「a」および「an」という冠詞は、本明細書において、1つまたは複数の(すなわち、少なくとも1つの)、その冠詞の文法上の目的語を表すのに使用される。例えば、「要素(an element)」は、1つまたは複数の要素を意味する。
「約」は、物理量(quantity)、レベル、値、数、頻度、比率、寸法、サイズ、量(amount)、重量または長さが、参照物理量、参照レベル、参照値、参照数、参照頻度、参照比率、参照寸法、参照サイズ、参照量、参照重量または参照長さに対して、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%程度変動することを意味する。
「生物学的に活性な断片」という用語は、参照または全長ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の断片に対して適用される場合、参照配列の活性の少なくとも約0.1、0.5、1、2、5、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99%を有する断片を表す。参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの活性を含むまたはコードする少なくとも約18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1,000、1,500、2,000ヌクレオチドまたは残基長のものを含む生物学的に活性な断片が、本発明の範囲に包含される。代表的な生物学的に活性な断片は、概して、相互作用、例えば分子内または分子間相互作用に関与するものである。分子間相互作用は、特異的結合性の相互作用または酵素的相互作用であり得る(例えば、相互作用は一過的なものであり得、共有結合が形成または破壊される)。全長ポリペプチドの生物学的に活性な断片には、(推定)全長ポリペプチドのアミノ酸配列に十分類似するまたはその配列由来のアミノ酸配列を含み得るペプチドが含まれる。典型的には、生物学的に活性な断片は、全長ポリペプチドの少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフを含む。好適には、生物学的に活性な断片は、その由来となった全長ポリペプチドの活性の約1%、10%、25%、50%以上を有する。
「コード配列」は、遺伝子のポリペプチド産物に関する暗号を提供する任意の核酸配列を意味する。これに対して、「非コード配列」という用語は、遺伝子のポリペプチド産物に関する暗号を提供しない任意の核酸配列を表す。
本明細書を通じて、文脈がそれ以外のことを要求しない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」という単語は、言及されている工程または要素または工程もしくは要素のグループを内包するが任意のその他の工程または要素または工程もしくは要素のグループを排除しないことを意味することが理解されるであろう。したがって、これらの「含む(comprising)」等の用語の使用は、列挙されている要素が必要とされるまたは必須であるが、その他の要素は任意であり、存在する場合も存在しない場合もあることを示す。「からなる」は、その「からなる」というフレーズの前に示されるものを内包しかつそれらに限定されることを意味する。したがって、「からなる」というフレーズは、列挙されている要素が必要とされるまたは必須であり、かつそれ以外の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる」は、そのフレーズの前に列挙される任意の要素を内包し、かつその列挙されている要素に関して本開示において特定されている活性または作用に干渉しないまたはそれらに寄与しないその他の要素に限定されることを意味する。したがって、「から本質的になる」というフレーズは、列挙されている要素が必要とされるまたは必須であるが、その他の要素は任意であり、それらが列挙されている要素の活性または作用に影響するかどうかに依存して存在する場合と存在しない場合があることを示す。
「相補的」および「相補性」という用語は、塩基対の法則により関連付けられるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を表す。例えば、「A-G-T」という配列は、「T-C-A」という配列に対して相補的である。相補性は、その核酸の塩基の一部のみが塩基対の法則にしたがいマッチする「部分的」なものであり得る。また、核酸間には「完全」または「全体的」な相補性も存在し得る。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に有意な影響を有する。
「対応する」は、(a)ポリヌクレオチドが、参照ポリヌクレオチド配列のすべてもしくは一部と実質的に同一であるもしくは相補的であるヌクレオチド配列を有することまたはペプチドもしくはタンパク質のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列をコードすること;または(b)ペプチドもしくはポリペプチドが、参照ペプチドもしくはタンパク質のアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を有すること、を意味する。
「遺伝子」は、染色体上の特定遺伝子座を占有し、転写および/もしくは翻訳調節配列ならびに/またはコード領域ならびに/または非翻訳配列(すなわち、イントロン、5'および3'非翻訳配列)からなる遺伝の単位を意味する。
「相同性」は、同一であるまたは保存的置換を構成する核酸またはアミノ酸の数の比率を表す。相同性は、配列比較プログラム、例えば参照により本明細書に組み入れられるGAP(Devereux et al., 1984)を用いて決定され得る。この方法において、本明細書に示されているのと類似または実質的に異なる長さの配列は、アラインメントにギャップを、例えば、例えばGAPで使用される比較アルゴリズムにより決定されたギャップを挿入して比較され得る。
「宿主細胞」という用語には、本発明の任意の組換えベクターまたは単離されたポリヌクレオチドのレシピエントであり得るまたはあった個々の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれ、その子孫は、自然発生的な、偶発的なまたは意図的な変異および/または変化により必ずしも元の親細胞と(形態またはDNA全体の相補性に関して)完全に同一でないかもしれない。宿主細胞には、インビボまたはインビトロで本発明の組換えベクターまたはポリヌクレオチドによってトランスフェクトされたまたはそれを感染させた細胞が含まれる。本発明の組換えベクターを含む宿主細胞は、組換え宿主細胞である。
「ハイブリダイゼーション」は、本明細書において、相補的なヌクレオチド配列が対をなしDNA-DNAハイブリッドまたはDNA-RNAハイブリッドを生成することを表すのに使用される。相補的な塩基配列は、塩基対の法則によって関連付けられる配列である。DNAにおいては、AはTと対をなし、CはGと対をなす。RNAにおいては、UはAと対をなし、CはGと対をなす。これに関連して、「マッチ」および「ミスマッチ」という用語は、本明細書において、相補的な核酸鎖において対となるヌクレオチドのハイブリダイゼーション能力を表すのに使用される。マッチするヌクレオチドは、例えば上記の古典的なA-TおよびG-C塩基対のように、効果的にハイブリダイズする。ミスマッチは、効果的にハイブリダイズしない他のヌクレオチドの組み合わせである。
「単離された」は、物質がその本来の状態では通常付随している成分を実質的にまたは本質的に含まないことを意味する。例えば、「単離されたポリヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、天然に存在する状態では隣接している配列から精製されたポリヌクレオチド、例えば、通常は隣接している配列から取り出されたDNA断片、を表す。あるいは、「単離されたペプチド」または「単離されたポリペプチド」等は、本明細書で使用される場合、その自然界での細胞環境からおよびその細胞の他の成分との関係からのペプチドまたはポリペプチド分子のインビトロ単離および/または精製、すなわち、それがインビボ物質を伴わないこと、を表す。
「オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合、ホスホジエステル結合を通じて連結された複数のヌクレオチド残基(デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれに関連する構造バリアントもしくは合成アナログ)から構成されるポリマー(またはそれに関連する構造バリアントまたは合成アナログ)を表す。したがって、「オリゴヌクレオチド」という用語は、典型的には、ヌクレオチド残基およびそれらの間の連結が天然に存在するものであるヌクレオチドポリマーを表すが、この用語には、ペプチド核酸(PNA)、ホスホルアミデート、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、2-O-メチルリボ核酸等を含むがこれらに限定されない様々なアナログもその範囲内に含まれることが理解されるであろう。その正確な分子サイズは、個々の用途によって変化し得る。オリゴヌクレオチドは、典型的に、ある程度短い長さ、一般には10〜30ヌクレオチド残基であるが、この用語は、任意の長さの分子を表し得る。しかし典型的には、「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語が、大きなオリゴヌクレオチドに対して使用される。
「機能的に連結される」という用語は、本明細書で使用される場合、構造遺伝子をプロモーターの調節制御下に置き、その遺伝子の転写および場合により翻訳を制御することを意味する。異種プロモーター/構造遺伝子の組み合わせを構築する際、一般に、遺伝子配列またはプロモーターが、その遺伝子の転写開始部位から、その自然条件下での;すなわちその遺伝子配列またはプロモーターの由来となった遺伝子における、その遺伝子配列またはプロモーターとそれを制御する遺伝子の間の距離とほぼ同じ程度離して配置されることが好ましい。当技術分野で公知のように、この間隔においてある程度のバリエーションが、機能の喪失を伴わずに許容され得る。同様に、その制御下に配置される異種遺伝子に対する調節配列要素の好ましい位置は、その自然条件下での、すなわちその由来となった遺伝子における、その要素の位置によって定義される。
「患者」、「対象」および「個体」という用語は、置き換え可能に使用され、ヒトまたはその他の哺乳動物の患者、対象および個体を表し、そしてこれには、本発明を用いて分析物レベルを検出することまたは疾患もしくは状態の存在、非存在もしくは重篤度を診断することが望まれる任意の対象が含まれる。しかし、「患者」は、症状が存在することを暗示するものではないことが理解されるであろう。本発明の範囲に包含される好適な哺乳動物には、霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー)、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ロバ、ブタ)、実験動物(例えば、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター)、コンパニオンアニマル(例えば、ネコ、イヌ)および狩猟対象の野生動物(例えば、キツネ、シカ、ディンゴ)が含まれるがこれらに限定されない。
「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、本明細書で使用される場合、mRNA、RNA、cRNA、cDNAまたはDNAを意味する。この用語は、典型的には、少なくとも10塩基長のポリマー形態のヌクレオチド、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドのいずれかまたはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態を表す。この用語には、一本鎖および二本鎖形態のDNAが含まれる。
「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」等の用語は、参照ポリヌクレオチド配列に対して実質的な配列同一性を示すポリヌクレオチドまたは以下で定義されるストリンジェントな条件下で参照配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドを表す。これらの用語はまた、少なくとも1つのヌクレオチドの付加、欠失または置換によって参照ポリヌクレオチドと区別されるポリヌクレオチドを包含する。したがって、「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」という用語には、1つまたは複数のヌクレオチドが付加もしくは欠失されているまたは異なるヌクレオチドで置換されているポリヌクレオチドが含まれる。これに関連して、当技術分野では、変異、付加、欠失および置換を含む特定の改変は、改変後のポリヌクレオチドが参照ポリヌクレオチドの生物学的機能または活性を維持するように、参照ポリヌクレオチドに対して為され得ることが理解されるであろう。「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」という用語には、天然に存在する対立遺伝子バリアントも含まれる。
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において置き換え可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーならびにそのバリアントおよび合成アナログを表す。したがって、これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が合成性の天然に存在しないアミノ酸、例えば対応する天然に存在するアミノ酸の化学的アナログであるアミノ酸のポリマー、および天然に存在するアミノ酸のポリマーに適用される。
「ポリペプチドバリアント」という用語は、少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失または置換によって参照ポリペプチドと区別されるポリペプチドを表す。特定の態様において、ポリペプチドバリアントは、保存的または非保存的であり得る1つまたは複数の置換によって参照ポリペプチドと区別される。特定の態様において、ポリペプチドバリアントは、保存的置換を含み、これに関連して、当技術分野では、一部のアミノ酸が、ポリペプチドの活性の性質を変化させずに、広い意味で類似の特性を有する他のアミノ酸と変更され得ることが理解されるであろう。ポリペプチドバリアントはまた、1つまたは複数のアミノ酸が付加もしくは欠失されたまたは異なるアミノ酸残基で置換されたポリペプチドを包含する。
「プライマー」は、DNA鎖と対をなしたときに、適当な重合剤の存在下でプライマー伸長産物の合成を開始することができるオリゴヌクレオチドを意味する。プライマーは、最大増幅効率のために好ましくは一本鎖であるが、代替的に二本鎖の場合もある。プライマーは、重合剤の存在下で伸長産物の合成を開始するのに十分な長さのものでなければならない。プライマーの長さは、応用例、使用する温度、鋳型反応条件、その他の試薬およびプライマーの供給源を含む多くの因子に依存する。例えば、標的配列の複雑さに依存して、オリゴヌクレオチドプライマーは、典型的には、15〜35またはそれ以上のヌクレオチド残基を含むが、それより少ないヌクレオチド残基を含む場合もある。プライマーは、大きなポリヌクレオチド、例えば約200ヌクレオチド残基から数キロ塩基またはそれ以上のものであり得る。プライマーは、ハイブリダイズさせたい鋳型の配列に「実質的に相補的」であり、かつ合成開始部位としての役割を果たすよう選択され得る。「実質的に相補的」は、そのプライマーが標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズするのに十分相補的であることを意味する。好ましくは、プライマーは、ハイブリダイズさせたい鋳型に対するミスマッチを含まないものであるが、これは必須ではない。例えば、プライマーの5'末端に非相補的ヌクレオチド残基を付加することができ、プライマー配列の残りの部分を鋳型に対して相補的なものとすることができる。あるいは、非相補的なヌクレオチド残基または非相補的なヌクレオチド残基のストレッチは、そのプライマー配列がハイブリダイズ対象の鋳型の配列に対して十分な相補性を有し、それによってそのプライマーの伸長産物の合成のための鋳型を形成する限り、プライマー中に散在させることができる。
「プローブ」は、別の分子の特定の配列または部分配列またはその他の部分に結合する分子を表す。そうでないことが示されていない限り、「プローブ」という用語は、典型的には、相補的塩基対形成を通じてしばしば「標的ポリヌクレオチド」とも呼ばれる別のポリヌクレオチドに結合するポリヌクレオチドプローブを表す。プローブは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存して、そのプローブとの完全な配列相補性を有さない標的ポリヌクレオチドに結合し得る。プローブは、直接的または間接的に標識され得る。
「参照結果」という用語には、同一の対象から異なる時点で取得された結果、正常な対象もしくは正常な対象のグループの結果または分析試験において使用される参照標準が含まれる。
「調節要素」または「調節配列」は、機能的に連結されたコード配列を特定の宿主細胞において発現させるのに必要な核酸配列(例えば、DNA)を意味する。原核生物細胞に適した調節配列には、例えば、プロモーター、および場合によりシス作用配列、例えばオペレーター配列およびリボソーム結合部位が含まれる。真核生物細胞に適した制御配列には、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、転写エンハンサー、翻訳エンハンサー、リーダーまたはmRNAの安定性を調節する付随配列および転写されたポリヌクレオチドによりコードされる産物を細胞内部の細胞内区画または細胞外環境に向かわせる標的配列が含まれる。
「配列同一性」という用語は、本明細書で使用される場合、配列が、比較ウィンドウの中で、一ヌクレオチド塩基毎または一アミノ酸毎の基準で同一である程度を表す。したがって、「配列同一性の比率」は、比較ウィンドウの中の2つの最適にアラインメントさせた配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が両配列に存在する位置の数を決定してマッチする位置の数を求め、マッチする位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り算し、その結果に100を掛け算して配列同一性の比率を求めることによって算出される。本発明の目的上、「配列同一性」は、DNASISコンピュータプログラム(ウィンドウズ版バージョン2.5、Hitachi Software Engineering Co., Ltd., South San Francisco, California, USAから入手可能)を同ソフトウェア添付のリファレンス書で使用されている標準設定で使用することによって算出される「一致率」を意味すると理解されることもある。
「配列類似性」という用語は、同一であるかまたは以下の表2で定義される保存的置換を構成するアミノ酸の数の比率を表す。類似性は、配列比較プログラム、例えばGAP(Devereux et al., 1984)を用いて決定され得る。この方法において、本明細書に示されているのと類似または実質的に異なる長さの配列は、アラインメントにギャップを、例えば、例えばGAPで使用される比較アルゴリズムにより決定されたギャップを挿入することによって比較され得る。
2つまたはそれ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列の関係を説明するのに使用される用語には、「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性の比率」および「実質的同一性」が含まれる。「参照配列」は、少なくとも12であるがしばしば15〜18であり、多くの場合少なくとも25の長さの、ヌクレオチドおよびアミノ酸残基を含むモノマー単位である。2つのポリヌクレオチドは各々(1)2つのポリヌクレオチド間で類似する配列(すなわち、完全ポリヌクレオチド配列の一部分のみ)および(2)2つのポリヌクレオチド間で相違する配列を含み得るので、2つ(またはそれ以上の)ポリヌクレオチド間の配列比較は、典型的には、「比較ウィンドウ」内の2つのポリヌクレオチドの配列を比較し、限局的な配列類似性領域を特定および比較することによって実施される。「比較ウィンドウ」は、少なくとも6つの連続する位置、通常は約50〜約100、さらに通常は約100〜約150の概念上のセグメントを表し、配列は、その中で、同じ連続位置数の参照配列と、この2つの配列を最適にアラインメントさせた後に比較される。比較ウィンドウは、2つの配列の最適なアラインメントのために、(付加または欠失を含まない)参照配列と比較して約20%またはそれ未満の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。比較ウィンドウのアラインメントのための最適な配列のアラインメントは、コンピュータによるアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Drive Madison, WI, USAのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)の実行によりまたは実検(inspection)および選択される様々な方法のいずれかにより生成される最大アラインメント(すなわち、比較ウィンドウ内で最も高いパーセント相同性となるもの)によって実施され得る。参照はまた、例えばAltschul et al., 1997により開示されるような、BLASTファミリーのプログラムに対してなされ得る。配列分析の詳細な考察は、Ausubel et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapter 15のUnit 19.3において見出すことができる。
「ストリンジェンシー」は、本明細書で使用される場合、ハイブリダイゼーションおよび洗浄手順時の温度およびイオン強度条件ならびに特定の有機溶媒の存在または非存在を表す。ストリンジェンシーが高いほど、固定された標的ヌクレオチド配列と、洗浄後にその標的にハイブリダイズした状態を維持する標識プローブポリヌクレオチド配列の間の相補性の程度が高くなるであろう。「高いストリンジェンシー」という用語は、相補的な塩基の頻度が高いヌクレオチド配列のみがハイブリダイズするであろう温度およびイオン条件を表す。必要とされるストリンジェンシーは、ヌクレオチド配列依存的であり、かつハイブリダイゼーション時に存在する様々な成分に依存する。一般に、ストリンジェントな条件は、定められたイオン強度およびpHの下で特定の配列の融点(Tm)よりも約10〜20℃低くなるよう選択される。Tmは、(定められたイオン強度およびpHの下で)標的配列の50%が相補的なプローブにハイブリダイズする温度である。
「形質転換」という用語は、外来性または内因性の核酸の導入による、生物、例えば細菌、酵母、哺乳動物、鳥類、は虫類、魚類または植物の遺伝子型の改変を意味する。
「ベクター」は、ポリヌクレオチドを挿入またはクローン化することができる、例えばプラスミド、バクテリオファージ、酵母またはウイルス由来のポリヌクレオチド分子、好ましくはDNA分子を意味する。ベクターは、好ましくは、1つまたは複数の特有の制限酵素部位を含み、かつ、標的細胞もしくは組織またはその前駆細胞もしくは組織を含む定められた宿主細胞内で自立複製することができる、またはクローン化された配列が複製可能となるよう定められた宿主のゲノムと一体化することができるものである。したがって、ベクターは、自立複製ベクター、すなわち染色体外物質として存在し、その複製が染色体の複製に非依存的であるベクター、例えば直鎖または閉鎖環状プラスミド、染色体外要素、ミニ染色体または人工染色体であり得る。ベクターは、自己複製を確実にするための任意の手段を含み得る。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入されたときに、そのゲノムに一体化され、一体化した染色体と共に複製されるものであり得る。ベクターシステムは、単一のベクターもしくはプラスミド、2つもしくはそれ以上の、共に宿主細胞のゲノムに導入される総DNAを含むベクターもしくはプラスミド、またはトランスポゾンを含み得る。ベクターの選択は、典型的には、ベクターとそのベクターを導入される宿主細胞との適合性に依存するであろう。本発明においては、ベクターは、好ましくは、動物および好ましくは哺乳動物細胞中で機能するウイルスまたはウイルス由来ベクターである。そのようなベクターは、ポックスウイルス、アデノウイルスまたは酵母由来のものであり得る。ベクターはまた、選択マーカー、例えば、適当な形質転換体の選択に使用することができる抗生物質耐性遺伝子を含み得る。そのような耐性遺伝子の例は、当業者に公知であり、それには抗生物質カナマイシンおよびG418(Geneticin(登録商標))に対する耐性を付与するnptII遺伝子ならびに抗生物質ハイグロマイシンBに対する耐性を付与するhph遺伝子が含まれる。
「野生型」および「天然に存在する」という用語は、置き換え可能に使用され、天然に存在する供給源から単離された際の遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物を表す。野生型遺伝子または遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)は、集団で最も頻繁に観察されるものであり、したがって任意でその遺伝子の「正常」または「野生型」形態に指定される。
2. プロトロンビン活性化因子
本発明は、プロトロンビン活性化因子が、それらの知られているタンパク質分解活性にもかかわらず、分析物の検出に使用される血清の調製に適した凝固剤であるという発見に一部基づいている。プロトロンビン活性化因子(プロトロンビナーゼとしても公知である)は、トリプシン様活性を示し、プロトロンビンを活性化(すなわち、プロトロンビンを、フィブリノゲンをフィブリンに変換ししたがって凝血塊形成の要因となるトロンビンに変換)する。
いくつかの態様において、プロトロンビン活性化因子は、外因性プロトロンビン活性化因子である。本明細書で使用される場合、「外因性プロトロンビン活性化因子」は、血清試料を調製したい血液試料とは別の供給源から得られるプロトロンビン活性化因子を意味する。
特定の態様において、プロトロンビン活性化因子は、ヘビプロトロンビン活性化因子である。好適には、プロトロンビン活性化因子は、ヘビ毒プロトロンビン活性化因子である。ヘビ毒プロトロンビン活性化因子は、一般に、それらの構造、機能および補因子の必要性に基づき、4つのグループ(A、B、CおよびD)に分類される。
好適には、ヘビ毒プロトロンビン活性化因子は、グループAプロトロンビン活性化因子である。グループAプロトロンビン活性化因子は、3つのドメイン(メタロプロテイナーゼドメイン、ディスインテグリンドメインおよびCysリッチドメイン)からなるメタロプロテイナーゼである。メタロプロテイナーゼドメインは、亜鉛キレート活性部位に対応するコンセンサス配列HEXXHXXGXXHを含有する。これらのプロトロンビン活性化因子は少なくとも様々な毒ヘビの毒において見出され、それにはエキス・カリナトゥス毒由来のエカリンおよびボスロプス・アスパー毒由来のバスパリンが含まれる。
好適には、ヘビ毒プロトロンビン活性化因子は、グループBプロトロンビン活性化因子である。グループBプロトロンビン活性化因子は、非共有結合的に保持されている2つのサブユニット(メタロプロテイナーゼおよびC型レクチン様ジスルフィド結合ダイマー)からなるメタロプロテイナーゼである。これらのプロトロンビン活性化因子は様々な毒ヘビの毒において見出され、それにはエキス・カリナトゥス毒由来のカリンアクチバーゼ-1およびカリンアクチバーゼ-2ならびにエキス・マルチスクアマトゥス毒由来のマルチアクチバーゼが含まれる。
好適には、ヘビ毒プロトロンビン活性化因子は、グループCプロトロンビン活性化因子である。グループCプロトロンビン活性化因子は、セリンプロテアーゼであり、哺乳動物の第Xa因子・第Va因子複合体に類似する。シュータリンC(またはPtPA)およびオスクタリンC(またはOsPA)は、それぞれ、シュードナジャ・テクスティリスおよびオキシウラヌス・スクテラトゥスの毒由来のグループCプロトロンビン活性化因子である。オミカリンCは、オキシウラヌス・ミクロレピドトゥス毒由来のプロトロンビン活性化因子である。
好適には、ヘビ毒プロトロンビン活性化因子は、グループDプロトロンビン活性化因子である。グループDプロトロンビン活性化因子は、セリンプロテアーゼであり、機能的に哺乳動物の第Xa因子に類似する。ポルファリンD(シューデキス・ポルフィリアクス由来)、ノテカリンD(ノテキス・スクタトゥス・スクタトゥス(Notechis scutatus scutatus)由来)、トロカリンD(トロピデキス・カリナトゥス由来)、ホプサリンD(ホプロセファルス・ステフェンシィ由来)およびノテナリンD(notenarin D)(ノテキス・アター・ニガー由来)はすべて、グループDプロトロンビン活性化因子である。
ヘビプロトロンビン活性化因子のレビューは、Kini, R.M. (2005)に提供されており、特にオーストラリアコブラの毒由来のもの(グループCおよびDのプロトロンビン活性化因子)は、St.Pierre et al. (2005)に提供されており、各々の内容はそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。これらの2つのレビューは、上記のグループA〜Dのヘビプロトロンビン活性化因子の分類を使用している。この分類は、各々の内容の全体が参照により本明細書に組み入れられるRosing, J. et al. (1991)およびRosing, J. et al. (1992)を含むそれ以前のレビュー記事に記載される、グループI〜III(グループIはグループAおよびBを包含し;グループIIは現在のグループDであり、そしてグループIIIは現在のグループCである)ならびに時には追加のグループIV(プロトロンビンのペプチド結合を切断するが、プロトロンビンを酵素的に活性な産物-すなわちトロンビンまたはメイゾトロンビンに変換しないヘビ毒活性化因子)およびV(細菌プロトロンビン活性化因子)を用いるこれまでの分類系よりも優先される。この分類系に対する変更点の説明については、その内容の全体が参照により本明細書に組み入れられるKini, R, M., et al. (2001)を参照のこと。
特定の態様において、ヘビプロトロンビン活性化因子は、コブラ(Elapidae)科から得られ、その実例には、デマンシア、ホプロセファルス、ノテキス、オキシウラヌス、シューデキス、シュードナジャ、リノプロセファルス(Rhinoplocephalus)およびトロピデキス属の種が含まれ、これらにはデマンシア・ヴェスティギアタ、ホプロセファルス・ステフェンシィ、ノテキス・アター・ヒュムフレイシィ(Notechis ater humphreysi)、ノテキス・アター・ニガー、ノテキス・アター・サーベンティ(Notechis ater serventyi)、ノテキス・フリンクダース(Notechis flinkders)、ノテキス・ヒュムフレイシィ、ノテキス・ニガー、ノテキス・オクシデンタリス(Notechis occidentalis)、ノテキス・スクタトゥス、ノテキス・スクタトゥス・スクタトゥス、ノテキス・サーベンティ、オキシウラヌス・ミクロレピドトゥス、オキシウラヌス・スクテラトゥス、シューデキス・ポルフィリアクス、シュードナジャ・アフィニス(Pseudonaja affinis)、シュードナジャ・インフラマキュラタ(Pseudonaja inframaculata)、シュードナジャ・ヌカリス(Pseudonaja nuchalis)、シュードナジャ・テクスティリス、リノプロセファルス・ニグレセンス(Rhinoplocephalus nigrescens)およびトロピデキス・カリナトゥスが含まれるがこれらに限定されない。
特定の態様において、ヘビプロトロンビン活性化因子は、クサリヘビ(Viperidae)科から得られ、その実例には、ボスロプス、エキスおよびトリメレスラス(Trimeresurus)属の種が含まれ、これらにはボスロプス・オルタナトゥス(Bothrops alternatus)、ボスロプス・アスパー、ボスロプス・アトロクス(Bothrops atrox)、ボスロプス・アトロクス・アスパー、ボスロプス・ブラジリ(Bothrops brasili)、ボスロプス・カステルナウディ(Bothrops castelnaudi)、ボスロプス・コロンビエンシス(Bothrops columbiensis)、ボスロプス・エリスロメラス(Bothrops erythromelas)、ボスロプス・フォンセカイ(Bothrops fonsecai)、ボスロプス・イタペチニンガエ(Bothrops itapetiningae)、ボスロプス・ハララカ(Bothrops jararaca)、ボスロプス・ニューウィーディ(Bothrops neuwiedi)、ボスロプス・ベネズエレンシス(Bothrops venezuelensis)、エキス・カリナトゥス、エキス・コロラトゥス(Echis coloratus)、エキス・マルチスクアマトゥスおよびトリメレスラス・オキナベンシス(Trimeresurus okinavensis)が含まれるがこれらに限定されない。
特定の態様において、ヘビプロトロンビン活性化因子は、ナミヘビ(Colubridae)科から得られ、その実例にはディスフォリダス(Dispholidus)、ラブドフィス(Rhabdophis)およびセロトーニス(Thelotornis)属の種が含まれ、これらにはディスフォリダス・タイパス(Dispholidus typus)、ラブドフィス・チグリナス・チグリナス(Rhabdophis tigrinus tigrinus)、セロトーニス・カートランディ(Thelotornis kirtlandii)およびセロトーニス・カペンシス(Thelotornis capensis)が含まれるがこれらに限定されない。
