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JP6425936B2 - 5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法に関し、特に、セルロースを原料に用いた5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法に関する。
5−ヒドロキシメチルフルフラール(以下、「HMF」ということもある)は、樹脂材料、燃料、化成品、界面活性剤、香粧品などの種々の有用な化学物質の原料となるので、重要な化学中間体である。このHMFを有用な化学物質に変換する方法、および変換で得られた生成物の有効利用方法の例として、次のようなものがある。
酸化反応によればフランジカルボン酸に変換することができて、この生成物はテレフタル酸の代替物質として期待されている。また、水素化反応によれば、ジメチルフランへと変換され、燃料添加剤としての利用が期待されている。さらに、加水分解反応によればレブリン酸が生成し、γ-バレロラクトンの原料など広範な利用が期待できる。
このHMFは、糖類を種々の条件下で加水分解及び脱水反応をさせることにより製造することができるが、近年、石油の代替として、廃木材などの廃棄バイオマスが化学原料資源として注目されており、セルロースを原料にしてHMFを合成する方法が種々提案されている。
例えば、特許文献1では、セルロースから乳酸及び5−ヒドロキシメチルフルフラール及びフルフラールを製造する方法において、セルロースを含有する水を経路へ流す流通工程と、前記水に塩基が添加されている状態で前記水が前記経路内で温度150℃以上400℃未満、圧力5MPa以上の状態にされる乳酸製造工程と、前記乳酸製造工程の前あるいは後に、前記水に酸が添加されている状態で前記水が前記経路内で温度250℃以上400℃未満、圧力10MPa以上の状態にされる5−ヒドロキシメチルフルフラール及びフルフラール製造工程とにより、乳酸及び5−ヒドロキシメチルフルフラール及びフルフラールを製造することが記載されている。しかしながら、圧力5MPaという高圧条件を課す必要があり、高圧反応を安全に行うための装置や維持管理にコストがかかると予想される。
また、特許文献2では、セルロースから5−ヒドロキシメチルフルフラールを製造する方法において、反応温度200℃以上400℃未満、圧力10MPa以上40MPa以下の水に、セルロースと酸と触媒を共存させることによって、前記セルロースを直接5−ヒドロキシメチルフルフラールにまで選択的に分解すること、及び該触媒として、スカンジウムトリフラート、モンモリロナイト、白金担持アルミナを用いることが記載されている。しかしながら、該方法では、水を10MPa以上40MPa以下と高圧条件に保つ必要があり、安全な反応のためには装置コスト、維持管理コストが多大になると予想される。また、酸としては硫酸や硝酸、リン酸などの無機酸やギ酸や酢酸などの有機酸が挙げられており、水以外に添加剤的に使用する必要性がある。また装置腐食など維持管理にコストがかかることが予想される。
また、特許文献3では、ヘキソースを、不均一系リン酸ジルコニウム触媒の存在下、亜臨界状態または超臨界状態の水と接触させて5−ヒドロキシメチルフルフラールを得ること、及びセルロース又はセルロース含有物質を、不均一系リン酸ジルコニウム触媒の存在下、亜臨界状態または超臨界状態の水と接触させて、ヘキソースに分解し、さらに得られたヘキソースから5−ヒドロキシメチルフルフラールを得ることが記載されている。
しかしながら、反応開始物質がセルロールやセルロース含有物質である場合については、亜臨界状態または超臨界状態の水と接触させると、分解が進み、単糖類、二糖類を生成する、この分解の際に、反応系にリン酸ジルコニウム触媒が存在していても、セルロースの分解反応を妨害しない、との記載があるだけで、セルロースの分解については具体的な記載はない。また、本手法においては、亜臨界条件、または超臨界条件で反応を行う必要性があり、高温高圧条件の反応を安全に行うための設備やその維持管理が高コストであることが予想される。
