JP6433227B2 - サワードウの製造方法 - Google Patents
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Description
産生する有機酸には、酢酸、乳酸、酒石酸、フマール酸、リンゴ酸及びクエン酸などがある。
この発酵代謝物の種類と量により、サワードウの品質の良し悪しが決まる。
菌による発酵が少ないと、風味が弱くなり、特長の薄いサワードウになる。
菌による発酵が多すぎると、酸味が強くなり、通常よりも添加するサワードウの量を減らさないと良好なパンなど焼成製品はできない。
微生物の増殖は、生育環境のpHにより著しく影響を受けるため耐酸性のある乳酸菌でも、pH5以下になると活動が低下したり、死滅したりする場合がある。
対策としてpHをモニタリング測定しながらアルカリ性物質を加えて撹拌し、菌の最適pHの範囲に調整して、発酵生成物を効率的に蓄積させることが考えられる。
しかし、サワードウの場合、生地の粘性が高いことが多く、また、伝統的に撹拌装置を持たない状況で培養されるため、アルカリ性物質の添加は一般的ではない。
サワードウの緩衝作用が強ければ、サワードウ中で発酵が進んで有機酸が生成してもpHの低下は小さくなる。
例えば、サワードウに緩衝系を添加し、pH3.5以下またはpH4 .0以下へ低下するのを防止することができる方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
しかし、このサワードウは天然物であるため、弱酸とその塩の混合物、または弱塩基とその塩の混合物など、例えば、リン酸水素ナトリウムとリン酸ナトリウムの緩衝剤のように、人工的な緩衝剤をサワードウに混合することは控えたい。
従って、本発明は、緩衝力が50(μmol/g)、60(μmol/g)又は100(μmol/g)となるように調製した普通小麦粉(灰分0.55%の小麦粉、灰分1.05%の小麦粉及び全粒粉を除く)を使用したサワードウの製造方法である。
該サワードウを使用した製品は,味や食感に優れ老化が遅い。
サワードウとは、焙焼製品のために調製された発酵ドウを意味し、パン種と呼ばれることもある。
このドウは、乳酸又は酢酸を産生する細菌によるドウの発酵によって調製されたドウに関連した特有の酸味を持っている。
小麦粉やライ麦粉などの穀物粉を水と混ぜ、放置することで、天然に存在している乳酸菌や酵母が生長する。
穀物粉と水を定期的に補給して混捏し温度や湿度などの環境を適切に保持すれば数日で乳酸菌と酵母が安定に共生したサワードウになる。
サワードウに含まれる酵母と乳酸菌の種類や割合は環境によって変化するので温度や湿度やpHなどの環境が違うとサワードウを使ったパンの風味は違ったものになる。
本発明のサワードウには使用する小麦粉等に存在していた乳酸菌や酵母等を利用できるほか必要に応じて市販の乳酸菌や酵母を加え使用することもできる。
本発明における小麦粉等の緩衝力の測定方法は下記のとおりである。
(1) 特級DL−乳酸(FW90.08, 85〜92%)を5.88ml(500ml×1/100÷0.85)を、500mlにメスアップする(1%v/v)。
(2)1%乳酸をホールピペットで10ml採り、フェノールフタレイン溶液を加えN/10NaOHで滴定する。正確なモル濃度をNaOH滴定で求める。
モル濃度は、0.1×滴定量(ml)×N/10NaOHのファクター÷10.00
測定はダブルで行う。予め、小麦粉の水分を測定する。
(1) pHメーターの校正を行う。(pHメーター取扱手順書に準じる)
(2)スターラーで中速撹拌しながら、水80ml(79〜81ml前後)に小麦粉20g(13.5%水分値換算した小麦粉の20g相当量)を加える。
※小麦粉を加えるときはダマが出来ないようにゆっくり入れる。
(3) 定速撹拌を続け、ビュレットで1%乳酸を0.50mlずつ滴下し、pHを測定する。
その際、乳酸滴下量とpH値を読み取る。
*経時的にpHは変化するので、一定間隔で滴下を行う。
