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JP6431253B2 - 食品用風味改良剤 - Google Patents
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JP6431253B2 - 食品用風味改良剤 - Google Patents

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Description

本発明は、食品の呈味改良技術に関し、さらに詳しくは、麦由来の風味改良剤を含有する食品及びその製法に関する。
近年、加工食品の多様化には著しいものがあり、様々な業態向けに、洋風、和風を問わず多様な国、地域の料理が製造されている。また、消費者の本物志向は年々高まっており、加工食品の風味に関しても、プロの手で作られた料理と遜色のない、豊かで自然な風味や味の厚みが求められるようになってきている。従来の加工食品で多用されてきたグルタミン酸ナトリウムや核酸系調味料などの単純なうまみ単独では、上記のような消費者の需要を満たすことは困難である。これらの要因から、豊かで自然な風味と味の厚みを付与することが出来る調味料への需要が高まっている。
上記のような課題を解決する目的で例えば、従来ビーフエキスやボーンエキスなどの動物性の天然エキスや酵母エキスが利用されてきた。しかしながら、前者には供給量が限られておりかつ非常に高価であるために利用できる製品や添加量が制限されるという問題があり、後者には食品へ添加した場合に特有の不快味や不快臭を呈するという問題がある。
そこでこれらの問題を解決するために、メイラード反応生成物を用いた食品の風味改良剤としては、特許文献1には、フルフラール、5−メチルフルフラール、フルフリルアルコール、2−アセチルフランといったメイラード反応生成物を多く含んだタマネギエキスを食品に添加することによって、コクを増強させる風味改良剤が開示されている。しかし、使用している素材はタマネギであり、原料素材のタマネギの風味を呈することから、利用できる食品が制限される。
また、麦芽の加熱処理物をプロテアーゼおよび糖質関連酵素で処理して得られる麦芽酵素処理物を有効成分とする飲食品の呈味改善剤(特許文献2)、麦芽を水抽出して得られるモルトエキスからマスキング成分を分離する技術(特許文献3)が開示されている。しかしながら、何れの方法においても、豊かで自然な風味と味の厚みを付与する効果は不十分であり上記記載の問題を満足に解決するには至っていない。
特開2010−142148号公報 特開2012−34654号公報 特開2012−100538号公報
本発明の目的は、上記のような従来における食品の風味改良技術に関する状況に鑑み、食品に対して、添加した際に不自然な異味異臭を呈することが無く、かつ安価で容易に豊かで自然な風味と味の厚みを付与できる新規な食品用風味改良剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、麦由来の原料を特定の条件で加熱・冷却処理することにより、自然でまとまりのある濃厚な麦芽の焙煎香や香味および調味香もしくはそれらに起因する味の厚みを食品に付与することが可能である風味改良剤を得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の第一は、麦由来原料を加熱処理して得られ、フルフラール、2−アセチルフラン及びフルフリルアルコールの合計含有量が90ppm以上、且つ5−メチルフルフラール含有量が20ppm以下である、麦を原料とする食品用風味改良剤に関する。好ましい実施態様は、麦由来原料が、麦抽出液及び麦抽出液を濃縮した麦エキスの少なくとも一方を含むことを特徴とする上記記載の食品用風味改良剤に関する。より好ましくは、加熱処理が、原料を加熱装置の加熱容器に設けた加熱面に強制的に接触させ、略均一な薄膜状に広げた状態で該加熱面に沿って流動させながら加熱することを特徴とする上記記載の食品用風味改良剤、更に好ましくは、加熱後に密閉状態で品温が80〜5℃になるまで冷却して得られる上記記載の食品用風味改良剤に関する。本発明の第二は、上記記載の食品用風味改良剤を、食品全体中0.01〜2.0重量%含有する食品に関する。好ましい実施態様は、食品が、麦を原料として焼成もしくは発酵してなる上記記載の食品に関する。本発明の第三は、麦由来原料を、加熱装置の加熱容器に設けられた170〜220℃の加熱面に強制的に接触させ、品温が150〜170℃になるようにコントロールしながら、略均一な薄膜状に広げた状態で該加熱面に沿って流動させながら加熱することを特徴とする、麦を原料とする食品用でフルフラール、2−アセチルフラン及びフルフリルアルコールの合計量が90ppm以上且つ5−メチルフルフラールが20ppm以下である食品用風味改良剤の製造方法に関する。好ましい実施態様は、加熱後に、密閉状態で品温が80〜5℃になるまで冷却することを特徴とする上記記載の食品用風味改良剤の製造方法に関する。より好ましくは、麦由来原料が、麦抽出液及び麦抽出液を濃縮した麦エキスの少なくとも一方を含むことを特徴とする上記記載の食品用風味改良剤の製造方法に関する。
