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JP6428829B2 - ベアリングの交換時期判定方法 - Google Patents
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JP6428829B2 - ベアリングの交換時期判定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ベアリングの交換時期判定方法に関し、特に、高圧酸浸出(High Pressure Acid Leach)法で利用するオートクレーブ装置の攪拌機に設けられるベアリングの寿命管理に適用して好適なベアリングの交換時期判定方法に関する。
ニッケル酸化鉱石は、ニッケル含有率が低いなどの理由により、ニッケル資源としての利用は困難とされていた。しかし、高圧酸浸出技術を利用した湿式製錬方法が開発された結果、たとえば、ニッケル・コバルト混合硫化物(ニッケル品位を60質量%程度)を経済的に生産できるようになった(たとえば、特許文献1参照)。
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法としては、オートクレーブ装置を利用した高圧酸浸出法が知られている。高圧酸浸出法は、たとえば次のような手順を経て行われる。
まず、固形分として40質量%程度、固形分の粒径として1.4mm以下程度として鉱石スラリーを作製する(たとえば、特許文献2参照)。次に、得られた鉱石スラリーを昇温昇圧してオートクレーブ装置に供給する。オートクレーブ装置では、高温高圧下(たとえば、温度250℃程度、圧力3.5〜4.0MPaG)で鉱石スラリーに硫酸を添加して攪拌することにより、有価金属成分(ニッケル、コバルト)を含む浸出スラリーを得る。次に、常温高圧に戻して浸出残渣などの不要物を除去することにより、ニッケル・コバルト混合硫化物からなる浸出液を得る。
高圧酸浸出法で用いるオートクレーブ装置は、鉱石スラリーを攪拌するための攪拌機を備えており、この攪拌機を高温高圧下で運転する。攪拌機は、回転軸に取り付けられた攪拌翼をモータ等の駆動力により回転させるものである。攪拌機の回転軸は、ベアリング(軸受)によって回転自在に支持されている。
攪拌機のベアリングは、回転する回転軸を支持しつつ、回転軸から受ける荷重を保持する。このため、攪拌機のベアリングには、ラジアル/アキシャル方向の荷重保持並びに回転軸の支持のために、円錐ころ軸受や複列円錐ころ軸受が用いられている。このようなベアリングにおいて、内輪および外輪の軌道面、あるいは転動体の転がり面には、長時間にわたって繰り返し圧縮応力が加わることでピーリングが生じる。ピーリングとは、転がり軸受の運転時において、潤滑油の粘度が低下して油膜切れが生じた場合、あるいは潤滑油が不足した場合に、軌道部材と転動体とが金属どうしで直接接触し、各々の表面に微小な剥離や亀裂が発生する現象である。ピーリングが進行すれば摩耗や大きな剥離に至る。このため、ピーリングが発生した状態でベアリングの使用を継続すると、転動体の変形や保持器の破損などを招き、最終的には攪拌機を回転できなくなるなどの異常が発生する。
攪拌機の回転異常が発生すると、オートクレーブ装置の管理者は、攪拌機のベアリングが寿命に至ったと判断する。その場合は、オートクレーブ装置を含むプラントの操業を停止してベアリングを交換する必要がある。このため、操業効率が低下するだけでなく交換部品に要するコストも無視できないものとなる。
ベアリングの交換を行う場合は、それに先立って、操業停止のための作業である、減圧/降温が必要となる。また、ベアリングの交換を終えた後は、オートクレーブ装置を立ち上げるための昇圧/昇温が必要となる。このため、オートクレーブ装置の停止作業、ベアリングの交換、オートクレーブ装置の立ち上げを含む一連の作業には、おおむね28時間以上を要し、操業に対する影響が大きかった。
ここで、ベアリングに関する技術として、たとえば、特許文献3には、ベアリングの微小振動を検出する振動測定端子付きベアリングが記載されている。また、特許文献4には、軸受内に封入された潤滑剤の混入物などによる劣化状態を検出する軸受の潤滑剤劣化検出装置に関し、軸受内の潤滑剤を排出する排出経路に、潤滑剤検出センサ(光学式異物量センサ、鉄粉検出センサ、水分検出センサ等)を設ける技術が記載されている。