いくつかの態様において、ヘビプロトロンビン活性化因子は、ヘビ毒由来またはヘビ毒から得られるものである。P.テクスティリスヘビ毒からのPtPAの精製および特徴付けは、Masci (1986)およびMasci et al.,(1998)に記載されており、O.スクテラトゥス毒からのOsPAの精製および特徴付けは、Speijer et al., (1986)に記載されており、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。エキス・カリナトゥス毒からのエカリンの精製および特徴付けは、Morita, T et al. (1981)およびNishida, S et al. (1995)に記載されており、エキス・カリナトゥス毒からのカリンアクチバーゼの精製および特徴付けは、Yamada, D et al. (1996)に記載されており、エキス・マルチスクアマトゥスからのマルチアクチバーゼの精製および特徴付けは、Yamada, D. et al., (1997)に記載されており、そしてノテキス・スクタトゥスからのノテカリンの精製および特徴付けは、Tans, G et al., (1985)に記載されており、これらは各々、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
特定の態様において、プロトロンビン活性化因子は、哺乳動物プロトロンビン活性化因子である。哺乳動物プロトロンビン活性化因子には、ヒトの血液および/または組織由来のものならびにウシの血液および/または組織由来のものが含まれる。
特定の態様において、プロトロンビン活性化因子は、細菌プロトロンビン活性化因子である。細菌プロトロンビン活性化因子には、スタフィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus)、ペプトコッカス・インドリカス(Peptococcus indolicus)、バクテロイデス・メラニノゲニカス(Bacteroides melaninogenicus)およびシュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)由来のものが含まれる(Rosing, J. et al. (1991))。
当業者に理解されているように、プロトロンビン活性化因子は、1つまたは複数のポリペプチドを含み得るか、1つまたは複数のポリペプチドから本質的になり得るか、または1つまたは複数のポリペプチドからなり得る。いくつかの態様において、プロトロンビン活性化因子は、単一のポリペプチドを含むか、単一のポリペプチドから本質的になるか、または単一のポリペプチドからなる。他の態様において、プロトロンビン活性化因子は、ポリペプチドの複合体を含むがこれに限定されない2つ以上のポリペプチドを含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。プロトロンビン活性化因子が複数のポリペプチドを含むか、複数のポリペプチドから本質的になるか、または複数のポリペプチドからなる場合、各々のポリペプチドは、同一もしくは異なる属および/または同一もしくは異なる種の生物由来であり得る。
特定の態様において、プロトロンビン活性化因子は、SEQ ID NO: 1、2、3、4、7、8、11、12、13、16、18、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、51および52に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含むか、またはSEQ ID NO: 5、6、9、10、14、15、17、19、20、21、22、23、24、25、31、33、35、37、39、41、43、45、47および49に示されるヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。
本発明はまた、融合ポリペプチドを含むプロトロンビン活性化因子の使用を想定している。本明細書で使用される場合、「融合ポリペプチド」は、第2のポリペプチド成分に連結された第1のポリペプチド成分、を含む。第1のポリペプチド成分は、第1の生物から得られるものであり得、第2のポリペプチド成分は、第2の生物から得られるものであり得る。いくつかの態様において、第1の生物と第2の生物は、異なる属である。他の態様において、第1の生物と第2の生物は、同じ属の異なる種である。融合ポリペプチドの第1のポリペプチド成分または第2のポリペプチド成分は、野生型または天然に存在するアミノ酸配列のすべてまたは一部(例えば、本明細書に記載される断片)に対応するものであり得る。第2のポリペプチド成分は、第1のポリペプチド成分のN末端またはC末端に融合され得る。
典型的には、全長ポリペプチドの断片は、相互作用、例えば分子内または分子間相互作用に関与するものであり得る。そのような断片には、SEQ ID NO: 2、3、4、51および52に示されるアミノ酸配列を含むペプチド、ならびに(推定)全長ポリペプチドのアミノ酸配列、例えば、SEQ ID NO: 1、7、8、11、12、13、16、18、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48および50に示されるアミノ酸配列またはSEQ ID NO: 5、6、9、10、14、15、17、19、20、21、22、23、24、25、31、33、35、37、39、41、43、45、47および49に示されるヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に、十分に類似するかまたはそれに由来するアミノ酸配列を含み、全長ポリペプチド未満のアミノ酸を含み、かつそのポリペプチドの1つの活性を示す、ペプチドが含まれる。
そのような「バリアント」プロトロンビン活性化因子には、天然型ポリペプチド由来のポリペプチドであって、天然型ポリペプチドのN末端および/もしくはC末端における1つもしくは複数のアミノ酸の欠失(いわゆる短縮)もしくは付加;天然型ポリペプチド内の1つもしくは複数の部位における1つもしくは複数のアミノ酸の欠失もしくは付加;または天然型ポリペプチド内の1つもしくは複数の部位における1つもしくは複数のアミノ酸の置換によって、対応する天然型ポリペプチドから派生した、ポリペプチドが含まれる。これらのバリアントプロトロンビン活性化因子は、例えば、遺伝子多型または人為的操作の結果であり得る。
バリアントポリペプチドのさらなる非限定的な例には、前駆体ポリペプチドまたは酵素原形態のポリペプチドおよび全長もしくは前駆体ポリペプチドまたは酵素原形態のポリペプチドのプロセシングされた形態が含まれる。
野生型または天然に存在するポリペプチドのバリアントは、本明細書の他箇所に記載される配列アラインメントプログラムを初期設定パラメータで用いて決定した場合に、SEQ ID NO: 1、2、3、4、7、8、11、12、13、16、18、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、51および52の配列を含むがこれらに限定されない野生型もしくは天然に存在するポリペプチドのアミノ酸配列またはSEQ ID NO: 5、6、9、10、14、15、17、19、20、21、22、23、24、25、31、33、35、37、39、41、43、45、47および49のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列に対して、少なくとも40%、50%、60%、70%、一般には少なくとも75%、80%、85%、通常は約90%、91%、92%、93%、94%、95%またはそれ以上、そして典型的には約96%、97%、98%またはそれ以上(およびその間のすべての整数値の比率)の配列類似性または同一性を有するであろう。バリアントポリペプチドの範囲に包含される野生型または天然に存在するポリペプチドのバリアントは、そのポリペプチドと、一般には200、100、50または20個という多数のアミノ酸残基が、または好適には1〜15個という少数のアミノ酸残基が、1〜10個、例えば6〜10個という少数が、5個という少数が、4個、3個、2個という少数または1個のみのアミノ酸残基が、異なるものであり得る。いくつかの態様において、バリアントポリペプチドは、SEQ ID NO: 1、2、3、4、7、8、11、12、13、16、18、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、51もしくは52の対応する配列またはSEQ ID NO: 5、6、9、10、14、15、17、19、20、21、22、23、24、25、31、33、35、37、39、41、43、45、47もしくは49のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも1個であるが15、10または5個未満のアミノ酸残基が異なる。他の態様において、それは、SEQ ID NO: 1、2、3、4、7、8、11、12、13、16、18、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、51もしくは52の対応する配列またはSEQ ID NO: 5、6、9、10、14、15、17、19、20、21、22、23、24、25、31、33、35、37、39、41、43、45、47もしくは49のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも1個の残基であるが20%、15%、10%または5%未満の残基が異なる。
ポリペプチドは、アミノ酸の置換、欠失、短縮および挿入を含む様々な方法で改変され得る。そのような操作の方法は、概ね当技術分野で公知である。例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、DNAの変異により調製することができる。変異誘発およびヌクレオチド配列の改変の方法は、当技術分野で周知である。例えば、Kunkel (1985)、Kunkel et al., (1987)、米国特許第4,873,192号、Watson et al., (1987)およびそれらの中で引用されている参考文献を参照のこと。関心対象のタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない適当なアミノ酸置換に関する手引きは、Dayhoff et al. (1978)のモデルにおいて見出され得る。点変異または短縮によって作製されたコンビナトリアルライブラリの遺伝子産物をスクリーニングする方法および選択された特性を有する遺伝子産物のcDNAライブラリをスクリーニングする方法は、当技術分野で公知である。そのような方法は、ポリペプチドのコンビナトリアル変異誘発により生成される遺伝子ライブラリの高速スクリーニングに適応させることができる。ライブラリ内で機能的変異体の出現率を高める技術である再帰的アンサンブル変異誘発法(recursive ensemble mutagenesis; REM)は、ポリペプチドバリアントを同定するためのスクリーニングアッセイと組み合わせて使用することができる。例えば、Arkin et al. (1992)およびDelagrave et al. (1993)を参照のこと。以下でより詳細に議論されているように、保存的置換、例えばあるアミノ酸を類似の特性を有する別のアミノ酸と交換するもの、が、望ましい場合がある。
バリアントポリペプチドは、それらの配列上の様々な位置に、親(例えば、天然に存在するまたは参照)アミノ酸配列に対する保存的アミノ酸置換を含み得る。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で規定されており、それは一般に以下のようなサブクラスを有し得る。
酸性:この残基は、生理学的pHでのHイオンの喪失により負電荷を有し、かつこの残基は、それを含むペプチドが生理学的pHの水性媒体中に存在する場合に、そのペプチドのコンフォメーションの表面位置を求めるよう水溶液に誘引される。酸性側鎖を有するアミノ酸には、グルタミン酸およびアスパラギン酸が含まれる。
塩基性:この残基は、生理学的pHまたはその1もしくは2pH単位内(例えば、ヒスチジン)でのHイオンとの会合により正電荷を有し、かつこの残基は、それを含むペプチドが生理学的pHの水性媒体中に存在する場合に、そのペプチドのコンフォメーションの表面位置を求めるよう水溶液に誘引される。塩基性側鎖を有するアミノ酸には、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが含まれる。
荷電性:この残基は、生理学的pHで荷電しており、したがってこれには酸性または塩基性の側鎖を有するアミノ酸(すなわち、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リジンおよびヒスチジン)が含まれる。
疎水性:この残基は、生理学的pHで荷電せず、かつこの残基は、それを含むペプチドが水性媒体中に存在する場合に、そのペプチドのコンフォメーションの内側位置を求めるよう水溶液に反発する。疎水性側鎖を有するアミノ酸には、チロシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニンおよびトリプトファンが含まれる。
中性/極性:この残基は、生理学的pHで荷電しないが、この残基は、それを含むペプチドが水性媒体中に存在する場合に、そのペプチドのコンフォメーションの内側位置を求めるよう水溶液に十分反発するものではない。中性/極性側鎖を有するアミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、システイン、ヒスチジン、セリンおよびスレオニンが含まれる。
また、本明細書では、特定のアミノ酸は、それらの側鎖が極性基を欠いている場合でさえも疎水性を付与するのに十分に大きくないため、「小」と特徴づけられる。プロリンを除いて、「小」アミノ酸は、少なくとも1つの極性基が側鎖に存在するときは4炭素以下、存在しないときは3炭素以下のアミノ酸である。小側鎖を有するアミノ酸には、グリシン、セリン、アラニンおよびスレオニンが含まれる。遺伝子によりコードされる第2級アミノ酸プロリンは、ペプチド鎖の二次構造への影響が知られている特別な例である。プロリンの構造は、その側鎖がα-アミノ基の窒素およびα-炭素に結合している点で、その他すべての天然に存在するアミノ酸と異なっている。しかし、様々なアミノ酸類似性マトリックス(例えば、例えばDayhoff et al. (1978)およびGonnet et al. (1992)によって開示されるPAM120マトリックスおよびPAM250マトリックス)は、プロリンをグリシン、セリン、アラニンおよびスレオニンと同じグループに含めている。したがって、本発明の目的上、プロリンは、「小」アミノ酸に分類される。
極性または非極性の分類に必要となる誘引または反発の程度は、任意であり、したがって、本発明により具体的に想定されているアミノ酸は、その一方または他方に分類されている。具体的に名前が挙げられていないアミノ酸のほとんどは、公知の挙動に基づき分類することができる。
アミノ酸残基は、残基の側鎖の置換基に関する説明不要の分類である環式または非環式および芳香族または非芳香族として、ならびに小または大として、さらに細分類することができる。残基は、追加の極性置換基が存在するときはカルボキシル炭素を含めて合計4炭素原子以下を含む場合に;存在しないときは3以下を含む場合に、小とみなされる。小残基は、当然ながら、つねに非芳香族である。それらの構造上の特性に依存して、アミノ酸残基は、2つまたはそれ以上のクラスに包含され得る。天然に存在するタンパク質のアミノ酸に関しては、表1にこのスキームにしたがう細分類が示されている。
保存的アミノ酸置換もまた、側鎖に基づくグループ分けを含む。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループは、セリンおよびスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループは、リジン、アルギニンおよびヒスチジンであり;硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、システインおよびメチオニンである。例えば、ロイシンとイソロイシンもしくはバリンの置き換え、アスパラギン酸とグルタミン酸の置き換え、スレオニンとセリンの置き換え、または同様の、あるアミノ酸と構造的に関連するアミノ酸の置き換えは、得られるバリアントポリペプチドの特性に大きな影響を及ぼさないであろうと考えるのが合理的である。アミノ酸の交換により機能的なポリペプチドが生成されるかどうかは、その活性をアッセイすることによって容易に決定することができる。保存的置換は、例示的かつ好ましい置換という表題の下で表2に示されている。本発明の範囲に包含されるアミノ酸置換は、概ね、(a)その置換領域のペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性または(c)側鎖のかさ高さ、の維持に対する影響が有意に異ならない置換を選択することによって達成される。置換の導入後、バリアントは、生物学的活性に関してスクリーニングされ得る。
あるいは、保存的置換をなす類似のアミノ酸は、側鎖の個性(identity)に基づき3つのカテゴリーにグループ分けすることができる。Zubay, G. (1993)に記載されるように、第1のグループには、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジンが含まれ、これらはすべて、荷電側鎖を有するものであり;第2のグループには、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギンが含まれ;そして第3のグループには、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニンが含まれる。
したがって、ポリペプチド中の必須ではないと推定されるアミノ酸残基は、典型的には、同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基で置き換えられる。あるいは、ポリペプチド遺伝子コード配列のすべてまたは一部に対して変異を無作為的に、例えば、飽和変異誘発によって、導入することができ、そして得られる変異体を親ポリペプチドの活性に関してスクリーニングし、その活性を保持する変異体を同定することができる。コード配列に対する変異誘発の後、コードされるペプチドを組換え発現させることができ、そしてそのペプチドの活性を決定することができる。「必須ではない」アミノ酸残基は、活性の1つまたは複数を消失させたり実質的に改変したりすることなくポリペプチドの野生型配列から改変することができる残基である。好適には、この改変は、これらの活性の1つを実質的に改変せず、例えば、その活性は、野生型の少なくとも20%、40%、60%、70%または80%である。「必須の」アミノ酸残基は、参照ポリペプチドの野生型配列から改変したとき、親分子の活性を消失させ、その野生型の活性の20%未満にする残基である。
したがって、本発明はまた、1つまたは複数のアミノ酸残基の付加、欠失または置換によって天然に存在する配列と区別される、天然に存在するポリペプチド配列またはそれらの生物学的に活性な断片のバリアントを想定している。一般に、バリアントは、例えばSEQ ID NO:1、2、3、4、7、8、11、12、13、16、18、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、51もしくは52に示される親もしくは参照ポリペプチド配列、または例えばSEQ ID NO: 5、6、9、10、14、15、17、19、20、21、22、23、24、25、31、33、35、37、39、41、43、45、47もしくは49に示されるヌクレオチド配列によってコードされる親もしくは参照ポリペプチド配列に対して、少なくとも約30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の類似性を示すであろう。望ましくは、バリアントは、例えばSEQ ID NO:1、2、3、4、7、8、11、12、13、16、18、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、51もしくは52に示される親ポリペプチド配列、または例えばSEQ ID NO: 5、6、9、10、14、15、17、19、20、21、22、23、24、25、31、33、35、37、39、41、43、45、47もしくは49に示されるヌクレオチド配列によってコードされる親ポリペプチド配列に対して、少なくとも30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を有するであろう。さらに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上のアミノ酸の付加、欠失または置換によってその天然型配列または親配列と異なるが親ポリペプチドの特性を保持している配列が、想定されている。ポリペプチドには、以下で説明されているように、本明細書で定義されるストリンジェンシー条件、特に高ストリンジェンシー条件下で、親をコードするポリヌクレオチド配列またはその非コード鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドも含まれる。例示的な親ポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 5、6、9、10、14、15、17、19、20、21、22、23、24、25、31、33、35、37、39、41、43、45、47および49に示されている。
いくつかの態様において、バリアントポリペプチドは、参照配列と、少なくとも1つであるが50、40、30、20、15、10、8、6、5、4、3または2未満のアミノ酸残基が相違する。他の態様において、バリアントポリペプチドは、SEQ ID NO:1、2、3、4、7、8、11、12、13、16、18、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、51もしくは52の対応する配列またはSEQ ID NO: 5、6、9、10、14、15、17、19、20、21、22、23、24、25、31、33、35、37、39、41、43、45、47もしくは49のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列と、少なくとも1%であるが20%、15%、10%または5%未満の残基が相違する。(この比較にアラインメントが必要となる場合、配列は類似性が最大となるようアラインメントするべきである。欠失もしくは挿入により「外側に膨らんだ(looped out)」配列またはミスマッチは、相違とみなされる)。相違は、好適には、必須ではない残基の相違もしくは変更または保存的置換である。
タンパク質のバリアントは、タンパク質の変異体、例えば短縮変異体のコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって同定することができる。タンパク質のバリアントのスクリーニングおよびその後の選択のための多様化断片集団を生成するために、タンパク質コード配列のライブラリまたは断片、例えばN末端、C末端もしくは内部断片、を使用することができる。
点変異または短縮によって作製されたコンビナトリアルライブラリの遺伝子産物のスクリーニングおよび選択された特性を有する遺伝子産物のcDNAライブラリのスクリーニングの方法は、当技術分野で公知である。そのような方法は、タンパク質のコンビナトリアル変異誘発により生成される遺伝子ライブラリの高速スクリーニングに適応させることができる。
野生型または天然に存在するポリヌクレオチドのバリアントは、本明細書の他箇所に記載される配列アラインメントプログラムを初期設定パラメータで用いて決定した場合に、SEQ ID NO: 1、2、3、4、7、8、11、12、13、16、18、26、27、28、29、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、51もしくは52の配列によってコードされる配列またはSEQ ID NO: 5、6、9、10、14、15、17、19、20、21、22、23、24、25、31、33、35、37、39、41、43、45、47および49の配列を含むがこれらに限定されない野生型または天然に存在するポリヌクレオチドのヌクレオチド配列またはそれらの相補鎖に対して、少なくとも40%、50%、60%、70%、一般的には少なくとも75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、通常は約90%、91%、92%、93%、94%、95%またはそれ以上、典型的には約96%、97%、98%またはそれ以上(およびその間のすべての整数値の比率)の配列類似性または同一性を有するであろう。
ポリペプチドをコードする例示的なヌクレオチド配列には、全長の遺伝子およびその遺伝子の全長または実質的に全長のヌクレオチド配列の一部分またはそれらの転写物もしくはこれらの転写物のDNA複製物が含まれる。ヌクレオチド配列の一部分は、天然型ポリペプチドの生物学的活性を保持するポリペプチドの一部分またはセグメントをコードし得る。生物学的に活性なポリペプチドの断片をコードするヌクレオチド配列の一部分は、少なくとも約20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、300または400個の連続するアミノ酸残基または全長ポリペプチドに存在する総アミノ酸数にほぼ相当するアミノ酸残基をコードし得る。
ヌクレオチド配列のバリアントも想定されている。核酸バリアントは、天然に存在するもの、例えば対立遺伝子バリアント(同じ遺伝子座)、ホモログ(異なる遺伝子座)およびオルソログ(異なる生物)であり得、また、天然に存在しないものであり得る。これらのような天然に存在するバリアントは、周知の分子生物学技術を使用することによって、例えば当技術分野で公知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびハイブリダイゼーション技術によって同定することができる。天然に存在しないバリアントは、ポリヌクレオチド、細胞または生物に対して適用されるものを含む変異誘発技術によって作製することができる。バリアントは、ヌクレオチド置換、欠失、反転および挿入を含み得る。バリエーションは、コード領域および非コード領域のいずれかまたは両方に導入され得る。バリエーションは、(コードされる生産物における比較で)保存的および非保存的の両方のアミノ酸置換を生じ得る。ヌクレオチド配列における保存的バリアントには、遺伝子暗号の縮重のために参照ポリペプチドのアミノ酸配列をコードする配列が含まれる。バリアントヌクレオチド配列には、合成により得られるヌクレオチド配列、例えば、例えば部位特異的変異誘発を用いることによって生成されたものであるがポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、も含まれる。一般に、特定のヌクレオチド配列のバリアントは、本明細書の他箇所に記載される配列アラインメントプログラムを初期設定パラメータで用いて決定した場合に、その特定のヌクレオチド配列に対して、少なくとも約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、一般的には少なくとも約75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、望ましくは約90%、91%、92%、93%、94%、95%またはそれ以上、そしてより好適には約96%、97%、98%またはそれ以上の配列同一性を有するであろう。
ヌクレオチド配列は、対応する配列および対立遺伝子を他の生物から、特に他のヘビから単離するのに使用することができる。核酸配列のハイブリダイゼーションの方法は、当技術分野において容易に知ることができる。他の生物由来のコード配列は、本明細書に示されているコード配列に対するそれらの配列同一性に基づき、周知技術により単離され得る。これらの技術においては、既知のコード配列のすべてまたは一部が、選択された生物(例えば、ヘビ)由来のクローン化されたゲノムDNA断片またはcDNA断片の集団(すなわち、ゲノムまたはcDNAライブラリ)に存在する他のコード配列に選択的にハイブリダイズするプローブとして使用される。したがって、本発明はまた、以下に記載されるストリンジェンシー条件下で、参照ヌクレオチド配列またはそれらの相補鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチドを想定している。本明細書で使用される場合、「低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、高ストリンジェンシーまたは超高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を説明するものである。
ハイブリダイゼーション反応を実施するための手引きは、Ausubel et al.(前出)の第6.3.1〜6.3.6節において見出すことができる。水性および非水性法がその参考文献に記載されており、いずれを使用することもできる。低ストリンジェンシー条件に関する参照例には、少なくとも約1% v/vから少なくとも約15% v/vのホルムアミドおよび少なくとも約1Mから少なくとも約2Mの塩による42℃でのハイブリダイゼーション、ならびに少なくとも約1Mから少なくとも約2Mの塩による42℃での洗浄、が含まれる。低ストリンジェンシー条件には、1%ウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH 7.2)、7% SDSによる65℃でのハイブリダイゼーション、および(i)2 x SSC、0.1% SDS;または(ii)0.5% BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH 7.2)、5% SDSによる室温での洗浄、も含まれ得る。低ストリンジェンシー条件の1つの態様には、6 x 塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でのハイブリダイゼーション、その後の0.2 x SSC、0.1% SDS中、少なくとも50℃での2回の洗浄(低ストリンジェンシー条件の洗浄温度は、55℃まで上げることができる)が含まれる。中ストリンジェンシー条件には、少なくとも約16% v/vから少なくとも約30% v/vのホルムアミドおよび少なくとも約0.5Mから少なくとも約0.9Mの塩による42℃でのハイブリダイゼーション、ならびに少なくとも約0.1Mから少なくとも約0.2Mの塩による55℃での洗浄、が含まれる。中ストリンジェンシー条件には、1%ウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH 7.2)、7% SDSによる65℃でのハイブリダイゼーション、および(i)2 x SSC、0.1% SDS;または(ii)0.5% BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH 7.2)、5% SDSによる60〜65℃での洗浄、も含まれ得る。中ストリンジェンシー条件の1つの態様には、6 x SSC中、約45℃でのハイブリダイズ、その後の0.2 x SSC、0.1% SDS中、60℃での1回または複数回の洗浄が含まれる。高ストリンジェンシー条件には、少なくとも約31% v/v〜少なくとも約50% v/vのホルムアミドおよび約0.01M〜約0.15Mの塩による42℃でのハイブリダイゼーション、ならびに約0.01Mから約0.02Mの塩による55℃での洗浄、が含まれる。高ストリンジェンシー条件には、1% BSA、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH 7.2)、7% SDS、による65℃でのハイブリダイゼーションおよび(i)0.2 x SSC、0.1% SDS;または(ii)0.5% BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH 7.2)、1% SDSによる65℃を超える温度での洗浄、も含まれ得る。高ストリンジェンシー条件の1つの態様には、6 x SSC中、約45℃でのハイブリダイズ、その後の0.2 x SSC、0.1% SDS中、65℃での1回または複数回の洗浄が含まれる。
特定の態様において、ポリペプチドは、開示されるヌクレオチド配列に低、中、高または超高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる。超高ストリンジェンシー条件の1つの態様には、0.5Mリン酸ナトリウム、7% SDS中、65℃でのハイブリダイズ、その後の0.2 x SSC、1% SDS中、65℃での1回または複数回の洗浄が含まれる。
他のストリンジェンシー条件は、当技術分野で周知であり、当業者は、ハイブリダイゼーションの特異性を最適化するために様々な因子を操作することができることを理解しているであろう。最終洗浄のストリンジェンシーの最適化は、高度のハイブリダイゼーションを確実にするよう作用し得る。詳細な例については、Ausubel et al.(前出)の2.10.1ページから2.10.16ページおよびSambrook, J. et al. (2001)の第1.101から1.104節を参照のこと。
ストリンジェントな洗浄は、典型的には約42℃から68℃の温度で実施されるが、当業者は、その他の温度がストリンジェントな条件に適し得ることを理解しているであろう。最大ハイブリダイゼーション率は、典型的に、DNA-DNAハイブリッドの形成に関してはTmより約20℃から25℃下の温度で起こる。Tmは融点または2つの相補的なポリヌクレオチド配列が解離する温度であることは、当技術分野で周知である。Tmを概算する方法は、当技術分野で周知である(Ausubel et al.(前出)の2.10.8ページを参照のこと)。一般に、完全にマッチするDNA二本鎖のTmは、次式による近似値として推定され得る:
Tm = 81.5 + 16.6(log10M) + 0.41(%G+C) - 0.63(%ホルムアミド) - (600/長さ)
式中、Mは、好ましくは0.01モルから0.4モルの範囲のNa+の濃度であり;%G+Cは、グアニン塩基およびシトシン塩基の和を総塩基数に対する比率で表したものであり、その範囲は30%から75%G+Cの間であり;%ホルムアミドは、体積によるパーセントホルムアミド濃度であり;長さは、DNA二本鎖における塩基対の数である。二本鎖DNAのTmは、無作為のミスマッチ塩基対の数が1%増加するごとにおよそ1℃低下する。洗浄は、一般に、高ストリンジェンシーの場合はTm - 15℃または中ストリンジェンシーの場合はTm - 30℃で実施される。
