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JP6418226B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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JP6418226B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、変圧器の鉄心材料に好適な方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
方向性電磁鋼板は、変圧器や発電機の鉄心材料として用いられる軟磁性材料で、鉄の磁化容易軸である<001>方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有するものである。このような集合組織は、方向性電磁鋼板の製造工程中、二次再結晶焼鈍の際にいわゆるゴス(Goss)方位と称される{110}<001>方位の結晶粒を優先的に巨大成長させる、二次再結晶を通じて形成される。
この方向性電磁鋼板については、インヒビターと呼ばれる析出物を使用して仕上焼鈍中にGoss方位を有する粒を二次再結晶させることが一般的な技術として使用されている。例えば、特許文献1記載のAlN、MnSを使用する方法、特許文献2記載のMnS、MnSeを使用する方法などが開示され、工業的に実用化されている。これらのインヒビターを用いる方法は、1300℃超と高温でのスラブ加熱を必要とするが、安定して二次再結晶粒を発達させるのに極めて有用な方法であった。さらには、これらのインヒビターの働きを強化するために特許文献3にPb、Sb、Nb、Teを利用する方法が、特許文献4にZr、Ti、B、Nb、Ta、V、Cr、Moを利用する方法が開示されている。
さらに、特許文献5には酸可溶性Al(sol.Al)を0.010〜0.060%含有させ、スラブ加熱を低温に抑え、脱炭焼鈍工程で適正な窒化雰囲気下で窒化を行うことにより、二次再結晶時に(Al,Si)Nを析出させてインヒビターとして用いる方法が提案されている。(Al,Si)Nは鋼中に微細分散して有効なインヒビターとして機能するが、Alの含有量によってインヒビター強度が決まるため、製鋼でのAl量の的中精度が十分ではない場合は、十分な粒成長抑制力が得られないことがあった。このような途中工程で窒化処理を行い、(Al,Si)NあるいはAlNをインヒビターとして利用する方法は数多く提案されている。
一方、インヒビター成分を含有しない素材において、ゴス方位結晶粒を二次再結晶により発達させる技術が特許文献6等で開示されている。これは、インヒビター成分のような不純物を極力排除する事で、一次再結晶時の結晶粒界が持つ粒界エネルギーの粒界方位差角依存性を顕在化させ、インヒビターを用いずともGoss方位を有する粒を二次再結晶させる技術であり、その効果をテクスチャーインヒビション効果と呼んでいる。この方法では、インヒビターの鋼中微細分散が必要ではないため、これまで必須であった高温スラブ加熱も必要としないことなど、コスト面でもメンテナンス面でも大きなメリットを供する。
特公昭40-15644号公報 特公昭51-13469号公報 特公昭38-8214号公報 特開昭52-24116号公報 特許第2782086号公報 特開2000-129356号公報
しかしながら、インヒビターレス素材では一次再結晶焼鈍時に粒成長を抑制し、一定の粒径にそろえる機能を有するインヒビターが存在しないため、工程条件や素材成分が若干変わっただけで一次再結晶後の鋼板の結晶粒径の変動が大きかったり、不均一な粒径分布になることが多かった。このため、これまで提案されてきたインヒビターレス法を用いた方向性電磁鋼板の製造方法では、良好な磁気特性を安定的に実現することは必ずしも容易ではなかった。
例えば、スラブ加熱時には、炉の中でスキッドと呼ばれる複数の梁にスラブが置かれて焼鈍されることが一般的である。スラブ内において、このスキッドに乗っている位置では、そのスキッドからの抜熱の影響で、乗っていない位置よりも低温になる。すなわち、スラブ内で温度変動が不可避的に発生する。インヒビターレス素材では、この変動が上述の一次再結晶後の粒径のコイル内変動に直結し、磁気特性のばらつきとなることが頻発した。
本発明は、従来よりもさらに方向性電磁鋼板の磁気特性を安定化させ、かつ、磁気特性の劣化を効果的に防止することを目的とする。
以下、本発明を導くに至った実験結果について説明する。
(実験1)