特開2005−350766号公報 特開2009−173967号公報 特開平6−17826号公報 特開2008−139188号公報
しかしながら、特許文献3に記載の技術では、攪拌機の回転速度が低く、ベアリングの振動が小さい場合に、ベアリング固定部品がその振動を吸収してしまうおそれがある。このため、ベアリングの回転異常につながる微小振動が発生しても、これを的確に検出することが難しくなる。その結果、ベアリングの寿命管理を適切に行えず、プラント停止期間でも補修の要否を判断できないおそれがある。
一方、特許文献4に記載の技術は、潤滑剤の劣化状態を検出することだけに着目しており、その検出結果を軸受自体の寿命管理にどのように反映させるのかといった具体的な対応は開示されていない。
本発明の主な目的は、ベアリングの寿命管理を適切に行い、攪拌機の突発的な停止の回数を低減することができる技術を提供することにある。
(第1の態様)
本発明の第1の態様は、
ベアリングにおけるグリース中の鉄粉濃度とそのベアリングの寿命との関係を示す情報を取得する取得段階と、
攪拌機で使用中のベアリングを診断対象とし、前記診断対象のベアリングにおけるグリース中の鉄粉濃度を測定する測定段階と、
前記測定段階で得られた前記鉄粉濃度の測定値と、前記取得段階で得られた情報とを用いて、前記診断対象のベアリングの交換時期を判定する判定段階と、
を含むベアリングの交換時期判定方法である。
(第2の態様)
本発明の第2の態様は、
加熱および加圧された原料スラリーと硫酸を複数の区画室でそれぞれ攪拌機により攪拌するとともに、上流側の区画室から下流側の区画室へと順にスラリーを移送して有価金属の浸出を進行させる高圧酸浸出方法に用いられるオートクレーブ装置に適用するベアリングの交換時期判定方法であって、
前記オートクレーブ装置は、前記複数の区画室に対応する複数の攪拌機を備えるとともに、各々の攪拌機がベアリングを有しており、
前記ベアリングにおけるグリース中の鉄粉濃度とそのベアリングの寿命との関係を示す情報を前記攪拌機ごとに取得する取得段階と、
前記複数の攪拌機のうち少なくともいずれか1つの攪拌機で使用中のベアリングを診断対象とし、前記診断対象のベアリングにおけるグリース中の鉄粉濃度を測定する測定段階と、
前記取得段階で得られた情報に基づいて、ベアリング交換時期の判定基準となる鉄粉濃度閾値を前記攪拌機ごとに設定する設定段階と、
前記測定段階で得られた前記鉄粉濃度の測定値と、前記診断対象のベアリングを有する前記攪拌機に対応して設定された前記鉄粉濃度閾値とに基づいて、前記診断対象のベアリングの交換時期を判定する判定段階と、
を含むベアリングの交換時期判定方法である。
本発明によれば、ベアリングの寿命管理を適切に行い、攪拌機の突発的な停止の回数を低減することができる。
硫酸を用いた高圧酸浸出法の一例として、ニッケル・コバルト混合硫化物を得るための高圧酸浸出法を示す工程図である。 浸出工程で使用されるオートクレーブ装置の概略構成を示す図であり、(a)はオートクレーブ装置を水平に切断して内部構造を模式的に示した横断平面図、(b)はオートクレーブ装置を垂直に切断して内部構造を模式的に示した縦断側面図であり、(c)はオートクレーブ装置を(a)のA−A線の位置で垂直に切断して内部構造を模式的に示した縦断正面図である。 オートクレーブ装置の攪拌機が備えるベアリングユニットの構成を示す縦断面図である。 本発明の実施形態に係るベアリングの交換時期判定方法を示すフローチャートである。 グリース中の鉄粉濃度とベアリングのピーリング数の関係を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の実施形態においては、次の順序で説明を行う。
1.高圧酸浸出法
2.オートクレーブ装置
3.ベアリングユニット
4.発明者の知見
5.ベアリングの交換時期判定方法
5−1.取得段階
5−2.測定段階
5−3.判定段階
6.実施形態の効果
7.実施例
8.他の実施形態
<1.高圧酸浸出法>
図1は硫酸を用いた高圧酸浸出法の一例として、ニッケル・コバルト混合硫化物を得るための高圧酸浸出法を示す工程図である。この高圧酸浸出法は、前処理工程S1と、浸出工程S2と、固液分離工程S3と、中和工程S4と、脱亜鉛工程S5と、硫化工程S6と、無害化工程S7とを含む。
前処理工程S1では、粉砕設備および篩別設備を用いて、ニッケル酸化鉱石を解砕分級することにより、2mm以下の鉱石とし、この鉱石を含む所定のスラリー濃度の原料スラリーを調製する。原料スラリーは、次の浸出工程S2に供給する。
