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JP6418800B2 - 外来性dnaのゲノムへの導入位置の決定法 - Google Patents
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Description

本発明は、ゲノムDNAに挿入されたDNAの挿入位置を決定する方法に関する。
組換え動物、組換え植物などに導入されたDNAの位置を決定する方法は、従来、TAIL(Thermal asymmetric interlaced)-PCR法によって行われていた(非特許文献1)。TAIL-PCR法は、ゲノムcDNAを鋳型に特異的プライマーと任意プライマーを用いて、nested PCRを行うことにより、特異的プライマーに隣接した未知領域を単離する方法である。 TAIL-PCR法によれば、ゲノムDNAに挿入されているDNAに特異的なプライマーと、ランダムな配列を有する任意のプライマーを用いてPCR増幅することにより、挿入DNA断片に隣接するゲノムDNA配列を確認することができる。
挿入されるDNA(例えば、外来性の遺伝子など)は、当初の設計通りの構造を保ったままゲノムDNAに挿入されている場合には、TAIL-PCR法により、その挿入位置を決定することができる。しかしながら、挿入されたDNAが必ずしも設計通りの構造を保ったまま挿入されていないことも多い。例えば、挿入される遺伝子が、組換え植物を作出する際に用いられるアグロバクテリア法やgene-gun(遺伝子銃)のような方法で導入された場合は、挿入遺伝子のいずれかの端部分が大幅に欠損していることも少なくない。このように設計した状態とは異なる状態でゲノムに挿入されていると、TAIL-PCR法によりその挿入位置を正確に決定するのは困難なことが多かった。
遺伝子組換え動植物を作出する場合、挿入されたDNAがゲノム上のどの位置に挿入されているのか、また、宿主となる動植物の遺伝子構造及びその機能に対して悪影響を及ぼさないかどうかを厳密にチェックする必要がある。
そのため、ゲノムに挿入されたDNAの位置及びその構造を正確に確認するためのさらに改良された方法が望まれていた。
Liuら, Genomics, 25, 674-681 1995
上記事情に鑑み、本発明は、ゲノムDNAに挿入された外来性DNAの挿入位置を決定する方法を提供する。
本発明者らは、植物のゲノムDNAに導入されたDNAのゲノム上の位置を決定するために、DNAが導入された植物のゲノム(すなわち、外来性DNAをいずれかの位置に含む植物ゲノム)全体に渡るシークエンスデータを取得し、その配列群とすでに判明している該植物の全ゲノム配列とを比較することで、設計された構造を保持していないDNA断片のゲノム上の位置を決定することに成功し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)である。
(1)以下の(a)〜(c)の工程を含む、外来性DNAが挿入されたゲノムDNA上における、該外来性DNAの挿入位置を決定する方法。
(a)断片化した全ゲノムDNAの各断片の両端から配列を決定する工程、
(b)工程(a)で決定された配列から、外来性DNAに特有な配列を抽出する工程、
(c)工程(b)で抽出した配列群に含まれる各配列とペアになる他端の配列を抽出する工程、
(d)工程(c)で抽出した配列群を、外来性DNA配列であって、上記(b)の「外来性DNAに特有な配列」とは異なる配列に対してマッピングし、マッピングされなかった配列を抽出する工程、
(e)工程(d)で抽出した配列群をゲノムDNA配列に対して相同性検索を行い、該抽出した配列群の配列と相同性のあるゲノムDNA配列上の位置を特定する工程
(2)前記外来性DNA特有の配列が、ベクター由来の配列である上記(1)に記載の方法。
(3)同定された前記外来性DNAの挿入位置を、さらに、PCR法により確認することを含む上記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)上記(3)に記載のPCR法により得られた結果に基づいて、挿入された外来性DNAの構造を決定する方法。
本発明により、ゲノムに導入された外来性DNAの位置を正確に決定することが可能となる。その結果、遺伝子導入された作物や動物から取得される食品、ワクチン製剤の安全性を確認することが可能となる。さらに、特定の外来性DNA断片が導入されている植物や動物を、該DNA断片が導入されていない植物群又は動物群の中から特定することが可能となる。
CTB遺伝子の導入確認を行った結果を示す。供与核酸の組込状態をPCR(A)及びサザンブロット(B)により解析した結果である。 LB-1〜LB-3及びRB-1〜RB-4の7つの配列の位置を示す模式図である。 挿入DNAの位置を確認する手順を示した図である。 組換えイネ(#51A)における供与核酸のイネ3番染色体導入部位について解析した結果を示す。 組換えイネ(#51A)における供与核酸のイネ12番染色体導入部位について解析した結果を示す。 組換えイネ(#51A) 3番染色体(A)及び12番染色体(B)への供与核酸の挿入をPCRで再確認した結果を示す。 組換えイネ(#51A) 3番染色体への導入配列と設計上の構造の違いを模式的に示す。 組換えイネ(#51A) 12番染色体への導入配列と設計上の構造の違いを模式的に示す。 TAIL-PCR法による挿入位置の確認結果を示す。AはPCR産物をアガロースゲル電気泳動により確認した結果である。LB side TAILR3の3レーンは、TAILR3プライマーとRandom1, Random2およびRandom3の各プライマーをペアとして増幅した結果を示し、RB side TAILR3の3レーンは、TAILF3プライマーとRandom1, Random2およびRandom3の各プライマーをペアとして増幅した結果を示す。矢頭で示すバンドは、LBと3番染色体の隣接領域を含む増幅断片、RBと3番染色体の隣接領域を含む増幅断片である。 なお、12番染色体領域を含むバンドは増幅されなかった。
本発明の実施形態の1つは、以下の(a)〜(c)の工程を含む、外来性DNAが挿入されたゲノムDNA上における、該外来性DNAの挿入位置を決定する方法である。
(a)断片化した全ゲノムDNAの各断片の両端から配列を決定する工程、
(b)工程(a)で決定された配列から、外来性DNAに特有な配列を抽出する工程、
(c)工程(b)で抽出した配列群に含まれる各配列とペアになる他端の配列を抽出する工程、
(d)工程(c)で抽出した配列群を、外来性DNA配列であって、上記(b)の「外来性DNAに特有な配列」とは異なる配列に対してマッピングし、マッピングされなかった配列を抽出する工程、
(e)工程(d)で抽出した配列群をゲノムDNA配列に対して相同性検索を行い、該抽出した配列群の配列と相同性のあるゲノムDNA配列上の位置を特定する工程
