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JP6433783B2 - 落下物防護網及びその補強方法 - Google Patents
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JP6433783B2 - 落下物防護網及びその補強方法 - Google Patents

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Description

本発明は、斜面からの落下物を防護すべく、この斜面の正面側に設けられたポケット式の防護網を備える落下物防護網およびその補強方法に関する。
この種の従来技術として、例えば、山間を走る道路を落石や雪崩から防ぐポケット式の落石防護網が知られている。
この落石防護網は、斜面の中腹に立設された複数の支柱と、これら支柱の頭部を経由して斜面幅方向に張り渡された複数段の横ロープと、最上段の横ロープから吊り下ろされた縦ロープと、これら横ロープ及び縦ロープに支持された金網とを備えている。また、落石等の落下物は金網と斜面との間に形成されるポケット状の空間に捕獲・収容される。
ところで、特許文献1に示すように、落下物が金網に衝突した場合に衝撃を吸収可能として金網の損傷を抑制することができる落石防護網も知られている。
この落石防護網では、図12に示すように各箇所に使用するロープ100の端部に衝撃吸収用の緩衝金具101を組み入れ、この緩衝金具101を介してロープ100を斜面側方のアンカー体102に固定する。また、落石に伴いロープや金網に衝撃が加わると、その衝撃は、緩衝金具101によって弱められる。
上記のような衝撃吸収能力を有する落石防護網によれば、防護網に作用する衝突時のエネルギー(以下衝撃エネルギーと称する)を、ロープ端部の緩衝金具に逃して減少させている。すなわち、落石の衝突に伴い発生する衝撃エネルギーを防護網で受け止めた後、その受け止めた衝撃エネルギーを一旦ロープ伝いに逃がしてからロープ端部の緩衝金具で弱めて吸収することができる。
実用新案登録第3143816号公報
しかしながら、上記のような構成の衝撃吸収能力を有する落石防護網では、
これに過度の衝撃が短時間に、集中的に加わると、防護網は、その衝撃エネルギーをロープ端部の緩衝金具に伝達する間もなく損傷してしまい、被災の程度によっては防護網及びロープの総交換が必要になる。とりわけ、緩衝金具から遠い防護網の中央付近では、衝突エネルギーの伝達に時間を要するため被災率が高くなる。
また、落石防護網の維持管理については、従来は、各部の損傷状態を把握すべく定期的に点検作業を行っていた。具体的には、作業者らが現地に定期的に出向き、急な斜面や崖を登り下りしながら各部の状態を現物確認していた。このため点検に要する時間やコストもさることながら、作業者等には、慎重且つきつい作業が強いられていた。そのため、維持管理に要する負担の軽減が求められる。
本発明は、上記のような事情にかんがみてなされたものであり、各部の保全を図りながら効率良く衝撃を吸収でき、しかも維持管理も容易な落下物防護網及びその補強方法を提供するものである。
上記の課題を達成するため、本発明は次のように構成される。
すなわち、斜面からの落下物に対する防護をすべく、その斜面に立設された支柱と、両端部が前記斜面の側方に固定されると共に、前記支柱を経由して斜面幅方向に懸架される横ロープと、この横ロープから斜面下方に吊り下ろされる防護網と、を備えた落下物防護網であって、
前記防護網の谷側の前面に補強ロープを設けると共に、前記防護網に対する衝撃による防護網の変形に伴い、前記補強ロープを前記防護網と共に前方へと張り出し可能に構成し、さらに、その張り出し量を制限したことを特徴とする。
本発明によれば、防護網の谷側の前面に補強ロープが設けられる。また、補強ロープは、防護網に落下物による衝撃が作用すると、防護網の変形に伴って防護網と共に前方へ張り出し、衝撃を吸収する。また、その制限限界まで張り出した補強ロープは、防護網の前方に留まって落下物による衝撃を受け止める。
