イオン注入のためのリボンイオンビームの使用は、しかしながら、幾つかの課題を引き起こす。例として、イオンビームの縦方向プロファイルの高い均一性が、注入されたイオンの満足できる注入均一性を得るためには必要である。ウェーハ寸法が増大するにつれて(例えば、次世代の450mmウェーハが現在有力な300mmウェーハに取って代わるにつれて)、そのようなウェーハの処理に用いられるリボンイオンビームの満足できる縦方向均一性を達成することがより難しくなる。
幾つかの従来のイオン注入システムでは、ビーム輸送中のイオンビームの電荷密度を部分的に変えるために、補正用光学系がイオンビームラインに組み込まれている。この方法は、しかしながら、イオンビームプロファイルがイオン源からの引き出し時に強い非均一性を示す場合や、空間電荷の作用またはビーム輸送光学系によって引き起こされる収差が原因の場合、十分なイオンビーム均一性を作り出すことは通常はできない。
従って、所望のエネルギーおよび高度なプロファイル均一性を持つリボンイオンビームを発生させるための強化されたシステムおよび方法を含めて、イオン注入のための改良されたシステムおよび方法に対する要望が存在する。
一つの局面では、リボンイオンビームのエネルギーを変更するためのシステムが開示されており、当該システムは、リボンイオンビームを受けてその縦寸法(換言すれば長手方向寸法。以下同様)に沿う電流密度プロファイルを調整するように構成された補正装置と、前記イオンビームが通過する時にそれを減速または加速するための減速/加速領域を画定している少なくとも一つの減速/加速要素と、前記イオンビームの横寸法に沿う発散を減少させるための集束レンズと、前記イオンビームの偏向を生じさせるために前記減速/加速領域の下流側に配置された静電偏向器とを備えている。
幾つかの実施形態では、前記補正装置は、間隔をあけた複数の電極対であって、前記イオンビームの縦寸法に沿って積み重ねられており、かつ各対の電極が前記イオンビームの通過のためのギャップを形成するように離れて配置されている複数の電極対を含んでいても良く、そして当該電極対は、それへの静電電圧の印加によって個々にバイアス可能に構成されていて、前記イオンビームをその前記縦寸法に沿って局所的に偏向させるようにしている。様々な異なった電極タイプを採用しても良い。幾つかの実施形態では、前記電極対は、前記イオンビームの進行方向および当該イオンビームの縦寸法で形成される平面と実質的に平行または垂直に配置された電極板を含んでいても良い。前記エネルギー変更のためのシステムは、前記静電電圧を前記補正装置の前記電極対に印加するための少なくとも一つの電圧源を更に含んでいても良い。
前記少なくとも一つの電圧源と情報伝達する制御器は、前記電極対への前記静電電圧の印加を制御することができる。例として、前記制御器は、前記イオンビームの少なくとも一部分を局所的に偏向させるために前記電圧源に対して前記静電電圧を前記電極対に印加するように指令して、前記イオンビームの縦寸法に沿う電流密度プロファイルの均一性を高めるように構成されていても良い。
前記制御器は、例えば分析マグネットを通過した後またはビームが照射される基板の面近くで測定した前記イオンビームの電流密度プロファイルに基づいて、前記補正装置の電極対に印加するための前記静電電圧を決定するように構成されていても良い。
幾つかの実施形態では、前記制御器は、時間的に変化する電圧を前記補正装置の電極対に印加するように構成されている。例えば、前記制御器は、前記補正装置の電極対に印加される電圧を時間的に変化させて、縦寸法に沿ってイオンビームの振動運動を生じさせるように構成されていても良い。そのようなイオンビームの振動運動は、例えば、約20mm以下の、より具体的には約10mmから約20mmの範囲内の振幅を示すことができる。例として、前記振動の周波数は、約1Hzから約1kHzの範囲内であっても良い。
前記集束レンズは、少なくとも一つの集束要素、例えば前記イオンビームを受けるためのギャップを形成するように間隔をあけた一対の相対する電極を含んでいても良い。更に、前記減速/加速要素は、前記イオンビームを受けるための横方向のギャップを形成するように間隔をあけた一対の電極を含んでいても良い。前記集束要素および前記減速/加速要素は、それらの間にギャップを形成するように互いに配置されていても良く、かつ互いに異なる電圧に保たれて、前記ギャップを通しての前記イオンの通過が当該イオンの減速または加速を生じさせるようにされていても良い。
幾つかの実施形態では、前記集束電極の少なくとも一つは、前記イオンビームの縦寸法に沿う発散を減少させるように構成されている湾曲した上流側端面を備えていても良い。例えば、前記集束電極の当該上流側端面は、約1mから約10mの範囲内の曲率半径を有する凹面であっても良い。
幾つかの実施形態では、前記少なくとも一つの減速/加速要素は、前記補正装置の下流側に配置されており、かつ前記少なくとも一つの集束要素は、前記減速/加速要素の下流側に配置されている。
前記集束要素は、前記静電偏向器に対してそれと共にギャップを形成するように配置されていても良く、そして前記集束要素および前記静電偏向器は、前記イオンビームの横寸法に沿う発散を減少させるのに適した電界を前記ギャップ中に発生させるように互いに異なる電圧に保たれる。
幾つかの実施形態では、前記静電偏向器は、互いに異なる電圧に保たれる内側電極およびそれに対向する外側電極を備えていて、前記イオンビームの偏向を生じさせるようにされている。前記静電偏向器は、前記内側電極の下流側に配置されかつ前記外側電極に対向している中間電極を更に備えていても良く、そして前記内側電極および前記中間電極は、それらへの独立した電圧の印加に適するように構成されている。幾つかの場合では、前記外側電極および前記中間電極は、同一の電圧に保たれても良い。
幾つかの実施形態では、前記静電偏向器の前記外側電極は、互いに所定の角度で配置された上流側部分および下流側部分を含んでおり、当該下流側部分が前記イオンビーム中に存在する中性種の少なくとも一部分を捕捉することができるようにされている。前記上流側部分および下流側部分は、一体的に前記外側電極を形成していても良く、あるいはそれらは電気的に接続された別の部分でも良い。
幾つかの実施形態では、前記エネルギー変更のためのシステムは、前記静電偏向器の下流側に配置された他の補正装置(ここではまた第2の補正装置とも呼ぶ)を更に備えていても良く、当該他の補正装置は、前記イオンビームの縦寸法に沿う電流密度プロファイルを調整するように構成されている。幾つかの実施形態では、当該下流側補正装置は、間隔をあけた複数の電極対であって、前記イオンビームの縦寸法に沿って積み重ねられており、かつ各対の電極が前記イオンビームの通過のためのギャップを形成するように離れて配置されている複数の電極対を含んでいても良く、そして当該電極対は、それへの静電電圧の印加によって個々にバイアス可能に構成されていて、前記イオンビームをその前記縦寸法に沿って局所的に偏向させるようにしている。
幾つかの実施形態では、前記補正装置の前記電極対は、前記イオンビームの縦寸法に沿って互いに千鳥状に配置されている。例えば、前記下流側補正装置の電極対は、前記上流側補正装置の各電極対に対して縦方向において(ビームの縦寸法に沿って)ずらして、例えば前記補正装置の電極の縦方向の高さの半分(半ピクセル寸法)だけずらして配置しても良い。
幾つかの実施形態では、前記エネルギー変更のためのシステムは、前記他の補正装置の下流側に配置されていて、前記イオンビームの前記横寸法に沿う発散を減少させるための他の集束レンズ(ここではまた第2の集束レンズとも呼ぶ)を更に含んでいても良い。更に、幾つかの場合では、電気的に接地された要素を前記他の集束レンズの下流側に配置しても良い。当該電気的に接地された要素は、例えば、互いに離れて配置されていてその間をイオンビームが通過することを許容するための一対の電気的に接地された電極を含んでいても良い。当該第2の集束レンズは、前記接地要素に対してそれと共にギャップを形成するように配置された少なくとも一つの集束要素を含んでいても良く、そして当該集束要素と前記接地要素との間の電圧差は、前記イオンビームの前記横寸法に沿う発散を減少させるための電界を前記ギャップ中に発生させる。
他の局面では、リボンイオンビームを減速させるためのシステムが開示されており、当該システムは、前記リボンイオンビームを受けるための領域を画定しておりかつそのイオンを減速させるための少なくとも一つの減速要素と、互いに離して配置されていてその間に前記減速されたイオンビームを受けかつそれの偏向を生じさせるための少なくとも一対の偏向電極と、前記減速されたイオンビームの通過のための経路を提供しかつ当該イオンビームの電流密度プロファイルを非分散面において調整するように構成された補正装置とを備えている。
幾つかの実施形態では、前記補正装置は、間隔をあけた複数の電極対であって、前記イオンビームの縦寸法に沿って積み重ねられており、かつ各対の電極が前記イオンビームの通過のためのギャップを形成するように離れて配置されている複数の電極対を含んでいても良く、そして当該電極対は、それへの静電電圧の印加によって個々にバイアス可能に構成されていて、前記イオンビームをその前記縦寸法に沿って局所的に偏向させるようにしている。幾つかの実施形態では、前記間隔をあけた複数の電極対は、内側電極、それに対向する外側電極および前記内側電極の下流側に配置されかつ前記外側電極に対向している中間電極を含んでいても良く、そして前記外側電極、内側電極および中間電極は、独立した電圧に保たれるように構成されている。例として、前記内側電極および外側電極は、前記イオンビームの偏向を生じさせるように異なった電圧に保たれても良く、一方、前記外側電極および中間電極は同一の電圧に保たれても良い。前記外側電極は、上流側部分および下流側部分を含んでいても良く、そして前記下流側部分は、前記上流側部分に対して、前記イオンビーム中の中性種を捕捉するような角度で配置されている。幾つかの実施形態では、前記外側電極の上流側部分および下流側部分は、前記外側電極を一体的に形成している。
前記減速のためのシステムは、前記補正装置の前記電極対に前記静電電圧を印加するための少なくとも一つの電圧源を更に含んでいても良い。当該少なくとも一つの電圧源と情報伝達する制御器を、前記補正装置の前記電極対に印加される電圧を調整するために設けていても良い。例として、前記制御器は、例えば前記受けたイオンビームの測定された電流密度プロファイルに基づいて、前記補正装置の前記電極対に印加する電圧を決定しても良い。
前記減速のためのシステムは、前記イオンビームの横寸法に沿う発散を減少させるように構成された集束レンズを更に含んでいても良い。当該集束レンズは、少なくとも一つの集束要素、例えばイオンビームの通過を許容するように間隔をあけた一対の電極を含んでいても良い。幾つかの実施形態では、電気的に接地された要素、例えば一対の間隔をあけた電極が前記集束要素の下流側に配置されている。前記電気的に接地された要素は、前記集束要素に対してそれらの間にギャップを形成するように配置されていても良い。前記接地要素および集束要素は、前記イオンビームの前記横寸法に沿う発散を減少させるのに適した電界を前記ギャップ中に発生させるために異なった電圧に保たれても良い。