本発明は、任意の生物のゲノムDNAに挿入された外来性のDNAが、ゲノムDNA上のどの位置に存在しているのかを、正確に確認する方法に関するものである。ここで、任意の生物とは、特に限定されるものではないが、例えば、高等真核生物、例えば、動物、植物などに対して、特に好ましく、適用することができる。
外来性DNAとは、特に限定されるものではなく、宿主となる生物(すなわち、外来性DNAが挿入されている生物)とは異なる生物由来のDNA、または、人工的に作製したDNAなどが望ましい
外来性DNAが挿入されているゲノムDNAの断片化は、当業者が周知の技術に基づいて実施することができる。その実施方法は、例えば、適当な制限酵素により断片化する方法、あるいは、物理的な方法を用いて断片化する方法(例えば、超音波破砕装置により超音波処理する方法)などを例示することができる。断片化したDNAの長さは、例えば、100〜2,000bp程度、あるいは、200〜1,000bp、好ましくは、300〜500bp程度である。
断片化した各DNA断片の両端から配列を決定する方法は、どのような方法であってもよく、当業者であれば容易に選択し得る。例えば、各断片の両端に、シークエンスを行うためのプライマーが結合する配列を含むアダプターDNA等を結合して、そのアダプター部分を利用して配列決定を行ってもよい。このように、各DNA断片の両端の配列が明かになることで、各断片のゲノム上の位置の特定が正確に行えるようになる。また、複数の個体由来のゲノムを混合して配列を決定する場合には、各個体に特有な配列をアダプター部分に含ませることで、配列決定を行った断片がいずれの個体に由来するかを同定することが可能となる。
各断片の両端からの配列決定は、例えば、フローセル(後述の実施例も参照のこと)と呼ばれるサンプルプレート上に、各DNA断片を、各々、2次元的に結合させてクラスター化し、その各クラスターに含まれる各断片の配列について、両端から配列決定を行ってもよい。各DNA断片のクラスター化は、例えば、アダプター配列と相補的なオリゴDNAを結合させ、そのDNAを介して、各DNA断片をサンプルプレート上に固定化し、その後、サンプルプレート上で各DNA断片を増幅させ、同一配列のDNAからなるクラスターを形成させることができる。この場合の、DNA断片の増幅法としては、例えば、固相増幅法(またはブリッジ増幅法:イルミナ株式会社の説明書等を参照;http://www.illuminakk.co.jp/document/pdf/techspotlight_sequencing-J.pdf)などを用いることにより実施することができる。また、各DNA断片は、同一のDNA断片から形成されるクラスターの位置情報(サンプルプレート上に設定されるX軸、Y軸の距離により決定される)を利用し、アダプターの情報と併せて識別することができる。
各DNA断片の両端から配列を決定するには、大量のDNA断片の配列を決定する必要が生じるので、例えば、次世代シーケンステクノロジーなどの手法により行うことが望ましい。次世代シーケンステクノロジーによる配列決定は、例えば、イルミナ社(Illumina, Inc.)などの解析会社に依頼して行うこともできる。
次に、配列決定の結果得られた配列データ(各DNA断片の両端から決定した配列データ)の中から、外来性DNAに特有な配列を含む配列を抽出する。ここで、「外来性DNAに特有な配列」とは、宿主生物のゲノム上には存在しない配列であって、外来性DNAに含まれる配列のことであり、好ましくは、挿入されている外来性DNAの両端付近の配列(例えば、いずれかの端から、0〜1,000ベース程度、0〜500ベース程度の領域に存在する配列)であって、ゲノムDNAの隣接領域付近に存在する配列が好ましい。そのような配列としては、例えば、外来性遺伝子などが挿入されている場合、外来性DNAそれ自体(例えば、コレラ毒素遺伝子が挿入されている場合には、コレラ毒素遺伝子それ自体)に由来する配列であってもよく、あるいは、外来性遺伝子などを挿入するために使用したベクター由来の配列(例えば、実施例で示す、LB-1〜LB-3、RB-1〜RB-4など)であってもよい。また、「外来性DNAに特有な配列」は、複数の配列を使用してもよい(例えば、実施例で示す、LB-1〜LB-3、RB-1〜RB-4)。
外来性DNAに特有な配列を抽出したのち、これらの配列とペアになる他の端(各DNA断片の両端のうち、外来性DNAに特有な配列を含む端と対をなす他の端)に関する配列情報を抽出する。次に、得られた配列(他の端の配列情報)からゲノムDNAに特有な配列を含む配列を抽出する。ゲノムDNAに特有な配列を抽出するには、例えば、得られた配列(外来性DNAに特有な配列を含む端と対をなす他の端の配列)の中から、「外来性DNAに特有な配列」と異なる外来性DNAの配列を参照配列としてマッピング(「外来性DNAに特有な配列」とは異なる外来性DNAの配列と相同性の高い配列部分に貼り付ける、又は、アライメントすること)する。マッピングされなかった配列群は、ゲノムDNAに特有な配列を含んでいるか、含んでいる可能性が高いと判断することができるため、ゲノムDNAに特有な配列を含む配列群として抽出する。マッピングは、例えば、BWA(Burrows-Wheeler Aligner)等のアライメントツールを用いて行うことができる。
上記のようにして抽出した、ゲノムDNAに特有な配列を含む配列群を、宿主生物のゲノム配列のデータベースに対して、相同性検索を行う。相同性検索の方法としては、例えば、BLAST検索などにより容易に行うことができる(例えば、NCBI BLAST;http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiなど)。抽出した配列群と相同性の高い(相同性が高いとは、例えば、比較した配列同士が、90〜100%以上、好ましくは、95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有すること)ゲノムDNA配列の位置を確認することで、外来性DNAが挿入されている位置を同定することができる。すなわち、〔0014〕で抽出したゲノムDNAに特有な配列を含む配列部分は、その他端には外来性DNAに特有な配列を含むゲノムDNA断片の一部である。そして、ゲノム断片の長さが数100bp程度であることを考慮すると、〔0014〕で抽出したゲノムDNAに特有な配列の近傍が外来性DNAの挿入されているゲノム上の位置であると判定することができる。
上記のようにして同定された外来性DNAのゲノム上の挿入位置は、推定される挿入位置を挟むようなプライマーペアを作製し、その部分を増幅し、増幅されたDNAの配列決定を行うことで、挿入位置の確認を行ってもよい。
本発明の方法により外来性DNAが挿入されているゲノムDNA上の位置が同定された後、挿入されている外来性DNAの構造を確認したり、外来性DNAが挿入されているゲノムDNA上の位置付近の構造変化の有無を確認することが可能となる。宿主生物のゲノムDNAに挿入された外来性DNAは、挿入前のDNA構造をそのまま保たずに、例えば、欠失、転移などの構造上の変化が生じていることもある。このような場合には、挿入された外来性DNAの宿主生物中における機能に影響が及ぶ場合もあるため、挿入されているDNAの構造を確認することは、非常に重要なことである。また、外来性DNAがゲノム上のどのような位置に挿入されているかにより、宿主生物の遺伝子への影響を予測することが可能となる(例えば、エキソン部分に挿入されている場合には、その遺伝子の機能が喪失あるいは破壊される可能性がある)。
