JP6433783B2 - 落下物防護網及びその補強方法 - Google Patents
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Description
この落石防護網は、斜面の中腹に立設された複数の支柱と、これら支柱の頭部を経由して斜面幅方向に張り渡された複数段の横ロープと、最上段の横ロープから吊り下ろされた縦ロープと、これら横ロープ及び縦ロープに支持された金網とを備えている。また、落石等の落下物は金網と斜面との間に形成されるポケット状の空間に捕獲・収容される。
この落石防護網では、図12に示すように各箇所に使用するロープ100の端部に衝撃吸収用の緩衝金具101を組み入れ、この緩衝金具101を介してロープ100を斜面側方のアンカー体102に固定する。また、落石に伴いロープや金網に衝撃が加わると、その衝撃は、緩衝金具101によって弱められる。
上記のような衝撃吸収能力を有する落石防護網によれば、防護網に作用する衝突時のエネルギー(以下衝撃エネルギーと称する)を、ロープ端部の緩衝金具に逃して減少させている。すなわち、落石の衝突に伴い発生する衝撃エネルギーを防護網で受け止めた後、その受け止めた衝撃エネルギーを一旦ロープ伝いに逃がしてからロープ端部の緩衝金具で弱めて吸収することができる。
これに過度の衝撃が短時間に、集中的に加わると、防護網は、その衝撃エネルギーをロープ端部の緩衝金具に伝達する間もなく損傷してしまい、被災の程度によっては防護網及びロープの総交換が必要になる。とりわけ、緩衝金具から遠い防護網の中央付近では、衝突エネルギーの伝達に時間を要するため被災率が高くなる。
すなわち、斜面からの落下物に対する防護をすべく、その斜面に立設された支柱と、両端部が前記斜面の側方に固定されると共に、前記支柱を経由して斜面幅方向に懸架される横ロープと、この横ロープから斜面下方に吊り下ろされる防護網と、を備えた落下物防護網であって、
前記防護網の谷側の前面に補強ロープを設けると共に、前記防護網に対する衝撃による防護網の変形に伴い、前記補強ロープを前記防護網と共に前方へと張り出し可能に構成し、さらに、その張り出し量を制限したことを特徴とする。
なお、上記で「弛み」とは、意図して設けた弛み若しくは故意の弛みを対象とし、補強ロープの剛性や重量等に起因した弛みは除外する。すなわち、「弛み無く設ける」とは、可能な限り補強ロープを一直線上に設置するとの趣旨である。
また、本発明では、上記の記載にかかわらず、補強ロープを弛ませて設置する場合が排除されるものではない。
また、本構成では、補強ロープの余長を防護網の背後に確保しているため、補強ロープの弛みが外部に露呈しない。
前記張り出しに供される補強ロープの余長は、前記防護網の背後に送られた区間に弛みを設けて確保したものとしてもよい。
前記防護網の前面に補強ロープを設けると共に、この補強ロープを前記防護網に対する衝撃が生じた場合に防護網前方へと張り出し可能に配置する工程と、前記補強ロープを前記防護網の前方に留まらせるべく、その張り出し量が制限されるように設置する工程とを含む。
また、上下複数段の横ロープ4のうち、その最上段の横ロープ4aは各支柱2の頭部を経由して斜面幅方向に懸架され、この最上段の横ロープ4から押さえロープ7にかけて防護網8が吊り下ろされている。
以下、本発明に係る補強ロープ10を用いた落下物防護網の補強構造、並びにその補強方法を説明する。
本実施の形態1では、縦ロープ5及び縦補助ロープ6により格子状に区画された領域のうち、その最上段に並ぶ2列幅の3つの各区画P1の前面(正面側)のそれぞれに、補強ロープ10を筋交い状に配設している。また、補強ロープ10には、後述するように余長が設けられ、補強ロープ10は、この余長の範囲で防護網前方へと張り出し可能に設けられている。
なお、最上段の区画P1は、落下物防護網1内への入り口に相当し、斜面Sに沿って落下してくる落下物との衝突率が最も高い。このため本実施の形態では、最上段の区画P1を補強ロープ10で補強し、防護網8の局所的な損傷を回避すると共に本落下物防護網全体の保全に努めている。
また、防護網前面における補強ロープ10,10の中央交差部分では、補強ロープ10,10同士が互いに連結されている。
