以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図3は、複数の板状部材が溶接されてなる構造体モデルを示す図である。図3に示す構造体モデル1は、第1部材M1と第2部材M2を溶接線L1で溶接し、第1部材M1と第3部材M3を溶接線L2で溶接し、第1部材M1と第4部材M4を溶接線L3で溶接するなど、複数の板状部材を溶接して製造するように設計されている。
本実施形態では、図3に示すような複数の板状部材が溶接されてなる構造体の溶接変形を予測する際に用いる各溶接線についての固有変形データから、拘束条件を考慮した拘束固有変形データを計算し、また、その拘束固有変形データを用いて構造体の溶接変形をFEM解析によって予測する。なお、前記板状部材には、平面状のものの他、曲面状、球面状等のものも含む。
ここで、固有変形データとは、拘束がない状態における固有変形のデータをいい、拘束固有変形データとは、拘束がある状態における固有変形のデータをいうものとする。
図4は、非拘束状態及び拘束状態における溶接時の変形を説明するための説明図である。第1部材M1と第2部材M2とを溶接線L1で突合せ溶接によって接合する場合、図4(a)に示すように、拘束治具によって拘束されていない非拘束状態で溶接されるときは溶接後に大きく溶接変形するが、図4(b)に示すように、拘束治具2によって拘束された状態で溶接されるときは、非拘束状態で溶接されるときに比して小さく溶接変形することとなる。
このように拘束条件に応じて溶接変形が異なることから、溶接変形の予測を精度良く行うため、本実施形態では、被溶接部材について溶接線に対応する固有変形データから、拘束条件を考慮した拘束固有変形データを計算して、この拘束固有変形データを溶接変形の予測に用いる。
以下、本発明の実施形態に係る拘束固有変形データの計算システム及び溶接変形予測システムについて説明する。
図5は、本発明の実施形態に係るシステムの全体構成を示す図である。図5に示すように、本発明の実施形態に係るシステムは、コンピュータ10を中心として構成され、コンピュータ10は、中央処理装置11と、拘束固有変形データの計算や溶接変形の計算に必要なデータなどを入力するためのキーボートなどの入力装置12と、拘束固有変形データの計算結果や溶接変形の計算結果などを表示するためのディスプレイなどの表示装置13と、拘束固有変形データを計算するためのプログラムや溶接変形を計算するためのプログラムなどを記憶するメモリなどの記憶装置14と、溶接変形の計算結果などを出力するプリンタなどの出力装置15とを有し、溶接線についての固有変形データが保存された固有変形データベース20に接続されている。
中央処理装置11は、入力装置12、表示装置13及び出力装置15を制御するとともに、記憶装置14及び固有変形データベース20にアクセス可能に構成されている。中央処理装置11は、入力装置12を介して入力された情報と、記憶装置14に記録されているプログラム及びデータと、固有変形データベース20に保存されている固有変形データとを用いて、拘束固有変形データの計算や溶接変形の計算をすると共に、溶接変形の計算結果を記憶装置14に保存するように構成されている。
図6は、図5に示す記憶装置の構成を示す図である。図6に示すように、記憶装置14は、プログラム記憶部とデータ記憶部とを有しており、プログラム記憶部には、構造体の図形データを有限要素分割して解析モデルを作成するための解析モデル作成プログラムと、固有変形データを拘束固有変形データに変換する変換式を計算するための変換式計算プログラムと、固有変形データから拘束固有変形データを計算するための拘束固有変形計算プログラムと、構造体の溶接変形を弾性FEM解析によって計算するための溶接変形計算プログラムと、入力画面や解析結果などを表示するための表示プログラムなどが記憶されている。
変換式計算プログラムは、溶接時に部材を拘束することなく所定の溶接幅で溶接する溶接変形前後の形状に基づく固有変形データと部材を所定の拘束位置で拘束して溶接する溶接変形前後の形状に基づく拘束固有変形データとを取得し、取得した固有変形データに対する拘束固有変形データの割合を複数の拘束位置について算出し、算出した複数の拘束位置についての固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、拘束位置を溶接幅で無次元化したパラメータと該パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表した近似式の定数を算出し、前記近似式を、固有変形データを拘束固有変形データに変換する変換式として計算するようになっている。
拘束固有変形計算プログラムは、溶接時に部材を拘束する拘束位置に基づいて、所定の変換式に従って、溶接線に対応する固有変形データを変換して拘束固有変形データを計算するようになっており、具体的には、所定の変換式に従って、拘束固有変形データを算出するときに、溶接時に部材を拘束する拘束位置を溶接線の溶接幅で無次元化した値をパラメータとして用いて拘束固有変形データを計算するようになっている。
溶接変形計算プログラムは、構造体を有限要素分割して作成した解析モデルに、各溶接線の拘束固有変形データを適用し、既知の弾性FEM解析によって構造体の溶接変形を計算するようになっている。
一方、データ記憶部には、複数の部材を溶接してなる構造体の図形データが記録される構造体形状データファイルと、構造体の各溶接線について溶接方法、溶接タイプ、溶接条件及び被溶接部材等が記録される溶接線条件データテーブルと、固有変形データを、拘束条件を考慮した拘束固有変形データに変換する変換式を計算するために、各溶接線について溶接時に部材を拘束することなく溶接する溶接変形前後の形状に基づく固有変形データと部材を所定の拘束位置で拘束して溶接する溶接変形前後の形状に基づく拘束固有変形データとが記録される変換式計算用データテーブルとが設けられている。
データ記憶部にはまた、各溶接線について固有変形データを拘束固有変形データに変換する変換式の計算結果が記録される変換式データファイルと、各溶接線に対応する固有変形データから計算された拘束固有変形データの計算結果が記録される拘束固有変形結果データファイルと、構造体の溶接変形の計算結果が記録される溶接変形結果データファイルとが設けられている。
図7は、溶接継手の図形データを示す図であり、図7(a)は、溶接継手の斜視図、図7(b)は、溶接継手の正面図である。本実施形態では、構造体モデル1の溶接線L1について、溶接線に対応する固有変形データから拘束条件を考慮した拘束固有変形データを算出する場合について説明する。