本発明に従えば、食品に対して、添加した際に不自然な異味異臭を呈することが無く、かつ安価で容易に豊かで自然な風味と味の厚みを付与できる新規な食品用風味改良剤を提供することができる。
本発明に使用する二重筒加熱装置の1実施形態の概略を示し、(a)は側断面図、(b)は図1(a)におけるI−I線断面図である。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の食品用風味改良剤は、麦由来原料を特定の条件下で加熱処理することにより得ることができ、特定量以上の風味成分を特定量含み、逆に別の特定成分は特定量以下しか含まないことを特徴とする。
本発明の食品用風味改良剤に用いる麦由来原料とは、小麦、大麦、ライ麦、エンバクなどの、外見の類似したイネ科穀物の総称を言い、具体的には禾穀類としてのイネ科植物の種子を指す。本発明で麦由来原料として使用する麦の種類や麦の産地、収穫時期については特に限定されないが、食物アレルギーの面から大麦が好ましい。
前記麦由来原料は、そのまま、もしくは粉砕した後、熱水を加え抽出し、濾過した麦抽出液を濃縮した麦エキスを使用すれば良く、また発芽処理、各種酵素処理等、当業者に周知の処理等を適宜行ってもよい。加熱処理によって、好ましい風味成分であるメイラード反応生成物を量も種類もより多く生成させるためには、発芽や酵素処理などによって麦中のタンパク質や糖質を分解し、メイラード反応の基質となるアミノ酸、ペプチド、単糖類等の含有量を多くすることが好ましい。酵素処理する場合は、プロテアーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ等の酵素を用いることができる。
本発明の食品用風味改良剤は、基本的には麦由来原料を用いるが、本発明の効果を阻害しない限り、加熱処理する原料中に麦由来以外の素材を加えることも可能である。麦由来以外の素材としては、例えば、野菜類、果実類、畜肉類やそのエキス類、また、上記以外の穀粉類、乳製品類、各種の調味料類、香辛料類、油脂等の食品素材を挙げることができる。但し、麦由来以外の素材は、該素材を含む原料を加熱処理して得られる食品用風味改良剤が添加される各食品の製品に従来用いている原材料の表示に適する原料を選択することが好ましい。
前記麦由来以外の素材は、液体状であればそのまま麦由来原料に混合すれば良く、粉末状であれば、麦由来原料としての麦抽出液や麦抽出液を濃縮した麦エキスなどに溶解または分散して使用できるが、固形状である場合は3mm程度以下に破砕して混合する必要がある。また、これらの素材は、麦由来原料を加熱処理して得られた本発明の食品用風味改良剤に添加することも可能である。
麦抽出液を濃縮して麦エキスを得る方法については、特に限定されるものではなく、常圧下で加熱しながら煮詰めて濃縮しても良いし、また減圧下で水分を留去しながら濃縮しても良い。濃縮度の指標としては、Brix値で55〜85%が好ましく、60〜80%がより好ましく、65〜75%が更に好ましい。Brix値が55%より低いと香気成分が発現しにくい場合がある。またBrix値が85%を超えると粘度が高く、焦げが発生しやすくなったり、製造時のポンプの移送の際に負荷や時間がかかったりするため、生産効率が落ちる場合がある。
本発明の食品用風味改良剤全体中のフルフラール、フルフリルアルコール、2−アセチルフランの合計量は、風味改良剤中、90ppm以上であることが好ましく、130ppm以上であることがより好ましく、190ppm以上であることが更に好ましい。フルフラール、フルフリルアルコール、2−アセチルフランの合計量が90ppmより少ないと、麦芽を焙乾させた際に発生するような麦芽風味や焙煎香といった香味が得られない場合がある。
なお、フルフラール、フルフリルアルコール、2−アセチルフランは、いずれも加熱条件下で糖とアミノ酸がメイラード反応を起こす事によって生成する物質であり、麦由来原料としての麦抽出液や麦抽出液を濃縮した麦エキスなどを加熱した時に生成する焙煎香に関与するものであると考えられる。