このように補強ロープ10,10を区画中央で交差させることで、被災率の高い区画中央部分のエネルギー吸収量を増大させている。
なお、図1との兼ね合いで設置スパンを説明すると、区画P1における対角線の長さが本発明でいう設置スパンに相当する。
具体的には、落下物防護網1の設置場所個々における落石の規模を予測・想定し、好ましくは、その想定の範囲内で防護網8の破網を阻止しできる値、並びに補強ロープ10を防護網8の塑性変形に先立って破断させ得る値の双方を満たすように有効長を選定する。また、有効長の選定に伴い、補強ロープ10の余長が自ずと決定される。
以下、有効長の選定に関わる予備実験1を示す。
1.試験の概要および目的
防護網の前面に補強ロープを設けた本補強構造について、補強ロープの有効長と補強効果との関係を把握する。
A 試験体の構造
φ16mmの縦ロープ及び横ロープで矩形状の架台(枠)を形成し、この架台を本実施の形態に示す最上段の1区画とみなして実験を行った。すなわち、縦ロープ及び横ロープで組まれた架台に防護網を当て交い、さらに外側から対角線上に補強ロープを交差状態で設置した。
B 架台寸法
縦5m×横3m
C 防護網
素線径4.0mm
D 縦ロープ・横ロープ仕様
φ16 JIS G 3525に規定される鋼線の汎用撚りロープ
E 補強ロープ10仕様
φ14 JIS G 3525に規定される鋼線の汎用撚りロープ
本試験では、1区画につきその対角線上に1本ずつ計2本の補強ロープ10を設置した。
F 有効長の扱い
本試験では、有効長の最適値を精度良く把握すべく、有効長に相関性を有する補強ロープの変形率を併用して有効長の選定を行った。
なお、「変形率」とは、補強ロープの設置スパンを基準として、その両端を水平に結んだ基準線から防護網の中央部分がどの程度変形したかを表す指標である。本試験では、想定し得る防護網の変形量を100%として変形率の基準を定めた。具体的には、有効長126%(実長=設置スパン寸法×26%増し)の補強ロープを用いたときの変形量を基準とし、このときの防護網の変形量を以て変形率100%と定めた。また、「変形率」は、単位%あたりの変化量(実測値の振れ幅)が有効長の変化量に較べて大きく得られるため、この変形率を併用することで、有効長と補強効果との相関性を精度良く検証できる。
G 落下物
防護網に動的荷重を与える球状コンクリート塊11KNをクレーンで吊り上げ、所定の高さから落下させた。
3.試験結果
当範囲の試行では、防護網及び防護網を支持する縦ロープ共に健全性を維持し、補強効果が明確に得られた。
B 変形率60%(有効長109.2%)
当試行では、補強効果が薄く、防護網が破損して重錘を保管することができなかった。
以上の実験結果から、変形率換算で30〜50%、有効長102〜106%付近の補強ロープで特に有効性が確認された。
続いて、有効長の選定に関わる予備実験2を下記に示す。
1.試験の概要および目的
本試験では、有効長の異なる長短2種類の補強ロープを同区画の対角線上に1本ずつ計2本、両対角線上に合計4本を設けた構造において、その補強効果を検証した。
A 試験体の構造
φ16mmの縦ロープ及び横ロープで矩形状の架台(枠)を形成し、この架台を本実施の形態に示す最上段の1区画とみなして実験を行った。すなわち、縦ロープ及び横ロープで組まれた架台に防護網を当て交い、さらに外側から対角線上に補強ロープを交差状態で設置した。
B 架台寸法
縦5m×横3m
C 防護網
素線径4.0mm
D 縦ロープ・横ロープ仕様
φ16 JIS G 3525に規定される鋼線の汎用撚りロープ
E 補強ロープ仕様
補強ロープ(長) φ16 JIS G 3525に規定される鋼線の汎用撚りロープ×2本
補強ロープ(短) φ14 JIS G 3525に規定される鋼線の汎用撚りロープ×2本
F 有効長
試験例1と同様に変形率を併用して有効長を選定した。
G 落下物
防護網に動的荷重を与える球状コンクリート塊11KNをクレーンで吊り上げ、所定の高さから落下させる。
3.試験結果
補強ロープ(長) 変形率40%(有効長104.1%)
補強ロープ(短) 変形率30%(有効長102.3%)
本試行によれば、補強ロープ(長)と、補強ロープ(短)が共に破断したため、両補強ロープの強度不足並びにエネルギー吸収量の不足が考えられる。
B 試験No2〜No4
補強ロープ(長) 変形率50〜70%(有効長106.4〜112.6%)
