実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略することがある。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一態様のトランジスタの上面図および断面図である。図1(A)は、上面図であり、図1(A)に示す一点鎖線A1−A2および一点鎖線A3−A4の断面が図1(B)に相当する。また、図1(C)は、図1(B)に示す破線丸で囲まれた領域の拡大図である。なお、図1(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
図1に示すトランジスタ150は、基板100上の下地絶縁膜102と、下地絶縁膜102上の酸化物半導体膜を含む多層膜104と、多層膜104上の低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105bと、低抵抗領域105a上のソース電極106aと、低抵抗領域105b上のドレイン電極106bと、多層膜104、ソース電極106aおよびドレイン電極106b上のゲート絶縁膜108と、ゲート絶縁膜108上のゲート電極110と、を有する。また、ゲート絶縁膜108およびゲート電極110上に酸化物絶縁膜112が設けられていてもよい。酸化物絶縁膜112は必要に応じて設ければよく、さらにその上部に他の絶縁膜(たとえば、窒化物絶縁膜114など)を設けてもよい。
なお、トランジスタの「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
基板100は、単なる支持材料に限らず、他のトランジスタなどのデバイスが形成された基板であってもよい。この場合、トランジスタ150のゲート電極110、ソース電極106aおよびドレイン電極106bの少なくとも一つは、他のデバイスと電気的に接続されていてもよい。
下地絶縁膜102は、基板100からの不純物の拡散を防止する役割を有するほか、多層膜104の酸化物半導体膜に酸素を供給する役割を担うことができるため、酸素を含む絶縁膜であることが好ましく、過剰な酸素を含む絶縁膜がより好ましい。また、上述のように基板100が他のデバイスが形成された基板である場合、下地絶縁膜102は、層間絶縁膜としての機能も有する。その場合は、表面が平坦になるようにCMP(Chemical Mechanical Polishing)法等で平坦化処理を行うことが好ましい。
多層膜104は、基板100側から酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cが積層された構造を有している。ここで、酸化物半導体膜104bには、酸化物膜104aおよび酸化物膜104cよりも電子親和力(真空準位から伝導帯下端までのエネルギー)が大きい酸化物半導体を用いる。電子親和力は、真空準位と価電子帯上端とのエネルギー差(イオン化ポテンシャル)から、伝導帯下端と価電子帯上端とのエネルギー差(バンドギャップ)を差し引いた値として求めることができる。
また、多層膜104において、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cに用いる材料によっては、酸化物膜104aおよび酸化物半導体膜104bの境界、酸化物半導体膜104bおよび酸化物膜104cの境界を明確に確認できない場合がある。そこで、図において、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cの境界は破線で表している。
なお、本実施の形態では、多層膜104が三層の積層である場合について説明するが、多層膜104が一層、二層または四層以上であってもよい。一層の場合は、酸化物半導体膜104bに相当する層を用いればよい。二層の場合は、基板100側に酸化物半導体膜104bに相当する層を用い、ゲート絶縁膜108側に酸化物膜104aまたは酸化物膜104cに相当する層を用いればよい。四層以上である場合は、本実施の形態の説明と同じように酸化物半導体膜104bが酸化物膜104aまたは酸化物膜104cに相当する層で挟まれる構造とすればよい。
酸化物膜104aおよび酸化物膜104cは、酸化物半導体膜104bを構成する金属元素を一種以上含み、伝導帯下端のエネルギーが酸化物半導体膜104bよりも、0.05eV、0.07eV、0.1eV、0.15eVのいずれか以上であって、2eV、1eV、0.5eV、0.4eVのいずれか以下の範囲で真空準位に近い酸化物で形成することが好ましい。
このような構造において、ゲート電極110に電圧を印加すると、多層膜104のうち、伝導帯下端のエネルギーが最も小さい酸化物半導体膜104bにチャネルが形成される。すなわち、酸化物半導体膜104bとゲート絶縁膜108との間に酸化物膜104cが形成されていることによって、トランジスタのチャネルをゲート絶縁膜と接しない構造とすることができる。
また、酸化物半導体膜104bを構成する金属元素を一種以上含んで酸化物膜104aが構成されるため、酸化物半導体膜104bと酸化物膜104aの界面に界面準位を形成しにくくなる。該界面準位はチャネルを形成することがあるため、しきい値電圧の異なる第2のトランジスタが出現し、トランジスタの見かけ上のしきい値電圧が変動することがある。したがって、酸化物膜104aを設けることにより、トランジスタのしきい値電圧などの電気特性のばらつきを低減することができる。
また、酸化物半導体膜104bを構成する金属元素を一種以上含んで酸化物膜104cが構成されるため、酸化物半導体膜104bと酸化物膜104cとの界面ではキャリアの散乱が起こりにくくなる。したがって、酸化物膜104cを設けることにより、トランジスタの電界効果移動度を高くすることができる。
なお、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cが、少なくともインジウム、亜鉛およびM(Al、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)を含むIn−M−Zn酸化物であるとき、酸化物膜104aをIn:M:Zn=x1:y1:z1[原子数比]、酸化物半導体膜104bをIn:M:Zn=x2:y2:z2[原子数比]、酸化物膜104cをIn:M:Zn=x3:y3:z3[原子数比]とすると、y1/x1およびy3/x3がy2/x2よりも大きくなることが好ましい。y1/x1およびy3/x3はy2/x2よりも1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上とする。このとき、酸化物半導体膜104bにおいて、y2がx2以上であるとトランジスタの電気特性を安定させることができる。ただし、y2がx2の3倍以上になると、トランジスタの電界効果移動度が低下してしまうため、y2はx2の3倍未満であることが好ましい。
また、酸化物膜104aおよび酸化物膜104cのZnおよびOを除いてのInおよびMの原子数比率は、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%以上とする。また、酸化物半導体膜104bのZnおよびOを除いてのInおよびMの原子数比率は、好ましくはInが25atomic%以上、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%以上、Mが66atomic%未満とする。
酸化物膜104aおよび酸化物膜104cの厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下とする。また、酸化物半導体膜104bの厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。
酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、および酸化物膜104cには、例えば、インジウム、亜鉛およびガリウムを含んだ酸化物半導体を用いることができる。特に、酸化物半導体膜104bにインジウムを含ませると、キャリア移動度が高くなるため好ましい。
なお、酸化物半導体膜をチャネルとするトランジスタに安定した電気特性を付与するためには、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減し、酸化物半導体膜を真性または実質的に真性にすることが有効である。ここで、実質的に真性とは、酸化物半導体膜のキャリア密度が、1×1017/cm3未満であること、好ましくは1×1015/cm3未満であること、さらに好ましくは1×1013/cm3未満であることを指す。
また、酸化物半導体膜において、水素、窒素、炭素、シリコン、および主成分以外の金属元素は不純物となる。例えば、水素および窒素は、ドナー準位を形成し、キャリア密度を増大させてしまう。また、シリコンは、酸化物半導体膜中で不純物準位を形成する。当該不純物準位はトラップとなり、トランジスタの電気特性を劣化させることがある。したがって、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104bおよび酸化物膜104cの層中や、それぞれの界面において不純物濃度を低減させることが有効である。
酸化物半導体膜を真性または実質的に真性とするためには、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析において、シリコン濃度を1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。また、水素濃度は、5×1019atoms/cm3以下、好ましくは1×1019atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1017atoms/cm3以下とする。また、窒素濃度は、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体膜が結晶を含む場合、シリコンや炭素が高濃度で含まれると、酸化物半導体膜の結晶性を低下させることがある。酸化物半導体膜の結晶性を低下させないためには、シリコン濃度を1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とすればよい。また、炭素濃度を1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とすればよい。
酸化物半導体膜は、SIMS分析において、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流を増大させることがある。
また、上述のように高純度化された酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用いたトランジスタのオフ電流は極めて小さく、トランジスタのチャネル幅で規格化したオフ電流は、数yA/μm乃至数zA/μmにまで低減することが可能となる。
なお、トランジスタのゲート絶縁膜としては、シリコンを含む絶縁膜が多く用いられるため、上記理由により酸化物半導体膜のチャネルとなる領域はゲート絶縁膜と接しないことが好ましいということができる。また、ゲート絶縁膜と酸化物半導体膜との界面にチャネルが形成される場合、該界面でキャリアの散乱が起こり、トランジスタの電界効果移動度が低くなることがある。このような観点からも、酸化物半導体膜のチャネルとなる領域はゲート絶縁膜から離すことが好ましい。
したがって、多層膜104を酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cの積層構造とすることで、トランジスタのチャネルが形成される酸化物半導体膜104bをゲート絶縁膜から離すことができ、高い電界効果移動度を有し、安定した電気特性のトランジスタを形成することができる。
ここで、酸化物半導体膜の局在準位について説明する。ここでは、酸化物半導体膜をCPM(Constant photocurrent method)測定で評価した結果について説明する。
まず、測定試料の構造について説明する。
測定試料は、ガラス基板上に設けられた酸化物半導体膜と、該酸化物半導体膜に接する一対の電極と、酸化物半導体膜および一対の電極を覆う絶縁膜と、を有する。
次に、測定試料に含まれる酸化物半導体膜の形成方法について説明する。
In−Ga−Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比])であるターゲットを用い、スパッタガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15sccm用い、圧力を0.4Paとし、基板温度を室温とし、DC電力を0.5kW印加する条件を用いたスパッタリング法により、第1の酸化物半導体膜を形成した。なお、第1の酸化物半導体膜は微結晶酸化物半導体膜である。
また、第1の酸化物半導体膜を、450℃の窒素雰囲気で1時間加熱した後、450℃の酸素雰囲気で1時間加熱することで、第1の酸化物半導体膜に含まれる水素を脱離させる処理および第1の酸化物半導体膜に酸素を供給する処理を行い、第2の酸化物半導体膜を形成した。なお、第2の酸化物半導体膜は微結晶酸化物半導体膜である。
次に、第1の酸化物半導体膜を有する測定試料、および第2の酸化物半導体膜を有する測定試料についてCPM測定を行った。具体的には、酸化物半導体膜に接して設けた一対の電極間に電圧を印加した状態で光電流値が一定となるように電極間の測定試料面に照射する光量を調整し、所望の波長の範囲において照射光量から吸収係数を導出した。
各測定試料をCPM測定して得られた吸収係数からバンドテイル起因の吸収係数を除いた吸収係数、即ち欠陥に起因する吸収係数を図43に示す。図43において、横軸は吸収係数を表し、縦軸は光エネルギーを表す。なお、図43の縦軸において、酸化物半導体膜の伝導帯の下端を0eVとし、価電子帯の上端を3.15eVとする。また、図43において、各曲線は吸収係数と光エネルギーの関係を示す曲線であり、欠陥準位に相当する。
図43(A)は、第1の酸化物半導体膜を有する測定試料の測定結果であり、欠陥準位による吸収係数は、5.28×10−1cm−1であった。図43(B)は、第2の酸化物半導体膜を有する測定試料の測定結果であり、欠陥準位による吸収係数は、1.75×10−2cm−1であった。
従って、加熱処理により、酸化物半導体膜に含まれる欠陥を低減することができる。
なお、第1の酸化物半導体膜および第2の酸化物半導体膜に関し、X線反射率法(XRR(X−ray Reflectometry))を用いた膜密度の測定を行った。第1の酸化物半導体膜の膜密度は、5.9g/cm3であり、第2の酸化物半導体膜の膜密度は6.1g/cm3であった。
従って、加熱処理により、酸化物半導体膜の膜密度を高めることができる。
即ち、酸化物半導体膜において、膜密度が高い程、膜中に含まれる欠陥が少ないことがわかる。
また、上記と異なる条件で作製した測定試料について、CPM測定で評価した結果について説明する。
まず、CPM測定した試料の構造について説明する。
測定試料は、ガラス基板上に設けられた酸化物半導体膜と、該酸化物半導体膜に接する一対の電極と、酸化物半導体膜および一対の電極を覆う絶縁膜と、を有する。
次に、測定試料に含まれる酸化物半導体膜の形成方法について説明する。
In−Ga−Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比])であるターゲットを用い、スパッタガスとしてアルゴンガスを30sccm、酸素ガスを15sccm用い、圧力を0.4Paとし、基板温度を400℃とし、DC電力を0.5kW印加する条件を用いたスパッタリング法により、酸化物半導体膜を形成した。次に、450℃の窒素雰囲気で1時間加熱した後、450℃の酸素雰囲気で1時間加熱して、酸化物半導体膜に含まれる水素を脱離させる処理および酸化物半導体膜に酸素を供給する処理を行った。なお、当該酸化物半導体膜はCAAC−OS(c−axis−aligned crystalline oxide semiconductor)膜である。
次に、酸化物半導体膜を有する測定試料についてCPM測定を行った。具体的には、酸化物半導体膜に接して設けた一対の電極間に電圧を印加した状態で光電流値が一定となるように電極間の試料面に照射する光量を調整し、所望の波長の範囲において照射光量から吸収係数を導出した。
測定試料をCPM測定して得られた吸収係数からバンドテイル起因の吸収係数を除いた吸収係数、即ち欠陥に起因する吸収係数を図44に示す。図44において、横軸は吸収係数を表し、縦軸は光エネルギーを表す。なお、図44の縦軸において、酸化物半導体膜の伝導帯の下端を0eVとし、価電子帯の上端を3.15eVとする。また、図44において、曲線は吸収係数と光エネルギーの関係を示す曲線であり、欠陥準位に相当する。
図44に示す曲線において、欠陥準位による吸収係数は、5.86×10−4cm−1であった。即ち、CAAC−OS膜は、欠陥準位による吸収係数が1×10−3cm−1未満、好ましくは1×10−4cm−1未満であり、欠陥準位密度の低い膜である。
なお、酸化物半導体膜に関し、X線反射率法(XRR(X−ray Reflectometry))を用いた膜密度の測定を行った。酸化物半導体膜の膜密度は、6.3g/cm3であった。即ち、CAAC−OS膜は、膜密度の高い膜である。
さらに、トランジスタのドレイン電極にプラスの電圧を印加した場合の劣化について説明する。
図40に、チャネル長方向におけるバンド構造を示す。なお、図40では、n層との対比で、酸化物半導体膜(OS)をi層(iと表記)と呼ぶ。
図40に示すように、酸化物半導体膜のフェルミエネルギーはmid gapよりも高いエネルギーとなる。これは、ソース電極およびドレイン電極間の距離が十分小さいとき、ソース電極およびドレイン電極の影響で伝導帯下端のエネルギー(Ec)が、低くなり、伝導帯下端のエネルギーとフェルミエネルギーが近づくためである。この現象を、CBL効果(Conduction Band Lowering effect)と呼ぶ。CBL効果は、酸化物半導体膜の空乏層が極めて広いことに起因する酸化物半導体特有の現象である。
ここで、CBL効果について詳述する。
酸化物半導体膜として真性または実質的に真性の酸化物半導体膜を用いた場合、直観的には、ソース電極およびドレイン電極と酸化物半導体膜のエネルギーギャップの半分程度の障壁が形成されると考えられる。ところが、実際には、酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、Vg−Id特性において、ゲート電圧が0V付近からドレイン電流が流れ始める。
そこで、図41に示すように、酸化物半導体膜(OS)と、酸化物半導体膜上に設けられたソース電極(S)およびドレイン電極(D)と、酸化物半導体膜、ソース電極およびドレイン電極上に設けられたゲート絶縁膜(GI)を有する構造を仮定し、チャネル長(L)を変更した場合の一点鎖線E1−E2におけるバンド構造を計算により導出した。なお、図41では、ソース電極およびドレイン電極と接する酸化物半導体膜の領域にn層を設けている。
ポアソン方程式を解くことによりバンドの曲がり幅を見積もると、バンドの曲がり幅は下式よりデバイの遮蔽長λDで特徴付けられる長さであることがわかった。なお、下式において、kBはボルツマン定数である。
上式に酸化物半導体膜の真性キャリア密度niを6.6×10−9cm−3とし、酸化物半導体膜の比誘電率εを15とし、温度を300Kとして代入すると、デバイの遮蔽長λDは、5.7×1010μmと、非常に大きな値であることがわかった。従って、チャネル長がデバイの遮蔽長λDの2倍である1.14×1011μmよりも大きければn層とi層の障壁高さは酸化物半導体膜のエネルギーギャップの半分となることがわかる。
図42では、チャネル長を0.03μm、0.3μm、1μm、10μm、100μmおよび1×1012μmのときのバンド構造の計算結果を示す。なお、図中の、nはn層を示し、iはn層に挟まれた酸化物半導体膜の領域(i層)を示し、一点鎖線は酸化物半導体膜のフェルミエネルギーを示し、破線は酸化物半導体膜のmid gapを示す。
図42より、チャネル長が十分大きい1×1012μmの場合、i層とn層の電子エネルギーの差が、酸化物半導体膜のエネルギーギャップの半分となることがわかった。ところが、チャネル長を小さくしていくと、徐々にi層とn層の電子エネルギーの差が小さくなり、チャネル長が1μm以下ではほとんど障壁がなくなることがわかった。なお、n層の電子エネルギーはソース電極およびドレイン電極によって固定される。
上述したように、チャネル長が小さいとき、n層とi層との障壁は十分小さくなることがわかる。
CBL効果があることにより、酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、ソース電極、ドレイン電極と酸化物半導体膜との間に障壁があっても、サブスレッショルド値が理論限界近くまで小さくなり、優れたスイッチング特性を有する。
また、チャネルがn型化していると、電子がソースからドレインに通りやすくなることで、ソースとドレイン間にパスが形成されてしまい、スイッチング特性が得られにくくなる。これを防ぐためには、チャネルのn型化を徹底的に防ぎ、真性化(i型化)する必要がある。
また、ソース電極およびドレイン電極となる導電膜の材料が酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素と結合しやすい導電材料であるため、多層膜104中の酸素が導電材料と結合する。この結合により、多層膜104の、導電膜との界面近傍の領域において酸素が欠損する。または、多層膜104上に形成される導電膜を形成する際の多層膜104上面へのダメージ(酸素欠損)が生じる。この酸素欠損と水素により低抵抗化された領域、つまり、低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105bが形成され、多層膜とソース電極またはドレイン電極との接触抵抗が低減される。また、加熱処理により導電膜の材料が酸化物半導体膜中に拡散しやすい導電材料である場合でも低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105bが形成される。なお、本実施の形態では、低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105bと、多層膜104との境界は酸化物膜104c中に存在するがこれに限られず、該境界は、酸化物膜104a中、酸化物半導体膜104b中、酸化物膜104aと酸化物半導体膜104bとの界面、または酸化物半導体膜104bと酸化物膜104cとの界面に存在してもよい。低抵抗領域は、例えば、1.0×106Ω/□以下のシート抵抗を有する領域でり、好ましくは1.0×105Ω/□以下のシート抵抗、さらに好ましくは1.0×104Ω/□以下のシート抵抗を有する領域である。
また、ソース電極106aおよびドレイン電極106bの端部を階段状のように形成する。当該端部の加工は、アッシングによってレジストマスクを後退させる工程とエッチングの工程を交互に複数回行うことで形成することができる。このため、ソース電極106aおよびドレイン電極106bの端部は低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105b上に設けられる。
したがって、トランジスタ150のチャネル形成領域は、低抵抗領域105aと低抵抗領域105bとの間の多層膜104の領域105cと、低抵抗領域105aのソース電極106aが接していない領域および低抵抗領域105bのドレイン電極106bが接していない領域となる。トランジスタ150のチャネル形成領域は、低抵抗化(n型化ともいう)されているため、多層膜104中の酸化物半導体膜の不純物濃度を低減し、高純度真性化する必要がある。高純度真性化とは、酸化物半導体膜を真性または実質的に真性にすることをいう。なお、実質的に真性という場合、酸化物半導体膜のキャリア密度は、1×1017cm3未満、好ましくは1×1015cm3未満、さらに好ましくは1×1013cm3未満である。
トランジスタ150のチャネル形成領域を高純度真性化するためには、多層膜104の領域105cに対して、酸素を添加すればよい。このようにすることで酸素欠損量を低減することができ、高純度真性な領域を形成することができる。よって、高純度真性な領域と低抵抗領域を同時につくり分けることができる。
また、加熱処理により、下地絶縁膜102、ゲート絶縁膜108、酸化物絶縁膜112から過剰酸素を放出しやすくして、多層膜104の酸素欠損を低減することができる。よって、多層膜104中のチャネル形成領域は、さらに酸素欠損量が低減し、高純度真性となる。
次に、多層膜104のバンド構造を説明する。バンド構造の解析は、酸化物膜104aおよび酸化物膜104cに相当する層としてエネルギーギャップが3.15eVであるIn−Ga−Zn酸化物、酸化物半導体膜104bに相当する層としてエネルギーギャップが2.8eVであるIn−Ga−Zn酸化物を用い、多層膜104に相当する積層を作製して行っている。なお、便宜的に当該積層を多層膜104、当該積層を構成するそれぞれの層を酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cと称して説明する。
酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cの膜厚はそれぞれ10nmとし、エネルギーギャップは、分光エリプソメータ(HORIBA JOBIN YVON社 UT−300)を用いて測定した。また、酸化物膜104aと酸化物半導体膜104bとの界面近傍のエネルギーギャップは3eV、酸化物膜104cと酸化物半導体膜104bとの界面近傍のエネルギーギャップは3eVとした。
図2(A)は、真空準位と価電子帯上端のエネルギー差と、各層のエネルギーギャップとの差分として算出される真空準位と伝導帯下端のエネルギー差(電子親和力)から模式的に示されるバンド構造の一部である。図2(A)では、酸化物膜104aおよび酸化物膜104cと接して、酸化シリコン膜を設けた場合について説明する。ここで、Evacは真空準位のエネルギー、EcI1およびEcI2は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギー、EcS1は酸化物膜104aの伝導帯下端のエネルギー、EcS2は酸化物半導体膜104bの伝導帯下端のエネルギー、EcS3は酸化物膜104cの伝導帯下端のエネルギーを示す。また、トランジスタを構成する場合、ゲート電極(トランジスタ150ではゲート電極110に相当)はEcI2を有する酸化シリコン膜に接するものとする。
図2(A)に示すように、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cにおいて、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化する。これは、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cの組成が近似することにより、酸素が相互に拡散しやすい点からも理解される。したがって、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cは組成が異なる層の積層体ではあるが、物性的に連続であるということもでき、本明細書の図面において、当該積層体のそれぞれの界面は点線で表している。
主成分を共通として積層された多層膜104は、各層を単に積層するのではなく連続接合(ここでは特に伝導帯下端のエネルギーが各層の間で連続的に変化するU字型の井戸構造)が形成されるように作製する。すなわち、各層の界面に酸化物半導体にとってトラップ中心や再結合中心のような欠陥準位、あるいはキャリアの流れを阻害するバリアを形成するような不純物が存在しないように積層構造を形成する。仮に、積層された酸化物半導体膜および酸化物膜の間に不純物が混在していると、エネルギーバンドの連続性が失われ、界面でキャリアがトラップあるいは再結合により消滅してしまう。
