以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。本実施形態の熱処理装置1は、基板としてφ300mmの円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。熱処理装置1に搬入される前の半導体ウェハーWには不純物が注入されており、熱処理装置1による加熱処理によって注入された不純物の活性化処理が実行される。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。ハロゲン加熱部4とチャンバー6との間には外側ルーバー21および内側ルーバー23が設けられている(図8,9参照)。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。
チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。また、反射リング68,69の内周面は電解ニッケルメッキによって鏡面とされている。
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガス(本実施形態では窒素ガス(N2))を供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は窒素ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、窒素ガス供給源85から緩衝空間82に窒素ガスが送給される。緩衝空間82に流入した窒素ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、窒素ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。また、図3は保持部7を上面から見た平面図であり、図4は保持部7を側方から見た側面図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプター74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプター74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
基台リング71は円環形状の石英部材である。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(図1参照)。円環形状を有する基台リング71の上面に、その周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。なお、基台リング71の形状は、円環形状から一部が欠落した円弧状であっても良い。
平板状のサセプター74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。サセプター74は石英にて形成された略円形の平板状部材である。サセプター74の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、サセプター74は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。サセプター74の上面には複数個(本実施形態では5個)のガイドピン76が立設されている。5個のガイドピン76はサセプター74の外周円と同心円の周上に沿って設けられている。5個のガイドピン76を配置した円の径は半導体ウェハーWの径よりも若干大きい。各ガイドピン76も石英にて形成されている。なお、ガイドピン76は、サセプター74と一体に石英のインゴットから加工するようにしても良いし、別途に加工したものをサセプター74に溶接等によって取り付けるようにしても良い。
基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプター74の周縁部の下面とが溶接によって固着される。すなわち、サセプター74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されており、保持部7は石英の一体成形部材となる。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、略円板形状のサセプター74は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプター74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。半導体ウェハーWは、5個のガイドピン76によって形成される円の内側に載置されることにより、水平方向の位置ずれが防止される。なお、ガイドピン76の個数は5個に限定されるものではなく、半導体ウェハーWの位置ずれを防止できる数であれば良い。
また、図2および図3に示すように、サセプター74には、上下に貫通して開口部78および切り欠き部77が形成されている。切り欠き部77は、熱電対を使用した接触式温度計130のプローブ先端部を通すために設けられている。一方、開口部78は、放射温度計120がサセプター74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。さらに、サセプター74には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
図5は、移載機構10の平面図である。また、図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプター74に穿設された貫通孔79(図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプター74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する光照射部である。
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。保持部7に保持された円板形状の半導体ウェハーWの主面(つまり、直径300mmの円)よりも広い領域に複数のハロゲンランプHLが配置されている。また、当該半導体ウェハーWの主面のうち下面と対向する領域に複数のハロゲンランプHLが配置されている。
図1および図7に示すように、40本のハロゲンランプHLが上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
また、図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
ハロゲン加熱部4と保持部7との間に外側ルーバー21および内側ルーバー23の2つのルーバーが設けられている。図8は、外側ルーバー21および内側ルーバー23の斜視図である。外側ルーバー21および内側ルーバー23は、ともに上下に開放端を有する円筒形状(無底円筒形状)の部材である。外側ルーバー21および内側ルーバー23は、ハロゲン加熱部4のハロゲンランプHLから出射される光に対して不透明な材質にて形成されており、例えば石英ガラスに微細な気泡を多数内包させた不透明石英にて形成されている。