上記のように、落下物が防護網に衝突すると、衝突初期の衝撃エネルギーは、防護網自らの変形によって弱められる。また、防護網の変形が進んで補強ロープにまで衝撃が達すると、前段で弱められた衝撃エネルギーの残りが補強ロープ及び防護網の双方でさらに弱められる。すなわち、本発明では、補強ロープを用いて防護網を直接補強すると共に、補強ロープの有するエネルギー吸収能力を衝突後期に作用させることで、防護網及び補強ロープに対する過度のエネルギー集中を回避し、時間差を生じさせて衝撃エネルギーを効率良く吸収するようにしている。
また、防護網に対する衝撃の有無や、衝撃があった場合のその程度は、補強ロープの張り出し量から容易に把握できるため、補強ロープの状態変化の確認に基づいて、以後、落下物防護網の各部における点検の頻度、点検すべき項目等を再検討することができる。その結果、点検の頻度や項目を適切になものとすることができ、維持管理の効率化を実現できる。
また、前記補強ロープは、平常状態では、前記防護網の前面に弛み無く設けておくことができる。
ここで「平常状態」とは、防護網に対して未だ落下物の衝突が無い状態であり、このように補強ロープを弛み無く設置しておくことで、落下物衝突後における補強ロープの状態変化の把握がさらに容易になる。また、補強ロープの弛みに起因した外観不良も解消できる。
なお、上記で「弛み」とは、意図して設けた弛み若しくは故意の弛みを対象とし、補強ロープの剛性や重量等に起因した弛みは除外する。すなわち、「弛み無く設ける」とは、可能な限り補強ロープを一直線上に設置するとの趣旨である。
また、本発明では、上記の記載にかかわらず、補強ロープを弛ませて設置する場合が排除されるものではない。
また、前記防護網の前面に設けられる補強ロープの一端を固定端とし、その他端を前記防護網の背後に送り、張り出しに供される前記補強ロープの余長は、前記防護網の背後に位置する部分において確保されるようにすることが好ましい。しかし、前記他端の位置は、防護網の背後に限られない。なお、補強ロープを弛ませて設置した場合には、別途、補強ロープの余長部分を確保しなくてもよい。
ここで「張り出しに供される余長」とは、許容すべき張り出し量に相当し、補強ロープは、余長の範囲で防護網前方へと張り出し可能に設けられている。
また、本構成では、補強ロープの余長を防護網の背後に確保しているため、補強ロープの弛みが外部に露呈しない。
また、前記補強ロープをスライド自在に保持する保持部材を備えると共に、この保持部材を経由して前記補強ロープを防護網背後へと送り、 前記保持部材よりも後端側(防護網背後側)のロープ上には、前記保持部材に当接して、前記補強ロープの張り出し量を制限するストッパーが設けられることを特徴とする。
本構成では、保持部材とストッパーの組み合わせによって補強ロープの張り出し量に制限を加えている。つまり、落下物の衝突によって補強ロープが防護網前方に張り出される際、補強ロープの後端側に設けられるストッパーが保持部材に当接するまで、補強ロープの張り出しが可能になる。
また、前記防護網の前面に設けられる補強ロープの一端と他端の双方、すなわち両端部を固定端とし、且つ、その両端部を除く、少なくとも一区間を前記防護網の背後へ送り、
前記張り出しに供される補強ロープの余長は、前記防護網の背後に送られた区間に弛みを設けて確保したものとしてもよい。
本構成では、補強ロープの両端部を除く、少なくとも一区間を防護網背後へ送ると共に、当区間を防護網の背後で弛ませて余長を確保する。また、補強ロープの両端部が共に固定されているため、補強ロープの張り出しは、防護網背後の弛みが無くなる迄可能である。すなわち、本構成ではストッパーを用いることなく張り出し量に制限を加えることができる。
また、前記張り出し量の制限は、前記補強ロープの破断を伴う衝撃の作用時において、その補強ロープを、前記防護網の塑性変形に先立って破断させ得るように設定することができる。
すなわち、補強ロープの破断を伴う衝撃の場合、上記条件を満たすように張り出し量を設定することで、補強ロープの有する衝撃吸収能力を防護網の塑性変形に先立って全て引き出せるようにする。
また、前記補強ロープの有効長は、補強ロープの設置スパンを基準として102%〜110%の範囲、好ましくは102%〜106%の範囲で設定することができる。
ここで「設置スパン」とは、補強ロープを設置すべき区間の最短距離で定義される。一方、「有効長」とは、張り出し可能に設けられる補強ロープの固定端間距離に相当し、例えば、4mの設置スパンを対象として有効長を実長換算すると、有効長102%は設置スパン4m+2%増しで4,08mとなる。また、有効長110%では設置スパン4m+10%増しで4,4mとなる。