また、本発明の食品用風味改良剤全体中、5−メチルフルフラールの含有量は、20ppm以下であることが好ましい。5−メチルフルフラールは焦げに関与する成分と考えられ、5−メチルフルフラールの含有量が20ppmより多くなると、焦げた飴を連想するような焦げ臭の印象を食品に付与してしまう場合がある。
本発明における食品用風味改良剤中のフルフラール、フルフリルアルコール、2-アセチルフラン、5-メチルフルフラールの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析法によって測定できる。具体的な測定条件は以下の通りである。
ガスクロマトグラフ装置:Agilent Technologies社製「7890A」
分析手法:昇温分析法
カラム:DB−WAX
カラムサイズ:10m×0.18mm×0.18μM(LTM)
キャリアーガス:ヘリウム
検出器(MS):Agilent Technologies社製「5975C」
(ガスクロマトグラフ条件)
イニシャル温度:40℃
イニシャル温度保持時間:2分間
昇温スピード:145℃まで毎分6℃、その後250℃まで毎分20℃
最終温度:250℃
最終温度保持時間:9分
キャリアーガス:ヘリウム 339.65kPa
キャリアーガス流量:0.92ml/min
MS(検出器条件):イオン源温度 230℃、四重極温度 150℃
(インジェクション条件)
インジェクション装置:GERSTEL社製「TDU」
Cold trap material:ガラスウール
Sample Tube Material:Monotrap
(TDS条件)
イニシャル温度:40℃
イニシャル温度保持時間:0.2分間
昇温スピード:毎分720℃
最終温度240℃
最終温度保持時間:5分間
(CIS条件)
イニシャル温度:−100℃
イニシャル温度保持時間:0.2分
昇温スピード:毎秒12℃
最終温度:250℃
最終温度保持時間:15分間
(香気吸着剤へのヘッドスペースガス吸着条件)
香気吸着剤:Monotrap
品温:10℃
吸着時間:2時間
(測定手順)
10℃に調整した風味改良剤2gを容積20mlの吸着バイアル(商品名:Twisterスペースバイアル20ml)に量りとり、Monotrap(ジーエルサイエンス株式会社製)を入れたツイスター保持体(商品名:Twisterスペースバイアル20ml用インサート)を吸着バイアルにセットし、パッキングする。10℃にて2時間静置し、ヘッドスペースガスをMonotrapに吸着させる。その後、Monotrapを回収し、インサートライナーの容器に入れてガスクロマトグラフ質量分析法にて分析を実施し、フルフラール、フルフリルアルコール、2−アセチルフラン、5−メチルフルフラールのピーク面積を算出する(分析例1とする)。
風味改良剤中に含まれるフルフラール、フルフリルアルコール、2−アセチルフラン、5−メチルフルフラールの濃度を測定するために、以下の試薬を用いる。
・フルフラール:和光純薬株式会社製(製品番号:063-04795)
・フルフリルアルコール:和光純薬株式会社製(製品番号:069-00696)
・2−アセチルフラン:和光純薬株式会社製(製品番号:068-00921)
・5−メチルフルフラール:和光純薬株式会社製(製品番号:133-11771)
上記試薬の内、フルフラール、フルフリルアルコールを各100μl、2−アセチルフラン、5−メチルフルフラールを各50μl量り、エタノールで10mlにメスアップした後、転倒混和する。この溶液100μlを510℃に調整した10gの風味改良剤と十分に混合する。この試薬入り風味改良剤2gを容積20mlの吸着バイアル(商品名:Twisterスペースバイアル20ml)に量りとり、Monotrap(ジーエルサイエンス株式会社製)を入れたツイスター保持体(商品名:Twisterスペースバイアル20ml用インサート)を吸着バイアルにセットし、パッキングする。10℃にて2時間静置し、ヘッドスペースガスをMonotrapに吸着させる。その後、Monotrapを回収し、インサートライナーの容器に入れてガスクロマトグラフ質量分析法にて分析を実施し、フルフラール、フルフリルアルコール、2−アセチルフラン、5−メチルフルフラールのピーク面積を算出する(分析例2とする)。尚、この試薬入り風味改良剤中のフルフラール、フルフリルアルコールは100ppm、2−アセチルフラン、5メチルフルフラールは50ppmの濃度となる。