他の局面では、イオン注入システムが開示されており、当該イオン注入システムは、リボンイオンビームを発生させるように構成されたイオン源と、前記リボンイオンビームを受けて質量選択されたリボンイオンビームを発生させるための分析マグネットと、前記質量選択されたリボンイオンビームを受けてその縦寸法に沿う電流密度プロファイルを調整して、前記縦寸法に沿う実質的に均一な電流密度プロファイルを有する出力リボンイオンビームを発生させるように構成された補正システムとを備えている。
幾つかの実施形態では、前記補正システムは更に、前記受け取った質量選択されたイオンビームのイオンを減速または加速して、前記縦寸法に沿う実質的に均一な電流密度プロファイルを有する減速/加速された出力リボンイオンビームを発生させるように構成されていても良い。幾つかの実施形態では、前記出力リボンイオンビームは、約5%以下の2乗平均平方根(RMS。実効とも呼ぶ)偏差(即ち非均一性)を有する前記縦寸法に沿う電流密度プロファイルを示す。例えば、前記出力リボンイオンビームは、約4%以下の、または約3%以下の、または約2%以下の、または約1%以下のRMS偏差(即ち非均一性)を有する前記縦寸法に沿う電流密度プロファイルを示すことができる。
幾つかの実施形態では、前記イオン注入システム中の前記補正システムは、前記リボンイオンビームの横寸法に沿う発散を減少させるための集束レンズを更に含んでいても良い。更に、幾つかの実施形態では、前記補正システムは、前記質量選択されたイオンビーム中に存在する、中性の原子および/または分子のような中性種の少なくとも一部分を除去するように構成されていても良い。例えば、前記補正システムは、前記イオンビーム中のイオンの進行方向を変更し、一方、中性種をその進行方向に沿って進行させ続けて、例えば当該静電偏向器の外側電極の一部分のようなビーム止めで捕捉されるようにするための静電偏向器を含んでいても良い。
前記イオン注入システムは、例えばウェーハのような基板を保持するためのエンドステーションを更に含んでいても良く、そして前記出力リボンイオンビームは、前記基板に入射するように当該エンドステーションに向かって進行する。幾つかの実施形態では、前記補正システムは、前記イオンビームの進行方向を調整して、前記出力リボンイオンビームが基板表面に対して所望の角度、例えば90度の角度を形成する方向に沿って入射するように構成されていても良い。
幾つかの実施形態では、前記イオン注入システムの前記補正システムは、前記出力リボンイオンビームによって前記基板中に注入されたイオンの注入均一性を改善するように前記イオンビームの振動運動を生じさせることができる。
幾つかの実施形態では、前記イオン注入システムの補正システムは、前記イオンビームの縦寸法に沿う電流密度プロファイルを調整するための少なくとも一つの補正装置を備えていても良い。そのような補正装置は、例えば、間隔をあけた複数の電極対であって、前記イオンビームの縦寸法に沿って積み重ねられており、かつ各対の電極が前記イオンビームの通過のためのギャップを形成するように離れて配置されている複数の電極対を含んでいても良く、そして当該電極対は、それへの静電電圧の印加によって個々にバイアス可能に構成されていて、前記イオンビームを非分散面において局所的に偏向させるようにしている。前記イオン注入システムはまた、前記補正装置の前記電極対に電圧を印加するための少なくとも一つの電圧源と、当該少なくとも一つの電圧源と情報伝達して前記電極対に印加される電圧を調整するための制御器とを含んでいても良い。
幾つかの局面では、リボンイオンビームのエネルギーを変更するための方法が開示されており、当該方法は、リボンイオンビームをそのイオンを減速または加速するための電界が存在している領域を通して通過させるステップと、前記リボンイオンビームの縦寸法に沿う電流密度プロファイルを調整するステップと、前記リボンイオンビームの横寸法に沿う発散を減少させるステップとを備えている。当該イオンビームの発散を減少させるステップは、集束レンズを通して前記イオンビームを通過させるステップを含んでいても良い。
幾つかの実施形態では、前記リボンイオンビームは、約10から約100keVの範囲内の初期エネルギーを有していても良い。幾つかの実施形態では、前記イオンビームのイオンを減速または加速する前記ステップは、前記イオンビームのエネルギーを約1から約30倍の範囲内で変更する。
前記イオンビームの縦寸法に沿う電流密度プロファイルを調整するステップは、前記イオンビームを前記縦寸法に沿って局所的に偏向させるように構成されていて、前記縦寸法に沿う実質的に均一な電流密度プロファイルを発生させるようにしている補正装置を利用するステップを含んでいても良い。
幾つかの局面では、基板にイオンを注入する方法が開示されており、当該方法は、イオン源からリボンイオンビームを引き出すステップと、質量選択されたリボンイオンビームを発生させるために前記リボンイオンビームを分析マグネットを通して通過させるステップと、縦寸法に沿う実質的に均一な電流密度プロファイルを有する出力リボンイオンビームを発生させるために前記質量選択されたリボンイオンビームの電流密度プロファイルを少なくともその縦寸法に沿って調整するステップと、前記出力リボンイオンビームを基板の方へ、当該基板にイオンを注入するために向けるステップとを備えている。
幾つかの実施形態では、補正装置が、前記質量選択されたリボンイオンビームの電流密度プロファイルを調整する前記ステップを実行するように構成されていても良い。例として、補正装置は、前記質量選択されたリボンイオンビームの電流密度プロファイルを調整して、実質的に均一な電流密度プロファイルを示すイオンビームを得るようにしているものでも良い。
幾つかの実施形態では、前記イオン注入方法は、前記出力リボンイオンビームが前記質量選択されたリボンイオンビームとは異なるエネルギーを有するように、前記質量選択されたリボンイオンビームを減速または加速するステップを更に含んでいても良い。
幾つかの実施形態では、前記注入されたイオンの注入量は、約1012cm−2から約1016cm−2の範囲内であっても良い。前記イオン電流は、例えば、数十マイクロアンペア(例えば20マイクロアンペア)から数十ミリアンペア(例えば60ミリアンペア)の範囲内、より具体的には約50マイクロアンペアから約50ミリアンペアの範囲内、または約2ミリアンペアから約50ミリアンペアの範囲内であっても良い。
多くのイオン注入システムにおいて、2つの間隔をあけた別々の電極から成る上述したような静電偏向器は、減速/加速システムの下流に配置され、受け入れたイオンを適度な減速比率で減速させる作動をするときであっても、当該静電偏向器は顕著な角度にビームが発散(ビーム・ブローアップ)することを引き起こすことなくイオンビームを効果的に曲げることができる。
しかし、従来の静電偏向器は、減速システムとして下流で高い減速比率でイオンを減速するように使用されると、イオンの過度の集束化を招き、イオンビームが下流の部品を通過していくときに次第に拡張してしまうことが分かった。ビーム・ブローアップは、イオン損失に至り、イオン注入システムの運転の障害となる。さらに、従来のイオン注入システムでは、集束化レンズの使用に高電圧を必要とするため、一時的なビーム不安定性を招くこともあった。例えば、アーク放電に起因し、電荷交換反応を経た原子/分子の中性化という形での汚染の発生も招いた。
以下に記すように、いくつかの態様により、これらの問題を解決する。
一つの態様において、減速比率が少なくとも2であり、イオンビームを受け入れて同イオンビームを減速させる減速システムと、この減速システムの下流に配置されてイオンビームを偏向させる静電偏向器とを備えるイオン注入システムを開示する。
この静電偏向器は、上記減速システムの下流に配置されて上記減速されたビーム受け入れる第1電極対であって、この第1電極対はその間にイオンビームの通路形成するように互いに離れて配置された内側電極と外側電極とを備え、上記第1電極対の下流に配置された第2電極対であって、この第2電極対は、その間にイオンビームの通路形成するように互いに離れて配置された内側電極と外側電極とを備え、この第2の電極対の下流に配置された末端電極対であって、その間にイオンビームの通路形成するように互いに離れて配置された内側電極と外側電極とを備えている。
この第1電極対と、第2電極対と、末端電極対は、独立して電圧を印加させることを可能としている。
一例として、上記末端電極対の電極の各々は上記第2電極対のいずれの電極が保持される電圧よりも低く保持される。また、上記第1電極対の電極の各々は上記第2電極対の電極と比較してより低い電圧に保持される。
一例として、上記減速システムは、例えば、約5〜約100の範囲で、または、約10〜約80の範囲で、または、約20〜約60の範囲では、または、約30〜約50の範囲で減速比率を提供する。
一例において、正に荷電した粒子からなるイオンビームの偏向させるように、上記電極対の各々の内側電極がその電極対の各々の外側の電極が保持される電圧より低い電圧に保持される。
第1電極対の内側電極と外側電極は、第2電極対の各々の電極に対して、所定の角度を形成してもよい。さらに、末端電極対の内側電極と外側電極は、第2電極対の各々の電極に対して、所定の角度を形成してもよい。
一例において、上記第1電極対と上記末端電極対の上記外側電極は第1の電圧(V1)で保持され、上記第1電極対と上記末端電極対の上記内側電極が第2の電圧(V2)で保持される。
さらに、上記第2電極対の上記内側電極は電気的に接地され、上記第2電極対の上記外側電極は第3の電圧(V3)で保持される。この電圧V1は電圧V2より高い電圧である。
一例として、電圧V1が約0Vから約−30kVまでの範囲であり、V2が約0V(ゼロボルト)から約−30kV(マイナス30kV)までの範囲であり、電圧V3が約0Vから約+30kVの範囲である。
いくつかの実施例ではイオンビームはリボン・イオンビームであり、他の実施例では、円形のビームである。
一例において、減速システムによって受け取られるイオンビームには、約10keV〜約60keVの範囲のイオン・エネルギーがあり、例えば、約10keVから約20keVの範囲である。また、イオン電流は、約0.1mAから約40mAの範囲であり、例えば、約5mAから約40mAの範囲である。
一例において、上記減速システムは、下流の集束化要素から分離された減速要素を備えるために、同集束化要素と同減速要素の間にギャップが形成されている。
この減速システムは、二つの対抗する分離された同電圧の電極部を有し、その間をイオンビームの通路とするためのスロットとしてもよい。
集束化要素は、二つの分離された同電圧の電極部を有し、その間をイオンビームの通路とするためのスロットとしてもよい。
一例として、減速要素と集束化要素のこの分離された電極部を、その上下端で接続して、例えば正方形の電極を形成するようにしてもよい。減速要素と集束化要素の電極は、受け入れたイオンビームを減速するために、そのギャップに電界を生じさせるように異なる電圧に保持される。この電界は、イオンビームが隙間を通過する際に、同イオンビームを集束化させることにもなる。