ハイブリダイゼーション手順の1つの例においては、固定されたDNAを含む膜(例えば、ニトロセルロース膜またはナイロン膜)が、42℃で一晩、標識プローブを含むハイブリダイゼーション緩衝液(50%脱イオン化ホルムアミド、5 x SSC、5 x デンハルト溶液(0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドンおよび0.1%ウシ血清アルブミン)、0.1% SDSおよび200 mg/mL変性サケ精子DNA)中でハイブリダイズされる。この膜は、次いで、2回の連続する中ストリンジェンシーの洗浄(すなわち、45℃で15分間の2 x SSC、0.1% SDS、その後に50℃で15分間の2 x SSC、0.1% SDS)に供され、その後に2回の連続するより高ストリンジェンシーの洗浄(すなわち、55℃で12分間の0.2 x SSC、0.1% SDS、その後に65〜68℃で12分間の0.2 x SSC、0.1% SDS溶液)に供される。
3. プロトロンビン活性化因子の調製
プロトロンビン活性化因子は、当業者に公知の任意の適当な手順によって調製され得る。
例えば、プロトロンビン活性化因子は、任意の従来法によって、例えば、ヘビの毒、血液および血液由来成分(例えば、血清)を含むがこれらに限定されない天然に存在するリザーバーからのポリペプチドの精製によって、生成され得る。精製方法には、レクチン(例えば、コムギ胚芽凝集素)アフィニティクロマトグラフィーを含むアフィニティクロマトグラフィーまたはその他の分離法が含まれる。得られるプロトロンビン活性化因子の同一性および純度は、例えば、SDSポリアクリルアミド電気泳動またはクロマトグラフィー、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定することができる。例えば、P.テクスティリスヘビ毒からのシュータリンC(PtPAとも省略される)の精製および特徴付けは、Masci(1986)およびMasci et al.(1988)に記載されており、O.スクテラトゥス毒からのオスクタリンC(OsPA)の精製および特徴付けは、Speijer et al.(1986)に記載されており、両文献の全体を参照により本明細書に組み入れる。E.カリナトゥス毒からのエカリンの精製は、Morita, T et al.(1981)に記載されており、この内容も全体を参照により本明細書に組み入れる。
あるいは、プロトロンビン活性化因子は、例えば、その内容の全体が参照により本明細書に組み入れられる、インビトロ毒産生のためのボスロプス・ハララカの毒腺由来の分泌細胞の初代培養物を記載するYamanouye, N., et al.(2007)に記載される方法を含む、当技術分野で公知の方法を用いて、培養物中の毒腺細胞から産生され得る。
あるいは、プロトロンビン活性化因子は、化学合成によって、例えば溶液合成または固相合成を用いる、例えばAtherton and Shephard (1989)の第9章およびRoberge et al. (1995)に記載される化学合成によって、合成され得る。
あるいは、プロトロンビン活性化因子は、組み換え技術によって調製され得る。例えば、本発明において使用されるプロトロンビン活性化因子は、(a)ポリペプチドをコードし調節要素に機能的に連結されたポリヌクレオチド配列を含むコンストラクトを調製する工程;(b)コンストラクトを宿主細胞に導入する工程;(c)宿主細胞を培養しポリペプチドを発現させる工程;(d)宿主細胞からポリペプチドを単離する工程、を含む手順によって調製され得る。プロトロンビン活性化因子が複合体または2つのポリペプチドを含む場合、そのプロトロンビン活性化因子は、(a)第1のポリペプチドをコードし調節要素に機能的に連結されたポリヌクレオチド配列を含むコンストラクトを調製する工程;(b)コンストラクトを宿主細胞に導入する工程;(c)宿主細胞を培養し第1のポリペプチドを発現させる工程;(d)宿主細胞からポリペプチドを単離する工程;第2のポリペプチドのために(a)から(d)の工程を繰り返す工程;および第1のポリペプチドと第2のポリペプチドを連結する工程、を包含する手順によって調製され得る。その実例において、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO: 5、6、9、10、14、15、17、19、20、21、22、23、24、25、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49に示される配列またはそのバリアントの少なくとも生物学的に活性な部分をコードする。
組み換えプロトロンビン活性化因子は、例えば、Sambrook, J. et al. (2001)、特に第16および17章;Ausubel et al. (1994, 前出)、特に第10および16章;ならびにColigan et al., Current Protocols in Protein Science (John Wiley & Sons, Inc. 1995-1997)、特に第1、5および6章に記載される標準的プロトコルを用いて、従来法により調製することができる。例えば、グループCおよびグループDのプロトロンビン活性化因子を産生するのに使用することができるヘビ第V因子およびヘビ第X因子の組み換え産生は、Filippovic, I. et al (2005)およびBos, M.H.A. et al (2009)に記載されており、これらは各々、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。エカリンおよびエカリンのバリアントの組み換え産生の例示的なプロセスは、Yonemura, H. et al. (2004)および米国特許第6,413,737号に提供されており、これらの各々の全内容が参照により本明細書に組み入れられる。
4. 容器
本発明は、適当な血清試料を調製するための任意の適当な容器を想定している。米国特許第4,227,620号;米国特許第4,256,120号;米国特許第6,416,717号;米国特許第6,592,613号;米国特許第6,686,204号;米国特許第7,488,287号;米国特許第7,699,828号;欧州特許第0 628 816号に記載されるものならびに本明細書の実施例で使用されているものを含む市販の容器を含む、多くの適当な容器が、当技術分野で周知である。
いくつかの態様において、本発明にしたがって使用される容器はチューブであり、これにはガラス製またはプラスチック製チューブが含まれる。適当なプラスチックには、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリスチレンが含まれる。
容器は、適当な穿刺可能な隔壁またはキャップで真空化および端面封鎖され得る。これにより、両頭針を、一方の先端を患者の静脈に挿入し、その針の他端をチューブの端面を覆う隔壁またはキャップに穿刺して使用し、チューブ内の真空により血液試料を針経由でチューブ内に抜き取ることができるようになる。
容器は、任意の適当なサイズのものであり得る。いくつかの態様において、容器は、50μLから10mLの間の血液試料を収容するよう設計される。好適には、容器は、少なくとも50μL、100μL、150μL、200μL、250μL、300μL、350μL、400μL、450μL、500μL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、8mLまたは10mLの血液試料を収容するよう設計される。
いくつかの態様において、容器は、0.01から100μgのプロトロンビン活性化因子を含むか、該活性化因子から本質的になるか、または該活性化因子からなる凝固組成物を含有する。好適には、容器は、0.1から10μgのプロトロンビン活性化因子を含むか、該活性化因子から本質的になるか、または該活性化因子からなる凝固組成物を含有する。代表的な態様において、容器は、0.1から10μgのプロトロンビン活性化因子を含むか、該活性化因子から本質的になるか、または該活性化因子からなる凝固組成物を含有し、かつ4mLの血液試料を収容し、この4mLの血液試料中のプロトロンビン活性化因子の終濃度が25 ng/mLから2.5μg/mLとなるようになっている。
いくつかの態様において、容器は、0.0005から15μg/mLのプロトロンビン活性化因子を含むか、該活性化因子から本質的になるか、または該活性化因子からなる凝固組成物を含有する。好適には、容器は、0.005から10μgのプロトロンビン活性化因子を含むか、該活性化因子から本質的になるか、または該活性化因子からなる凝固組成物を含有する。
いくつかの態様において、容器は、0.0005から15 U/mLのプロトロンビン活性化因子を含むか、該活性化因子から本質的になるか、または該活性化因子からなる凝固組成物を含有する。好適には、容器は、0.0015から10 U/mLのプロトロンビン活性化因子を含むか、該活性化因子から本質的になるか、または該活性化因子からなる凝固組成物を含有する。いくつかの態様において、測定単位は、以下のように定義されるプロトロンビン活性化因子の測定単位である:1単位は、pH 8.4、37℃で1単位のアミド分解活性を生じるようプロトロンビンを活性化し、1アミド分解単位は、pH 8.4、37℃で毎分1.0μmoleのN-p-トシル-Gly-Pro-Arg-p-ニトロアニリドを加水分解するであろう。
いくつかの態様において、凝固組成物は、血液試料を容器に添加する前に、容器内に収容され得る。いくつかの態様において、凝固組成物は、血液試料を容器に添加した後に、容器に添加され得る。
凝固組成物が血液試料添加前に容器内に収容される場合、それは当技術分野で公知の任意の適当な方法によって容器に添加されたものであり得る。いくつかの態様において、凝固組成物は、適当な溶媒に溶解され、その後に容器に添加され、容器の内表面上で乾燥される。溶媒は、中性の緩衝液であり得る。溶液中の凝固組成物は、噴霧乾燥によってまたは凍結乾燥によってまたは当技術分野で公知の任意のその他の適当な方法によって容器の内表面上で乾燥され得る。いくつかの他の態様において、凝固組成物は、容器が凝固組成物を含む水溶液を含有するよう、適当な溶媒に溶解され、そして乾燥させずに容器に添加される。溶媒は、中性の緩衝液であり得る。
いくつかの態様においては、凝固組成物でビーズが被覆され、これらのビーズが容器に添加される。ビーズは、ガラスビーズまたは、ポリスチレンおよびプロピレンビーズを含む合成樹脂ビーズであり得る。ビーズは、球形の形状を有し得る。いくつかの態様において、ビーズの平均径は、0.1mmから1mmの間である。
いくつかの態様において、容器は、凝固実行後に、細胞凝血塊からの血清の分離を提供する。いくつかの態様において、容器は、細胞凝血塊と血清試料の間の障壁を提供するゲルを含むまたは含有する。いくつかの態様において、容器は、遠心分離により細胞凝血塊と血清試料を分離できるようまたは両者の分離状態の維持を補助することができるよう、適当な形状および適当な材料のものである。いくつかの態様においては、血清試料が細胞凝血塊から取り出される、または、細胞凝血塊が血清試料から取り出される。
いくつかの態様において、容器は、1つまたは複数のさらなる成分を含み得る。凝固組成物に加えるその他の成分には、例えば、1つもしくは複数の補因子、1つもしくは複数の界面活性剤、および/または1つもしくは複数の凝固剤が含まれ得る。
5. さらなる成分
本明細書に記載される凝固組成物は、本明細書で定義されるプロトロンビン活性化因子からなるか、該活性化因子から本質的になるか、または該活性化因子を含む。
上記の記載および本明細書の他箇所における類似の記載の中で使用される場合、「含む」(等)という用語は、凝固組成物がプロトロンビン活性化因子を内包し、かつ、任意の1つまたは複数のさらなる成分も内包し得ることを意味する。したがって、プロトロンビン活性化因子は必須成分であり、あらゆるその他の成分は任意であり、存在する場合も存在しない場合もある。その他の成分には、例えば、1つもしくは複数の補因子、1つもしくは複数の界面活性剤、および/または1つもしくは複数の追加の凝固剤が含まれ得る。
上記の記載および本明細書の他箇所における類似の記載の中で使用される場合、「から本質的になる」(等)という用語は、凝固組成物がプロトロンビン活性化因子を内包し、かつ、プロトロンビン活性化因子の活性または作用に干渉または寄与しない限り、1つまたは複数のその他の成分も内包し得ることを意味する。したがって、プロトロンビン活性化因子は必須成分であり、その他の成分は任意であり、それらがプロトロンビン活性化因子の活性または作用に影響するかどうかに依存して、存在する場合も存在しない場合もある。
上記の記載および本明細書の他箇所における類似の記載の中で使用される場合、「からなる」(等)という用語は、凝固組成物がプロトロンビン活性化因子を内包し、かつ、それに限定されることを意味する。したがって、「からなる」というフレーズは、プロトロンビン活性化因子が必須成分であること、および、その他の成分(例えば、補因子または凝固剤)が存在し得ないことを示す。
したがって、いくつかの態様において、凝固組成物は、未精製のヘビ毒を含むがこれらに限定されないヘビ毒を含み得る。いくつかの他の態様において、凝固組成物は、ヘビ毒の部分精製または完全精製によって調製されたプロトロンビン活性化因子の調製物を含み得る。そのような調製物は、本明細書および他書に記載されるものを含むクロマトグラフィーおよびゲルろ過法を含む、当技術分野で公知の任意の適当な方法によって調製され得る。いくつかの他の態様において、凝固組成物は、精製されたプロトロンビン活性化因子または単離されたプロトロンビン活性化因子を含み得る。精製および単離されたプロトロンビン活性化因子は、本明細書および他書に記載されるものを含む当技術分野で公知の任意の適当な方法によって調製され得る。
好適な凝固剤には、珪藻土、無機ケイ酸塩の微粒子または粒子、マイクロシリカ、ガラス微粒子、エラグ酸、トロンビン、ヘパリナーゼ、トロンボプラスチン、バトロキソビン、ヒドロキシアパタイト、カオリン、カオリン粒子、プロトロンビン(微粒子化プロトロンビンを含む)、フィブリノゲンおよび解重合コラーゲンが含まれるがこれらに限定されない。
6. 血清試料
上記の通り、本発明は、本明細書で定義されるプロトロンビン活性化因子が分析物の検出に適した血清試料を調製するのに適した凝固剤であるという発見を部分的に前提としている。分析物の検出に適した血清試料は、本明細書で議論されるような適当な品質のものおよび/または本明細書で議論されるような適当な時間内に調製されるものである。
したがって、本発明のいくつかの態様は、分析物を検出するための血清の調製における、プロトロンビン活性化因子を含む凝固組成物、該活性化因子から本質的になる凝固組成物、または該活性化因子からなる凝固組成物の使用であって、血清が≦30μg/mLのフィブリノゲンまたはフィブリノゲン/フィブリン関連産物を含む、使用を提供する。より具体的な態様において、血清は、≦25μg/mL、≦20μg/mL、≦15μg/mL、≦10μg/mL、≦8μg/mLまたは≦6μg/mLのフィブリノゲンまたはフィブリノゲン/フィブリン関連産物を含む。
いくつかの態様において、血清は、血清を得た元の試料に存在するフィブリノゲンまたはフィブリノゲン/フィブリン関連産物の≦30%、≦20%、≦10%、≦9%、≦8%、≦7%、≦6%、≦5%、≦4%、≦3%、≦2%、≦1%、≦0.5%、≦0.2%、≦0.1%を含む。
フィブリノゲンおよび/またはフィブリノゲン/フィブリン関連産物のレベルは、MP Biomedicals製の抗体およびNIBSC, Potters Bar, Hertsfordshire, London, UKから購入する標準フィブリノゲン調製物を用いるサンドイッチ免疫アッセイを含む、当技術分野で公知の任意の適当な方法によって決定することができる。
分析物の検出に適した血清試料の調製における別の重要な要素は、凝固後の血清中に残存する細胞または細胞残屑の活性または数である。細胞の存在は、血清または血漿の保管および分析時に2つの影響を示し得る。第1に、細胞は溶解されて細胞成分(例えばカリウム、乳酸デヒドロゲナーゼ)を血清または血漿中に放出し得る。これにより、遠心分離直後に行われる測定と一定期間保管後の測定との間で有意な差異が生じ得る。第2に、細胞は、保管時に、代謝的に活性であり続け、そして有意な量の栄養分(例えば、グルコース)を消費し代謝産物(例えば、乳酸塩)を放出し得る。変化は、試料を、その試料が健常な参加者由来である場合に通常推奨される30分間の凝固時間保持したときでさえも、多くのチューブの試料において観察され得る。したがって、細胞混入の程度は、血清試料における重要な品質基準であり、血漿よりも血清を使用する重要な利点である。
したがって、いくつかの態様において、血清試料は、それを調製する元となった血液試料中の細胞の50%、40%、30%、20%、10%、5%または1%未満を含む。
いくつかの態様において、血清試料は、24時間、12時間、8時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間または30分間の期間の間に<25%、<20%、<15%または<10%の、乳酸デヒドロゲナーゼ活性またはリン酸濃度の変化(典型的には、それぞれ、U/Lおよびmmol/Lで測定される)を含む。いくつかの態様において、血清試料は、(例えば血清試料を調製した時点から)24時間、12時間、8時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間、1時間または30分間の期間の間に<5%、<4%、<3%、<2%、<1%、<0.5%または<0.1%の、グルコース濃度またはカリウム濃度の変化(両方とも、典型的には、mmol/Lで測定される)を含む。乳酸デヒドロゲナーゼ活性を測定する方法は当技術分野で周知である、例えば、その内容の全体が参照により本明細書に組み入れられるDimeski, G., et al. (2004)を参照のこと。
血清試料のヘモグロビン濃度も、その血清試料が分析物の検出に適しているかどうかを決定するのに使用することができる。したがって、いくつかの態様において、血清試料は、<150 mg/L、<100 mg/L、<90 mg/L、<80 mg/L、<70 mg/L、<60 mg/L、<50 mg/L、<40 mg/L、<30 mg/L、<20 mg/Lまたは<10 mg/Lのヘモグロビン濃度を含む。
したがっていくつかの態様において、本発明は、関心対象の分析物を検出するための血清試料を生成する方法であって、該方法が、本明細書で定義されるプロトロンビン活性化因子を含む凝固組成物、該活性化因子から本質的になる凝固組成物、または該活性化因子からなる凝固組成物と血液試料を接触させる工程を含み、血清試料が、凝固組成物との接触から25、20、15、10、8、6、5、4、3、2、1または0.5分以内に調製される、方法を提供する。
7. 血液試料
本明細書で議論されているように、すべての血液試料から血清試料を生成するのに適した凝固組成物またはすべての血液試料を適当な時間内に凝固させるであろう凝固組成物を含む容器の提供に対する要望がある。
試験が希望され得る様々なタイプの血液試料の例には、健常個体由来の血液、クエン酸加血、EDTAを添加した血液、抗凝固治療(例えば、ヘパリン、ワルファリン、クエン酸塩またはリバロキサバン)を受けている患者由来の血液、抗アスピリンを含む血栓薬剤を摂取している患者由来の血液、アスピリンを含む抗血栓剤を摂取している患者由来の血液、血小板減少症患者(血小板数が少ない患者)由来の血液、およびaPTT延長患者由来の血液が含まれる。
いくつかの態様において、血液試料は、全血試料である。いくつかの他の態様において、血液試料は、全血試料由来の血清試料である。この事例における例示的な血清試料には、血清試料中のフィブリノゲンもしくはフィブリノゲン/フィブリン関連産物の量および/または細胞もしくは細胞物質の量ならびに/またはヘモグロビンの量が血清試料としては多すぎるため分析物の検出に適した試料ではないとみなされる場合を含む、より高品質の血清試料が望まれる場合の、血清試料が含まれる。例えば、当該血清試料は、微小凝血塊または潜在性の凝固を呈し得る。いくつかの他の態様において、血液試料は、全血試料由来の血漿試料である。例えば、血漿試料は、微小凝血塊または潜在性の凝固を呈し得る。
8. 分析物の検出
いくつかの態様において、本発明は、分析物の検出方法であって、本発明の方法によって調製された血清試料を、関心対象の分析物の存在または量に関して分析する工程を含む、方法をさらに提供する。
特定の態様において、本発明の方法によって調製される血清試料は、複数の分析物の試験に適しており、複数の分析物の検出に使用することができるものである。本明細書で議論されているように、多くの場合、医師は、患者由来の1つの血液試料に対して複数の分析物の試験を実施することを望むであろうし、1つの血清試料を少なくとも20の試験、またはそれ以上、時には50〜60または70〜80もの試験に使用することも非日常的ではない。特定の態様において本発明は、1つの血清試料に対してすべての望まれる分析物試験を実施できる、十分な量および品質の血清試料の生成を提供することが、当業者に理解されるであろう。この利点は、対象から採取する血液の量および分析物試験を実施するのに要する時間の両方を減らせることである。
カリウムレベルは、多くの場合、利尿薬または心臓薬を摂取している患者、高血圧または腎疾患、重篤なアシドーシスおよびアルカローシス状態の患者、ならびに腎臓透析または点滴による静脈内療法を受けている患者においてモニタリングされる。
9. 診断方法
本発明はまた、対象における疾患または状態の存在、非存在または重篤度を診断する方法であって、疾患または状態の存在、非存在または重篤度が、対象における関心対象の分析物の存在、非存在または異常な量に関連する、方法を提供する。これらの方法は概ね、上記の広い意味で記載されている方法にしたがい調製された血清試料を用意する工程;および血清試料中の分析物の存在、非存在または異常な量を検出し、それによって対象における疾患または状態の存在、非存在または重篤度を決定する工程を含む。
疾患または状態は、血清試料を用いて診断することができる任意の適当な疾患または状態であり得、それには異なる分析物試験に関して概説されている上記の疾患または状態が含まれるがこれらに限定されない。
いくつかの態様において、この方法は、これまでに対象によって示されていない疾患または状態の存在または非存在を診断する工程を含み得る。他の態様において、この方法は、対象がこれまでに示した疾患または状態の存在、非存在または重篤度を診断する工程を含み得る。この方法は、それ以前の時点で対象から得られた結果の参照を包み得る。あるいは、参照結果は、標準分析参照(standard analytical reference)であり得る。
いくつかの態様において、この方法は、試験施設、例えば病理検査室において実施される。いくつかの他の態様において、この方法は、「ポイントオブケア(point-of-care)」法である。本明細書で使用される場合、「ポイントオブケア法」は、その方法が、患者を治療する場所でまたはその付近で実施されることを意味する。ポイントオブケア法は、病院およびその他の迅速に結果を得ることが望まれる環境において徐々に認知されるようになってきており、多くの場合、移動型、可搬型および携帯型の機器および試験キットの使用を通じて実施される。
ポイントオブケア試験の利点には、病院のベッド脇で、特に緊急な状況下で、迅速に分析結果を得ることができること、および自宅または医師の診察室で分析結果を得ることができること(例えば、皮膚穿刺により得られる毛細管血の小滴を用いて)、が含まれる。
現在市場で入手可能なポイントオブケアデバイス用のデバイスには、Siemensから販売されている、Siemens' DCA Vantage Analyzerと呼ばれる免疫アッセイ用分析装置、Millenium Biotechnology, Inc.から販売されている、患者のHIV感染状態と彼らの現在の免疫状態を同時に決定するために使用される、Retro-STATUS HIV/CD4 350高速試験デバイス、および、Alere Internationalにより販売されている、早発型子癇前症の検出に使用されるTriage PLGF試験が含まれる。
10. 調査ツール
本発明はまた、本発明にしたがい生成された血清試料を利用する調査ツールの使用を想定している。これらの方法は概ね、上記の広い意味で記載されている方法にしたがい調製された血清試料を用意する工程;およびゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクス、システムバイオロジー、分子メージングまたはアッセイ研究を含むがこれらに限定されない調査ツール研究において血清試料を利用する工程を含む。
適当な調査ツールは、当技術分野で周知であり、これにはその内容全体が参照により本明細書に組み入れられるScaros, O. et al., 2005に記載されるものが含まれる。ゲノミクスには、遺伝学および遺伝子発現パターンと治療応答との間の相関関係を研究する薬理ゲノミクスが含まれる。プロテオミクスは、システム内のタンパク質の量および分布の分析を実現する。メタボロミクスまたは生化学プロファイリングは、システム内の代謝産物の研究である。システムバイオロジーは、生物学的システム全体を一つの機能単位と見て、そのシステムが刺激に対してどのような応答をするかを潜在的に予測することができる挙動モデルを生成する。分子イメージング技術は、インビボで特定の分子標的のレベルおよびその標的の機能状態の両方を実証する能力を有し、診断方法において使用することができる。
実施例1:ヘビ毒由来のプロトロンビン活性化因子の精製および特性決定
実施例1a:エキス・カリナトゥス毒由来のエカリン、カリンアクチバーゼ-1およびカリンアクチバーゼ-2の精製および特性決定
この実施例では、エキス・カリナトゥスの毒に由来する、エカリンと命名されたA群プロトロンビン活性化因子、ならびにカリンアクチバーゼ-1(CA-1)およびカリンアクチバーゼ-2(CA-2)と命名された2つのB群プロトロンビン活性化因子の精製および特性決定について説明する。
凍結乾燥されたエキス・カリナトゥス毒(157mg;Sigma Chemical Co, USA;カタログ番号V8250)を、8mLの0.05M Tris-HCl pH 8.0緩衝液に溶かし、そのまま30分間静置して溶解させた上で、不溶性材料を除去するために遠心した(1000gで10分間)。再構成した体積7.7mLの清澄溶液をSuperdex 200ゲル濾過クロマトグラフィーカラム(カタログ番号17-1043-02)(2.5×95cm) GE Healthcare Bio-Sciences, Sweden)にローディングし、溶出には同じTris-HCl緩衝液を用いた。カラム流速は20mL/hrとし、4mLずつの画分を収集した(15分間の分画)。以下でさらに詳細に説明するように、正常クエン酸加血漿に対する凝固活性によって、活性画分を決定した。プロトロンビン活性化因子活性を呈するプール画分は合計100mLで構成され、A280の総計は28.3単位であった。図1は、上記のようにSuperdex 200カラムによるゲル濾過を用いた、エキス・カリナトゥス毒からのエカリン、カリンアクチバーゼ-1およびカリンアクチバーゼ-2の単離における溶出プロフィールを示している。3種のプロトロンビン活性化因子(エカリン、カリンアクチバーゼ-1およびカリンアクチバーゼ-2)のプール画分は、図1中のバーによって表示されている。
これらのプール画分を速やかに、同じ0.05M Tris-HCl緩衝液pH 8.0であらかじめ平衡化したBlue Sepharose(2.0×12cm)(Sepharose 6 Fast Flow(カタログ番号17-0948-01)にCibacron Blue 3Gを結合させたもの)(GE Healthcare Bio-Sciences, Sweden)カラムに適用した。カラム容積のおよそ2倍量の初期緩衝液で洗浄した後に、同じ緩衝液中のNaClの直線的勾配(0〜1.0M;各ビーカー200mL)を用いて、結合した物質を溶出させた。カリンアクチバーゼ-1は非結合画分中に回収され、カリンアクチバーゼ-2およびエカリンはそれぞれ0.2Mおよび0.5MのNaClで溶出された。以下でさらに詳細に説明するように、30mMカルシウムの存在下および添加カルシウムの非存在下における正常クエン酸加血漿の凝固アッセイによって、プロトロンビン活性化因子活性を同定した。特異的プロトロンビン活性化因子活性を有する画分(各3mL)を、凝固時間に対するその各々の比凝固活性別にプールし、その後に、Amicon撹拌式セル濃縮器Model no. 42にてYM 10膜を用いて1mg/mLに濃縮した。クロマトグラフィーはすべて、必要な流速に設定された黒ないし紫のチャンバーを用いるGilsonペリスタポンプ、280nmで2段階の減衰を設定したAltex二波長UV検出器、および時間軸での分画収集を用いるLKB 7000 ULTRORACフラクションコレクターを用いて、4℃で行った。図2はこのBlue Sepharoseクロマトグラフィーの溶出プロフィールを示しており、バーはカリンアクチバーゼ-1、カリンアクチバーゼ-2およびエカリンのプール画分を指し示している。得られた画分を、4℃、-20℃の緩衝液、または-20℃の50%グリセロール緩衝液のいずれかの中で貯蔵した。プロトロンビン活性化因子を含有するこれらの画分(調製物)を、別段の指定のある場合を除き、以後のすべての実験に用いた。
プロトロンビン活性化因子活性は、Masci et al., 1988に記載された方法を用いてアッセイした。本質的に、このアッセイ方法は、Austen, D. E., et al. 1975による記載のように、Hyland-Clotek装置を用いる凝固アッセイを伴う。正常志願者由来の新たにプールされたクエン酸加血漿を、実験の各群用に用いた。調製物に関する凝固時間アッセイは、Kini, R. M., 2005においてA群およびB群プロトロンビン活性化因子に関して定義された基準に基づいて行った。アッセイは、B群プロトロンビン活性化因子(カリンアクチバーゼ-1およびカリンアクチバーゼ-2)を同定する目的にはカルシウム(30mM Ca2+)の存在下で、A群プロトロンビン活性化因子(エカリン)を同定する目的には添加カルシウム非存在下で実施した。プロトロンビン活性化因子によるトロンビン生成の形成の尺度となる、ペプチドp-ニトロアニリドS-2238に対する加水分解活性は、分光光度計(Hitachi U2800)のセル区画中、25℃での、10mM CaCl2の存在下または非存在下における0.90mLの0.02M Tris-HCl緩衝液(pH 7.4)および100μLのS-2238(3mM、水溶液)の平衡化によって決定した。反応は、プロトロンビン活性化因子調製物の25μLアリコートをプロトロンビン(250nM)に添加することで開始させ、p-ニトロアニリンの放出を405nmで測定した。1単位の活性は基質1pmol/分の加水分解に等しい。他のペプチドニトロアニリドを基質として用いるアッセイも、最終濃度を100μMとして同じ様式で行った。
実施例1b:シュードナジャ・テクスティリス毒由来のPtPAおよびオキシウラヌス・スクテラトゥス毒由来のOsPAの精製および特性決定
この実施例では、シュードナジャ・テクスティリスおよびオキシウラヌス・スクテラトゥスというヘビの毒由来のC群プロトロンビン活性化因子の精製および特性決定について説明する。これらのプロトロンビン活性化因子はそれぞれ、PtPAおよびOsPAと略記される。
乾燥凍結されたP.テクスティリス毒を、pH 7.4の0.05M Tris-HCl中にて再構成した。図3は、再構成したP.テクスティリス毒の、pH 7.4の0.05M Tris-HCl緩衝液中のSephracryl S-300カラムでの溶出プロフィールを提示している。「A」はボイドボリュームを指し、「B」はPtPAに関する溶出位置(Ve)を表しており、それはこのカラムでは250mLであり、概算分子質量250kDaと同等とみなされる。「B」の下の280nmでの吸光度(A280)は、カラムに適用したA280総単位の40%に相当する。オキシウラヌス・スクテラトゥス毒を用いた類似のゲル濾過実験により、ローディングしたA280の総計のおよそ10%が250kDaピーク(プロトロンビン活性化因子に対応)にて溶出されたことが示された。
0.05M Tris-HCl、pH 7.4中でCon A-Sepharose 4Bを用いるアフィニティークロマトグラフィーを用いて、P.テクスティリス毒およびオキシウラヌス・スクテラトゥス毒の粗製物からプロトロンビン活性化因子を精製した。溶出緩衝液は、0.01%アジ化ナトリウムを含む0.2Mのメチルα-D-マンノピラノシドとした。PtPAに関するCon A-Sepharoseでの溶出プロフィールを図4に示している。矢印は溶出緩衝液の適用を指し示しており、「a」はプロトロンビン活性化因子を得るためにプールした画分を指し示している。図5は、pH 8.6でのネイティブPAGEの結果を指し示している。図4のピーク「a」は、1レーン当たり25μg(A)および50μg(B)のローディングで、1つの主タンパク質バンドおよび1つの微量マイナーバンドを示した。並行実験で250kDaバンドをゲルから切り出したところ、発色性基質S-2222に対する第Xa因子様活性を有することが示され、PtPAとしてのその実体が確かめられた(図6)。OsPAについても類似の溶出パターンが得られた。
β-メルカプトエタノールの存在下(「還元」と表記)および非存在下(「非還元」)におけるSDS-PAGEによって、PtPAおよびOsPAの特性をさらに決定した(図7)。いくつかのバンドはPtPAおよびOsPAの両方に存在し、構成ポリペプチド鎖に相当することが明白である。
この方法に従って調製した、PtPAを含有する調製物およびOsPAを含有する調製物を、別段の指定のある場合を除いて、以後のすべての実験に用いた。
実施例1c:ノテキス・スクタトゥス毒由来のノテカリンの精製および特性決定
上記の実施例1bでC群プロトロンビン活性化因子について説明したのと類似の様式で、ノテカリンと命名されたD群プロトロンビン活性化因子を、ノテキス・スクタトゥスの毒から、Sephacryl S-300ゲル濾過クロマトグラフィー(5.0×9.5cm)を用いて精製した。溶出プロフィールは図8に示されており、ここで「PA」はノテカリンを含有する画分のことを指す。
この方法に従って調製した、ノテカリンを含有する調製物を、別段の指定のある場合を除いて、以後のすべての実験に用いた。
実施例1d:カリンアクチバーゼ-1、カリンアクチバーゼ-2、エカリン、PtPA、OsPAおよびノテカリンのさらなる特性決定
実施例1a、1bおよび1cで調製したプロトロンビン活性化因子調製物の特性を、以下のようにさらに決定した。
pH 8.9でプロトロンビン、α-トロンビンおよびプロトロンビン活性化因子のネイティブPAGEを行い、その結果を図9に示しているが、ここで表示は以下の通りである:(I)プロトロンビン;(II)α-トロンビン;(III)エカリン;(IV)カリンアクチバーゼ-1;(V)カリンアクチバーゼ-2;(VI)PtPA;(VII)OsPA;(VIII)ノテカリン(20μgの各プロトロンビン活性化因子をローディングした)。