質量比でC:0.035%、Si:3.33%、Mn:0.08%、N:25ppm、sol.Al:55ppm、S:12ppmを含んだ鋼スラブA、C:0.036%、Si:3.35%、Mn:0.08%、N:27ppm、sol.Al:52ppm、S:77ppmを含んだ鋼スラブB、C:0.035%、Si:3.32%、Mn:0.08%、N:27ppm、sol.Al:51ppm、S:75ppm、Sb:0.055%を含んだ鋼スラブCを各々連続鋳造にて製造し、1230℃で70分均熱するスラブ加熱を行った後、熱間圧延により2.0mmの厚さに仕上げた。このとき、熱間圧延の粗圧延後のシートバーの厚みは40mmであり、その粗圧延直後の幅方向中心部の表面温度を1本のシートバーにおける長手方向の最低温度を1010℃、最高温度を1060℃、すなわち変動代を50℃とした。その後、1000℃で30秒、乾燥窒素雰囲気の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延で0.23mmの板厚に仕上げた。
さらに、830℃で80秒、50%H-50%N、露点50℃の湿潤雰囲気下での脱炭をともなう一次再結晶焼鈍を施した。さらにMgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、1200℃で5時間、水素雰囲気下で保定する二次再結晶焼鈍を行った。
得られたサンプルの磁束密度B(800A/mで励磁した時の磁束密度)をJIS C2550に記載の方法で測定した。本実験では、コイル内の磁性ばらつきを評価するため、粗圧延直後のシートバー表面温度の最低温度と最高温度の位置の両方で磁気特性を評価した。得られた結果を図1に示す。この結果から、インヒビターレス成分系である鋼スラブAは粗圧延直後のシートバー表面温度の最低温度部と最高温度部の磁性差(磁気特性の差)が大きく、Sを増加した鋼スラブBでは差が軽減されているが、絶対値が低下している。これらに対して、S増加に加えて、Sbを添加した鋼スラブCは磁性差も軽減されかつ磁気特性も良好であることがわかる。
まず、素材S量を増加させることで、熱間圧延の粗圧延直後のシートバー表面温度の変動に起因した、磁性ばらつきが抑制される理由については明らかではないが、発明者らは次のように考えている。上述のとおり、インヒビターレス素材では一次再結晶焼鈍時に粒成長を抑制して一定の粒径にそろえる機能を有するインヒビター(析出物)がほとんど存在しないため、工程条件や素材成分が若干変わっただけで一次再結晶後の鋼板の結晶粒径の変動が大きくなったり、不均一な粒径分布になる。本実験の場合は、素材S量を増加させることで、MnSあるいはCuSといった析出物が形成され、さらに固溶S分による粒界偏析効果も発現し、シートバー温度が変動しても一次再結晶粒径を狭幅で均一化し、二次再結晶の発現を安定化する効果が発揮されたと考えられ、このため最終磁性のばらつきも減少したものと考えられる。
しかしながら、素材中のS量を増加させると、磁性差は抑えられるが磁気特性自体が劣化する問題も明らかとなった。これは、上述のとおり、インヒビターレス素材では、粒界に偏析や濃化する元素が少ないため、一次再結晶時の結晶粒界が持つ粒界エネルギーの粒界方位差角依存性が顕在化し、その粒界方位差角依存性がGos方位を有する粒を二次再結晶させるテクスチャーインヒビション効果を発現させるが、その効果がSの粒界偏析や濃化で低減してしまうためと考えられる。
そこで、Sb等の粒界偏析元素を利用することで、劣化した磁気特性を補う必要がある。もともと、S量を増加させて、テクスチャーインヒビション効果が薄れているので、新たな粒界偏析元素を加えても問題なく、むしろ一次再結晶集合組織を変化させて二次再結晶後のGoss方位先鋭性を高める効果があることから、磁気特性向上には必須といえる。
上述のメカニズムによれば、Sの代わりに同様の効果があるSeを用いてもよく、またSbの代わりに同様の効果があるSnを用いてもよい。
また、上述の粗圧延直後に幅方向中心部の表面温度のばらつきが発生する主因は、熱間圧延前のスラブ加熱時に使用される、スラブを支えるスキッドにあると考えられる。具体的には、スラブ加熱時にスキッドで支えられている位置は、そのスキッドが加熱中のスラブに接触しているために温度が上がりにくくなり、比較的低温となる。このように、加熱時にスラブをスキッドで支える構造に起因して、表面温度のばらつきが発生すると考えられる。
(実験2)
実験1で使用した、鋼スラブAと鋼スラブCを1200℃でスラブ加熱した後、熱間圧延により2.2mmの厚さに仕上げた。このとき、熱間圧延の粗圧延後のシートバーの厚みは50mmとし、またスラブ加熱時間やスラブ加熱終了から粗圧延開始までの時間を変化させることで、その粗圧延直後の幅方向中心部の表面温度について、1本のシートバーにおける温度変動代を種々変化させた。その後、1075℃で60秒、乾燥窒素雰囲気の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延で0.27mmの板厚に仕上げた。さらに、850℃で80秒、60%H-40%N、露点60℃の湿潤雰囲気下での脱炭をともなう一次再結晶焼鈍を施した。さらにMgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、1200℃で10時間、水素雰囲気下で保定する二次再結晶焼鈍を行った。
得られたサンプルの磁束密度BをJIS C2550に記載の方法で測定した。本実験では、コイル内の磁性ばらつきを評価するため、粗圧延直後の表面温度の最低温度部と最高温度部の両方で磁気特性を調査し、その差でコイル内磁性ばらつきを評価した。
