JP6425936B2 - 5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法 - Google Patents
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Description
酸化反応によればフランジカルボン酸に変換することができて、この生成物はテレフタル酸の代替物質として期待されている。また、水素化反応によれば、ジメチルフランへと変換され、燃料添加剤としての利用が期待されている。さらに、加水分解反応によればレブリン酸が生成し、γ-バレロラクトンの原料など広範な利用が期待できる。
しかしながら、反応開始物質がセルロールやセルロース含有物質である場合については、亜臨界状態または超臨界状態の水と接触させると、分解が進み、単糖類、二糖類を生成する、この分解の際に、反応系にリン酸ジルコニウム触媒が存在していても、セルロースの分解反応を妨害しない、との記載があるだけで、セルロースの分解については具体的な記載はない。また、本手法においては、亜臨界条件、または超臨界条件で反応を行う必要性があり、高温高圧条件の反応を安全に行うための設備やその維持管理が高コストであることが予想される。
しかしながら、反応混合物の分析について、HPLC(高速液体クロマトグラフ装置)で分析し、すべての化合物(キシロース、アラビノース、グルコース、5−ヒドロキシメチルフルフラール及びフルアルデヒド)の較正を分析に先立て行ったことが記載されているものの、キシロース以外の生成物については、40%のフルフラール収率が観察されたことが記載されているだけで、HMFについては具体的な記載がない。
しかしながら、触媒に有害金属のクロムが使用されており、製造時の安全性に問題が生じることや、使用後の触媒の処理や廃液処理等に多大なコストがかかることが予想される。
しかし、この方法では、同じく有害金属であるクロムの処理に多大なコストがかかることが予想される。
しかしながら、セルロースから直接一段でHMFを製造する手法は少なく、あったとしても有害なクロム触媒や高価なイオン液体を用いるものがほとんどであった。
また、グリーンケミストリーの考え方に基づけば、触媒には有害金属元素を含まないことが求められる。さらに、溶媒は後処理やコストの点から水であることが望ましい。
[1]セルロース及び/又はセルロース含有物質を反応原料として用い、Ca 3 (PO 4 ) 2 からなる触媒と水溶媒中で加熱処理することにより、5−ヒドロキシメチルフルフラールを得ることを特徴とする5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
[2]前記加熱処理前に、前記反応原料単独で又は前記触媒と混合して、粉砕・摺り合わせ処理を行うことを特徴とする[1]に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
[3]前記前処理が、ボールミル処理であることを特徴とする[2]に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
[4]前記加熱処理が、不活性ガス中で行われることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
[5]前記加熱処理が、180〜220℃で行われることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
図1は、本発明の化学反応の概要を示す図であって、本発明によれば、セルロース及び/又はセルロース含有物質から、有害な触媒や有機溶剤を用いることなく、従来の2段階又は多段階の反応をワンポット(一段)反応で、HMFを合成することができる。
また、加熱処理は、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことにより、空気の存在による酸化などの悪影響をなくすことが好ましい。
また、加熱処理は公知の種々の方式が適用できるが、代表的な例として回分式(バッチ式)と流通式が挙げられる。回分式の場合は、密閉状態を保ち反応温度で溶媒の水が液体状態にあるようにすることが好ましい。流通式の場合は、圧力調整弁などの機構により内圧を調整し、溶媒の水が液体状態のまま反応装置を通過できるような構造であることが好ましい。
反応原料である、メルク製微結晶セルロースに対して、ボールミルを用いて通算48時間のすり潰し・擦り合わせ処理を施した。この際使用したボールミルは、容量3Lの容器を用いて、直径2cmのアルミナボールを1kgともにセルロースを空気中で封入した。その後水分含有量を調整するために80℃の乾燥機の中で空気中12時間以上乾燥処理を行い、その後シリカゲルで乾燥状態を保っているデシケーター内で室温保管した。
耐圧硝子工業製反応容器(TPR‐1型、内容積100mL)に、上記の保管されたセルロースを0.2g、触媒であるリン酸カルシウム(メルク製)を1.8g、及び蒸留水を20mL加えた。反応容器を密封し、空間部を空気中の酸素の影響を排除するためにアルゴンで置換し初圧を室温で0.4MPaに調節した。加熱用ヒーターを用いて200℃まで加熱し、撹拌機を使用して300rpmで撹拌操作を行いながら反応を行った。2時間経過後、ヒーターを外して、反応容器を室温の水に浸して急冷し反応を停止させた。