浸出工程S2では、前処理工程S1で得られた原料スラリーをプレヒーター(昇温昇圧設備)で段階的に昇温および昇圧した後、オートクレーブ装置に供給する。オートクレーブ装置では、同様に昇温および昇圧した硫酸を原料スラリーに添加し、220〜280℃で撹拌して有価金属を浸出する。これにより、浸出スラリーが得られるため、この浸出スラリーをフラッシュベッセルで常温常圧まで降温降圧する。
固液分離工程S3では、浸出工程S2で得られた有価金属の浸出スラリーを固液分離して、有価金属としてニッケルおよびコバルトを含む浸出液(粗硫酸ニッケル水溶液)と浸出残渣とを得る。
中和工程S4では、固液分離工程S3で得られた浸出液を中和する。
脱亜鉛工程S5では、中和工程S4で中和した浸出液に硫化水素ガスを添加して亜鉛を硫化亜鉛として沈殿除去する。
硫化工程S6では、脱亜鉛工程S5で得られた脱亜鉛終液に硫化水素ガスを添加してニッケル・コバルト複合硫化物とニッケル貧液を得る。
無害化工程S7では、固液分離工程S3で発生した浸出残渣と、硫化工程S6で発生した貧液とを無害化する。
ここで、浸出工程S2で用いるオートクレーブ装置では、原料スラリーとなる鉱石スラリーと硫酸を複数の区画室でそれぞれ攪拌機により攪拌するとともに、上流側の区画室から下流側の区画室へと順にスラリーを移送して有価金属の浸出を進行させる。また、ニッケル・コバルト混合硫化物を得るための高圧酸浸出法では、ニッケル酸化鉱石の鉱石スラリーからなる原料スラリーを加熱および加圧してオートクレーブ装置に供給する。
<2.オートクレーブ装置>
図2は浸出工程で使用されるオートクレーブ装置の概略構成を示す図であり、(a)はオートクレーブ装置を水平に切断して内部構造を模式的に示した横断平面図、(b)はオートクレーブ装置を垂直に切断して内部構造を模式的に示した縦断側面図であり、(c)はオートクレーブ装置を(a)のA−A線の位置で垂直に切断して内部構造を模式的に示した縦断正面図である。
図示したオートクレーブ装置100は、加熱および加圧された原料スラリーと硫酸を撹拌して有価金属を浸出する上記浸出工程S2で使用されるもので、水平に設置された円筒型のオートクレーブ本体110を備える。オートクレーブ本体110は、複数の隔壁10(10A〜10F)を備え、これらの隔壁10によってオートクレーブ本体110の内部が複数の区画室20(20A〜20G)に区画されている。
オートクレーブ本体110の各区画室20(20A〜20G)には、撹拌機30(30A〜30G)が設置されている。攪拌機30の回転速度は、たとえば、72rpmに設定される。
最上流の区画室20Aには、2本の原料スラリー供給管1A,1Bと、2本の硫酸供給管2A,2Bと、高圧蒸気供給管3が接続されている。また、区画室20Aに隣接する区画室20Bには、硫酸供給管4が接続されている。
最下流の区画室20Gに隣接する区画室20Fには、安全弁ベント用配管5が接続されている。また、最下流の区画室20Gには、ガス圧力調整ベント用配管6と、スラリー抜き取り用配管7と、予備配管8が接続されている。
また、最上流の区画室20Aには、マンホール41が設けられている。マンホール41は、隔壁10Aの近傍の床壁部分に配置されるとともに、図示しない開閉蓋によって閉じられている。また、下流側の区画室20Fにはマンホール42が設けられ、最下流の区画室20Gにもマンホール43が設けられている。マンホール42は、隔壁10Fの近傍の床壁部分に配置されるとともに、図示しない開閉蓋によって閉じられている。マンホール43は、隔壁10Fの近傍の天井部分に配置されるとともに、図示しない開閉蓋によって閉じられている。
さらに、オートクレーブ本体110には、スラリー移送用の通液口52(52A〜52F)が設けられている。
上記構成からなるオートクレーブ装置100においては、最上流の区画室20Aに対し、原料スラリー供給管1A,1Bと硫酸供給管2A,2Bを通して原料スラリーと硫酸が供給される。また、区画室20Aには、高圧蒸気供給管3を通して高圧蒸気が供給され、区画室20Bには、硫酸供給管4を通して硫酸が供給される。
これにより、オートクレーブ本体110内では、最上流の区画室20Aから最下流の区画室20Bに向かってスラリーが順に移送される。このとき、各々の区画室20(20A〜20G)の間では、隔壁10(10A〜10F)の下部に設けられた通液口52(52A〜52F)を通してスラリーが供給される一方、隔壁10(10A〜10F)の上部からのオーバーフローによってスラリーが供給される。スラリーのオーバーフロー量は、図2(c)に示す調整堰板11Cとノッチ部12Cによって調整される。