また、プロトロンビン活性化因子調製物の特性を、β-メルカプトエタノールの存在下(図10)および非存在下(図11)におけるSDS-PAGEによってさらに決定した。各図において、レーンは以下の通りである:(1)カリンアクチバーゼ-1;(2)カリンアクチバーゼ-2;(3)エカリン;(4)PtPA;(5)OsPA;(6)ノテカリン;(7)トロンビン;および(M)分子量マーカー。レーン(4)におけるPtPA含有試料およびレーン(5)におけるOsPA含有試料は、図7に示した結果に関して用いたものと同じとした。
このSDS-PAGEは、いずれの場合にも予想された領域内にタンパク質バンドが存在することを示すが、調製物が均一ではないことも示している。プロトロンビン活性化因子調製物のタンパク質濃度は、1mg/mL溶液のA280が1であるという関係を用いて算出し、モル濃度は、タンパク質濃度をそれらの分子量に関する文献値によって除算することによって算出した。このため、本明細書に記載された、これらの調製物を用いる以後の実験で引用しているモル濃度は、調製物が均一でないことから、高位推計値である。
実施例2:プロトロンビン活性化因子によるプロトロンビンのトロンビンへの変換
実施例2a:5分間のインキュベーション期間
この実験の目的は、実施例1で調製したヘビ毒由来の6種類のプロトロンビン活性化因子、すなわち、エカリン、カリンアクチバーゼ-1、カリンアクチバーゼ-2、PtPA、OsPAおよびノテカリンを含有する調製物によって、室温での5分間のインキュベーション後に、どの程度のプロトロンビンがトロンビンに変換されたかを明らかにすることとした。
実験は以下の通りに行った。
20mM HEPES緩衝液pH 7.4、150mM NaCl、5mM CaCl2、0.05%界面活性剤p20を調製した。
精製ヒトプロトロンビンのストック溶液(17.8mg/mL;#HCP-0200;HTI, USA)を蒸留水で1/50に希釈して0.36mg/mLのワーキング溶液を得ることによって、ヒトプロトロンビン溶液を0.05M Tris-HCl pH 7.4中にて調製し、チューブ内の最終濃度が72μg/mLまたは0.99μMになるようにした。ゲルへのローディングには、0.36mg/Lのプロトロンビン溶液を用いた。
前記の通りに調製したプロトロンビン活性化因子調製物のストック溶液を希釈して、最終濃度6nMを得た。
ストックのα-トロンビン(10mg/mL、#HCT-0020;HTI, USA)を、0.01% Tween 20を含有する蒸留水で(1/30に)希釈し、0.33mg/Lのトロンビンワーキング溶液を得て、それをSDS-PAGEゲルへのローディングに用いた。
続いて、試料を表3に示した体積で調製し、室温で5分間インキュベートした。
上記の試料中のプロトロンビン活性化因子は以下の通りとした:(1)プロトロンビン活性化因子なし(緩衝液中にヒトプロトロンビンのみ);(2)カリンアクチバーゼ-1;(3)カリンアクチバーゼ-2;(4)エカリン;(5)PtPA;(6)OsPA;(7)ノテカリン;および(8)高純度αトロンビン(プロトロンビン活性化因子なし)。
用いたSDS PAGEゲルはnUView Precast Mini Gel(#NB10-420、4〜20%)であり、泳動緩衝液にはTris-Glycine(#BG-143)を用いた。試料緩衝液(#BG-145)(NuSEP, Australia)を入手し(すなわち、非還元性試料緩衝液)、5% β-メルカプトエタノール(#44143、BDH, UK)を含む当該試料緩衝液の還元性試料緩衝液を調製した。
5分間のインキュベーション後に、各試料からの40μLアリコートを、等量の非還元性試料緩衝液または還元性試料緩衝液の中に移した。続いて、試料を加熱ブロックにて100℃で10分間インキュベートした。各試料の25μLアリコート、および12μLの着色済み分子量マーカー(#SM0671 Page Ruler Prestained Protein Ladder, Fermentas, Hanover, MD, USA)をゲル上にローディングした。Mini-Protein II Cell PAGE装置(Bio-Rad)を用いて、色素の先端がゲルの底部に達するまで100Vでゲルの泳動を行った。ゲルをCommassie Brilliant Blue G(#B-0770, Sigma)(0.25% w/vのCommassie Brilliant Blue G、45%メタノール、10%酢酸)で染色し、余分な着色剤を脱色液(45%メタノール、45%水および10%酢酸)によって除去した。
結果は図12に示されており、ここで図12Aはβ-メルカプトエタノールを含まない試料緩衝液(非還元性試料緩衝液)を用いたSDS-PAGEゲルを示し、図12Bは5% β-メルカプトエタノールを含有する試料緩衝液(還元性試料緩衝液)を用いたSDS-PAGEゲルを示している。上記の表3に用いた試料番号は図12中のゲルにおけるレーン番号と同じであり、「m」は分子量マーカーを表している。
この実験により、PtPAおよびOsPAによってプロトロンビンはトロンビンに5分間で完全に変換されるが、これらの条件下で他のプロトロンビン活性化因子調製物によってはほとんど変換が起こらないことが示された。
実施例2b:PtPAによる変換およびノテカリンによる変換の経時的推移
PtPA(6nM)による、およびノテカリン(6nM)による、プロトロンビン(14μM)のトロンビンへの変換の経時的推移を決定した上で、SDS-pageゲルの結果を図13に示しているが、ここで各レーンには、実施例2aに類似した方法を用いた、以下の表4に示された通りのインキュベーション時間の順に番号を付している。
(表4)図13に示された各レーンに関するインキュベーション時間
これらの結果は、プロトロンビンのトロンビンへの変換に関して、PtPAはノテカリンよりも効率的であるが、ノテカリンであっても、長い反応時間の後にはプロトロンビンの完全な切断をもたらすことを示している。
実施例2c:実施例2bの結果から選択したバンドのN末端シークエンシング
プロトロンビンに対するPtPAおよびノテカリンの作用(すなわち、プロトロンビンのトロンビンへの断片化)によって生成された、実施例2bでのSDS-PAGEの結果から選択したバンドを溶出させ、特定の分子ドメインに対応づける目的で、質量分析を用いるN末端シークエンシングに供した。これらの結果は図14に示されている。SDS-PAGE N末端シークエンシングにより、α-トロンビン重鎖に対応するN末端配列IVEGSDAを有する主バンドによって示されるように、PtPAおよびノテカリンによるプロトロンビンのα-トロンビンへの変換が確かめられた。
実施例2d:速度論的分析による、生成されたトロンビンの推定
この実験は、濃度0.6nMの各プロトロンビン活性化因子(エカリン;カリンアクチバーゼ-1;カリンアクチバーゼ2;PtPA;OsPA;およびノテカリン)によってプロトロンビンから生成されるトロンビンの量を、速度論的分析を手段として決定するためにデザインされた。
種々の濃度のトロンビンを含有する試料、および上に列記したプロトロンビン活性化因子のうちの1つを含有する試料について、発色性トロンビン基質S-2238から生成されるp-ニトロアニリン(pNA)の吸光度を405nmで連続的にモニタリングした。
トロンビン試験用として、各キュベットに、50μLのS-2238基質(134μM)、50μLの種々の濃度(0.25〜30nMの範囲)のトロンビン、および900μLのHEPES緩衝液を含有させた。図15は、図16に示された標準曲線を作成するのに用いた、トロンビンによるS-2238加水分解に関する反応進行曲線を示している。
プロトロンビン活性化因子の試験用として、各キュベットに、50μLのプロトロンビン(247nM)、10μL(0.6nM)のプロトロンビン活性化因子(エカリン、カリンアクチバーゼ-1、カリンアクチバーゼ-2、PtPA、OsPAまたはノテカリン)、100μL(267μM)のS-2238基質、および840μLのHEPES緩衝液を含有させた。図17および表5に示されているように、155秒の時点で各プロトロンビン活性化因子に関する反応勾配を決定し、155秒の時点で生成されたトロンビンの量を図16中の標準曲線から読み取った。
(表5)0.6nMのプロトロンビン活性化因子によって155秒間で生成されたトロンビンの量
プロトロンビン活性化因子調製物はすべて、予想された通りにトロンビンを生成させたが、この場合もPtPAおよびOsPAが最も効率的であった。
これらの結果は、C群プロトロンビン活性化因子(PtPAおよびOsPA)が、プロトロンビンをトロンビンに加水分解するのに最も効率的な酵素であることを示している。このことは、S-2238基質を加水分解して有色生成物pNAを形成させることができる、形成されたトロンビンの量によって確かめられた。次に効率的なプロトロンビン活性化因子は、S-2238のほぼ4%を加水分解することが示されたエカリンであり、その次はカリンアクチバーゼ-2(2.5%)、続いてカリンアクチバーゼ-1であり、最後にノテカリン(<1%)は、この精製系において最も効率の低いプロトロンビン活性化因子であった。D群プロトロンビン活性化因子(例えば、ノテカリン)は、この系に存在しなかった第Va因子、カルシウムおよびリン脂質を必要とするが、これらはすべて血液中には存在する。
実施例2e:プロトロンビン活性化因子によるトロンビンからのトロンビン生成の比較速度に関する速度論的試験
この実験は、各プロトロンビン活性化因子調製物によって純粋なプロトロンビンから生成されるトロンビン形成の速度を決定するためにデザインした。
各キュベットには、50μLのプロトロンビン(247nM)、10μLの種々のプロトロンビン活性化因子、100μL(267μM)のS-2238基質および840μLのHEPES緩衝液を含有させた。
各プロトロンビン活性化因子について、S-2238加水分解(トロンビン活性)に関する反応進行曲線を、0.006〜6nMの範囲にわたる3〜5種類の濃度で決定した。データは、DynaFit 4.04.64 Enzyme Kinetic Data Analysis Software(BioKin Ltd, Watertown, MA, USA)(Kuzmic, P., 1996)を用いて解析した。
トロンビンにより触媒されるS-2238加水分解のカーブフィッティング分析は、図18に示されている。
続いて、速度論的パラメーターを以下の通りに計算した:
モデル:B → B + pNA + P(S-2238のトロンビン加水分解に関する擬一次速度定数)、式中:
B = トロンビン;
pNA = p-ニトロアニリン;
P = 阻害生成物;
S-2238は過剰に存在し、このため反応には含めていない。
微分方程式は以下の通りである:
d[B]/dt = -kb[B]+kb[B];
d[pNA]/dt = +kb[B];および
d[P]/dt = +kb[B]。
表6は、トロンビンに関する速度論的パラメーターの推定値を示した。
(表6)トロンビンに関する速度論的パラメーターの推定値
プロトロンビン活性化因子に関する速度定数の推定:
モデル:
A + Z → A + B:ka(プロトロンビンの活性化に関する二次速度定数);
B → B + pNA + P:kb;
式中、
A = プロトロンビン活性化因子。
微分方程式は以下の通りである:
d[A]/dt = -ka[A][Z]+ka[A][Z];
d[Z]/dt = -ka[A][Z];
d[B]/dt = +ka[A][Z]-kb[B]+kb[B];
d[pNA]/dt = +kb[B];および
d[P]/dt = +kb[B]。
PtPAに関する速度論的パラメーターを推定した上で、表7に示している。
(表7)PtPAに関する速度論的パラメーターの推定値
トロンビン生成の速度:
= ka(s-1 M-1)×60(s)×10-6
= 40.3μMトロンビン/分/Mプロトロンビン/M活性化因子
= 40.3nmolトロンビン/mL/分/μmolプロトロンビン/μmol活性化因子
図19は、PtPAによるプロトロンビンの活性化をプロットしたものであり、種々の濃度のPtPA(0.006〜0.12nM)とプロトロンビンとの反応速度、および続いて生成されたトロンビンと発色性基質S-2238との反応速度、ならびにPtPAによるプロトロンビンの活性化に関する最良適合曲線を明示している。点線は実験結果であり、実線は最良適合として算出されたものである。これらの実験による反応進行曲線と算出された反応進行曲線は十分な一致を示す。
続いて、OsPAに関して速度論的パラメーターを推定した上で、表8に示している。
(表8)OsPAに関する速度論的パラメーターの推定値
トロンビン生成の速度:
= 44.0nmolトロンビン/mL/分/μmolプロトロンビン/μmol活性化因子
図20はOsPAによるプロトロンビンの活性化をプロットしたものであり、種々の濃度のOsPA(0.006〜0.24nM)とプロトロンビンとの反応速度、および続いて生成されたトロンビンと発色性基質S-2238との反応速度、ならびにOsPAによるプロトロンビンの活性化に関する最良適合曲線を明示している。点線は実験結果であり、実線は最良適合として算出されたものである。これらの実験による反応進行曲線と算出された反応進行曲線は十分な一致を示す。
続いて、エカリンに関して速度論的パラメーターを推定した上で、表9に示している。
(表9)エカリンに関する速度論的パラメーターの推定値
トロンビン生成の速度:
= 2.76μMトロンビン/分/μMプロトロンビン/μM活性化因子
= 2.76nmolトロンビン/mL/分/μmolプロトロンビン/μmol活性化因子
図21はエカリンによるプロトロンビンの活性化をプロットしたものであり、種々の濃度のエカリン(0.24〜1.2nM)とプロトロンビンとの反応速度、および続いて生成されたトロンビンと発色性基質S-2238との反応速度、ならびにエカリンによるプロトロンビンの活性化に関する最良適合曲線を明示している。点線は実験結果であり、実線は最良適合として算出されたものである。これらの実験による反応進行曲線と算出された反応進行曲線は十分な一致を示す。
続いて、カリンアクチバーゼ-1に関して速度論的パラメーターを推定した上で、表10に示している。
(表10)カリンアクチバーゼ-1に関する速度論的パラメーターの推定値
トロンビン生成の速度:
= 0.24μMトロンビン/分/μMプロトロンビン/μM活性化因子
= 0.24nmolトロンビン/mL/分/μmolプロトロンビン/μmol活性化因子
図22はカリンアクチバーゼ-1によるプロトロンビンの活性化をプロットしたものであり、種々の濃度のカリンアクチバーゼ-1(0.24〜1.2nM)とプロトロンビンとの反応速度、および続いて生成されたトロンビンと発色性基質S-2238との反応速度、ならびにカリンアクチバーゼ-1によるプロトロンビンの活性化に関する最良適合曲線を明示している。点線は実験結果であり、実線は最良適合として算出されたものである。これらの実験による反応進行曲線と算出された反応進行曲線は十分な一致を示す。
続いて、カリンアクチバーゼ-2に関して速度論的パラメーターを推定した上で、表11に示している。
(表11)カリンアクチバーゼ-2に関する速度論的パラメーターの推定値
トロンビン生成の速度:
= 1.91μMトロンビン/分/μMプロトロンビン/μM活性化因子
= 1.91nmolトロンビン/mL/分/μmolプロトロンビン/μmol活性化因子
図23はプロトロンビンのカリンアクチバーゼ-2活性化をプロットしたものであり、種々の濃度のカリンアクチバーゼ-2(0.24〜1.2nM)とプロトロンビンとの反応速度、および続いて生成されたトロンビンと発色性基質S-2238との反応速度、ならびにカリンアクチバーゼ-2によるプロトロンビンの活性化に関する最良適合曲線を明示している。点線は実験結果であり、実線は最良適合として算出されたものである。これらの実験による反応進行曲線と算出された反応進行曲線は十分な一致を示す。
続いて、ノテカリンに関して速度論的パラメーターを推定した上で、表12に示している。
(表12)ノテカリンに関する速度論的パラメーターの推定値
トロンビン生成の速度:
= 0.043μMトロンビン/分/μMプロトロンビン/μM活性化因子
= 0.043nmolトロンビン/mL/分/μmolプロトロンビン/μmol活性化因子
図24はノテカリンによるプロトロンビンの活性化をプロットしたものであり、種々の濃度のノテカリン(0.24〜6.0nM)とプロトロンビンとの反応速度、および続いて生成されたトロンビンと発色性基質S-2238との反応速度、ならびにノテカリンによるプロトロンビンの活性化に関する最良適合曲線を明示している。点線は実験結果であり、実線は最良適合として算出されたものである。これらの実験による反応進行曲線と算出された反応進行曲線は十分な一致を示す。
各プロトロンビン活性化因子に関する推定された活性化速度定数およびトロンビン生成速度の概要を、表13に提示した。
(表13)種々のプロトロンビン活性化因子に関する推定された活性化速度定数およびトロンビン生成速度の概要
種々のプロトロンビン活性化因子とトロンビン基質S-2238との間の反応はみられず、同じくプロトロンビンとS-2238との反応もみられなかった。活性化速度データの定数により、C群プロトロンビン活性化因子(PtPAおよびOsPA)が、プロトロンビンをトロンビンに加水分解するのに最も効力が強いことが確かめられた。事実、それらの有効性はエカリンおよびカリンアクチバーゼ-2の20倍を上回り、カリンアクチバーゼ-1の200倍を上回り、ノテカリンのおよそ1000倍を上回った。推定されたトロンビン生成速度は一様に同じ効力比を示し、C群活性化因子が最も多量のトロンビンを生じさせることができ、以下、エカリン、カリンアクチバーゼ-2、カリンアクチバーゼ-1の順であり、ノテカリンが最も効率が低かった。実施例2dで指摘したように、ノテカリンは活性のために補因子を必要とする。
以下の実施例で用いた材料および方法
以下の実施例において記載されている箇所では、以下の材料および方法を用いた。
(A)試料を調製するための容器
血清試料または血漿試料の調製のための典型的な容器(例えば、チューブ)は、以下のものを含む:(1)遠心分離時に細胞(および血清の場合には凝血塊)を血漿または血清と分離するため、およびその後の再混合(re-mixing)が確実に起こらないようにするためのゲル障壁;(2)その後の細胞溶解を最小限に抑える目的で管壁への細胞およびタンパク質の付着を防ぐために、内壁を覆う界面活性剤;ならびに(3)血清試料の調製のための凝固過程を増強する凝固促進剤(例えば、シリカ粒子)または血漿試料の調製のための抗凝固剤(例えば、ヘパリンリチウム、クエン酸またはEDTA)。
この実施例では、以下に説明するように、血清試料または血漿試料を調製するために、いくつかの市販のチューブを用いた。
Greiner Vacuette(商標)血漿チューブ。これはGreiner社によって商品番号456083として供給されている血漿分離用チューブである。チューブの内壁は、抗凝固剤として作用する噴霧乾燥ヘパリンリチウム(89 IU)でコーティングされている。本チューブはまた、チューブの底部に分離ゲルも含有する。Greiner社は、このゲルが血漿と血液細胞との間に安定的な障壁を形成するように作用して、パラメーターを最長48時間にわたり安定に保たせると述べている。充填容量は5.0mLである。
Becton Dickinson(BD)Vacutainer(商標)血漿チューブ(BD PST II)。これはBD社によって商品番号367375として供給されている血漿分離用チューブである。各チューブは、77 IU/mLのヘパリンリチウム(0.2〜1.0mg)を抗凝固剤として含有する。本チューブは、遠心分離時に細胞と血漿との間に障壁を形成するアクリルゲル(0.8〜1.9g)を含有する。BD社は、このゲルが、フィブリンならびに測定可能な白血球、赤血球および血小板の減少によって実証されている血漿純度の向上、ならびに、ほとんどの分析物が25℃で24時間にわたり安定であるという理由から分析物安定性の向上をもたらすと述べている。充填容量は4.0mLである。
Greiner Vacuette(商標)血清チューブ。このチューブは、Greiner社によって商品番号456078として供給されている。本チューブは、シリカ粒子を凝固活性化因子として含有する。充填容量は4.0mLである。このチューブにおける推奨凝固時間は30分間である。
Becton Dickinson(BD)Vacutainer(商標)血清チューブ(BD SST II)。このチューブは、BD社によって商品番号367954として供給されている。このチューブは、血清試料を入手して分離するために用いられる。各チューブは、0.20〜2.56mgの非晶質(または溶融)シリカを凝固剤として含有するほか、遠心分離後に凝血塊と血清との間に障壁を形成するゲル(0.90〜3.50g)も含有する。BD社は、このチューブについて30分間の凝固時間を推奨している。充填容量は4.0mLである。
Becton Dickinson(BD)Vacutainer(商標)Rapid 血清チューブ(BD RST)。このチューブは、BD社によって商品番号368771として供給されている。本チューブは、トロンビンをベースとする医療用凝固剤およびゲルを含有する。BD社は、これらのチューブが、凝固した試料を5分以内にもたらし(すなわち、標準的な市販の血清チューブよりも凝固が迅速)、かつ「フィブリン形成が最小限」であると主張している。充填容量は4.0mLである。
Greiner Vacuette(商標)No Additiveチューブ。これらは、Greiner社によって商品番号45400として供給されている、添加物を含まない(プレーン)プラスチック製チューブであり、以下の実施例で説明するように、これにプロトロンビン活性化因子を特定の濃度で添加した。
Sarstedt血清チューブ。このチューブはカタログ番号5092503として供給されており、淡褐色の上端を有し、充填容量は4.7mLである。これらのチューブは、シリカ粒子およびゲル障壁を含有する。
Terumoプレーンチューブ。このチューブは、商標VENOSAFEとして、カタログ番号VF-076SPで供給されており、充填容量は6.0mLである。これらのチューブはシリカ粒子およびゲル障壁を含有する。
Terumo Red Top(RT)チューブ。このチューブは、商標VENOSAFEとして、カタログ番号VF-108SASで供給されており、充填容量は8.0mLである。これらのチューブはシリカで内面コーティングされており、ゲル障壁を有する。
Greiner Vacuette(商標)クエン酸チューブ。このプラスチック製チューブは3.2%クエン酸を含有し、充填容量は4.0mLである。本チューブはカタログ番号454327として販売されている。
Greiner Vacuette(商標)K2EDTAチューブ。このプラスチック製チューブは8mM EDTAを含有し、4.0mLの充填容量を有する。本チューブはカタログ番号454023として販売されている。
(B)試料分析‐CLOTEK ANALYSER
Clotek analyser(Hyland, USA)は、チューブを機器内に挿入した際に垂直方向に振動する磁性球を含有する試料チューブを用いる。チューブが振動する間、磁性鋼球は磁場によって適切な位置に保持される。試料、緩衝液、±カルシウムおよび凝固促進剤を添加して、タイマーを作動させる。トロンビンはフィブリノーゲンを凝固しうるフィブリンに変換させるが、検出可能な凝血塊を形成するために必要な時間が凝固時間である。凝血塊形成の時点で鋼球は浮上磁場および光路から外れ、光線が光電セルに当たって、タイマーを停止させる(Austen, D. E., et al. 1975 and Staff, H., et al., 1980)。
(C)試料分析‐トロンボエラストグラフィー
トロンボエラストグラフィー(TEG)は、凝血塊の形成および溶解の速度、ならびにその形成および溶解の際の凝血塊の弾性特性を決定することによって、全血の凝固を測定する。以下のいくつかの実施例で記載されている箇所では、TEG分析を行った。
TEG分析は、Thrombelastograph(登録商標)5000(TEG, Haemoscope Corporation Pty Ltd, Niles, IL, USA)を、TEG Analytical Softwareバージョン4とともに用いて行った。
TEG分析のために本明細書で用いた凝固パラメーターは以下の通りであった:
R‐反応時間(秒/分):分析の開始からTEGトレースの振幅が2mmに達するまでの時間であり、これは検出可能な凝血塊形成を指し示す;
α‐角度:フィブリン形成および架橋結合の速度(すなわち、凝血塊強化)の尺度;
MA‐最大振幅(mm):凝血塊の最大強度;
TMA‐分析の開始からMAに達するまでの時間(秒/分);ならびに
K‐時間(秒):凝血塊形成の開始から曲線が振幅20mmに達するまでの時間。
上記の凝固パラメーターが表示されているTEGプロット(凝血塊形成部分)の一例は、図25に提示されている。凝血塊溶解パラメーターは含めなかったため、凝固パラメーターのみが提示されている。
実施例3:毒液プロトロンビン活性化因子による血漿試料の凝固
実施例3a:PtPAおよびウシトロンビンによる正常クエン酸加血漿の凝固時間の比較
添加カルシウム(10mM)の存在下および非存在下において、PtPA(実施例1dに概略を説明した通りに調製)およびウシα-トロンビン(3276 U/mg;Sigma Chemical Co.)によるプールクエン酸加血漿(6人の正常参加者由来の血漿の混合物)の凝固時間を、2つずつの試料で測定した。
結果は表14に示されており、ここで値は2回ずつの実験の平均である。
(表14)Hyland-Clotek機器で測定した、PtPAおよびウシトロンビンによるクエン酸加血漿の凝固時間(秒)
# 脆弱な凝血塊を観察
PtPAは、カルシウム再加の存在下および非存在下のいずれにおいても、0.1pMという低い濃度でクエン酸加血漿を効率的に凝固させた。濃度1nMでは、100nMで達成された4.2秒という最短凝固時間に近い、約6秒という凝固時間が得られた。
これらの結果はまた、クエン酸加血漿(カルシウム再加の存在下および非存在下とも)を凝固させるのに、PtPAがウシトロンビンよりもモルベースで約3×104倍、効率的であることも示している。例えば、10mMの添加カルシウムの存在下において、1pM PtPAは30nMトロンビンと同じ凝固時間をもたらし、0.1pM PtPAは3nMトロンビンと極めて類似の凝固時間を有していた(表14における太字の値)。
実施例3b:プロトロンビン活性化因子による正常クエン酸加血漿の凝固時間
この実験には、実施例3aと同じ血漿を用いた。
各Clotekチューブに、100μLの正常「プール」クエン酸加血漿、100μLのTris緩衝液(150mM Tris HCl、150mM NaCl、pH 7.4)、50μLの0.2M CaCl2または食塩水、および50μLの各凝固促進剤(プロトロンビン活性化因子調製物またはトロンビンのいずれか)を含有させた。
正常「プール」クエン酸加血漿(カルシウム再加の存在下および非存在下)を用いた、各プロトロンビン活性化因子調製物およびトロンビンによる凝固の結果を表15および16に示している。これらの表(および他所)において、CA-1はカリンアクチバーゼ-1のことであり、CA-2はカリンアクチバーゼ-2のことである。
(表15)カルシウムの存在下での、種々のプロトロンビン活性化因子調製物およびトロンビンによる正常「プール」クエン酸加血漿の凝固時間
(表16)カルシウムの非存在下での、種々のプロトロンビン活性化因子調製物およびトロンビンによる正常「プール」クエン酸加血漿の凝固時間
これらの結果は、添加カルシウムの存在下において、プロトロンビン活性化因子のすべて(群A〜Dに相当)が、正常クエン酸加血漿を効率的に凝固させたことを示している。
クエン酸加血漿はカルシウムが完全に欠乏しているわけではない。正常クエン酸加血漿における総カルシウム濃度はほぼ1.3mmol/Lであり、イオン化カルシウム濃度は測定不能である(0.25mmol/L未満)。しかし、クエン酸はカルシウムのキレート剤であり、試料中のカルシウムと結合するため、凝血塊形成のための遊離カルシウムは容易には得られない。カルシウムはプロトロンビナーゼ複合体の一部であり、プロトロンビンからトロンビンへの触媒作用において重要な役割を果たす。クエン酸はマグネシウムイオンおよび亜鉛イオンを含む他の金属イオンとも結合する。チューブ内に存在するクエン酸の量である0.109mol/Lは、チューブ内の金属イオンのすべてをキレート化するのに十分な量よりも多い。
これらの結果により、A群プロトロンビン活性化因子であるエカリンは、添加カルシウムの存在下では血漿の凝固について2倍を上回る有効性を有し、したがって、カルシウムはエカリンが凝血塊形成を促進する能力の有意な強化をもたらすことが示された。B群プロトロンビン活性化因子であるカリンアクチバーゼ-1およびカリンアクチバーゼ-2は、カルシウムの欠如によって強く影響を受け、活性がほぼ4分の1に低下し、このことからカルシウムがこれらのプロトロンビン活性化因子による凝固活性を強化することが確かめられた。D群プロトロンビン活性化因子であるノテカリンの活性は添加カルシウムの存在によって賦活され、カルシウムの必要性はノカテリン濃度が低い場合に最も明白であり、カルシウムの添加によってその有効性はほぼ30%増大した。
トロンビン自体は、カルシウムを添加しないことによって、より低い程度の影響を受けた。トロンビン自体は、カルシウムを必要とするプロトロンビンの凝固カスケードを介して、試料中でトロンビン形成を生じさせる。このため、試料プロトロンビンから形成されるトロンビンの量は、カルシウムの非存在下では減少する。
凝固促進剤が高濃度で存在する場合、凝固促進剤の効力のため、凝固促進剤のカルシウム依存性は低下した。この結果により、C群プロトロンビン活性化因子であるPtPAおよびOsPAは、添加カルシウムの存在下または非存在下のいずれにおいても、正常「プール」クエン酸加血漿を凝固させるのに最も効率的であることが示された。事実、カルシウムの欠如は、これらの2種の凝固促進剤の凝固能力に対して、ごくわずかな違いしかもたらさなかった。添加カルシウムの存在を伴う場合も伴わない場合も、C群プロトロンビン活性化因子は、5分未満で凝固を達成するのにほぼ0.1nMを必要とした。
実施例3c:PtPAによるクエン酸加血漿試料およびフィブリノーゲンの凝固時間
PtPAが、以下のカルシウム再加クエン酸加血漿試料および精製フィブリノーゲンの試料を凝固させる能力を、以下の2つずつの試料で判定した:
(i)クエン酸加血漿;
(ii)Al(OH)3によって吸着させたクエン酸加血漿(Al(OH)3による吸着により、プロトロンビンおよび他のγ-カルボキシグルタミン酸(GLA)含有タンパク質が除去される);
(iii)長期ワルファリン療法を受けている患者由来のクエン酸加血漿(国際標準比(INR)が4.0を上回る);
(iv)Al(OH)3によって吸着させた、長期ワルファリン療法を受けている患者由来のクエン酸加血漿(INRが4.0を上回る);
(v)先天性欠乏症患者から入手した、第X因子欠乏性のクエン酸加血漿;
(vi)先天性欠乏症患者から入手した、第V因子欠乏性のクエン酸加血漿;および
(vii)(微量のプロトロンビンを除去するために)Al(OH)3による吸着を行った、精製ヒトフィブリノーゲン(2mg/mL、等張食塩水中)。
(iii)および(iv)に関して、ワルファリンは、プロトロンビンの10個のN末端グルタミン酸残基にγ-カルボキシル基を挿入する酵素である肝γ-カルボキシラーゼを阻害する。ワルファリン血漿はこのため、プロトロンビンの非カルボキシル化前駆体であるデスカルボキシプロトロンビンを含有し、これはAl(OH)3による吸着によっては除去されない。
(v)および(vi)に関して、第Xa因子および第Va因子は、ヒトプロトロンビナーゼ複合体の必須構成要素である。第X因子欠乏性および第V因子欠乏性の血漿は、Ortho-Diagnostics, USAによって供給された。
結果は表17に示されている。
(表17)クエン酸加血漿試料(i)〜(vi)およびフィブリノーゲン試料(vii)の凝固時間
* この実験では、異なるPtPA調製物を用いたため、上記の表14におけるよりも凝固活性が低い。
n.d.は、測定値を判定しなかったことを意味する。
# PtPAを全く添加しない場合には、すべての試料に0.1単位のウシトロンビン(Parke-Davis、現在はPfizer, USA)を陽性対照として添加した。トロンビン添加後に観察された迅速な凝固により、すべての試料におけるフィブリノーゲンの存在が確かめられた。
表17における結果は、以下のことを示している:
(1)Al(OH)3で吸着させたクエン酸加血漿(試料(ii))はPtPAによって凝固しなかったことから、PtPAによる凝固のためにはプロトロンビンが必要である;
(2)PtPAはワルファリン血漿(試料(iii)および(iv))を凝固させ、このことはデスカルボキシプロトロンビンがPtPAによってα-トロンビンに変換されうることを指し示している;
(3)Al(OH)3によって吸着させたワルファリン血漿(試料(iv))に関する結果は、ワルファリン血漿中の微量の正常プロトロンビンはAl(OH)3によって除去されたと考えられることから、デスカルボキシプロトロンビンがα-トロンビンに変換されることを裏づける;
(4)第Xa因子は、PtPAによる凝固のために必要ではない(試料(v)に関する結果);
(5)第Va因子は、PtPAによる凝固のために必要ではない(試料(vi)に関する結果);および
(6)PtPAはフィブリノーゲン溶液を凝固させることができず、したがって、トロンビン様酵素としては機能しない。
以上をまとめると、これらの結果は、PtPAによって誘導される凝固がプロトロンビン活性化に起因すること;デスカルボキシプロトロンビンがPtPAによってトロンビンに効率的に変換されること;第Xa因子および第Va因子が、PtPAによるプロトロンビン活性化のためには必要でないこと;ならびにPtPAがこれらの条件下ではフィブリノーゲンをフィブリンに変換させないことを示している。
実施例3d:EDTA処理血漿の凝固
生化学分析のために受け取る試料(血清試料またはヘパリンリチウム加血漿試料)のうち、少ないとはいえ無視できない割合で、EDTAが混入している。このため、プロトロンビン活性化因子がEDTA血漿およびEDTA全血を凝固させるのに有効であったか否かを判定することは重要である。このことから、この実施例は、EDTA血漿およびEDTA全血の試験の比較を行えるように、以下に実施例5bとして提示されている。
実施例3e:ワルファリンを投薬された参加者由来のクエン酸加血漿の、プロトロンビン活性化因子による凝固