ゲノムDNAへの導入部位付近を配列決定し、その結果に基づいて、挿入された外来性DNAの構造の変化、及び、外来性DNAが挿入されているゲノムDNAの構造を確認することができる。外来性DNAが挿入される前の宿主生物のゲノム構造は、利用可能なデータベースを使用することで容易に確認することができる。
以下に実施例を示し、本発明についてさらに詳細な説明を行うが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。本実施例は、イネを宿主として、コレラトキシンB(CTB:Cholera toxin B)鎖を発現するDNAを供与核酸(CTB-10Li45GB3A領域)としてイネ染色体上に導入し、その導入されている位置を本発明の方法により確認したものである。
1.コレラ毒素B鎖を発現する遺伝子導入イネの作製
1−1.RNAiカセット保有プラスミドpZAAMP-10Li45GB3Aの作製
RNAiカセット保有プラスミドpZAAMP-10Li45GB3Aは、以下の8段階を経て調製された。
(1)まず、バイナリーベクターpPZP202の遺伝子組込み領域(MCS)に制限酵素AsiSI、AscI、MluI、PacIの認識配列を組み込んだpZAAMP(pZ2028AAMP)、pUC19のMCSに制限酵素AscI及びMluIの認識配列を組み込んだpUC198AMの2種のプラスミドを作製した(Kurodaら、Biosci. Biotechnol. Biochem. 74, 2348?2351 2010)。
(2)イネゲノムDNAを鋳型として、10kDaプロラミンプロモーター(P10L)、10kDaプロラミンターミネーター(T10L)、イネアスパラギン酸プロテアーゼ遺伝子第3イントロン領域(RAPint)、13kDaプロラミン遺伝子45bp断片(45)、グルテリンB遺伝子228bp断片(GB3)をPCR増幅した。このうち、T10Lは、pUC198AMのMCSにサブクローニングしてpUC198AM-T10Lを作製した。RAPintは、pUC19のMCSにサブクローニングしてpUC19-RAPintを作製した。残りの3つは、pGEM-T-EasyプラスミドにTAクローニング法によってサブクローニングして、pGEM-T-Easy-P10L, pGEM-T-Easy-45、pGEM-T-Easy-GB3を作製した。
(3)部位指定変異導入法により、P10Lの内部に存在するEcoRI及びSpeI認識配列を改変して消去した。
(4)上記の改変を施したpGEM-T-Easy-P10LをHindIII及びXbaIで2重消化してP10L断片を切り出し、pUC198AM-T10LのMCSに組み込むことで、pUC198AM-P10LT10Lを作製した。
(5)pGEM-T-Easy-GB3をSpeI及びXbaIで2重消化してGB3断片を切り出し、pGEM-T-Easy-45の45bp断片末端に存在するXbaIサイトに組み込むことでpGEM-T-Easy-45GB3を作製した。
(6)pGEM-T-Easy-45GB3をSpeI及びXbaIで2重消化して45GB3断片を切り出し、pUC19-RAPintに存在するSpeIサイトに組み込むことでpUC19-RAPint45GB3を作製した。
(7)上記に続いて45GB3断片をpUC19-RAPint45GB3に存在するXbaIサイトに組み込むことでpUC19-RAPint45GB3x2を作製した。
(8)pUC19-RAPint45GB3x2をXbaI及びSacIで2重消化してRAPint45GB3x2部分からpUC19由来のSacIまでの断片を切り出し、pUC198AM-P10LT10Lに存在するXbaIおよびSacIサイトの間に組み込むことで、pUC198AM-10Li45GB3Aを作製した。
pUC198AM-10Li45GB3AをAscI及びMluIで2重消化して10Li45GB3A部分をMCSごと切り出し、pZAAMPに存在するAscI及びMluIサイトの間に組み込むことで、pZAAMP-10Li45GB3Aが完成した。
1−2.コレラトキシンB(CTB:Cholera toxin B)鎖発現カセット保有プラスミドpUC198AM-13110NTL-CTBの作製
1−2−1.プラスミドpUC198AM-13110NTLの作製
pUC198AM-13110NTLは、以下の5段階を経て調製された。
(1)まず、pUC19のMCSに制限酵素AscI及びMluIの認識配列を組み込んだプラスミドpUC198AMを作製した(Kurodaら、Biosci. Biotechnol. Biochem. 74, 2348?2351 2010)。また、PCR断片のサブクローニングには、pGEM-T-Easyプラスミド(Promega社)又はpUC19を使用した。
(2)イネゲノムDNAを鋳型として、13kDaプロラミンプロモーター(P131)、10kDaプロラミンシグナル配列領域(10N)、13kDaプロラミンターミネーター(T131L)の合計3種類の断片をPCR増幅した。全ての増幅断片はpGEM-T-EasyプラスミドにTAクローニング法によってサブクローニングして、pGEM-T-Easy-P131, pGEM-T-Easy-10N, pGEM-T-Easy-T131Lを作製した。
(3)pGEM-T-Easy-10NをSpeIおよびXbaIで2重消化して10N断片を切り出し、pGEM-T-Easy-P131に存在するXbaIサイトに組み込むことでpGEM-T-Easy-P13110Nを作製した。
(4)pGEM-T-Easy-P13110NをHindIIIおよびXbaIで2重消化してP13110N断片を切り出し、pUC198AMのMCSにサブクローニングしてpUC198AM-13110Nを作製した。
(5)pGEM-T-Easy-T131LをSacI及びEcoRIで2重消化してT131L断片を切り出し、pUC198AM-13110Nに存在するSacI及びEcoRIサイトの間に組み込むことでpUC198AM-13110NTLが完成した。
1−2−2.CTB発現カセット保有プラスミドpUC198AM-13110NTL-CTBの作製
pUC198AM-13110NTL-CTBは、以下の手順を経て調製された。
CTB遺伝子(配列番号1)の5’末端にXbaI認識配列及び3’末端にSacI認識配列を付加してある塩基配列で合成された人工合成遺伝子をXbaI及びSacIで2重消化して目的とするCTB遺伝子断片を切り出し、上記1−2−1で構築したプラスミド pUC198AM-13110NTLに存在するXbaI及びSacIサイトの間に組み込むことでpUC198AM-13110NTL-CTBが完成した。
1−3.供与核酸導入用プラスミドpZAAMP-CTB-10Li45GB3Aの作製