また、各々の区画室20(20A〜20G)では、撹拌機30(30A〜30G)がそれぞれ時計回りに回転することにより、スラリーの下降流を形成する。これにより、各々の区画室20(20A〜20G)に供給されるスラリーが撹拌機30(30A〜30G)によって攪拌される。その結果、最上流の区画室20Aから最下流の区画室20Gへとスラリーを順に移送する過程で、攪拌機30(30A〜30G)によりスラリーが攪拌され、有価金属の浸出が進行する。
<3.ベアリングユニット>
続いて、オートクレーブ装置100の攪拌機30が備えるベアリングユニットの構成について、図3を用いて説明する。
攪拌機30の回転軸31の上端部には、ベアリングユニット33が取り付けられている。回転軸31の上端部は、オートクレーブ本体110の上壁110Aよりも上方に突出し、この突出部分にメカニカルシール32とベアリングユニット33が取り付けられている。メカニカルシール32は、オートクレーブ本体110の内圧を保つために設けられたもので、オートクレーブ本体110内の高温高圧に対して充分な耐性を有する。
ベアリングユニット33は、攪拌機30の回転軸31を回転自在に支持するとともに、攪拌機30の荷重を保持するものである。ベアリングユニット33は、メカニカルシール32の上に配置されている。ベアリングユニット33は、回転軸31の方向(アキシャル方向)に作用するアキシャル荷重と、回転軸31と直交する方向(ラジアル方向)に作用するラジアル荷重を保持するために、たとえば3つのベアリングを用いて構成されている。
3つのベアリングは、それぞれ円錐ころ軸受を用いて構成される。具体的には、たとえば、1つのスラスト自動調心ころ軸受と、2つの自動調心ころ軸受の組み合わせによって構成される。その場合、2つの自動調心ころ軸受は、回転軸31の方向において、1つのスラスト自動調心ころ軸受を挟むように配置される。なお、図中の二点鎖線は、歯車箱を取り付けるための歯車箱台座34を示している。歯車箱は、図示しないモータ等の回転力を回転軸31に伝達するための歯車を収納するものである。
<4.発明者の知見>
上述のように、オートクレーブ装置100には複数台の攪拌機30(30A〜30G)が取り付けられており、そのうちの1台でも故障が発生すると、攪拌機30の補修のために、プラントの操業を停止する必要がある。このため、攪拌機30が故障する前の適切なタイミングでベアリングを交換する必要がある。
攪拌機30の補修にともなって操業効率が低下する問題は、たとえば、定期的に行われるプラントの点検整備のタイミングに合わせて、攪拌機30のベアリングを含めた部品交換を計画的に行うことで最小化することができる。ただし、点検整備するタイミングまで部品の寿命を維持できなければ、次の点検整備のタイミングを迎える前に、ベアリングの寿命によって突発的にプラントを停止させる必要が生じる。また、定期的な点検整備のタイミングで、すべての攪拌機30のベアリングを交換すれば、プラントの突発的な停止は避けられる。ただし、その場合は次の点検整備のタイミングまで寿命を維持できるベアリングまでも交換することになるため、部品交換費用の増大を招いてしまう。さらに、部品交換費用の増大を避けるために定期的な点検整備期間を延長することは現実的ではない。
また、ベアリングの寿命を使用開始から一定期間、たとえば2年間と定め、この期間に達したベアリングを、点検整備のためのプラント停止中に交換すれば、交換台数を少なく抑えることができる。しかしながら、ベアリングの損傷状態は個々の攪拌機30の運転状態によって異なる。このため、予め定めた期間に達する前にベアリングが破損するおそれがある。したがって、操業停止のリスクを充分に抑えることができない。
本発明者は、ベアリングに用いられるグリース(潤滑剤)について鋭意研究し、グリース中に含まれる鉄粉濃度によってベアリングの寿命を想定できるとの結論に達した。そして、ベアリングへの定期的な給脂にて得られる排出グリースの鉄粉濃度を分析し、ベアリングの交換時期を判定することで上記課題の解決を図ることとした。本発明は、このような発明者の知見に基づいてなされたものである。
<5.ベアリングの交換時期判定方法>
図4は本発明の実施形態に係るベアリングの交換時期判定方法を示すフローチャートである。