また、前記防護網の前面に前記補強ロープを複数本設けると共に、各補強ロープにおける張り出し量の制限を、各々の補強ロープ毎に異ならせることができる。
すなわち、本構成では、有効長の異なる複数の補強ロープを防護網の前面に設置するため、仮に有効長の補強ロープ(短)が衝撃により破断しても、残る有効長の補強ロープ(長)がこれを受け止め、防護網を引き続き補強するように構成することができる。
なお、上述の補強ロープで構成される落下物防護網の補強構造は、新設される落下物防護網のみならず、既設の落下物防護網に対しても有効に追加構成することが可能である。
また、本発明に係る補強方法は、斜面からの落下物に対する防護をすべく、その斜面に立設された支柱と、両端部が前記斜面の側方に固定されると共に、前記支柱を経由して斜面幅方向に懸架される横ロープと、この横ロープから斜面下方に吊り下ろされる防護網と、を備えた落下物防護網の補強方法であって、
前記防護網の前面に補強ロープを設けると共に、この補強ロープを前記防護網に対する衝撃が生じた場合に防護網前方へと張り出し可能に配置する工程と、前記補強ロープを前記防護網の前方に留まらせるべく、その張り出し量が制限されるように設置する工程とを含む。
このように本発明の落下物防護網に係る補強構造及び補強方法は、落石防護網の新設及び既設問わず適用可能である。なお、具体的な補強方法については上述の各構成に準ずる。また、本課題を解決するための手段に記載した各種事項は本発明の課題を逸脱しない範囲において組み合わせることができる。
以上、本発明によれば、各部の保全を図りながら効率良く衝撃を吸収でき、しかも維持管理が容易な落下物防護網及びその補強方法を提供することができる。
実施の形態1に示す落下物防護網の斜視図。 補強ロープの概略構成図。 補強ロープの張り出す様子を示す模式図。 衝突初期の落下物防護網を示す側面図。 衝突後期の落下物防護網を示す側面図。 実施の形態2に示す落下物防護網の正面図。 補強ロープの張り出す様子を示す模式図。 実施の形態3に示す補強ロープの概略構成図。 実施の形態4に示す落下物防護網の正面図。 実施の形態5に示す落下物防護網の正面図。 実施の形態6に示す落下物防護網の正面図。 従来の改良型ポケット式落石防護網を示す斜視図。
本発明に係る落下物防護網1は、斜面Sの幅方向に間隔を空けて立設された複数本の支柱2と、これらの各支柱2を、斜面Sに対して所望の角度で保持する吊りロープ3を備えている。また、斜面Sの下方で斜面幅方向に張り渡された押さえロープ7(最下段の横ロープ)と、各支柱2の頭部から、この押さえロープ7にかけて吊り下ろされた複数列の縦ロープ5と、これら縦ロープ5,5間に配設される縦補助ロープ6とを備えている。さらに、縦ロープ5及び縦補助ロープ6に交差して設けられると共に、両端部が斜面側方のアンカー11に固定される上下複数段の横ロープ4と、が設けられている。
また、上下複数段の横ロープ4のうち、その最上段の横ロープ4aは各支柱2の頭部を経由して斜面幅方向に懸架され、この最上段の横ロープ4から押さえロープ7にかけて防護網8が吊り下ろされている。
なお、最上段の横ロープ4aから押さえロープ7にかけての斜面正面側は、上記した横ロープ4及び縦ロープ5によって格子状に区画され、防護網8は、これら横ロープ4及び縦ロープ5で区画された領域に対してその外側(斜面正面側)から当て交われている。そして、この防護網8と斜面との間にポケット状の収容部9が形成されている。
なお、防護網8は、各ロープ(横ロープ、縦ロープ、縦補助ロープ及び押さえロープ)4,5,6,7との接点において、クロスクリップや結合コイル等の金具を用いて、各ロープ4,5,6,7に固定されている。また、各ロープ4,5,6,7同士の交点も、クロスクリップや結合コイル等で共に固定されて、これら各ロープ4,5,6,7と防護網8は一体の構造物としての剛性が得られるようになっている。
そして、本発明の落下物防護網1では、上記した各種ロープ4,5,6,7に加え、この防護網8の前面上部に、防護網補強用のロープ(以下、補強ロープ10と称する)を設けている。
以下、本発明に係る補強ロープ10を用いた落下物防護網の補強構造、並びにその補強方法を説明する。
〔実施の形態1〕
