(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係るディジタル形保護リレーについて図1に従って説明する。ディジタル形保護リレー1と遮断器引き外し回路2とは、図1に示すように、互いに直列に接続され、正極性の電力線Pと負極性の電力線Nとの間に配置され、これらの電力線に接続される。電力線P及びNに対応する電力系統にはディジタル形保護リレー1で駆動される遮断器(図示省略)が設置されている。ディジタル形保護リレー1は、電力系統で故障が発生し、異常電流が流れたとき、異常検知部(図示省略)により、この故障の発生を検知し、遮断器引き外し回路2に通電することによりこれを作動させる。遮断器引き外し回路2が作動すると、故障の発生した電力系統に設置された遮断器(図示省略)が遮断動作を行う。
ディジタル形保護リレー1は、制御部10、試験設定部11、リレー12、リレー14、電流検知部16、及び抵抗素子17を備える。
試験設定部11は、キーボード又はスイッチ類で構成され、ディジタル形保護リレー1の試験を開始する指示の入力を行う。試験設定部11は、この指示に基づき、制御部10に試験開始信号を送信する。
リレー12は、開閉接点13と開閉接点13を駆動するためのコイルXとを含む。リレー12がOFFのときは、コイルXに電流は流れず、図示するように、開閉接点13は、点aと点bとの間が開状態となるように配置される。リレー12がONのときは、コイルXに通電され、その結果、開閉接点13が駆動され、点aと点bとの間が開状態から閉状態になる。すなわちリレー12はON、OFFにより点a、b間を開閉する。従ってリレー12は開閉部ということができる。
リレー14は、切替接点15と切替接点15を駆動するためのコイルYとを含む。切替接点15は、一端が点cに接続されている。切替接点15は、リレー14がOFFのとき、その他端が点dと接触する位置にある。リレー14がONのとき、コイルYに通電され、切替接点15の他端は点eと接触する位置に駆動されるため、切替接点15は点cと点eとを接続する。即ち、リレー14は、ON、OFFにより、切替接点15の接続経路を点c−d間の経路と点c−e間の経路との間で切り替える。従ってリレー14は経路を切り替える切替部14ということができる。
リレー12の点aは電力線Pに接続され、点bはリレー14の点cに接続される。したがって、リレー12と14とは、直列接続される。リレー14の点dは遮断器引き外し回路2の一端に接続される。リレー14の点eは電流検知部16の一端と接続される。
電流検知部16は、例えば電流計で構成される。電流検知部16は、電力線Pとリレー12の点aとの間の点hと、リレー14の点eとの間に接続され、接続された回線を流れる電流の有無を検知し、電流検知信号を制御部10に出力する。電流検知部16は、フォトカプラを利用したものであってもよい。このとき、電流検知信号はフォトカプラを介して制御部10に入力されるので、制御部10に対する電流検知部16からの干渉を避けることができる。
抵抗素子17(図1では”R”で示す)は、リレー12の点bとリレー14の点cとの間の点である点iと、リレー14の点dと遮断器引き外し回路2との間の点jとの間に接続される。抵抗素子17の抵抗値については後述する。
制御部10は、各種信号の入力、入力信号に基づくリレー12、14に対するON、OFFの指示の制御により、遮断器の動作制御、及び異常診断試験の実行と、試験の結果から異常の判定を実行し、図示を省略した出力装置に必要に応じて判定結果を出力する制御を行う。
具体的には、制御部10は、特に指示がない場合は、通常使用モードによる制御を行う。試験設定部11を介して試験開始信号が入力されると、試験モードによる制御を行う。通常使用モードは、ディジタル形保護リレー1が、電力系統が故障したとき遮断器を作動させうる状況にあることを言う。このとき、制御部10は、リレー14に対してOFFの指示を出力する。この状態で、電力系統に故障が発生していない状態を「定常時」と呼ぶ。このとき、制御部10はリレー12に対してOFFの指示を出力する。これにより開閉接点13は開状態となり遮断器引き外し回路2には電流が流れない。これに対して、電力系統に故障が発生した状態を「故障時」と呼ぶ。このとき、制御部10は入力した異常検知信号に基づき、リレー12に対してONの指示を出力する。これにより開閉接点13は閉状態となり、遮断器引き外し回路2には遮断器が作動するだけの電流が流れる。