ワルファリンは一般的に用いられる抗凝固剤であり、このため、この実験の目的は、プロトロンビン活性化因子(エカリン;カリンアクチバーゼ-1;カリンアクチバーゼ-2;PtPA;OsPA;およびノテカリン)がワルファリン投薬患者由来の試料を凝固させる能力に、ワルファリン療法が影響を及ぼすか否かを判定することとした。
INRに基づく凝固時間(ワルファリン投与量と関連)が異なる(1.1〜7.6)参加者の血漿試料を選択し、種々の凝固促進剤(プロトロンビン活性化因子およびトロンビン)を用いて検査した。
Clotekチューブに、100μLのヘパリンリチウム加血漿、100μLのTris緩衝液(150mM Tris HCl、150mM NaCl、pH 7.4)、50μLの0.2M CaCl2、および50μLの各凝固促進剤を含有させた。
結果は表18および19に示されている。これらの表および他所で用いる場合、CA-1はカリンアクチバーゼ-1のことであり、CA-2はカリンアクチバーゼ-2のことである。
(表18)プロトロンビン活性化因子による、ワルファリン投薬患者由来のカルシウム再加クエン酸加血漿を用いた凝固時間(秒)
(表19)PtPAおよびトロンビンによる、ワルファリン投薬患者由来のカルシウム再加クエン酸加血漿を用いた凝固時間(秒)
ワルファリンは、正常な第X因子(FX)およびプロトロンビンの、それらの活性前駆体(デスカルボキシ第X因子およびデスカルボキシプロトロンビン)からの合成の減少を招く。プロトロンビンおよびデスカルボキシプロトロンビンは、プロトロンビン活性化因子の標的となる基質である。プロトロンビンの減少は、プロトロンビン活性化因子によって生成されるトロンビンが少なくなり、それ故に、観察される凝固時間が延長することを意味する。トロンビンそれ自体はワルファリンによって阻害されず、したがって、この実験で観察されたように、トロンビンによる凝固時間は影響を受けない。この実験における結果により、カリンアクチバーゼ-1は、INRが2.9以上である血漿試料を凝固させることのできない唯一のプロトロンビン活性化因子であることが示された。この結果により、PtPAおよびOsPAは、ワルファリン服用中の患者由来の血漿に対して最も有効な凝固促進剤であることが示された。
実施例3f:プロトロンビン活性化因子によるFV欠乏血漿およびFX欠乏血漿の凝固
プロトロンビン活性化因子調製物を、市販のFV欠乏血漿(#0008466150)およびFX欠乏血漿(#0008466350)(Instrumentation Laboratory, Lexington, MA, USA)を凝固させる能力に関して、Clotek analyser(Hyland USA)を用いて検査した。
Clotekチューブに、100μLのFV欠乏血漿またはFX欠乏血漿、100μLのTris緩衝液(150mM Tris HCl、150mM NaCl、pH 7.4)、50μLの0.2M CaCl2、および50μLの各凝固促進剤を含有させた。凝固促進剤はすべて30nMの濃度とし、カリンアクチバーゼ-1を100nMの濃度で含有する別の試料についても検査した。
結果を表20に示す。
(表20)プロトロンビン活性化因子調製物およびトロンビンによるFV欠乏血漿またはFX欠乏血漿の凝固時間(秒)
「ND」は、それを判定しなかったことを意味する。
ノテカリンはFV欠乏血漿を5分間では凝固させることができず、その凝固効率はFXの非存在下でも低下した。その上、A群およびB群プロトロンビン活性化因子の凝固活性も、FVまたはFXの非存在下では低下した。C群プロトロンビン活性化因子であるPtPAおよびOsPAは、血漿を凝固させるのに明らかに最も効率的であり、血漿由来のFVまたはFXの必要性はなかった。
トロンビンによる凝固時間は、正常「プール」クエン酸加血漿での凝固時間と比較して、FV欠乏血漿およびFX欠乏血漿では3倍を上回って有意に増加した。
実施例3g:正常クエン酸加血漿またはヘパリン加クエン酸加血漿における、PtPAおよびOsPAによって生成されたトロンビンの量の推定
この実験は、PtPAおよびOsPAによって生成されるトロンビンの量の推定値を、種々の濃度を用いて、さらにヘパリンの存在下において得るようにデザインした。
健常参加者から、正常クエン酸加血漿をいくつかのチューブ(Greinerクエン酸チューブ)内に入手し、それを直ちに遠心してクエン酸加血漿をプールした。
用いたトロンビンはThrombin-JMI、局所用(ウシ)5000USP(GenTrac Inc, King Pharmacia, Middleton, WI, USA)であった。USP単位はIUに等しく、1 IUは9nMに等しい。用いたトロンビン基質はS-2238であった(25mgのストック溶液 MW 626 Daを15mLに溶解させて、2.67mMとした(#820324 Chromogeinix IL Lexington MA, USA)。用いたヘパリンは5000 IU/5mL(1000 IU/mL)のヘパリンナトリウム、Pfizer, NZであった。ヘパリンに関して、190.9 IU=1mgである(Canienzind, et al. 1997);モル濃度の計算には、ほぼ12000 Daという分子量を用いた。用いた緩衝液は以下のものであった:20mM Hepes緩衝液;150mM NaCl;pH 7.4;0.05%界面活性剤p20。
血漿インキュベーション用として、チューブに、0.5mLのクエン酸加血漿、50μLの0.5M CaCl2、および5〜40μLのトロンビンまたはプロトロンビン活性化因子に加えて、860、4300および8600nM(2、10および20 IU)の濃度を得るための20μLのヘパリン、または食塩水を含有させた。チューブを室温で5分間インキュベートした。この5分の期間の直後に、2本の木製アプリケータースティックを用いて凝血塊を囲み、取り出して廃棄した。
トロンビン活性アッセイ用として、分光測光用の各キュベットに、930μLの緩衝液、50μLのS-2238、および上記のインキュベーションにおいて各チューブから凝血塊を除去した後に残った清澄血清の20μLを含有させた。吸光度の変化を405nmで5分間モニタリングした。
図26は、種々の濃度のトロンビンを添加したチューブにおける、残留トロンビンの活性を示している。各曲線に関して、275秒の時点での勾配を250〜300秒の時間範囲を用いて決定し、続いて、図26および27に示されているように、トロンビン濃度に伴うこれらの勾配を用いて、さらに高いトロンビン濃度にわたって直線的関係を得るための対数形式で、標準曲線を作成した。
カルシウム再加血漿(凝固促進剤なし)は、室温で凝固するのにほぼ37分を要した。トロンビンを含有する試料はすべて、潜在性凝固を呈した。最も低濃度のトロンビンは、潜在性凝固を呈するのが最も遅かった(ほぼ3分)。潜在性凝固までの時間は、トロンビンの濃度が上昇するのに伴って減少した。200nMを上回る濃度のトロンビンを含む試料は、血清を分取する際に凝血塊を除去した直後に潜在性凝固を呈した。時には、測光分析用にチューブから十分な試料を確実に得るために2回目の凝血塊除去が必要であった。
種々の濃度のプロトロンビン活性化因子PtPAおよびOsPAを含有するが、ヘパリンを含まない試料について、結果は以下の通りであった。種々の濃度のPtPAを含有する分光測光用試料に関する結果は図28に示されており、種々の濃度のOsPAを含有する試料に関する結果は図29に示されている。
続いて、PtPAによって生成されたトロンビン濃度を5分時点での勾配に対してプロットし、その結果を図30に示し、続いて、OsPAによって生成されたトロンビン濃度を5分時点での勾配に対してプロットし、その結果を図31に示している。
種々のPtPAおよびOsPA濃度によって生成され、血清中で活性状態で残留しているトロンビンの濃度を推定した上で、表21に示している。
(表21)標準曲線回帰方程式、図27から決定した、種々の濃度のPtPAおよびOsPAによって生成され、血清中に存在する活性トロンビンの推定
これらの結果により、1.2nMのPtPAおよびOsPAによってさえ、非常に多くの量のトロンビンが生成されたことが指し示された。極めて少量のPtPAおよびOsPAでも、カルシウム再加正常クエン酸加血漿を5分未満で完全に凝固させることができた。潜在性凝固は全く観察されず、このことは、生成されたトロンビンの量が、完全にフィブリノーゲンに触媒作用を及ぼして潜在性凝固を防ぐのに十分であったことを指し示しており、それは極めて高品質の血清と同等と見なしうると考えられる。
種々の濃度のヘパリンを含有する試料に関して、結果は以下の通りであった。
第1に、4300nM(10 IU)ヘパリンの存在下において、トロンビン、PtPAおよびOsPAの活性を受けて、血清成分中に残留しているトロンビンの濃度を決定し、図32に示している(y軸のS-2238加水分解によるA405の変化/分は、トロンビン濃度に比例する)。135nMのトロンビンは血漿試料を完全には凝固させるこができず、わずか2〜3mmの「綿毛様」凝血塊が観察された。濃度6.1nMのプロトロンビン活性化因子はいずれも、4300nM(10 IU)のヘパリンを含有する試料をおよそ1分間で凝固させ、室温での24時間の貯蔵後にも潜在性凝固は観察されなかった。
続いて、種々のヘパリン濃度を用いて、反応が類似の性質のものであるか否かについて調べた。正常な参加者からの血漿が不十分であったため、正常プールクエン酸加血漿を、Coagulation Laboratory, Pathology Queensland, Princess Alexandra Hospitalから入手した。結果は図33(PtPA)および図34(OsPA)に示されている。
濃度1.5nMのPtPAおよびOsPAによって生成され、血清中に活性状態で残留しているトロンビンの量を推定した上で、表22に示している。
(表22)標準曲線回帰方程式、図27から決定した、1.5nMのPtPAおよびOsPAによって生成され、血清中に存在する活性トロンビンの推定
860および4300nm(2および10 IU)のヘパリンを含有する試料は2分以内で凝固し、潜在性凝固を全く示さなかった。凝血塊は固形状であったが、ヘパリンを含有しない試料で観察されたものほど固くはなかった。860nM(2 IU)のヘパリンを含有する試料では、ヘパリンを含有しない血漿試料のものの約25%のトロンビン活性が得られた。対照的に、8600nM(20 IU)のヘパリンを含有する試料では、「ゼリー様」凝血塊(トロンビンを含有する試料で形成された凝血塊の方に近い)が3分以内に生じ、続いて試料は潜在性凝固を5分以内に呈した。図33および34における、高いヘパリン濃度での反応進行曲線の形状の理由については不明である。
実施例3h:正常プールクエン酸加血漿を用いてBD RSTチューブによって生成されたトロンビンの量の推定、およびヘパリンの影響
この実験の目的は、種々の体積の血漿を充填したBD RSTチューブにおいて生成されて活性型で存在するトロンビンの量の推定値を得ることとした。さらに、BD RSTチューブの凝固能力に対するヘパリンの影響についても検討した。
正常プールクエン酸加血漿(経過24時間未満)を、Coagulation Laboratory, Pathology Queensland, Princess Alexandra Hospitalから入手した。
標準曲線用として、BD RSTチューブに、1、2、3および4mLのクエン酸加血漿、ならびに50μLの0.5M CaCl2を含有させた。チューブを8〜10回転倒混和させた上で、5分間インキュベートした。2本の木製アプリケータースティックを用いて凝血塊を囲み、取り出して廃棄した。
分光測光用キュベットに、930μLの緩衝液、50μLのS-2238、および上記の各BD RSTチューブから凝血塊を除去した後に残った清澄血清の20μLを含有させた。吸光度の変化を405nmで5分間モニタリングした上で、結果を図35に示している。図16中の標準曲線を用いて勾配からトロンビン濃度を推定して、図35による勾配に対してプロットした。4件の試料由来の凝血塊非含有血清における元のBD RSTチューブのトロンビン濃度および残留トロンビン濃度は以下の通りであった;それぞれ135nM対4.3nM;67.5nM対1.4nM;45nM対0.5nM;および33.8nM対0.3nM。トロンビンは凝血塊フィブリンに結合していると考えられるため、その大半は凝血塊除去時に除去された可能性が高い。
実施例3gに記載した純粋トロンビンを含む試料とは異なり、BD RSTチューブのそれぞれの中の各試料は1分以内で凝固し、潜在性凝固は全く観察されなかった。しかし、凝血塊の強度は、実施例3gに記載したPtPAまたはOsPAを用いて観察されたものよりも、はるかに脆弱なものであった。
種々の体積のクエン酸加血漿および種々のヘパリン濃度を含有する試料に関して、各試料の吸光度の変化を405nmで5分間モニタリングし、結果を図37に示している。高いヘパリン濃度での反応進行曲線の形状の理由は不明である。
3種のヘパリン濃度のいずれの存在下においても完全な凝固を生じた試料はなかった。最も強固な凝血塊は、830nM(2 IU)のヘパリンおよび1mLの血漿を含有する試料で観察されたものの、その凝血塊はヘパリンの非存在下における固い凝血塊よりも緩んだものであった。形成された最も脆弱な凝血塊は、4mLの血漿を充填した、8600nM(20 IU)のヘパリンを含有するチューブにおけるものであった。この凝血塊は「綿菓子」様であり、試料の一部のみにあった。ヘパリンを含有するチューブはすべて、5分後に何らかの潜在性凝固を示した。4300および8600nM(10および20 IU)のヘパリンを用いた実測曲線の形状は、PtPAおよびOsPAを用いて観察された曲線と極めて類似していた。
種々のヘパリン濃度および種々のトロンビン濃度の存在下における活性トロンビンの勾配および推定を、表23に示している。
(表23)図36中の標準曲線からの回帰方程式を用いた、BD RSTチューブからの、種々の濃度のヘパリンおよび種々の濃度のトロンビンの存在下における活性トロンビンの推定
この結果により、同じ公称トロンビン濃度(第2列)が、種々のヘパリン濃度の存在下において同程度の活性トロンビン濃度を生じさせたことが示された。凝固後に測定したトロンビン濃度は、公称濃度の数分の1に減少した。
実施例4:プロトロンビン活性化因子による、健常参加者由来の全血試料の凝固
実施例4a:エカリンによる凝固
この実験のために、エキス・カリナトゥス毒から精製されたエカリンをSigma社から購入した(カタログ番号EO 504-1 VL;バッチ番号128K 1536)。クエン酸加血液(凝固プロフィールが正常な3つの試料のプール)は、Pathology Queensland, Princess Alexandra Hospital, Queensland, Australiaから入手した。
1バイアル分のエカリン(50単位)を100μLのH2O中に再構成して、500単位/mLというストック濃度を得た。蒸留水によるこのストックの希釈物(1:100、すなわち5単位/mL;1:1000、すなわち0.5単位/mL;1:10000、すなわち0.05単位/mL)をTEGアッセイに用いた。各アッセイ混合物は、310μLのクエン酸加血液、20μLの0.2M CaCl2、および10μLの食塩水(対照)またはエカリン希釈物からなった。したがって、アッセイ混合物中のエカリンの濃度範囲は0〜0.15単位/mLであった。実験はすべて2回ずつ行った。結果は表24に示されている。
(表24)エカリンによるカルシウム再加クエン酸加血液試料の凝固に関するTEGの結果
カルシウム再加クエン酸加血液へのエカリンの添加は、R-時間およびTMAの両者の濃度依存的減少、ならびにMAのわずかな増加をもたらした。最も高い試験濃度である0.15単位/mLで、エカリンはR-時間を6.95分から2.1分に、TMAを26.45分から15.75分に減少させた。試験した最も低いエカリン濃度である0.0015単位/mLは、凝固時間および凝血塊強度に対して有意な影響を及ぼさなかったが、一方、濃度0.015単位/mLのエカリンは中間的な影響を及ぼした。
これらの結果は、エカリンも、臨床検査施設における分析物測定のための血清を迅速に生成させるのに有効なプロトロンビン活性化因子であることを示唆する。
実施例4b:6種のプロトロンビン活性化因子による正常「プール」カルシウム再加クエン酸加血液の凝固
実施例1に記載した通りに調製した、エカリン、カリンアクチバーゼ-1、カリンアクチバーゼ-2、PtPA、OsPAおよびノテカリンの精製調製物を用いた。6種のプロトロンビン活性化因子による、トロンビンによる、およびBD RSTチューブ内での、正常プールクエン酸加血液(実施例4aにおけるような)の凝固を、実施例4aに記載したように、TEGによって検討した。
結果は表25に提示されている。
(表25)種々の凝固促進剤による、正常「プール」カルシウム再加クエン酸加血液を用いたTEG凝固試験
これらの結果により、いずれのプロトロンビン活性化因子も血液を非常に効率的に凝固させること;ならびにC群プロトロンビン活性化因子(PtPAおよびOsPA)が、正常「プール」カルシウム再加クエン酸加全血を凝固させるのに最も有効であることという血漿凝固の所見(実施例3)に対して、さらなる裏づけが得られた。例えば、9pMのPtPAおよびOsPAは、約5分というR時間、およびMAの結果による確認で最大凝血塊強度を達成した。その次に有効なプロトロンビン活性化因子はD群プロトロンビン活性化因子であるノテカリンであり、これは0.09〜0.009nMという非常に低い濃度で、5分というR時間および最大凝血塊強度を生じることができた。ノテカリンそれ自体はFVaを含有しないものの、血漿中に存在するFVが、ノテカリンFXaによって形成される少量のトロンビンによって活性型に変換される。その次に有効なプロトロンビン活性化因子はA群プロトロンビン活性化因子であるエカリンであり、これは0.9〜3.2nMという非常に低い濃度で、所望のR時間および最大凝血塊強度を達成することができた。最も有効性が低かったプロトロンビン活性化因子は、B群プロトロンビン活性化因子であるカリンアクチバーゼ-1およびカリンアクチバーゼ-2であり、これらは5分未満のR時間および最大凝血塊強度を達成するために、それぞれ9nM以上および3nM以上の濃度を必要とした。所望のR時間および最大凝血塊強度を達成するために必要な最低トロンビン濃度は3nM以上であった。
実施例4c:市販の血清チューブとPtPA含有チューブとの比較
健常参加者からの血液を、留置翼状針を用いて以下のチューブ内に逐次的に採取した:
(1)4.0mL Greiner Vacuette(商標)No Additiveチューブ;
(3)Greiner Vacuette(商標)血清チューブ;
(4)BD Vacutainer(商標)血清チューブ;
(5)Sarstedt血清チューブ;
(6)Terumo RTチューブ;および
(7)Terumoプレーンチューブ。
チューブに、新たに収集した血液を必要な充填目盛りまで充填し、8〜10回の穏やかな転倒によって直ちに30秒間混合した。続いて、340μLの試料を即時分析のためにTEGカップ内に移した。この血液収集法により、市販のチューブ内で混合した直後にTEG分析のための血液試料の迅速な移送が可能になり、そのため、TEG分析には抗凝固剤もカルシウム再加も要しなかった。プレーンチューブからの血液の330μLアリコート(1)を直ちにTEGカップに移し、10μL(1.41μg)のPtPAを添加して(2)、分析を直ちに開始した。
TEGアッセイはすべて、2回ずつ行った。TEGパラメーター(2つずつの試料の平均)は以下の表26に示されている。
(表26)種々のチューブにおける健常参加者由来の血液に関するTEGの結果
表26のTEGパラメーターは図38中のTEGプロットに示されており、ここで:トレースAはプレーンプラスチック製チューブ(1)を表し;トレースBはPtPAを添加したプレーンチューブ(2)を表し;トレースCはGreiner血清チューブ(3)を表し;トレースDはBD血清チューブ(4)を表し;トレースEはSarstedt血清チューブ(5)を表し;トレースFはTerumo RTチューブ(6)を表し;かつトレースGはTerumo血清チューブ(7)を表している。
PtPAチューブ(2)内の血液試料は、TEGカップ内で最も迅速に凝固した(R時間=0.8分)。市販のチューブ(3)〜(7)におけるR時間は、Greinerチューブ(3)での3.0分からTerumoチューブ(7)での13.4分までさまざまであった。これらのR時間を、プレーンチューブ(1)での14.3分というR時間と比較することができる。市販のチューブ間でのR時間の違いは、これらのチューブにおける、異なる凝固促進剤および添加剤、ならびに/または異なる量の凝固促進剤もしくは添加剤の存在を反映すると考えられる。
すべてのチューブにおける凝血塊形成を目視的にも観察した。市販のチューブは標準的時間である30分間凝固させた。PtPA検体は5分間静置した。チューブを遠心機に投入する前に、凝血塊形成に関して目視検査した。チューブはすべて20℃、3000gで10分間遠心した。検体をほぼ21℃の室温で最長6時間貯蔵し、1時間間隔で潜在性凝血塊形成に関して検査した。PtPA含有チューブを含むすべてのチューブが固い凝血塊を形成し、PtPA含有チューブは固い不動性凝血塊を2分以内に形成した。いずれのチューブにおいても、収集後最長6時間にわたり潜在性凝固は観察されなかった。
この実施例は、少量のPtPAを含めることが、試験した市販のチューブのいずれにおけるよりも迅速な凝固を招いたことを示しており、このことは臨床検査施設における分析物測定のための待ち時間の短縮をもたらす血清の迅速生成の可能性を実証している。
実施例4d:PtPA、OsPA、エカリン、およびいくつかの市販のチューブによる正常クエン酸加血液の凝固
この実験の目的は、3種のプロトロンビン活性化因子:PtPA、OsPAおよびエカリンが、日常的に用いられる市販の3種の凝固チューブ:Greiner serum、BD SST IIおよびBD RSTにどの程度匹敵するかを調べることとした。
健常参加者からの血液をクエン酸含有チューブ内に収集した。
プロトロンビン活性化因子については、30μLの活性化因子(TEGカップ内でのPtPAおよびOsPAの濃度は0.56nM;エカリンは5.3nM)、20μLの0.2M CaCl2および290μLのクエン酸加血液をTEGカップに添加した。
市販の血清チューブについては、1mLの蒸留水を添加して、チューブの内容物を溶解させるためにローラー上でほぼ2時間混合させた。BD RSTは135nMウシトロンビン(33.8nM/mL血液)を含有するが、この実験においてTEGカップ内で用いた濃度は53nM/mLであった。市販の血清チューブについては、溶解した内容物45μL、20μLの0.2M CaCl2および275μLのクエン酸加血液をTEGカップに添加した。
結果は表27に示されている。
(表27)健常参加者からの自然血液を用いた、PtPA、OsPA、エカリンおよび日常的に用いられる市販の血清チューブによるTEGデータ
これらの結果により、日常的に使用される市販の血清チューブでは、目立った凝血塊形成がTEGによって検出された時間(R時間)がさまざまであり、健常参加者からのカルシウム再加クエン酸加血液については、その時間は0.5〜6.4分の範囲にわたることが実証された。これらのチューブの製造元は、血清チューブの遠心分離の前に最短で30分間の凝固時間を推奨している。これらの結果はまた、PtPAおよびOsPAが0.5nMで2分未満のR時間をもたらし、凝血塊強度も同等であったことから、それらが血清の迅速生成に用いるための凝固促進剤として評価するのに極めて好適であることも実証している。
実施例5:プロトロンビン活性化因子による、抗凝固剤を含有する全血試料の凝固
多くの血液試料が、ヘパリン、ワルファリンおよびクエン酸などの抗凝固剤を投与されている患者から採取される。加えて、血液試料の中には、EDTAおよびクエン酸などの抗凝固剤を含有するチューブ内に収集されるか;または収集過程において抗凝固剤が混入されるものもある。以下の実験は、プロトロンビン活性化因子による、抗凝固剤を含有する血液試料の凝固を検討するために行った。
実施例5a:健常参加者由来のクエン酸加血液またはEDTA処理血液の濃度依存的凝固
各TEGアッセイ混合物が、310μLのクエン酸加血液またはEDTA処理血液、20μLのCaCl2(0.2M)、および10μLの食塩水またはある濃度範囲にあるプロトロンビン活性化因子溶液(ストック溶液‐PtPA、4.8mg/mLまたはOsPA、2.0mg/mL)からなる、TEG分析を行った。結果は、図39、ならびにPtPAについては表28および29に、OsPAについては表30および31に示されている。
(表28)PtPAによる正常クエン酸加血液の凝固に関するTEGの結果
(表29)PtPAによるカルシウム再加EDTA処理血液の凝固に関するTEGの結果
(表30)OsPAによる正常クエン酸加血液の凝固に関するTEGの結果
(表31)OsPAによるカルシウム再加EDTA処理血液の凝固に関するTEGの結果
プロトロンビン活性化因子を添加していないカルシウム再加血液のR時間はおよそ10分であり、これは1.41μg/mLのPtPAの存在下では1分または1.3分に減少した(表28および29)。凝固速度は迅速であり(角度=54〜72゜)(0.0141〜1.41の間)、MA値が60〜70mmである十分な強度の凝血塊が得られた。プロトロンビン活性化因子を添加していないカルシウム再加血液のおよそ10分というR時間は、0.59μg/mLのOsPAの存在下では0.8分に減少した(表30および31)。
PtPAまたはOsPAの添加時に観察された非常に短いR-時間および大きなαは、大量のトロンビンの急激な生成によって説明することができ、一方、下流反応(フィブリノーゲンのフィブリンへの変換、第XIII因子の活性化、フィブリンモノマーの架橋結合)は律速的であり、その結果生じるTMAの改善は比較的小さい。
表28、28、30および31によるTEGの結果は図39に示されており、ここでTEGプロットAは表28の結果(クエン酸加血液およびPtPA)を示し;TEGプロットBは表29(EDTA処理血液およびPtPA)の結果を示し;TEGプロットCは表30の結果(クエン酸加血液およびOsPA)を示し、TEGプロットDは表31の結果(EDTA処理血液およびOsPA)を示している。
図39において、各TEGプロット内のAと表示されたトレースは、PtPAについては14.1μg/mL、OsPAについては5.88μg/mLに相当し;Bと表示されたトレースは、PtPAについては1.41μg/mL、OsPAについては0.588μg/mLに相当し;Cと表示されたトレースは、PtPAについては0.141μg/mL、OsPAについては0.0588μg/mLに相当する;Dと表示されたトレースは、PtPAについては0.0141μg/mL、OsPAについては0.00588μg/mLに相当し;Eと表示されたトレースは、PtPAについては0.00141μg/mL、OsPAについては0.000588μg/mLに相当し;かつ、Fと表示されたトレースは、PtPAについて0μg/mLまたはOsPAについて0μg/mLに相当する。
以上をまとめると、PtPAおよびOsPAはいずれも、カルシウム再加クエン酸加血液およびEDTA処理血液を効率の高い濃度依存的様式で凝固させる。したがって、実地において、生化学的分析および他の検査分析のためにPtPAまたはOsPAを添加することによって、EDTAチューブ内に収集された血液を迅速に凝固させて血清を生成させることが可能と考えられる。
実施例5b:健常参加者から入手したEDTA血漿および血液の凝固
上記の実施例3dで言及したように、生化学分析のために受け取る試料(血清試料またはヘパリンリチウム加血漿試料)のうち、少ないとはいえ無視できない割合で、EDTAが混入している。このため、プロトロンビン活性化因子がEDTA血漿およびEDTA全血を凝固させるのに有効であるか否かを判定することは重要である。この実験の目的は、それを行うこと、ならびにEDTA血漿およびEDTA全血の比較を行うこととした。
健常患者からの血液を、充填目盛りまで充填させた場合に1.8mg/mL(6.2mmol)のEDTAを含有するGreiner EDTAチューブ内に収集した。この濃度で、EDTAはチューブ内に存在する金属イオンのすべて(Ca2+、Mg2+、Fe2+、Zn2+およびCu2+を含む)と結合することができる。EDTA血漿を得るために、各試料の一部分を標準的なプロトコール下で遠心した。
Clotekチューブには、100μLのEDTA血漿、100μLのTris緩衝液(150mM Tris HCl、150mM NaCl、pH 7.4)、50μLの0.2M CaCl2またはTris緩衝液および50μLの各凝固促進剤を含有させた。
TEGカップには、20μLの0.2M CaCl2または食塩水、60μLの凝固促進剤および260μLのEDTA血液を含有させた。
BD RST実験用として、2本のチューブの内容物をそれぞれ1mLおよび4mLの蒸留水に溶解させ、5分間混合して、内容物の60μLを凝固促進剤としてTEGカップ内で用いた。
血漿凝固試験の結果は表32および表33に示されている。
(表32)カルシウムの存在下での、種々の濃度の種々の凝固促進剤(プロトロンビン活性化因子およびトロンビン)による、健常参加者から入手したEDTA血漿に関する凝固時間
「ND」は、それを判定しなかったことを意味する。
(表33)カルシウムの非存在下での、種々の濃度の種々の凝固促進剤(プロトロンビン活性化因子およびトロンビン)による、健常参加者から入手したEDTA血漿に関する凝固時間
BD RST血漿凝固試験の結果は表34に示されている。
(表34)カルシウムの存在下および非存在下における、BD RSTチューブに関する凝固時間
EDTAは、カルシウムをキレート化し、その結果として正常な凝固過程が起こるのを妨げる金属キレート剤である。
これらの結果は、カルシウム依存性プロトロンビン活性化因子であるカリンアクチバーゼ-1(CA-1)およびカリンアクチバーゼ-2(CA-2)は、50nMの濃度でも、5分未満の要求時間内にEDTA血漿を凝固させなかったが、カルシウム再加後には凝固させることができたことを示している。エカリンの効果は顕著であった:カルシウム再加を行わない場合、凝固時間は5分を上回った。過剰量のカルシウムの添加により、PtPAおよびOsPAによる凝固時間の中程度の短縮が引き起こされた(例えば、0.1nMのPtPAで190秒から98.6秒に)。本明細書に記載した他の例では、ノテカリンはPtPAおよびOsPAよりも凝固促進剤として有効性が低いことが示唆されているが、これらの結果により、これはカルシウムの欠如によって受ける影響が最も小さいプロトロンビン活性化因子であることが示された。過剰量のカルシウムの添加は、トロンビンによる血漿の凝固を3倍に増加させた。
全血凝固試験による結果は表35に示されている。
(表35)カルシウムの存在下および非存在下におけるEDTA血液に対する種々の凝固促進剤の効果を示すTEGの結果
*は測定を中止したことを意味し、NDはそれを判定しなかったことを意味する。
この実験により、EDTA全血は凝固促進剤にとっての難題となることが示された;EDTA血漿とは異なり、どの凝固促進剤もカルシウム再加の非存在下ではEDTA血液を凝固させることができなかった。非常に高いPtPA濃度(690nM)でも凝固は達成されなかった。しかし、いずれの凝固促進剤も、EDTA血液にカルシウム再加を行った場合には、EDTA血液を凝固させることができた。非常に低いPtPA濃度(1nM)を用いた場合でさえ、迅速かつ完全な凝固が達成された。EDTAは細胞形態の保持のために選択される抗凝固剤であり、カルシウムをキレート化することにより、EDTAは血小板活性化および血小板凝集も妨げる。
30nM PtPAを用いて、さらに2つの血漿凝固実験を行った。第1のものでは、ClotekチューブにTris緩衝液の代わりに水を添加したが、試料は依然として6.4秒で凝固した。第2のものでは、緩衝液を用いず、200μL EDTAおよび50μL PtPAのみを用いたところ、凝固時間は5.4秒であった。TEG試験用として、以下の溶液(50μL Tris緩衝液、60μL PtPA、230μL EDTA血液)をTEGカップに添加したところ、依然として凝固は観察されなかった。さらに、BD RSTチューブに充填目盛りまでEDTA血液を充填すると、60分後にはそれは極めて部分的な凝固を示した。これらの実験から、EDTAが存在する可能性がある場合には常に、凝固を達成するためには凝固促進剤とともにカルシウムの添加を考慮すべきであることが明白である。
実施例5c:ワルファリンを投与されている参加者由来の血液の凝固
ワルファリン投与を受けている2人の参加者(「W1」および「W2」)に由来する血液試料の凝固に対するPtPAおよびOsPAの効果を決定した。
標準的な凝固プロトコールによって決定した各参加者の凝固パラメーターは表36に示されており、ここで:
aPTT=活性化部分トロンボプラスチン時間;
PT=プロトロンビン時間;
INR=国際標準比;および
Fib-D=プロトロンビン時間由来フィブリノーゲン
である。
(表36)抗凝固剤治療を受けている参加者の凝固パラメーター
表36における結果は、参加者W1およびW2からの血液が予想通り抗凝固療法を受けていることを裏づけている。
続いてTEG分析を行った。各TEGアッセイ混合物は、310μLのクエン酸加血液、20μLのCaCl2(0.2M)および10μLの食塩水またはプロトロンビン活性化因子(PtPAまたはOsPA)の溶液からなり、プロトロンビン活性化因子の最終的なアッセイ濃度は0〜14.1μg/mLの間であった。
TEGの結果は以下の表37、38および39に示されている。それらの中の値は、図40および41に示されたTEGデータに由来する。
(表37)OsPAによるW1のクエン酸加血液の凝固に関するTEGの結果
(表38)PtPAによるW1のクエン酸加血液の凝固に関するTEGの結果
(表39)PtPAによるW2のクエン酸加血液の凝固に関するTEGの結果
表37および38における結果のTEGプロットは図40に提示されており、ここでTEGプロットAは表37(OsPA)による結果を示しており、TEGプロットBは表38(PtPA)による結果を示している。図40中、Aプロットに関して、(i)と表示されたトレースは5.88μg/mL OsPAについて、(ii)と表示されたトレースは0.588μg/mL OsPAについて、(iii)と表示されたトレースは0.0588μg/mL OsPAについて、(iv)と表示されたトレースは0μg/mLについての結果を示している。図40中、Bプロットに関して、(i)と表示されたトレースは14.1μg/mL PtPAについて、(ii)と表示されたトレースは1.41μg/mL PtPAについて、(iii)と表示されたトレースは0.0141μg/mL PtPAについて、(iv)と表示されたトレースは0μg/mLについての結果を示している。