本実施の形態1では、縦ロープ5及び縦補助ロープ6により格子状に区画された領域のうち、その最上段に並ぶ2列幅の3つの各区画P1の前面(正面側)のそれぞれに、補強ロープ10を筋交い状に配設している。また、補強ロープ10には、後述するように余長が設けられ、補強ロープ10は、この余長の範囲で防護網前方へと張り出し可能に設けられている。
なお、最上段の区画P1は、落下物防護網1内への入り口に相当し、斜面Sに沿って落下してくる落下物との衝突率が最も高い。このため本実施の形態では、最上段の区画P1を補強ロープ10で補強し、防護網8の局所的な損傷を回避すると共に本落下物防護網全体の保全に努めている。
詳しくは、図1のように1区画につき、その2つの対角線に沿って補強ロープ10,10を互いに交差した状態で設けている。
また、防護網前面における補強ロープ10,10の中央交差部分では、補強ロープ10,10同士が互いに連結されている。
このように補強ロープ10,10を区画中央で交差させることで、被災率の高い区画中央部分のエネルギー吸収量を増大させている。
また、各補強ロープ10の先端部分(図1において下端側)は、同区画下縁における横ロープ4と縦ロープ5との交点(以下、下縁側角部と称する)に対し、各々ロック加工や巻き付けグリップ等の固定手段で固定されている。また、各補強ロープ10の後端部分(図1及び図2において上端側)は、同区画上縁における横ロープ4と縦ロープ5との交点(以下、上縁側角部と称する)又は交点付近にそれぞれ設けられるシャックル12を経由して、防護網8の背後へ取り回され、補強ロープ10は、その平常状態において弛み無く防護網8の前面に位置している。
また、図2のように、防護網8の背後に延びる補強ロープ10の後端部分(後端側)には、シャックル12との接触によって補強ロープ10の張り出し量に制限を加える金属製(例えば、アルミ製)のスリーブ(以下、ストッパー13と称する)が圧着・固定されている。また、ストッパー13からシャックル12にかけての長さYは、補強ロープ10の張り出し量を考慮して決定される。すなわち、補強ロープ10の張り出しに供される余長が、ストッパー13からシャックル12にかけて確保されている。
また、補強ロープ10の有効長、すなわち、補強ロープ10の固定端からストッパー13にかけての実長は、補強ロープ10の設置スパンを100%基準として、102%〜110%の範囲、好ましくは102%〜106%の範囲で設定されており、このように予め有効長を設定しておくことで、落下物の衝突時に、防護網前方の定位置に補強ロープ10を正確に留まらせるようにしている。
なお、図1との兼ね合いで設置スパンを説明すると、区画P1における対角線の長さが本発明でいう設置スパンに相当する。
また、有効長の設定方法、言い換えると補強ロープの余長設定方法は、防護網8の伸縮率や耐荷重、並びに補強ロープ10の縦弾性係数等を考慮して行った各種予備実験に基づき設定されている。
具体的には、落下物防護網1の設置場所個々における落石の規模を予測・想定し、好ましくは、その想定の範囲内で防護網8の破網を阻止しできる値、並びに補強ロープ10を防護網8の塑性変形に先立って破断させ得る値の双方を満たすように有効長を選定する。また、有効長の選定に伴い、補強ロープ10の余長が自ずと決定される。
続いて、補強ロープ10の衝撃吸収効果について、図3から図5を参照して説明する。なお、図3は補強ロープの張り出す様子を示す模式図であり、図3(a)は平常状態(待機状態)の補強ロープである。また、図3(b)は張り出し開始直後の補強ロープを示している。図3(c)は完全張り出し状態の補強ロープを示している。
はじめに、図4に示すように、斜面上方で落石Dが生じると、落石Dは斜面Sを飛び跳ねながら落下物防護網1内に進入する。このとき補強ロープ10は未だ待機状態にあり、防護網前面において弛み無く配設されている(図3(a)参照)。また、落石の多くは、防護網8の敷設領域において、その最上段の区画P1に突入して防護網8に衝突する。また、図5のように、防護網8は落石Dとの衝突によって外側に撓みながら落石Dの有する衝撃エネルギーを吸収する。
また、防護網8が撓み始めると同時に、防護網8の前面に配される補強ロープ10も防護網8に押されて防護網前方へ張り出す(図3(b)参照)。また、補強ロープ10の張り出しに伴って、補強ロープ後端部分のストッパー13がシャックル12に突き当たり、以後、補強ロープ10の張り出しがこのストッパー13によって制限・阻止される(図3(c)参照)。よって、補強ロープ10は防護網前方に留まり、続く衝撃に備える。