連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装置(スパッタ装置)を用いて各層を大気に触れさせることなく連続して積層することが必要となる。スパッタ装置における各チャンバーは、酸化物半導体にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべく、クライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空排気(1×10−4Pa乃至5×10−7Pa程度まで)できること、かつ、成膜される基板を100℃以上に加熱できることが好ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー内に炭素成分や水分等を含む気体が逆流しないようにしておくことが好ましい。
高純度真性酸化物半導体を得るためには、チャンバー内を高真空排気するのみならずスパッタガスの高純度化も必要である。スパッタガスとして用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下、より好ましくは−120℃以下にまで高純度化したガスを用いることで酸化物半導体膜に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
なお、図2(A)では、EcI1とEcI3が同様である場合について示したが、それぞれが異なっていてもよい。例えば、EcS3よりもEcS1が高いエネルギーを有する場合、バンド構造の一部は、図2(B)のように示される構造の方が図2(A)に示される構造より好ましい。なぜなら、ゲート電極側であるEcS3近傍のEcS2を電流が主に流れるためである。
また、酸化シリコン膜を挟んで酸化物膜104cとゲート電極を配置する場合、酸化シリコン膜はゲート絶縁膜として機能し、酸化物半導体膜104bに含まれるインジウムがゲート絶縁膜に拡散することを酸化物膜104cによって防ぐことができる。酸化物膜104cによってインジウムの拡散を防ぐためには、酸化物膜104cは、酸化物半導体膜104bに含まれるインジウムの量よりも少なくすることが好ましい。
例えば、EcI1=EcI3である場合は、酸化物膜104aおよび酸化物膜104cにIn:Ga:Zn=1:3:2(原子数比)、酸化物半導体膜104bにIn:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)のIn−Ga−Zn酸化物などを用いることができる。また、EcI1>EcI3である場合は、酸化物膜104aにIn:Ga:Zn=1:6:4または1:9:6(原子数比)、酸化物半導体膜104bにIn:Ga:Zn=1:1:1または3:1:2(原子数比)、酸化物膜104cにIn:Ga:Zn=1:3:2(原子数比)のIn−Ga−Zn酸化物などを用いることができる。
図2(A)、図2(B)より、多層膜104における酸化物半導体膜104bがウェル(井戸)となり、多層膜104を用いたトランジスタにおいて、チャネルが酸化物半導体膜104bに形成されることがわかる。なお、多層膜104は伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化しているため、U字型井戸(U Shape Well)とも呼ぶことができる。また、このような構成で形成されたチャネルを埋め込みチャネルということもできる。
なお、酸化物膜104aおよび酸化物膜104cと、酸化シリコン膜などの絶縁膜との界面近傍には、不純物や欠陥に起因したトラップ準位が形成され得る。酸化物膜104aおよび酸化物膜104cがあることにより、酸化物半導体膜104bと当該トラップ準位とを遠ざけることができる。ただし、EcS1またはEcS3と、EcS2とのエネルギー差が小さい場合、酸化物半導体膜104bの電子が該エネルギー差を越えてトラップ準位に達することがある。トラップ準位に電子が捕獲されることで、絶縁膜界面にマイナスの固定電荷が生じ、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。
したがって、EcS1およびEcS3と、EcS2とのエネルギー差を、それぞれ0.1eV以上、好ましくは0.15eV以上とすることで、トランジスタのしきい値電圧の変動が低減され、安定した電気特性を得ることができる。
なお、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104bおよび酸化物膜104cのいずれか一つ以上の層には、結晶部が含まれることが好ましい。例えば、酸化物膜104aを非晶質とし、酸化物半導体膜104bおよび酸化物膜104cを結晶部が含まれる層とする。チャネルが形成される酸化物半導体膜104bが結晶部を含むことにより、トランジスタに安定した電気特性を付与することができる。
特に、酸化物半導体膜104bおよび酸化物膜104cに含まれる結晶部は、表面と略垂直な方向にc軸が配向した結晶であることが好ましい。
また、図1の構造のトランジスタにおいて、酸化物膜104cはソース電極106aおよびドレイン電極106bに接しており、電流を効率良く取り出すにはエネルギーギャップが絶縁体のように大きくないこと、および膜厚が薄いことが好ましい。また、多層膜104にIn−Ga−Zn酸化物を用いる場合は、Inのゲート絶縁膜への拡散を防ぐために、酸化物膜104cは酸化物半導体膜104bよりもInを少なくする組成とすることが好ましい。
また、図3(A)のトランジスタの断面拡大図に示すように、多層膜104の端部に曲面を有する領域104dを設けても良い。多層膜104をIn−M−Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)で形成する場合、酸化物半導体膜104bを構成するM(MS2)と領域104dを構成するM(MS4)の量的関係は、MS4>MS2であることが好ましい。より好ましくは、MS4は酸化物膜104aを構成するM(MS1)と同等とする。
多層膜104の端部における領域104dは、ドライエッチング法にて酸化物膜104aの成分を再付着させる、所謂ラビットイヤーを利用して形成することができる。さらに酸化処理によりラビットイヤー形成時に付着するエッチングガス成分を除去し、M成分を酸化することで領域104dの絶縁性を高めることができる。
また、図3(B)に示すように多層膜をドライエッチングする際に、下地絶縁膜102の一部がエッチングされる。このため、多層膜が接する領域の下地絶縁膜102の膜厚は、多層膜が接しない領域の下地絶縁膜102の膜厚より大きい。このような構成になることで、多層膜と、ソース電極またはドレイン電極との密着性を向上させることができる。
図4(A)は図1に示すトランジスタの上面図および多層膜104の断面図である。ゲート電極が重畳する多層膜104の領域104dは、外的要因による不純物の混入や酸素欠損の発生などによりn型化しやすく、寄生チャネルとなることがある。特にエネルギーギャップの小さい酸化物半導体膜104bではn型化が顕著に起こりやすいため、酸化物半導体膜104bを覆う領域104dには寄生チャネルの発生を抑制する作用があるといえる。
酸化物膜104aと領域104dの主成分が同一であるとき、酸化物膜104aの伝導帯下端のエネルギー(EcS1)と領域104dの伝導帯下端のエネルギー(EcS4)の差分(ΔE)が大きいほど寄生チャネルの発生を抑える効果が高い。また、領域104dの厚みは、酸化物膜104aまたは酸化物膜104cよりも厚いことが好ましく、厚いほど酸化物半導体膜104b端部のn型化による寄生チャネルの発生を抑えることができる。
また、領域104dは、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cと組成が近似することにより、多層膜のバンド構造の一部を示す図4(B)のように伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化する。すなわち、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104c、および領域104dは連続接合であるということができる。なお、図4(B)に示すD1−D2は、図4(A)の多層膜104の断面図に示すD1−D2方向に相当し、図4(B)に示すE1−E2は図4(A)に示すE1−E2方向に相当する。
ソース電極106aおよびドレイン電極106bには、酸化物膜および酸化物半導体膜を構成する金属元素より酸素と結合しやすい(以降、「酸化物膜および酸化物半導体膜を構成する金属元素より」を省略し、比較対象なしで「酸素と結合しやすい」と記載する場合がある)導電材料を用いることができる。例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Mo、Wなどを用いることができる。後のプロセス温度が比較的高くできることなどから、融点の高いWを用いることが特に好ましい。なお、酸素と結合しやすい導電材料には、酸化物膜および酸化物半導体膜より酸素が拡散しやすい(以降、「酸化物膜および酸化物半導体膜より」を省略し、比較対象なしで「酸素が拡散しやすい」と記載する場合がある)材料も含まれる。また、加熱処理により酸化物半導体膜中に拡散しやすい導電材料を用いることができる。例えば、Tiなどを用いることができる。また、W上にCu、Ti上にCuなど上記材料を複数積層してもよい。
酸素と結合しやすい導電材料と多層膜を接触させると、多層膜中の酸素が、導電材料と結合する現象が起こる。
トランジスタの作製工程には、いくつかの加熱工程があることから、上記現象により、多層膜の、ソース電極およびドレイン電極と接触した近傍の領域に酸素が欠損し、当該領域はn型化する。または、導電膜の材料が酸化物半導体膜中に拡散しやすい導電材料であると、いくつかの加熱工程により、導電膜材料が酸化物半導体膜中に拡散し、当該領域はn型化する。したがって、n型化した当該領域はトランジスタのソースまたはドレインとして作用させることができる。このため、多層膜とソース電極またはドレイン電極との接触抵抗が低減されることによって導電性が向上してトランジスタの高速動作を実現することができる。
また、図1に示すソース電極106aおよびドレイン電極106bの端部は、階段状に複数の段を設けた形状とすることが好ましい。このような複数の段を設けた形状とすることで、それらの上方に形成される膜の被覆性が向上し、トランジスタの電気特性や長期信頼性を向上させることができる。
ゲート絶縁膜108には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を用いることができる。また、ゲート絶縁膜108は上記材料の積層であってもよい。
ゲート絶縁膜108が酸化アルミニウムを含む場合、多層膜中に含まれる水素を酸化アルミニウムがゲッタリングするため、多層膜中の水素が低減され、好ましい。また、該酸化アルミニウムを含むゲート絶縁膜108上に酸素が過剰に含まれている酸化物絶縁膜を形成すると好ましい。このような構成にすることで、酸化アルミニウムによって多層膜中の水素が低減され、かつ、酸化物絶縁膜によって、多層膜に酸素を供給することができる。
また、ゲート絶縁膜108を酸素が過剰に含まれている酸化物絶縁膜とバリア膜の積層膜としてもよい。バリア膜として、窒化シリコンや酸化アルミニウムを用いることができる。
さらに、ゲート絶縁膜108が酸化ハフニウムを含む場合、高純度である酸化ハフニウムを用いることでリーク電流を抑制することができるため、好ましい。
ゲート電極110は、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Mo、Ru、Ag、TaおよびWなどの導電膜を用いることができる。また、ゲート電極110は、上記材料の積層であってもよい。
ゲート絶縁膜108、ゲート電極110上には酸化物絶縁膜112が形成されていてもよい。当該酸化物絶縁膜には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を用いることができる。また、当該酸化物絶縁膜は上記材料の積層であってもよい。
ここで、酸化物絶縁膜112は過剰酸素を有することが好ましい。過剰酸素を含む酸化物絶縁膜とは、加熱処理などによって酸素を放出することができる酸化物絶縁膜をいう。好ましくは、昇温脱離ガス分光法分析にて、酸素原子に換算しての酸素の放出量が1.0×1019atoms/cm3以上である膜とする。当該酸化物絶縁膜から放出される酸素はゲート絶縁膜108を経由して多層膜104の酸化物半導体膜104bのチャネル形成領域に拡散させることができることから、不本意に形成された酸素欠損に酸素を補填することができる。したがって、安定したトランジスタの電気特性を得ることができる。
さらに酸化物絶縁膜112上に窒化物絶縁膜114を設けてもよい。窒化物絶縁膜114は、酸化物絶縁膜112に含まれる酸素が加熱処理時に外方拡散することを抑制し、かつ、外部から水素または水素を含む化合物(水など)が多層膜104へと侵入することを抑制するバリア膜として機能するため、トランジスタの信頼性を向上させることができる。
また、トランジスタの別の構成を図5(A)に示す。図5(A)に示すトランジスタ190は、基板100上の下地絶縁膜102と、下地絶縁膜102上の酸化物膜104aと、酸化物膜104a上の酸化物半導体膜104bと、酸化物半導体膜104b上のソース電極106aおよびドレイン電極106bと、ソース電極106aおよびドレイン電極106b上の酸化物膜104cと、ソース電極106aと接する酸化物半導体膜104bおよび酸化物膜104cから酸素が引き抜かれ、形成された低抵抗領域105aと、ドレイン電極106bと接する酸化物半導体膜104bおよび酸化物膜104cから酸素が引き抜かれ、形成された低抵抗領域105bと、酸化物膜104c、ソース電極106aおよびドレイン電極106b上のゲート絶縁膜108と、ゲート絶縁膜108上のゲート電極110と、を有する。また、ゲート絶縁膜108およびゲート電極110上に酸化物絶縁膜112が形成されていてもよい。酸化物絶縁膜112は必要に応じて設ければよく、さらにその上部に他の絶縁膜(たとえば、窒化物絶縁膜114)を形成してもよい。
図1に示すトランジスタ150と図5(A)に示すトランジスタ190とは、酸化物膜104cがソース電極106aおよびドレイン電極106b上に形成されている点が異なり、その他の点は同じである。また、トランジスタ150と同じようにトランジスタ190は、低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105bを有している。
また、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、および酸化物膜104cには、例えば、酸化物膜104aにIn:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、酸化物半導体膜104bにIn:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、酸化物膜104cにIn:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物を用いることができる。
トランジスタ190では、チャネルが形成される酸化物半導体膜104bとソース電極106aおよびドレイン電極106bが接しており、酸化物半導体膜104bに高密度の酸素欠損が生成し、n型化された領域(低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105b)が形成される。したがって、キャリアのパスに抵抗成分が少なく、効率良くキャリアを移動させることができる。
また、酸化物膜104cは、ソース電極106aおよびドレイン電極106b形成後に形成するため、該ソース電極106aおよびドレイン電極106b形成時の酸化物膜104cのオーバーエッチングが無い。したがって、チャネルが形成される酸化物半導体膜104bをゲート絶縁膜108から十分離すことができ、界面からの不純物拡散の影響を抑える効果を大きくすることができる。
また、酸化物膜104cは、外部から水素または水素を含む化合物(水など)が酸化物半導体膜104bへと侵入することを抑制するバリア膜として機能するため、トランジスタの信頼性を向上させることができる。このため、窒化物絶縁膜114を設けなくともよい。
また、酸素と結合しやすい導電材料を用いてソース電極106aおよびドレイン電極106bが形成される場合、図5(B)に示すトランジスタ195のように、ソース電極106aおよびドレイン電極106bと接する酸化物膜104cにおいても低抵抗領域が広がる。
また、図5(C)に示すトランジスタ200のように、酸化物膜104aの端部と酸化物半導体膜104bの端部が連ならなくてもよい。この端部の形状は、酸化物膜104aと酸化物半導体膜104bの積層膜を85%リン酸、混酸アルミ液(リン酸(72%)、硝酸(2%)、酢酸(9%))等によりウエットエッチングすることにより、エッチング速度が酸化物膜104aより酸化物半導体膜104bの方が速い場合に形成される。
酸化物膜104aおよび酸化物半導体膜104bの端部は、それぞれテーパー形状となり、テーパー形状を有する層(たとえば、酸化物膜104a)を、その断面(基板の表面と直交する面)に垂直な方向から観察した際に、当該層の側面と底面がなす傾斜角をテーパー角とする。酸化物膜104aのテーパー角θ1は、好ましくは30°<θ1<70°であり、酸化物半導体膜104bのテーパー角θ2は、酸化物膜104aのテーパー角θ1より大きく、かつ、好ましくはθ2<90°、さらに好ましくは、45°<θ2<80°である。
多層膜104を上記のようなテーパー形状とすることで、ソース電極106aおよびドレイン電極106bとの接触面積を拡大することができる。したがって、多層膜104と、ソース電極106aおよびドレイン電極106bとの接触抵抗が低減し、トランジスタのオン電流を増大させることができる。
また、図6(A)に示すトランジスタ210のように、下地絶縁膜102上に酸化物膜104a、酸化物半導体膜104bおよび酸化物膜104cを順に形成後、ソース電極106aおよびドレイン電極106bを形成し、ソース電極106aおよびドレイン電極106b上に酸化物膜104eを形成する構成としてもよい。酸化物膜104eには、例えば、In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物を用いることができる。
また、トランジスタの別の構成を図6(B)に示す。図1に示すトランジスタ150と図6(B)に示すトランジスタ220とは、導電膜107aおよび導電膜107bがソース電極106aおよびドレイン電極106b上に形成されている点が異なり、その他の点は同じである。また、実施の形態1で説明したトランジスタ150と同じようにトランジスタ220は、低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105bを有している。
なお、導電膜107aおよび導電膜107bは、ソース電極およびドレイン電極の一部として機能する。よって、図6(B)に示すトランジスタ220において、導電膜107aおよび導電膜107bの間隔がチャネル長となる。
また、図6(B)に示すトランジスタ220において、チャネルとは、導電膜107aおよび導電膜107bと重畳しない酸化物半導体膜104bの領域のことをいう。
また、図6(B)に示すトランジスタ220において、チャネル形成領域とは、導電膜107aおよび導電膜107bと重畳しない酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cのことをいう。
導電膜107aおよび導電膜107b形成後、多層膜104の領域105cに対して、酸素を添加することで、チャネル形成領域の酸素欠損量を低減することができ、高純度真性な領域を形成することができる。よって、高純度真性な領域と低抵抗領域を同時につくり分けることができる。
導電膜107aおよび導電膜107bは、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素と結合しにくい導電材料を用いることによって、酸化物半導体膜に形成されるチャネル形成領域に酸素欠損が形成されることを抑制することができ、チャネルのn型化を抑えることができる。したがって、チャネル長が極短いトランジスタであっても良好な電気特性を得ることができる。
なお、上記酸素と結合しにくい導電材料のみでソース電極およびドレイン電極を形成すると、多層膜104との接触抵抗が高くなりすぎることから、たとえば、図6(B)等に示すように、ソース電極106aおよびドレイン電極106bを覆うように導電膜107aおよび導電膜107bを形成することが好ましい。
導電膜107aおよび導電膜107bは、窒化タンタル、窒化チタン、ルテニウム、またはこれらを主成分とする合金材料を用いることができる。例えば、スパッタ法などにより20nmの窒化タンタル膜を形成する。
また、導電膜107aおよび導電膜107bは、電子ビーム、ArF液浸、またはEUV(Extreme Ultraviolet)を用いた露光によりパターンの幅が小さいレジストマスクにより導電膜を加工して形成されることにより、チャネル長を1nm以上30nm以下にすることができる。また、電子ビームを用いた露光において、電子ビームの照射が可能な電子ビーム描画装置において、例えば、加速電圧は5kV以上50kV以下であることが好ましい。また、電流強度は、5×10−12A以上1×10−11A以下であることが好ましい。また、最小ビーム径は、2nm以下であることが好ましい。また、作製可能なパターンの最小線幅が8nm以下であることが好ましい。
また、トランジスタのチャネル長は、トランジスタ内のどこでも均等であることが好ましい。トランジスタのチャネル形成領域の形状に曲線が含まれている場合、電子ビームによる露光によって該曲線をなめらかに、また、線幅を均等に形成することが好ましい。
電子ビームによる露光によって、線幅が均等でなめらかな曲線を作製するには、例えば、基板が重畳しているステージを回転させることによって曲線の露光を行う方法等がある。また、直線状に移動するステージを用いても、電子ビームによる描画領域を分割する図形のサイズや向きを電子ビームのパターンに合わせて最適化する方法や、パターンの露光量が一定になるように、図形を均等な幅でずらして重ね描きする多重描画法等を適用し、トランジスタのチャネル長が均等になるようにレジストマスクをパターニングすることができる。上記の方法等を用いて、レジストマスクの線幅を均一に形成し、トランジスタのチャネル長を均等にすることが好ましい。
また、トランジスタの別の構成を図7(A)に示す。トランジスタ230は、図5(A)に示すトランジスタ190の酸化物膜104c上にさらに導電膜107aおよび導電膜107bを設けた構造になっている。
また、トランジスタの別の構成を図7(B)に示す。トランジスタ240は、図7(A)に示すトランジスタ230の酸化物膜104cと、導電膜107aおよび導電膜107bとの形成工程を逆にした構成になっている。
以上が本発明の一態様におけるトランジスタである。当該トランジスタは多層膜に含まれる酸化物半導体中のチャネル形成領域における酸素欠損量を低減することができ、電気特性が良好であるため、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で説明した図1に示すトランジスタ150の作製方法について説明する。
まず、基板100上に下地絶縁膜102を形成する。
基板100には、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI(Silicon On Insulator)基板などを用いることも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを用いてもよい。
下地絶縁膜102は、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法またはスパッタ法等により、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルなどの酸化物絶縁膜、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの窒化物絶縁膜、またはこれらの混合材料を用いて形成することができる。また、上記材料の積層であってもよく、少なくとも多層膜104と接する上層は多層膜104への酸素の供給源となりえる酸素を含む材料で形成することが好ましい。
なお、基板100の表面が絶縁体であり、後に設ける多層膜104への不純物拡散の影響が無い場合は、下地絶縁膜102を設けない構成とすることができる。
次に下地絶縁膜102上に基板100側から順に酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cをスパッタ法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法またはPLD(Pulsed Laser Deposition)法を用いて成膜し、選択的にエッチングを行うことで多層膜104を形成する(図8(A)参照)。なお、エッチングの前に加熱工程を行ってもよい。
酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、および酸化物膜104cには、実施の形態1で説明した材料を用いることができる。例えば、酸化物膜104aにIn:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、酸化物半導体膜104bにIn:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、酸化物膜104cにIn:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物を用いることができる。
また、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、および酸化物膜104cを含む多層膜は、少なくともインジウム(In)もしくは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。または、InとZnの双方を含むことが好ましい。また、該多層膜を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすため、それらと共に、スタビライザーを含むことが好ましい。
スタビライザーとしては、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、またはジルコニウム(Zr)等がある。また、他のスタビライザーとしては、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等がある。
例えば、酸化物膜および酸化物半導体膜として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、In−Zn酸化物、Sn−Zn酸化物、Al−Zn酸化物、Zn−Mg酸化物、Sn−Mg酸化物、In−Mg酸化物、In−Ga酸化物、In−Ga−Zn酸化物、In−Al−Zn酸化物、In−Sn−Zn酸化物、Sn−Ga−Zn酸化物、Al−Ga−Zn酸化物、Sn−Al−Zn酸化物、In−Hf−Zn酸化物、In−La−Zn酸化物、In−Ce−Zn酸化物、In−Pr−Zn酸化物、In−Nd−Zn酸化物、In−Sm−Zn酸化物、In−Eu−Zn酸化物、In−Gd−Zn酸化物、In−Tb−Zn酸化物、In−Dy−Zn酸化物、In−Ho−Zn酸化物、In−Er−Zn酸化物、In−Tm−Zn酸化物、In−Yb−Zn酸化物、In−Lu−Zn酸化物、In−Sn−Ga−Zn酸化物、In−Hf−Ga−Zn酸化物、In−Al−Ga−Zn酸化物、In−Sn−Al−Zn酸化物、In−Sn−Hf−Zn酸化物、In−Hf−Al−Zn酸化物を用いることができる。
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。また、本明細書においては、In−Ga−Zn酸化物で構成した膜をIGZO膜とも呼ぶ。
また、InMO3(ZnO)m(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、MnおよびCoから選ばれた一つの金属元素または複数の金属元素を示す。また、In2SnO5(ZnO)n(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