反応容器内の反応終了後の混合物はメンブレンフィルター(アドバンテック製)を用いて触媒と未反応原料を分離し、フィルターを通過した黄色透明な水溶液を得た。水溶液は、蒸留水で10倍に希釈し高速液体クロマトグラフ装置(以下HPLCと記載)(島津製作所製)により分析を行った。市販試薬を標準物質として検量線を作成し、その検量線により水溶液中の含有濃度を算出した。セルロースの単位構造はC6H10O5で(C6H10O5)nと表記され、すべてグルコース(C6H12O6)に加水分解された場合をグルコース収率100%とした。HMFについてはグルコース100%から収率100%で得られるHMFの濃度を算出し収率100%とした。
前記反応結果は、グルコースの収率が9.0%、HMFの収率が35.1%と良好な収率を得られた。他の副生成物は検出下限界に近い微小量のフルクトースが見られたが、他の微小ピークは試薬との比較では同定不可能であった。これらは、グルコースやHMFの単量体以外の2量体や複数重合しているオリゴマー的なものと推測される。
次に反応温度条件を195℃に変更して、これ以外の条件は変更せずに上述の実験を行った。その結果は、HMF収率が25.9%、グルコースの収率が12.2%であった。
さらに、温度195℃の条件で、反応時間を3時間に延長した時は、HMF収率が26.5%、グルコースの収率が8.2%であった。
本実施例では、反応原料の汎用性を確認するために、メルク製微結晶セルロースに代えてSERVA社製の微結晶性セルロースを原料に用いて、ボールミルを用いて通算48時間のすり潰し・擦り合わせ処理を前述の実施例と同様に施した。その後、前記と同様の反応操作を行い、反応温度200℃、反応時間2時間でHMFの合成を行った。
その結果は、HMF収率が27.0%、グルコースの収率が9.4%であった。
この結果、原料セルロースの製造元により、多少のばらつきは認められるものの、HFFが合成できることは間違いないことが明らかになった。
反応原料を実施例1と同一のメルク製微結晶セルロースを使用し、メルク製微結晶セルロースを、自動乳鉢を用いて通算10時間のすり潰し・擦り合わせ処理を空気中、室温で施した。その後水分含有量を調整するために80℃の乾燥機の中で空気中12時間以上乾燥処理を行い、その後シリカゲルで乾燥状態を保っているデシケーター内で室温保管した。
耐圧硝子工業製反応容器(TPR‐1型)に、上記の保管されたセルロースを0.2g、触媒であるリン酸カルシウム(メルク製)を1.8g、及び蒸留水を30mL加えた。反応容器を密封し、空間部を空気中の酸素の影響を排除するためにアルゴンで置換し初圧を室温で0.4MPaに調節した。加熱用ヒーターを用いて200℃まで加熱し撹拌機を使用して300rpmで撹拌操作を行いながら反応を行った。2時間経過後、ヒーターを外して、反応容器を室温の水に浸して急冷し反応を停止させた。HPLCの分析は実施例1とまったく同様に行った。
前記反応の分析結果は、グルコースの収率が8.7%、HMFの収率が25.1%と良好な収率を得られた。他の副生成物は検出下限界に近い微小量のフルクトースが見られたが、他の微小ピークは同定不可能であった。グルコースやHMFの単量体以外の2量体や複数重合しているオリゴマー的なものと推測される。
この結果、前処理手法としては、ボールミル48時間処理が、自動乳鉢処理10時間よりも優れていると言える。
また、反応温度条件を195℃に変更して、それ以外の条件は変更せずに上述の実験を行った。その結果は、HMF収率が18.1%、グルコース収率が8.5%であった。
メルク製セルロースに代えてSERVA社製微結晶セルロースを10時間自動乳鉢にて粉砕処理を行い原料として用いた。リン酸カルシウム触媒を1.8g添加して30mLの水に分散させ、実施例1と同様の反応容器に入れ、アルゴンを封入し205℃で2時間の加熱を300rpmで撹拌しながら行い反応させた。その結果、グルコースが収率5.1%で、HMFが収率15.1%で得られた。その他、いくつかの同定および定量が不可能な少量の副生成物のピークが検出された。
この実施例の結果は、メルク製セルロース特有の現象ではなく一般性のある反応結果であることを示している。
本実施例では、原料の汎用性を確認するために、セルロース含有原料に古布(ワイシャツ、綿100%、ユニクロ製)を用いて反応を行った。
古布を1センチ×5センチの大きさに切り、縫製等に用いられている糸を取り除いた後に、粉砕機で粉砕処理を行い綿状のセルロースを得た。実施例1と同様に触媒と混合して水中で反応を行った所、HMFが10.4%生成した。その他副生成物として、同定困難な多数の微小ピークが見られ、触媒表面上にも褐色の沈着物が見られた。これらは、グルコースやHMFの単量体以外の2量体や複数重合しているオリゴマー的なものと推測される。定量計算は原料がすべてセルロースであると仮定している。
その結果、グルコースが収率6.8%で、HMFが収率30.6%で得られた。ボールミル処理の効果で原料の反応性が高まり高収率につながったと言える。その他、いくつかの同定および定量が不可能な少量の副生成物のピークが検出された。これら副生成物は、グルコースやHMFの単量体以外の2量体や複数重合しているオリゴマー的なものと推測される。定量計算は原料がすべてセルロースであると仮定している。
この結果、試薬の微結晶セルロースと比較すれば収率は多少低下するが、セルロース含有廃棄物の一つである古布を原料にHMFが製造できることが明らかとなり、原料の汎用性が実証できた。
本実施例では、原料の汎用性を確認するために、セルロース原料にコピー用紙を使用して反応を行った。