得られた結果と粗圧延後の表面温度の変動代との関係を図2に示す。この結果から、インヒビターレス成分系である鋼スラブAは変動代が40℃を超えたあたりから磁束密度のばらつきが大きくなるが、S含有量を増加させ、かつSbを添加した鋼スラブCは変動代が100℃以下では磁束密度のばらつきが小さいことがわかる。
以上の通り、素材S量を増加させても粗圧延後の温度変動代が大きすぎると磁束密度の磁性差は大きくなることが確認された。特にS含有量を増加させ、かつSbを添加した鋼スラブは、この磁性差が大きくなる粗圧延後の温度変動代がインヒビターレス素材と比較して飛躍的に増大しており、ある程度の変動代が不可避的に発生する工業的な製造条件に対して、素材S含有量を増加させることは、安定した磁気特性を得るためにきわめて効果的であるといえる。
以上のことから、インヒビターレス成分にSまたはSeを少量加え、かつ熱間圧延の粗圧延後のシートバーの幅方向中心部の表面温度の変動を規制することによって、その他の製造条件が変動しても安定した磁気特性を確保することができるといえる。また、Sおよび/またはSeの増加でテクスチャーインヒビション効果が弱まり磁気特性が劣化するのを、Sbおよび/またはSnを添加することにより効果的に防止することができる。
本発明は、上記した実験結果に基づいて完成されたものであり、その要旨構成は、以下のとおりである。
1.質量%で、
C:0.100%以下、
Si:2.00%以上8.00%以下、
Mn:0.02%以上1.00%以下、
Sおよび/またはSeを合計で0.0050%超0.0100%以下並びに
Snおよび/またはSbを合計で0.005%以上1.000%以下
を含有し、Nを70ppm未満および酸可溶性Alを150ppm未満に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを1300℃以下で加熱し、
該加熱後の鋼スラブに熱間圧延を施して熱延鋼板とし、
該熱延鋼板に、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚を有する冷延鋼板とし、
該冷延鋼板に一次再結晶焼鈍を施し、その後、二次再結晶焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記熱間圧延の粗圧延直後のシートバーの幅方向中心部における、表面温度の該シートバーの長手方向変動を100℃以内とする方向性電磁鋼板の製造方法。
2.質量%で、Snおよび/またはSbを合計で0.020%以上0.300%以下を含有する、上記1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
3.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
Ni:0.005%以上1.5%以下、
Cu:0.005%以上1.5%以下、
Cr:0.005%以上0.1%以下、
P:0.005%以上0.5%以下、
Mo:0.005%以上0.5%以下、
Ti:0.0005%以上0.1%以下、
Nb:0.0005%以上0.1%以下、
V:0.0005%以上0.1%以下、
B:0.0002%以上0.0025%以下、
Bi:0.005%以上0.1%以下、
Te:0.0005%以上0.10%以下および
Ta:0.0005%以上0.01%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、上記1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
4.前記熱間圧延の粗圧延直後のシートバーの幅方向中心部における、表面温度の該シートバーの長手方向変動を70℃以内とする、上記1〜3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
5.前記冷延鋼板に磁区細分化処理を施す、上記1〜4のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
6.前記磁区細分化処理が、前記二次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板への電子ビーム照射によるものである、上記5に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
7.前記磁区細分化処理が、前記二次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板へのレーザー照射によるものである、上記5に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、従来よりもさらに方向性電磁鋼板の磁気特性を安定化させ、かつ、磁気特性の劣化を効果的に防止することができる。
