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JP6414172B2 - 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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JP6414172B2 - 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

無方向性電磁鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、モータやトランスの鉄心など、電気材料として用いるのに好適な磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板に関するものである。
磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板は主に、電気自動車の駆動用モータや、家電機器のモータとして用いられ、それらのエネルギ使用効率向上のために低鉄損が要求され、また、モータの小型化のために高磁束密度が要求されている。
このような要求に対し、磁気特性向上に不利な集合組織である(111)面方位を低減するために、冷間圧延前の粒径を粗大化させたり、熱延板を可能な限り薄くして冷延率を低減させたりする手法がとられてきた。
また、鋼中の不純物を限りなく低減させ、析出物形成によるヒステリシス損の増大を抑制する試みがなされてきた。
さらに、低圧雰囲気での高温焼鈍によって、極めて高い磁束密度を得る技術が知られている。これは、低圧雰囲気では、表面エネルギの低い(100)面方位や(110)面方位を有する結晶粒が、より表面エネルギの高い他の方位を有する結晶粒を蚕食することによって成長する機構を利用したものである。この手法はSiやAl添加などの方法に頼らないため、合金コストのトレンドに左右されることなく良好な磁性を有する無方向性電磁鋼板を生産できるといった利点がある。特に、(100)面方位は、圧延面内に磁化容易軸が2つ存在するため、磁化容易軸が1つである(110)面方位と比較して、面内方向での平均的な磁束密度がより高くなる方位であって、無方向性電磁鋼板に理想的な結晶方位であると考えられている。
もう一つの重要な磁気特性である鉄損は、便宜的に、励磁周波数に依存しないヒステリシス損と、励磁周波数に依存する渦電流損とに分離して考えることがある。近年の無方向性電磁鋼板においては、渦電流損の低減がより求められる傾向にある。これは、モータの回転数を増大させるため、高周波励磁条件下で無方向性電磁鋼板が使用されることが多くなり、この場合には、全鉄損に占める渦電流損の割合が増大するためである。
例えば、特許文献1に示されるように、従来材においては、真空雰囲気での焼鈍技術によって、非常に良好な磁束密度B50および鉄損W15/100が得られていたが、高周波域でも優れた鉄損を得ることが困難であった。
特開2001-131642号公報
本発明者らが調査した結果、従来材の組織は、磁束密度の向上に有利な(100)集合組織が形成されているものの、圧延方向(以下、「L方向」とする。)、圧延方向に対して直角の方向(以下、「C方向」とする。)、および圧延方向に対して45°の方向(以下、「D方向」とする。)における磁束密度B50の差が大きく、極端な例では、L方向が1.65Tである一方で、D方向で1.82Tとなることがあった。これは、磁化容易軸がある特定の方向(上記の例ではD方向あるいはそれに近い方向)にのみ向いてしまっているためと考えられる。このような異方性が形成されると、磁気特性の劣位な方向において、鉄損が極めて高くなってしまう。さらに、従来材の組織は、結晶粒径のばらつきが非常に大きく、例えば、数mm径から最大で圧延方向に40mmに至る径の超粗大結晶粒が分散していた。一般的に、鋼板の鉄損の一部である渦電流損は、粗大粒であるほど増大する。これは、渦電流損に影響をおよぼす、結晶粒内の磁区幅が増大するためであると考えられる。このため、粗大な結晶粒を有する鋼板は、高周波鉄損での鉄損優位性を示すのが困難となるのが一般的である。