ただし、実施の形態1に詳細を記したように、酸化物膜104aおよび酸化物膜104cは、酸化物半導体膜104bよりも電子親和力が大きくなるように材料を選択する。
なお、酸化物膜および酸化物半導体膜の成膜には、スパッタ法を用いることが好ましい。スパッタ法としては、RFスパッタ法、DCスパッタ法、ACスパッタ法等を用いることができる。特に、成膜時に発生するゴミを低減でき、かつ膜厚分布も均一とすることからDCスパッタ法を用いることが好ましい。
また、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cとしてIn−Ga−Zn酸化物を用いる場合、ターゲットのIn、Ga、Znの原子数比としては、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=2:2:1、In:Ga:Zn=3:1:2、In:Ga:Zn=1:3:2、In:Ga:Zn=1:3:4、In:Ga:Zn=1:4:3、In:Ga:Zn=1:5:4、In:Ga:Zn=1:6:2、In:Ga:Zn=1:6:6、In:Ga:Zn=1:6:10、In:Ga:Zn=2:1:3、In:Ga:Zn=1:6:2、In:Ga:Zn=1:6:4、In:Ga:Zn=1:6:10、In:Ga:Zn=1:9:6、In:Ga:Zn=1:1:4、In:Ga:Zn=1:1:2のいずれかの材料を用いることもでき、酸化物膜104aおよび酸化物膜104cの電子親和力が酸化物半導体膜104bよりも大きくなるようにすればよい。また、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cとしてGa−Zn酸化物を用いてもよい。
また、酸化物半導体膜104bは、酸化物膜104aおよび酸化物膜104cよりもインジウムの含有量を多くするとよい。酸化物半導体では主として重金属のs軌道がキャリア伝導に寄与しており、Inの含有率を多くすることにより、より多くのs軌道が重なるため、InがGaよりも多い組成となる酸化物はInがGaと同等または少ない組成となる酸化物と比較して移動度が高くなる。そのため、酸化物半導体膜104bにインジウムの含有量が多い酸化物を用いることで、高い移動度のトランジスタを実現することができる。
以下では、酸化物半導体膜の構造について説明する。
酸化物半導体膜は、単結晶酸化物半導体膜と非単結晶酸化物半導体膜とに大別される。非単結晶酸化物半導体膜とは、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、多結晶酸化物半導体膜、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜などをいう。
非晶質酸化物半導体膜は、膜中における原子配列が不規則であり、結晶成分を有さない酸化物半導体膜である。微小領域においても結晶部を有さず、膜全体が完全な非晶質構造の酸化物半導体膜が典型である。
微結晶酸化物半導体膜は、例えば、1nm以上10nm未満の大きさの微結晶(ナノ結晶ともいう。)を含む。従って、微結晶酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも原子配列の規則性が高い。そのため、微結晶酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低いという特徴がある。
CAAC−OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つであり、ほとんどの結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体内に収まる大きさの場合も含まれる。CAAC−OS膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低いという特徴がある。以下、CAAC−OS膜について詳細な説明を行う。
CAAC−OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって観察すると、結晶部同士の明確な境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
CAAC−OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
一方、CAAC−OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面TEM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC−OS膜の結晶部は配向性を有していることがわかる。
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
一方、CAAC−OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。InGaZnO4の単結晶酸化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC−OS膜の場合は、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
以上のことから、CAAC−OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
なお、結晶部は、CAAC−OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC−OS膜の形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
また、CAAC−OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の結晶部が、CAAC−OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CAAC−OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部分的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、CAAC−OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
CAAC−OS膜は、例えば、多結晶である酸化物半導体スパッタ用ターゲットを用い、スパッタ法によって成膜することができる。当該スパッタ用ターゲットにイオンが衝突すると、スパッタ用ターゲットに含まれる結晶領域がa−b面から劈開し、a−b面に平行な面を有する平板状またはペレット状のスパッタ粒子として剥離することがある。この場合、当該平板状のスパッタ粒子が、結晶状態を維持したまま基板に到達することで、CAAC−OS膜を成膜することができる。
また、CAAC−OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制できる。例えば、成膜室内に存在する不純物(水素、水、二酸化炭素および窒素など)を低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物を低減すればよい。具体的には、露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下である成膜ガスを用いる。
また、成膜時の基板加熱温度を高めることで、基板到達後にスパッタ粒子のマイグレーションが起こる。具体的には、基板加熱温度を100℃以上740℃以下、好ましくは200℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の基板加熱温度を高めることで、平板状のスパッタ粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレーションが起こり、スパッタ粒子の平らな面が基板に付着する。
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100体積%とする。
スパッタ用ターゲットの一例として、In−Ga−Zn−O化合物ターゲットについて以下に示す。
InOX粉末、GaOY粉末およびZnOZ粉末を所定のモル数で混合し、加圧処理後、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn−Ga−Zn−O化合物ターゲットとする。なお、X、YおよびZは任意の正数である。ここで、粉末の種類、およびその混合するモル数比は、作製するスパッタ用ターゲットによって適宜変更すればよい。
ここで、結晶状態における酸化物半導体(OSと示す。)およびシリコン半導体(Siと示す。)の対比を表1に示す。
酸化物半導体の結晶状態には、例えば、表1に示すように、非晶質酸化物半導体(a−OS、a−OS:H)、微結晶酸化物半導体(nc−OS、μc−OS)、多結晶酸化物半導体(多結晶OS)、連続結晶酸化物半導体(CAAC−OS)、単結晶酸化物半導体(単結晶OS)などがある。なお、シリコンの結晶状態には、例えば、表1に示すように、非晶質シリコン(a−Siやa−Si:H)、微結晶シリコン(nc−Si、μc−Si)、多結晶シリコン(多結晶Si)、連続結晶シリコン(CG(Continuous Grain)シリコン)、単結晶シリコン(単結晶Si)などがある。
各結晶状態における酸化物半導体に対し、ビーム径を10nmφ以下に収束させた電子線を用いる電子線回折(極微電子線回折)を行うと、以下のような電子線回折パターン(極微電子線回折パターン)が観測される。非晶質酸化物半導体では、ハローパターン(ハローリングまたはハローとも言われる。)が観測される。微結晶酸化物半導体では、スポットまたは/およびリングパターンが観測される。多結晶酸化物半導体では、スポットが観測される。連続結晶酸化物半導体では、スポットが観測される。単結晶酸化物半導体では、スポットが観測される。
なお、極微電子線回折パターンより、微結晶酸化物半導体は、結晶部がナノメートル(nm)からマイクロメートル(μm)の径であることがわかる。多結晶酸化物半導体は、結晶部と結晶部との間に粒界を有し、境界が不連続であることがわかる。連続結晶酸化物半導体は、結晶部と結晶部との間に境界が観測されず、連続的に繋がることがわかる。
各結晶状態における酸化物半導体の密度について説明する。非晶質酸化物半導体の密度は低い。微結晶酸化物半導体の密度は中程度である。連続結晶酸化物半導体の密度は高い。即ち、連続結晶酸化物半導体の密度は微結晶酸化物半導体の密度より高く、微結晶酸化物半導体の密度は非晶質酸化物半導体の密度より高い。
各結晶状態における酸化物半導体に存在するDOSの特徴を説明する。非晶質酸化物半導体はDOSが高い。微結晶酸化物半導体はDOSがやや低い。連続結晶酸化物半導体はDOSが低い。単結晶酸化物半導体はDOSが極めて低い。即ち、単結晶酸化物半導体は連続結晶酸化物半導体よりDOSが低く、連続結晶酸化物半導体は微結晶酸化物半導体よりDOSが低く、微結晶酸化物半導体は非晶質酸化物半導体よりDOSが低い。
次に、第1の加熱処理を行うこがと好ましい。第1の加熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下の温度で、不活性ガス雰囲気、酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気、または減圧状態で行えばよい。また、第1の加熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気で行ってもよい。第1の加熱処理によって、酸化物半導体膜104bの結晶性を高め、さらに下地絶縁膜102、酸化物膜104a、および酸化物膜104cから水素や水などの不純物を除去することができる。なお、多層膜104を形成するエッチングの前に第1の加熱工程を行ってもよい。
次に、多層膜104上にソース電極およびドレイン電極となる導電膜106を形成する。本実施の形態では、導電膜106の材料は酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素と結合しやすい導電材料を用いる。このとき、導電膜106の材料が酸素と結合しやすい導電材料であるため、多層膜104中の酸素が導電材料(導電膜106)と結合する。この結合により、多層膜104の、導電膜106との界面近傍の領域において酸素が欠損する。または、多層膜104上に形成される導電膜106を形成する際の多層膜104上面へのダメージ(酸素欠損)が生じる。これらの酸素欠損により、自己整合的に低抵抗領域105が形成される(図8(B)参照)。なお、本実施の形態では、低抵抗領域105は、酸化物半導体膜を含む多層膜104と導電膜106との界面から多層膜104の深さ方向に0nmより大きく15nm以下、好ましくは10nm未満、さらに好ましくは3nm未満の領域にある。
なお、本実施の形態では、低抵抗領域105と、多層膜104との境界は、酸化物膜104c中に存在するがこれに限定されず、該境界は、酸化物膜104a中、酸化物半導体膜104b中、酸化物膜104aと酸化物半導体膜104bとの界面、または酸化物半導体膜104bと酸化物膜104cとの界面に存在してもよい。
導電膜106としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、W、またはこれらを主成分とする合金材料を用いることができる。例えば、スパッタ法などにより100nmのタングステン膜を形成する。
低抵抗領域105が形成されることにより、後に形成されるソース電極またはドレイン電極と、多層膜104との接触抵抗を低減することができ、トランジスタ150の高速動作を実現することができる。
次に、導電膜106を多層膜104上で分断するようにエッチングし、ソース電極106aおよびドレイン電極106bを形成する(図8(C)参照)。このとき、ソース電極106aおよびドレイン電極106bの端部は図示するように階段状に形成する。当該端部の加工は、アッシングによってレジストマスクを後退させる工程とエッチングの工程を交互に複数回行うことで形成することができる。
なお、ソース電極106aの下に低抵抗領域105a、ドレイン電極106bの下に低抵抗領域105bがそれぞれ存在し、低抵抗領域105aと低抵抗領域105bの間の酸化物半導体膜を領域105cとする。
また、上記のアッシングによってレジストマスクを後退させる工程とエッチングの工程を交互に繰り返すことで、ソース電極106aおよびドレイン電極106bの端部は低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105b上に設けられる。
このため、トランジスタ150のチャネル形成領域は、領域105cと、低抵抗領域105aのソース電極106aが接していない領域および低抵抗領域105bのドレイン電極106bが接していない領域となる。トランジスタ150のチャネル形成領域は、n型化されているため、多層膜104中の不純物濃度を低減し、高純度真性化する必要がある。
なお、導電膜106を多層膜104上で分断するようにエッチングする際、酸化物膜104cの一部がエッチングされることがあり、チャネル形成領域における多層膜の膜厚が小さくなることがある。
次に、多層膜104、ソース電極106aおよびドレイン電極106b上にゲート絶縁膜108を形成する。その後、多層膜104の領域105cに対して、酸素120を添加する(図9(A)参照)。
ゲート絶縁膜108には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルなどを用いることができる。なお、ゲート絶縁膜108は、上記材料の積層であってもよい。ゲート絶縁膜108は、スパッタ法、CVD法、MOCVD法、MBE法、ALD法またはPLD法などを用いて形成することができる。
ゲート絶縁膜108が酸化アルミニウムを含む場合、多層膜中に含まれる水素を酸化アルミニウムがゲッタリングするため、多層膜中の水素が低減され、好ましい。また、該酸化アルミニウム上に酸素が過剰に含まれている酸化物絶縁膜を形成すると好ましい。このような構成にすることで、酸化アルミニウムによって多層膜中の水素が低減され、かつ、酸化物絶縁膜によって、多層膜に酸素を供給することができる。
また、ゲート絶縁膜108を酸素が過剰に含まれている酸化物絶縁膜とバリア膜の積層膜としてもよい。バリア膜として、窒化シリコンや酸化アルミニウムを用いることができる。
さらに、ゲート絶縁膜108が酸化ハフニウムを含む場合、高純度である酸化ハフニウムを用いることでリーク電流を抑制することができるため、好ましい。
多層膜104の領域105cに酸素を添加する方法として、イオンドーピング法またはイオンインプランテーション法を用いることができる。または、酸素の添加方法として、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法を用いてもよい。プラズマイマージョンイオンインプランテーション法は、領域105cが凹凸のある形状であっても酸素の添加を効率よく行うことができる。さらに、酸素の添加はイオンドーピング法またはイオンインプランテーション法などによる注入する以外の方法でも行うことができる。例えば、酸素雰囲気にてプラズマを発生させて、領域105cに対してプラズマ処理を行うことによって、酸素を添加することができる。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置やプラズマCVD装置、高密度プラズマCVD装置などを用いることができる。
領域105cに添加する酸素120は、酸素ラジカル、酸素原子、および酸素イオンの一以上である。また、酸素120は、領域105cの少なくとも一部、代表的には、領域105cの表面、領域105c中、および領域105cと酸化物膜104cとの界面のいずれかに添加されればよい。
イオンドーピング法またはイオンインプランテーション法を用いて酸素を領域105cに添加する際の酸素添加量は、5×1019/cm3以上5×1021/cm3以下である。この際、酸素120のエネルギーが高いと、領域105cにダメージが入り、物理的に欠陥が生じてしまうため、酸素120のエネルギーは多層膜にダメージを与えない程度とすることが好ましい。また、領域105cは、表層から酸化物半導体膜の深さ方向に対して、酸素の含有量が徐々に多くなる領域を有する。
また、低抵抗領域105aは、全領域がソース電極と重畳する必要はなく、領域105c側に延伸してソース電極と重畳しない領域があってもよい。また、低抵抗領域105bは、全領域がドレイン電極と重畳する必要はなく、領域105c側に延伸してドレイン電極と重畳しない領域があってもよい。また、低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105bの膜厚は均一でなくてもよい。たとえば、ソース電極と重畳しない側の低抵抗領域105aの端部は、低抵抗領域105aの底面から表面に向かってなだらかに広がっていてもよい。同様に、たとえば、ドレイン電極と重畳しない側の低抵抗領域105bの端部は、低抵抗領域105bの底面から表面に向かってなだらかに広がっていてもよい。なお、ソース電極106aとドレイン電極106b間の長さと低抵抗領域105aと低抵抗領域105b間の長さの差は、ソース電極106aとドレイン電極106b間の長さの30%未満、好ましくは10%未満、さらに好ましくは3%未満である。
上記の構成により、領域105cは低抵抗領域より高抵抗化し、チャネル形成領域として機能する。また、領域105cは酸素欠損量を低減することができ、高純度真性な領域を形成することができる。よって、高純度真性な領域と低抵抗領域を同時につくり分けることができる。なお、チャネル形成領域として機能する領域105cの水素濃度は、5×1017atoms/cm3以下、好ましくは1×1017atoms/cm3以下である。
本実施の形態では、ゲート絶縁膜108形成後に、多層膜104の領域105cに対して、酸素120を添加したがこれに限られず、ソース電極106aおよびドレイン電極106b形成後に、酸素120を添加し、その後、ゲート絶縁膜108を形成してもよい。
次に、第2の加熱処理を行うことが好ましい。第2の加熱処理は、第1の加熱処理と同様の条件で行うことができる。第2の加熱処理により、多層膜104から、さらに水素や水などの不純物を除去することができる。
次に、ゲート絶縁膜108上にゲート電極110を形成する(図9(B)参照)。
ゲート電極110には、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Mo、Ru、Ag、Ta、W、またはこれらを主成分とする合金材料を用いることができる。ゲート電極110は、スパッタ法などにより形成することができる。
以上の工程で、図1に示すトランジスタ150を作製することができる。
また、ゲート絶縁膜108およびゲート電極110上に酸化物絶縁膜112を形成する構成としてもよい(図9(C)参照)。
酸化物絶縁膜112は、下地絶縁膜102と同様の材料、方法を用いて形成することができる。酸化物絶縁膜112としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタル、もしくは窒素を含む酸化物絶縁膜を用いるとよい。酸化物絶縁膜112は、スパッタ法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて形成することができ、多層膜104(酸化物半導体膜104b)に対し酸素を供給できるよう過剰に酸素を含む膜とすることが好ましい。
また、酸化物絶縁膜112は、第1の酸化物絶縁膜と第2の酸化物絶縁膜の積層構造であることが好ましい。第1の酸化物絶縁膜として第1の酸化シリコン膜を成膜する。第1の酸化シリコン膜は、CVD法の一種であるプラズマCVD法によって成膜すると好ましい。具体的には、基板温度を180℃以上400℃以下、好ましくは200℃以上370℃以下とし、シリコンを含む堆積性ガスおよび酸化性ガスを用いて圧力20Pa以上250Pa以下、好ましくは40Pa以上200Pa以下として、電極に高周波電力を供給することで成膜すればよい。なお、シリコンを含む堆積性ガスの代表例としては、シラン、ジシラン、トリシラン、フッ化シラン、などがある。酸化性ガスとしては、酸素、オゾン、亜酸化窒素、二酸化窒素などがある。
なお、シリコンを含む堆積性ガスに対する酸化性ガスの流量を100倍以上とすることで、第1の酸化シリコン膜中の水素含有量を低減し、且つダングリングボンドを低減することができる。
次に、第2の酸化物絶縁膜として第2の酸化シリコン膜を成膜する。第2の酸化シリコン膜は、プラズマCVD法によって成膜すると好ましい。具体的には、基板温度を160℃以上350℃以下、好ましくは180℃以上260℃以下とし、シリコンを含む堆積性ガスおよび酸化性ガスを用いて圧力100Pa以上250Pa以下、好ましくは100Pa以上200Pa以下として、電極に0.17W/cm2以上0.5W/cm2以下、好ましくは0.25W/cm2以上0.35W/cm2以下の高周波電力を供給することで成膜すればよい。
上述の方法によって、プラズマ中でのガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増加し、ガスの酸化が進むため、第2の酸化シリコン膜として過剰酸素を含む酸化シリコン膜を成膜することができる。
また、酸化物絶縁膜112にイオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いて酸素を添加してもよい。酸素を添加することによって、酸化物絶縁膜112から多層膜104への酸素の供給をさらに容易にすることができる。
さらに酸化物絶縁膜112上に窒化物絶縁膜114を設けてもよい。窒化物絶縁膜114は、酸化物絶縁膜112に含まれる酸素が加熱処理時に外方拡散することを抑制し、かつ、外部から水素または水素を含む化合物(水など)が酸化物半導体膜104bへと侵入することを抑制するバリア膜として機能するため、トランジスタの信頼性を向上させることができる。
窒化物絶縁膜は、第1の窒化物絶縁膜と第2の窒化物絶縁膜の積層構造であることが好ましい。第1の窒化物絶縁膜として窒化シリコン膜を成膜する。第1の窒化シリコン膜は、プラズマCVD法によって成膜すると好ましい。具体的には、基板温度を180℃以上400℃以下、好ましくは200℃以上370℃以下とし、シリコンを含む堆積性ガス、窒素ガスおよびアンモニアガスを用いて圧力20Pa以上250Pa以下、好ましくは40Pa以上200Pa以下として、高周波電力を供給することで成膜すればよい。
なお、窒素ガスはアンモニアガスの流量の5倍以上50倍以下、好ましくは10倍以上50倍以下とする。なお、アンモニアガスを用いることで、シリコンを含む堆積性ガスおよび窒素ガスの分解を促すことができる、これは、アンモニアガスがプラズマエネルギーおよび熱エネルギーによって解離し、解離することで生じるエネルギーが、シリコンを含む堆積性ガスの結合、および窒素ガスの結合の分解に寄与するためである。
次に、第2の窒化物絶縁膜として第2の窒化シリコン膜を成膜する。第2の窒化シリコン膜は、スパッタ法によって成膜すると好ましい。具体的には、基板温度を300℃以上400℃以下とし、スパッタリングターゲットをシリコンターゲットとし、アルゴンガスおよび窒素ガスを用いて反応室内の圧力0.5Pa以下、好ましくは0.1Pa以上0.3Pa以下として、高周波電力を供給することで成膜すればよい。
従って、上述の方法によって、窒化物絶縁膜に適用できる、水素ガスおよびアンモニアガスの放出量が少ない窒化シリコン膜を成膜することができる。また、水素の含有量が少ないため、緻密となり、水素、水および酸素を透過しない、またはほとんど透過しない窒化シリコン膜とすることができる。
次に、第3の加熱処理を行うことが好ましい。第3の加熱処理は、第1の加熱処理と同様の条件で行うことができる。酸素が過剰に含まれている下地絶縁膜102、酸化物絶縁膜112の場合、第3の加熱処理により、下地絶縁膜102、酸化物絶縁膜112から過剰酸素が放出されやすくなり、多層膜104の酸素欠損を低減することができる。よって、多層膜104のチャネル形成領域は、さらに酸素欠損量が低減し、高純度真性となる。
また、本実施の形態では、多層膜104の領域105cに対して、酸素120を添加する処理をソース電極106aおよびドレイン電極106b形成直後に行ったがこれに限られず、ゲート絶縁膜108形成直後に行い、ゲート絶縁膜108から酸素を多層膜104の領域105cに供給してもよい。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1で説明したトランジスタとは異なる構造のトランジスタについて説明する。
図10は、本発明の一態様のトランジスタの上面図および断面図である。図10(A)は上面図であり、図10(A)に示す一点鎖線B1−B2および一点鎖線B3−B4の断面が図10(B)に相当する。また、図10(C)は、図10(B)に示す破線丸で囲まれた領域の拡大図である。なお、図10(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
図10に示すトランジスタ250は、基板100上のゲート電極110と、ゲート電極110上のゲート絶縁膜108と、ゲート絶縁膜108上の多層膜104と、多層膜104上の低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105bと、低抵抗領域105a上のソース電極106aと、低抵抗領域105b上のドレイン電極106bと、多層膜104、ソース電極106aおよびドレイン電極106b上の酸化物絶縁膜112と、を有する。また、酸化物絶縁膜112の上部に他の絶縁膜(たとえば、窒化物絶縁膜114など)を設けてもよい。
図1に示すトランジスタ150と図10に示すトランジスタ250とは、ゲート電極110およびゲート絶縁膜108の存在する位置が異なり、その他の点は同じである。また、実施の形態1で説明したトランジスタ150と同じようにトランジスタ250は、低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105bを有している。
多層膜104は、基板100側から酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cが積層された構造を有している。