構造体の図形データが入力装置12を介して入力され、構造体形状データファイルに記録され、溶接線に対応する溶接継手の図形データが記録される。同一形状及び同一物性を有する板状の第1部材M1と第2部材M2とが突合せ溶接された突合せ継手の溶接線L1については、第1部材M1と第2部材M2とはそれぞれ、溶接線L1の中心から距離b1となるように配置された拘束治具によって拘束された状態で溶接される(図4(b)参照)。
本実施形態では、拘束条件として、溶接線L1の中心から距離b1となる位置で拘束治具によって拘束されることを模擬して、図7に示すように、溶接線L1の中心からの距離b1となる上下の拘束位置b1の節点を固定して溶接変形を計算する。具体的には拘束位置b1の各節点についてX、Y、Z方向を拘束して固定し、溶接後に拘束を解放した場合について溶接変形を計算する。なお、溶接線L1について、溶接幅を2bw1とし、第1及び第2部材M1、M2の長さ、幅及び板厚をそれぞれl1、w1及びt1として示している。なお、本実施形態では、l1、w1及びt1はそれぞれ400mm、200mm、10mmに設定し、bw1は10mmに設定した。
図8は、固有変形データベースに記録されたデータを示す図である。図8に示すように、固有変形データベースには、溶接線に対応する固有変形データが、溶接方法、溶接タイプ、被溶接部材及び溶接条件などの条件情報とともに予め登録されている。具体的には、アーク又はレーザなどの溶接方法、突合せ溶接、片側隅肉溶接、両側隅肉溶接又は重ね隅肉溶接などの溶接タイプ、被溶接部材として鋼板又はアルミニウム板などの材料、板厚、密度、比熱及び熱膨張係数、溶接条件として電流、電圧、速度及び熱効率、並びに固有変形データとして縦収縮量、横収縮量、縦曲げ量及び横曲げ量が記録されている。
番号1に登録された溶接タイプが突合せ溶接であるデータでは、互いに溶接される第1部材と第2部材とが同一の板厚を有して同一の固有変形データを有することから板厚及び固有変形データの欄は二段に分けられることなく記録されているが、番号4に登録された溶接タイプが両側隅肉溶接であるデータでは、互いに溶接される第1部材と第2部材とが異なる板厚及び固有変形データを有することから板厚と固有変形データ、すなわち縦収縮量、横収縮量、縦曲げ量、横曲げ量の欄とが上下二段に分けられ、上段に第1部材のデータが記録され、下段に第2部材のデータが記録されている。
このように、固有変形データベースには、第1部材と第2部材の固有変形データが異なる場合、上段に第1部材のデータが記録され、下段に第2部材のデータが記録される。なお、固有変形データベースに、構造体の溶接線と同一の溶接方法、溶接タイプ、被溶接部材及び溶接条件の固有変形データが存在しない場合、例えば特許文献1や特許文献2に記載の方法などを用いて、構造体の溶接線に対応する固有変形データが予め登録される。固有変形データとして、拘束なしの実験による溶接変形に基づく固有変形データや熱弾塑性FEM解析による溶接変形に基づく固有変形データなどを用いることができる。
図8の番号1に登録されたデータでは、t1、ρ1、c1、α1はそれぞれ第1及び第2部材の板厚、密度、比熱、熱膨張係数を示し、I1、V1、v1、η1はそれぞれ溶接条件の電流、電圧、速度、熱効率を示し、Dx1、Dy1、Rx1、Ry1はそれぞれ第1及び第2部材について固有変形の縦収縮量、横収縮量、縦曲げ量、横曲げ量を示し、図8の番号4に登録されたデータでは、t4a、t4bはそれぞれ第1、第2部材の板厚を示し、ρ4、c4、α4はそれぞれ第1及び第2部材の密度、比熱、熱膨張係数を示し、I4、V4、v4、η4はそれぞれ溶接条件の電流、電圧、速度、熱効率を示し、Dx4a、Dy4a、Rx4a、Ry4aはそれぞれ第1部材について固有変形の縦収縮量、横収縮量、縦曲げ量、横曲げ量を示し、Dx4b、Dy4b、Rx4b、Ry4bはそれぞれ第2部材について固有変形の縦収縮量、横収縮量、縦曲げ量、横曲げ量を示している。
図9は、溶接線条件データテーブルに記録されたデータを示す図である。溶接線について、溶接線番号、溶接方法、溶接タイプ、溶接条件及び被溶接部材が入力装置12を介して入力され、図9に示すように、溶接線条件データテーブルに、溶接線番号、溶接方法、溶接タイプ、溶接条件として溶接幅、溶接時の拘束位置、電流、電圧、速度及び熱効率、並びに被溶接部材である第1及び第2部材の材料、長さ、幅、板厚、ヤング率及びポアソン比が記録される。なお、溶接幅は、被溶接部材ごとの溶接幅bw1が記録される。
図9の溶接線L1に記録されたデータでは、bw1、b1、I1、V1、v1、η1はそれぞれ溶接条件としての溶接幅、溶接時の拘束位置、電流、電圧、速度、熱効率を示し、l1、W1、t1、E1、ν1はそれぞれ第1及び第2部材の長さ、幅、板厚、ヤング率、ポアソン比を示している。図9では、第1及び第2部材は同一形状及び同一物性を有することから1つの被溶接部材について記録されているが、第1及び第2部材の形状及び物性が異なるときはそれぞれの被溶接部材について記録される。
図10は、変換式計算用データテーブルに記録されたデータを示す図である。本実施形態では、固有変形データから拘束固有変形データに変換する変換式を計算するために、溶接時に部材を拘束することなく溶接する溶接変形前後の形状に基づいて算出された固有変形データが入力装置12を介して入力され、図10に示すように、変換式計算用データ1に、溶接線番号、溶接幅、被溶接部材である第1及び第2部材について固有変形データの縦収縮量、横収縮量、縦曲げ量、横曲げ量が記録される。
溶接時に部材を拘束することなく溶接する溶接変形前後の形状に基づいて算出された固有変形データは、第1及び第2部材を拘束することなく溶接したときの溶接変形を熱弾塑性FEM解析を用いて解析し、熱弾塑性FEM解析で得られたデータから、具体的には固有ひずみ分布データから固有ひずみをその発生領域で積分して前述した数1〜8で示す式を用いて算出される。
図11は、変換式計算用データテーブルに記録された別のデータを示す図である。本実施形態ではまた、固有変形データから拘束固有変形データに変換する変換式を計算するために、溶接時に部材を所定の拘束位置で拘束して溶接する溶接変形前後の形状に基づいて算出された拘束固有変形データが入力装置12を介して入力され、図11に示すように、変換式計算用データ2に、溶接線番号、溶接幅、溶接時の拘束位置、溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した値である拘束パラメータ、被溶接部材である第1及び第2部材について拘束条件を考慮した固有変形データである拘束固有変形データの縦収縮量、横収縮量、縦曲げ量、横曲げ量が記録される。