本発明は、上記の課題に鑑み、磁束密度が高く、さらに低周波鉄損のみならず、高周波鉄損も低い無方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した低圧雰囲気での焼鈍後に認められた極めて粗大な結晶粒が出現した原因を調査した結果、低圧雰囲気での焼鈍前に鋼板表層に析出するSi酸化物の量が多く存在するほど、焼鈍後に粗大な結晶粒が生成しやすいことを見出した。さらに、本発明者らは、(100)面の磁化容易軸の分布を、冷間圧延条件によって制御できることを見出した。
以下、本発明を導くに至った実験結果について説明する。
図1は、L方向:280mm×C方向:30mm幅の鋼を試料として、電子線マイクロアナライザー(EPMA)解析によって測定した表面の酸素カウント値と、鋼中のS量と、焼鈍後の粗大結晶粒の存在の有無との関係を示す。焼鈍条件は、均熱温度1200℃、均熱時間60分、0.05Paの低圧雰囲気とした。圧延方向に20mm以上の粒径を有する結晶粒を粗大結晶粒とし、その存在の有無については、有の場合は×、無の場合は○で示した。
鋼中のMnは0.01%、Pは0.006%であった。
EPMA解析は、EPMA-1600シリーズ(島津製作所製)の装置によって、電子線の加速電圧は15kV、スポットサイズは20μm、1点のサンプリング時間は70msecの条件下で行った。ここで、酸素カウント値とは、O-Kα線カウント値であり、サンプリング時間を70msecとしたときの波長分散型検出器による総カウント数を意味する。
酸素カウント値の測定領域は、5mm×5mmとし、その中で、スポット間隔を2μmとして、250×250の点でサンプリングを行い、その平均値を求めた。この結果、酸素カウント値が250以下になると、粗大粒の出現を抑制することが可能であることが明らかとなった。また、酸素カウント値は、鋼中のS量との関連性を示し、鋼中のS量が低いほど、酸素カウント値が低くなる傾向を示した。さらに、板厚断面観察の結果、粒界にも同様のSi系酸化物が存在し、鋼中のS量が低いほどSi系酸化物が少なくなることが確認された。また、酸素以外の元素分析の結果から、この酸化物は、Si系の酸化物であることが判明した。
さらに、本発明者らは、鋼中のS量が十分低い場合であっても、鋼中のP量が多い場合には、最終の低圧雰囲気での焼鈍後に所望の結晶組織が得られないことを見出した。これは、Pが熱延板および続く工程で得られる鋼板のフェライト組織を微細化し、表面エネルギを駆動力とした粒成長を起こしやすい、板厚貫通粒の形成を抑制するためと考えている。また、S量も同様にフェライト粒の大きさに影響を与えることから、S量が低い場合には許容されるP量の上限は高くなると考え、所望する組織を得るために必要な鋼組成として、鋼中のS量とP量の積の値に着目した。図2に、鋼中のS量と、鋼中のS量とP量の積と、所望組織の達成有無を示す。鋼板の表層における(100)面の傾きが圧延面に対して3°以内である結晶粒の総面積率が70%以上であって、かつ該結晶粒の前記鋼板の圧延方向における平均粒径が10mm以下である組織が得られた場合を○、得られなかった場合を×で示す。この結果から、鋼中のS量(ppm)×P量(ppm)が400未満であれば、所望の組織が得られる傾向が認められた。
低圧雰囲気での焼鈍前の鋼中の表面Si酸化物量が多い場合に、粗大粒を生成する異常粒成長が助長されたことの原因については、不明な部分が多いが、低圧雰囲気での焼鈍後には、表層酸化物はカウント数100以下まで減少したことから、SiO2などの析出物が、低圧雰囲気での焼鈍初期にインヒビタとして機能し、それらが減少(おそらくは鋼中にわずかに含有されるCと反応して低圧雰囲気中に分解)するにつれて異常粒成長が発現したのではないかと推定している。また、鋼中のP量が多い場合には、結晶粒が小さくなる傾向が認められたことから、焼鈍中に粒成長が過度に抑制され、表面エネルギを駆動力とした(100)面方位の結晶粒の粒成長が抑制されたと考えられる。
