を作製した。
具体的には、Ag合金インゴットを770℃まで加熱した後、一方向に圧延を繰り返すことで、400mmから1200mmまで伸ばし、これを90度回転させた後、さらにもう一方の方向である435mmの方向の圧延を繰り返し行うことで、板材(縦1200mm×横1300mm×厚さ20mm)を作製した。
上記熱間圧延は、合計で12回のパスを繰り返した。このときの熱間圧延全体の総圧延率は、約89%であった。
なお、総圧下率は、下記(2)式により算出した。
総圧下率={{熱間圧延前のAg合金インゴットの厚さ}−(熱間圧延後のAg合金インゴットの厚さ)}/{熱間圧延前のAg合金インゴットの厚さ} ・・・(2)
その後、実施例1〜10では、圧延後の板材の温度が770℃から200℃となるように、約300℃/minの平均冷却速度で板材を水シャワーにより急冷させることで、平均結晶粒径を細かくした。
一方、実施例11では、圧延後の板材の温度が770℃から200℃となるように、約20℃/minの平均冷却速度でゆっくりと板材を冷却(放冷)した。
次いで、冷却された板材をローラレベラーに通して、実施例1〜10の板材の急冷に起因するひずみを矯正した。
その後、得られた板材を、1100×1200×12(mm)の寸法に機械加工することで、実施例1〜11のAg合金スパッタリングターゲットT1〜T11を作製した。
<比較例のAg合金スパッタリングターゲットS1の作製>
比較例では、一方向凝固に替えて、通常の黒鉛製鋳型に鋳込んだこと以外は、先に説明した実施例1と同様な手法により、Ag−In合金インゴット(325mm×328mm×250mm)を作製した。
次いで、実施例1と同様な熱間圧延処理をAg−In合金インゴットに行うことで、板材(1450mm×1520mm×14mm)を作製した。このとき、熱間圧延全体の総圧延率は、約94.4%であった。
その後、実施例1と同様な処理を行うことで、1100×1200×12(mm)の寸法とされた比較例のAg合金スパッタリングターゲットS1を作製した。
<X線回折測定、及びX線回折ピークの強度比の算出>
各Ag合金スパッタリングターゲットT1〜T11,S1の中心部と角部との計3箇所から20mm□のサンプルを切り出し(以下、これらのサンプルを「第1〜第3のサンプル」という)、第1〜第3のサンプルの表面(スパッタリング面に相当する面)を鏡面研磨した。
次いで、株式会社リガク製のX線回折装置であるRINT−ULTIMAIIIを用いて、第1〜第3のサンプルの表面における2θ−θの回折測定を行った。
このとき、Cuを陽極に用いた管球を用い、2θを0.05°刻みのステップスキャンとして、1ステップあたり2秒のX線を照射して回折測定を行った。また、X線回折測定は、第1〜第3のサンプルを回転させながら行った。
その後、第1〜第3のサンプルの回折測定結果から、(200)面/(111)面の回折強度比、(220)面/(111)面の回折強度の比、及び(311)面/(111)面の回折強度の比を算出した。この結果を表2に示す。
Figure 0006375829
<実施例1〜11及び比較例のスパッタリング表面における平均結晶粒径の算出>
次いで、各Ag合金スパッタリングターゲットT1〜T11,S1の中心部から10mm□のサンプルを切り出しサンプルの表面(スパッタリング面に相当する面)を鏡面研磨した後、研磨された表面の結晶粒界をエッチングした。
この際用いたエッチング液は、水:28%アンモニア水:31%過酸化水素水を体積比にて、4:1:1に混合することで作製した。
次に、光学顕微鏡を用いて、実施例1〜11及び比較例の研磨面を観察し、100倍の倍率にて組織写真を撮影し、組織写真中の結晶粒径を、ASTM E 112に記載の切断法にて計測し、平均化することで平均結晶粒径を求めた。この結果を表2に示す。
<実施例1〜11及び比較例の異常放電の評価>
実施例1〜11及び比較例のAg合金スパッタリングターゲットT1〜T11,S1から直径154.2mmの円盤を切り出して、機械加工により厚さ6mmとし、その後、無酸素銅製のバッキングプレートにInはんだを用いて接合することで、実施例1〜11及び比較例の評価用Ag合金スパッタリングターゲットを作製した。
次いで、スパッタリング装置に、評価用Ag合金スパッタリングターゲットを装着し、直流1000Wの電力、アルゴンガス圧が0.5Paの条件にて、1時間のスパッタリング放電を実施し、この放電中に発生する異常放電の回数を直流電源に搭載されている異常放電検知機能を用いて計測した。この結果を表2に示す。
なお、スパッタリング装置としては、直流マグネトロンスパッタリング装置である株式会社アルバック製のSIH−450Hを用いた。
<表2に示す評価結果について>