分析例2と分析例1におけるフルフラール、フルフリルアルコール、2−アセチルフラン、5−メチルフルフラールのピーク面積の差分が、フルフラール100ppm、フルフリルアルコール100ppm、2−アセチルフラン50ppm、5−メチルフルフラール50ppmに相当することから、分析例2のフルフラール、フルフリルアルコール、2−アセチルフラン、5−メチルフルフラールの濃度を各ピーク面積からそれぞれ算出する。
上記に示したような、フルフラール、2−アセチルフラン及びフルフリルアルコールの合計量が90ppm以上、且つ5−メチルフルフラールが20ppm以下である本発明の食品用風味改良剤を得るためには、以下のような製造方法に従えば良い。
(加熱処理)
麦由来原料を加熱処理するが、その際、麦原料としての麦抽出液や麦抽出液を濃縮した麦エキスなどを均一に加熱することが好ましい。麦由来原料に対して均一な加熱処理を施す手段としては、仕込み量が20kg以下のような少量であれば、撹拌効率さえよければ、焦げを生じないように注意して加熱すればよく、例えばポータブルリアクターのような装置で実施できる。
しかし、仕込み量が20kgを超えるような大量になれば、均一な加熱処理を施す手段としては、麦由来原料である麦抽出液や麦抽出液を濃縮した麦エキスなどを加熱装置の加熱容器内に導入し、該容器に設けた加熱面に強制的に接触させ、略均一な厚さの薄い膜状に拡げた状態で該加熱面に沿って流動させながら、所定の品温に到達するまで加熱処理することが好ましく、従来公知の加熱装置を用いることができる。
上記加熱装置の例を挙げれば、例えば図1に示すような二重筒加熱装置10を用いる事ができる。図1(a)は、二重筒加熱装置10の側断面図、図1(b)は、図1(a)におけるI―I線断面図である。この二重筒加熱装置10は、それぞれ加熱用のジャケットを有する内筒12および外筒13の内外二本の円筒から加熱容器11を構成し、内筒12aの外壁面と外筒13aの内壁面との二つの壁面間に、被加熱処理物である麦由来原料の流路となる円筒状の間隙14を形成するとともに、間隙14に連通して、麦由来原料の供給口14aと、加熱容器11内で加熱された麦由来原料の排出口14bとが、それぞれ設けられている。この二重筒加熱装置10では、内筒12と外筒13とを相対的に回転させてもよい。その場合は、内筒12または外筒13の一方のみを回転させて他方は固定しておいても良いし、内筒12、外筒13の両方を互いに反対方向に回転させても良い。
また、加熱については、内筒12、外筒13の両方に加熱ジャケットを設けた両面加熱式でも良いし、いずれか一方のみに加熱ジャケットを設けて片面加熱としても良い。この二重筒加熱装置10では、内筒12および外筒13の内外二本の円筒のいずれか一方のジャケットまたは両方のジャケットに蒸気を導入、もしくは、内筒12および外筒13の内外二本の円筒のいずれか一方、または両方にIH加熱コイルを設置し、誘導加熱を行い、供給口14aから加熱容器11内にポンプなどを用いて麦由来原料を圧入すると、麦由来原料は内筒12および/または外筒13からの加熱を受けながら、内筒12と外筒13との間の間隙14内を薄膜状に広がった状態で加熱面に沿って排出口14bに向かって流動し、排出される。この時、内外二本の円筒12、13を相対的に回転させると、加熱容器11内に導入された麦由来原料は、相対的に回転する内筒12と外筒13との間の間隙14内を、内筒12の外壁面と外筒13の内壁面との相対的移動方向(回転方向)に対して直交する方向(回転軸方向)に流動し、排出口14bから排出される。この装置では、内筒12の外径寸法と外筒13の内径寸法により間隙14の幅dを調整し、加熱容器11の間隙14内を流動する麦由来原料の膜厚を調整することができる。また、加熱具合は、内筒12及び/または外筒13のジャケットに導入する蒸気圧と、前記膜厚(間隙14の幅d)に加えて、加熱容器11への麦由来原料に単位時間当たりの圧入量(流量)で調整することができる。
更に、複数の二重筒加熱装置10を連設する、または二重筒加熱装置10の排出口14bから排出された麦由来原料を再度供給口14aに圧入することを繰り返して循環させることにより、麦由来原料が所定の品温および時間に到達して目的とする特定量のフルフラール、フルフリルアルコール、2−アセチルフランが生成する加工状態になるまで、加熱処理を繰り返し行うこともできる。