粗圧延後のシートバー表面の最低温度部分および最高温度部分の磁束密度B並びに、最低温度部と最高温度部との磁性差(B差)を示すグラフである。 粗圧延後のシートバー表面の最低温度部と最高温度部との差(変動代)と、最低温度部と最高温度部との磁性差(B差)を示すグラフである。
以下、本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。まず、鋼の成分組成の限定理由について述べる。なお、本明細書において、各成分元素の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
C:0.100%以下
Cは0.100%を超えると、脱炭焼鈍で、磁気時効の起こらない0.005%以下に低減することが困難となる。よって、Cは0.100%以下の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.020〜0.080%の範囲である。
Si:2.00%以上8.00%以下
Siは、鋼の比抵抗を高め、鉄損を低減すのに必要な元素である。上記効果は、2.00%未満では十分ではなく、一方、8.00%を超えると、加工性が低下し、圧延して製造すること困難となる。よって、Siは2.00〜8.00%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは2.50〜4.50%の範囲である。
Mn:0.02%以上1.00%以下
Mnは、鋼の熱間加工性を改善するために必要な元素である。上記効果は、0.02%未満では十分ではなく、一方、1.00%を超えると、製品板の磁束密度が低下するようになる。よって、Mnは0.02〜1.00%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.03〜0.20%の範囲である。
N:70ppm未満およびsol.Al(酸可溶性Al):150ppm未満
Nを70ppm未満、かつsol.Alを150ppm未満に低減する必要がある。すなわち、両成分を極力低減することによって、AlN系析出物の生成を抑制することが、SやSeの効果を減じない点で有利である。上記の通り、Nおよびsol.Alは、極力低減することが好ましいが、その低減のためには多大なコストを要することから、N:70ppm未満およびsol.Al:150ppm未満の範囲での残存は許容される。Nはより好ましくは50ppm未満であり、sol.Alは好ましくは100ppm未満である。なお、sol.Alは、磁気特性の劣化を抑制することができるという観点から、30ppm以上で含有させてもよい。
Sおよび/またはSe:合計で0.0050%超0.0100%以下
Sおよび/またはSeを合計で0.0050%超0.0100%以下をさらに含有することが必須である。なぜなら、Sおよび/またはSeが合計で0.0050%以下では、上述の通り、磁性のコイル内ばらつきをまねく。一方、Sおよび/またはSeが合計で0.0100%を超えると、SやSeを鋼中に均一に分散させる目的で、介在物を一度固溶させるためにスラブ加熱を1300℃を超える高温で行う必要が生じ、コストの大幅な増加が問題となる。より好ましくは、0.0055%以上0.0080%未満である。
Sbおよび/またはSn:合計で0.005%以上1.000%以下
Sbおよび/またはSnを合計で0.005%以上1.000%以下含有することが必須である。なぜなら、Sbおよび/またはSnが合計で0.005%未満では、上述の通り、磁束密度低下をまねく。一方、Sbおよび/またはSnが合計で1.000%を超えると、一次再結晶集合組織の変化が大きく、このために二次再結晶が不安定となり、磁性劣化する点が問題となる。好ましくは、0.020%以上0.300%以下である。
本発明の方向性電磁鋼板における上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物であるが、その他にも以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
さらに、磁束密度を向上させる目的で、Ni:0.005〜1.5%、Cu:0.005〜1.5%、Cr:0.005〜0.1%、P:0.005〜0.5%、Mo:0.005〜0.5%、Ti:0.0005〜0.1%、Nb:0.0005〜0.1%、V:0.0005〜0.1%、B:0.0002〜0.0025%、Bi:0.005〜0.1%、Te:0.0005〜0.10%およびTa:0.0005〜0.01%のうちから選択される少なくとも1種を単独または複合して添加できる。それぞれ添加量が下限量より少ない場合には磁束密度向上効果に乏しく、上限量を超えると二次再結晶不良を招き、磁気特性が劣化する。
次に、本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
[加熱]
所定の成分調整がなされた溶鋼を通常の造塊法もしくは、連続鋳造法でスラブを製造し、添加することが望ましい成分は、途中工程で加えることは困難であることから、溶鋼段階で添加する。スラブは1300℃以下に加熱し、好ましくは1270〜1100℃で均熱する。本成分系ではAlやNは低減されているため、これらを固溶させるための高温加熱を必要しない。1300℃以下の低温とすることでコストを低減することができる。