また、多層膜104において、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cに用いる材料によっては、酸化物膜104aおよび酸化物半導体膜104bの境界、酸化物半導体膜104bおよび酸化物膜104cの境界を明確に確認できない場合がある。そこで、図において、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cの境界は破線で表している。
また、ソース電極およびドレイン電極となる導電膜の材料が酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素と結合しやすい導電材料であるため、多層膜104中の酸素がソース電極およびドレイン電極となる導電膜の導電材料と結合する。この結合により多層膜104の、導電膜との界面近傍の領域において酸素が欠損する。また、多層膜104上に形成される導電膜を形成する際の多層膜104上面へのダメージ(酸素欠損)が生じる。この酸素欠損と水素により低抵抗化された領域、つまり、低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105bが形成され、多層膜とソース電極またはドレイン電極との接触抵抗が低減される。また、加熱処理により、導電膜の材料が酸化物半導体膜中に拡散しやすい導電材料である場合でも低抵抗化領域が形成される。なお、本実施の形態では、低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105bと、多層膜104との境界は酸化物膜104c中に存在するがこれに限られず、該境界は、酸化物膜104a中、酸化物半導体膜104b中、酸化物膜104aと酸化物半導体膜104bとの界面、または酸化物半導体膜104bと酸化物膜104cとの界面に存在してもよい。
また、ソース電極106aおよびドレイン電極106bの端部を階段状のように形成する。当該端部の加工は、アッシングによってレジストマスクを後退させる工程とエッチングの工程を交互に複数回行うことで形成することができる。このため、ソース電極106aおよびドレイン電極106bの端部は低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105b上に設けられる。
したがって、トランジスタ250のチャネル形成領域は、低抵抗領域105aと低抵抗領域105bとの間の多層膜104の領域105cと、低抵抗領域105aのソース電極106aが接していない領域および低抵抗領域105bのドレイン電極106bが接していない領域となる。トランジスタ250のチャネル形成領域は、n型化されているため、多層膜104中の不純物濃度を低減し、高純度真性化する必要がある。
トランジスタ250のチャネル形成領域を高純度真性化するためには、多層膜104の領域105cに対して、酸素を添加すればよい。このようにすることで酸素欠損量を低減することができ、高純度真性な領域を形成することができる。よって、高純度真性な領域と低抵抗領域を同時につくり分けることができる。
また、加熱処理により、下地絶縁膜102、ゲート絶縁膜108、酸化物絶縁膜112から過剰酸素を放出しやすくして、多層膜104の酸素欠損を低減することができる。よって、多層膜104のチャネル形成領域は、さらに酸素欠損量が低減し、高純度真性となる。
また、トランジスタの別の構成を図11(A)に示す。図11(A)に示すトランジスタ290は、基板100上のゲート電極110と、ゲート電極110上のゲート絶縁膜108と、ゲート絶縁膜108上の酸化物膜104aと、酸化物膜104a上の酸化物半導体膜104bと、酸化物半導体膜104b上のソース電極106aおよびドレイン電極106bと、ソース電極106aおよびドレイン電極106b上の酸化物膜104cと、ソース電極106aと接する酸化物半導体膜104bから酸素が引き抜かれ、形成された低抵抗領域105aと、ドレイン電極106bと接する酸化物半導体膜104bから酸素が引き抜かれ、形成された低抵抗領域105bと、酸化物膜104c、ソース電極106aおよびドレイン電極106b上の酸化物絶縁膜112と、を有する。また、酸化物絶縁膜112の上部に他の絶縁膜(たとえば、窒化物絶縁膜114など)を設けてもよい。
図10に示すトランジスタ250と図11(A)に示すトランジスタ290とは、酸化物膜104cがソース電極106aおよびドレイン電極106b上に設けられている点が異なり、その他の点は同じである。また、実施の形態1で説明したトランジスタ150と同じようにトランジスタ290は、低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105bを有している。
また、酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、および酸化物膜104cには、例えば、酸化物膜104aにIn:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、酸化物半導体膜104bにIn:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物、酸化物膜104cにIn:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物を用いることができる。
トランジスタ290では、チャネルが形成される酸化物半導体膜104bとソース電極106aおよびドレイン電極106bが接しており、酸化物半導体膜104bに高密度の酸素欠損が生成し、n型化された領域(低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105b)が形成される。したがって、キャリアのパスに抵抗成分が少なく、効率良くキャリアを移動させることができる。
また、酸化物膜104cは、ソース電極106aおよびドレイン電極106b形成後に形成するため、該ソース電極106aおよびドレイン電極106b形成時の酸化物膜104cのオーバーエッチングが無い。したがって、チャネルが形成される酸化物半導体膜104bを酸化物絶縁膜112から十分離すことができ、界面からの不純物拡散の影響を抑える効果を大きくすることができる。
また、酸化物膜104cは、外部から水素または水素を含む化合物(水など)が多層膜104へと侵入することを抑制するバリア膜として機能するため、トランジスタの信頼性を向上させることができる。このため、窒化物絶縁膜114を設けなくともよい。
また、酸素と結合しやすい導電材料を用いてソース電極106aおよびドレイン電極106bが形成される場合、図11(B)に示すトランジスタ295のように、ソース電極106aおよびドレイン電極106bと接する酸化物膜104cにおいても低抵抗領域が広がる。
また、図11(C)に示すトランジスタ300のように、酸化物膜104aの端部と酸化物半導体膜104bの端部が連ならなくてもよい。この端部の形状は、酸化物膜104aと酸化物半導体膜104bの積層膜をウエットエッチングすることにより、エッチング速度が酸化物膜104aより酸化物半導体膜104bの方が速い場合に形成される。
多層膜104を上記のようなテーパー形状とすることで、ソース電極106aおよびドレイン電極106bとの接触面積を拡大することができる。したがって、多層膜104と、ソース電極106aおよびドレイン電極106bとの接触抵抗が低減し、トランジスタのオン電流を増大させることができる。
また、図12(A)に示すトランジスタ310のように、ゲート絶縁膜108上に酸化物膜104a、酸化物半導体膜104bおよび酸化物膜104cを順に形成後、ソース電極106aおよびドレイン電極106bを形成し、ソース電極106aおよびドレイン電極106b上に酸化物膜104eを形成する構成としてもよい。酸化物膜104eには、例えば、In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]のIn−Ga−Zn酸化物を用いることができる。
また、トランジスタの別の構成を図12(B)に示す。図10に示すトランジスタ250と図12(B)に示すトランジスタ320とは、導電膜107aおよび導電膜107bがソース電極106aおよびドレイン電極106b上に形成されている点が異なり、その他の点は同じである。また、実施の形態1で説明したトランジスタ150と同じようにトランジスタ320は、低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105bを有している。
なお、導電膜107aおよび導電膜107bは、ソース電極およびドレイン電極の一部として機能する。よって、図12(B)に示すトランジスタ320において、導電膜107aおよび導電膜107bの間隔がチャネル長となる。
また、図12(B)に示すトランジスタ320において、チャネルとは、導電膜107aおよび導電膜107bと重畳しない酸化物半導体膜104bの領域のことをいう。
また、図12(B)に示すトランジスタ320において、チャネル形成領域とは、導電膜107aおよび導電膜107bと重畳しない酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cのことをいう。
導電膜107aおよび導電膜107b形成後、多層膜104の領域105cに対して、酸素を添加することで、チャネル形成領域の酸素欠損量を低減することができ、高純度真性な領域を形成することができる。よって、高純度真性な領域と低抵抗領域を同時につくり分けることができる。
導電膜107aおよび導電膜107bは、先の実施の形態を参酌することができる。
また、導電膜107aおよび導電膜107bは、電子ビーム、ArF液浸またはEUVを用いた露光によりパターンの幅が小さいレジストマスクにより導電膜を加工して形成されることにより、チャネル長を1nm以上30nm以下にすることができる。
また、トランジスタの別の構成を図13(A)に示す。トランジスタ330は、図11(A)に示すトランジスタ290の酸化物膜104c上にさらに導電膜107aおよび導電膜107bを設けた構造になっている。
また、図13(B)に示すトランジスタ340のような構成にしてもよい。トランジスタ340は、図13(A)に示すトランジスタ330の酸化物膜104cと、導電膜107aおよび導電膜107bとの形成工程を逆にした構成になっている。
以上が本発明の一態様におけるトランジスタである。当該トランジスタは酸化物半導体中のチャネル形成領域における酸素欠損量を低減することができ、電気特性が良好であるため、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3で説明した図10に示すトランジスタ250の作製方法について説明する。
まず、基板100上にゲート電極110を形成し、ゲート電極110を覆うゲート絶縁膜108を形成する(図14(A)参照)。
基板100、ゲート電極110、ゲート絶縁膜108は、先の実施の形態を参酌することができる。
ゲート絶縁膜108は、過剰酸素を含む絶縁膜であるとより好ましい。
また、基板100上に下地絶縁膜を形成してもよい。下地絶縁膜は、先の実施の形態の下地絶縁膜102を参酌することができる。
次に、ゲート絶縁膜108上に酸化物膜104a、酸化物半導体膜104b、酸化物膜104cからなる多層膜104を形成する(図14(B)参照)。
多層膜104は、先の実施の形態を参酌することができる。
次に、第1の加熱処理を行うこがと好ましい。第1の加熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下の温度で、不活性ガス雰囲気、酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気、または減圧状態で行えばよい。また、第1の加熱処理は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上含む雰囲気で行ってもよい。第1の加熱処理によって、酸化物半導体膜104bの結晶性を高め、さらにゲート絶縁膜108、酸化物膜104a、および酸化物膜104cから水素や水などの不純物を除去することができる。なお、多層膜104を形成するエッチングの前に第1の加熱工程を行ってもよい。
次に、多層膜104上にソース電極およびドレイン電極となる導電膜106を形成する。本実施の形態では、導電膜106の材料は酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素と結合しやすい導電材料を用いる。このとき、導電膜106の材料が酸素と結合しやすい導電材料であるため、多層膜104中の酸素が導電材料(導電膜106)と結合する。この結合により、多層膜104の、導電膜106との界面近傍の領域において酸素が欠損する。また、多層膜104上に形成される導電膜106を形成する際の多層膜104上面へのダメージ(酸素欠損)が生じる。この酸素欠損により低抵抗領域105が形成される(図14(C)参照)。なお、本実施の形態では、低抵抗領域105は、酸化物半導体膜を含む多層膜104と導電膜106との界面から多層膜104の深さ方向に0nmより大きく15nm以下、好ましくは10nm未満、さらに好ましくは3nm未満の領域にある。
なお、本実施の形態では、低抵抗領域105と、多層膜104との境界は、酸化物膜104c中に存在するがこれに限定されず、該境界は、酸化物膜104a中、酸化物半導体膜104b中、酸化物膜104aと酸化物半導体膜104bとの界面、または酸化物半導体膜104bと酸化物膜104cとの界面に存在してもよい。
導電膜106は、先の実施の形態を参酌することができる。
低抵抗領域105が形成されることにより、後に形成されるソース電極またはドレイン電極と、多層膜104との接触抵抗を低減することができ、トランジスタ250の高速動作を実現することができる。
次に、導電膜106を多層膜104上で分断するようにエッチングし、ソース電極106aおよびドレイン電極106bを形成する(図15(A)参照)。このとき、ソース電極106aおよびドレイン電極106bの端部は図示するように階段状に形成する。当該端部の加工は、アッシングによってレジストマスクを後退させる工程とエッチングの工程を交互に複数回行うことで形成することができる。
なお、ソース電極106aの下に低抵抗領域105a、ドレイン電極106bの下に低抵抗領域105bがそれぞれ存在し、低抵抗領域105aと低抵抗領域105bの間の酸化物膜を領域105cとする。
また、上記のアッシングによってレジストマスクを後退させる工程とエッチングの工程を交互に繰り返すことで、ソース電極106aおよびドレイン電極106bの端部は低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105b上に設けられる。
このため、トランジスタ250のチャネル形成領域は、領域105cと、低抵抗領域105aのソース電極106aが接していない領域および低抵抗領域105bのドレイン電極106bが接していない領域となる。トランジスタ250のチャネル形成領域は、n型化されているため、多層膜104中の不純物濃度を低減し、高純度真性化する必要がある。
なお、導電膜106を多層膜104上で分断するようにエッチングする際、酸化物膜104cの一部がエッチングされることがあり、チャネル形成領域における多層膜の膜厚が小さくなることがある。
次に、多層膜104の領域105cに対して、酸素120を添加する(図15(B)参照)。
多層膜104の領域105cに酸素を添加する方法は、先の実施の形態を参酌することができる。
また、低抵抗領域105aは、全領域がソース電極106aと必ずしも重畳する必要はなく、領域105cに延伸してソース電極106aと重畳しない領域があってもよい。また、低抵抗領域105bは、全領域がドレイン電極106bと必ずしも重畳する必要はなく、領域105cに延伸してドレイン電極106bと重畳しない領域があってもよい。また、低抵抗領域105aおよび低抵抗領域105bの膜厚は均一でなくてもよい。たとえば、ソース電極106aと重畳しない側の低抵抗領域105aの端部は、低抵抗領域105aの底面から表面に向かってなだらかに広がっていてもよい。同様に、たとえば、ドレイン電極106bと重畳しない側の低抵抗領域105bの端部は、低抵抗領域105bの底面から表面に向かってなだらかに広がっていてもよい。なお、ソース電極106aとドレイン電極106b間の長さと低抵抗領域105aと低抵抗領域105b間の長さの差は、ソース電極106aとドレイン電極106b間の長さの30%未満、好ましくは10%未満、さらに好ましくは3%未満である。
上記の構成により、領域105cは低抵抗領域より高抵抗化し、チャネル形成領域として機能する。また、領域105cは酸素欠損量を低減することができ、高純度真性な領域を形成することができる。よって、高純度真性な領域と低抵抗領域を同時につくり分けることができる。なお、チャネル形成領域として機能する領域105cの水素濃度は、5×1017atoms/cm3以下、好ましくは1×1017atoms/cm3である。
次に、第2の加熱処理を行うことが好ましい。第2の加熱処理は、第1の加熱処理と同様の条件で行うことができる。第2の加熱処理により、多層膜104から、さらに水素や水などの不純物を除去することができる。
次に、多層膜104、ソース電極106aおよびドレイン電極106b上に酸化物絶縁膜112を形成する(図15(C)参照)。
酸化物絶縁膜112は、先の実施の形態を参酌することができる。さらに酸化物絶縁膜112上に窒化物絶縁膜114を設けてもよい。窒化物絶縁膜114は、酸化物絶縁膜112に含まれる酸素が加熱処理時に外方拡散することを抑制し、かつ、外部から水素または水素を含む化合物(水など)が多層膜104へと侵入することを抑制するバリア膜として機能するため、トランジスタの信頼性を向上させることができる。
以上の工程で、図10に示すトランジスタ250を作製することができる。
次に、第3の加熱処理を行うことが好ましい。第3の加熱処理は、第1の加熱処理と同様の条件で行うことができる。ゲート絶縁膜108、酸化物絶縁膜112に酸素が過剰に含まれている場合、第3の加熱処理により、ゲート絶縁膜108、酸化物絶縁膜112から過剰酸素が放出されやすくなり、多層膜104の酸素欠損を低減することができる。よって、多層膜104のチャネル形成領域は、さらに酸素欠損量が低減し、高純度真性となる。
また、本実施の形態では、多層膜104の領域105cに対して、酸素120を添加する処理をソース電極106aおよびドレイン電極106b形成直後に行ったがこれに限られず、ゲート絶縁膜108形成直後に行い、ゲート絶縁膜108から酸素を多層膜104の領域105cに供給してもよい。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様であるトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置(記憶装置)の一例を、図面を用いて説明する。
図16(A)に半導体装置の断面図、図16(B)に半導体装置の回路図をそれぞれ示す。
図16(A)および図16(B)に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ400を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ402および容量素子404を有している。なお、トランジスタ402としては、先の実施の形態で説明したトランジスタを用いることができ、本実施の形態では、実施の形態1の図1に示すトランジスタ150を適用する例を示している。また、容量素子404は、一方の電極をトランジスタ402のゲート電極、他方の電極をトランジスタ402のソース電極またはドレイン電極、誘電体をトランジスタ402のゲート絶縁膜108と同じ材料を用いる構造とすることで、トランジスタ402と同時に形成することができる。
ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なる禁制帯幅を持つ材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコンなど)とし、第2の半導体材料を実施の形態1で説明した酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が低い電気特性により長時間の電荷保持を可能とする。
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明するが、pチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。また、情報を保持するために酸化物半導体を用いた先の実施の形態に示すようなトランジスタを用いる他は、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定する必要はない。
図16(A)におけるトランジスタ400は、半導体材料(例えば、結晶性シリコンなど)を含む基板410に設けられたチャネル形成領域と、チャネル形成領域を挟むように設けられた不純物領域と、不純物領域に接する金属間化合物領域と、チャネル形成領域上に設けられたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、を有する。なお、図において、明示的にはソース電極やドレイン電極を有しない場合があるが、便宜上、このような状態を含めてトランジスタと呼ぶ場合がある。また、この場合、トランジスタの接続関係を説明するために、ソース領域やドレイン領域を含めてソース電極やドレイン電極と表現することがある。つまり、たとえば、本明細書において、ソース電極との記載には、ソース領域が含まれうる。
基板410上にはトランジスタ400を囲むように素子分離絶縁層406が設けられており、トランジスタ400を覆うように絶縁膜420が設けられている。なお、素子分離絶縁層406は、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)や、STI(Shallow Trench Isolation)などの素子分離技術を用いて形成することができる。
例えば、結晶性シリコン基板を用いたトランジスタ400は、高速動作が可能である。このため、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを高速に行うことができる。トランジスタ402および容量素子404の形成前の処理として、トランジスタ400を覆う絶縁膜420にCMP処理を施して、絶縁膜420を平坦化すると同時にトランジスタ400のゲート電極の上面を露出させる。
絶縁膜420上にはトランジスタ402が設けられ、そのソース電極またはドレイン電極の一方は延在して、容量素子404の一方の電極として作用する。
図16(A)に示すトランジスタ402は、酸化物半導体膜にチャネルが形成されるトップゲート型トランジスタである。トランジスタ402は、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない半導体記憶装置とすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
また、トランジスタ402において、ソース電極またはドレイン電極が接している多層膜の界面近傍の領域に低抵抗領域が形成され、ソース電極およびドレイン電極をマスクにして、酸素を多層膜に添加することで、チャネル形成領域を高純度真性な領域とすることができ、酸素の添加により高純度真性な領域と低抵抗領域を同時につくり分けることができる。当該トランジスタは多層膜中のチャネル形成領域における酸素欠損量を低減することができ、電気特性が良好であるため、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
図16(A)に示すように、トランジスタ400とトランジスタ402は重畳するように形成することができるため、その占有面積を低減することができる。したがって、半導体装置の集積度を高めることができる。
次に、図16(A)に対応する回路構成の一例を図16(B)に示す。
図16(B)において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ400のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ400のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line)とトランジスタ402のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line)と、トランジスタ402のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、トランジスタ400のゲート電極と、トランジスタ402のソース電極またはドレイン電極の一方は、容量素子404の電極の他方と電気的に接続され、第5の配線(5th Line)と、容量素子404の電極の他方は電気的に接続されている。
図16(B)に示す半導体装置では、トランジスタ400のゲート電極の電位が保持可能という特徴を活かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジスタ402がオン状態となる電位にして、トランジスタ402をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ400のゲート電極、および容量素子404に与えられる。すなわち、トランジスタ400のゲート電極には、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ402がオフ状態となる電位にして、トランジスタ402をオフ状態とすることにより、トランジスタ400のゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
トランジスタ402のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ400のゲート電極の電荷は長時間にわたって保持される。
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ400のゲート電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジスタ400をnチャネル型とすると、トランジスタ400のゲート電極にHighレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Hは、トランジスタ400のゲート電極にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ400を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの間の電位V0とすることにより、トランジスタ400のゲート電極に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV0(>Vth_H)となれば、トランジスタ400は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV0(<Vth_L)となっても、トランジスタ400は「オフ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を判別することで、保持されている情報を読み出すことができる。
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読み出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ400が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_Hより小さい電位を第5の配線に与えればよい。または、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ400が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより大きい電位を第5の配線に与えればよい。
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