このベアリングの交換時期判定方法は、取得段階S11と、測定段階S12と、判定段階S13と、を含む。
(5−1.取得段階)
取得段階S11では、ベアリングにおけるグリース中の鉄粉濃度とそのベアリングの寿命との関係を示す情報を取得する。この情報は、たとえば、寿命に達する前と寿命に達した後のベアリングを複数個ずつ用意し、それぞれのベアリングからグリースを取り出して、グリース中の鉄粉濃度を測定することにより取得する。寿命に達する前のベアリングは、攪拌機で正常に使用中のベアリングを対象にするとよい。また、寿命に達した後のベアリングは、攪拌機で回転異常などが認められ、交換が必要になったベアリングを対象にするとよい。
グリース中の鉄粉濃度(単位:質量%)は、たとえば、磁気バランス式電磁誘導法によって測定することが可能である。グリース中の鉄粉濃度が増加すると、ベアリング内部のピーリング個数が増加する(図5を参照)。これは、ベアリングの使用時間の経過とともに、ベアリングの外輪、内輪、転動体等の表面が摩耗し、そこから剥離した鉄粉がグリース中に混入するからである。グリース中に混入した鉄粉は異物となって、ピーリングを更に引き起こすものと考えられる。ピーリングの発生によりグリース中の鉄粉濃度が増加していくと、ある段階でベアリングの破損に至る。
ベアリングの寿命に関しては、たとえば、ベアリング内部の損傷などに起因した回転異常の発生が認められる場合、あるいは回転異常に至る前の、フレーキングの発生が認められる場合に、寿命に達したと判断することが可能である。ベアリング内部の損傷としては、たとえば、外輪あるいは保持器の破損などが考えられる。フレーキングとは、ベアリングの内輪または外輪の軌道面、あるいは転動体の転動面がうろこ状に剥離する現象をいう。フレーキングの発生は、以下に記述するベアリングの点検により、ベアリングを分解して軌道面、転動面の表面を観察することにより確認することが可能である。
(ベアリングの点検)
ベアリングの点検は、たとえば、次のような手順で行う。まず、攪拌機の回転軸からベアリングを取り外し、調査のため、グリースを採取した後、ベアリングを洗浄する。洗浄剤としては、一般的に、軽油や白灯油が使用される。取り外したベアリングの洗浄は、粗洗浄と仕上げ洗浄に分けて行う。それぞれの洗浄用容器には、金網製の上げ底を設けておき、ベアリングが直接、洗浄用容器のごみに触れないようにする。粗洗浄のときは、異物などが付いたまま軸受を回転させると転動面にキズを付けることがあるので、注意して行う。粗洗浄の油中ではブラシを使うなどしてグリースや付着物を落し、おおむね、きれいになってから、仕上げ洗浄に移る。仕上げ洗浄は、ベアリングを洗浄剤中(油中)で回転しながら、ていねいに行う。
仕上げ洗浄を終えた後は、外観検査にてベアリングの外観を確認する。外観検査では、ベアリングの軌道面、転動面、はめあい面の状態、保持器の摩耗状態、軸受内部の隙間の増加、寸法精度の低下など、ベアリングの損傷や異常の有無を注意深く点検する。なお、点検の対象となるベアリングが円錐ころ軸受などの分離形軸受の場合は、転動体や外輪の軌道面を別個に調べる。
(5−2.測定段階)
測定段階S12では、攪拌機で使用中のベアリングを診断対象とし、診断対象のベアリングにおけるグリース中の鉄粉濃度を測定する。その際、診断対象とするベアリングのグリースは、攪拌機からベアリングを取り外すことなく抽出する。具体的には、たとえば、ベアリングの内部に通じる給脂路と排脂路を設けておき、給脂路を通してベアリングに新しいグリースを供給したときに、排脂路へと排出される古いグリースを採取する。これにより、ベアリングのグリースを新しいものに入れ替えることができるとともに、それまで使用していた古いグリースをベアリングから取り出すことができる。こうして抽出したグリース中の鉄粉濃度は、上記取得段階S11と同様の方法で測定する。
(5−3.判定段階)
判定段階S13では、測定段階S12で得られた鉄粉濃度の測定値と、取得段階S11で得られた情報とを用いて、診断対象のベアリングの交換時期を判定する。この判定にあたっては、まず、先の取得段階S11で得られた情報に基づいて、ベアリング交換時期の判定基準となる鉄粉濃度閾値を設定する。鉄粉濃度閾値を設定する設定段階S14は、取得段階S11で上記情報の取得を終えた後、判定段階S13でベアリングの交換時期を判定する前であれば、いずれのタイミングで行ってもよい。なお、図4においては、測定段階S12の後で、かつ判定段階S13の前に、設定段階S14を行う場合を例示している。