このイオン注入システムは、イオンビームを作り出すイオン源と、このイオン源の下流であって減速システムの上流に配置されるとともに、このイオン源からイオンビームを受け入れて、質量選択されたイオンビームを作り出す分析マグネットを備えても良い。
関連した態様として、以下のイオン注入システムも開示される。そのイオン注入システムは、その間にイオンビームの通路形成するように互いに離れて配置された内側電極と外側電極とを有する第1電極対と、上記第1電極対の下流に配置され、その間にイオンビームの通路形成するように互いに離れて配置された内側電極と外側電極とを有する第2電極対と、上記第2電極対の下流に配置され、その間にイオンビームの通路形成するように互いに離れて配置された内側電極と外側電極とを有する末端電極対とを備える。
上記末端電極対の電極の各々は、上記第2電極対のいずれの電極が保持される電圧よりも低く保持され、上記第1電極対の電極の各々は上記第2電極対の電極と比較してより低い電圧に保持される。さらに、上記第1電極対と上記第2電極対と上記末端電極対のの各々の内側電極がその電極対の各々の外側の電極が保持される電圧より低い電圧に保持される。
上記イオン注入システムのいくつかの実施例では、上記第1電極対と上記末端電極対の上記外側電極は第1の電圧(V1)で保持され、上記第1電極対と上記末端電極対の上記内側電極が第2の電圧(V2)で保持される。
さらに、上記第2電極対の上記内側電極は電気的に接地され、上記第2電極対の上記外側電極は第3の電圧(V3)で保持される。この電圧V1は電圧V2より高い。
一例として、電圧V1は約0Vから約−30kV(マイナス30kV)までの範囲であり、V2は0Vから約−30kVまでの範囲であり、電圧V3は約0Vから約+30kVの範囲である。
一例において、イオン注入システムは、静電偏向器の下流に配置されたスプリットレンズを備えてもよい。
このスプリットレンズは、湾曲した下流側端面を有する第1電極対と、湾曲した上流側端面を有する第2電極対とを備え、2つのこれらの電極対の上記端面は、互いに分かれてその間でギャップを形成してもよい。上記第1電極対および第2電極対が各々独立して電圧を印加できるようになっている。例えば、上記第1電極対および第2電極対は、上記スプリットレンズを通過するイオンビームを集束化するための電界を上記ギャップに生成させるように、電圧を印加される。
もう一つの態様として、以下のイオン注入システムが開示される。このイオン注入システムは、イオンビームを受け入れて偏向させる静電偏向器と、上記静電偏向器の下流に配置されたスプリットレンズとを備える。
このスプリットレンズは、湾曲した下流側端面を有する第1電極対と、湾曲した上流側端面を有する第2電極対とを備え、2つのこれらの電極対の上記端面は、互いに分かれてその間でギャップを形成してもよい。
上記第1電極対および第2電極対は、例えば、上記スプリットレンズを通過するイオンビームを集束化するための電界を上記ギャップに生成させるように、各々独立して電圧を印加できる。
このイオン注入システムは、上記静電偏向器の上流に配置される減速/加速システムと、この減速/加速システムの上流に配置され、イオンビームを受け入れて質量選択されたイオンビームを作り出す質量選択器を備えても良い。
一例において、この静電偏向器は、第1電極対と、第2電極対と、末端電極対とを備え、その間をイオンビームの通路とすることが可能な各々離れて配置された内側電極と外側電極を間隔を備えている。この3つの電極対は、独立して電圧を印加されることができる。例えば、上記末端電極対の電極の各々は上記第2電極対のいずれの電極が保持される電圧よりも低く保持され、上記第1電極対の電極の各々は上記第2電極対の電極と比較してより低い電圧に保持される。
一例において、上記第1電極対と上記末端電極対の上記外側電極は第1の電圧(V1)で保持され、上記第1電極対と上記末端電極対の上記内側電極が第2の電圧(V2)で保持される。ここで、電圧V1は電圧V2より高い電圧である。
さらに、上記第2電極対の上記内側電極は電気的に接地され、上記第2電極対の上記外側電極は第3の電圧(V3)で保持される。
本発明の多様な側面の理解は、以下の詳細な説明と、これに伴う図面を参照することで理解できる。参照図面については、以下に簡単に説明する。
幾つかの局面では、本開示は、リボンイオンビームを発生させるためのイオン源を含むイオン注入システム(ここではまたイオン注入装置とも呼ぶ)、および、リボンイオンビームが、当該ビームが入射する基板の位置で少なくともその縦寸法に沿って実質的に均一な電流密度プロファイルを確実に示すようにするための修正システムに向けられている。幾つかの場合では、補正システムは、イオン注入システムのビームライン中の他の光学系に加えて、イオン源から引き出されたリボンイオンビームがイオン注入のために基板に輸送される間に、当該リボンイオンビームのプロファイルを実質的に維持する(例えば約5%またはそれより良い範囲内に)ために採用しても良い。
幾つかの実施形態では、本開示に係るイオン注入システムは、2ステージ(段)を有するビームラインを含んでいる。即ち、ビーム注入器ステージと、それに続くビーム補正ステージであり、後者はまた、任意選択で、イオンビームを減速または加速するための機構を含んでいても良い。ビーム注入器ステージは、ビーム発生および質量選択を含んでいても良い。幾つかの実施形態では、ビーム補正ステージは、減速/加速光学系に加えて、補正アレイを含んでいても良い。幾つかの実施形態では、ビームラインは、イオンを300mm基板(例えば、高さが約350mmのリボンイオンビームによって)または450mm基板(例えば、高さが約500mmのリボンイオンビームによって)に注入するように構成することもできる。例えば、ビームラインは、異なった基板寸法に対応するために、取り替え可能なイオン光学系構成機器を含んでいても良い。当該イオン光学系構成機器は、例えば、イオン注入エンドステーション内の取替えエンドエフェクタおよびFOUP(前面開放統合ポッド)のような基板ハンドリング要素に加えて、イオン源からイオンビームを引き出すための引出し電極、補正アレイおよび減速/加速ステージ光学系を含んでいても良い。
本開示の様々の例示的な実施形態を以下に説明する。これらの実施形態の説明に用いられている用語は、当該技術分野における通常の意味を有している。以下の用語は、より明瞭にするために定義している。
ここで用いている用語「リボンイオンビーム」は、その最大寸法(ここではまたビームの縦寸法とも呼ぶ)と最小寸法(ここではまたビームの横寸法とも呼ぶ)との比率として定義されるアスペクト比を有しているイオンビームを表しており、当該アスペクト比は少なくとも約3、例えば10以上、または20以上、または30以上である。リボンイオンビームは、様々な異なる断面プロファイルを示すことができる。例えば、リボンイオンビームは、長方形または楕円の断面プロファイルを有していても良い。
図1は、縦寸法(ここではまた高さとも呼ぶ)Hおよび横寸法(ここではまた幅とも呼ぶ)Wを有する例示的なリボンイオンビーム8を概略的に示している。一般性を失うことなしに、本発明の様々な実施形態についての以下の説明において、イオンビームの進行方向は、その縦寸法が直交座標系のY軸に沿い、横寸法がX軸に沿う状態で、Z軸に沿うものと想定している。以下により詳しく説明しているように、多くの実施形態において、イオンビームをその進行方向に垂直な平面内で分散させるために分析マグネットが採用されている。この面はここではまた分散面と呼ぶ。以下の実施形態では、分散面はXZ平面に相当している。この分散面に垂直な平面は非分散面と呼ぶ。以下の実施形態では、非分散面はYZ平面に相当している。
用語「電流密度」は、ここでは、単位面積、例えばイオンの進行方向に垂直な単位面積を通して流れるイオンに関連する電流を表すために、当該技術分野における使用と一致させて使用している。
ここで用いている用語「電流密度プロファイル」は、ビームに沿う位置の関数としてのビームのイオン電流密度を表している。例えば、ビームの縦寸法に沿うイオン電流密度は、イオンビームの縦寸法に沿うある基準点(例えば、ビームの上端、または下端、または中心)からの距離の関数としてのイオン電流密度、または、縦寸法に沿う単位長さを通して流れるイオンに関連する電流を表している。
用語「実質的に均一な電流密度プロファイル」は、多くて5%のRMS偏差を示すイオン電流密度プロファイルを表している。
図2A、図2Bおよび図2Cを参照して、本開示の実施形態に係るイオン注入システム10は、リボンイオンビーム8を発生させるイオン源12と、当該イオン源からのイオンビームの引き出しを促進するように電気的にバイアスされた引出し電極14とを含んでいる。抑制電極16が、イオン源への中性化電子(例えば、イオンビームによる周囲のガスの中性化を経て生成された電子)の逆流を抑制するように電気的にバイアスされている。集束電極18は、イオンビームの発散を減少させるように電気的にバイアスされている。接地電極19は、イオンビームに対する基準接地を画定している。集束電極18の下流側に配置された分析マグネット20は、上記リボンイオンビーム8を受けて質量選択されたイオンビームを発生させる。
幾つかの実施形態では、イオン源ハウジングおよび分析マグネット枠組立体は、接地電位から電気的に絶縁しておいても良い。例えば、それらは、接地電位よりも下に、例えば−30kVまで浮かせても良い。幾つかの場合では、上記浮動電圧は、イオン注入のためにイオンビームが入射する基板の位置でのエネルギーよりも高いエネルギーで、イオンビームをイオン源から引き出しかつ質量分析するように選択しても良い。代わりに、イオンビームは、基板により高いエネルギーで入射するように、イオン源から引き出されかつ質量分析され、かつその後に加速されても良い。
また図2A―2Cに関して、典型的なイオン注入システム10は、リボンイオンビーム8の少なくとも縦寸法(例えば、イオンビームの非分散面における寸法)に沿う電流密度プロファイルを調整して、少なくとも縦寸法に沿う実質的に均一な電流密度プロファイルを示す出力リボンイオンビームを発生させる補正システム22を更に含んでいる。これについては以下でより詳細に論じる。更に、補正システム22は、イオンビームの横寸法を調整して、例えばイオンビームの横寸法(例えば分散面における寸法)に沿う発散を減少させて、出力イオンビームが所望の寸法を確実に有するようにすることができる。
幾つかの実施形態では、以下に論じているように、補正システム22は、更に、質量選択されたリボンイオンビーム8の減速/加速を実現することができる。このような方法で、所望のエネルギーおよび実質的に均一な電流密度プロファイルを有する出力リボンイオンビームを得ることができる。一般性を失うことなしに、以下に論じている実施形態では、補正システム22はまた、減速/加速システムとも呼んでいる。しかし、幾つかの実施形態では、補正システム22は、イオンビームのいかなる減速または加速も実現しない場合があることが理解されるべきである。