続いて、本発明者らは、以下の冷間圧延条件によって、L方向、C方向、およびD方向での磁束密度B50を均一化できることを見出した。鋼中に、Cを0.0008%、Siを3.00%、Mnを0.03%、Pを0.005%、Sを0.0004%および残部はFeおよび不可避的不純物を含有する熱延板を、表1に示す冷間圧延条件で、最終板厚0.1mmの最終焼鈍前の状態に仕上げた。また、中間焼鈍はいずれも950℃均熱時間2分Ar雰囲気中で行った。これを、窒素大気圧雰囲気から圧力0.5Paまで減圧した真空中で、1200℃3時間の均熱処理を行った。その後SST(単板磁気試験器)でL方向、C方向、D方向の磁束密度B50を測定し、その最大値と最小値の差をΔB50として求めた。ΔB50は、冷間圧延の回数が1回より2回、3回の方が小さくなる傾向であった。また、N−1回目の冷間圧延における圧延率は80%より高いか、あるいは、最終冷間圧延の圧延率が80%以上であると、ΔB50が0.10より大きくなった。最終焼鈍後の結晶粒は、最終冷間圧延した鋼板内に存在する結晶粒が、再結晶・粒成長過程において、選択的に成長したものと考えられる。従って、冷間圧延を適正化することによって、最終冷延板に磁化容易軸が様々な方向を向いた(100)面方位を有する結晶粒が多く残存し、さらに再結晶・粒成長中にこれらの結晶粒が優先的に成長できる冷延板の集合組織が形成されたものと推定している。
Figure 0006414172
本発明は、上記の実験結果から導かれる、低圧雰囲気での焼鈍前の表面Si酸化物量(Sの含有量と相関関係がある)を低減させることによって粗大粒の生成が抑制され、また、SおよびP含有量を低減させることによって表面エネルギを駆動力とした粒成長が発現され、さらに、冷間圧延の適正化により、低圧雰囲気での最終焼鈍中に無方向性電磁鋼板の磁気特性に好ましい結晶方位の優先的な成長が促進可能である、との技術思想に基づき、その他の諸条件の適正化を合わせて完成させたものである。
本発明はかかる知見に基づきなされたもので、以下のような構成を有する。
1.質量%で、
C:0.0050%以下、
Si:1.00%以上5.00%以下、
P:0.1000%以下、
Mn:2.00%以下
S:0.0009%以下および
Ca:0.0005%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
鋼板の表層における(100)面の傾きが圧延面に対して3°以内である結晶粒の総面積率が70%以上であって、圧延方向、圧延方向に対して直角の方向、および圧延方向に対して45°の方向における磁束密度B50の最大値と最小値との差が0.10T未満であり、かつ該結晶粒の前記鋼板の圧延方向における平均粒径が10mm以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
2.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
SbおよびSnのいずれか1種または2種を合計で0.030%以下、含有することを特徴とする、上記1に記載の無方向性電磁鋼板。
3.上記1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を熱間圧延し、冷間圧延し、最終焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記冷間圧延は、計N回(N=2,3)行い、各冷間圧延の間には中間焼鈍を行い、
N−1回目の冷間圧延における圧延率は80%以下であり、かつ最終の冷間圧延率は40%以上80%未満であり、
前記最終焼鈍は、1.0Pa以下かつ1100℃以上の雰囲気で行うことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
4.前記いずれかの冷間圧延前に、1050℃以上の非酸化性雰囲気で焼鈍を行うことを特徴とする、上記3に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
5.上記1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を熱間圧延し、
該熱間圧延後の鋼板を冷間圧延して最終板厚とし、
該最終板厚を有する鋼板を、1.0Pa以下の低圧雰囲気で、1100℃以上の温度で焼鈍し、
前記鋼素材は、PとSとの含有量(ppm)の積が400未満であり、
前記焼鈍に供される鋼板は、その表の酸素サンプリング時間を70msec、加速電圧を15kV、スポットサイズを20μmとしたときの波長分散型検出器によるO-Kα線カウント値の総数で250カウント値以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、磁束密度が高く、さらに低周波鉄損が低いのみならず、高周波鉄損も低い無方向性電磁鋼板を得ることができる。