溶接時に部材を所定の拘束位置で拘束して溶接する溶接変形前後の形状に基づいて算出された拘束固有変形データは、第1及び第2部材を所定の拘束位置で拘束したときの溶接変形を熱弾塑性FEM解析を用いて解析し、熱弾塑性FEM解析で得られたデータから、具体的には固有ひずみ分布データから固有ひずみをその発生領域で積分して前述した数1〜8で示す式を用いて算出される。
前記変換式を計算するための拘束固有変形データは、前記変換式を計算するための固有変形データを算出するときと第1及び第2部材を所定の拘束位置で拘束することを除いて同一条件で熱弾塑性FEM解析を行い、前記変換式を計算するための固有変形データを算出するときと同様にして熱弾塑性FEM解析で得られた固有ひずみをその発生領域で積分して算出される。
なお、固有変形の縦曲げについては、弾性FEM解析によって構造体の溶接変形を解析する際に溶接変形への影響が少ないことから、本実施形態では、変換式計算用データ1、2に記録される固有変形データ、拘束固有変形データの縦曲げについてはゼロとして記録される。
また、固有変形データを拘束固有変形データに変換する変換式を計算するために用いる溶接時に部材を拘束することなく溶接する溶接変形前後の形状に基づく固有変形データと部材を所定の拘束位置で拘束して溶接する溶接変形前後の形状に基づく拘束固有変形データとは、熱弾塑性FEM解析を用いた溶接変形前後の形状に基づいて逆解析法を用いて算出するなどその他の方法によって算出することも可能である。
本実施形態では、溶接時に部材を拘束することなく溶接する溶接変形前後の形状に基づく固有変形データと部材を所定の拘束位置で拘束して溶接する溶接変形前後の形状に基づく拘束固有変形データとから、前記固有変形データに対する前記拘束固有変形データの割合が複数の拘束位置について算出される。
そして、算出された複数の拘束位置についての前記固有変形データに対する前記拘束固有変形データの割合から、拘束位置を溶接幅で無次元化したパラメータと該パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表した近似式の定数が算出され、前記近似式が、固有変形データを拘束固有変形データに変換する変換式として算出される。
前記変換式は、下記の数9で示す式による指数関数として算出される。ここで、b´は溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化したパラメータ、A0は溶接線に対応する固有変形データ、A(b´)はパラメータb´における溶接線に対応する拘束固有変形データ、α、βは複数の拘束位置についての固有変形データに対する拘束固有変形データの割合に基づいて決定された定数である。
前記変換式は、固有変形の縦収縮、横収縮、横曲げのそれぞれについて算出される。固有変形の縦曲げについては、弾性FEM解析によって構造体の溶接変形を解析する際に溶接変形への影響が少ないことから、本実施形態では、前記変換式を算出することなく拘束固有変形データの縦曲げをゼロに設定して弾性FEM解析によって構造体の溶接変形が解析される。
図12は、変換式データファイルに記録されたデータを示す図である。図12に示すように、変換式データファイルには、溶接線番号とともに、算出された固有変形データを拘束固有変形データに変換する変換式、具体的には縦収縮、横収縮、横曲げのそれぞれの変換式が記録される。
図13は、拘束固有変形結果データファイルに記録されたデータを示す図である。本実施形態では、溶接線に対応する固有変形データが、溶接時の拘束位置に基づいて前記変換式に従って変換されて拘束固有変形データが算出される。図13に示すように、拘束固有変形結果データファイルには、溶接線番号、溶接幅、拘束位置が記録されるとともに、拘束固有変形データ、具体的には被溶接部材である第1及び第2部材の拘束固有変形データの縦収縮量、横収縮量、横曲げ量が記録される。拘束固有変形データの縦曲げについてはゼロに設定される。
図13に示す溶接線L1についての拘束固有変形データは、図10から図12に示すデータを用いて算出した溶接時の拘束位置が40mmであるときの第1及び第2部材の拘束固有変形データの縦収縮量、横収縮量、横曲げ量を示し、縦曲げ量についてはゼロに設定される。
次に、複数の板状部材を溶接してなる構造体の溶接変形を弾性FEM解析によって予測する動作について具体的に説明する。
図14は、構造体の溶接変形を予測する動作を示すフローチャートである。構造体の溶接変形を予測する前に、コンピュータ10には、先ず、入力装置12を介して、構造体の図形データ、構造体の各溶接線についての溶接方法、溶接タイプ、溶接条件及び被溶接部材である第1及び第2部材等がユーザーによって予め登録される。コンピュータ10にはまた、各溶接線について、固有変形データを拘束固有変形データに変換する変換式を計算するための固有変形データ及び拘束固有変形データがユーザーによって予め登録される。
各種データが登録された状態で、図14に示すようにして、構造体の溶接変形の予測が行われる。構造体の溶接変形を計算する際には、コンピュータ10では、構造体の図形データが取得され(ステップS1)、構造体の各溶接線についての条件が取得され(ステップS2)、溶接線条件データテーブルに記録された溶接線についての各種データが取得される。
また、構造体の各溶接線についての固有変形データが取得され(ステップS3)、固有変形データベースに登録された各溶接線と同一条件の溶接線についての固有変形データ、具体的には縦収縮量、横収縮量、縦曲げ量、横曲げ量が取得される。
次に、構造体の溶接変形を予測するための弾性FEM解析で用いる構造体の各溶接線における拘束条件を考慮した拘束固有変形データが算出される(ステップS4)。各溶接線における拘束固有変形データの算出については後に詳細に説明する。構造体の各溶接線における拘束固有変形データが算出されると、算出された拘束固有変形データが拘束固有変形結果データファイルに記録される。
そして、構造体の図形データから構造体が有限要素分割されて解析モデルが作成され、該解析モデルに、拘束固有変形結果データファイルに記録されている構造体の各溶接線における拘束固有変形データが適用され、弾性FEM解析によって構造体の溶接変形が算出される(ステップS5)。構造体の溶接変形が算出されると、解析結果である構造体の溶接変形が溶接変形結果データファイルに記録されるとともに出力装置15に出力される(ステップS6)。
次に、構造体の各溶接線における拘束固有変形データの算出について説明する。
図15は、拘束固有変形を算出する動作を示すフローチャートである。図15に示すように、拘束固有変形データを算出する際、コンピュータ10では、構造体の各溶接線について固有変形データを溶接時の拘束条件を考慮した拘束固有変形データに変換する固有変形変換式が算出される(ステップS11)。