また、本実施の形態に示す半導体装置では、トランジスタ400は、プレーナ型のトランジスタだけでなく、様々なタイプのトランジスタとすることができる。例えば、Fin(フィン)型、TRI−GATE(トライゲート)型などのトランジスタなどとすることができる。トランジスタ400の断面図の例を、図16(C)に示す。図16(C)の一点差線より左側がチャネル長方向の断面図、右側がチャネル幅方向の断面図である。半導体基板2211の上に、絶縁膜2212が設けられている。半導体基板2211は、先端の細い凸部(フィンともいう。)を有する。なお、凸部の上には、絶縁膜が設けられていてもよい。その絶縁膜は、凸部を形成するときに、半導体基板2211がエッチングされないようにするためのマスクとして機能するものである。なお、凸部は、先端が細くなくてもよく、例えば、略直方体の凸部であってもよいし、先端が太い凸部であってもよい。半導体基板2211の凸部の上には、ゲート絶縁膜2214が設けられ、その上には、ゲート電極2213が設けられている。また、ゲート電極2213の側面にはサイドウォールが設けられている。半導体基板2211には、ソース領域およびドレイン領域2215が形成されている。なお、ここでは、半導体基板2211が凸部を有する例を示したが、本発明の一態様に係る半導体装置は、これに限定されない。例えば、SOI基板を加工して、凸部を有する半導体領域を形成しても構わない。
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため、ゲート絶縁膜の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
以上のように、微細化および高集積化を実現し、かつ高い電気的特性を付与された半導体装置、および該半導体装置の作製方法を提供することができる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様であるトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置について、実施の形態5に示した構成と異なる半導体装置の説明を行う。
図17(A)は、半導体装置の回路構成の一例を示し、図17(B)は半導体装置の一例を示す概念図である。なお、当該半導体装置に含まれるトランジスタ562としては、先の実施の形態で説明したトランジスタを用いることができる。また、容量素子554は、実施の形態5で説明した容量素子404と同様に、トランジスタ562の作製工程にて同時に作製することができる。
図17(A)に示す半導体装置において、ビット線BLとトランジスタ562のソース電極とは電気的に接続され、ワード線WLとトランジスタ562のゲート電極とは電気的に接続され、トランジスタ562のドレイン電極と容量素子554の一方の端子とは電気的に接続されている。
次に、図17(A)に示す半導体装置(メモリセル550)に、情報の書き込みおよび保持を行う場合について説明する。
まず、ワード線WLの電位を、トランジスタ562がオン状態となる電位として、トランジスタ562をオン状態とする。これにより、ビット線BLの電位が、容量素子554の一方の端子に与えられる(書き込み)。その後、ワード線WLの電位を、トランジスタ562がオフ状態となる電位として、トランジスタ562をオフ状態とすることにより、容量素子554の一方の端子の電位が保持される(保持)。
酸化物半導体を用いたトランジスタ562は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ562をオフ状態とすることで、容量素子554の一方の端子の電位(あるいは、容量素子554に蓄積された電荷)を極めて長時間にわたって保持することが可能である。
次に、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ562がオン状態となると、浮遊状態であるビット線BLと容量素子554とが導通し、ビット線BLと容量素子554の間で電荷が再分配される。その結果、ビット線BLの電位が変化する。ビット線BLの電位の変化量は、容量素子554の一方の端子の電位(あるいは容量素子554に蓄積された電荷)によって、異なる値をとる。
例えば、容量素子554の一方の端子の電位をV、容量素子554の容量をC、ビット線BLが有する容量成分(以下、ビット線容量とも呼ぶ)をCB、電荷が再分配される前のビット線BLの電位をVB0とすると、電荷が再分配された後のビット線BLの電位は、(CB×VB0+C×V)/(CB+C)となる。したがって、メモリセル550の状態として、容量素子554の一方の端子の電位がV1とV0(V1>V0)の2状態をとるとすると、電位V1を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB×VB0+C×V1)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB×VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
そして、ビット線BLの電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができる。
このように、図17(A)に示す半導体装置は、トランジスタ562のオフ電流が極めて小さいという特徴から、容量素子554に蓄積された電荷は長時間にわたって保持することができる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
次に、図17(B)に示す半導体装置について、説明を行う。
図17(B)に示す半導体装置は、上部に記憶回路として図17(A)に示したメモリセル550を複数有するメモリセルアレイ551(メモリセルアレイ551aおよび551b)を有し、下部に、メモリセルアレイ551を動作させるために必要な周辺回路553を有する。なお、周辺回路553は、メモリセルアレイ551と電気的に接続されている。
周辺回路553に設けられるトランジスタは、トランジスタ562とは異なる半導体材料を用いることが好ましい。例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いることがより好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、十分な高速動作が可能である。したがって、該トランジスタにより、高速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能である。
なお、図17(B)に示した半導体装置では、メモリセルアレイ551がメモリセルアレイ551aとメモリセルアレイ551bの積層である構成を例示したが、積層するメモリセルアレイの数はこれに限定されない。3つ以上のメモリセルアレイを積層する構成としても良いし、単層であってもよい。
トランジスタ562は、酸化物半導体を用いて形成されており、先の実施の形態で説明したトランジスタを用いることができる。酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が小さいため、長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ(換言すると、十分な高速動作が可能なトランジスタ)を用いた周辺回路と、酸化物半導体を用いたトランジスタ(より広義には、十分にオフ電流が小さいトランジスタ)を用いた記憶回路とを一体に備えることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現することができる。また、周辺回路と記憶回路を積層構造とすることにより、半導体装置の集積化を図ることができる。
以上のように、微細化および高集積化を実現し、かつ高い電気的特性を付与された半導体装置を提供することができる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明したトランジスタに用いることのできるCAAC−OS膜の結晶成長のモデルについて、図18乃至図20を用いて説明する。
図18(A)は、スパッタリング用ターゲット600にイオン601が衝突し、スパッタリング粒子602が剥離する様子を示した模式図である。なお、スパッタリング粒子602は、六角形の面がa−b面と平行な面である六角柱状であってもよいし、三角柱状であってもよい。その場合、六角形または三角形の面と垂直な方向がc軸方向である(図18(B)参照。)。スパッタリング粒子602は、酸化物の種類によっても異なるが、a−b面と平行な面の直径(円相当径)が1nm以上30nm以下、または1nm以上10nm以下程度となる。なお、イオン601は、酸素の陽イオンを用いる。また、酸素の陽イオンに加えて、アルゴンの陽イオンを用いてもよい。なお、アルゴンの陽イオンに代えて、その他希ガスの陽イオンを用いてもよい。
イオン601として酸素の陽イオンを用いることで、成膜時のプラズマダメージを軽減することができる。従って、イオン601がスパッタリング用ターゲット600の表面に衝突した際に、スパッタリング用ターゲット600の結晶性が低下すること、または非晶質化することを抑制できる。
剥離されたスパッタリング粒子602は、正に帯電させることが好ましい。ただし、スパッタリング粒子602が、正に帯電するタイミングは特に問わない。具体的には、スパッタリング粒子602がプラズマに曝されることで正に帯電する場合がある。または、イオン601の衝突時に電荷を受け取ることで正に帯電する場合がある。または、酸素の陽イオンであるイオン601がスパッタリング粒子602の側面、上面または下面に結合することで正に帯電する場合がある。
スパッタリング粒子602は、六角形状の面における角部に正の電荷を有する。六角形状の面の角部に正の電荷を有することで、正の電荷同士が反発し合い、平板状の形状を維持することができる。
スパッタリング粒子602の六角形状の面における角部が、正の電荷を有するためには、直流(DC)電源を用いることが好ましい。なお、高周波(RF)電源、交流(AC)電源を用いることもできる。ただし、RF電源は、大面積の基板へ成膜可能なスパッタリング装置への適用が困難である。また、以下に示す観点からAC電源よりもDC電源が好ましいと考えられる。
AC電源を用いた場合、隣接するターゲットが互いにカソード電位とアノード電位を繰り返す。図19(A)に示す期間Aでは、図19(B1)に示すようにターゲット1がカソードとして機能し、ターゲット2がアノードとして機能する。また、図19(A)に示す期間Bでは、図19(B2)に示すようにターゲット2がアノードとして機能し、ターゲット1がカソードとして機能する。期間Aと期間Bとを合わせると、20乃至50μ秒であり、期間Aと期間Bを一定周期で繰り返している。
スパッタリング粒子602は、正に帯電している場合、互いに反発し合うことにより、平板状の形状を維持することができる。ただし、AC電源を用いた場合、瞬間的に電界がかからない時間が生じるため、スパッタリング粒子602に帯電していた電荷が消失して、スパッタリング粒子の構造が崩れてしまうことがある(図19(C)参照。)。従って、AC電源を用いるよりも、DC電源を用いる方が好ましいことがわかる。
以下に、スパッタリング粒子の被成膜面に堆積する様子を図20を用いて説明する。なお、図20(A)は、基板加熱ありで成膜した場合を示し、図20(B)は、基板加熱なしで成膜した場合を示す。
図20(A)より、基板加熱している場合、スパッタリング粒子602は被成膜面603において、他のスパッタリング粒子602が堆積していない領域に移動し、マイグレーションすることで既に堆積している粒子の横に結合することで堆積していく。
当該メカニズムによって得られるCAAC−OS膜は、非晶質表面、非晶質絶縁膜表面、非晶質酸化物膜表面などであっても、高い結晶性を有する。
図20(B)より、基板加熱なしの場合、スパッタリング粒子602は被成膜面603に不規則に降り注ぐ。従って、スパッタリング粒子602が既に他のスパッタリング粒子602が堆積している領域も含め、無秩序に堆積していく。即ち、堆積して得られる酸化物膜は厚さが均一でなく、結晶の配向もバラバラになる。このようにして得られた酸化物膜は、平板状のスパッタリング粒子602が有する結晶性がある程度維持されるため、結晶部を有する酸化物膜となる。
なお、上述したようにスパッタリング粒子602は、例えば、a−b面と平行な面の直径が1nm以上30nm以下、または1nm以上10nm以下程度であり、成膜された酸化物膜に含まれる結晶部は、スパッタリング粒子602よりも小さくなることがある。例えば、10nm以下、または5nm以下の結晶部を有する酸化物膜となることがある。このような結晶部を有する酸化物膜を、ナノ結晶(nc:nano crystal)酸化物膜と呼ぶ。
ナノ結晶酸化物膜は、巨視的には無秩序な原子配列を有する膜と同等である。このため、測定範囲の広い(例えば、スパッタリング粒子602よりも大きいビーム径を有する)X線回折(XRD:X−ray diffraction)による分析では配向を示すピークが検出されない場合がある。また、スパッタリング粒子602よりも大きいビーム径を有する電子線によって得られる電子線回折パターンでは、ハローパターンが観測される場合がある。この場合、例えば、電子線のビーム径をスパッタリング粒子602より十分に小さい径としてナノ結晶酸化物膜を測定することで、得られる極微電子線回折パターンではスポット(輝点)を観測することができる。
ここで、ナノ結晶酸化物半導体膜の電子線回折パターンについて、図54乃至図60を用いて、以下説明を行う。
ナノ結晶酸化物半導体膜は、ビーム径が10nmφ以下とした電子線回折(極微電子線回折)を用いた電子線回折パターンにおいて、非晶質状態を示すハローパターンとも、特定の面に配向した結晶状態を示す規則性を有するスポットとも異なり、方向性を持たないスポットが観察される酸化物半導体膜である。
図54(A)にナノ結晶酸化物半導体膜の断面TEM(Transmission Electron Microscopy(透過型電子顕微鏡))像を示す。また、図54(B)に図54(A)のポイント1において極微電子線回折を用いて測定した電子線回折パターンを、図54(C)に図54(A)のポイント2において極微電子線回折を用いて測定した電子線回折パターンを、図54(D)に図54(A)のポイント3において極微電子線回折を用いて測定した電子線回折パターンをそれぞれ示す。
図54では、ナノ結晶酸化物半導体膜の一例として、In−Ga−Zn系酸化物膜を石英ガラス基板上に膜厚50nmで成膜した試料を用いる。図54に示すナノ微結晶酸化物半導体膜の成膜条件は、In:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)である酸化物ターゲットを用いて、酸素雰囲気下(流量45sccm)、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、基板温度を室温とした。そして、成膜したナノ結晶酸化物半導体膜を100nm以下(例えば、40nm±10nm)の幅に薄片化し、断面TEM像及び極微電子線回折による電子線回折パターンを得た。
図54(A)は、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「H−9000NAR」)を用い、で加速電圧を300kV、倍率200万倍として撮影したナノ結晶酸化物半導体膜の断面TEM像である。また、図54(B)乃至図54(D)は、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「HF−2000」)を用い、加速電圧を200kV、ビーム径を約1nmφとして極微電子線回折によって得られた電子線回折パターンである。なお、ビーム径を約1nmφとした場合の極微電子線回折での測定範囲は、5nmφ以上10nmφ以下である。
図54(B)に示すように、ナノ結晶酸化物半導体膜は、極微電子線回折を用いた電子線回折パターンにおいて、円周状に配置された複数のスポット(輝点)が観察される。換言すると、ナノ結晶酸化物半導体膜は、円周状(同心円状)に分布した複数のスポットが観察されるともいえる。または、円周状に分布した複数のスポットが複数の同心円を形成するともいえる。。
また、石英ガラス基板との界面近傍である図54(D)及び、ナノ結晶酸化物半導体膜の膜厚方向中央部の図54(C)においても図54(B)と同様に円周状に配置された複数のスポットが観察される。図54(C)において、メインスポットから円周状のスポットまでの距離は、3.88/nmから4.93/nmであった。面間隔に換算すると、0.203nmから0.257nmである。
図54の極微電子線回折パターンより、ナノ結晶酸化物半導体膜は、面方位が不規則であって、且つ定数の大きさの異なる結晶部が複数混在する膜であることがわかる。
次いで、図55(A)にナノ結晶酸化物半導体膜の平面TEM像を示す。また、図55(B)に図55(A)において円で囲んだ領域を、制限視野電子線回折を用いて測定した電子線回折パターンを示す。
図55では、ナノ結晶酸化物半導体膜の一例として、In−Ga−Zn系酸化物膜を石英ガラス基板上に膜厚30nmで成膜した試料を用いる。図55に示すナノ結晶酸化物半導体膜の成膜条件は、In:Ga:Zn=1:1:1(原子数比)である酸化物ターゲットを用いて、酸素雰囲気下(流量45sccm)、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、基板温度を室温とした。そして、試料を薄片化し、ナノ結晶酸化物半導体膜の平面TEM像及び電子線回折による電子線回折パターンを得た。
図55(A)は、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「H−9000NAR」)を用い、加速電圧を300kV、倍率50万倍として撮影したナノ結晶酸化物半導体膜の平面TEM写真である。また、図55(B)は、制限視野を300nmφとして電子線回折によって得られた電子線回折パターンである。なお、電子線の広がり(およそ数nm)を考慮すると、図55(B)の測定範囲は、300nmφ以上である。
図55(B)に示すように、ナノ結晶酸化物半導体膜では、極微電子線回折よりも測定範囲の広い制限視野電子線回折を用いた電子線回折パターンでは、極微電子線回折によって観察された複数のスポットがみられず、ハローパターンが観察される。
次に、図56に、図54及び図55の電子線回折パターンにおける回折強度の分布を概念的に示す。図56(A)は、図54(B)乃至図54(D)に示す極微電子線回折パターンにおける回折強度の分布の概念図である。また、図56(B)は、図55(B)に示す制限視野電子線回折パターンにおける回折強度の分布の概念図である。また、図56(C)は単結晶構造または多結晶構造の電子線回折パターンにおける回折強度の分布の概念図である。
図56において、縦軸はスポットなどの分布を表す電子線回折強度(任意単位)、横軸はメインスポットからの距離を示す。
図56(C)に示す単結晶構造または多結晶構造においては、結晶部が配向する面の面間隔(d値)に応じた、メインスポットからの特定の距離にピークがみられる。
一方、図54に示すようにナノ結晶酸化物半導体膜の極微電子線回折パターンで観察される複数のスポットによって形成された円周状の領域は、比較的大きい幅を有する。よって、図56(A)は離散的な分布を示す。また、極微電子線回折パターンにおいて、同心円状の領域間に明確なスポットとならないものの輝度の高い領域が存在することが分かる。
また、図56(B)に示すように、ナノ結晶酸化物半導体膜の制限視野電子線回折パターンにおける電子線回折分布は、連続的な強度分布を示す。図56(B)は、図56(A)に示す電子線回折分布を広範囲で観察した結果と近似可能であるため、複数のスポットが重なってつながり、連続的な強度分布が得られたものと考察できる。
図56(A)乃至図56(C)に示すように、ナノ結晶酸化物半導体膜は、面方位が不規則であり、且つ、大きさの異なる結晶部が複数混在する膜であり、且つ、その結晶部は、制限視野電子線回折パターンにおいてはスポットが観察されない程度に、極微細であることが示唆される。
複数のスポットが観察された図54において、ナノ結晶酸化物半導体膜は50nm以下に薄片化されている。また電子線のビーム径は1nmφに収束されているため、その測定範囲は5nm以上10nm以下である。よって、ナノ結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、50nm以下であり、例えば、10nm以下、または5nm以下であることが推測される。
ここで、図57に、石英ガラス基板における極微電子線回折パターンを示す。図57の測定条件は、図54(B)乃至図54(D)と同様とした。
図57に示すように、非晶質構造を有する石英ガラス基板では、特定のスポットを有さず、メインスポットから輝度が連続的に変化するハローパターンが観測される。このように、非晶質構造を有する膜においては、極微小な領域の電子線回折を行ったとしても、ナノ結晶酸化物半導体膜で観察されるような円周状に分布した複数のスポットが観察されない。従って、図54(B)乃至図54(D)で観察される円周状に分布した複数のスポットは、ナノ結晶酸化物半導体膜に特有のものであることが確認される。
また、図58に、図54(A)に示すポイント2において、測定箇所にビーム径を約1nmφに収束した電子線を1分間照射した後に、測定を行った電子線回折パターンを示す。
図58に示す電子線回折パターンは、図54(C)に示す電子線回折パターンと同様に、円周状に分布した複数のスポットが観察され、両者の測定結果に特段の相違点は確認されない。このことは、図54(C)の電子線回折パターンで確認された結晶部はナノ結晶酸化物半導体膜の成膜時から存在していることを意味しており、収束した電子線を照射したことで結晶部が形成されたものではないことを意味する。
次に、図59に、図54(A)に示す断面TEM像の部分拡大図を示す。図59(A)は、図54(A)のポイント1近傍(ナノ結晶酸化物半導体膜表面)を、倍率800万倍で観察した断面TEM像である。また、図59(B)は、図54(A)のポイント2近傍(ナノ結晶酸化物半導体膜の膜厚方向中央部)を、倍率800万倍で観察した断面TEM像である。
図59に示す断面TEM像からは、ナノ結晶酸化物半導体膜において結晶構造が明確には確認できない。
また、図54及び図55に用いた、石英ガラス基板上に本実施の形態のナノ結晶酸化物半導体膜が成膜された試料をX線回折(XRD:X−Ray Diffraction)を用いて分析した。図60にout−of−plane法を用いてXRDスペクトルを測定した結果を示す。
図60において、縦軸はX線回折強度(任意単位)であり、横軸は回折角2θ(deg.)である。なお、XRDスペクトルの測定は、Bruker AXS社製X線回折装置D−8 ADVANCEを用いた。
図60に示すように、2θ=20乃至23°近傍に石英に起因するピークが観察されるものの、ナノ結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部に起因するピークは確認できない。
図59及び図60の結果からも、ナノ結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、極微細な結晶部を含有する微結晶領域であることが示唆される。
以上示したように、本実施の形態のナノ結晶酸化物半導体膜では、測定範囲の広いX線回折(XRD:X−ray diffraction)による分析では配向を示すピークが検出されず、また、測定範囲の広い制限視野電子線回折によって得られる電子線回折パターンでは、ハローパターンが観測される。よって、本実施の形態のナノ結晶酸化物半導体膜は、巨視的には無秩序な原子配列を有する膜と同等であるといえる。しかしながら、電子線のビーム径が十分に小さい径(例えば、10nmφ以下)の極微電子線回折よってナノ結晶酸化物半導体膜を測定することで、得られる極微電子線回折パターンではスポット(輝点)を観測することができる。よって、本実施の形態のナノ結晶酸化物半導体膜は、面方位の不規則な極微な結晶部(例えば、粒径が10nm以下、または5nm以下、または3nm以下の結晶部)が凝集して形成された膜と推測できる。また、極微細な結晶部を含有するナノ結晶領域は、ナノ結晶酸化物半導体膜の膜厚方向の全領域において含まれる。
なお、被成膜面603は絶縁表面を有すると好ましい。被成膜面603が絶縁表面を有することにより、被成膜面603に堆積したスパッタリング粒子602から正の電荷が消失しにくくなる。ただし、スパッタリング粒子602の堆積速度が正の電荷の消失よりも遅い場合は、被成膜面603が導電性を有していても構わない。また、被成膜面603は、非晶質表面、非晶質絶縁表面であると好ましい。
以上のような方法でスパッタリング用ターゲットを使用することで、厚さが均一であり、結晶の配向の揃った酸化物膜を成膜することができる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様に係るスパッタリング用ターゲットについて説明する。
スパッタリング用ターゲットは、好ましくは相対密度が90%以上、95%以上、または99%以上である。
スパッタリング用ターゲットは、複数の結晶粒を有する多結晶酸化物を含み、複数の結晶粒の平均粒径が3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。
または、スパッタリング用ターゲットは、複数の結晶粒を有する多結晶酸化物を含み、複数の結晶粒のうち、粒径が0.4μm以上1μm以下である結晶粒の割合が8%以上、好ましくは15%以上、さらに好ましくは25%以上である。
なお、結晶粒の粒径は、例えば電子後方散乱回折法(EBSD:Electron Backscatter Diffraction)によって測定することができる。ここで示す結晶粒の粒径は、EBSDにより得られる結晶粒マップから測定した一つの結晶粒の断面積を、結晶粒の断面を正円形としたときの直径に換算したものである。具体的には、結晶粒の断面積がSであるとき、結晶粒の半径をrと置き、S=πr2の関係から半径rを算出し、半径rの2倍を粒径としている。
また、スパッタリング用ターゲットに含まれる複数の結晶粒は、劈開面を有する。劈開面は、例えばa−b面に平行な面である。
複数の結晶粒の粒径が小さいことにより、スパッタリング用ターゲットにイオンを衝突させると、劈開面からスパッタリング粒子が剥離する。剥離したスパッタリング粒子は、劈開面と平行な上面および下面を有する平板状となる。また、複数の結晶粒の粒径が小さいことにより、結晶に歪みが生じ、劈開面から剥離しやすくなる。
また、スパッタリング用ターゲットに含まれる複数の結晶粒の六方晶である場合、平板状のスパッタリング粒子は、内角が120°である概略正六角形の上面および下面を有する六角柱状となる。
また、スパッタリング粒子は理想的には単結晶であるが、一部がイオンの衝突の影響などによって非晶質化していても構わない。
このようなスパッタリング用ターゲットに含まれる多結晶酸化物として、In、M(MはGa、Sn、Hf、Al、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLu)およびZnを含む酸化物を用いればよい。In、MおよびZnを含む酸化物をIn−M−Zn酸化物とも表記する。
また、In−M−Zn酸化物に含まれるIn、MおよびZnの原子数比は、化学量論的組成の近傍となることが好ましい。In−M−Zn酸化物に含まれるIn、MおよびZnの原子数比が化学量論的組成の近傍となることによって、当該In−M−Zn酸化物の結晶性を高めることができる。
In−M−Zn酸化物において、劈開面はMとZnとが混合されたa−b面と平行な面であることが多い。
図21を用いて、上述したスパッタリング用ターゲットの作製方法を示す。
図21(A)では、スパッタリング用ターゲットとなる複数の金属元素を含む酸化物粉末を作製する。まずは、工程S101にて酸化物粉末を秤量する。
ここでは、複数の金属元素を含む酸化物粉末として、In、MおよびZnを含む酸化物粉末(In−M−Zn酸化物粉末ともいう。)を作製する場合について説明する。具体的には、原料としてInOX酸化物粉末、MOY酸化物粉末およびZnOZ酸化物粉末を用意する。なお、X、YおよびZは任意の正数であり、例えばXは1.5、Yは1.5、Zは1とすればよい。もちろん、上記の酸化物粉末は一例であり、所望の組成とするために適宜酸化物粉末を選択すればよい。なお、Mは、Ga、Sn、Hf、Al、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbまたはLuである。本実施の形態では三種の酸化物粉末を用いた例を示すが、これに限定されない。例えば、本実施の形態を四種以上の酸化物粉末を用いた場合に適用しても構わないし、一種または二種の酸化物粉末を用いた場合に適用しても構わない。