前処理として、印刷済みのコピー用紙を粉砕機にかけて処理した。綿状の粉砕物を原料として0.2g使用し、触媒を1.8g添加して、30mLの水中に分散し、200℃にて2時間反応を行った。定量は0.2gの原料全てがセルロースであると仮定して計算した。その結果、8.3%のHMF収率が得られたが、顕著に高い値ではなかった。
ボールミル処理などの機械的エネルギーを加えることの必要性を実証するためにボールミル処理を48時間行った原料を使用した場合は、HMF収率が21.7%まで向上した。その時のグルコース収率は検出下限界に近く正確な定量分析ができなかった。コピー用紙には、品質向上のために種々の添加剤が使用されているため、セルロース含有率は100%よりも低い値になる。したがって、セルロース基準のHMF収率は前記の値よりも高くなるものと考えられる。
本実施例では、原料の汎用性を確認するために、天然木材を原料にして反応を行った。
粉砕機を用いて粉状にした秋田杉をそのまま原料に用いて反応を行った。原料の木材を構成している糖成分の含有率を測定した結果セルロースおよびヘミセルロース由来のグルコースが43.9%(重量比)であることが判明している。その他の糖成分はキシロース9.9%、ガラクトース7.5%、マンノース12.3%であり、糖成分以外の成分はリグニンである。
原料の使用量は、木粉中の糖含有率を基に算出してグルコース量が0.2gになるように重量調整を行った結果0.456gを使用した。反応の結果、HMFが収率14.3%で得られた。グルコースは検出下限界に近く正確な定量ができなかった。天然木材を原料とした場合の収率の算出方法は下記の通りである。この分析値を基に、HMFに変換されるグルコース量を基準にしてHMF収率を算出した。したがって、木材の全重量基準では上記の反応結果は、HMF収率(全重量基準)6.3%となる。
粉砕機で粉砕された木粉に対してさらに48時間のボールミル処理を施し、反応原料に使用した。その結果、HMF収率35.5%、グルコース収率9.3%を得た。この収率の計算に使用した基準値もグルコース(含有率43.9%)基準である。
本実施例の結果、木材原料も効率的にHMFに変換することができることが明らかとなり、原料の汎用性が実証できた。
実施例1で使用したものと同じメルク製微結晶セルロースに対して48時間ボールミル処理を行い、反応の原料として0.2g用いた。触媒を一切添加せずに30mLの水に分散させ実施例と同様の反応容器に入れ、アルゴンを封入し200℃で2時間の加熱を300rpmで撹拌しながら行い反応させた。その結果、HMFが収率16.7%で、グルコースが収率14.8%で得られた。その他、いくつかの同定および定量が不可能な少量の副生成物のピークが検出された。
この反応結果は触媒を用いないと反応が遅くHMF収率が小さいことを示していて、触媒を反応系内に添加する効果を実証できた。
本実施例では、メルク製微結晶セルロースに対するボールミル処理を一切行わずに原料として用いた。触媒は実施例1と同様に1.8g加えて30mLの水に分散させ実施例1と同様の反応容器に入れ、アルゴンを封入し200℃で2時間の加熱を300rpmで撹拌しながら行い反応させた。
その結果、HMFが収率12.8%で、グルコースが収率5.8%で得られた。
実施例1においては反応容器内をアルゴンで置換し空気中の酸素の影響を排除しているが、本実施例では、残留空気の悪影響を明らかにするためにアルゴン置換を行わずに、空気が残留したまま反応を行った。その他条件は実施例1と同様であった。
その結果、HMF収率は23.1%と低下して、グルコース収率も4.9%と低下した。
この結果は、空気の悪影響を示すものであり、アルゴンなどの不活性ガスで反応容器内を置換する効果が明らかになった。
天然木材を使用した実施例7について、触媒の有無の効果を調べる実験を行った。
実施例7で優れた反応結果を得ている、秋田杉の粉末に48時間のボールミル処理を施した原料をグルコースの量が0.2gになるような木材量である0.456gを用いた。この原料を用いて触媒を一切添加せずに実施例7と同条件で反応を行った結果、HMF収率が24.2%、グルコース収率が11.0%であった。
この結果、触媒を用いない場合はHMF収率が低下して、触媒を使用する効果が明らかになった。
Claims (5)
- セルロース及び/又はセルロース含有物質を反応原料として用い、Ca 3 (PO 4 ) 2 からなる触媒と水溶媒中で加熱処理することにより、5−ヒドロキシメチルフルフラールを得ることを特徴とする5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
- 前記加熱処理前に、前記反応原料単独で又は前記触媒と混合して、粉砕・摺り合わせ処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
- 前記前処理が、ボールミル処理であることを特徴とする請求項2に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
- 前記加熱処理が、不活性ガス中で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
- 前記加熱処理が、180〜220℃で行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。
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