図1に示す各種接点の開閉状態は通常使用モードの状態であり、且つ電力系統に故障が発生していない「定常時」の状態を示す。
試験モードは、リレー12、14及び遮断器引き外し回路2の健全性を診断するときのディジタル形保護リレー1の状態である。試験モードでは、制御部10は、リレー12とリレー14のON/OFFの指示についての複数の組み合わせに対応した複数回の試験を実行する制御を行う。制御部10は、所定の試験時に得られる電流検知信号を入力し、入力した電流検知信号から試験の継続又は中止を決め、試験を継続したときは、各試験毎の電流検知信号に基づき、リレー12、14及び遮断器引き外し回路2の健全性を判定し、判定結果を出力する制御を行う。
制御部10は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)100と、メモリ110と、メモリ120と、入力部130と、出力部140と、バスライン150とを備える。バスライン150はこれらの各構成要素間を接続する信号送受信用の回線である。
入力部130は、異常検知信号、電流検知部16から出力される電流検知信号及び試験設定部11から出力される試験開始信号を入力し、CPU100に送信する。
メモリ110は、SRAM(Static Random Access Memory)などで構成され、CPU100のワーキングメモリとしてCPU100で処理中のデータ、処理結果等の一時的な記憶部として使用される。メモリ120は、SRAMなどで構成され、CPU100での処理結果を含む保存すべきデータや処理プログラムの格納に利用される。
CPU100は、動作開始時に、メモリ120に格納されている処理プログラムを読み出して実行することにより、制御部10の各種機能を実現する。具体的には、試験設定部11から入力部130を介して入力される試験開始信号の有無に基づき、上述した通常使用モードと試験モードの2種類のモードの切り替え制御を行う。CPU100は出力部140を介して、各モードに対応してリレー12と14とにそれぞれON/OFFの指示信号を出力する。試験モードのときは、複数の試験を実行する制御を行い、そのときに入力される電流検知信号に基づき、試験の中止や継続を判定し実行する制御を行うとともに、試験継続の場合は、継続試験の実行制御と各試験時の電流検知信号の有無に基づきリレー12、14、遮断器引き外し回路2の異常の有無を判定する。判定結果は、出力部140を介して図示を省略した出力装置に出力する。出力装置は表示装置やプリンタなどである。
遮断器引き外し回路2は、遮断器引き外しコイル20(図1では”TC”と表示)とこれに直列接続される遮断器補助接点21を備える。
遮断器補助接点21は、通常使用モードの系統故障時以外のときは閉状態である。系統故障時には遮断器の動作後、所定の時間経過後に、点fと点g間を閉状態から開状態にし、系統故障が復旧し、リレー12がOFFとなった後は閉状態に復帰する。
遮断器引き外しコイル20は、ここに、設定値以上の電流が流れることにより電力系統に設置された遮断器を作動させる。これにより、遮断器が設置された箇所で電力系統が遮断される。
このように構成されたディジタル形保護リレー1の通常使用モードでの動作及び試験モードでの動作について図3で、また、試験モードでの動作については図4も参照して説明する。図3の上段左端の「モード」は、ディジタル形保護リレー1が通常使用モードにあるか試験モードにあるかを示す。図3の「使用時」は、ディジタル形保護リレー1が通常使用モードにあることを示し、「試験時」は、ディジタル形保護リレー1が試験モードにあることを示す。「使用時」は、電力系統に故障が発生していない「定常時」と故障が発生した「故障時」の2つの状況を含む。通常は「定常時」であり、制御部10は、異常検知信号が入力されると「故障時」と判定する。また、制御部10は、試験設定部11を介して試験開始信号が入力されると「試験時」と判定し、基本的には試験AからEまでの試験を実行する。図4は、図3に示した各試験におけるディジタル形保護リレー1の制御部10の動作を中心にフローチャートの形で示したものである。