[熱間圧延]
上記加熱後に、熱間圧延を行う。熱間圧延温度は、開始温度を1000℃以上、終了温度を750℃以上とすることが、磁気特性向上のため望ましい。ただし、終了温度は、形状を良好とするため、1000℃以下とすることが望ましい。
また、上述の理由により、熱間圧延の粗圧延直後のシートバーの幅方向中心部の表面温度において、そのシートバーの表面温度における変動を100℃以内に抑えることが必須である。また、実験2より、シートバーの表面温度における変動を70℃以下に抑えることが好ましい。ここで、粗圧延後のシートバーの表面温度は粗圧延機出側で放射温度計や熱電対を具備した接触式温度計にて測定される。なお、粗圧延直後とは、粗圧延が終了して5秒以内を意味する。
また、シートバー端部は過剰に温度が低下しているため、幅方向についてはその中央部を測定し、長手方向については端部から3mは考慮せず、それ以降で長手方向を連続的に測定し、その測定温度の最大値と最小値との差を温度変動代として採用する。この温度変動代を低減するためには、スラブ加熱での均熱時間を長くしてスキッドに乗っているスラブ位置部分の温度上昇を促したり、スラブ加熱後、粗圧延までに待機時間をとるなどして温度の均一化を計ることにより達成できる。ただし、待機時間をとる場合は、粗圧延温度自体が低下するため、スラブ加熱での均熱時間を長くするほうが望ましい。
[熱延板焼鈍]
熱間圧延後に、必要に応じて、熱延板焼鈍を施すことができる。その場合、熱延板焼鈍温度は800℃以上1100℃以下が望ましい。熱延板焼鈍温度が800℃未満では熱延板でのバンド状組織を再結晶させることができず、磁性が劣化することがある。また、1100℃超では二次再結晶が不安定となる虞がある。望ましくは950℃以上1075℃以下である。焼鈍時間は、2秒〜120秒の範囲とすることが望ましい。
[冷間圧延]
熱間圧延後または熱延板焼鈍後、必要に応じて中間焼鈍を挟む1回以上の冷間圧延を施した後、一次再結晶焼鈍を行う。中間焼鈍温度は900℃以上1200℃以下が好適である。中間焼鈍温度が900℃未満であると再結晶粒が細かくなり、一次再結晶組織におけるGoss核が減少し磁性が劣化する。また1200℃を超えると、粒径が粗大化しすぎるために、整粒の一次再結晶組織を実現する上で極めて不利である。最終冷間圧延では、冷間圧延の温度を100℃〜300℃に上昇させて行うこと、および冷間圧延途中で100〜300℃の範囲での時効処理を1回または複数回行うことが、再結晶集合組織を変化させて磁気特性を向上させるために有効である。
[一次再結晶焼鈍]
次の一次再結晶焼鈍では鋼板を脱炭させてもよい。焼鈍温度は、800℃以上900℃以下が脱炭性の観点から有効である。焼鈍時間は30〜240秒とすることが好ましい。さらに脱炭の観点からは、雰囲気は湿潤雰囲気とすることが望ましい。ただし、脱炭が不要なC:0.005%以下しか含有していない場合はこの限りではない。また、保定温度までの昇温速度は50℃/s以上400℃/s以下とすることが最終磁気特性が良好となり望ましい。
[焼鈍分離剤の塗布]
上記一次再結晶焼鈍後の鋼板に、必要に応じて焼鈍分離剤を塗布する。ここで、鉄損を重視してフォルステライト被膜を形成させる場合には、MgOを主体とする焼鈍分離剤を適用することで、その後、純化焼鈍を兼ねて二次再結晶焼鈍を施すことにより二次再結晶組織を発達させると共にフォルステライト被膜を形成することができる。打ち抜き加工性を重視してフォルステライト被膜を必要としない場合には、焼鈍分離剤を適用しないか、適用する場合でもフォルステライト被膜を形成するMgOは使用せずに、シリカやアルミナ等を用いる。これらの焼鈍分離剤を塗布する際は、水分を持ち込まない静電塗布等を行うことが有効である。耐熱無機材料シート(シリカ、アルミナ、マイカ)を用いてもよい。
[二次再結晶焼鈍]
次に、MgOを主体とする焼鈍分離剤を適用した後に二次再結晶焼鈍を施すことにより、Goss方位を有する二次粒を発達させると共にフォルステライト被膜を形成させることが可能である。二次再結晶焼鈍は二次再結晶発現のために800℃以上で行うことが望ましい。また、二次再結晶を完了させるために800℃以上の温度で20時間以上保持させることが望ましい。フォルステライト被膜を形成させるためには1200℃程度まで昇温させることが望ましい。
[平坦化焼鈍]
二次再結晶焼鈍後には、付着した焼鈍分離剤を除去するため,水洗やブラッシング、酸洗を行う事が有用である。その後、さらに平坦化焼鈍を行い形状を矯正することが鉄損低減のために有効である。平坦化焼鈍の焼鈍温度は750〜950℃が好ましく、焼鈍時間は、5秒以上120秒以下が好ましい。
[絶縁コーティング]
鋼板を積層して使用する場合には、鉄損を改善するために、平坦化焼鈍前もしくは後に、鋼板表面に絶縁コーティングを施すことが有効である。鉄損低減のために鋼板に張力を付与できるコーティングが望ましい。バインダーを介した張力コーティング塗布方法や物理蒸着法や化学蒸着法により無機物を鋼板表層に蒸着させコーティングとする方法を採用すると、コーティング密着性に優れ,かつ著しい鉄損低減効果があるため望ましい。