(鉄粉濃度閾値の設定)
鉄粉濃度閾値の設定には、取得段階S11で取得した情報を用いる。具体的には、寿命に達する前のベアリングを対象に測定したグリース中の鉄粉濃度(単位は質量%)の最大値を「D1」、寿命に達した後のベアリングを対象に測定したグリース中の鉄粉濃度の最小値を「D2」、ベアリング交換時期の判定基準となる鉄粉濃度閾値を「Dth」とすると、「D1<Dth<D2」の条件を満たすように設定する。
このように、設定段階S14において鉄粉濃度閾値Dthを設定したら、判定段階S13では、測定段階S12で得られた鉄粉濃度の測定値Dmと、鉄粉濃度閾値Dthとを比較する。そして、鉄粉濃度の測定値Dmが鉄粉濃度閾値Dth以上であれば、測定段階S12で診断対象としたベアリングが交換時期になったと判定する。
測定段階S12と判定段階S13は、定期的に行われるプラントの点検整備の繰り返し周期よりも短い周期で行う。たとえば、プラントの点検整備を1年に2回、すなわち6ヶ月ごとに行う場合は、測定段階S12と判定段階S13を、それよりも短い周期、好ましくは2ヶ月周期、より好ましくは1ヶ月周期、さらに好ましくは2週間周期で行うとよい。また、プラントの点検整備期間(6ヶ月)内に、交換時期になったと判定されたベアリングの交換作業は、鉄粉濃度の測定値Dmと鉄粉濃度閾値Dthとの差に応じて、次回の点検整備のタイミングで行ってもよいし、その前のタイミングで行ってもよい。具体的には、鉄粉濃度の測定値Dmと鉄粉濃度閾値Dthとの差が予め設定された所定値よりも大きい場合は、次回の点検整備のタイミングで行い、所定値以下の場合は、それよりも前のタイミング(たとえば、点検整備以外の目的でプラントの操業を停止するタイミング)で行うようにすればよい。
<6.実施形態の効果>
本発明の実施形態によれば、以下に記述する一または複数の効果が得られる。
本発明の実施形態においては、ベアリングにおけるグリース中の鉄粉濃度とそのベアリングの寿命との関係を示す情報と、攪拌機で使用中のベアリングを診断対象として測定したグリース中の鉄粉濃度の測定値とを用いて、診断対象のベアリングの交換時期を決定している。これにより、ベアリングが寿命に至る前の適切なタイミングでベアリング交換を行うことができる。その結果、ベアリングの寿命管理を適切に行い、攪拌機の突発的な停止回数を低減することができる。
<7.実施例>
まず、上記の取得段階S11として、5つのサンプルA,B,C,F,Gについて、ベアリングの使用期間と、グリース中の鉄粉濃度の推移、ベアリングの損傷状況を確認したところ、下記の表1および表2のような結果が得られた。なお、表1および表2に示す情報は、ベアリングにおけるグリース中の鉄粉濃度とそのベアリングの寿命との関係を示す情報に相当する。グリース中の鉄粉濃度の測定には、新コスモス電機株式会社製のグリース鉄粉濃度計(SDM−72)を用いた。
サンプルAのベアリングは、グリース中の鉄粉濃度が交換直後に0.025質量%であったが、使用期間が6ヶ月になると0.081質量%まで上昇し、12ヶ月では0.300質量%となった。使用期間が12ヶ月となったベアリングを分解して軌道面、転動体の表面を観察したところ、損傷レベルがピーリングからフレーキングに発展していた。このため、ベアリングを新品に交換した。
サンプルBのベアリングは、グリース中の鉄粉濃度が交換直後に0.010質量%であり、使用期間が6ヶ月、12ヶ月ではいずれも0.008質量%であった。また、サンプルCのベアリングは、グリース中の鉄粉濃度が交換直後に0.004質量%であり、使用期間が6ヶ月、12ヶ月ではいずれも0.007質量%であった。すなわち、サンプルB,Cのベアリングは、いずれも、使用期間が12ヶ月経過した段階で、グリース中の鉄粉濃度が0.01%以下であった。また、サンプルB,Cのベアリングをそれぞれ分解して軌道面、転動体の表面を観察したところ、ピーリング等の損傷は観察されなかった。
一方、サンプルFのベアリングは、使用期間が7か月となったところで外輪/保持器が破損した。このため、プラントの操業を停止して、新品のベアリングに交換した。その際、使用によって破損したベアリングにおけるグリース中の鉄粉濃度を測定したところ、0.512質量%であった。
サンプルGのベアリングは、使用期間が9か月となったところ外輪/保持器が破損した。このため、プラントの操業を停止して、新品のベアリングに交換した。その際、使用によって破損したベアリングにおけるグリース中の鉄粉濃度を測定したところ、0.600質量%であった。