図16は、固有変形変換式を算出する動作を示すフローチャートである。図16に示すように、固有変形変換式を算出する際には、コンピュータ10では、構造体の各溶接線について溶接変形前後の形状に基づく非拘束条件下の固有変形データが取得され(ステップS21)、変換式計算用データ1に記録されている溶接時に部材を拘束することなく溶接する溶接変形前後の形状に基づいて算出された固有変形データが取得される。
また、構造体の各溶接線について溶接変形前後の形状に基づく拘束条件下の拘束固有変形データが取得され(ステップS22)、変換式計算用データ2に記録されている溶接時に部材を所定の拘束位置で拘束して溶接する溶接変形前後の形状に基づいて算出された拘束固有変形データが取得される。
次に、ステップS21において取得した固有変形データとステップS22において取得した拘束固有変形データとから、各溶接線について、固有変形データに対する拘束固有変形データの割合が複数の拘束位置についてそれぞれ算出され(ステップS23)、固有変形データの縦収縮、横収縮、横曲げについてそれぞれ固有変形データを拘束固有変形データで除して正規化縦収縮、正規化横収縮、正規化横曲げとして算出される。
そして、ステップ23において算出した複数の拘束位置についての固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、拘束位置と溶接幅とに基づく拘束パラメータと固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表した近似式の定数が算出され(ステップS24)、この近似式が、固有変形データを拘束固有変形データに変換する固有変形変換式として算出される(ステップS25)。
具体的には、算出した複数の拘束位置についての固有変形データに対する拘束固有変形データの割合は、複数の拘束位置をそれぞれ溶接幅で除して無次元化した値である拘束パラメータを横軸にとり、前記割合を縦軸にとったグラフにプロットされる。
そして、プロットされた複数の拘束位置についての固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、溶接時の拘束位置を溶接幅で無次元化した拘束パラメータと該拘束パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表した近似式の定数が既知の最小二乗法によって算出され、前記近似式が、固有変形変換式として算出される。前記変換式は、固有変形の縦収縮、横収縮、横曲げについてそれぞれ算出され、本実施形態では、前記の数9で示す式による指数関数として算出される。
図17は、拘束パラメータと正規化縦収縮との関係と固有変形変換式とを示すグラフである。図17に示すように、溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータを横軸にとり、縦収縮について固有変形データに対する拘束固有変形データの割合を正規化縦収縮として縦軸にとったグラフに、縦収縮について固有変形データに対する拘束固有変形データの割合がプロットされる。図17及び後述する図18、図19では、図10及び図11に示すデータを用いて算出した固有変形データに対する拘束固有変形データの割合が示されている。
そして、縦収縮について、プロットした固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、溶接時の拘束位置を溶接幅で無次元化した拘束パラメータと該拘束パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表す下記の数10に示す近似式が既知の最小二乗法によって算出され、この近似式が、固有変形データを拘束固有変形データに変換する固有変形変換式として算出される。
ここで、b´は溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータ、Dx0は溶接線に対応する固有変形データの縦収縮量、Dx(b´)は拘束パラメータb´における溶接線に対応する拘束固有変形データの縦収縮量である。前記の数9で示す式による指数関数の定数α、βについてはそれぞれ、1.5、0.18として算出される。
また、図18は、拘束パラメータと正規化横収縮との関係と固有変形変換式とを示すグラフである。図18に示すように、溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータを横軸にとり、横収縮について固有変形データに対する拘束固有変形データの割合を正規化横収縮として縦軸にとったグラフに、横収縮について固有変形データに対する拘束固有変形データの割合がプロットされる。
そして、横収縮について、プロットした固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、溶接時の拘束位置を溶接幅で無次元化した拘束パラメータと該拘束パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表す下記の数11に示す近似式が既知の最小二乗法によって算出され、この近似式が、固有変形データを拘束固有変形データに変換する固有変形変換式として算出される。
ここで、b´は溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータ、Dy0は溶接線に対応する固有変形データの横収縮量、Dy(b´)は拘束パラメータb´における溶接線に対応する拘束固有変形データの横収縮量である。前記の数9で示す式による指数関数の定数α、βについてはそれぞれ、0.13、0.10として算出される。
また、図19は、拘束パラメータと正規化横曲げとの関係と固有変形変換式とを示すグラフである。図19に示すように、溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータを横軸にとり、横曲げについて固有変形データに対する拘束固有変形データの割合を正規化横曲げとして縦軸にとったグラフに、横曲げについて固有変形データに対する拘束固有変形データの割合がプロットされる。
そして、横曲げについて、プロットした固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、溶接時の拘束位置を溶接幅で無次元化した拘束パラメータと該拘束パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表す下記の数12に示す近似式が既知の最小二乗法によって算出され、この近似式が、固有変形データを拘束固有変形データに変換する固有変形変換式として算出される。