[磁区細分化処理]
さらなる鉄損低減のために、磁区細分化処理を行うことが望ましい。処理方法としては一般的に実施されているような、最終製品板に電子ビームやレーザー等により鉄の結晶格子に歪を加える方法が望ましい。また、最終製品板のみならず、最終仕上板厚に達した冷間圧延板などの中間製品にあらかじめ溝をいれたりする方法でもよい。
その他の製造条件は、方向性電磁鋼板の一般的な製造方法に従えばよい。
本発明は、繊細(Subtle)抑制力(Inhibition)制御(Control)(SIC法)とも言うべき方法である。SIC法は、低温スラブ加熱とコイル内での鉄損変動の抑制を同時に達成することのできる、従来のインヒビターを使用する技術と、インヒビターレス技術よりも優れた方法である。
(実施例1)
質量比でC:0.062%、Si:3.16%、Mn:0.14%、sol.Al:80ppm、N:34ppm、S:65ppm、Sn:0.075%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼スラブを連続鋳造にて製造し、1230℃でスラブ加熱した後、熱間の粗圧延で40mmの板厚とし、仕上圧延で2.4mmの厚さに仕上げた。この時、スラブ加熱時の均熱時間を表1のように変化させることで、熱間圧延の粗圧延直後のシートバーの幅方向中心部の表面温度において、そのシートバーにおける温度変動を変化させた。シートバーの表面温度の最小と最大の差をシートバー内温度変動として表1に併記した。ここで、シートバーの表面温度は、粗圧延の最終圧延機の出側上部に設置した放射温度計を用いて測定した。これは幅方向中央部1ヶ所の温度を連続的に測定している。シートバー端部は過剰に温度が低下しているため、長手方向は端部から3mは考慮せず、それ以降で長手方向を連続的に測定し、その測定温度の最大の部分を最高温度部、最小の部分を最低温度部とした。
その後、これらの熱延板に1050℃で15秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延で1.8mmの板厚とし、1000℃で100秒の中間焼鈍を施し、さらに冷間圧延で0.23mmの板厚に仕上げた。その後、840℃で120秒、55%H-45%N、露点58℃の湿潤雰囲気下での一次再結晶焼鈍を施した。その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、1230℃で2時間、水素雰囲気下で保定する二次再結晶焼鈍を行った。
さらに、電子ビームにて幅方向に連続的に8mmピッチで磁区細分化処理を施した。得られたサンプルの磁束密度BをJIS C2550に記載の方法で測定した。測定位置は、コイル内で粗圧延直後の最低温度部と最高温度部の位置とし、この磁性差を最終磁性のコイル内変動代とした。得られた結果を表1に併記する。
Figure 0006418226
表1から明らかなように、本発明範囲内の条件において良好な磁束密度Bが得られ、かつその変動も小さくなる事がわかる。
(実施例2)
表2記載の種々の成分を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼スラブを連続鋳造にて製造し、1270℃でスラブ加熱した後、熱間の粗圧延で30mmの板厚とし、仕上圧延で2.7mmの厚さに仕上げた。この時、スラブ加熱時の均熱時間は70分とした。このとき、熱間圧延の粗圧延直後のシートバーの幅方向中心部の表面温度において、そのシートバー表面の温度変動は60℃であった。
その後、975℃で120秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延により1.7mmの板厚とした。その後、1100℃で80秒の中間焼鈍を施した後、120℃の温間圧延で0.20mmの板厚に仕上げた。さらに、850℃で100秒、60%H-40%Nで露点60℃の湿潤雰囲気下での一次再結晶焼鈍を施した。
その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、1220℃で5時間、水素雰囲気下で保定する二次再結晶焼鈍を行った。さらに、レーザーにて幅方向に連続的に4mmピッチで磁区細分化処理を施した。その後、リン酸マグネシウムとほう酸を主体とした張力付与コーティング形成を兼ねた平坦化焼鈍を820℃で30秒の条件で施した。
得られたサンプルの磁束密度BをJIS C2550に記載の方法で測定した。測定位置は、コイル内で粗圧延直後の最低温度部と最高温度部の位置とし、この磁性差を最終磁性のコイル内変動代とした。得られた結果を表2に併記する。
Figure 0006418226
表2から明らかなように、本発明範囲内の条件において良好な磁束密度Bが得られ、かつその変動も小さくなる事がわかる。
(実施例3)