また、特許文献4では、セルロースを、酸性電解水に混合し、得られた混合物を、最高温度が210℃で飽和蒸気圧の条件下で、撹拌することで、ヒドロキシメチルフルフラールを得ることが記載されている。しかしながら、通常の水ではなく、酸性電解水を溶媒に使用しているので高コストにつながることが予想される。
また、特許文献5においては、木材及び農業廃棄汚物のリグノセルロース材料(セルルース、ヘミセルロース及びリグニン)を、固体不均一酸触媒を用いて、一段階加水分解法により付加価値材料に変換するための方法が提案されており、該文献の実施例中には、溶媒として水のみを用いたものも記載されている。
しかしながら、反応混合物の分析について、HPLC(高速液体クロマトグラフ装置)で分析し、すべての化合物(キシロース、アラビノース、グルコース、5−ヒドロキシメチルフルフラール及びフルアルデヒド)の較正を分析に先立て行ったことが記載されているものの、キシロース以外の生成物については、40%のフルフラール収率が観察されたことが記載されているだけで、HMFについては具体的な記載がない。
また、非特許文献1には、CuCl2とCrCl2の触媒金属成分を1-ethyl-3-methylimidazolium chlorideに溶解して得られる反応系がセルロースの変換に効果的であり、HMFの収率が55.4±4.0%であると記載されている。
しかしながら、触媒に有害金属のクロムが使用されており、製造時の安全性に問題が生じることや、使用後の触媒の処理や廃液処理等に多大なコストがかかることが予想される。
さらに、非特許文献2には、セルロース及びグルコースをイオン液体(ionic liquid)の存在下でマイクロウェーブ処理をすることがHMFを得る効果的な方法であり、触媒には3塩化クロム6水和物が効果的であると記載されている。
しかし、この方法では、同じく有害金属であるクロムの処理に多大なコストがかかることが予想される。
特開2005−232116号公報 特開2007−145736号公報 特開2007−196174号公報 特開2011−115061号公報 特開2013−517792号公報
Applied Catalysis A: General,第361巻,Issues 1-2, 117-122ページ Tetrahedron Letters 第50巻,(2009年) 5403-5405ページ
以上のとおり、HMFの製造においては、セルロースから、酸触媒等を用いてグルコースなどの糖を製造し、得られたグルコースなどの糖からHMFを製造することは可能であるが、セルロース又はセルロース含有物質を原料として、ワンポット(一段)反応でHMFを合成させることが好ましい。
しかしながら、セルロースから直接一段でHMFを製造する手法は少なく、あったとしても有害なクロム触媒や高価なイオン液体を用いるものがほとんどであった。
また、グリーンケミストリーの考え方に基づけば、触媒には有害金属元素を含まないことが求められる。さらに、溶媒は後処理やコストの点から水であることが望ましい。
本発明は、こうした現状を鑑みてなされたものであって、セルロース又はセルロース含有物質を原料として、有害な触媒や有機溶剤を用いることなく、ワンポット(一段)反応でHMFを合成する方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、リン酸カルシウムを触媒に用いて、好ましくは、原料のセルロース及び/又はセルロース含有物質を単独で又は該触媒と混合して、事前に、ボールミルや自動乳鉢などで粉砕混合を行うことにより、セルロース含有原料の結晶性を低下させたり、物理的に強固な接触状態を作ったりした後、該触媒と原料のセルロース又はセルロース含有物質との混合体を、水溶媒ともにオートクレーブ内に密封して加熱することにより目的生成物のHMFへの反応が効果的に進行するという知見を得た。
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]セルロース及び/又はセルロース含有物質を反応原料として用い、Ca (PO ) からなる触媒と水溶媒中で加熱処理することにより、5−ヒドロキシメチルフルフラールを得ることを特徴とする5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
[2]前記加熱処理前に、前記反応原料単独で又は前記触媒と混合して、粉砕・摺り合わせ処理を行うことを特徴とする[1]に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