加熱面に沿って薄膜状に流動する麦由来原料の膜圧は、通常は0.5〜125mmの範囲内となる事が好ましい。前記膜厚が、125mmを超えると、薄膜状で流動する麦由来原料の内部まで均一に加熱ができない場合があり、加熱面から遠いところではメイラード反応が進行しにくくなるめ、フルフラール、フルフリルアルコール、2−アセチルフランの生成量は少なく、目的とする風味改良剤を得ることができない。また、前記膜厚が0.5mm未満では過熱により焦げ付き等が発生し、得られる風味改良剤の品質は著しく低下する場合がある。使用する加熱装置の構造にもよるが、麦芽エキスなどの麦由来原料に対する加熱制御の容易さを考慮すると、前記膜厚は1mmから30mmがより好ましく、更には2mmから10mmとするのが好ましい。
加熱温度は、麦由来原料の濃縮度、固形分の含量や加熱達温後の保持時間などにもよるが、上記のフルフラール、フルフリルアルコール、2−アセチルフラン、5−メチルフルフラールが所定の含有量となるように加熱すれば良く、品温が150〜170℃の範囲内になるように加熱することが好ましく、160〜170℃がより好ましい。加熱温度が150℃未満ではメイラード反応の進行が遅いためフルフラール、フルフリルアルコール、2−アセチルフランの生成量が少なく、目的とする香味に富んだ風味改良剤を得ることができない場合がある。また、170℃を超えると、得られる風味改良剤に過熱により焦げ付き等が発生したり、麦芽エキス中の5−メチルフルフラールの生成量が増大し、風味改良剤を添加した食品の品質が著しく低下したりする場合がある。
(冷却処理)
本発明の食品用風味改良剤の製造においては、加熱後に冷却することが好ましく、冷却は密閉状態で行うことが好ましく、この冷却は品温が5〜80℃の範囲内になるまで実施することが好ましい。5℃よりも低い温度では風味改良剤の粘性が高くなりすぎて生産性が劣る場合がある。大気開放下で品温が80℃を超えると、先味の風味や味の厚みが物足りなくなる場合がある。これはメイラード反応で生成した先味の風味や味の厚みに関与する低沸点成分が揮発してしまうことが原因であると推定される。このような低沸点成分として、2−メチル−3−プロパノン(2-Methyl-3-propanone)、3−メチルブタナール(3-Methylbutanal)、2−メチルプロパナール(2-Methylpropanal)、1,3−ジアジン(1,3-Diazine)、ジヒドロ−2−メチル−3(2H)−フラノン(Dihydro-2-methyl-3(2H)-furanone)、1−ヒドロキシ−2−プロパノン(1-Hydroxy-2-propanone)等が挙げられ、風味の先味を厚くする重要な成分であると推定される。
本発明の食品用風味改良剤は、食品であれば限定されることなく風味改良効果を発揮するが、特に麦由来原料を少なくとも原料とした食品や、植物の種子を焙煎する工程を含む食品に使用することが好ましい。食品全体中の麦由来の原料の使用量に限定はなく、添加することで呈味効果を発揮できる。該食品の具体例として、パン・菓子やこれらの原料であるマーガリンやクリーム、また、ルー、味噌、醤油やこれらを含むタレやドレッシング等の調合済調味料、チョコレート、ピーナツバター、コーヒーエキス等を挙げることができる。
本発明の食品用風味改良剤は、該食品全体中に0.01〜2重量%含有されることが好ましい。含有量が0.01重量%未満であると風味改良効果が十分に発揮されない場合がある。一方、含有量が2重量%より多いと効果が頭打ちになったり、風味改良剤由来の風味が食品本来の好ましい風味を損なったりする場合がある。本食品用風味改良剤は、食品の製造工程において適時添加すればよく、製造工程の初期の段階で添加しても、食品製造終了直前の段階で添加しても構わない。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は特にことわらない限り、重量基準である。
<官能評価方法および評価基準>
実施例・比較例で得られた食品用風味改良剤を添加した食品の官能評価は、訓練された男性5名女性5名である計10名のパネラーにより、以下の基準に基づき評価し、それらの平均点を評価値とした。
(調理香)
5点:調理香が強く感じられ、非常に好ましい
4点:調理香がやや感じられ、好ましい
3点:調理香に関する変化なし
2点:調理香がやや感じられ、好ましくない
1点:調理香が強く感じられ、非常に好ましくない
(麦芽抽出液由来であり、麦芽抽出液を連想させる香りである麦芽香)
5点:麦芽香が強く感じられ、非常に好ましい
4点:麦芽香がやや感じられ、好ましい
3点:麦芽香に関する変化なし
2点:麦芽香がやや感じられ、好ましくない
1点:麦芽香が強く感じられ、非常に好ましくない
(うまみ)
5点:うまみが強く感じられ、非常に好ましい
4点:うまみがやや感じられ、好ましい
3点:うまみに関する変化なし