表3記載の種々の成分を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼スラブを連続鋳造にて製造し、1180℃でスラブ加熱した後、熱間の粗圧延で45mmの板厚とし、仕上圧延で2.0mmの厚さに仕上げた。この時、スラブ加熱時の均熱時間は100分であり、熱間圧延の粗圧延直後のシートバーの幅方向中心部の表面温度において、そのシートバーにおける温度変動は40℃であった。
その後1070℃で10秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延により0.23mmの板厚に仕上げた。さらに、865℃で100秒、40%H-60%Nで露点42℃の湿潤雰囲気下での一次再結晶焼鈍を施した。その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、1200℃で3時間、50%H+50%N雰囲気下で保定する二次再結晶焼鈍を行った。
その後、リン酸マグネシウムとほう酸を主体とした張力付与コーティング形成を兼ねた平坦化焼鈍を900℃で15秒の条件で施した。得られたサンプルの磁束密度BをJIS C2550に記載の方法で測定した。測定位置は、コイル内で粗圧延直後の最低温度部と最高温度部の位置とし、この磁性差を最終磁性のコイル内変動代とした。得られた結果を表3に併記する。
Figure 0006418226
表3から明らかなように、本発明範囲内の条件において良好な磁束密度Bが得られ、かつその変動も小さくなる事がわかる。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C:0.100%以下、
    Si:2.00%以上8.00%以下、
    Mn:0.02%以上1.00%以下、
    Sおよび/またはSeを合計で0.0050%超0.0100%以下並びに
    Snおよび/またはSbを合計で0.005%以上1.000%以下
    を含有し、Nを70ppm未満および酸可溶性Alを150ppm未満に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを1300℃以下で加熱し、
    該加熱後の鋼スラブに熱間圧延を施して熱延鋼板とし、
    該熱延鋼板に、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚を有する冷延鋼板とし、
    該冷延鋼板に一次再結晶焼鈍を施し、その後、二次再結晶焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    前記熱間圧延の粗圧延直後のシートバーの幅方向中心部における、表面温度の該シートバーの長手方向変動を100℃以内とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 質量%で、Snおよび/またはSbを合計で0.020%以上0.300%以下を含有する、請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記成分組成は、さらに、
    質量%で、
    Ni:0.005%以上1.5%以下、
    Cu:0.005%以上1.5%以下、
    Cr:0.005%以上0.1%以下、
    P:0.005%以上0.5%以下、
    Mo:0.005%以上0.5%以下、
    Ti:0.0005%以上0.1%以下、
    Nb:0.0005%以上0.1%以下、
    V:0.0005%以上0.1%以下、
    B:0.0002%以上0.0025%以下、
    Bi:0.005%以上0.1%以下、
    Te:0.0005%以上0.10%以下および
    Ta:0.0005%以上0.01%以下
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記熱間圧延の粗圧延直後のシートバーの幅方向中心部における、表面温度の該シートバーの長手方向変動を70℃以内とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 前記冷延鋼板に磁区細分化処理を施す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  6. 前記磁区細分化処理が、前記二次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板への電子ビーム照射によるものである、請求項5に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  7. 前記磁区細分化処理が、前記二次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板へのレーザー照射によるものである、請求項5に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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