「試験時」は、「試験A」から「試験E」まで5種類の試験で構成され、各試験はリレー12、14の開閉(ON/OFF)の指示を変えることにより実行される。制御部10は、そのときの電流検知部16からの電流検知信号の出力の有無を監視し、その情報に基づき各種判断又は異常診断を行う。以下では「定常時」、「故障時」、及び「試験A」から「試験E」までの各試験を区別しないときは、それぞれを「モード」と呼ぶ。
図3の上段左端の「指示・状況」の「リレー指示」の欄は、各モードのときの制御部10のリレー12(「X」と記載)、リレー14(「Y」と記載)に対するON/OFFの指示を示し、「遮断器状況」の欄は、そのときの遮断器の開閉状況を示す。また、「PC」の欄には電流検知部16による電流検知結果を示し、「考え得る状況」の欄の各番号には、各試験時のPCがON、OFFそれぞれのときに遮断器引き外し回路2(この略記として、図3、図4の説明では、遮断器引き外しコイル20を示す「TC」で代用する)、リレー12(Xと略記)、リレー14(Yと略記)の正常/異常についてどのような判断が可能かを示す。「備考」の欄には試験B及びCのPCの結果に基づくTC、X、Yの診断結果を示すとともに、試験に伴う遮断器の誤作動を防止するという観点から、試験の中止についても示している。なお、「リレー指示」は、Xについては「OFF」のとき開閉接点13が開状態となる指示、「ON」のとき閉状態となる指示を表す。Yについては「OFF」のとき、切替接点15が点cと点dの間を接続するように駆動される指示、「ON」のとき、切替接点15が点cと点eの間を接続するように駆動される指示を表す。PC欄の「OFF」は、電流検知部16に電流が流れない状況、「ON」は、所定の電流が流れる状況を示す。所定の電流とは、電力線PとNを抵抗素子Rを介して接続したときに流れる電流IRのことであり、電力線PとN間の電圧の変動分を考慮した電流の範囲を含む。
図3の「使用時」の「PC」及び「遮断器状況」の欄の記載は、「定常時」、「故障時」のそれぞれにおいてX及びYに対して「リレー指示」の欄に示したON/OFF指示の制御を行い、リレー12及び14に異常がなく指示の通りに動作するとしたときの電流検知結果(PCのON/OFF)と遮断器の開閉状況をそれぞれ示している。
図3の「試験時」の「PC」の欄と「遮断器状況」の欄の記載は、各試験時において予定されている、X及びYに対するON/OFF指示の制御を行った時のPCと遮断器の開閉状況を示す。試験は試験AからEまであり、その目的は、TCの異常の有無を確認する試験を実施する際に、遮断器の誤作動が発生する恐れの有無を判定すること、及びX、Y、及びTCに異常があるかどうかを診断することである。
図3の「使用時」の中の「定常時」、すなわち通常使用モードで電力系統に故障が発生していないときは、制御部10は、リレー12と14に対して共にOFFの指示を出している。従って、XとYはOFF状態である。すなわち、図1において、開閉接点13は開状態にあり、切替接点15はc点とd点とを接続している。このときは、電流検知部16は電流経路から切り離されており、電流検知信号を出力しないというOFF状態にある。そのため図3のPCの欄はOFFである。遮断器引き外し回路2に故障がないときであっても、リレー12と14がいずれもOFFの状態では、遮断器引き外しコイル20には電流が流れない。そのため遮断器は閉状態にある。遮断器引き外し回路2の故障とは、遮断器引き外しコイル20に一部断線が生じていること、通常時には閉状態であるべき遮断器補助接点21が開状態になっていること等により、遮断器引き外しコイル20に通電し得ない状況が発生していることを言う。