例示的なイオン注入システム10は、エンドステーション24を更に含んでおり、当該エンドステーション24は、補正システム22を出るリボンイオンビーム8の経路において基板26を保持するための基板ホルダー25を含んでいる。出力リボンイオンビーム8は、基板26に入射してそこにイオンを注入する。この実施形態では、基板ホルダー25は、当該技術分野における既知の方法でイオンビーム8の進行方向と直交する1次元に沿って走査して、基板にイオンを注入するために基板の異なる部分をイオンビームに曝すようにしても良い。幾つかの実施形態では、イオンビーム8の縦寸法は、基板26の直径よりも大きく、それによってイオンビームの進行方向に垂直な次元に沿う基板の直線運動は、基板全体に亘るイオン注入を生じさせることができる。出力リボンイオンビームの電流密度の実質的な均一性は、注入されたイオンの均一な注入量が基板全体に亘って確実に達成されるようにする。
リボンイオンビームを発生させることのできる様々な異なったイオン源をイオン源12として採用することができる。リボンイオンビームを発生させることのできるイオン源の幾つかが、「制御可能な密度プロファイルを有するリボンビーム用イオン源」と題する米国特許第6,664,547号(前記特許文献1)および「イオン源、イオン注入装置およびイオン注入方法」と題する米国特許第7,791,041号(前記特許文献2)に記載されており、これらの特許はその全部がここに参照組み込みされている。
この実施形態において採用しているイオン源12は、本出願の譲受人に譲渡された、「イオン源」および「イオン源のための磁界源」と題する同時係属特許出願に詳しく記載されており、これらの出願は本出願と同時に出願されており、かつその全部がここに参照組み込みされている。簡単に言えば、図3A、図3Bおよび図3Cを参照して、このイオン源は、細長く長方形のイオン化室32(イオン源本体)の両端部に配置された二つの相対する外部の電子銃28/30を含んでいても良い。各電子銃は、傍熱陰極(IHC)28a/30aおよび陽極28b/30bを含んでいても良い。図3Cに示すように、板状のプラズマ電極34は、当該イオン源からのイオン引き出しを可能にする形をした開口を含んでいる(例えば、当該開口は450mm×6mmのスロットでも良い)。イオン引き出しは、プラズマ電極34と同様の形をした引出し電極36によって助けられ、当該引出し電極36は1以上の電気絶縁スペーサ(図示せず)によってプラズマ電極34から離して配置されている。幾つかの実施形態では、引出し電極36は、イオン源本体32およびプラズマ電極34に対して−5kVまでバイアスされても良い。このような構成によってリボンイオンビーム8を発生させることができる。
図3Bを参照して、イオン源本体32は、電磁コイル組立体38によって発生された軸方向磁界中に浸される。この実施形態では、コイル組立体38は、三つの副コイルを備えており、当該副コイルは、イオン源本体32の長軸に沿って分散配置されており、そして独立していて部分的に重なった磁界をイオン源本体32の頂部、中間部および底部に発生させる。上記磁界は、電子銃28、30によって発生された1次電子を閉じ込め、それによって、十分に境界限定されたプラズマ柱をイオン化室32の軸に沿って生成する。三つのコイルセグメントの各々によって発生される磁束密度は、引き出されたイオンビームの電流密度が実質的に非均一性のないものになることを確実にするように独立して調整されても良い。
図3Cを参照して、イオン源本体32の長軸に沿って分散配置されていて、各々がそれ用の流量調節器(MFC)を有している五つの別個のガス供給部40a、40b、40c、40dおよび40eを、プラズマ柱に沿うイオン密度を調整するために利用しても良い。この実施形態では、電子銃28、30の陽極および陰極は、プラズマ電極34および引出し電極36と同様に、グラファイトで作られている。イオン化室32はアルミニウムで作られていて、その内面はグラファイトで覆われている。
引き出されたイオンビーム8は、イオン源ハウジング内に位置している引込み式のビームプロファイラーによって分析することができる。実例として、図4は、上記のようなイオン源の原型によって発生されたリボンイオンビームのビーム電流を、その垂直(縦)位置の関数として示している。縦寸法に沿う電流密度プロファイルは、約2.72%のRMS非均一性を示している。
再び図2Aを参照して、この実施形態では、イオン源12によって発生されたイオンビーム8は、引き出されて、かつ分析マグネット20に入る前に所望のエネルギー(例えば5から80keV)に加速される。分析マグネット20は、異なる質量対電荷比を有するイオンを分散面において分離するために、イオンビーム8に非分散面において磁界を印加し、それによって分析マグネット20の焦点の位置で分散面内においてくびれを有する質量選択されたイオンビームを発生させる。以下に論じているように、ビームくびれの近くに配置された可変寸法の質量分析スリット20aは、所望の質量対電荷比を有するイオンが当該イオン注入システムの他の要素に向けて下流側へ通過することを可能にする。これについては以下により詳細に論じる。
当該技術分野において知られている様々な分析マグネットを利用することができる。この実施形態では、分析マグネット20は、600mmの磁極ギャップ、約90度の曲げ角度および950mmの曲げ半径を有する鞍型コイル設計を有しているけれども、他の磁極ギャップ、曲げ角度および曲げ半径もまた利用することができる。配置されている可変寸法の質量分析スリット20aは、所望の質量対電荷比のイオンが減速/加速システム22に向けて下流側へ通過することを可能にする。換言すれば、分析マグネット20は、減速/加速システム22によって受け取られる質量選択されたリボンイオンビームを発生させる。
続けて図2A、図2Bおよび図2Cを参照して、減速/加速システム22は、質量選択されたリボンイオンビームを受けるためのスロット40を含んでいる。スロット40は、イオンビームの縦寸法に適応するように高さが十分に高く(例えば幾つかの実例ではスロット40は高さが600mm)、かつ選択された範囲内(例えば約5mmから約60mmの間)で連続的に可変の横寸法(例えば分散面における寸法)を有している。
補正装置42が、スロット40を通過するリボンビーム8を受けるためにスロット40の下流側に配置されている。この実施形態では、図5に概略的に示すように、補正装置42は、イオンビーム8の縦寸法に沿って(即ちY軸に沿って)積み重ねられかつ間隔をあけた複数の電極対E1、E2、E3、E4、E5、E6、E7、E8、E9およびE10を含んでおり、そして各電極対は独立して電気的にバイアス可能である。より具体的には、この実施形態では、静電電圧源V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10が各電極対に独立した電圧を印加して、イオンビームの1以上の部分を局所的に偏向させるためにリボンイオンビーム8の縦寸法に沿う成分を有する電界を発生させるようにして、イオンビームの縦寸法に沿う電流密度プロファイルを調整するようにしている。この実施形態では、電流密度プロファイルの上記のような調整は、イオンビームの縦寸法に沿う(例えば非分散面における)電流密度の均一性を高めるために行われる。上記電圧源V1〜V10は、独立した電圧源でも良いし、単一の電圧源の異なるモジュールでも良い。
各電極対は、電極E1aおよびE1bなどの二つの電極を備えており、それらは、イオンビーム8の進行方向とその縦寸法とで定義される平面に実質的に平行に配置されている。対を成す電極は、横方向のギャップであってそれを通してイオンビームが通過することのできるギャップを実現するように離れて配置されている。電極対の数は、例えば特に、イオンビームの縦寸法、イオンビームの縦方向プロファイル中の非均一性を補正するのに要求される分解レベル、イオンビーム中のイオンのタイプに基づいて選択することができる。幾つかの実施形態では、電極対の数は、例えば約10から約30の範囲内であっても良い。
電圧源V1〜V10と情報伝達する制御器44は、1以上の電極対の間を通過しているイオンビームの1以上の部分を選択された角度で局所的に偏向させるために、以下でより詳細に論じる方法で、補正装置42の電極対に印加されるべき電圧(例えば静電電圧)を決定することができ、それによってイオンビーム8の縦寸法に沿う電流密度を調整することができる。
例として、図6は、三つの電極対E5、E6およびE7が、電極対E6に印加される電圧が電極対E5およびE7に印加される電圧よりも大きくなるようにそれらへの静電電圧の印加によってバイアスされて、矢印で示す電界成分を所定の領域に発生させて、当該領域を通して、イオンビーム8の陰影をつけた部分(これはイオンビームの他の部分よりも電荷密度が高いことを表している)が通過することを示している(この例では、他の電極対は接地電圧に保たれている)。イオンビームの上記陰影をつけた部分に印加された電圧は、当該部分の上部部分の上向きの偏向を生じさせ、かつ当該部分の下部部分の下向きの偏向を生じさせ、それによって縦寸法に沿う電流密度プロファイルの均一性を改善するように前記部分における電荷密度を減少させる。
図7Aを参照して、この実施形態では、補正装置42は、イオンビーム8に横方向の電界(即ち、イオンビームの横寸法に沿う成分を有する電界)を印加して、イオンビームの横方向の偏向を生じさせるように、例えばイオンビームの進行方向を変更するように構成されていても良い。より具体的には、補正装置42は、電極対の各電極が独立してバイアス可能なように構成されていても良い。例えば、この実施形態では、電圧源V1〜V20は、各々、電極対の電極に独立した電圧(例えば静電電圧)を印加することができる(例えば、電圧源V1およびV11は、電極対E1の電極E1aおよびE1bに独立した電圧を印加するように構成されていることを参照)。
例として、1以上の電極の相対する電極対間の電圧差は、イオンビーム8の1以上の部分の局所的な横方向の偏向を実現するように選定しても良い。例えば、図7Aに示すように、この例では、電圧源V2およびV12が電極E2aおよびE2bに異なった電圧v2およびv12を印加して(v12<v2)、これらの相対する電極間を通過しているイオンビームの部分に対して電極E2bの方への局所的な偏向を生じさせるようにしている。同時に、電圧源V4およびV14は、電極E4aおよびE4bに異なった電圧v4およびv14を印加して(v14>v4)、これらの相対する電極間を通過しているイオンビームの部分に対して電極E4aの方への局所的な偏向を生じさせるようにしている。幾つかの実施形態では、二つの相対する電極間の電圧差は、約0Vから約4kVの範囲内でも良い。
幾つかの場合では、イオンビーム全体を、例えばその進行方向を変えるために、イオンビームの一方側にある全ての電極に一つの電圧を印加し、かつその反対側にある全ての電極に他の電圧を印加することによって、横方向に偏向することもできる。
図7Bおよび図7Cを参照して、幾つかの実施形態では、補正装置42は、イオンビーム8全体を縦寸法に沿って(即ちY軸に沿って垂直に)偏向させるように構成されていても良い。例えば、図7Cに示すように、制御器44は、電圧源V1〜V10に、電極対E1〜E10に対して傾斜電圧を印加させて、イオンビームの縦寸法に沿う成分を有する電界(図7B中に矢印A1によって概略的に示す)を発生させることができ、それによってイオンビームの縦方向の偏向を生じさせることができる。