[3]前記前処理が、ボールミル処理であることを特徴とする[2]に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
[4]前記加熱処理が、不活性ガス中で行われることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
[5]前記加熱処理が、180〜220℃で行われることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
本発明の方法によれば、人体に害のないリン酸カルシウムを触媒に用い、溶媒として水だけを用いることにより、セルロース又はセルロース含有物質から、有害な触媒や、有機溶剤を用いることなく、ワンポット(一段)反応でHMFを合成することができる。
本発明の化学反応の概要を示す図
本発明の5−ヒドロキシメチルフルフラールを製造する方法は、セルロース及び/又はセルロース含有物質を反応原料として用い、該反応原料とリン酸カルシウムからなる触媒とを水溶媒中で混合した後、該混合物を加熱することを特徴とする。
図1は、本発明の化学反応の概要を示す図であって、本発明によれば、セルロース及び/又はセルロース含有物質から、有害な触媒や有機溶剤を用いることなく、従来の2段階又は多段階の反応をワンポット(一段)反応で、HMFを合成することができる。
本発明において、原料に用いるセルロース又はセルロース含有物質として好適なものは、試薬や食品添加物などとして提供されている精製セルロースのほかに、廃棄物系の資源としては古紙や古布、さらには間伐材やオガクズなどに代表される天然木材やその加工品などが使用可能である。廃棄物の場合には紙類には添加剤やインク、布類の場合には染料や合成繊維類、天然木材にはリグニンやヘミセルロースなどセルロース以外の不純物が含有されているが、それらは特に反応に悪影響を与えることはなく、セルロース含有原料を使用すれば良好な反応結果が得られる。
また、本発明において、ワンポット(一段)反応に用いる触媒は、リン酸カルシウム(化学式:Ca3(PO4)2)であり、市販の試薬や公知の種々の方法で合成したものが使用できる。
本発明においては、セルロース又はセルロース含有物質は、好ましくは、加熱処理前に、単独でまたは前記触媒と混合し、機械的エネルギーとして自動乳鉢やボールミル装置などを用いて粉砕・摺り合わせ処理を行った後に、水溶媒中で混合して反応を行う。機械的処理装置を使用して、粉砕・摺り合わせ処理を行うことで、原料セルロース又はセルロース含有物質の結晶性が低下して反応性が大幅に高まる効果が得られるので、高い目的生成物の収率を得るためには、前処理操作は行うことが好ましい。前処理を行う時間は、好ましくは1時間〜7日間、特に好ましくは24時間〜72時間程度である。
本発明において、加熱処理は、180〜220℃、好ましくは、200℃前後の反応温度に加熱して、1〜10時間、特に好ましくは2時間程度反応を行う。この反応は多段階の逐次反応であるので、長時間過ぎれば目的生成物の分解や重合、触媒表面への沈着など望ましくない反応や現象が進行し収率の低下を招く。短時間すぎた場合には、原料の反応率が低いので収率が低下する。
また、加熱処理は、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことにより、空気の存在による酸化などの悪影響をなくすことが好ましい。
また、加熱処理は公知の種々の方式が適用できるが、代表的な例として回分式(バッチ式)と流通式が挙げられる。回分式の場合は、密閉状態を保ち反応温度で溶媒の水が液体状態にあるようにすることが好ましい。流通式の場合は、圧力調整弁などの機構により内圧を調整し、溶媒の水が液体状態のまま反応装置を通過できるような構造であることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
反応原料である、メルク製微結晶セルロースに対して、ボールミルを用いて通算48時間のすり潰し・擦り合わせ処理を施した。この際使用したボールミルは、容量3Lの容器を用いて、直径2cmのアルミナボールを1kgともにセルロースを空気中で封入した。その後水分含有量を調整するために80℃の乾燥機の中で空気中12時間以上乾燥処理を行い、その後シリカゲルで乾燥状態を保っているデシケーター内で室温保管した。