ここで、b´は溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータ、Ry0は溶接線に対応する固有変形データの横曲げ量、Ry(b´)は拘束パラメータb´における溶接線に対応する拘束固有変形データの横曲げ量である。前記の数9で示す式による指数関数の定数α、βについてはそれぞれ、−1.0、0.05として算出される。
このようにして固有変形変換式が算出されると、算出した固有変形変換式が変換式データファイルに記録され、次いで、図15に示すように、ステップS2において取得された溶接線についての条件、具体的には溶接時の拘束位置と溶接幅に基づいて拘束パラメータが算出され(ステップS12)、溶接時の拘束位置を溶接幅で除した拘束パラメータが算出される。
ステップS12において溶接線について拘束パラメータが算出されると、ステップS3において取得した溶接線についての固有変形データとステップS12において算出した溶接線についての拘束パラメータとから、ステップS11において算出した固有変形変換式を用いて、拘束条件を考慮した拘束固有変形データが算出される(ステップS13)。
溶接線についての固有変形データの縦収縮量と溶接線についての拘束パラメータとから、前記数10で示す式を用いて拘束条件を考慮した拘束固有変形データの縦収縮量が算出され、溶接線についての固有変形データの横収縮量と溶接線についての拘束パラメータとから、前記数11で示す式を用いて拘束条件を考慮した拘束固有変形データの横収縮量が算出され、溶接線についての固有変形データの横曲げ量と溶接線についての拘束パラメータとから、前記数12で示す式を用いて拘束条件を考慮した拘束固有変形データの横曲げ量が算出される。
このようにして溶接線についての固有変形データから拘束条件を考慮した拘束固有変形データが算出されると、コンピュータ10では、算出した拘束固有変形データが拘束固有変形結果データファイルに記録される。構造体の各溶接線について同様に、溶接線についての固有変形データから拘束条件を考慮した拘束固有変形データが算出され、算出した拘束固有変形データが拘束固有変形結果データファイルに記録される。
構造体の各溶接線について拘束固有変形データが算出されると、前述したように、構造体の図形データから構造体が有限要素分割されて作成され、該解析モデルに、拘束固有変形結果データファイルに記録されている構造体の各溶接線についての拘束固有変形データが適用され、既知の弾性FEM解析によって構造体の溶接変形が算出される。
このように、本実施形態によれば、構造体の溶接線に対応する固有変形データが、溶接時に部材を拘束する拘束位置に基づいて、所定の変換式に従って変換されて拘束固有変形データが算出されることとなる。これにより、溶接線に対応する固有変形データから、拘束条件を考慮した拘束固有変形データを計算することができる。したがって、構造体の溶接変形をFEM解析によって予測する際に、拘束条件を考慮した拘束固有変形データを用いることで、比較的簡素な計算で溶接変形を精度良く予測することができる。
また、所定の変換式に従って、拘束固有変形データが算出されるときに、拘束位置を溶接線の溶接幅で無次元化した値をパラメータとして用いて拘束固有変形データが算出される。これにより、溶接線の溶接幅を考慮しない場合に比して、拘束固有変形データを用いて構造体の溶接変形をFEM解析によって予測する際に溶接変形を精度良く予測することができる。
また、本実施形態によれば、拘束することなく所定の溶接幅で溶接する溶接変形前後の形状に基づく固有変形データと所定の拘束位置で拘束して溶接する溶接変形前後の形状に基づく拘束固有変形データとが取得され、固有変形データに対する拘束固有変形データの割合が複数の拘束位置について算出される。そして、複数の拘束位置についての固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、拘束位置を溶接幅で無次元化したパラメータと該パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データとの関係を表した近似式の定数が算出され、前記近似式が、前記変換式として算出される。これにより、前記変換式を算出するために用いた拘束位置と異なる拘束位置について比較的簡素な計算で拘束固有変形データを算出することができる。
さらに、前記変換式が、拘束位置を溶接幅で無次元化したパラメータをb´とし、溶接線に対応する固有変形データをA0とし、パラメータb´における溶接線に対応する拘束固有変形データをA(b´)とし、定数をα、βとして、A(b´)/A0=1+α×exp(−β×b´)の関係式による指数関数として計算されることにより、いずれの拘束位置についても適用することができる。
また、本実施形態によれば、算出された構造体の各溶接線についての拘束固有変形データを用いて、その構造体全体の溶接変形が弾性FEM解析によって計算されることになり、構造体の溶接変形を溶接時の拘束条件を考慮して比較的簡素な計算で精度良く予測することができる。
前述した実施形態では、固有変形データを拘束固有変形データに変換する固有変形変換式として、前記数9で示す式による指数関数を用いているが、下記の数13で示す式による線形関数を用いることも可能である。ここで、b´は溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化したパラメータ、A0は溶接線に対応する固有変形データ、A(b´)はパラメータb´における溶接線に対応する拘束固有変形データ、α、βは複数の拘束位置についての固有変形データに対する拘束固有変形データの割合に基づいて決定された定数である。
図20は、拘束パラメータと正規化縦収縮との関係と別の固有変形変換式とを示すグラフである。図20に示すように、縦収縮について、図17と同様にプロットした固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、溶接時の拘束位置を溶接幅で無次元化した拘束パラメータと該拘束パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表す下記の数14に示す近似式を最小二乗法によって算出し、この近似式を、固有変形変換式として算出することも可能である。
ここで、b´は溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータ、Dx0は溶接線に対応する固有変形データの縦収縮量、Dx(b´)は拘束パラメータb´における溶接線に対応する拘束固有変形データの縦収縮量である。前記の数13で示す式による線形関数の定数α、βについてはそれぞれ、1.9607、−0.0052として算出される。