補強ロープ(短) 変形率40〜60%(有効長104.1〜109.2%)
本試行では、補強ロープ(長)の健全性が維持された。補強ロープ(短)は衝撃エネルギーの吸収に伴い破断した。すなわち、有効長の補強ロープ(短)で高い衝撃吸収率を達成しつつ、予備の補強ロープとして機能する補強ロープ(長)の健全性を確保できた。
C 試験No5
補強ロープ(長) 変形率80%(有効長116.4%)
補強ロープ(短) 変形率70%(有効長112.6%)
本試行によれば、補強ロープ(長)と、補強ロープ(短)が共に破断し、さらに金網を支える縦ロープにも損傷が見られたため、両補強ロープの強度不足並びにエネルギー吸収量の不足が考えられる。
4.評価
以上の実験結果から、試験No.2〜4の試行で良好な結果が得られた。
すなわち、有効長105%〜110%程度(変形率で40〜70%)の補強ロープの組み合わせで本補強構造の有効性が示された。
続いて、実施の形態2を説明する。
本実施の形態2で説明する落下物防護網は、補強ロープの構造が実施の形態1と異なっている。具体的には、実施の形態2においては、それぞれの対角線上に設けられている補強ロープが、1本の長い補強ロープ15で構成されている。また、張り出し量を制限するためのストッパーは無く、補強ロープ15の両端部は、共に縦ロープと横ロープの交点に固定されている。
なお、補強ロープ15の上記を除く他の構造は、実施の形態1に準ずるため同一部分には同一符号を付して説明する。
始めに、区画P1の上縁角部に各々設けられるシャックル12,12に対して、その背後から補強ロープ15の端部を各々差し入れる。また、シャックル12を経て防護網8の前面に引き出された補強ロープ15を、補強区画P1の中央で交差させて同区画P1の対角線上に配置する。また、対角線上に配設された補強ロープ15の各端部を、同区画における最寄りの下縁角部にそれぞれ固定する。なお、補強ロープ15を防護網8の背後への送りは、上記のように上方向から行ってもよく、反対に下方向から行ってもよい。
なお、本実施の形態2で用いる補強ロープ15は、実質、補強ロープ2本分の長さと衝撃吸収能力を有するため、有効長の選定時には、その旨考慮して補強ロープ15一本あたりの有効長並びに余長を設定する。
また、このように防護網8の背後において補強ロープ15の余長相当分を弛ませることで実施の形態1と同様、補強ロープ15は平常時に弛み無く防護網8の前面に配置される。
なお、図7(a−1)は平常状態(待機状態)の補強ロープを示す正面図、図7(a−2)は平常状態(待機状態)の補強ロープを示す側面図である。図7(b−1)は張り出し開始直後の補強ロープを示す正面図、図7(b−2)は張り出し開始直後の補強ロープを示す側面図である。図7(c−1)は完全張り出し状態の補強ロープを示す正面図、図7(c−2)は完全張り出し状態の補強ロープを示す側面図である。
なお、補強ロープの配置は、上下逆としてもよい。
続いて、実施の形態3を説明する。
本実施の形態3では、実施の形態2の構成及び上述の試験例2を踏まえ、図8の如く補強ロープ15を長短2種類の補強ロープ15a,15bで構成し、これら長さ(有効長)の異なる補強ロープ15a,15bを防護網の前面に1本ずつ組み付けている。
なお、補強ロープ(長)15aは予備の補強ロープとして位置づけられ、補強ロープ(短)15bが破断した際、その交換までの間における防護網8の新たな被災を防止する。
本実施の形態4では、実施の形態1の構成を踏まえ、格子状に区画された領域のうち、その最上段に並ぶ全区画を1区画P2として補強ロープ10を設置している。
図10に示す実施の形態5では、実施の形態4と同様にして、その最上段に並ぶ全区画を1区画P2として補強ロープ10を設置している。また、実施の形態4と異なる点は、横ロープ4と平行に補強ロープ10を設けるのではなく、区画P2の対角線上にそれぞれ補強ロープ10を設けている点で異なっている。
図11に示す実施の形態6では、防護網8の敷設領域全区画Pに補強ロープ10を個々に設置している。また、上述した実施の形態1と同様に、各区画Pの二つの対角線上に各々補強ロープ10を設けている。このため、防護網8の敷設領域全域において補強ロープ10を密に配置できるため、さらなるエネルギー吸収率の向上が図られる。