*電位変化が±1mV/10秒以内となる値をpHとして読み取る。
*最初のpH測定は1回測ってから、電極を蒸留水で洗い再度測定し値を読み取る。2回目以降の測定は2回測定し、2回目の値を読み取る。
(4) 目標とするpH4.5前後の乳酸滴下量とpH値から、乳酸量を直線回帰で求める。
乳酸量(ml)=終点(ml)−(終点pH−目標pH)×0.5÷(終点pH−終点前pH)
※pH4.5の平均乳酸量に対して各乳酸量の差が±5%を超えるものは再測定。
緩衝力は、pH4.5とするために必要な滴下した乳酸量(ml)と乳酸モル濃度(mM)を掛け合せ、小麦粉の秤取量(g)で割った値、すなわち、小麦粉1g当りの乳酸量(μmol)である。
緩衝力(μmol/g)=乳酸量(ml) ×乳酸モル濃度(mM)÷小麦粉秤取量(g)
使用する小麦粉等は、単独で緩衝力が50(μmol/g)以上100(μmol/g)以下になるように調製してもよいし、2種以上を適宜混合し緩衝力が50(μmol/g)以上100(μmol/g)以下になるように調製してもよい。
緩衝力が50(μmol/g)未満では、サワードウに蓄えられる有機酸は少なく、このサワードウを使ったパンは風味の薄いものとなり、100(μmol/g)を超えるとサワードウに蓄えられる有機酸は多くなるが、同じ量のサワードウを使用したパンは風味が強くなり過ぎ、また、サワードウの使用量を減らしたパンの風味は適度になるがサワードウの持つ生地として風合いが失われるので不適である。
緩衝力は胚乳部より皮部に近い画分由来の小麦粉等が高いので、緩衝力を高くしたい場合は、皮部に近い画分由来の小麦粉等の配合量が多くなるようにし、緩衝力を低くしたい場合は、胚乳部由来の小麦粉等の配合量が多くなるようにする。
一方、通常食用とはされない、3等粉は皮部に近い部分をより多く含み灰分が0.80(質量%)〜1.20(質量%)程度であるが、この緩衝力は45(μmol/g)〜75(μmol/g)程度である。
また、食品用途には、ほとんど使用されない4等粉は灰分が2.00(質量%)〜3.00(質量%)程度であるが、この緩衝力は100(μmol/g)〜180(μmol/g)程度である。
この場合、緩衝力は、おおむね相加平均値となる傾向がある。
また、普通小麦の場合、蛋白含有量の高い小麦は、低い小麦に比べて同じ灰分含有量の場合、高い緩衝力を示す傾向がある。
この傾向は、デュラム小麦粉やライ麦粉でも見られる。例えば、日本農林規格でマカロニ類に定められている灰分は0.9(質量%)以下であり、通常のデュラム小麦粉は灰分が0.50(質量%)〜0.94(質量%)であるが、この緩衝力は20(μmol/g)〜45(μmol/g)程度である。
また、通常のライ麦粉は、灰分が1.00〜1.20程度であるが、この緩衝力は35(μmol/g)〜45(μmol/g)程度である。
一方、大麦粉の場合、普通小麦粉やデュラム小麦粉やライ麦粉で見られる緩衝力が胚乳部より皮部に近い画分由来の小麦粉等が高いと言う関係は弱い。
通常の大麦粉は灰分が0.70(質量%)〜1.70(質量%)程度であるが、この緩衝力は15(μmol/g)〜45(μmol/g)程度である。
また、大麦粉は単独でサワードウを作ることはほとんどなく、普通小麦粉などと混合されて使われることが多い。
例えば、小麦粉等100質量部に水100質量部を加え混捏し24℃で24時間発酵させ発酵物を調製する。
一般的なサワードウの製法と同じく乳酸菌や酵母菌は、小麦粉等に存在している場合は、それらを使用するので乳酸菌や酵母菌を加える必要はないが必要に応じてこれらを加えてもよい。
この発酵物100質量部に小麦粉等100質量部と水100質量部を加え混捏し24℃で24時間発酵させ発酵物を調製する(いわゆる種を継ぐ操作をおこなう)。
さらにこの種を継ぐ操作を2回行うことでサワードウを得ることができる。
得られたサワードウは、一般のサワードウと同様に使用でき、保管方法も同様でよい。
普通パン用小麦(ダークノーザンスプリング DNS)を製粉し、以下3種類の小麦粉を得た。