また、図21は、拘束パラメータと正規化横収縮との関係と別の固有変形変換式とを示すグラフである。図21に示すように、横収縮について、図18と同様にプロットした固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、溶接時の拘束位置を溶接幅で無次元化した拘束パラメータと該拘束パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表す下記の数15に示す近似式を最小二乗法によって算出し、この近似式を、固有変形変換式として算出することも可能である。
ここで、b´は溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータ、Dy0は溶接線に対応する固有変形データの横収縮量、Dy(b´)は拘束パラメータb´における溶接線に対応する拘束固有変形データの横収縮量である。前記の数13で示す式による線形関数の定数α、βについてはそれぞれ、1.2513、0.0009として算出される。
また、図22は、拘束パラメータと正規化横曲げとの関係と別の固有変形変換式とを示すグラフである。図22に示すように、横曲げについて、図19と同様にプロットした固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、溶接時の拘束位置を溶接幅で無次元化した拘束パラメータと該拘束パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表す下記の数16に示す近似式を最小二乗法によって算出し、この近似式を、固有変形変換式として算出することも可能である。
ここで、b´は溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータ、Ry0は溶接線に対応する固有変形データの横曲げ量、Ry(b´)は拘束パラメータb´における溶接線に対応する拘束固有変形データの横曲げ量である。前記の数13で示す式による線形関数の定数α、βについてはそれぞれ、0.0041、0.0034として算出される。
このように固有変形データを拘束固有変形データに変換する固有変形変換式として、前記数13で示す式による線形関数を用いる場合においても、溶接線についての固有変形データと溶接線についての拘束パラメータとから、前記数13、具体的には数14、数15、数16で示す式を用いて拘束条件を考慮した拘束固有変形データが算出される。
また、固有変形データを拘束固有変形データに変換する固有変形変換式として、下記の数17で示す式による二次関数を用いることも可能である。ここで、b´は溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化したパラメータ、A0は溶接線に対応する固有変形データ、A(b´)はパラメータb´における溶接線に対応する拘束固有変形データ、α、β、γは複数の拘束位置についての固有変形データに対する拘束固有変形データの割合に基づいて決定された定数である。
図23は、拘束パラメータと正規化縦収縮との関係とまた別の固有変形変換式とを示すグラフである。図23に示すように、縦収縮について、図17と同様にプロットした固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、溶接時の拘束位置を溶接幅で無次元化した拘束パラメータと該拘束パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表す下記の数18に示す近似式を最小二乗法によって算出し、この近似式を、固有変形変換式として算出することも可能である。
ここで、b´は溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータ、Dx0は溶接線に対応する固有変形データの縦収縮量、Dx(b´)は拘束パラメータb´における溶接線に対応する拘束固有変形データの縦収縮量である。前記の数17で示す式による二次関数の定数α、β、γについてはそれぞれ、2.3095、−0.00143、0.00004として算出される。
また、図24は、拘束パラメータと正規化横収縮との関係とまた別の固有変形変換式とを示すグラフである。図24に示すように、横収縮について、図18と同様にプロットした固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、溶接時の拘束位置を溶接幅で無次元化した拘束パラメータと該拘束パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表す下記の数19に示す近似式を最小二乗法によって算出し、この近似式を、固有変形変換式として算出することも可能である。
ここで、b´は溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータ、Dy0は溶接線に対応する固有変形データの横収縮量、Dy(b´)は拘束パラメータb´における溶接線に対応する拘束固有変形データの横収縮量である。前記の数17で示す式による二次関数の定数α、β、γについてはそれぞれ、−0.2221、0.0093、−0.00002として算出される。
また、図25は、拘束パラメータと正規化横曲げとの関係とまた別の固有変形変換式とを示すグラフである。図25に示すように、横曲げについて、図19と同様にプロットした固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、溶接時の拘束位置を溶接幅で無次元化した拘束パラメータと該拘束パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表す下記の数20に示す近似式を最小二乗法によって算出し、この近似式を、固有変形変換式として算出することも可能である。
ここで、b´は溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータ、Ry0は溶接線に対応する固有変形データの横曲げ量、Ry(b´)は拘束パラメータb´における溶接線に対応する拘束固有変形データの横曲げ量である。前記の数17で示す式による二次関数の定数α、β、γについてはそれぞれ、0.7767、0.0133、−0.00005として算出される。
このように固有変形データを拘束固有変形データに変換する固有変形変換式として、前記数17で示す式による線形関数を用いる場合においても、溶接線についての固有変形データと溶接線についての拘束パラメータとから、前記数17、具体的には数18、数19、数20で示す式を用いて拘束条件を考慮した拘束固有変形データが算出される。