供与核酸導入用プラスミドpZAAMP-CTB-10Li45GB3Aは、以下の手順を経て調製された。
CTB発現カセット保有プラスミドpUC198AM-13110NTL-CTB をAscI及びMluIで2重消化して、目的とするCTB発現カセット断片を切り出し、RNAiカセット保有プラスミドpZAAMP-10Li45GB3Aに存在するAscIサイトに組み込むことでpZAAMP-CTB-10Li45GB3Aが完成した。
1−4.HPT遺伝子導入用プラスミドpZH2Bの作製
1−4−1.HPT遺伝子導入用プラスミドpZH2B
pZH2Bは、以下の6段階を経て調製された。
(1)pLAN101プラスミド又はpBI221プラスミドを鋳型として、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(P35S)、ハイグロイマイシンホスホトランスフェラーゼN末端領域(HPTN)、同C末端領域(HPTC)、ノパリンシンターゼターミネーター(Tnos)の合計4種類の断片をPCR増幅した。カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの増幅に使用するプライマーには、制限酵素部位MluI及びSalIを両端に付加してある。ハイグロイマイシンホスホトランスフェラーゼN末端領域の増幅に使用するプライマーには、制限酵素部位XhoI及びBspHI、同C末端領域の増幅に使用するプライマーには、制限酵素部位NcoI及びXbaIを両端に付加してある。ノパリンシンターゼターミネーターの増幅に使用するプライマーには、制限酵素部位SpeI及びAscIを両端に付加されている。
全ての増幅断片はpGEM-T-EasyプラスミドにTAクローニング法によってサブクローニングして、pGEM-T-Easy-P35S、pGEM-T-Easy-HPTN、pGEM-T-Easy-HPTC、pGEM-T-Easy-Tnosを作製した。
(2)部位指定変異導入法により、HPTNの内部に存在するEcoRIおよびPstI認識配列を改変して消去し、pGEM-T-Easy-mHPTNを作製した。
(3)pGEM-T-Easy-P35SをSalIで消化して、pGEM-T-Easy由来のSalIサイトからP35Sにかけての断片を切り出し、pGEM-T-Easy-mHPTNに存在するXhoIサイトに組み込んでpGEM-T-Easy-35SmHPTNを作製した。この過程で、切り出したpGEM-T-Easy由来のSalIサイトおよびP35S断片末端のSalIサイトとmHPTN断片先端のXhoIサイトは連結されることにより消滅し、35SmHPTN断片が生成する。
(4)pGEM-T-Easy-TnosをSpeIで消化してTnosからpGEM-T-Easy由来 のSpeIサイトにかけての断片を切り出し、pGEM-T-Easy-HPTCに存在するXbaIサイトに組み込んでpGEM-T-Easy-HPTCTnosを作製した。この過程で、切り出したpGEM-T-Easy 由来のSpeIサイト及びTnos断片先端のSpeIサイトとmHPTC断片末端のXbaIサイトは連結されることにより消滅し、HPTCTnos断片が生成する。
(5)pGEM-T-Easy-35SmHPTNをNcoI及びBspHIで2重消化してpGEM-T-Easy由来 のNcoIサイトから35SmHPTNにかけての断片を切り出し、pGEM-T-Easy-HPTCTnosに存在するNcoIサイトに組み込んで、pGEM-T-Easy-P35SmHPTTnosを作製した。この過程で、切り出した35SmHPTN断片末端のBspHI サイトとHPTCTnos断片先端のNcoIサイトは連結されることにより消滅し、P35SmHPTTnos断片が生成する。また、mHPTのN末端領域とC末端領域が連結されて完全長のmHPT遺伝子が生成するが、連結に使用したBspHI サイトとNcoIサイトの塩基配列に依存して、118番目のアラニンはバリンに変異する。この部分はハイグロマイシンを分解する酵素活性には関係ないと推定され、実際に、イネにハイグロマイシン耐性形質は付与されていた。
(6)pGEM-T-Easy-P35SmHPTTnosをMluIおよびAscIで2重消化してP35SmHPTTnos断片を切り出し、pZ2028に存在するAscIサイトに組み込むことでpZH2Bを完成させた。この過程で、切り出した35SmHPTTnos断片先端のMluIサイトとpZ2028のAscIサイトは連結されることにより消滅するが、一方で35SmHPTTnos断片末端のAscIサイトはそのまま残る。結果として、pZH2Bにおいて 35SmHPTTnos断片は切り出せなくなり、pZ2028由来のMCSはAscIからPacIまで全て温存される。
1−5.イネへの遺伝子導入
コレラトキシンB鎖発現組換えイネ(#51A)は、以下の7段階を経て調製された。
(1)供与核酸導入用プラスミドpZAAMP-CTB-10Li45GB3A及びHPT遺伝子導入用プラスミドpZH2B、各々、20 ngを0.2 cmキュベットを用いて200 Ω・25 μF・2.5 kvの電気パルスをかけることによりRhizobium radiobacter EHA101株に導入した(エレクトロポレーション法)。
(2)100 μg/mlスペクチノマイシン・50 μg/mlカナマイシン含有LB寒天培地に(1)の組換えEHA101株2種類を独立に塗抹・培養し、25℃ 2-3日間培養することでシングルコロニーを形成させた。
(3)次に、アグロバクテリウムを介したイネへの形質転換をToki(The Plant Journal. 47,969-76 2006)の方法に従い行った。日本晴イネ種子を70%エタノールと次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度2.5%)で無菌化し、オーキシン(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)を含んだN6D培地に置床し、28℃明所で約6週間培養することで胚盤からカルスを誘導・脱分化させた。
(4)pZAAMP-CTB-10Li45GB3Aを導入したアグロバクテリウム菌液を最終濃度OD=0.05、pZH2Bを導入したアグロバクテリウム菌液を最終濃度OD=0.01となるようAAM培地に懸濁した。2種類のアグロバクテリウム混合菌液に10 μg/mlアセトシリンゴンを添加し、2分間カルスに接種した後に10 μg/mlアセトシリンゴンを含んだ2N6AS培地に置床した後、25℃暗所で2日間培養することで感染処理を行った。
(5)続いて、カルスを滅菌蒸留水30 mlで10回程度洗浄した後に500 μg/mlカルベニシリン溶液中に静置することでアグロバクテリウムを除菌し、200 μg/mlカルベニシリン・50 μg/mlハイグロマイシンを含んだN6D培地(オーキシン・サイトカイニンを含む)に置床し、28℃明所で2週間培養した。その後、100 μg/mlカルベニシリン・50 μg/mlハイグロマイシンを含んだMS培地(オーキシン・サイトカイニンを含む)に置床し、28℃明所で4-5週間培養することでカルスの選抜と再分化植物の育成を行った。さらに、ホルモン(オーキシン・サイトカイニン)を含まない1/2MS培地(選抜薬剤50 μg/mlハイグロマイシンを含む)に置床し、28℃明所で1-2週間培養することでさらに根を伸長させた。