図3の「使用時」の中の「故障時」、すなわち通常使用モードで電力系統に故障が発生したときは、制御部10は、リレー14はOFFのままとし、リレー12にONの指示を出す。従ってYはOFF状態のままでXはONとなり、図1に示す開閉接点13は閉状態になる。そうすると、遮断器引き外し回路2に異常がないときは、電力線PとNとの間に遮断器引き外しコイル20のインピーダンスZが接続された電流経路が形成される。このとき、遮断器引き外しコイル20には電力線PとNとの間の電位差VとインピーダンスZとで決まる電流が流れる。そのため、遮断器引き外しコイル20には遮断器を作動させるのに十分な電流I(=V/Z)が流れる。その結果、遮断器は開状態となり、故障の発生した電力系統を他の電力系統から切り離す。
試験AからEの詳細を、図4を中心に、図1及び図3を参照して説明する。試験AからEは、制御部10の制御により、図4に示すフロー図に示す各ステップ(ST)に従って実行される。試験は試験Aから始める(ST1)。試験を開始するのは、「使用時」で「定常時」のときであるから、図3に示すようにX,Y共にOFF、すなわち制御部10がリレー12、14にOFFの指示を出しているときである。このときX、Yは共にOFF状態であるとする。
次に、制御部10は、電流検知部16に電流が流れている場合に出力される電流検知信号が入力されているかどうか、即ちPCがONかOFFかを判定する(ST2)。試験AではX、YがOFF状態であるとしているので、電流検知信号は出力されず、PCはOFFである(ST2;OFF)。PCがON(ST2;ON)のときは、制御部10は、予期しない異常が起こったと判定し(ST3)、試験を終了する。なお、このとき何らかの異常が発生した旨を出力装置(図示略)に出力してもよい。試験Aのとき遮断器引き外し回路2が正常であるかどうかは不明である。
制御部10は、試験AでPCがOFF(ST2;OFF)であれば、X、YはいずれもOFF状態であることを確認することができ(ST4)、次に試験Bを実行する(ST5)。
試験Bでは、制御部10は、Xへの指示は試験Aのときのままにして、Yに対してONの指示、即ち切替接点15がc点とe点とを接続する指示を出す(ST5)。XはOFF状態であるので、試験Bの実行に伴い、遮断器が誤作動するような事態は起こりえない。
制御部10は、試験BでPCがONかOFFかを判定する(ST6)。試験BでPCがONのとき(ST6;ON)は、電力線PとNとの間に、電流検知部16を含む電流経路が形成されていることになる。電流経路が形成されるということは、TCは正常であり、XはOFF状態のままなので、YはONの指示に対してON状態になっていなければならない。このときのX,Yは、図3の「考え得る状況」欄の番号(1)に対応する状況であり、制御部10は、TC及びYは正常と判定する(ST8)。このとき、Xは試験Aのときと同じOFF状態であり、YはON状態である。電流経路は、図1で、電力線Pから、電流検知部16、抵抗値Rの抵抗要素17、遮断器引き外しコイル20、閉状態の遮断器補助接点21を介して電力線Nに至る。電流検知部16及び遮断器引き外しコイル20には電流IRが流れ、電流検知部16は電流検知信号を出力する。従って、PCはONとなる。なお、電流経路には抵抗要素17が含まれるため、電流IRはV/(Z+R)であり、抵抗値RはR≫Zとなるように設定されているので、IRは遮断器作動のために必要な電流Iよりも十分に小さくなる。そのため、遮断器引き外しコイル20にIRが流れても、遮断器は誤作動しない。制御部10はST8の後、試験Cを実行する(ST9)。
試験BでPCがOFF(ST6;OFF)のとき、即ち電流検知部16に電流が流れないときは、制御部10は、X、Y及びTCの状態は、以下に述べる第1のケースと第2のケースのいずれかであり、試験の継続に伴い遮断器の誤作動が発生しうると判定し(ST7)、試験Cを含めてその後の試験を中止する。