酸素カウント値と鋼中のS量の関係を示すグラフである。 鋼中のS量と、鋼中のS量とP量の積との関係を示すグラフである。
以下、本発明の一実施形態に係る無方向性電磁鋼板について説明する。まず、鋼の成分組成の限定理由について述べる。なお、本明細書において、各成分元素の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
C:0.0050%以下
Cが高いと、磁気時効し、磁気特性を劣化させることから、0.0050%以下とする。より高温環境下での鋼板の使用に伴う磁気時効の抑制する観点や、過度にC含有量を低くすることによる製造コストの増大の観点から、さらに好ましい範囲は、0.0003%以上0.0030%以下である。また、鋼中にSiOが存在する場合には、低圧雰囲気での焼鈍中に、
SiO+2C → Si+2CO
と推定される反応によって脱炭が進むことから、Cが0.0030%から0.0050%の範囲であっても、最終的には磁気時効に悪影響を与えない0.0030%以下程度にすることができる。
Si:1.00%以上5.00%以下
Siは、比抵抗を増大する元素であり、渦電流損を改善させることが可能であるため、1.00%以上の添加は必須である。一方で、過度に添加すると、磁束密度を減少させるため、5.00%以下とする。より好ましい範囲は、1.50%以上4.00%以下である。
Mn:2.00%以下
Mnは、比抵抗を増大する元素であるが、過度に添加するとコストが増大するため2.00%以下にする。MnS生成によるフェライト粒の微細化を抑制するため、特に好ましくは、0.12%以下である。下限については製鋼段階での過度な脱Mnコストが生じないよう0.001%とするのが好ましい。これによって、MnSの体積分率が減少し、インヒビタとしての粒成長抑制力が弱まり、低圧雰囲気での焼鈍中に(100)の面方位を有する結晶粒の異常粒成長が抑制され、安定的に<001>軸が圧延面内にランダムに分布した結晶粒群((100)[0vw]ともいう)を優先成長させることが可能である。
P:0.1000%以下
Pは、鋼板を高強度化し、打ち抜き性を改善させる効果があるが、一方で、鋼板を脆化させるため、上限を0.1000%とする。また、最終冷間圧延前に非酸化性雰囲気にて高温焼鈍してSを純化させない場合には、Pの含有量は、S(ppm)×P(ppm)<400を満たすようにする。
S:0.0009%以下
Sは、MnSを形成し、粒成長性を損なうだけでなく、表面酸化物の形成を促進するため、特に低減する必要がある。そのためには、0.0009%以下とする。より好ましくは、0.0007%以下とする。また、最終冷間圧延前に非酸化性雰囲気にて高温焼鈍してSを純化させない場合には、Sの含有量は、S(ppm)×P(ppm)<400を満たすようにする。
Ca:0.0005%以下
Caは、脱酸や固溶Sを析出するために添加され、これらの析出物が十分粗大に析出すれば、固溶S低減によって、粒成長抑制効果を減じる効果が認められるものの、析出物が不可避的に微細に鋼中に分散すると、正常粒成長ならびに異常粒成長を抑制するため、添加しないことが好ましい。よって、0.0005%以下とする。より好ましくは、0.0002%以下である。
以上、本発明の基本成分について説明した。上記成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物であるが、その他にも必要に応じて、以下の元素を適宜含有させることができる。
SbおよびSnのいずれか1種または2種を合計で0.030%以下
SbおよびSnは、表面に偏析して、焼鈍中鋼板内部への窒素侵入を抑制し、磁気特性劣化の原因となる窒化物の形成を抑制することから、必要に応じて添加してもよい。
ただし、過度に添加された場合には、コストを増大するため、SbおよびSnの少なくともいずれかを合計で0.030%以下とする。より好ましくは、0.010%以下である。
なお、不可避的不純物において、AlおよびNは以下の範囲で含まれることとしてもよい。
Al:0.0050%以下
Alは、AlNを形成し、粒成長性を著しく損なうため、0.0050%以下とする。より好ましくは、0.0040%以下である。
N:0.0030%以下