(6)再分化植物を選抜し、CTB遺伝子及びHPT遺伝子のイネゲノムへの挿入をPCRにより確認した。
(7)CTB遺伝子及びHPT遺伝子の双方の挿入が認められた形質転換初代(T0個体)の幼植物体を培養土で充填したポットに移植し、グロースチャンバー(明期27℃ 12時間・暗期22℃ 12時間)で約3ヶ月栽培した。
以上の工程により、CTB遺伝子およびHPT遺伝子が染色体に導入されたイネ(#51A系統)を作出した。次に、自殖した後代(第1世代〜第6世代)は、CTB遺伝子が挿入され、かつ、HPT遺伝子が挿入されていない個体を、PCRにより選択した。その結果、本組換えイネ(#51A)は再分化個体(T0個体)のみでHPT遺伝子の導入が認められ、その後の自殖により遺伝分離した後代(第1世代〜第6世代)においてはHPT遺伝子が導入されていないことが確認されている。
2.供与核酸の染色体DNAへの組込み状態の解析
2−1.CTB遺伝子の存在状態
CTB遺伝子の導入確認はCTB遺伝子全長を対象としたPCR及びサザンブロット解析にて確認した。
本組換えイネ(#51A)第6世代のイネ幼若葉2 gを細かく刻み、Nucleon PhytoPure(GE Healthcare)を用いてゲノムDNAの抽出を行った。
2−1−1.PCR
得られた本組換えイネ(#51A)ゲノムDNA 25 ngを鋳型に、プライマーセットCTB-F、CTB-Rを用いてPCRを行った。PCR反応はGeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems)を使用し、増幅は94℃ 30秒・60℃ 30秒・72℃ 30秒を35サイクル行い、2.0% Agarose gelにて100 V、25分間電気泳動し、PCR産物の有無を確認した。
CTB遺伝子検出用プライマー
CTB-F:5’-ACACCTCAACAGATTACTGA-3’(配列番号2)
CTB-R:5’-TCAATTTGCCATACTAATTGCG-3 (配列番号3)
増幅断片長:312bp
2−1−2.サザンブロット解析
得られた本組換えイネ(#51A)ゲノムDNA 20 μgを用いてゲノミックサザンハイブリダイゼーションを行った。イネゲノムDNAを制限酵素EcoRI及びSacIにより37℃ にて一晩消化処理した。処理したゲノムDNAをフェノール・クロロホルム法で精製した後に0.7% Agarose gelにて100 V 3.5時間電気泳動し、10×SSCを用いて一晩静置することでゲノムDNAをニトロセルロースメンブレンに転写させた。転写完了後、UV Cross Linker(トミー精工)を用いてメンブレンにUV照射し、制限酵素消化されたゲノムDNAをメンブレンに固定した。次に、検出用プローブをAlkPhos Direct Labelling Module(GE Healthcare)を用いてAP標識し、55℃にて一晩ハイブリダイゼーションした。翌日、CDP-Star検出試薬(GE Healthcare)による化学発光にて検出を行った。ImageQuant LAS 4000mini(GE Healthcare)システムを用い、露光時間1時間の画像の取り込みを行った。
CTB遺伝子検出用プローブ作成プライマー
CTB-F:5’-ACACCTCAACAGATTACTGA-3’(配列番号2)
CTB-R:5’-TCAATTTGCCATACTAATTGCG-3 (配列番号3)
プローブ長:312bp
PCRおよびサザンブロット解析結果を図1に示す。
図1Aから分かるように、本組換えイネ(#51A)はそのゲノムにCTB遺伝子が挿入されたため、第6世代のゲノムDNAを鋳型としたPCRを実施し、CTB遺伝子検出用プライマーによってその遺伝子(図1の矢印の位置に見えるバンド;312bp)が増幅された。一方、非組換えイネの日本晴はCTB遺伝子を持たないため、その遺伝子が検出されなかった。本結果より、種子バンクに相当する組換えイネ(#51A)第6世代においてイネゲノムへのCTB遺伝子の導入が確認された。
また、図1Bが示すように、本組換えイネ(#51A)はそのゲノムにCTB遺伝子が挿入されたため、第6世代のゲノムDNAを試料としたサザンブロット解析を行った場合、CTB遺伝子検出用プローブによって矢印の位置に見える3本のバンドが検出された。一方、非組換えイネの日本晴はCTB遺伝子を持たないため、CTB遺伝子検出用プローブによってバンドが検出されなかった。本結果より、種子バンクに相当する組換えイネ(#51A)第6世代においてイネゲノムへのCTB遺伝子の導入が3コピーであることが確認された。
3.染色体導入部位の確認
3−1.シークエンスデータの取得
本組換えイネ(#51A)第6世代のイネ幼若葉2 gを細かく刻み、Nucleon PhytoPure(GE Healthcare社)を用いてゲノムDNAの抽出を行った。抽出したゲノムDNA(約1.0μg)を超音波破砕装置(Covaris社)で断片化した。切断したDNAの両端を平滑化及びリン酸化し、3’dAの突出とインデックスアダプターを接続した。250-500bp(インデックスアダプター配列は除く)のDNA断片をアガロースゲル電気泳動により選択し、PCR増幅(約10サイクル)を行ってシークエンスライブラリーを調製した。
イルミナ社の次世代シークエンサー(HiSeq2000シークエンサー;イルミナ社)により配列決定を行うため、cBot clustering system(イルミナ社)を用いて、インデックスアダプターを付加したDNA断片を、フローセルとよばれるスライドガラス上に、インデックスアダプター配列を相補的なDNA断片を介して固定化し、同一配列のDNA断片の集団であるクラスターを形成させた。DNAの配列決定は、Illumina HisEsq2000 system(イルミナ社)を使用して行った。シークエンシングの結果得られたペア−リード(両端のインデックスアダプター配列から読んだ2つの配列情報)は、CASAVA software(v1.13.48; イルミナ社)を用いて取得した。
3−2.導入部位の同定
DNA断片の挿入位置を明かにするために、まず、ゲノム配列と挿入DNAに特有な配列の両方を含む、DNA断片を同定した。遺伝子導入のために設計したT-DNAベクター中に存在する以下に示すLB及びRB領域の近くに位置するLB-1〜LB-3及びRB-1〜RB-4の7つの配列を、挿入DNA断片に特有な配列として使用した(図2)。
LB付近
LB-1(90塩基)
ACAAATTGACGCTTAGACAACTTAATAACACATTGCGGACGTTTTTAATGTACTGAATTAACGCCGAATTGCTCTAGCATTCGCCATTCA(配列番号4)
LB-2(90塩基)