2点:うまみがやや感じられ、好ましくない
1点:うまみが強く感じられ、非常に好ましくない
(苦み)
5点:苦みが強く感じられ、非常に好ましい
4点:苦みがやや感じられ、好ましい
3点:苦みに関する変化なし
2点:苦みがやや感じられ、好ましくない
1点:苦みが強く感じられ、非常に好ましくない
(豊かで自然な風味の総合評価)
前記評価(調理香、麦芽香、うまみ、苦み)について、各5段階評価総点数(4項目)を乗じた値の累乗根(4乗根)を豊かで自然な風味総合評価値とした。
◎:3.6点以上
○:3.3点以上、3.6点未満
△:3.0点以上、3.3点未満
×:3.0点未満
(味および香りの底上げを意味する厚み評価)
5点:厚みが強く感じられ、非常に好ましい
4点:厚みがやや感じられ、好ましい
3点:厚みに関する変化なし
2点:厚みがやや感じられ、好ましくない
1点:厚みが強く感じられ、非常に好ましくない
(総合評価)
前記自然な風味の総合評価値と味の厚みの評価値の積をとり、その値を総合評価点とした。総合評価値を以下の基準に当てはめ、各実施例・比較例の風味改良剤の総合評価を行った。
◎:18点以上
○:14点以上、18点未満
△:10点以上、14点未満
×:10点未満
<Brixの測定法>
製造例で得られた麦芽エキス希釈物のBrixは、測定域によってBrix計(株式会社アズワン製「IPR−201α」、製造例1,2に使用)又はBrix計(株式会社アタゴ製「PR−3」、製造例3,4に使用)を用いて行った。
(製造例1)麦芽エキス1の製造
Brix65%の麦芽エキス「CB30」(ピュアモルト社製)を蒸留水で希釈し、Brix25%の麦芽エキス1を得た。
(製造例2)麦芽エキス2の製造
蒸留水の添加量を変え希釈率を変更したことを除き、製造例1と同様にしてBrix55%の麦芽エキス2を得た。
(製造例3)麦芽エキス3の製造
Brix65%の麦芽エキス「CB30」を鍋に3kg入れ、焦げ付かないように撹拌しながら弱火で加熱し、濃縮した。麦芽エキスがBrix75%になった時点で火を止め、麦芽エキス3を得た。
(製造例4)麦芽エキス4の製造
加熱時間を変えた以外は、製造例3と同様にしてBrix80%の麦芽エキス4を得た。
(実施例1)ポータブルリアクターを用いた風味改良剤
密閉式加熱処理装置(耐圧硝子工業株式会社製「ポータブルリアクターTPR1−VS2−500」、以下の表1〜3の中では「PR」と表記する。)を用いて、麦芽エキスの加熱処理を行った。即ち、ポータブルリアクターの密閉式加熱処理容器に約60℃の温水を350g投入し、150℃まで加熱した後、温水を容器外に取り出す操作を行うことで、容器を十分に温めた状態で使用した。Brix65%の麦芽エキス350gを密閉式加熱処理容器に投入し、密閉状態で品温が150℃になるまで加熱した。品温が150℃に達温後、製品出口コックを開放し、加熱処理した麦芽エキスを1Lのステンレスビーカーに受けた。ステンレスビーカーを直ちに氷水を入れたボールにつけて、スパチュラで攪拌しながら約70℃まで冷却し、風味改良剤を得た。このようにして得た風味改良剤の分析結果を表1,2に示した。
Figure 0006431253
(実施例2,3及び比較例1,2)ポータブルリアクターを用いた風味改良剤
表1に示す原料、加熱・充填条件に従い、加熱処理温度を変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2(160℃加熱)、実施例3(170℃加熱)、比較例1(140℃加熱)及び比較例2(180℃加熱)の風味改良剤を作製し、その分析結果を表1に示した。
(実施例4)二重筒加熱装置を用いた風味改良剤
図1で例示される二重筒加熱装置を用いて、麦芽エキスCB30(Brix65%)の加熱処理を行った。二重筒加熱装置の供給口14aの上流に、仕込みタンク、モーノポンプ、プレート式熱交換器を設置し、加熱装置の排出口bの下流に、温度160℃で維持できる品温ホールド用二重配管および背圧弁、冷却用プレート式熱交換器を設置し、配管でつないだ。ポンプは流量60L/H、ジャケット温度は175℃に調節した。麦芽エキスCB30を40kgタンクに仕込み、プレート式熱交換器にて110℃まで加熱後、二重筒加熱装置で160℃まで加熱し、品温ホールド用二重配管にて品温160℃で90秒間ホールド、冷却用二重管にて品温75℃に冷却し、常圧下に取り出して風味改良剤(実施例4)を作製し、その分析結果を表1に示した。尚、モーノポンプから背圧弁間の圧力は0.7MPaとなるように背圧弁で調整し、二重筒加熱装置は内筒を400rpmで回転させた。