続いて、補強ロープ10にまで衝撃が達すると、残る衝撃エネルギーは、防護網8を更に変形させると共に補強ロープ10を引き延ばす、若しくは引きち切る(切断する)ことで吸収される。すなわち、衝突後期の衝撃エネルギーは防護網8と補強ロープ10の双方で弱められる。
なお、上述の如く補強ロープ10の有効長は、想定した落石に対して防護網8の破断を阻止できる値、並びに補強ロープ10を防護網8の塑性変形に先立って破断させ得る値の双方を満たすように設定されている。従って、想定内の落石の場合、仮に補強ロープ10の破断を伴う衝撃であっても防護網8の損傷を回避できる。また、補強ロープ10の交換のみで落下物防護網1を元の状態に復旧させることができる。
このように本補強構造によれば、防護網8の前面に補強ロープ10を設けて防護網8を直接補強する。また、補強ロープ10に余長を設けて防護網前方へと張り出し可能に構成したことで、補強ロープの衝撃吸収能力を落下物の衝突後期に集中して作用させることができる。つまり、衝突初期のエネルギーを防護網8である程度吸収して弱め、残る衝突後期のエネルギーを補強ロープ及び防護網の双方で吸収する。よって、防護網8及び補強ロープ10に対して衝撃が過度に集中せず、衝撃エネルギーは防護網8及び補強ロープ10に作用する過程で分散されながら効率良く吸収される。
また、防護網8に対する衝撃の有無や程度は、落下物を受け入れた後の補強ロープ10の張り出し量から概ね把握できるため、補強ロープ10の状態を確認し分析することで、落下物防護網1の各部における点検の頻度を決定し、不要な点検項目を省略することができる。つまり、崖下や最寄りの道路から双眼鏡等を用いて補強ロープ10の弛み具合を確認すれば、現地における各部の点検が必要か否かを容易に判断できる。
〔試験例1〕
以下、有効長の選定に関わる予備実験1を示す。
1.試験の概要および目的
防護網の前面に補強ロープを設けた本補強構造について、補強ロープの有効長と補強効果との関係を把握する。
2.試験体及び試験内容
A 試験体の構造
φ16mmの縦ロープ及び横ロープで矩形状の架台(枠)を形成し、この架台を本実施の形態に示す最上段の1区画とみなして実験を行った。すなわち、縦ロープ及び横ロープで組まれた架台に防護網を当て交い、さらに外側から対角線上に補強ロープを交差状態で設置した。
B 架台寸法
縦5m×横3m
C 防護網
素線径4.0mm
D 縦ロープ・横ロープ仕様
φ16 JIS G 3525に規定される鋼線の汎用撚りロープ
E 補強ロープ10仕様
φ14 JIS G 3525に規定される鋼線の汎用撚りロープ
本試験では、1区画につきその対角線上に1本ずつ計2本の補強ロープ10を設置した。
F 有効長の扱い
本試験では、有効長の最適値を精度良く把握すべく、有効長に相関性を有する補強ロープの変形率を併用して有効長の選定を行った。
なお、「変形率」とは、補強ロープの設置スパンを基準として、その両端を水平に結んだ基準線から防護網の中央部分がどの程度変形したかを表す指標である。本試験では、想定し得る防護網の変形量を100%として変形率の基準を定めた。具体的には、有効長126%(実長=設置スパン寸法×26%増し)の補強ロープを用いたときの変形量を基準とし、このときの防護網の変形量を以て変形率100%と定めた。また、「変形率」は、単位%あたりの変化量(実測値の振れ幅)が有効長の変化量に較べて大きく得られるため、この変形率を併用することで、有効長と補強効果との相関性を精度良く検証できる。
G 落下物
防護網に動的荷重を与える球状コンクリート塊11KNをクレーンで吊り上げ、所定の高さから落下させた。
3.試験結果
Figure 0006433783
A 変形率30〜50%(有効長102.3〜106.4%)
当範囲の試行では、防護網及び防護網を支持する縦ロープ共に健全性を維持し、補強効果が明確に得られた。
B 変形率60%(有効長109.2%)
当試行では、補強効果が薄く、防護網が破損して重錘を保管することができなかった。
4.評価
以上の実験結果から、変形率換算で30〜50%、有効長102〜106%付近の補強ロープで特に有効性が確認された。
〔試験例2〕
続いて、有効長の選定に関わる予備実験2を下記に示す。