以上、表1および表2の結果より、グリース中の鉄粉濃度に関し、ベアリング交換時期の判定基準となる鉄粉濃度閾値をDth=0.10質量%に設定した。この設定条件では、上記の測定段階S12で得られた鉄粉濃度の測定値Dmが0.10質量%以上の場合に、診断対象のベアリングが交換時期になったと判定する。
これまでは1年間に1〜4回ほどベアリングの損傷に起因するプラントの突発的な操業停止が発生していた。これに対し、本実施例に係るベアリングの交換時期判定方法に基づいて鉄粉濃度閾値をDth=0.10質量%に設定し、鉄粉濃度が0.10質量%以上となったベアリングを対象に交換を実施したところ、ベアリング損傷による操業停止は発生しなくなった。
なお、本実施例においては、好ましい1つの例として、鉄粉濃度閾値をDth=0.10質量%に設定し、この設定に基づいて、グリース中の鉄粉濃度が0.10質量%以上のベアリングを交換の対象としたが、他の好ましい例として、ベアリング交換時期の判定基準となる鉄粉濃度閾値を、ベアリング交換の緊急性の高低に応じて、0.05質量%と0.20質量%の2段階に設定してもよい。この場合、グリース中の鉄粉濃度が0.05質量%以上のベアリングを交換の対象とするが、その交換時期に関しては、鉄粉濃度が0.20質量%以上のベアリングは、それよりも鉄粉濃度が低いベアリングに比べて早期に交換するように交換時期を決定してもよい。また、たとえば、グリース中の鉄粉濃度が0.05質量%超0.1質量%未満のベアリングと、0.05質量%以下のベアリングで、その後の鉄粉濃度の測定周期を変えてもよい。具体的には、後者のベアリングの測定周期を規定の周期とすると、前者のベアリングの測定周期を規定の周期よりも短くなるように変更してもよい。
<8.他の実施形態>
続いて、上述したベアリングの交換時期判定方法を、高圧酸浸出方法に用いられるオートクレーブ装置に適用する場合の好適な実施形態について説明する。
まず、上記図2に示すように、高圧酸浸出方法に用いられるオートクレーブ装置100は、オートクレーブ本体110の内部が複数の区画室20(20A〜20G)に区分され、各々の区画室20(20A〜20G)ごとに攪拌機30(30A〜30G)が設けられている。このため、ベアリングの寿命を管理すべき攪拌機30(30A〜30G)が複数台存在する。そうした場合、ベアリング交換時期の判定基準となる鉄粉濃度閾値を、複数の攪拌機30(30A〜30G)に対し、すべて同一の値に設定してもかまわないが、より好ましくは、以下に記述する取得段階S11、測定段階S12、判定段階S13および判定段階S14を含むベアリングの交換時期判定方法に基づいて、各々の攪拌機30(30A〜30G)ごとにベアリングの寿命管理を行うのがよい。
まず、取得段階S11では、ベアリングにおけるグリース中の鉄粉濃度とそのベアリングの寿命との関係を示す情報を攪拌機30(30A〜30G)ごとに取得する。また、測定段階S12では、複数の攪拌機30(30A〜30G)のうち少なくともいずれか1つの攪拌機で使用中のベアリングを診断対象とし、診断対象のベアリングにおけるグリース中の鉄粉濃度を測定する。
一方、設定段階S14では、取得段階S11で得られた情報に基づいて鉄粉濃度閾値を攪拌機30(30A〜30G)ごとに設定する。このとき、各々の攪拌機30(30A〜30G)ごとに鉄粉濃度閾値を異なる値に設定してもよい。また、上流側から下流側に向かって攪拌機30(30A〜30G)をグループ分けし、グループごとに鉄粉濃度閾値を異なる値に設定してもよい。また、相対的に上流側に位置する攪拌機30のほうが、下流側に位置する攪拌機30よりも、鉄粉濃度閾値を大きな値または小さな値に設定してもよい。
判定段階S13では、測定段階S12で得られた鉄粉濃度の測定値と、診断対象のベアリングを有する攪拌機に対応して設定された鉄粉濃度閾値とに基づいて、診断対象のベアリングの交換時期を判定する。
このように、各々の攪拌機30(30A〜30G)ごとに鉄粉濃度閾値を個別に設定し、これに従ってベアリングの交換時期を判定することにより、複数の攪拌機30(30A〜30G)にすべて同一の鉄粉濃度閾値を適用する場合に比べ、より適切なタイミングでベアリング交換を行うことができる。その理由は、次のとおりである。