実施例1の風味改良剤は、焦げ臭がなく、甘味があり、香ばしい麦芽風味があった。実施例2の風味改良剤は、強い焙煎香や香ばしい麦芽風味が強かった。実施例3の風味改良剤は、ほとんど焦げ臭がなく、香ばしい麦芽風味が濃厚であった。実施例4の風味改良剤は、強い焙煎香を有し、麦芽風味が濃厚であったが、やや飴を焦がしたような焦げ臭を感じた。比較例1の風味改良剤は、焦げ臭はないものの、香ばしい風味はあまり感じられないものであった。比較例2の風味改良剤は強い焦げ臭、焦げ苦味を感じた。
(実施例5)
表2に示す原料、加熱・充填条件に従い、原料としてBrix65%の麦芽エキスの替わりにBrix80%になるよう濃縮した麦芽エキスを用いた以外は、実施例1と同様の方法で風味改良剤を作製し、その分析結果を表2に示した。
Figure 0006431253
(実施例6)
表2に示す原料、加熱・充填条件に従い、原料としてBrix65%の麦芽エキスの替わりにBrixを75%になるよう濃縮した麦芽エキスを用いた以外は、実施例1と同様にして風味改良剤を作製し、その分析結果を表2に示した。
(実施例7)
表2に示す原料、加熱・充填条件に従い、原料としてBrix65%の麦芽エキスの替わりにBrixを55%になるよう希釈した麦芽エキスを用いた以外は、実施例1と同様にして風味改良剤を作製し、その分析結果を表2に示した。
(比較例3)
表2に示す原料、加熱・充填条件に従い、原料としてBrix65%の麦芽エキスの替わりにBrixを25%になるよう希釈した麦芽エキスを用いた以外は、実施例1と同様にして風味改良剤を作製し、その分析結果を表2に示した。


(比較例4)
表2に示す原料、加熱・充填条件に従い、加熱処理温度を160℃から130℃に変更し、更に達温後の保持時間を0分から60分に変更したことを除き、実施例1と同様にして風味改良剤を作製し、その分析結果を表2に示した。
(比較例5)
表2に示す原料、加熱・充填条件に従い、加熱処理温度を170℃から140℃に変更し、更に達温後の保持時間を0分から30分に変更したこと以外は、比較例3と同様にして風味改良剤を作製し、その分析結果を表2に示した。
(比較例6)
表2に示す原料、加熱・充填条件に従い、加熱処理温度を150℃から140℃に変更し、更に達温後の保持時間を0分から30分に変更したこと以外は、実施例1と同様にして風味改良剤を作製し、その分析結果を表2に示した。
実施例5(Brix80%、加熱処理温度150℃)の風味改良剤は、焦げ臭をやや感じるものの、焙煎香を有し、麦芽風味が濃厚であった。また、原料の麦芽エキスの粘性が高く、ポンプによる移送や投入時間を要するため作業効率がやや悪かった。実施例6(Brix75%、加熱処理温度160℃)の風味改良剤は、ベッコウ飴様の焦げ臭をやや感じるものの、強い焙煎香を有し、麦芽風味が濃厚であった。実施例7(Brix55%、加熱処理温度170℃)の風味改良剤は、焙煎香が若干弱く、少し収斂味を感じるものの、焦げ臭は少なく、コクは強いものであった。
一方、比較例3(Brix25%、加熱処理温度170℃)は焙煎香が弱く、好ましくない香りであるムレ臭もあり、全体的な風味が薄かった。比較例4(Brix65%、加熱処理温度130℃、達温後の保持時間60分)は焦げ臭・焦げ由来の苦味を感じた。比較例5の風味改良剤は、麦芽の焙煎香が弱く、好ましくない香りであるムレ臭が感じられ、全体的な風味が薄かった。比較例6の風味改良剤は焦げ臭、焦げ由来の苦味を強く感じ、好ましくなかった。このことから、130〜140℃程度の低温で30〜60分間保持するよりも、150〜170℃で短時間加熱した方が、香ばしい風味を持ち、かつ全体的な風味の強い風味改良剤を得ることができることがわかった。
(実施例8)
表3に示す原料、加熱・充填条件に従い、加熱処理後の冷却を常圧下から密閉下に変更したことを除き、実施例2と同様にして風味改良剤を作製し、その分析結果を表3に示した。
Figure 0006431253
(実施例9,10)
表3に示す原料、加熱・充填条件に従い、加熱処理後の冷却温度を45℃(実施例9)、5℃(実施例10)に変更したことを除き、実施例8と同様にして風味改良剤を作製し、その分析結果を表3に示した。
なお、密閉系での冷却は、ポータブルリアクターの製品出口に所定の温度に温度を調節した密閉容器を装着し、麦芽エキスが所定の品温に到達した後に製品取出コックを開き、風味改良剤を密閉状態で取り出して所定の品温まで冷却した後、常圧下に取り出し風味改良剤を得た。