GGCTGCGCAACTGTTGGGAAGGGCGATCGGTGCGGGCCTCTTCGCTATTACGCCAGCTGGCGAAAGGGGGATGTGCTGCAAGGCGATTAA(配列番号5)
LB-3(89塩基)
GTTGGGTAACGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGACGTTGTAAAACGACGGCCAGTGCCAAGCTGGCGATCGCTTTGGCGCGCCAAGCTTTT(配列番号6)

RB付近
RB-1(80塩基)
GAATTCACGCGTTTTAATTAACCAATTCGTAATCATGGTCATAGCTGTTTCCTGTGTGAAATTGTTATCCGCTCACAATT(配列番号7)
RB-2(80塩基)
CCACACAACATACGAGCCGGAAGCATAAAGTGTAAAGCCTGGGGTGCCTAATGAGTGAGCTAACTCACATTAATTGCGTT(配列番号8)
RB-3(80塩基)
GCGCTCACTGCCCGCTTTCCAGTCGGGAAACCTGTCGTGCCAGCTGCATTAATGAATCGGCCAACGCGCGGGGAGAGGCG(配列番号9)
RB-4(67塩基)
GTTTGCGTATTGGAGCTTGAGCTTGGATCAGATTGTCGTTTCCCGCCTTCAGTTTAAACTATCAGTG(配列番号10)
挿入DNA断片を含むゲノムを断片化した、全ての断片の両端からそれぞれ約100bpの塩基配列の配列情報(リード)を、シークエンスにより取得した。上記7種(LB-1〜RB-4)の断片配列がいずれかの端の配列に含まれているリードを、シークエンスデータから抽出した。また、抽出したすべてのリードのインデックスアダプター配列情報を元に、そのインデックスアダプターとペアとなっているインデックスアダプターが結合している、反対側の端のリードを抽出した(図3)。
抽出した配列情報(リード)群を、上記LB-1〜LB-3及びRB-1〜RB-4以外の挿入配列をリファレンスとしてマッピング(リファレンスと相同性が高い配列をその部分に貼り付けること)すると、マッピングされない配列群が得られた。マッピングされなかった配列群は、リファレンス外すなわちゲノムの配列を含んでいる可能性が高い。このマッピングされなかった配列群をイネゲノムBLAST検索(Oryza sativa (rice) Nucleotide BLAST;https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE_TYPE=BlastSearch&BLAST_SPEC=OGP__4530__9512)にかけると、イネゲノムのうち、3番染色体及び12番染色体のそれぞれ特定の位置(イネ3番染色体AP008209の24,697,53bp付近、およびイネ12番染色体NC_008405の7,164,931bp付近)に相同性が高い配列群であることが判明した。
本組換えイネゲノムを鋳型とし、3番染色体及び12番染色体の導入推定場所を挟むように設計したプライマー及び挿入配列の中で特異性の高い部分に設計した下記の表に示すプライマーセットを用いPCRし、増幅産物のDNAゲル抽出を行った後にTOPO TA Cloning Vector(Invitrogen)にクローニングした。下記のプライ−マーの位置は、図2に示す。
その後シークエンス確認をおこない、ゲノムへの導入部位を確認した。得られたシークエンスに導入推定場所が含まれるか否かは、NCBI BLASTのBLAST Assembled RefSeq Genomes(Oryza sativa)もしくはBasic BLAST(nucleotide blast)による検索で実施した。
3番染色体AP008209及び12番染色体NC_008405への挿入位置についてはNCBI BLASTのBLAST Assembled RefSeq Genomes(Oryza sativa)で検索することで確認した。
供与核酸の挿入に伴い、挿入位置近傍の機能を有する遺伝子が破壊されるか否かをNCBIのBLASTで検索することにより確認した。
本組換えイネ(#51A)における供与核酸のイネ3番染色体導入部位について解析した結果を図4に示す。ゲノムへの導入部位をシークエンス確認した結果、本組換えイネ(#51A)において、導入した供与核酸は、イネ3番染色体AP008209の24,697,531に挿入されたことが明らかとなった。なお、供与核酸の挿入に伴い、イネ3番染色体AP008209のゲノムDNA 18bp(24,697,513-24,697,530:GATGTCAAGCTCCTCTAT)(配列番号11)が欠失している。2012年9月19日に登録された最新のゲノム情報により、挿入部位上流に登録されている遺伝子Os03g0627500(24,685,816-24,694,363)の3’末端は、挿入部位24,697,531から3,168bp離れており、図4から分かるように、Os03g0627500のエキソン間には挿入されていない。なお、Os03g0627500はhypothetical proteinと登録されており、明らかな機能が同定されている翻訳領域ではない。また、挿入部位はOs03g0627500の下流に位置しているため、Os03g0627500のプロモーター領域および翻訳開始点には関与していない。並びに、挿入部位下流に登録されている遺伝子Os03g0628800(24,749,451-24,757,823)の5’末端は、挿入部位24,697,531から51,920bp離れており、挿入部位近傍がOs03g0628800のプロモーター領域とは考えにくく、図4から分かるように、挿入部位はOs03g0628800のエキソン間には挿入されていない。なお、Os03g0628800はhypothetical proteinと登録されており、明らかな機能が同定されている翻訳領域ではない。また、Os03g0628800の翻訳開始点はイネ3番染色体AP008209の24,749,575-24,749,577であるため、挿入部位はOs03g0628800の翻訳開始点には関与していない。
以上のことから、挿入部位近傍に登録されている遺伝子を調べたところ、供与核酸の挿入により機能を有する遺伝子の破壊は認められなかった。
本組換えイネ(#51A)における供与核酸のイネ12番染色体導入部位について解析した結果を図5に示す。
ゲノムへの導入部位をシークエンス確認した結果、本組換えイネ(#51A)において、導入した供与核酸は、イネ12番染色体NC_008405の7,164,931に挿入されたことが明らかとなった。なお、供与核酸の挿入に伴い、イネ12番染色体AP008218のゲノムDNA 150bp(7,164,932-7,165,081: CCCACTTAGCTAGCTTGCAATTGAGATCTTGCAGAGAATTGTGAAGATCTAGAGCTATAGCCATGGCTCTGCAAGTGCAAGGCCTTGTGGACTGGAGGGGAAGACCGGTTGATCCCAGGAGGCATGGTGGTCTGAAGGCAGTAATGTTCA)(配列番号12)が欠失していた。