図1に示すように、ハロゲン加熱部4の筐体41の上端にはルーバーステージ22が設けられている。ルーバーステージ22は、ハロゲンランプHLから出射される光に対して透明な石英ガラスにて形成された平板状部材である。このルーバーステージ22の上面に外側ルーバー21および内側ルーバー23が設置される。すなわち、外側ルーバー21および内側ルーバー23は下側チャンバー窓64よりも下方のチャンバー6の外部に設置されることとなる。
また、外側ルーバー21および内側ルーバー23は、ともにその円筒の中心軸CXが保持部7に保持された半導体ウェハーWの中心を通るように設けられる。すなわち、外側ルーバー21と内側ルーバー23とが平面視で同心円となるようにルーバーステージ22上に配置される。ハロゲン加熱部4の複数のハロゲンランプHLは、保持部7に保持された半導体ウェハーWの下面と対向する領域に配列されている。よって、外側ルーバー21および内側ルーバー23の中心軸CXは、複数のハロゲンランプHLの配列の中心をも通ることとなる。
外側ルーバー21の円筒の径は半導体ウェハーWの径よりも大きく、例えば本実施形態では外側ルーバー21の外径が323mmであり、内径が317mmである。すなわち、外側ルーバー21の円筒壁の板厚中央部の直径は320mmである。
一方、内側ルーバー23の円筒の径は半導体ウェハーWの径よりも小さく、例えば本実施形態では内側ルーバー23の外径が283mmであり、内径が277mmである。すなわち、内側ルーバー23の円筒壁の板厚中央部の直径は280mmである。
このように、外側ルーバー21の内径は内側ルーバー23の外径よりも大きい。従って、図8に示すように、ルーバーステージ22の上面において内側ルーバー23は外側ルーバー21の内側に設置されることとなる。また、外側ルーバー21の高さと内側ルーバー23の高さとは等しく、例えば15mm〜25mm(本実施形態では23mm)である。
外側ルーバー21の内側に内側ルーバー23が配置された状態においては、外側ルーバー21の内壁面と内側ルーバー23の外壁面との間に円筒形状の隙間が生じることとなる。その円筒形状の隙間の外径(つまり、外側ルーバー21の内径)は317mmであり、当該隙間の内径(つまり、内側ルーバー23の外径)は283mmである。すなわち、外側ルーバー21の内壁面と内側ルーバー23の外壁面との間に存在する円筒形状の隙間の間隔は17mmであり、その円筒形状の隙間の径方向に沿った中央部の径は半導体ウェハーWの直径と同じ300mmとなる。換言すれば、保持部7に保持された半導体ウェハーWの端縁部の直下に外側ルーバー21の内壁面と内側ルーバー23の外壁面との間の隙間の中央部が位置し、その隙間は保持部7に保持された半導体ウェハーWの周縁部に対向することとなる。
図1に戻り、制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
次に、熱処理装置1における半導体ウェハーWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板である。その不純物の活性化が熱処理装置1によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
まず、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介してイオン注入後の半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプター74の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプター74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面として保持部7に保持される。また、半導体ウェハーWは、サセプター74の上面にて5個のガイドピン76の内側に保持される。サセプター74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
半導体ウェハーWが石英にて形成された保持部7によって水平姿勢にて下方より保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成されたルーバーステージ22、下側チャンバー窓64およびサセプター74を透過して半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が接触式温度計130によって測定されている。すなわち、熱電対を内蔵する接触式温度計130が保持部7に保持された半導体ウェハーWの下面にサセプター74の切り欠き部77を介して接触して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし800℃程度、好ましくは350℃ないし600℃程度とされる(本実施の形態では600℃)。なお、ハロゲンランプHLからの光照射によって半導体ウェハーWを昇温するときには、放射温度計120による温度測定は行わない。これは、ハロゲンランプHLから照射されるハロゲン光が放射温度計120に外乱光として入射し、正確な温度測定ができないためである。
また、本実施形態においては、ハロゲン加熱部4とチャンバー6との間に不透明な円筒形状の外側ルーバー21および内側ルーバー23を設け、ハロゲン加熱部4から保持部7に保持された半導体ウェハーWへと向かう光の光路を調整している。図9は、外側ルーバー21および内側ルーバー23による光路調整を示す図である。
外側ルーバー21と内側ルーバー23とは平面視で同心円となるようにルーバーステージ22上に配置され、外側ルーバー21の内径は内側ルーバー23の外径よりも大きい。よって、図9に示すように、外側ルーバー21の内壁面と内側ルーバー23の外壁面との間には円筒形状の隙間が存在する。上述したように、本実施形態においては、外径317mm、内径283mm、高さ23mmの円筒形状の隙間が生じる。外側ルーバー21の内壁面と内側ルーバー23の外壁面との間の間隔は17mmである。
また、外側ルーバー21の内壁面と内側ルーバー23の外壁面との間に生じる円筒形状の隙間は、チャンバー6内にて保持部7に保持された半導体ウェハーWの周縁部の直下に位置して当該周縁部に対向する。従って、図9に示すように、ハロゲン加熱部4のハロゲンランプHLから出射されて外側ルーバー21の内壁面と内側ルーバー23の外壁面との間に生じる円筒形状の隙間に進入した光は、外側ルーバー21の内壁面および内側ルーバー23の外壁面にて繰り返し反射されて上方への指向性を強めて保持部7に保持された半導体ウェハーWの周縁部に到達する。その結果、半導体ウェハーWの内側の領域よりも周縁部の照度が相対的に高くなり、ハロゲンランプHLによる予備加熱時に温度低下の生じ易い当該周縁部が強く加熱されることとなる。