実施例2の風味改良剤と比較し、実施例8〜10の風味改良剤は先味の厚みが強くなっており、密閉状態で冷却温度が低いほど先味の厚みは強くなっていく傾向であった。密閉冷却によって低沸点のメイラード反応生成物の揮発・散逸が抑制されたことにより、風味改良剤中における先味に寄与する成分の含有量が多くなり、その結果先味の厚みが強くなったと推定された。
また、ガスクロマトグラフによる香気成分分析により、加熱後開放冷却した実施例2の風味改良剤で含有量が少なく、加熱後密閉5℃冷却した実施例10で含有量が増加していた成分は2−メチル−3−プロパノン(2-Methyl-3-propanone)、3−メチルブタナール(3-Methylbutanal)、2−メチルプロパナール(2-Methylpropanal)、1,3−ジアジン(1,3-Diazine)、ジヒドロ−2−メチル−3(2H)−フラノン(Dihydro-2-methyl-3(2H)-furanone)、1−ヒドロキシ−2−プロパノン(1-Hydroxy-2-propanone)であることが特定され、これらの成分等が先味の厚みに影響を与えていると推定された。
(製造例5)
本発明の食品用風味改良剤の風味改良効果を評価するため、表4に記載の配合に従って評価用カレーを作製した。
(実施例11)食品用風味改良剤を添加したカレー
製造例5で得られたカレー99重量部に対して、実施例1の風味改良剤1重量部を添加し、官能評価に用いるカレーを作製し、官能評価を実施した。その評価結果を表4に示した。
Figure 0006431253
(実施例12〜14、比較例7〜8)食品用風味改良剤を添加したカレー
風味改良剤の種類を変更したこと以外は、実施例11と同様にして評価用のカレーを作製し、その評価結果を表4に示した。
実施例11〜14のカレーは、比較例7、8のカレーと比較して調理香および風味の厚みが豊かであり、かつ違和感を感じさせる苦みや麦芽香、焦げ臭の無い、風味のバランスの良いカレーであった。
(実施例15)食品用風味改良剤を添加した生姜焼きのたれ
本特許記載の食品用風味改良剤の風味改良効果を官能評価により評価するため、表5に記載の配合で評価用生姜焼きのたれを作製した。得られた生姜焼きのたれ99重量部に対して、実施例1の風味改良剤1重量部を添加し、官能評価に用いる生姜焼きのたれを作製し、官能評価を実施した。その評価結果を表5に示した。
Figure 0006431253
(実施例16〜18、比較例9〜10)食品用風味改良剤を添加した生姜焼きのたれ
風味改良剤の種類を変更したことを除き、実施例11と同様にして評価用の生姜焼きのたれを作製し、その評価結果を表5に示した。
実施例11〜14の生姜焼きのたれは、比較例7、8の生姜焼きのたれと比較して味の厚みが増し、かつ焦げ臭や苦み等の違和感を感じさせる異味異臭の無い、風味のバランスの良い生姜焼きのたれであった。
10 二重筒加熱装置
11 加熱容器
12 内筒
12a 外壁面
13 外筒
13a 内壁面
14 間隙
14a 供給口
14b 排出口

Claims (7)

  1. Brix値が55〜85%の大麦のエキスである麦由来原料を加熱処理温度150〜170℃で加熱処理して得られ、フルフラール、2−アセチルフラン及びフルフリルアルコールの合計含有量が90ppm以上、且つ5−メチルフルフラール含有量が20ppm以下である、麦を原料とする食品用風味改良剤。
  2. 請求項1に記載の食品用風味改良剤を、食品全体中0.01〜2.0重量%含有する食品。
  3. 食品が、麦を原料として焼成もしくは発酵してなる請求項2に記載の食品。
  4. Brix値が55〜85%の大麦のエキスである麦由来原料を、150〜170℃に加熱することを特徴とする、麦を原料とする食品用風味改良剤の製造方法。
  5. 前記食品用風味改良剤において、フルフラール、2−アセチルフラン及びフルフリルアルコールの合計含有量が90ppm以上、且つ5−メチルフルフラール含有量が20ppm以下である、請求項4に記載の製造方法。
  6. 麦由来原料を、加熱装置の加熱容器に設けられた170〜220℃の加熱面に強制的に接触させ、品温が150〜170℃になるようにコントロールしながら、略均一な薄膜状に広げた状態で該加熱面に沿って流動させながら加熱することを特徴とする、請求項4又は5に記載の製造方法。
  7. 加熱後に、密閉状態で品温が80〜5℃になるまで冷却することを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載の食品用風味改良剤の製造方法。
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