次に、InOX酸化物粉末、MOY酸化物粉末およびZnOZ酸化物粉末を所定のmol数比で混合する。
所定のmol数比としては、例えば、InOX酸化物粉末、MOY酸化物粉末およびZnOZ酸化物粉末が、2:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3、1:1:2、3:1:4、1:3:2、1:3:4、1:3:6、1:3:8、1:3:10、1:3:12、1:6:4、1:6:6、1:6:8、1:6:10、1:6:12、1:6:14、1:6:16、1:6:20または3:1:2とする。このようなmol数比とすることで、後に結晶性の高い多結晶酸化物を含むスパッタリング用ターゲットを得やすくなる。
次に、工程S102にて、所定のmol数比で混合したInOX酸化物粉末、MOY酸化物粉末およびZnOZ酸化物粉末に対し第1の焼成を行うことでIn−M−Zn酸化物を得る。
なお、第1の焼成は、不活性雰囲気、酸化性雰囲気または減圧雰囲気で行い、温度は400℃以上1700℃以下、好ましくは900℃以上1500℃以下とする。第1の焼成の時間は、例えば3分以上24時間以下、好ましくは30分以上17時間以下、さらに好ましくは30分以上5時間以下で行えばよい。第1の焼成を前述の条件で行うことで、主たる反応以外の余分な反応を抑制でき、In−M−Zn酸化物粉末中に含まれる不純物濃度を低減することができる。そのため、In−M−Zn酸化物粉末の結晶性を高めることができる。
また、第1の焼成は、温度または/および雰囲気を変えて、複数回行ってもよい。例えば、第1の雰囲気にて第1の温度でIn−M−Zn酸化物粉末を保持した後、第2の雰囲気にて第2の温度で保持しても構わない。具体的には、第1の雰囲気を不活性雰囲気または減圧雰囲気として、第2の雰囲気を酸化性雰囲気とすると好ましい。これは、第1の雰囲気にてIn−M−Zn酸化物粉末に含まれる不純物を低減する際にIn−M−Zn酸化物中に酸素欠損が生じることがあるためである。そのため、第2の雰囲気にて得られるIn−M−Zn酸化物中の酸素欠損を低減することが好ましい。In−M−Zn酸化物中の不純物濃度を低減し、かつ酸素欠損を低減することにより、In−M−Zn酸化物粉末の結晶性を高めることができる。
次に、工程S103にて、In−M−Zn酸化物を粉砕することでIn−M−Zn酸化物粉末を得る。
In−M−Zn酸化物は、a−b面に平行な面の表面構造を多く含む。そのため、得られるIn−M−Zn酸化物粉末は、a−b面に平行な上面および下面を有する平板状の結晶粒を多く含むことになる。また、In−M−Zn酸化物の結晶は六方晶となることが多いため、前述の平板状の結晶粒は内角が120°である概略正六角形の面を有する六角柱状であることが多い。
次に、得られたIn−M−Zn酸化物粉末の粒径を工程S104にて確認する。ここでは、In−M−Zn酸化物粉末の平均粒径が3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2μm以下となっていることを確認する。なお、工程S104を省略し、粒径フィルターを用いて、粒径が3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2μm以下であるIn−M−Zn酸化物粉末のみを選り分けてもよい。In−M−Zn酸化物粉末を、粒径が3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2μm以下に選り分けることで、確実にIn−M−Zn酸化物粉末の平均粒径を3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2μm以下とすることができる。
工程S104にて、In−M−Zn酸化物粉末の平均粒径が所定の値を超えた場合、工程S103に戻り、再びIn−M−Zn酸化物粉末を粉砕する。
以上のようにして、平均粒径が3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2μm以下であるIn−M−Zn酸化物粉末を得ることができる。なお、平均粒径が3μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2μm以下であるIn−M−Zn酸化物粉末を得ることで、後に作製するスパッタリング用ターゲットに含まれる結晶粒の粒径を小さくすることができる。
次に、図21(B)では、図21(A)に示すフローチャートで得られたIn−M−Zn酸化物粉末を用いてスパッタリング用ターゲットを作製する。
工程S111にて、In−M−Zn酸化物粉末を成形する。ここで、成形とは、型に均一な厚さで敷き詰めることをいう。具体的には、型にIn−M−Zn酸化物粉末を導入し、外部から振動を与えることで成形すればよい。または、型にIn−M−Zn酸化物粉末を導入し、ローラーなどを用いて均一な厚さに成形すればよい。なお、工程S111では、In−M−Zn酸化物粉末に水と、分散剤と、バインダとを混合したスラリーを成形してもよい。その場合、型にスラリーを流し込んだ後で、型の底面から吸引することで成形すればよい。その後、吸引後の成形体に対し、乾燥処理を行う。乾燥処理は自然乾燥により行うと成形体にひびが入りにくいため好ましい。その後、300℃以上700℃以下の温度で加熱処理することで、自然乾燥では取りきれなかった残留水分などを除去する。
a−b面に平行な上面および下面を有する平板状の結晶粒を多く含むIn−M−Zn酸化物粉末を成形することで、結晶粒のa−b面と平行な面が上を向いて並べられる。従って、得られたIn−M−Zn酸化物粉末を成形することで、a−b面に平行な面の表面構造の割合を増加させることができる。なお、型は、金属製または酸化物製とすればよく、矩形または丸形の上面形状を有する。
次に、工程S112にて、In−M−Zn酸化物粉末に対し第1の加圧処理を行う。その後、工程S113にて、第2の焼成を行い、板状In−M−Zn酸化物を得る。第2の焼成は第1の焼成と同様の条件および方法で行えばよい。第2の焼成を行うことで、In−M−Zn酸化物の結晶性を高めることができる。
なお、第1の加圧処理は、In−M−Zn酸化物粉末を押し固めることができればよく、例えば、型と同種で設けられたおもりなどを用いて行えばよい。または、圧縮空気などを用いて高圧で押し固めてもよい。そのほか、様々な技術を用いて第1の加圧処理を行うことができる。なお、第1の加圧処理は、第2の焼成と同時に行っても構わない。
第1の加圧処理の後に平坦化処理を行ってもよい。平坦化処理は、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理などを用いればよい。
こうして得られた板状In−M−Zn酸化物は、結晶性の高い多結晶酸化物となる。
次に、工程S114にて、得られた板状In−M−Zn酸化物の厚さを確認する。板状In−M−Zn酸化物が所望の厚さより薄い場合は、工程S111に戻り、板状In−M−Zn酸化物上にIn−M−Zn酸化物粉末を敷き詰め、成形する。板状In−M−Zn酸化物が所望の厚さである場合は、当該板状In−M−Zn酸化物を以て、スパッタリング用ターゲットとする。以下は、板状In−M−Zn酸化物が所望の厚さより薄かった場合について説明する。
次に、工程S112にて、板状In−M−Zn酸化物、および板状In−M−Zn酸化物上のIn−M−Zn酸化物粉末に対し第2の加圧処理を行う。その後、工程S113にて、第3の焼成を行い、In−M−Zn酸化物粉末の分だけ厚さの増した板状In−M−Zn酸化物を得る。厚さの増した板状In−M−Zn酸化物は、板状In−M−Zn酸化物を種結晶として結晶成長させて得られるため、結晶性の高い多結晶酸化物となる。
なお、第3の焼成は第2の焼成と同様の条件および方法で行えばよい。また、第2の加圧処理は第1の加圧処理と同様の条件および方法で行えばよい。第2の加圧処理は、第3の焼成と同時に行っても構わない。
再び、工程S114にて、得られた板状In−M−Zn酸化物の厚さを確認する。
以上の工程によって、結晶の配向性を高めつつ徐々に板状In−M−Zn酸化物を厚くすることができる。
この板状In−M−Zn酸化物を厚くする工程をn回(nは自然数)繰り返すことで、所望の厚さ(t)、例えば2mm以上20mm以下、好ましくは3mm以上20mm以下の板状In−M−Zn酸化物を得ることができる。当該板状In−M−Zn酸化物を以て、スパッタリング用ターゲットとする。
その後、平坦化処理を行ってもよい。
なお、得られたスパッタリング用ターゲットに対し、第4の焼成を行っても構わない。第4の焼成は第1の焼成と同様の条件および方法で行えばよい。第4の焼成を行うことで、さらに結晶性の高い多結晶酸化物を含むスパッタリング用ターゲットを得ることができる。
以上のようにして、a−b面に平行な劈開面を有し、複数の結晶粒を有する多結晶酸化物を含み、複数の結晶粒の平均粒径が小さいスパッタリング用ターゲットを作製することができる。
なお、このようにして作製したスパッタリング用ターゲットは高密度にすることができる。スパッタリング用ターゲットの密度が高いことで、成膜される膜密度も高くできる。具体的には、スパッタリング用ターゲットの相対密度が90%以上、95%以上、または99%以上とできる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の一態様に用いることのできるCAAC−OS膜について、電子線回折パターンの観察結果を説明する。
本実施の形態に用いるCAAC−OS膜は、In−Ga−Zn酸化物(In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比])であるターゲット、および酸素を含むスパッタガスを用いたスパッタリング法で形成したIn−Ga−Zn系酸化物膜である。当該CAAC−OS膜の作製方法等の詳細な説明は、先の実施の形態を参照することができる。
図45にCAAC−OS膜の断面TEM(Transmission Electron Microscopy(透過型電子顕微鏡))像を示す。また、図46に図45のポイント1乃至ポイント4において電子線回折を用いて測定した電子線回折パターンを示す。
図45に示す断面TEM画像は、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「H−9000NAR」)を用い、加速電圧を300kV、倍率200万倍で撮影した画像である。また、図46に示す電子線回折パターンは、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製「HF−2000」)を用い、加速電圧を200kV、ビーム径を約1nmφまたは約50nmφとした電子線回折パターンである。なお、ビーム径が10nmφとした電子線回折を、特に極微電子線回折と呼ぶことがある。また、ビーム径を約1nmφとした場合の電子線回折での測定範囲は、5nmφ以上10nmφ以下である。
図45に示すポイント1(膜表面側)、ポイント2(膜中央)、ポイント3(膜下地側)における電子線回折パターンが図46(A)、(B)、(C)にそれぞれ対応しており、電子ビーム径を約1nmφとした電子線回折パターンである。また、図45に示すポイント4(膜全体)における電子線回折パターンが図46(D)であり、電子ビーム径を約50nmφとした電子線回折パターンである。
ポイント1(膜表面側)およびポイント2(膜中央)の電子線回折パターンは、スポット(輝点)によるパターンの形成が確認できるが、ポイント3(膜下地側)では、ややパターンが崩れている。これは、CAAC−OS膜の膜厚方向において、結晶状態が異なることを示唆している。なお、ポイント4(膜全体)においては、スポット(輝点)によるパターンの形成が確認できることから、膜全体としてはCAAC−OS膜である、または、CAAC−OS膜を含む膜であるということができる。
図47は、図45におけるポイント1(膜表面側)の近傍の拡大写真である。層間絶縁膜であるSiON膜との界面までCAAC−OS膜の配向性を示す明瞭な格子像を確認することができる。
図48(A)、(B)は、図45の断面TEM観察に用いたCAAC−OS膜とは異なるCAAC−OS膜の断面TEM写真とX線回折スペクトルである。CAAC−OS膜は様々な形態があり、図48(B)に示すような2θ=31°近傍に結晶成分を示すピークAが現れる。なお、当該ピークは明瞭に現れない場合もある。
図48(A)のCAAC−OS膜に同心円で示す領域において、電子線のビーム径を1nmφ、20nmφ、50nmφ、70nmφとして、電子線回折を行った結果を図49(A)、(B)、(C)、(D)に示す。電子線のビーム径が1nmφにおいては、図46(A)、(B)と同様に明瞭なスポット(輝点)によるパターンの形成を確認することができる。電子線のビーム径を大きくしていくとスポット(輝点)がやや不明瞭になるが、回折パターンは確認することができ、膜全体としてはCAAC−OS膜である、またはCAAC−OS膜を含む膜であるということができる。
図50(A)、(B)は、図48(A)の断面TEM観察に用いたCAAC−OS膜を450℃でアニールした後の断面TEM写真とX線回折スペクトルである。
図50(A)のCAAC−OS膜に同心円で示す領域において、電子線のビーム径を1nmφ、20nmφ、50nmφ、70nmφとして、電子線回折を行った結果を図51(A)、(B)、(C)、(D)に示す。図49に示した結果と同様に、電子線のビーム径が1nmφにおいては、明瞭なスポット(輝点)によるパターンの形成を確認することができる。また、電子線のビーム径を大きくしていくとスポット(輝点)がやや不明瞭になるが、回折パターンは確認することができ、膜全体としてはCAAC−OS膜である、またはCAAC−OS膜を含む膜であるということができる。
図52(A)、図52(B)は、図45の断面TEM写真に用いたCAAC−OS膜、および図48(A)の断面TEM観察に用いたCAAC−OS膜とは異なるCAAC−OS膜の断面TEM写真とX線回折スペクトルである。CAAC−OS膜は様々な形態があり、図52(B)に示すように2θ=31°近傍に結晶成分を示すピークAが現れるとともに、スピネル結晶構造に由来するピークBが現れる場合もある。
図52(A)のCAAC−OS膜に同心円で示す領域において、電子線のビーム径を1nmφ、20nmφ、50nmφ、90nmφとして、電子線回折を行った結果を図53(A)、(B)、(C)、(D)に示す。電子線のビーム径が1nmφにおいては、明瞭なスポット(輝点)によるパターンの形成を確認することができる。また、電子線のビーム径を大きくしていくとスポット(輝点)がやや不明瞭になるが、回折パターンは確認することができる。また、ビーム径90nmφでは、より明瞭なスポット(輝点)を確認することができる。したがって、膜全体としてはCAAC−OS膜である、またはCAAC−OS膜を含む膜であるということができる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態10)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明したトランジスタを用いることの半導体装置(表示装置)の例について説明する。
<半導体装置の構成>
図26(A)に、半導体装置の一例を示す。図26(A)に示す半導体装置は、画素部1100と、走査線駆動回路1104と、信号線駆動回路1106と、各々が平行または略平行に配設され、かつ走査線駆動回路1104によって電位が制御されるm本の走査線1107と、各々が平行または略平行に配設され、かつ信号線駆動回路1106によって電位が制御されるn本の信号線1109と、を有する。さらに、画素部1100はマトリクス状に配設された複数の画素1101を有する。また、走査線1107に沿って、各々が平行または略平行に配設された容量線1115を有する。なお、容量線1115は、信号線1109に沿って、各々が平行または略平行に配設されていてもよい。
各走査線1107は、画素部1100においてm行n列に配設された画素1101のうち、いずれかの行に配設されたn個の画素1101と電気的に接続される。また、各信号線1109は、m行n列に配設された画素1101のうち、いずれかの列に配設されたm個の画素1101に電気的と接続される。m、nは、ともに1以上の整数である。また、各容量線1115は、m行n列に配設された画素1101のうち、いずれかの行に配設されたn個の画素1101と電気的に接続される。なお、容量線1115が、信号線1109に沿って、各々が平行または略平行に配設されている場合は、m行n列に配設された画素1101のうち、いずれかの列に配設されたm個の画素1101に電気的と接続される。
図26(B)は、図26(A)に示す半導体装置が有する画素1101の回路図の一例である。図26(B)に示す画素1101は、走査線1107および信号線1109と電気的に接続されたトランジスタ1103と、一方の電極がトランジスタ1103のドレイン電極と電気的に接続され、他方の電極が一定の電位を供給する容量線1115と電気的に接続された容量素子1105と、画素電極がトランジスタ1103のドレイン電極および容量素子1105の一方の電極に電気的に接続され、画素電極と対向して設けられる電極(対向電極)が対向電位を供給する配線に電気的に接続された液晶素子1108と、を有する。
液晶素子1108は、トランジスタ1103および画素電極が形成される基板と、対向電極が形成される基板とで挟持される液晶の光学的変調作用によって、光の透過または非透過を制御する素子である。なお、液晶の光学的変調作用は、液晶にかかる電界(縦方向の電界または斜め方向の電界を含む)によって制御される。なお、画素電極が形成される基板において対向電極(共通電極ともいう)が形成される場合、液晶にかかる電界は横方向の電界となる。
次いで、液晶表示装置の画素1101の具体的な例について説明する。画素1101の上面図を図27に示す。なお、図27においては、対向電極および液晶素子を省略する。
図27において、走査線1107は、信号線1109に略直交する方向(図中左右方向)に延伸して設けられている。信号線1109は、走査線1107に略直交する方向(図中上下方向)に延伸して設けられている。容量線1115は、走査線1107と平行方向に延伸して設けられている。なお、走査線1107および容量線1115は、走査線駆動回路1104(図26(A)参照)と電気的に接続されており、信号線1109は、信号線駆動回路1106(図26(A)参照)に電気的に接続されている。
トランジスタ1103は、走査線1107および信号線1109が交差する領域に設けられている。トランジスタ1103は、少なくとも、チャネル形成領域を有する半導体膜1111と、ゲート電極と、ゲート絶縁膜(図27に図示せず)と、ソース電極と、およびドレイン電極とを含む。なお、走査線1107において、半導体膜1111と重畳する領域はトランジスタ1103のゲート電極として機能する。信号線1109において、半導体膜1111と重畳する領域はトランジスタ1103のソース電極として機能する。導電膜1113において、半導体膜1111と重畳する領域はトランジスタ1103のドレイン電極として機能する。このため、ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極をそれぞれ、走査線1107、信号線1109、および導電膜1113と示す場合がある。また、図27において、走査線1107は、上面形状において端部が半導体膜の端部より外側に位置する。このため、走査線1107はバックライトなどの光源からの光を遮る遮光膜として機能する。この結果、トランジスタに含まれる半導体膜1111に光が照射されず、トランジスタの電気特性の変動を抑制することができる。
また、導電膜1113は、開口1117を通じて透光性を有する導電膜で形成される画素電極1121bと電気的に接続されている。なお、図27において、画素電極1121bはハッチングを省略して図示している。
容量素子1105は、画素1101内の容量線1115および信号線1109で囲まれる領域に設けられている。容量素子1105は、開口1123aおよび開口1123bに設けられた電極1121aおよび導電膜1125を通じて容量線1115と電気的に接続されている。容量素子1105は、透光性を有する酸化物半導体で形成され、導電率を増大させた透光性を有する導電膜1120と、透光性を有する画素電極1121bと、誘電体膜として、トランジスタ1103に含まれ、透光性を有する絶縁膜(図27に図示せず)とで構成されている。即ち、容量素子1105は透光性を有する。
このように導電膜1120は透光性を有するため、画素1101内に容量素子1105を大きく(大面積に)形成することができる。従って、開口率を高めつつ、代表的には55%以上、好ましくは60%以上とすることが可能であると共に、電荷容量を増大させた半導体装置を得ることができる。例えば、解像度の高い半導体装置、例えば液晶表示装置においては、画素の面積が小さくなり、容量素子の面積も小さくなる。このため、解像度の高い半導体装置において、容量素子に蓄積される電荷容量が小さくなる。しかしながら、本実施の形態に示す容量素子1105は透光性を有するため、当該容量素子を画素に設けることで、各画素において十分な電荷容量を得つつ、開口率を高めることができる。代表的には、画素密度が200ppi以上、さらには300ppi以上である高解像度の半導体装置に好適に用いることができる。また、本発明の一態様は、高解像度の表示装置においても、開口率を高めることができるため、バックライトなどの光源の光を効率よく利用することができ、表示装置の消費電力を低減することができる。
次いで、図27の一点鎖線A1−A2間、一点鎖線B1−B2間、一点鎖線C1−C2間、および走査線駆動回路1104(図26(A)参照)に設けられるトランジスタの断面図を図28に示す。ここでは、走査線駆動回路1104の上面図を省略すると共に、走査線駆動回路1104の断面図をD1−D2に示す。なお、ここでは、走査線駆動回路1104に設けられるトランジスタの断面図を示すが、該トランジスタは信号線駆動回路1106にも設けることができる。
はじめに、画素1101の一点鎖線A1−A2間、一点鎖線B1−B2間、および一点鎖線C1−C2間の構造について説明する。基板1102上に、トランジスタ1103のゲート電極を含む走査線1107と、走査線1107と同一表面上に設けられている容量線1115とが設けられている。走査線1107および容量線1115上にゲート絶縁膜1127が設けられている。ゲート絶縁膜1127の走査線1107と重畳する領域上に半導体膜1111が設けられており、ゲート絶縁膜1127上に導電膜1120が設けられている。半導体膜1111上、およびゲート絶縁膜1127上にトランジスタ1103のソース電極を含む信号線1109と、トランジスタ1103のドレイン電極を含む導電膜1113とが設けられている。導電膜1120上に導電膜1125が設けられている。ゲート絶縁膜1127上、信号線1109上、半導体膜1111上、導電膜1113上、導電膜1125上、導電膜1120上にトランジスタ1103の保護絶縁膜として機能する絶縁膜1129、絶縁膜1131および絶縁膜1133が設けられている。ゲート絶縁膜1127、絶縁膜1129、絶縁膜1131および絶縁膜1133には、容量線1115に達する開口1123aが設けられており、また、絶縁膜1129、絶縁膜1131および絶縁膜1133には、導電膜1125に達する開口1123bが設けられており、開口1123a、開口1123b、容量線1115上、導電膜1125上および絶縁膜1133上に電極1121aが設けられている。絶縁膜1129、絶縁膜1131および絶縁膜1133には導電膜1113に達する開口1117(図27参照)が設けられており、開口1117および絶縁膜1133上に画素電極1121bが設けられている。
本実施の形態に示す容量素子1105は、一対の電極のうち一方の電極が半導体膜1111と同様に形成され、導電率を増大させた導電膜1120であり、一対の電極のうち他方の電極が画素電極1121bであり、一対の電極の間に設けられた誘電体膜が絶縁膜1129、絶縁膜1131および絶縁膜1133である。
次に、走査線駆動回路1104に設けられるトランジスタの構造について説明する。基板1102上に、トランジスタ1623のゲート電極1627が設けられている。ゲート電極1627上にゲート絶縁膜1127が設けられている。ゲート絶縁膜1127のゲート電極1627と重畳する領域上に半導体膜1628が設けられている。半導体膜1628上、およびゲート絶縁膜1127上にトランジスタ1623のソース電極1629およびドレイン電極1639が設けられている。ゲート絶縁膜1127上、ソース電極1629上、半導体膜1628上、およびドレイン電極1639上にトランジスタ1623の保護絶縁膜として機能する絶縁膜1129、絶縁膜1131および絶縁膜1133が設けられている。絶縁膜1133上には、導電膜1641が設けられている。
なお、基板1102と、走査線1107、容量線1115およびゲート電極1627、並びにゲート絶縁膜1127との間には下地絶縁膜が設けられていてもよい。
トランジスタ1623において、半導体膜1628を介して、ゲート電極1627と重なる導電膜1641を設けることで、異なるドレイン電圧において、オン電流の立ち上がりゲート電圧のばらつきを低減することができる。また、導電膜1641と対向する半導体膜1628の面において、ソース電極1629およびドレイン電極1639の間に流れる電流を制御することが可能であり、異なるトランジスタにおける電気特性のばらつきを低減することができる。また、導電膜1641を設けることで、周囲の電界の変化が半導体膜1628へ与える影響を軽減し、トランジスタの信頼性を向上させることができる。さらには、導電膜1641の電位を、駆動回路の最低電位(Vss、例えばソース電極1629の電位を基準とする場合、ソース電極1629の電位)と同電位またはそれと同等電位とすることで、トランジスタのしきい値電圧の変動を低減することが可能であり、トランジスタの信頼性を高めることができる。
絶縁膜1129および絶縁膜1131は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa−Zn系金属酸化物などの酸化絶縁材料を用いた、単層構造または積層構造で設けることができる。
絶縁膜1129の厚さは、5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上50nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下とすることができる。絶縁膜1131の厚さは、30nm以上500nm以下、好ましくは150nm以上400nm以下とすることができる。
また、絶縁膜1133は、例えば窒化酸化シリコン、窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの窒化絶縁材料を用いた、単層構造または積層構造で設けることができる。
絶縁膜1133として、水素含有量が少ない窒化絶縁膜を設けてもよい。当該窒化絶縁膜としては、例えば、TDS分析によって測定される水素の放出量が、5.0×1021atoms/cm3未満であり、好ましくは3.0×1021atoms/cm3未満であり、さらに好ましくは1.0×1021atoms/cm3未満である窒化絶縁膜である。
絶縁膜1133は、外部から水素や水などの不純物の侵入を抑制する機能を発揮できる厚さとする。例えば、50nm以上200nm以下、好ましくは50nm以上150nm以下、さらに好ましくは50nm以上100nm以下とすることができる。
次に、本実施の形態に示す画素1101に含まれる各構成要素の接続について、図26(C)に示す回路図および図28に示す断面図を用いて説明する。
図26(C)は、図26(A)に示す半導体装置が有する画素1101の詳細な回路図の一例である。図26(C)および図28に示すように、トランジスタ1103は、ゲート電極を含む走査線1107と、ソース電極を含む信号線1109と、ドレイン電極を含む導電膜1113とを有する。