Nは、Al、Siと窒化物を形成し、磁気特性を劣化させるため、0.0030%以下とする。より好ましくは、0.0020%以下である。
上記以外の元素であっても、工業的に除去できない不可避的不純物であれば含有されていても問題はなく、合計で0.05%未満程度であれば含有されていてもよい。しかし、Ti、Nb、V、Zrは、磁気特性劣化の原因となる炭窒化物、硫化物等を形成するため、0.001%未満の含有量であることが好ましく、また、不可避的不純物として混在しやすいCuは、硫化物を形成するため、0.005%以下とすることが好ましい。
本発明は低圧雰囲気で焼鈍を行うものであることから、特にその低圧雰囲気での焼鈍の前後で鋼中の元素量が変化しやすいが、上記の数値範囲は、焼鈍前の成分組成においても満たされていることが重要である。
次に、本発明の一実施形態に係る無方向性電磁鋼板の結晶方位について述べる。
本発明の無方向性電磁鋼板は、(100)の面方位を有する結晶粒が優先的に存在していることとする。
結晶方位は、リガク社製のX線単結晶方位測定装置を使用し、ラウエ回折スポットの解析により測定した。
ここで、(100)の面方位を有するとは、結晶中の(100)の結晶面の、圧延面に対する角度の最小値(β角)が3°以内にあることと定義する。また、(100)の面方位を有する結晶粒の存在率は高い方が良く、表面観察によって求めた、(100) の面方位を有する結晶粒の面積率は70%以上とする。より好ましくは、80%以上である。
また、本発明例で得られた無方向性電磁鋼板は、(100)の面方位を有する結晶粒の<100>軸がランダムな方向で分散されていることもひとつの特徴である。具体的には、(100)の面方位を有する結晶粒のうち、<100>軸と圧延方向とのなす角(α角)の大きさが35〜45°である結晶粒の割合が12%以上であって、0〜10°である結晶粒の割合も12%以上であった。このため、圧延方向とその直交方向のみならず、圧延方向から圧延面内に45°傾いた方向であっても、極めて良好な磁気特性が得られる。これによって、ΔB50を0.10T以下の異方性の低い磁気特性を得ることができる。
次に、本発明の一実施形態に係る無方向性電磁鋼板の結晶粒径について述べる。
結晶粒径は、研磨・エッチングした試料表面から光学顕微鏡で測定し、1結晶粒iのL方向粒径をdi、面積率をSiとしたとき、平均結晶粒径はΣdi×Siにて定義した。特に1mm以上の結晶粒においては、光学顕微鏡では、粒界の観察が困難であったので、結晶方位測定によって、隣接する結晶粒の方位差(α角、β角)が0.5°以内であれば、結晶粒界は無いものとし、その境界に隣接する2つの結晶は同一の結晶粒に含まれると判断した。
次に、本発明の一実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
上記成分組成の数値範囲となるように調整したスラブについて、1200℃以下で再加熱を行う。熱延最終圧延スタンドの出側における板温は800℃以上が好ましい。フェライト組織が粗大化し、冷延焼鈍後の(111)面方位の生成を抑制することができるためである。より好ましくは850℃以上である。スラブの再加熱温度が1200℃より高くなると、粒成長抑制の原因となるMnSやAlNの微細分散が生じる。より好ましくは、再加熱温度は1150℃以下である。
スラブの再加熱後は、熱間圧延を行う。熱間圧延後の巻き取り温度は、600℃以下とする。冷間圧延前にCおよびNを可能な限り析出させずに固溶させることによって磁気特性に有利な集合組織を形成するためである。
熱間圧延の仕上げ板厚は薄い方が好ましく、3mm以下とする。なぜなら、熱間仕上厚が厚い場合、続く冷延圧下率が高くなって、磁気特性に好ましくない(111)の結晶面方位が増大するためである。熱間圧延後は、熱延板焼鈍を行っても良いし、行わなくても良い。熱延板焼鈍を行った場合の方が磁気特性上は若干良好な値を示すが、コストが増大するデメリットもある。
続く冷間圧延で、冷延圧下率が95%以上と過度に高い条件が含まれる場合には、冷延負荷減少のため、熱延板焼鈍を行って軟質化させておくことが好ましい。熱延板焼鈍を行う場合、水素雰囲気あるいはAr雰囲気で行うことがより好ましい。窒素雰囲気にて焼鈍を行うと、地鉄中に窒素が侵入し、磁気特性劣化の原因となる窒化珪素を析出させるためである。