第1のケースは、図3の「考え得る状況」欄の番号(2)に対応した状態であり、TCが異常の場合である。このときは、遮断器引き外し回路2は電流が流れない状態であるため、電力線PとNとを結ぶ電流経路が形成されない(図1参照)。従って電流検知部16には電流が流れずPCはOFFとなる。このケースでは、Yは正常/異常のどちらの状態もあり得る。
第2のケースは、図3の「考え得る状況」欄の番号(3)に対応した状態であり、TCは正常で、Yは、異常がありONの指示に対して作動せず、OFFの状態のままの場合である。Xについては、試験Aの状態が継続されているのでOFF状態である。このときも電力線PとNとを結ぶ電流経路が形成されない(図1参照)ため、電流検知部16には電流が流れず、PCはOFFとなる。
試験BでPCがOFFのときは、X、Y、及びTCが第1のケースと第2のケースのどちらの状態にあるか不明である。もし第2のケースであった場合に試験Cを実行してXに対してONの指示を出すと、Xが正常の場合はXはON状態になる。この場合は遮断器が誤作動する。従って、試験BでPCがOFFのときは、制御部10は、試験の継続に伴い遮断器の誤作動が発生しうると判定する(ST7)。
試験BでPCがONのときに実行される試験Cでは、制御部10は、Xに対してONの指示を出し(ST9)、そのときのPCがONかOFFかを判定する(ST10)。
試験CでPCがONのとき(ST10;ON)は、電力線PとNとの間に、電流検知部16を含む電流経路が形成されていなければならない。ST8で、TCはすでに正常であると判定されており、ST10の判定結果からもTCが正常であることが判定される。また、YはST8の判定で示したようにON状態であるから、XはONの指示に対して正常に作動せずOFF状態でなければ電流検知部16に電流が流れることはない(図1参照)。従って、制御部10は、図3の「考え得る状況」欄の番号(4)に対応した状態、すなわち、Xは異常と判定する(ST12)。このときXはOFF状態、YはON状態である。ST12では、Xに異常がある旨、出力装置(図示省略)に出力して注意を喚起してもよい。この後、制御部10は試験Dを実行する(ST13)。なお、番号(4)に対応した状態のときは抵抗要素17を含む電流経路が形成される(図1参照)ので、遮断器引き外し回路2には電流IRが流れ、遮断器は誤作動しない。
試験CでPCがOFFのとき(ST10;OFF)は、ST8で、TCはすでに正常であると判定されており、YはST8の判定で示したようにON状態であるから、電流検知部16に電流が流れないためにはXはON状態でなければならない(図1参照)。X、YがON状態のときは、図1からわかるように、電流検知部16の両端がリレー12の開閉接点13を介して短絡された状態になるため、電流検知部16には電流が流れない。従って、制御部10は、図3の「考え得る状況」欄の番号(6)に対応した状態、すなわち、Xは正常と判定する(ST11)。このときX、Yは共にON状態である。なお、ST8でTCは正常、YはON状態で正常と判定されているので、この判定結果と矛盾する図3の「考え得る状況」の番号(5)(7)(8)に対応した状態は判定対象から除外される。ST11で、X、Y、TCが正常である旨、出力装置(図示省略)に出力して注意を喚起してもよい。ST11の後、制御部10は試験Dを実行する(ST13)。なお、図3の番号(6)に対応した状態のときは抵抗要素17を含む電流経路が形成される(図1参照)ので、遮断器引き外し回路2には電流IRが流れ、遮断器は誤作動しない。
以上をまとめた結果を図3の「備考」欄に示す。図1に示す構成のディジタル形保護リレー1では、制御部10は、試験BでPC=OFFの結果を得たとき(ST6;OFF)は、Yが異常によりON状態にない可能性があるので以降の試験を中止する。これにより試験の継続に伴う遮断器の誤作動の発生を防止することができる。PC=ONの結果を得たとき(ST6;ON)は、制御部10は、TCとYは正常と判定する(ST8)。しかし、Xが正常かどうかはまだ不明である。通常使用モードでは、TCが正常であることの確認だけでなく、電力系統に故障が発生した時に、遮断器引き外し回路2に電流を流すことができるように、XがONの指示に対して正常に作動しON状態になることが確認されなければならない。そのために制御部10は、試験Cを実行する(ST9)。制御部10は、試験CでPC=ONの結果を得たとき(ST10;ON)は、Xは異常と判定し(ST12)、PC=OFFの結果を得たとき(ST10;OFF)は、Xは正常と判定する(ST11)。