1.試験の概要および目的
本試験では、有効長の異なる長短2種類の補強ロープを同区画の対角線上に1本ずつ計2本、両対角線上に合計4本を設けた構造において、その補強効果を検証した。
2.試験体及び試験内容
A 試験体の構造
φ16mmの縦ロープ及び横ロープで矩形状の架台(枠)を形成し、この架台を本実施の形態に示す最上段の1区画とみなして実験を行った。すなわち、縦ロープ及び横ロープで組まれた架台に防護網を当て交い、さらに外側から対角線上に補強ロープを交差状態で設置した。
B 架台寸法
縦5m×横3m
C 防護網
素線径4.0mm
D 縦ロープ・横ロープ仕様
φ16 JIS G 3525に規定される鋼線の汎用撚りロープ
E 補強ロープ仕様
補強ロープ(長) φ16 JIS G 3525に規定される鋼線の汎用撚りロープ×2本
補強ロープ(短) φ14 JIS G 3525に規定される鋼線の汎用撚りロープ×2本
F 有効長
試験例1と同様に変形率を併用して有効長を選定した。
G 落下物
防護網に動的荷重を与える球状コンクリート塊11KNをクレーンで吊り上げ、所定の高さから落下させる。
3.試験結果
Figure 0006433783
A 試験No1
補強ロープ(長) 変形率40%(有効長104.1%)
補強ロープ(短) 変形率30%(有効長102.3%)
本試行によれば、補強ロープ(長)と、補強ロープ(短)が共に破断したため、両補強ロープの強度不足並びにエネルギー吸収量の不足が考えられる。
B 試験No2〜No4
補強ロープ(長) 変形率50〜70%(有効長106.4〜112.6%)
補強ロープ(短) 変形率40〜60%(有効長104.1〜109.2%)
本試行では、補強ロープ(長)の健全性が維持された。補強ロープ(短)は衝撃エネルギーの吸収に伴い破断した。すなわち、有効長の補強ロープ(短)で高い衝撃吸収率を達成しつつ、予備の補強ロープとして機能する補強ロープ(長)の健全性を確保できた。
C 試験No5
補強ロープ(長) 変形率80%(有効長116.4%)
補強ロープ(短) 変形率70%(有効長112.6%)
本試行によれば、補強ロープ(長)と、補強ロープ(短)が共に破断し、さらに金網を支える縦ロープにも損傷が見られたため、両補強ロープの強度不足並びにエネルギー吸収量の不足が考えられる。
4.評価
以上の実験結果から、試験No.2〜4の試行で良好な結果が得られた。
すなわち、有効長105%〜110%程度(変形率で40〜70%)の補強ロープの組み合わせで本補強構造の有効性が示された。
なお、本発明者による更なる実験によれば、防護網の仕様を変更した場合でも同様の傾向が見られた。すなわち、補強ロープの呈する補強効果は、防護網の仕様に左右されず、補強ロープの有効長に依存して一義的に見出されると言える。
〔実施の形態2〕
続いて、実施の形態2を説明する。
本実施の形態2で説明する落下物防護網は、補強ロープの構造が実施の形態1と異なっている。具体的には、実施の形態2においては、それぞれの対角線上に設けられている補強ロープが、1本の長い補強ロープ15で構成されている。また、張り出し量を制限するためのストッパーは無く、補強ロープ15の両端部は、共に縦ロープと横ロープの交点に固定されている。
なお、補強ロープ15の上記を除く他の構造は、実施の形態1に準ずるため同一部分には同一符号を付して説明する。
以下、図6を参照して補強ロープ15の防護網8の背後への送りについて説明する。
始めに、区画P1の上縁角部に各々設けられるシャックル12,12に対して、その背後から補強ロープ15の端部を各々差し入れる。また、シャックル12を経て防護網8の前面に引き出された補強ロープ15を、補強区画P1の中央で交差させて同区画P1の対角線上に配置する。また、対角線上に配設された補強ロープ15の各端部を、同区画における最寄りの下縁角部にそれぞれ固定する。なお、補強ロープ15を防護網8の背後への送りは、上記のように上方向から行ってもよく、反対に下方向から行ってもよい。
また、補強ロープ15の張り出しを可能にする余長は、防護網8の背後に確保されている。具体的には、シャックル12,12間の距離と補強ロープ15の有効長を考慮して補強ロープ15に余長を確保し、この余長に相当する弛みをシャックル間に設けて余長を確保する。