挿入部位に登録されているOs12g231000(7,164,860-7,170,071)の遺伝子情報は、The Rice Annotation Database Projectにより2008年に最新版が更新され、2010年6月8日にGenbankに登録されている( NM_001072977.1)。2013年10月29日現在、イネにおける本遺伝子の機能および制御を解明した文献は該当しない。遺伝子配列相同性検索より、Os12g231000がコードするタンパク質にはPeptide transporter (PTR) 2ファミリーに該当するドメインが保存されて存在している。シロイヌナズナにおいて、同一ファミリーに属するタンパク質AtPTR2の発現・機能が研究されており、広範囲の植物組織で遺伝子発現が見られ、多種類のジペプチドを細胞膜内外に輸送する働きをすることが知られている。
図5から分かるように、供与核酸は12番染色体においてOs12g231000遺伝子の翻訳領域を分断しておらず、そのプロモーター領域に挿入されている。FASTA解析により挿入部位を確認したところ、導入配列はプロモーター領域の上流域に位置しており、転写複合体形成にはほぼ影響しない部位であると想定された。
3−3.PCRによる確認
本組換えイネ(#51A) 3番染色体及び12番染色体への供与核酸の導入を再度確認するため、各染色体の導入部位に特異的なプライマーを設計した。得られた本組換えイネ(#51A)ゲノムDNA 25 ngを鋳型に、プライマーセットch3 51A-F1・ch3 51A-R1およびプライマーセットch12 51A-F1・ch12 51A-R1を用いてPCRを行った。PCR反応はGeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems)を使用し、増幅は94℃ 30秒・60℃ 30秒・72℃ 1分を35サイクル行い、2.0%Agarose gelにて100 V 25分電気泳動し、PCR産物の有無を確認した。
3番染色体導入確認用プライマー
ch3 51A-F1:5’-GGCCAGCTGCACAACCCTCA-3’(配列番号13)
ch3 51A-R1:5’-TCCAGGCACTTCCCTGCTGT-3’(配列番号14)
増幅断片長:945bp
Ch3 51A-F1とch3 51A-R1はイネゲノムDNA配列の相補鎖として設計したプライマーである。
12番染色体導入確認用プライマー
ch12 51A-F1:5’- GGAGTCAAGACTGCGACACA-3’(配列番号15)
ch12 51A-R1:5’-CATTGTGCCATGCAGGTAGC-3’(配列番号16)
増幅断片長:900bp
Ch12 51A-F1とch12 51A-R1はイネゲノムDNA配列の相補鎖として設計したプライマーである。
さらに、以下のプライマーも使用した。
131out2:5’-CTTTCTTTTGAACTGAACGGG-3’ (配列番号17)
10TLseq5B:5’-AGTGGGTAGTGGTTACTAGT-3’ (配列番号18)
RAP-R:5’-TGTCAATGCATCCAAGTAAAC-3’ (配列番号19)
131out2は、CTB発現カセットの13kDaプロラミンプロモーター(1256bp)上の1118から1138bpの配列の相補鎖として設計したプライマーである。
10TLseq5Bは、RNAiカセットの10kDaプロラミンターミネーター(643bp)上の532から552bpの配列で設計したプライマーである。
RAP-Rは、RNAiカセットのRAPイントロン(995bp)上の898から918bpの配列の相補鎖としてで設計したプライマーである。
PCRの結果を図6Aに示す。
図6Aから分かるように、3番染色体導入確認用プライマーch3 51A-F1・ch3 51A-R1の組み合わせによるPCRでは、非組換えイネの日本晴を鋳型とした場合、想定される945bpのバンドが増幅されたのに対し、本組換えイネ(#51A)では、目的バンドが増幅されてこない。これはイネ3番染色体AP008209・24,697,531bpに供与核酸が挿入されることにより、増幅長である945bpから大きくなるためと考えられた。
一方で、3番染色体導入確認用プライマーch3 51A-F1・131out2、又は10TLseq5B・ch3 51A-R1を組み合わせたPCRでは、非組換えイネの日本晴は供与核酸を持たないため増幅されてこない。これに対し、本組換えイネ(#51A)では、いずれのプライマーの組み合わせにおいてもTAIL-PCRにより確認した供与核酸の3番染色体導入部位から計算される560bp、および1201bpのサイズに該当するバンドを検出することができた。
従って、本組換えイネ(#51A)第6世代においてイネ3番染色体AP008209・24,697,531に、供与核酸が導入されていることが確認できた。
また、図6Bから分かるように、12番染色体導入確認用プライマーch12 51A-F1・ch12 51A-R1の組み合わせによるPCRでは、非組換えイネの日本晴を鋳型とした場合、想定される900bpのバンドが増幅されたのに対し、本組換えイネ(#51A)では、目的バンドが増幅されてこない。これはイネ12番染色体・NC_008405・7,164,931bpに供与核酸が挿入されることにより、増幅長である900bpから大きくなるためと考えられた。
一方で、12番染色体導入確認用プライマーch12 51A-F1・131out2、またはRAP-R・ch12 51A-R1を組み合わせたPCRでは、非組換えイネの日本晴は供与核酸を持たないため増幅されてこない。これに対し、本組換えイネ(#51A)では、いずれのプライマーの組み合わせにおいてもTAIL-PCRにより確認した供与核酸の12番染色体導入部位から計算される339bp、および757bpのサイズに該当するバンドを検出することができた。
従って、本組換えイネ(#51A)第6世代においてイネ12番染色体NC_008405・7,164,931に、供与核酸が導入されていることが確認できた。
4.染色体導入配列の確認(PCR産物の配列確認)
イネ3番染色体およびイネ12番染色体に挿入された供与核酸の塩基配列全長について、次のような条件にて行ったPCR産物の配列確認を行うことで評価した。
4−1.PCR
本組換えイネ(#51A)第6世代(種子バンクに相当)のイネ幼若葉2 gを細かく刻み、Nucleon PhytoPure(GE Healthcare)を用いてゲノムDNAの抽出を行った。
イネ3番染色体の配列確認
得られた本組換えイネ(#51A)ゲノムDNA 500 ngを鋳型に、TaKaRa LA Taq HS(タカラバイオ)を用いてプライマーセットch3 51A-F1・51A LongPCR-Rおよび51A LongPCR-F・ch3 51A-R1の組み合わせでPCRを行った。増幅は98℃ 10秒・60℃ 30秒・72℃ 7分を35サイクル行った。
イネ12番染色体の配列確認