なお、試験Aは試験の開始状態を規定するだけなので、実質的には試験BとCが実質的な試験に該当する。このディジタル形保護リレー1によれば、試験BでPCがOFFのとき、TCの異常の有無を判定する試験を中止することでその後の試験に伴い起こりうる遮断器の誤作動を防止できる。
また、このディジタル形保護リレー1によれば、試験BでPCがONのときTC及びYに異常が無いと判定でき、引き続き試験Cを実行してPCのON/OFFを見ることによりXの健全性を確認することができる。即ち遮断器引き外し回路2の動作を担保するリレー12を含めて遮断器引き外し回路2の健全性を確認することができるとともに、健全性の確認用の電流経路に切り替えるリレー14の健全性も確認することができる。
異常診断用の試験は試験Bと試験Cだけでよい。しかし、この試験の後、ディジタル形保護リレー1を通常使用モードに戻す必要がある。試験DとEはそのための処理を担う。
試験Cのあと、制御部10は試験Dを実行し、Xに対してOFFの指示を出し(ST13)、PCがONかOFFかを判定する(ST14)。制御部10は、PCがONのとき(ST14;ON)は、XがOFF状態であると確認し(ST15)、その後試験Eを実行する(ST17)。試験Cの後、X、Yの状態を「使用時」で「定常時」のX、Yの状態、すなわち試験Aと同じ状態(以下では試験Eと呼ぶ)に戻す必要があるが、試験Eの状態に戻すときも、遮断器が誤作動する恐れがある。これを避けるために、制御部10は、試験Cが終わった後、X、Yの状態を直接に試験Eの状態に戻すことはせず、試験Bと同じ試験Dを実行する。ST17でXがOFF状態であることが確認された後は、遮断器が誤作動することはないので試験Eを実行できる。
試験DでPCがOFFのときは、制御部10は、予期しない異常が発生したと判定し(ST16)、試験を終了する。これによって試験の継続に伴う万一の遮断器の誤作動を防止することができる。
試験Eで、制御部10は、Yに対してOFFの指示を出し(ST17)、PCのON/OFFを判定する(ST18)。制御部10は、PCがOFFのとき(ST18;OFF)は、YがOFF状態になり、ディジタル形保護リレー1が通常使用モードに復帰したことを確認し(ST19)、試験を終了する。PCがONのときは予期しない異常が発生したと判定し(ST16)、試験を終了する。
試験Cに引き続き、試験D、Eをこの順序で実行することにより、試験後のディジタル形保護リレー1を通常使用モードに戻す際に発生しうる遮断器の誤作動を防止することができる。
実施の形態1に係るディジタル形保護リレー1は、電力線P、Nに対して、図1に示す遮断器引き外し回路2の配置と逆にしても同様の効果を奏することができる。
図1に示す試験設定部11は、マニュアルでの試験開始の設定を前提としたものであるが、タイマーを備えて予め設定された周期毎に自動的に試験を開始するようにしたものであってもよい。
また、制御部10は異常と判定したときは警報出力や警報表示を行ってもよい。また、リトライ試験を実施するように制御してもよい。
試験時に系統事故が発生し、制御部10が異常検知信号の入力があったと判定したときは、優先して、リレー12,14に対して、図3の「使用時」で「故障時」の際のX、Yに対するON/OFF指示を出す。
なお、制御部10は試験設定部11を含む構成にしてもよい。このときは図2に示す制御部10の構成に、入力部130に接続された入力装置を追加し、この入力装置が試験設定部11となる。また、制御部10は異常検知部(図示省略)を含む構成にしてもよい。このときは、異常検知部は、異常検知に使用する信号(電力系統の電流信号又は電圧信号)を入力するための入力部130と、その信号から異常の有無を判定し、異常有りと判定したときに異常検知信号を発生するという処理を実行するCPU100、メモリ110及びCPU100での処理に必要なデータを格納するメモリ120とで構成される。