つまり、本実施の形態2では、防護網8の前面に配設される補強ロープ15の一端と多端の双方、すなわち両端部を固定端とし、且つ、その両端部を除く一区間(中間部)を防護網8の背後へ送って弛ませ、この弛みによって補強ロープ15の余長を確保する。
なお、本実施の形態2で用いる補強ロープ15は、実質、補強ロープ2本分の長さと衝撃吸収能力を有するため、有効長の選定時には、その旨考慮して補強ロープ15一本あたりの有効長並びに余長を設定する。
また、このように防護網8の背後において補強ロープ15の余長相当分を弛ませることで実施の形態1と同様、補強ロープ15は平常時に弛み無く防護網8の前面に配置される。
続いて、補強ロープ15の張り出す様子を図7の模式図を参照して説明する。
なお、図7(a−1)は平常状態(待機状態)の補強ロープを示す正面図、図7(a−2)は平常状態(待機状態)の補強ロープを示す側面図である。図7(b−1)は張り出し開始直後の補強ロープを示す正面図、図7(b−2)は張り出し開始直後の補強ロープを示す側面図である。図7(c−1)は完全張り出し状態の補強ロープを示す正面図、図7(c−2)は完全張り出し状態の補強ロープを示す側面図である。
落石が未だ発生していない状態では、図7(a)の如く、補強ロープ15は防護網前面において弛み無く配設されている。また、落石が発生し、その落石との衝突によって防護網8が前方へと撓み始めると同時に補強ロープ15も防護網8に押されて防護網前方へ張り出す(図7(b)参照)。また、補強ロープ15の張り出しに伴ってシャックル間にテンションが掛かると、以後、補強ロープ15の張り出しが制限・阻止される。
このように実施の形態2では、補強ロープ15の両端部が共に固定されているため、補強ロープ15の張り出しは、防護網背後の弛みが無くなるまで可能である。すなわち、実施の形態2の補強ロープ15を採用することで、ストッパーを用いることなく、その張り出し量に制限を加えることができる。
なお、補強ロープの配置は、上下逆としてもよい。
〔実施の形態3〕
続いて、実施の形態3を説明する。
本実施の形態3では、実施の形態2の構成及び上述の試験例2を踏まえ、図8の如く補強ロープ15を長短2種類の補強ロープ15a,15bで構成し、これら長さ(有効長)の異なる補強ロープ15a,15bを防護網の前面に1本ずつ組み付けている。
すなわち、有効長の異なる長短2本の補強ロープ15a,15bを設けることで、補強ロープ(短)15bで衝撃エネルギーを吸収仕切れなかった場合、残る有効長の長い補強ロープ15aで残りの衝撃エネルギーを吸収する。
なお、補強ロープ(長)15aは予備の補強ロープとして位置づけられ、補強ロープ(短)15bが破断した際、その交換までの間における防護網8の新たな被災を防止する。
このように本実施の形態3では、有効長の異なる複数の補強ロープ15a,15bを用いて防護網8を補強する。
〔実施の形態4〕
本実施の形態4では、実施の形態1の構成を踏まえ、格子状に区画された領域のうち、その最上段に並ぶ全区画を1区画P2として補強ロープ10を設置している。
具体的には、図9に示すように、最上段の横ロープ4aと次段の横ロープ4bとの段間中央部分において、これら横ロープ4a,4bと平行に補強ロープ10を設置する。また、補強ロープ10に対する余長の設定位置、並びにストッパー12の取り付け方は、様々例示できる。例えば、図9のように補強ロープ10の両端部に余長を確保すると共に、この余長に対応して補強ロープ10の両端部にストッパーを設ける。また、補強ロープ10の一端を固定端とし、他端側に余長とストッパーを設けても良い。
〔実施の形態5〕
図10に示す実施の形態5では、実施の形態4と同様にして、その最上段に並ぶ全区画を1区画P2として補強ロープ10を設置している。また、実施の形態4と異なる点は、横ロープ4と平行に補強ロープ10を設けるのではなく、区画P2の対角線上にそれぞれ補強ロープ10を設けている点で異なっている。
〔実施の形態6〕
図11に示す実施の形態6では、防護網8の敷設領域全区画Pに補強ロープ10を個々に設置している。また、上述した実施の形態1と同様に、各区画Pの二つの対角線上に各々補強ロープ10を設けている。このため、防護網8の敷設領域全域において補強ロープ10を密に配置できるため、さらなるエネルギー吸収率の向上が図られる。
このように本発明に係る補強構造は、様々な実施の形態を例示できる。