前述した実施形態では、同一形状及び同一物性を有する第1及び第2部材M1、M2が突合せ溶接された突合せ継手の溶接線L1について、該溶接線L1に対応する固有変形データから拘束条件を考慮した拘束固有変形データを算出しているが、形状及び物性が異なる第1及び第2部材が突合せ溶接された突合せ継手についても同様にして拘束固有変形データを算出することができ、また片側隅肉溶接、両側隅肉溶接及び重ね隅肉溶接などの他の溶接継手についても同様にして拘束固有変形データを算出することができる。
図26は、別の溶接継手の図形データを示す図であり、図26(a)は、別の溶接継手の斜視図、図26(b)は、別の溶接継手の正面図である。図26では、別の溶接継手として、第1及び第2部材が両側隅肉溶接された両側隅肉継手について示している。両側隅肉継手についても、前述した突合せ継手の場合と同様にして、溶接線に対応する固有変形データから拘束条件を考慮した拘束固有変形データを算出することができる。
図26に示す溶接継手は、第1部材M21の表面中央に第2部材M22の端面を略垂直に配置して第1部材M21の表面と第2部材M22の両側の表面とがそれぞれ溶接線L21で溶接され、第1部材M21が溶接線L21の中心から距離b21となるように配置された拘束治具によって拘束された状態で溶接されるものである。
この場合、拘束条件として、第1部材M21が溶接線L21の中心から距離b21となる位置で拘束治具によって拘束されることを模擬して、溶接線L21の中心からの距離b21となる上下の拘束位置b21の節点を固定して溶接変形を計算する。具体的には拘束位置b21の各節点についてX、Y、Z方向を拘束して固定し、溶接後に拘束を解放した場合について溶接変形を計算する。なお、溶接線L21について、溶接幅をそれぞれ2bw21とし、第1部材M21の長さ、幅及び板厚をそれぞれl21、W21及びt21とし、第2部材M22の長さ、幅及び板厚をそれぞれl22、W22及びt22として示している。なお、本実施形態では、l21、w21及びt21はそれぞれ400mm、400mm、9mmに設定し、l22、w22及びt22はそれぞれ400mm、200mm、6mmに設定し、bw21は6mmに設定した。
図27は、別の溶接継手について溶接線条件データテーブルに記録されたデータを示す図である。図26に示す両側隅肉継手では、被溶接部材である第1及び第2部材が異なる形状を有することから、図27に示すように、溶接線データテーブルに、溶接線番号、溶接方法、溶接タイプ、溶接条件として溶接幅、溶接時の拘束位置、電流、電圧、速度及び熱効率、並びに第1及び第2部材についてそれぞれの材料、長さ、幅、板厚、ヤング率及びポアソン比が記録される。なお、溶接幅は、被溶接部材ごとの溶接幅bw21が記録される。
図27の溶接線L21に記録されたデータでは、bw21、b21、I21、V21、v21、η21はそれぞれ溶接条件としての溶接幅、溶接時の拘束位置、電流、電圧、速度、熱効率を示し、l21、W21、t21、E21、ν21はそれぞれ第1部材M21の長さ、幅、板厚、ヤング率、ポアソン比を示し、l22、W22、t22、E22、ν22はそれぞれ第2部材M22の長さ、幅、板厚、ヤング率、ポアソン比を示している。
また、図28は、別の溶接継手について変換式計算用データテーブルに記録されたデータを示す図である。図26に示す両側隅肉継手についても、固有変形データから拘束固有変形データに変換する変換式を計算するために、溶接時に部材を拘束することなく溶接する溶接変形前後の形状に基づいて算出された固有変形データが入力され、図28に示すように、変換式計算用データ1に、溶接線番号、溶接幅、被溶接部材である第1及び第2部材について固有変形データの縦収縮量、横収縮量、縦曲げ量、横曲げ量が記録される。
溶接時に部材を拘束することなく溶接する溶接変形前後の形状に基づいて算出された固有変形データは、第1及び第2部材を拘束することなく溶接したときの溶接変形を熱弾塑性FEM解析を用いて解析し、熱弾塑性FEM解析で得られたデータから、具体的には固有ひずみ分布データから固有ひずみをその発生領域で積分して前述した数1〜8で示す式を用いて算出される。
また、図29は、別の溶接継手について変換式計算用データテーブルに記録された別のデータを示す図である。図26に示す両側隅肉継手についても、固有変形データから拘束固有変形データに変換する変換式を計算するために、溶接時に所定の拘束位置で拘束して溶接する溶接変形前後の形状に基づいて算出された拘束固有変形データが入力され、図29に示すように、変換式計算用データ2に、溶接線番号、溶接幅、溶接時の拘束位置、溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータ、被溶接部材である第1及び第2部材について拘束固有変形データの縦収縮量、横収縮量、縦曲げ量、横曲げ量が記録される。
溶接時に部材を所定の拘束位置で拘束して溶接する溶接変形前後の形状に基づいて算出された拘束固有変形データは、第1及び第2部材を所定の拘束位置で拘束したときの溶接変形を熱弾塑性FEM解析を用いて解析し、熱弾塑性FEM解析で得られたデータから、具体的には固有ひずみ分布データから固有ひずみをその発生領域で積分して前述した数1〜8で示す式を用いて算出される。前述したように、本実施形態では、変換式計算用データ1、2に記録される固有変形データ、拘束固有変形データの縦曲げについてはゼロとして記録される。
固有変形データベースには、両側隅肉継手についても、図8の番号4で示すように、溶接線に対応する固有変形データが、溶接方法、溶接タイプ、被溶接部材及び溶接条件などの条件情報とともに予め登録されている。
両側隅肉継手の場合についても、溶接時に部材を拘束することなく溶接する溶接変形前後の形状に基づく固有変形データと部材を所定の拘束位置で拘束して溶接する溶接変形前後の形状に基づく拘束固有変形データとから、前記固有変形データに対する前記拘束固有変形データの割合が複数の拘束位置について算出される。
そして、算出した複数の拘束位置についての前記固有変形データに対する前記拘束固有変形データの割合から、拘束位置を溶接幅で除して無次元化したパラメータと該パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表した近似式の定数が算出され、前記近似式が、固有変形データを拘束固有変形データに変換する変換式として算出される。