実施例1:灰分0.82(質量%)、緩衝力50(μmol/g)、実施例3:灰分1.71(質量%)、緩衝力100(μmol/g)、比較例1:灰分2.10(質量%)、緩衝力122(μmol/g)。
実施例1と実施例3の小麦粉を2:1で混合し、実施例2:灰分1.12(質量%)、緩衝力65(μmol/g)の小麦粉を得た。
比較例2として、市販パン用粉:灰分0.43(質量%)、緩衝力23(μmol/g)を使用した。
前記小麦粉100質量部に対して水200質量部を加え混捏し、24℃で24時間放置して発酵させ、この生地100質量部に小麦粉100質量部と水100質量部を加え混捏して種を継いだ。
更に同様にして2回種を継ぎ、サワードウを得た。
得られたサワードウの有機酸の量とpHを表1に示す。
評価は以下のとおりストレート法の製パン試験によって行った。
[配合]
パン用強力小麦粉 96質量部
イースト 3.5質量部
サワードウ 10質量部
イーストフード 0.1質量部
食塩 2質量部
砂糖 12質量部
全卵 15質量部
脱脂粉乳 3質量部
ショートニング 10質量部
水 45質量部
ショートニング以外の上記資材を、カントーミキサー使用して低速2分間、中速3分間、中高速1分間ミキシングし、ショートニングを加え、低速1分間、中速3分間、中高速3分間ミキシングして生地を得た。
捏上温度は27℃だった。
この生地を、27℃、湿度75%で60分間フロアタイムをとったあと、50gに分割して丸め、ベンチタイム20分間とり、モルダーを使用して成形した。
この生地を、38℃、湿度80%で45分間ホイロをとった後、200℃で8分間焼成しロールパンを得た。
これを冷却後、ビニール袋に包装し、翌日に以下の評価基準で10名のパネラーにより評価を行った。
また3日後にも試食評価を行い、翌日と3日後の硬さの変化から老化を評価した。
得られた評価結果(平均値)を表1に示す。
・味
5点 味のバランスが良い
4点 やや味のバランスが良い
3点 普通
2点 やや味のバランス悪い。
1点 味のバランス悪い
・食感
5点 弾力のバランスが良く口溶けも良い。
4点 やや弾力のバランス良くやや口溶けも良い
3点 普通
2点 やや弾力のバランス悪くやや口溶けも悪い
1点 弾力のバランス悪く口溶けも悪い。
・老化
5点 ソフトで老化が遅く良い。
4点 ややソフトでやや老化が遅くやや良い。
3点 普通。
2点 やや硬くやや老化が早くやや悪い。
1点 硬く老化が早く悪い。
実施例1〜3は、比較例1と比較例2よりも味と食感が良好であった。
参考例4:灰分1.87(質量%)、緩衝力65(μmol/g)、比較例3:灰分0.90(質量%)、緩衝力39(μmol/g)、比較例4:灰分2.96(質量%)、緩衝力144(μmol/g)。
参考例4と比較例4のデュラム小麦粉を3:2で混合し参考例5:灰分2.31(質量%)、緩衝力97(μmol/g)のデュラム小麦粉を得た。
大麦を製粉して得られた大麦粉:灰分0.74(質量%)、緩衝力17(μmol/g)と参考例3の小麦粉を1:1で混合し参考例6:灰分1.23(質量%)、緩衝力58(μmol/g)の小麦粉組成物を得た。
ライ麦を製粉して、参考例8:灰分1.38(質量%)、緩衝力60(μmol/g)を得た。
参考例8と参考例3の小麦粉を1:1で混合し参考例7:灰分1.55(質量%)、緩衝力80(μmol/g)の小麦粉組成物を得た。
実施例1において小麦粉を、これらの穀粉原料に変更した以外は実施例1と同様にしてサワードウを得た。
得られたサワードウの有機酸の量とpHを表2に示す。
得られた評価結果(平均値)を表2に示す。
Claims (1)
- 緩衝力が50(μmol/g)、60(μmol/g)又は100(μmol/g)となるように調製した普通小麦粉(灰分0.55%の小麦粉、灰分1.05%の小麦粉及び全粒粉を除く)を使用したサワードウの製造方法。
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