容量素子1105において、電極1121aおよび導電膜1125を介して容量線1115と接続する導電膜1120が一方の電極として機能する。また、ドレイン電極を含む導電膜1113に接続する画素電極1121bが他方の電極として機能する。また、導電膜1120および画素電極1121bの間に設けられる、絶縁膜1129、絶縁膜1131および絶縁膜1133が誘電体膜として機能する。
液晶素子1108は、画素電極1121b、対向電極1154、並びに画素電極1121bおよび対向電極1154の間に設けられる液晶層で構成される。
容量素子1105において、導電膜1120は、半導体膜1111と同一の構成にドーパントを添加して、容量素子1105の電極として機能する。なぜなら、画素電極1121bをゲート電極、絶縁膜1129、絶縁膜1131および絶縁膜1133をゲート絶縁膜、容量線1115をソース電極またはドレイン電極と機能させることが可能であり、この結果、容量素子1105をトランジスタと同様に動作させ、導電膜1120を導通状態にすることができるからである。即ち、容量素子1105をMOS(Metal Oxide Semiconductor)キャパシタとすることが可能である。MOSキャパシタは、しきい値電圧(Vth)よりも高い電圧がMOSキャパシタを構成する電極の一方(容量素子1105においては画素電極1121b)に加わると、充電される。また、容量線1115に印加する電位を制御することで導電膜1120を導通状態とさせ、導電膜1120を容量素子の一方の電極として機能させることができる。この場合、容量線1115に印加する電位を以下のようにする。画素電極1121bの電位は、液晶素子1108(図26(C)参照)を動作させるために、ビデオ信号の中心電位を基準として、プラス方向およびマイナス方向に変動する。容量素子1105(MOSキャパシタ)を常に導通状態にさせておくためには、容量線1115の電位を、常に、画素電極1121bに印加する電位よりも容量素子1105(MOSキャパシタ)のしきい値電圧分以上低くしておく必要がある。ただし、容量素子1105において、一方の電極として機能する導電膜1120は、n型であり、導電率が高いために、しきい値電圧がマイナス方向にシフトする。導電膜1120の電位(換言すると、容量線1115の電位)は、容量素子1105のしきい値電圧のマイナス方向へのシフト量に応じて、画素電極1121bがとりうる最も低い電位から高くしていくことができる。従って、容量素子1105のしきい値電圧が大きな負の値を示す場合、容量線1115の電位は画素電極1121bの電位よりも高くすることができる。このようにすることで、導電膜1120を常に導通状態とすることが可能であり、容量素子1105(MOSキャパシタ)を導通状態とすることができる。
また、半導体膜1111および半導体膜1628上に設けられる絶縁膜1129を、酸素を透過させると共に、半導体膜1111および半導体膜1628との界面準位が低くなる酸化絶縁膜とし、絶縁膜1131を、酸素過剰領域を含む酸化絶縁膜または化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁膜とすることで、半導体膜1111および半導体膜1628である酸化物半導体膜へ酸素を供給することが容易になり、当該酸化物半導体膜からの酸素の脱離を防止すると共に、絶縁膜1131に含まれる当該酸素を酸化物半導体膜に移動させ、酸化物半導体膜に含まれる酸素欠損を補填することが可能となる。この結果、トランジスタ1103がノーマリーオン特性となることを抑制することができると共に、容量素子1105(MOSキャパシタ)が、常に導通状態とせしめるように、容量線1115に印加する電位を制御することが可能であるため、半導体装置の電気特性および信頼性を向上させることができる。
また、絶縁膜1131上に設けられる絶縁膜1133として、窒化絶縁膜を用いることで、外部から水素や水などの不純物が、半導体膜1111および導電膜1120に侵入することを抑制できる。さらには、絶縁膜1133として、水素含有量が少ない窒化絶縁膜を設けることで、トランジスタおよび容量素子1105(MOSキャパシタ)の電気特性変動を抑制することができる。
また、画素1101内に容量素子1105を大きく(大面積に)形成することができる。従って、開口率を高めつつ、電荷容量を増大させた半導体装置を得ることができる。この結果、表示品位の優れた半導体装置を得ることができる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態11)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明したトランジスタを用いることのできる電子機器の例について説明する。
先の実施の形態で説明したトランジスタは、さまざまな電子機器(遊技機も含む)および電気機器に適用することができる。電子機器および電気機器としては、テレビ、モニター等の表示装置、照明装置、デスクトップ型またはノート型のパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記憶媒体に記憶された静止画または動画を再生する画像再生装置、ポータブルCDプレーヤー、ラジオ、テープレコーダー、ヘッドホンステレオ、ステレオ、コードレス電話子機、トランシーバー、携帯電話、自動車電話、携帯型ゲーム機、電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子辞書、電子翻訳機、音声入力機器、ビデオカメラ、デジタルスチールカメラ、電気シェーバー、ICチップ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、エアーコンディショナー等の空調設備、食器洗い機、食器乾燥機、衣類乾燥機、布団乾燥機、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷蔵冷凍庫、DNA保存用冷凍庫、放射線測定器、透析装置等の医療機器、などが挙げられる。また、煙感知器、ガス警報装置、防犯警報装置などの警報装置も挙げられる。さらに、誘導灯、信号機、ベルトコンベア、エレベーター、エスカレーター、産業用ロボット、電力貯蔵システム等の産業機器も挙げられる。また、石油を用いたエンジンや、非水系二次電池からの電力を用いて電動機により推進する移動体、例えば、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、内燃機関と電動機を併せ持ったハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug−in Hybrid Electric Vehicle)、これらのタイヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、ゴルフ用カート、小型または大型船舶、潜水艦、ヘリコプター、航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図22乃至図25に示す。
まず、警報装置の例として火災報知器の構成について説明する。なお、本明細書中において、火災報知器とは、火災の発生を急報する装置全般を示すものであり、例えば、住宅用火災警報器や、自動火災報知設備や、当該自動火災報知設備に用いられる火災感知器なども火災報知器に含むものとする。
図22に示す警報装置は、マイクロコンピュータ700を少なくとも有する。ここで、マイクロコンピュータ700は、警報装置の内部に設けられている。マイクロコンピュータ700は、高電位電源線VDDと電気的に接続されたパワーゲートコントローラー703と、高電位電源線VDDおよびパワーゲートコントローラー703と電気的に接続されたパワーゲート704と、パワーゲート704と電気的に接続されたCPU(Central Processing Unit)705と、パワーゲート704およびCPU705と電気的に接続された検出部709と、が設けられている。また、CPU705には、揮発性記憶部706と不揮発性記憶部707と、が含まれている。
また、CPU705は、インターフェース708を介してバスライン702と電気的に接続されている。インターフェース708もCPU705と同様にパワーゲート704と電気的に接続されている。インターフェース708のバス規格としては、I2Cバスなどを用いることができる。また、本実施の形態に示す警報装置には、インターフェース708を介してパワーゲート704と電気的に接続される発光素子730が設けられている。
発光素子730は、指向性の強い光を放出するものが好ましく、例えば、有機EL素子、無機EL素子、LED(Light Emitting Diode)などを用いることができる。
パワーゲートコントローラー703はタイマーを有し、当該タイマーに従ってパワーゲート704を制御する。パワーゲート704は、パワーゲートコントローラー703の制御に従って、CPU705、検出部709およびインターフェース708に高電位電源線VDDから供給される電源を供給または遮断する。ここで、パワーゲート704としては、例えば、トランジスタなどのスイッチング素子を用いることができる。
このようなパワーゲートコントローラー703およびパワーゲート704を用いることにより、光量を測定する期間に検出部709、CPU705およびインターフェース708への電源供給を行い、測定期間の合間には検出部709、CPU705およびインターフェース708への電源供給を遮断することができる。このように警報装置を動作させることにより、上記の各構成に常時電源供給を行う場合より消費電力の低減を図ることができる。
また、パワーゲート704としてトランジスタを用いる場合、不揮発性記憶部707に用いられる、きわめてオフ電流の低いトランジスタ、例えば、酸化物半導体を用いたトランジスタを用いることが好ましい。このようなトランジスタを用いることにより、パワーゲート704で電源を遮断する際にリーク電流を低減し、消費電力の低減を図ることができる。
本実施の形態に示す警報装置に直流電源701を設け、直流電源701から高電位電源線VDDに電源を供給しても良い。直流電源701の高電位側の電極は、高電位電源線VDDと電気的に接続され、直流電源701の低電位側の電極は、低電位電源線VSSと電気的に接続される。低電位電源線VSSはマイクロコンピュータ700に電気的に接続される。ここで、高電位電源線VDDは、高電位Hが与えられている。また、低電位電源線VSSは、例えば接地電位(GND)などの低電位Lが与えられている。
直流電源701として電池を用いる場合は、例えば、高電位電源線VDDと電気的に接続された電極と、低電位電源線VSSに電気的に接続された電極と、当該電池を保持することができる筐体と、を有する電池ケースを筐体に設ける構成とすればよい。なお、本実施の形態に示す警報装置は、必ずしも直流電源701を設ける必要はなく、例えば、当該警報装置の外部に設けられた交流電源から配線を介して電源を供給する構成としても良い。
また、上記電池として、二次電池、例えば、リチウムイオン二次電池(リチウムイオン蓄電池、リチウムイオン電池、またはリチウムイオンバッテリーとも呼ぶ。)を用いることもできる。また、当該二次電池を充電できるように太陽電池を設けることが好ましい。
検出部709は、異常に係る物理量を計測して計測値をCPU705に送信する。異常に係る物理量は、警報装置の用途によって異なり、火災報知器として機能する警報装置では、火災に係る物理量を計測する。故に、検出部709には、火災に係る物理量として光量を計測し、煙の存在を感知する。
検出部709は、パワーゲート704と電気的に接続された光センサ711と、パワーゲート704と電気的に接続されたアンプ712と、パワーゲート704およびCPU705と電気的に接続されたADコンバータ713と、を有する。発光素子730、および検出部709に設けられた光センサ711、アンプ712並びにADコンバータ713は、パワーゲート704が検出部709に電源を供給したときに動作する。
図23に警報装置の断面の一部を示す。当該警報装置は、p型の半導体基板801に形成された素子分離領域803と、ゲート絶縁膜807、ゲート電極809、n型の不純物領域811a、n型の不純物領域811b、絶縁膜815および絶縁膜817を有するn型のトランジスタ870とが形成されている。n型のトランジスタ870は、単結晶シリコンなど、酸化物半導体とは異なる半導体を用いて形成されるため、十分な高速動作が可能となる。これにより、高速アクセスが可能なCPUの揮発性記憶部を形成することができる。
絶縁膜815および絶縁膜817の一部を選択的にエッチングした開口部には、コンタクトプラグ819aおよびコンタクトプラグ819bが形成され、絶縁膜817、コンタクトプラグ819aおよびコンタクトプラグ819b上に溝部を有する絶縁膜821が設けられている。
絶縁膜821の溝部に配線823aおよび配線823bが形成されており、絶縁膜821、配線823aおよび配線823b上には、スパッタリング法またはCVD法等によって形成された絶縁膜820が設けられている。また、当該絶縁膜上に溝部を有する絶縁膜822が形成されている。
絶縁膜822上には、スパッタリング法またはCVD法等により形成された絶縁膜825が設けられており、絶縁膜825上には、第2のトランジスタ880と、光電変換素子890が設けられている。
第2のトランジスタ880は、酸化物膜806a、酸化物半導体膜806bおよび酸化物膜806cと、酸化物膜806a、酸化物半導体膜806bおよび酸化物膜806cに接する低抵抗領域805aおよび低抵抗領域805bと、低抵抗領域805aおよび低抵抗領域805bに接するソース電極816aおよびドレイン電極816bと、ゲート絶縁膜812と、ゲート電極804と、酸化物絶縁膜818を含む。また、光電変換素子890と第2のトランジスタ880を覆う絶縁膜845が設けられ、絶縁膜845上にドレイン電極816bに接して配線849を有する。配線849は、第2のトランジスタ880のドレイン電極とn型のトランジスタ870のゲート電極809とを電気的に接続するノードとして機能する。なお、図面に示す断面C−Dは、断面A−Bに示すトランジスタ870の奥行き方向の断面を示している。
ここで、第2のトランジスタ880には、先の実施の形態で説明したトランジスタを用いることができ、酸化物膜806a、酸化物半導体膜806bおよび酸化物膜806cのそれぞれは、実施の形態1で説明した酸化物膜104a、酸化物半導体膜104bおよび酸化物膜104cに相当する。また、ソース電極816aおよびドレイン電極816bのそれぞれは、実施の形態1で説明したソース電極106aおよびドレイン電極106bに相当する。
また、トランジスタ880において、ソース電極またはドレイン電極が接している多層膜の界面近傍の領域に自己整合的に低抵抗領域が形成され、ソース電極およびドレイン電極をマスクにして、酸素を多層膜に添加することで、チャネル形成領域を高純度真性な領域とすることができ、自己整合的に高純度真性な領域と低抵抗領域を形成することができる。当該トランジスタは多層膜中のチャネル形成領域における酸素欠損量を低減することができ、電気特性が良好であるため、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
光センサ711は、光電変換素子890と、容量素子と、第1のトランジスタと、第2のトランジスタ880と、第3のトランジスタと、n型のトランジスタ870と、を含む。ここで光電変換素子890としては、例えば、フォトダイオードなどを用いることができる。
光電変換素子890の端子の一方は、低電位電源線VSSと電気的に接続され、端子の他方は、第2のトランジスタ880のソース電極816aもしくはドレイン電極816bの一方に電気的に接続される。
第2のトランジスタ880のゲート電極804には、電荷蓄積制御信号Txが与えられ、ソース電極816aもしくはドレイン電極816bの他方は、容量素子の一対の電極の一方、第1のトランジスタのソース電極およびドレイン電極の一方、およびn型のトランジスタ870のゲート電極と電気的に接続される(以下、当該ノードをノードFDと呼ぶ場合がある)。
容量素子の一対の電極の他方は、低電位電源線VSSと電気的に接続される。第1のトランジスタのゲート電極は、リセット信号Resが与えられ、ソース電極およびドレイン電極の他方は、高電位電源線VDDと電気的に接続される。
n型のトランジスタ870のソース電極およびドレイン電極の一方は、第3のトランジスタのソース電極およびドレイン電極の一方と、アンプ712と電気的に接続される。また、n型のトランジスタ870のソース電極およびドレイン電極の他方は、高電位電源線VDDと電気的に接続される。第3のトランジスタのゲート電極は、バイアス信号Biasが与えられ、ソース電極およびドレイン電極の他方は、低電位電源線VSSと電気的に接続される。
なお、容量素子は必ずしも設ける必要はなく、例えば、n型のトランジスタ870などの寄生容量が十分大きい場合、容量素子を設けない構成としても良い。
また、第1のトランジスタおよび第2のトランジスタ880には、極めてオフ電流の低いトランジスタを用いることが好ましい。また、極めてオフ電流の低いトランジスタとしては、酸化物半導体を含むトランジスタを用いることが好ましい。このような構成とすることによりノードFDの電位を長時間保持することが可能となる。
また、図23に示す構成は、第2のトランジスタ880と電気的に接続して、絶縁膜825上に光電変換素子890が設けられている。
光電変換素子890は、絶縁膜825上に設けられた半導体膜860と、半導体膜860上に接して設けられたソース電極816a、電極816cと、を有する。ソース電極816aは第2のトランジスタ880のソース電極またはドレイン電極として機能する電極であり、光電変換素子890と第2のトランジスタ880とを電気的に接続している。
半導体膜860、ソース電極816aおよび電極816c上には、ゲート絶縁膜812、酸化物絶縁膜818および絶縁膜845が設けられている。また、絶縁膜845上に配線856が設けられており、ゲート絶縁膜812、酸化物絶縁膜818および絶縁膜845に設けられた開口を介して電極816cと接する。
電極816cは、ソース電極816aおよびドレイン電極816bと、配線856は、配線849と同様の工程で作成することができる。
半導体膜860としては、光電変換を行うことができる半導体膜を設ければよく、例えば、シリコンやゲルマニウムなどを用いることができる。半導体膜860にシリコンを用いた場合は、可視光を検知する光センサとして機能する。また、シリコンとゲルマニウムでは吸収できる電磁波の波長が異なるため、半導体膜860にゲルマニウムを用いる構成とすると、赤外線を中心に検知するセンサとして用いることができる。
以上のように、マイクロコンピュータ700に、光センサ711を含む検出部709を内蔵して設けることができるので、部品数を削減し、警報装置の筐体を縮小することができる。なお、光センサまたは光電変換素子の位置に自由度が必要な場合は、光センサまたは光電変換素子を外付けとして、マイクロコンピュータ700に電気的に接続すればよい。
上述したICチップを含む警報装置には、先の実施の形態に示したトランジスタを用いた複数の回路を組み合わせ、それらを1つのICチップに搭載したCPU705が用いられる。
図24は、先の実施の形態で説明したトランジスタを少なくとも一部に用いたCPUの具体的な構成を示すブロック図である。
図24(A)に示すCPUは、基板920上に、ALU921(ALU:Arithmetic logic unit、演算回路)、ALUコントローラ922、インストラクションデコーダ923、インタラプトコントローラ924、タイミングコントローラ925、レジスタ926、レジスタコントローラ927、バスインターフェース928(Bus I/F)、書き換え可能なROM929、およびROMインターフェース919(ROM I/F)を有している。基板920は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。ROM929およびROMインターフェース919は、別チップに設けてもよい。もちろん、図24(A)に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
バスインターフェース928を介してCPUに入力された命令は、インストラクションデコーダ923に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ922、インタラプトコントローラ924、レジスタコントローラ927、タイミングコントローラ925に入力される。
ALUコントローラ922、インタラプトコントローラ924、レジスタコントローラ927、タイミングコントローラ925は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行なう。具体的にALUコントローラ922は、ALU921の動作を制御するための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ924は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ927は、レジスタ926のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ926の読み出しや書き込みを行なう。
また、タイミングコントローラ925は、ALU921、ALUコントローラ922、インストラクションデコーダ923、インタラプトコントローラ924、およびレジスタコントローラ927の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ925は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
図24(A)に示すCPUでは、レジスタ926に、メモリセルが設けられている。レジスタ926のメモリセルとして、先の実施の形態に示したトランジスタを用いることができる。
図24(A)に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ927は、ALU921からの指示に従い、レジスタ926における保持動作の選択を行う。すなわち、レジスタ926が有するメモリセルにおいて、フリップフロップによるデータの保持を行うか、容量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。フリップフロップによるデータの保持が選択されている場合、レジスタ926内のメモリセルへの、電源電圧の供給が行われる。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが行われ、レジスタ926内のメモリセルへの電源電圧の供給を停止することができる。
電源停止に関しては、図24(B)または図24(C)に示すように、メモリセル群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設けることにより行うことができる。以下に図24(B)および図24(C)の回路の説明を行う。
図24(B)および図24(C)では、メモリセルへの電源電位の供給を制御するスイッチング素子に、先の実施の形態で示したトランジスタを含む記憶回路の構成の一例を示す。
図24(B)に示す記憶装置は、スイッチング素子901と、メモリセル902を複数有するメモリセル群903とを有している。具体的に、各メモリセル902には、先の実施の形態に記載されているトランジスタを用いることができる。メモリセル群903が有する各メモリセル902には、スイッチング素子901を介して、ハイレベルの電源電位VDDが供給されている。さらに、メモリセル群903が有する各メモリセル902には、信号INの電位と、ローレベルの電源電位VSSの電位が与えられている。
図24(B)では、スイッチング素子901として、先の実施の形態で示したトランジスタを用いており、当該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号SigAによりスイッチングが制御される。
なお、図24(B)では、スイッチング素子901がトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、特に限定されず、トランジスタを複数有していてもよい。スイッチング素子901が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
また、図24(B)では、スイッチング素子901により、メモリセル群903が有する各メモリセル902への、ハイレベルの電源電位VDDの供給が制御されているが、スイッチング素子901により、ローレベルの電源電位VSSの供給が制御されていてもよい。
また、図24(C)には、メモリセル群903が有する各メモリセル902に、スイッチング素子901を介して、ローレベルの電源電位VSSが供給されている、記憶装置の一例を示す。スイッチング素子901により、メモリセル群903が有する各メモリセル902への、ローレベルの電源電位VSSの供給を制御することができる。
メモリセル群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設け、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合においてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。具体的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUの動作を停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
ここでは、CPUを例に挙げて説明したが、DSP(Digital Signal Processor)、カスタムLSI、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のLSIにも応用可能である。
図25(A)において、表示装置1000は、先の実施の形態に示したトランジスタを用いたCPUを含む電気機器の一例である。表示装置1000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体1001、表示部1002、スピーカー部1003、CPU1004等を有する。CPU1004は、筐体1001の内部に設けられている。表示装置1000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置に蓄積された電力を用いることもできる。先の実施の形態に示したトランジスタを表示装置1000のCPUに用いることによって省電力化が図れる。
表示部1002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
図25(A)において、警報装置1010は、住宅用火災警報器であり、検出部と、マイクロコンピュータ1011を有している。マイクロコンピュータ1011は、先の実施の形態に示したトランジスタを用いたCPUを含む電気機器の一例である。
図25(A)において、室内機1020および室外機1024を有するエアーコンディショナーは、先の実施の形態に示したトランジスタを用いたCPUを含む電気機器の一例である。具体的に、室内機1020は、筐体1021、送風口1022、CPU1023等を有する。図25(A)において、CPU1023が、室内機1020に設けられている場合を例示しているが、CPU1023は室外機1024に設けられていてもよい。または、室内機1020と室外機1024の両方に、CPU1023が設けられていてもよい。先の実施の形態に示したトランジスタをエアーコンディショナーのCPUに用いることによって省電力化が図れる。
図25(A)において、電気冷凍冷蔵庫1030は、先の実施の形態に示したトランジスタを用いたCPUを含む電気機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫1030は、筐体1031、冷蔵室用扉1032、冷凍室用扉1033、CPU1034等を有する。図25(A)では、CPU1034が、筐体1031の内部に設けられている。先の実施の形態に示したトランジスタを電気冷凍冷蔵庫1030のCPU1034に用いることによって省電力化が図れる。