耐圧硝子工業製反応容器(TPR‐1型、内容積100mL)に、上記の保管されたセルロースを0.2g、触媒であるリン酸カルシウム(メルク製)を1.8g、及び蒸留水を20mL加えた。反応容器を密封し、空間部を空気中の酸素の影響を排除するためにアルゴンで置換し初圧を室温で0.4MPaに調節した。加熱用ヒーターを用いて200℃まで加熱し、撹拌機を使用して300rpmで撹拌操作を行いながら反応を行った。2時間経過後、ヒーターを外して、反応容器を室温の水に浸して急冷し反応を停止させた。
(生成物の分析方法と分析結果)
反応容器内の反応終了後の混合物はメンブレンフィルター(アドバンテック製)を用いて触媒と未反応原料を分離し、フィルターを通過した黄色透明な水溶液を得た。水溶液は、蒸留水で10倍に希釈し高速液体クロマトグラフ装置(以下HPLCと記載)(島津製作所製)により分析を行った。市販試薬を標準物質として検量線を作成し、その検量線により水溶液中の含有濃度を算出した。セルロースの単位構造はC6105で(C6105)nと表記され、すべてグルコース(C6126)に加水分解された場合をグルコース収率100%とした。HMFについてはグルコース100%から収率100%で得られるHMFの濃度を算出し収率100%とした。
前記反応結果は、グルコースの収率が9.0%、HMFの収率が35.1%と良好な収率を得られた。他の副生成物は検出下限界に近い微小量のフルクトースが見られたが、他の微小ピークは試薬との比較では同定不可能であった。これらは、グルコースやHMFの単量体以外の2量体や複数重合しているオリゴマー的なものと推測される。
反応温度条件を205℃に変更して、それ以外の条件は変更せずに上述の実験を行った。その結果は、HMF収率25.0%、グルコースは検出下限界に近い微小量であった。
次に反応温度条件を195℃に変更して、これ以外の条件は変更せずに上述の実験を行った。その結果は、HMF収率が25.9%、グルコースの収率が12.2%であった。
さらに、温度195℃の条件で、反応時間を3時間に延長した時は、HMF収率が26.5%、グルコースの収率が8.2%であった。
(実施例2)
本実施例では、反応原料の汎用性を確認するために、メルク製微結晶セルロースに代えてSERVA社製の微結晶性セルロースを原料に用いて、ボールミルを用いて通算48時間のすり潰し・擦り合わせ処理を前述の実施例と同様に施した。その後、前記と同様の反応操作を行い、反応温度200℃、反応時間2時間でHMFの合成を行った。
その結果は、HMF収率が27.0%、グルコースの収率が9.4%であった。
この結果、原料セルロースの製造元により、多少のばらつきは認められるものの、HFFが合成できることは間違いないことが明らかになった。
(実施例3)
反応原料を実施例1と同一のメルク製微結晶セルロースを使用し、メルク製微結晶セルロースを、自動乳鉢を用いて通算10時間のすり潰し・擦り合わせ処理を空気中、室温で施した。その後水分含有量を調整するために80℃の乾燥機の中で空気中12時間以上乾燥処理を行い、その後シリカゲルで乾燥状態を保っているデシケーター内で室温保管した。
耐圧硝子工業製反応容器(TPR‐1型)に、上記の保管されたセルロースを0.2g、触媒であるリン酸カルシウム(メルク製)を1.8g、及び蒸留水を30mL加えた。反応容器を密封し、空間部を空気中の酸素の影響を排除するためにアルゴンで置換し初圧を室温で0.4MPaに調節した。加熱用ヒーターを用いて200℃まで加熱し撹拌機を使用して300rpmで撹拌操作を行いながら反応を行った。2時間経過後、ヒーターを外して、反応容器を室温の水に浸して急冷し反応を停止させた。HPLCの分析は実施例1とまったく同様に行った。
前記反応の分析結果は、グルコースの収率が8.7%、HMFの収率が25.1%と良好な収率を得られた。他の副生成物は検出下限界に近い微小量のフルクトースが見られたが、他の微小ピークは同定不可能であった。グルコースやHMFの単量体以外の2量体や複数重合しているオリゴマー的なものと推測される。
この結果、前処理手法としては、ボールミル48時間処理が、自動乳鉢処理10時間よりも優れていると言える。