(実施の形態2)
実施の形態2に係るディジタル形保護リレー1の構成例を図5に示す。図5に示すディジタル形保護リレー1が、図1に示すディジタル形保護リレー1と異なるのは、抵抗要素17の一端が点dと遮断器引き外し回路2とを繋ぐ電流経路に接続されるのではなく、電力線Nに接続されている点である。
このディジタル形保護リレー1のリレー12(以下Xと呼ぶ)とリレー14(以下Yと呼ぶ)の役割は図1に示すディジタル形保護リレー1の場合と同じであり、制御部10が制御して実行する試験AからEにおけるXとYのON/OFFの指示も同じである。
図6に試験AからEの内容を示す。基本的には図3の場合と同様であるが、試験時の電流経路にTCが含まれないため、「考え得る状況」の欄の番号は、TCが「正常」のときに対応した番号のみが残されている。試験実行時に、TCが異常で電流経路が形成されないということは実施の形態2では生じないからである。図6の「考え得る状況」の欄の番号は図3の番号と共通である。番号(2)と(5)が無いのはこれらの状況がTC異常時に対応したものだからである。その結果、図6の備考の(A)の「試験BでPC=OFF」のとき、試験Cを中止する点は図3の場合と同じであるが、その理由を、「Y=異常(左欄(3))」としている。図3の「考え得る状況」の番号(3)のとき試験Cを実行すると番号(8)の状態になる可能性があり、そのときは遮断器が誤作動するからである。
このディジタル形保護リレー1の試験時の動作を示すフローチャートは1点を除き図4に示すフローチャートと同じである。異なる点はST7で、TCに関する記載が削除される点だけである。
このディジタル形保護リレー1は、試験Bの結果によりリレー14の健全性が確認できるため、遮断器の誤動作の恐れを低減できる。また、リレー14が正常のときは、リレー14による電流経路の切り替えによって、試験時の電流経路に遮断器引き外し回路2を含まないので、試験時に遮断器が誤作動する恐れがない状態でリレー12と14のそれぞれの健全性を確認することができる。そのため、試験時の電流経路に遮断器引き外し回路2を含む場合に比べて、試験時にリレー12、14に流す電流を大きくすることができる。従って、より実際に近い状態でのリレー12、14の健全性を確認することができる。
なお、実施の形態1に係るディジタル形保護リレー1は、1対の電力線間に配置される遮断器引き外し回路2と直列接続さえされていればその配置は自由でよいが、実施の形態2に係るディジタル形保護リレー1については、試験時に、遮断器引き外し回路2が、抵抗要素17を含む電流計路上に位置することのないように、その配置に留意しなければならない。
このディジタル形保護リレー1は、抵抗要素17の電力線Nとの接続端をつなぎ替えすることにより図1に示す接続にすることが容易である。このつなぎ替えは、切り替えスイッチを導入し、マニュアルで行ってもよいし、制御部10を介して実施してもよい。この切り替えスイッチは、リレー14と同様な切替リレーを利用して構成されてもよい。この切り替えリレーも3つの接続点を有し、図5の抵抗要素17と電力線Nとの間に配置される。各接続点は、それぞれ、抵抗要素17と、接続点d及び遮断器引き外し回路2を結ぶ電流経路の一点と、電力線N上の1点と接続される。切り替えリレーの場合は、切り替えは制御部10の指示による。
図5の配置で試験を行った後に図1の配置に戻して遮断器引き外し回路2の健全性試験を行うことにすると、リレー12、14の健全性が予めわかっているため、それを踏まえた試験を行うことができる。そのため、遮断器の誤作動防止の点でより安全な試験ができ、より明確な健全性の情報を得ることができる。
(実施の形態3)
実施の形態3に係るディジタル形保護リレー1の構成例を図7に示す。図7に示すディジタル形保護リレー1は、図1の場合と比べてリレー12と直列に接続されたリレー40を備え、開閉用のリレーを二重化した点が異なる。これに伴い、図7ではリレー12を「X1」と表示し、リレー40を「X2」と表示する。リレー40はOFF状態で開閉接点50がp点とq点間を開状態にし、ON状態で閉状態にする。