図41中で、(i)と表示されたトレースは14.1μg/mL PtPAについて、(ii)と表示されたトレースは1.41μg/mL PtPAについて、(iii)と表示されたトレースは0.0141μg/mL PtPAについて、(iv)と表示されたトレースは0μg/mLについての結果を示している。
以上をまとめると、PtPAおよびOsPAはいずれも、ワルファリン療法を受けている参加者からの血液試料を低濃度で迅速に凝固させ、R時間、α値およびMA値は、健常参加者からの血液を用いた同等の実験(上記の表28〜31を参照)におけるものに類似していた。これらの結果は、実施例3cにおけるワルファリン血漿に関する観察所見を裏づけるものである。
実施例5d:PtPAおよびOsPAによる、高用量ヘパリン投与を受けた参加者からの血液の凝固
血液試料を採取する30分前に35,000 IUのヘパリンを投与された参加者(「H1」)から血液を採取した。ヘパリンの濃度は7 IU/mL血液と算出された。血液をプレーンシリンジ内に収集し、続いてGreiner Vacuette(商標)クエン酸チューブに移した。
参加者の凝固パラメーターを測定した上で、表40に示している。
(表40)ヘパリン投与を受けた参加者の凝固パラメーター
表40における凝固パラメーターはいずれも当技術分野において公知であり、以下の通りである:aPTT=活性化部分トロンボプラスチン時間;PT=プロトロンビン時間;INR=国際標準比;TT=トロンビン時間;PTNH=硫酸プロタミン時間;REPT=再活性化時間;Fib-D=プロトロンビン時間由来フィブリノーゲン。
表40における結果は、大量のヘパリンが添加された試料に関して予想された結果の範囲内にある。
続いてTEG分析を行った。各TEGアッセイ混合物は、310μLのクエン酸加血液、20μLのCaCl2(0.2M)および10μLの食塩水またはプロトロンビン活性化因子(PA)の溶液からなった。
TEGの結果は、以下の表41および図42に示されている。
(表41)極めて高用量のヘパリンを投与された参加者からの血液の凝固に関するTEGの結果
上記の表41において、「n.c.」は凝固なしを指し示している。
表41における結果のTEGトレースは図42に提示されており、ここでAと表示されたトレースはプロトロンビン活性化因子なしでの結果を示しており、Bと表示されたトレースは14.1μg/mL PtPAについての結果を示しており;かつ、Cと表示されたトレースは5.9μg/mL OsPAについての結果を示している。
試験した濃度で、PtPAおよびOsPAはいずれも、ヘパリン投与を受けている参加者からのクエン酸加血液を迅速に凝固させることができた。モニタリングしたTEGパラメーター(R-時間、TMA、角度、MA)に関する値は健常参加者の血液から得られた結果と同等であり、このことはプロトロンビン活性化因子の活性が、血液試料中に存在する濃度のヘパリンによって阻害されなかったことを指し示している。
実施例5e:PtPA含有チューブおよびBD RSTチューブによる、最大限にヘパリン投与を受けた参加者からの血液の凝固
試料収集の30分前に38,000 IUのヘパリンを投与された、心臓手術を受ける参加者から、10mLの血液試料を収集した。血液をプレーンシリンジ内に収集し、10分以内に分析のために検査施設に搬送した。
BD RSTチューブに充填目盛りまで充填して、転倒/混和を30秒間行い、この血液の340μLをチャンネル1におけるTEGカップに移した。
ヘパリン投与を受けた元の参加者血液試料の330μLを、チャンネル2におけるTEGカップ内の10μLのPtPAに添加した(最終濃度1.41μg/mL)。
TEG分析の結果は表42および図43に示されている。
(表42)BD RSTチューブにおける、およびPtPAによる、ヘパリン加血液に関するTEG分析の結果
BD RSTチューブに関して、R時間は6.2分、最大振幅(MA)値は11.5mmであり、このことは部分的凝固のみが達成されたことを指し示している。この凝血塊の強度は、2時間の分析期間中にさらに増大することはなかった。
PtPAを用いた場合、R時間は0.7分、最大振幅(MA)は43.8mm、および最大振幅までの時間は9.8分であり、このことは強固かつ安定な凝血塊が速やかに達成されたことを指し示している。
表42による結果は図43にもTEGプロットとして示されており、ここでトレース「A」はチャンネル2におけるTEGカップ(PtPA)のトレースであり、トレース「B」はチャンネル1におけるTEGカップ(BD RSTチューブ)のトレースである。
血液をプレーンシリンジ内に収集し、BD RSTチューブ内の血液を凝固に関して目視的にもモニタリングした。プレーンシリンジ内では最長2日間にわたり、凝固は全く観察されなかった。BD RSTチューブ内の血液は30分時点で部分的凝固を示し、24時間以内に完全な凝固を示した。
以上をまとめると、大量のヘパリンが添加された試料は、PtPAを含有するチューブ内では迅速かつ完全に凝固したが、BD RSTチューブ内では極めて緩徐に、しかも不完全に凝固したのみであった。
実施例5f:プロトロンビン活性化因子による、ヘパリンを含有する血液試料の凝固
毒液プロトロンビン活性化因子が、Greinerヘパリンリチウムチューブ(血液1mL当たり18 IUのヘパリン)内に収集した健常参加者由来の血液を凝固させる能力をTEG分析を用いて決定し、その結果を表43に示している。MA値の比較のためにクエン酸加試料を収集した。
(表43)健常参加者からGreinerヘパリンリチウムチューブ内に収集した血液を用いたTEGの結果
*は測定を中止したことを意味し、NDはそれを判定しなかったことを意味する。
ヘパリンリチウム加全血を用いたこの実験の結果により、凝固促進剤のいくつかは比較的低い凝固促進剤濃度でヘパリン加血液を凝固させうるが、他の凝固促進剤はこの実験で試験した最も高い濃度範囲でも血液を凝固させることができないことが示された。これらの結果は、C群凝固促進剤(PtPAおよびOsPA)が、Greinerヘパリンリチウムチューブ内に収集された血液を凝固させるのに最も有効であり、5分以内のR時間を達成するためには9nM以上のOsPAおよびPtPAを必要としたことを示している。これは、カルシウム再加クエン酸加血液で達成されたMA(ほぼ61)よりも著しく低かった。理論に拘束されることは望まないが、ATIII-ヘパリン複合体は形成されたトロンビンを阻害し、その後に適正またはより強固な凝血塊形成を妨げる可能性が高いと考えられている。他のプロトロンビン活性化因子に関して必要な最低濃度は、エカリンおよびカリンアクチバーゼ-2については56nMを上回り、カリンアクチバーゼ-1については100nMを上回り、ノテカリンについては32nMを上回る。BDRSTチューブによる6nMおよび25nMというトロンビン濃度は、血液を全く凝固させることができなかった。
同じく、理論に拘束されることは望まないが、C群プロトロンビン活性化因子(OsPAおよびPtPA)は、はるかに大量でしかもより持続的なトロンビンの急増を生じさせ、トロンビンおよびFXaの両方を阻害してその後に凝固過程を阻害するATIII-ヘパリン複合体を圧倒した可能性が高いと考えられる。
実施例5g:種々の濃度のヘパリンによるスパイク刺激を加えた正常「プール」クエン酸加血漿の凝固
この実験は、ヘパリン投与を受けた患者からの血漿中に見いだされる可能性の高いレベルを模した種々の濃度のヘパリンによるスパイク刺激を加えた血漿を凝固させるための、種々のプロトロンビン活性化因子の必要濃度を決定するために行った。
正常「プール」クエン酸加血漿の総カルシウムが2.71mmol/Lになるように調整し、続いてヘパリンのアリコートを添加して、Clotekチューブ内の最終的なヘパリン濃度が、患者血液試料中に存在する可能性のある範囲である0.8、2.0、10および20 IU/mLになるようにした。さらに、クエン酸加血漿の1mLずつのアリコートをGreinerヘパリンリチウムチューブに分注し、続いてローラー上で15分間混合させて、ヘパリンリチウム濃度を90 IU/mLにした。Clotekチューブには、100μLのヘパリンナトリウム加またはヘパリンリチウム加血漿、100μLのTris緩衝液(150mM Tris HCl、150mM NaCl、pH 7.4)および50μLの各凝固促進剤を含有させた。
ヘパリンのスパイク刺激を加えた血漿試料を用いた各プロトロンビン活性化因子に関する凝固の結果は表44〜49に示されており、トロンビンについては表50に示されている。
(表44)ヘパリンによるスパイク刺激を加えるか、またはGreinerヘパリンリチウムチューブ内に分注した正常「プール」クエン酸加血漿の、PtPAによる凝固
(表45)ヘパリンによるスパイク刺激を加えるか、またはGreinerヘパリンリチウムチューブ内に分注した正常「プール」クエン酸加血漿の、OsPAによる凝固
(表46)ヘパリンによるスパイク刺激を加えるか、またはGreinerヘパリンリチウムチューブ内に分注した正常「プール」クエン酸加血漿の、ノテカリンによる凝固
(表47)ヘパリンによるスパイク刺激を加えるか、またはGreinerヘパリンリチウムチューブ内に分注した正常「プール」クエン酸加血漿の、エカリンによる凝固
(表48)ヘパリンによるスパイク刺激を加えるか、またはGreinerヘパリンリチウムチューブ内に分注した正常「プール」クエン酸加血漿の、カリンアクチバーゼ-1による凝固
(表49)ヘパリンによるスパイク刺激を加えるか、またはGreinerヘパリンリチウムチューブ内に分注した正常「プール」クエン酸加血漿の、カリンアクチバーゼ-2による凝固
(表50)ヘパリンによるスパイク刺激を加えるか、またはGreinerヘパリンリチウムチューブ内に分注した正常「プール」クエン酸加血漿の、トロンビンによる凝固
以前の実験(実施例5f)で示されたように、ヘパリン(およびATIII-ヘパリン複合体に起因するトロンビン阻害)の存在は、部分的または完全な血液凝固を妨げる上で、凝固促進剤にとっての大きな難題となる。この実験の結果により、ヘパリン加血漿の凝固における凝固促進剤の相対的有効性が示された。
これらの結果は、PtPAおよびOsPAが、ATIII-ヘパリン複合体による抗凝固作用を克服するのに最も有効なプロトロンビン活性化因子であることを示している。PtPAは、患者試料中に存在する可能性のある最も高濃度のヘパリンを含有する血漿を凝固させるために、最も低い濃度(12〜20nM)を必要とした。1つの興味深い所見は、PtPAが、20 IU/mLヘパリンを含有するスパイク刺激を加えた試料と対比して、たとえヘパリン濃度が90 IU/mLであっても、12nMという最低のPtPA濃度を除くすべての濃度で、Greinerヘパリンリチウムチューブからのヘパリン加血漿を5分未満で効果的に凝固させることのできる唯一のプロトロンビン活性化因子であったことである。Greinerヘパリンリチウムチューブに含まれる界面活性剤による援助を受けたのがPtPAのみであったという可能性も非常に高い。20 IUのヘパリンを含有する血漿を凝固させるためにはOsPAは36nM超を、エカリンは60nM超を必要とし、これらは両方とも、Greinerヘパリンリチウムチューブからのヘパリン加血漿をそれぞれ5分未満では凝固させることができなかった。カリンアクチバーゼ-2およびノテカリンは、10 IU以上のヘパリンを含有する血漿を凝固させることができず、カリンアクチバーゼ-1は、濃度が120nMであっても、0.8 IUを上回るヘパリンを含有する血漿を5分未満の要求時間内に凝固させることができなかった。トロンビン試験からは、100nMのトロンビン濃度のみが、0.8 IU/mLという最低のヘパリン濃度によるスパイク刺激を加えた試料を凝固させうることが示された。このため、BD RSTチューブが135nMのトロンビンを含有することを考慮すると、2 IU/mLを上回るヘパリンを含有する試料を5分間の要求時間内に凝固させる可能性は低い。
実施例5h:健常参加者由来のヘパリンリチウム加血漿の凝固
Greinerヘパリンリチウムチューブ内に収集された試料は、検査施設が受け取るものの中でヘパリンが最も多く添加された試料である可能性が高く、チューブが推奨充填容量まで充填されていなければ特にそうである。この実験の目的は、ヘパリンによる抗凝固療法を受けている患者から受け取る可能性のある他のあらゆる試料を凝固させて、質の高い血清を生成させるのに必要な凝固促進剤の最低濃度についての手引きを得ることとした。
Greinerヘパリンリチウムチューブを推奨充填目盛りまで充填させ、ヘパリン濃度を18 IU/mLとした。Clotekチューブには、100μLのヘパリンリチウム加血漿、100μLのTris緩衝液(150mM Tris HCl、150mM NaCl、pH 7.4)および50μLの各凝固促進剤を含有させた。TEGカップには、60μLの凝固促進剤、およびGreinerヘパリンリチウムチューブ内に収集した参加者血液の260μLを含有させた。
BD RSTチューブについては、脱イオン化水を2本のチューブ(BDRST1‐1mL;BDRST2‐4mL)に添加し、トロンビンを溶解させるためにローラー上で30分間混合した上で、その内容物を他の凝固促進剤とともに用いた。
ヘパリンリチウム加血漿を用いた各凝固促進剤に関する凝固の結果は、表51に示されている。
(表51)Greinerヘパリンリチウムチューブ内に収集したヘパリンリチウム加血漿を用いた凝固試験
実験デザインは、採血チューブからのヘパリン加血漿を凝固させる凝固促進剤の有効性を示すためのものとした。5分未満での凝固を達成するために必要な最低濃度の範囲は、エカリンおよびカリンアクチバーゼ-2については12〜36nMであり、カリンアクチバーゼ-1については120nMを上回り、ノテカリンについては4〜12nMであることが見いだされた。トロンビンについては、120nMを上回る濃度が必要であった。BD RSTチューブを7.7および27nMのトロンビンについても検討したが、いずれの濃度でも得られた凝固時間は5分を上回り、このことからBDRSTは、高用量のヘパリンを投与されている患者からの試料を凝固させるのには有効でないことが示唆された。これらの結果は、Greinerヘパリンリチウムチューブ内に収集された健常参加者の血液から得られたヘパリンリチウム加血漿を凝固させるのには、C群プロトロンビン活性化因子(PtPAおよびOsPA)が明らかに最も有効であり、5分未満で凝固を達成するためには、それぞれ0.1〜1nMのPtPAおよび1〜4nMのOsPAが必要であったことを示している。
実施例5i:「最大限にヘパリン投与を受けた」心臓手術参加者から入手した血液および血漿の凝固
静脈内に投与されるヘパリンの濃度が最も高いのは、心臓手術などの複雑な外科処置においてである。最大量のヘパリン投与期間中に生化学検査のために試料を収集するならば、その結果は通常、できる限り最短の時間で得られる必要がある。血清を用いるのであれば、これらの血清試料が検査施設に到着する時間までに、例えば10分未満で、凝固促進剤による凝固が完了していることが必要と考えられる。
患者に投与されるヘパリンはヘパリンナトリウムであり、一方、採血チューブまたはシリンジにおいてはそれはヘパリンリチウムである。そのような患者に注入されるヘパリンの最大量は、ほぼ45000 IUである。これらの患者はまた、血液希釈も受けており(すなわち、血漿量がほぼ4Lに増えている)、ヘパリン濃度は血漿1mL当たりほぼ10 IUとなっている。
この実験は、選択した凝固促進剤濃度が、「最大限に」ヘパリン投与を受けた心臓手術患者の血液を凝固させて、質の高い血清を生成させることができるか否かを判定するためにデザインした。参加者に37000 IUのヘパリンを投与し、ヘパリン注入からほぼ30分後に試料を収集した。血漿1mL当たりのヘパリンがほぼ9.3 IUに等しくなるようにした。血液試料の一部分を遠心して、血漿を得た。
血漿凝固用として、Clotekチューブに、100μLの心臓手術参加者血漿、100μLのTris緩衝液(150mM Tris HCl、150mM NaCl、pH 7.4)および50μLの各凝固促進剤を含有させた。
全血凝固用として、TEGカップに、60μLの凝固促進剤および260μLの参加者血液を含有させた。最大限にヘパリンが添加されているため、血液は自然には凝固しなかった。
BD RST-1実験用として、2本のBDRSTチューブの内容物をそれぞれ1mLおよび4mLの蒸留水で溶解させて、その溶液の60μLをTEGカップ内で凝固促進剤として用いた。
BDRST-2実験用として、チューブにそれぞれ1mLおよび4mLの血液を充填して、チューブを10回(ほぼ30秒間)転倒混和して、その血液の340μLをTEGカップに移した。
患者血漿を用いた各凝固促進剤に関する凝固の結果は表52に示されており、全血の結果は表53に示されている。
(表52)種々の濃度の、種々のプロトロンビン活性化因子、トロンビンおよびBD RSTチューブ内容物による、「最大限にヘパリン投与を受けた」心臓手術参加者からの血漿の凝固時間(秒)
NDは、それを判定しなかったことを意味する。
この実験による結果から、5分未満の要求時間内に血漿を凝固させるために必要な各凝固促進剤の濃度が示された。約5分という凝固時間が得られる活性化因子の最高濃度は以下の通りであった:PtPA 4nM、OsPA 1〜3nM、ノテカリン 3nM、カリンアクチバーゼ-2 12nM超、エカリン 36nM超、カリンアクチバーゼ-1 60nM超、およびトロンビン 120nM超。驚いたことに、ノテカリンの有効性はC群活性化因子と同等であることが認められた。
(表53)種々の凝固促進剤による、「最大限にヘパリン投与を受けた」心臓手術参加者からの血液を用いたTEG凝固試験の結果
*は測定を中止したことを意味し、NDはそれを判定しなかったことを意味する。
これらの結果から、5分未満のR時間および最大凝血塊強度が達成されると判定された、種々のプロトロンビン活性化因子に関する濃度は以下の通りであった:PtPA 6nM、OsPA 2.3nM、ノテカリン 3〜11nM、エカリン 11〜34nM、カリンアクチバーゼ-2 11〜34nM、およびカリンアクチバーゼ-1 57〜112nM。
驚いたことに、ノテカリンはA群およびB群プロトロンビン活性化因子よりも高度のMAを有する凝血塊を生成させており、理論に拘束されることは望まないが、そのような患者の血液中の付加的物質が凝固の有効性の一助になった可能性があると想定している。
MAによって示されるように、形成された最も強固な凝血塊はPtPAおよびOsPAによるものであり、最も脆弱なものはカリンアクチバーゼ-1およびカリンアクチバーゼ-2プロトロンビン活性化因子によるものであった。
BD RSTチューブ内のトロンビン(135nMのトロンビンを用いたBDRST-2実験)は、MAによって示されるように、不完全な凝固および脆弱な凝血塊を生成させた。そのような試料は、遠心分離後に潜在性凝固を生じる可能性が極めて高い。
実施例5j:リバロキサバンによるスパイク刺激を加えた正常「プール」クエン酸加血漿の凝固
この実験は、凝固促進剤の凝固能力に対する、新たな第Xa因子阻害性抗凝固剤の1つであるリバロキサバンの効果を検討するためにデザインした。
リバロキサバン1錠(table)(10mg、分子量435、Xarelto, Bayer Schering Pharm, Germany)を5mLの脱イオン水の中で押しつぶし(2mg/mL)、30分間混合した後に、溶解しなかった粒子を除去するために遠心した。投与される典型的な治療量は、1日1回10〜40mgである。70kgの人(血漿ほぼ3000mL)の場合、総量は0.14〜0.57mg/kg、0.0033〜0.013mg/mL血漿である。Clotekチューブ内で調製して検査した濃度は以下の通りであった:0.0033、0.0083、0.017、0.033および0.17mg/mL。
Clotekチューブに、50μLのTris緩衝液(150mM Tris HCl、150mM NaCl、pH 7.4)、50μLの0.2mM CaCl2、100μLの正常「プール」クエン酸加血漿、50μLのTris緩衝液または種々の濃度の抗凝固剤、および50μLのプロトロンビン活性化因子(30nM)を含有させた。
凝固時間は表54に示されている。
(表54)正常「プール」クエン酸加血漿およびリバロキサバンを用いた凝固時間(秒)
これらの結果は、リバロキサバンが、患者の体内に存在する可能性のある0.0033〜0.013mg/mL血漿という治療濃度の範囲にある凝固促進剤に対して、ごくわずかな効果しか及ぼさないことを示している。しかし、より高濃度では、リバロキサバンは凝固促進剤のそれぞれの存在下において、凝固に対する顕著な抑制効果を有していた。この効果は、凝固促進剤によって生成されたトロンビンによって血漿中のヒトFXから生成された第Xa因子の阻害に起因する可能性がある。
実施例5k:クエン酸抗凝固療法を受けている患者からの血液の凝固
以前の実験で、プロトロンビン活性化因子が、Greinerクエン酸チューブ内に収集されたクエン酸加血液を凝固させうることが示されている。この実験の目的は、プロトロンビン活性化因子を用いる場合、インビボのクエン酸投与(citration)が凝固異常を起こさないことを確かめることとした。
この実施例では、患者に血流1リットル当たり3.0mmolのクエン酸を投与した。定型的な病理検査のために血液を50mLプレーンシリンジ(BD Plastipak #300866)内に収集し、そのうち3mL未満を残して、PtPAのみを用いる極めて限定的な試験を行った。
凝固パラメーターは以下の通りであった:PT 13秒(RR 9〜13)、INR 1.3、APTT 45秒(RR 24〜39)、フィブリノーゲン(由来)7.2g/L(RR 1.7〜4.5)、これにより、抗凝固が裏づけられた。
TEGカップに、20μLの0.2M CaCl2または食塩水、5μLのPtPAおよび320μLのクエン酸加血液を含有させた。
結果は表55に示されている。
(表55)クエン酸抗凝固療法を受けている参加者に関するTEGの結果
これらの結果により、患者の抗凝固療法のために用いられるクエン酸濃度は、カルシウム再加血液および非カルシウム再加血液における凝固促進剤としてPtPAを用いた場合に、凝固異常を起こさないことが指し示された。Greiner Citrateチューブ内に収集された血液中のクエン酸濃度は3.2%または109mMであったが、これは患者が投与されている濃度の約36倍である。さらに、クエン酸投与を受ける患者はイオン化カルシウムに関して連続的にモニタリングされ、必要に応じてイオン化カルシウムが補給されるため、凝固異常が起こることは考えられなかった。正常「プール」クエン酸加血液におけるR時間は6.4分であり(表43に示されているように)、これに比して、この患者では4.8分であった。カルシウム再加では必要量よりも過剰にカルシウムを添加するため、理論上はこれが違いの原因になるはずはない。この違いは、7.2g/Lであったフィブリノーゲンを含め、凝固因子の濃度がより高いことに起因すると想定している。
実施例6:凝固プロフィール延長または血小板数低下を伴う参加者からの全血試料の凝固
患者の中には、薬物治療または遺伝要因(例えば、血友病)の結果として、凝固プロフィール延長および/または血小板数減少を呈する者がいる。以下の実験は、PtPAまたはOsPAが、そのような患者からの血液試料を迅速に凝固させることができるか否かを判定するために実施した。
実施例6a:凝固時間延長を伴う参加者
内因性経路の欠陥を指し示すaPTT延長を伴う4人の参加者(「A」、「B」、「C」および「D」)からの血液を、Pathology Queensland, Princess Alexandra Hospital, Queensland, Australiaから入手した。各参加者の凝固パラメーターを決定した上で、表56に示している。
(表56)各参加者の凝固パラメーター
*
* aPTT=活性化部分トロンボプラスチン時間;PT=プロトロンビン時間;INR=国際標準比;TT=トロンビン時間;Fib-D=プロトロンビン時間由来フィブリノーゲン;Plat=血小板、n.d.=判定不能。基準範囲は、Pathology Queenslandから入手した。
TEG分析を行った。各TEGアッセイ混合物は、参加者A〜Dの試料由来の310μLのクエン酸加血液、20μLのCaCl2(0.2M)および10μLの食塩水またはPtPA(最終濃度1.41μg/mL)からなった。CaCl2は、凝固を開始させるために時間ゼロの時点で添加した。
4件の試料に関するTEGトレースを図44に示し、これらのトレースからのTEGパラメーターを表57に示している。
(表57)異常な凝固パラメーターを有する参加者からの血液試料の凝固に関するTEGの結果
「n.d.」は、それを測定しなかったことを指し示している。
4件の試料に関するTEGプロットは図44に示されており、ここでTEGプロットAは参加者Aを表し、このプロットにおいて(i)と表示された2つのトレースはカルシウムを添加した食塩水対照を表し;(ii)と表示された2つのトレースはPtPAを有する試料である。TEGプロットBは参加者Bを表し、このプロットにおいて(i)と表示された2つのトレースはカルシウムを添加した食塩水対照を表し;(ii)と表示された2つのトレースはPtPAを有する試料である。TEGプロットCは参加者Cを表し、このプロットにおいて(i)と表示されたトレースは食塩水対照であり;(ii)と表示された4つのトレースはPtPAを添加した試料である。TEGプロットDは参加者Dを表し、このプロットにおいて(i)と表示された2つのトレースは食塩水対照であり;(ii)と表示された2つのトレースはPtPAを有する試料である。患者Cについては、凝固パラメーターが極めて異常であるため、測定を3回ずつ実施した。表57におけるデータは、TEGデータによる平均を表している。
以上をまとめると、参加者A〜Dからの血液試料は44秒から200秒超までの範囲にわたるaPTT時間を示し、これは内因性凝固経路の欠陥を指し示している。PtPAがない場合には、試料は凝固しないか、または極めて脆弱な凝血塊を生じるかであった。すべての症例において、PtPA(1.41μg/ml)は迅速な凝固を引き起こし、凝固時間を1〜2分に短縮させた。したがって、PtPAは、この凝固経路に欠陥のある患者からの血液を迅速に凝固させるのに有効である。
実施例6b:血小板数低下を伴う参加者
血小板数低下を伴う参加者では、健常集団からの血液と比較して、凝固時間が有意に延長する。これは血小板がプロトロンビナーゼ複合体の形成のためのリン脂質表面を提供して、血液凝固を促進させるためである。
血小板数低下を伴う4人の参加者(「E」、「F」、「G」および「H」)からの血液試料を、Princess Alexandra Hospital, Queensland, Australiaから入手した。各参加者の凝固パラメーターを決定した上で、表58に示している。
(表58)各参加者の凝固パラメーター
n.d.は、測定値を求めなかったことを指し示している。
TEG分析を行った。各TEGアッセイ混合物は、参加者E〜Hの試料由来の310μLのクエン酸加血液、20μLのCaCl2(0.2M)および10μLの食塩水またはプロトロンビン活性化因子の溶液(最終濃度1.41μg/mLもしくは14.1μg/mLのPtPA、または最終濃度0.59μg/mLもしくは5.9μg/mLのOsPAのいずれか)からなった。
TEGトレースは図45に示されており、TEGパラメーターは表59および60に列記されている。
(表59)PtPAによる、血小板数低下を伴う参加者からの血液試料の凝固に関するTEGの結果
(表60)OsPAによる、血小板数低下を伴う参加者からの血液試料の凝固に関するTEGの結果
TEGプロットは図45に示されており、ここでプロットAは参加者Eに関する結果を示しており;プロットBは参加者Fに関する結果を示しており;プロットCは参加者Gに関する結果を示しており;プロットDは参加者Hに関する結果を示している。各プロットにおいて、(i)と表示されたトレースはPtPAもOsPAもないことを表しており;(ii)と表示されたトレースは14.1μg/mL PtPAを表しており;(iii)と表示されたトレースは1.41μg/mL PtPAを表しており;(iv)と表示されたトレースは5.88μg/mL OsPAを表しており;青色のトレースは0.588μg/mL OsPAを表している。
以上をまとめると、PtPAおよびOsPAはいずれも、血小板数低下を伴う参加者からの血液を迅速に凝固させて、強度の高い凝血塊を生じさせることができた。
実施例7:プロトロンビン活性化因子を含有する毒液の凝固活性の比較
シュードナジャ・テクスティリス(Pt)、オキシウラヌス・スクテラトゥス(Os)、オキシウラヌス・ミクロレピドトゥス(Om)、ノテキス・スクタトゥス(Ns)およびエキス・カリナトゥス(Ec)というヘビに由来する新たに再構成した5種の毒液を、50mg/mLのストック濃度を用いて蒸留水中に再構成した。6mg/mLのワーキングストック希釈液を新たに調製して、それらの凝固活性を、カルシウム再加クエン酸加血漿の凝固について測定した。毒液を系列希釈して、当該アッセイにおいて2mg/mLから500pg/mLまでの各濃度を2つずつ用意した。示されている結果は、2つずつの測定値の平均である。当該アッセイは10mMカルシウムを添加した100μLの0.02M Hepes緩衝液 pH 7.4に、100μLのクエン酸加血漿を加えたものからなり、凝固時間(秒)を毒液希釈物の添加の時点から測定した。
結果は表61および図46に示されている。
(表61)プロトロンビン活性化因子を含有するヘビ毒の、種々の濃度での凝固時間
表61および図46の両方に見てとれるように、5種類の毒液はすべて、500pg/mLという低濃度に至るまで、カルシウム再加クエン酸加血漿を極めて効率的に凝固させた。C群プロトロンビン活性化因子を含有する毒液(Pt、OsおよびOm)は最も活性が高く、500pg/mLの濃度で50秒未満の凝固時間を達成した。
実施例8:市販のチューブを用いて、またはPTPAを用いて調製した血漿試料および血清試料における沈殿および潜在性凝固、ならびにトロポニンIに対する効果の推定
本明細書の前の部分で考察したように、市販の血清チューブおよび血漿チューブには、潜在性凝固または非凝固(血清チューブ)、微小凝血塊およびフィブリノーゲン糸(血清チューブまたは血漿チューブ)、ならびにタンパク質の沈殿および細胞物質の漏出(血清チューブまたは血漿チューブ)といったいくつかの問題が伴う。プロトロンビン活性化因子を含有するチューブがこれらの異常のいくつかを示すか否かを調べるために、市販のチューブ内の血液試料を目視検査して、PtPA含有チューブ内の血液試料と比較した。結果は図47〜49に示されている。
実施例8a:沈殿および潜在性凝固
図47は、市販のGreiner血漿(ヘパリンリチウム含有)チューブ内に収集した血液試料からの血漿調製の結果を指し示している。チューブの4つの区域に印を付している(図の上から下の順に):血漿;ゼリー状沈殿物;分離用ゲル;遠心分離によって圧縮された細胞。ゼリー状沈殿物はフィブリノーゲンおよび他の血漿タンパク質で構成され、チューブを2〜8℃で貯蔵した時に形成される。この沈殿物は計測器の機能および分析物決定の妨げになる恐れがある。そのような沈殿物は、ヘパリンリチウム加血漿試料のほぼ5%で生じる。
図48は、3種の市販の血清チューブ内での血清調製の結果を指し示している:左のチューブ(GS)はGreiner血清チューブである;中央のチューブ(BDS)はBD血清チューブであり、右のチューブ(BDT)はBD RSTチューブである。チューブの4つの区域に印を付している(図の上から下の順に):圧縮された細胞;分離用ゲル;潜在性凝血塊;血清。遠心分離後の(潜在性)凝血塊が、3種のチューブすべての上清または血清成分において明白である。凝血塊の存在を明示するためにチューブは転置されている。これらの潜在性凝血塊は計測装置および機能的アッセイの妨げとなる。
図49は二つに分けられている。左半分は、最大限にヘパリン投与を受けた同一患者由来の単一の血液試料からの、3種の市販のチューブ(左から右の順に):Greiner Vacuette(商標)血清チューブ(GS)、BD Vacutainer(商標)血清チューブ/SST II(BDS)およびBD RSTチューブ(BDT)における、ならびにPtPAを添加したGreiner Vacuette(商標)No Additiveチューブにおける、血清調製の結果を指し示している。チューブの3つの区域に印を付している(図の上から下の順に):血清;分離用ゲル;圧縮された細胞。図49による4種のチューブすべてを遠心し、続いて一晩静置して、その後に各チューブ内の血清を透明ガラス製チューブに移した上で、図49の右半分に示されているように写真を撮影した(左から右の順に:GS、BDS、BDTおよびPtPAチューブ)。3種の市販のチューブからの血清はすべて、チューブ側面での凝血塊形成およびフィブリン鎖の観察所見による凝固の証拠を示したが、PtPAを含有するチューブ内で調製した血清中には沈殿の証拠は認められず、他の試料で観察されるものを大幅に上回る清澄性を有していた。
実施例8b:トロポニンIレベル
トロポニンI(心イベントの最も特異的なマーカーの1つ)の上昇を示す少なくとも一部の偽陽性結果は、血清試料および血漿試料における沈殿/潜在性凝固に起因することが観察されている。
64人の参加者からの血液試料におけるトロポニンIレベルを、市販のチューブおよびPtPA含有チューブ内で調製した血清試料および血漿試料を用いて測定した。
各参加者について、血清試料および血漿試料を、5種の市販のチューブ:Greiner Vacuette(商標)血漿チューブ;BD PST II;Greiner Vacuette(商標)血清チューブ;BD SST II;およびBD RSTにおいて、ならびにPtPAを含有するGreiner Vacuette(商標)No Additiveチューブ(1.2μg/4mL)内で調製し、Beckman Coulter AccuTnIアッセイを用いてトロポニンI(TnI)に関して分析した。
参加者18、20、38および63について表62に示されているように、4つの矛盾した結果が得られた。参加者18および38は健常であり、参加者20および63はいずれも心臓手術を受け、ヘパリンを投与された患者であった。3つの偽陽性結果(参加者18、20および38)が得られた。一次チューブからのアリコートの再遠心分離の後に行った再アッセイでは、同じ血液試料からの他のチューブによる結果との比較から予想された通り、陰性結果が得られた。別の結果は並外れて高値であった(参加者63)。アリコートの再遠心分離および再アッセイでは、他のチューブと同等な結果が得られた。
試料の遠心分離によって矛盾が解消されたという事実は、矛盾した結果が、不正確な試料採取の原因となる潜在性凝固/沈殿物形成に起因したことを強く示唆する。PtPA血清を用いた場合には、矛盾した結果は得られなかった。
以上をまとめると、市販のチューブにおける血漿試料および血清試料の調製時に、分析物決定のための重大な問題となる沈殿および潜在性凝固が観察された。血清試料の調製のためにPtPAを用いた場合には、沈殿も微小凝血塊形成の証拠も観察されなかった。