具体的には、算出した複数の拘束位置についての前記固有変形データに対する前記拘束固有変形データの割合は、複数の拘束位置をそれぞれ溶接幅で除して無次元化した値である拘束パラメータを横軸にとり、前記割合を縦軸にとったグラフにプロットされる。
そして、プロットされた複数の拘束位置についての固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、溶接時の拘束位置を溶接幅で無次元化した拘束パラメータと該拘束パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表した近似式の定数が既知の最小二乗法によって算出され、前記近似式が、固有変形変換式として算出される。前記変換式は、固有変形の縦収縮、横収縮、横曲げについてそれぞれ算出され、前記数9で示す式による指数関数として算出される。
図30は、別の溶接継手について第1部材の拘束パラメータと正規化縦収縮との関係と固有変形変換式とを示すグラフであり、図26に示す両側隅肉継手の第1部材について示している。図30に示すように、溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータを横軸にとり、第1部材の縦収縮について固有変形データに対する拘束固有変形データの割合を正規化縦収縮として縦軸にとったグラフに、第1部材の縦収縮について固有変形データに対する拘束固有変形データの割合がプロットされる。図30及び後述する図31、図32では、図28及び図29に示すデータを用いて算出した固有変形データに対する拘束固有変形データの割合が示されている。
そして、第1部材の縦収縮について、プロットした固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、溶接時の拘束位置を溶接幅で無次元化した拘束パラメータと該拘束パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表す下記の数21に示す近似式が既知の最小二乗法によって算出され、この近似式が、固有変形データを拘束固有変形データに変換する固有変形変換式として算出される。
ここで、b´は溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータ、Dx10は溶接線に対応する第1部材の固有変形データの縦収縮量、Dx1(b´)は拘束パラメータb´における溶接線に対応する第1部材の拘束固有変形データの縦収縮量である。前記の数9で示す式による指数関数の定数α、βについてはそれぞれ、1.5、0.15として算出される。
また、図31は、別の溶接継手について第1部材の拘束パラメータと正規化横収縮との関係と固有変形変換式とを示すグラフであり、図26に示す両側隅肉継手の第1部材について示している。図31に示すように、溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータを横軸にとり、第1部材の縦収縮について固有変形データに対する拘束固有変形データの割合を正規化横収縮として縦軸にとったグラフに、第1部材の横収縮について固有変形データに対する拘束固有変形データの割合がプロットされる。
そして、第1部材の横収縮について、プロットした固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、溶接時の拘束位置を溶接幅で無次元化した拘束パラメータと該拘束パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表す下記の数22に示す近似式が既知の最小二乗法によって算出され、この近似式が、固有変形データを拘束固有変形データに変換する固有変形変換式として算出される。
ここで、b´は溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータ、Dy10は溶接線に対応する第1部材の固有変形データの横収縮量、Dy1(b´)は拘束パラメータb´における溶接線に対応する第1部材の拘束固有変形データの横収縮量である。前記の数9で示す式による指数関数の定数α、βについてはそれぞれ、0.13、0.05として算出される。
また、図32は、別の溶接継手について第1部材の拘束パラメータと正規化横曲げとの関係と固有変形変換式とを示すグラフであり、図26に示す両側隅肉継手の第1部材について示している。図32に示すように、溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータを横軸にとり、第1部材の横曲げについて固有変形データに対する拘束固有変形データの割合を正規化横曲げとして縦軸にとったグラフに、第1部材の横曲げについて固有変形データに対する拘束固有変形データの割合がプロットされる。
そして、第1部材の横曲げについて、プロットした固有変形データに対する拘束固有変形データの割合から、溶接時の拘束位置を溶接幅で無次元化した拘束パラメータと該拘束パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表す下記の数23に示す近似式が既知の最小二乗法によって算出され、この近似式が、固有変形データを拘束固有変形データに変換する固有変形変換式として算出される。
ここで、b´は溶接時の拘束位置を溶接幅で除して無次元化した拘束パラメータ、Ry10は溶接線に対応する第1部材の固有変形データの横曲げ量、Ry1(b´)は拘束パラメータb´における溶接線に対応する第1部材の拘束固有変形データの横曲げ量である。前記の数9で示す式による指数関数の定数α、βについてはそれぞれ、−1.0、0.025として算出される。
両側隅肉継手の第2部材についても、第1部材と同様にして、算出した複数の拘束位置についての前記固有変形データに対する前記拘束固有変形データの割合から、拘束位置を溶接幅で除して無次元化したパラメータと該パラメータにおける固有変形データに対する拘束固有変形データの割合との関係を表した近似式の定数が既知の最小二乗法によって算出され、前記近似式が、固有変形データを拘束固有変形データに変換する変換式として算出される。
そして、第1及び第2部材について固有変形変換式が算出されると、溶接線L21についての固有変形データと溶接線L21について溶接時の拘束位置を溶接幅で無次元化した拘束パラメータとから、固有変形変換式を用いて、拘束条件を考慮した拘束固有変形データが算出される。
このように、第1及び第2部材が両側隅肉溶接された両側隅肉継手においても、突合せ継手と同様にして、溶接線に対応する固有変形データから拘束条件を考慮した拘束固有変形データを算出することができる。
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。