電圧源V1〜V20と情報伝達する制御器44は、例えばイオンビーム8の所望の局所的なまたは全体的な偏向角度に基づいて、上記電極に印加すべき電圧を決定することができる。制御器44は、当該技術分野における既知の方法で、例えばイオンビーム中のイオンの電荷や所望の偏向角度に基づいて、必要な電圧を決定することができる。幾つかの場合では、制御器44は、イオンビームの横方向および縦方向の両方の偏向を実現するように、電極対の電極への電圧の印加を実施することができる。例えば、異なる電極対間の電圧差は、例えば図6に関連して上に論じた方法で、局所的な縦方向の偏向を生じさせることができ、一方、電極対の電極間の電圧差は、局所的な横方向の偏向を生じさせることができる。
図8Aを参照して、幾つかの実施形態では、補正装置42は、イオンビーム8に対してその縦寸法に沿う振動運動を生じさせることができる。制御器44の制御下にある波形発生器100は、イオンビームの縦寸法に沿う(Y軸に沿う)成分で変動電界を生じさせるために、1以上の電極対に変動電圧を印加することができ、それによってイオンビームの時間変動偏向をも生じさせることができる。幾つかの場合では、イオンビームの上記のような時間変動偏向は、イオンビームのその縦寸法に沿う周期的な振動の形であっても良い。幾つかの場合では、上記のような振動の振幅は、例えば、約10mmから約20mmの範囲内であっても良い。
例として、波形発生器100は、イオンビーム8にその縦軸に沿う周期振動を生じさせるために、図8Bに概略的に示すように、三角電圧波形を電極対E1〜E10に印加することもできる。イオンビームのそのような「小刻み振動」は、イオンビームが入射する基板中に注入されるイオンの注入均一性を改善することができる。振動の周波数は、例えば入射イオンビームに対して基板が動かされる速度に基づいて、変えても良い。幾つかの実施形態では、上記振動周波数は、例えば、約1Hzから約1kHzの範囲内であっても良い。
再び図2A、図2Bおよび図2Cを参照して、減速/加速システム22は、下流側の集束要素48から離れて配置されていてギャップ領域50を画定する減速/加速要素46を更に含んでいる。減速/加速要素46は、二つの相対する同電圧の電極46aおよび46bを備えていて、それらはイオンビーム8の通過のための経路をその間に提供している。同様に、集束要素48は、二つの同電圧の相対する電極48aおよび48bを含んでいて、それらはイオンビーム8の通過のための経路をその間に提供している。
減速/加速要素46と集束要素48との間への電圧差の印加は、ギャップ領域50内にイオンビームの減速または加速のための電界を発生させる。減速/加速要素46と集束要素48との間の電圧差は、取り分け、イオンのエネルギーにおける所望の変化、イオンビームのイオンのタイプ、イオンビームが利用される特定の用途に基づいて、当業者に知られている方法で選定しても良い。
例として、幾つかの実施形態では、約0から約−30(マイナス30)kVの範囲内の電圧、または約0から約+30kVの範囲内の電圧を減速/加速電極46a/46bに印加しても良く、かつ約0から−5(マイナス5)kVの範囲内の電圧を集束電極48a/48bに印加しても良い。
図2Cを参照して、この実施形態では、集束電極48a/48bの一方または両方の上流側面(UF)は、イオンビーム8の非分散面における(例えばイオンビームの縦寸法に沿う)発散を相殺するための電界成分を上記ギャップ領域50に発生させるように湾曲している。実例として、図2Cは、ギャップ50を通過しているイオンビーム8を示しており、当該イオンビームは、反発する空間電荷効果によって、その非分散面における縦方向の端部付近のイオンの発散を見せている。集束電極48a/48bの上流側端(上流側面)の湾曲した形状は、イオンビームのイオンの実質的に平行な進行を確実なものにする補正力を、上記のような発散するイオンに加えることになる電界パターンを発生させることを容易にするように構成されていても良い。例として、集束電極48a/48bの上流側端は、通常、約1mから約10mの範囲内の曲率半径を有する窪んだ形状(上流側方向から見たとき)を有していても良い。
再び図2A、図2Bおよび図2Cを参照して、減速/加速システム22は、集束要素48の下流側に配置されていて、それからギャップ53だけ離して配置されている静電偏向器52を更に含んでいる。集束要素48と静電偏向器52(例えば当該偏向器52の1以上の電極)との間の電圧差は、ギャップ53に、リボンイオンビーム8の横寸法に沿う発散を減少させるための電界を発生させることができる。換言すれば、集束要素48と静電偏向器52との間のギャップ53は、イオンビーム8の横寸法に沿う発散を減少させるための集束レンズとして機能する。1以上の電圧源を、例えば前述した制御器44の制御の下で、当該技術分野における既知の方法で、減速/加速要素46および集束要素48に電圧を印加するために用いても良い。
この実施形態では、静電偏向器52は、外側電極52aおよびそれに対向する内側電極52bを有しており、これらに対して、これらの電極を分離している横方向のギャップを通してイオンビーム8が通過する間に当該イオンビームの偏向を生じさせるように異なる電圧を印加することができる。例として、イオンビームの偏向角度は、約10度から約90度の範囲内、より具体的には22.5度であっても良い。
この実施形態では、静電偏向器52は、中間電極52cを更に含んでおり、当該中間電極52cは、内側電極52bの下流側に配置されており、かつそれから電気的に絶縁されていて(例えばギャップを経て)、内側電極52bに印加される電圧から独立した電圧を当該中間電極52cに印加することを可能にしている。例として、この実施形態では、外側電極52aおよび中間電極52cは、同一電圧に保たれる。幾つかの実施形態では、外側電極52aに印加される電圧は、約0から約−20(マイナス20)kVの範囲内であっても良く、かつ内側電極52bに印加される電圧は、約−5(マイナス5)kVから約−30(マイナス30)kVの範囲内であっても良い。
外側電極52aは、上流側部分(UP)および下流側部分(DP)を含んでいて、それらは、当該外側電極52aに曲げ形状を分け与えるために互いに正確な角度で配置されている。外側電極52aの上流側部分と下流側部分との間の上記角度は、取り分け、幾何学上の制限や、イオンビームが減速/加速システム22に入るときの横方向の発散に基づいて選定しても良い。この実施形態では、外側電極52aの上流側部分と下流側部分との間の上記角度は約22.5度である。この実施形態では、前記上流側部分および下流側部分は一体的に外側電極52aを形成しているけれども、他の実施形態では、当該上流側部分および下流側部分は、電気的に等電圧になるように接続された別個の電極であっても良い。
上述したように、外側電極52aと内側電極52bとの間の電圧差は、これらの電極間の空間に、イオンビーム8中のイオンを偏向させるための電界を発生させる。電気的に中性の種(中性の原子および/または分子)がイオンビーム8中に存在していたとしても、当該中性種は、偏向されずに、それらが静電偏向器52に入ったときの進行方向に沿って進行し続ける。その結果、これらの中性種は、または少なくともその一部分は、外側電極52aの下流側部分(DP)に衝突してイオンビーム8から除去される。
イオンビーム8の縦寸法に沿う(非分散面において)電流密度を調整するための他の(第2の)補正装置54を、任意選択で、静電偏向器52の下流側に配置しても良い。この実施形態では、補正装置54は、上流側の補正装置42と同様の構造を有している。特に、補正装置54は、上流側の補正装置42に関連して図5中に示した電極対のような間隔をあけた複数の電極対を含んでおり、当該電極対は、各対の電極がイオンビーム8の通過のための横方向のギャップを形成した状態で、イオンビームの縦寸法に沿って積み重ねられている。上流側の補正装置42と同様に、第2の補正装置54の各電極対は、それへの電圧の印加によって、例えば補正装置42に関連して図5中に示した電圧源V1〜V10と同様の複数の電圧源によって、個々にバイアス可能に構成されていても良い。この実施形態では、第2の補正装置54は、イオンビーム8の縦寸法に沿う電流密度の均一性を更に改善するために、イオンビーム8の1以上の部分を局所的に偏向させることができる。このような方法で、二つの補正装置42および54は、共同で、減速/加速システム22を出るリボンイオンビーム8がその縦寸法に沿う高度の電流密度均一性を示すことを確かなものにする。
上記制御器44はまた、第2の補正装置54の電極対に電圧を印加する電圧源と情報伝達する。当該制御器44は、上記電極対に印加されるべき電圧を例えば以下でより詳細に論じている方法で決定することができ、かつ当該電圧源に、上記電圧を上記電極対に対して印加させることができる。
上流側の補正装置42と同様に、第2の下流側の補正装置54は、イオンビーム8の横方向の偏向および/または上述した方法でイオンビームの縦寸法に沿う振動運動を生じさせるように構成することもできる。更に、下流側の補正装置54はまた、例えば上流側の補正装置42に関連して上で議論した方法で、イオンビーム全体の縦方向の(垂直の)偏向を生じさせるように構成することもできる。
上述したように、この実施形態では、外側電極52aおよび中間電極52cは、同一電圧に保たれる。このことは、イオンビーム8が静電偏向器52と第2の補正装置54との間のギャップを通過する時の不所望な電界成分によるイオンビーム8の何らかの乱れを改善し、かつ好ましくはそれを防ぐことができる。
この実施形態では、下流側の第2の補正装置54の電極対は、上流側の補正装置42の電極対に対して、イオンビーム8の縦寸法に沿って千鳥状に配置されている。換言すれば、補正装置54の各電極対は、上流側の補正装置42の各電極対に対して垂直に(即ちイオンビームの縦寸法に沿って)中心をずらして配置されている。そのような片寄り(オフセット)は、例えば、補正装置の電極の縦方向の高さの半分(半ピクセル寸法)であっても良い。このような方法で、補正装置42および54は、イオンビーム8の様々な部分の局所的な偏向を、より高い分解能で、例えば半ピクセル寸法に相当する分解能で生じさせることができる。
この実施形態では、補正装置42および54は、それらの電極対に印加される電圧を約2kV未満に制限するために互いに十分に離されており、それによって当該補正装置の動作の安定性を改善することができ、かつまた縦寸法に沿う電極対の接近した配置を可能にすることができる。
この実施形態では二つの補正装置42、54を採用しているけれども、他の実施形態では、イオンビームの縦寸法に沿う電流密度の均一性を改善するために、単一の補正装置のみを採用しても良く、例えば、補正装置42または補正装置54のいずれか一方を採用しても良い。例えば、分析マグネット20から受け取ったイオンビーム8を減速させる実施形態においては、下流側の補正装置54のみを採用しても良い。