また、上記した落下物防護網1の補強構造は、新設時のみならず、既に設置されている落下物防護網にも適用できる。また、本発明の落下物防護網1は、落石のみならず、土砂崩れや岩盤の崩落、また、雪崩の防護対策としても有用である。
1 落下物防護網
2 支柱
3 吊りロープ
4 横ロープ
4a 最上段の横ロープ
4b 2段目の横ロープ
5 縦ロープ
6 縦補助ロープ
7 押さえロープ(最下段の横ロープ)
8 防護網
9 落石の収容部
10 補強ロープ
11 アンカー体
12 シャックル
13 ストッパー
15 補強ロープ
15a 補強ロープ(長)
15b 補強ロープ(短)
P 区画
P1 最上段の各区画
P2 最上段に並ぶ全区画
D 落下物
S 斜面

Claims (9)

  1. 斜面からの落下物に対する防護をすべく、その斜面に立設された支柱と、両端部が前記斜面の側方に固定されると共に、前記支柱を経由して斜面幅方向に懸架される横ロープと、この横ロープから斜面下方に吊り下ろされる防護網と、を備えた落下物防護網であって、
    前記防護網の谷側の前面に補強ロープを設けると共に、前記防護網に対する衝撃による防護網の変形に伴い、前記補強ロープを前記防護網と共に前方へとスライド自在に張り出し可能に構成し、さらに、その張り出し量を制限したことを特徴とする落下物防護網。
  2. 前記補強ロープは、平常状態で前記防護網の前面に弛み無く設けられていることを特徴とする請求項1に記載の落下物防護網。
  3. 前記防護網の前面に設けられる補強ロープの一端を固定端とし、その他端を前記防護網の背後に送り、張り出しに供される前記補強ロープの余長は、前記防護網の背後に位置する部分において確保されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の落下物防護網。
  4. 前記補強ロープをスライド自在に保持する保持部材を備えると共に、この保持部材を経由して前記補強ロープを防護網背後へと送り、
    前記保持部材よりも後端側のロープ上には、前記保持部材に当接して、前記補強ロープの張り出し量を制限するストッパーが設けられることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の落下物防護網。
  5. 前記防護網の前面に設けられる補強ロープの一端と他端の双方、すなわち両端部を固定端とし、且つ、その両端部を除く、少なくとも一区間を前記防護網の背後へ送り、
    前記張り出しに供される補強ロープの余長は、前記防護網の背後に送られた区間に弛みを設けて確保したことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の落下物防護網。
  6. 前記張り出し量の制限は、前記補強ロープの破断を伴う衝撃の作用時において、その補強ロープを前記防護網の塑性変形に先立って破断させ得るように設定されていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の落下物防護網。
  7. 前記補強ロープの有効長は、前記補強ロープの設置スパンを基準として102.3%〜106.4%の範囲で設定されていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の落下物防護網。
  8. 前記防護網の前面にその配置が同一である前記補強ロープを複数本設けると共に、各補強ロープにおける張り出し量の制限を補強ロープ個々に異ならせたことを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の落下物防護網。
  9. 斜面からの落下物に対する防護をすべく、その斜面に立設された支柱と、両端部が前記斜面の側方に固定されると共に、前記支柱を経由して斜面幅方向に懸架される横ロープと、この横ロープから斜面下方に吊り下ろされる防護網と、を備えた落下物防護網の補強方法であって、
    前記防護網の前面に補強ロープを設けると共に、この補強ロープを前記防護網に対する衝撃が生じた場合に防護網前方へとスライド自在に張り出し可能に配置する工程と、前記補強ロープを前記防護網の前方に留まらせるべく、その張り出し量が制限されるように設置する工程とを含むことを特徴とする落下物防護網の補強方法。
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