オートクレーブ装置100のオートクレーブ本体110内では、最上流の区画室20Aから最下流の区画室20Gに向かってスラリーが順に移送する。その際、各々の区画室20A〜20Gに設けられた攪拌機30(30A〜30G)の状態や、各々の区画室20A〜20Gに存在するスラリーの状態は、必ずしも同じにならない。具体的には、たとえば、使用する攪拌機30の型式は同じでも、攪拌機30の取付状態や取付精度などが異なる場合がある。また、スラリーは、各々の区画室20A〜20Gで攪拌されながら下流側に移動し、その移動途中で有価金属の浸出が進行するため、その性状(たとえば、粘性など)が変わる場合がある。そうした場合、各々の攪拌機30において、回転軸31を支持するベアリングに作用する荷重の大きさや方向が変わる可能性がある。
ベアリングに作用する荷重の大きさや方向は、ピーリングの発生やピーリング個数の増加速度、ひいてはベアリングの寿命に影響を与える。このため、各々の攪拌機30(30A〜30G)ごとに鉄粉濃度閾値を個別に設定し、この設定に従ってベアリングの交換時期を判定すれば、各々の攪拌機30(30A〜30G)ごとに、より適切なタイミングでベアリング交換を行うことができる。
また、攪拌機30の回転軸31に取り付けられたベアリングユニット33には、形式の異なる複数(本形態では3つ)のベアリングが組み込まれている。このように、1つの攪拌機30に、型式の異なる複数のベアリングが設けられている場合は、上記の設定段階S14において、型式の異なるベアリングごとに鉄粉濃度閾値を設定しておき、判定段階S13においては、診断対象としたベアリングの型式に対応して設定された鉄粉濃度閾値を用いて、診断対象のベアリングの交換時期を判定することにより、ベアリングの形式に応じた適切なタイミングでベアリング交換を行うことが可能となる。
20(20A〜20G))…区画室
30(30A〜30G))…攪拌機
31…回転軸
33…ベアリングユニット
100…オートクレーブ装置
110…オートクレーブ本体

Claims (5)

  1. 加熱および加圧された原料スラリーと硫酸を複数の区画室でそれぞれ攪拌機により攪拌するとともに、上流側の区画室から下流側の区画室へと順にスラリーを移送して有価金属の浸出を進行させる高圧酸浸出方法に用いられるオートクレーブ装置に適用するベアリングの交換時期判定方法であって、
    前記オートクレーブ装置は、前記複数の区画室に対応する複数の攪拌機を備えるとともに、各々の攪拌機がベアリングを有しており、
    前記ベアリングにおけるグリース中の鉄粉濃度とそのベアリングの寿命との関係を示す情報を前記攪拌機ごとに取得する取得段階と、
    前記複数の攪拌機のうち少なくともいずれか1つの攪拌機で使用中のベアリングを診断対象とし、前記診断対象のベアリングにおけるグリース中の鉄粉濃度を測定する測定段階と、
    前記取得段階で得られた情報に基づいて、ベアリング交換時期の判定基準となる鉄粉濃度閾値を、前記攪拌機ごとに、または上流側から下流側に向かって前記攪拌機をグループ分けしたグループごとに、異なる値に設定する設定段階と、
    前記測定段階で得られた前記鉄粉濃度の測定値と、前記診断対象のベアリングを有する前記攪拌機に対応して設定された前記鉄粉濃度閾値とに基づいて、前記診断対象のベアリングの交換時期を判定する判定段階と、
    を含むベアリングの交換時期判定方法。
  2. 前記鉄粉濃度閾値を、相対的に上流側に位置する前記攪拌機のほうが下流側に位置する前記攪拌機よりも大きな値に設定する
    請求項1に記載のベアリングの交換時期判定方法。
  3. 前記鉄粉濃度閾値を、相対的に上流側に位置する前記攪拌機のほうが下流側に位置する前記攪拌機よりも小さな値に設定する
    請求項1に記載のベアリングの交換時期判定方法。
  4. 前記診断対象のベアリングの交換時期は、回転異常に至る前のフレーキングの発生に応じて判断される
    請求項1から3のいずれか1項に記載のベアリングの交換時期判定方法。
  5. 前記オートクレーブ装置は、1つの攪拌機に、型式の異なる複数のベアリングを有し、
    前記設定段階では、前記型式の異なるベアリングごとに、前記鉄粉濃度閾値を設定し、
    前記判定段階では、前記診断対象としたベアリングの型式に対応して設定された鉄粉濃度閾値を用いて、前記診断対象のベアリングの交換時期を判定する
    請求項1から4のいずれか1項に記載のベアリングの交換時期判定方法。
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