続けて図2A、図2Bおよび図2Cを参照して、他の(第2の)集束要素56が、第2の補正装置54の下流側に任意選択で配置されており、当該集束要素56は、補正装置54からギャップ58によって離されている。上流側の集束要素48と同様に、この第2の集束要素56は、一対の相対する電極56aおよび56bを含んでおり、それらはイオンビーム8の通過のための経路をそれらの間に提供する。第2の補正装置54の1以上の電極対と第2の集束電極56a/56bとの間の電圧差は、ギャップ58内に電界を生じさせることができ、当該電界は、イオンビーム8がギャップ58を通過する時に当該イオンビームの横寸法に沿う発散を減少させることができる。
幾つかの実施形態では、集束電極56aおよび56bに印加される電圧は、約0から約−10(マイナス10)kVの範囲内であっても良い。
当該補正システムは、接地要素60を更に含んでおり、当該接地要素60は、第2の集束電極56aおよび56bの下流側に配置されていて、それらからギャップ62を形成するように離されている一対の相対する電気的に接地された電極60aおよび60bを有している。当該相対する電気的に接地された電極60aおよび60bは、電気的に接地されたダクトであって、それを通してイオンビーム8が減速/加速システム22をエンドステーション24に向かって出て行くダクトを形成している。
幾つかの実施形態では、減速/加速システム22は、第2の補正装置54および第2の集束要素58を有していない。
集束電極56aおよび56bと接地された電極60aおよび60bとの間の電圧差は、ギャップ62内に電界成分を発生させることができ、当該電界成分は、イオンビーム8が当該ギャップ62を通過する時に当該イオンビームの横寸法に沿う発散を減少させることができる。更に、この実施形態では、電極60aおよび60bの上流側面(上流側端)は、イオンビーム8の縦寸法に沿う発散を減少させるために、例えば電極48a/48bの上流側面(上流側端)と同様に湾曲している。従って、レンズギャップ58および62は、共同で、イオンビーム8の横寸法および縦寸法に沿う発散を減少させるための第2の集束レンズを提供している。
多くの実施形態では、減速/加速システム22を出る出力リボンイオンビームは、約5%以下の、または約4%以下の、または約2%以下の、更に好ましくは1%未満のRMS非均一性を有する縦寸法に沿う電流密度プロファイルを示す。そのようなリボンビームは、それが入射する基板の直径よりも大きい(例えば、約300mmよりも大きい、または約450mmよりも大きい)縦寸法を有することができる。従って、横寸法に沿う基板の直線運動は、基板内に実質的に均一な注入量のイオン注入を生じさせることができる。
幾つかの実施形態では、出力リボンイオンビームは、基板に約1012から1016cm−2の範囲内のイオン注入量を注入することに用いることもできる。そのような幾つかの実施形態では、基板に入射するリボンイオンビームの電流は、例えば、数十マイクロアンペア(例えば約20マイクロアンペア)から数十ミリアンペア(例えば約60ミリアンペア)の範囲内、より具体的には約50マイクロアンペアから約50ミリアンペアの範囲内、または約2ミリアンペアから約50ミリアンペアの範囲内であっても良い。
幾つかの実施形態では、補正装置42および54に印加される電圧は次の方法で決定しても良い。分析マグネット20を出る質量選択されたリボンイオンビーム(ここではまた未補正イオンビームとも呼ぶ)の電流密度を初めに測定しても良い。これは、例えば、イオンビーム8を実質的に元のままでエンドステーション24へ導くために、静電偏向器52の電極のみに電圧を印加した状態で未補正イオンビームを減速/加速システム22を通過させることによって達成することができる。
エンドステーション24内に配置された電流測定装置は、未補正イオンビームの電流密度プロファイルを測定することに利用することができる。例として、図9は、イオン注入システムのエンドステーション24内に引き込み式に配置されたプロファイラー102を概略的に示す。様々なビーム電流プロファイラーを採用することができる。例えば、この実施形態では、ビーム電流プロファイラー102は、ビームの電流プロファイルを高さの関数として測定するためのファラデーカップのアレイを含んでいても良い。他の実施形態では、ビームプロファイラーは、イオンビームを横切って動かすことのできる電流測定板を含んでいても良い。ビームプロファイラーは、イオンビーム8の縦寸法に沿う電流プロファイルに関する情報を提供するために、制御器44と情報伝達する。制御器44は、この情報を、補正装置および/または他の要素(例えば集束要素)に印加されるべき必要な電圧を決定するために利用することができる。例えば、制御器44は、イオンビームの縦寸法に沿う電流密度プロファイルの均一性を改善するために、補正装置の電極対に印加されるべき電圧を決定するためにこの情報を利用することができる。
例として、図10Aは、40kVのエネルギーおよび30mAの全電流を有する未補正リンイオンビームの幾つかの高さ値域におけるシミュレートしたイオン電流を表すヒストグラムを示している。このヒストグラムは、均一性窓に対して、イオンビームの局所的な非均一性を示している。この例では、未補正ビームは、異なる高さ値域のイオン電流において約12.5%のRMS変動を示している。
再び図9を参照して、制御器44は、ビームプロファイラー102から未補正ビームの電流密度プロファイルに関する情報(例えば上記ヒストグラムに表された情報)を受け取ることができ、かつ、当該情報を、前記補正装置の内の一つの電極対に印加されるべき電圧を決定して(例えば、図10A、図10Bおよび図10Cに関連して説明した例においては下流側の補正装置54を初めに設定する)、イオンビーム8の縦寸法に沿う電流密度の第1の補正を実現するために利用することができる。
幾つかの実施形態では、制御器44は、各高さ窓における測定電流を基準値と比較することができる。上記測定電流と基準値との差がしきい値(例えば1または2%)を超える場合、制御器44は、1以上の電圧源に、1以上の電極対であってその高さ窓に相当するビーム部分がその間を通過する電極対に対して電圧を印加させて、当該ビーム部分における電流を基準値に近づけるようにすることができる。上に詳述したように、このことは、イオンビーム8の縦寸法に沿う局所的な偏向を生じさせることによって達成することができる。
例として、制御器44は、第2の補正装置54の電極対に接続された電圧源に、イオンビーム8をその中央で発散させかつその上端で集束させるための図10Bに示す電圧を上記電極対に対して印加させることができる。例えば、60−90mmの高さ窓に相当するビーム部分が通過する電極対に対して、当該ビーム部分における電流密度を低下させるための電圧を印加することができる。このような方法で、イオンビーム8の電流密度の均一性を改善することができる。
補正装置の一つ(例えば、この例では下流側の補正装置54)による補正を受けるイオンビームの部分的に補正された電流密度プロファイルは、その後、例えば未補正イオンビームの電流密度の測定に関連して上述した方法で測定することができる。
例として、図10Bに示すヒストグラムは、上記図10A中に示す未補正ビームの電流密度を改善するために、第2の補正装置54のみを用いて得られたイオンビームの縦寸法に沿う高さ窓の関数としてシミュレートしたイオン電流を表している。この部分的に補正されたイオンビームは、均一性窓内において約3.2%のビーム電流のRMS偏差を示している(未補正ビームによって示される12.5%の変動に比べて改善されている)。なお、図10B、図10C中のアレイ1は第1の補正装置42、アレイ2は第2の補正装置54、アレイ電圧はそれらの電極対に印加する電圧のことである。
再び図9を参照して、制御器44は、上流側の補正装置42の電極対に印加される電圧を決定して、ビームプロファイルの均一性を更に高めるために、部分的に補正されたイオンビームの電流密度プロファイルに関する情報を受け取ることができる。換言すれば、上流側の補正装置42は、ビームプロファイルの微補正を実現することができる。
例として、図10Cは、均一性窓内のビームプロファイルの均一性を更に高めるために第1の補正装置42に印加することができる電圧を示している。この図はまた、図10Aに示すビームプロファイルを有する未補正ビームの非均一性を補正するために第1の補正装置42および第2の補正装置54の両者を採用したときのイオンビームのシミュレートしたプロファイルを示すヒストグラムを表している。このヒストグラムは、上記二つの補正装置42、54の組み合わせの補正効果が、約1.2%の均一性窓内のイオン電流のRMS偏差を有する電流密度プロファイルを生じさせることを示している。換言すれば、この例では、二つの補正装置の組み合わせの補正効果は、イオンビーム8の縦寸法に沿う電流密度プロファイルの均一性において1桁の大きさの改善を生じさせている。
他の実施形態では、上流側の補正装置42は、質量分析器20を出るリボンビーム8の電流密度プロファイルの粗い補正を実現するように構成しても良く、かつ、下流側の補正装置54は、その後、イオンビーム8の電流密度プロファイルのより細かい補正を実現するように構成しても良い。
上述したように、減速/加速システム22は、様々な異なる方法で構成することができる。例として、幾つかの実施形態では、減速/加速電圧は、減速/加速システム22が、イオンビーム中のイオンの加速および/または減速を生じさせないで補正システムとしてのみ機能するようにゼロに設定されても良い。
本開示に係るイオン注入システムは、様々な基板に様々なイオンを注入することに採用することができる。そのようなイオンの例には、リン、ヒ素、ホウ素、BF2、B18Hx +およびC7Hx +などの分子イオンを含むが、それに限定されるものではない。基板の幾つかの例としては、シリコン、ゲルマニウム、(ポリシリコン被覆のような)エピタキシャルウェーハ、絶縁膜上シリコン(SIMOX)ウェーハ、SiCまたはSiNなどのセラミック基板、太陽電池、およびフラットパネルディスプレイ製造に用いられる基板を含むが、それに限定されるものではない。基板形状の幾つかの例は、円形、正方形または長方形を含む。
いくつかの実施例においては、静電偏向器は減速/加速システムの下流にて3対の直列型の電極を配列することによって実装される。
以下において詳細に説明されるように、この静電偏向器の実装は、減速/加速システムが減速比2以上の減速モードで稼働されるときに特に有利である。この減速比は約5〜100の範囲の値を取る。ここで用いられる減速比の用語は、以下のような比率を意味する。すなわち、この減速システムに入っているイオンビームのエネルギーと、この減速システムから出ていくイオンビームのエネルギーとの比率である。(すなわち、この減速システムが受け取るイオンビームエネルギーと、減速されたイオンビームのエネルギーとの比率である。)
図11A、11Bと11Cは、このような実装例に従ったイオン注入システム1100を概略的を表している。