図25(B)において、電気機器の一例である電気自動車の例を示す。電気自動車1040には、二次電池1041が搭載されている。二次電池1041の電力は、制御回路1042により出力が調整されて、駆動装置1043に供給される。制御回路1042は、図示しないROM、RAM、CPU等を有する処理装置1044によって制御される。先の実施の形態に示したトランジスタを電気自動車1040のCPUに用いることによって省電力化が図れる。
駆動装置1043は、直流電動機もしくは交流電動機単体、または電動機と内燃機関と、を組み合わせて構成される。処理装置1044は、電気自動車1040の運転者の操作情報(加速、減速、停止など)や走行時の情報(上り坂や下り坂等の情報、駆動輪にかかる負荷情報など)の入力情報に基づき、制御回路1042に制御信号を出力する。制御回路1042は、処理装置1044の制御信号により、二次電池1041から供給される電気エネルギーを調整して駆動装置1043の出力を制御する。交流電動機を搭載している場合は、図示していないが、直流を交流に変換するインバータも内蔵される。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
本実施例では、窒化物絶縁膜の断面観察結果およびTDS(Thermal Desorption Spectroscopy:昇温脱離ガス分光法)分析結果について説明する。まず、窒化物絶縁膜の断面観察に用いたサンプルの作製方法について説明する。
シリコンウェハ上に熱酸化膜を成膜した。熱酸化膜の成膜は、3%HClを含む酸素雰囲気にて、950℃の温度で行い、厚さは100nmとした。次に、熱酸化膜上にスパッタリング法を用いて、窒化シリコン膜を300nm成膜した。窒化シリコン膜は、スパッタリングターゲットとして、シリコンを用い、スパッタリングガスとして、5sccmのアルゴンと20sccmの窒素とをスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.2Paに制御して、3.0kWのRF電源を供給して成膜した。なお、窒化シリコン膜を成膜する際の基板温度は、350℃とした。
実施例サンプルにおいて、断面を断面走査透過型電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscopy)で断面観察を行った。図29に実施例サンプルのSTEM像を示す。
図29に示すように、窒化物絶縁膜中に空隙部の発生は確認されなかった。
次に、窒化物絶縁膜のTDS分析によって行った評価を示す。
実施例サンプルは、シリコンウェハ上に熱酸化膜を成膜した。熱酸化膜の成膜は、3%HClを含む酸素雰囲気にて、950℃の温度で行い、厚さは100nmとした。次に、熱酸化膜上にスパッタリング法を用いて、第1の窒化シリコン膜を300nm成膜し、第1の窒化シリコン膜上に第2の窒化シリコン膜を50nm成膜した。第1の窒化シリコン膜は、流量60sccmのシラン、流量1000sccmの窒素および流量480sccmのアンモニアを原料ガスとし、反応室の圧力を300Pa、基板温度を350℃とし、350Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法により形成した。第2の窒化シリコン膜は、スパッタリングターゲットとして、シリコンを用い、スパッタリングガスとして、5sccmのアルゴンと20sccmの窒素とをスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.2Paに制御して、3.0kWのRF電源を供給して成膜した。なお、窒化シリコン膜を成膜する際の基板温度は、350℃とした。比較例として、シリコンウェハ上に熱酸化膜、第1の窒化シリコン膜が成膜された比較例サンプルも用意した。
各サンプルについて、TDS分析を行った。図30に比較例サンプルにおいて測定されたM/z=2(H2)、M/z=18(H2O)、M/z=28(N2)およびM/z=32(O2)のTDS結果を示す。図31に実施例サンプルにおいて測定されたM/z=2(H2)、M/z=18(H2O)、M/z=28(N2)およびM/z=32(O2)のTDS結果を示す。
図30および図31に示すように、加熱温度が400℃以下の場合、第2の窒化シリコン膜により、水素(H2)の強度が低減していることが確認された。
このことから、スパッタリング法で形成された第2の窒化シリコン膜は水素に対するバリア性が高いことが確認できた。
本実施例では、酸化物半導体膜の結晶状態についてX線回折(XRD:X−Ray Diffraction)測定を行った。測定で使用したサンプル2A乃至サンプル2Gの作製方法について説明する。
まず、シリコンウェハ上に熱酸化膜を成膜した。熱酸化膜の成膜は、3%HClを含む酸素雰囲気にて、950℃の温度で行い、厚さは100nmとした。次に、熱酸化膜上にスパッタリング法を用いて酸化シリコン膜を300nm成膜した。酸化シリコン膜は、スパッタリングターゲットとして、酸化シリコンを用い、スパッタリングガスとして、50sccmの酸素とをスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.4Paに制御して、1.5kWのRF電源を供給して成膜した。なお、酸化シリコン膜を成膜する際の基板温度は、100℃とした。
次に、酸化シリコン膜上に多層膜を成膜した。多層膜は、3層からなり、まず、酸化シリコン膜上に第1の酸化物膜として、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2のIn−Ga−Zn酸化物膜を5nm成膜した。当該In−Ga−Zn酸化物膜は、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2のターゲットを用い、スパッタリングガスとして、30sccmのアルゴンと、15sccmの酸素をスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.4Paに制御して、0.5kWの直流電力を供給して成膜した。なお、当該In−Ga−Zn酸化物膜を成膜する際の基板温度は、200℃とした。
次に、第1の酸化物膜上に酸化物半導体膜として、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1のIn−Ga−Zn酸化物膜を15nm成膜した。当該In−Ga−Zn酸化物膜は、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1のターゲットを用い、スパッタリングガスとして、30sccmのアルゴンと、15sccmの酸素をスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.4Paに制御して、0.5kWの直流電力を供給して成膜した。なお、当該In−Ga−Zn酸化物膜を成膜する際の基板温度は、400℃とした。
次に、酸化物半導体膜上に第2の酸化物膜として、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2のIn−Ga−Zn酸化物膜を成膜した。当該In−Ga−Zn酸化物膜は、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2のターゲットを用い、スパッタリングガスとして、30sccmのアルゴンと、15sccmの酸素をスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.4Paに制御して、0.5kWの直流電力を供給して成膜した。なお、当該In−Ga−Zn酸化物膜を成膜する際の基板温度は、200℃とした。なお、第3の酸化物半導体膜の膜厚を5nm、10nm、15nmのものを作製した。
次に、IGZO膜に対して、イオンインプランテーション法により酸素(O2 +)を添加した。添加条件は、加速電圧5kV、ドーズ量を5.0×1015ions/cm2とした。
以上の工程により、第2の酸化物膜の膜厚を5nmとしたものをサンプル2A、10nmのものをサンプル2B、20nmのものをサンプル2Cとして作製した。
また、サンプル2D乃至サンプル2Fについて説明する。第2の酸化物膜形成直後に、第2の酸化物膜上に酸化窒化シリコン膜を20nm成膜した。酸化窒化シリコン膜は、シラン1sccm、一酸化二窒素800sccmをプラズマCVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を40Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて100Wの電力を供給して形成した。なお、当該酸化窒化シリコン膜は、基板温度を350℃として形成した。
次に、酸化窒化シリコン膜に対して、イオンインプランテーション法により酸素(16O2 +)を添加した。添加条件は、加速電圧5kV、ドーズ量を5.0×1015ions/cm2とした。
以上の工程により、なお、第2の酸化物膜の膜厚を5nmとしたものをサンプル2D、10nmのものをサンプル2E、20nmのものをサンプル2Fとして作製した。
また、比較例として、サンプル2Aの酸素の添加をしていないものをサンプル2Gとして作製した。
次に、サンプル2A乃至サンプル2Gについてout−of−plane法を用いてXRDスペクトルを測定した結果を図32および図33に示す。図32および図33において、縦軸はx線回折強度(任意単位)であり、横軸は回折角2θ(deg.)である。なお、XRDスペクトルの測定は、Bruker AXS社製X線回折装置D8 ADVANCEを用いた。
第2の酸化物膜に直接、酸素を添加する場合、図32(A)乃至図32(C)に示すようにXRDスペクトルにおいて、第2の酸化物膜の膜厚が小さくなると2θ=31°近傍に結晶に起因するピークが小さくなることが確認できた。また、酸化窒化シリコン膜を介して第2の酸化物膜に酸素を添加する場合、図32(D)乃至図32(F)に示すようにXRDスペクトルにおいて、第2の酸化物膜の膜厚によらず、2θ=31°近傍に結晶に起因するピークが見られ、結晶性酸化物半導体膜であることが確認できた。また、図33のXRDスペクトルと比較しても、2θ=31°近傍に結晶に起因するピークに差異は見られず、酸化窒化シリコン膜により結晶性酸化物半導体膜を保護していることが確認された。
本実施例では、酸化物半導体膜上に形成された酸化物膜上に導電膜を形成した後に導電膜を除去し、酸化物膜のシート抵抗を測定した。測定で使用したサンプル3A乃至サンプル3Hの作製方法について説明する。
まず、シリコンウェハ上に熱酸化膜を成膜した。熱酸化膜の成膜は、3%HClを含む酸素雰囲気にて、950℃の温度で行い、厚さは100nmとした。次に、熱酸化膜上にスパッタリング法を用いて酸化シリコン膜を300nm成膜した。酸化シリコン膜は、スパッタリングターゲットとして、酸化シリコンを用い、スパッタリングガスとして、50sccmの酸素とをスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.4Paに制御して、1.5kWのRF電源を供給して成膜した。なお、酸化シリコン膜を成膜する際の基板温度は、100℃とした。
次に、酸化シリコン膜上に多層膜を成膜した。多層膜は、3層からなり、まず、酸化シリコン膜上に第1の酸化物膜として、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2のIn−Ga−Zn酸化物膜を20nm成膜した。当該In−Ga−Zn酸化物膜は、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2のターゲットを用い、スパッタリングガスとして、30sccmのアルゴンと、15sccmの酸素をスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.4Paに制御して、0.5kWの直流電力を供給して成膜した。なお、当該In−Ga−Zn酸化物膜を成膜する際の基板温度は、200℃とした。
次に、第1の酸化物膜上に酸化物半導体膜として、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1のIn−Ga−Zn酸化物膜を15nm成膜した。当該In−Ga−Zn酸化物膜は、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1のターゲットを用い、スパッタリングガスとして、30sccmのアルゴンと、15sccmの酸素をスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.4Paに制御して、0.5kWの直流電力を供給して成膜した。なお、当該In−Ga−Zn酸化物膜を成膜する際の基板温度は、300℃とした。
次に、酸化物半導体膜上に第2の酸化物膜として、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2のIn−Ga−Zn酸化物膜を成膜した。当該In−Ga−Zn酸化物膜は、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2のターゲットを用い、スパッタリングガスとして、30sccmのアルゴンと、15sccmの酸素をスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.4Paに制御して、0.5kWの直流電力を供給して成膜した。なお、当該In−Ga−Zn酸化物膜を成膜する際の基板温度は、200℃とした。なお、第3の酸化物半導体膜の膜厚を0nm、5nm、10nm、15nmのものを作製した。
次に、第1の加熱処理を行った。加熱条件は、窒素雰囲気下、450℃で1時間行った後、酸素雰囲気下、450℃で1時間であった。
次に、第2の酸化物膜上に導電膜として、タングステン膜を100nm成膜した。タングステン膜は、タングステンをスパッタリングターゲットとし、スパッタリングガスとして、80sccmのアルゴンと、10sccmの加熱したアルゴンをスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.8Paに制御して、1.0kWの直流電力を供給して成膜した。
次に、第2の加熱処理を行った。加熱条件は、酸素雰囲気下、400℃で1時間であった。
以上の工程により、なお、第2の酸化物膜の膜厚を0nmとしたものをサンプル3A、5nmのものをサンプル3B、10nmのものをサンプル3C、20nmのものをサンプル3Dとして作製した。
また、比較として第2の加熱処理を行っていないサンプルも作製した。第2の酸化物膜の膜厚を0nmとしたものをサンプル3E、5nmのものをサンプル3F、10nmのものをサンプル3G、20nmのものをサンプル3Hとして作製した。
次に、タングステン膜をドライエッチングした。エッチング条件は、エッチングガスに45sccmのCl2と55sccmのCH4と55sccmのO2を用い、バイアス電力を110Wとし、ICP電源電力を3000Wとし、圧力を0.67Paとする。なお、タングステン膜をドライエッチングする際の基板温度は、40℃とした。
次に、第2の酸化物膜に対して、イオンインプランテーション法により酸素(18O2)を添加した。添加条件は、加速電圧5kV、ドーズ量を5.0×1015ions/cm2とした。
また、比較として酸素を添加していないサンプルも作製した。
次に、第2の酸化物膜をエッチングして、エッチングした深さに対するシート抵抗値を測定した。エッチング条件は、過酸化水素水とアンモニアの混合水溶液(過酸化水素水:アンモニア水:水=5:2:5)を用いた。また、第2の酸化物膜のエッチング深さは、エッチングの前後における分光エリプソメトリーを用いて測定した残膜の厚さから求めた。
図34に加熱処理を行ったサンプル3A乃至サンプル3Dのシート抵抗値、図35に加熱処理を行っていないサンプル3E乃至サンプル3Hのシート抵抗値をそれぞれ示す。なお、図中の点線は上限の測定限界値(6MΩ/□)を示している。
図34および図35に示すように、酸素を添加することでシート抵抗の値が大きくなることが確認された。また、加熱処理を行うことでシート抵抗の値が小さくなることが確認された。また、第2の酸化物膜の膜厚を厚い場合に酸素を添加すると、表面付近では高抵抗化するが、第2の酸化物膜の膜中では低抵抗領域が存在することが確認された。
また、IGZO膜(第2の酸化物膜)上にタングステン膜を形成したサンプルでは、IGZO膜の表面から約15nmの深さまで低抵抗化していることが確認できた。第2の酸化物膜の表面近傍に低抵抗なIGZOとタングステンの混合層が形成されていること、またはIGZO膜中の酸素がタングステン膜中に移動することでIGZO膜の表面近傍の酸素欠損によるn型化した領域が形成されていること、などが示唆された。
本実施例では、多層膜の二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)による評価結果について説明する。
分析したサンプルは、実施例3で用いたサンプル3E、サンプル3F、サンプル3Gおよびサンプル3Fの第2の酸化物膜の膜厚が15nmのサンプル4Aであり、各サンプルにはイオンインプランテーション法により酸素を添加している。
図36にサンプル3E乃至サンプル3Gおよびサンプル4Aの18Oの濃度プロファイルを示す。
各サンプルとも酸素が添加される多層膜の表面から約5nmの深さに18Oの濃度ピークが確認された。また、多層膜の表面から約20nmの深さにまで18Oが拡散していることが確認された。
本実施例では、トランジスタを作製し、作製したトランジスタにおいて、電気特性の評価を行った。評価で使用したサンプルの作製方法について説明する。
まず、シリコンウェハ上に熱酸化膜を成膜した。熱酸化膜の成膜は、3%HClを含む酸素雰囲気にて、950℃の温度で行い、厚さは100nmとした。次に、熱酸化膜上にスパッタリング法を用いて酸化シリコン膜を300nm成膜した。酸化シリコン膜は、スパッタリングターゲットとして、酸化シリコンを用い、スパッタリングガスとして、50sccmの酸素とをスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.4Paに制御して、1.5kWのRF電源を供給して成膜した。なお、酸化シリコン膜を成膜する際の基板温度は、100℃とした。
次に、加熱処理を行った。加熱条件は、真空(減圧)雰囲気下、450℃で1時間であった。その後、イオンインプランテーション法により、酸化シリコン膜に、酸素(16O)を添加した。添加条件は、加速電圧60kV、ドーズ量を2.0×1016ions/cm2とした。
次に、酸化シリコン膜上に多層膜を成膜した。多層膜は、3層からなり、まず、酸化シリコン膜上に第1の酸化物膜として、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2のIn−Ga−Zn酸化物膜を20nm成膜した。当該In−Ga−Zn酸化物膜は、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2のターゲットを用い、スパッタリングガスとして、30sccmのアルゴンと、15sccmの酸素をスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.4Paに制御して、0.5kWの直流電力を供給して成膜した。なお、当該In−Ga−Zn酸化物膜を成膜する際の基板温度は、200℃とした。
次に、第1の酸化物膜上に酸化物半導体膜として、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1のIn−Ga−Zn酸化物膜を15nm成膜した。当該In−Ga−Zn酸化物膜は、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1のターゲットを用い、スパッタリングガスとして、30sccmのアルゴンと、15sccmの酸素をスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.4Paに制御して、0.5kWの直流電力を供給して成膜した。なお、当該In−Ga−Zn酸化物膜を成膜する際の基板温度は、300℃とした。
次に、酸化物半導体膜上に第2の酸化物膜として、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2のIn−Ga−Zn酸化物膜を10nm成膜した。当該In−Ga−Zn酸化物膜は、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:2のターゲットを用い、スパッタリングガスとして、30sccmのアルゴンと、15sccmの酸素をスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.4Paに制御して、0.5kWの直流電力を供給して成膜した。なお、当該In−Ga−Zn酸化物膜を成膜する際の基板温度は、200℃とした。
次に、第1の加熱処理を行った。加熱条件は、窒素雰囲気下、450℃で1時間行った後、酸素雰囲気下、450℃で1時間であった。
次に、第2の酸化物膜上に導電膜として、タングステン膜を100nm成膜した。タングステン膜は、タングステンをスパッタリングターゲットとし、スパッタリングガスとして、80sccmのアルゴンと、10sccmの加熱したアルゴンをスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.8Paに制御して、1.0kWの直流電力を供給して成膜した。タングステン膜成膜後、タングステン膜の一部をエッチングして(エッチング条件:エッチングガスを55sccmのCF4と45sccmのCl2と55sccmのO2)、ICP電源電力3000W、バイアス電力110W、圧力0.67Pa、基板温度40℃)、ソース電極およびドレイン電極を形成した。
次に、イオンインプランテーション法により、多層膜に、酸素(16O2 +)を添加した。添加条件は、加速電圧5kV、ドーズ量を5.0×1015ions/cm2とした。
次に、ゲート絶縁膜を形成した。ゲート絶縁膜として、厚さ20nmの酸化シリコン膜を形成した。酸化シリコン膜は、反応室内の圧力を200Paに制御し、CVD法にて形成した。
次に、ゲート電極を形成した。スパッタリング法で厚さ30nmの窒化タンタル膜を成膜し、該窒化タンタル上にスパッタリング法で厚さ135nmのタングステン膜を成膜した。窒化タンタル膜は、窒化タンタルをスパッタリングターゲットとし、スパッタリングガスとして、50sccmのアルゴンと、10sccmの窒素をスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を0.6Paに制御して、1.0kWの直流電力を供給して成膜した。タングステン膜は、タングステンをスパッタリングターゲットとし、スパッタリングガスとして、100sccmのアルゴンと、10sccmの加熱したアルゴンをスパッタリング装置の処理室内に供給し、処理室内の圧力を2.0Paに制御して、4.0kWの直流電力を供給して成膜した。タングステン膜成膜後、窒化タンタルおよびタングステン膜の一部をエッチングして(タングステン膜のエッチング条件:エッチングガス(CF4:Cl2:O2=55sccm:45sccm:55sccm)、ICP電源電力3000W、バイアス電力110W、圧力0.67Pa、基板温度40℃、窒化タンタル膜エッチング条件:エッチングガス(Cl2=100sccm)、ICP電源電力2000W、バイアス電力50W、圧力0.67Pa、基板温度40℃)、ゲート電極を形成した。
次に、酸化物絶縁膜を形成した。スパッタリング法で厚さ70nmの酸化アルミニウム膜を成膜し、該酸化アルミニウム上にCVD法で厚さ135nmの酸化シリコン膜を成膜した。
次に、ゲート絶縁膜および酸化物絶縁膜にソース電極、ドレイン電極に達する開口を形成した。
開口に、スパッタリング法により配線層(チタン膜50nm上にアルミニウム膜200nm、アルミニウム膜200nm上にチタン膜50nm)を形成した。
配線層上にポリイミド膜を1.5μm形成し、大気中で300℃、1時間、熱処理を行った。
以上の工程でチャネル長0.44μm、チャネル幅1μmの実施例トランジスタを作製した。また、比較として酸素を添加していない比較例トランジスタも作製した。
次に作製したトランジスタにおいて、ドレイン電圧(Vd:[V])が3V、または0.1Vとし、ゲート電圧(Vg:[V])を−3Vから3まで掃引した際の、ドレイン電流(Id:[A])の測定を行った。実施例トランジスタの測定結果を図37(A)、比較例トランジスタの測定結果を図37(B)に示す。図37において、ドレイン電圧(Vd:[V])が3Vのときおよび0.1Vのときの測定結果であり、横軸はゲート電圧(Vg:[V])、縦軸はドレイン電流(Id:[A])を示す。なお、「ドレイン電圧(Vd:[V])」とは、ソースを基準としたドレインとソースの電位差であり、「ゲート電圧(Vg:[V])」とは、ソースを基準としたゲートとソースの電位差である。
図37(A)に示すように本実施例で作製したトランジスタは、図37(B)に示す比較例トランジスタより電気特性のばらつきが小さいことが確認できた。
以上より、本実施例のトランジスタは高い電気的特性を付与されたトランジスタであることが示された。
〔参考例1〕
トランジスタのVg−Id特性において、トランジスタのチャネル長が短くなるとドレイン電圧Vdによるオン電流が流れ始めるゲート電圧(立ち上がりゲート電圧ともいう)が異なることが観測されている。そこで、計算によりチャネル長と立ち上がりゲート電圧の関係を調べた。
計算で仮定したトランジスタの構造を図38に示す。図38中のOSは酸化物半導体膜を示し、Sはソース電極を示し、Dはドレイン電極を示し、GIはゲート絶縁膜を示し、GEはゲート電極を示す。なお、酸化物半導体膜と、ソース電極、ドレイン電極との間には、酸化物半導体膜よりもキャリア密度の高いn層(図中ではnと表記)を有する。また、n層との対比で、酸化物半導体膜(OS)をi層(iと表記)と呼ぶ。また、ソース電極およびドレイン電極と重畳しないn層のチャネル長方向の長さをそれぞれΔLとする。このとき、実効チャネル長LeffをLeff=L−2ΔL(ΔL≧0)と定義したとき、Leffはチャネル長Lより短くなる。
また、計算条件として、L(チャネル長)=2μm、W(チャネル幅)=1μm、ゲート電極の仕事関数を5eV、ゲート絶縁膜を、ゲート電極側から順に窒化シリコン(誘電率ε=7.5)を400nmと酸化窒化シリコン(誘電率ε=4.1)を50nmの積層膜とし、酸化物半導体膜を35nmとした。酸化物半導体膜の伝導帯の下端と価電子帯の上端とのエネルギー差Egは3.2eV、酸化物半導体膜の電子親和力χは4.8eV、酸化物半導体膜の誘電率εは15、酸化物半導体膜の電子移動度μnは10cm2/Vs、酸化物半導体膜の正孔移動度μnは0.01cm2/Vs、伝導帯の実効状態密度Ncは5×1018cm−3、価電子帯の実効状態密度Nvは5×1018cm−3、ドナー密度Ndは6.6×10−9cm−3とした。また、n層のドナー密度は5×1018cm−3とした。なお、長さΔLを0μm、0.1μm、0.3μm、0.5μmの4条件変化させ、計算を行った。
計算結果を図39に示す。図39に示すように、長さΔLが0μmのとき(つまり、実効チャネル長が2.0μmのとき)、長さΔLが0.1μmのとき(つまり、実効チャネル長が1.8μmのとき(チャネル長の長さの10%が長さΔL))、長さΔLが0.3μmのとき(つまり、実効チャネル長が1.4μmのとき(チャネル長の長さの30%が長さΔL))、ドレイン電圧Vdが1Vと10Vでの立ち上がりゲート電圧は同じ結果となった。一方、長さΔLが0.5μmのとき(つまり、実効チャネル長が1.0μmのとき)、ドレイン電圧Vdが1Vと10Vでの立ち上がりゲート電圧は異なる結果、つまり、立ち上がり位置がスプリットする結果となった。
以上により、実効チャネル長が短くなることにより立ち上がり位置がスプリットするため、酸化物半導体膜に酸素を添加し、n層をi層にすることで実効チャネル長を長くすることができ、立ち上がり位置がスプリットすることを抑制することが示唆された。
また、長さΔLは、チャネル長の30%未満、好ましくは10%未満、さらに好ましくは3%未満であるとよい。また、1桁以上異なる2つのドレイン電圧において、1pA/μmでのスプリット幅が大きいドレイン電圧よりも小さい。好ましくは、スプリット幅が大きい電圧の1/3未満であるとよい。