得られた本組換えイネ(#51A)ゲノムDNA 500 ngを鋳型に、TaKaRa LA Taq HS(タカラバイオ)を用いてプライマーセットch12 51A-F1・CTB-RおよびCTB-F・ch12 51A-R1の組み合わせでPCRを行った。増幅は98℃ 10秒・60℃ 30秒・72℃ 4分30秒を35サイクル行った。
得られたPCR Productを0.7%Aarose gelにて100 V 25分電気泳動を行い、増幅されたバンドをゲルから切り出し、DNAゲル抽出を行った後にTOPO TA Cloning Vector(Invitrogen)にクローニングした。
4−2.シークエンス解析
プラスミドを精製し、TOPO TA Cloning Vector上に設計したT3 プライマーおよびT7プライマー、ならびに内部に設計したシークエンス用プライマー15種類を用いて塩基配列確認を行った。
シークエンスに使用したプライマーを下記の表に示す。
4−3.3番染色体への導入配列と設計上の構造との違い
実際の構造(供与核酸)と設計上の構造では、図7で示した点線で囲まれた3ヶ所において、異なる構造となっていた。なお、3番染色体には、2コピーの供与核酸がタンデムに挿入されていた。
(1)LB 25bpのうち、5’側の9bp(GGTGGCAGG)が欠失している。
(2)RB 25bpとその上流領域43bp、LB 25bpとその下流領域13bp、合わせて106bpが欠失している。
(3)RB 25bpのうち、3’側の20bp(CAGGATATATTGGCGGGTAA)(配列番号48)が欠失している。
4−4.12番染色体への導入配列と設計上の構造との違い
実際の構造(供与核酸)と設計上の構造では、図8で示した点線で囲まれた2ヶ所において、異なる構造となっていた。
(1)LB 25bpその下流領域96bp、合わせて121bpが欠失している。
(2)RNAiカセットの13kDa プロラミン45bp 部分配列、グルテリンB1 228bp部分配列、RAPイントロン5’側の一部、10kDaプロラミンターミネーターを含んだ1018bp、RB 25bpとその上流領域326bp、合わせて1344bpが欠失している。
5.TAIL-PCRによる挿入部位の確認
外来性DNAのゲノム中の挿入位置は、従来はTIAL-PCR法(非特許文献1)によって確認されていた。そこで、本発明の方法によって明かになった、3番染色体と12番染色体の挿入位置について、TAIL-PCR法を用いて確認を行った(Liu et al., Genomics 25:674-681 1995)。
PCR反応には以下のプライマーを使用した。
Random 1:5’-NGTCGASWGANAWGAA-3’(配列番号39)
Random 2:5’-GTNCGASWCANAWGTT-3’(配列番号40)
Random 3:5’-WGTGNAGWANCANAGA-3’(配列番号41)
TAILF 1:5’-TGTTATCCGCTCACAATTCCAC-3’(配列番号42)
TAILF 2:5’-CCAGCTGCATTAATGAATCGG-3’(配列番号43)
TAILF 3:5’-AGAGGCGGTTTGCGTATTGGAG-3’(配列番号44)
TAILR 1:5’-CTGGGAAAACCCTGGCGTTA-3’(配列番号45)
TAILR 2:5’-GCCAGCTGGCGTTAATAGCGA-3’(配列番号46)
TAILR 3:5’-GAATGCTAGAGCAATTCGGCG-3’(配列番号47)
TAILF 1-3とTAILR 1-3は、各々、T-DNAのRBおよびLB近接領域を増幅するために使用した(図9B参照)。また、Random 1-3は、degenerateプライマーで、ゲノム配列にアニールするプライマーとして使用した。TAIL-PCRは、20μlの反応液で、TaKaRa LA Taq Hot Start Version(TaKaRa Bio社)とVeriti Thermal Cycler(Applied Biosystems社)を使用して行った。TAIL-PCRによる反応産物は、Wizard SV GelおよびPCR Clean-Up System(Promega社)を使用して精製し、それをpCR4 TOPTプラスミド(Invitrogen Life Technologies社)にクローニングし、シークエンスで配列の確認を行った。
その結果、3番染色体における挿入位置は、TAIL-PCR法によっても確認することができた(図9)。図9Aにおいて、矢頭で示しているバンドが、LBと3番染色体の隣接領域を含む増幅断片、RBと3番染色体の隣接領域を含む増幅断片である。
他方、12番染色体領域に相当する断片は増幅されてこなかったことから、TAIL-PCR法では、12番染色体における挿入DNAの存在を確認することができなかった。これは、12番染色体への導入遺伝子の3’側の一部が1,000bp以上欠損して導入されていたため、TAIL-PCRが走らなかったものと考えられる。しかしこの事実が未知の場合、TAIL-PCRによって導入部位を予測することは不可能である。このことから、本発明の方法によれば、従来法であるTAIL-PCR法では確認することができないような外来性DNAの挿入位置を、正確に特定することができることが示された。
本発明は、任意の生物ゲノム中に挿入されたDNAの位置及び構造等を正確に確認する方法に関するものである。遺伝子を導入した生物や植物において、挿入遺伝子の位置を正確に把握しておくことは、遺伝子組換え作物や動物の管理上重要なことであるため、本発明は、動植物の育種の分野などにおいて、有用な技術を提供する。

Claims (4)

  1. 以下の(a)〜()の工程を含む、外来性DNAが挿入されたゲノムDNA上における、該外来性DNAの挿入位置を決定する方法であって、該外来性DNAの両端がベクター由来の配列である、前記方法
    (a)断片化した全ゲノムDNAの各断片の両端から配列を決定する工程、
    (b)工程(a)で決定された配列から、前記外来性DNAの両端付近に存在するベクター由来の配列を抽出する工程、
    (c)工程(b)で抽出した配列群に含まれる各配列とペアになる他端の配列を抽出する工程、
    (d)工程(c)で抽出した配列群を、外来性DNA配列であって、上記(b)の「ベクター由来の配列」とは異なる配列に対してマッピングし、マッピングされなかった配列を抽出する工程、
    (e)工程(d)で抽出した配列群をゲノムDNA配列に対して相同性検索を行い、該抽出した配列群の配列と相同性のあるゲノムDNA配列上の位置を特定する工程
  2. 前記工程(b)のベクター由来の配列が、外来性DNAのいずれかの端から、0〜1,000ベースの位置に存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 同定された前記外来性DNAの挿入位置を、さらに、PCR法により確認することを含む請求項1又は2に記載の方法。
  4. 請求項3に記載のPCR法により得られた結果に基づいて、挿入された外来性DNAの構造を決定する方法。
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