続いて、熱延板あるいは熱延焼鈍板を、ショットブラストや塩酸酸洗等の通常の方法でスケール除去をした後、N回法(N=2または3)の冷間圧延を行う。N回法の冷間圧延とは、N回の冷間圧延の間に、中間焼鈍工程を挟むことと定義する。上述の通り、N−1回目の冷間圧延における圧延率は80%以下とし、N回目の冷間圧延率は80%未満とする。また、N回目の冷間圧延率は40%以上とする。40%未満であると、結晶粒が過度に粗大化し、低圧雰囲気での焼鈍中に、磁気特性に有利な(100)の面方位を有する結晶粒の成長駆動力が小さくなってしまうためである。より望ましくは50%以上である。
最終板厚である、冷間圧延後の板厚は0.35mm以下0.05mm以上とする。板厚が過度に厚いと、続く低圧雰囲気での焼鈍において、(100)の面方位を有する結晶粒が十分に形成されない。これは、表面エネルギの駆動力がその他の粒成長駆動力に対して低くなるためと推定している。また、板厚が過度に薄すぎると、冷間圧延の負荷が増大するだけでなく、鋼板のハンドリング性が損なわれ、折れ曲がり変形などを生じやすくなって、磁気特性を劣化させるため好ましくない。中間焼鈍を行う場合には、熱延板焼鈍と同様に、水素雰囲気あるいはAr雰囲気で行うことが好ましい。焼鈍は、組織が軟質化する温度で行えば良いが、800℃以上で行うのが好ましい。これは、組織を粗大化することで、低圧雰囲気での焼鈍の前半で磁気特性向上に好ましい結晶方位の面積率を高めるためである。より好ましくは900℃以上である。
また、熱延工程終了後から低圧雰囲気での焼鈍工程の前までに、必要に応じて、上記のスケール除去とは別に、酸洗工程を行い、表面に不可避的に形成された酸化物を、表層酸素(O-Kα)カウント値が250/70msec以下となるまでに調整する。このような酸化物は、熱延中、熱延板焼鈍中、中間焼鈍中いずれの焼鈍中においても、不可避的に混在する水や酸素の存在によって、発生し得る。酸化物の形態としては、SiO2やFe2SiO4などが認められているが、フッ化水素水あるいは塩酸などの酸との混合液によって酸洗し除去することが可能である。
さらに、本発明者らは、表層酸化物の形成量は、鋼のS含有量によって大きく異なることを知見し、S:7ppm以下であれば、この酸洗工程無しに、表層酸化物を上記の値に抑えることが可能であることを見出した。この原因はまだ明らかになっていないが、このような酸化物は既に熱延板の段階で少なくとも一部が生成されていることがわかっている。
また、熱延工程終了後から最終冷間圧延工程の前までに、必要に応じて、特に、S(ppm)×P(ppm)<400を満たさない場合には、非酸化性雰囲気、好ましくは10Pa以下の低圧雰囲気で1050℃以上の温度で焼鈍する。これによって、地鉄中のSを純化し、5ppm程度以下にまで低減することが可能である。また、この焼鈍を、熱延板焼鈍、あるいは中間焼鈍と兼ねても良い。
最終板厚まで冷間圧延した鋼板は、低圧雰囲気で焼鈍を行う。低圧雰囲気での圧力は1.0Pa以下とする。過度に低くすると、ポンプ設備などが大型化し製造コスト増を招くので、0.005Pa程度を下限とする。最高到達温度までの平均昇温速度は、30℃/hr以上とするのが生産性の観点から好ましい。さらに好ましくは、10℃/min以上である。最高温度は1100℃以上とし、1100℃以上での保持時間は、5sec以上、より好ましくは20min以上である。
(実施例1)
実施例を以下に示す。はじめに表2に示す成分を有する鋼を、ラボでの低圧雰囲気溶解試験にて溶解、鋳造、切削加工して作製したスラブを1150℃に再加熱し、板厚1.8mmあるいは1.3mmまで熱間圧延した。板厚を1.3mmまで熱間圧延した条件は、表3のNo.20からNo.24のみである。仕上げ温度は840℃、巻き取り温度は550℃とした。その後の工程を表3に、得られた特性を表4(熱延板焼鈍温度:950℃)および表5(熱延板焼鈍温度:1020℃)に示す。ここで、表面調整条件とは、熱間圧延後、最終焼鈍前までにおいて行う表面酸化物除去の工程の有無を示したものである。本工程が「有り」の場合は、鋼板をフッ化水素酸と過酸化水素酸の混合液に5sec〜2minの間、浸漬させた。また、磁気特性は、280mm×30mmのサイズの試料を切出し、歪取り焼鈍を行い、エプスタイン試験で評価した。ここで、280mmの方向が、圧延方向のものと、圧延直交方向のもの、さらに圧延方向から-45°および45°面内に傾いた方向のものの4セットを測定し、それぞれの平均値を求めた。また、ΔB50の評価は、280mm×30mmの板1枚1枚をSSTにより評価してB50を求め、L方向、C方向、D方向(−45°傾いたものと45°傾いたものの平均値)のB50のうち、最大値から最小値を引いた値として求めた。表4、5中には、ΔB50が0.10T以上のものには×、0.10T未満には〇と評価した。