表2を参照するに、実施例1〜11において、(200)面/(111)面の回折強度比は、0.28〜0.51であり、0.25以上0.55以下の範囲内であった。実施例1〜11において、(220)面/(111)面の回折強度比は、0.13〜0.39であり、0.10以上0.40以下の範囲内であった。
また、実施例1〜11において、(311)面/(111)面の回折強度比は、0.19〜0.34であり、0.10以上0.40以下の範囲内であった。
一方、比較例では、(200)面/(111)面の回折強度比が0.55よりも大きく、(311)面/(111)面の回折強度比が0.10よりも小さい結果となった。
実施例11の平均結晶粒径は、実施例1〜10の平均結晶粒径よりも大きな値(195μm)となり、150μmを超える値となった。これは、実施例11では、熱間圧延後にゆっくりと冷却したため、結晶粒径が微細化しなかったためと推測される。
スパッタ時の異常放電については、実施例1〜11及び比較例ともに良好な結果が得られた。なお、実施例11の異常放電回数が比較例の異常放電回数よりも多くなっているが、問題のない範囲である。
<実施例1〜11及び比較例のスパッタ膜の成膜レート>
次いで、上記スパッタリング装置のチャンバー内に配置された基板ホルダーに、マスキングテープ付き基板を固定させた。基板は、Ag合金スパッタリングターゲットと平行に対向するように配置させた。また、基板とAg合金スパッタリングターゲットとの距離は、70mmとした。
基板としては、縦20mm×横20mmの四角形とされたガラス基板(具体的には、コーニング社製のイーグルXG)を用いた。基板に貼り付けたマスキングテープとしては、中興化成工業株式会社製のAGF−100FRを縦5mm×横20mmの大きさに切断したものを用いた。
次いで、スパッタリング装置のチャンバー内を真空排気することで、チャンバー内の圧力を5×10−5Pa以下とした。次いで、チャンバー内にアルゴンガスを導入することで、0.5Paのスパッタガス圧とした。
続いて、直流電源を用いて、Ag合金スパッタリングターゲットに1000Wの直流電力を印加し、基板を加熱することなく、45秒間スパッタ膜を成膜した。
これにより、実施例1〜11のスパッタ膜P1〜P11、及び比較例のスパッタ膜Q1を成膜した。
次いで、スパッタ膜P1〜P11,Q1が形成された基板を取り出した後、マスキングテープを剥がし、スパッタ膜P1〜P11,Q1と基板との間に形成される段差(言い換えれば、スパッタ膜の厚さ)をBruker Corporation製の触針式段差計であるDektak8を用いて測定した。これにより、スパッタ膜P1〜P11,Q1の厚さを求めた。
そして、スパッタ膜P1〜P11,Q1の厚さと、成膜時間である45秒と、に基づいて、スパッタ膜P1〜P11,Q1の成膜レート(nm/sec)を算出した。
次いで、上記スパッタ条件と同じ条件で、基板を装着せず、シャッターを閉じたままのダミー空スパッタを1時間行い、その後、チャンバー内にマスキングテープ付き基板を配置させ、上記スパッタ条件を用いて、スパッタ膜を成膜し、成膜レートを算出した。この作業を4回繰り返し行うことで、5つの成膜レートを取得した。この結果を表3に示す。
Figure 0006375829
<表3に示す評価結果について>
表3を参照するに、実施例1〜11のスパッタ膜P1〜P11の成膜レートは、上記のスパッタ試験の間ほぼ一定の成膜レートを示した。一方、比較例のスパッタ膜Q1の成膜レートは、ターゲットの使用時間経過に伴い、成膜レートが減少する傾向を示した。
このことから、実施例1〜11では、ターゲット使用時間経過に対する成膜レートの変化が少ないことが確認できた。

Claims (4)

  1. 0.1〜1.5質量%のInを含有し、残部がAg及び不可避不純物よりなるAg合金スパッタリングターゲットであって、
    スパッタリング表面のX線回折測定において検出される(200)面/(111)面の回折強度比が0.25以上0.55以下、(220)面/(111)面の回折強度の比が0.10以上0.40以下、(311)面/(111)面の回折強度の比が0.10以上0.40以下であることを特徴とするAg合金スパッタリングターゲット。
  2. 前記スパッタリング表面における平均結晶粒径は、150μm以下であることを特徴とする請求項1記載のAg合金スパッタリングターゲット。
  3. 前記スパッタリング表面の面積が、0.25m以上であることを特徴とする請求項1または2記載のAg合金スパッタリングターゲット。
  4. さらに、Sb,Mg,Pd,Cu,Sn,Geのうち、少なくとも1種を、0.01〜3.5質量%含有することを特徴とする請求項1乃至3のうち、いずれか1項記載のAg合金スパッタリングターゲット。
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