実施例9:血漿試料および血清試料におけるフィブリノーゲン、分解されたフィブリノーゲンおよびフィブリンのレベル
本明細書の前の部分で考察したように、可溶性フィブリノーゲン、部分的に分解された可溶性フィブリノーゲン(fdp)および非重合フィブリン(FDP)は、分析物決定のための血清試料および血漿試料における望ましくない成分である。要約すれば、標準的な血清調製条件の後、特に静置後の不溶性フィブリン(微小凝血塊)へのさらなる変換を避けるために、質の高い血清試料ではフィブリノーゲン/fdp/FDPは最小限であるべきである。微小凝血塊またはフィブリン鎖は計測装置の妨げとなり、分析物決定に影響する恐れがある。標準的な方法によって調製した血清試料の場合、試料中のフィブリノーゲン/fdp/FDPの濃度は、患者/個体が受ける抗凝固療法の程度、患者の健康状態(例えば、肝疾患の存在)、試料収集容器の種類、および稀な場合にはチューブ内での試料の混合が不十分なことによって左右されると考えられている。この実施例では、「質の高い」血清試料の調製のための条件を確立する上での一助とするために、種々のチューブを用いて調製した血清試料および血漿試料におけるフィブリノーゲン/fdp/FDPの濃度を調べた。
以下に説明するように、血清中および血漿中のフィブリノーゲン/fdp/FDP濃度を、サンドイッチ酵素イムノアッセイ(ELISA)によって測定した。このアッセイでは、可溶性フィブリノーゲン、fdpおよびFDPを認識する、フィブリノーゲンに対するポリクローナル抗血清を用いる。
このELISA法は、抗フィブリノーゲン抗血清(精製IgG画分:AHFASとして)および抗フィブリノーゲン抗血清-西洋ワサビペルオキシダーゼ結合物(AHFAS-HRP)を必要とする。それぞれの調製物はMP Biochemical, USAから購入した。国際的フィブリノーゲン標準物質はNIBSC, Londonから購入し、50%グリセロール/食塩水中の1mg/mLのワーキングストック濃度から希釈した。
洗浄緩衝液は、0.05Mリン酸緩衝液(pH 7.4)、0.5M NaCl、0.05% Tween 20および1% BSAからなり、一方、用いた結合緩衝液は0.1M 重炭酸塩緩衝液(pH 9.6)であった。
抗体のワーキング希釈液は、AHFASおよびAHFAS-HRPのストックを結合緩衝液で1:500に希釈することによって調製した。HRP基質溶液は、50mLの反応溶液中の、20mMテトラメチルベンジジン、0.4mLの30% H2O2および50μLの0.05Mクエン酸緩衝液(pH 4.0)からなった。
Nunc ELISA IMMUNOSORB 96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific, Rochester, NY)を、プレートをAHFASとともに4℃で一晩インキュベートすることによって、1ウェル当たり100μLのAHFASワーキング希釈液でコーティングした。続いてプレートを、2%ウシ血清アルブミン(Sigma Chemical, Co)を含む4℃の洗浄緩衝液100μL中に一晩おいてブロックし、その後に洗浄緩衝液で3回洗浄した。
健常志願者(健康)ならびに患者(心疾患および腎疾患)からの血液試料を以下のチューブ内に収集した:
Greiner血清チューブ(GSまたはGRS);
BD血清チューブ(BDS);
BD RSTチューブ(BDTまたはBD RST);
PtPAストック溶液4.8mg/mLから1.2μgのPtPAを添加した、Greiner No Additiveチューブ(PtPA);
OsPAストック溶液2.0mg/mLから0.5μgのOsPAを添加した、Greiner No Additiveチューブ(OsPA);
0.6 Uのエカリンを添加したGreiner No Additiveチューブ;
1.2 Uのエカリンを添加したGreiner No Additiveチューブ;
0.63 U/4mLのエカリンを添加したGreiner No Additiveチューブ(実施例9b);
1.25 U/4mLのエカリンを添加したGreiner No Additiveチューブ(実施例9c);
2.5 U/4mLのエカリンを添加したGreiner No Additiveチューブ(実施例9c);
Greiner Vacuette(商標)血漿チューブ(GRLH);
BD Vacutainer(商標)血漿(PST II)チューブ(BDLH);
Greiner Vacuette(商標)クエン酸チューブ(クエン酸3.2%)血漿用(CIT);および
Greiner Vacuette(商標)K2EDTAチューブ(1.5〜2.2mg/mLのEDTA)血漿用(EDTA)。
上記の各チューブ内で調製する血漿試料および血清試料は、血液を各チューブ内に収集し、チューブを静置した後に3,000gで遠心分離を行う、Pathology Queensland(Australia)の標準的な分析物試料調製手順に従って調製した。BD RST、PtPA、OsPAおよびエカリンを含有するチューブは5分間静置したままにし、一方、残りのチューブはすべて、正常血液については30分間、抗凝固療法を受けた血液については60分間、静置したままにした。
各チューブから、血漿試料または血清試料の100μLアリコート(それぞれ、希釈された1/1,000希釈液および1/10希釈液)を、3つずつプレーティングした。フィブリノーゲン標準物質の系列希釈液(1,000ng/mLから10ng/mLまでの濃度範囲をカバーする11種の希釈液)を2つずつプレーティングした。プレートを4℃で一晩インキュベートした。
非結合成分を除去するためにプレートを洗浄緩衝液で6回洗浄して、1ウェル当たり100μLのAHFAS-HRPワーキング溶液とともに4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で再び6回洗浄し、その後に1ウェル当たり100μLのHRP基質溶液を添加した。
フィブリノーゲン濃度1μg/mLにてA450が吸光度1.0に達するまで、暗環境下で青色の発生をモニタリングした。続いて、1ウェル当たり100μLの1.0M硫酸溶液を添加することによって反応を停止させ、黄色を生じさせた。続いてプレートを、Thermo Scientific Multiskan Ascentプレートリーダーで、Ascentソフトウエアを用いてA450nmで読み取った。
実施例9a:患者からGreiner血清チューブ(GS)内に収集した48件の血清試料におけるフィブリノーゲン/fdp/FDPレベル
臨床的状態に関する分析物の決定を必要とする、無作為に選択した48人の患者からの、Greiner血清(GS)チューブからの血清試料におけるフィブリノーゲン/fdp/FDP濃度を、上記に概略を述べたELISA法を用いて測定した。
図50はその結果を示している。これらの試料におけるフィブリノーゲン/fdp/FDPの濃度は4.4〜32μg/mLの範囲であり、これに比して、これらの血漿試料におけるフィブリノーゲン濃度は2.0〜5.0mg/mLであった。これらのデータは、標準的な市販の血清チューブでは、フィブリノーゲンの99%に等しいかまたはそれを上回る割合が凝固過程によって除去されることを示している。これらのデータはまた、病院内集団由来の血液試料からのGreiner血清チューブ内の血清調製物におけるフィブリノーゲンの基準範囲も与えるものである。
実施例9b:正常な血清試料および血漿試料におけるフィブリノーゲン/fdp/FDPレベル
フィブリノーゲン/fdp/FDPレベルに対するPtPA添加(300ng/mLまたは1.2μg/4mLチューブ)の影響を調べるために、36件の正常血清試料(プロトロンビン時間、aPTTおよびフィブリノーゲンアッセイにより判定)を選択した。Pathology Queenslandの標準的な手順に従ってGreiner血清チューブ(一次チューブ)内で血清を調製し、その後に、各Greiner血清チューブから1mLずつの2つの均等な血清試料を分取して、添加物を含まないプラスチック製チューブ(二次チューブ)に入れた。PtPA(300ng/mLまたは1.2μg/4mLチューブ)を1本のチューブに添加し、等量(50μL)の食塩水を第2のチューブに添加することで、二次チューブのマッチドペアを得た。
各二次チューブにおけるフィブリノーゲン/fdp/FDP濃度を、上記に概略を述べたELISA法を用いて測定し、その結果を図51に示している。いずれの二次チューブにおいても、残留フィブリノーゲンは血液中に存在するものの1%未満に減少していた。しかし、PtPAの添加により、フィブリノーゲン/fdp/FDPレベルは平均12.8μg/mLから11.8μg/mLにさらに低下した。この低下は、ペアードt検定分析において有意(p<0.04)であった。このように、PtPAは、残留フィブリノーゲン/fdp/FDPレベルが極めて低かった正常個体血清においてさえ、血清フィブリノーゲン/fdp/FDPをさらに減少させることができた。残りの極めてわずかな量(1.0%未満)は、抗体とは反応するものの、重合して不溶性凝血塊を形成することはできない分子である可能性が高い。
続いて、9件の正常血液試料を、4種類の血清チューブ:Greiner血清チューブ、BD血清チューブ、BD RSTチューブ、およびPtPAを含有するGreiner Vacuette(商標)No Additiveチューブ内に収集した。各二次チューブにおけるフィブリノーゲン/fdp/FDP濃度を、上記に概略を述べたELISA法を用いて測定し、その結果を図52に示している。フィブリノーゲン濃度は、PtPAを含有するGreiner Vacuette(商標)No Additiveチューブ内で調製した血清において、相対的にかなり低かった。
続いて、OsPAおよびエカリンを用いて生成させた血清におけるフィブリノーゲン/fdp/FDPの濃度を調べた。5人の正常参加者の血液から、Greiner血清チューブ(GRS)内で、ならびにOsPA(0.50μg/4mLチューブ)、エカリン(0.63単位/4mLチューブ)およびPtPA(1.2μg/4mLチューブ)を含有するGreiner No Additiveチューブ内で、血清試料を調製した。各チューブの血清中のフィブリノーゲン/fdp/FDP濃度を、上記に概略を述べたELISA法を用いて測定した。結果は図53に示されている。いずれの場合にも、フィブリノーゲン/fdp/FDPの残留レベルは、正常な血液または血漿におけるものの1%未満であった。
実験例9c:ヘパリン投与を受けた患者から調製した血清試料におけるフィブリノーゲン/fdp/FDPレベル
腎透析を受けている患者は、透析中の血栓形成促進イベントを避けるために、中程度のレベルのヘパリン投与(処置期間中に1,000〜10,000 Uのヘパリン)を必要とする。PtPAチューブ(1.2μg/4mLチューブ)およびBD RSTチューブが、透析患者からの血液を5分間のインキュベーション時間中に効率的に凝固させる能力について検討するために、このカテゴリーから3人の患者を選択し、Greiner血清チューブ(GRS)およびBD血清(BD SST II)採血チューブ内に採取した血液の、30分の凝固期間における凝固と比較した。凝固の有効性は、上記に概略を述べたELISA法を用いて、各々の血清中のフィブリノーゲン/fdp/FDP濃度を測定することによって判定した。
結果は図54に示されており、これにより、ヘパリン加血液からPtPAによって生成された血清におけるフィブリノーゲン/fdp/FDPの残留レベルが、正常血液からPtPAによって生成された血清における値と同等であることが明らかになった(図51および53)。対照的に、GRS、BDSおよびBD RSTチューブ内で生成された血清におけるフィブリノーゲン/fdp/FDP残留レベルははるかに高かった。これらのレベルでは、ヘパリンの存在下での潜在凝血塊形成および微小凝血塊の可能性が特に高い。図54におけるGRS、BDSおよびBDRSTに関する値は、試料の単一の希釈液に基づく最小限の推定値である。
2人の心臓手術患者(25,000〜41,000単位のヘパリンを投与)からの血液試料を、以下のチューブ内に収集した:Greiner血漿チューブ、Greiner血清チューブ、BD血清チューブ、BD RSTチューブ、PtPA(1.2μg/4mLチューブ)を添加したGreiner Vacuette(商標)No Additiveチューブ、OsPA(0.50μg/4mLチューブ)を添加したGreiner Vacuette(商標)No Additiveチューブ、4mLチューブ当たり1.25単位/Lのエカリンを添加したGreiner Vacuette(商標)No Additiveチューブ(EC1)、または4mLチューブ当たり2.5単位/Lのエカリンを添加したGreiner Vacuette(商標)No Additiveチューブ(EC2)。
各チューブの血清および血漿中のフィブリノーゲン/fdp/FDP濃度を、上記に概略を述べたELISA法を用いて決定し、その結果は図55に示している。フィブリノーゲン/fdp/FDP濃度は、血漿チューブおよび他の血清チューブと比較して、プロトロンビン活性化因子を含有するチューブを用いて得た血清中で大きく低下していた。その上、凝固のために許容した時間は、プロトロンビン活性化因子を含有するチューブではわずか5分間であり、これに比して、他のチューブでは30分間、抗凝固療法を受けた血液用のチューブでは60分間であった。
以上をまとめると、プロトロンビン活性化因子を含有するチューブは、市販の血清チューブまたは血漿チューブを用いて生成される血清試料におけるよりも残留フィブリノーゲン/fdp/FDPの濃度が低い血清試料を生成させることができた。正常試料の場合には、その効果は相対的にわずかであった。しかし、ヘパリン添加試料を用いる場合には、プロトロンビン活性化因子は、市販の血清チューブ内で調製された血清と比較して残留フィブリノーゲンが少ない血清を生成させることができた。これらの結果は、すべての血清試料において、潜在性凝固または沈殿を避けるためにプロトロンビン活性化因子を用いることによって、十分に低い濃度の残留フィブリノーゲン/fdp/FDPが達成されるはずであることを示唆する。高用量の抗凝固剤を投与される患者(例えば、心疾患医療、透析)、および心臓手術を受ける患者からの「最大限にヘパリン投与を受けた」試料から、「質の高い」血清を生成させるこの能力は、有用である。
実施例10:血漿試料および血清試料におけるヘモグロビン濃度
溶血指数は、血清試料および血漿試料中に存在するヘモグロビンの尺度、およびそれ故に細胞溶解の程度の尺度として、病理化学検査において日常的に用いられている。赤血球、白血球および血小板を含むあらゆる種類の血液細胞の溶解が、採血および血清/血漿の調製時ならびに静置時にインビボで起こる可能性がある。インビトロでの細胞溶解は一般に、通常は陰圧下にある細径針または移送用デバイスを用いる、試料の収集時または試料の移送時に起こる。インビボで赤血球溶解のみが、溶血性貧血において起こることもある。インビトロでの細胞の溶解の際には、細胞内容物が血清または血漿中に放出されて、ある種の分析物の結果を偽性に変化させる;溶血が広範囲にわたる場合には、細胞内容物の放出が他の分析物の希釈を引き起こす可能性さえある。血漿または血清中のヘモグロビンは、分析時の分光学的異常の原因になる可能性もあれば、他の細胞分析物が交差反応する可能性もある。通常、血清はヘパリンリチウム加血漿よりも幾分多くヘモグロビンを含有するが、これは、凝血塊が膨張したり収縮したりする際に少数の細胞を溶解させる凝固過程に起因するとみなされている。このため、ヘモグロビン濃度が低いことは、「質の高い」血清試料にとっての重要な基準である。
PtPAの存在下および非存在下において生成される血清、ならびにヘパリンリチウムを用いて生成される血漿におけるヘモグロビン含量を比較するために、以下の実験を行った。クエン酸抗凝固療法を受けた2人の患者および9人の健常参加者から血液試料を収集した。試料は、Greiner血漿チューブ、Greiner血清チューブ、およびPtPA(1.2μg/4mL血液)を含有するGreiner Vacuette(商標)No Additiveチューブ内に収集した。Greiner血漿チューブ、およびPtPAを含むGreiner Vacuette(商標)No Additiveチューブについては収集後にチューブを5分間、Greiner Vacuette(商標)No Additiveチューブ(PtPAを含まない)については30分間遠心した。遠心分離から30分以内に、試料をヘモグロビンに関して分析した。結果は表63に示されている。
(表63)血漿試料および血清試料におけるヘモグロビン濃度
血漿試料における平均ヘモグロビン濃度は55mg/Lであり、これは、文献から予想された通り、Greiner血清で認められた67mg/Lよりも幾分低かった。PtPA血清に関する平均値は46mg/Lであり、これはGreiner血清で認められたよりもかなり低く、血漿で認められたよりもさらに低かった。平均の標準偏差は大きいが、これは人による個体差が理由である。どの個人に関しても、それらから、3種類のチューブ間の差の有意性の推定値は得られなかった。これらの差の有意性を検定するために、11件の血液試料からのデータを用いてペアード両側t検定を行った。結果は以下の通りであった。
Greiner血漿チューブ、対、Greiner血清チューブ:p=0.1243
Greiner血清チューブ、対、PtPAを含むGreiner Vacuette(商標)No Additiveチューブ:p=0.0188(統計的に有意、P<0.05)
Greiner血漿チューブ、対、PtPAを含むGreiner Vacuette(商標)No Additiveチューブ:p=0.1038
この実施例から導くことのできる結論は以下の通りである:
(1)Greiner血漿チューブ内で調製した血漿試料におけるヘモグロビン濃度は、文献から予想された通り、Greiner血清チューブ内で調製した血清よりも低かった;
(2)PtPAを含むGreiner Vacuette(商標)No Additiveチューブ内で調製した血清におけるヘモグロビン濃度は、Greiner血清におけるものよりも有意に低かった。これらの血清試料におけるヘモグロビンのレベルがより低いことは、凝固過程において起こる細胞溶解の量を制約する、はるかに迅速な凝固速度を反映している可能性がある;ならびに
(3)PtPA血清試料における平均ヘモグロビン濃度は血漿試料におけるものよりも低く、その差の有意性はボーダーラインレベルであった(p=0.1038)。
このように、PtPAチューブにより、市販のGreiner血清チューブを用いるよりも、ヘモグロビン含量に関して、より質の高い血清が得られた。
実施例11:血漿試料および血清試料における細胞および細胞内容物の存在
市販のチューブ内で調製したヘパリンリチウム加血漿は、懸濁液中に、または遠心分離後に血漿と接触するゲル障壁の上面にあるバフィーコート層の中に、残留細胞を含有している。市販のチューブ内で健常参加者試料から調製した血清は、血清との接触下にある細胞を、(血漿と比較して)より少数しか含まない。オーストラリアでは、National Pathology Laboratory Accreditation Advisory Council(NPACC)の管轄下で、血漿および血清を、再分析または追加分析の要請に備えて、2〜8℃で少なくとも7日間貯蔵することが規制上の要件となっている。細胞の存在は、血清または血漿の貯蔵および分析の際に2種類の影響を及ぼす恐れがある。第1に、細胞が溶解して、細胞内容物(例えば、K+、乳酸デヒドロゲナーゼ)を血清または血漿中に放出する可能性がある。これは、遠心分離の直後に得られた測定値と貯蔵期間後の測定値との間の有意差につながる恐れがある。第2に、細胞は代謝的に活性であり続けることから、貯蔵中にかなりの量の栄養分(例えば、グルコース)を利用して、代謝産物(例えば、乳酸塩)を放出する可能性がある。試料が健常参加者に由来し、推奨される30分間という通常の凝固時間にわたって試料を貯蔵した場合でさえも、多くのチューブの血液試料において変化が観察されることがある。
したがって、細胞混入の度合いは、血清試料にとって重要な品質基準であり、かつ、血漿よりも血清を用いることの重要な利点の1つでもある。
PtPAを用いて調製した血清と、Greiner血清チューブを用いて調製した血清、およびGreiner血漿チューブを用いて調製したヘパリンリチウム加血漿とを比較するために、以下の実験を行った。血清試料および血漿試料への細胞および細胞内容物の混入の程度は、いくつかの混入マーカーを用いて評価することができる。本明細書で用いた3種類の細胞混入マーカーは、以下のものである:貯蔵中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)活性の増大;貯蔵中のグルコース濃度の低下;および細胞の直接観察。
実施例11a:PtPA血清と、市販のチューブ内で調製した健常参加者由来のヘパリンリチウム加血漿との比較
Greiner血漿チューブ、および以下のように調製したPtPAを含有するGreiner血清チューブ内に、10人の健常参加者から血液を収集した。チューブに滅菌脱イオン水を満たし、ほぼ20回転倒混和させて、10分間静置し、続いて、ゲル障壁を乱さないように滅菌綿棒でチューブキャップの内壁および内部をこすり洗いすることによって、Greiner凝固促進剤/添加剤を除去するよう、Greiner血清チューブの内側の洗浄を行った。内容物を廃棄して、脱イオン水によるチューブの充填/転倒混和/すすぎ洗いをさらに3回行った。最後に、洗浄したチューブを、水滴を完全に乾燥させるために40℃の乾燥器に入れ、その後にPtPAを分注した(1.2μg/4mL血液)。続いて血液をチューブ内に収集した。各参加者からの2本ずつのチューブ(Greiner血漿チューブおよびPtPAチューブ)を遠心して、乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)およびグルコース(ゼロ時間)のレベルに関して直ちに分析した。試料を室温(21℃)で静置し、ほぼ8時間後に同じ分析装置で再び分析した。結果は表64および65に示されている。
(表64)遠心分離後、21℃で0時間および8時間貯蔵した後に測定した、10人の参加者からの試料のLD活性(U/L)
*=8時間と0時間との間の差、および8時間と0時間との間の差のパーセンテージ。
(表65)遠心分離後、21℃で0時間および8時間貯蔵した後に測定した、10人の参加者からの試料のグルコース濃度(mmol/L)
*=8時間と0時間との間の差、および8時間と0時間との間の差のパーセンテージ。
PtPAチューブからの血清試料では、LDおよびグルコースの結果により、8時間の期間でそれぞれ0.6%および1.5%の変化が示され、これに比して、Greiner血漿チューブ試料については12.5%および9.1%の変化が示された。血漿試料では、細胞の存在によってグルコース消費が起こり、溶解した細胞からの漏出が原因でLDが増加した。
これらの結果は、PtPAを用いた血液の凝固によって細胞が効果的に除去され、このことにより、最も影響を受ける分析物であるグルコースおよびLDの目立った変化が最長8時間にわたって防がれたことを裏づけている。このように、血清チューブにPtPAを含めることにより、健常参加者の血液試料から質の高い安定した血清が得られた。
実施例11b:抗凝固療法を受けている患者から調製した血清および血漿への細胞混入
合計でP1‐30000単位およびP2‐35000単位のヘパリンを採血(ヘパリン注入後15分以内)の直前に投与された、心臓手術を受ける2人の参加者(P1およびP2)から、血液試料を収集した。試料は50mLプレーンシリンジ(BD Plastipak REF #300866)内に収集し、ほぼ30mLの血液を充填した。収集から15分以内にシリンジを検査施設に搬送した。以下のチューブに血液を充填した:Greiner血漿チューブ、Greiner血清チューブ、およびPtPA(1.2μg/4mL血液)を含有する(上記の手順に従って洗浄した)Greiner血清チューブ。血漿チューブおよびPtPAを含有するチューブを、検査施設への到着後直ちに遠心した。Greiner血清チューブは遠心分離の前に60分間静置した。試料を分析し、続いて室温(21℃)で静置して、24時間後に同じ分析装置で再び分析した。結果は表66および67に示されている。
(表66)遠心分離後、21℃で0時間および24時間貯蔵した後に測定した、2人の心臓手術参加者からの試料のLD活性(U/L)
(表67)遠心分離後、21℃で0時間および24時間貯蔵した後に測定した、2人の心臓手術参加者からの試料のグルコース濃度(mmol/L)
PtPAによって生成された血清試料では、LDおよびグルコースの結果において、24時間の時点でそれぞれ-3%および-0.9%の変化が示され、これに比して、ヘパリンリチウム加血漿では9%および-14.8%の変化が、血清試料については13%および-13.9%の変化が示された。実施例11aの健常参加者群と同様に、血漿中の細胞の存在によってグルコース消費が起こり、細胞溶解に伴ってLD活性が増大した。Greiner血清チューブでは、試料が凝固しないため、予想された通り、血漿に類似した結果が示された。
Greiner血清チューブでは、遠心分離後の24時間にわたって、血液凝固は全く観察されず、目視的にまたは分析装置によって検出される潜在性凝固も認められなかった。PtPAを含有するチューブ内の試料は、3〜5分以内に凝固した。ゲル障壁の上部における細胞の存在を指し示すために、参加者P1の3本のチューブの写真を撮影した。PtPAチューブでは、ゲル障壁の上部または内部に極めて少数の細胞しか存在せず、ゲル障壁の全体および上部に細胞を視認することができた他の2本のチューブとは対照的であった。
3本のチューブのそれぞれから、ゲル障壁の上部にある層を乱さないように、血漿または血清内容物の大部分を丁寧に取り出して、チューブ内に約0.5mLの血漿または血清が残るようにした。各チューブ内の残留血漿または血清をバフィーコートと再び混合した上で、細胞を濃縮して顕微鏡検査用の細胞、細胞ストロマなどのギムザ染色スライドを作製するために、スライド遠心機Cytospin(Shandon-Elliott Cytospin, Shandon-Elliott Instruments Limited)の中に移した。スライド(図56に示されている)は、血漿中に大量の細胞が存在し、Greiner血清中では幾分少なく、PtPAによって生成された血清中には細胞がわずかしか存在しないことを明らかに示している。
これらの結果は、PtPAによる血液の凝固が、いわゆる「最大限にヘパリン投与を受けた」参加者においてでさえも、5分未満という非常に短い時間で達成されたことを裏づけている。遠心分離後には、残留細胞の数は極めてわずかであり、LD活性にもグルコース濃度にも影響を及ぼすには不十分であった。
実施例11c:分析物に対する、1人の心臓手術参加者からの血清試料および血漿試料の長期貯蔵の影響
心臓手術参加者P2からの3件の試料を、室温(21℃)で24時間おいた後に、一次チューブ内で4℃でさらに13日間貯蔵し(合計14日間、または収集から336時間後)、その後にK+、グルコース、LDおよびリン酸(Pi)に関して再び分析した。結果は表68に示されている。
(表68)遠心分離から0時間後、24時間後および336時間後に測定した、1人の心臓手術参加者からの血清試料および血漿試料における分析物の濃度
Greinerチューブからのヘパリンリチウム加血漿および「血清」とは異なり、PtPA血清試料はK+およびグルコースの結果に関して有意ではない変化を示し、一方、LDおよびPiの結果からはごくわずかな変化しか示されなかった。
この極端な例の状況において、PtPAを用いて生成された血清は、検査施設が追加の分析物検査を後日に行って、結果の精度が高いという確信を得ることを可能にすると考えられる、明らかに最も安定したタイプの試料をもたらした。PtPA試料におけるLD活性の20%の低下は、おそらく、既存のLDの貯蔵中の緩徐な変性が原因であったと考えられる。
全体的な結論
PtPAによって生成される血清は、あらゆる患者における凝固および/または遠心分離過程の際に、ゲル障壁の上方での、血漿成分または血清成分からの細胞の除去が不完全であることによって影響を受ける可能性が非常に高い分析物濃度の、際立った安定性をもたらす。本発明者らの結果はまた、健常参加者または高用量のヘパリンを投与されている患者から調製したGreinerヘパリンリチウム加血漿と比較して、PtPAによって生成された血清からの細胞が相対的に欠如していることも、直接的な観察によって示している。
実施例12:市販のチューブ内で調製した血漿試料および血清試料における、ならびに毒液プロトロンビン活性化因子(エカリン、PTPAおよびOSPA)を用いて調製した血清試料における、生化学的分析物の測定
本明細書の前の部分で考察したように、現行の市販の採血チューブは、あらゆる血液試料から、最適な患者ケアのための生化学検査施設からの質および待ち時間の期待に応えるように速やかに、完全に凝固した血清を生成させることはできない。上記の実施例における結果は、プロトロンビン活性化因子を用いることで、多種多様な患者/個体から、血液中のフィブリノーゲン/fdp/FDPのレベルが低く、かつ(目視検査、血清の清澄性および分析によって判明したように)細胞混入を伴わない、質の高い血清試料を迅速に生成させうることを実証している。
そのため、プロトロンビン活性化因子が、患者の臨床管理のためによく用いられる分析物の分析の妨げとなるか否かを明らかにすることは重要であった。プロトロンビン活性化因子は、血清タンパク質または分析方法にかかわるタンパク質を原則として切断することができ、それにより、分析結果に影響を及ぼすことのできるタンパク質分解酵素である。タンパク質は、関心対象の分析物として、または関心対象の分析物を測定するための反応物(例えば、酵素、抗体)のいずれかとして、分析方法にかかわる。
この実施例の目的は、プロトロンビン活性化因子を用いて調製した血清が、現行の市販のチューブ内で現行の商業的方法を用いて調製した血漿および血清と同じ分析結果をもたらすか否かを調べることとした。
単一の血清チューブまたは血漿チューブから、30種を上回る生化学的分析物が要請され、実施されることは珍しいことではない。技術的進歩によって、分析物の範囲が広がり、分析物当たりの分析容量が少なくなるにつれて、単一のチューブからの分析物の数はさらに増えると考えられる。それ故に、チューブ添加剤、特に凝固促進剤は、不活性であって、かつ分析物に対して何ら分析上の影響を及ぼさず、しかも分析物の最も高精度な推定のために最も質の高い試料をもたらすことが不可欠である。
以下に列記する33種のアッセイのそれぞれに関する以下の実験において、標準的な分析検査手順を用いた。
検査1:ナトリウム(Na+)
検査2:カリウム(K+)
検査3:クロール(Cl-)
検査4:重炭酸イオン(HCO3 -)
検査5:グルコース(Gluc)
検査6:尿素(尿素)
検査7:クレアチニン(Creat)
検査8:尿酸(尿酸)
検査9:総タンパク質(TPまたはT Prot)
検査10:アルブミン(Alb)
検査11:総ビリルビン(T Bili)
検査12:アルカリホスファターゼ(ALP)
検査13:γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)
検査14:アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)
検査15:アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)
検査16:乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)
検査17:クレアチンキナーゼ(CK)
検査18:総カルシウム(TCa)
検査19:リン酸(PiまたはPhos)
検査20:マグネシウム(Mg2+)
検査21:リパーゼ(リパーゼ)
検査22:コレステロール(Chol)
検査23:トリグリセリド*
検査24:高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-CまたはHDL)
検査25:鉄(Fe2+)
検査26:トランスフェリン(Trf)
検査27:C反応性タンパク質(CRP)
検査28:コルチゾール検査(コルチゾール)
検査29:遊離チロキシン(FT4)
検査30:甲状腺刺激ホルモン(TSH)
検査31:フェリチン(フェリチン)
検査32:トロポニン(TnI)
検査33:溶血指数(Haem index)**
検査34:黄疸指数*
検査35:脂肪血症指数*
* PtPA調製物中にグリセロールが存在するため、これらの実験ではトリグリセリドを測定しなかった。黄疸指数および高脂血症指数も本研究では評価しなかった。
** 実施例10も参照のこと。
検査分析
分析は、Beckman DxC800汎用化学分析装置およびDxI800イムノアッセイ分析装置(Beckman Coulter, Fullerton, CA, USA)にて行った。試料は、反復性の潜在性凝固が生じた場合を除き、遠心分離後1〜2時間以内に、同じ装置に同時に投入した。
検査した分析物を、半定量的な溶血レベルと併せて、結果の表に列記している。Beckman DxC800分析装置、DxI800分析装置のそれぞれにて検査した35種の分析物に関する2つおよび3つのインターナルクオリティコントロールの濃度からの試験間変動係数(CV)のばらつき(imprecision)の上限を、表69に示している。本発明者らはまた、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)も、ACTOPS(Instrumentation Laboratory, Lexington MA, USA)にて測定したが、これは、心疾患集中治療室における検体収集および透析参加者における検体収集の時点では、参加者の血液試料における抗凝固剤の正確な濃度を突き止めることが困難であったためである。いずれの場合にも、結果は列記した抗凝固度と矛盾しなかった。
データ解析
各検査の結果を得た上で、データ解析を以下の通りに行った。平均および標準偏差(SD)を、チューブの各タイプごとに各検査に関して算出した。異なるチューブ間(例えば、PtPAチューブの結果とGreiner血清チューブの結果のタイプの比較)での各検査に関する各結果ペアの間の差(実数およびパーセンテージ)も算出した。続いて、異なる血清チューブ間および異なる血清チューブと血漿チューブとの間に分析上の有意差があったか否かを判定するために、差のパーセンテージを、分析装置にて得られた試験間精度値(表69)と比較した。また、参加者データを健常参加者と抗凝固療法を受けている参加者とに分けて、同じ分析も行った。(検体を不適切にする反復性の潜在性凝固、不適切な検体収集、分析装置での未要求、または不適切な試薬が原因で)3種のチューブのいずれかにおいて分析物に関する測定値が得られなかった場合には、その結果は、アッセイごとに分析した検体の数の変動性を算出するための計算に含めなかった。
(表69)Beckman DxC800分析装置およびDxI800分析装置(