また、上記した落下物防護網1の補強構造は、新設時のみならず、既に設置されている落下物防護網にも適用できる。また、本発明の落下物防護網1は、落石のみならず、土砂崩れや岩盤の崩落、また、雪崩の防護対策としても有用である。
2 支柱
3 吊りロープ
4 横ロープ
4a 最上段の横ロープ
4b 2段目の横ロープ
5 縦ロープ
6 縦補助ロープ
7 押さえロープ(最下段の横ロープ)
8 防護網
9 落石の収容部
10 補強ロープ
11 アンカー体
12 シャックル
13 ストッパー
15 補強ロープ
15a 補強ロープ(長)
15b 補強ロープ(短)
P 区画
P1 最上段の各区画
P2 最上段に並ぶ全区画
D 落下物
S 斜面
Claims (9)
- 斜面からの落下物に対する防護をすべく、その斜面に立設された支柱と、両端部が前記斜面の側方に固定されると共に、前記支柱を経由して斜面幅方向に懸架される横ロープと、この横ロープから斜面下方に吊り下ろされる防護網と、を備えた落下物防護網であって、
前記防護網の谷側の前面に補強ロープを設けると共に、前記防護網に対する衝撃による防護網の変形に伴い、前記補強ロープを前記防護網と共に前方へとスライド自在に張り出し可能に構成し、さらに、その張り出し量を制限したことを特徴とする落下物防護網。 - 前記補強ロープは、平常状態で前記防護網の前面に弛み無く設けられていることを特徴とする請求項1に記載の落下物防護網。
- 前記防護網の前面に設けられる補強ロープの一端を固定端とし、その他端を前記防護網の背後に送り、張り出しに供される前記補強ロープの余長は、前記防護網の背後に位置する部分において確保されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の落下物防護網。
- 前記補強ロープをスライド自在に保持する保持部材を備えると共に、この保持部材を経由して前記補強ロープを防護網背後へと送り、
前記保持部材よりも後端側のロープ上には、前記保持部材に当接して、前記補強ロープの張り出し量を制限するストッパーが設けられることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の落下物防護網。 - 前記防護網の前面に設けられる補強ロープの一端と他端の双方、すなわち両端部を固定端とし、且つ、その両端部を除く、少なくとも一区間を前記防護網の背後へ送り、
前記張り出しに供される補強ロープの余長は、前記防護網の背後に送られた区間に弛みを設けて確保したことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の落下物防護網。 - 前記張り出し量の制限は、前記補強ロープの破断を伴う衝撃の作用時において、その補強ロープを前記防護網の塑性変形に先立って破断させ得るように設定されていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の落下物防護網。
- 前記補強ロープの有効長は、前記補強ロープの設置スパンを基準として102.3%〜106.4%の範囲で設定されていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の落下物防護網。
- 前記防護網の前面にその配置が同一である前記補強ロープを複数本設けると共に、各補強ロープにおける張り出し量の制限を補強ロープ個々に異ならせたことを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の落下物防護網。
- 斜面からの落下物に対する防護をすべく、その斜面に立設された支柱と、両端部が前記斜面の側方に固定されると共に、前記支柱を経由して斜面幅方向に懸架される横ロープと、この横ロープから斜面下方に吊り下ろされる防護網と、を備えた落下物防護網の補強方法であって、
前記防護網の前面に補強ロープを設けると共に、この補強ロープを前記防護網に対する衝撃が生じた場合に防護網前方へとスライド自在に張り出し可能に配置する工程と、前記補強ロープを前記防護網の前方に留まらせるべく、その張り出し量が制限されるように設置する工程とを含むことを特徴とする落下物防護網の補強方法。
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