以下において詳細に説明されるように、このイオン注入システム1100は、静電的に偏向される3対の電極から構成される静電偏向器の実装を除き、図2A、2Bと2Cに基づいて説明したイオン注入システム10ととてもよく類似している。より詳細には、上記のイオン注入システム10と以下の点で類似する。このイオン注入システム1100は、イオンビームを生成するイオン源12と、イオン源からイオンビームの引き出しを容易にするために電気的にバイアスされた引出電極14と、中性化電子の逆流を防止するために電気的にバイアスされた抑制電極16と、イオンビームの発散を減少させるために電気的にバイアスされた集束電極18と、イオンビームの基準用の接地電圧を規定するための接地電極19とを含んでいる。分析マグネット20は、焦点電極18の下流に配置され、リボン・イオンビームを受け入れ、質量選択されたイオンビームを作り出す。
このイオン注入システム1100は、さらに減速/加速システム200を備えている。この減速/加速システム200は、質量選択されたイオンビームを受け入れるためにスロット202と、上述した補正装置と同様の補正装置204と含んでいる。さらに、減速/加速システム200は、減速/加速要素206を含んでいる。減速/加速要素206は、下流の集束要素208から分離され、集束要素208との間にギャップ210を形成している。イオン注入システム10について上述したように、減速/加速要素206は、2つの反対電圧の等ポテンシャル電極部206a,206bを含み、同等ポテンシャル電極部206a,206bの間にはイオンビームの通路となるスロットを形成している。この具体例では、電極部206aと206bは、上下端で接続され、長方形の電極を形成している。同様に、集束要素208は、2つの反対電圧の等ポテンシャル電極部208a,208bを含み、同等ポテンシャル電極部208a,208bの間にはイオンビームの通路となるスロットを形成している。
減速/加速要素206と集束要素208との間に電圧差を適用することにより、ギャップ領域210に電界を生じさせ、イオンビームを減速又は加速させる。この具体例では、減速モードでの稼働中において、減速/加速要素206と集束要素208との間に生じさせた電圧差がギャップ210を通過するイオンビームを減速させることができ、その減速比は少なくとも2である。なお、減速比は、概ね5〜100の範囲である。一例として、このような減速比率を実現するためには、減速/加速要素206の電極部206aと206bに約−60kVから−5kVの範囲の電圧を印加させ、また、集束要素208の電極部208aと208bに約0Vから−30kV(マイナス30kV)の範囲の電圧を印加させる。
この具体例では、3つの電極対(214、216と218)から構成される静電偏向器212(以下、E−bend212とも呼ぶ)は、集束要素208の下流に配置され、イオンビームを受け入れて、偏向させる。イオンビーム中に電気的に中性の種(中性の原子や分子)が含まれているとしても、これらは静電偏向器に進入したときのまま、それまでの伝搬方向に向かってそのまま進み、偏向されることはない。前の実施例と同様、この静電偏向器は、約10度〜約90度の範囲の角度(例えば、22.5度)、にイオンビームを偏向させることが可能である。
第1電極対214は、互いに離れて配置される内側電極214bと外側電極214aとを備え、その間をイオンビームの通路としている。第2電極対216も、互いに離れて配置される内側電極216bと外側電極216aを備え、その間をイオンビームの通路としている。同様に、末端電極対218も、互いに離れて配置される内側電極218bと外側電極218aを備え、その間をイオンビームの通路としている。
第2電極対の各々の電極は、第1電極対と末端電極対の電極と比較すると、イオンビームの最大偏向角度(例えば、5度〜45度の範囲)の半分の角度で配置されている。
このように、本実施例の静電偏向器は、減速システムの下流に配置されて上記減速されたビーム受け入れ、その間にイオンビームの通路形成するように互いに離れて配置された内側電極と外側電極とを有する第1電極対と、上記第1電極対の下流に配置され、その間にイオンビームの通路形成するように互いに離れて配置された内側電極と外側電極とを有する第2電極対と、上記第2電極対の下流に配置され、その間にイオンビームの通路形成するように互いに離れて配置された内側電極と外側電極とを有する末端電極対とを備えている。
以下により詳細に説明するように、第1電極対214の電極の電圧は、第2電極対216の電極が保持される電圧よりも低い電圧に保持される。さらに、末端電極対218の電極の各々は、第2電極対216のいずれの電極よりも低い電圧に保持される。さらに、本実施例では、イオンビームは正に荷電されたイオンを含んでおり、各電極対の内側電極は、対となる対応する外側電極よりも低い電圧に保持され、電極間のスペースを通過するイオンビームを曲げる電界を作り出している。言い換えると、内側電極214bは外側電極214aより低い電圧に保持され、内側電極216bは外側の電極216aより低い電圧に保持され、そして、内側電極218bは外側の電極218aより低い電圧に保持される。
このように、上記末端電極対の電極の各々は上記第2電極対のいずれの電極が保持される電圧よりも低く保持され、上記第1電極対の電極の各々は上記第2電極対の電極と比較してより低い電圧に保持され、また、上記第1電極対と上記第2電極対と上記末端電極対の各々の内側電極がその電極対の各々の外側の電極が保持される電圧より低い電圧に保持されている。
より具体的には、図11Bを参照すると、本実施例において、第1電極対214の外側電極214aと末端電極対218の外側電極218aは同じ電圧(V1)に保持され、第1電極対214の内側電極214bと末端電極対218の内側電極218bは同じ電圧(V2)に保持される。電圧V2は電圧V1より低い。例えば、電圧V2は−25kVであり、電圧V1は−15kVとなる。さらに、第2電極対216の内側電極216bは電気的に接地され第2電極対の外側電極216aは電圧V3に保持される。ここにおいて、電圧V3は電圧V1と電圧V2の各々より高い。
一例として、電圧V1は、約0V(ゼロボルト)から−20kVまでの範囲となり、電圧V2は約0V(ゼロボルト)から−30kVまで範囲になる。さらに、電圧V3は、約0から+30kVの範囲になる。
図11Dを参照すると、本実施例において、電圧源221は電圧V1を電極214aと218aに印加し、電圧源223は電圧V2を電極214bと218bに印加し、そして、電圧源225は電圧V3を電極216aに印加する。他の実施例においては、この電圧源は各電極に異なるパターンの電圧を印加させることも可能である。制御器227は、各電極に所望の電圧を印加させるために、各電圧源を制御することができる。
このように、上記電極対の各々は独立して電圧を印加させることを可能としている。
ここにおいて説明されるように、イオンビームラインにおける減速システムの下流側で使用される場合、この3つの電極対(214、216と218)の配置により有利な点を提供することができる。特に、この減速システムが高い減速比率(例えば、減速比率が約2より大きい場合)を提供するために稼働されるとき、イオンビームが減速ギャップ(例えば、上述したギャップ210)を通過するときに強力な集束作用を受ける。このような強力な集束化は過剰集束ビームを作り出す。過剰集束ビームは下流側の静電偏向器を通過するときに顕著な発散(ブローアップ)を生じさせ、湾曲路または他の下流側部品の電極に衝突してしまうことになる。
静電偏向器としてセグメント化された電極対214、216と218を使用することにより、この問題を軽減することができる。より詳しくは、セグメント化された電極対214、216と218は、この減速システムによる強力なビームの集束により生じる高発散にとって強力な集束力を示すことができる。これにより、ビームは静電偏向器から確実に出ることができる。そして、ビームは、顕著な、あるいは好ましくは全くイオンを損失することなく、偏向器の電極、あるいは下流のパーツに向かい、下流のウェーハに到達することができる。例えば、第1と第2電極対の間のギャップ213に入るときに、イオンビームは焦点をぼかされている(ぼかすとは、集束化の反対の作用を意味する。以下、同様。)とする。イオンビームは、第2電極対216の間のスペースと、第2電極対216と末端電極対の間のギャップ215に入るとき、このイオンビームは強い集束化力を体験するが、いくつかのケースでは、ビームは小さいながらもぼかそうとする力をギャップ215で受けることがある。
更なる具体例として、図12Aは、減速システムと、下流の2本の間を空けた電極で形成された従来の静電偏向器とを通過するイオンビームの経路の理論的なシミュレーションを表している。具体的には、このシミュレーションでは、減速システムは2つの電極対1200と1201を含んでおり、電極対1200は−29.5kVの電圧に維持され、電極対1201は−5kVの電圧に維持されている。さらに、静電偏向器の内側電極1202は−0.75kVの電圧に維持され、静電偏向器の外側電極1203は−0.47kVの電圧に維持されている。さらに、この減速システムに進入してくるビームは、30keVのエネルギーで正に荷電するイオンを含んでいるものとする。この減速システムを通過するイオンビームの経路により、ビームのエネルギーを0.5keVまで下げた。言い換えると、この減速システムは、減速比率60を示した。
このシミュレーション結果は、この高い減速比率が焦点Aにおいてビームの過剰集束となっており、これによりビームがクロスオーバーを示し、それゆえに、十分に速く発散し、下流の部品と同様に、静電偏向器の末端部で外側電極に突き当たることとなる。
対照的に、図12Bは、下流の3対の離れた電極対を実装された静電偏向器を下流にもつ減速システムを通過するイオンビームの経路の理論的なシミュレーションを表している。先のシミュレーションと同様、この減速システムは、各々−29.5kVと−5.5kVの電圧に保持される2つの電極対1200と1201から構成されている。
このシミュレーションでは、静電偏向器は上述した態様で3つの電極対1204、1205と1206を採用することによって実装されており、第1の電極対と末端電極対1204と1206の内側電極は−0.75kVの電圧に保持され、外側電極は−0.68kVの電圧に保持されている。また、第2電極対の内側電極は接地され、外側電極は+0.73kVの電圧に保持されている。
先のシミュレーションと同様、30keVのエネルギー備えたイオンビームはこの減速システムに進入し、低下した0.5keVのエネルギーの状態でこの減速システムから出た(60の減速比率と一致する)。高い減速比率によりイオンビームの過剰集束となり、それゆえ静電偏向器に入って発散が生じるのは先のシミュレーションと同様であるけれども、この例の静電偏向器は発散を修正し、ビームがイオン損失なく、下流側部品と同様にこの湾曲路を出て、確実に湾曲路の電極や下流側部品に向かうことができるようにしている。
上で示したように、3つの電極対を使用して実装される静電偏向器のもう一つの長所は、大電流イオンビームの集束化に役立つということである。高電圧が湾曲路の電極に印加される静電偏向器においては、典型的に湾曲路内における背景電子不足という課題がある。そのような電子の欠乏は、ビームのブローアップを抑制するビームの荷電中性化を困難にする。