*DxI800)でのクオリティコントロール(QC)上のばらつき
実施例12a:PtPA血清と、市販のチューブ内で調製した血清およびヘパリンリチウム血漿との比較
合計61人の参加者を登録した。この61人の参加者は全員が18歳より上の成人であり、男性と女性の混成であった。参加者は2群からなった:健常志願者26人および抗凝固療法を受けている患者35人。
抗凝固療法を受けている患者35人のうち、1人は低用量ワルファリン療法を受けている外来患者であり、34人は入院患者であった。
34人の入院患者のうち、11人は心臓手術を受ける予定であり、8人は心疾患集中治療室の患者であり、15人は透析を受けていた。
心臓手術を受ける11人の入院患者は、ヘパリン注入後30分以内に採血されたが、採血の時点で合計25,000〜41,000単位のヘパリンを受けていた。検体は、参加者がバイパスに接続されている(心臓ではなく機器によって血液が送り出されている)間に収集した。
8人の心疾患集中治療室参加者を検体収集の前夜に登録し、1時間当たりヘパリン950〜1450単位でIV注入によってヘパリンを投与した。7人は、検体を収集する時点でもIVヘパリン注入を続けており(採血はIVヘパリン注入の開始から12時間以後とした)、残る1人はその日が手術予定であったため、検体収集のおよそ3時間前に注入期間を中止した(採血は、IV注入を開始してから9時間を過ぎた後であり、かつIVヘパリン注入を中止してからほぼ3時間後に行われた)。患者記録の情報によると、IVヘパリン注入を開始してから血液を収集するまでの期間にわたって、その参加者に対する注入液におけるヘパリン濃度および注入速度は変更されなかった。
透析を受けている15人の入院患者のうち、12人はヘパリンのIV注入を受け、1人はワルファリン/ヘパリンを受けており(ほぼ1750〜7000単位のヘパリン、初期ボーラスに加えて1時間毎に用量を漸増)、2人はクレキサンを投与されていた。これらの患者からの血液を、透析の開始から少なくとも1時間後に収集した。
血液の採取には標準化した採取順序を用いた。健常志願者からは静脈穿刺によって、心疾患患者からはバイパスのポートを介して、透析患者からは血液ラインを介して血液を採取した。以下のチューブを用いた:
Greiner Vacuette(商標)クエン酸チューブ(凝固試験用);
PtPA(1.2μg/4mL)を添加したGreiner Vacuette(商標)No Additiveチューブ(PtPA);
Greiner Vacuette(商標)血漿チューブ(GLH);
BD Vacutainer(商標)血漿/PST IIチューブ(BDLH);
Greiner Vacuette(商標)血清チューブ(GRS);
BD血清チューブ/SST II(BDS);および
BD RSTチューブ(BD RST)。
PtPA含有チューブ用の血液は、プレーンシリンジ内に収集し、続いてシリンジから、細胞溶解を最小限に抑えるために針を用いずに、PtPAを含有するGreinerチューブに移した。
Greiner血清チューブおよびBD SSTチューブは、健常参加者については標準的時間である30分間、抗凝固療法を受けている参加者については60分間凝固させた。これらのチューブを遠心分離機に装入する前に、凝血塊形成に関して目視検査した。
BD RSTチューブおよびPtPAチューブは、採血場所(採血室または臨床ユニット)で、すべての参加者について、5分の時点で凝血塊形成に関して目視検査した。5分の時点で固い凝血塊を形成した、健常参加者および抗凝固療法を受けている参加者についてのBD RST検体は、検査施設に搬送され次第、(20分未満で)遠心した。凝固が不完全だった場合には、検体を凝固に関して10〜15分毎に再検査し、最長60分間おいて凝固させた。ヘパリンリチウム加チューブおよびPtPAチューブは、検査施設への搬送後に直ちに(収集から20分未満で)遠心した。
チューブはすべて、スウィングバケット型遠心分離機にて20℃、3000gで10分間遠心し、続いてほぼ21℃で貯蔵した。遠心分離後直ちに、チューブを潜在性凝固に関して目視検査し、分析装置に投入する直前にも再び目視検査した。潜在性凝固が観察された場合を除き、これらのチューブ(一次チューブ)を分析に用いた。潜在性凝固が観察されたチューブでは、一次チューブ内の血清をアリコートチューブに移し、凝血塊を除去するために再び遠心して、清澄血清を別のアリコートチューブ(二次チューブ)に移し、それを分析に用いた。Greiner No Additiveチューブは血清ゲル障壁を含有しないため、PtPAにより生成された血清は、細胞との再混合および長期接触を防ぐために同じく二次チューブに移した。
結果
結果は表70に示されている。また、結果の一例も、総タンパク質(TP)の測定に関して図57に提示している。左のグラフは、各チューブタイプについて、全正常患者の結果(n=26)の平均を標準偏差値とともに示している。中央のグラフは、各チューブタイプについて、全患者の結果(n=61)の平均値を示している。右のグラフは、各チューブタイプについて、心疾患患者(n=11)に関する結果の平均値を示している。y軸の単位はg/Lタンパク質である。エラーバーは標準偏差である。
健常参加者および抗凝固療法を受けている参加者由来のPtPA血清と市販チューブの血清との比較。分析物のいずれについても有意差は認められなかった。この結論は、表70における平均検査値の比較、および上記のペアワイズ統計分析に基づく。
健常参加者および抗凝固療法を受けている参加者由来のPtPA血清と市販チューブのヘパリンリチウム加血漿との比較。いくつかの分析物(K+、TP、ASTおよびPi)では有意差が観察されたが、血漿と血清との違いは十分に立証されているため、これは予想通りであった。市販の血清チューブ内で調製した血清は、血漿とは、PtPA血清で示されたものと類似した分析上の差を示した。
(表70)血清試料および血漿試料に対する32種の分析物に関する分析データ
* DxI800イムノアッセイ分析装置で行った分析
§ノンパラメトリック分布を用いたことを意味する。p値はWilcoxen Matched-Paris Ranks検定によって決定した。
実施例12b:PtPA、OsPAおよびエカリン血清と、市販のチューブ内で調製した血清および血漿との比較
男性4人と女性1人の混成である健常志願者5人、および心臓手術を受ける予定の患者2人からなる7人の参加者を登録した(全員が18歳より上の成人)。2人の心疾患患者は、ヘパリン注入後30分以内に34,000および43,000単位のヘパリンを受けていた。
健常参加者からの血液は、標準化した採取順序を用いる静脈穿刺によって採取した:Greinerクエン酸加血漿チューブ;Greiner血清チューブ;Greiner血漿チューブ;PtPA、OsPAまたはエカリンを含有するGreiner No Additiveチューブ用のプレーンシリンジ(Thermo 10mL #CE0197)(これらの4mLチューブ内のプロトロンビン活性化因子の濃度はPtPA 1.2μg、OsPA 0.5μgとし、エカリンは健常参加者では0.625単位、心臓手術参加者では1.25単位とした)。シリンジからの血液を、プロトロンビン活性化因子を含有するGreiner No Additiveチューブに、細胞溶解を最小限に抑えるために針を用いずに移した。
心疾患参加者については、バイパスが接続されている間にプレーンシリンジ(30mL)内に血液を収集した。血液を15分以内に検査施設に搬送し、上に挙げたさまざまなチューブに分注した。
Greiner血清チューブを、健常参加者については標準的な時間である30分間、心臓手術参加者については60分間凝固させ、続いて、遠心分離機に装入する前に凝血塊形成に関して目視検査した。PtPA、OsPAおよびエカリン検体は、採血場所(健常参加者については採血室、心臓手術参加者については臨床ユニット)で、すべての参加者について、3分および5分の目標時点で、凝血塊形成に関して目視検査した。ヘパリンリチウム、PtPA、OsPAおよびエカリンチューブは、検査施設への搬送後直ちに(収集から30分未満で)遠心した。
チューブはすべて、スウィングバケット式遠心分離機にて20℃、3000gで10分間遠心し、続いてほぼ21℃で貯蔵した。遠心分離後直ちに、チューブを潜在性凝固に関して目視検査し、分析装置に投入する直前にも再び目視検査した。Greiner一次チューブを分析用に用いた。Greiner No Additiveチューブは血清ゲル障壁を含有しないため、プロトロンビン活性化因子により生成された血清は、細胞との再混合および長期接触を防ぐために、アリコート(二次)チューブに移した。
結果
結果は表71に示されており、以下の結論を裏づけている:
1.プロトロンビン活性化因子によって生成された血清とGreiner血清との比較‐分析物のいずれに関しても有意差は観察されなかった。
2.プロトロンビン活性化因子によって生成された血清と、Greinerヘパリンリチウム加血漿との比較‐いくつかの分析物(K+、TP、ASTおよびPi)では有意差が観察されたが、血漿と血清との違いは十分に立証されているため、これは予想通りであった。市販の血清チューブ内で調製した血清は、血漿とは、プロトロンビン活性化因子血清で示されたものと類似した分析上の差を示した。
(表71)3種類のヘビ毒凝固促進剤およびGreinerチューブからの各分析物に関するデータ
§ノンパラメトリック分布を用いたことを意味する。p値はWilcoxen Matched-Paris Ranks検定によって決定した。
* DxI800イムノアッセイ分析装置で行った分析。
実施例12のまとめ
健常参加者、および最少用量から最高の「最大限」までの範囲にわたるヘパリン投与を受けた、抗凝固療法を受けている参加者すべての血液は、PtPA、OsPAおよびエカリンを含有するチューブ内で5分以内に凝固し、堅固な不動性凝血塊を生じた。プロトロンビン活性化因子によって生成された血清のいずれにおいても、潜在性凝固は目視によっても観察されず、分析装置によっても検出されなかった。プロトロンビン活性化因子はタンパク質分解酵素であるにもかかわらず、それらは、分析物がタンパク質であったか否か、またはタンパク質を分析方法において反応性化合物として用いたか否かにかかわらず、測定した分析物のいずれに対しても分析的にも臨床的にも有意な影響を及ぼさなかった。市販のチューブ内で調製した血清と、プロトロンビン活性化因子を用いて調製した血清との間に、分析物のいずれにおいても有意差は観察されなかった。市販のチューブ内で調製したヘパリンリチウム加血漿とプロトロンビン活性化因子を用いて生成された血清との間で、分析物において観察された分析的および臨床的な差は、既発表データと一致した。
実施例13:市販のチューブ内で調製した血漿試料および血清試料、ならびに毒液プロトロンビン活性化因子(ノテカリンおよびカリンアクチバーゼ-2)を用いて調製した血清試料における生化学的分析物のさらなる測定
この実施例は実施例12に続くものであり、そこで記載された方法と同じ方法を用いている。
実施例13a:分析物の測定
5人の健常参加者からの血液をGreiner No Additiveチューブ(カタログ番号454001)内に収集し、それに25μLのノテカリンまたはカリンアクチバーゼ-2を添加して、それぞれ12nmol/mLおよび45nmol/mLの濃度とした。Greiner Vacuette血清チューブ(カタログ番号456078;GS)を対照として用いた。GSチューブは、遠心分離の前に、製造元の推奨に従って30分間凝固させた。プロトロンビン活性化因子を含有するチューブは、血液の添加後に直ちに凝固に関して観察した。
ノテカリンチューブおよびカリンアクチバーゼ-2チューブは2分以内に凝固し、これらのチューブは検査施設に運ばれ、収集後7〜15分以内に遠心分離を受けた。活性化因子を含有するチューブ内で形成された凝血塊は固形であり、潜在性凝血塊の形成は観察も検出もされなかった。
続いて試料を31種の分析物に関して分析した上で、その結果を表72に示している。27種の分析物については、得られた値は実験誤差の範囲内にあり、ペアド結果間の差は最小有意変化(LSC%)未満であった。差が定められたLSCを上回った結果(強調表示)は、以下のように説明しうる:
(1)LDに関して、2つのプロトロンビン活性化因子試料における幾分低い活性は、これらの試料への細胞の混入がGreiner血清と比較して少ないことを反映している可能性がある ;
(2)ノテカリン試料における高トリグリセリド(Trig)レベルは、グリセロールによる干渉に起因する(ノテカリンはグリセロール中で貯蔵していた);
(3)ノテカリン血清ではASTレベルが上昇したが、その差は臨床的に重大な程度ではなかった;
(4)5人の患者に関するトロポニンの結果は、厳密な鑑別のためにはあまりにもわずかであった。
(表72)ノテカリンおよびカリンアクチバーゼ-2によって生成された血清試料に関する分析結果
Beckman DxC800および
*DxI800イムノアッセイ分析装置にて行った分析。
§=LSCおよび/またはCALを上回る差があった結果。
実施例13b:分析物の安定性
界面活性剤および凝固促進剤は除去されるがゲル障壁は保たれるようにGreiner血清チューブを洗浄し(蒸留水で5回)、続いて乾燥器で乾燥させた。ノテカリンおよびカリンアクチバーゼ-2(25μLアリコート)をチューブに添加して、それぞれ12nmol/mLおよび45nmoL/mLの濃度とした。血液(5mL)を健常志願者から、ノテカリンを含有する1本のチューブおよびカリンアクチバーゼ-2を含有する1本のチューブ内に収集した。チューブは5分後に遠心した。血清調製後に3時間間隔で、K+、グルコース、LDおよびリン酸レベルを決定した。試料を23℃で5時間、続いて4℃で5〜26.5時間貯蔵した。ヘモグロビンのレベルも測定した。
結果は表73に示されている。
(表73)ノテカリンおよびカリンアクチバーゼ-2によって生成された血清試料における分析物の安定性
<50mg/Lのヘモグロビンレベルは臨床的に重要ではないとみなされる。このため、これらの結果は、プロトロンビン活性化因子によって生成された血清試料が、有効な形で、ヘモグロビンを含まず(このため、凝固過程における溶血がごくわずかであること)および細胞混入を含まないことを意味する。細胞または細胞残渣が存在するならば、貯蔵中に、K+、LDおよびリン酸の濃度は上昇し、グルコースの濃度は低下すると予想される。血清の試料を採取し、サイトスピン(Cytospin)法を用いて細胞に関して分析した。検出された細胞は極めて少数であった。
以上をまとめると、B群プロトロンビン活性化因子(カリンアクチバーゼ-2)およびD群プロトロンビン活性化因子(ノテカリン)を用いて調製した血清試料は、凝固の完全性、分析結果、および細胞混入物の欠如に基づき、質の高いものであった。
実施例14:市販のチューブ内で調製した血漿試料および血清試料、ならびにプロトロンビン活性化因子を含有する毒液を用いて調製した血清試料における生化学的分析物の測定
この実施例では、実施例12および13に記載したものと同じ分析物分析法を用いる。
これまでの実施例においてなされた発見により、驚いたことに、ヘビ毒プロトロンビン活性化因子が、臨床環境において凝固促進剤として用いるのに適すると考えられることが実証された。このことからさらに、これらのプロトロンビン活性化因子を含有する毒液の粗製物が、プロトロンビン活性化因子の事前の精製を必要とせずに血液凝固デバイスに用いうるかという疑問が提起された。
このため、毒液を、ヒト血液試料から質の高い血清を迅速に生成させるのに用いうるか否かを示すために、以下の実験をデザインして実施した。毒液がプロトロンビン活性化因子以外の他のタンパク質を含有するという事実を反映させて、用いる毒液の量は、これまでの実験に用いた精製プロトロンビン活性化因子のおよそ4倍とした。
実施例14a:凝固チューブにおけるP.テクスティリスおよびO.スクテラトゥスの毒液粗製物の使用
2人の健常志願者から、血液を、P.テクスティリス毒液またはO.スクテラトゥス毒液のいずれかを2μgおよび4μg含有する(4μg O.スクテラトゥス毒液については2本ずつ)、10本のGreiner No Additiveチューブ(#454001, Griener Bio-One, Kremsmuster, Australa)(容量4mL)内に収集した。また、比較のために、血液試料をGreinerの標準的な血清チューブ(#456071, Greiner Bio-One, Kremsmuster, Austraia)内にも収集した。
毒液を含有するチューブにおける凝固は、目視観察によれば2分間で完了したように思われた。毒液を含有するチューブ内の試料は15分後に遠心し、Greiner血清チューブ内のものは30分後に遠心した。試料は20℃、3000gで10分間遠心した(Hereaus 1 S-R遠心機, Germany)。Greiner No Additiveチューブからの血清は、観察および分析のために直ちにBeckmanプレーンプラスチック製チューブ(#448778, Beckman coulter, Brea, CA, USA)に移した。潜在性凝固は毒液を含有するチューブの約半数(10本中6本)で観察されたが、Greiner血清チューブではいずれにおいても観察されなかった。このことは、いくつかのチューブでは、用いた毒液の濃度では凝固が不完全であったことを指し示している。細胞、細胞ストロマおよび潜在性凝血塊を除去するために、プレーンプラスチック製チューブ内の試料を再び遠心し、得られた清澄血清を2時間以内に31種の分析物に関して分析した。試料分析は、遠心分離後2時間以内に31種の分析物に関して、Beckman DxC800汎用化学分析装置およびDxI800免疫分析装置(Beckman Coulter, Brea, CA, USA)にて行った。12件の血清(P.テクスティリス血清4件およびO.スクテラトゥス血清6件およびGreiner血清2件)について得られた結果の間で、検査された濃度レベルに関して臨床的に有意な差はみられなかった。
結果は表74に示されている。
(表74)P.テクスティリス血清およびO.スクテラトゥス毒によって生成された血清試料についての分析結果
§=CALを上回る差があった結果
分析は、Beckman DxC800および
*DxI800分析装置にて行った。Br2‐ブラウンスネークヘビ毒2.0μg;Br4‐ブラウンスネークヘビ毒4.0μg;T2-タイパンヘビ毒2.0μg;T4およびT4R‐タイパンヘビ毒4.0μg。
以上をまとめると、本発明者らは、P.テクスティリスおよびO.スクテラトゥスの毒液粗製物が、血液凝固チューブ内で血清を生成させるための有望な凝固促進剤であることを示した。潜在性凝固を回避して分析上の完全性を維持するために至適濃度を明らかにする必要がある。
実施例14b:凝固チューブにおける凝固促進剤としてのE.カリナトゥス毒液粗製物の使用
以下の実験は、エキス・カリナトゥス毒液を、ヒト血液試料から質の高い血清を迅速に生成させるために用いうるか否かを示すために実施した。
血液を、2人の健常志願者から、4μgのエキス・カリナトゥス毒を含有する10本のGreiner No Additiveチューブ(#454001, Griener Bio-One, Kremsmuster, Austraia)(容量4mL)内に収集した。同時に、比較のためにGreiner標準血清チューブ(#456071, Greiner Bio-One, Kremsmuster, Austraia)内にも血液を収集した。
毒液を含有するチューブにおける凝固は、目視観察によれば3分間で完了したように思われた。毒液を含有するチューブ内の試料は10分後に遠心し、Greiner血清チューブ内のものは30分後に遠心した。試料は20℃、3000gで10分間遠心した(Hereaus 1 S-R遠心機, Germany)。Greiner No. Additiveチューブからの血清は、観察および分析のために直ちにBeckmanプレーンプラスチック製チューブ(#448778、Beckman coulter, Brea, CA, USA)に移した。潜在性凝固は、毒液を含有するチューブにおいてもGreiner血清チューブにおいても観察されなかった。血清の移送の際の細胞を除去するために、プレーンプラスチック製チューブ内の試料を再び遠心し、得られた清澄血清を2時間以内に31種の分析物に関して分析した。試料分析は、遠心分離後2時間以内に31種の分析物に関して、Beckman DxC800汎用化学分析装置およびDxI800免疫分析装置(Beckman Coulter, Brea, CA, USA)にて行った。結果は表75に示されている。エキス・カリナトゥス血清およびGreiner血清に関して得られた結果の間で、検査された濃度レベルに関して、ASTおよびHDLについては臨床的な有意差がみられ、他の分析物についてはみられなかった。
(表75)エキス・カリナトゥスヘビ毒によって生成された血清試料についての分析結果
§=CALを上回る差があった結果
分析は、Beckman DxC800および
*DxI800分析装置にて行った。EC4‐エキス・カリナトゥス毒4.0μg
これらは予備的な結果であることから、ASTおよびHDLの結果に関して臨床的な有意差がみられた理由を確かめるために、さらなる検討が必要である。
以上をまとめると、本発明者らは、E.カリナトゥス毒の粗製物を血液凝固チューブ内の凝固促進剤として用いることに実現可能性があることを示した。潜在性凝固を回避して分析上の完全性を維持するために、至適濃度、分析物の干渉に関するさらなる試験を、正確に明らかにする必要がある。
実施例15:安定性試験
毒液プロトロンビン活性化因子が採血デバイスの構成成分として有用であるためには、それは3種類の安定性要件を満たさなければならない。
(1)大量貯蔵中の安定性:これは、精製後からチューブの製造に用いる前の期間にわたって安定である必要がある。供給の確実性から、この貯蔵期間は数カ月である可能性がある。貯蔵は、濃縮水溶液として、または乾燥凍結固体として可能と考えられる。必要に応じて貯蔵は冷蔵下で行いうると考えられる。
(2)製造中の安定性:これは、採血デバイスの製造中に安定である必要がある。この過程は、分離用ゲル、界面活性剤、および可能性としては粒状凝固促進剤などの他の構成要素を既に含むチューブへの、プロトロンビン活性化因子のストック溶液のアリコートの添加を伴う可能性が高い。その後に、プロトロンビン活性化因子の表面層を得るための乾燥、真空下でのチューブの封止、および照射による滅菌が行われると考えられる。
(3)デバイスの使用前の貯蔵中の安定性:活性化因子は室温、例えば23℃で少なくとも12カ月の期間にわたって、好ましくはより高温でより長期間にわたって、完全に近い活性を保つことが必要と考えられる。
これまでに行われた実験は、毒液プロトロンビン活性化因子の少なくともいくつかについては、これらの要件を満たす条件を見いだしうることを示唆している。
実施例15a:大量貯蔵中の安定性
プレーンプラスチック製Eppendorfチューブ内で、ある範囲内の温度で、希釈溶液としてpH 7のリン酸緩衝食塩水中で維持した場合のPtPAの安定性を決定した。血漿凝固アッセイの結果を図58に示している。結果は、4℃または25℃で2週間(336時間)後に凝固活性の有意な損失がみられなかったことを示している。第Xa因子の発色性基質S-2222に対するPtPAの活性を測定した場合にも同様の結果が得られた。37℃では、168時間後にPtPAはその活性のかなりの量を失った。
関連した実験において、pH 7.4は貯蔵のための至適温度であること、および貯蔵緩衝液へのカルシウムの添加によって血漿凝固活性が安定化されたことが実証された。
これらの実験は、長期にわたる貯蔵時にPtPAおよび類縁関係にあるOsPAの活性のすべてまたはほとんどが保たれるような、それらの大量貯蔵のための条件を見いだしうるはずであることを指し示している。
実施例15b:製造中の安定性
採血チューブに希釈溶液として添加したOsPAに対するγ線照射の影響を判定するために実験を行った。
ストックOsPA(1.089mg/mL;4.36mM)を、0.02M Hepes緩衝液(pH 7.4)で1対25に希釈した。50μLを、他の添加剤を含まない5本のプレーン採血チューブのそれぞれに添加してγ線照射し(16メガBeq)、類似の5本のチューブにも添加したが、これらへの照射は行わなかった。同様に、50μLの希釈OsPAを10本のGreinerシリカ含有採血チューブ(Greiner血清チューブ)のそれぞれに添加し、これらのチューブのうち5本に照射を行った。
γ線照射後に、すべてのチューブを0.02M Hepes緩衝液(pH 7.4)で2.0mLにした。続いてアリコートを採取して、S-2765に対する加水分解活性、および10mMカルシウムを添加した正常クエン酸加血漿を用いた凝固活性に関して検査した。
結果は図59および60に示されており、カルシウム再加クエン酸加血漿に対する凝固活性および発色性基質S-2765に対する加水分解活性のいずれに対しても、照射が何ら影響を及ぼさなかったことを示している。
プレーン採血チューブへのOsPA(1.5nM)の添加は、新たに希釈したOsPAと比較して、有意な活性の損失を示した。これは、OsPAとプレーンプラスチック製チューブとの疎水性結合によって説明しうる。シリカを含有する採血チューブへのOsPAの添加は、加水分解および凝固活性の95%を上回る回復を示した。この場合も、γ線照射処置による活性損失は観察されなかった。
以上の結論として、採血チューブにおけるOsPAのγ線照射は加水分解にも凝固活性にも影響を及ぼさなかった。シリカ、ゲル障壁および界面活性剤を含有する凝固チューブへのOsPAの添加は、正常血液を1分未満で凝集させることがこれまでに判明している、最も有効な組み合わせである。
実施例15c:デバイスの貯蔵中の安定性
0.02M Hepes緩衝液(pH 7.4)に希釈したOsPA溶液(1.5nM)のアリコート(50μL)を、Greiner標準血清チューブに入れた。表面をOsPAでコーティングするために各チューブを回転させ、チューブを真空乾燥器の中に入れ、乾燥窒素流によるパージを行った後に、低真空を23℃で3日間適用して乾燥させた。乾燥器を開き、窒素をフラッシングして、チューブを再び封止した。続いてチューブを室温(23℃)で維持した。指定した時間の後に、3本のチューブを開口し、内容物を2mLの水に再び溶解させて、第Xa因子特異的基質S-2222に対してアッセイした。結果は図61に示されており、これは、S-2222に対するOsPAの活性(A405/分の増加として表される)が、Greiner血清チューブ内の乾燥表面層としての23℃での14日間の貯蔵によって事実上変化しなかったことを示している。アッセイはすべて3回ずつ行った。図61において、右側のバーはOsPAストック溶液の新たに希釈した試料(4.05uM)の活性であり、その活性はチューブ内で認められるものと同じであったが、このことはチューブを調製するために用いた過程がOsPA活性の有意な損失を引き起こさなかったことを示している。
実施例16:採血チューブの調製
市販の血清チューブおよび血漿チューブはすべて、現在ではプラスチック製であり、その中で調製される試料の質を高めるために供給元によって開発された数多くの成分を含む。以上に考察したように、血清試料または血漿試料の調製のためのいくつかの容器(例えば、チューブ)は、以下のものを含有する。
(1)遠心分離後に上清(血清または血漿)から細胞(および血清の場合には凝血塊)を分離するため、および再混合を抑えるためのゲル障壁。ゲルは、室温に冷却すると固化する温和液体として添加される。
(2)細胞、残渣および凝血塊材料の付着、ならびに細胞溶解を減少させるために、プラスチック製チューブの内面(ゲル障壁の上)に噴霧される界面活性剤;ならびに
(3)懸濁液としてチューブの内面(界面活性剤の上面)に噴霧される、通常は粒子状である凝固促進剤/抗凝固剤。
本発明は、上記の成分(1)、(2)および(3)を含む血清チューブ(例えば、プラスチック製チューブ)であって、まず成分(1)および(2)をチューブに添加し、その後に成分(3)をチューブに添加することによって調製されるチューブを想定している。成分(3)は、本明細書において定義したプロトロンビン活性化因子を含むか、該活性化因子から本質的になるか、または該活性化因子からなる凝固組成物を凝固促進剤として含み、例えば、成分(3)はいくつかの市販の血清チューブに用いられる既存の粒子状の凝固促進剤を含んでもよい。各チューブ内のプロトロンビン活性化因子の量は、上記に詳述した実験結果および当技術分野において公知の日常的な手法を利用して決定することができる。続いてチューブを抜気して滅菌キャッピングを行う。続いてチューブを室温で貯蔵する。
また、成分(3)を含み、かつ任意で成分(1)および/または(2)を含む血清チューブ(例えば、プラスチック製チューブ)も想定している。各チューブ内のプロトロンビン活性化因子の量は、上記に詳述した実験結果および当技術分野において公知の日常的な手法を利用して決定することができる。チューブを抜気して滅菌キャッピングを行い、チューブを室温で貯蔵することができる。
実施例17:ポイントオブケア態様
以上に考察したように、「ポイントオブケア」検査とは、検査が患者ケアの場所またはその付近で行われることを意味する。ポイントオブケア検査は、迅速な結果の必要性がある病院および他の環境においてますます普及しつつある。これは、種々のデバイスを用いて実現され、そのいくつかは比較的安価で、小型で、かつ携帯型である。
現在の慣行において、多くのポイントオブケアデバイスは以下のようにして動作する:血液の液滴を膜の上に乗せる、ここで、血液細胞は該膜に保持されるが、血漿は、内部で多数の分析が行われる複数のチャネルを有するマイクロ流体デバイス内へと該膜を通して拡散される。他所で考察したように、血清は、生化学的または他の病理学的アッセイ用の試料として、血漿よりも好ましい。この態様において、本発明は、ポイントオブケア検査のために設計されたデバイス内で血清を生成させるために、プロトロンビン活性化因子を含むか、該活性化因子から本質的になるか、または該活性化因子からなる凝固組成物を使用することを企図している。
病院および医師による手術用途に適する1つのそのようなデバイスでは、静脈穿刺によって得られた血液試料が、プロトロンビン活性化因子を含むか、該活性化因子から本質的になるか、または該活性化因子からなる凝固組成物であって、ほぼ30秒で実現される組成物を含有するシリンジ(または類似物)内に収集される。デバイスは、血清を凝血塊から迅速に分離させるための濾過または遠心分離のいずれかを可能にするように設計されている。そのようにして得られた血清は、生化学的または他の病理学的アッセイのための既存のマイクロ流体デバイスに用いられるが、分析される試料が、既存のポイントオブケアデバイスに用いられる血漿ではなくて血清である方が、分析の範囲が大きくなる。その上、血清の試料を、病理検査施設におけるさらなる分析のために保管しておくこともできる。
上記のシリンジにおける濾過デバイスは、分析のために5分後に血清を押して通過させるための濾過機構を含みうる。好適には、シリンジは図62に図示されたような区画に分けられており、シリンジの表示は以下の通りである:
A‐エントリーポート、これは突出要素を最小限に抑えるためにネジを緩めて取り外しうる採血針アダプターを有する;
B‐血清の適量分配のためのポート、またはポイントオブケア試料針のためのエントリーポート;
C‐血液の一方向流入を可能にし、血液が血清区画に押し出されることを可能にする弁;
D‐血清を血清区画に押し出すことを可能にするプランジャーフィルター(シリンジの前部);
E‐血液が血液区画に流入するための開口部。
F‐凝固が起こる区画。
図62において、Gは、凝固過程を適切な位置に設定するために内側が凝固組成物によってコーティングされている。続いて、それを押して、血清がフィルター(D)を通過するように力を加える。
別のそのようなデバイスにおいて、ポイントオブケアデバイスは、プロトロンビン活性化因子を含む、該活性化因子から本質的になる、または該活性化因子からなる凝固組成物によってデバイスの一部がコーティングされているキャピラリーシステムと、分析のために血清を反応チャンバー内に引き込むことのできる吸収材とを含む。
別のそのようなデバイスにおいて、膜上に置かれた血液の液滴の迅速な凝固が達成されるように、プロトロンビン活性化因子を含む、該活性化因子から本質的になる、または該活性化因子からなる凝固組成物を、マイクロ流体デバイスの膜と結びつけることが可能と考えられる。そのようにして形成された血清がデバイス内に拡散し、そのようなデバイスにおいて現在分析されている血漿の代わりに分析される。
実施例のまとめ
分析のために適した試料を速やかに得ることは、臨床化学サービスの提供において極めて重要である。血清はより清澄な試料であると認識されているが、凝固の完了のために必要な時間(現行のほとんどの市販のチューブで完全な凝固を確実に得るための30分に加えて、標準的なプロトコールにおける分析時間)および抗凝固療法を受ける患者数が増加の一途をたどっていることを理由として、一般的には血漿が用いられており、特に病院環境ではそうである。しかし、血漿試料では潜在性凝固(遠心分離後の凝固)が起こって、分析誤差および重大な結果の伝達の遅れを招く恐れがある。これらの問題のいくつかについては、上記の実施例で説明している。
また、上記の実施例における結果は、プロトロンビン活性化因子の使用により、抗凝固剤を投与されている患者を含む多岐にわたる患者由来の血液試料から、質の高い血清を極めて迅速に生成させうることも示している。それらは、以下のことにより、ヘパリンリチウム加血漿および従来の血清チューブに代わる適した選択肢を提供する:
‐凝固過程がほぼ5分未満(試料を検査施設に搬送するために必要な時間)で完了することから、血液試料収集後に迅速な分析が可能であり、それ故に血漿チューブに関する時間と同等で、かつ現行のほとんどの血清チューブよりも優れる迅速な待ち時間が可能となる;
‐同時に、細胞残渣および/または潜在性微小凝固による分析物への干渉を最小限に抑えつつ、健常個体と、臨床環境において遭遇する可能性のある抗凝固療法を受けているあらゆる個体との双方からの血液に関して質の高い血清試料をもたらすこと;ならびに
‐臨床環境において典型的に用いられる極めて広範囲にわたるアッセイに適する単一の血清試料であって、その血清試料が分析物の分析のために血漿よりも優れており、その単一の試料が稀少リソース(より少い血液チューブへの収集しか必要としないことによる、危篤患者における血液、スタッフの時間および消耗品)への負荷を軽減させる血清試料を生成させること。
明細書の全体を通じて、その目的は、本発明の好ましい態様を、いずれか1つの態様または特徴の特定の集成物に限定することなしに説明することであった。したがって、当業者は、本開示に鑑みて、本発明の範囲から逸脱することなしに、例示された特定の態様にさまざまな修正および変更を加えうることを理解するであろう。そのような修正および変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。