更に、ディジタル形保護リレー1は、リレー40の制御用に補助制御部30を備える。補助制御部30は入力された異常検知信号によりリレー40の開閉制御を行う。補助制御部30は図2に示す構成と同様に、CPU100、メモリ110、メモリ120、入力部130及び出力部140で構成される。異常検知信号は、制御部10に入力される異常検知信号と同じ異常検知信号である。なお、制御部10が異常検知部を含むように構成されているときは、補助制御部30も同様に異常検知部を含む構成とする。このときは、異常検知信号の代わりに、異常検知部への入力信号(電力系統の電流信号又は電圧信号)が制御部10及び補助制御部30にそれぞれ入力される。
制御部10は、試験時に、リレー12を動作させるとき、動作指示信号Mを出力する。補助制御部30は、この動作指示信号Mを受けて、リレー12と同様にリレー40の開閉制御を行う。すなわち、この動作指示信号Mを介して、リレー12は制御部10により、リレー40は補助制御部30により互いに同じ開閉状態となるように制御される。動作指示信号Mは、通常時における補助制御部に対する異常検知信号の役割を担う。
以上の点を除き、図7に示すディジタル形保護リレー1は図1に示すディジタル形保護リレー1と同じである。リレー12と40とは同時に且つ同じように開閉するように制御されるので、それぞれのリレーが正常な状態のときは図1に示すリレー12が1個の場合と同じである。
異なるのは、いずれか一方に異常が生じてON/OFFの指示通りに開閉しない場合である。従って、このディジタル形保護リレー1は、図3のXの開状態は、リレー12と40の双方が開のときであるとし、一方でも閉状態のときはリレー12と40が閉状態であるとする。即ち、OFFの指示に対してリレー12と40の双方に異常が無く開状態のとき正常と判定され、一方でも異常があればリレー12と40が異常と判定される。ONの指示の場合もリレー12と40の双方に異常が無く閉状態のとき正常と判定され、一方でも異常があればリレー12と40が異常と判定される。
このような前提でリレー12と40とを一つのリレーと考えることができるので、本ディジタル形保護リレー1の場合にも図3と図4がそのまま適用できる。
このディジタル形保護リレー1によれば、リレー12と40のように開閉用のリレーを直列に二重化する構成にしているので、一方のリレーが何らかの事情により誤作動したとき、それにより遮断器が誤作動を起こすことが防止されるため、信頼性の高いディジタル形保護リレーが実現できる。それ以外の点ではこのディジタル形保護リレー1は実施の形態1に係るディジタル形保護リレー1による効果と同様の効果を奏することができる。
なお、これまでは異常検知信号又は異常検出部は、制御部10と補助制御部30とで、相互に独立しているとして説明したが、異常検知信号の入力、又は異常検知部を制御部10にのみ集約してもよい。このときは制御部10がリレー12を開閉制御するとき、補助制御部30は動作信号Mを受けてリレー40を同様に開閉制御する。異常検知信号の入力、又は異常検知部の機能は制御部10に集約されるので、二重化の程度は若干低下するが、少なくともリレーは二重化されるので、実施の形態1に係るディジタル形保護リレー1よりも信頼性の高いディジタル形保護リレー1の提供が可能となる。
また、補助制御部30を省き制御部10のみでリレー12とリレー40との開閉制御を行ってもよい。補助制御部30が省かれるので二重化の程度は更に低下するが、それでもリレーは二重化されているので実施の形態1に係るディジタル形保護リレー1よりも信頼性の高いディジタル形保護リレー1の提供が可能となる。なお、このような構成のときは、動作指示信号Mは不要になる。
このディジタル形保護リレー1は開閉用のリレー12の二重化を実施の形態2に適用したものにしてもよい。この場合もディジタル形保護リレー1の信頼性が改善されると共に実施の形態2に係るディジタル形保護リレー1による効果と同様の効果も奏することができる。