特に、従来の静電偏向器においては、ブローアップの問題が高エネルギービーム、例えば、約30keVを超える高エネルギーにおいて指摘されていた。十分な集束パワーを備えた静電偏向器に供給するのに必要な大電流ビームの電圧は非常に高いものである(例えば、−30kVから−60kVまで)。
例えば、図13Aは、従来の静電偏向器1300を通過する30keVのエネルギーと25mAの電流のイオンビームのシミュレーションを示している。この静電偏向器1300では、内側電極1300aは−25kVの電圧に維持され、外側電極1300bは−12kVの電圧に維持されている。下流のウェーハ上でのビームの幅は、169mmであった。シミュレーション結果は、ビーム・ブローアップにより下流のウェーハ上でビーム・スポットの拡張と同様のイオン損失が生じるに至った。これにより、ウェーハに対するオーバースキャンが必要となるし、プロセス・スループットの低減を招く。
対照的に、図13Bは、本発明による静電偏向器を通過する30keVのエネルギーと25mAの電流のイオンビームのシミュレーションを示している。この静電偏向器は、3つの電極対1302、1304と1306から構成され、ここにおいて電極対1302と1306の内側電極は−25kVの電圧に保持され、これと対となる外側電極は−13.65kVの電圧に保持されている。電極対1304の内側電極は接地され、その外側電極は+16kVの電圧に保持されている。このシミュレーション結果は、3つの別々の電極対から成る静電偏向器によりビーム・ブローアップを防ぎ、イオン損失なしで湾曲路と下流の部品を通過するためにビームを可能にすることを示す。
再び図11A、11Bと11Cを参照すると、本実施例では、電極218aは、内側電極218bの下流側に配置された内側電極部219を有しており、その内側電極部219は電気的には絶縁されている(例えば、ギャップを介することによる)。
この具体例において、内側電極部219は、上下端で電極218aの外側電極部分に対して結合しており、完全な長方形の出口電極を形成している。この出口電極はビームのリボン形状を維持するために静電偏向器の出口でのリボン・ビームの縁部のまわりにほぼ均一な電圧空間を形成する。このイオン注入システム1100は、もう一つのオプションの補正装置220を更に含んでいて、この補正装置220は静電偏向器の下流に配置されてイオンビームの縦方向に沿う次元軸での電流密度の調整を行っている(非分散平面において)。もう一つの集束要素222も、第2の補正装置の下流側にオプション的に配置されている。
このイオン注入システムは、電気的に接地されるダクト224を形成する電極部224aと224bを更に含んでおり、電極部224aと224bは互いに対面して配置され、接地されている。イオンビームはこのダクト224を通過して、ウェーハ228がイオンビームに照射されるよう保持されているエンドステーション226に入ることになる。
ところで、3つの別々の電極対から成る静電偏向器を使用することは、リボン・ビームが使用されるイオン注入システムに限られない。むしろ、そのような静電偏向器は、円形のビームを使用する他のイオン注入システムにおける減速システムの下流において利用されることも可能である。
本発明のもう一つの側面は、イオン注入システムにおける静電偏向器の下流に配置される出口レンズとしてのスプリットレンズへの使用である。
一例として、図14Aと14Bは、注入システム300の部分的な概略図である。上述した注入システム10と同様に同様で、この注入システム300は、上流の質量分析器(図示せず)からの質量選択されたイオンビームを受け入れる開口302を備えている。イオン注入システム300は、補正装置304と、この補正装置304の下流に配置される減速/加速システム306と、この減速/加速システムの下流側に配置された静電偏向器308を備えている。この実施例では、静電偏向器は湾曲した外側電極308aと湾曲した内側電極308bを備えており、これらの電極に電圧差を生じさせることでそれらの間に電界を発生させ、電極間を通過するイオンビームを屈曲させる。
上記のイオン注入システム10とは異なり、この実施例においては、スプリットレンズ310が静電偏向器308の下流側に配置されている。
スプリットレンズ310は電極対312と電極対314を備え、電極対312は湾曲した下流側端面312aを有し、電極対314は湾曲した上流側端面314aを有している。
電極対の2つの湾曲した端面は、その間の湾曲した隙間316によって互いに隔離されている。
所定の実装例では、レンズ312と314の各々の湾曲した末端面は、約250mm〜約1000mmの範囲で、その曲率半径(例えば、電極対312についてはR1と示されている)によって特性が決定される。
電極対312と314は、独立して異なる電圧にバイアスすることが可能である。
例えば、電圧V1を電極対312に印加し、異なる電圧V2を電極対314に印加することが可能である。仮に、電圧V1と電圧V2として、
電圧V1>電圧V2
となるように選択した場合、垂直方向にぼかす強力なレンズが形成される。他方、
電圧V1<電圧V2
ならば、垂直方向に集束させる強力なレンズが形成される。
一例として、電圧V1と電圧V2は、約0Vから約−20kVまでの範囲になる。
所定の実装例では、静電偏向器の電極が高い電圧に保持される場合でも、電圧V1と電圧V2についてはほぼ接地電圧(例えば、約0Vから約−5kVの範囲)に近くなるように選択することも可能である。
このようにすることで、イオン注入システムを減速モードで運転するときに、エネルギー汚染を少なく、好ましくは除去するのに役立つ。
このように、このスプリットレンズは、湾曲した下流側端面を有する第1電極対と、湾曲した上流側端面を有する第2電極対とを備え、上記第1電極対および第2電極対が各々独立して電圧を印加できるようになっており、2つのこれらの電極対の上記端面は、互いに分かれてその間でギャップを形成している。
また、上記第1電極対および第2電極対は、上記スプリットレンズを通過するイオンビームを集束化するための電界を上記ギャップに生成させるように電圧を印加されている。
より詳しくは、静電偏向器の下流でスプリットレンズではなく通常のレンズが採用される場合において、高エネルギー・イオンビーム(例えば、約30keVから60keVの範囲のエネルギーを有するイオンビーム)に縦方向の集束力を提供するためにはレンズの電極への高電圧の印加が必要になることがある。そのような高電圧は、レンズを通過するビームの一時的なエネルギーの増加を生じさせることがある。すると、レンズを通過している間、特定のイオンに電荷交換反応を受けさせることになり得る。このような電荷交換反応により中性の原子/分子を形成することがある。この中性の原子/分子は下流のウェーハに注入される。レンズは一般的にはウェーハを基準として見通し線上に配置されるからである。さらに、レンズの電極への高電圧の印加はアーク放電を生じさせるので、ビームの一時的な不安定状態を生じさせる。
上記のレンズ310のようなスプリットレンズは、中性の原子/分子の生成によるビーム汚染と同様にアーク放電によるビームの不安定性を低減させ、好ましくは除去しながら、さらに、静電偏向器における縦方向の集束化能力を向上させることもできる。例えば、非常に低いレンズ電圧であるときに、イオンビームの縦方向の集束化とぼけさせることを可能にする場合、スプリットレンズの電極の末端面の曲率半径は、十分に小さくなる(ビーム高さに依存して約250mmから約500mmの範囲であり、例えば、高さ300mmのビームであれば、曲率半径は約450mmである)。一例として、60keVのビームのために、電圧V1は約−10kVとなり、電圧V2は0Vとなる。これは、従来のレンズを利用したシステムにおいて同様の集束効果を達成するのに要求される電圧よりも十分に低い。
続く図14Aと14Bを参照すると、オプションとして、補正装置317がスプリットレンズ310の下流に配置され、イオンビームの縦方向軸における電流密度を調整するようにしてもよい(非分散平面において)。もう一つの集束要素318は、オプションとして、第2の補正装置の下流に配置しても良い。イオン注入システムは、電気的に接地されたダクトを形成する接地された電極320を更に備えている。イオンビームはこのダクトを通過し、イオンビームの照射のためにウェーハが保持されるエンド・ステーション(図示せず)に入る。
スプリットレンズ310を利用するもう一つの長所は、補正装置317の直後で空間電荷中性化が起きることを許容する点である。対照的に、スプリットレンズ310ではなく、従来のレンズ(例えばレンズ318)が利用されるシステムでは、空間電荷中性化されたビームトランスポートの開始位置は、接地されたダクト電極320の奥深くへと移動し、それによって高電流でのビーム・ブローアップを引き起こしてしまうことがある。
本発明のスプリットレンズ、例えば上記のスプリットレンズ310は、上述した静電偏向器212のような、3つの電極対を備える静電偏向器の下流に採用することが可能である。
一例として、図15はそのようなイオン注入システム400の部分的な概略図を示している。イオン注入システム400は、イオンビームを受け入れるためのスリット402と、補正装置404と、減速/加速システム406と、3つの分離電極対を備える静電偏向器408と、スプリットレンズ410と、もう一つの補正装置412と、集束電極414と、ウェーハが保持されるエンドステーションにビームの入り口としてのダクトを提供する接地された電極416とを備えている。この静電偏向器408の電極に印加される電圧は、静電偏向器212に関して上述した範囲と同様である。
なお、本発明は、静電偏向器を備えるイオン注入システムにおいて適用可能であり、減速システムの有無を問わない。従って、イオンビームを偏向させる静電偏向器を備えるイオン注入システムであって、その間にイオンビームの通路形成するように互いに離れて配置された内側電極と外側電極とを有する第1電極対と、上記第1電極対の下流に配置され、その間にイオンビームの通路形成するように互いに離れて配置された内側電極と外側電極とを有する第2電極対と、上記第2電極対の下流に配置され、その間にイオンビームの通路形成するように互いに離れて配置された内側電極と外側電極とを有する末端電極対とを備え、さらに、上記末端電極対の電極の各々は上記第2電極対のいずれの電極が保持される電圧よりも低く保持され、上記第1電極対の電極の各々は上記第2電極対の電極と比較してより低い電圧に保持され、また、上記第1電極対と上記第2電極対と上記末端電極対の各々の内側電極がその電極対の各々の外側の電極が保持される電圧より低い電圧に保持されるイオン注入システムとして発明を把握することができる。
また、静電偏向器は、第1電極対と、第2電極対と、末端電極対とを備えているが、これら以外の電極対を備えているものを排除する意図はない。また、これら以外の要素、例えばレンズなどが介在していても良い。特に、各々の電極対同士の間のギャップにより機能要素を発揮するようにしても良い。
本技術の通常の能力を有する当事者であれば、本発明のスコープから外れることなく、さまざまなバリエーションが可能であることを理解できるはずである。