結晶方位は、X線ラウエ法により測定した。
また、結晶粒径は、500μm×500μmの領域の光学顕微鏡観察の結果および上述の結晶方位測定の結果をもとに導出した。
Figure 0006414172
Figure 0006414172
Figure 0006414172
Figure 0006414172
(実施例2)
表6に示す成分を有する鋼を、ラボでの低圧雰囲気溶解試験にて溶解、鋳造、切削加工して作製したスラブを1200℃に再加熱し、板厚3.0mmまで熱間圧延した。仕上げ温度は880℃、巻き取り温度は580℃とした。その後の工程を、表7に示す条件で行った。熱延板焼鈍は省略し、最終仕上げ厚は0.1mmとした。表面調整はしていない。得られた特性を表8に示す。
Figure 0006414172
Figure 0006414172
Figure 0006414172
本発明によれば、磁束密度が高く、さらに低周波鉄損が低いのみならず、高周波鉄損も低い無方向性電磁鋼板を製造することが可能であり、産業上有用である。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.0050%以下、
    Si:1.00%以上5.00%以下、
    P:0.1000%以下、
    Mn:2.00%以下
    S:0.0009%以下および
    Ca:0.0005%以下
    を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    鋼板の表層における(100)面の傾きが圧延面に対して3°以内である結晶粒の総面積率が70%以上であって、圧延方向、圧延方向に対して直角の方向、および圧延方向に対して45°の方向における磁束密度B50の最大値と最小値との差が0.10T未満であり、かつ該結晶粒の前記鋼板の圧延方向における平均粒径が10mm以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
  2. 前記成分組成は、さらに、
    質量%で、
    SbおよびSnのいずれか1種または2種を合計で0.030%以下、含有することを特徴とする、請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を熱間圧延し、冷間圧延し、最終焼鈍を施す無方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    前記冷間圧延は、計N回(N=2,3)行い、各冷間圧延の間には中間焼鈍を行い、
    N−1回目の冷間圧延における圧延率は80%以下であり、かつ最終の冷間圧延率は40%以上80%未満であり、
    前記最終焼鈍は、1.0Pa以下かつ1100℃以上の雰囲気で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記いずれかの冷間圧延前に、1050℃以上の非酸化性雰囲気で焼鈍を行うことを特徴とする、請求項3に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼素材を熱間圧延し、
    該熱間圧延後の鋼板を冷間圧延して最終板厚とし、
    該最終板厚を有する鋼板を、1.0Pa以下の低圧雰囲気で、1100℃以上の温度で焼鈍し、
    前記鋼は、PとSとの含有量(ppm)の積が400未満であり、
    前記焼鈍に供される鋼板は、その表層の酸素量が、サンプリング時間を70msec、加速電圧を15kV、スポットサイズを20μmとしたときの波長分散型検出器によるO-Kα線カウント値の総数で250カウント値以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
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