また、特許文献3に提案されるように、単に1個のルーバーのみをハロゲン加熱部4の上方に設置しただけでは、複数のハロゲンランプHLによる光照射加熱時に半導体ウェハーWの周縁部よりも若干内側の領域が逆に高温になることが判明している。本実施形態のように、外側ルーバー21および内側ルーバー23によって円筒形状の隙間を形成すれば、その隙間に進入した光は半導体ウェハーWの周縁部へと向かう指向性を強められるため、当該周縁部よりも若干内側の領域に到達することは抑制される。これにより、半導体ウェハーWの周縁部よりも若干内側の領域が強く加熱されることは防止される。
このようにして、外側ルーバー21および内側ルーバー23の間に円筒形状の隙間を形成することにより、ハロゲンランプHLから出射されて半導体ウェハーWの周縁部へと向かう光の指向性を強めて当該周縁部の照度を相対的に高めている。その結果、温度低下の生じ易い半導体ウェハーWの周縁部が相対的に強く加熱されることとなり、予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布の不均一を効果的に解消することができる。
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLが半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置1では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
本実施形態では、外側ルーバー21および内側ルーバー23の組み合わせによってハロゲン加熱部4から半導体ウェハーWの周縁部に向かう光の指向性を高めて予備加熱段階での半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にしているため、フラッシュ光照射時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は接触式温度計130または放射温度計120によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプター74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプター74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
本実施形態においては、ハロゲン加熱部4とチャンバー6との間に不透明な円筒形状の外側ルーバー21および内側ルーバー23を設け、ハロゲン加熱部4から保持部7に保持された半導体ウェハーWの周縁部へと向かう光の指向性を強めている。ハロゲン加熱部4による予備加熱時には半導体ウェハーの中心部よりも周縁部の温度が低くなる傾向が認められるのであるが、当該周縁部へと向かう光の指向性を強めて照度を相対的に高めることにより、予備加熱時における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一にすることができる。その結果、フラッシュ加熱時における半導体ウェハーW表面の面内温度分布も均一にすることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、外側ルーバー21および内側ルーバー23が石英ガラスに微細な気泡を多数内包させた不透明石英にて形成されていたが、外側ルーバー21および内側ルーバー23の材質は不透明石英に限定されるものではない。例えば、外側ルーバー21および内側ルーバー23は、セラミックスや金属等、ハロゲン加熱部4のハロゲンランプHLから出射される光に対して不透明な材質にて形成されていれば良い。外側ルーバー21および内側ルーバー23を金属に形成する場合には、ステンレススチールやアルミニウムを用いることができる。
外側ルーバー21および内側ルーバー23が金属材料にて形成されている場合には、外側ルーバー21の内壁面および内側ルーバー23の外壁面が鏡面研磨されていても良い。外側ルーバー21の内壁面および内側ルーバー23の外壁面が鏡面であれば、それらの反射率が高くなり、外側ルーバー21の内壁面と内側ルーバー23の外壁面との間に形成される円筒形状の隙間に進入した光をより効果的に反射してその指向性を高めることができる。
また、上記実施形態においては、外側ルーバー21の内壁面と内側ルーバー23の外壁面との間の間隔を17mmとしていたが、これに限定されるものではなく、当該間隔は10mm以上30mm以下であれば良い。外側ルーバー21の内壁面と内側ルーバー23の外壁面との間の間隔が10mm未満であると、外側ルーバー21と内側ルーバー23との隙間に進入する光の光量自体が少なくなり、光の指向性を強めたとしても半導体ウェハーWの周縁部の照度を十分に高めることができない。一方、外側ルーバー21の内壁面と内側ルーバー23の外壁面との間の間隔が30mmを超えると、ハロゲンランプHLによる光照射加熱時に半導体ウェハーWの周縁部よりも若干内側の領域に向かう光の光量が多くなり、当該領域の照度が相対的に高くなって温度分布の均一性が却って低下するおそれがある。このため、外側ルーバー21の内壁面と内側ルーバー23の外壁面との間の間隔は10mm以上30mm以下としている。
また、上記実施形態においては、外側ルーバー21および内側ルーバー23の2つのルーバーを設けるようにしていたが、これに限定されるものではなく、ルーバーの個数は3個以上であっても良い。3個以上のルーバーは、いずれもハロゲンランプHLから出射される光に対して不透明な材質(例えば、不透明石英)にて形成された円筒形状の部材である。3個以上のルーバーは、ハロゲン加熱部4と保持部7との間、具体的には上記実施形態と同様にルーバーステージ22の上面に設置される。
3個以上のルーバーを設ける場合には、それぞれの中心軸が保持部7に保持された半導体ウェハーWの中心を通るように、つまり複数のルーバーが平面視で同心円となるように設置される。複数のルーバーの径は互いに異なっており、外径の大きなものから小さなものへと順次に内側に設置される。また、複数のルーバーの高さは等しい。3個以上のルーバーを設けた場合には、ルーバー間の円筒形状の隙間も複数存在することとなる。従って、ハロゲン加熱部4から出射された光の指向性を強めて照度を相対的に高くしたい領域が半導体ウェハーWの周縁部以外にも存在している場合には、このように3個以上のルーバーを設けて複数領域の照度を高めるのが好ましい。
また、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、上段および下段に複数する配置する形態であれば任意の数とすることができる。
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。また、本発明に係る技術は、高誘電率ゲート絶縁膜(High-k膜)の熱処理、金属とシリコンとの接合、或いはポリシリコンの結晶化に適用するようにしても良い。
また、本発明に係る熱処理技術は、フラッシュランプアニール装置に限定されるものではなく、ハロゲンランプを使用した枚葉式のランプアニール装置やCVD装置などのフラッシュランプ以外の熱源の装置にも適用することができる。特に、チャンバーの下方にハロゲンランプを配置し、半導体ウェハーの裏面から光照射を行って熱処理を行うバックサイドアニール装置に本発明に係る技術は好適に適用することができる。