反応温度条件を205℃に変更して、それ以外の条件は変更せずに上述の実験を行った。その結果は、HMF収率が21.2%、グルコース収率が5.4%であった。
また、反応温度条件を195℃に変更して、それ以外の条件は変更せずに上述の実験を行った。その結果は、HMF収率が18.1%、グルコース収率が8.5%であった。
(実施例4)
メルク製セルロースに代えてSERVA社製微結晶セルロースを10時間自動乳鉢にて粉砕処理を行い原料として用いた。リン酸カルシウム触媒を1.8g添加して30mLの水に分散させ、実施例1と同様の反応容器に入れ、アルゴンを封入し205℃で2時間の加熱を300rpmで撹拌しながら行い反応させた。その結果、グルコースが収率5.1%で、HMFが収率15.1%で得られた。その他、いくつかの同定および定量が不可能な少量の副生成物のピークが検出された。
この実施例の結果は、メルク製セルロース特有の現象ではなく一般性のある反応結果であることを示している。
(実施例5)
本実施例では、原料の汎用性を確認するために、セルロース含有原料に古布(ワイシャツ、綿100%、ユニクロ製)を用いて反応を行った。
古布を1センチ×5センチの大きさに切り、縫製等に用いられている糸を取り除いた後に、粉砕機で粉砕処理を行い綿状のセルロースを得た。実施例1と同様に触媒と混合して水中で反応を行った所、HMFが10.4%生成した。その他副生成物として、同定困難な多数の微小ピークが見られ、触媒表面上にも褐色の沈着物が見られた。これらは、グルコースやHMFの単量体以外の2量体や複数重合しているオリゴマー的なものと推測される。定量計算は原料がすべてセルロースであると仮定している。
次いで、上述した古布を粉砕機で粉砕して得られた綿状のセルロース原料をボールミルでさらに48時間の処理を行った。すなわち、粉砕機処理とボールミル処理の両方を行った原料である。ボールミル処理の結果、綿状の原料の大部分は綿状から微粉末状に変化した。微粉末状に粉砕した古布(セルロース含有原料)0.2gに、リン酸カルシウム触媒を1.8g添加して30mLの水に分散させ、実施例1と同様の反応容器に入れ、アルゴンを封入し200℃で2時間の加熱を300rpmで撹拌しながら行い反応させた。
その結果、グルコースが収率6.8%で、HMFが収率30.6%で得られた。ボールミル処理の効果で原料の反応性が高まり高収率につながったと言える。その他、いくつかの同定および定量が不可能な少量の副生成物のピークが検出された。これら副生成物は、グルコースやHMFの単量体以外の2量体や複数重合しているオリゴマー的なものと推測される。定量計算は原料がすべてセルロースであると仮定している。
この結果、試薬の微結晶セルロースと比較すれば収率は多少低下するが、セルロース含有廃棄物の一つである古布を原料にHMFが製造できることが明らかとなり、原料の汎用性が実証できた。
(実施例6)
本実施例では、原料の汎用性を確認するために、セルロース原料にコピー用紙を使用して反応を行った。
前処理として、印刷済みのコピー用紙を粉砕機にかけて処理した。綿状の粉砕物を原料として0.2g使用し、触媒を1.8g添加して、30mLの水中に分散し、200℃にて2時間反応を行った。定量は0.2gの原料全てがセルロースであると仮定して計算した。その結果、8.3%のHMF収率が得られたが、顕著に高い値ではなかった。
ボールミル処理などの機械的エネルギーを加えることの必要性を実証するためにボールミル処理を48時間行った原料を使用した場合は、HMF収率が21.7%まで向上した。その時のグルコース収率は検出下限界に近く正確な定量分析ができなかった。コピー用紙には、品質向上のために種々の添加剤が使用されているため、セルロース含有率は100%よりも低い値になる。したがって、セルロース基準のHMF収率は前記の値よりも高くなるものと考えられる。
(実施例7)
本実施例では、原料の汎用性を確認するために、天然木材を原料にして反応を行った。
粉砕機を用いて粉状にした秋田杉をそのまま原料に用いて反応を行った。原料の木材を構成している糖成分の含有率を測定した結果セルロースおよびヘミセルロース由来のグルコースが43.9%(重量比)であることが判明している。その他の糖成分はキシロース9.9%、ガラクトース7.5%、マンノース12.3%であり、糖成分以外の成分はリグニンである。
原料の使用量は、木粉中の糖含有率を基に算出してグルコース量が0.2gになるように重量調整を行った結果0.456gを使用した。反応の結果、HMFが収率14.3%で得られた。グルコースは検出下限界に近く正確な定量ができなかった。天然木材を原料とした場合の収率の算出方法は下記の通りである。この分析値を基に、HMFに変換されるグルコース量を基準にしてHMF収率を算出した。したがって、木材の全重量基準では上記の反応結果は、HMF収率(全重量基準)6.3%となる。
粉砕機で粉砕された木粉に対してさらに48時間のボールミル処理を施し、反応原料に使用した。その結果、HMF収率35.5%、グルコース収率9.3%を得た。この収率の計算に使用した基準値もグルコース(含有率43.9%)基準である。
本実施例の結果、木材原料も効率的にHMFに変換することができることが明らかとなり、原料の汎用性が実証できた。
(比較例1)
実施例1で使用したものと同じメルク製微結晶セルロースに対して48時間ボールミル処理を行い、反応の原料として0.2g用いた。触媒を一切添加せずに30mLの水に分散させ実施例と同様の反応容器に入れ、アルゴンを封入し200℃で2時間の加熱を300rpmで撹拌しながら行い反応させた。その結果、HMFが収率16.7%で、グルコースが収率14.8%で得られた。その他、いくつかの同定および定量が不可能な少量の副生成物のピークが検出された。
この反応結果は触媒を用いないと反応が遅くHMF収率が小さいことを示していて、触媒を反応系内に添加する効果を実証できた。
(実施例8)
本実施例では、メルク製微結晶セルロースに対するボールミル処理を一切行わずに原料として用いた。触媒は実施例1と同様に1.8g加えて30mLの水に分散させ実施例1と同様の反応容器に入れ、アルゴンを封入し200℃で2時間の加熱を300rpmで撹拌しながら行い反応させた。
その結果、HMFが収率12.8%で、グルコースが収率5.8%で得られた。
(実施例9)
実施例1においては反応容器内をアルゴンで置換し空気中の酸素の影響を排除しているが、本実施例では、残留空気の悪影響を明らかにするためにアルゴン置換を行わずに、空気が残留したまま反応を行った。その他条件は実施例1と同様であった。
その結果、HMF収率は23.1%と低下して、グルコース収率も4.9%と低下した。
この結果は、空気の悪影響を示すものであり、アルゴンなどの不活性ガスで反応容器内を置換する効果が明らかになった。
(比較例2)
天然木材を使用した実施例7について、触媒の有無の効果を調べる実験を行った。
実施例7で優れた反応結果を得ている、秋田杉の粉末に48時間のボールミル処理を施した原料をグルコースの量が0.2gになるような木材量である0.456gを用いた。この原料を用いて触媒を一切添加せずに実施例7と同条件で反応を行った結果、HMF収率が24.2%、グルコース収率が11.0%であった。
この結果、触媒を用いない場合はHMF収率が低下して、触媒を使用する効果が明らかになった。

Claims (5)

  1. セルロース及び/又はセルロース含有物質を反応原料として用い、Ca (PO ) からなる触媒と水溶媒中で加熱処理することにより、5−ヒドロキシメチルフルフラールを得ることを特徴とする5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
  2. 前記加熱処理前に、前記反応原料単独で又は前記触媒と混合して、粉砕・摺り合わせ処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
  3. 前記前処理が、ボールミル処理であることを特徴とする請求項2に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
  4. 前記加熱処理が、不活性ガス中で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
  5. 前記加熱処理が、180〜220℃で行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
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